他大学大学院への進学を許さない教授

大学の研究室における深刻なハラスメントの事例がツイートされていたので、紹介します。

大学教授が学生らをまるで奴隷か囚人のように自分の研究室に囲い込むのは許される行為ではありません。このツイートおよび他の一連のツイートによれば、この教授は、研究室の学生が他所へ行かないように脅しをかけ、妨害し、他大学大学院へ進学を希望した学生に対しては指導放棄し露骨な苛めにより報復し、学生の人権を蹂躙しています。また、上級生は教授の方針を下級生に対して徹底させる責任があるとして、ラボ全体を巻きこんで誰も逆らえないような体制を作り上げようとしています。

この教授がメールの中で述べているところによれば、彼の考え方は同じ大学の周りの先生方の賛同を得ているようで、決して特別なことではないといいます。この告発に対するインターネット上の反応を見ても、こういう大学の先生は結構多いという声があり、アカデミアにおける構造的な問題です。

アカデミック・ハラスメントの問題は、指導者と学生のどちらかが一方的に悪いといえない場合も多いと思いますが、この告発を見る限り、毎年この研究室からは二人くらいの学生が”消えていく”ということなので、かなり異常なラボです。さらに、過去数年間にこの研究室の学生が大学の相談室やカウンセリングセンターなどに相談した数は、延べ10人以上にものぼるにも関わらず改善されなかったそうです。告発ツイートの中には、この教授は過去に女子学生を一人だけ指導と称して家に呼び、彼女はその後調子がおかしくなり、自殺を仄めかしていたという記述もあります。

学生をこれ以上不幸にしないためにも、大学は速やかに適切な対応をとり、早急にハラスメントが起こりえないような体制を構築する必要があります。

以下、ツイートの一部を転載(文中の .. は中略を示す)。全文はTWEETをご覧ください。

私が人間性、特に研究室、学問、人に対する謙虚さに基づく「仁義」と「縁」の尊重を、これまでずっと一貫して研究室員に説いてきたことはご存じのとおりです。これまでの卒業生もそれをずっと堅持してきています。それが研究室の方針です。最終的には、その堅持が「君たちに研究室(私)の後ろ盾がある」に繋がります。円満な「人間関係」をつづけながら、自分の研究を進展させることが肝要です。そのため、他人から見た本質的謙虚な人間性がなければだめです。

「君たちがこの分野で生きるようとする限りは、しばらくは僕の掌の上の人間関係で動く」のですから。
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しかも、最近はマネーロンダリングならずの何もわかっていない学生の「大学ロンダリング」が問題になってきています。修士から「大学ロンダリング」すると、移った場合もちろんマイナス要因ばかりなのです。当然のことです。それが分からないで、みすみす残念な結果に終わっています。ましては、それが指導教員の推薦の無い場合は、言語道断です。期せずして、最近幾人かの先生たちが仮定の話として例が挙がり、(先日の  先生も3次会でお話していましたが)、もっとわかりやすく、事前にそういう場合、研究室の対処がどうなるかを示した方がよいのではとなったので、それも含めて以下に立て直し案を皆さんにお示しします。

1. ..
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3. 大学ロンダリング(同一分野への)に関しては、当研究室、私とは全く、「縁」をなくす観点から、相手側の先生に以下の趣旨の連絡を事前にいれる。そのようにして、対象学生が金輪際、一切こちらと関わり合いがないことを明確にする。

以下例———————————————-

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私の研究室4年生のXが、貴大学の大学院の先生方の研究室を受験することを耳にしました。
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Xの場合、私は学力は十分にあると思います。しかしながら、Xは学部4年生で研究室での教育期間も短いために、「個人的な意見、意志を持つ自分」と「人の中、組織の中で生かされている自分」とを区別し、謙虚な立場で考え、行動するということを十分に身に付けていない状況にあります。
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1. ..
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2.Xに関しては、表面的には丁寧に振舞うことはできますが、上述した謙虚さをまだ身に付けておりません。
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4.「現段階」でのXを私自身から推薦することはできません。
5.今後Xに関しては、研究室としても私としても、一切関与するつもりはありません。
そちらの研究室にご迷惑がかかるかもしれないので、私としては大変お恥ずかしい限りですが、あえてメールしていることをご理解いただけますと幸甚に存じます。
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こんなメールを私から受け取ったら、相手の先生はどう思われるかは、まだ世間をしらない学生・院生諸君でも、想像に難くないと思います。また、これは私に限らず、   大なら、ほとんどどの先生も対応される方法だと、皆さんに確認いたします。「君たちに研究室(私)の後ろ盾がなくなった」ことを相手方に明記するためですから。

