笹井芳樹 理研CDB副センター長が記者会見

      2018/04/10




STAP細胞NATURE論文捏造事件においてNATURE論文の執筆で主要な役割を果たした理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長が2014年4月16日記者会見を行い、NATURE論文投稿に至るまでの経緯を説明しました。

笹井芳樹氏会見質疑応答全収録;STAP細胞問題16日午後、都内

まずNATURE論文作製に笹井氏がどのように関わったのかという点に関して。

  • 実験の大部分(論文中の80パネルのうち75パネル)は、小保方氏が若山研究室の客員研究員だった2011年春より2年間の間に小保方氏によって行われた。
  • 実験データの解析と図表の作成も若山研究室で小保方氏がほとんどの部分を行なった。
  • NATURE誌への投稿論文は小保方氏と若山氏により一度書かれ、2012年春にネイチャー誌に一度投稿されたが却下された。
  • 2012年12月中旬に小保方氏がユニットリーダーとして登用される際の人事選考委員会において、小保方、若山両氏らがまとめた論文原稿の完成度が、研究の内容や発見の重要さに見合うだけのものになっておらず論文採択は難しいだろうという意見が出された。このため、竹市センター長より、論文作成を手伝うことを依頼され、2012年12月下旬より、論文原稿の書き直しの協力を開始。
  • 2013年3月に小保方氏がユニットリーダーとして採用され、その直後の3月10日にネイチャーに論文を投稿。
  • 投稿前の2月前後に、STAP現象の試験管内の評価に関する実験技術の指導も行なっている。
  • 論文のリバイスの段階における追加実験や技術指導も行なった。
  • 新しく追加された実験であるライブ・セル・イメージングなどの生データについては一緒に解析を行った。

笹井氏が論文著者として名を連ねるに至った経緯に関しては、バカンティ教授より強い要請を受けたためと説明しています。また、レター論文で責任著者になっていることに関しては、2013年9月の改訂論文の投稿時に若山氏から強く頼まれて3人目の責任著者になったのだそうです。

笹井芳樹氏を小保方晴子氏の上司と位置付けての報道もなされていましたが、笹井氏に小保方氏の実験に関して監督責任があったのでしょうか?その点に関しても笹井氏は説明をしています。

  • 研究不正とみなされた2つの実験データも含め、多くの実験データはすでに図表になっていたため、生データやノートを見る機会はなかった。
  • 自分の大学院生を指導する ときは『ノートを持ってきて見せなさい』と言えるが、小保方研究ユニットリーダーはあくまで独立した研究室のリーダーであり自分の研究室の部下ではないため、実験ノートや生データを見せなさい、とはならなかった。

捏造論文が世に出てしまった経緯に関して。

  • 今回の研究は複数のシニア研究者が複雑に関与した特殊な共同研究のケース。論文を書き上げたのが自分で、前段階である実験を指導したのが若山さんで別の人間であるという例外的な事情。
  • 現実的、過去の実験データにさかのぼって一つ一つの 生データをすべて確認することは難しい。

笹井氏はSTAP現象があることを前提としなければ容易に説明できないデータがあると述べてきましたが、捏造や改竄データが認定された論文の他のデータを正しいと信じろというのは無理なことです。笹井氏はなぜそれでもSTAP現象があると考えているのでしょうか?そのような質問に対しても回答がありました。

  • 配布資料に使った写真では、小保方氏が一人で解析できた実験結果は極力排除してある。
  • 実験の途中から投入することのできない細胞もあるし、撮影した画像などは、1コマ1コマ日付も入っており、これらをいじればすぐにわかってしまう。
  • 科学論理の立て方の問題になってしまうのだが、遺伝子解析をしたときに、STAP細胞が今まで知られている細胞でないことは事実。

博士論文をコピペしていたり、以前の論文でもDNAのゲルの写真を反転して図を捏造した疑いがインターネット上で指摘されていますが、研究者としての資質が問われるような人間を理研のユニットリーダーとして採用した理研の人事における責任は非常に重大です。採用の経緯に関しても説明がありました。

  • 「2012年12月中旬、小保方さんの研究リーダー採用の審査は、他の研究リーダーの選考と同様に人事委員会において、本人の研究プロジェクトの計画と現 在の研究のプレゼンテーションをお聞きし、さらに、委員が詳細な議論を行い、研究の独創性、挑戦性、研究の準備状況を中心に評価しました。これまでの小保 方さんの指導者からの評価も参考にしました。通常の手続きと同様で一切偏りがなかったと考えています。私を始め多くの人事委員は、本人と会い、話をしたの は採用面接が初めてです」
  • (研究者としての小保方氏をどう見るか)「非常に豊かな発想力があると感じています。それは採用時の人事委員会の皆の一致するところであります。ただ、トレーニングが足りなかったところ。未熟と いう言葉を使いたくないのですが、科学者として身につけるべきだったのに身についてなかった部分は、今回の発表後に明らかになりました。データ管理におけ る取り違えを生み出したりするなど、ある種のずさんさがあったと思います。その両極端が一人の人間の中にあるのかなと。シニアの研究者として私が後悔する のは、Natureの論文を2回も出すということはなかなかできることではない。しかし彼女の弱い部分を、もっとしっかりと認識して、背伸びをするだけで なく足下をきちんと固めることができなかったことを、非常につらく思っております」

今回の記者会見は、NATURE論文掲載に至るまでの経緯がようやく詳細に説明されたという点で意義がありました。

捏造論文発表の責任を笹井氏がどの程度負うべきかという点に関しては、さまざまな意見があります。記者会見の中で笹井氏は、自分は論文執筆を頼まれて手伝っただけであり、今回のSTAP細胞の研究発表ではあまり重要な役回りではなかったと言いたげでした。しかし過去の読売新聞の報道が正しければ、

