Category Archives: 大学教員公募

大学教員を目指す公募戦士の戦い方、デキ公募という難敵の回避方法など

大学教員を目指す全ての人にとっての最大の壁は、採用する人間がいるのに公募する、いわゆるデキ公募です。公募の大部分は出来公募と言われても、わずかにでも可能性があるのなら出さざるをえません。自分も任期切れ目前までひたすら公募に出しつづけて、その数は軽く100を超えました。

ポスドクや有期付きの助教が、期間の定めのない大学教員を目指す場合、JREC-INなどの公募情報を見てアプライすることが多いと思いますが、どうすれば採用内定を勝ち取れるのか、ネットの上の参考になりそうなものを紹介します。

出来公募は存在する

公募の何割が出来レースなのかは自分にはわかりませんが、「この公募は俺が採用されるためのだから、出しても無駄だから出すなよ。」と親切に教えてもらったことがありますので、世の中に出来公募があることは間違いありません。


どの公募がガチなのかは誰にもわからないため、どうせ出来レースかなと思いつつも、応募書類作成には一切手が抜けないので、莫大な時間を取られます。

”公募”という罪なやつ

あなたは出来公募には勝てない

当て馬が勝って生じる不測の事態

内部昇進を偽装公募する背景

出来公募には当て馬が必要

自分は採用側になったことがないのでわかりませんが、内部昇進だろうが出来レースだろうが、おそらく、面接には複数の候補を呼んでちゃんと決めましたという形を整える必要があるのでしょう。誰のために?

応募を続けると家計が逼迫する

応募書類を簡易書留で送るだけでも600~700円くらいしますし、地方の大学で面接に呼ばれようものなら、交通費と宿泊費で何万円もかかります。自分も地の果ての大学に面接に行ったことがありますが、事務員に案内されて部屋に入ってしゃべっておしまい、教員と話す機会はゼロ、聴きに来た先生たちもずんだれた服装でシラーっとした雰囲気でやる気無しみたいなことを経験しました。まあわかりませんが、これは当て馬に呼ばれただけだったのかなと思いました。人を馬鹿にするにもほどがあると思います。

出来公募は研究者の心を壊す

出来公募でない公募も存在する

公募要領を読み解く必要性について

 

ガチ公募の場合はその旨を発信すること

揺らぐJREC-INの存在意義

JREC-INへの要望:出来レースはみんなでチェック

出来レースには目印を

出来公募の特徴

古き良き時代への回帰を

 

関連記事 ⇒ 大学教員公募が必ずしも公募でない理由

 

面接に臨む心構え

書類選考を突破して面接に呼ばれる。とても嬉しいことですが、期待と不安、落胆いろいろ感情が大きく揺り動かされるイベントです。自分が経験した面接は、正直、自分は当て馬だったんじゃないかと思えるくらい最初から反応が薄い面接ばかりでした。しかし、書類選考で数人に絞りこんだあとの面接試験は、ガチだよというシニアの先生の言葉を聞いたこともあります。結局、大学にもよるし、そのたびごとにも状況は異なるのではないでしょうか。

  1. 大学教員公募戦士:面接に呼ばれるということの意味 退役軍人会 2022年9月30日 11:23 ¥100
  2. 大学教員公募戦士:面接で聞かれたこと 退役軍人会 2022年7月25日 21:35 ¥100
  3. 公募戦士の忘備録 ~自身のラボを立ち上げるまで 2022-03-12(blog.goo.ne.jp/radiologist-soma-tohoku)

模擬授業対策の方法

研究しかしてこなかった人間にとって、模擬授業をやらされるのはかなりツライのですが、今から振り返って考えると、模擬授業で学生(選考委員の先生たち!)を巻き込んだ魅力的な授業を実演してみせることは、非常に大事だったんだなと思います。ただそれも研究志向の大学か、教育重視の大学かによるでしょう。

  1. 【大学教員への道】 模擬授業 2014年10月13日 宮本園 ”一つの事例として捉えて頂きたい.また,結果的には不採用”
  2. 公募戦士 のための 『 大学教員公募 大全 』(面接・模擬授業対策) @applebenz2021 (公募への応募46件、うち、面接に呼ばれた回数大学7校、高専1校、専門学校1校 だそうです。非常に高い数字ですね。)

 

日本以外の選択


日本に職がないから欧米でというのは、実際のところどうなんでしょうか。もちろん選択肢を広くしたほうが機会は増えると思いますが、アメリカも競争が厳しくてアメリカ人のポスドクもアメリカで職が獲れずにヨーロッパのどこかの国とか、オーストラリアとかアメリカにこだわらずに職探しをしていました。

 

企業からアカデミアへ

大学教員の経歴を見ていると、企業勤めの研究者だった人がいきなりメジャーな大学の教授になっている例を見かけます。自分には全く見えない道筋なのですが、アカデミアからアカデミアを探すよりも、インダストリーに一度出てからアカデミアを目指すほうがひょっとして可能性が高いのか?と思ったこともあるくらいです。

  1. 大学教員への道、詰みました 2020-09-30 実務家教員、人生の岐路で生きる事に挫折した

 

参考

  1. 新・教員公募星取り表78 教員公募は「負けに不思議の負けあり、勝ちに不思議の勝ちなし」の世界。日々の研究・プレゼン能力・教育指導・実務経験の全てが問われる、真剣勝負の世界へようこそ。

任期付き研究者・任期付き大学教員問題が再燃!

