MDPIはハゲタカジャーナルか?MDPIのインパクトファクター(JCR2018)(2019年6月発表)

      2019/09/03




オープンアクセスジャーナルの発行元の一つに、MDPI (Multidisciplinary Digital Publishing Institute)という会社があります。以前はBeall氏にハゲタカジャーナルという認定を受けていたのですが、強行な抗議行動を行ったため、結局Beall’s Listからは外されました。Beall氏の最近の論文を読む限り、彼はBeall’s ListからMDPIを外しはしましたが、MDPIに対する考え方は全く変えていないようです。MDPIがいかに執拗な嫌がらせ行動を仕掛けてきたかを報告しています。

Still others tried different strategies. Some tried annoying university officials with numerous emails and letters, often sent as PDF attachments, with fancy letterhead, informing the university how I was hurting its reputation. They kept sending the emails to the university chancellor and others, hoping to implement the heckler’s veto. They tried to be as annoying as possible to the university so that the officials would get so tired of the emails that they would silence me just to make them stop. The publisher MDPI used this strategy. (What I learned from predatory publishers. Jeffrey Beall. Biochemia Medica 2017;27(2):273–8 PDF)

 

MDPIのジャーナルのインパクトファクター

インパクトファクターが4以上あるMDPIのジャーナルを列挙してみます。

  1. Cancers 6.162
  2. Journal of Clinical Medicine 5.688
  3. Cells 5.656
  4. Pharmaceutics 4.773
  5. Vaccines 4.760
  6. Biomolecules 4.694
  7. Antioxidants 4.520
  8. International Journal of Molecular Sciences (IJMS) 4.183
  9. Nutrients 4.171
  10. Microorganisms 4.167
  11. Remote Sensing 4.118
  12. Nanomaterials 4.034

参考

 

MDPIもジャーナルによってはそこそこ高いインパクトファクターがあるため、もはやハゲタカジャーナルという括りに入れられないでしょう。しかしジャーナルサイトを見ると、非常に多くのレビューアーティクルを掲載しており、MDPIの論文を引用してインパクトファクターを上げるための戦略だとしたら、無批判にインパクトファクターの数字を見て感心している場合ではないかもしれません。下の投稿ではそのような懸念が示されています。

However, it appears they may boost their impact factor by publishing loads of reviews, and possibly by promoting citation of their previously published papers in the reviews they publish. I have no direct evidence of the latter, except that I published in Viruses, and most citations for that review have been from other papers published in Viruses. (MDPI journals redditit.om)

 

MDPIを認める研究者は誰か

東北大学ではMDPIはよく利用されているようです。

東北大学所属研究者の論文公表 掲載数の多い出版社 上位15社(2016年)
1 Elsevier 
2 Springer Nature 
3 Wiley 
4 Inst of Phys (IOP) 
5 Amer Chem Soc (ACS) 
6 Royal Soc Chem (RSC) 
7 Taylor & Francis 
8 Amer Inst Phys (AIP)
9 IEEE
10 Pub Lib of Science (PLOS)
11 Oxford Univ Press (OUP)
12 BioMed Central (BMC)
13 Lippincott W&W (LWW)
14 日本金属学会
15 MDPI

 

ハゲタカジャーナルを支持する研究者の特徴

上で紹介したBeall氏の論文では、興味深い分析がなされています。いわく、ハゲタカジャーナルに論文を掲載した研究者は、そのハゲタカジャーナルの最大の擁護者になるとのこと。

I was also always surprised at the extent to which researchers who had published in one or more of a predatory publisher’s journals became the publisher’s biggest defender. It’s as if they felt a sense of loyalty to the publisher. (What I learned from predatory publishers. Jeffrey Beall. Biochemia Medica 2017;27(2):273–8 PDF)

査読の厳しい他の雑誌でさんざん却下されてきた研究者であれば、自分の論文を受理してくれるハゲタカジャーナルを好きになるのは当然だろうという分析です。

 

MDPIに対する個人的な印象

私の個人的な体験で言えば、MDPIは分野違いの雑誌・論文でもお構いなくやたらめったら査読依頼をしてくるので、スパム的な活動すなわちハゲタカジャーナルっぽさを感じていた(る)微妙な会社です。私の個人的な印象を裏付けるようなことがネット上でいくらでも見つかるので、紹介しておきます。

