「 研究者のキャリアパス 」 一覧

アカデミア就活の基本 を東洋経済ONLINEの記事 年収300万円「非常勤講師」が苦しむ常勤の壁 へのコメントに学ぶ

2017年10月25日の東洋経済ONLINEに、大学教員公募に関する記事 年収300万円「非常勤講師」が苦しむ常勤の壁 がありました。同記事はヤフージャパンでも読めますが、両ウェブサイトのコメント欄には、あわせると400以上ものコメントが書き込まれました。その中から、多くの人に役立ちそうなコメントをいくつか紹介します(随時入れ替えあり)。   不採用になる理由 大学がほしいと思う人材ではないということ 採用先が採用したい人をとるただそれだけ 職には呼ばれるもの 本当に実力があれば、面接なんかせんでも声がかかるよ 実力がある人へは向こうからオファーが殺到する   大学教員公募選考過程の実際 大学の採用が出来レースなのは周知の事実。… 大抵は教え子か、コネのある人が空いたポストを埋める。表向き公平性を保つために外部に求人を公開しているだけ 確かに出来レースのコネ採用あります。公募でコネ採用とは実に迷惑な話です。ただすべてがそうではありません。… また大学の教員は高校教員とは違い、研究分野を非常に絞って採用を掛けます。分野違いではいくら研究業績が素晴らしくても採用には至らないでしょう。また、面接での態度や人間関係、大学の求める人物像なども加わります。 採用する側に居たこともありますが、外部の優秀な人材より、自分の手下として使える人間を選ぶ行為が平然と行われていました 優秀って言う人程扱いづらくて、結局優秀ではなかったりするから、教授の気に入った人しか採用はされない 採用する側は応募者のどこを見るのか 研究業績がダントツでも人格的に問題があれば採用されない 研究業績の数が優先されるのは、東大京大など一部の研究大学のみです。それ以外の大学では、最低限の業績や経験に加えて、最優先で「人柄」を見ます。学生及び同僚や事務員さんなどと、波風立てず気持ちよく仕事ができる人かどうか、が最も重要   研究だけではない大学教員の仕事を理解すること 旧帝大などを除いた一般的な大学では、大学教員の仕事は、・研究・教育・大学(学部)運営の三本柱から成つのが普通です。研究業績だけで採用が決まるわけではありません 多くの大学教員は自分の好きな研究だけをしているわけではなく、学生に講義をして、人によっては入試や学務など事務的な仕事も大量に処理をするなど、担当する業務は一般に思われているよりもはるかに多面的です。そのために、研究業績は採用時に重要な意味を持つものの、いわゆる研究大学であっても、研究業績だけで評価する訳ではありません。… 組織として機能するために、研究業績以外の側面も勘案して、直面する状況に合わせて適切に人員を配置することが、求められます 各大学のニーズにマッチさせること 研究実績よりも教育実績の方が大切な可能性もあり 業績で選ばれたければ、業績を必要としている大学に応募すること ご自身の考えと大学の求めているニーズが一致しない点を再度考え直して 学生に今までの経験ご還元でき、学生の満足度を高める授業をできないなら申し訳ないが採用は厳しい   コネ採用の現実 世の中コネですよ いいも悪いも世の中コネだらけ 以前、国立大に非常勤で勤務していたけど、採用はコネでしかないんだよね。 コネの概念を正しく理解すること コネも実力 実力とは何か?厳しく言えば、コネが多いことだよ 本当に実力があるならコネと人脈は後から付いて来る …

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2017年10月16日学振の結果が通知される

学術振興会特別研究員(学振)の審査結果が今日発表されました。面接試験免除での合格、不合格、面接試験へ進む、の3つに分かれたようです。 日本の研究の「今」を垣間見ることができるツイッターをいくつか紹介します(随時追加削除入れ替える可能性あり)。 本日発表 そうか、今日は学振の発表か。 From: ZoZomiK0222 at: 2017/10/16 18:36:24 JST Re 公式RT 今日は学振発表デーだったのね。From: SSeiya60260 at: 2017/10/16 14:32:58 JST Re 公式RT うああ..学振の日だったのね ううううう From: yokonozo at: 2017/10/16 15:14:47 JST Re 公式RT 学振の結果が出たらしくて重い空気が広がってる From: suzutomo1020 at: 2017/10/16 15:38:26 JST Re 公式RT 結果を知ることに対する恐れについて 学振結果発表でメール来てるけど怖くて開けられない From: rarudosiori at: …

