冠詞はaかtheか無しか?可算・不可算の謎を解く、パケット英語用法百科II

日本人が英語で論文を書くときの壁のひとつが、正しい冠詞を選べないことです。辞書で可算名詞か不可算名詞か調べても、まったく解決しません。抽象名詞が文脈によって可算名詞として使われたり、修飾語句によって冠詞の選択が変わる可能性があるからです。「なぜここではこの冠詞なのか」とアメリカ人の研究者に聞いても、「なんとなく」という答えしか返ってこなくて、もやもやが残るだけです。冠詞の選択を誤ると文の意味が変わってしまうことが多く、論理が一貫しない読みにくい原稿になります。しかし、そんな日本人の冠詞の悩みを解決する、福音書とでもいうべき教科書がついに刊行されました。

グレン・パケット氏が『科学論文の英語用法百科 第1編 よく誤用される単語と表現』を世に送り出したのが2004年。それから実に12年もの歳月を経て、2016年に「科学論文の英語用法百科」待望の第2編が刊行されました(全5編の予定)。第2編「冠詞用法」は、書籍タイトル通り、一冊まるまる300ページが冠詞の選び方の説明に費やされています。

ネイティブなら自然に身につけてしまう正しい冠詞の選び方のルールを徹底的な理論的考察により炙り出し、悩める日本人研究者にそれを伝授するという、実に野心的かつ教育的な本です。

冠詞用法は、正式な指導を受けるとしても僅かなものにすぎないのに、ネイティブ・スピーカーはどうにかほとんど全ての人が完璧な直感的な理解を得る。… 上述のように冠詞の特殊性を認識した結果として、冠詞用法の理論を科学的理論と同様に構築することができるということに気付いた。…当然、英語における冠詞用法を説明する理論は他にも組み立てられ、異なった個人的観点から築かれた理論はどれも内容に多少の差異があるものとなるだろう。しかし、慎重に組み立てられたものであれば、そのいずれの理論でも、ネイティブ・スピーカーに共有される同一の直感的な理解に基づくため、冠詞用法についての帰結が必ず一致するという意味で同等のものでなければならない。…英語の場合は、冠詞があるため、日本語では普段示されない情報が各名詞に対して必ず示される。冠詞により名詞の意味するものがことごとく一定の形を持つかどうか、また特定、唯一、包括的などであるかどうかについて明確な情報が伝えられる。…原文を日本語として読むときは内容について何の違和感も感じないが、英語に訳そうとすると、初めて文章中に(英語から見れば)意味が曖昧な名詞があることに気付く、ということがしばしばある。その名詞が特定のものを意味しているのか、任意のものを意味しているのか、ある種類やある範囲内の全てのもの、あるいはその一部のみを意味しているのかなど、ということが判断できないわけである。また、その情報が文脈からでも分かり得ないことは少なくない。その多くの場合、訳文での冠詞用法を誤らないためには文献を調べる必要がある。…冠詞用法の基礎となるロジックをしっかり学習した上で、たくさんの用例を対象にそのロジックを熟考すると、冠詞の正しい使い方は徐々に直感的に理解できるようになる。本書が提供する指導はまさにそういった学び方を可能にするものである。 (前書きより)

 

参考

  1. 『科学論文の英語用法百科』とは(京都大学学術出版会)
  2. パケット道場~初級アカデミック英語講座~  (エナゴ学術英語アカデミー):パケット道場記事一覧
  3. Paquette道場(phpBB掲示板

御嶽山噴火による犠牲者の遺族が国と長野県を提訴へ

2014年(平成26年)9月27日11時52分に長野県と岐阜県の県境に位置する御嶽山が噴火し、登山者ら58名の死亡が確認され5名が行方不明のままです。この噴火で亡くなった5人の遺族が、国と県に対し総額1億5000万円の損害賠償を求める訴えを今月25日に起こすことがわかりました。

気象庁などは噴火前の2日間にわたって1日50回以上の火山性地震を観測していたにもかかわらず、噴火前に噴火警戒レベルを引き上げなかったこと、山頂付近に山頂周辺などに設置していた3つの地震計のうち2つが故障していたにもかかわらず故障を放置していて精度の高い観測ができなかったことが、提訴の理由として挙げられています。

気象庁のデータをみると、噴火に先立ち、2014年9月に入ってから地震の回数が増加している様子がわかります(下図)。

地震と噴煙MERGED(図:気象庁作成のグラフを着色し(1、2段め)、重ね合わせた(3段目))

参考

  1. 気象庁ホーム > 各種データ・資料 > 火山観測データ > 御嶽山の火山観測データ
  2. 2014年の御嶽山噴火 (ウィキペディア)
  3. 御嶽山噴火災害で遺族が国と長野県を提訴 「国は警戒レベル上げず」「県は地震計の故障を放置」(産経ニュース 2017.1.17):”58人が死亡、5人が行方不明となった平成26年9月27日の御嶽山噴火災害で、噴火前に噴火警戒レベルを引き上げず、山頂付近の地震計の故障を放置して適切な観測を行う義務を怠ったとして、長野県内外に住む5遺族が国家賠償法に基づき、国と県に総額1億5千万円の損害賠償を求める訴訟を長野地裁松本支部に起こすことが17日、分かった。”
  4. 御嶽噴火、5遺族が国・県を賠償提訴へ 「警戒レベル不適切」(日本経済新聞 2017/1/17):”58人が死亡、5人が行方不明となった2014年9月の御嶽山の噴火災害で、5遺族が国家賠償法に基づき、国と県に総額1億5千万円の損害賠償を求める訴訟を長野地裁松本支部に起こすことが17日、遺族らへの取材で分かった。”
  5. 御嶽山噴火の遺族 国と長野県に損害賠償求め提訴へ(NHK NEWS WEB 2017年1月17日):”58人が死亡、5人が行方不明となった3年前の御嶽山の噴火災害で、亡くなった5人の遺族が、噴火前に噴火警戒レベルを引き上げなかったほか、山頂付近にある地震計の故障を放置していたとして、国と県に対し総額1億5000万円の損害賠償を求める訴えを起こすことになりました。”
  6. 御嶽山噴火で遺族が提訴へ 国と県に1億5千万円請求朝日 (新聞DIGITAL 2017年1月17日):”2014年9月27日に起きた御嶽山(長野・岐阜県境、3067メートル)の噴火災害をめぐり、死亡した登山者5人の遺族が、国と長野県を相手に総額1億5千万円の支払いを求める国家賠償請求訴訟を起こす。”

最後の大学入試センター試験令和2年(2020年) 問題と解答速報・集計ツールサイトまとめ

受験生の皆様、センター試験の受験、お疲れ様です。

2020年(令和2年)度大学入試センター試験 問題と解答・開設の速報サイト

大学入試センター、新聞社や予備校がセンター試験の解答を速報していますので、まとめておきます。

 

 

 

 

匿名掲示板

 

2020年度センター試験日程

第1日

地理歴史 公 民 「世界史 A」「世界史 B」 「日本史 A」「日本史 B」 「地理 A」「地理 B」 「現代社会」「倫理」 「政治・経済」『倫理,政治・経済』 2 科目選択 9:30~11:40(注 1)

1 科目選択 10:40~11:40

国 語 『国語』 13:00~14:20

外国語 『英語』『ドイツ語』『フランス語』 『中国語』『韓国語』 【筆記】 15:10~16:30

【リスニング】 『英語』のみ 17:10~18:10(注 2)

第2日

理科① 「物理基礎」「化学基礎」 「生物基礎」「地学基礎」 9:30~10:30(注 3)

数学① 「数学Ⅰ」『数学Ⅰ・数学 A』 11:20~12:20

数学② 「数学Ⅱ」『数学Ⅱ・数学 B』 『簿記・会計』 『情報関係基礎』 13:40~14:40

理科② 「物理」「化学」 「生物」「地学」 2 科目選択 15:30~17:40(注 1)

1 科目選択 16:40~17:40

実施要項 入試センター

 

 

黄博士 崩れたところにレンガを改めて積む心情

黄禹錫(ファン・ウソク)博士は、体細胞由来のヒトクローン胚から胚性幹細胞(ES細胞)を作製することに成功したとして、2004年と2005年にサイエンス誌に論文を出しました。

Woo Suk Hwang et al., Evidence of a Pluripotent Human Embryonic Stem Cell Line Derived from a Cloned Blastocyst. Science  12 Mar 2004:Vol. 303, Issue 5664, pp. 1669-1674 DOI: 10.1126/science.1094515

Woo Suk Hwang et al., Patient-Specific Embryonic Stem Cells Derived from Human SCNT Blastocysts. Science  17 Jun 2005:Vol. 308, Issue 5729, pp. 1777-1783 DOI: 10.1126/science.1112286

しかし、それらの論文はデータ捏造によるものであったことがわかり、サイエンス誌編集部により撤回され、韓国で有罪判決を受け研究の世界から追われました。

博士はソウル大学を追われ、政府から与えられた名誉はすべて剥奪された。研究費詐取や生命倫理法違反の疑いで起訴もされた(今年2月に最高裁で懲役1年6ヶ月、執行猶予2年の判決が確定)。 そんな博士を救ったのは、支援者たちだった。06年7月に350万ドル相当の基金を集めて「スワム生命工学研究財団」を作ったのである。スワムとは、黄博士の愛称だという。(クローンES細胞論文を捏造した黄禹錫博士の「復活」webronza.asahi.com 2014年09月08日 高橋真理子)

黄禹錫(ファン・ウソク)氏(元ソウル大学獣医学部教授)は06年、ソウル大学から解任された後、同年7月、自分を慕った約20人の研究員とスアム生命工学研究院を設立した。ソウル九老洞(クロドン)のある建物に研究室を設け、研究を進めたものの、住民抗議が殺到し、廃業に追い込まれるなど、最初はなかなか定着できなかった。(黄禹錫氏、外部と接触せずに研究活動…これまでどんなことが?東亜日報 October. 27, 2009)

ヒトES細胞の研究ができなくなった黄博士は、クローン動物の研究を続け、愛犬クローン作製ビジネスを成功させました。愛犬クローン作製の価格は10万ドル(約1,000万円)もしますが、希望者は多いといいます。

The science behind dog cloning
(記事:This Korean lab has nearly perfected dog cloning, and that’s just the start. Tech Insider Sep. 12, 2015 By Drake Baer)

黄博士のクローン動物事業は拡大、発展を遂げ、科学者として再び脚光を浴びるに至っています。

「クローン牛、年100万頭生産プロジェクト」は、黄禹錫(ファン・ウソク)博士にとっても新しい挑戦だ。(韓国人博士の黄禹錫「世界初の商業用クローン牛を作る」中央日報日本語版 2015年11月25日)

成功を収めている愛犬クローン事業ですが、黄博士にとってビジネスでの成功は目的ではないそうです。

スアム研究院はクローン犬事業を通じて今年100億ウォン(約10億7600万円)程度の売り上げを予想している。しかし、儲けるために犬のクローニングをするのではないと明らかに一線を画した。非営利機関として他のプロジェクトを遂行するための研究資金づくりのための手段に過ぎないというのだ。…黄博士は最後に「人間生命の延長と価値ある人生のために意味あるレンガを積みたい。自分のせいで崩れたところにレンガを改めて積む心情で生きている」とし「2006年以後、『逆境と苦痛がない人生は生きている価値がない』という文を毎日午前に読みながら自分自身に『まだ終わっていない』と言い聞かせている」と話した。(韓国、「世界初の産業用クローン犬を生産…仏英からも技術研修に来る」 中央日報日本語版 2015年03月11日)

 

参考

クローン作製の夢

  1. 「バイオの悪童」は、クローンマンモスを実現できるか (WIRED 2015.04.27 BY NICK STOCKTON):”マンモスのクローン作成を夢見る科学者がいる。遺伝学界の悪童、黄禹錫(ファン・ウソク)だ。”

クローンビジネスの展開

  1. 世界最大のクローン動物工場、中国・天津にオープン予定 (WIRED 2016.01.20 BY SANDRO IANNACCONE):”2016年上半期中に、中国の天津に世界最大のクローン動物作製センターがオープンする。肉用牛や警察犬、競走馬を「取り扱う」予定だという。”
  2. 本当に大丈夫? 中国の動物クローン工場建設 ES細胞捏造の韓国教授とタッグで不安倍増(産経ニュース 2015.12.6):”中韓共同による世界最大の動物クローン工場建設計画が、物議を醸している。”

スワム生命工学研究財団の愛犬クローンビジネス

  1. 1千万円で愛犬「復活」 韓国研究所の“クローンビジネス” (YAHOO!JAPAN ニュース 2017年 1/12):”亡くなった愛犬がもう一度、自分の元に戻ってきたら? 何もかもそっくりなペットをもう1匹、そばに置くことができたら? クローン技術によってそれを実現させてくれる施設が韓国・ソウルにあるという。”
  2. 永遠に愛犬と共に?韓国のクローン研究所 (AFP BB NEWS 2016年07月13日):”韓国の首都ソウル(Seoul)西部でフェンスに囲まれた芝生の上を駆け回っている子犬たち。1匹の値段は10万ドル(約1000万円)もするが、少なくとも買い手たちはその価値をよく分かっている。 その芝生はペットクローン技術で世界をけん引するスアム生命工学研究院(Sooam Biotech Research Foundation)にある。同研究院は過去10年間、文字通り永遠に愛犬と暮らし続けたいと願う人々を相手にビジネスを行い、商業的な成功を収めてきた。”
  3. あなたの愛犬を1070万円でもう1匹-世界初のクローン工場 (Bloomberg 2014年10月23日 By Jessica Dean):”黄博士は今、中国・山東省の威 海市に8日間の突貫工事で建設した仮施設で最終チェックをしている。 ここで数時間内に、中国で初のクローン犬の出産が行われる。”

スワム生命工学研究財団の作製したクローン動物

  1. クローン警察犬2匹、サハ共和国の内務省に採用予定 ロシアの警察と保安局は、爆発物や麻薬の捜査においてクローン犬を実験的に使用する予定。(jp.sputniknews.com 2016年12月13日):”3匹のベルジアン・シェパードは、韓国の生物学者、黄禹錫教授がクローン技術を用いて作成された。1匹当たりおよそ1,000万円の価格が付けられているが、今回は人が住む地域としては世界で最も寒いとされるロシア連邦のサハ共和国の警察と公安局にプレゼントされたという。”
  2. コヨーテ複製に成功した黄禹錫氏「マンモスの復活が目標」(東亜日報 October. 18, 2011 ):”黄禹錫(ファン・ウソク)博士の研究チームが、コヨーテの体細胞をイヌの卵子に移植する体細胞核移植の技術で、コヨーテのクローンに成功した。”
  3. 「地に堕ちた英雄」、論文ねつ造の黄氏がコヨーテのクローン作製に成功 (AFP BB NEWS 2011年10月18日):”胚性幹細胞(ES細胞)に関する研究論文のねつ造などで有罪判決を受けた韓国の黄禹錫(ファン・ウソク、Hwang Woo-Suk)元ソウル大教授が17日、コヨーテのクローン8頭の作製に成功したことを明らかにした。”
  4. 黄禹錫博士チーム、チベタン・マスティフ17匹を複製 (中央日報日本語版 2008年06月18日):”スアム生命工学研究院は黄禹錫(ファン・ウソク)博士が中国の絶滅危惧種で、一般に獅子犬と呼ばれているチベタン・マスティフ17匹のクローニングに成功したと17日、発表した。 “

特許取得

  1. 黄禹錫氏のES細胞 韓国で週内にも正式登録 (聯合 ニュース 2016/11/15):”疾病管理本部は、黄氏側がNT―1を体細胞クローン技術によるES細胞として登録するよう求めて提出した関連資料を、専門家でつくる検証委員会で検討した結果、体細胞クローン技術で樹立されたES細胞株と見なす科学的な根拠はないと判断した。ただ、単為発生のヒトES細胞であるのは確かだとして、登録することにした。”
  2. 黄禹錫元教授が米国で特許登録「研究再開させてくれれば…」(中央日報日本語版 2014年02月12日):”黄禹錫(ファン・ウソク)元ソウル大学獣医学部教授が作ったNT-1幹細胞株(1番幹細胞株)が11日に米国で特許登録された。”

