Category Archives: 研究不正

ムーンショットPM筑波大教授が強制猥褻で逮捕

筑波大教授逮捕のニュース

【逮捕】女子学生に“わいせつ” 筑波大教授の男を逮捕 Dec 7, 2021【公式】日テレNEWS (動画削除済)

筑波大学の教授の男が、大学内で20代の女子学生に複数回にわたってわいせつな行為をしたとして逮捕されました。 強制わいせつの疑いで逮捕されたのは筑波大学・生命環境系の教授の大沢良容疑者(61)です。 警察によりますと大沢容疑者はことし4月から9月にかけて複数回にわたり、大学内の建物の中で20代の女子学生の胸などを無理やり触るなどのわいせつな行為をした疑いがもたれています。先月、女子学生が警察に被害を訴えたことから発覚したものです。 調べに対し大沢容疑者は、「強制的にわいせつな行為をした認識はない」と容疑を否認しています。(2021年12月7日放送「news every.」より)

逮捕の筑波大教授を送検

【指導後も】筑波大教授を送検 女子学生に“わいせつ” Dec 8, 2021 【公式】日テレNEWS (動画削除済)

報道に基づく事実関係

  • 2021年4月~9月 筑波大学生命環境系 系長 大澤良教授(61)が学内で複数回にわたって20代の女子学生の胸を触るなどのわいせつな行為
  • 9月下旬 女子学生が大学の「ハラスメント相談センター」に相談
  • 10月中旬 加藤副学長が教授に対して、女子学生と会ったり連絡を取ったりしないよう指導
  • 11月18日 女子学生が警察署に相談
  • 12月 警察が捜査し逮捕

参考:筑波大学幹部の教授 強制わいせつ疑いで逮捕 容疑を否認 12月07日 18時08分 茨城 NHK NEWS WEB

筑波大学の発表

本学教員の逮捕について

令和3年12月7日

筑 波 大 学

本学教員の逮捕について

 本日(令和3年12月7日)、本学の教員が、強制わいせつの容疑でつくば警察署に逮捕されたことは、誠に遺憾であり、大学としても大きな衝撃を受けております。

 警察の発表によると、同教員は、今年4月から9月にかけて、本学構内において県内在住の20代女性に数回にわたりわいせつな行為を行ったとされています。

 国立大学法人の教員という立場の者が、構内において、かかる行為を行ったことは許されざることであり、大学としてこのたびの事態を極めて重く受け止めています。被害者の女性に対しまして、心からお詫び申し上げます。

 今後、詳細が明らかになった段階で、大学として厳正な処分を行います。

 本学におきましては、これまでにも法令順守や職員倫理について指導を徹底してまいりましたが、このたびの事態を受けて、全学を挙げて更なる取り組みの強化を進めてまいります。

https://www.tsukuba.ac.jp/news/20211207173000.html

この筑波大学の公式発表を見て、呆れかえりました。「県内在住の20代女性に」ってなんですか?この文言だと、まるで筑波大学とは無関係な女性に対してのわいせつ行為であるかのように思えます。しかし実際には、自分が指導する大学院生(D3)の女性に対するわいせつ行為です。大学の事なかれ主義がよくわかる文章だと思います。「本学構内において」というのも、まるでキャンパスのどこかベンチかと思いました。実際には教授室という密室の中で行われたわいせつ行為です。「逮捕されたことは、誠に遺憾であり、大学としても大きな衝撃」というのもおかしな反応で、被害者は事前に大学に相談したにも関わらず、ほとんどなんの対応もせずに放置したため、被害者が弁護士や警察に相談したといういきさつがあるようです。

 

逮捕された教授はムーンショット型研究開発制度のPM

今回逮捕された教授は内閣府の1000億円規模の予算の研究事業「ムーンショット型研究開発制度」のプロジェクトマネージャー(PM)の一人です。

サイバーフィジカルシステムを利用した作物強靭化による食料リスクゼロの実現

プロジェクトマネージャー 筑波大学 生命環境系 教授 大澤 良
Researchmap

実施体制

被害を受けた女子大学院生にしてみれば、大規模な予算を獲得しているようなビッグボスを告発するのは非常に勇気の要ることだったと思います。普通に大学に通報しても、大学は学生よりもまず教授を守ろうとするのではないでしょうか。大学の公式発表の心無い文章ひとつみても、自分にはそのようにしか思えません。

被害者の女子学生は、ツイッターで告発に至る経緯を、拡散希望として詳細に説明していましたが、現在は削除したようです。


告発の経緯を説明した文章(削除前)を一読しましたが、重要なこととして、会話の一部が録音されていて、相手はセクハラ(強制わいせつ)をしていることを自覚してる発言があったこと、被害者は行為をやめてくれるように頼んでいること、被害にあった日付、時刻、場所の情報までないと証拠として取り上げられてもらえないこと、逐次記録された文書の存在が大事のようです。大学に相談したが放置され(大学からは他言しないように口止めされた)、弁護士や警察に頼ったといういきさつも書かれていました。セクハラやわいせつ行為は立証することが困難で、できるだけ客観的な証拠を残すことが大事だと思います。

”大沢容疑者は、調べに対し「強制的にわいせつな行為をした認識はない」と容疑を否認”(ヤフーニュース)とのことなので、合意があったかなかったかが裁判での焦点になるのかもしれませんが、大学教員が自分が指導する博士課程の学生に対してラボ内でわいせつ行為を働いたという事実だけで、断罪されるに十分事足りるのではないかと思います。研究者生命に関して言えば、博士課程の学生は教授に生殺与奪の権利を持たれている状態なので、弱い立場の学生から拒絶しづらい条件がそもそも存在しており、強制したつもりはないという言い訳は通りません。

勘違いする大学教授

今回の報道で、容疑者の言い訳「強制的にわいせつな行為をした認識はない」を見て思い出したのが、以前、日本化学会がつくった、教授の勘違いを助長させそうなこの動画。

関連記事 ⇒ 日本化学会のPR動画 教授への恋愛感情

学部学生や大学院生は、指導してくれる大学教授に対してはほとんど無条件に尊敬の念を抱くのではないかと思います。それを、何をやっても許されると勘違いしてしまうのだとしたら大間違いです。

 

参考

  1. 2021-12-07 ■筑波大の教授にセクハラされていた女子学生の件 はてな匿名ダイアリー

『今ここにある危機とぼくの好感度について』NHK土曜ドラマ第5話(最終回)2021年5月29日(土)

『今ここにある危機とぼくの好感度について』の放送が完結しました。腐敗した組織や社会に対する批判を、ありそうにないドタバタをふんだんに盛り込んで、楽しめる娯楽番組にまとめていたように思います。研究不正を告発した木嶋みのりが、いかにも理系の研究者にいそうな雰囲気で、いいキャスティングでした。木嶋みのりの口から出てきた言葉がすごい説得力を持って響いてきたのが印象的。ドラマ自体も、木嶋みのりを軸に全てが作られていたんじゃないかと思いました。

 

三芳総長の言葉

 

ここぼく 最終話 ネタバレ

いまここにある危機と僕の好感度について における木嶋みのりの存在の重さについて

今ここにある危機とNHKの好感度について

今ここにある危機と僕の好感度について 第4話 2021年5月22日(土)放送 #ここぼく

今ここにある危機と僕の好感度について

第4話ネタバレ

科学考証に関して

キャストについて

松坂桃李さんの好感度について

大学というところについて

総長の好感度について

コロナ禍の五輪強行との類似性について

第2話で去って行った木嶋みのりの存在のとてつもない大きさについて

今ここにある危機と僕の好感度についての面白さについて

 

参考

  1. NHK『今ここにある危機とぼくの好感度について』と菅首相の危機と好感度について 5/22/2021(土) 12:30 QJWeb クイック・ジャパン ウェブ
  2. 『半径5メートル』『ここぼく』勝田夏子CPに聞く “いま”を切り取る2作が生まれた背景 田幸和歌子 2021.05.22 10:00 Real Sound
  3. NHK土曜ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』第1話、第2話 研究不正告発のもみ消し 

NHK土曜ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』第1話、第2話 研究不正告発のもみ消し #ここぼく

NHKの土曜ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』の第2話の中で研究不正の話が取り上げられたようです。

ネタばれ

岸谷教授は「整えて」という言葉で、日常的に論文データの改ざんを指示していた。けれども、不正を追及されて「今度は言葉の意味の方を変えてきた」。「整えて」は、データの改ざんではなく「机の上を掃除しろ」という意味であると研究室内に周知徹底したのだ。(『ここぼく』が告発する意味の捏造 松坂桃李演じる危機感のない主人公のリアル 2021/5/2(日) 6:05 リアルサウンド YAHOO!JAPAN

 

元カノで非正規研究者のみのり(鈴木杏)は、岸谷教授(辰巳琢郎)の論文不正を世間に告発。大学当局は本調査に乗り出すことを余儀なくされる。だが、理事の須田(國村隼)らから過小報告のプレッシャーを受けた調査委員・上田教授(国広富之)が‥ 

(【土曜ドラマ】今ここにある危機とぼくの好感度について(2) 5/1(土) 午後9:00-午後9:49 nhk.jp

 

関連notes

私自身は責任者ではないものの、同ドラマに研究不正調査考証という形で協力させていただきました。ストーリーに責任を負う立場ではないのですが、そのような形で協力させていただいた立場としてはコメントしないわけにはいかないだろうということで、この件について、以下、コメントします。

「今ここにある危機とぼくの好感度について」第2話について Masaki Nakamura 2021/05/04 00:02 note.com

上のノートでは研究不正調査に関して一般論が説明されていました。かなり抑制の効いたコメントで、正直、自分はもどかしいものを感じます。

 

NHKドラマの不正隠蔽の描き方は誇張なのかI

上のノートでは、”ドラマではかなり誇張されて描かれているとはいえ、本ドラマで描かれているような形での研究不正調査への介入が” とドラマだからオーバーに描いているかのようにも説明しています。また研究不正隠蔽の描き方に関して憤っている大学教授もおられるようです(下のツイート)。しかし、私はOrdinary_Researchersの告発に対する東大の行動や、岡山大の事件などを見れば、むしろドラマで描かれた内容よりも今日本で現実に起きていることのほうがもっと恐ろしいと思います。ドラマでは告発したポスドク一人がキャリアを潰されただけかもしれませんが、岡山大では告発した教授二人が解雇の憂き目にあっているのです(ポスドクを軽んじるつもりはありませんが、ポスドクよりはるかに立場が強いはずの教授ですら学長に解雇されているという意味です)。要職についておられる方々はそうそう本音を表明できないとは思いますが、それにしても、正直、この温度差は一体なんなんだろうと思ってしまいます。

匿名掲示板には、匿名A氏による下のような書き込みもありました。真偽のほどは自分にはわかりませんが、Ordinary_Researchersの告発に関する東大のあの支離滅裂でデタラメな対応を目の当たりにすると、この文章が非常にリアリティを帯びて感じられます。

773匿名A ◆Zm8FyprZhE 2019/06/02(日) 03:11:58.86ID:lJqnTEYta
卒論生の時から捏造データの再現性の追試を担当させられた私と同僚は、みんなからとことん冷笑された。
辛いこと、爆発させたいことがたくさんあった。
そして、同僚は自殺した。教授室に殴り込みに来た同僚のお母さんは、未だに死の真相をしらない。
私と同僚は、愚直に誠実にやって、あれだけ馬鹿にされ、罵倒された。
もう同僚は死んだ。この世には帰ってこない。
だったら、もうこうなったら、私は真実にこだわることでとことん罵倒されたいのだよ。
東大医学部の捏造家が生き延びていることを甘受しているお前ら全員に嫌われたい。馬鹿にされたい。
(捏造、不正論文、総合スレネオ50 https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/life/1555990307/770-n)

NHKドラマの不正隠蔽の描き方は誇張なのかII

上はドラマを見ずに書きましたが、第1話を見て少し細かいストーリーがわかったので書き直します。第1話では、研究不正がなかったことにするために、告発した女性が昔好意を寄せていた男を近づけて抑え込もうとしたり、この女性ポスドクが任期切れで行先がないので助教の口を与えるかわりに黙らせようとしたりしていたり画策していました。そんな目論見は見透かされていたわけですが、このようななりふり構わぬ裏工作が本当に有り得るのかというと、あり得なくないかもしれないけれどもそうそうないんじゃないのと思います。コメディー仕立てにするために、ドラマの制作者が思いっきりありそうにないことを持ち出したのかなと思いました。その一方で、森友事件のように悪いことをした連中がみな出世していたという現実もありますので、見て見ぬふりをできる人間がいい職に就くという現実からして、絶対にないとも言えない気がします。

NHKドラマの不正隠蔽の描き方は誇張なのかIII

第2話まで見ました。ネタバレになりますが、女性ポスドクの木嶋みのりが自分のラボで起きている不正を告発すると決めたときに相談した教授が、研究分野が近いから調査委員を引き受けると言ってくれて、しかし気苦労のせいか理事たちの強硬な姿勢のせいか途中で倒れてしまい、学内一の変人教授に一時的に調査委員長のおはちが回ったのですが、その変人教授がスナックで暴力行為を働いたのがすっぱ抜かれて停職処分となり、回復したくだんの教授が再び調査委員長を務めるのですが、大学から懐柔され、来年度の研究予算を倍増するから穏便に済ませるということを受け入れてしまったようです。

こんなこと(買収)が実際に起こるのかと言えば、まああり得ないんじゃないかと思います。東大医学部の不正調査を見てもわかるように、医学部の不正の調査には他大学の医学部の研究者を調査委委員長に当てたわけで、買収するまでもなく医学の権威たちに忖度せざるをえない人達を調査委員長や調査員にしたのだろうと思います。調査委委員は公開されなかったので、自分の推測にすぎませんが。理学部の不正を担当したメンバーが、同時に医学部の調査まで引き受ければ、不正なしの1行で済ませることなどあり得なかっただろうと思います。

NHKがフィクションのドラマの中で不正調査委員長を大学が買収したことにしたことを問題視するよりも、実際に日本で起きていることが、不正調査委員長や調査委員が忖度したのではないかと強く疑われるような調査報告書になっていることのほうを問題視すべきでしょう。不正調査報告を一切せずに不正なしで済ませているような大学の関係者がNHKにケチをつけるのは、感覚がマヒしているような気がします。

 

関連tweets

不正がない場合には調査内容を報告しなくて良いということにすると、研究機関が一言「不正はなかった」というだけで、不正は完全に隠蔽できてしまいます。東大は調査報告書の全面開示を拒んでいますが、わずかに開示された部分だけでも、手作業が通常だとか、不正としか思えない記述、支離滅裂な文言が垣間見えます。ですから、東京大学医学部に関する調査と判断が本当に妥当性のあるものだったのかどうかを第三者が検証できるように、すべての調査内容を公開すべきだと自分は考えます。


 


 

『今ここにある危機とぼくの好感度について』第2話のストーリーに対する評価


 

 

 


 

『今ここにある危機とぼくの好感度について』第2話の感想

 

 

『今ここにある危機とぼくの好感度について』第1話


 

NHKドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」1話のクライマックス 2021/04/25 rena rerena

  1. Watch Ima Koko ni Aru Kiki to Boku no Kokando ni Tsuite Episode 1 2021/04/26 Michael Noonan

ラボは何時間労働?ボスからの手紙

沼研には正月休みが1日しかなかったそうですが、そこまでとはいわなくてもボスはやはりポスドクにはできるだけ長時間働いて欲しいみたいです。似たような話があったので紹介。

下の記事によれば、カルテックや他のエリート大学ではこの程度の労働時間は通常だそう。

Note that in this missive, Carreira does not impose his own rules on Guido, but those of Caltech. In fact, sources assured me that such work practices were and still are perfectly standard at Caltech. Working in the lab late and on weekends was normal, everyone had to do it, as the sources said. Caltech used to be infamous for people working ungodly hours. Sometimes, lights were on in the labs even at 2 AM on a Saturday morning. Other US elite universities were not really much better, or same. (New JACS EiC Erick Carreira: “correct your work-ethic immediately” SEPTEMBER 6, 2020 For Better Science)

ちなみにこのエリック・カレイラさんは、この手紙がネットに出回り、時折話が蒸し返されることを非常に不快に思い実際かなり迷惑しているみたいですが、事態を収拾するためなのか、その後、この手紙に関して反省文のような声明を出しています。

  1. New JACS EiC Erick Carreira: “correct your work-ethic immediately” SEPTEMBER 6, 2020 For Better Science
     

大学院生やポスドクは何時間働けば良いのか

自分が大学4年生のときの隣のラボのボスは、「1日12時間も働けばクタクタになるよ」と言っていました。それを聞いて、このボスの期待は1日12時間くらいということなのかなと思いました。実際、こんをつめて12時間働くとクタクタになります。途中で息抜きをしながらだと12時間以上働くことは可能です。

自分が大学院のときは、朝8時半始まりで夜は特にルールはなかったのですが、みな終電(24時前頃)まで実験していました。一番早く帰る人が21時くらいに帰っていたと思います。それを見て、結果を出している人は21時に帰っても誰も文句を言わないんだなと思っていました。

自分がアメリカにポスドクで行ったときのラボは、朝は9時~10時の間にみな来ていました。夜は早く帰る人が18時半~19時頃。一番遅く帰る大学院生が21時頃。研究所の日本人のポスドクだけは夜中近くまでいることもあったようです。ただし、夜中に帰るのは安全上の問題があるため、”足”(車)があるかどうかで22時~24時の間に帰っていたのではないかと思います。土日は大学院生も既婚者のポスドクも、あまり来ていませんでした。自分がいたラボには、週末には日本人のポスドクとボスしかいなくて、ボスは「俺が大学院生の時は土曜も実験してたのになぁ。」とぼやいていました。しかし、夜遅くまで実験しろとか、朝早く来いとか、週末も来いなどと強要することは全くありませんでした。

日本の大学院生に比べればアメリカの自分のいたラボの大学院生は圧倒的に少ない労働時間だったと思いますが、セル、サイエンス、ネイチャー、それらの姉妹紙に大学院生が論文を出すようなアクティビティの高いラボでした。この違いは一体なんなんだろうとずっと不思議でした。正直言って今でもはっきりとはわかりません。ただ思うのは、やはりテーマ選びが一番大事なのだろうということです。面白くない仮説を検証しても良い論文にはなりません。だからといって当初のアイデア通りに事が運ぶことなどそうそうなくて、ボスが提示した研究テーマや実験がみなうまくいくということなど決してありませんでした。みな試行錯誤、暗中模索する部分は当然あって、その点に関しては、日本で研究していたときとなんら変わりませんでした。どこで違いが出てくるのかわからないのですが、どうやって良いストーリーにしていくかを実験データを見ながら柔軟に対応していたのかもしれません。あるいは、良いストーリーにならないようなテーマは見切りを付けたり、ストーリーを作るために最低限必要な実験(=必要性、十分性を示す実験)が実現可能なテーマだけに手を出すようにするなどの工夫があったかもしれません。少なくとも、ラボのボスが、手持ちのデータから最大限の知見を引き出す能力に長けていて、ストーリー性のある論文を書く能力が高かったのだろうとは思います。もちろん、エディターキックを回避して、査読にまわしてもらい、査読者の要求にひとつずつ答えていくという忍耐力や覚悟がどれくらいあるかも大事です。

結局のところ、論文を書くのに不必要な実験を何か月もやって無駄にする人もいますので、労働時間と生産性は必ず比例するというものでもありません。長時間労働してしまう学生の中には、実験を失敗したり、論文に必要ない実験をやってしまったりということに原因がある場合もあります。自分を振り返ってみたとき、がむしゃらに馬車馬のように働いたのにぜんぜん結果が出せない期間もありましたが、仕事量が結構落ちてるにも関わらずなぜか研究は順調に進んだ時期もありました。ただし、ストーリーが見えてきて論文が行けるとなったら、集中してアクセプトに漕ぎ着けるまで全速力でやるしかありません。

関連記事 ⇒ イシューからはじめよ【書評】

関連記事 ⇒ 研究テーマの選び方 21のポイント 

関連記事 ⇒ ネイチャー(Nature)に論文を出す方法 

 

 

参考

  1. 研究室メンバーに向けて書かれた恐ろしい手紙 2016年1月23日 アレ待チ
  2. エリック・カレイラ Erick M. Carreira ケムステ
  3. Something Deeply Wrong With Chemistry

宮崎・早野論文が撤回 博士号も取り消し

 

 