平成29年度 卓越研究員ポストが公開される

平成29年度 卓越研究員を受け入れる大学、研究所、企業が提示したポストのリストが公開されました。日本全国の国公立大学、私立大学のほか、日立製作所、出光興産、パナソニック、住友電気工業、富士通、日本電気、キリン、日本電子、第一三共、ソニーコンピュータサイエンス、その他の企業が受け入れを表明しています。ジョブタイトルは、助教、講師、准教授、教授、グループリーダー、主任研究員、その他となっており、エクセルファイルの一覧を見ると全部で204件あります。 エクセルファイル、分野別PDFで閲覧可能 ⇒ 平成29年度 卓越研究員事業 公開ポスト一覧 (日本学術振興会) JREC-INのサイトでも、卓越研究員の求人を検索できます。⇒ JREC-IN(検索:「卓越研究員」)   卓越研究員の年齢制限について 卓越研究員事業の英語名はLeading Initiative for Excellent Young Researchers(LEADER)で、「若手」対象であることが明言されており、実際、卓越研究員応募条件には平成30年4月1日の時点で40歳未満であることという年齢制限があります。2012年のデータですが、ポスドク14171人のうち40歳以上は16.4%(2324人の計算)、35歳以上と合わせれば37.2%(5272人の計算)にもなります。それから5年近く経ちポスドク高齢化が一層進んでいること、ポスドクとは別に、任期付き助教も相当数存在することを考えると、年齢がネックで卓越研究員に応募すらできない人は、かなりの数にのぼりそうです。 平成28 年度からの5年間の科学技術政策の方向性を定める第5期科学技術基本計画においては、「40 歳未満の大学本務教員の数を1割増加」、「我が国の企業、大学、公的研究機関のセクター間の研究者移動数を2割増加」させることが目標値として掲げられています。本事業においては、この2つの目標値の達成にも資するため、新たな研究領域に挑戦するような若手研究者が安定かつ自立して研究を推進できるような環境を実現するとともに、全国の産学官の研究機関をフィールドとして活躍し得る若手研究者の新たなキャリアパスを提示することを目指しています。(Q 卓越研究員事業の狙いは何か。) Q 「②平成30 年4月1日現在、40 歳未満(ただし、臨床研修を課された医学系分野においては43 歳未満)の者」とあるが、例えば、病気休暇等で研究を中断した場合など、個別の事情がある場合、例外的に申請することはできるのか。 A 申請者(研究者)の要件について、出産又は育児により、子供1人につき、合計3カ月以上の間、研究を中断した場合を除き、個別の事情を考慮せず、一律に判断させていただきます Q 「②平成30 年4月1日現在、40 歳未満(ただし、臨床研修を課された医学系分野においては43 歳未満)の者」とあるが、雇用対策法との関係はどうなるのか。 A 雇用対策法の改正により、平成19 年10 月1日から、労働者の募集及び採用に当たって、年齢の制限を設けることができなくなっています(雇用対策法第10 条)。一方、本事業は、若手研究者の安定的な雇用の促進を目的とする国の施策であることから、雇用対策法施行規則第1条の3第1項第3号ニに該当するため、雇用対策法第10条の適用除外となります。(平成29年度卓越研究員事業公募に係るQ&A 平成29年2月6日 文部科学省 科学技術・学術政策局   中でも深刻なのは発展著しい生命科学の分野で、日本分子生物学会の最新のアンケート調査(2015年、会員のみ対象)では、ポスドクの59%が35歳以上となっている。(ポスドク問題と人材の流動化―日本のサイエンスを救うために―サイエンスポータル 2016年12月6日)   近藤:20年前に大学院の重点化を進めたことで、現在40歳前後のPDがたくさんおり、非常に厳しい就職難になっています。この年齢層に対する何らかのケアは可能でしょうか? 生田:難しいと思います。財政当局の視点からすると、その年齢層の研究者に対して、大学院重点化を通じて高額の投資を …

