実在しない神学者カール・レーフラー(Carl Loevler)が書いた存在しえない論文「今日の神学にとってのニーチェ」

   




生命科学研究において、存在しないマウスを解析した論文が阪大からNature Medicine誌に発表されたり、存在しないSTAP現象を解析した論文が理研からNature誌に発表されたり、存在しない実験値をグラフ化した論文が東大医学部からトップジャーナルに発表されたりと、存在しないものを報告した論文の例は、枚挙にいとまがありません。

人文社会系の研究でも同じようなことが起きるようです。医学系では不正を告発された学長が逆に不正を告発した教授らを解雇するというひどい事件も岡山大学でありましたが、今回は、大学トップの不正が不正と認定されたというニュースで、少しホッとしました。

 

報道

東洋英和女学院の院長が著書で“捏造”・・・懲戒解雇に(19/05/10) ANNnewsCH 2019/05/10


 

  1. 東洋英和女学院 不正行為に関する調査結果「極めて悪質」 深井智朗院長を懲戒解雇 (KiriShin キリスト新聞 2019年5月10日)
  2. 東洋英和女学院院長が研究不正(2019年5月10日 17:06 沖縄タイムズ/共同通信)東洋英和女学院の院長で同学院大教授の深井智朗氏の著作に架空の文献が使われるなどの不正が疑われた問題で、大学の調査委員会は10日、複数の捏造や盗用を認定したと発表、学院は深井氏を懲戒解雇した。
  3. 東洋英和の院長を懲戒解雇に 著書での捏造や盗用を認定(朝日新聞 有料記事 2019年5月10日14時13分)報告書では、一連の不正行為について、「研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務の著しい懈怠(けたい)があった」と指摘。

 

疑義

小柳氏の質問状は、深井氏によるヴァイマールの聖なる政治的精神――ドイツ・ナショナリズムとプロテスタンティズム』(岩波書店、2012年)などの注と資料の実在に関する問題2点を提示。「深井氏が我が国におけるドイツ・プロテスタンティズム研究の第一人者と目され、多くの読者を獲得しているだけに、現在の状況が放置されると信頼性の危うい情報がますます広く流通することとなります」「かねてより指摘されていた、注の不備や誤訳にも適切にご対応いただき、深井氏の著作を学問的な文章として読める状況が整えられることを切に希望します」とした。(日本基督教学会 深井智朗氏への公開質問状と回答を学会誌に掲載 2018年10月3日 KiriShin

 

認定された不正行為

2.調査(2)調査対象
対象者 深井智朗 本学院院長・東洋英和女学院大学教授
対象著書・論考
①『ヴァイマールの聖なる政治的精神-ドイツ・ナショナリズムとプロテスタンティズ
』(岩波書店、2012 年 196-199 頁)(以下、本件著書という。)
②「エルンスト・トレルチの家計簿」(『図書』岩波書店、2015 年 8 月号 20-25 頁)(以
下、本件論考という。)

3.調査結果(3)特定不正行為の具体的内容
①本件著書第 4 章「4 ニーチェのキリスト教批判の神学的援用」中に登場する「カー
ル・レーフラー」なる人物は存在せず、当該人物が著したとされる論文「今日の神学
にとってのニーチェ」は、被告発者による捏造であると判断する。また、本件著書の
197 頁から 198 頁までにおいて、ヴォルフハルト・パネンベルク著『組織神学の根本
問題』(近藤勝彦・芳賀力訳 日本基督教団出版局、1984 年)の 277 頁から 278 頁ま
でにおける記述とほぼ同一の記述、同様の表現・内容の記述が、引用注が記されない
まま計 10 か所認められたため、被告発者による盗用がなされたものと判断する。
②本件論考中に述べられている「エルンスト・トレルチの家計簿」の根拠資料となる
1920-23 年のトレルチ家の借用書や領収書等の資料は実在せず、被告発者による捏造
と判断する。

(引用元)東洋英和女学院大学における研究活動上の特定不正行為に関する公表概要 2019 年 5 月 10 日 東洋英和女学院大学 PDF)

 

参考

  1. 研究活動上の不正行為に関する調査結果について 2019年5月10日 東洋英和女学院大学 学長 池田 明史

 

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ネット上の声

大学における不正がうやむやにされることが多いなか、東洋英和女学院大学の対応を評価する声が聞かれます。

  1. 東洋英和女学院院長が論文でねつ造した“存在しない神学者”「カール・レーフラー」さっそくネタ化される
    (kintoki_naruto togetter
  2. 『存在しない神学者』が話題ですが、そもそも神が存在しないのでは?( togenukin toggetter)

 


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