  1. 不透明な「宮崎早野論文」撤回~宮崎氏は博士号取り消し (07/30/2020 – 14:09 OurPlanet-TV)福島県立医科大学の宮崎真講師と東京大学の早野龍五名誉教授が、福島県伊達市住民の被曝データを使って執筆した2つの論文について、英国の学術雑誌「Journal of Radiological Protection(以下 JRP誌)」が7月28日付けで撤回を公表した。… また福島医大は、宮崎氏の学位論文撤回が決定されたことの報告と学位取り消しの申し出があったため、今月15日に審査を実施。博士号の学位取消しを承認したことを明らかにした。
  2. 福島県伊達市 被ばくデータ論文撤回 7/31(金) 22:00配信 テレビュー福島 YAHOO!JAPANニュース
  3. 同意なく被ばくデータ使用の論文2本を撤回 早野東大名誉教授ら執筆 2020年7月31日 12時40分 東京新聞
  4. 不透明な「宮崎早野論文」撤回~宮崎氏は博士号取り消し 07/30/2020 – 14:09 OurPlanet-TV
  5. 伊達市民の被曝解析データを前規制委員長へ提供〜宮崎早野論文 ( 03/02/2020 – 01:43 OurPlanet-TV)伊達市民の被ばくデータを同意を得ずに論文に使用していた問題で、論文の著者が投稿前の解析データを原子力規制委員会の田中俊一委員長(当時)に提供していたことがわかった。
  6. 実測数より多いデータ解析〜宮崎早野論文に新疑惑 (02/28/2020 – 02:14 OurPlanet-TV)伊達市が、2014年の第3期(10月〜12月)に住民に配布したガラスバッチは約1万6000だったにもかかわらず、論文では2万1,080人のデータが解析されていた。2万1,080人という人数は、2013年7月から2014年6月までの1年間に、年間を通してガラスバッチを計測した人口と一致するため、前年のデータを流用した可能性がある。
  7. 宮崎早野論文に関するフォーラム開催 東大調査の不備指摘 (2019年9月16日 東大新聞ONLINE)
  8. 「日本の科学は危機的」〜「宮崎早野論文」と研究不正調査を検証 (09/14/2019 – 17:00 OurPlanet-TV )本人の同意を得ずに、福島県伊達市の全住民の被ばく線量を解析していた「宮崎早野論文」問題をめぐり、研究不正調査の結果を問う東京大学出身の研究者らが9月14日、「科学の健全な発展を望む会」を結成し、科学コミュニティの問題を考えるオープンフォーラムを開催した。
  9. 東大・福島医大「研究不正なし」〜宮崎・早野論文 (07/19/2019 – 08:36 OurPlanet-TV )
  10. 福島の放射線量過小評価か 早野名誉教授らの論文不正疑惑を概観 2019年4月3日  東大新聞ONLINE
  11. 「早野(龍五)氏はめちゃくちゃ!伊達市民の人権や尊厳を一切無視。許せない!」 黒川眞一名誉教授(高エネルギー加速器研究機構)による宮崎真・早野龍五論文に関する記者会見 2019.2.22 (記事公開日:2019.2.26 IWJ)ツイッターで「原子力安全神話」に沿った情報発信を行っていたのが東京大学大学院教授(当時。現在は東大名誉教授)の早野龍五氏である。一時はフォロワーが15万人を超えていた。 早野氏は当初、メルトダウンは起きておらず、格納容器も壊れていないと言い切っており、「東大の学者がそう言うのなら大丈夫だろう」と受け止めた人も多かったはずだ。2014年には「ほぼ日刊イトイ新聞」の糸井重里氏との共著『知ろうとすること。』(新潮社)を出版。放射能の影響を懸念する人々に安心を与える科学者として、「3.11後の安全神話」の旗振り役となっている。 その早野氏が、福島県立医科大学講師の宮崎真氏と共同で発表し、英国の放射線防護専門誌「Journal of Radiological Protection」(JRP誌)に掲載された2本の研究論文が問題視されている。
  12. 疑惑の宮崎早野論文を報じた朝日新聞に看過できない「改ざん」。不誠実な「訂正」は許されない2019.02.21 HARBOR BUSINESS Online(ハーバー・ビジネス・オンライン)
  13. 「被曝に関するウソあり」東大名誉教授論文を先輩学者が指摘 (2019/02/15 11:00 最終更新日:2019/02/15 19:43 女性自身)黒川さんは、「少しでも除染の効果を低く見せるための印象操作ではないか」と推察する。
  14. 千代田テクノルのデータを研究に使用認める〜宮崎・早野論文 (02/08/2019 – 17:00  OurPlanet-TV)第一著者の宮崎真福島医科大講師は5日、個人線量測定会社千代田テクノル(本社:東京都文京区)」から提供を受けたデータを使っていたことを認めた。また研究は、仁志田昇司前市長に持ちかけられたことも明かした。… 宮崎氏が使用を認めたのは、伊達市の個人線量計測を受託している千代田テクノルから入手したデータ。伊達市から個人線量分析業務を受託している同社は2015年2月13日金曜日、「成果物の品質向上を図る」との名目で、宮崎氏と早野氏にデータを開示したいと求める文書を仁志田前市長に提出。土日を挟んだ16日月曜日、市は個人情報保護審査会にかけることなく承認した。
  15.  
  16. 被ばく線量誤り論文修正へ 東大・早野氏 福島の住民データ (2019/1/8 17:10 日本経済新聞)著者の早野龍五東京大名誉教授(原子物理学)は8日、「累積線量を3分の1に評価する重大な誤りがあった」として、掲載した英専門誌に修正を求めたと明らかにした。… 16年12月空間線量との関係を調べた第1論文が掲載された。誤りがあったのは、人が生涯に被ばくする放射線量との関係を検証し17年7月に掲載された第2論文

50代東大教授が自分の大学院生に交際を強要して停職4か月の処分を受けるもセクハラの自覚なし

関連記事⇒東大ミスコン主催者の広告研が東大女子ミスコン応募者ファイナリストににセクハラ

 


東大のウェブサイト上の記者発表資料を、以下に転載します(太字強調は当サイト)。

東京大学のプレスリリース

懲戒処分の公表について 令和2年2月6日 東京大学

東京大学は、大学院教授(男性・50歳代)に対し、1月29日付けで、停職4月の懲戒処分を行った。

教授は、2年以上にわたり、指導する本学大学院学生に対して恋愛感情を示し続け、当該学生が教授との交際を望んでいないことを十分に認識しながらなお、執拗に交際を申し込み、交際を拒まれるたびに、研究に関する予定を変更したり、不機嫌になったりするなど当該学生を翻弄し、結果的に研究が続けられなくなるほど精神的に追い詰めた。さらに、意に反する身体接触も行った。

教授の行為は、セクシュアルハラスメントに該当する行為であり、就業規則第38条第5号に定める「大学法人の名誉又は信用を著しく傷つけた場合」及び同条第8号に定める「その他この規則及び大学法人の諸規則によって遵守すべき事項に違反し、又は前各号に準ずる不都合な行為があった場合」に該当することから、同規則第39条第4号に定める停職4月の懲戒処分としたものである。

付 記
本件に関する行為の詳細や被害者に関する情報については、被害者のプライバシーを侵害したり、被害者に対して二次被害を与えるおそれがあることなどから、公表を差し控えます。

<添付資料>
東京大学教職員就業規則(抄) (PDFファイル: 63KB)
東京大学における懲戒処分の公表基準 (PDFファイル: 7KB)


本学教員としてあるまじき行為であり、かかる行為は決して許されるものではなく、厳正な処分をいたしました。
大学として、このことを厳粛に受け止め、今後このようなことがおこらないよう、再発防止にあたっていく所存です。

東京大学 理事・副学長
宮 園 浩 平

(転載元:懲戒処分の公表について記者発表 本部広報課 掲載日:2020年2月6日)


 

 

東大教授のやったこと

教授は2年以上にわたり、無料通信アプリ「LINE(ライン)」や対面で数十回、大学院生に恋愛感情を示し、複数回交際を申し込んだ。教授は拒否されるたび、大学院生の研究の予定を急に変更したり、不機嫌になったりした。無理やり体を触ることもあったという。(読売新聞 msn.com

 

東大教授の主張

「セクハラはしていない」

(読売新聞 msn.com

 

痴漢行為を働いたら逮捕されたり懲戒免職になると思いますが、自分の大学院生に対して無理やり体を触るなどのセクハラ行為を働いても停職4か月で済むというのは処分が軽すぎるのではないでしょうか?東大の声明に「今後このようなことがおこらないよう、再発防止にあたっていく」とありますが、この教授がセクハラだったと考えていないのだから、またお気に入りの女子大学院生が入学してきたら同じことを繰り返しそうです。

 

 

この事件に関するツイートの一部を紹介

東京大学が医学部研究不正疑惑論文に関する調査報告書を国民に開示しないのは違法(総務省審査会第4部会の判断)

続報:日本における研究倫理の存在の耐え難い軽さ(というか、存在しない)

東京大学が医学部研究不正疑惑論文に関する調査報告書を国民に開示しないのは妥当(総務省審査会第5部会の判断)


東大における研究倫理の存在の耐え難い軽さ(というか、存在しない)

2016年の8月にOrdinary_Researchersが告発した東大の論文不正疑惑では、エラーバーを棒グラフの内部に押し込むなど同じような手口が、医学系、理学系のラボからの論文で見られました。

関連記事 ⇒ Ordinary_researchersの告発2通め11論文

グラフが手作業で適当にでっちあげられているのを見て、自分はゾッとしました。見てはいけない犯行現場を目撃してしまったような嫌な気分にさせられたのです。これ以上の不正の証拠はないだろうと思いました。

関連記事 ⇒ 告発内容を画像編集フリーソフトで確認する方法

ところが非常に驚いたことに、理学系では研究不正が認定されラボがお取り潰しになったのに対して、医学系に関しては不正無しの一言で片づけられてしまいました。それどころか、このような論文作成作法が「通常」だと東大がのたまったのです(22報論文調査報告 17~21ページ)。それが本当なら、東大医学部から出る論文は誰からも信用されなくなりますから、東大執行部によるこのようなステートメントは、東大の評判を落とし、東大の名誉を著しく傷つけると思います。

関連記事 ⇒ 医学系論文に関する報告がまだ済んでいない東大

 

東大医学部の不正疑惑論文に関しては、本当にすべての図に関して実験がなされていたのでしょうか?エラーバーを棒グラフの裏に手作業で押し込んでいた論文の図に該当する生データで、有意差は出るのでしょうか?東大にはそれを納税者や研究コミュニティに対して説明する義務があります。もちろん、すべての図に関して個別に!

分生研の不正だけやけに詳細に報告し、医学部のほうは情報がほぼなかったので医学部のほうは調査すらしなかったのかなと当初思いました。しかし、答申にある文書名から察する限り、医学部でも調査は行われていたようです。外部の研究者が調査委員として加わり、科学者としての良心と常識に基づいて調査したのでしょうから、第三者が研究不正の有無を判断する上で十分な情報量が調査資料にあるのではないかと思われます。

「22報論文に関する調査報告書」および、医学部保有の「調査班会議資料」、「部局調査結果報告書」、「個別の論文説明資料(1214頁)」、「ヒアリング反訳資料(291頁)」を公表して、科学コミュニティの判断を仰ぐのは東大執行部の責務でしょう。そもそも国民の知る権利は法的に保障されており、公開しない理由がないのです。

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東大では生データと発表データが食い違うのがほとんどらしいので(22報論文報告書 14ページ)、調査の生データともいうべき「個別の論文説明資料(1214頁)」と「ヒアリング反訳資料(291頁)」を吟味する必要がありそうです。みなさん、是非、東大に資料の開示請求をしてみてください。

外部リンク ⇒ 法人文書の情報公開について(東京大学)

 

さて、東大がなぜ調査内容を国民や研究者コミュニティに対して公開できないのかが謎なのですが、東京大学理事の中には科学者だけでなく弁護士もいますから、調査報告書を隠すことの違法性を承知しているはずです。法を犯してまで隠さなければいけないことって一体何なのでしょう?まさかとは思いますが、デタラメな論文業績(註:東大の報告書いわく、ほとんどの場合において、オリジナルデータすなわち実験で得られた測定値≠論文のグラフが表す数値)に基づいてAMEDや文科省から何十億円もの研究助成を受け取っている現状を現東大理事たちが積極的に守ろうとしているのだとすれば、かなりたちが悪いと言わざるを得ません。文科省やAMED、厚労省がこれを黙認しているのも、国民に対する裏切り行為だと思います。

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アメリカでは研究不正を隠蔽した大学が訴えられたというケースもあります。

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医学部の研究室では棒グラフのエラーバーを手でいじるのが「通常」だとしたら、そんな環境にあって、まともに実験して結果を出そうと努力している多くの研究者や大学院生がハラスメントの被害に合う危険が大きいのではないですか?

情報を隠蔽することにより、研究や教育に極めて不適切な環境を積極的に維持しようと努めている(ように自分には見える)現東大執行部の責任は重大だと考えます。

 

Ordinary_Researchersの告発文を今読み返すと、非常に切迫感があります。

常習性、頻度、公正性、論文の与える影響の深刻さ等を鑑みれば、もはや看過すべきではないという結論に至った。ここで告発するのは、発見したもののごく一部に過ぎないことも申し添えておく。 … あらぬ疑いをかけられている研究室の潔白を証明する良い機会になるか、それとも膿を出すことになるか、どちらにしても東京大学にとってのみならず、日本の生命科学研究にとって良い方向へと進むきっかけになるはずである。(2016年8月14日 Ordinary_researchers 告発文1PDF

しかし、Ordinary_researchersの思惑とは裏腹に、期待されたどちらにもならず、東大が臭いものにフタをしてしまっただけでした。東大のこの行動によって、日本の研究倫理を高める努力が大きくくじかれたのではないでしょうか。

 

日本では、相変わらず研究力の低下が叫ばれる状態が続いており、日本の生命医科学研究は何一つ良い方向へ向かっていないように思います。

研究倫理や研究不正に関する概念は徹底的に破壊され、自分の頭の中の辞書は書き換えを余儀なくされました。

【え】

エラーバー【error bar】平均値を表す棒グラフなどにおいて、標準誤差や標準偏差などを示した線分のこと。通常は、統計処理ソフトで自動的に計算・描画が行なわれる。例外的に、東京大学医学部においてはエラーバーの作成は手作業で行なわれるのが通常である。

【お】

オリジナルデータ【original data】論文の図表のもととなる、観察や測定によって得られた数値や、画像などの生データ。通常は論文の数値と一致するが、東大医においてはほとんど一致しない。

【け】

けんきゅうふせい【研究不正】①実験ノートが存在しないこと、または、実験ノートが提出できないこと。〔東大・医〕定義されない。

【つ】

つうじょう【通常】①普通のことが行なわれているさま。〔東大〕異常なことが行なわれているさま。

【と】

とうだいいがくぶ【東大医学部】(東大の発表に基づき)以下に述べる5個の性質を持つ実体を「東大医学部」と定義する。
1)研究室から発表された論文の図に示されるデータと、オリジナルデータ(実験で得られる生データ)とはほとんど一致しないこと。(そのような論文を出すラボが組織内に存在すること)
2)論文の図作成にあたり、数値データをグラフにする際に、まずマイクロソフトエクセルを用いてグラフを描くこと。
3)エクセルで描いたグラフは、必ずコピペによりマイクロソフトパワーポイント(パワポ)やアドビイラストレーター(イラレ)など別のアプリケーション上に移し変えること。
4)パワポやイラレ上に移されたグラフはそのまま論文の図に使用することはせず、かならず、X軸、Y軸、棒グラフ、エラーバーを手作業でなぞる(トレース)ことにより、手書きのグラフとすること。このとき、オリジナルデータとの一致を消失せしめること。
5)論文の図で示された値がオリジナルデータとどれほど一致していなくても、不正調査委員会、大学執行部、研究資金配分機関、監督省庁からは研究不正と認定されないこと。

【ふ】

ふせいこういはない【不正行為はない】不正行為がない場合には、不正疑惑に関する調査報告を公表しなくてよいという時代錯誤な規則を逆手にとって、不正行為を揉み消したい大学が使う言葉。「調査結果の概要(医学系研究科関係)(結論)申立のあった5名について不正行為はない」

(『現代ラボ用語の基礎知識』より)

 

WORDS WITHOUT DEEDS

東京大学の科学研究における行動規範

1 科学研究は、人類の幸福と社会の発展のために欠くべからざる活動である。科学研究の成果は公開されることにより研究者相互の厳密な評価と批判にさらされ、それに耐え抜いた知識が人類共有の財産として蓄積され活用される。科学研究に携わる者は、この仕組みのもとで人類社会に貢献する責務を負っており、またそれを誇りとしている。この科学者コミュニティの一員として、研究活動について透明性と説明性を自律的に保証することに、高い倫理観をもって努めることは当然である。
2 科学研究における不正行為は、こうした研究者の基本的な行動規準に真っ向から反するものである。のみならず、研究者の活動の場である大学に対する社会の信頼をいちじるしく損ない、ひいては科学の発展を阻害する危険をもたらす。それは、科学研究の本質そのものを否定し、その基盤を脅かす、人類に対する重大な背信行為である。それゆえ、科学研究を行うにあたっては、捏造、改ざん、盗用を行わないことはもとより、広く社会や科学者コミュニティによる評価と批判を可能とするために、その科学的根拠を透明にしなければならない。科学研究に携わる者は、実験・観測等の実施者、共同研究者、研究グループの責任者など立場のいかんを問わず、説明責任を果たすための具体的な措置をとらなければならない。
3 科学研究に携わる者の責任は、負託された研究費の適正使用の観点からも重要である。大学における科学研究を有形無形に支える無数の人々に思いをいたし、十分な説明責任を果たすことにより研究成果の客観性や実証性を保証していくことは、研究活動の当然の前提であり、それなしには研究の自由はあり得ない。その責任を果たすことによってこそ、東京大学において科学研究に携わる者としての基本的な資格を備えることができる。

行動規範及び規則制定にあたっての総長声明

科学研究は、人類が未踏の領域に挑戦して知の拡大をはかり、その成果を人類全体が共有して社会に還元することを目的とする活動である。科学研究において研究者は、科学的手法を用いた研究によって得られた知識を学術論文として公知のものとし、人類共有の資産として蓄積していく。それらの知識は、客観性や実証性に裏付けられたものであり、同時代もしくは後代の研究者による追試や評価を可能とするものであるがゆえに、その科学的根拠を科学者コミュニティが自ら保証するものである。近代科学の歴史の中で人類が築いて来たこの科学研究の作法にしたがって行動することは、研究者の活動の自明の前提であり、現代においても研究者の基本的な行動規準である。また、今日のように、科学研究が細分化し専門化する状況の中においては、研究者がこうした行動規準を確実に遵守していることを、より積極的に社会に説明することが求められる。東京大学は大学憲章において研究の説明責任の重要さを掲げており、東京大学において科学研究に携わる者はそれを当然の原理としてきている。しかしながら近時、この自明のはずの研究作法が遵守されていないのではないかという疑いをよぶ事態が生じていることは、まことに遺憾であると言わなければならない。大学は、科学研究を行うとともにそれを次世代に伝えるという教育機関としての責務を負っており、研究にあたっての行動規準は学問の自由と一体のものとして、きわめて厳格に遵守されなければならない。この規準に対する違反は大学の存立の根幹を脅かす重大な行為であり、大学がそうした違反を防止するための自律的な取組みを責任をもって行うことは、大学の自治の一部である。そこで、このたび、東京大学として、科学研究の基本的な作法を行動規範として再確認するとともに、この行動規範を大学が自ら担保するための委員会制度を規則として定めることとした。こうした行動規範は、東京大学で科学研究に携わる者すべてが当然に血肉化しているはずのものであるが、万一の違反行為に対していっそう厳正かつ確実な対応が行われるようにすることが、あえてここに明文化することの目的である。今後、研究費の獲得をめぐる競争が激しくなる中でも、科学研究の原点に対する意識をたえず喚起し、研究者が相互に忌憚なく論じ合える風通しのよい研究環境を整えることによって、東京大学における科学研究の質をさらに高めていくことに努めたいと考えている。

(引用元:PDF 東京大学)*太字強調は当サイト

上の東大の声明は平成18年3月のもので、非常に力強い言葉です。残念ながらこの決意を今の東大執行部が反故にしてしまったようです。行動が伴わない言葉に、どれほどの意味があるというのでしょうか?

