NHK土曜ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』第1話、第2話 研究不正告発のもみ消し #ここぼく

NHKの土曜ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』の第2話の中で研究不正の話が取り上げられたようです。

ネタばれ

岸谷教授は「整えて」という言葉で、日常的に論文データの改ざんを指示していた。けれども、不正を追及されて「今度は言葉の意味の方を変えてきた」。「整えて」は、データの改ざんではなく「机の上を掃除しろ」という意味であると研究室内に周知徹底したのだ。(『ここぼく』が告発する意味の捏造 松坂桃李演じる危機感のない主人公のリアル 2021/5/2(日) 6:05 リアルサウンド YAHOO!JAPAN

 

元カノで非正規研究者のみのり(鈴木杏)は、岸谷教授(辰巳琢郎)の論文不正を世間に告発。大学当局は本調査に乗り出すことを余儀なくされる。だが、理事の須田(國村隼)らから過小報告のプレッシャーを受けた調査委員・上田教授(国広富之)が‥ 

(【土曜ドラマ】今ここにある危機とぼくの好感度について(2) 5/1(土) 午後9:00-午後9:49 nhk.jp

 

関連notes

私自身は責任者ではないものの、同ドラマに研究不正調査考証という形で協力させていただきました。ストーリーに責任を負う立場ではないのですが、そのような形で協力させていただいた立場としてはコメントしないわけにはいかないだろうということで、この件について、以下、コメントします。

「今ここにある危機とぼくの好感度について」第2話について Masaki Nakamura 2021/05/04 00:02 note.com

上のノートでは研究不正調査に関して一般論が説明されていました。かなり抑制の効いたコメントで、正直、自分はもどかしいものを感じます。

 

NHKドラマの不正隠蔽の描き方は誇張なのかI

上のノートでは、”ドラマではかなり誇張されて描かれているとはいえ、本ドラマで描かれているような形での研究不正調査への介入が” とドラマだからオーバーに描いているかのようにも説明しています。また研究不正隠蔽の描き方に関して憤っている大学教授もおられるようです(下のツイート)。しかし、私はOrdinary_Researchersの告発に対する東大の行動や、岡山大の事件などを見れば、むしろドラマで描かれた内容よりも今日本で現実に起きていることのほうがもっと恐ろしいと思います。ドラマでは告発したポスドク一人がキャリアを潰されただけかもしれませんが、岡山大では告発した教授二人が解雇の憂き目にあっているのです(ポスドクを軽んじるつもりはありませんが、ポスドクよりはるかに立場が強いはずの教授ですら学長に解雇されているという意味です)。要職についておられる方々はそうそう本音を表明できないとは思いますが、それにしても、正直、この温度差は一体なんなんだろうと思ってしまいます。

匿名掲示板には、匿名A氏による下のような書き込みもありました。真偽のほどは自分にはわかりませんが、Ordinary_Researchersの告発に関する東大のあの支離滅裂でデタラメな対応を目の当たりにすると、この文章が非常にリアリティを帯びて感じられます。

773匿名A ◆Zm8FyprZhE 2019/06/02(日) 03:11:58.86ID:lJqnTEYta
卒論生の時から捏造データの再現性の追試を担当させられた私と同僚は、みんなからとことん冷笑された。
辛いこと、爆発させたいことがたくさんあった。
そして、同僚は自殺した。教授室に殴り込みに来た同僚のお母さんは、未だに死の真相をしらない。
私と同僚は、愚直に誠実にやって、あれだけ馬鹿にされ、罵倒された。
もう同僚は死んだ。この世には帰ってこない。
だったら、もうこうなったら、私は真実にこだわることでとことん罵倒されたいのだよ。
東大医学部の捏造家が生き延びていることを甘受しているお前ら全員に嫌われたい。馬鹿にされたい。
(捏造、不正論文、総合スレネオ50 https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/life/1555990307/770-n)

NHKドラマの不正隠蔽の描き方は誇張なのかII

上はドラマを見ずに書きましたが、第1話を見て少し細かいストーリーがわかったので書き直します。第1話では、研究不正がなかったことにするために、告発した女性が昔好意を寄せていた男を近づけて抑え込もうとしたり、この女性ポスドクが任期切れで行先がないので助教の口を与えるかわりに黙らせようとしたりしていたり画策していました。そんな目論見は見透かされていたわけですが、このようななりふり構わぬ裏工作が本当に有り得るのかというと、あり得なくないかもしれないけれどもそうそうないんじゃないのと思います。コメディー仕立てにするために、ドラマの制作者が思いっきりありそうにないことを持ち出したのかなと思いました。その一方で、森友事件のように悪いことをした連中がみな出世していたという現実もありますので、見て見ぬふりをできる人間がいい職に就くという現実からして、絶対にないとも言えない気がします。

NHKドラマの不正隠蔽の描き方は誇張なのかIII

第2話まで見ました。ネタバレになりますが、女性ポスドクの木嶋みのりが自分のラボで起きている不正を告発すると決めたときに相談した教授が、研究分野が近いから調査委員を引き受けると言ってくれて、しかし気苦労のせいか理事たちの強硬な姿勢のせいか途中で倒れてしまい、学内一の変人教授に一時的に調査委員長のおはちが回ったのですが、その変人教授がスナックで暴力行為を働いたのがすっぱ抜かれて停職処分となり、回復したくだんの教授が再び調査委員長を務めるのですが、大学から懐柔され、来年度の研究予算を倍増するから穏便に済ませるということを受け入れてしまったようです。

こんなこと(買収)が実際に起こるのかと言えば、まああり得ないんじゃないかと思います。東大医学部の不正調査を見てもわかるように、医学部の不正の調査には他大学の医学部の研究者を調査委委員長に当てたわけで、買収するまでもなく医学の権威たちに忖度せざるをえない人達を調査委員長や調査員にしたのだろうと思います。調査委委員は公開されなかったので、自分の推測にすぎませんが。理学部の不正を担当したメンバーが、同時に医学部の調査まで引き受ければ、不正なしの1行で済ませることなどあり得なかっただろうと思います。

NHKがフィクションのドラマの中で不正調査委員長を大学が買収したことにしたことを問題視するよりも、実際に日本で起きていることが、不正調査委員長や調査委員が忖度したのではないかと強く疑われるような調査報告書になっていることのほうを問題視すべきでしょう。不正調査報告を一切せずに不正なしで済ませているような大学の関係者がNHKにケチをつけるのは、感覚がマヒしているような気がします。

 

関連tweets

不正がない場合には調査内容を報告しなくて良いということにすると、研究機関が一言「不正はなかった」というだけで、不正は完全に隠蔽できてしまいます。東大は調査報告書の全面開示を拒んでいますが、わずかに開示された部分だけでも、手作業が通常だとか、不正としか思えない記述、支離滅裂な文言が垣間見えます。ですから、東京大学医学部に関する調査と判断が本当に妥当性のあるものだったのかどうかを第三者が検証できるように、すべての調査内容を公開すべきだと自分は考えます。


 


 

『今ここにある危機とぼくの好感度について』第2話のストーリーに対する評価


 

 

 


 

『今ここにある危機とぼくの好感度について』第2話の感想

 

 

『今ここにある危機とぼくの好感度について』第1話


 

NHKドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」1話のクライマックス 2021/04/25 rena rerena

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