2016年ノーベル医学生理学賞 大隅良典氏のキャリアパス

毛利秀雄名誉教授が書かれた「隣のおじさん-大隅良典君(ノーベル生理学・医学賞の受賞を祝して)」の前半部分では、大隅良典氏の初期のキャリアについて触れられています。今でこそ巨額の研究費が投入されているオートファジー研究ですが、その源流は、ラボの構成員が自分自身だけという小さなラボでの仕事でした(1992年 Journal of Cell Biology 119, 301-311)。後に豊かな実りをもたらすことになる、研究の種をまいた仕事も、この小さな研究室で生まれました(1993年 FEBS Letters 333, 169-174)。 以下、研究者のキャリアパスという観点でこの文章の一部を紹介します。 学部生時代 私が東京大学教養学部の助教授になりたての頃、同じフロアーで生化学の権威であった今堀和友先生の研究室に入ったばかりの卒研生が、バランスのとり方が悪くて生物学教室の冷却遠心機のローターを飛ばしました。それが大器晩成の人、ノーベル賞受賞者・大隅良典君との最初の出会いです。彼は教養学部の理科系のシニア学科として、数学から地学まで幅広いバックグラウンドをもった人物を育てることを目的とした基礎科学科の第二期生で、同学科の神代時代の秀才の一人です。 大学院時代・ポスドク時代 大学院時代、ポスドク時代は離れていたのでよく知りません。ロックフェラー大学で抗体の構造でノーベル賞をとったエーデルマンのところに行ったようです。理学博士にはなっていますが、突出した仕事はやっていなかったように思います。 アカデミック・ポストへの就職 大腸菌の膜輸送の研究で有名な安楽泰広先生に拾われて助手、講師となり、酵母に手を出すようになります。彼はその頃から論文を書かないので有名でした。 独立ポストへの就職 十年ほどして教養学部の生物学教室で助教授のポストが空き、彼が迎えられます。基礎科学科出身ということもあったかもしれません。 独立後の仕事 初めてもった自分の研究室には顕微鏡と培養器だけといった有様です。でもここで後の研究につながる、酵母の液胞でのオートファジーを光学顕微鏡で見るという快挙が1988年になされるのです。43 歳の時でした。論文が出るのにはさらに4年ばかりかかかりました。 東大教養学部における去就 私が東大を去った後、彼にふさわしい教授ポストが空いていたかどうか定かではありません。しかしともかく論文が無いことが問題のようで、心配して訊いたこともありましたが、「大丈夫です」と落ち着いていました。 教授就任 私は1995 年に基礎生物学研究所の所長として岡崎に赴任します。当時多くの教授ポストが空席のままで、私はそれらを埋めることに努力を注ぎました。そのうちの一人が大隅君です。すでに51歳になっていました。上述のように彼とは以前からいささか関係があったものの、この人事に私は一切関わっていません。実は彼の仕事は論文になる前から海外で評判になっており、人事選考委員の先生方の先見の明によって彼の採用が決まったのです。   参考 隣のおじさん-大隅良典君(ノーベル生理学・医学賞の受賞を祝して)(元基礎生物学研究所長・元岡崎国立共同研究機構長 毛利秀雄名誉教授の寄稿) 時に沿って 十八年振りの駒場で 大隅 良典(生物学)教養学部報第337号(1989年1月20日):”当時設立された基礎科学科の理念は魅力的に思えて進学したが、そこで様々のタイプの友人に恵まれた。その頃から次第に分子生物学に興味を持つようになり、大学院は今堀和友先生の研究室を選んだ。六〇年代は分子生物学の最盛期であり、大腸菌を用いて遺伝暗号が次々と解明される様を、当事者のような気分で論文を読んだことを鮮明に記憶している。教授が農学部に転任したのを期に博士課程の最後の二年間は京大のこれも設立されたばかりの生物物理教室で過ごした。東大とは違った雰囲気と、意欲的な仲間に出合えたのは幸いだったと思う。その後東大農芸化学の研究生をした後にニューヨークのロックフェラー大学・エーデルマン(IgGの構造解析でノーベル賞を受賞)研に留学した。成果の挙がらない三年間であったが、細胞生物学のメッカであるこの小さな大学での経験はその後の自分の研究に大きな影響を与えた。その後東大理学部植物学教室に十年余りお世話になった。自由でかつ開放的な学科であり、そこで酵母の細胞生物学的な研究を続けることが出来た。そしてこの四月から大学院生の沢山いる大きな研究室を離れ、生物教室に最小単位の研究室を持つことになった。” 大隅氏「東大なら、研究広がらなかった」(日本経済新聞 電子版 2016/10/4 2:00 有料会員限定記事):”大隅良典氏は3日夜、日本経済新聞社の単独インタビューに応じ「東京大学に残っていたら、ここまで研究は広がらなかった」と話した。大隅氏は1996年に東大助教授から岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所(当時)に移籍した。「東大が悪かったわけではないが、本当に全てのことをひとりでやらないといけなかった」と苦労を語った。” オートファジーの集学的研究:分子基盤から疾患まで(Multidisciplinary research on autophagy: from …