捏造事件に関する報道

  1. ソウル高裁、“幹細胞論文ねつ造”黄禹錫ソウル大教授の罷免は不当(中央日報日本語版 2011年11月04日):”‘幹細胞論文ねつ造’事件で06年に罷免された黄禹錫(ファン・ウソク)元ソウル大獣医科大学大学院教授(59)が罷免取り消し訴訟の控訴審で勝訴した。”
  2. 黄教授宅など26カ所を押収捜索 (東亜日報 January. 13, 2006):”黄禹錫(ファン・ウソク)ソウル大名誉教授が12日、押収捜索のためソウル市江南区論硯洞(カンナムグ・ノンヒョンドン)の自宅を訪れたソウル中央地検捜査官に、門を開けている。”
  3. 黄禹錫教授「論文の捏造、ミズメディが主導」(innolife.net2006/01/12):”黄教授は「チームワークと信頼を土台に、ミズメディの言葉をすべて信じた。2004年に成立された1回目のES細胞はパク・チョンヒョク研究員が、2005年の2・3回目のES細胞はキム・ソンジョン研究員が研究、報告した」とミズメディが操作に関与したことを主張した。”
  4. <2005年を反省します>真実知らぬまま「黄禹錫神話」作り(中央日報日本語版 2005年12月30日):” 「黄禹錫(ファン・ウソク)教授論文疑惑」から多くのことを自省させられます。マスコミも被害者だとは弁解しません。  2つの点を深く反省しています。第一に「黄禹錫神話」を作ることに加担した責任です。…2つ目は黄教授論文をめぐる論争が起こったとき、読者の皆さんを混乱させてしまった責任です。 “
  5. <ES細胞論文ねつ造の波紋>「ねつ造」どうして可能だったか(中央日報日本語版 2005年12月26日):”論文ねつ造の共謀の疑いを受けている人はピッツバーグ大に派遣されていたキム・ソンジョン研究員、黄教授チーム員であるソウル大獣医学部姜成根(カン・ソングン)教授と数人の研究員だ。 キム研究員は17日、ピッツバーグで行った記者会見で「黄教授の指示で幹細胞写真2個を11個に増やし、姜成根教授もその事実を知っている」と述べた。”

理研が研究者の無期雇用枠を拡大へ

読売新聞が報じたところに拠れば、理化学研究所は任期付き研究者を無期雇用に転換する制度を4月から導入することを決めました。PIだけでなく一般の研究者にも適用されるようです。

報道

  1. 理研、終身雇用を4割に…「任期付き」から選抜 (YOMIURI ONLINE 2017年01月08日):”日本最大級の研究機関・理化学研究所(理研)は、60歳の定年まで働ける長期雇用の研究者を、将来的に全体の4割に増やす方針を決めた。”

ネット上の反応

参考

  1. 卓越研究員候補者リスト:”開始初年度(平成28年度)は、849名の申請者(研究者)の内176名が卓越研究員候補者として認定されましたが、各研究機関との雇用調整が完了し、安定した研究環境を得た卓越研究員は83名に留まりました(平成28年10月末現在、下記のサイトより引用)。残りの93名については、今もなお来年度以降の職を得るために雇用調整を続けている状態ですが、未だ状況は不透明です。文部科学省発表によれば、平成29年度にも再度新たな形で各研究機関からポストを募り、雇用調整を行う事が可能とされています。しかし、卓越研究員候補者達が一体どのような研究を行っているのか、どのような人物達なのかについての一般向けの情報提供が行われていないため、各研究機関側としてもポストを提供するための検討材料に乏しいのが現実です。そのため、我々卓越研究員候補者リスト 発起人一同は、研究分野の垣根を越えて協議しながら、まずは卓越研究員候補者自身の氏名・採択課題名等をリスト化して一般公表する事に致しました。”
  2. 拡大する「日本の科学の空洞化」 (NHK NEWS WEB 2016年12月20日):”北森教授が若い研究者の間に「異変」が起きていると感じたのは、今から10年ほど前、博士課程に進んで研究者の道を選ぶ学生が大きく減ったのがきっかけでした。それまでは、毎年、数人が博士課程に進んでいたのが、急に誰もいなくなり、いてもせいぜい1人。大学生から修士課程を経て、これからというところで、就職の道を選ぶ学生が続出し始めたのです。… ことし11月から働く樽井寛さん(46)は、これまで、日本を代表する研究機関で成果を挙げてきましたが、今の立場は「アルバイト」、つまり非正規雇用です。安定したポストを探し続けていますが、なかなか見つからないと言います。…綱渡りな人生です。いい研究をしていても、もし、雇用がなくなると、研究者としての人生が途絶えてしまいます。”  ニュース内で紹介された一部の映像 ⇒
  3. 山形大学有機材料システムフロンティアセンター ニュース2016年12月13日:”山形大学は優秀な若手研究者を支援するため文科省が2016年度から始めた「卓越研究員」に4人が選ばれたと発表した。国立大学では東大(6人)、京大(5人)に次ぐ人数となる。日本経済新聞(東北版)2016年12月13日”
  4. 疲弊する研究現場のリアル 座談会 悪化する研究環境とポスドク若手研究者の無権利 研究者を非正規で使い捨て荒む研究現場、職業として崩壊しつつある研究職、ポスドク若手研究者は育休も産休もなく家族形成すら困難(KOKKO 第3号 November 2015):”一体こんな研究環境をつくって誰が得しているのかが、全然分からない。日本の国としても、研究成果が出ないということを含めて得していないですよね。誰も得する人がいないのに、荒んだ研究環境が続いているというところに絶望感を感じます。私はこういう状況を何とかしなければと言い続けて15年以上になりますが、なかなか明るい兆しが見えないというのが正直なところです。”
  5. 研究者の雇用 任期付(有期雇用)一辺倒から、定年制への揺り戻しの動き [雇用管理] (高井経営労務事務所 高井 利哉(特定社会保険労務士)2015-07-06):”日本で最初に研究者の任期制を取り入れたのは理研とされる。1986年に発足した「国際フロンティア研究システム」が1期5年、最長3期(15年間)までの雇用制度を導入した。世界の優れた研究者が行き交い新しい発想が芽生えるようにと、人材の流動性が議論される背景があった。理研はそれを先取りし、86年に29人を採用した。当時の任期付き研究者の比率は約6%だった。その後、拡大を続けて97年の任期付き研究者は533人と、定年制研究者の472人を上回った。現在では、任期付き研究者は2600~2700人までになり、研究者の9割近くを占める。(7月3日の日本経済新聞)”
  6.  若手研究者 描けぬ未来図増える「任期付き」雇用安定せず 「定年制に移行」理研が検討   ( 日本経済新聞 2015/7/3付    朝刊)  :”大学や公的研究機関で年数を限って雇用する「任期付き研究者」の数が増えている。人材の流動性を高めて組織を活性化する利点がある半面、若手の安定的な雇用を脅かしている弊害も指摘されている。理化学研究所が今春、任期付きから定年制に移行できる制度の検討を開始するなど、改善に向けた動きも出始めた。 大学など日本の研究機関は第2次世界大戦後、職員を定年まで雇う終身雇用制度を取り入れてきた。”
  7. 研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律の公布について(通知) 25文科科第399号 平成25年12月13日 (文部科学省)
  8. 改正労働契約法で国立大学の非正規雇用はどう変わるか?(「教育・研究系非常勤職員」編)(国立大学職員日記 / 2013-02-12)
  9. ポスドク若手研究者の雇用不安・パワハラ・長時間労働-「うつ病のような状態でいい研究できない」 (すくらむ 2011-10-03)):”一番切実な声は、今現在の職を失うのではないかという不安です。この問題は、雇用の財源自体が不安定で財源自体がいつ途絶えるかわからないという外部的な要因もあれば、もし今進めている研究に行き詰まり、この1年で論文が出なかったら来年の契約があるのだろうか? たとえ口約束で3年任期と言われていても、1年目、2年目で論文が出なかった場合にはどうなってしまうのだろうか?という不安もあります。また、今現在の研究プロジェクトに関しては成果が出せているけれども、プロジェクト終了後に次のポストがあるのかないのかという不安も多くのポスドクが感じています。ポスドクにとって最も大きな関心事の一つは正規雇用ポストの獲得です。(国立環境研究所労働組合「ポスドクアンケート」)”
  10. 労働問題としてのポスドク問題 (5号館を出て 2007年 08月 10日) :”ポスドク1万人計画というのは、その前に重点化された大学院で「需要と無関係に続々生産された行き場のない専門職予備軍」である博士が、とりあえず「失業者」になることを阻止するために考え出された政治的時間稼ぎだったのだと思います。事実、当時そうした議論がありました。とりあえずポスドクとしてでも雇っておかないと、すぐさま「失業博士問題」が浮上するからなんとかしなければならないという、当時の中曽根政権の危機感だったのでしょう。”
  11. 博士の就職難 科学技術の現場で 将来展望見えない (「しんぶん赤旗」2007年6月24日、7月1日掲載):”2006年3月の博士課程卒業者(博士号をとらずに満期退学した人を含む)は、1万5973人。90年の2・7倍に増えています。…首都圏の大学で講師を務める41歳のAさんは今年3月、任期切れのため退職するよう宣告をうけました。…好きで選んだ道です。20本以上の論文を書き、研究実績に自信をもっています。「これほど将来に不安を覚えながら研究を続けることになるとは思わなかった」といいます。同僚の准教授は「彼のような有能な人材の受け皿がないのはよくない」と話します。”
  12. 科学技術政策の変遷(科学技術基本法制定(平成7年)以降)(文部科学省)  平成8(1996)年度  ポストドクター等1万人支援計画 策定
  13. 今更だが大学院重点化について (一大学職員の備忘録 2015年12月26日):”大学院重点化とは、ざっくり言うと「大学院生を大幅に増やす政策」 です。2000年までに大学院定員を倍増させ、国内研究者の養成機関を充実させようという文科省による目標の下、東京大学が1991年に先陣を切りました。文科省の学校基本調査によれば、国公私立大学院在籍者数は、重点化着手前の85年度には69,688人だったのが、20年後の2005年には239,436人と、約3.5倍まで増加し、目標は達成することができました。因みに現在一部の大学では教員は学部でなく研究科所属となっているかと思いますが、それはこの大学院重点化による結果です。しかしこの重点化政策、大きく2つの問題が発生しました。”
  14. 大学院重点化の際に博士後期課程へ進んだ人たちへの支援 (発声練習 2008-03-25)
  15. 大学は、なぜ大学院生を増やしたいのか (5号館を出て 2007年 10月 14日)
  16. 九州大学移転問題・独立行政法人化問題・研究院構想に関する意見交換の広場 大学院の重点化 12校で打ち切り(中日新聞2000/01/29)  :”重点化された大学は、大学院の定員を大幅に増やすとともに、教官一人当たりの予算配分額も約二五%増す恩恵を受けた。教官の所属が変わるだけで、予算が大幅に増えるというおいしい話だったため、各国立大学が重点化を競っていた。”
  17. 東京大学の歴史 (UT-Life) :”1991年(平成3年)からは大学院重点化が始まり、学部での教育より大学院での教育に重きをおくようになりました。1998年(平成10年)には新領域創成科学研究科、2000年(平成12年)には情報学環・学際情報学府が設置されるなど、大学院の組織が数多く整備されています。2004年(平成16年)には、国立大学法人法の制定により「国立大学法人東京大学」となりました。”

関連投稿記事

  1. 研究者・科学者を目指すことの勧め、もしくは目指さないことの勧め:アカデミアにおける研究者のキャリアパスと雇用状況の過酷な現実 (March 20, 2016)
  2. 日本の科学研究の問題点~ブラック企業のような構造と研究者が抱える雇用不安~(May 29, 2015)

TWITTER

Alpha Goが日中韓のトップ棋士らに60戦60勝

2016年12月29日から31日にかけて韓国のインターネット囲碁サイト「Tygem(東洋囲碁)」にMagisterというIDの”棋士”が突如現れ、中国の柯潔九段や韓国ランキング1位の朴廷桓(パク・ジョンファン)九段ら世界トップ級棋士と対局し30戦全勝しました。その後、中国の囲碁サイト「野狐囲碁」にMasterというIDで出現し、トップ棋士らとさらに30戦を戦い、合わせて60戦60勝としました。

中央日報日本語版や人民網日本語版が報じた、MagisterやMasterと対戦したとされる棋士

MagisterとMasterの正体は実は進化したアルファ碁(Alpha Go)だったことを、ハサビス氏がツイッターで明らかにしました。今後の公式戦に備えて、インターネット上でテストを行っていたそうです。

棋士らの反応:

本因坊文裕(井山裕太九段):「強いの一言。中央のとらえ方で、人間との感覚の違いを感じた」 (世界トップ連破、実は「アルファ碁」の改良版 毎日新聞2017年1月5日
大橋拓文六段 「人間では理解できない手が30手以内に出てくる。しかし、後にそれが良い場所になってくる不思議、マジックのようだった」 (プロ棋士はもはや囲碁AIに勝てない 進化型アルファ碁「Master」の衝撃 J-CASTニュース1月6日(金)17時20分)

報道によっては61戦60勝としていますが、その事情はインターネットコネクションの中断による1引き分けでした。

「マスター」にとって唯一「未攻略」だった対局が4日午前、陳耀燁棋士との間で行われ、わずか数手打っただけで陳耀燁棋士のネット接続が切断し、システムによって「引き分け」と判定された。同日午後、両者は再び対局に臨み、「マスター」は第55局も連勝した。(人民網日本語版 2017年01月05日15:43

参考

  1. 60連勝を果たす謎のネット棋士「マスター」、正体はアルファ碁進化版(人民網日本語版 2017年01月05日15:43):”破竹の勢いでこの一週間連勝を続けている謎のネット棋士「マスター」が4日夜、中国のトップ棋士・古力九段との第60局を控え、自分が昨年、韓国のトップ棋士李世石(イ・セドル)九段を破った人工知能(AI)囲碁ソフト「アルファ碁」の進化版であることを明かした。「マスター」が自分であると明かした「アルファ碁」開発チームの首席デザイナー黄士傑博士は、「今回の対戦がテスト戦での最後の戦いとなるだろう」と話した。この「最終戦」は、古力九段の2目半負けの結果に終わり、「マスター」は60連勝という前代未聞の偉業を成し遂げた。新華社が報じた。”
  2. Google’s AlphaGo AI secretively slays top human Go players (人民網英語版 People’s Daily Online 06:41, January 05, 2017):”Since December 29th, an unknown Go player named “Master” has annihilated some of the best players in the world on the online Tygem platform in accelerated, time-controlled matches. As of now, the “Master” has won 60 wins of 61 games, including one tie. Earlier today, AI lab DeepMind founder Demis Hassabis admitted that “Master” is an improved version of Google’s AlphaGo.”
  3. <囲碁>世界最強の柯潔九段にも勝った…さらに強くなったアルファ碁「60戦全勝」(中央日報日本語版 2017年01月05日15時25分):”グーグル・ディープマインドの人工知能(AI)囲碁プログラム「アルファ碁」がオンラインで世界最高棋士を相手に全勝したことが確認された。”
  4. プロ棋士はもはや囲碁AIに勝てない 進化型アルファ碁「Master」の衝撃 (J-CASTニュース1月6日(金)17時20分):”「囲碁AI(人工知能)はプロ棋士の能力を遥かに超えてしまった。さらに進化が進み追いつくことはできないだろう」。囲碁AIにくわしいプロ棋士の大橋拓文六段はJ-CASTニュースのインタビューにそう語った。”
  5. グーグルAI、囲碁トップ棋士に60戦全勝 神の一手は人から奪われた? (ニューズウィーク日本版 2017年1月6日(金)06時15分):”グーグルのAI開発の拠点であるDeepMind社の共同創立者デミス・ハサビスが5日、年末年始に「AlphaGo」の新バージョンで世界のトップ囲碁棋士と対局したことをツイッターで明らかにした。”
  6. Google’s AlphaGo Is Slaying Unsuspecting Nerds Online (GIZMODO 1/4/2017 3:05pm By George Dvorsky)
  7. 謎の囲碁マスター、正体は人工知能「AlphaGo」の進化版だった (朝日新聞デジタル/Huffington Post 2017年01月05日 10時48分 JST):”ここ数日間、ネット上の囲碁サイトにハンドルネーム「Master(マスター)」なる棋士が参戦し、非公式ながら世界トップ級の棋士とみられる対戦相手を次々に破った。各国の棋士たちや囲碁ファンが騒然とするなか、その正体が、韓国の世界トップ棋士の一人を昨年破った「アルファ碁」の進化版であると明らかにされた。”
  8. アルファ碁が進化 「匿名」対戦でトップ棋士ら撃破 (日本経済新聞 2017/1/5 17:49):”米グーグル傘下のディープマインド社が開発した人工知能(AI)の囲碁ソフト「アルファ碁」改良版が、世界トップ級棋士らとインターネットで対局し、次々と破っていたことがわかった。”
  9. 野狐囲碁
  10. 東洋囲碁
  11. Go Ratings
  12. 中国・柯潔9段「アルファゴは完璧、私も敗れる可能性大」 (東亜日報 March. 14, 2016) :”中国囲碁界の第一人者、柯潔(19)9段が12日、アルファゴとの第3局でも李世ドル(イ・セドル)9段が敗れると、「私も負けるかも知れない」と言った。柯9段は9日、李9段がアルファゴとの最初の対局で敗れた時は、微博(中国版ツイッター)に「アルファゴは李9段に勝ったが、私に勝つことはできないだろう」とつぶやき、自分の勝率を約60%だと自信満々だった。アルファゴの第3局について、「ほとんど完璧だった。仕損じたところはなかった。同じ条件なら私も敗れる可能性が非常に高い」と評価した。柯9段をインタビューした人民網は、「最初の対局とは違って第3局を見た後、柯9段が若干動揺している」と伝えた。”
  13. 韓国人プロ棋士イ・セドル(Lee Sedol)九段と人工知能「アルファ碁」(AlphaGo )との戦い:グーグルディープマインドチャレンジマッチ2016年3月9日ー15日
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子供の人気職業ランキング

第一生命保険が、小学生以下の子供を対象に調査した「大人になったらなりたい職業」人気ランキングを発表しました。男子の場合、サッカー選手や野球選手は安定した人気がありますが、「学者・博士」も意外と人気があり、2016年は2位にランクインしています。

professionranking(男の子に人気の職業ランキング第一生命のデータの一部をグラフ化)

参考

  1. 大人になったらなりたいもの (第一生命)
  2. 男児の夢、学者・博士が2位=ノーベル賞効果で急浮上-第一生命調査(時事ドットコム 2017/01/06):”第一生命保険が小学生以下の幼児・児童を対象に行った2016年度の「大人になったらなりたいもの」アンケート調査によると、男の子のランキングで「学者・博士」が前年度の8位から2位に急浮上した。同社は「日本人がノーベル賞を3年連続で受賞し、憧れを抱く子が多いためではないか」と分析している。”

研究プレゼンテーションの極意

大学院生や研究者が必ずやらなければならないこと、その一つが研究成果の口頭発表です。ちゃんとカリキュラムを組んでプレゼンテーションのやり方を教えている大学院は少ないため、博士号を取ったあとでも自分のプレゼンに自信が持てずに悩む人が多いのではないでしょうか?