ツイッターを見ていたら最近、大学教員や博士研究員(ポスドク)の任期に関する意見が飛び交っていました。研究者の切実な声、貴重な意見を纏めます。

 

研究職の任期制に対する肯定的な意見

日米の流動性の違い、任期の制度上の違いについて

 

制度設計の不備について

 

 

理想的な制度設計


 

 

 

 

他国の事例

 

 

任期に関する議論における生存者バイアス・強者の理論について

上の意見にも同感で、科学の進展は、職を保証してくれるようなきらびやかな論文によってだけ進んでいるわけではありません。

任期付きであることが生み出す不安感について

 

 

研究者は任期制によって人間としての生存権が常に脅かされていることについて

任期付きに対する世間の見方

任期制が研究力の低下をもたらしていることについて

雇用側と被雇用側との立場の違いについて

任期制を肯定する意見に対する反対意見

結局は任期付を肯定してる人はそれまでに何人の犠牲と屍が横たわっているかを考慮せずに自己陶酔に陥っているだけなんですよ Ken(犬)究者@任期付研究員(求職中)@tanuki_ken

上の意見に自分も同感で、日本で名の通ったラボにいて、教授のもとでそれなりの(その分野では十分に一目置かれるだけの)成果を挙げている人が、結局パーマネント職に就けずに路頭に迷う危機に瀕しているというのが、今の日本の現状だと思います。研究者として十分に成功していても、職がないのです。大ボスであっても、多大な貢献をしてくれた部下の職の世話ができないくらいに、アカデミアのパーマネントポジションは限られているのです。研究者としてスーパーサクセスフルな人だけがかろうじて生き残れる、そんな業界に足を踏み入れたいという若者がどれだけいるのでしょうか。

 

任期付きという現実


 

 

ちなみに私は任期切れで研究を辞めました。

関連記事 ⇒ 末は博士か大臣か? ― アライさんなのだ

 

任期付き教員・研究者に関する議論再燃

いつまでたっても全然解決の見通しが立たない問題なので、ときおりこうやって議論が燃えさかります。たしか、8か月くらい前にもツイッターがにぎわっていました。

 

任期付き大学教員・任期付き研究者に関する義路の結論

マル合とは?大学教授職に必要な論文数

マル合という言葉は自分は全く聞いたこともなかったのですが、ジョブをゲットした先生と雑談していたら、そんなことは知ってて当然で、知らないとお話にならないよ、という口ぶりでした。そんなふうに言われたので、「え?そうなの?やば。」と思いました。教員になった人にとっては常識みたいです。教員の職に縁がなかった人にとっては、知らずじまいの言葉です。大学教員の職を得ようとしている人は、絶対に押さえておくべき事項のようです(たぶん)。私が大学教員のジョブをゲットできなかったのは、マル合という教員公募における雇用側の常識を知らなかったからなのかもしれません。マル合を知らずして、大学教員に応募するなかれ。

 

知る人ぞ知るマル合

大学院生に対して学位指導ができる教員は、「研究指導教員」(マル合)と呼ばれるのだそうです。

  • 教員以外にはあまり知られていませんが、日本の大学院教員資格にはDマル合、D合、D可、Mマル合、M合、M可の6種類あって、博士を出すにはDマル合教員にならないといけないんですよね。@drinami 2017年6月9日
  • 大学用語の基礎知識として、「マル合(まるごう)」は必須だろう。そして、やはり、大学関係者以外は、まったく知らない言葉だろう。(教授のホンネ・ホンネの教授

 

公募要項の中に潜むマル合

大学教員の募集要項に、大学院生を指導できることと書かれているのを見て、「そりゃ、研究を長くやってきたから当然できるよ」と思っていたのは、大きな間違いでした。これは、マル合の要件を満たすかという意味だったのです(多分)。

関連記事 ⇒ 大学教員公募が必ずしも公募でない理由

公募要項には「研究指導教員」(マル合)の要件(必要な論文数など)の詳細は通常書かれていません。大学がマル合の規定(必要な論文数など)を示してくれていないと、論文数が全然足りない人でも大学教授や准教授の職に応募してしまいそうです。

完成年度を超えた平成31年度以降は、特任教授を任用する予定はないため、平成31年度には、「マル合」相当教員6名以上、「合」相当教員6名以上の教育体制が取れるよう、また、それ以降も安定的に後継の専任教員体制が取れるよう、以下の対応を行っている。
「マル合」または「合」相当の業績を持つ教授または准教授を1名募集中である。(島根大学大学院 医学系研究科 看護学専攻 博士後期課程  【意見伺い】設置に係る設置計画履行状況報告書 国立大学法人 島根大学 平成29年5月1日現在 PDF

 

Dマル合とは?