アカデミア研究者雇用状況の過酷な現実

  2016/03/20    研究者のキャリアパス

研究者・科学者という職業を選択する際には、研究者としての自分の興味や能力を見極めるだけでなく、アカデミックの世界における厳しい就職状況を予め知っておく必要があります。以下、研究者の道に進むことの勧め、安易な進学を戒めるアドバイス、研究者を取り巻く厳しい状況を分析したサイトなどを、内容の一部を引用して紹介します(太文字、下線による強調は当サイト)。全文はリンク先でお読み下さい。情報、工学、バイオ、化学、物理、人文社会など、分野によって事情の異なる部分があります。 大学院(博士課程)進学の勧め、もしくは進学しないことの勧め 私にしても1つの研究を成功させるために、100のテーマを考え、その9割はうまくいかず、残り1割も早い者勝ちで、先に目を付けた課題で仮説と検証を繰り返してきました。それによって培われるのは、問題発見能力と問題解決能力にほかなりません。こうしたトレーニングを5年、10年と続けてきた結果が博士号取得につながります。しかも、これらは汎用的な能力ですから、ビジネスの場でも間違いなく使えるはずです。そして、それが自分の市場価値です。(高学歴ワーキングプア「ポスドク問題」は解決できたか!?   PRESIDENT Online 2017.2.17) 末は博士かホームレスか もしもあなたが日本の大学院の博士課程に進学すれば、周囲からこうささやかれるだろう。なぜならば、たとえ博士号を取得できたとしても、ホームレスにしかなれないぐらいに、今後、余剰博士の問題は深刻になるからだ。(永井俊哉ドットコム 2005年5月21日) 世界中博士課程進学は就職に不利どころか、むしろ有利だよ。僕の研究室の学生は博士課程を修了してから7割程度企業に就職するんだけど、ほとんど彼ら、彼女らの希望通り。東大工学部の場合は博士の就職が悪いというのは、ないね。  (研究と教育〜博士課程のススメ〜 UT-Life  工学部長インタビュー 11-06-05) 博士後期課程に進学したからといって、博士号が取得できるわけではない すごくお金がかかる (BLOGOS pucotan 2012年11月21日) (大学院生活の懸念(複数回答可) 全国大学院生協議会 2015年度大学院生の研究・生活実態に関するアンケート調査報告書の概要 図10より) 研究室を決めるとき、就職なみに真剣に考えるべき、適当に絶対決め手はいけない。研究室を決める点としては、研究の成果(論文を年間どれくらいだしている か、論文のレベル)、コアタイム、コネから考えるべき。別にブラックでも構わないけど、ブラックのくせに結果が出ない研究みたいなところもあるから (http://iitokoronet.com/2015/12/05/post-4995/) 博士課程とは? 徹底した自己責任,自己管理の世界 … 博士課程と云う教育サービスは不均一極まりないサービスです.  (博士のススメ 京都大学工学研究科機械理工学専攻機械システム創成学研究室 谷口忠大) テーマが良くなかったら、優秀な人でも結果は出せない。テーマの問題で結果が出なくても、責められるのはテーマを設定したボスではなくて、結果を出せない大学院生である。… どこかで日本人研究者が華々しい結果を出したら、政府関係者や多くの国民はそれを褒め称えるだろう。その裏には何人もの大学院生やポスドクの屍が転がってるかもしれないが、そんなところ誰も見てはいない。(■そろそろ大学院生が「日本死ね」エントリを書いてもいい頃合い はてな匿名ダイアリー 2016-03-19) 大学院生が急増して、行き場がなくなっている。大学院(博士)ワーキングプアについて最近はよく知られるようになった。京都大学では、判明分のオーバードクター(博士の学位をもつか博士課程の単位取得者で定職のない者)だけで1,000人を超えている。だから最近の大学教員の公募では、1名採用のポストに50人の応募者はざら。100人を超えるのも珍しくない。大概の応募者は不採用になるから、非常勤講師をたくさんやって、生活するしかない。ところが非常勤講師手当は週1コマの授業で2万5,000円前後(月収)といったところが相場。7コマ以上やってやっと食いつないでいるという話もよくきく。その非常勤ポストも1年契約だから不安定極まりない。かりに運よくアカデミックポストを得ても数年の任期制で、任期が終わればまた元の木阿弥になってしまう。派遣切りの大学教員版である。(竹内洋 第一回 高学歴ワーキングプア教養難民の系譜(1)) IT企業や電機メーカーは他の業界と比べても例外的なくらい博士後期課程学生の採用に積極的であると言えます。(博士後期課程進学に興味をもつ伊藤研関係者の皆さんへ) 博士号取得者が大学の教員にも企業の社員にもなれない。ひと昔前なら、首をかしげたくなるようなことが現実に起こっている。いわゆる「ポスドク問題」だが、ポスドク1万6000人のなかで、戦力化していない人材が相当数いるという。ポスドクとは、Postdoctoral Fellow、つまり博士号を持つ研究員である。現場での戦力として、数年間続く研究プロジェクトの間、有期雇用されるという立場だ。年収は350~400万円程度。多くて600~700万円。しかも、約1割は職にさえ就けないという。(高学歴ワーキングプア「ポスドク問題」は本当に解消できるのか!? PRESIDENT Online スペシャル 2015年12月15日 岡村繁雄) 日本学生支援機構は、奨学金と表記するのをやめて、正直に学生ローンと書いて欲しい。(全院協アンケートに寄せられた声の一部 editor 月刊誌『KOKKO』編集者・井上伸のブログ …