そこで、プレゼンをどう組み立てるか、どうしゃべるかということに関して参考になるネットの記事などを紹介します。英語での発表にはそれなりの難しさが伴いますが、トークをいかに組み立てるかということに関して言えば、英語と日本語による違いはありません。

学会発表やセミナーでのトークにはある程度決まった型というものがあります。挨拶、背景の説明、仮説やキークエスチョンの提示、実験方法の説明、実験結果、結論、まとめ、将来展望といったことです。しかし、これらを順序良く無難にこなせばプレゼンが成功するかというと、そうとも限りません。では、研究者のプレゼンにおいてもっともっと大事なことは何でしょうか?

日本でプレゼンの達人といえばこの人、ジャパネットたかたの(元)社長の高田さんのプレゼンが非常に参考になるそうです。

ジャパネットたかた流プレゼン法

ジャパネットたかた社長に学ぶ学会発表の極意(こんどうしげるの生命科学の明日はどっちだ!?)

内容を簡単に紹介すると、

極意1:対話による共感の成立:学会の聴衆や査読者が疑問を感じそうなところで、自分で突っ込みを入れて、それに答える。
極意2:研究に対する信頼を得る。そのためには適切なコントロール実験の結果をわかりやすく呈示する。
極意3:演者が推定した仮説を伝え、それを証明する実験を提示し、仮説が正しい場合の結果の予測を提示する。それから、結果を見せる。このようにして、そのデータが出た時の演者の感動を伝え、感動を共有する

ということになります。これとは多少違った観点からプレゼンの極意を具体的に語っている山中伸弥氏の記事も必読です。

山中伸弥教授のプレゼン術

山中伸弥教授の「人生を変えるプレゼン術」〜とにかくココを意識せよ (現代ビジネス)

簡単にまとめると、

  1. プレゼンの重要性を認識すること。実験して結果を出すのは研究者の仕事の半分に過ぎない。重要な残り半分は、研究成果を人に伝えること。
  2. 自分のプレゼンをビデオに録画して、客観的に見直すトレーニングがお勧め。
  3. スライドに書いたことはしゃべる。しゃべらないことは書かない。
  4. スライドとスライドの間にはつながりが必要。つながり、流れを意識したしゃべりを。
  5. 論理的な流れを意識してスライドをつくり、プレゼンを準備する。それは普段の研究の進め方の改善にも役立つ。

ということでしょうか?是非、本記事を熟読してプレゼンの極意をマスターしてください。もう一つの記事「山中伸弥教授を「1億円プレーヤー」に変えた人生最大のプレゼン」もお勧め。こちらの記事では、聴衆が誰なのかを考えてプレゼンを用意することの重要さが語られています。

もう少し具体的な組み立てに関するチュートリアルも紹介しましょう。

YOUTUBEで学ぶプレゼンの組み立て

イントロダクションの構成のしかた
A 10-15 minute scientific presentation, Part 1: Introduction

まず、受け入れられている事実(Context)を話し、次に、問題点(Complication)を話し、クエスチョン(Question)を設定し、仮説(Hypothesis)を立ててそれを紹介するという流れ。

遺伝研メソッドで学ぶプレゼンの構成法

英語のプレゼンテーションのやり方に関しては多数の書籍が刊行されています。なかでも、トークをどう組み立てるかに関して基本的な考え方を示してくれる興味深い本として「遺伝研メソッドで学ぶ科学英語プレゼンテーション[動画・音声付き]」(出版社:dZERO)があります。

プレゼンの最初の部分はイントロダクションです。イントロダクションの目的は何でしょうか?この遺伝研メソッドによれば、それは、「聴衆をキークエスチョンに導くこと」です。ちなみにキークエスチョンというのは、トークの結論を「答え」としたときの、それに対応する「質問」です。キークエスチョンがトーク全体を貫く背骨になるように話を組み立てれば、聴衆は最後までついてきてくれるというわけです。

  1. 研究者のための科学英語プレゼントレーニング 出張講習も

サイエンス誌のウェブサイトにも役に立つ記事があります。

Gosling & Noordamさんらの方法

Mastering Your Ph.D.: Giving a Great Presentation By Patricia Gosling, Bart Noordam Oct. 20, 2006

ここで述べられていることを要約すると、

  1. しっかりと準備すること
  2. 聴衆を知ること
  3. 自分ひとりで、あるいは少人数を前にしてちゃんと声に出してリハーサルを行うこと
  4. 3回伝えること(最初にこれから話すことが何かを話し、次に、話すべき内容を話し、最後に、今話したことが何だったのかを話す)
  5. 声の調子、間のとりかた、アイコンタクトなどにも気を配る

プレゼンは準備が全て

準備段階で原稿を書いて読んで練習するのは大切なことですが、本番で原稿を読み上げるのは望ましくありません。学会発表はコミュニケーションの場だということを理解すべきです。

世界の指導的な数学者の講演は、さすがと思わせる説得力があるが、彼らの多くは、ちょっとした講義のためにもテキストを作り、それを憶えて、あたかもアド・リブのような印象を与えながら、すじ書き通り首尾一貫した話をしていることを注意しておきたい。(小松彦三郎 新・数学の学び方 小平邦彦 編 岩波書店 2015年 138ページ)

参考

  1. ジャパネットたかた社長に学ぶ学会発表の極意(こんどうしげるの生命科学の明日はどっちだ!?)
  2. 山中伸弥教授の「人生を変えるプレゼン術」〜とにかくココを意識せよ (現代ビジネス)
  3. 1億円プレーヤー」に変えた人生最大のプレゼン (現代ビジネス)
  4. Q&Aを楽しもう! その1:質問をしよう – 国立遺伝学研究所 (PDFリンク)
  5. 遺伝研メソッドで学ぶ科学英語プレゼンテーション[動画・音声付き]感じる力、考える力、討論する力を育てる 出版社:dZERO 著者:平田 たつみ 、タジ・ ゴルマン、広海 健 発売日 2016/01/28
  6. 英語のパワーポイント・プレゼンテーション~国際学会で発表する学生・研究者対象~:”話し言葉の発表原稿を用意して、暗記しよう。スライドだけで話すことはとても難しいので、初めての人は必ず作ろう。 スライドに書いてることを文章に直すと作りやすいです。 ただし、発表中原稿は見ないようにしてください。原稿を読んでいるとカッコ悪いです。少なくとも5回は、時間を測って声を出しながら練習する。話しにくいところ、忘れやすいとこがわかってくるため、そこを修正しつつ練習しよう。”
  7. How to Give a Great Scientific Presentation  Posted on February 22, 2011 by MESA Committee
  8. How to give a dynamic scientific presentation — Convey your ideas and enthusiasm – and avoid the pitfalls that put audiences to sleep By Marilynn Larkin Posted on 4 August 2015
  9. Scientific Presentation Skills. Melissa A. Hines, Dept. of Chemistry (PDF) 疑問⇒答え⇒さらなる疑問⇒答え⇒さらなる疑問 というプレゼンが効果的
  10. Ten Secrets to Giving a Good Scientific Talk Mark Schoeberl and Brian Toon

 

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人工知能研究における革命 「深層学習」

〔サイエンスZERO〕人工知能の大革命!ディープラーニング〔Science Zero〕

【SoftBank World 2016】 人工知能は人間を超えるか 松尾 豊 氏

 

Demis Hassabis: Artificial Intelligence and the Future

参考

  1. 韓国人プロ棋士イ・セドル(Lee Sedol)九段と人工知能「アルファ碁」(AlphaGo )との戦い:グーグルディープマインドチャレンジマッチ2016年3月9日ー15日
  2. Silver et al., Mastering the game of Go with deep neural networks and tree search. Nature 529,484–489(28 January 2016)

 

Deep Learning for Computer Vision (Andrej Karpathy, OpenAI)

Foundations and Challenges of Deep Learning (Yoshua Bengio)

Nuts and Bolts of Applying Deep Learning (Andrew Ng)

Deep Learning and the Future of AI | Yann LeCun | Talk 1/2

Prof. Geoff Hinton – Deep Learning

Deep Reinforcement Learning (John Schulman, OpenAI)

参考

  1. Yann LeCun, Yoshua Bengio & Geoffrey Hinton. Deep learning. (REVIEW) Nature 521:436-444 (28 May 2015) doi:10.1038/nature14539 (Geoffrey E. Hinton’s Publications)

東ロボくん、東大合格をあきらめる

報道によれば、2022年春までに東京大学に合格することを目指してきた人工知能「東ロボ」君が、東大合格を諦めたことがわかりました。

報道

  1. 人工知能「東ロボくん」 東大を断念(NHK NEWS WEB 11月8日 18時09分):”これまで順調に成績を伸ばしてきた東ロボくんですが、教科書などの情報と検索技術によって正解にたどりつく世界史などは得意な一方、文章の意味を理解して、問題文を読み解く「読解力」がなかなか向上しませんでした。このため国語や英語などの科目では、今後の成績向上に限界があり東大合格の水準にあたる偏差値70以上にまで成績を上げることは現在の技術では難しいと判断したということで、ことしで東大合格は諦め、“進路変更”を決めました。”
  2. 人工知能「東ロボくん」が東大合格を断念(産経ニュース2016.11.8 22:02更新):”国立情報学研究所の新井紀子教授は「東ロボくんは高校生の8割より良い成績になったが、読解力に問題があり(東大合格に必要とされる)上位1%以上にはなれない。今後は記述式試験を解くための研究などに集中したい」としている。”

関連記事

  1. 「ロボットは東大に入れるか」の東ロボくんが模擬試験を受験~人間がロボットに追い抜かれる日 November 16, 2015
  2. ロボットは東大に入れるか。Todai Robot Projectの社会的影響 November 27, 2013
  3. 東ロボくん、センター試験代ゼミ模試、代ゼミ東大模試で「なりふり構わぬ行為」November 25, 2013 
  4. 現在偏差値45の「東ロボ君」が東大に合格できる日は来るのか? November 23, 2013

参考

  1. ロボットは東大に入れるか。Todai Robot Project ”「ロボットは東大に入れるか」は、2011年より大学共同利用機関 情報・システム研究機構 国立情報学研究所のグランドチャレンジプロジェクトとして始まりました。その予算は、国立情報学研究所の研究資金によって運営されています。”

参考(予備校)

  1. 「第一志望は、ゆずれない。」駿台予備学校
  2. 「志望校が母校になる。」代々木ゼミナール
  3. 「自分のトップ校へ行こう。」栄光ゼミナール
  4. 「自分の可能性と勝負する。」河合塾
  5. 「何を学ぶか。誰に学ぶか。」東進ハイスクール
  6. 「本気になれば、世界だって変えられる。」早稲田アカデミー
  7. 「なんで、私が東大に!?」四谷学院
  8. 「現役合格を保証します。」城南予備校
  9. 「応募資格 東京大学進学を志望する生徒」N塾
  10. 東大合格シェアハウス
  11. 東京大学合格に絶対必要なこと「志望校はゆずらない。東京大学に合格を目指す人は、まず第一に志望校を東京大学に決めなければなりません。」東京大学受験専門 家庭教師センター
  12. 「勉強ができる、できないはひとえに文章を読む力と、理解力にかかっていると言っても過言ではありません。」予備校 みすず学苑

 

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大隅東工大栄誉教授、太田遺伝研名誉教授らに文化勲章

2016年10月28日に政府により、2016年度の文化勲章受章者と文化功労者が発表されました。

文化勲章受章者

大隅良典氏(71) 細胞生物学
太田朋子(83) 集団遺伝学
草間弥生(87) 絵画・彫刻
中野三敏(80) 日本近世文学
平岩弓枝(84) 小説
船村徹(84) 作曲

文化功労者

福山秀敏(74) 物性物理学
古井貞煕(71) 音声工学
篠崎一雄(67) 植物分子生物学
西尾章治郎(65)情報科学・学術振興
岩井克人(69) 経済学
岡井隆(88)  短歌
小野喬(85)  スポーツ
小松和彦(69) 民俗学
小山やす子(92)書(仮名)
尾崎邑鵬(92) 書(漢字)
白石隆(66)  地域研究・国際交流
田中信昭(88) 指揮
辻惟雄(84)  美術評論・文化振興
杉良太郎(72) 俳優・歌手・国際交流
津村節子(88) 小説

参考

  1. 大隅氏らに文化勲章、文化功労者に杉良太郎氏ら(読売新聞 YOMIURI ONLINE 2016年10月28日 11時31分):”政府は28日、2016年度の文化勲章受章者6人と文化功労者15人を発表した。”
  2. 太田朋子氏文化勲章 三島・遺伝研名誉教授、自然科学で女性初(静岡新聞 2016/10/28 12:32):”太田氏は自然科学分野で女性として初めての受章となる。”

アップル社のノートパソコン マックブックプロが一新

2016年10月27日(現地時間)にアップル社は新しいマックブックプロを発表しました。

キーボード最上部にあったファンクションキーは廃止され、タッチバー(Touch Bar)に置き換えられました。これは、使うアプリケーションなど状況に応じて機能が割り当てられる優れもの。

New Apple MacBook Pro first look

サイズも従来のものよりも小さく、軽くなりました。また、トラックパッドが従来の2倍の大きさで、ずいぶん広くなっています。指紋センサー「Touch ID」も搭載されました。外部インターフェイスはThunderbolt 3(USB-C)。

Apple Macbook Pro with Touch Bar -Hands On  (Digital Trends)

Touch BarとTouch IDが搭載されない低価格な13インチバージョンも用意されています。RAMのサイズは最上位機種でも16GBどまりで、使用目的によってはちょっと物足りない感じで、がっかりした人も多かったようです。アップル社マーケティング・チーフのフィル・シラー氏は、16GB以上のRAMだと電力を消費しすぎるためとその理由を説明しています。

Many customers have been wondering why Apple didn’t bump up the maximum RAM to 32GB, including MacRumors reader David, who emailed Apple to ask and got an explanation from marketing chief Phil Schiller.

Question from David: The lack of a 32GB BTO option for the new MBPs raised some eyebrows and caused some concerns (me included). Does ~3GBps bandwidth to the SSD make this a moot issue? I.e. memory paging on a 16GB system is so fast that 32GB is not a significant improvement?