大学院の修士課程および博士課程の担当教員は、講義および学位論文の指導が担当できる「マル合教員」か、講義および学位論文指導の補助が担当できる「教員」、講義のみが担当できる「教員」としての資格審査を受けねばならない。大学院で学位論文の指導が担当できる教員は、マル合(〇の中に合)教員と呼ばれ、修士論文の指導ができるMマル合教員、博士論文の指導ができるDマル合教員がある。マル合教員の資格基準は、「修士課程」および「前期2年の博士課程」の場合で論文著書30件程度、「後期3年の博士課程」「前期2年、後期3年の区分を設けない博士課程」の場合は40件程度といわれている(基準は大学によって異なる)。(引用元:大学教員 Weblio

Dマル合:博士後期課程で学位論文の指導ができる。
D合:博士後期課程で学位論文指導の補助ができる。
D可:博士後期課程で授業を担当することができる。
Mマル合:博士前期課程で学位論文の指導ができる。
M合:博士前期課程で学位論文指導の補助ができる。
M可:博士前期課程で授業を担当することができる。
「D」とは博士Doctorの略、「M」とは修士 Masterの略。「マル合(まるごう)」という呼称は正式書類では「合」の字を○で囲った文字を使うことに由来するらしい。(引用元:マル合? 2005年11月26日 今どきの大学 )

四 教員組織
(一) 教員組織の判定については、次の記号を用いることとする。なお、「研究指導教員」とは、告示第一七五号に定める研究指導教員をいい、「研究指導補助教員」とは、同告示に定める研究指導補助教員をいう。

D(合) 博士課程の研究指導教員(研究指導及び講義担当適格者)
D合 博士課程の研究指導補助教員(研究指導の補助並びに講義(及び実験)担当適格者)
M(合) 修士課程の研究指導教員(研究指導及び講義担当適格者)
M合 修士課程の研究指導補助教員(研究指導の補助並びに講義(及び実験)担当適格者)
 担当不適格者

(引用元:文部科学省 > 政策・審議会 > 告示・通達 > 大学の設置等の認可に係る審査関係規程の改正について  13文科高第七号 平成一三年三月三〇日)

6 (2) 大学院(専門職大学院を除く)の申請の場合は,「判定」欄を「講義科目等」と「研究指導」に分け,「講義科目等」欄には「可・不可・保留」を,「研究指導」欄には「まる付き合・不可・保留」それぞれの授業科目ごとに該当する欄に「M」もしくは「D」とともに記載し,該当しない欄は斜線を引いてください。(引用元:文部科学省 > 大学設置認可 > 専門委員会の構成及び判定カードの記載要領について > 判定カード作成要領

  1. 大学の人事とスケジュール(5・完) (おおやにき 2012年11月18日 01:19)
  2. マル合の下僕 (ボクが手にした本の話 abcbooks.exblog.jp)「マル合」というのは、大学院で論文指導のできる教員のことです。

 

大学院設置基準第9条第1号

大学院設置基準を読む限り、あまり具体的な基準は示されていません。各大学が独自の基準を設定しているようです。

第九条 大学院には、前条第一項に規定する教員のうち次の各号に掲げる資格を有する教員を、専攻ごと(工学を専攻する研究科以外の基本組織にあつては、当該研究科以外の基本組織)に、文部科学大臣が別に定める数置くものとする。

 修士課程を担当する教員にあつては、次の一に該当し、かつ、その担当する専門分野に関し高度の教育研究上の指導能力があると認められる者

 博士の学位を有し、研究上の業績を有する者

 研究上の業績がイの者に準ずると認められる者

 芸術、体育等特定の専門分野について高度の技術・技能を有する者

 専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有する者

 博士課程を担当する教員にあつては、次の一に該当し、かつ、その担当する専門分野に関し、極めて高度の教育研究上の指導能力があると認められる者

 博士の学位を有し、研究上の顕著な業績を有する者

 研究上の業績がイの者に準ずると認められる者

 専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有する者

引用元:http://www.kyoto-u.ac.jp/uni_int/kitei/reiki_honbun/w002RG00000950.html#e000000365

 