大学教員公募が必ずしも公募でない理由

  2015/09/27    研究者のキャリアパス

応募する側から見ると、大学の人事は実に不可解ですが‥  いいかベイベーきいてくれ。人事の数だけモノサシがあるんだよ。(大学教員公募戦線仏恥義理シェキナベイベー)   大学教員になるための熾烈な競争 博士号を取得した人の多くは研究者として生きることを望みますが、アカデミアで常勤職を得るのが非常に困難な状況は依然として続いています。 かなりの数(数十~数百のオーダー)の応募書類を書き,ほぼ全ての大学から不採用を告げられ,いくつかの大学から面接に呼ばれ,そのうちの一つの大学からオファーをもらえば,例えその大学が何処のどのような大学であろうと御の字と考えなければならないのが現状である.(【大学教員への道】有益な書籍・サイト akt37 2013年9月7日) 大学教員”公募”の実態 日本の研究力を強化するには、優秀な研究者が公正な競争の結果PI (Principal Investigator)の職に就けて、さらに自分の研究を発展させられるような体制を整備することが必要です。しかしながら、現実はというと、大学の教員募集要項で「公募」と称しておきながら実際には公募でないことが多いという強い不満の声が聞かれます。 大学教員の採用については、形式的には公募制がとられていても、その情報の流通が十分でないために、結果として閉鎖的な人事が行われている場合もあると言われている。(大学における教育研究の活性化のために 文部科学省) 公募の偽装を公に認める大学はないでしょうが、まずは現実を直視するところから始めないことには、改善策が見出せないでしょう。以下では、公募出来レースの真相、問題点、応募者への現実的なアドバイスなどを議論している、インターネット上の有益な記事を紹介します。 さらに頭に来るのは、「公募」と称して自分も参加したポスト獲得競争において、明らかに自分よりも業績や能力に劣ると思われる候補者が選ばれることをしばしば経験することでしょう。そのたびに、この国にはフェアな競争がないと絶望的な気持ちになることは想像に難くありません。 (ポスドクから見たダメ教員 5号館のつぶやき 2007年 10月 28日) このブログ記事では興味深い議論がなされており、論文業績の格差にも関わらずなぜ内部昇進が行われるのかの内情を説明するコメントが紹介されています。 多くの教員は業績があって採用されて、その後成果を上げられなくなっていっています。特に最近は。なぜか?まず週に講義を5-6コマ担当し、入試・教務・学生委員会など委員に選ばれれば必ず出る必要のあるさぼれない委員会や会議が週平均1.5回くらいあります。校費は昔は100万以上あったのが今は10-40万です。大手の大学と違って、卒業研究の指導も教授自ら真剣に手取り足取りやる必要があります。そのうちちょっとデキの良い学生は大手の大学の大学院に行ってしまい、自分のところには誰も来ないか、来ても2年間バイトにあけくれるモラトリアム組です。そして、論文も急速に出なくなり、着任当時は当たっていた科研費も次第に当たらなくなります。 ここで公募で(場合によっては所属ラボのお陰もあって)すばらしい業績をもつポスドクと競っても、地方で苦労して教育と運営をしている教員は負けるでしょう。