 

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

東京大学が医学部研究不正疑惑論文に関する調査報告書を国民に開示しないのは違法

法律の専門家ら(総務省の審査部会)によれば、東大現執行部が不正調査資料の公開を拒んでいるのは理由に正当性がなく違法だとのことです。結論の部分だけ先に紹介。

22報論文に関する調査報告書」(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。((独情)056 総務省 PDF

別紙に掲げる4文書(以下,併せて「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。
別紙(本件対象文書)
文書1 調査班会議資料
文書2 部局調査結果報告書
文書3 個別の論文説明資料
文書4 ヒアリング反訳資料
((独情)059 総務省 PDF

平成28年度 科学研究行動規範委員会資料」(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。((独情)057 総務省 PDF)

平成29年度 科学研究行動規範委員会資料」(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。((独情)058 総務省 PDF)

以下、総務省のウェブサイトで公開されている答申(PDF)の内容を転載します。それぞれの大見出しは当サイトがつけたものです。なお、文書内の「一部開示」というのは言葉が紛らわしいですが、大部分を墨塗りにしてどうでもいい部分だけを部分的に開示したり、複数の資料があった中のどうでもよい資料のごく一部だけを開示したりしていることであり、実質的には全面的な不開示の様相です。

 

東京大学が公文書『医学部研究不正疑惑に関する「22報論文に関する調査報告書」』を国民に開示しないのは違法

諮問庁:国立大学法人東京大学
諮問日:平成30年6月14日(平成30年(独情)諮問第37号)
答申日:令和元年12月2日(令和元年度(独情)答申第56号)
事件名:22報論文に関する調査報告書の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1 審査会の結論

「22報論文に関する調査報告書」(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。

第2 審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成30年2月9日付け第2017-58号により国立大学法人東京大学(以下「東京大学」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。

2 審査請求の理由

(1)不開示とした理由には根拠や正当性がない

過去の会議の日時を公開することは,会議の開催頻度を公開することになり事業遂行に支障があるというが,会議の開催頻度は目的やそのときどきの状況により異なるのが通常であろうから,今回の不正調査の会議の日時を公開したからといって,それが今後の不正調査等の会議開催頻度においてなんらかの縛りを与えるものにはならず,支障があるとは考えられない。

調査委員会の構成員名を公にすると,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるというが,これは理屈が全く逆である。意思決定の中立性を保証するためには,構成員名を公にすべきである。支障をきたす場合があるとすれば,それは委員の構成に中立性がなかった場合のみであるから,この部分を開示できないというのは,そのような疑念を生じさせる。この疑念を払拭させるためには,開示する必要がある。

審議,検討又は協議に関する情報を開示すると,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある,というのも論理が逆になっていて,不開示の根拠にならない。調査書の目的の一つは,調査が公正に行われたことを示すことである。第三者の研究者からみてデータ捏造としか考えられないような多数の図表がなぜ不正と認定されなかったのか,どのような審議,検討がなされた結果そうなったのかを明らかにしない限り,不正なしという意思決定が中立性のもとに下されたかどうかの疑念が払拭されない。

内容確認に係る事務に関する情報を開示すると,当該事務及び事業の適正な遂行に支障があるおそれ,という理由も理由になっていない。内容確認の意味が不明であるが,これが研究不正を疑われた論文著者らの釈明や実験データの存在の有無などの内容を指すのであれば,むしろ開示することにより,内容確認が適正に遂行されたかどうかを明らかにできるはずである。

研究に関する情報を開示するとその公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれがあるという理由は,まったくもってナンセンスである。研究者が論文発表を行う場合には,どのようにして実験データが得られて,どのようなデータ処理によって論文の図表を作成したかの記述は論文の中に含めるのが通常である。研究者が不正に手を染めずにまっとうに研究をしているかぎり,論文作成にいたるプロセスの全てを公開することになんの支障もないのが,普通の研究者の感覚である。論文著者が実験ノートの片隅に殴り書きしたようなその場限りの思いつきといったものならいざしらず,このような大学の公式な最終報告書に記載された研究に関する情報が開示できない理由はない。

(2)不開示の決定は東大の行動規範に反する

「東京大学の科学研究における行動規範」には研究者の責務として,「研究活動について透明性と説明性を自律的に保証する」,「広く社会や科学者コミュニティによる評価と批判を可能とするために,その科学的根拠を透明にしなければならない」,「十分な説明責任を果たすことにより研究成果の客観性や実証性を保証していくことは,研究活動の当然の前提」といった文言が並んでいるが,不正の疑いが研究者の目からみて非常に濃いにもかかわらず調査報告書を不開示とするのは,科学者コミュニティによる評価や批判を不可能にしており,不正であるとする科学的根拠が不透明なものになっている。

不正の疑義がなぜ晴れるのかの説明を公表しないということは,これらの疑惑論文の研究成果の客観性が保証されていないということである。そのような疑惑に満ちた論文業績に基づいてこれらの論文著者らが数億円規模の研究費(=税金)を獲得しているのは,到底許容されない。

(3)不開示の決定は文科省のガイドラインに反する

論文の図に疑問がある場合に,論文読者が論文筆者に質問したり,議論したりすることは,科学者,研究者の間ではごく普通のことであり,疑義を呈された図に関してどのような過程で図が作成されたのかを説明することは,著者や研究機関の誰にとっても,何の不利益も生じ得ない。わざわざ隠す理由などどこにもない。

科学コミュニケーションを著しく阻害する東大執行部の行為は,東大自身の規範及び文科省が示す「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」の文言「研究者間相互の吟味・批判によって成り立つチェックシステムが不可欠である。」という精神に真っ向から対立するものであり,到底許されざることである。

(4)理学系と医学系における研究倫理にダブルスタンダードを持ち込んでいる

分生研の論文も同時に告発されているが,告発内容は同程度もしくは量,質においてそれ以上の悪質性があると見受けられる。それにもかかわらず,分生研の論文のみに不正を認め,医学系論文にはまったく不正行為がなかったという判断は,信じがたく,もし東大がそう主張したいのであれば,通常の研究者に対して信じるに足る説明を行う責任がある。そうでなければ,東大執行部が医学部の不正隠蔽を目的に,不開示の権限を乱用しているとしか考えられない。

(5)納税者への説明責任をまったく果たしていない

東大は,年間1000億円近い研究費,交付金を得ており,この巨額な資金が東大の研究者によって適正に使われていることを納税者に対する説明責任がある。研究不正の疑義に関する調査報告書を公開しないということは,この説明責任を放棄する行為である。

(6)発表論文は公開されており報告書で非公開とする理由がない

学術誌に掲載された論文は,著者名や所属が明記されており,これらは公開されている以上,個人情報の保護対象にする理由がない。不正疑惑を指摘された論文リスト及び告発内容も,特定ニュースの複数の記事のリンクから閲覧可能であり,事実上,公開されている。よって,論文リストや告発内容の部分を不開示とする理由もない。研究者コミュニティにおいては,実験結果や実験方法に関して読者が疑問を持てば,論文著者らに対して気軽に質問し回答を得るという文化が定着している。このような研究者間のコミュニケーションの常識に照らせば,不正が疑われるような図表の作成がどのように行われたのかの調査結果を公開することは,研究者コミュニティ内の通常の活動の範疇でしかなく,なんら著者や所属機関に不利益をもたらすものではない。仮に不利益が生じるとすれば,それは不開示により隠蔽されていたデータ捏造が露呈する場合のみであろう。

(7)不開示は公共の利益を著しく損なう

このような調査報告書の不開示がまかりとおるなら,東大医学部においてはデータ捏造がやり放題であり,それで特定雑誌等の一流誌に論文を掲載して,その業績により何億円もの研究費を獲得するということがまかり通ることになってしまう。このような行為は,日本の科学研究の進展を著しく阻害するものであり,また,特に医学部でこのような不正活動が放任されるのであれば,本来は病気や患者のための医科学研究であるべきであるのに,患者の期待に対する重大な裏切り行為でもある。

東大が公開されて当然の最終報告書を不公開にしたこと,論文著者らが告発後,反論も訂正も論文撤回もせずに1年以上沈黙していることなどを考えれば,これらが単なる図表の取扱いミスであったと考える合理性はほとんどなく,これらの状況に対するもっとも合理的な説明(仮説)は,重大な不正行為があったとするものである。東大はこの仮説を反証する証拠(今回不開示とされたすべての資料)を公開して,私の仮説が間違っていたことを証明していただきたい。研究不正を隠蔽する工作自体も,新たな研究不正であることから,不開示を認めてしまうと組織的な不正を阻止する手段が完全に失われてしまうことになり,反社会的で公益に反するこのような隠蔽行為を認める訳にはいかない。

第3 諮問庁の説明の要旨

1 本件対象文書について不開示とした理由について

本件対象文書は,「22報論文に関する調査報告書」である。本学では,研究不正の事案については,科学研究行動規範委員会において調査を行っているが,22報論文に関する調査報告書については,以下の理由に該当する部分について不開示とする決定を行った。

(1)当該委員会の開催日時については,本学として当該委員会をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

(2)当該委員会委員長以外の委員名及び部局内調査班班長以外の構成員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

(3)調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。
これについて,審査請求人は,平成30年4月16日受付けの審査請求書のなかで,原処分の取消しを求めている。

2 審査請求人の主張について

審査請求人は,「肝心な部分が全部黒塗りでは,実質的に全面的な不開示と変わらない。全面的な開示,最低でも研究(疑惑の論文の図の説明)に関する記述は全て公開すべきである。」と主張し,「今回の不正調査の会議の日時を公開したからといって,それが今後の不正調査等の会議開催頻度においてなんらかの縛りを与えるものにはならず,支障があるとは考えられない。調査委員会構成員を公表できないというのは,それは委員の構成に中立性がなかった場合のみであり,この疑念を払拭させるには開示する必要がある。審議,検討に関する情報は,どのような審議,検討がなされた結果そうなったのかを明らかにしない限り,不正なしという意思決定が中立性のもとに下されたかどうかの疑念が払拭されない。内容確認に係る事務についても,むしろ開示することにより内容確認が適正に遂行されたかどうか明らかにできるはずである。研究に関する情報についても,大学として公式な最終報告書に記載された研究に関する情報が開示できない理由はない。」不開示の決定は,東大の科学研究における行動規範に反している,不開示の決定は文科省のガイドラインに反する,理学系と医学系における研究倫理にダブルスタンダードを持ち込んでいる,納税者への説明責任をまったく果たしていない,発表論文は公開されており,報告書で非公開とする理由がない,不開示は公共の利益を著しく損なう。」等と主張している。

しかしながら,22報論文に関する調査報告書は,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため開示することはできない。

また,当該委員会開催日や当該委員会委員長・部局内調査班班長以外の委員名・構成員についても上記1にある不開示理由により開示することはできない。研究不正の調査については,その判定結果の如何によらず,対象となる研究者の研究活動に大きな影響を与えるものであり,係る調査については,限りなく公平中立なものとして実施されなければならないと理解している。調査の内容について必要以上に開示することは,調査機関として担保すべき,正確な事実の把握,率直な意見の交換,意思決定の中立性などを困難にするおそれがあり,ひいては,調査機関として行う不正行為の判定結果の信頼性をも損なうことになる。また,「不正なし」と認定した場合には,これらの要請に加えて,不正行為の認定がなされなかった被申立者への配慮も当然考慮すべき事項となってくる。そのため,今回開示した内容については,上記の理由から必要かつ十分なものであると認識としている。したがって,本学の決定は妥当なものであると判断する。以上のことから,諮問庁は,本件について原処分維持が妥当と考える。

第4 調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成30年6月14日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同月28日 審議
④ 令和元年9月5日 本件対象文書の見分及び審議
⑤ 同年10月17日 審議
⑥ 同年11月7日 審議
⑦ 同月28日 審議

第5 審査会の判断の理由

1 本件対象文書について

本件開示請求は,本件対象文書の開示を求めるものである。処分庁は,本件対象文書の一部について,法5条3号並びに4号柱書き,
ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とする原処分を行った。これに対して,審査請求人は,原処分の取消しを求めている。

2 理由の提示について

(1)開示請求に係る行政文書の一部又は全部を開示しないときには,法9条1項及び2項に基づき,当該決定をした旨の通知をしなければならず,この通知を行う際には行政手続法8条に基づく理由の提示を書面で行うことが必要である。理由の提示の制度は,処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨から設けられているものである。かかる趣旨に照らせば,この通知に提示すべき理由としては,開示請求者において,不開示とされた箇所が法5条各号の不開示理由のいずれに該当するのかが,その根拠とともに了知し得るものでなければならず,当該法人文書及び不開示箇所を特定できる記載がなければ,開示請求者に,その種類,性質等が分からず,通常,求められる理由の提示として十分とはいえない。

(2)当審査会において原処分の法人文書開示決定通知書(以下「通知書」という。)を確認したところ,「不開示とした部分とその理由」欄には,以下のとおり記載されている。

「①当該調査委員会の開催日時については,本学として当該会議をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

②当該調査委員会委員長以外の委員名及び部局内調査班
班長以外の構成員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

③調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障が生じるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障をおよぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するとして不開示とする。」

(3)上記(2)①ないし③の理由で不開示とした部分のうち,③の理由で不開示とした部分は,調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,「審議,検討又は協議に関する情報」,「本学の事務及び事業に関する情報」,「内容確認に関する情報」,「研究に関する情報」及び「人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報」に該当するものと抽象的な記載にとどまり,具体的な不開示部分が特定されておらず,頁単位での特定もされていない。また,不開示とされた部分に記載された「審議,検討又は協議に関する情報」や「本学の事務及び事業に関する情報」が,研究不正に係る調査委員会のどのような審議や検討等に関するものか,東京大学のいかなる事務や事業に関するものかといったことも全く不明である上,不開示事由についても,複数の不開示条項の規定をほぼそのまま引用したに等しい内容が書かれているにすぎない。例えば,不開示部分を公にすることによって,法5条3号にいう「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があるとする場合には,何に関する情報を公にすることにより,どのような者から誰に対していかなる圧力や干渉等が加えられることが考えられるのかといったことを示す必要があるところ,通知書では,これらが何も示されておらず,当該各不開示事由に該当すると判断した理由を具体的に示しているとは認められない。そして,当審査会において,本件対象文書を見分したところ,本件対象文書の不開示部分は多数の箇所が文字ないし頁単位で不開示とされていることが認められ,この見分結果及び上記(2)③の不開示理由の記載を踏まえると,上記(2)③の理由で不開示とされた部分は,本件対象文書の不開示部分のどの箇所であるのかを正確に把握できない。また,上記(2)①の理由で不開示とした部分は,不開示とされた情報の内容が「当該委員会の開催日時」と具体的に示されており,一部推測できる部分もあるが,具体的な不開示部分の特定がされていないことから,上記(2)①又は③のいずれの不開示部分に該当するのか正確に把握できない部分もあり,必ずしも明らかにされているとはいえない。なお,上記(2)②の理由で不開示とした部分は,「当該委員会委員長名及び部局内調査班班長以外の構成員名」と記載されており,具体的な不開示部分の特定はされていないものの,不開示とされた情報の内容
及び理由は示されていることから,直ちに理由の提示に不備があるとはいえないと思われるが,文書を全体としてみた場合,上記(2)③に該当する部分がほとんどであり,本件一部開示決定は,全体として理由の提示に不備があるといわざるを得ない。

(4)また,本件開示実施文書を確認したところ,不開示部分がある各頁の上部等には,不開示条項が付記されているが,これを理由の提示又はそれを補うものと見ることはできない。

(5)したがって,原処分は,理由の提示の要件を欠くといわざるを得ず,法9条2項の趣旨及び行政手続法8条1項に照らして違法であり,取り消すべきである。

3 本件一部開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とした決定については,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきであると判断した。

(第4部会)委員 山名 学,委員 常岡孝好,委員 中曽根玲子

 

東京大学が公文書「医学部の部局調査結果報告書等」を国民に公開しないのは違法

諮問庁:国立大学法人東京大学
諮問日:平成30年6月14日(平成30年(独情)諮問第40号)
答申日:令和元年12月2日(令和元年度(独情)答申第59号)
事件名:大学院医学系研究科・医学部が保有する部局調査結果報告書等の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1 審査会の結論

別紙に掲げる4文書(以下,併せて「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。

第2 審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成30年2月9日付け第2017-58号の4号により国立大学法人東京大学(以下「東京大学」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。

2 審査請求の理由

研究に関する情報を不開示にする理由として,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれがあるとしているが,これには根拠がない。なぜなら,論文のデータに疑問が生じたときに,論文読者である研究者が論文著者に連絡をとって質問し,回答を得るという行為は通常研究者コミュニティにおいて当たり前のように行われている行為であって,何らかの支障を生じる恐れは全くないからである。

今回の研究不正告発により,一般の研究者の常識からは理解できないような不適切な論文図表の数々が指摘されたわけであるから,著者からの聞き取り調査の資料を全面的に公開するのは,通常行われている科学コミュニケーションの範疇でしかなく,不開示とする理由にはなり得ない。科学者同士のコミュニケーションを阻害する不開示は,「東京大学の科学研究における行動規範」にある文言,「広く社会や科学者コミュニティによる評価と批判を可能とするために,その科学的根拠を透明にしなければならない」にも反している。このような言行不一致は断じて許されない。

第3 諮問庁の説明の要旨

1 本件対象文書について不開示とした理由について

本件対象文書は,医学系研究科の「調査班会議資料」,「部局調査結果報告書」,「個別の論文説明資料」及び「ヒアリング反訳資料」である。本学では,研究不正の事案については,科学研究行動規範委員会において調査を行っているが,本件対象文書は,以下の理由に該当する部分について不開示とする決定を行った。

(1)当該会議の開催日時・回数・場所については,本学として当該会議をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

(2)調査委員会委員長以外の委員名及び部局内調査班班長以外の構成員については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

(3)当該会議資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。

(4)個別の論文説明資料,ヒアリング反訳資料については,上述と同様な理由により不開示とする。

(5)調査結果報告書のうち,上述に該当する部分については同様な理由により不開示とする。

(6)個人名その他個人を識別できる情報であって,法第5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないものが記されている部分を不開示とする。これについて,審査請求人は,平成30年4月16日受付けの審査請求書のなかで,原処分の取消しを求めている。

2 審査請求人の主張について

審査請求人は,「一連の法人文書開示を求める最大の理由は,理学系論文と医学系論文が別々の調査委員会によって調査され,研究者の目からすれば同じような悪質なデータ捏造の疑いがあるにもかかわらず,理学系論文が厳格に不正認定されたのに対して,医学系論文の不正が一切認定されなかったいきさつを明らかにするためである。医学系論文に関して個別の説明がなく,告発された図の不適切さをパターンごとに整理して,個別には不正の度合いを明らかでなくしている。「部局調査報告書」にある「Ⅱ.各論文に対する部局内調査の結果」というセクションの開示は絶対に必要である。また,同様の理由により「個別の論文説明資料」及び「ヒアリング反訳資料」の中の,研究に関する一切の部分の開示も求める。研究に関する情報を不開示にする理由として,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれがあるとしているが,論文のデータに疑問が生じたときに,論文読者である研究者が論文著者に連絡をとって質問し,回答を得るという行為は通常研究者コミュニティにおいて当たり前であり,何らかの支障が生じる恐れは全くないからである。著者からの聞き取り調査資料を全面的に公開するのは,通常行われている科学コミュニティの範疇でしかなく,不開示とする理由にはなり得ない。「東京大学の科学研究における行動規範」にある「広く社会や科学者コミュニティによる評価と批判を可能とするためには,その科学的根拠を透明にしなければならない」にも反しており,このような言行不一致は断じて許されない」等と主張している。

しかしながら,部局調査班会議資料については,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため開示することはできない。

また,当該委員会開催日時や当該委員会委員長以外の委員名についても上記1にある不開示理由により開示することはできない。また,「個別の論文説明資料」については,研究者一個人の研究ノートや生データの根拠を記載した私的メモであり,研究者の公正かつ能率的な研究の遂行を不当に阻害するおそれがあるとともに,本資料は研究不正の調査のために本学が提供を受けて大学として保有しているものであり,この種の資料を開示すると今後の調査に支障を及ぼすため,開示することはできない。ヒアリング反訳資料については,プライバシー遵守を前提に,今回の調査の目的のみにヒアリングを実施しており,ヒアリング内容が公開されてしまうと今後同種の調査において関係者が申告を拒んだり,真実を申告することを回避する等の事態を誘発するおそれがあるとともに,かかる情報の開示は,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれもあるため開示できない。研究不正の調査については,その判定結果の如何によらず,対象となる研究者の研究活動に大きな影響を与えるものであり,係る調査については,限りなく公平中立なものとして実施しなければならないと理解している。調査の内容について必要以上に開示することは,調査機関として担保すべき,正確な事実の把握,率直な意見の交換,意思決定の中立性などを困難にするおそれがあり,ひいては,調査機関として不正行為の判定結果の信頼性をも損なうことになる。

また,「不正なし」と認定した場合には,これらの要請に加えて,不正行為の認定がなされなかった被申立者への配慮も当然考慮すべき事項となってくる。そのため,今回開示した内容については,上記の理由から必要かつ十分なものであると認識している。したがって,本学の決定は妥当なものであると判断する。

以上のことから,諮問庁は,本件について原処分維持が妥当と考えている。

第4 調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成30年6月14日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同月28日 審議
④ 令和元年9月5日 本件対象文書の見分及び審議
⑤ 同年10月17日 審議
⑥ 同年11月7日 審議
⑦ 同月28日 審議

第5 審査会の判断の理由

1 本件対象文書について

本件開示請求は,本件請求文書の開示を求めるものであり,処分庁は,本件対象文書を特定し,その一部を法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とする原処分を行った。これに対して,審査請求人は,原処分の取消しを求めている。

2 理由の提示について

(1)開示請求に係る行政文書の一部又は全部を開示しないときには,法9条1項及び2項に基づき,当該決定をした旨の通知をしなければならず,この通知を行う際には行政手続法8条に基づく理由の提示を書面で行うことが必要である。理由の提示の制度は,処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨から設けられているものである。かかる趣旨に照らせば,この通知に提示すべき理由としては,開示請求者において,不開示とされた箇所が法5条各号の不開示理由のいずれかに該当するのかが,その根拠とともに了知し得るものでなければならず,当該法人文書及び不開示箇所を特定できる記載がなければ,開示請求者に,その種類,性質等が分からず,通常,求められる理由の提示としては十分とはいえない。

(2)当審査会において原処分の法人文書開示決定通知書(以下「通知書」という。)を確認したところ,「不開示とした部分とその理由」欄には,以下のとおり記載されている。

「①当該会議の開催日時・回数・場所については,本学として当該会議をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

②調査委員会委員長以外の委員名及び部局内調査班班長以外の構成員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

③当該会議資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障が生じるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。

④個別の論文説明資料(1214枚1214頁),ヒアリング反訳資料(291枚291頁)については,上述と同様な理由により不開示とする。

⑤調査結果報告書のうち,上述に該当する部分については同様な意
見により不開示とする。

⑥個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないものが記されている部分を不開示とする。」

(3)上記(2)①ないし⑥の理由で不開示とした部分のうち,③の理由で不開示とした部分は,当該会議資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,「審議,検討又は協議に関する情報」,「本学の事務及び事業に関する情報」,「内容確認に係る事務に関する情報」,「研究に関する情報」及び「人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報」と抽象的な記載にとどまり,具体的な不開示部分が特定されておらず,頁単位での特定もされていない。

また,不開示とされた部分に記載された「審議,検討又は協議に関する情報」や「本学の事務及び事業に関する情報」が,研究不正に係る調査委員会のいかなる審議や検討等に関するものか,東京大学のいかなる事務や事業に関するものかといったことも全く不明である上,不開示事由についても,複数の不開示条項の規定をほぼそのまま引用したに等しい内容が書かれているにすぎない。