マル合であることを明示した公募要項の例

応募資格 2.教授は、専門または関連分野における大学教員として准教授歴5年以上の者(教授の場合は、大学院の研究指導教員の任を担うことができる者が望ましい)(千里金蘭大学 成人看護学分野(主に急性期) 教授または准教授の公募 JREC-IN

応募資格 3.上記1に係る領域において、大学院修士課程の「研究指導教員」として認められる者(九州看護福祉大学 教授の公募(社会福祉学科-精神保健福祉士) JRECーIN

応募資格 (2)大学院修士課程において税法の研究指導教員を務めることができること(大阪経済法科大学 任期付専任教員(税法) JREC-IN)

  1. 求人にみる「Dマル合資格(文科省教員組織審査の研究指導)」とは何か (とある社会福祉士・精神保健福祉士のぼやき 2016-07-19)
  2. 高学歴ワーキングプア(水月昭道)4=「ムダ」とはなにか20(タカマサのきまぐれ時評 2007年11月10日09:45)
  3. 大学教授(教員)のマル合に関して質問させてください. (OKWAVE 2010/01/10 22:39 質問No.5583372) 新たに学部をつくってから,そのうち連続する大学院もつくる計画があるときは,最初からマル合教員を集める(公募する)ことがあります。

 

「マル合」教員の条件

上で紹介したWeblioの解説だと、マル合教員の条件は論文40報が目安とありますが、実際には大学によって、あるいは文系理系、分野によってマル合の要件となる論文数はかなり異なるようです。

赴任後5年ほど経って地方大学の牧歌的な雰囲気が一変してしまった。教育学部に大学院が設置されることになり,文部省(当時は文科省ではなかった)の大学院の設置基準委員会によって担当教員の業績が審査されることになったのである。審査に通るためには,講義および学位論文の指導が担当できる「マル合教員」か,講義および学位論文指導の補助が担当できる「合教員」になる必要があり,マル合になるためには論文数が 30 ~ 40 本程度が必要という情報が流れ,それから必死になって論文を増やす努力をしたのである。(記憶の糸をたどりつつ−ベビーブーマーとしての大学教育− PDF

○判定基準を説明します。一例として,学校教育方法連合講座の判定基準を用いますが,Dのマル合の教官になるためには, A条件かB条件を選択しなければなりません。 A条件の場合には,研究著書,学会誌の合計数は20編以上持ってください。ただし,そのうち最近5年間に5編以上発表していなければいけません。 B条件の場合には,著書,論文の総数は40編(A条件の論文を10編以上含む)持ってください。ただし, 40編のうち10編(A条件の論文を3編以上含む)は5年以内に発表されたものになります。また,Dの合の教官の判定基準は,大体半分になるようにしてあります。

A系列というのは,全国学会誌レベルの論文が20編ありました ら,それでいいということです。 B系列は,ほかの論文,例えば  「紀要」などの論文も入れて,総数を40にしましょうと。ただし10 編くらいは持ってくださいというので,その場合の10編は全国学会誌レベルの論文が条件になります。つまり, A系列では申請ができないけれども,全体的には40編ある。その中で10編は全国レベルの論文があるというような場合には, B系列で申請ができるというのが, A系列とB系列というものです。

理系で申しますと,インパクト係数と かサイテーション・インデックスとか,そういったものを前面に出 してこなければ話にならないという考えが強いと思います。文系の場合には,「ちり紙でも印刷してあれば論文」というような (笑),言葉は悪いですが,そういった人もいます。

(引用元:兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科外部評価委員会 議事録PDF)

マル合の要件を公開している大学の例を紹介します。

電気通信大学

学術論文の業績は、原則として以下の基準により判定する。

博士後期課程
研究指導担当教員(D○合 )総論文数20 最近5年の論文数5
研究副指導担当教員(D合) 総論文数10 最近5年の論文数3
講義担当教員(D可)

博士前期課程
研究指導担当教員(M○合 ) 総論文数10 最近5年の論文数3
研究副指導担当教員(M合) 総論文数5 最近5年の論文数2
講義担当教員(M可) ―

(引用元:電気通信大学大学院情報理工学研究科担当教員資格審査における教育研究業績判定基準等の申合せ PDF

 

東京農工大学

第3条 連合農学研究科教員の資格判定に当たっては、人格、指導能力、教育業績、研究業績、学会並びに社会における活動等を勘案し、次のとおり判定する。
(1) 主指導教員資格 主指導教員として学生の論文指導並びに研究指導に当る資格を有する教授、准教授、講師、客員教授又は客員准教授。
(2) 副指導教員資格 副指導教員として主指導教員を補佐して学生の研究指導に当る資格を有する教授、准教授、講師、助教、客員教授又は客員准教授。
2 前項に規定する資格判定の研究実績については、原則として学術誌に掲載された次の各号に掲げる論文数を基準とする。
(1) 主指導教員資格は、過去20編最近5年5編とする。
(2) 指導教員資格は、過去10編、最近5年3編とする。

