東大医学部のフェイク論文が不正とされない謎 国民の知る権利を蹂躙する東大
日本は民主主義の国家であり、主権は国民に存在します(日本国憲法)。国民主権を保証するための一つとして、表現の自由が憲法で保障されています(日本国憲法第二十一条)。表現の自由は、情報を得たり、共有したり、発信したりする自由が含まれると解釈されます。つまり、必要な情報を得る権利、「知る権利」が国民にはあるわけです。国民の知る権利を保障するのが、それと表裏一体の関係にあるの行政側の説明責任です。説明責任が果たされないと、国民の知る権利が侵害されます。
大学での科学研究を可能にしているのは研究費であり、その原資は税金です。大学で研究する以上、その研究成果は国民に直接、または間接的に国民に還元される必要がありますし、研究費が公正に使われていることを国民がチェックする体制が保証されていなければ、民主主義が成り立ちません。研究不正は、税金が正しく使われなかった状態ですから、研究不正の調査報告は、納税者である国民に対してなされるべきものです。納税者には知る権利があり、大学には説明責任があります。
東大が1年間に使う研究費の総額はどれくらいでしょうか?少なくとも1000億円は軽く超えるはずです。もちろん、国民の税金がその原資です。東京大学から出た科学論文に不正があるという告発がなされ(⇒記事)、東大は調査委員会を立ち上げて調査を行いましたが、その報告書はなぜか公開されませんでした。これでは、説明責任を全く果たしていません(⇒記事)。不正が無い場合には説明しないという時代錯誤なふざけたガイドラインにすがっているようですが(⇒ヤフー記事)、不正なしとした根拠を示さない限り、第三者には本当に不正がなかったのかどうかのチェックができません。実際、告発された論文を見ると、専門家から見て、不正がなかったと考えることが極めて困難なものです(⇒記事)。このような事例に関して、不正なし、だからそれ以上の説明はしないというのは、不正の隠蔽を強く疑わせる行為であり、決して許されません。
国民の知る権利を実効性のあるものにするための法律として、情報公開法があります。その第五条によれば、情報は公開が原則であり、情報を開示しなくてよい例外的な場合が列挙されています。東大はこの例外の解釈を不当に広くとることにより、情報の開示を拒んでいます。しかし、東大のこのようなやり方は違法であるという答申が、以前、匿名A氏が指摘した84報のうちの東大医学系論文12報に関する研究不正疑惑予備調査結果の隠蔽の際に出ています(⇒記事、東大の発表、総務省の答申)。東大は違法性を認識しつつ同じやり方を繰り返しているのですから、国民の知る権利を蹂躙しているといわざるを得ません。東大の科学研究の行動規範を遵守しないどころか、「東大医学部のデータ捏造の有無の判断材料となるような何がしかの情報」を隠すためであれば法をも犯すというのは、大変な暴挙です。科学研究の在り方以前の話として、法や民主主義を真っ向から否定しています。
東京大学というのは、大勢の優れた才能の集まりであって、誰か個人の所有物ではありません。東大の現執行部の一部の人間が東大を私物化し、身勝手な法解釈をすることによって医学部の中の誰かの不正を隠蔽するような行為は、東京大学の科学研究の高潔さ(Research Integrity)を貶めています。法を遵守し科学研究行動規範を実践するという当たり前のことができない人間は、東大の運営にかかわるべきではないでしょう。
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