例えば,不開示部分を公にすることによって,法5条3号にいう「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があるとする場合には,何に関する情報を公にすることにより,どのような者から誰に対していかなる圧力や干渉等が加えられることが考えられるのかといったことを示す必要があるところ,通知書では,これらが何も示されておらず,当該各不開示事由に該当すると判断した理由を具体的に示しているとは認められない。

(4)次に,上記(2)④の理由については,文書3及び文書4の名称が記載されているものの,不開示部分の理由が「上述と同様な理由」としか記載されておらず,どのような情報が,どの理由で不開示とされたのか何ら説明されておらず,文書3及び文書4の全てが上記(2)①ないし③の理由全てに該当するのか,一部がいずれかの理由に該当し,結果として全部が不開示となったのかも不明である。

(5)さらに,上記(2)⑤の理由で不開示とした部分は,調査結果報告書のうち,「上述に該当する部分」としか記載されておらず,不開示とされた部分も,そこに記載された情報の内容も,上記(2)の①ないし③のいずれの理由に該当するのかも説明されていない。

(6)そして,上記(2)⑥の理由で不開示とした部分は,具体的な不開示部分の特定はされておらず,頁単位での特定もされていない上,「個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないもの」としか記載されておらず,本件対象文書にどのような情報が記載されているか不明である。

(7)当審査会において,本件対象文書を見分したところ,本件対象文書の不開示部分は多数の箇所が文字ないし頁単位で不開示とされていることが認められ,この見分結果及び上記(2)③ないし⑥の不開示理由の記載を踏まえると,上記(2)③ないし⑥の理由で不開示とされた部分は,本件対象文書の不開示部分のどの箇所であるのかを正確に把握できない。なお,上記(2)①及び②の理由で不開示とした部分は,「当該会議の開催日時・回数・場所」,「調査委員会委員長以外の委員名及び部局内調査班班長以外の構成員名」と記載されており,具体的な不開示部分の特定はされていないものの,不開示とされた情報の内容及び理由は示されていることから,直ちに理由の提示に不備があるとはいえないと思われるが,文書を全体としてみた場合,上記(2)③ないし⑤に該当する部分がほとんどであり,本件一部開示決定は,全体として理由の提示に不備があるといわざるを得ない。

(8)また,本件開示実施文書を確認したところ,不開示部分がある各頁の上部には,不開示条項が付記されているが,これを理由の提示又はそれを補うものと見ることはできない。

(9)したがって,原処分は,理由の提示の要件を欠くといわざるを得ず,法9条2項の趣旨及び行政手続法8条1項に照らして違法であり,取り消すべきである。

3 本件一部開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とした決定については,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきであると判断した。

(第4部会)委員 山名 学,委員 常岡孝好,委員 中曽根玲子

別紙(本件対象文書)

文書1 調査班会議資料
文書2 部局調査結果報告書
文書3 個別の論文説明資料
文書4 ヒアリング反訳資料

 

東京大学が公文書「平成28年度科学研究行動規範委員会資料」を国民に開示しないのは違法

諮問庁:国立大学法人東京大学
諮問日:平成30年6月14日(平成30年(独情)諮問第38号)
答申日:令和元年12月2日(令和元年度(独情)答申第57号)
事件名:平成28年度科学研究行動規範委員会資料の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1 審査会の結論

「平成28年度 科学研究行動規範委員会資料」(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。

第2 審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成30年2月9日付け第2017-58の2号により国立大学法人東京大学(以下「東京大学」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。

2 審査請求の理由

22報論文の研究不正を告発した申立書は,東大が不正調査を適切に行ったかどうかを判断する上で重要である。発表論文には著者名や図表作成の方法などが公開されており,論文データに関する疑問は特定ウェブサイトや学術誌の論文掲載ウェブページなどインターネット上で活発に議論されることが普通である。告発内容を公表したからといって,研究の遂行が阻害されることはないし,その他,理由として挙げられたどの項目にも当てはまるものではない。告発内容は,特定ニュースなどの複数の記事で詳細に解説されており,リンクをたどれば告発文書そのものも閲覧できる状態にある。このようにほとんど公開されている告発内容を不開示にしないと業務に支障をきたすということは考えにくく,不開示の理由にならない。

第3 諮問庁の説明の要旨

1 本件対象文書について不開示とした理由について

本件対象文書は,「平成28年度 科学研究行動規範委員会資料」である。本学では,研究不正の事案については,科学研究行動規範委員会において調査を行っているが,当該委員会資料は,以下の理由に該当する部分について不開示とする決定を行った。

(1)当該委員会の開催日時については,本学として当該委員会をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

(2)当該委員会委員長以外の委員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

(3)当該委員会資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。これについて,審査請求人は,平成30年4月16日受付けの審査請求書のなかで,原処分の取消しを求めている。

2 審査請求人の主張について

審査請求人は,「22報論文の研究不正を申告した申立書は,東大が不正調査を適切に行ったかどうかを判断する上で重要である。発表論文には著者名や図表作成の方法などが公開されており,論文データに関する疑問は特定ウェブサイトや学術誌の論文掲載ウェブページなどインターネット上で活発に議論されることが普通である。告発内容を公表したからといって,研究の遂行が阻害されることはないし,その他,理由として挙げられたどの項目にも当てはまるものではない。告発内容は,特定ニュースなどの複数の記事で詳細に解説されており,リンクをたどれば告発文書そのものも閲覧できる状態にある。このようにほとんど公開されている告発内容を不開示にしないと業務に支障をきたすということは考えにくく,不開示
の理由にはならない。」等と主張している。

しかしながら,告発内容のわかる文書を本学として公表していることはなく,その内容についても,関係部局や研究者等に確認するためにも最初の科学研究行動規範委員会の資料としていたところである。告発文書並び予備調査結果文書については,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その構成かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため開示することはできない。

また,当該委員会開催日時や当該委員会委員長以外の委員名についても上記1にある不開示理由により開示することはできない。研究不正の調査については,その判定結果の如何によらず,対象となる研究者の研究活動に大きな影響を与えるものであり,係る調査については,限りなく公平中立なものとして実施しなければならないと理解している。調査の内容について必要以上に開示することは,調査機関として担保すべき,正確な事実の把握,率直な意見の交換,意思決定の中立性などを困難にするおそれがあり,ひいては,調査機関として行う不正行為の判定結果の信頼性をも損なうことになる。

また,「不正なし」と認定した場合には,これらの要請に加えて,不正行為の認定がなされなかった被申立者への配慮も当然考慮すべき事項となってくる。そのため,今回開示した内容については,上記の理由から必要かつ十分なものであると認識している。したがって,本学の決定は妥当なものであると判断する。

以上のことから,諮問庁は,本件について原処分維持が妥当と考える。

第4 調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成30年6月14日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同月28日 審議
④ 令和元年9月5日 本件対象文書の見分及び審議
⑤ 同年10月17日 審議
⑥ 同年11月7日 審議
⑦ 同月28日 審議

第5 審査会の判断の理由

1 本件対象文書について

本件開示請求は,本件対象文書の開示を求めるものである。処分庁は,本件対象文書の一部について,法5条3号並びに4号柱書き,
ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とする原処分を行った。これに対し,審査請求人は原処分の取消しを求めている。

2 理由の提示について

(1)開示請求に係る行政文書の一部又は全部を開示しないときには,法9条1項及び2項に基づき,当該決定をした旨の通知をしなければならず,この通知を行う際には行政手続法8条に基づく理由の提示を書面で行うことが必要である。理由の提示の制度は,処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨から設けられているものである。かかる趣旨に照らせば,この通知に提示すべき理由としては,開示請求者において,不開示とされた箇所が法5条各号の不開示理由のいずれかに該当するのかが,その根拠とともに了知し得るものでなければならず,当該法人文書及び不開示箇所を特定できる記載がなければ,開示請求者に,その種類,性質等が分からず,通常,求められる理由の提示としては十分とはいえない。

(2)当審査会において原処分の法人文書開示決定通知書(以下「通知書」という。)を確認したところ,「不開示とした部分とその理由」欄には,以下のとおり記載されている。

「①当該委員会の開催日時については,本学として当該会議をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

②当該委員会委員長以外の委員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

③当該委員会資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障が生じるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。」

(3)上記(2)①ないし③の理由で不開示とした部分のうち,③の理由で不開示とした部分は,当該委員会資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,「審議,検討又は協議に関する情報」,「本学の事務及び事業に関する情報」,「内容確認に係る事務に関する情報」,「研究に関する情報」及び「人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報」と抽象的な記載にとどまり,具体的な不開示部分が特定されておらず,頁単位での特定もされていない。また,不開示とされた部分に記載された「審議,検討又は協議に関する情報」や「本学の事務及び事業に関する情報」が,研究不正に係る調査委員会のどのような審議や検討等に関するものか,東京大学のいかなる事務や事業に関するものかといったことも全く不明である上,不開示事由についても,複数の不開示条項の規定をほぼそのまま引用したに等しい内容が書かれているにすぎない。

例えば,不開示部分を公にすることによって,法5条3号にいう「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があるとする場合には,何に関する情報を公にすることにより,どのような者から誰に対していかなる圧力や干渉等が加えられることが考えられるのかといったことを示す必要があるところ,通知書では,これらが何も示されておらず,当該各不開示事由に該当すると判断した理由を具体的に示しているとは認められない。そして,当審査会において,本件対象文書を見分したところ,本件対象文書の不開示部分は多数の箇所が文字ないし頁単位で不開示とされていることが認められ,この見分結果及び上記(2)③の不開示理由の記載を踏まえると,上記(2)③の理由で不開示とされた部分は,本件対象文書の不開示部分のどの箇所であるのかを正確に把握できない。なお,上記(2)①及び②の理由で不開示とした部分は,「当該委員会の開催日時」,「当該委員会委員長以外の委員名」と記載されており,具体的な不開示部分の特定はされていないものの,不開示とされた情報の内容及び理由は示されていることから,直ちに理由の提示に不備があるとはいえないと思われるが,文書を全体としてみた場合,上記(2)③に該当する部分がほとんどであり,本件一部開示決定は,全体として理由の提示に不備があるといわざるを得ない。

(4)また,本件開示実施文書を確認したところ,不開示部分がある各頁の上部には,不開示条項が付記されているが,これを理由の提示又はそれを補うものと見ることはできない。

(5)したがって,原処分は,理由の提示の要件を欠くといわざるを得ず,法9条2項の趣旨及び行政手続法8条1項に照らして違法であり,取り消すべきである。

3 本件一部開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とした決定については,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきであると判断した。

(第4部会)委員 山名 学,委員 常岡孝好,委員 中曽根玲子

 

東京大学が公文書「平成29年度科学研究行動規範委員会資料」を国民に開示しないのは違法

諮問庁:国立大学法人東京大学
諮問日:平成30年6月14日(平成30年(独情)諮問第39号)
答申日:令和元年12月2日(令和元年度(独情)答申第58号)
事件名:平成29年度科学研究行動規範委員会資料の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1 審査会の結論

「平成29年度 科学研究行動規範委員会資料」(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。

第2 審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成30年2月9日付け第2017-58号の3号により国立大学法人東京大学(以下「東京大学」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。

2 審査請求の理由

「22報論文に関する調査報告書」において裁定が導かれる過程は,論理的に矛盾している。論文の図のデータは実験で得られた数値とはほとんど異なります。でも不正ではありません。という非倫理的な裁定がどのような経緯で下されたのかを知るためには,この資料の開示が不可欠である。年間数百億円もの科学研究助成を受けている東京大学が,このような支離滅裂な物言いで不正なしの結論だけを発表するのは,あまりにも無責任すぎる。納税者や他の研究者が納得できる公正な議論が行われた証拠として,この文書を開示すべきである。不開示の理由として,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるとしているが,これは,全く逆の話であり,このような支離滅裂な裁定を何の説明もなしに公表したということは,意思決定の中立性が危ぶまれる状況なのであり,不開示の理由として適切ではない。

第3 諮問庁の説明の要旨

1 本件対象文書について不開示とした理由について

本件対象文書は,「平成29年度 科学研究行動規範委員会資料」である。本学では,研究不正の事案については,科学研究行動規範委員会において調査を行っているが,当該委員会資料は,以下の理由に該当する部分について不開示とする決定を行った。

(1)当該委員会の開催日時については,本学として当該委員会をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

(2)当該委員会委員長以外の委員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

(3)当該委員会資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。

(4)個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないものが記されている部分を不開示とする。これについて,審査請求人は,平成30年4月16日受付けの審査請求書のなかで,原処分の取消しを求めている。

2 審査請求人の主張について

審査請求人は,「文書には,研究不正の有無を裁定したときの資料が含まれているが,医学系研究科の不正疑惑論文に関して,「22報論文に関する調査報告書」の黒塗りされていない部分によれば,論文の図のデータと実験の生データ(オリジナルデータ)はほとんど一致しなかったにもかかわらず,不正なしという裁定が下された。これは研究者の常識に反する,極めて奇異な裁定であって,東京大学執行部が医学系研究科の研究不正を隠蔽しようとしているのではないかという疑念を生じさせるものである。この疑念を晴らすためには,どのようにしてこのような裁定が下されたのか,そのいきさつを東大が公開する責任がある。不開示の理由として,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるとしているが,これは全く逆の話であり,このような支離滅裂な裁定を何の説明もなしに公表したということは,意思決定の中立性が危ぶまれる状況なので,不開示の理由として適切ではない。」等と主張している。

しかしながら,裁定については,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため開示することはできない。

また,当該委員会開催日時や当該委員会委員長以外の委員名についても上記1にある不開示理由により開示することはできない。研究不正の調査については,その判定結果の如何によらず,対象となる研究者の研究活動に大きな影響を与えるものであり,係る調査については,限りなく公平中立なものとして実施しなければならないと理解している。調査の内容について必要以上に開示することは,調査機関として担保すべき,正確な事実の把握,率直な意見の交換,意思決定の中立性などを困難にするおそれがあり,ひいては,調査機関として行う不正行為の判定結果の信頼性をも損なうことになる。

また,「不正なし」と認定した場合には,これらの要請に加えて,不正行為の認定がなされなかった被申立者への配慮も当然考慮すべき事項となってくる。そのため,今回開示した内容については,上記の理由から必要かつ十分なものであると認識している。したがって,本学の決定は妥当なものであると判断する。

以上のことから,諮問庁は,本件について原処分維持が妥当と考える。

第4 調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成30年6月14日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同月28日 審議
④ 令和元年9月5日 本件対象文書の見分及び審議
⑤ 同年10月17日 審議
⑥ 同年11月7日 審議
⑦ 同月28日 審議

第5 審査会の判断の理由

1 本件対象文書について

本件開示請求は,本件請求文書の開示を求めるものであり,処分庁は,本件対象文書を特定し,その一部を法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とする原処分を行った。これに対して,審査請求人は,原処分の取消しを求めている。

2 理由の提示について

(1)開示請求に係る行政文書の一部又は全部を開示しないときには,法9条1項及び2項に基づき,当該決定をした旨の通知をしなければならず,この通知を行う際には行政手続法8条に基づく理由の提示を書面で行うことが必要である。理由の提示の制度は,処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨から設けられているものである。かかる趣旨に照らせば,この通知に提示すべき理由としては,開示請求者において,不開示とされた箇所が法5条各号の不開示理由のいずれかに該当するのかが,その根拠とともに了知し得るものでなければならず,当該法人文書及び不開示箇所を特定できる記載がなければ,開示請求者に,その種類,性質等が分からず,通常,求められる理由の提示としては十分とはいえない。

(2)当審査会において原処分の法人文書開示決定通知書(以下「通知書」という。)を確認したところ,「不開示とした部分とその理由」欄には,以下のとおり記載されている。

「①当該委員会の開催日時については,本学として当該会議をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

②当該委員会委員長以外の委員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれ
るおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

③当該委員会資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障が生じるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。

④個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないものが記されている部分を不開示とする。」

(3)上記(2)①ないし④の理由で不開示とした部分のうち,③の理由で不開示とした部分は,当該委員会資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,「審議,検討又は協議に関する情報」,「本学の事務及び事業に関する情報」,「内容確認に係る事務に関する情報」,「研究に関する情報」及び「人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報」と抽象的な記載にとどまり,具体的な不開示部分が特定されておらず,頁単位での特定もされていない。また,不開示とされた部分に記載された「審議,検討又は協議に関する情報」や「本学の事務及び事業に関する情報」が,研究不正に係る調査委員会のどのような審議や検討等に関するものか,東京大学のいかなる事務や事業に関するものかといったことも全く不明である上,不開示事由についても,複数の不開示条項の規定をほぼそのまま引用したに等しい内容が書かれているにすぎない。

例えば,不開示部分を公にすることによって,法5条3号にいう「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があるとする場合には,何に関する情報を公にすることにより,どのような者から誰に対していかなる圧力や干渉等が加えられることが考えられるのかといったことを示す必要があるところ,通知書では,これらが何も示されておらず,当該不開示事由に該当すると判断した理由を具体的に示しているとは認められない。

そして,当審査会において,本件対象文書を見分したところ,本件対象文書の不開示部分は多数の箇所が文字ないし頁単位で不開示とされていることが認められ,この見分結果及び上記(2)③の不開示理由の記載を踏まえると,上記(2)③の理由で不開示とされた部分は,本件対象文書の不開示部分のどの箇所であるのかを正確に把握できない。また,上記(2)④の理由で不開示とした部分は,「個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないもの」としか記載されておらず,本件対象文書にどのような情報が記載されているか不明であり,また,具体的な不開示部分の特定がされていないことから,上記(2)③又は④のいずれの不開示部分に該当するのか明らかではない。なお,上記(2)①及び②の理由で不開示とした部分は,「当該委員会の開催日時」,「当該委員会委員長以外の委員名」と記載されており,具体的な不開示部分の特定はされていないものの,不開示とされた情報の内容及び理由は示されていることから,直ちに理由の提示に不備があるとはいえないと思われるが,文書を全体としてみた場合,上記(2)③に該当する部分がほとんどであり,本件一部開示決定は,全体として理由の提示に不備があるといわざるを得ない。

(4)また,本件開示実施文書を確認したところ,不開示部分がある各頁の上部には,不開示条項が付記されているが,これを理由の提示又はそれを補うものと見ることはできない。

(5)したがって,原処分は,理由の提示の要件を欠くといわざるを得ず,法9条2項の趣旨及び行政手続法8条1項に照らして違法であり,取り消すべきである。

3 本件一部開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とした決定については,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきであると判断した。

(第4部会)委員 山名 学,委員 常岡孝好,委員 中曽根玲子

 

参考

  1. 事件名:22報論文に関する調査報告書の一部開示決定に関する件
  2. 事件名:大学院医学系研究科・医学部が保有する部局調査結果報告書等の一部開示決定に関する件
  3. 事件名:平成28年度科学研究行動規範委員会資料の一部開示決定に関する件
  4. 事件名:平成29年度科学研究行動規範委員会資料の一部開示決定に関する件
  5. 情報公開(独立行政法人等)令和元年度答申 051~(総務省)
  6. 22報論文に関する調査報告書」(一部不開示)
  7. 総務省 情報公開・個人情報保護審査会 委員名簿

 

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島根大学40歳代男性准教授がハラスメント行為、別の島根大学40歳代男性准教授も女性を暴行

2019年6月14日の島根大学の発表によりますと、二人の島根大学の40歳代男性准教授が処分されています。

島根大学の40歳代男性准教授が指導上不必要に容姿に関連付けた侮辱的な言動を行い人格を傷つけるハラスメント行為で戒告処分を受けました。

このたび,令和元年6月13日付けで,下記のとおり本学職員に対し懲戒処分を行いましたので,公表します。同人の行為は,社会の本学に対する信用を著しく傷つけるものであり,教育に携わる大学教員として絶対に行ってはならないことであり,誠に遺憾であります。大学として,このことを深刻に受け止め,本学においてこのような不祥事を起こすことのないよう服務規律の一層の確保に取り組んでまいります。令和元年6月14日 国立大学法人島根大学長 服 部 泰 直

被処分者 職 名 准 教 授
年齢・性別 40歳代・男性
処分内容 戒告
処分理由
当該教員は,指導していた申立人に対し,指導上必要性がないのに,申立人の容姿に関連付けて,侮辱的な言動を行い,申立人の人格を傷つけ,就学上の環境を著しく損なったこと。これらの行動は,国立大学法人島根大学ハラスメントの防止等に関する規程第4条第1項第7号の「その他のハラスメント」に該当する。以前、平成27年5月にも,学生より当該教員に対する,ハラスメント対策委員会への相談受理報告書の提出があり,ハラスメント対策委員会委員長である理事より,学生の立場に配慮した教育,研究指導等を求める指示ないし指導を受けており,より慎重に学生の立場に配慮した丁寧な指導が求められたにも関わらず,再度本件のとおりハラスメント対策委員会への苦情申立があったこと。
根拠条項 国立大学法人島根大学職員就業規則第81条第1項第1号
処分年月日 令和元年6月13日(島根大学 PDF)

また、別の40歳代男性准教授は学外の女性を暴行・傷害して、諭旨解雇(ゆしかいこ)されました。

このたび,令和元年6月11日付けで,下記のとおり本学職員に対する懲戒処分を決定しましたので,公表します。同人の行為は,社会の本学に対する信用を著しく傷つけるものであり,教育に携わる大学教員として絶対に行ってはならないことであり,誠に遺憾であります。大学として,このことを深刻に受け止め,本学においてこのような不祥事を起こすことのないよう服務規律の一層の確保に取り組んでまいります。令和元年6月14日国立大学法人島根大学長 服 部 泰 直