佐賀大学規定集

規定の中の一部のみ紹介します。

1 研究指導教員(以下、「マル合教員」という。)の判定は、次の①、②、③、④、⑤項によって行う。
① 教職経験年数は、10年以上を原則とする。ただし、研究業績あるいは実技関係の業績の優秀な者については、教職経験がない者もマル合教員と判定することがある。
② 著書・論文等    文系、理系は、著書・論文等(共著を含む。以下同じ。)合わせて20編以上とする。このうちに、レフリー付き又は指名依頼による学術論文を必ず含み、かつ、最近5ケ年間に学術論文を有すること。
  1. 大学院の主指導教員(論文指導等科目責任者)になるために必要な資格や規定はあるのでしょうか。:質問者は医療職とありますので、好例として、薬剤部長医療情報部長は全国の医学部では教員扱いになっています。当然に大学院教員を兼任してます(大学院大学では大学院教授が主で学部が兼任の構図です)。放射線部長・検査部長は昔から医師である学部/大学院教授が努めています。(YAHOO!知恵袋2013/5/2408:58:35
  2. Mマル合について(BIGLOBEなんでも相談室2006-09-28 10:37:03)

 

鹿児島大学

(論文発表数)学会誌又はこれに準ずる権威あるものに投稿した論文発表数20以上で、特に最近5年間の研究活動が活発であること。ただし、分野によっては、若干の相違がある。(鹿児島大学大学院連合農学研究科主指導教員の資格等備えるべき条件の基準 教員資格審査

大分大学は教員採用の論文数の基準を公開しています。

第3条 本研究科における教員の選考に必要な研究業績及び経験年数の基準は,法人規程別表に定めるもののほか,原則として,次のとおりとする。
教 授 著書・学術論文20編程度(数学分野は,10編程度)
准教授10編程度(数学分野は,5編程度)
講 師5編程度
助 教1編程度
(引用元:大分大学大学院教育学研究科教員選考規程 一部のみ紹介)

 

マル合情報の公開

どの教員がマル合かの情報まできちんと大学教員データベースで公開している大学もあります。

基本情報

職位 准教授
M合区分 M◯合
D合区分 D◯合

(参考:芝浦工業大学教員データベース 本学の専任教員の教育・研究活動、大学運営・社会貢献に関する情報等を公表しております。)

  1. 芝浦工業大学はオンラインの教員データベースでDマル合・Mマル合かどうかも分かるようになっている!! @nipox25 2019年5月11日

 

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なぜあなたは論文が書けないのか?

できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか

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キーワード:主指導教員 副指導教員 研究指導教員 マル合

 

本記事を執筆した動機

同じ轍を踏まないでくださいな。

 

関連記事 ⇒ まだアカデミアで消耗してるの?【博士の転職】

 

東大で大学院に入るのは自殺行為

大学院に進学するということ

ネットで出くわしたショッキングな言葉。

「東大で大学院に入るのは自殺行為、それ以外の大学で大学院に入れるのは殺人。」 (c)飯田泰之

過激ですが、共感するところもあります。自分も大学卒業時にはどんな会社からでも歓迎されそうな状況でしたが、大学院に進学した結果、世の中の誰からも必要とされず(任期切れ、公募100連敗)、いい年して家族もろとも路頭に迷うという恐ろしい状況に陥ってしまいました。研究しているのか職探ししているのかわからないような人生をずっと歩んできて、死んだ方が楽かなという気分を何回も味わいました。「大学院に入るのは自殺行為」というのは研究者社会の現実の一側面を言い当てた言葉でしょう。もう15年前の言葉のようですが、令和の時代が始まる今になっても、状況は悪化こそすれ何ら改善していないようです。

自分は生命科学の業界しかわかりませんが、業績があってもパーマネント職に就けていない人があまりに多いです。これが現状なのに、漠然と大学院に進学して将来研究者になりたいと言う学部学生を見ると、大丈夫?と思ってしまいます。そういう(地方大学の)学生が、優秀であるがゆえに先生に可愛がられてそのまま同じ大学院に進み、そこで人並みの論文を書いて博士号を取得したところで何者にもなれないでしょう。それをわかっていて大学院進学を勧める先生がいるのだとしたら、上で紹介した言葉は過激ですが、その通りだと思います。