Schiller’s answer: Thank you for the email. It is a good question. To put more than 16GB of fast RAM into a notebook design at this time would require a memory system that consumes much more power and wouldn’t be efficient enough for a notebook. I hope you check out this new generation MacBook Pro, it really is an incredible system.(MacRumors)

参考

  1. Apple(日本) マックブックプロ商品説明ウェブページ
  2. 13インチモデルはMacBook Airよりも薄い アップルが新型「MacBook Pro」を発表、新しい操作スタイル「Touch Bar」と指紋センサー「Touch ID」を搭載(価格.com マガジン 2016.10.28 三浦善弘)
  3.  Appleが新「MacBook Pro」を発表、タッチディスプレイ「Touch Bar」搭載(IT  PRO 鈴木 英子=ニューズフロント  2016/10/28)
  4. Apple Special Event October 2016 (HD) | Macbook Pro 2016 (Streamed live on Oct 27, 2016) (動画:1時間19分52秒 新しいマックブックプロの紹介は、28分47秒から)
  5. アップルの噂話はどこが信頼できるか(マイナビニュース 海老原昭 2015/08/21)

東日本大震災津波訴訟 大川小児童の遺族が勝訴

20180427 追記(高裁の判断)

報道

  1. 児童の遺族「未来の命を救える判決」 大川小・津波訴訟 (山本逸生、窪小谷菜月 岡本進 朝日新聞DIGITAL 2018年4月27日03時35分) 84人が犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校の津波訴訟で、仙台高裁は校長や市教育委員会による防災体制の不備を厳しく指摘し、組織的な過失を認めた。
  2. 大川小津波訴訟 遺族、2審も勝訴「事前防災に不備」(毎日新聞2018年4月26日 14時10分 最終更新 4月27日 02時48分) 東日本大震災の津波で児童と教職員計84人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校を巡り、児童23人の遺族が市と県に約23億円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は26日、1審・仙台地裁判決より一部の原告の慰謝料を見直すなどして損害額を約1000万円増額し、14億3617万円の賠償を市と県に命じた。

参考

  1. 「山へ逃げよう」の大川小児童証言は“精査中”!? 教員の会話は「検証委とりまとめ案」に盛り込まれず (池上正樹:ジャーナリスト DIAMOND online 2013.10.23) 最も問題なのは、その後の<移動においては地域のお年寄りが先頭を歩き、そのあとに児童が続いていたため、かなりゆっくりとした速度で移動をしていたようである>という描写だ。 先頭集団にいた生存児童は、「校庭にいたときから女性教諭がずっと先導していた。先生以外に、大人の姿はなかった」と証言している。
  2. 唯一生存した男性教諭の報告に大きな矛盾!? 大津波後の大川小生存者を見た夫妻の証言 (加藤順子 DIAMOND online 2012.9.5) 「A先生の報告書は、最初から全部嘘なんです。だいたい9割方は嘘だから。なんで嘘ついたんだかは、わかんないですけども」 私たちが訪れた目的を説明すると、工場の社長は、市教委が作成した生存教諭の聞き取り書について、いきなり、そう切り出した。「A先生は、何も濡れていないから和室にそのまま通した。Bくんの靴は、濡れていたね。靴下を脱がせて、そのまま履いているわけにはいかないということで履き替えさせた。濡れた場所はわからないですよ。おそらく歩いてくるのに、この辺も全部泥だらけだったから。Bくんは、濡れて汚かったね」
  3. 中妻じょうた 板橋区議会議員‏ @nakatsuma 7〜8mの津波が来ていることはラジオでわかっており、子どもを引き取りに来た親が必死にそれを訴えたのに動かなかったのはなぜか。なぜ教頭は川の様子を見ることを指示せず自分で見に行ってしまったのか。教頭や校長への昇進基準は何か。トップとして何をすべきか理解してトップについているのか。21:23 – 2012年7月19日
  4. 中妻じょうた 板橋区議会議員@nakatsuma 山を登ろうと言わなかったのは、校長不在時の責任者であった教頭と一番古株の教師。教頭はなぜか自分で川の様子を見に行ったりしてしまい、統率の動きをしていなかった。一番古株の教師が「校庭が安全だからここに留まれ」と主張し、暖をとるたき火をやるためにドラム缶2つを校庭に持ち出していた。10:49 – 2012年7月19日
  5. 破棄されたメモの中に“大川小児童の重大証言”も? 大きく揺らぐ石巻市教委が作成した公文書の信憑性 (池上正樹:ジャーナリスト DIAMOND online 2012.7.18) 「子どもたちの証言として、聞き取り調査で『山に逃げた方がいい』とか『ここ(校庭)にいたら死んでしまう』とか、言っている(ものがある)。ただ、5月の聞き取り調査記録の中には、(その証言が)一切ないんですよ。(市教委は)メモを廃棄したから、今となっては証拠がないっていう結果だと思うんです。聞き取り調査の中になければ、教育委員会としては、私たちに説明できませんよね?」
  6. 大川小学校児童津波被害国賠訴訟を支援する会

 


2011年3月11日の東日本大震災で起きた津波により宮城県石巻市立大川小学校の多数の児童と教職員が亡くなりました。地震発生後、45分間も児童を校庭にとどめ、走れば1分の距離の学校の裏山に避難させなかったのは学校側の安全配慮義務違反だとして遺族が訴えていた裁判で、仙台地裁は学校側の過失を認め、市と県は計約14億2600万円を原告に支払うよう命じる判決を2016年10月26日に言い渡しました。

  • 午後2時46分 地震発生 大川小の教職員は約45分間、児童に校庭で待機するよう指示
  • 午後3時半ごろまでには、石巻市の広報車が津波が松林を越えてきていることを告げながら避難を呼びかけ。
  • 午後3時37分ごろ 高さ8メートルを超す津波にのまれ児童74人と教職員10人の計84人が死亡・行方不明。助かったのは男性教務主任1人と児童4人。

児童は津波により死に至ったのではない。学校にいたから死ななければならなかった。もし、先生がいなかったら、児童は死ぬことはなかった。本件は、明らかに人災である。大川小遺族が「明らかに人災」と提訴 総額23億円の損害賠償請求 DIAMOND ONLINE 大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ真実~【第38回】 2014年3月10日

R_20141128-2201-f-NHKスペシャル 東日本大震災「大川小学校・遺族たちの3年8か月」[字]-hl-NHK総合1・東京

市側の主張

  • 学校は海岸まで約4キロあり、津波浸水被害の想定域外だったため津波到達を予測できなかった
  • 裏山は崩落や倒木などの危険があった
  • 同小校庭より約6メートル高い北上川の橋のたもとを避難先に選んだことは合理的

 

遺族の主張

  • 地震発生後に大津波警報の防災無線が流され、保護者が津波警報発令を教員に伝えたことから、津波は予測できた
  • 児童を校庭で約45分間待機させた
  • 校庭から小走りで1分程度の裏山に児童を退避させるべきだった
  • 予想された津波の高さは6~10メートルだったのに、標高7メートル余りしかない北上川の堤防付近の交差点に避難しようとした

 

参考

  • 大川小学校事故検証報告書(石巻市)
  • 大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~(DIAMOND ONLINE)
  • 大川小学校児童津波被害国倍訴訟を支援する会:”あの日大川小の子どもたちを救うためには何が足りなかったのか、有識者会議の議事録や最終報告をいくら読んでも答えが書いてありません。市教委も国や県に実に表面的な報告しかしていません。”
  • 生存者14歳少年が証言する3・11大川小の過ち(女性自身 2014年03月15日):”「おい(俺)は、てっきり山に行くと思っていたけど、もう進んでいたので、『まっ、いいか』って。公民館の前あたりに来たとき教頭先生が戻ってきて、『津波が来たので、早く移動してください』と言われて、小走りで山沿いの道を、民家の間を抜けて県道へ出ようとした。そのとき、波がこぼれてくるのが見えて。家が爆発したと思って、砂煙がパーッと上って、なんだかわかんないけど、『逃げなきゃ』と思って、逆戻りしていた」”

 

書籍

  1. 『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』 池上正樹, 加藤順子 2012年10月24日 青志社

 

報道

  1. 大川小学校の津波訴訟 石巻市などに14億円余の賠償命令(NHK NEWS WEB 10月26日 18時08分):”東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市の大川小学校の児童の遺族が訴えた裁判で、仙台地方裁判所は「市の広報車が避難を呼びかけたのを教員らが聞いた時点で、津波が到達する危険を予測できた」と指摘して、石巻市などに対し原告全員に14億円余りの賠償を支払うよう命じました。”
  2. <大川小訴訟>石巻市と県に14億円賠償命令(河北新報 10月26日(水)15時16分配信):”東日本大震災の津波で死亡・行方不明になった宮城県石巻市大川小の児童23人の19遺族が市と宮城県に23億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、仙台地裁(高宮健二裁判長)は26日、学校の責任を認め、計約14億2660万円を支払うよう市と県に命じた。”
  3. 大川小訴訟、14億円賠償命令 津波襲来「予見できた」(朝日新聞DIGITAL 船崎桜 2016年10月26日15時44分):”東日本大震災の津波で74人の児童と10人の教職員が死亡・行方不明となった宮城県の石巻市立大川小学校をめぐり、児童23人の遺族が石巻市と宮城県に計23億円の損害賠償を求めた訴訟で、仙台地裁(高宮健二裁判長)は26日、市と県に約14億円の賠償を命じる判決を言い渡した。”
  4. 学校側に過失、14億円賠償命令=管理下の児童、津波で犠牲-大川小訴訟・仙台地裁(時事ドットコムニュース 2016/10/26-19:27):”東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校の児童74人のうち、23人の遺族が、市と県に計23億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、仙台地裁であった。”

ノーベル物理学賞 小柴博士の科学財団が解散へ

2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊 東京大特別栄誉教授(90)がノーベル賞賞金を含む4,000万円、それに加えて、浜松ホトニクス社長の晝馬輝夫氏個人からの6,000万円、合わせて1億円を基本財産として2003年に財団法人平成基礎科学財団(2011年4月より公益財団法人)が設立されました。

小柴 昌俊博士が理事長となり、日本の基礎科学の振興を目的として設立された財団ですが、来年3月末に財団が解散することになりました。財政難と理事の高齢化が解散の理由として挙げられています。

賛助会員になってもらった地方公共団体に人口一人当たり1円に相当する金額を寄付してもらう「一人一円運動というアイデア」などにより財政を賄ってきましたが、地方自治体の財政が逼迫している状況で賛助会員収入が減り、将来の運営の見通しがつかなくなったそうです。

これは、わが国の基礎科学・芸術等の非営利の文化事業が、その財源を主として国からの財政支援に依存しており、欧米諸国と異なり文化的事業に寄付する慣行が社会的に未だ定着していないこと、このような慣行を確立するための法整備が遅れていることに根本的な原因があると存じます。(平成基礎科学財団解散のお知らせ より)

sanjo_suii(「平成基礎科学財団解散のお知らせ」のデータをグラフ化)

ちなみに2016年度の地方自治体の会員数は、岩手県、富山県、鳥取県、飛騨市、豊橋市、横須賀市、杉並区の7団体にまで減っていました。

公益財団法人平成基礎科学財団の解散は、2016年3月の理事会において小柴昌俊理事長により提案され、理事会および評議員会による検討の末、決定しました。2016年度の事業は平常通り行われ、2017年3月末をもって財団の一切の事業が停止することになります。

財団がこれまで行ってきた事業の内容は、
1.幼児、小・中・高校生の自然科学への興味と関心を高め、科学的な能力の育成を図ることを目的とした小柴昌俊教育賞の授与、
2.素粒子物理学分野の実験または理論研究で優れた業績をあげた研究者の顕彰を行なう戸塚洋二賞・折戸周治賞の授与、
3.高校生・大学生を対象とし全国各地で開催した 「楽しむ科学教室」 、
4.「楽しむ科学教室」実録DVD教材の作製と配布
などです。