被処分者 職 名 准 教 授
年齢・性別 40歳代・男性
処分内容 諭旨解雇
処分理由
当該教員は,暴行・傷害等私生活上の非違行為により,学外者(女性)に苦痛を与えた。また,このことにより社会に本学及び本学職員への不信を与え,本学に対する社会的信用を著しく傷つけた。これらの行為は,本学職員全体の不名誉となるものであり,国立大学法人島根大学職員就業規則第41条の規定により禁止される信用失墜行為に該当する。
根拠条項 国立大学法人島根大学職員就業規則第81条第1項第1号,第5号及
び第7号 (島根大学 PDF)

参考

  1. 島大准教授が暴力 諭旨解雇 06月14日 20時21分(NHK) また大学は、松江キャンパスの別の40代の男性の准教授についても、指導していた学生の容姿を傷つけるような言動があったとして、戒告の処分にしたと発表しました。
  2. 本学職員の懲戒処分について2019年6月14日(島根大学)
  3. 島根大で残業代未払い 9000万円、労基署勧告 (2019.6.11 13:07産経WEST) 島根大が教職員約200人の残業代計約9000万円を支払わず、松江労働基準監督署が労働基準法に違反するとして昨年8月に是正を勧告していたことが11日、大学への取材で分かった。
  4. 島根大学公式ウェブサイト

実在しない神学者カール・レーフラー(Carl Loevler)が書いた存在しえない論文「今日の神学にとってのニーチェ」

生命科学研究において、存在しないマウスを解析した論文が阪大からNature Medicine誌に発表されたり、存在しないSTAP現象を解析した論文が理研からNature誌に発表されたり、存在しない実験値をグラフ化した論文が東大医学部からトップジャーナルに発表されたりと、存在しないものを報告した論文の例は、枚挙にいとまがありません。

人文社会系の研究でも同じようなことが起きるようです。医学系では不正を告発された学長が逆に不正を告発した教授らを解雇するというひどい事件も岡山大学でありましたが、今回は、大学トップの不正が不正と認定されたというニュースで、少しホッとしました。

 

報道

東洋英和女学院の院長が著書で“捏造”・・・懲戒解雇に(19/05/10) ANNnewsCH 2019/05/10 (YOUTUBE 削除済)

  1. 東洋英和女学院 不正行為に関する調査結果「極めて悪質」 深井智朗院長を懲戒解雇 (KiriShin キリスト新聞 2019年5月10日)
  2. 東洋英和女学院院長が研究不正(2019年5月10日 17:06 沖縄タイムズ/共同通信)東洋英和女学院の院長で同学院大教授の深井智朗氏の著作に架空の文献が使われるなどの不正が疑われた問題で、大学の調査委員会は10日、複数の捏造や盗用を認定したと発表、学院は深井氏を懲戒解雇した。
  3. 東洋英和の院長を懲戒解雇に 著書での捏造や盗用を認定(朝日新聞 有料記事 2019年5月10日14時13分)報告書では、一連の不正行為について、「研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務の著しい懈怠(けたい)があった」と指摘。

 

疑義

小柳氏の質問状は、深井氏によるヴァイマールの聖なる政治的精神――ドイツ・ナショナリズムとプロテスタンティズム』(岩波書店、2012年)などの注と資料の実在に関する問題2点を提示。「深井氏が我が国におけるドイツ・プロテスタンティズム研究の第一人者と目され、多くの読者を獲得しているだけに、現在の状況が放置されると信頼性の危うい情報がますます広く流通することとなります」「かねてより指摘されていた、注の不備や誤訳にも適切にご対応いただき、深井氏の著作を学問的な文章として読める状況が整えられることを切に希望します」とした。(日本基督教学会 深井智朗氏への公開質問状と回答を学会誌に掲載 2018年10月3日 KiriShin

 

認定された不正行為

2.調査(2)調査対象
対象者 深井智朗 本学院院長・東洋英和女学院大学教授
対象著書・論考
①『ヴァイマールの聖なる政治的精神-ドイツ・ナショナリズムとプロテスタンティズ
』(岩波書店、2012 年 196-199 頁)(以下、本件著書という。)
②「エルンスト・トレルチの家計簿」(『図書』岩波書店、2015 年 8 月号 20-25 頁)(以
下、本件論考という。)

3.調査結果(3)特定不正行為の具体的内容
①本件著書第 4 章「4 ニーチェのキリスト教批判の神学的援用」中に登場する「カー
ル・レーフラー」なる人物は存在せず、当該人物が著したとされる論文「今日の神学
にとってのニーチェ」は、被告発者による捏造であると判断する。また、本件著書の
197 頁から 198 頁までにおいて、ヴォルフハルト・パネンベルク著『組織神学の根本
問題』(近藤勝彦・芳賀力訳 日本基督教団出版局、1984 年)の 277 頁から 278 頁ま
でにおける記述とほぼ同一の記述、同様の表現・内容の記述が、引用注が記されない
まま計 10 か所認められたため、被告発者による盗用がなされたものと判断する。
②本件論考中に述べられている「エルンスト・トレルチの家計簿」の根拠資料となる
1920-23 年のトレルチ家の借用書や領収書等の資料は実在せず、被告発者による捏造
と判断する。

(引用元)東洋英和女学院大学における研究活動上の特定不正行為に関する公表概要 2019 年 5 月 10 日 東洋英和女学院大学 PDF)

 

参考

  1. 研究活動上の不正行為に関する調査結果について 2019年5月10日 東洋英和女学院大学 学長 池田 明史

 

ネット上の声

大学における不正がうやむやにされることが多いなか、東洋英和女学院大学の対応を評価する声が聞かれます。

  1. 東洋英和女学院院長が論文でねつ造した“存在しない神学者”「カール・レーフラー」さっそくネタ化される
    (kintoki_naruto togetter
  2. 『存在しない神学者』が話題ですが、そもそも神が存在しないのでは?( togenukin toggetter)

 

早稲田大学商学部50代男性教授がパワハラ・セクハラで懲戒解雇

過去数年間にわたってセクハラ行為やパワハラ行為を働いていた早稲田大学商学部の男性教授が、2019年2月15日付けで懲戒解雇されたことが早稲田大学の発表やその他の報道で明らかになりました。

2013年から複数の職員に対し、大声で繰り返し罵倒するなどのパワハラ行為をしていたほか、複数の学生に対し、体を触るなどのセクハラ行為 (早大教授パワハラ・セクハラ 15日付で解任 2019年2月15日 金曜 午後7:01 FNN PRIME)

男性教授は2015~17年、自分のゼミで複数の学生に対する性的発言や身体接触などのセクハラ行為を繰り返し、精神的苦痛を与えた。13~18年には複数の大学職員を大声でののしるなどのパワハラ行為をしていた。(早大、学生にセクハラの教授解任 職員へパワハラも 2019.02.15. デイリー

早大のウェブサイトでの説明は以下の通り。

  • 不適切な言動や行為により、複数の職員に対して精神的苦痛を与え、業務遂行を著しく阻害するパワー・ハラスメント行為を行っていた
  • 不適切な言動や行為により、精神的苦痛を与え、複数の学生の就学環境を悪化させたなどのアカデミック・ハラスメントおよびセクシャル・ハラスメント行為を行っていた

(2019年2月15日 早稲田大学 教員の解任について 本学商学学術院の男性教員1名を2月15日付で解任といたしました。)

 

教員の解任について 2019年2月15日 商学学術院長

早稲田大学は、商学学術院所属の男性教員1名が学生および職員に対してハラスメントをはじめとする行為を行ったことを調査に基づき確認しました。そのうえで、本学は、教員としての適格性を著しく欠いていると判断し、同教員を2019年2月15日付で解任いたしました。
この件に関し、商学学術院として、被害を受けた学生および職員をはじめ、関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。
本学術院は、今回の事態を重く受け止めており、ハラスメント防止体制の整備にこれまで以上に努め、再発の防止に向けた取組みを行ってまいります。(引用元:早稲田大学商学部

実験を始めてほんの数日目の大学院生に向かって「君、もう辞めなさい」と言ったり、風邪で病院に行ってラボミーティングに遅れた人に向かって「公私混同するな。」と叱ったりした京大教授がかつていたそうですが(→参考記事:沼研伝説)、今の時代だとアカハラ認定されそうですね。

男性教授は2015~17年、自身のゼミに所属する複数の学生に対し、大声でどなったり体に触ったりした。ゼミを欠席した学生にゼミを辞めるよう命じたこともあった。また、13~18年に複数の職員に対し、大声で罵倒したり担当以外の仕事を強要したりした。(学生らを大声で罵倒、早大の50代男性教授解任 2019/2/15(金) 19:28配信 YAHOO!JAPAN 読売新聞オンライン)

 

 

参考

  1. 早大、セクハラやパワハラで教授を解任 2019/2/15 18:27 共同通信社
  2. 早大でセクハラ 50代の商学学術院教授を解任 (2月15日(金)19時42分 毎日新聞 / biglobe.ne.jp)
  3. 「大学教授」と「大学院教授」の違いを教えてください 2012/8/3101:50:30 YAHOO!JAPAN知恵袋

 

早稲田大学における過去のセクハラ問題

早稲田大学文学学術院の男性教員を2018年7月27日付けで解任

当該教員には、以下の非違行為が認められる。① 申立人に対し、ア 申立人や周囲の学生が気づくほど足元を見つめる イ 申立人の外見についてかわいいと告げる ウ 頻回に2人きりで食事に行き、自分が箸をつけた料理を食べさせる、申立人が食べているものをとる エ 指で肩や背中を押す、頭を触る等の不必要な身体接触を行う オ 私用の買い物を頼む などの行為によって不快感を与えたこと。 ② 申立人を食事に連れて行き、食事の際、申立人に対し、「卒業したら女として扱ってやる」、「俺の女にしてやる」などと告げたことによって、苦痛を与えたこと。③ 他学生がいる教室で、授業中に、雨で濡れた服を着替えるように指示した上、申立人に対し「裸だったらどうしようかと思った」と告げたこと。 ④ 本学の名誉および信用を著しく傷つけたこと。 ⑤ 申立人以外の学生に対してもハラスメント行為を行ったこと。⑥ 教員の業務上知り得た個人情報について、他の学生の前で発言したこと。 とりわけ、指導教員の立場や優越的地位を利用して、学生に対して繰り返し飲食に誘い、恋愛感情を表明し、相手に卒業後に「愛人」になるよう迫った行為については、およそ本学教員としての適格性を欠いており、改善を期待することはできない。(教員の解任について Fri, 27 Jul 2018 早稲田大学

STAP細胞事件の真相 小保方晴子氏の頭の中にあったもの

STAP細胞は結局あったのか無かったのか、何だったのか?という疑問をいまだに持っている人も多いかと思います。

STAP細胞事件

STAP細胞事件で炙り出されたのは、日本の生命科学研究がいかに杜撰に行われていたかということでした。2014年1月30日付けのNATURE誌に掲載された2報のSTAP細胞論文の内容を伝えた最初のニュースに接して、凄い研究者が出現したものだと自分も思い、このウェブサイトでも記事にしましたが、今から考えるとマヌケだったと思います。研究者も変わったなあ、こんな見た目の人がこんなすごいことをやってのけるんだ?と当時はびっくりしました。

記者会見&報道を鵜呑みにした、当時のマヌケな記事↓信じられないくらい簡単に体細胞を万能細胞に転換させる方法を日本人女性研究者(30)が発見!

 

STAP細胞とは

STAP細胞とは、Stimulus-triggered acquisition of pluripotency (STAP)という現象を示す細胞ことで、STAP細胞を日本語でいえば刺激惹起性多能性獲得細胞(しげきじゃっきせいたのうせいかくとくさいぼう)となります。2014年に小保方晴子研究員らを中心とする研究グループによりNATURE誌に論文報告されましたが、現在ではそんなものは存在しなかったことになっています。

STAP現象を発見したと宣伝する理研のプレスリリース↓。

マウスのリンパ球などの体細胞を⽤いて、こうした体細胞の分化型を保持している制御メカニズムが、強い細胞ストレス下では解除されることを⾒いだしました。さらに、この解除により、体細胞は「初期化」され多能性細胞へと変化することを発⾒しました。この多能性細胞は胎盤組織に分化する能⼒をも有し、ごく初期の受精胚に⾒られるような「全能性[5]」に近い性質を持つ可能性が⽰唆されました。この初期化現象は、遺伝⼦導⼊によるiPS細胞(⼈⼯多能性幹細胞)の樹⽴とは全く異質のものです。共同研究グループは、この初期化現象を刺激惹起性多能性獲得(STAP)、初期化された細胞をSTAP細胞と名付けました。(2014年1⽉29⽇ 理化学研究所 報道発表資料 PDF)

 

STAP細胞とiPS細胞との違い

STAP細胞はひとりの人間の妄想の産物およびその妄想が共同研究者の脳にも宿った結果、論文報告という意味において現実化したものですが、実在はしません。それに対して、iPS細胞は実際に存在する細胞です。

 

「STAP細胞はあります」

小保方晴子氏が記者会見で記者からの「STAP細胞はあるんでしょうか?ないんでしょうか?」という質問に答えた「STAP細胞はあります」という発言は、2014年の流行語大賞にノミネートされるほど社会的なインパクトがありました。

「STAP細胞はあります!」 4月9日反論会見 小保方氏本人と守護霊が激白!!【ザ・ファクト REPORT #3】

 

  • 流行語大賞はどれ? 「STAP細胞はあります」「ありのままで」など50語ノミネート (2014.11.19 16:25 産経ニュース)今年話題となった言葉に贈られる「2014ユーキャン新語・流行語大賞」の候補が19日、「現代用語の基礎知識」を発行する自由国民社から発表された。今年は、小保方晴子氏の「STAP(スタップ)細胞はあります」やアニメ映画「アナと雪の女王」の「ありのままで」、お笑いコンビ「日本エレキテル連合」の「ダメよ~ダメダメ」など50語がノミネート。大賞とトップ10は12月1日に発表される。
  • こっちが流行語大賞? 小保方さんの「レシピある」発言はすごい(2014.12.18 11:30 AERAdot.) やく:私は一貫して、小保方さんを擁護しています。かみさんには「あなたはインテリ女に弱い」と言われるんですが、まことにそのとおり。疑惑に答えるため4月に開いた会見で発した、「STAP細胞はあります」という言葉が新語・流行語大賞の候補になりましたが、私はそれより、「STAP細胞は200回以上作製に成功した」という言葉に重きを置きたい。検証実験の結果はまだ公表されていませんが、201回目の成功を待てばいいだけです。 ぺリー:小保方さんの「レシピのようなものはある」という発言はすごいと思いました。科学者は、レシピとは言わないでしょ。かっぽう着でレシピですからね。

 

STAP細胞の真実

結局、STAP細胞は存在しなかったと思います。あったとすれば小保方さんの頭の中にだけあったのでしょう。そして、周囲の研究者は、すくなくとも当初は、それを信じたのです。研究の過程で、アーチファクトをうっかり大発見と見間違うことはありがちです。思い込みが激しければ、死にゆく細胞の自家蛍光をGFPの蛍光と見間違った可能性は大きかったと思います。

 

関連書籍(アマゾンへのリンク)

  1. 小保方 晴子『あの日』 講談社 2016年1月29日
  2. 小保方 晴子『小保方晴子日記』 中央公論新社 2018年3月20日
  3. 須田 桃子『捏造の科学者 STAP細胞事件』文藝春秋 2015年1月7日
  4. 小畑 峰太郎『STAP細胞に群がった悪いヤツら』新潮社 2014年11月27日
  5. 黒木 登志夫『研究不正』中央公論新社 2016年4月19日
  6. 渋谷 一郎『STAP細胞はなぜ潰されたのか』ビジネス社 2016年4月22日
  7. 船瀬 俊介『STAP細胞の正体』花伝社 2015年5月25日
  8. 佐藤 貴彦『STAP細胞 事件の真相』パレード 2016年12月14日 
  9. 佐藤 貴彦『STAP細胞 残された謎』パレード 2015年12月7日
  10. 大川 隆法『小保方晴子さん守護霊インタビュー』幸福の科学出版 2014年4月18日
  11. W.ブロード, N.ウェイド『背信の科学者たち』講談社2014年6月20日
  12. 村松 秀『論文捏造』中央公論新社 2006年9月1日
  13. 田中 智之、小出 隆規、安井 裕之『科学者の研究倫理』東京化学同人 2018年6月8日

ちなみに、東京化学同人から出版された『科学者の研究倫理』は、これから科学者を目指す大学生や大学院生にぜひとも読んでいただきたい本です。研究生活を送る上で何に注意したらよいのか、どんな問題が待ち受けているのかが解説されています。
 

理研STAP細胞NATURE論文捏造事件のカテゴリー内の記事

広島大教授が学生にバカ・死ね・ブタ野郎

広島大学でまたもやハラスメント行為が発覚しました。

元教員の懲戒処分(相当)について

 

平成30年12月28日
国立大学法人広島大学

 本学元教員に対し,下記のとおり諭旨解雇相当とし,本人に通知しましたので,お知らせします。
同人は,既に本学を退職していますが,本学在職中に教員としてあるまじき行為を行ったことは,誠に遺憾であり,被害者及び関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。本学としましては,今後,このようなことが起こらないよう,教職員により一層の意識啓発を図り,再発の防止に努める所存です。
なお,本件に関する詳細情報については,被害者のプライバシーに配慮する観点から,公表を差し控えさせていただきます。

1 事案の概要
本学元教員は,本学構成員である被害者3名に対し,「バカ」「死ね」「くそ野郎だな」「ブタ野郎」などの発言や人格否定,罵倒等の言 動を繰り返した。このうち1名は「適応障害」と診断され,1か月間自宅療養を余儀なくされるなど,被害者らに恐怖心や強い心的ストレスなどの精神的苦痛を与えた。

2 処分(相当)の内容
(1)当 該 元 教 員 : 元教授(60歳代・男性)
(2)決 定 年 月 日 : 平成30年12月18日
(3)処分(相当)内容 : 諭旨解雇相当

以上

 

 

参考

  1. 広島大学ハラスメント相談室

君の存在は『無』です 広島大教授がパワハラ

広島大学でパワハラと認定される行為があり、教授が懲戒処分を受けました。

教員の懲戒処分について

 

平成30年12月21日
国立大学法人広島大学

 

本学教員に対し,下記のとおり懲戒処分を行いましたので,お知らせします。
教員としてあるまじき行為を行ったことは,誠に遺憾であり,被害者及び関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。本学としては,今後このようなことが起こらないよう,教職員に対するより一層の意識啓発を図り,再発の防止に努める所存です。
なお,本件に関する詳細情報については,被害者のプライバシーに配慮する観点から,公表を差し控えさせていただきます。

1.処分事案の概要
被処分者のA教授は,併任先の部下であったB准教授に対し,平成24年4月頃から日常的に叱責を繰り返し,業務に関して始末書を複数回提出させた。また,平成25年6月5日,『馬鹿者』と記載してメールで送信した。更に平成26年3月24日,本学の就業規則上,A教授の権限ではないにもかかわらず,「訓告処分通知書」を交付した。さらに,平成27年12月7日,『君の存在は「無」です』と記載してメールで送信し,B准教授に心的ストレスを与えた。
また,同じ併任先の契約事務職員Cに対し,平成30年3月12日,「B准教授は本来ならば懲戒免職なんよ」と発言し,事務職員Cの雇用継続にプレッシャーをかけた。また,同年3月15日及び16日,事務職員Cが同上のことを他部署に相談に行ったことを強く非難した。このことにより事務職員Cは,「不安神経症」と診断され,同年3月20日から3月末日までの間,自宅療養を余儀なくされた。

2.処分の内容
(1)被処分者  : 大学院国際協力研究科 教授(50歳代・男性)
(2)処分年月日 : 平成30年12月21日
(3)処分内容  : 懲戒休職6月

以上

 

 

本件とは全然関係ありませんが、この教授の発言、「君の存在は『無』です。」は多くの大学院生や若手研究者を連想させます。名をあげるような素晴らしい成果を出すまでは、研究者の世界においてみんな「無」の存在でしかないわけで。

それまで、ぼくなんかどこの馬の骨とも知れない一研究者にすぎなかったわけです。… ただ、みんな知りたがっていることを、自分だけが知っていて、それをみんなに聞かせてやるんだというような心の余裕というか、得意の気持というかそういうのもありましたね。… 発表を聞いてる間に、これは本当に面白いと認識してくれて、みんなシーンとしてしまい、畏敬の念を持って発表をきいているという感じがこっちに伝わってきましてね。… それまでは向うは雲の上の人だったわけですよ。それがそんなにほめてくれるんでさすがにうれしかったですね。これで、オレもそれまでの”ノーボディ”から”サムボディ”になったなと思いました。(利根川進) (引用元:『精神と物質』立花隆・利根川進 文藝春秋 1990年192~193頁 )

 

参考

  1. 広島大学大学院国際協力研究科教員一覧
  2. 広島大教授「君の存在は『無』です」 部下へのパワハラメールで懲戒処分
    2018.12.21 18:49 SANSPO.COM

 

参考(広島大学の過去のハラスメント)

  1. 広島大教授が学生に「バカ」「死ね」「くそ野郎だな」「ブタ野郎」 
  2. 大学で“大人のいじめ”1──業績水増し告発の准教授が“クビ”へ(明石 昇二郎)週刊金曜日編集部2017年03月10日 19:03

九州工業大学助教が実験を失敗した大学院生を金属棒で殴打し懲戒解雇に

九州工業大学(北九州市戸畑区 尾家祐二学長)が2018年12月5日に記者会見を行い、同大大学院工学研究院の大学院生に対して暴力行為を働いた指導教官の助教を解雇したそうです。