自分の考えをいうなら、生命科学の場合ですが、

大学院に進学して、小さな論文にしかならないような研究テーマを選んで5年間実験に勤しむのは自殺行為

となります。なぜなら、そんな論文を出したところで職は獲れないから。ここで小さな論文というのは、インパクトファクターが10も無いような雑誌に掲載される論文という意味です。論文の真に科学的な価値は度外視した話です。そして、将来研究者になりたいという希望を持っている大学院生に対して教授がそのような研究テーマを強制するのだとしたら、それは非常に無責任な行為だと思います。大学教授の地位の保全には十分な論文業績であっても、大学院生がアカデミアで生き残るには不十分でしょう。大学院時代に限らず、ポスドクに関しても同じことが言えます。

「一流誌には届かなかったけれど、とりあえず論文がやっと出せて良かった。」と教授と一緒に喜んでいるようでは、あなたに研究者としての未来はないのです。若者は現状を見切り無謀な挑戦の回避を

ただし、段ケーキの上にひょいと持ち上げてもらえる人間になれれば、その限りではありません。

  1. 大学院進学はまちがいなく自殺行為である(2004-11-29 思考錯誤)
  2. 大学院進学は自殺行為だ。そして、明治時代も、そうだった (2015-02-01 shibaok.net)

文系と理系とでは就職の厳しさがまた全然異なるのかもしれませんが、程度の差を別にすれば、これらの言葉がそのまま理系の世界にも当てはまりそう。

研究職に就かんとする者に必要な心構えについて。まずは諦めましょう。世間的成功、お金が欲しい人には向かない。また、学問と研究は違うのであり、文系の場合は特に就職口がなく、あったとしても自分がやりたいこととぜんぜん違う分野を求められることもしばしば。職業と云う点から言えば学問的才能は関係ない。むしろ職業的習熟、人付き合い、プレゼン能力などが求められる。これを研究したい、などと云うのは結局はゴールのようなところであり、それまでのプロセスではやはり話は別で、現実的世渡りが必要。イベント報告 京都大学 総合人間学部 大学院人間・環境研究科 同窓会)*太字強調は当サイト

 

参考となるデータ

 

生きる力を与える言葉

すでに大学院に進学してしまった人にとって、最初に紹介した言葉は凶器にしかなりませんが、さんまさんの言葉が力になります。自分はこの10年間、この言葉を拠り所に生きてきました。

「生きているだけで丸もうけ。」(明石家さんま)

  1. 人間、明石家さんま。「座右の銘」の話(YOUTUBE)

 

研究の世界は段ケーキ

昔、芸能人の誰かがネット記事の中で言っていたことですが、芸能界は結婚式に登場するあの「段ケーキ」と同じで、どれほど努力して前に進んでも、自分が今いる段から上には上がれないそうです。上に行くには、上にすでにいる人に引っ張り上げてもらう以外ない。

この記事を読んだとき、研究の世界も同じだなぁと思いました。どれだけ努力して論文業績を積み上げても、誰かが自分のことを気に入ってくれて引き上げてくれない限り、どうにもならない。段ケーキの上では、前に進む努力をいくら続けても無駄であって、上の段から自分に手を差し伸べてくれる人を得ることが必要なのです。

 

関連記事 ⇒ まだアカデミアで消耗してるの?【博士の転職】

 

参考

  1. 大学院に行って人生を棒にふる方法 (2018/05/21 06:12 katsu1110)
  2. これから人文系大学院へ進む人のために (2004-12-10 15mode ver.cpot)

 

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デキ公募:若手研究者からエネルギーを奪い日本の科学研究を衰退させる悪習

公募の結果発表

4月は新しい季節の始まり。大学に新たに着任された先生方の顔ぶれがウェブサイトで確認できます。自分が出して落ちた去年のあの公募で一体誰が採用されたのかなと見てみると、なんと内部昇格している例ばかり。特に、地方国公立大学でその傾向が顕著に見えます。一部のメジャーな大学もそうですが。

 

応募の労力

別に内部昇進した人になんの恨みもありませんが、だったら大学は公募しないでほしかったなあと思います。応募書類を書いて、送って、面接に呼ばれて準備するのには莫大な労力がかかります。何十か所も応募していると送料だってバカになりませんし、面接のときの旅費や宿泊費だって、非常に家計を逼迫するのです。

 

募集要項から読み取るデキ公募

募集期間が10日間と異常に短かったり、専門分野が恐ろしく絞り込まれていて該当者がそのラボの中の人しかありえんだろうという募集要項を出してくれれば、それを「これはデキ公募ですよ」というメッセージとして受け止めて、応募を控えるという選択ができます。

 

お祈り通知から読み取るデキ公募

ひとくちに「お祈り通知」と言っても、そこには非常に大きな違いがあります。選考委員長の先生が、いかに苦労して候補者を選んだかが自分の言葉でしっかりと語られているような大学・学部もいくつかありました。応募者総数や面接に呼んだ数なども記載して、選考過程を多少なりとも教えてくれる大学も結構あります。