基礎科学の研究・教育の振興のために高校生と大学生を対象に主催された「楽しむ科学教室」講演会の記録

  • 第101回 2016年12月11日(日) 「宇宙線がつくるニュートリノを調べる」~ニュートリノの質量の発見~ 梶田 隆章先生  東京大学特別栄誉教授、東京大学宇宙線研究所 所長
  • 第100回  2016年11月20日(日) 「脳はいかにして数学を生み出すのか」 ~脳の数理・言語機能を考える~ 武田 暁先生  平成基礎科学財団理事、東京大学・東北大学名誉教授
  • 第99回 2016年10月30日(土) 「タイムマシンで宇宙の誕生を見に行こう」 藤本 順平先生 高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所 講師
  • 第98回 2016年8月6日(土)  「アインシュタインの相対性理論とビッグバン宇宙」 佐藤 勝彦先生 日本学術振興会 学術システム研究センター長
  • 第97回 2016年5月22日(日) 「ビッグバン以前の宇宙を探る」 ~宇宙背景放射観測の挑戦~  羽澄 昌史先生 高エネルギー加速器研究機構教授、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構特任教授、総合研究大学院大学教授
  • 第96回 2016年3月12日(土) 「ちからと宇宙」 ~きれいな形や運動は、何から生まれるのか~ 海部 宣男先生 国立天文台名誉教授
  • 第95回  2015年12月5日(土)  「光について知り、考えよう」~基礎的性質から最先端レーザー技術まで~  酒井 広文先生 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻 准教授
  • 第94回  2015年10月24日(土) 「量子の正体」 ~さまざまに形を変える量子~ 小坂 英男先生 横浜国立大学 大学院工学研究院 教授
  • 第93回  2015年9月13日(日)  「真空」の内部を素粒子と宇宙で見る」 ~観測方法と結果の謎~ 荒船  次郎先生 東京大学名誉教授、大学評価学位授与機構名誉教授
  • 第92回  2015年8月1日(土)  「振動と文脈から探る脳」 ~脳と心の働きを理解する~  虫明  元先生  東北大学医学部生体システム生理分野 教授
  • 第91回  2015年5月24日(日)  「宇宙線がつくるニュートリノを調べる」 ~ニュートリノの質量の発見~ 梶田 隆章先生 東京大学宇宙線研究所 所長・ 教授
  • 第90回  2015年3月14日(土)  「誕生直後の宇宙を探る」~最先端加速器で再現、観測する~  山田 作衛先生 東京大学名誉教授・高エネルギー加速器研究機構名誉教授・
  • 第89回  2014年12月13日(土)  「細胞たちの「自分探し」 ~臓器ができる仕組みを探る~  瀬原 淳子先生 京都大学再生医科学研究所 再生統御学研究部門 教授
  • 第88回  2014年11月29日(土)  「我々はどこから来たのか」  伏見  譲先生 埼玉大学名誉教授、総合研究大学院大学 教授
  • 第87回  2014年10月19日(日)  「素粒子の世界」 ~発生・観察・探索~  蓑輪 眞先生 東京大学大学院理学系研究科物理学教室 教授
  • 第86回  2014年9月28日(日)  「再生医療ってなんだろう?」 ~モノ・細胞の先にみえるもの~  八代 嘉美先生 京都大学iPS細胞研究所 上廣倫理研究部門 特定准教授
  • 第85回  2014年7月26日(土)  「体を組み立てる」 ~自律的な細胞の世界 ~  竹市 雅俊先生 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター センター長
  • 第84回  2014年5月25日(日)  「ニュートリノの正体を探る」  ~素粒子核分光器による研究の最前線~  江尻 宏泰先生  大阪大学名誉教授、チェコ工科大学客員教授
  • 第83回  2014年3月8日(土)  「生まれたての宇宙を再現」~素粒子で宇宙の神秘に挑む国際研究の最前線~  山下 了先生
  • 第82回  2013年12月8日(日)  「生まれたての宇宙を再現」~素粒子で宇宙の神秘に挑む国際研究の最前線~  山下 了先生
  • 第81回  2013年11月23日(土)  「脳の情報処理回路を探る」~脳は作れるか~  深井 朋樹先生 独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター
  • 第80回  2013年9月29日(日)  「重力とは何か」~アインシュタインから超弦理論へ~  大栗 博司先生 カリフォルニア工科大学 フレッド・カブリ冠教授
  • 第79回  2013年7月27日(土)  「宇宙の成立ちと宇宙の歴史」  福來 正孝先生 東京大学Kavli数物連携宇宙研究機構 教授
  • 第78回  2013年5月19日(日)  「言語の科学」 ~なぜ人間だけに言語があるのか~  酒井 邦嘉先生 東京大学大学院総合文化研究科 教授
  • 第77回  2013年3月9日(土)  「ヒッグス粒子に迫る」 ~最先端加速器LHCで探る宇宙創成の謎~  浅井 祥仁先生 東京大学大学院 理学系研究科 准教授
  • 第76回  2012年12月8日(土)  「再生医療ってなんだろう?」 ~モノ・細胞の先にみえるもの~  八代 嘉美先生 慶應義塾大学医学部 総合医科学研究センター 特任准教授
  • 第75回  2012年11月18日(日)  「誕生直後の宇宙を眺める」 ~巨大加速器でさぐる宇宙のはじまり~  花垣 和則先生 大阪大学大学院理学研究科 准教授
  • 第74回  2012年11月11日(日)  「素粒子と宇宙」 ~極微の世界と壮大な宇宙を結ぶ加速器~  駒宮 幸男先生
  • 第73回  2012年9月30日(日)  「宇宙誕生から1秒も狂わない時計を作る」 ~時空の歪みをみる時計~  香取 秀俊先生
  • 第72回  2012年7月21日(土)  「進化とは何だろうか?」 ~生物の進化、ヒトの進化~  長谷川 眞理子先生
  • 第71回  2012年5月13日(日)  「ケイ素の化学」 ~シリコンとシリコーン~  荻野 博先生 放送大学名誉教授
  • 第70回  2012年3月3日(土)  「細胞たちの「自分探し」」 ~臓器ができる仕組みを探る~  瀬原 淳子先生 京都大学再生医科学研究所 再生統御学研究部門 教授
  • 第69回  2011年12月3日(土)  「誕生直後の宇宙を眺める」 ~巨大加速器でさぐる宇宙のはじまり~  花垣 和則先生 大阪大学大学院理学研究科 准教授
  • 第68回  2011年11月26日(土)  「素粒子の真空とはどんなものか」 ~質量の生まれるしくみにせまる~  橋本 省二先生 高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所・教授
  • 第67回  2011年11月5日(土)  「言葉の物理学」 ~人はどうして自由に言葉を操れるのか~  武田 暁先生  平成基礎科学財団理事、東京大学・東北大学名誉教授
  • 第66回  2011年10月22日(土)  「シリコンとシリコーン」 ~現代の生活を劇的に変えた物質~  荻野 博先生 放送大学名誉教授・東北大学客員研究員
  • 第65回  2011年10月15日(土)  「宇宙の地図を描く」 ~測れないものを測る数学の知恵~  小谷 元子先生
  • 第64回  2011年7月9日(土)  「脳をめぐる7つの謎」 ~脳は機械か、「わたし」か~  坂井 克之先生 東京大学大学院医学系研究科 認知・言語神経科学分野 准教授
  • 第63回  2011年5月14日(土)  「地下から探る素粒子と宇宙」 ~宇宙・素粒子研究の最前線~  中畑 雅行先生 東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設 教授
  • 第62回  2010年12月18日(土)  「網膜再生への挑戦」 ~iPS細胞と医療~  髙橋 政代先生 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター
  • 第61回  2010年12月4日(土)  「Think Outside the Cell」 ~身体を支える細胞外基質タンパク質~  百田 龍輔先生  岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 人体構成学 助教
  • 第60回  2010年11月27日(土)  「不確定性原理をめぐって」 ~観測による擾乱に下限はあるか?~  江沢 洋先生
  • 第59回  2010年11月21日(日)  「素粒子で宇宙・物質を覗く」 ~素粒子加速器:顕微鏡と望遠鏡の働き~  鈴木 厚人先生 高エネルギー加速器研究機構長
  • 第58回  2010年11月13日(土)  「時間って何だろう?」 ~ナマコを眺めながら考えたこと~  本川 達雄先生  東京工業大学生命理工学部教授
  • 第57回  2010年10月9日(土)  「宇宙から超極微小ナノの世界へ 」~ ナノカーボンの科学 ~  篠原 久典先生
  • 第56回  2010年7月10日(土)  「モノを見る脳の仕組み」 ~物体像の脳内表現~  谷藤 学先生
  • 第55回  2010年5月15日(土)  「加速器が明らかにする素粒子の不思議な世界」  髙﨑 史彦先生
  • 第54回  2009年12月20日(日)  「すばる望遠鏡で見る宇宙」 ~最初の銀河、補償光学、次世代望遠鏡~  家 正則先生  国立天文台光赤外部教授
  • 第53回  2009年11月28日(土)  「物理学における対称性」 ~自然の謎を解く鍵~  小林 誠先生
  • 第52回  2009年11月14日(土)  「宇宙のはじまり」 ~現代宇宙論の基礎と飛躍~  田中 貴浩 先生 京都大学基礎物理学研究所教授
  • 第51回  2009年11月1日(日)  「新型インフルエンザの脅威と現代医学」  押谷 仁先生 東北大学大学院医学研究科微生物学分野 教授
  • 第50回  2009年10月3日(土)  「細胞たちの「自分探し」 」~臓器ができる仕組みを探る~  瀬原 淳子先生 京都大学再生医科学研究所 再生統御学研究部門教授
  • 第49回  2009年6月27日(土)  「ことばの起源と進化」~動物の鳴き声研究から~  岡ノ谷 一夫先生
  • 第48回  2009年4月25日(土)  「暗黒に支配される宇宙」  杉山 直先生 名古屋大学大学院理学研究科教授
  • 第47回  2008年12月13日(土)  「ミツバチのダンスとコオロギの学習」 ~昆虫の脳の不思議を探る~  水波 誠先生 東北大学大学院生命科学研究科准教授
  • 第46回  2008年11月29日(土)  「ナノ空間の電子」 ~その魅力と威力~  榊 裕之 先生 豊田工業大学教授(副学長兼任)・東京大学名誉教授
  • 第45回  2008年11月1日(土)  「海の物理」 ~海の波から気候変動まで~  鳥羽 良明先生
  • 第44回  2008年10月11日(土)  「脳の中にある細胞たち」  ~いくつになっても神経細胞はつくられる~  大隅 典子先生
  • 第43回  2008年9月27日(土)  「不斉合成」 ~右手形と左手形分子のつくり分け~  野依 良治先生 独立行政法人理化学研究所理事長・名古屋大学特別教授 ★この「楽しむ科学教室」は10月20日(前篇)&11月10日(後篇)にNHK地上デジタル教育テレビ(023)で放送されました。
  • 第42回  2008年9月20日(土)  「生命観を問い直す」 ~機械論から動的平衡へ~  福岡 伸一先生 青山学院大学理工学部 化学・生命科学科教授
  • 第41回  2008年7月21日(月)  「ゆらぐ脳、あいまいな脳」  池谷 裕二先生 東京大学大学院薬学系研究科・准教授
  • 第40回  2008年6月22日(日)  「仮想世界と現実世界の融合を目指して」  坂村 健先生 東京大学大学院情報学環・学際情報学府 副学環長、教授
  • 第39回  2008年4月26日(土)  「アインシュタインの相対性理論とビッグバン宇宙」 ~宇宙の誕生と進化を探る~  佐藤 勝彦先生 東京大学大学院理学系研究科教授、平成基礎科学財団理事
  • 第38回  2007年12月8日(金)  「細胞たちの「自分探し」 」~臓器ができる仕組みを探る~  瀬原 淳子先生 京都大学再生医科学研究所 再生統御学研究部門 教授
  • 第37回  2007年12月2日(日)  「素粒子で宇宙・物質を覗く」 ~素粒子加速器:顕微鏡と望遠鏡の働き~  鈴木 厚人先生 高エネルギー加速器研究機構長
  • 第36回 2007年11月23日(金) 「ニュートリノ、ニュートリノ、そしてニュートリノ」 ~ニュートリノって一体何だろう?~ 小柴 昌俊先生
  • 第35回 2007年11月4日(日) 「光と物質の新たなる出会い」 ~光科学の最前線への招待~ 五神 真先生
  • 第34回 2007年10月21日(日) 「記憶」~脳内メカニズム~ (1時限目:「免疫」、2時限目) 利根川 進先生 マサチューセッツ工科大学(MIT) 生物・脳科学Picower Professor
  • 第33回 2007年9月9日(日) 「多角形、多面体の多角的、多面的考察」~謎解きの実況中継~ 秋山 仁先生  東海大学教育開発研究所所長
  • 第32回 2007年7月21日(日) 「暗黒に支配される宇宙」 杉山 直先生  名古屋大学大学院理学研究科教授
  • 第31回 2007年6月3日(日) 「脳の回路」~どのようにできていて、どのようにはたらくのか~ 伊藤 正男先生 理化学研究所  脳科学総合研究センター特別顧問
  • 第30回 2007年5月13日(日) 「細胞たちの「自分探し」」~臓器ができる仕組みを探る~ 瀬原 淳子先生 京都大学再生医科学研究所 再生統御学研究部門 教授
  • 第29回 2007年3月17日(土) 「ことばの科学」~脳はどのようにことばを生みだすか~ 酒井 邦嘉先生 東京大学大学院総合文化研究科 助教授
  • 第28回 2007年1月27日(土) 「小さな、小さな世界が大きな、大きな世界を支配したお話」 吉村 太彦先生 岡山大学理学部教授
  • 第27回 2007年1月13日(土) 「前頭前野は何をしているか?」~私が明らかにしたこと~ 久保田 競先生 日本福祉大学大学院 情報・経営開発研究科 招聘教授
  • 第26回 2006年12月16日(土) 「小鳥の歌からヒトの言葉へ」~鳴き声生物学入門~ 岡ノ谷 一夫先生
  • 第25回 2006年11月18日(土) 「ニュートリノ、ニュートリノ、そしてニュートリノ」~ニュートリノって一体何だろう?~ 小柴 昌俊先生
  • 第24回 2006年10月28日(土) 「無の粒子、無の状態」 ~質量と真空の謎~ 長島 順清先生 大阪大学名誉教授
  • 第23回 2006年9月30日(土) 「科学する心の働き」 ~学習する脳の不思議な働き~ 武田 暁先生 平成基礎科学財団理事、東京大学・東北大学名誉教授
  • 第22回 2006年7月22日(土) 「日本の財政を科学する」 ~私たちにもわかる~ 長岡 實先生 財団法人資本市場研究会 理事長
  • 第21回 2006年6月3日(土) 「ちからと宇宙」 ~形や運動はなにから生まれるのか~  海部 宣男先生 国立天文台名誉教授
  • 第20回  2006年4月8日(土)  「原子はどこまで詰められるか」~ボーズアインシュタイン凝縮~  上田 正仁先生 東京工業大学大学院理工学研究科 教授
  • 第19回  2006年3月11日(土)  「動物に学ぶ」 ~動物たちの行動の不思議;その意味と仕組を探る~  森 裕司先生
  • 第18回  2006年1月22日(日)  「雲はなぜ落ちてこないのか?」 ~星の形成から暗黒物質まで~  佐藤 文隆先生 甲南大学教授、京都大学名誉教授
  • 第17回  2005年11月26日(土)  「学習する脳の不思議」~「脳をつくる」ことで脳を理解する~  銅谷 賢治先生  沖縄大学院大学先行的研究事業  神経計算ユニット代表研究者
  • 第16回  2005年10月22日(土)  「ナノチューブの科学」~ナノテクノロジーはシリコンから炭素へ~  齋藤 理一郎先生 東北大学・大学院理学研究科・教授
  • 第15回  2005年10月1日(土)  「光と物質の新たなる出会い」 ~光科学の最前線への招待~  五神 真先生
  • 第14回  2005年9月17日(土)  「インフレーション宇宙 」 ~宇宙誕生の直後に何が起こったか?~  川﨑 雅裕先生 東京大学宇宙線研究所教授
  • 第13回  2005年9月3日(土)  「生命のパズル」~自己組織化の謎に迫る~  吉川 研一先生 京都大学大学院理学研究科 教授
  • 第12回  2005年7月23日(土)  「ニュートリノを見る地下の目」 ~ニュートリノで地球・太陽を診断する~  井上 邦雄先生 東北大学大学院理学研究科ニュートリノ科学研究センター 教授
  • 第11回  2005年5月7日(土)  「生命とは何か」~物理からのアプローチ~  金子 邦彦先生 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻教授
  • 第10回  2005年5月7日(土)  「宇宙の謎」 ~暗黒物質、暗黒エネルギー、反物質~  村山 斉先生 カリフォルニア大学バークレイ校物理教室教授
  • 第9回  2005年3月19日(土)  「素粒子の謎に迫る」 ~物質の統一理論を求めて~   野村 泰紀先生 カリフォルニア大学バークレー校 助教授
  • 第8回  2005年3月16日(水)  「心と脳の不思議な関係」~心を生み出す脳のシステム~  茂木 健一郎先生  ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー
  • 第7回  2005年1月8日(土)  「動物に学ぶ」 ~動物たちの行動の不思議;その意味と仕組を探る~  森 裕司先生  東京大学・大学院農学生命科学研究科・獣医動物行動学研究室・教授
  • 第6回  2004年12月18日(土)  「宇宙創世期の交響楽」 ~膨張宇宙の姿とその始まり、ビッグバン~  杉山 直先生  自然科学研究機構 国立天文台 理論研究部 教授
  • 第5回  2004年9月18日(土)  「生命のパズル」~自己組織化の謎に迫る~  吉川 研一先生  京都大学大学院理学研究科 教授
  • 「楽しむ科学教室」NHK EDUCATIONAL収録
    2004年8月12日 (木)  宇宙はこんな形だった -第3回「宇宙創世期の交響楽」より-  杉山 直先生
    2004年8月2日 (月)  言葉を科学する -第4回「ことばの科学」より-  酒井 邦嘉先生
    2004年7月30日 (金)  目で見えた!量子の世界 -第2回「原子はどこまで詰められるか?」より-  上田 正仁先生
    2004年7月27日 (火)  クオリアで脳に迫る  -第1回「心と脳の不思議な関係」より-  茂木 健一郎先生
  • 第4回  2004年5月23日(日)  「ことばの科学」 ~脳はどのようにことばを生みだすか~  酒井 邦嘉先生 東京大学大学院総合文化研究科 助教授
  • 第3回  2004年5月16日(日)  「宇宙創世期の交響楽」 ~膨張宇宙の姿とその始まり、ビッグバン~  杉山 直先生  自然科学研究機構 国立天文台 理論研究部 教授
  • 第2回  2004年3月14日(日)  「原子はどこまで詰められるか」~ボーズ・アインシュタイン凝縮~  上田 正仁先生  東京工業大学大学院理工学研究科 教授
  • 第1回  2004年2月22日(日)  「心と脳の不思議な関係」~心を生み出す脳のシステム~  茂木 健一郎先生  ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー

参考

  1. 平成基礎科学財団
  2. 平成基礎科学財団解散のお知らせ
  3. 折戸周治賞・戸塚洋二賞 歴代受賞者リスト(第1回2009年~第7回2015年)

報道

  1. 小柴さんの財団3月解散へ 役員高齢化など理由に(日本経済新聞 2016/10/24 21:04 ):”2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊・東京大特別栄誉教授(90)が設立し、理事長を務める平成基礎科学財団(東京)は24日までに、来年3月末に解散することを決めた。「財政上の問題と役員の高齢化が理由」としている。”
  2. 小柴さんの科学財団解散へ=財政難や高齢化で(時事ドットコムニュース2016/10/24-16:28 ):”ノーベル物理学賞を2002年に受賞した小柴昌俊東京大特別栄誉教授(90)が理事長を務める公益財団法人「平成基礎科学財団」(東京都千代田区)は24日までに、来年3月末で解散することを明らかにした。”

ネットの反応

  1. 【平成基礎科学財団 解散】ノーベル賞・小柴氏設立の財団解散へ 財政・人事苦しく(ヤフコメコム 2016-10-24 10:57:00)
  2. 【社会】ノーベル物理学賞・小柴氏設立の財団解散へ 財政・人事苦しく (daily.2ch.net)

第2期叡王戦 羽生九段が稲葉八段を下す

2016年10月21日に第2期叡王戦本戦トーナメントの羽生三冠vs稲葉八段の対局が行われ、羽生 善治 九段(先手)が稲葉 陽 八段を破り準決勝進出を決めました。

羽生 善治 九段(先手) 対 稲葉 陽 八段(後手) の棋譜 113☗3 六金打まで先手の勝ち(下の写真をクリックすると、叡王戦のウェブサイトに移動し、棋譜の再生やダウンロードができます)
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第2期叡王戦の優勝者は、第4回将棋電王トーナメントの優勝ソフトと戦うことになります。羽生善治九段と人工知能との対局を見たいという人は多く、夢の対局へ一歩近づきました。

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参考

  1. 第2期叡王戦本戦トーナメント 2016年10月21日 羽生三冠vs稲葉八段の対局 棋譜
  2. 【将棋】第二期叡王戦 羽生九段 vs 稲葉八段 終盤ハイライト(将棋総合チャンネル)
  3. 藤井銀河が初手から解説!!『羽生善治九段 vs 稲葉陽八段』

報道

  1. 羽生、叡王戦4強入り ソフトとの対戦者決める棋戦(スポニチ Sponichi Annex 2016年10月21日 21:56):”将棋のプロ棋士とコンピューターソフトが戦う第2期電王戦(来春開催)への出場者を決める第2期叡王戦本戦準々決勝は21日、東京都渋谷区の将棋会館で指され、羽生善治3冠(46)が稲葉陽八段(28)を破り、ベスト4に進出した。”