教育職員の懲戒処分について

更新日:2018.12.05

 本学では、平成30年12月5日、学生に対する暴力行為により、教育職員を懲戒処分(懲戒解雇)としました。

本学は、建学以来の精神である「技術に堪能なる士君子」の養成を基本理念として、学生と教職員が互いに尊重しあう人間関係を保ち、充実した安全で快適な生活を送ることができるよう努めてまいりました。なかでも教育職員には、良好な教育研究環境の下で学生を適切に指導する重い責務があります。それにも拘わらず、今回の不祥事が起きたことは大変残念であり、関係の皆様に深くお詫び申し上げます。

このようなことが二度と繰り返されることのないよう、本学構成員一人一人が、教育機関としての使命を強く自覚し、全学をあげて再発防止に取り組み、信頼回復に努めてまいる所存です。

平成30年12月 5日

国立大学法人九州工業大学長
尾家 祐二

九州工業大学 > TOPICS > 教育職員の懲戒処分について

九州工業大学のウェブサイトの発表では、具体的に何が起きたのかが一切説明されていません。再発防止の取り組みとして、まずは、何が起きたのかを報道機関に頼らずに自らのウェブサイト上で国民に説明して欲しいと思います。ハラスメントは閉じられたドアの向こうで起きるものですから、ドアをオープンにするだけで抑止効果があるはずです。九工大が暴力行為の内容をウェブサイト上で伏せてしまうのは、オープンさが全く感じられず、こういう姿勢がアカハラの温床を維持するのではないかと危惧されます。不祥事が発覚するたびに全学をあげて再発防止に取り組んでいる大学で、なぜこのようなハラスメント行為がいつまでも繰り返されるのか不思議です。

過去記事⇒九工大准教授がアカハラで停職2か月の処分

 

報道では具体的な暴力行為の内容が報じられています。

3月ごろ平手打ち▽5月上旬と中旬に顔面殴打▽6月ごろ右上腕部を金属製の棒(長さ50~60センチ)で殴打▽8月8日に頭頂部を金属製の棒で3回殴打し2針縫う傷を負わせる――5回の暴力行為をした。 他にも学生の前髪をハサミで切るなどの行為もあり、いずれも実験室で2人きりの時に行われた。(学生の頭を金属製の棒で殴りけがさせる 九州工業大助教を懲戒解雇 2018/12/5(水) 20:54配信 毎日新聞/YAHOO!JAPAN

金属の棒で殴ったという新聞記事を見ると、懲戒のための金属棒でも用意していたのかと思いましたが、ラボにありがちな部材が凶器になったようです。↓

スチール棚の柱に当たる部材(長さ50~60センチ)で、6月に右腕を、8月8日に頭頂部を殴った。(金属棒で学生殴る 九工大助教を解雇 2018年12月06日 06時00分 西日本新聞

↓いや、そういう問題ではないでしょう。

記者会見した尾家祐二学長は「教職員にあるまじき行為。再発防止に努める」と述べた。教員と学生の「1対1」の状況も原因の一つとして、複数教員による指導体制が確立できないか検討するという。(金属棒で学生殴る 九工大助教を解雇 2018年12月06日 06時00分 西日本新聞

複数の教員にシバかれたら、たまりません。

 

参考

  1. 学生に暴力か 九工大助教を解雇 NHK 2018年12月05日 19時26分 懲戒解雇になったのは、九州工業大学大学院工学研究院の30代の男性の助教です。大学によりますと、助教は、ことし3月から6月ごろにかけて指導していた男子学生の顔を手で殴ったり、金属の棒で腕を殴ったりする暴力を繰り返していました。さらに、ことし8月には学生の頭を金属の棒で殴り2針縫うけがを負わせたうえ、病院に連れて行った際「上から物が落ちてきてけがをしたといいなさい」とうその説明をさせたということです。
  2. 大学生を金属棒で殴った30代男性助教を懲戒解雇 2018年12月5日22時2分 日刊スポーツ 助教は3~6月、自身の研究室に所属する男子学生1人に対し、顔を素手で殴るなどの暴行を繰り返した。8月には長さ約60センチの金属製の棒で殴り、頭頂部を2針縫うけがを負わせた。「学生が実験サンプルを壊したことなどに腹を立てた」と話しているという。
  3. 学生の頭を金属製の棒で殴りけがさせる 九州工業大助教を懲戒解雇 2018年12月5日 20時53分 毎日新聞 助教はこの学生に対し、3月ごろ平手打ち▽5月上旬と中旬に顔面殴打▽6月ごろ右上腕部を金属製の棒(長さ50~60センチ)で殴打▽8月8日に頭頂部を金属製の棒で3回殴打し2針縫う傷を負わせる――5回の暴力行為をした。 他にも学生の前髪をハサミで切るなどの行為もあり、いずれも実験室で2人きりの時に行われた。助教は「実験サンプルを壊されたりしたので手を上げてしまった」などと認めているという。

ランチョンセミナー出席で学会出張の日当が減額される理由

多くのの学会では昼食時にスポンサー企業が主催するランチョンセミナーがあります。その企業の測定機器や試薬などをよく利用しているどこかの大学の先生が講演し、聴衆は企業から提供されたお弁当を頬張りながら聞くことになるわけですが、学会出張を終えてラボに戻ると、ランチョンセミナーに出席したかどうかを事務に報告しなければなりません。なぜなら、学会出張中の日当の金額が、ランチョンセミナーに出席したかどうかで変わってくるからです。ランチョンセミナーでお昼代が浮くわけではなくて、その分は日当から減額されることになります。これに関しては、大学や研究機関によってはあまり徹底されていないところもあるようで、研究者の間に不公平感がたまっているかもしれません。

 

日当の意味とは?

日当を学会参加の労務に対する報酬と理解している研究者も多いと思いますが、旅費の意味を正しく理解しておく必要があります。


 

旅費の中に含まれる「日当」(にっとう)は、社会常識としての日当とは全く意味が異なり「昼食代」のことです。旅費法上の「日当」を正確に表現すれば「昼食代等」です。研究費を使用するときに、この日当を正確に理解していないと、真面目に研究していても思わぬところで「研究費の不正使用」を疑われてしまいます。(旅費法上の日当は昼食代、学会参加費に昼食代が含まれるなら減額調整 誰も教えてくれない官公庁会計実務

 

学会のランチョンセミナー等への出席の報告の義務

2.確認事項(用務内容が「学会等参加」と「招聘」のとき) (□へのチェック)
①参加費の立替払請求を経費を問わず □する □しない □含まない → ※協賛企業等負担
②ランチョンセミナー等で食事の提供があったとき、参加費に食事代が □含まれる(   回)
会議費で食事の提供を □する □しない → ※飲み物だけの提供は「しない」にチェック (出張報告書 東京医科歯科大学


 

日当の減額調整

Q27:国際会議等の参加登録費には、以下のものが含まれている場合、どのようにすればよいでしょうか?
① モーニングセミナー等
② ランチョンセミナー等
③ イブニングセミナー等
④ ウェルカムレセプション等
A :参加登録費の内訳が公式に確認できる場合(主催者のパンフレット等に内訳が明記されている場合など)は記載された①~④の金額を差引き、確認ができない場合は、回数に応じて日当の半額を差し引きます。ただし、不参加の場合には差引くことはありません。(秋田大学

学会の公式行事として食事パーティが組み込まれていることはよくあります。学会参加費に食事代が含まれていると明言されていればわかりやすいのですが、通常、学会期間中に行われるランチョンセミナーは企業の宣伝の場に過ぎず、学会参加費とは無関係です。しかし、そのような、学会参加費に含まれていないランチョンセミナーのランチ代も日当の減額の対象になるのでしょうか?実際のところなるようです。このあたりの規則の運用に関しては、ネット上で自分が探した限り明文化されたものが見つかりませんでした。

安い給与で働いている研究者には、このような日当の減額はかなり懐が痛いと思います。ランチョンに関する取扱いは大学や研究機関によって若干の差があるのかもしれませんし、研究者間でも意識の差が大きい事柄かもしれません。

 

ランチョンセミナー出席の報告義務に関する厳格さの差

ランチョンセミナーに参加していなくてもそのようなセミナーが開催されているだけで自動的に日当が減額されてしまう極端な研究機関もあるようです。

 

ランチョンセミナー参加の有無の確認が生み出すラボ内の緊張

教授、研究者、教授秘書の間で、規則を遵守する意識に差がみられる場合があります。


 

 

日当が減額されることに対するモヤモヤ、不満、怒り


 

 

日当の減額がもたらす、ランチョンセミナー出席意欲の低下


 

 

ランチョンセミナー出席で日当を減額することの合理性に関する議論


 


 

 

 

 

 

19年前に女子生徒と関係を持った高校教諭を懲戒免職

19年前に自分が担任を受け持つクラスの女子生徒と性的関係を持っていた、定年間近の都立高校教諭(59)が懲戒免職の処分を受けました。

20年前に“女子生徒と性的関係” 都立高教諭を懲戒免職 (TOKYO MX 2018/09/12)

教師

多摩地域の都立高校に勤務する59歳の男性教諭

生徒

担任のクラスの女子生徒

時期

1999年11月から2001年3月まで

発覚

2018年2月に、元女子生徒が男性教諭に当時のことに関して電話。教諭が現在の勤務先の高校の校長に報告。

処分

東京都教育委員会教は2018年9月12日付で男性教諭を懲戒免職処分に

男性教諭のコメント

「教師として取り返しのつかないことをしてしまった。反省し、後悔している」

 

都教委によりますと、多摩地域の都立高校に勤務する59歳の男性教諭は、1999年11月から2001年3月まで、当時勤務していた高校で担任をしていた女子生徒と合意の上、複数回にわたって性行為を行いました。今年2月になって、女子生徒側から男性教諭に当時を振り返る電話があったことを受けて、教諭が現在勤めている高校の校長に打ち明け、問題が発覚したということです。(20年前に“女子生徒と性的関係” 都立高教諭を懲戒免職 YAHOO!JAPANニュース 2018/9/12(水) 22:03 TOKYO MIX)

 

反響

同情、批判、様々なコメントがネット上で見受けられますが、以下、自分が主観で選んだいくつかを紹介します。

ヤフーニュースのコメント欄(3511コメント)から一部を紹介します。

時効について

  • 民法や刑法には法律上の時効制度があるけど、こういった懲戒権には時効制度がないためかなり古い事由による懲戒も可能となります。(引用元

報道された「合意」を疑う声

  • 「合意の上で」はたぶん先生側の証言だから実際に合意があったかはわからないよね。
  • 合意っていってもそれは男側の申告だから女子生徒からしたら脅迫されていたと受け止めていたかも
  • 自身は20年前以上に合意なしでしたが似た経験があります。相手は合意の上と都合の良い解釈でした。数十年たつ今でも傷が癒えず心療内科に通って居ます。
  • 圧倒的な優位に立つ立場の人間が未成年の生徒を言いくるめて性交渉に強引に持ち込んだのかな。ある意味パワハラも含まれる半強制的な性行為だったのかも。
  • 合意のもと・・って。それって、性犯罪者が一番最初に発する言葉だよね。「相手が嫌だと言ってなかった」「合意の元でおこなった」って。20年前に合意の元でしたから、はい終了。と男性側が思ってても、女子生徒の場合は実はそうじゃなくて、ずっと思っていたという事だと。

仮に双方の合意があったとしてもやはり不適切だという声

  • 生徒がトラウマで立ち直っていないなら仕方が無いかも知れないし
  • 20年間ずっと女性が長年納得いかない感情を持ち続けていたんだと思う。これはかなりキツいと思う。
  • 男性教師は合意の上での関係と忘れていたのに、元女子生徒はずっと不適切な関係に悩んでいたのでしょうね。
  • 被害者側にとっては未成年の子どもだった頃に受けた加害行為に自分が悪いのだと思い込んで苦しんできた20年があったかもしれない
  • 合意の上でも…そこは教師なら、いや大人なら、未成年を保護すべき大人なら、しないものだよ……。両思いなら、相手が学校卒業して、成人になるのを待つべき。大人のすることじゃないね
  • 「合意の上」とはなっているが、40近くの男(教師)と10代女の子(生徒)の、何が「合意」なの?万一、女性から言い寄られても、「そういうことはダメだよ」と諭す立場でしょ?100歩譲って、恋愛なら、卒業するまで待ってからそうすればいいこと。結局、女性は、実際には、だまされたり遊ばれたりしていたことに、大人になってから気ずき、傷ついていたのかも。いづれにせよ、許されることではない。

報道されていない事実があるはずという声

  • 定年直前に懲戒免職・・・教育委員会が20年前の事案に対して公務員として最も重たい処分を下したということは、真相はかなり悪質だったと見るべきだろう。
  • この教諭は記事にできないくらいのことをしたってことだよ。でなければ、懲戒免職になるはずはないでしょうに。
  • 無責任で肝心なことを報道しない記事は社会に混乱をもたらす。

懲戒免職は重すぎるのか?

  • 逆に言えば本来であれば20年前に懲戒免職になってたんだから、20年間給料、ボーナスをもらえただけ本人にとっては有難いことだと思う。

教育現場の現実

  • 女子校の出ですが男性教師の殆どが卒業生を嫁に迎えていました。ということは…。
  • 女子校出身のアラフォーです。男性教諭と同級生が関係持ってるらしいよ、なんて噂はしょっちゅうでした。
  • 今現在も、教育現場では男性教員が女子生徒へ、もしくは教育実習女子生徒へ手を出している事例が多くあります。その他生徒も知っていることがほとんどです。保護者としては、学校のアンケート調査や教員に対する懲戒処分等厳しい対応を望んで止みません。しかし、現実には、学校が事実を揉み消したり、被害生徒が退学になったり、口止めされたりして泣き寝入りしている事案が多いです。被害者は傷が癒えるまで、声をあげれないのが現状です。学校の管理職が、男性が多い場合は、まず揉み消されます。

 

参考

「このように被害が発覚するのは氷山の一角です」NPO法人「スクール・セクシュアル・ハラスメント防止全国ネットワーク」(SSHP)代表の亀井明子さんはそう言い切る。「特に私立学校の実態は、調査がないので分かりません」元公立中学校教師の亀井さんはSSHPの立ち上げ準備から約20年にわたり、およそ2千件の被害相談を受けてきた。活動を進めるなかで痛感したことがあるという。「北海道から沖縄までどこでも起こっていて、まるで金太郎飴のように手口が似通っているんです」

男性教師が「指示に従わなかった」と女子生徒に非があるかのような理由をつけて激しく叱責。生徒が泣き出すと一転して抱きしめ、キスするなどわいせつ行為に及ぶ――。実際にSSHPの受けた中学生からの相談だ。このようにスクールセクハラは、「指導し評価する者」と「教え子」というような力関係を利用して生じるものだ。

なかでも指導者が絶対的存在になりやすい部活動は、被害の温床になりやすい。例えば、ある中学校の剣道部は全国大会に出場する強豪だったが、顧問教師が女子生徒に服を脱ぐよう仕向けたり、教師の指をなめさせたりすることが、「伝統の儀式」となっていたという。これもSSHPに寄せられた事例の一つだ。「プライドを捨てて心を裸にしろ」などという理屈で服を脱がせるケースは多く、「支配」の一形態だと亀井さんは解説する。

「背後の力関係から、子どもはイエスと答えるしかない。内申書や部活の選手選びなどに響くと思うと抵抗しづらく、また被害が深刻になるほど、親が悲しむと考えて言い出せなくなってしまうのです」(教師から「支配」のわいせつ―― 「スクールセクハラ」実態と構造 2018/2/20(火) 9:50 YAHOO!JAPANニュース)

  1. 平成28年度公立学校教職員の人事行政状況調査について(文部科学省)教育職員の懲戒処分等の状況(平成28年度)懲戒処分又は訓告等(以下「懲戒処分等」という。)を受けた教育職員は、8,038人(0.87%)で、 平成27年度(6,320人(0.69%))から1,718人増加。・わいせつ行為等により懲戒処分等を受けた者は、226人(0.02%)で、平成27年度(224人)から微増。
  2. 文科省 わいせつ教員 処分過去最多 SNSきっかけ増加 (毎日新聞2017年12月27日 18時00分 最終更新 12月27日 18時00分) 文部科学省は27日、2016年度にわいせつ行為で処分された公立学校の教職員は226人(前年度比2人増)となり、2年連続で過去最多を更新したと発表した。… 文科省によると、処分理由は「体に触る」が89人(39%)で最も多く、「性交」44人(19%)、「盗撮・のぞき」40人(18%)と続いた。被害者の48%は自校の児童・生徒で、教え子とホテルでみだらな行為をした高校教諭や、女子トイレを盗撮した小学校教諭がいた。

間違った医学論文・捏造論文で取得した博士号を徳島大学が取り消し

徳島大学大学院医歯薬学研究部50歳代男性教授が停職6月

2020年5月13日の徳島大学の発表によれば、教授には停職6か月の処分が下されたそうです。徳島新聞のニュース記事によれば、大学院生は3月に博士号を取り消されているとのことなので(令和2年4月20日の徳島大の発表では、令和2年3月13日に学位の授与を取り消し)、このニュースは新しい話ではなくて、下で記事にした学位取り消し事件に関して、まだ処分が定まっていなかった教授に関する処分内容の発表ということのようです。

  1. 徳島大論文ねつ造 男性教授停職6カ月 (2020/5/14(木) 15:16 徳島新聞 YAHOO!JAPAN)

 

教授がストーリーを強要、大学院生がデータ捏造

徳島大学でまた学位取り消しがありました。下の記事とは別件です。捏造の動機が、二人の言葉からうかがい知れます。

院生「教授からのプレッシャーがあり、教授の求める実験データを得ようとした

教授「厳しい言い方をし過ぎたかもしれない

つまり、教授が描いたストーリーに合う実験データを出せずにいた大学院生が、学位取得の締め切りが迫ってきたこともあり、教授の要求するデータを捏造して教授に渡し、教授が自分のストーリーで論文を執筆したというものです。今まで全然期待したデータが取れていなかった大学院生が急に都合の良いデータばかりもってきたときに、教授が信憑性をチェックしなかったのは重大な過失だと認定しています

産経WESTとNHKの記事をもとに時系列を整理すると、

2020年(令和2年)4月20日 徳島大学が研究不正を公表
2020年(令和2年)3月 博士号を取り消し
2019年 捏造論文の取り下げ
2018年(平成30年)3月 匿名のメールによる不正告発
2014年(平成26年)学術誌に捏造論文掲載

SDGsの課題解決とデータの捏造とがどう関係するのか、さっぱりわかりませんが徳島大学がお詫びの声明を出していました。

独創的研究及びSDGsの課題解決に向けた研究や教育に本学の教員全体が取り組む中で、このような研究不正行為があったことは、誠に遺憾であり深くお詫び申し上げます。 加えて、…

学長 野地 澄晴

具体的な捏造箇所の説明はありませんが、どのようにして捏造に至ったのかの説明は、大学が公表していました。一部を掲載します。これを読むと、このデータ捏造を実行したのは大学院生ですが、自分の描いたストーリーを大学院生に押し付け、捏造データを受け取って吟味することなくそのまま論文を書いた教授にもかなりの責任があると思います。

3 調査結果

調査の結果、告発対象論文1報について、次のとおり認定した。

(1)不正行為の具体的な手法・内容
① 特定不正行為
・ねつ造:出所不明データの付け足し
・改ざん:実験データの不正な方法による解析
② 特定不正行為以外の不正行為(研究活動上の不適切な行為)
・不適切なオーサーシップ

(2)不正行為に係る研究者
・A教授
研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる,ねつ造,改ざん」及び「研究活動上の不適切な行為であって,科学者の行動規範及び社会通念に照らして研究者倫理からの逸脱の甚だしい行為(不適切なオーサーシップ)」に関与した者と認定した。
・B元大学院生
「故意による、ねつ造、改ざん」に関与した者と認定した。

(3)判断理由
ア)認定した事実
① 特定不正行為(ねつ造、改ざん)
告発対象論文について、論文の結論にとって都合が良いデータを選択して作成された図があることと、出所不明のデータを付け加えることにより、複数の不正な図(改ざん及びねつ造が行われた図、改ざんが行われた図)が掲載されたことを確認し、特定不正行為(ねつ造、改ざん)が行われたことを認定した。
② 特定不正行為以外の不正行為(不適切なオーサーシップ)
告発対象論文において、論文の作成にほとんど関わっていない者を共著者として記載し、論文を投稿するに当たり、共著者全員に了解を得ないまま手続きを行い、受理されてから連絡するなどの行為を確認し、これは不適切なオーサーシップに当たると認定した。

イ)認定の理由
① A教授(責任著者)
特定不正行為
・本件研究が行われた研究室の主宰者であり、B元大学院生の指導教員であった。
・B元大学院生に対して、実験の方法や実験データの解析等に係る基本的事項を含む研究全般について、十分な指導をしていなかった。
・研究成果を発表するにあたっては、自らが用いる実験データが科学的に適正な方法と手続でなされたものであることを確認すべきであるが、それができていなかった。
・筆頭著者であるB元大学院生の作成したグラフや図を用いながら、本件論文のほぼすべてを自ら執筆した。
B元大学院生が行った実験は、相当期間、多数回に渡ってA教授の仮説と異なる結果を示しており、このことをA教授自身も十分に認識していた。
設定した締切りが近づいた時期になって、突如、B元大学院生がそれまでの実験結果と異なる実験データを提示したことについては、実験結果全体の信用性について特に慎重な検証を要すると感じるのが当然の状況にあった。
生データや実験・観察ノートを提示させ、それらを確認することを一切していなかった
・提示された実験データに再現性があるものかどうかといった事柄すら把握しておらず、後日、それらの検証を可能とするデータや資料なども保管していなかった。
これらを総合的に判断し、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことにより、不正に作成された図を利用して論文を執筆したことは、A教授自らが研究結果等をねつ造、改ざんしたものであることと何ら変わりがなく、特定不正行為に該当すると認定した。
特定不正行為以外の不正行為(研究活動上の不適切な行為)
・責任著者でありながら、論文の作成にほとんど関わっていない者を共著者として記載し、論文を投稿するに当たり、共著者全員の了承を得ないまま投稿手続きを行い、受理されてから連絡した。
以上の行為は、特定不正行為以外の不正行為として不適切なオーサーシップに該当すると認定した。