そんな誠意を感じさせる大学・学科がある一方で、ありがちなのが、100%定型の書面でしかないような大学。貴殿の益々のご発展をお祈りいたしますってやつですね。少なくとも、デキ公募だったところは、こういう定型文を使うしかないだろうなと思います。ちなみに、定型お祈りメールにもいくつか異なる印象があって、定型なのに誠意を感じさせる言葉遣いというものがあり、日本語の豊かさを再認識しました。

さて、定型お祈り通知を送ってくる多数の大学の中でもひときわ目立っていたのが、首都圏にある日本有数の国立の研究大学。業績欄の論文全部にインパクトファクターまで付記させておいて、「お、ここは研究能力重視で選ぶのか」と思いきや、毎回、フタを開けてみりゃ内部昇進が当たり前。インパクトファクターをわざわざ全部書かせるのなら、採用した人間の論文業績のインパクトファクターの合計と、応募者たちのインパクトファクターの合計の分布でも示してもらいたいものです。この大学は、人間の名前がどこにも書かれていない機械的・事務的な通知を送ってきてお終い。多数ある定型お祈り通知の中でも、異様に非人間的な印象を受けました。応募者を何だと思っているのだろう。

 

公募制度の矛盾

応募期間を2カ月と十分に長くて、研究領域も漠然とした募集要項の場合、自分にも可能性があると期待する人は何百人にも上るでしょう。彼らの労力を無駄にするのは止めるべきではないですか?論文業績がはるかに上の人たちが多数応募したはずなのに、蓋をあけてみたら内部の、業績的にも芳しくない人がしっかりとパーマネント職に昇進している現実。そういう人たちだけが生き残って、まともに研究成果を上げてきた人が任期切れで行き場を失って研究を辞めざる得ない今の日本の科学研究業界は狂っているのではないでしょうか?

 

デキ公募廃止の提言

公募する気がないのなら、最初からしなきゃいいと思います。デキ公募をJREC-INに出して多くの優秀な研究者の時間と労力を奪うことはやめて欲しいものです。数多くの真面目な研究者たちがエネルギーを奪われて、疲弊しています。そもそも、研究業績の無い人間を教授や准教授に昇進させる大学では、大学院生は研究者になるためのトレーニングを積むことはできないのではないですか?無垢な大学生が、研究とはそんなものだと誤解して研究に憧れでもしたら可哀そうな話です。


 

以下に、デキ公募に関するツイートを紹介します。ガチ公募とデキ公募の境目が明確でないことには注意を要しますが、研究室に在籍していたポスドクがそのまま助教になっていたり、助教が准教授に昇進していたのならば、それはデキ公募だったと考えるのが妥当でしょう。過去に在籍していた人がしばらく外に出てファカルティとして元ラボに呼び戻される形もしばしば目にします。

デキ公募に関するツイート


 


 

参考(ブログ記事)

  1. ポスドクから見たダメ教員(2007年 10月 28日 5号館を出て)”「公募」と称した募集の中には、公募という形にしなければ文科省に叱られるからという理由で形だけ公募の形態をとったいわゆる「やらせ公募」が横行していることも、なかば公然の秘密です。”
  2. デキ公募(2006-09-05 00:21:55  ケミストの日常) ”公募の形式を取っていても実態は適任者が内定しているというケース、いわゆるデキ公募が無視できないほどにある”

 

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大学教員公募における模擬授業のやり方

研究ばかりやってきて授業を受け持ったことがない人がいきなり大学の教員公募で模擬授業をやらされるのは、かなりハードルが高いと思います。自分も、あまりピンとこないまま準備して一方通行の講義をしてしまい、終了後の手応えゼロであっさり撃沈した経験があります。公募を勝ち抜くような人がどのような模擬授業をやっているのかというと、聞いたところでは、どんどん”学生”(選考委員を務める教授たち!)に当てて答えさせたりして、もっともっと双方向の面白い授業をしてみせていたようです。あの場所でそんな度胸は自分には無かったなあと反省しましたが後の祭りです。

高等学校の教育でも新指導要領に移行しますし、今後よりいっそう、先生が一方的に話す授業ではなく、アクティブラーニングといった生徒主体の授業形態が望まれるようになります。そんな中で、学生を巻き込む面白い授業を模擬授業の場で実践してみせることができれば、かなりポイントが高いはずです。

模擬授業をどうやればいいのか?ネットを見渡しても情報が少ないのですが、文系理系問わず役立ちそうなウェブサイトを紹介します。

 

模擬授業とは?どうやるの?