ネットの反応(http://i2chmeijin.blog.fc2.com/blog-entry-4647.html より一部を紹介)

  1. 2016/10/22 (土) 13:35:33 藤井がポナンザの59角見てこんな手は人間には読めない、ソフト使わないと無理からの感想戦で羽生が59角までしっかり読んでて羽生ソフト指し疑惑がヤバイ 当然調査チームを立ちあげて調査するんだよな
  2. 2016/10/21 (金) 21:46:33 羽生さん脳内にアヒル将棋ソフト埋め込み疑惑
  3. 2016/10/21 (金) 21:53:12 脳内にハブンザを搭載してるなんてズルすぎるぞ!
  4. 2016/10/21 (金) 22:08:10 羽生九段のアンテナ立ってる時の勝率と  指が震えた時からの勝率が異常過ぎて怪しい。 アンテナと指の震えは明らかに不自然な行為。  チダショー分析はよ
  5. 2016/10/21 (金) 21:52:22 羽生さんは将棋星人から電波を受信する不正をしていると思うんだ  終盤になるとたまに公然とアンテナを立てたりしてるし
  6. 2016/10/21 (金) 22:15:34 あっ!!羽生先生の寝癖は将棋星との交信の為のアンテナだったんですね
  7. 2016/10/21 (金) 22:39:24 ナベ千田「ソフト一致率を検証した結果、三浦の棋譜はソフト指し濃厚です!人間には指せません!」  羽生「どれどれ・・・」  羽生「・・・普通の手じゃね?」
  8. 2016/10/21 (金) 22:40:58 解析:技巧0606 1手20秒 4core8thread i7-6700K(10手目△9四歩より)  結果  先手:52%(28/53)  後手:58%(31/52)  スクショ:imgur.com/a/wWg0B  早々に前例を離れる力戦系では、最高峰の人間が快勝しても、 人間である以上一致率は高くならないという良き見本としてポストしておく  個人的には、一桁手で前例を離れるレベルの力戦系で一致率が90%を超えたら1局であってもソフト指しだと確信できる (もちろんそれを証明できるかどうかはまったく別の話)
  9. 2016/10/21 (金) 23:19:23 羽生‐Ponanzaの世紀の一戦に一歩ずつ着実に近づいている 羽生には期待してしまう
  10. 2016/10/22 (土) 00:36:55 羽生がポナに勝ってもそれは人類の勝利ではない気がしてきた。あれはただの神だ。

関連記事

  1. 対局中にコンピュータ将棋ソフトを使用した疑惑で将棋連盟から処分を受けた三浦弘行九段が無実を訴える声明を発表

アフリカツメガエルのゲノムが解読される

発生生物学の実験材料としてよく用いられるモデル動物アフリカツメガエル(Xenopus laevis)ゲノムの塩基配列が解読され、今週のNature誌に論文が発表されました。

Adam M. Session,    Yoshinobu Uno,    Taejoon Kwon,    Jarrod A. Chapman,    Atsushi Toyoda,    Shuji Takahashi,    Akimasa Fukui,    Akira Hikosaka,    Atsushi Suzuki,    Mariko Kondo,    Simon J. van Heeringen,    Ian Quigley,    Sven Heinz,    Hajime Ogino,    Haruki Ochi,    Uffe Hellsten,    Jessica B. Lyons,    Oleg Simakov,    Nicholas Putnam,    Jonathan Stites,    Yoko Kuroki,    Toshiaki Tanaka,    Tatsuo Michiue,    Minoru Watanabe,    Ozren Bogdanovic,    Ryan Lister,    Georgios Georgiou,    Sarita S. Paranjpe,    Ila van Kruijsbergen,    Shengquiang Shu,    Joseph Carlson,    Tsutomu Kinoshita,    Yuko Ohta,    Shuuji Mawaribuchi,    Jerry Jenkins,    Jane Grimwood,    Jeremy Schmutz,    Therese Mitros,    Sahar V. Mozaffari,    Yutaka Suzuki,    Yoshikazu Haramoto,    Takamasa S. Yamamoto,    Chiyo Takagi,    Rebecca Heald,    Kelly Miller,    Christian Haudenschild,    Jacob Kitzman,    Takuya Nakayama,    Yumi Izutsu,    Jacques Robert,    Joshua Fortriede,    Kevin Burns,    Vaneet Lotay,    Kamran Karimi,    Yuuri Yasuoka,    Darwin S. Dichmann,    Martin F. Flajnik,    Douglas W. Houston,    Jay Shendure,    Louis DuPasquier,    Peter D. Vize,    Aaron M. Zorn,    Michihiko Ito,    Edward M. Marcotte,    John B. Wallingford,    Yuzuru Ito,    Makoto Asashima,    Naoto Ueno,    Yoichi Matsuda,    Gert Jan C. Veenstra,    Asao Fujiyama,    Richard M. Harland,    Masanori Taira    & Daniel S. Rokhsar.  Genome evolution in the allotetraploid frog Xenopus laevis. Nature 538,336–343(20 October 2016)doi:10.1038/nature19840
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東京大学の平良眞規博士、カリフォルニア大学・ダニエル・ロクサー博士とリチャード・ハーランド博士らを中心とする国際コンソーシアムが共同して行った成果です。日本の多数の大学、研究機関がこのコンソーシアムに参加しています。プレスリリースによると本研究論文の日本人の著者は、東京大学(平良眞規、近藤真理子、道上達男、鈴木穣)、国立遺伝学研究所(藤山秋佐夫、豊田敦)、名古屋大学(松田洋一、宇野好宣)、広島大学(高橋秀治、彦坂暁、鈴木厚)、基礎生物学研究所(上野直人、山本隆正、高木知世)、産業技術総合研究所(浅島誠、原本悦和、伊藤弓弦)、北海道大学(福井彰雅)、長浜バイオ大学(荻野肇)、山形大学(越智陽城)、国立成育医療研究センター(黒木陽子)、東京工業大学(田中利明)、徳島大学(渡部稔)、立教大学(木下勉)、メリーランド大学(太田裕子)、北里大学(回渕修治、伊藤道彦)、バージニア大学(中山卓哉)、新潟大学(井筒ゆみ)、沖縄科学技術大学院大学(安岡有理)ら(敬称略)。%e2%96%a0web_%e3%83%ad%e3%82%b4

ちなみに、世界で初めてゲノムが解読されたカエルは、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)ではなくその近縁種である熱帯ツメガエル(Xenopus tropicalis)で、2010年のサイエンス誌に発表されました。

utokyopressrelease20161020%e5%9b%b32a(図は東京大学プレスリリースより)

アフリカツメガエルのゲノムは、進化の過程で比較的最近、近縁異種が交配しゲノムが倍化した「異質4倍体」と考えられています(下図)。ゲノムサイズが大きく複雑になったためにゲノム解読が困難となり、生物学で用いられるモデル動物の中では一番ゲノム解読が遅れていました。

%e5%9b%b31(進化の過程で遺伝子重複が生じた時期(ピンクの星印)。図は東京大学プレスリリースより)

%e5%9b%b33(交雑後にゲノム重複し不稔を免れた仕組み。図は東京大学プレスリリースより)

hdy201365f1(Xenopus laevisの18本の染色体が近縁2種由来であること示すペア Uno et al., 2013 Heredity Fig.1より)

参考

  1. Genome evolution in the allotetraploid frog Xenopus laevis. Nature 538,336–343(20 October 2016)doi:10.1038/nature19840
  2. Lab frog Xenopus laevis genome sequence shows what happens when genomes collide — African clawed frog got double the normal number of genes thanks to hybridization millions of years ago (EurekAlert! / University of California – Berkeley Public Release: 20-Oct-2016)
  3. アフリカツメガエルの複雑なゲノムを解読:脊椎動物への進化の原動力「全ゲノム重複」の謎に迫る(東京大学プレスリリース 2016/10/20)
  4. 東京大学 平良眞規研究室
  5. XenBase

報道

  1. 東大など、アフリカツメガエルのゲノムを解読 – 「全ゲノム重複」解明の鍵(マイナビニュース 周藤瞳美 2016/10/20):”東京大学(東大)などは10月20日、2種類の祖先種が異種交配して「全ゲノム重複」したとされるアフリカツメガエルのゲノムの全構造を明らかにしたと発表した。”
  2. アフリカツメガエルのゲノム解読=脊椎動物の謎解明に期待-東大など(時事ドットコムニュース):”東京大と米カリフォルニア大などの国際研究チームは、アフリカツメガエルの全遺伝情報(ゲノム)を解読したと発表した。アフリカツメガエルは近縁種の異種交配で生まれたため2種類のゲノムを受け継いでおり、研究によく使われるモデル生物の中ではゲノム解読が遅れていた。論文は20日付の英科学誌ネイチャーに掲載された。”
  3. アフリカツメガエル、ゲノム解読に成功 進化の謎に迫る(朝日新聞デジタル 瀬川茂子 2016年10月20日02時01分):”通常の2倍の染色体を持つ生物(4倍体)として知られるアフリカツメガエルのゲノム解読に日米の国際共同チームが成功した。”

将棋ソフト使用疑惑の三浦九段が無実を訴える

対局中にコンピュータ将棋ソフトを使用した疑惑で将棋連盟から処分を受けた三浦弘行九段が無実を訴える声明を発表

追記 2017年1月31日 羽生善治氏の奥様、羽生理恵さんがツイッターでこれまで誤解を解くための説明をしていたので、紹介します。私も、羽生善治氏が三浦九段の将棋ソフト疑惑に関して「グレー」と言ったのは、疑わしいという意味の、つまり黒を匂わせる意味でのグレーという言葉だと週刊誌報道などから理解していました。しかし、羽生理恵さんのツイッターでの説明によれば、実は、まったく正反対でした。将棋連盟が「黒だよね」という振り方をしてきたのに対して、証拠無しに黒と断定することはできない、という意味で「グレー」という言葉を使ったようです。文脈を削って、意味が正反対になるようにした作為的な週刊誌報道を鵜呑みにしてしまったことを反省いたしました。

当時、三浦九段は完全にクロという報道一色でしたが、結局、完全にシロという結論で落ち着いたようです。東洋経済にわかりやすい解説記事がありました。

*疑惑をかけられた三浦弘行九段と家族のスマートフォンやパソコンからは、不正の証拠は何一つ出てこなかった。

*対局料(挑戦が決まっていた竜王戦でタイトルを奪取すれば4320万円、奪取しなくても1590万円)をフイにした三浦九段

*「疑惑の発端となった『30分の離席』はそもそも存在しない」という驚愕のものだった。久保九段との対局では計2時間40分の離席があったが、重要な局面での離席は6分、3分、3分といずれも短かった。

*「一致率」について、第三者委員会は「同一ソフト・同一局面・同一棋譜でも指し手の一致率には約20%の違いがある」

*「三浦九段よりも一致率が高い棋士も存在するが何ら問題視されていない」

*「検証の対象とした4局で、対局相手やトップ棋士に聞き取り調査をしたが、三浦九段の指し手に不自然さはない」

将棋界が直面する未曾有の危機とは何か? 将棋ソフトに右往左往、三浦九段は完全シロ 東洋経済 2017年01月04日 山田 雄一

追記 2016年12月29日 日本将棋連盟の最終的な判断が出たので一部を転載します。

連盟が設置した第三者調査委員会が調査したところ、夕食休憩後に30分ほど離席したという指摘には根拠がなかったという。「三浦九段の指し手が、将棋ソフトの指し手と一致している」という指摘も、計測ごとにばらつく指標だったため、証拠価値はないとしている。さらに、三浦九段が提出したスマートフォン、PCなどを外部企業が解析しても、不正行為の痕跡は見当たらず、十分な証拠がないと判断したという。(三浦九段の将棋ソフト“不正使用疑惑”は「証拠なし」 ただし出場停止処分は「妥当」 ITmedia ニュース 2016年12月26日 19時47分 更新)

 

第三者委員会調査結果を受けて 日本将棋連盟 更新:2016年12月27日 18:55

12月26日(月)、日本将棋連盟は第三者調査委員会の調査結果に関する答申を受けました。
本日それを踏まえ、記者会見を東京・将棋会館で行いました。
以下に谷川浩司会長の会見要旨を記載いたします。
谷川浩司会長 会見要旨

昨日午前、第三者調査委員会より報告書を頂きました。
委員長の但木先生をはじめ、永井先生、奈良先生には、二ヶ月近くに及ぶ綿密な調査をして頂き、本当に有難うございました。
また、昨日午後に会見を開いていただきました事も重ねて御礼申し上げます。

今回の報告書では、三浦九段は不正を行っていないこと、常務会が出場停止処分を取ったのは妥当であること、この二つの結論を頂きました。
常務会の判断が妥当だったとは言え、結果的に三浦九段につらい思いをさせてしまいましたことは本当に申し訳なく思っております。

…  (http://www.shogi.or.jp/news/2016/12/post_1492.html?mi=cu_news

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

三浦九段の2回目の反論文書全文(毎日新聞 2016年10月21日 より

対局中の将棋ソフト使用疑惑について(2)

一部マスコミにて事実と異なる内容が報道されているため、重要な点についてのみ誤りを指摘しておきたいと思います。

まず、平成28年10月10日、連盟理事からソフト使用疑惑があるという理由により、翌日に理事などが集まるので将棋会館に来るよう伝えられました。私は、「渡辺さん(明・竜王)はこれから戦う相手なので呼ばないでください」と伝えました。数日後に竜王戦が控えていたため、私が疑われ、身の潔白を証明する場に渡辺さんが同席していると、対局に差し障りがあると考えたからです。しかし、私の要望に反して翌日の会議の場に渡辺さんは出席していました。

次に、平成28年8月頃、三枚堂さん(達也・四段)と将棋の研究を行っていた際に、三枚堂さんがスマートフォンを用いて自宅のパソコンを操作しているのを目にしました。私は、そんなことができるのかと驚き「どうやっているの」と聞きました。彼は、私がパソコンに疎いことを知っていたため、詳しい説明はしませんでした。もちろん、私のスマートフォンに遠隔操作アプリをインストールしたことはありません。

また、対局中に控え室などでスマートフォンの操作をしたことなどはありません。

ちなみに、私はスマートフォンの提出を拒否した訳ではありません。そもそも、連盟はスマートフォンのみならずパソコンの提出すら望んでいませんでした。スマートフォンは、私が日常使用しますし、私の保有するパソコンを調べてもらえば、遠隔操作ソフトなどが導入されていないことは分かってもらえると思っていました。

もっとも、現段階に至っては、自らの潔白を証明するため、私のスマートフォンと4台のパソコンを信頼のおける調査会社等に提出し、過去にインストール及びアンインストールされたソフトの内容や、電源のオンオフの日時などの解析を行ってもらおうと考えています。調査会社等の選定については、連盟が協議に応じてくれるのであれば、連盟と共に選定したいと思います。また、私は上記スマートフォンとパソコンしか持っていませんが、家族などのスマートフォンやパソコンなども調査対象に加えて欲しいと連盟が望むのであれば、進んでそれらも調査対象に加えたいと思います。後から別のパソコンなどが怪しいと言われても困るからです。そのうえで、解析結果を私や連盟が入手する前に、調査会社等から直接世間に発表してもらおうと考えています。

本来これらの作業は、疑いをかけた連盟が実施すべきだと思います。なぜ、私が自らこのようなことを行わざるを得ないのかと思うと悲しくなります。私は単に今までどおり将棋を指したいだけなのです。

一日でも早く連盟が不当な処分を撤回してくれるよう願ってやみません。

平成28年10月21日

三浦弘行

 

将棋「スマホ不正」問題を渡辺明竜王が独占告白 (週刊文春WEB 2016.10.19 16:02)の要点

  • 「将棋ソフトでのカンニング疑惑」対局4局のうちの1局は10月3日に行われたA級順位戦の「三浦九段対渡辺竜王」。この対局を一部の棋士がネット中継をもとにリアルタイムでソフトで検証していたところ驚くほど三浦九段の指し手がソフトと一致。
  • 渡辺竜王は過去の三浦九段の対局も含めて調べ、指し手の一致、離席のタイミング、感想戦での読み筋などから「間違いなく“クロ”だ」と確信。
  • 10月7日、渡辺竜王が日本将棋連盟理事の島朗九段(53)に事情説明。
  • 10月10日に羽生善治三冠(46)、佐藤天彦名人(28)、将棋連盟会長の谷川浩司九段(54)らトップ棋士7人が集まり“極秘会合”。出席者たちからは「99.9%やってますね」という意見も。“シロ”を主張する棋士はなし。

