PLOS ONEとは
PLOS ONEは、PLOS(Public Library of Science)が2006年に創刊したオンラインジャーナルです。地球上のどこの誰でもネットにアクセスできさえすれば無料で科学論文を読むことができるという点が画期的でした。大学にいるときに文献検索していると、ほとんどの論文が無料で読めるのが当たり前だと錯覚しますが、たまに自宅からアクセスすると読みたい論文が40ドルなど支払い画面に誘導されて、所属大学が出版社と契約して高いお金を払っていただけであって、実は科学論文というものはほとんどの場合が無料ではなかったことに気付かされます。
また、PLOS ONEはデータが確かなものであれば、研究の意義は(あまり?)問わないという点も画期的でした。研究の意義を決めるのは、その論文が出版された後、その論文を読んだ読者にゆだねればよいという発想です。
PLOS ONEの守備範囲はもともと生物学や医学でしたが、後に工学や人文社会科学なども含むようになったようです。そのためか、基礎科学の研究者から見ると、非科学的と思える突飛な論文が出版されて物議を醸したりします。
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こんな論文が掲載されてしまったということは、査読や編集がちゃんとしていたのかという疑念を生じさせますが、PLOS ONEをハゲタカジャーナルと見なす研究者はとりあえずいないはず。
PLOS ONEのインパクトファクター
PLOS ONEは2006年の創刊で、最初インパクトファクターが2009年4.351、そして2010年は4.411と好調な滑り出しだったと思います。しかし、2011年は4.092と翳りが見え始め、2012年には3.730と4を切ってしまいました。PLOS ONEに続いて同じコンセプトのオープンアクセスジャーナルが多数創刊されたせいか、その後インパクトファクターは下がり気味で、2020年のインパクトファクターは3.240になっています。
- The Rise and Fall of PLOS ONE’s Impact Factor (2012 = 3.730) By PHIL DAVISJUN 20, 2013 The scholarly kitchen
- PLOS One (Wikipedia)
PLOS ONEの採択率
PLOS ONEの採択率は、当初70%程度と非常に高かったような記憶がありますが、今みてみたら45%前後でした(2019年)。
PLOS ONEの査読期間
投稿してから、エディターキックを食らうかそれとも査読にまわるかの決定までの日数は2週間程度。査読後の可否の決定までが45日前後、最終的にアクセプトかリジェクトかの決定までが3か月程度というのが、PLOS ONEが公表しているタイムスケジュール実績になっています。
まあ普通それくらいかかるでしょうとは思いますが、MDPIなどのように査読の質を犠牲にしても速さ命で突き進むジャーナルを見慣れてしまうと、遅いと感じる人も多いのではないでしょうか。研究者のほとんどは、限られた年数の間に論文のアクセプトまでこぎつけないと次がないという崖っぷちの生活をしているので、アクセプトまでのスピード感は、論文投稿者が望む最大のサービスだと言えます。
PLOS ONEの評判
PLOS ONEは、創刊当初は採択率7割で出せば通る救済雑誌のイメージを自分は持っていたのですが、その後、採択率はもう少し厳しくなったようで、最近は4~5割の間みたいです。PLOS ONEを良い雑誌と見なすか、良い雑誌とは見ないかは、その人が普段どのレベルのジャーナルに出しているかにもよるので、何とも言えないところです。
ツイッターでは辛口の声も聞かれますが、リアルでどうかというと、自分はPLOS ONEを持ち上げる人に出会ったことはありませんが、かといって、PLOS ONEのことをことさらけなす人にも出会ったことがありません。
ネットのレビューサイトに、多数の経験談が掲載されているのでURLだけ紹介しておきます(英語読むのがめんどくさいので)。査読がどれくらい厳しいのか、などの情報が得られると思います。
個人的なことをいうと、もともとPLOS (Public Library of Science)の理念は素晴らしいと思っていたので、そのPLOSが明確なコンセプトのもとにつくったPLOS ONEにも良い印象があります。高い採択率のオープンアクセスジャーナルでサイエンティフィックな意義にはこだわらないという以上、玉石混交になるのは想定内なのではないでしょうか。
PLOS ONEは創刊当初の勢いを失っているように思います。競合他社が同様の戦略を採用しており、Nature系のScientific ReportsやCell Press社のiScienceなどに勢いを感じます。
参考
- PLOS ONEのこれまで,いま,この先 佐藤 翔 情報管理/57 巻 (2014) 9 号 p. 607-617 DOI https://doi.org/10.1241/johokanri.57.607