大学教員を目指す全ての人にとっての最大の壁は、採用する人間がいるのに公募する、いわゆるデキ公募です。公募の大部分は出来公募と言われても、わずかにでも可能性があるのなら出さざるをえません。自分も任期切れ目前までひたすら公募に出しつづけて、その数は軽く100を超えました。
ポスドクや有期付きの助教が、期間の定めのない大学教員を目指す場合、JREC-INなどの公募情報を見てアプライすることが多いと思いますが、どうすれば採用内定を勝ち取れるのか、ネットの上の参考になりそうなものを紹介します。
出来公募は存在する
公募の何割が出来レースなのかは自分にはわかりませんが、「この公募は俺が採用されるためのだから、出しても無駄だから出すなよ。」と親切に教えてもらったことがありますので、世の中に出来公募があることは間違いありません。
公募書類を時間をかけて情熱を持って心を込めて作りました。
応募期間終了後、ある人から「自分の公募出た。前からでるの知ってたから家買った。引っ越しって本当大変だよね〜」と聞いた。— 公募落ちた人 (@DesuDaibutsu) December 9, 2021
出来公募には、公募の要項に(出来)とか(すでに決まっています)とか書いておいてほしい。学芸員の公募でもあるよね。そもそも募集の条件を操作したりするしね。「◯◯君は少し△△語もできるから、△△語も必須条件に入れよう」みたいな話も聞いたな。採用したい人に合わせて募集要項を作る。
— 宮本晶朗 (@miyamonomiyamo) October 5, 2021
少しでも出来公募をやってしまうと一気に組織としての信用を失う。国立大学の場合は職位を問わず出来公募だらけで本当にひどい。私大は専任だと割とガチがあるが、助教・ポスドクは公募すらしない場合が多いからある意味潔い。
— ポスドク問題 (@UNIONTELLING) March 24, 2016
どの公募がガチなのかは誰にもわからないため、どうせ出来レースかなと思いつつも、応募書類作成には一切手が抜けないので、莫大な時間を取られます。
”公募”という罪なやつ
なお、「デキ公募」問題だけは、外からは分からなくてかわしようがないところが本当に罪作りだと思う。明らかに「匂う」やつもあるのだけど、ふたを開けたら違ったみたいなのも多いので、本当に分からない。
— しねはさん@がんばらない (@r_shineha) September 12, 2020
あなたは出来公募には勝てない
出来公募を業績で殴って死んだ例を身近に見た
— ™ (@tmaehara) May 7, 2018
当て馬が勝って生じる不測の事態
出来公募で当て馬として呼んだ人のほうがよかったからそっちを雇ったって話も聞いたことある。(旅費は自腹じゃない
— ずかし (@ZukashiT) September 30, 2015
(昔、Scienceはじめ業績がすごい知人がいて、うっかり知らずによその大学の(他人の)出来公募に応募してしまったことがあった。当然知人が採用されたのだが、上から下から学内の様々な人の恨みを買ってしまったため、その後の昇格が閉ざされてしまったらしい…)
— ゆうがたさくはな (@follow_against) November 22, 2019
ぼくの周りはむしろデキ公募じゃないほうが少ない気がしなくもないです
— D. Oue ∈ Hilbert space (@q9ac) September 12, 2021
内部昇進を偽装公募する背景
「学内昇格は一切廃してすべての人事を公募にしろ」というのが「文科省の意向」と言われてた時期があった。学内に昇格候補者がいても公募にして外部候補と競わせろということ。ほとんどは出来公募的になって外部応募者がバカを見るしヘタに採用されても「公募で負けた人」が同僚になるしくみ。
— 渡邊芳之 (@ynabe39) August 26, 2014
出来公募には当て馬が必要
自分は採用側になったことがないのでわかりませんが、内部昇進だろうが出来レースだろうが、おそらく、面接には複数の候補を呼んでちゃんと決めましたという形を整える必要があるのでしょう。誰のために?
