尿1滴で網羅的ながん検査ができるN-NOSE(エヌノーズ)

   




尿1滴で網羅的ながん検査ができるN-NOSE(エヌノーズ)のCMを見かけました。線虫を使ってがんの診断ができるという研究成果は以前からあちこちで紹介されていましたが、ずいぶんと大々的に販売プロモーションをかけているようです。東山紀之さんがTVCMに起用されています。

エヌノーズ【N-NOSE】TVCM / 東山紀之「告白1 受けていない人」篇 2021/10/29 HIROTSUバイオサイエンス

 

がん検査・早期発見の重要性

  • 癌は、早期であればある程、診療にかかる精神的・身体的・経済的・社会的負担が軽く、根治の可能性も高い。進行すればする程、根治の可能性は低下し、切除不能の進行再発癌に至っては、多大の負担と損失のうえ、延命治療となる現実がある。
  • このため、いずれの年齢や社会においても、癌を早期発見・早期治療できれば、様々な場面において負担と損失が小さくできることは明白である。
  • しかし、早期癌では症状が無い事が一般的であり、受診者は癌検診を受けるためのモチベーションに欠けるのが現実である。
  • 簡単で安価、多くの人を対象として施行可能で高精度な癌検診法が新たに開発・応用されれば、世界の癌診療に革命をもたらすと言っても過言ではない。

線虫の嗅覚を用いた癌検出法 (WO2015088039A1 patents.google.com)

 

線虫の嗅覚

N-NOSEは、線虫の嗅覚の感度がずば抜けていることが基盤となっています。HIROTSUバイオサイエンスを起業した代表取締役の広津崇亮氏は学生のときに線虫の嗅覚の研究を開始したそうです。

Hirotsu T., Saeki S., Yamamoto M. and Iino Y. The Ras-MAPK pathway is important for olfaction in Caenorhabditis elegans.  Nature, 404, 289-93 (2000)https://www.nature.com/articles/35005101

その後、広津氏は2013年にがん患者の尿と健常者の尿を線虫が嗅ぎ分けることができることを発見したそう。

  1. A Highly Accurate Inclusive Cancer Screening Test Using Caenorhabditis Elegans Scent Detection. Hirotsu T., Sonoda H., Uozumi T., Shinden Y., Mimori K., Maehara Y., Ueda N., Hamakawa M. PLOS ONE, 10(3):e0118699(2015)
  2. 線虫嗅覚によるがん検査 Cancer screening test using C. elegans scent detection. 広津 崇亮 Hirotsu T. アロマリサーチ Aroma Research,16,134-136 (2015)

 

線虫の嗅覚を用いた癌検出法(特許)

一部を抜粋して紹介。

  1. 【請求項1】被検者由来の生体関連物質又はその処理物の匂いに対する線虫の反応を指標として癌を検出することを特徴とする癌の検出方法であって、被検者由来の生体関連物質又はその処理物の匂いに対して、線虫が正の応答を示したときは、当該応答結果は、被検者は癌である、又は癌のリスクがあると判定することの指標となり、生体関連物質又はその処理物が、体液、細胞、組織、又は細胞若しくは組織の培養物若しくは保存液である、前記方法。
  2. 【請求項4】被検者由来の生体関連物質又はその処理物の匂いに対するトランスジェニック線虫のカルシウム濃度の変化を指標として癌を検出することを特徴とする癌の検出方法であって、前記トランスジェニック線虫は、カルシウム結合タンパク質及び蛍光タンパク質をコードするインディケーター遺伝子を発現させてあり、
    被検者由来の生体関連物質又はその処理物を前記トランスジェニック線虫に刺激として与えたときの、インディケーター遺伝子によりコードされるインディケータータンパク質から発する蛍光の蛍光強度比の変化又は蛍光強度変化が、対照の生体関連物質又はその処理物を使用したときの蛍光強度比の変化又は蛍光強度変化と比較して大きいときは、当該比較結果は、被検者は癌である、又は癌のリスクがあると判定することの指標となり、前記生体関連物質又はその処理物が、体液、細胞、組織、又は細胞若しくは組織の培養物若しくは保存液である、
    前記方法。
  3. 線虫は匂い物質に対して、寄る、逃げるといった化学走性を示すことから、本発明においては、この行動を指標として癌の匂いに対する線虫の反応を調べる。健常者、及び癌患者の尿に対する線虫の反応を調べたところ、健常者の尿に対しては忌避行動を、癌患者の尿に対しては誘引行動を示し、30検体を調べその精度は100%であった(図1)。また、早期癌を含む、胃癌、結腸・直腸癌、膵臓癌の全てに反応したことから、がん探知犬の行動と同じく、様々な癌に共通した、癌特有の匂いに反応している事が示された。
  4. 早期癌を検出することが可能である。ステージ0、1の早期癌についても、高精度で検出可能である。尿を採取した時点(2011年)で既存の腫瘍マーカーで陰性と判断された検体について、このテストでは陽性を示した。この患者は、経過観察中の2年間に癌を発症した。すなわち、既存の腫瘍マーカーでは検出できない癌を、本発明により検出することが可能である。
  5. 一度の検診で多くの種類の癌について診断することができる。これまでのところ、胃癌、結腸・直腸癌、食道癌、膵臓癌、前立腺癌、胆管癌、乳癌、悪性リンパ腫、消化管間葉性腫瘍、盲腸癌、肺癌について検出可能であることを確認している。
  6. 30検体のテストでは100%の感度・特異度で検出が可能であった。さらに、中規模テスト(242検体)を行っても、癌患者について100%の感度・95%の特異度で検出が可能であった。