② B元大学院生(筆頭著者)
・複数の図において、データの恣意的な取捨選択出所不明のデータの付加を行っていた。
・論文に掲載された実験を実際に担当し、A教授の求める実験データを得ようとしていた。
・A教授から適切なデータの取扱い、解析方法及び研究倫理について指導されていなかったことによる知識不足のため、独自の誤った方法で論文に記載する図を作成していた。
・A教授から学位取得についてプレッシャーをかけられ、A教授の意図した実験データを厳しく要求し続けられていた。
・A教授や研究室内の指導者への相談等が十分に行えていなかった。
実験データから選択した過程を容易に追跡できる資料を保存していた。
以上のことから、B元大学院生がねつ造、改ざんを積極的に行う意思が乏しかったとはいえ、この行為は故意に研究結果等をねつ造、改ざんしたものとして、特定不正行為に該当すると認定した。

(転載元:https://www.tokushima-u.ac.jp/fs/1/4/6/5/9/9/_/gaiyou.pdf 太字強調は当サイト)

  1. 【お詫び】研究不正(ねつ造、改ざん)の調査結果及び対応について令和2年4月20日 徳島大学
  2. 徳島大大学院生が論文データ捏造、博士号取り消し(2020.4.20 21:50 産経WEST
  3. 徳島大大学院 教授ら論文不正か(2020年04月20日 18時49分 NHK NEWSWEB
  4. 徳大で論文データ不正 教授処分審議 元院生博士号取り消し (5:00 徳島新聞(要有料会員登録))
  5. https://twitter.com/plagiarismfraud/status/1252291411543638016
  6. 取り消された博士研究論文:カチオン性リポソームを担体としたmyostatin-siRNA局所導入による骨格筋量制御効果の検討 Effectiveness of cationic liposome-mediated local delivery of myostatin-targeting small interfering RNA in vivo. Dev Growth Differ2014 Apr;56(3):223-32. doi: 10.1111/dgd.12123. Epub 2014 Mar 13. (PubMed)

 

以下の記事は、上とはまた別の事件です。

学位取り消し

徳島大学では,元大学院学生(徳島大学大学院医科学教育部医学専攻博士課程(平成29年3月23日修了))の学位論文「A significant causal association between C-reactive protein levels and schizophrenia」(甲医第 1318 号・博士(医学))に関して,下記のとおり「学位を授与された者が,その名誉を汚辱する行為をしたとき」と判断し,学位授与の取り消しを決定し,学位記の返還を命じた。(徳島大学 平成30年7月6日)

 

論文の間違いが発覚した経緯

学位授与の根拠となった論文に関連し,外国人研究者が同じ公開データを使用した同じテーマの論文が,結果が逆の内容で別学術雑誌に掲載された。今回対象の論文を掲載している学術雑誌の編集者から,研究内容を確認して回答するよう要請があった。著者らは,要請を受けて再確認し,計算自体に間違いがなかったが,当初の公開データの取り間違いがあったことに気づき,論文の根幹に係る主張の間違いだと言うことで,論文撤回(H30.2.21)という結果になった。(徳島大学 平成30年7月6日)

 

研究不正の有無

特に公開データの場合は,誰もが同じことを直ぐにでも試みることができるので,データを故意に間違えて計算するという蓋然性は低く,この論文撤回に関して不正はなかったと判断した。(徳島大学 平成30年7月6日)

 

学位を取り消す根拠

  1. 学位授与の前提となる論文が事実上なくなった
  2. 研究者として当然持っているべき基本的な慎重さが欠け,主張が間違った論文を学位論文として申請した (徳島大学 平成30年7月6日)

 

徳島大学学長のコメント

このたびの事態によって損なわれた徳島大学の学位に対する社会的信頼を回復するため、大学院生に対する研究者倫理教育の醸成を図ることはもちろんのこと、論文の作成段階及び学位の申請段階において、教育・研究の達成を見る上でも、実験内容を適切に記録していることを確認させるとともに、論文審査体制を一層厳格化することにより、学位審査体制の充実、透明性、客観性の確保を図り、学位の質保証に結びつけてまいります。(学長 野地澄晴)(学位授与の取消しについて 徳島大学 2018年7月6日)

 

参考

  1. 学位授与の取消しについて(概要) 平成30年7月6日 徳島大学
  2. Retraction: A significant causal association between C-reactive protein levels and schizophrenia (Published: 21 February 2018, Scientific Reports)
  3. A significant causal association between C-reactive protein levels and schizophrenia. Scientific Reports volume 6, Article number: 26105 (2016). Published: 19 May 2016
  4. 徳島大 医学博士号取り消し 元院生の論文に誤り /徳島 (毎日新聞2018年7月7日 地方版) 論文は16年5月、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載。男性は17年3月に博士号を取得した。だが同誌は今年2月、公開データの取り違えで結論などが誤っていたとの撤回記事を出した。
  5. 徳島大、元院生の博士学位取り消し 論文データに誤り、論文掲載誌から指摘 (産経WEST 2018.7.6 13:49)
  6. A university is revoking a student’s PhD — but not because of misconduct (Retraction Watch)
  7. 捏造、不正論文、総合スレネオ47(5ch) 82名無しゲノムのクローンさん2018/07/27(金) 22:11:37.93 https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/life/1532266799/

 

東大H26行動規範委員会資料不開示問題の答申

匿名A氏が指摘した類似画像を含む84報のうち東大の医学系研究者が著者であった12報に関して東大が予備調査の結果不正無しと結論したことに関して情報の開示請求がありましたが、東大が一部不開示の決定をしたため、それを不服とする開示請求者が審査請求を行い、それを受けて審査会が審査を行い、その結果を答申として公開していました。以下、その内容です。東大が不開示としたのは違法であると結論しています。

以下、http://www.soumu.go.jp/main_content/000506048.pdf の内容の転載。太字強調は当サイト。


 

諮問庁:国立大学法人東京大学
諮問日:平成29年6月8日(平成29年(独情)諮問第31号)
答申日:平成29年9月6日(平成29年度(独情)答申第24号)
事件名:平成26年度科学研究行動規範委員会資料等の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1 審査会の結論
別紙に掲げる文書1ないし文書5(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定については,理由の提示に不備がある
違法なものであり,取り消すべきである。

第2 審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨
独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成29年2月8日付け第2
016-45号により国立大学法人東京大学(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,原処分を取り消し,出席者を除く不開示部分(以下「本件不開示部分」という。)の開示を求める。

2 審査請求の理由

(1)審査請求書
不開示とされた各議事などについて,調査・事案処理の方法・方針,委員の発言内容に係る記載は,調査委員会での審議が適切に行われたか知る上で必要な情報である。開示された各議事はほぼ全てが黒塗りされており,ひとつひとつの論文について十分に審議されたか否かが,現状の開示資料では推測することすら困難である。これでは審議内容が適切か否かを判断することができず,かえって疑念を抱かせる原因となる。「東京大学の科学研究における行動規範」にあるように研究不正は,「科学研究の本質そのものを否定し,その基盤を脅かす,人類に対する重大な背信行為」である。奇しくも ,現在,同じ研究者に対する研究不正の告発が行われており,過去の調査が適切に行われたかどうかを示すことは,研究不正に貴大学がどのような姿勢で臨んできたのかを示すことにもつながる。同じ行動規範には,「科学者コミュニティの一員として,研究活動について透明性と説明性を自律的に保証することに,高い倫理観をもって努めることは当然である」と明記され,それに続く総長声明では「この行動規範を大学自ら担保するための委員会制度を規則として定めることにした」と委員会の位置づけを説明している。こうした規範や総長声明の理念を守り,調査の審議過程及び内容の適切さを担保するためにも,貴大学には当該資料を開示して調査が適正に行われたことを示す責務がある。
発言者の特定をしなければ,審議内容を情報開示することにより,特定の者に不当に利益を与え,または不利益を及ぼすとは到底考えられない。また,個人が特定されなければ,人事に支障を及ぼすおそれもない。仮に,社会の公器としての貴大学が,原則として開示すべき資料を,例外的に不開示とするためにこのような主張を行うならば,具体的な根拠を示して主張する必要がある。そうでなければ,この主張自体が極めて不合理であり,世間から疑惑の目で見られることを,自ら容認することになろう。そのような姿勢は上記行動規範に反するものである。貴大学として,発言者が特定されないとしても,将来予定される審議において委員の意見等が公表されることを前提にすると,委員が部外の評価等を意識して素直な意見を述べることを控えるなど,意思決定の中立性や独立性が不当に損なわれるおそれがあると主張されるかもしれない。しかし,発言者が特定されないのであれば,委員の意見等が公表されたとしても素直な意見を控えるとは到底考えられない。もし意思決定の中立性や独立性が不当に損なわれるなどと主張するのであれば,発言者が特定されないにもかかわらず,素直な意見を述べることができないような調査委員を選任することを前提としており,専門家としての各調査委員を愚弄するのみならず,調査委員会の適正さそのものに疑義を生じさせる主張と言わざるを得ない。一連の資料の開示を拒むことは,研究不正を真摯に取り扱おうとする姿勢に真っ向から反するものである。さらに審議が終わった研究不正調査に関する議事の公開は,将来他の研究不正事案を審議する場合の参考となりうるものであり,貴大学の対応は,社会的に評価されるものではあれ,非難されることはありえない。なお,調査対象者については対象となった論文が公開されていることから,少なくとも責任著者と筆頭著者については対象となることが明らかなため,ヒアリングなどの議事録を含め公開すべきと考える。その他の調査対象者について個人名などは不開示でも構わない。
既に審議が終わり調査の結論は貴大学のホームページでも公開されている。そのため,議事内容が公開されることで本件の事務や事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれはない。また,同じ理由から,たとえ,審議のある時点で生じた,未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報を公にしたとしても,その後,結論に至った過程を合わせて公開すれば新たに混乱を生じさせるおそれもない。加えて,結論が「不正なし」というものであるため,公開することで当該研究者の今後の研究活動にも影響を与えるおそれもない
将来に行われる類似の審議・検討・協議に係る意思決定に不当に影響を与えるおそれについては,研究不正事案というものは,事案ごとにその内容や性質が異なるものである。それぞれ個別に審議されるものであり,その都度適切に審議されることで問題は生じない。これは,本件と同じ研究者が対象となり,現在行われている研究不正調査への影響についても同様である。また,審議,検討の内容を公にすることにより,調査にあたっての考え方,主張等が明らかになり,今後の同種の調査にあたり,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は不当な行為を容易にするおそれがあるという主張についても,同様に事案ごとに内容や性質が異なるため懸念は当たらない。逆に「何が不正に当たるのか」といった考え方などはむしろ公開することで不正の防止につながる情報で,これらを不開示の理由とすることは調査の正当性に疑念を抱かせるだけでなく,研究機関として不正に真撃に対応できているのか,その姿勢を問われかねない事態にもつながると考える。
独立行政法人は,原則として保有する情報を公開しなければならず,不開示はあくまで例外規定である。個別具体的な事情なく漫然と不開示とするのであれば,世間に対し,情報公開をする気がない大学であることを表明するに等しい。また,調査方針・手法自体は,調査委員会の判断の公正さを担保するために開示は必須であると考えられるのみならず,開示を拒むことは,逆に調査委員会の判断に対する疑義を生じさせるものであり,不開示とすることによりあたかも不正があったかのように流布されるおそれもある。現実に,一部マスコミ報道やインターネット上では本件論文の研究者に対する記事が多数掲載されており,研究者個人のみならず大学にとっても不利益が生じる事態につながっている。なお,調査過程の開示は,例えば貴大学の「分子細胞生物学研究所・旧特定研究室における論文不正に関する調査報告書(第一次)」の資料「不正な図の例」においても行われている。特定URL調査が適正に行われていることが示されており,こうした開示によって他の不正調査に悪影響が出る問題も生じていない
貴大学として,不正がなかったと認定されたにもかかわらず,議事内容が公表されることで,再び,当該調査事案が注目され,公表された一部の情報だけをもって新たに誹誘中傷が行われる可能性があるとの主張を行う可能性もある。しかしながら,そもそも本件調査事案は,同じ研究者が新たに告発を受けたことで ,現在,非常に注目されており,過去の調査内容が公表されたからといって「再び」注目されるという状況にはない。加えて,新たに誹誘中傷が繰り広げられるというのも,憶測の域を出ず,研究不正を厳に取り締まる立場にある貴大学が,法的に公表が原則となっている情報を不開示にする理由としては著しく正義に反するものである。
以上,アからカで述べた通り,貴大学が示した見解は,いずれも資料の中の個人名以外を不開示とする理由には該当しない。各議事は不正行為か否かの判定が適切に行われたかどうかを知る上で必要な情報である。議事などの資料を公開して当該委員会が研究不正事案に真摯に取り組んだ事を示し,結論に対する信頼を得ることは,上記行動規範や規則を制定した貴大学の責務である。発言者の個人が特定できる氏名等は伏せて,資料を公開すべきである。

(2)意見書
審査請求人から平成29年7月10日付け(同月11日受付)で意見書が当審査会宛てに提出された(諮問庁の閲覧に供することは適当でない旨の意見が提出されており,その内容は記載しない。)。

第3 諮問庁の説明の要旨

1 本件対象文書について不開示とした理由について
本件対象文書は「「インターネット上で指摘のあった論文の画像データに係る調査結果について」として調査結果が平成27年7月31日付けで公表されている,研究行動規範委員会の調査に関わる資料の一切。具体的には,調査にかかる会議に提出された資料,会議の議事次第,調査委員が示された資料,会議の議事録,調査報告書とその案,調査対象者から提出された実験データなどの資料,その他調査に使われた資料,調査で行われた関係者のヒアリングの記録,外部機関に調査や分析を行っていればその報告書。加えて,調査にかかった費用とその使途がわかる資料(外部調査委員への支払なども含む)」である。本学では,研究不正の事案については,科学研究行動規範委員会において調査を行っているが,請求にかかる文書は以下の5つの理由に該当する部分について不開示とする決定を行った。
① 個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないものが記されている部分を不開示とする。
② 審議,検討又は協議に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意志決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるものについては,法5条3号に該当するため不開示とする。
③ 公にすることにより,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものについては,法5条4号柱書きに該当するため不開示
とする。
④ 公にすることにより,正確な事実の把握を困難にするおそれ,若しくはその発見を困難にするおそれがあるものについては,法5条4号ハに該当するため不開示とする。
⑤ 公にすることにより,人事管理に係る事務に関し,その公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある部分については,法5条4号
ヘに該当するため不開示とする。よって,本件対象文書を平成26年度~27年度科学研究行動規範委員会資料並びに支給調書として,部分開示決定を行ったものである。これについて,審査請求人は,平成29年4月4日受付の審査請求書のなかで,原処分の取消しを求めている。

2 審査請求人の主張について
審査請求人は「開示された各議事がほぼ全て黒塗りされており,ひとつひとつの論文について十分に審議されたか否かが現状の資料では推測することすら困難であり,これでは審議内容が適切か否かを判断することができず,かえって疑念を抱かせる原因となる。調査委員会の適正さそのものに疑念を生じさせると言わざるを得ない。対象となった論文が公開されていることから,少なくとも責任著者については対象となることが明らかなため,ヒアリングなどの議事録を含め公開すべきと考えるし,結論が「不正なし」というものであれば公開することで当該研究者の今後の研究活動にも影響を与えるおそれもない。いずれの資料の中の個人名以外を不開示とする理由には該当しない。発言者の個人が特定できる氏名等は伏せて,資料を公開すべきである。」等と主張している。しかしながら,研究不正の調査については,その判定結果の如何によらず,対象となる研究者の研究活動に大きな影響を与えるものであり,かかる調査については,限りなく公平中立なものとして実施されなければならないと理解している。調査の内容について必要以上に開示することは,調査機関として担保すべき,正確な事実の把握,率直な意見の交換,意思決定の中立性などを困難にするおそれがあり,ひいては,調査機関として行う不正行為の判定結果の信頼性をも損なうことになる。また,「不正なし」と認定した場合には,これらの要請に加えて,不正行為の認定がなされなかった被申立者への配慮も当然考慮すべき事項となってくる。そのため,今回開示した内容については,上記の理由から必要かつ十分なものであると認識している。したがって,本学の決定は妥当なものであると判断する。以上のことから,諮問庁は,本件について原処分維持が妥当と考える。

第4 調査審議の経過
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成29年6月8日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同月20日 審議
④ 同年7月11日 審査請求人から意見書及び資料を収受
⑤ 同月31日 本件対象文書の見分及び審議
⑥ 同年9月4日 審議

第5 審査会の判断の理由
1 本件開示請求について
本件開示請求は,「「インターネット上で指摘のあった論文の画像データに係る調査結果について」として調査結果が平成27年7月31日付け
で公表されている,研究行動規範委員会の調査に関わる資料の一切。具体的には,調査にかかる会議に提出された資料,会議の議事次第,調査委員が示された資料,会議の議事録,調査報告書とその案,調査対象者から提出された実験データなどの資料,その他調査に使われた資料,調査で行われた関係者のヒアリングの記録,外部機関に調査や分析を行っていればその報告書。加えて,調査にかかった費用とその使途がわかる資料(外部調査委員への支払なども含む)」の開示を求めるものであり,処分庁は,法11条に規定する開示決定等の期限の特例を適用し,先行開示文書(平成28年11月9日付け第2016-45号により特定され,開示された文書)及び文書1ないし文書5(本件対象文書)を特定し,先行開示文書については全部開示したが,本件対象文書については,その一部を法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ及びへに該当するとして不開示とする原処分を行った。これに対し,審査請求人は,上記の不開示部分のうち,出席者などの個人名の特定につながる情報以外の部分(本件不開示部分)の開示を求めているが,諮問庁は,原処分を妥当としていることから,以下,本件対象文書を見分した結果を踏まえ,原処分の妥当性について検討する。

2 理由の提示について
(1)開示請求に係る法人文書の一部又は全部を開示しないときには,法9条1項及び2項に基づき,当該決定をした旨の通知をしなければならず,この通知を行う際には,行政手続法8条に基づく理由の提示を書面で行うことが必要である。理由の提示の制度は,処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨から設けられているものである。かかる趣旨に照らせば,この通知に提示すべき理由としては,開示請求者において,不開示とされた箇所が法5条各号の不開示事由のいずれに該当するのかが,その根拠とともに了知し得るものでなければならない。上記の理由の提示として,不開示事由が複数あるときに,具体的な不開示部分を特定していない場合には,各不開示事由と不開示とされた部分との対応関係が明確であり,当該行政文書の種類,性質等とあいまって開示請求者がそれらを当然知り得るような場合を除き,通常,求められる理由の提示として十分とはいえない。
(2)そこで,まず,原処分における理由の提示の妥当性について検討すると,当審査会において,諮問書に添付された原処分に係る法人文書開示決定通知書を確認したところ,原処分においては,本件対象文書(総ページ数553ページ)のうちの不開示部分とその理由について,「個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないものが記されている部分を不開示とする。」,「審議,検討又は協議に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるものについては,法5条3号に該当するため不開示とする。」,「公にすることにより,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものについては,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。」,「公にすることにより,正確な事実の把握を困難にするおそれ,若しくはその発見を困難にするおそれがあるものについては,法5条4号ハに該当するため不開示とする。」及び「公にすることにより,人事管理に係る事務に関し,その公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある部分については,法5条4号ヘに該当するため不開示とする。」とされているだけで,どの不開示部分が上記の不開示事由のいずれに該当するのか不明であるばかりか,不開示事由についても,各不開示条項の規定をほぼそのまま引用したに等しい内容が書かれているにすぎず,当該不開示事由に該当すると判断した理由を具体的に示しているとはいえない。なお,各開示実施文書を見てみると,不開示部分がある各ページの上部には不開示条項が付記されているが,これを理由の提示又はそれを補うものと見ることはできない。
(3)以上を踏まえると,確かに,原処分においては,不開示の理由として,法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ及びヘは示されているものの,本件対象文書のどの部分が,どのような根拠により,これら不開示事由のいずれに該当するのかが開示請求者において了知し得るものになっているとはいえないから,理由の提示の要件を欠くといわざるを得ず,法9条1項及び2項の趣旨並びに行政手続法8条に照らして違法であるの
で,原処分は取り消すべきである。

3 本件一部開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ及びヘに該当するとして不開示とした決定については,その理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきであると判断した。

(第1部会)
委員 岡田雄一,委員 池田陽子,委員 下井康史

別紙(本件対象文書)
文書1 平成26年度科学研究行動規範委員会資料(67枚67頁)
文書2 平成27年度科学研究行動規範委員会資料(216枚216頁)
文書3 平成27年度科学研究行動規範委員会資料(128枚128頁)
文書4 平成27年度科学研究行動規範委員会資料(132枚132頁)
文書5 支給調書(8枚10頁)

 


 