出来公募である事が知れ渡っていたために候補者以外に応募が無く、規定で再公募になったりもするからなぁ。(´・_・`)
— Yasuhide OHINATA ᓚᘏᗢ ᘛ⁐̤ᕐᐷ (@y_ohinata) January 29, 2020
出来公募は別に良いけど、出来公募成立させるために当て馬として応募させるの止めて欲しい
オレなんて当て馬で面接までさせられた事あるで— 家畜研究者 (@schwarznlabo) September 29, 2015
応募を続けると家計が逼迫する
応募書類を簡易書留で送るだけでも600~700円くらいしますし、地方の大学で面接に呼ばれようものなら、交通費と宿泊費で何万円もかかります。自分も地の果ての大学に面接に行ったことがありますが、事務員に案内されて部屋に入ってしゃべっておしまい、教員と話す機会はゼロ、聴きに来た先生たちもずんだれた服装でシラーっとした雰囲気でやる気無しみたいなことを経験しました。まあわかりませんが、これは当て馬に呼ばれただけだったのかなと思いました。人を馬鹿にするにもほどがあると思います。
面接を受けるために往復交通費45,000円を自腹で支払うことになった出来公募を仕組んだ責任者、いつか朝起きたら額にひらがなで「にく」って書かれていますように。
— skrnmr (@skrnmr) October 4, 2021
出来公募は研究者の心を壊す
デキ公募ってほんとに犯罪的だと思う。「公募でした」というアリバイ作りのために、何十人もの優秀な若手研究者が何時間もの時間とお金をかけて望みを託し、そして公募前から決まってた通りに落とされて心が折られていく。それくらいなら、公募なんてせずに堂々と一本釣りでしたという形を取るべき。
— Kotani Eisuke (@kotani_eisuke) January 30, 2019
出来公募でない公募も存在する
ポスドク公募で思い出すのは自分の指導員が募集した公募で、「応募期間が短い」「分野がピンポイント」で出すことになった結果、出来公募を疑われて応募者ゼロだったやつ。
— ほうせん (@oriens_t) December 23, 2019
N=100くらいで分野も狭いけど,最初から候補の決まった出来公募といえる例はほとんど無く(そういう場合は公募しない),コネによるバイアスはあるものの,結果を見ると業績や書類でひっくり返る程度でしかない公募のほうが多い,というのが集計結果です.物的証拠がない以上この程度の表現が限界.
— M. Morise (忍者系研究者) (@m_morise) July 26, 2019
今どき「出来公募」なんてあるの?うちは無論ガチで、某分野の大規模学会の現役会長も忖度なしで審査のうえ、結局は若手を採用したよ。
— goldenleo71 (@goldenleo71) January 31, 2019
公募要領を読み解く必要性について
分野を狭く設定するのは「この講義を担当してくれる教員が必要」という大学にとっては割と切実な要望に基づいているので、「分野が狭いイコール出来公募」ってわけじゃないんですよ。
— 稲田のりこ (@noriko_inada) September 21, 2021
ガチ公募の場合はその旨を発信すること
〆切(12/16必着)が近づいてきたので、改めてリツイート。出来公募ではありませんので、安心してご応募いただければ(あるいは応募をお勧めいただければ)幸いです。 https://t.co/hKePkv9MQo
— 武田俊輔 Shunsuke TAKEDA (@ecriture1974) December 9, 2019
揺らぐJREC-INの存在意義
出来公募の裏側を見ると、JREC-INなんて真面目に見るのアホらしくなるな。
ガチ公募なんて実際何割くらいなんだろ?— ロジーさん (ポコチン) (@10xgenomics_) December 24, 2019
JREC-INへの要望:出来レースはみんなでチェック
JREC-INに「出来公募を通報する」ボタンをつけたら面白いかもしれない
— saebou (@Cristoforou) April 25, 2017
