ツイッターを見ていたら最近、大学教員や博士研究員(ポスドク)の任期に関する意見が飛び交っていました。研究者の切実な声、貴重な意見を纏めます。
目次
- 1 研究職の任期制に対する肯定的な意見
- 2 日米の流動性の違い、任期の制度上の違いについて
- 3 制度設計の不備について
- 4 理想的な制度設計
- 5 他国の事例
- 6 任期に関する議論における生存者バイアス・強者の理論について
- 7 任期付きであることが生み出す不安感について
- 8 研究者は任期制によって人間としての生存権が常に脅かされていることについて
- 9 任期付きに対する世間の見方
- 10 任期制が研究力の低下をもたらしていることについて
- 11 雇用側と被雇用側との立場の違いについて
- 12 任期制を肯定する意見に対する反対意見
- 13 任期付きという現実
- 14 任期付き教員・研究者に関する議論再燃
- 15 任期付き大学教員・任期付き研究者に関する義路の結論
研究職の任期制に対する肯定的な意見
私はずっと(今も)任期付ですが、任期付き雇用を肯定しています。 ただし、成果を出した人には任期更新(もしくはテニュア)を保証し、更新できなかった人にも、審査後、1-2年のフェードアウト期間を保証することにより、任期中は研究に集中できるシステムが必要と考えていますhttps://t.co/PBRz2F2BfO
— Prof. Keiko Torii (@KeikoUTorii) November 28, 2021
日米の流動性の違い、任期の制度上の違いについて
アメリカの任期付き教員はほぼ全てがテニュアトラックで、日本の任期付きはその先は一切保証しない本当にただの任期つきなので、単純比較はできないわけで
— クシミタマ (@Beethovener) November 29, 2021
鳥居先生、日本は「10年以上続けて研究者を雇用する場合は任期なしにすること」という法律があるため、逆に「10年超えて更新できない」という契約書にサインさせられているのが現状で、2023年に優秀なPI含む多くの研究者がこの「10年ルール」に該当します。これはなんとかしなければなりません。
— Hiroko Bannai️ (@hiroko_bannai) November 29, 2021
任期付を肯定しているのは、だいたい海外の研究者が多い気がします。充分に雇用の流動性があり、給料も高い海外と任期なしより給料も社会保障の低い日本の任期付の違いも比較せず海外の状況で述べられると困りますね。
— atu_d (@tu_con_matt) November 29, 2021
海外の任期付きと日本の任期付きの条件が違いすぎるので、海外のPIで任期付きを肯定している人にキレても意味ないよ。なんで日本でそうできないのか、日本のシステムにキレるべき。で、改善できるならするほうが建設的だと思う…
— 山田かおり PhD (@KaoriYamada01) November 29, 2021
任期付研究者の話が燃えてるけど、研究資金や業績があるかぎり80歳でも研究を続けられる任期付と、5年したら絶対やめなきゃならない任期付は全然違う。
気をつけねばならないのは、単に任期付を肯定するような話をすると、後者を肯定しているとされてしまう懸念がある。
— (@tkmpkm1_mkkr) November 29, 2021
こういう任期あり(主にTT)なら肯定できますよって話を全面的な肯定だと捉えるのは藁人形。誰も日本の現状の雇用を肯定してないと思う。 https://t.co/6UVNK0b3yG
— Ken McAlinn (@kenmcalinn) November 30, 2021
元々の問題提起が任期付き肯定の人は任期なしの安定職なんでしょ?的な煽りだったので、いやいや私任期付きですよ、って反論になっちゃったんですよね。でも鳥居先生もアメリカだし。
「日本の」任期付きを肯定してない…でしょ?