STAP論文、掲載1週間前に最終稿…若山教授———­–読売新聞 3月23日(日)8時49分配信
STAP(スタップ)細胞の論文の主要な著者の一人である若山照彦・山梨大教授(46)は、読売新聞の取材に対し、論文の最終稿が理化学研究所のチームから届いたのは、掲載の約1週間前だったことを明らかにした。…若山教授によると、最終稿が理研発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹・副センター長(52)らから届いたのは、英科学誌「ネイチャー」で掲載が決まってから1か月後の今年1月。すでに大幅な修正ができない時期で、若山教授は自分の研究部分以外はチェックしなかった。論文は1月30日付で同誌に掲載された。

ある時点からは若山氏を蚊帳の外に置いて笹井氏が論文投稿の主導権を握っていたのではないかと推測されます。論文の最終原稿を共同研究者に見せずに投稿し、受理されて世に発表される直前になってからようやく原稿を渡すというのは相手を非常に軽んじる行為だからです。このような行為と記者会見での笹井氏の説明とは矛盾しないのでしょうか?

また会見では、iPS細胞の山中伸弥氏への対抗心があったのではないかと質問されて、完全に否定しました。しかし、多くの報道にあったとおり、

 理研、STAP細胞報道資料の一部撤回 iPS細胞との比較分(日本経済新聞 2014/3/18 19:47 )
… iPS細胞との性能を比較した説明資料で、STAP細胞の作製効率は30%と、iPS細胞の0.1%より優位性があるとしていた。資料はSTAP細胞の論文の共著者である理研の笹井芳樹副センター長を中心に作成した。山中伸弥・京都大教授は2月10日の記者会見で反論。0.1%というiPS細胞の作製効率は2006年当時のもので、現状では20%以上とした。(http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1805T_Y4A310C1000000/

自分の専門分野の最新状況を知らないわけがないにも関わらず、わざわざiPS細胞の古い資料を引き合いに出してSTAP細胞の優位性を強調する行為は、対抗心の表れと言えないのでしょうか?

今回の記者会見の内容は言葉だけ聞けば整合性があるようにも思えますが、言葉と行動が合致しているのかどうかが問題です。

参考

  1. 科学研究面に関する説明資料 理化学研究所 笹井芳樹 (理研ウェブサイトPDFファイル)
  2. 【STAPキーマン 笹井氏会見詳報】(1)山中氏のライバル謝罪「共著者として心痛の極み」(産経ニュース2014.4.16 15:54)
  3. 理研笹井氏「依頼を受け参加」/一問一答(ニッカンスポーツ 2014年4月16日22時23分)
  4. 小保方晴子さんも理研も批判せず 笹井芳樹さんの会見はマスコミの追及を巧みに回避【STAP細胞】(HUFFPOST 2014年04月16日)
  5. 笹井氏STAP説明に、同僚「理解できない」 (読売新聞 2014年04月17日 10時04分):(理研発生・再生科学総合研究センターでの同僚の)研究者の一人は「会見で示されたデータに、ネイチャー論文以上のものはなかった。論文の信頼性が失われている以上、そのデータをもって合理性が高いと言われても正直、理解できない」と指摘。
  6. 【STAP細胞】笹井氏「有力な仮説」強調も新事実なく 争点には「分からない」 (産経ニュース 2014.4.17 10:24):STAP細胞がさまざまな細胞に分化できる重要な証拠となる画像が、小保方氏の博士論文の関連画像から流用された問題については「小保方氏から、真正画像があったが取り違えたと聞いている」と説明。ただ、小保方氏の不服申立書によると、「真正画像」の撮影は平成24年6月で、論文がネイチャー誌に投稿された同年4月より後。この矛盾を指摘されると笹井氏は「私が論文に関与する以前の話なので、どこでどう撮影されたのか分からない」と釈明した。
  7. STAP細胞 笹井氏の記者会見を受けて (HUFFPOST 東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門 特任教授 上昌広 投稿日: 2014年04月17日 16時48分):筆者は、この記者会見を聞いて違和感を抱いた。それは、「最後の段階で論文仕上げに協力しただけ」で、「実際に指導したのは若山照彦教授である」との主張を繰り返したからだ。この発言に納得する人は少ないだろう。笹井氏は、理研の再生科学総合研究センターのナンバー2だ。一般企業に例えれば、理研本部はホールディング・カンパニー、再生科学総合研究センター は事業会社に相当する。笹井氏は、一つの事業会社の副社長で、今春に社長昇格が予想されていた実力者である。センターの経営に大きくかかわってきたと考え るのが普通だ。通常、経営者は、経営判断に関して責任を負う。現に、記者会見では、小保方晴子氏のユニット・リーダーへの抜擢人事には関係したと明言している。今回の不祥事について、任命責任を負うのが当たり前だ。ところが、彼の発言からは、そのような気配は感じられなかった。まるで、自分のことを理研のリーダーと思っていないように見えた。
  8. 笹井氏の会見。「自分はギフトオーサーであるから、責任を取るつもりはない」と言っているようにしか聞こえない。これは、研究者社会を成り立たせているルールを、根本から否定しているのではないだろうか?(近藤滋 ‏@turingpattern)
  9. STAP細胞を前提にしないと説明できない?(大隅典子の仙台通信2014年 04月 16日):「STAP現象」ではなくても説明できるのではないか、という私見を記します。
  10. 「共著者としてあり得ない」=理研改革委の岸委員長-笹井氏「ノート見てない」で (時事ドットコム 2014/04/18-16:07):岸委員長は笹井氏について「実験ノートとかを知らなかったというのは、あまり強調すべきことではない」と述べ、重要な発見を世に問う論文の共著者としては不適切との考えを示した。

 

 


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