NATURE論文がついに今週撤回されましたが、STAP細胞研究不正の真相の全容解明には程遠い状態です。理研は小保方晴子氏にこれ以上言い訳をさせないために、本人一人による再現実験を行わせる決定を下し、「再現実験」が始まりました。
このような理研のやり方を批判する声明を、日本分子生物学会が発表しています。
2014 年7 月4 日
理事長声明『STAP 細胞論文問題等への対応について、声明その3』
特定非営利活動法人 日本分子生物学会
理事長 大隅 典子
7月2日付けで理化学研究所よりSTAP 細胞に関する2報のNature 論文が撤
回されたとの発表がありました。日本分子生物学会は当該論文について当初か
ら同研究所の適切な対応や早期の論文撤回を求めておりましたので、約半年も
かかったものの、事態が一歩進んだことについては評価致します。
一方で、多くの論文不正についての疑義がきちんと分析されず、それに関わ
った著者らが再現実験に参加することについては、当分子生物学会会員を含め
科学者コミュニティーの中から疑問視する声が多数挙がっております。このよ
うに当該機関が論文不正に対して適切な対応をしないことは、科学の健全性を
大きく損なうものとして、次世代の研究者育成の観点からも非常に憂慮すべき
問題であるとともに、税金という形で間接的に生命科学研究を支えて頂いてい
る国民に対する背信行為です。
今回の研究不正問題が科学者コミュニティーを超えて広く国民の関心を惹く
ことに至ったのは、論文発表当初に不適切な記者発表や過剰な報道誘致が為さ
れたことに原因があり、それらは生命科学研究の商業化や産業化とも関係して
いると考えられます。このように科学を取り巻く環境の変化に対して、われわ
れ科学者はより一層の倫理観の醸成に努める必要があり、多くの優秀な科学者
を擁する理化学研究所にはその模範となるような姿勢を示すことを強く希望し
ます。
上記のような現状を早期に解決して頂くために、ここに改めて日本分子生物
学会理事長として以下の点を理化学研究所に対して希望致します。
・ Nature 撤回論文作成において生じた研究不正の実態解明
・ 上記が済むまでの間、STAP 細胞再現実験の凍結
(http://www.mbsj.jp/admins/statement/20140704_seimei.pdf)
参考
- ネイチャースペシャル THE RISE AND FALL OF STAP (nature.com) :ネイチャー誌がSTAP細胞に関するこれまでの記事を整理して一覧にしています。
- 日経サイエンス「STAP細胞の正体」 古田彩(編集部) 詫摩雅子(科学ライター)):”…論文に掲載された「STAP幹細胞」10株は,すべて途中ですり替わっている。STAP幹細胞は若山氏が小保方氏にマウスを渡し,小保方氏がSTAP細胞を作って,若山氏がこれを培養してSTAP幹細胞にした。2株は若山氏が渡したのとは別の系統のマウスの細胞で,その遺伝子的な特徴は,若山氏自身が作ったES細胞に一致する。残る8株は若山研にはなかったマウスの細胞で,出所は不明である。…”
- 小保方晴子リーダー「出勤」しばらくは実験ノート揃えたりお茶の準備 (JCASTテレビウォッチ 2014/7/ 3 10:22):”…実証実験の統括責任者・CDBの相澤慎一特別顧問は「実験の準備ができていないので、実験ノートを揃えるとか、お茶の道具を揃えるとか、そういうたぐいのことに時間を使うことになる」と話す。前代未聞の騒動の割にはのんびりしているが、それやこれやの準備で本格的な実証実験に入るのは2か月後の9月ごろになるという。…”
- 小保方氏参加の検証実験、第三者監視下 24時間モニターで透明性確保 (産経ニュース 2014.7.2 23:51):”…検証実験の責任者でセンター特別顧問の相沢慎一氏は2日の会見で「本人が参加して、どうしても再現できないというところまでやらせ てもらいたい」と話した。…”