しかし、そのポスドクも慣れない教育と運営に四苦八苦しているうちに結局は前任者と同じ運命をたどるでしょう。 そこで現場で行われているのは、公募条件を厳しくして当該内部候補しか当てはまらないような募集をするのです。(ポスドクから見たダメ教員 5号館のつぶやき 2007年 10月 28日) 地方大学ならではの悩みがあるようで、実際に公募要項にもその理解を求めるような記述をしている大学もあります。 応募資格…(3)地方大学の現状を理解して教育・研究および大学運営に対応できる者 岩手大学は男女共同参画を推進しています(http://www.iwate-u.ac.jp/gender/)。 … (https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorDetail?fn=4&id=D115080098&ln_jor=0) 公正な審査をすっ飛ばした結果、最悪の事態を迎えたのが、あのSTAP細胞事件でした。小保方氏がリクルートされたときの状況が詳細に報道され、公募の実態の一端が一般の人の目にも明らかになった珍しい事例です。 2)運営における不誠実なヤラセ行為を止めよ 私は、STAP問題にあった背景の本質の1つは、「人事」であったと思っています。ところが、メディアなどでは、これを真正面から取り上げた記事を見たことがありません。1つは、小保方氏をCDBのユニットリーダーに採用した「出来レース」。これは、理研CDBの関係者は「出来レースではない」と言い張るが、本当でしょうか。幹細胞の分野のPIを募集するという「公募」の英文を書いたのは、一体誰だったのでしょうか?(昨今の科学研究体制への苦情と提言 わがまま科学者 2014年12月29日) RIKENですらこうなのですから、偽装公募の問題は地方大学に限ったものではなさそうです。公募だったはずの人事が、フタを開けてみたら内部昇進させていただけだったという例は、首都圏にある日本有数の研究大学でも見受けられます。学生を優れた研究者に育て上げることが期待される研究大学であれば、PIの任用にあたっては極めて高い研究能力(=研究業績)が要求されて然るべきなのですが。 自分が教官となって自覚させられることは、研究成果を挙げていない人間が大学院の学生を指導できるわけがないということの一語につきる。 (新大職組新聞1996年3月29日【検証・大学改革④】「同情するなら職をくれ!」その後ー研究妨害とはこのことだ 露崎史朗(元大学院自然科学研究科))   業績欄のレベルについては、今の日本の助教(40歳前後)はおろか、准教授(45歳前後)でも今のポスドクよりも業績欄が寂しいことは珍しくないように思います。… 結局、現在のバイオ業界は、ポスドクが次のステップに行くための業績の最低ラインだけを著しく上げている(Nature/Cell /Scienceクラスの論文が必須)にも関わらず、いったん助教や准教授となった人たちは過剰なまでに守るという図式になっていて、これこそが、今のポ スドク就職難の原因なのではないかと思います。(BioMedサーカス.com 研究者の声:オピニオン 2013年12月15日更新 執筆者:ポスドク@関東地方) …

