NHKスペシャル『追跡 東大研究不正』

      2018/04/22

2017年12月10日(日)午後9時00分~9時49分に、NHKスペシャル 追跡 東大研究不正 ~ゆらぐ科学立国ニッポン~ が放送されました。NHKの番組説明を読むと、研究不正問題の背景となる日本の科学政策の問題点に関して批判的なメッセージを伝えることが一番の狙いのようです。

激化する国際競争の中で変容してきた科学研究費の配分を巡って、翻弄される科学者の姿。そして、科学技術立国を掲げ、研究成果を国の発展につなげようという施策が、皮肉にも、科学を停滞させかねないという現実。(NHKスペシャル 追跡 東大研究不正 ~ゆらぐ科学立国ニッポン~)

 

視聴者は、この番組をどのように見て、メッセージをどのように受け取ったのでしょうか?番組に関するツイートをいくつか紹介します。

激化する研究費獲得競争が研究不正の要因なのか?

NHKスペシャルの番組予告では、「優秀なはずの科学者たちがなぜ不正を?」というフレーズが使われていました。また、番組内では、研究費獲得競争の激化を要因の一つとしてかなり強調していました。その主張を根拠として、番組内では東大の若手PIの言葉を通じて、ラボの運営がいかにお金のかかることかを説明していました。

しかし、東大で新たにPIに採用されるような人は、業績もあり競争的研究資金の獲得能力があると認められた人たちです。また、競争に負けて予算が全く取れなかった人が、実験できないのでデータを捏造するというものでもありません。研究不正で話題になるのは、多くの場合、普通の研究者よりも桁違いの研究予算を取っている人たちです。

優秀な科学者がなぜ捏造するのか?数億円の研究予算を獲得している研究者がなぜ捏造するのか?パーマネント職が欲しい若手研究者がなぜ捏造するのか?これらの疑問を統一的に説明できるのが、上のツイートの『研究費が足りないから不正が起きるのではなくて足りないのは成果に見合う能力です。』という分析ではないかと思います。「研究費の額=その研究費で期待される成果の大きさ」に見合う能力が足りないときに、その人は研究不正を働いて帳尻を合わせようとすると考えると、とてもしっくりきます。だとすれば、研究不正を防止するひとつの方法として、いくら優秀な科学者であっても、その人の能力以上に研究予算をあげないことが考えられます。

 

インパクトファクター至上主義の是非

番組内では、教授が高インパクトファクターの国際誌に論文を掲載しようとしたことがあたかも悪いことと受け取られかねない説明だったと思います。分生研加藤研の不正調査報告書にも同じような論調がありました。しかし、良い研究をして良いとされる雑誌に論文を掲載されるように努力することは研究者として当然のことであり、そのこと自体は何も悪くありません。部下の能力や意志を無視してそれを強要したり、不正を働いてまでするから問題なのです。上で紹介した分析『足りないのは成果に見合う能力』は、ここでも当てはまります。

業績欄にセル、サイエンス、ネイチャーがないと(あっても?)なかなかパーマネントの職が取れないようなご時世なのですから、部下の将来を考えて、これらのいわゆる一流誌に論文を出させようと叱咤激励してくれるボスは、本来なら、むしろ良いボスでしょう。

 

アカデミックにおけるパーマネントなポストの不足に関して

 

研究不正を働く人ってどんな人?

 

番組が東大医学部捏造論文疑惑に触れなかったことに関して

捏造論文を出すラボは、何度でも捏造論文を繰り返し出す不思議な現象が見られます。これもまた、以下の不等式

期待される成果の大きさ > 本人の能力 + 本人のモラル

が成立する限り、捏造が繰り返されると考えれば合点がいきます。

 

参考

  1. NHKスペシャル「追跡 東大研究不正~ゆらぐ科学立国ニッポン~」 2017年12月10日 171210 http://www.dailymotion.com/video/x6bgb75

  2. 捏造、不正論文 総合スレネオ 425ちゃんねる *閲覧注意)

 

同じカテゴリーの記事一覧


 - 東大分生研論文不正事件, 東大医学部論文不正疑惑, 研究倫理, 科学者の不正行為, 論文データ捏造