MDPIの査読はかなり緩いようです。下のフォーラムの投稿によれば、自分の学生たちの論文が、サブミッションからアクセプトまでが2週間もかからなかったそう。しかも、それらの論文は他のジャーナルではレビューにすら回してもらえないような内容で、博士課程の中途半端でぽしゃった仕事で、やむにやまれずMDPIジャーナルに出したものだったとのこと。

15 days from submission to first decision is super fast, and in my experience not atypical for MDPI journals. Several of my fellow students have published in their journals as a last resort to publish broken, half finished projects at the end of their PhDs. Work which was rejected without review from other journals was accepted by MDPI journals with no revisions less than two weeks from submission. (reddit.com)

こんな雑誌に出した論文が、業績としてカウントしてもらえて、職が得られたり昇進させてもらえたりするというのであれば、他のジャーナルから蹴られてばかりの研究者にとっては甘美な誘惑になるでしょう。

ジェフリー・ビールの懸念は、「MDPIの大問屋雑誌は何百もの安易に査読された、科学を伝えることよりむしろ昇進や終身雇用(テニュア)を獲得する目的のために主に書かれ、出版されている論文を含んでいる」ことであった[30]。ビールは、MDPIが原稿を募るために電子メールスパムを使用したとも主張した[31]。(MDPI ウィキペディア)

厳格に論文を精査しようとしたエディターが、MDPIに辞めさせられたという記事もあります(下記リンク)。個々の研究者は、このような事実関係を知ったうえで、MDPIのジャーナルに自分の論文を出していいのかどうかを判断する必要があるでしょう。

 

スポンサーリンク

MDPIはハゲタカジャーナルなのか?

ハゲタカジャーナルの定義がそもそも明確ではないため、非常に難しい問題です。一般的にハゲタカジャーナルの特徴として論文掲載料がバカ高いことが挙げられますがネイチャー系のオープンアクセスジャーナルもバカ高いのに、誰もハゲタカジャーナルとは呼びません。

また、ハゲタカジャーナルと判断する指標として粗悪な論文が多いということもありますが、ネイチャーやその姉妹紙でも編集長が疑惑論文を撤回しないために、粗悪な論文が放置されています。粗悪なと言う意味は、「実験で得られたオリジナルデータ≠論文の図表で示されたデータ」という意味です。そうなると、もうどっちがハゲタカ?と頭を抱えててしまいます。

関連記事 ⇒東大が会見、医学系5教授は不正なしとする

MDPIの資料(Annual Report 2018)を見ると、出版している雑誌の数が203、Web of Science Core Collectionに収録されている雑誌の数が127、SCIE掲載の雑誌数が54、Scopus掲載の雑誌数が111ということなので、少なくともMDPIが発行する雑誌の半分程度は世の中で認められている、すなわちハゲタカジャーナルとはみなせないということになります。残りの半分弱は、評価が定まらない状態と言うべきでしょう。

  • 質問: MDPIの評価について 質問の内容 – MDPIから投稿の依頼がメールで再三にわたり来ておりますが、 MDPIの一般的な評価はどのようなものでしょうか。 お忙しいところ誠にお手数とは存じますが、何卒よろしくお願い申し上げます。 (過去の質問 2018年11月22日 エディテージインサイツ
  • 当初はハゲタカジャーナルと名指しされリストに掲載されていたものの、現在はOA学術出版社協会に加盟し、リスト上でも雑誌によって「良いもの悪いものもある」という注釈が加えられている。(粗悪オープンアクセス(OA)ジャーナルについて
  • 中国系OA出版社”MDPI”、金目当ての疑い 2014年02月20日

Nature系の雑誌とMDPIの雑誌の間を分ける線すら客観的に引けない以上、Web of Scienceに収録されたMDPIジャーナルをハゲタカ認定することはできません。ハゲタカとハゲタカでないものを分けるのは、研究者の多くがどう考えるか?という主観的な判断だけかもしれません。

 

SNSでみるMDPIの評判

自分の研究分野でMDPIが認められているのなら、出せば良いと思いますし、あまり評判が良くないのなら論文をMDPIに出しても評価されにくくなる恐れがあります。

 

下のツイートをした人は、MDPIに投稿するのも、査読を請け負うのも、エディトリアルボードに名を連ねるのも今後は絶対にしないと言っています。エディトリアルボードから外してくれという要求を全然聞き入れてもらえなかったそうです。

I’m gonna ask whether publishing in MDPI journals is good or more specifically how is publishing in ‘International Journal of Molecular Sciences’ ? (October 23, 2017 Researchgate.net)

Is the journal ‘Universe’ predatory? (reddit.com)


 - 科学出版, ハゲタカジャーナル