週刊文春(2016.10.27)の記事の中の二人の棋士の証言によれば、三浦九段の不正行為には直接的な証拠はなく、状況およびプロ棋士による感覚的なものだと言います。

7月26日竜王戦挑戦者を決めるトーナメント準決勝 久保利明九段(41)対 三浦九段(三浦九段の勝利) 「三浦さんとは何十局も指していますが、従来とは違って、離席の回数が非常に多かったんです。証拠は何もないんです。でも指していて”やられたな”という感覚がありました。」

10月3日A級順位戦三浦九段 対 渡辺明竜王  「ソフトとの指し手の一致率が90%だとカンニングしているとか、そういうことではありません。…一致率や離席のタイミングなどを見ればプロなら分かるんです。」

 

気になる棋譜を見ようその847(三浦九段 対 渡辺竜王)
2016年10月3日  第75期順位戦A級4回戦 三浦弘行 九段 対 渡辺明 竜王

* * *

三浦九段疑惑の離席

連盟によりますと、この中で三浦九段が、挑戦者として出場が決まっていた竜王戦について、「疑念を持たれた状況では対局できない」と辞退を申し出たとして、休場届の提出を求めましたが、期日までに提出されなかったため年内の公式戦の出場停止処分を決めました。(将棋 三浦九段「不正していない」 NHKが単独インタビュー 10月18日 19時13分

以下、毎日新聞の記事「三浦九段がソフト使用疑惑否定 反論文書全文」の写真からの書き起こしです。

対局中の将棋ソフト使用疑惑について
公益社団法人日本将棋連盟が発表しているとおり、私三浦弘行は、第29期竜王戦七番勝負に出場で
きないことになり、平成28年10月12日付で出場停止処分となりました。
このことは、私が対局中の離席が多く、私の指し手がコンピュータと一致する確率が高いことなどか
ら、私が対局中に将棋ソフトを使用していたのではないかという疑惑を持たれたことに由来しています。
しかしながら、私がこれまで対局中に将棋ソフトを使用していたことは一切ありません。連盟が私に求
めた、第29期竜王戦七番勝負に出場できないこと及び休場届の提出は、全くの濡れ衣である将棋ソフ
ト使用疑惑によるものであり、適正な手続による処分とは到底言い難いものです。
私は、連盟から上記疑惑を持たれたので、平成28年10月11日及び12日において、連盟からの
要望がなかったにもかかわらず、自ら保有するノートパソコン2台、デスクトップパソコン2台、スマ
ートフォンの全アプリを撮影した画像を提出しています。これらの資料を精査してもらえれば、私の身
の潔白が晴れることだと信じていましたが、連盟はこれらの資料を精査することなく、一方的に私に出
場停止処分を下しました。本当に残念でなりません。
また、私は連盟に対し、離席が多いことやコンピュータとの一致率が高いことを示す証拠を書面によ
り提出して欲しいことを求めています。これらの資料を分析すれば、離席と私の指し手との関連性がな
いことなどを示すことができると考えています。しかし、連盟からはこれらの資料の開示はなされてい
ません。これでは、私としましては、私のどの指し手がどのコンピュータと一致しているのか、満足に
知ることすらできません。
私が離席していた際に行っていたことは、将棋会館内の休憩室である「桂の間」などで横になるなど
して体を休めつつ次の指し手を考えていたり、会館内のトイレに赴いていただけです。対局中の食事に
ついても、ほとんどが出前を注文しており、疑惑を持たれている対局では、対局中に会館の外に出るこ
とはありませんでした。
また、現在多くのプロ棋士が対局前の研究において、将棋ソフトを用いていることは周知の事実だと
思われます。私も将棋ソフトを用いて対極前に研究を行っていました。将棋の序盤中盤は、盤面の状況
をある程度想定できるため、コンピュータと一致率が高くなることは当然のことだと思います。また、
終盤については、最善手を指せばコンピュータと一致することは不思議なことではありません。そのた
め、私の指し手がコンピュータと一致率が高い部分があったとしても、何も不思議なことではないと考
えています。おそらく、他のプロ棋士の指し手とコンピュータの一致率も、一直線の変化では特に高く
なるのではないかと思われます。
私は、今後も連盟の調査に最大限協力するつもりです。そのことにより、私にかかった疑惑が晴れる
と信じています。
なお、本来記者会見などを開催すべきなのかもしれませんが、書面による方が、私の意見を表明しや
すいという事情から、このような形によって私の意見をのべさせていただく次第です。
平成28年10月18日
三浦 弘行

同連盟広報課は処分について「(三浦九段に)不自然な点が多く、合理的な説明はなかった」としている。
三浦九段、不正を否定 将棋ソフト利用疑惑で声明 日本経済新聞 2016/10/18 20:44

 

「決して不正はしていないので、処分を受けるいわれはない。対局中に絶対にソフトを使っていませんし、そもそもスマートフォンに分析ができる将棋ソフトが入っていません」
「竜王戦は将棋界最高峰の棋戦で挑戦するだけで大変な名誉だ。辞退するわけがない」
「私はもともと離席は多いほうだと思う」
(7月26日の対局について)「体調がすぐれなかったので、休んでいた時間が長かった」
将棋 三浦九段「不正していない」 NHKが単独インタビュー 10月18日 19時13分 【動画あり】

 

スマホでコンピューターで調べるなんてありえないと、思うけどなぁ。三浦くんって、もともと強いんだから誰かが嫌がらせで言いふらしたんじゃないかしらん。対局中に、なんども行ってたらしいですからーーと、コメンテーターの方いってたけど自分の持ち時間があったら何回、トイレに行こうがジュースを買いに行こうが構わないんですよっ。だいたいコンピューターに手伝ってもらって勝っても面白くもなんともないじゃない。勝負師ってそんなもんですよねぇーー(将棋でスマホ 林葉直子オフィシャルブログ「最後の食卓」2016-10-15 23:00:55

参考

  1. 【将棋ソフト不正疑惑】将棋連盟、来週中に調査委発足 強く対応求めていた渡辺竜王「タイトル剥奪されても構わない」(産経ニュース 2016.10.21 20:39更新):”日本将棋連盟の谷川浩司会長(54)は21日、来週中に顧問弁護士を中心とした調査委員会を発足させ、本格的な調査に乗り出す方針を発表した。…これに先立ち、同日午前、東京と大阪の将棋会館で棋士への臨時説明会が開かれ、羽生善治棋聖(46)や佐藤天彦名人(28)ら約140人の棋士が参加。約2時間におよんだ非公開の説明会で島朗常務理事(53)は、7月末の対局で三浦九段に不自然な離席があるとの指摘が発端だったことを報告。さらに今月3日の対局でたびたびの離席と不自然な指し手に疑惑を抱いた渡辺明竜王(32)が、「疑念がある棋士と指すつもりはない。タイトルを剥奪(はくだつ)されても構わない」と、連盟幹部に強く対応を求めていたことを明らかにした。”
  2. 三浦九段がソフト使用疑惑否定 反論文書全文
  3. 「対局中ソフト使用、一切ない」三浦九段が反論文書(毎日新聞2016年10月18日 17時42分(最終更新 10月18日 18時28分)):”将棋棋士の三浦弘行九段(42)が対局中に将棋ソフトを使用した疑惑が浮上し、日本将棋連盟が出場停止処分とした問題で、三浦九段は18日、自らの潔白を主張する文章を、弁護士を通じて報道各社に公表した。”
  4. 追加調査せず 三浦九段不正疑い(毎日新聞2016年10月13日 19時53分(最終更新 10月13日 19時53分)):”将棋棋士の三浦弘行九段(42)が対局中に将棋ソフトを使用した疑惑が浮上し、出場停止処分になった問題で、日本将棋連盟は13日、三浦九段に対する追加調査の考えはないことを明らかにした。 ”
  5. 三浦九段の不正調査…対局中ソフト利用か(毎日新聞2016年10月12日 20時07分(最終更新 10月13日 10時07分)):”日本将棋連盟は12日、三浦弘行九段(42)を年内の公式戦出場停止処分にしたと発表した。直接の処分理由は、提出を求めた休場届が期限までに届かなかったため。三浦九段は対局中に不自然な形で離席することが多いと対戦した棋士から指摘があり、将棋ソフトを不正利用しているという疑惑が浮上。連盟側は三浦九段から聞き取り調査を始めていた。”
  6. スマホだめ、外出ダメ…対局中「べからず」二つ追加(毎日新聞2016年10月5日 19時13分(最終更新 10月5日 19時45分)):”コンピューターの将棋ソフトがトップ棋士と変わらぬ実力を持つようになった現状を受け、日本将棋連盟(会長・谷川浩司九段)は5日、対局中の棋士がソフトで“カンニング”などの不正行為に及ぶのを防ぐため、規則を追加すると発表した。”

福井大准教授不倫赤とんぼ研究者による教え子の大学院生殺害は嘱託殺人(刑事)、民事では嘱託とはみなさい判断

 

民事裁判の結果

赤とんぼ研究者による教え子不倫殺人事件に関して、民事裁判では刑事裁判の判断とは異なり、「嘱託殺人」ではないという判断になりました。

福井県で2015年、東邦大大学院生の菅原みわさん=当時(25)=が殺害された事件で、嘱託殺人罪で有罪が確定した元福井大大学院特命准教授の男性(48)に遺族が約1億2000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、千葉地裁(高取真理子裁判長)は13日、殺害依頼は真意ではなかったとして計約8500万円の支払いを命じた。(院生殺害、8500万円賠償命令 民事は「嘱託」認めず―千葉地裁 2021年01月13日20時47分 時事ドットコムニュース

本当に痛ましい事件ですが、大学教員は学生と恋愛関係になるべきではありません。学部学生にせよ、大学院生にせよ、学生からみると教員というのは憧れの存在、無条件に尊敬する存在です。ですから、教員がよっぽど気を付けない限り恋愛感情を抱く学生が出てくることは避けられないと思います。ですから、大学がしっかりと組織として教員と学生との恋愛を許容しないという姿勢を制度的に確立することが必要だと思います。

  1. 「みわは生きたがっていた」 受刑者側、争う姿勢 遺族損賠訴訟初弁論 東邦大院生絞殺 (2017年5月11日 10:19 千葉日報)2015年3月、赤トンボ研究の教え子だった東邦大(船橋市三山)の大学院生、菅原みわさん=当時(25)=が絞殺された事件で、殺害した元福井大大学院特命准教授、前園泰徳受刑者(44)を相手取り、遺族が総額約1億2223万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が10日、千葉地裁(小浜浩庸裁判長)で開かれ、前園受刑者側は「嘱託殺人と刑事裁判でも認められた。請求棄却を求める。責任があったとしても割合については争う」などと、全面的に争う姿勢を示した。

 

刑事裁判の結果

赤とんぼの研究者であった福井大学教職大学院特命准教授の男性(44)が、教え子の東邦大学大学院生の女性(25)を殺害した事件の裁判で、2016年9月29日に福井地裁は嘱託(しょくたく)殺人罪を適用し、懲役3年6月(求刑懲役13年)の判決を言い渡しました。これに対して福井地検は「判決内容および証拠関係を精査し上級庁とも協議した結果、控訴しないこととした」と高等裁判所への控訴を断念しました。被告はこの判決を受け入れており、また、10月13日が控訴期限だったため、10月14日をもって福井地裁の判決が確定しました。

殺人罪は、死刑または無期、もしくは5年以上の懲役にあたる犯罪です。しかし、嘱託殺人罪は、被害者が自分の命を放棄しているという点で、通常の殺人罪よりも被害者の生命の保護の必要性が低いことから、軽い法定刑(6ヶ月以上7年以下の懲役または禁錮)が定められています。(弁護士ドットコム 10月4日

報道によれば、妻子のある赤とんぼ研究者の男性と女子大学院生は、2011年7月に野外調査で知り合い、一ヵ月後には不倫関係になりました。

前園容疑者が2009年から12年にかけて東邦大で非常勤講師をしていたときに、菅原さんと知り合ったとみられる。特に11年8月のある出来事をきっかけに菅原さんは赤とんぼにのめりこんでいく。11年7月31日から8月4日にかけて、菅原さんら16人の東邦大学生が同市内で野外実習を行った。実習の担当者は前園容疑者だった。8月1日に同市内の法恩寺山山頂で菅原さんが羽にマークのついた1匹の赤とんぼを発見した。このマークは以前、平地の水田で羽化したばかりの赤とんぼに前園容疑者がつけたものだった。これが平地から山地に移動する赤とんぼを確認した国内初のケースという大発見で、のちに菅原さんは地元紙の取材に「赤とんぼ1匹で人生が変わった」と振り返っている。… 前園容疑者が書いた13年3月7日付ブログでは「菅原さんが大学院進学を決め、合格しました」と報告し「しっかりしたバックボーンのある『環境教育のプロ』を育てていきたい」と“恩師”として表明。同年11月28日付には同じく前園容疑者が「(菅原さんは)大御所の先生方にもしっかり顔を覚えられており『前園くんの秘書業がすっかり板についてきた』とからかわれたほどです」とつづった。秘書業が板につくほど、2人はいつも一緒だった。…前園容疑者と菅原さんは家族ぐるみの付き合いで、頻繁に同容疑者宅を訪れていたのが目撃されている。(【教え子殺害】赤とんぼ先生 不倫の末か 東スポWeb 2015年03月17日)

女性は事件前に、LINEで〈死ぬのを許されないなら泰徳さん一家を殺す〉〈妻子が消えるなら犯罪者になっても厭わない〉〈(関係を)マスコミにばらす〉というメッセージを送信していました。

被告は、2015年3月、福井県勝山市の路上に止めた車の中で、「殺してくれ」と頼まれたため首を絞めて殺害したと説明しています。

検察側は、菅原さんのこのLINEについて、「自殺するとは考えず、不倫関係の前園被告の気を引くために送信しただけ」と説明し、「家族を失ったり危害を加えられるのを危惧、特命准教授の地位を失いたくないので、犯行に及んだ」と被告を断罪。

判決は、女性が精神的に不安定だったと指摘して、「自殺の意思を有していた可能性は否定できない」「嘱託がなかったと認定するには合理的な疑いが残る」として、殺人罪ではなく嘱託殺人罪が適用されると結論づけました(弁護士ドットコム 10月4日)。

遺族は弁護士を通じてコメントを発表し、「今回の判決の内容は到底承服できるものではありませんでしたので、検察庁は、必ず、控訴するものと信じていました。従って控訴しないという結論は信じられませんし、全く納得できません。このままでは終わらせたくありません。みわがかわいそうです」(NHK NEWS WEB 福井県のニュース2016年10月15日)と述べています。