ブラック企業の構造と研究者の雇用不安 日本の科学研究の問題点

先日、京大の山中伸弥教授が、「京大iPS細胞研究所は、これが民間企業ならすごいブラック企業」という表現をしたそうです(記事)。しかし、これは決して京都大学のiPS細胞研究所に限った話ではありません。研究者の雇用不安は、現在の日本の科学研究全体を覆う非常に深刻な問題です。 ブラック企業とは、定義にもよりますが、労働者を劣悪な労働条件で酷使し、峻烈な選別を行い、非情に使い捨て、組織だけが成長するような会社のことです(参照:コトバンク)、これはそっくりそのまま今の研究の世界にも当てはます。 研究室では、任期付きの研究者は少しでも早く成果を出さないといけないので必然的に長時間労働を強いられます。ポスドクの報酬は年齢や学歴からは一般の人が想像できないくらいに低く、時給換算したら国が法で定める最低賃金並みになります。ポストの数があまりにも少ないため、ある程度の成果を挙げたとして もそう簡単に定職は見つかりません。任期が切れたり財源が途切れれば、ボスが温情を施したくても研究者はラボを去らざるをえません。しかし買い手市場のおかげで研究室はまた新たな労働力を調達して存続し発展できます。現在の日本の科学研究において、研究室というのは構造的にブラック企業そのものなのです。 ブラック企業の場合は経営者の人格や経営姿勢が問われるところですが、研究室の場合は教授の人柄が良く部下思いであったとしても、現在の研究制度が抱えるこの構造的問題をどうすることもできません。 日本の科学技術政策に関する提言の中では、「至高の科学力で世界に先んじる」とか、 「世界的な卓越した教育研究拠点の形成」などと非常に耳当たりの良いフレーズが飛び交っていますが、人生設計もままならずに不安に苛まされているポスドクや任期付き教員ばかりという暗澹たる研究の現場で、そのような崇高な目標が本当に実現し得るのでしょうか? ”ポスドク等の約40%の年収は400 万円以下である。また半数以上が退職金や住宅手当の支給を受けられない。” ”任期制であることが結婚、子どもを持つこと、住宅購入などに影響すると考えている人の割合は70%もしくはそれ以上” “1週間の労働時間は平均54.8 時間、40%以上が60 時間を超え、100 時間を超える人もいる” ”13%程度が自身もしくは配偶者の実家から経済的援助をうけている。年齢別では41 歳以上の人、また子どもの有無別では子どもがいる人が実家から援助を受けている率が高く、…” “給与の財源は文部科学省研究費助成金( 26% )、その他の競争的資金(22%)、戦略的創造研究推進事業とグローバルCOE プログラム(それぞれ8%)が多く、上司の研究費による雇用が中心である” “78%の人が次の職を探している。…大学や研究所での求人が少ないこと、公募していても形式的で内部昇格が多いことを危惧している。” (引用元:生命系における博士研究員(ポスドク)ならびに任期制助教及び任期制助手等の現状と課題 平成23年 日本学術会議題) 「世界最高水準の卓越した研究」の担い手の多くが、1年契約で年収が300万円台のポスドク(博士研究員)や時給1000円程度のラボテクニシャン(技術員) だったりするのが実際のところです(人件費の財源や機関にもよる)。しかも、彼らは成果を挙げても、どれほど優れた実験技術を持っていても、何歳になっても報酬は増えず生活の保証もありませ ん。せめて、能力や成果に応じてパーマネントの職を得る機会や、昇給の機会を与えるような人事制度へ早急に変えない限り、日本の科学研究は国際的な競争力を失っていくでしょう。 “ポスドクを複数回繰り返す35 才以上のポスドク(シニアポスドク)が2012 年の調査で全体の37.1%に達しています” (引用元:生科連からの<重要なお願い> 生物科学学会連合 ポスドク問題検討委員会) 「酷使」や「使い捨て」というのは認識の問題もありますが、日夜研究に勤しんで、(少なくともボスがその地位に安泰で居られる程度の)論文成果(インパクトファクター5~10)を挙げ、ラボに対してもサイエンスにおいても貢献した研究者が、研究を辞めて教育職や研究事務に転向したり、研究や教育とは全く無関係な職に転じたり、最悪の場合完全に失業するしかないというのが、日本の科学研究の現状です。成果が出ない人間を切り捨てるブラック企業。成果が出ている人間をも切り捨てる研究所。現在の日本の研究社会は、ある意味、ブラック企業よりも更にブラックかもしれません。 ”「お前が研究者をやめてくれて心底ほっとした」 母親もそんな言葉で大卒初任給ほどの待遇で居場所を探してきた息子の転身を心から喜んでくれ、…” (ポスドクからポスドクへ 円城塔 日本物理学会誌 Vol.263, No.7, 2008  PDF) 参考 提言 生命系における博士研究員(ポスドク)ならびに任期制助教及び任期制助手等の現状と課題 平成23年(2011年)9月29日 日本学術会議 基礎医学委員会 (PDF55ページ) 生科連からの<重要なお願い> 生物科学学会連合より行政(国、地方)、企業、大学・研究機関、および研究者コミュニティーに対するお願い今、次世代を担う若手研究者が窮地に陥っています。ポスドク(任期付博士研究員)の雇用促進と研究者育成に是非ご協力ください。平成27 年4 …