出来レースには目印を
出来公募は募集要項をタテ読みでそうとわかるようにして工夫しておいて欲しい。
— 大久保 街亜 / Matia Okubo (@matiasauquebaux) April 10, 2019
出来公募の特徴
先日「出来公募」と思われるものの特徴を教えてもらった。
でもよく考えたら、そんなものが存在すること自体、大問題ではないのか。公共事業が「出来公募」だった場合には大問題になる。研究職の公募の場合はなぜ問題にならないのか。— motoaki iimori (@lwrdhtw) October 14, 2021
古き良き時代への回帰を
昇任人事を出来公募にすること慣例そのものは行われていたのだけど,さすがにJrec-Inには掲載してなかったのよね。それがまさかの掲載というパターンが。その辺の方法の共有が忘れ去られたというかなんというか
— まつーらとしお #ひつじコトラボ (@yearman) October 18, 2021
関連記事 ⇒ 大学教員公募が必ずしも公募でない理由
面接に臨む心構え
書類選考を突破して面接に呼ばれる。とても嬉しいことですが、期待と不安、落胆いろいろ感情が大きく揺り動かされるイベントです。自分が経験した面接は、正直、自分は当て馬だったんじゃないかと思えるくらい最初から反応が薄い面接ばかりでした。しかし、書類選考で数人に絞りこんだあとの面接試験は、ガチだよというシニアの先生の言葉を聞いたこともあります。結局、大学にもよるし、そのたびごとにも状況は異なるのではないでしょうか。
- 大学教員公募戦士:面接に呼ばれるということの意味 退役軍人会 2022年9月30日 11:23 ¥100
- 大学教員公募戦士:面接で聞かれたこと 退役軍人会 2022年7月25日 21:35 ¥100
- 公募戦士の忘備録 ~自身のラボを立ち上げるまで 2022-03-12(blog.goo.ne.jp/radiologist-soma-tohoku)
模擬授業対策の方法
研究しかしてこなかった人間にとって、模擬授業をやらされるのはかなりツライのですが、今から振り返って考えると、模擬授業で学生(選考委員の先生たち!)を巻き込んだ魅力的な授業を実演してみせることは、非常に大事だったんだなと思います。ただそれも研究志向の大学か、教育重視の大学かによるでしょう。
- 【大学教員への道】 模擬授業 2014年10月13日 宮本園 ”一つの事例として捉えて頂きたい.また,結果的には不採用”
- 公募戦士 のための 『 大学教員公募 大全 』(面接・模擬授業対策) @applebenz2021 (公募への応募46件、うち、面接に呼ばれた回数大学7校、高専1校、専門学校1校 だそうです。非常に高い数字ですね。)
日本以外の選択
ここ最近任期の無い研究職を狙う段階の身近な研究者達の進路が「中国や欧米で研究を続ける」か「研究を辞める」の二択ばかりだから研究者になりたい学生達は今のうちに国外で生活する未来を覚悟するだけで生存確率を上げられる。
— hiroki takeda (@tomatoha831) December 8, 2021
日本に職がないから欧米でというのは、実際のところどうなんでしょうか。もちろん選択肢を広くしたほうが機会は増えると思いますが、アメリカも競争が厳しくてアメリカ人のポスドクもアメリカで職が獲れずにヨーロッパのどこかの国とか、オーストラリアとかアメリカにこだわらずに職探しをしていました。
企業からアカデミアへ
大学教員の経歴を見ていると、企業勤めの研究者だった人がいきなりメジャーな大学の教授になっている例を見かけます。自分には全く見えない道筋なのですが、アカデミアからアカデミアを探すよりも、インダストリーに一度出てからアカデミアを目指すほうがひょっとして可能性が高いのか?と思ったこともあるくらいです。
- 大学教員への道、詰みました 2020-09-30 実務家教員、人生の岐路で生きる事に挫折した
参考
- 新・教員公募星取り表78 教員公募は「負けに不思議の負けあり、勝ちに不思議の勝ちなし」の世界。日々の研究・プレゼン能力・教育指導・実務経験の全てが問われる、真剣勝負の世界へようこそ。