もち時間は20分です。この場合,1回の授業内容を20分にコンパクトに縮めてしまって,20分たったら「今日はこれで終わります」と言って,自分で授業を終えるものでしょうか。それとも,本来の授業時間を想定して講義していき,進行の方が「はい,20分たちました,やめ」といって終了させるのでしょうか。 (短大教員採用試験の模擬試験 2012/12/2110:10:51 ヤフージャパン知恵袋)

発表時間が一部を切り取った20分であっても、授業時間が90分なのであれば90分間分の授業内容の準備をしておくのが良いと思います。同じ20分であっても、その場で湧き出てくるものが自ずと違ってくるでしょう。90分間のスライドのハンドアウトを人数分用意して配布したりすれば、全ての授業の準備していることが伝わって良いのではないかと思います。自分は過去の面接ではそうしました(落ちましたけど)。

 

模擬授業の重要性

書類審査を突破したら、次に行われる面接と模擬講義ですべてが決まると言っても過言ではない。特に、模擬講義は重要である。… 学生が飽きないように、学生との質疑応答の時間を少し入れて、工夫した。模擬講義の練習を事前に3回行い、後輩に聞いてもらった。わかりにくい部分を指摘してもらい、時間配分を調整した。繰り返し練習したため、当日は余裕をもって、臨むことができた。(「面接と模擬授業」恵泉女学園大学専任講師:李泳采)

模擬授業の重要性は、その大学の教育と研究とのバランスにもよるかと思います。そもそも国立の理系の研究大学の場合、模擬授業を課していないことも多いですし。しかし、その場合でも、研究セミナーのうまさ、わかりやすさ等で教育能力は測られているはずです。

 

模擬授業は演技・パフォーマンスと心得るべし

テーマが先方から指定されることが多いが、学会発表などと混同してはいけない。扱われている内容について、先生たちを相手にしているのではなく、はじめてそれを学ぶ学生に向かって授業しているように「演技」することが必要。(模擬授業について 2017年1月30日月曜日 文系大学教員公募)

普段から学会発表でボソボソとしゃべっているだけだと、いざというときに非常に困ります。いきなりやれと言われると大変ですので、普段の学会発表やセミナーでも聴衆に理解させる意識をかなり高く持って臨む必要があるでしょう。

模擬授業は、原稿を読み上げるだけのものにしてはいけません。面接担当者は観客だと思って、相手を魅了するような「演技」をしなければなりません。当日、面接担当者は複数の候補者の模擬授業を受けます。当然、疲れます。ならば、その疲れを忘れさせるような、退屈させない授業にしなければなりません。そのためには、学術的に適正でありながらも、面白さをあちこちに潜ませる必要があるでしょう。(面接時の模擬授業について(2) 2015年01月12日16:30  それでも人文系大学院にいくんですか?)

 

模擬授業の準備、練習、慣れの重要性

『これが物理学だ!』の著者であるウォルター・ルーウィン元マサチューセッツ工科大学 (MIT) 教授は白熱授業で有名ですが、彼のような授業の名人ですら(?)毎回入念に授業のリハーサルを複数回行ってから本番の授業に臨んでいたそうです。ましてや人生で初めて授業を行う場合、それも自分の人生を決定づける重要な面接試験で行う場合には、それなりの準備が必要なことは言うまでもありません。

模擬授業はだいたい20分で教科書を指定してくることが多かった。学部の授業で習った以来の復習だったので、苦労した。やはり博士論文を作りながら準備をしていたので、準備不足となることが多かった。少なくとも1周間は練習を見て、模擬授業の模擬授業を3回程度やるとだいぶ慣れてきました。(■新卒博士のアカポス公募記録 2017-03-12 はてな匿名ダイアリー)

 

模擬授業が課される理由


 

模擬授業では授業を行うこと

さて,問題の模擬授業の内容だが,物理教員としての採用だったので,理工学の一般教養として教える機会の多い「力学」の中からトピックが5つほど与えられ,そのうち一つを選択し「もしそのトピックを中心として90分の授業を行うなら,どのように授業を組み立てるか」を20分で話すというものだった.(そういう意味では「授業の内容を説明する」というもので,本来の意味での模擬授業とは違う性格のものだ.)(【大学教員への道】 模擬授業 2014年10月13日月曜日 akt37)

上の公募では授業のやり方を説明することが要求されていたようですが、募集要項で模擬授業をやれと言われている場合には、本当に面接の場で面接官を相手に、「授業」をやらないと零点になると思います。念のため。

 

参考

  1. 大学教員の採用人事を知る3―面接・模擬授業編 (2016/06/29 03:04 ダイガク享受):有料ノート。心構え等、参考になることがいろいろと書いてある。内容からして著者は文系の教員みたい。
  2. 私の公募に対する心構えメモ (geocities.jp/ryannmaryu16)
  3. 教員公募について考える 2016-08-08 大学教員として生きる道
  4. 大学教員への道2 採用試験 2006.05.17 児玉昌己研究室