参考

事件および裁判の経過に関する報道

  1. 元准教授、嘱託殺人の判決確定へ 懲役3年6月、福井地検控訴せず(福井新聞 2016年10月13日午後5時20分):”福井地検は13日、赤トンボ研究の教え子で東邦大(千葉県)の大学院生菅原みわさん=当時(25)=を絞殺したとして、殺人の罪に問われ、福井地裁の裁判員裁判の判決で嘱託殺人罪を適用して懲役3年6月(求刑懲役13年)を言い渡された、元福井大大学院特命准教授・前園泰徳被告(44)=福井県勝山市=の判決について、控訴しないと発表した。”
  2. 教え子殺害 “嘱託殺人罪”の判決確定へ (日本テレビ系(NNN) 10月13日(木)22時35分配信):”この裁判は、福井大学大学院の元特命准教授・前園泰徳被告(44)が去年3月、福井県勝山市の路上に止めた車の中で、教え子の大学院生・菅原みわさん(当時25)の首を絞めて殺害したとして殺人の罪に問われていたもの”
  3. 教え子殺害に嘱託殺人罪を適用 元准教授に懲役3年6月判決(福井新聞 2016年9月29日午後4時10分):”入子光臣裁判長は嘱託殺人罪を適用した上で懲役3年6月(求刑懲役13年)を言い渡した。公判では、菅原さんによる殺害嘱託(依頼)の有無が争点になっていた。”
  4.  院生遺族怒りあらわ「娘返して」 元准教授被告の裁判で意見陳述(福井新聞 2016年9月21日午前9時15分):”菅原さんの父親、母親、2人の妹が意見陳述した。妹2人は一緒に法廷に立ち「(弁護側の主張で)姉に関し障害という言葉が出て、第三者におかしい人という風に誤解されないか心配だ」と述べた。菅原さんは同被告と出会ってから雰囲気が変わったとし、菅原さんの携帯電話を破棄するなど証拠隠滅を図った同被告に「もう真実を知ることができない。不信感しかない」と怒りを込めた。”
  5. 院生殺害、被告が語った当日状況 弁護側質問で供述「3度首絞めた」(福井新聞 2016年9月17日午前7時00分):”車に乗り込み、菅原さんを落ち着かせようと車を走らせながら説得を試みたが、車内で菅原さんは「殺してくれないなら(被告を含む家族を)殺します。もう無理です」と繰り返したとした。菅原さんの首を絞めた際、最初の2回はともに菅原さんが失神し、車を動かすと振動で目覚めたとした。2度目の失神から目覚めた後、さらに強く殺害を求められたため、両腕で首を絞めたとし「殺すんじゃなく、楽にしたいという思いだった」と供述した。殺害後、妻に110番通報させ、菅原さんの車にあったドライブレコーダーの記録カードや携帯電話の破棄については「事故死というストーリーにしたいと思っていた」とした。”
  6. 殺害元准教授と教え子は不倫関係 検察側が指摘、福井地裁初公判(福井新聞 2016年9月12日午前10時56分):”弁護側は不倫関係などは認めた上で、被害者は「常に愛情に飢え、ゼロか100かの極端な考え方に陥ってしまう『境界性人格障害』だった」と主張。「(被告は)何度も自殺を止めてきた。何とか生きてもらおうとしたが、『もう無理です。殺してください』と何度も言われ、被害者の望みを受け入れた」として「依頼に基づく嘱託殺人」と訴えた。”
  7. 前園容疑者は赤トンボの生態研究で知られ、2009~12年に東邦大(千葉県)で非常勤講師を務めた際に、同大の学生だった菅原さんと知り合った。その後13年から福井大大学院の特命准教授として勤務、勝山市で子供たちに環境教育を行う活動をしていた。周囲から菅原さんは、前園容疑者の助手のような立場と認識されていた。
  8. 魔王が嘱託殺人を言い出した「赤とんぼ研究」殺人事件(週刊新潮 週刊新潮2015年4月16日号):”「菅原さんから“殺してください。もう無理です”と頼まれた」前園がそう述べたのは3月31日。福井簡裁で開かれた勾留理由開示の法廷でのことだった。…前園は殺害までの経緯を次のように供述している。〈菅原さんは普段から、医師に処方された睡眠薬を服用していた。(事件のあった)3月12日、菅原さんは多量の睡眠薬を飲んで苦しみ、“殺してください。もう無理です”と言った。だから彼女の首を絞めた〉…「被害者が実際に“殺してほしい”と頼んでいた可能性があるとするなら、裁判では、彼女の“真意”がどうであったかということが争点になります」と、筑波大学名誉教授の土本武司氏(元最高検検事)。「例えば激しい口論の中で女性が“もう殺してよ!”と口にしてもそれは彼女の真意ではない。どのような状況で発言が出たのかを見極める必要があるのです」”
  9. 赤とんぼ准教授は“魔王様” 菅原さんが「フェイスブック」に記述(SANSPO.COM 2015.3.18):”自身のインターネット交流サイト「フェイスブック」には、前園容疑者との関係を頻繁に投稿。大学院への進学前後には前園容疑者のことを“魔王様”とし「魔王様のおつかいで谷津干潟へ」(13年1月)「いきなり魔王様から『明日までに環境教育学会の口頭発表の申し込みしろ。書類チェックするからさっさと送れ』とご連絡をいただいた」(同4月)などと記述していた。…菅原さんのフェイスブックには“魔王様”とする記述以外にも、2011年夏に赤トンボの生態調査実習に参加した以降「前園先生素敵すぎる…」(11年8月)「厳しくて有名な前園先生に褒められるって、めちゃくちゃ嬉しい!」(12年7月)などと、前園容疑者に傾倒していく様子をつづっている。また、長いつららを持った写真とともに「誰も刺す気はありませんが、この時は私があるお方に刺されそうになりました」(14年3月)という書き込みもしていた。”

判決や事件に関する分析

  1. 教え子の女性を殺害した「赤とんぼ先生」、なぜ「嘱託殺人罪」が適用されたのか?(弁護士ドットコム 10月4日):”検察官は、「嘱託がなかったこと」の証明をしなければなりません。「なかったこと」の証明は通常困難ですが、被告人自身に殺害の動機があったことなどに加え、被害者の生活状況、精神状況、人間関係、経済状況など様々な視点から、『この被害者が自分を殺してほしいなどと依頼するはずがない」という間接事実を証明していくことになるのでしょう。他方、弁護人としては、被告人や関係者の証言などから、被害者に自殺願望があったことや、被告人に対して「自分を殺してほしい」と言っていた可能性を指摘していくことになります。”
  2. 「これから死ぬ、今すぐ来て」:赤とんぼ先生教え子殺害事件から(碓井真史  | 新潟青陵大学大学院教授(社会心理学)/スクールカウンセラー 2016年9月29日)

教員と学生の恋愛に関する規定

  1. ハーバード大学、教授と学生の性的関係を「禁止」(AFP BB NEWS 2015年02月06日):”米国の一流大学の一つ、ハーバード大学(Harvard University)は先ごろ、学内のセクハラに関する方針の見直しを実施し、教授に対し、学生と性的な関係を持ってはならないと通知した。見直しを行った同大学の委員会によると教授らは、担当の教員や指導教員であるかどうかにかかわらず、学生と「恋愛関係または性的関係」を持つことが禁じられる。学部生にも大学院生にも禁止は適用されるという。”

2016年ノーベル賞 大隅良典氏のキャリアパス

毛利秀雄名誉教授が書かれた隣のおじさん-大隅良典君(ノーベル生理学・医学賞の受賞を祝して)の前半部分では、2016年ノーベル医学生理学賞の大隅良典氏の初期のキャリアについて触れられています。今でこそ巨額の研究費が投入されているオートファジー研究ですが、その源流は、ラボの構成員が自分自身だけという小さなラボでの仕事でした(1992年 Journal of Cell Biology 119, 301-311)。後に豊かな実りをもたらすことになる、研究の種をまいた仕事も、この小さな研究室で生まれました(1993年 FEBS Letters 333, 169-174)。

以下、研究者のキャリアパスという観点でこの文章の一部を紹介します。

学部生時代

私が東京大学教養学部の助教授になりたての頃、同じフロアーで生化学の権威であった今堀和友先生の研究室に入ったばかりの卒研生が、バランスのとり方が悪くて生物学教室の冷却遠心機のローターを飛ばしました。それが大器晩成の人、ノーベル賞受賞者・大隅良典君との最初の出会いです。彼は教養学部の理科系のシニア学科として、数学から地学まで幅広いバックグラウンドをもった人物を育てることを目的とした基礎科学科の第二期生で、同学科の神代時代の秀才の一人です。

大学院時代・ポスドク時代

大学院時代、ポスドク時代は離れていたのでよく知りません。ロックフェラー大学で抗体の構造でノーベル賞をとったエーデルマンのところに行ったようです。理学博士にはなっていますが、突出した仕事はやっていなかったように思います。

アカデミック・ポストへの就職

大腸菌の膜輸送の研究で有名な安楽泰広先生に拾われて助手、講師となり、酵母に手を出すようになります。彼はその頃から論文を書かないので有名でした。

独立ポストへの就職

十年ほどして教養学部の生物学教室で助教授のポストが空き、彼が迎えられます。基礎科学科出身ということもあったかもしれません。

独立後の仕事

初めてもった自分の研究室には顕微鏡と培養器だけといった有様です。でもここで後の研究につながる、酵母の液胞でのオートファジーを光学顕微鏡で見るという快挙が1988年になされるのです。43 歳の時でした。論文が出るのにはさらに4年ばかりかかかりました。

東大教養学部における去就

私が東大を去った後、彼にふさわしい教授ポストが空いていたかどうか定かではありません。しかしともかく論文が無いことが問題のようで、心配して訊いたこともありましたが、「大丈夫です」と落ち着いていました。

教授就任

私は1995 年に基礎生物学研究所の所長として岡崎に赴任します。当時多くの教授ポストが空席のままで、私はそれらを埋めることに努力を注ぎました。そのうちの一人が大隅君です。すでに51歳になっていました。上述のように彼とは以前からいささか関係があったものの、この人事に私は一切関わっていません。実は彼の仕事は論文になる前から海外で評判になっており、人事選考委員の先生方の先見の明によって彼の採用が決まったのです。

 

参考

  1. 隣のおじさん-大隅良典君(ノーベル生理学・医学賞の受賞を祝して)(元基礎生物学研究所長・元岡崎国立共同研究機構長 毛利秀雄名誉教授の寄稿)
  2. 時に沿って 十八年振りの駒場で 大隅 良典(生物学)教養学部報第337号(1989年1月20日):”当時設立された基礎科学科の理念は魅力的に思えて進学したが、そこで様々のタイプの友人に恵まれた。その頃から次第に分子生物学に興味を持つようになり、大学院は今堀和友先生の研究室を選んだ。六〇年代は分子生物学の最盛期であり、大腸菌を用いて遺伝暗号が次々と解明される様を、当事者のような気分で論文を読んだことを鮮明に記憶している。教授が農学部に転任したのを期に博士課程の最後の二年間は京大のこれも設立されたばかりの生物物理教室で過ごした。東大とは違った雰囲気と、意欲的な仲間に出合えたのは幸いだったと思う。その後東大農芸化学の研究生をした後にニューヨークのロックフェラー大学・エーデルマン(IgGの構造解析でノーベル賞を受賞)研に留学した。成果の挙がらない三年間であったが、細胞生物学のメッカであるこの小さな大学での経験はその後の自分の研究に大きな影響を与えた。その後東大理学部植物学教室に十年余りお世話になった。自由でかつ開放的な学科であり、そこで酵母の細胞生物学的な研究を続けることが出来た。そしてこの四月から大学院生の沢山いる大きな研究室を離れ、生物教室に最小単位の研究室を持つことになった。”
  3. 大隅氏「東大なら、研究広がらなかった」(日本経済新聞 電子版 2016/10/4 2:00 有料会員限定記事):”大隅良典氏は3日夜、日本経済新聞社の単独インタビューに応じ「東京大学に残っていたら、ここまで研究は広がらなかった」と話した。大隅氏は1996年に東大助教授から岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所(当時)に移籍した。「東大が悪かったわけではないが、本当に全てのことをひとりでやらないといけなかった」と苦労を語った。”
  4. オートファジーの集学的研究:分子基盤から疾患まで(Multidisciplinary research on autophagy: from molecular mechanisms to disease states) 文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究(研究領域提案型)平成25年度~平成29年度
  5. Takeshige, K., Baba, M., Tsuboi, S., Noda, T. and Ohsumi, Y. (1992). Autophagy in yeast demonstrated with proteinase-deficient mutants and conditions for its induction.Journal of Cell Biology 119, 301-311
  6. Tsukada, M. and Ohsumi, Y. (1993). Isolation and characterization of autophagy-defective mutants of Saccharomyces cervisiae.FEBS Letters 333, 169-174
  7. Mizushima, N., Noda, T., Yoshimori, T., Tanaka, Y., Ishii, T., George, M.D., Klionsky, D.J., Ohsumi, M. and Ohsumi, Y. (1998). A protein conjugation system essential for autophagy.Nature 395, 395-398
  8. 大隅良典博士略歴(参考:東京工業大学 東工大ニュース
    1967(昭和42)年3月東京大学教養学部基礎科学科 卒業
    1974(昭和49)年11月東京大学大学院理学系研究科 理学博士号取得
    1974(昭和49)年12月米国ロックフェラー大学 研究員
    1977(昭和52)年12月東京大学理学部 助手
    1986(昭和61)年7月同 講師
    1988(昭和63)年4月東京大学教養学部 助教授
    1996(平成8)年4月岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所 教授
    2009(平成21)年4月東京工業大学 特任教授
  9. Nobel lecture: Yoshinori Ohsumi, Nobel Laureate in Physiology or Medicine 2016

関連記事

  1. 2016年ノーベル医学生理学賞はオートファジー(自食作用)の分子メカニズム解明に貢献した大隅良典氏が単独受賞

この社会、国の財政状況はおおらかではない

朝日新聞の報道によれば、鶴保庸介・科学技術担当相が、「社会に役立つか役立たないかわからないものであっても、どんどん好きにやってくださいと言えるほど、この社会、国の財政状況はおおらかではない」という発言をしたそうです。どのような文脈でこのような発言が飛び出したのかは、この記事構成からはわかりませんが。

… 大隅さんの受賞決定を受け、松野博一・文部科学相は4日の閣議後会見で、運営費交付金の充実を検討したうえで、「競争的資金をどの程度伸ばすか、予算確保に向けて努力をしたい」と話した。だが、競争的資金は年限があり、息の長い研究には向いていない。
大隅さんは「この研究をしたら役に立つというお金の出し方ではなく、長い視点で科学を支えていく社会の余裕が大事」と話す。
海外との差もある。研究開発費に占める基礎研究の割合はフランスでは8割をゆうに超えるが、日本の大学では半分強にとどまる。
鶴保庸介・科学技術担当相は4日、「社会に役立つか役立たないかわからないものであっても、どんどん好きにやってくださいと言えるほど、この社会、国の財政状況はおおらかではない」と述べた。
また、ドイツなどの欧州では研究費が広く薄く行き渡るように分配されているとされるが、日本では競争的資金が有力な研究者に集中しがちだ。…
(大隅氏、基礎研究の危機訴え ノーベル賞金、若手支援に活用 朝日新聞 DIGITAL 2016年10月5日05時00分)

日本の科学行政のトップのこの発言が、大きな波紋を広げています。

大隅君はインタビューで、基礎研究の重要性を訴え、現状を憂い、そして一億に近い賞金をあげて若手を育てるために役立てたいとコメントしています。それに対してマスコミや首相は応用面のことにしか触れず、文科相は競争的資金の増額というような見当はずれの弁、科学技術担当相に至っては社会に役立つかどうかわからないものにまで金を出す余裕はないという始末です。なげかわしい。これでは科学・技術立国など成り立つはずがありません。隣のおじさん-大隅良典君(ノーベル生理学・医学賞の受賞を祝して) 元基礎生物学研究所長・元岡崎国立共同研究機構長 毛利秀雄 2016年10月07日

以下、出典を示していないものはツイッター上の意見。

日本の科学行政のお粗末さを嘆く声

  1. うわああ 何この発言
  2. 日本終了のお知らせですか?
  3. これが科技相の発言。ちょっと信じられない。
  4. そりゃあそうなんだが、じゃあ科学立国とかゆうなよ
  5. わかってはいたつもりだけど、これが日本の科学技術行政やね。
  6. これが科学技術担当大臣の発言な時点でこの国の未来が思いやられる。
  7. って、この機会に基礎研究の重要性を社会に訴えるどころかこの言い様……
  8. いやあ、そういうこっちゃないんですよ、マジ、この本を読んでみてよ。ということで紹介するのは、三宅泰雄『空気の発見』。大隅良典さんが影響を受けた三冊のうちの一冊だ。(ノーベル賞大隅良典「『役に立つ』という言葉が社会を駄目にしている」が伝わらない悲劇 エキサイトレビュー 2016年10月5日 18時00分 ライター情報:米光一成

大臣の資質を疑う声

  1. それでももぎ取ってくるのがお前の仕事じゃねぇのか。
  2. 自分の仕事をわかってない人間を大臣なんてやらせてていいの?
  3. ドアホ。将来そうする為の投資だろ。その為の予算も取れないならバッジ捨てろ
  4. あははははもう笑うしかねぇ。科学振興の匙投げるならそのポスト要らねえだろ辞めちまえよ

政府が判断することに対する不信感

  1. 「役立つかどうか」を判断できるほど政府は有能ではない。
  2. お前に役に立つかどうかの判断が出来るのか?と聞きたい
  3. それ以前の話。 「社会に役立つか役立たないか」役人や政治家に判断は出来ない。

予算配分のバランスの悪さに対する不満

  1. 散々無駄遣いをしている政権のいうべきことではないだろう。
  2. といって、「役立つ」と声高に主張する「役立たない」ところにばかりお金が行っていないかな?
  3. というなら,他の使途はどうなのさ.一般会計96兆円のうち基礎研究に使ってるのは何パーセントさ?
  4. ならば,科研費十数年分の3兆円も食う五輪なんてやめちまえ
  5. じゃあ3600億円で中古オスプレイ17機も買っている場合か
  6. そんなこと言うなら年間約2千億円の「思いやり予算」もカットしてよ
  7. え、高速増殖炉は??? さんざん迷惑かけて、どんどん好きにやっている
  8. ならばまず社会に何の役にも立っていない日本のアニメをクールジャパンで推進する予算をゼロにするべき

参考

  1. 鶴保内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策、クールジャパン戦略、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策)(内閣府)
  2. 鶴保庸介(ウィキペディア)