これが民間企業ならすごいブラック企業 ~ 京大iPS細胞研究所の山中伸弥教授が研究者の雇用不安に言及

2015年5月23日に橿原ロイヤルホテル(奈良県橿原市)で奈良県立医科大学開学70周年記念式典が執り行われ、京都大の山中伸弥教授が記念講演を行いました。その中で所長を務める京都大iPS細胞研究所(CiRA)について、CiRAの約300人の教職員のうち9割が不安定な有期雇用であることから、「これが民間企業ならすごいブラック企業。何とかしないといけない」と、研究者の雇用不安にも言及したそうです。 参考 iPS細胞研究所の9割有期雇用 山中教授「民間企業ならすごいブラック企業。何とかしないと」 奈良で講演(産経WEST 2015.5.24):”一方で、所長を務める京都大iPS細胞研究所(CiRA)については、約300人の教職員のうち9割が不安定な有期雇用であることから、「これが民間企業ならすごいブラック企業。何とかしないといけない」と指摘。” 開学70周年記念式典を挙行しました(奈良県立医科大学 2015年5月27日):”記念講演 細井理事長・学長と古家理事(附属病院長)が座長となり、山中伸弥京都大学iPS細胞研究所所長・教授を講師にお迎えし、iPS細胞が移植治療だけでなく難病治療薬の開発にも重要な役割を果たし始めている等「iPS細胞研究の現状と医療応用に向けた取り組み」について、ご講演いただきました。” 日本の科学研究が抱える問題点~ブラック企業のような構造と研究者が抱える雇用不安~

10年間で論文20報が出せず富山大教授解雇

  2015/02/24    研究者のキャリアパス

富山大学は2005年に10年の任期で登用した教授が基準となる20報の論文を出さなかったとして、この研究者を2014年末に解雇したそうです。解雇された元教授は論文数でのみ評価するのは不当だとして2015年1月9日に富山地方裁判所に提訴しています。   追記:2017年11月21日 2017年11月21日の報道(m3.com/共同通信)によれば、最高裁が、元教授の上告を受理しない決定(2017年11月17日付)をしたことにより、富山大大熊芳明元教授が敗訴した二審判決が確定しました。 二審の名古屋高裁金沢支部は、一審の富山地裁判決を支持していました。   参考 富山大元教授の敗訴確定 地位確認求める (m3.com/共同通信 2017年11月21日 閲覧は要登録):” 富山大大学院の大熊芳明(おおくま・よしあき)元教授が、論文数が少ないことを理由に再任されなかったのは不当として、富山大に地位確認などを求めた訴訟は、元教授敗訴の二審判決が確定した。” 再任訴訟で元教授敗訴 「基準は明らか」富山地裁 (共同通信 2016年6月30日):”富山大大学院の大熊芳明(おおくま・よしあき)元教授が、論文数が少ないことを理由に 再任されなかったのは不当として、富山大に地位確認などを求めた訴訟の判決で、富山地裁は 29日、原告の訴えを棄却した。広田泰士(ひろた・やすお)裁判長は判決理由で「大学は再任に必要な基準を任期中の論文数と 明示していた」と指摘。” 元教授、解雇不当と提訴 「論文数で評価は偏り」 (m3.com/共同通信 2015年2月12日):”富山大大学院の大熊芳明(おおくま・よしあき)元教授が、論文数が少ないことを理由に雇用を打ち切られたのは不当だとして、富山大に雇用継続と未払い賃金支払いなどを求め富山地裁に提訴したことが10日分かった。” 富山大学 大学院 医学薬学研究部 遺伝情報制御学研究室 論文業績   記事更新 20171121 最高裁の判断を追記 20161224 地裁判決結果を追記。Dr黒木のがんばれ生活習慣病の予防 から一部を転載させていただきました。