引用元:https://ipforce.jp/patent-jp-B9-6336481 https://patents.google.com/patent/WO2015088039A1/ja

 

 

 

Q&A

  1. がんの匂い物質の正体は? ⇒ まだわかっていない。
  2. 線虫でがん検出という発想はどこから? ⇒ がん探知犬の話は聞いたことがあったので、犬でできるなら線虫でも。
  3. 課題は? ⇒ いかに多くの人が受けられるように広げるか。

参照:日立財団高尾記念科学技術セミナー2017.10.15国立科学博物館

 

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研究者から事業家へ

元々私は理学部にいたので、正直なところずっと基礎研究にしか興味がありませんでした。… 線虫の嗅覚が優れているのであれば、その機能を世の中の役に立たたせることが出来るのではないかと閃きました。… 2015年の3月に、線虫ががんの匂いを識別する内容の論文を発表しましたが、その当時私は理学部の教員でしたので、実用化は誰かがやるだろうと他人任せにしていました。… 2015年に取材を受けた時、当初は気楽に「実用化は10年後くらいですかね。」と答えていたのですが、このままでは10年後といわず永遠に実用化は不可能だと思い、論文発表の半年後に起業する決断をしたわけです。… 当時は九州大学の教員でしたので兼業という形でやっていました。… 結果失敗しました。ちょうどそのベンチャーを畳む時に今の創業メンバーと知り合いました。… 「あなたが社長をやりなさい!技術の体現をしているのはあなただけなのだから、あなたが先頭に立たないと皆に信用してもらえない。」と言われまして、その時は半信半疑でしたが社長になる決断をしました。(『線虫を用いたがん撲滅への飽くなき挑戦』〜線虫嗅覚センサーを利用した革新的がん検査〜 hbio.jp)*太字強調は当サイト

 

参考

  1. https://lp.n-nose.com/
  2. HIROTSU BIOSCIENCE 
  3. 世界初の線虫がん検査で世界を変える大学発ベンチャー 2019年 1月 21日 中小機構
  4. エイベックス・ヘルスケアエンパワー合同会社(平成3年7月~社名変更 旧社名:エイベックス&ヒロツバイオエンパワー合同会社 AVEX & HIROTSU BIO EMPOWER LLC )
  5. 一般社団法人 Empower Children

  6. 尿1滴で、線虫が早期がんを嗅ぎ分ける! ――95.8%という驚きの高感度 2016年3月17日 IBM 廣津崇亮(ひろつ・たかあき)九州大学大学院理学研究院生物科学部門助教1972年生まれ。1997年、東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。サントリーでの勤務を経て、1998年、再び東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻へ。博士課程で、線虫の嗅覚について研究を開始。2001年、博士課程修了。博士号取得。その後、日本学術振興会特別研究員(東京大学遺伝子実験施設)、京都大学大学院生命科学研究科ポスドク研究員を経て、2005年より現職。

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