逆をいえば、このように6年間一貫教育をかしている大学の教授の先生方は、それだけの責任を背負って君たち一人一人の教育を行っています。それがわからない不心得者には、社会を教えなければなりません。

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また、研究室皆さん全員に皆さんに以下のことをお勧めします。

『人の中、組織の中で生かされている自分』を謙虚に捉えることができれば、今、研究室の一員としての自分の本分は何であるのかが自ずとわかるでしょう。

また、他人事ではなくXの部分に自分自身を入れてみてください。そうして自分自身を見直し改めて『縁』と『仁義』の大切さ、『人の中、組織の中で生かされている自分』についてどれほど自分自身が深く理解しているか問い直してください。きっと誰しも見直す点があるはずです。そして、一人一人が『縁』と『仁義』をより大切にすることによって研究室の、縁ある人々の、個々人のさらなる発展が生まれてきます。謙虚な姿勢について、皆さんに改めて考えてみることを切に望みます。

最後に、この『縁』と『仁義』が学生諸君のこれからの生きる人生において真に大切なことであり、君たちの人生をより豊かにすると強く思うからこそ、厳しく対応するのであり、君たちの人としての存在そのものを否定する気は毛頭ないことを改めて記載しておきます。

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参考

  1. 文部科学省と各大学にアカデミックハラスメント対策を徹底し,被害者の保護とケアを最優先するよう求めます (change.org)

現在もハラスメントに悩んでいる学生は多くいます.その大半が窓口で相談を握りつぶされたり,申し立てもできず泣き寝入りしている状況にあります.教員によるハラスメントが辛かったら,学生は大学をやめればいいという方もいらっしゃるかもしれません.学生たちは義務教育から,そして大学における研究活動まで多額の税金を投じて教育がされており,将来,日本のために活躍することを期待されています. そんな学生がアカデミックハラスメントによって,たとえば適応障害を発症したり,場合によっては退学に追い込まれるというのは,大きな国家的損失であるといわざるを得ません.

ハラスメントは,直接の被害者ではない周囲の研究者・学生にも無力感をもたらします.ますます研究・教育成果が求められる大学においては,ハラスメント問題はパフォーマンスの低下要因以外のなにものでもありません.したがって,アカデミックハラスメントは大学だけの問題と考えるのではなく,社会全体の問題として捉えるべきです.

我々は,アカデミックハラスメント対応の徹底化を求めます.具体的には,学内ではなく外部に,専門のカウンセラーや人権問題を専門とする法曹関係者らからなる中立的な機関を新たに設けるべきであると考えます.さらに悪質なハラスメントを行った教員は懲戒し,場合によっては刑事事件とし,ハラスメントはひとの命さえも奪いかねない犯罪的行為であり,絶対に許されないという社会的コンセンサスの形成も必要です.(change.org より *赤字の強調は当ウェブサイトによる)

 

他大学大学院への進学を許さない教授たち(新聞報道より)

  1. 茨城大、長時間叱責のアカハラで教授停職処分日刊スポーツ 2018年6月1日13時35分)茨城大は1日、指導する女子学生を長時間叱るなどのアカデミックハラスメントを繰り返したとして、教育学部の40代男性教授を停職3カ月の懲戒処分にしたと発表した。処分は5月31日付。 大学によると、2016年11月、当時4年生で自身の研究室に所属していた20代の女子学生が他大学の大学院に合格したことについて長時間叱責(しっせき)したほか、学生の卒業後も会員制交流サイト(SNS)で人格を傷つける内容のメッセージを送った。

更新:20170525追記

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