参考

  1. 情報公開(独立行政法人等平成29年度答申 001~050 平成29年度(独情)024
  2. 答申状況<情報公開・個人情報保護審査会<総務省
  3. 情報公開・個人情報保護関係 答申データベース検索 (総務省)【 行情:10308件、独情:1123件、行個:1987件、独個:627件 (平成30年4月20日00:26現在) 】
  4. 情報公開・個人情報保護関係 判決データベース検索(総務省)

Tumor Biology誌の論文107報が撤回

2017年も残すところわずかとなりましたが、今年も研究不正の話題に事欠きませんでした。以下に紹介するのは、今年4月の出来事。

以下、エディテージ・インサイトの記事の一部を転載(Creative Commons)


シュプリンガーが中国人著者による論文107本を大量撤回

シュプリンガーが、がん研究を扱うオープンアクセスジャーナルTumor Biology誌に掲載されている107本の論文を撤回することを発表しました。これは、史上最大規模の大量撤回となります。編集長のトルニー・スティグブランド(Torgny Stigbrand)氏は、「厳格な調査の結果、査読プロセスの不正を認めざるを得ない証拠が見つかった」とし、出版倫理委員会(COPE)の勧告に基づいて撤回の判断を下したと説明しています。昨年末には、シュプリンガー・ネイチャーおよびバイオメド・セントラルによる浄化作戦の一環で、不正査読とオーサーシップ操作の疑いがあるとして、同誌の論文25本が撤回されました。

2016年に25本の論文が撤回された、シュプリンガーによる先述の浄化作戦の延長として、今回は107本の論文撤回に至りました。これらの論文は2012~2016年に出版されたもので、興味深いことに、多くが中国の著者(北京大学、上海交通大学、復旦大学、中国医科大学などの名門機関の研究者も含まれる)によって執筆されたものでした。ただし、このスキャンダルは、中国の研究の質を反映するものではありません。中国は、世界の科学研究および科学出版をリードする国の1つであり、ゲノム工学や核融合の分野において著しい貢献を果たしています。シュプリンガーのアルナウト・ジェイコブス(Arnout Jacobs)氏は、「今回の大量撤回は、世界中の論文を対象にしており、中国だけを標的にしたものではない」ことを強調しています。

出典元:「エディテージ・インサイト Sneha Kulkarni 2017年11月30日


 

撤回された107報の論文リスト

  1. Zhang, J., Xu, F. & Ouyang, C. (2012) Joint effect of polymorphism in the N-acetyltransferase 2 gene and smoking on hepatocellular carcinoma Tumor Biol. 33:1059-1063, doi 10.1007/s13277-012-0340-4
  2. Chen, X., Liang, L., Hu, X. et al. (2012) Glutathione S-transferase P1 gene Ile105Val polymorphism might be associated with lung cancer risk in the Chinese population Tumor Biol. 33:1973-1981, doi 10.1007/s13277-012-0457-5
  3. Zhang, Y. & Liu, C. (2013) The Interaction between Smoking and GSTM1 variant on lung cancer in the Chinese Population Tumor Biol. 34:395-401, doi 10.1007/s13277-012-0562-5
  4. Li, CY., Yuan, P., Lin, SS. et al. (2013) Matrix metalloproteinase 9 expression and prognosis in colorectal cancer: a meta-analysis Tumor Biol. 34:735-741. doi 10.1007/s13277-012-0601-2
  5. Zhang, RC. & Mou, SH. (2013) Polymorphisms of excision repair gene XPD Lys751Gln and hOGG1 Ser326Cys might not be associated with hepatocellular carcinoma risk: A meta-analysis Tumor Biol. 34:901-907, doi 10.1007/s13277-012-0625-7
  6. Dong, Y., Zhuang, L. & Ma, W. (2013) Comprehensive assessment of the association of ERCC2 Lys751Gln polymorphism with susceptibility to cutaneous melanoma Tumor Biol. 34:1155-1160, doi 10.1007/s13277-013-0657-7
  7. Wang, J., Xu, Y., Fu, Q. et al. (2013) Association of GSTT1 Gene Polymorphisms with the Risk of Prostate Cancer: An Updating Meta-analysis Tumor Biol. 34:1431-1440, doi 10.1007/s13277-012-0640-8
  8. Huang, Y., Liu, X., Kuang, X. et al. (2013) CYP2D6 T188C variant is associated with lung cancer risk in the Chinese population Tumor Biol. 34:2189-2193, doi 10.1007/s13277-013-0755-6
  9. Liu, C. & Wang, H. (2013) XRCC3 T241M polymorphism is associated risk of hepatocellular carcinoma in the Chinese Tumor Biol. 34:2249-2254, doi 10.1007/s13277-013-0765-4
  10. Li, F., Liu, Y., Fu, T. et al. (2013) Associations of three common polymorphisms in CD95 and CD95L promoter regions with gastric cancer risk Tumor Biol. 34:2293-2289, doi 10.1007/s13277-013-0773-4
  11. Li, W., Wu, H. & Song, C. (2013) TGF-?1 -509C/T (or +869T/C) polymorphism might be not associated with hepatocellular carcinoma risk Tumor Biol. 34:2675-2681, doi 10.1007/s13277-013-0818-8
  12. He, J. & Xu, G. (2013) LEP gene variant is associated with prostate cancer but not with colorectal cancer Tumor Biol. 34:3131-3136, doi 10.1007/s13277-013-0881-1
  13. Wu, D., Jiang, H., Gu, Q. et al. (2013) Association between XRCC1 Arg399Gln polymorphism and hepatitis virus-related hepatocellular carcinoma risk in Asian population Tumor Biol. 34:3265-3269, doi 10.1007/s13277-013-0899-4
  14. Yin, Y., Feng, L. & Sun, J. (2013) Association between Glutathione S-transferase M 1 null genotype and risk of ovarian cancer: a meta-analysis Tumor Biol. 34:4059-4063, doi 10.1007/s13277-013-0995-5
  15. Xu, JQ., Liu, P., Si, MJ. et al. (2013) MicroRNA-126 inhibits osteosarcoma cells proliferation by targeting Sirt1 Tumor Biol. 34:3871-3877, doi 10.1007/s13277-013-0974-x
  16. Chen, H., Tang, C., Liu, M. et al. (2014) Association of XRCC1 gene single nucleotide polymorphisms and susceptibility to pancreatic cancer in Chinese Tumor Biol. 35:27-32, doi 10.1007/s13277-013-1001-y
  17. Tian, X., Ma, P., Sui, C. et al. (2014) Comprehensive assessment of the association between tumor necrosis factor-alpha G238A polymorphism and liver cancer risk Tumor Biol. 35:103-109, doi 10.1007/s13277-013-1012-8
  18. Li, ZC., Zhang, LM., Wang, HB. et al. (2014) Curcumin inhibits lung cancer progression and metastasis through induction of FOXO1 Tumor Biol. 35:111-116, doi 10.1007/s13277-013-1013-7
  19. Jin, B., Dong, P., Li, K. et al. (2014) Meta-analysis of the association between GSTT1 null genotype and risk of nasopharyngeal carcinoma in Chinese Tumor Biol. 35:345-349, doi 10.1007/s13277-013-1047-x
  20. Sun, HL., Han, B., Zhai, HP. et al. (2014) Association between Glutathione S-transferase M1 null genotype and risk of gallbladder cancer: a meta-analysis Tumor Biol. 35:501-505, doi 10.1007/s13277-013-1070-y
  21. Xu, W., Wang, F., Ying, L. et al. (2014) Association between Glutathione S-transferase M1 null variant and risk of bladder cancer in Chinese Han population Tumor Biol. 35:773-777, doi 10.1007/s13277-013-1105-4
  22. Luo, S., Guo, L., Li, Y. et al. (2014) Vitamin D receptor gene ApaI polymorphism and breast cancer susceptibility: a meta-analysis Tumor Biol. 35:785-790, doi 10.1007/s13277-013-1107-2
  23. Chen, H., Zhou, B., Lan, X. et al. (2014) Association between single nucleotide polymorphisms of OGG1 gene and pancreatic cancer risk in Chinese Han population Tumor Biol. 35:809-813, doi 10.1007/s13277-013-1111-6
  24. Lv, S., Turlova, E., Zhao, S. et al. (2014) Prognostic and clinicopathological significance of survivin expression in bladder cancer patients: a meta-analysis Tumor Biol. 35:1565-1574, doi 10.1007/s13277-013-1216-y
  25. Liu, C., Yin, L., Chen, J. et al. (2014) The apoptotic effect of shikonin on human papillary thyroid carcinoma cells?through mitochondrial pathway Tumor Biol. 35:1791-1798, doi 10.1007/s13277-013-1238-5
  26. Shen, L., Chen, XD. & Zhang, YH. (2014) MicroRNA-128 promotes Proliferation in Osteosarcoma Cells by Down-Regulating PTEN Tumor Biol. 35:2069-2074, doi 10.1007/s13277-013-1274-1
  27. Ma, Z., Guo, W., Gong, T. et al. (2014) CYP1A2 rs762551 polymorphism contributes to risk of lung cancer: a meta-analysis Tumor Biol. 35:2253-2257, doi 10.1007/s13277-013-1298-6
  28. Geng, S., Wang, X., Xu, X. et al. (2014) Steroid receptor coactivator-3 promotes osteosarcoma progression through up-regulation of FoxM1 Tumor Biol. 35:3087-3094, doi 10.1007/s13277-013-1406-7
  29. Cheng, C., Chen, ZQ. & Shi, XT. (2014) MicroRNA-320 inhibits osteosarcoma cells proliferation by directly targeting fatty acid synthase Tumor Biol. 35:4177-4183, doi 10.1007/s13277-013-1546-9
  30. He, G., Chen, G., Chen, W. et al. (2014) Lack of association of XRCC1 rs1799782 genetic polymorphism with risk of pancreatic cancer: A meta-analysis Tumor Biol. 35:4545-4550, doi 10.1007/s13277-013-1598-x
  31. Han, M., Lv, S., Zhang, Y. et al. (2014) The prognosis and clinicopathology of CXCR4 in gastric cancer patients: a meta-analysis Tumor Biol. 35:4589-4597, doi 10.1007/s13277-013-1603-4
  32. Han, S., Cai, Z., Peng, L. et al. (2014) Ployamidoamine dendrimer loposome mediated survivin antisense oligonucleotide inhibits hepatic cancer cell proliferation by inducing apoptosis Tumor Biol. 35:5013-5019, doi 10.1007/s13277-014-1661-2
  33. Wang, L., Chen, Z., Wang, Y. et al. (2014) The association of c.1471G&>A genetic polymorphism in XRCC1 gene with lung cancer susceptibility in Chinese Han population Tumor Biol. 35:5389-5393, doi 10.1007/s13277-014-1702-x
  34. Yao, C., Lv, S., Han, M. et al. (2014) The association of Crk-like adapter protein with poor prognosis in glioma patients Tumor Biol. 35:5695-5700, doi 10.1007/s13277-014-1754-y
  35. Pei, J., Lou, Y., Zhong, R. et al. (2014) MMP9 activation triggered by epidermal growth factor induced FoxO1 nuclear exclusion in none small cell lung cancer Tumor Biol. 35:6673-6678, doi 10.1007/s13277-014-1850-z
  36. Chen, J., Huang, Q. & Wang, F. (2014) Inhibition of FoxO1 nuclear exclusion prevents metastasis of glioblastoma Tumor Biol. 35:7195-7200, doi 10.1007/s13277-014-1913-1
  37. Liu, L., Zou, J., Wang, Q. et al. (2014) Novel microRNAs expression of patients with drug resistant and sensitive chemotherapy of Epithelial Ovarian Cancer and preliminary analysis Tumor Biol. 35:7713-7717, doi 10.1007/s13277-014-1970-5
  38. Huang, J., Sun, C., Zhang, T. et al. (2014) Potent antitumor activity of HSP90 inhibitor AUY922 in adrenocortical carcinoma Tumor Biol. 35:8193-8199, doi 10.1007/s13277-014-2063-1
  39. Mao, D., Zhang, Y., Lu, H. et al. (2014) Molecular basis underlying inhibition of metastasis of gastric cancer by anti-VEGFa treatment Tumor Biol. 35:8217-8223, doi 10.1007/s13277-014-2095-6
  40. Lu, H., Li, H., Mao, D. et al. (2014) Nrdp1 inhibits growth of colorectal cancer cells by nuclear retention of p27 Tumor Biol. 35:8639-8643, doi 10.1007/s13277-014-2132-5
  41. Wang, F., Xiao, W., Sun, J. et al. (2014) MiRNA-181c inhibits EGFR-signaling-dependent MMP9 activation via suppressing Akt phosphorylation in glioblastoma Tumor Biol. 35:8653-8658, doi 10.1007/s13277-014-2131-6
  42. Cen, G., Ding, HH., Liu, B. et al. (2014) FBXL5 targets Cortactin for ubiquitination-mediated destruction to regulate gastric cancer cell migration Tumor Biol. 35:8633-8638, doi 10.1007/s13277-014-2104-9
  43. Wang, X. & Cao, X. (2014) Regulation of metastasis of pediatric multiple myeloma by MMP13 Tumor Biol. 35:8715-8720, doi 10.1007/s13277-014-2147-y
  44. Zhou, X. & Qi, Y. (2014) PLGF inhibition impairs metastasis of larynx carcinoma through MMP3 downregulation Tumor Biol. 35:9381-9386, doi 10.1007/s13277-014-2232-2
  45. Xu, JQ., Zhang, WB., Wan, R. et al. (2014) MicroRNA-32 inhibits osteosarcoma cells proliferation and invasion by targeting Sox9 Tumor Biol. 35:9847-9853, doi 10.1007/s13277-014-2229-x
  46. Ding, H., Zhu, Y., Chu, T. et al. (2014) Epidermal growth factor induces FoxO1 nuclear exclusion to activates MMP7-medidated metastasis of larynx carcinoma Tumor Biol. 35: 9987-9992, doi 10.1007/s13277-014-2067-x
  47. Li, X., Zhang, G., Huai, YJ. et al. (2014) Association between APE1 T1349G polymorphism and prostate cancer risk: Evidence from a meta-analysis Tumor Biol. 35:10111-10119, doi 10.1007/s13277-014-2115-6
  48. Yang, YQ., Qi, J., Xu, JQ. et al. (2014) MicroRNA-142-3p, a novel target of tumor suppressor Menin, inhibits osteosarcoma cell proliferation by down-regulation of FASN Tumor Biol. 35:10287-10293, doi 10.1007/s13277-014-2316-z
  49. Ye, Y., Zhou, X., Li, X. et al. (2014) Inhibition of epidermal growth factor receptor signaling prohibits metastasis of gastric cancer via downregulation of MMP7 and MMP13 Tumor Biol. 35:10891-10896, doi 10.1007/s13277-014-2383-1
  50. Wang, J., Su, H., Han, X. et al. (2014) Inhibition of fibroblast growth factor receptor signaling impairs metastasis of hepatocellular carcinoma Tumor Biol. 35:11005-11011, doi 10.1007/s13277-014-2384-0
  51. Duan, JH. & Fang, L. (2014) MicroRNA-92 promotes gastric cancer cell proliferation and invasion through targeting FXR Tumor Biol. 35:11013-11019, doi 10.1007/s13277-014-2342-x
  52. Li, XD., Zhang, YJ. & Han, JC. (2014) Betulin inhibits lung carcinoma proliferation through activation of AMPK signaling Tumor Biol. 35:11153-11158, doi 10.1007/s13277-014-2426-7
  53. Piao, YR., Jin, ZH., Yuan, KC. et al. (2014) Analysis of Tim 3 expression in prostate cancer Tumor Biol. 35:11409-11414, doi 10.1007/s13277-014-2464-1
  54. Liu, S., Gong, Z., Chen, M. et al. (2014) Lgr5-positive cells are cancer stem cells in skin squamous cell carcinoma Tumor Biol. 35:11605-11612, doi 10.1007/s13277-014-2488-6
  55. Xu, WJ., Guo, BL., Han, YG. et al. (2014) Diagnostic value of alpha-fetoprotein-L3 and Golgi protein 73 in hepatocellular carcinomas with low AFP levels Tumor Biol. 35:12069-12074, doi 10.1007/s13277-014-2506-8
  56. Su, ZX., Zhao, J., Rong, ZH. et al. (2014) Diagnostic and prognostic value of circulating miR-18a in the plasma of patients with gastric cancer Tumor Biol. 35:12119-12125, doi 10.1007/s13277-014-2516-6
  57. Li, K., Zhong, C., Wang, J. et al. (2014) Association of androgen receptor Exon 1 CAG repeat length with risk of hepatocellular carcinoma: a case-control study Tumor Biol. 35:12519-12523,doi 10.1007/s13277-014-2570-0
  58. Luo, K., Shi, Y. & Peng, J. (2014) The effect of Chemokine CC Motif Ligand 19 on the proliferation and migration of Hepatocellular Carcinoma Tumor Biol. 35:12575-12581, doi 10.1007/s13277-014-2578-5
  59. Zhang, G., Zhao, Q., Yu, S. et al. (2015) Pttg1 inhibits TGF? signaling in breast cancer cells to promote their growth Tumor Biol. 36:199-203, doi 10.1007/s13277-014-2609-2
  60. Peng, C., Zhou, K., An, S. et al. (2015) The effect of CCL19/CCR7 on the proliferation and migration of cell in prostate cancer Tumor Biol. 36:329-335, doi 10.1007/s13277-014-2642-1
  61. Han, G., Xie, S., Fang, H. et al. (2015) The AIB1 gene polyglutamine repeat length polymorphism contributes to risk of Epithelial Ovarian Cancer Risk: a case-control study Tumor Biol. 36:371-374, doi 10.1007/s13277-014-2661-y
  62. Lu, J., Yin, X. & Jiang, J. (2015) Sports-induced blood sugar utilization prevents development of pancreatic ductal adenocarcinoma Tumor Biol. 36:663-667, doi 10.1007/s13277-014-2684-4
  63. Jiang, Y., Sun, S., Liu, G. et al. (2015) Nrdp1 inhibits metastasis of colorectal cancer cells by EGFR-signaling-dependent MMP7 modulation Tumor Biol. 36:1129-1133, doi 10.1007/s13277-014-2726-y
  64. Zhang, Z., Yan, Z., Yuan, Z. et al. (2015) SPHK1 inhibitor suppresses cell proliferation and invasion associated with the inhibition of NF-?B Pathway in hepatocellular carcinoma Tumor Biol. 36:1503-1509, doi 10.1007/s13277-014-2665-7
  65. Huang, J., Jia, J., Tong, Q. et al. (2015) Knockdown of cancerous inhibitor of protein phosphatase 2A may sensitize Metastatic Castration-Resistant Prostate Cancer Cells to Cabazitaxel Chemotherapy Tumor Biol. 36:1589-1594, doi 10.1007/s13277-014-2748-5
  66. Lin, ZY., Song, QQ., Chen, J. et al. (2015) Local curative effect of MRI-guided radiofrequency ablation on small hepatocellular carcinoma Tumor Biol. 36:2105-2110, doi 10.1007/s13277-014-2819-7
  67. Li, C., Zhao, Z., Zhou, Z. et al. (2015) Augmented TGF? receptor signaling induces apoptosis of pancreatic carcinoma cells Tumor Biol. 36:2815-2819, doi 10.1007/s13277-014-2908-7
  68. Liao, A., Wang, W., Sun, D. et al. (2015) Bone morphogenetic protein 2 mediates epithelial-mesenchymal transition via AKT and ERK signaling pathways in gastric cancer Tumor Biol. 36:2773-2778, doi 10.1007/s13277-014-2901-1
  69. Liu, M., Zhang, K., Zhao, Y. et al. (2015) Evidence for involvement of steroid receptors and coactivators in neuroepithelial and meningothelial tumors Tumor Biol. 36:3251-3261, doi 10.1007/s13277-014-2954-1
  70. Xu, Y., Lu, Y., Song, J. et al. (2015) Cancer-associated fibroblasts promote renal cell carcinoma progression Tumor Biol. 36:3483-3488, doi 10.1007/s13277-014-2984-8
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  88. Ma, X., Li, X., Lu, X. et al. (2015) Interaction between TNFR1 and TNFR2 dominates the clinicopathologic features of human hypopharyneal carcinoma Tumor Biol. 36:9421-9429, doi 10.1007/s13277-015-3684-8
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  106. Zhang, Z., Zhou, Q., Miao, Y. et al. (2016) MiR-429 induces apoptosis of glioblastoma cell through Bcl-2 Tumor Biol. 37:15607-15613, doi 10.1007/s13277-015-4291-4
  107. Zhang, Z., Song, X., Feng, X. et al. (2016) Norcantharidin modulates miR-655-regulated SENP6 protein translation to suppresses invasion of glioblastoma cells Tumor Biol. 37:15635-15641, doi 10.1007/s13277-015-4447-2

(出典:Stigbrand, T. Tumor Biol. (2017). https://doi.org/10.1007/s13277-017-5487-6)

 

報道

  1. Science journal retracts 107 research papers by Chinese authors (South China Morning Post 23 April, 2017, 11:45pm, UPDATED 12 June, 2017, 12:53pm):”A major international publisher has retracted 107 research papers by Chinese authors after learning about irregularities in their peer review process. The Springer Nature publishing company said on Thursday the papers were published in the journal Tumor Biology between 2012 and last year. The authors supplied the journal’s editors with made-up contact information of third-party reviewers.”
  2. 撤回107中国论文的国际期刊有幽灵编委(网易 2017-05-20 07:22:11 来源: 澎湃新闻网(上海) )
  3. 中国が学術不正防止に本腰 (エナゴ学術英語アカデミー 2017年5月17日)
  4. 曾撤回中国107篇论文的期刊,如今被SCI除名 (新浪 2017年07月19日 09:23 澎湃新闻)