— 山田かおり PhD (@KaoriYamada01) November 29, 2021
日本とアメリカで任期付きの意味合いというか、絶望感が違いすぎるんですよね。アメリカだと制限というよりチャレンジって感じで、日本だとただただクビまでのカウントダウンという空気になってますよね。
— 飛躍したいポスドク (@vetpostdoc) November 29, 2021
それですなー‼️任期内に頑張って業績出しても先があるとは言い難い。アメリカだったら更新や昇進が期待できるのに(ボスがお金有れば)。
— あひる (@raM0njmDXtWHMV7) November 29, 2021
制度設計の不備について
”任期付き経験者”で、”任期付き雇用”も肯定します。
が、
今のやり方は肯定できません。”任期付き” → ”期限なし&PI”はOK
任期付きJK → 期限なしJK → 任期付きJKJ
ってのは、アカンと思います。日本の現状。。。。 https://t.co/msdeSNoOEU— Hiroshi Yamada (@Hiroshi12337131) November 28, 2021
RT〉任期制度の問題は、予算がないと任期更新できないし、10年雇用されると無期化でコストが増えて経営側が嫌なので、更新できないことですね。
結局日本の場合、成果出しても出さなくても、任期切れる前に出ていくことになる。
こんな任期制は、定年前の10年間しか使えないと思います。
— 片桐 孝洋 (@Taka_Katagiri) November 28, 2021
“絶対更新するから実質任期無し”の文言に、今まで日本中で何人が騙されたんでしょう?
— ロジーさん (@10xgenomics_) November 28, 2021
理想的な制度設計
任期制にしてもいいから、普通に研究やってたら任期切れても次に行くまともな選択肢(給料や研究費等)が最低でも5つぐらいは見つかる環境にしてくれ。
それができない任期制はただの短期バイトやぞ。それで研究できるわけないやんけ。— やもす (@ShIma_Megagauss) November 30, 2021
博士卒でアカデミアに残る人は世界ポスドク社みたいなのが一括で原則任期なしで雇って、数年ごとに希望に応じて適当に世界中のラボに移籍できる形にしてほしい(アカデミアを離れるときに退職)
— てんにょ (@barinoriron) November 30, 2021
大学教員・研究者の任期制は是か非かという議論、人材受給の問題として見るなら「アカデミアとアカデミアの外側(主に産業界)とで人材を互いに融通できるか否か」が全てだと思う。日本の現状だとアカデミア外から戻ることは難しく、余剰人員を産業界にプールさせておけないhttps://t.co/V75lWkrJlr
— TJO (@TJO_datasci) November 30, 2021
基本任期なし、但し成果が長期間ない人は研究以外の業務がメインの仕事に配置転換有り
という風にするとどうなるんかな— 呂不ヰ (@Ryofuwi) December 1, 2021
他国の事例
あと、イタリアでも5年(?)以上は任期付きで雇えないというルールがあって、すごかったのはCNR(イタリアの国立の研究機関)はそこで5年以上雇われていた人をクビにせず全員無期転換したこと。驚いた。でも本来そのためのルールなんだよね。
— Tomoki Ozawa (@oz_tomoki) November 30, 2021
任期に関する議論における生存者バイアス・強者の理論について
一日経ったが、やっぱり任期付きを積極的肯定する気には全くならないな。そりゃあ、引く手あまたの人だったら任期付きでも実質、任期無しみたいなものだが、それは強者の論理というもの。
— 雲南きのこ老師✨ (@SMBKRHYT) November 30, 2021
大御所が、「自分が任期付きだから任期付きを肯定」となると、誰が一番喜ぶって、「大御所もこう言っている」と言って人材費を節約できるZ省だよな。
— 雲南きのこ老師✨ (@SMBKRHYT) November 29, 2021
実際こういう人も多いんだから任期付きは恐ろしい。任期付きでも論文出してれば〜とか研究真面目にやってれば〜とかは、あくまで運に恵まれてるからっていう大前提のもとに立脚してるって分かります?
— ロジーさん (@10xgenomics_) November 30, 2021
任期制って強強な人向けの制度よね。
皆が皆、強強なわけではないし、強強な人だけが科学に貢献しているわけでもない。— uhea (@uhea) November 29, 2021
上の意見にも同感で、科学の進展は、職を保証してくれるようなきらびやかな論文によってだけ進んでいるわけではありません。
任期付き問題、アメリカだろうが日本だろうが、諸外国だろうが敗戦した人からは良い話は聞かないけど、そこらへんは敗者は黙ってろって感じなんかなぁ・・・
— uiroooo (@uiroooo) November 29, 2021
任期付きであることが生み出す不安感について
元ボスが最近情緒不安定な理由「定年後の自分のポストや扱いが気になって心配だから」を聞いて正直爆笑した
任期付きとかで雇用の根幹が揺らぐ事への若手の精神的不安への理解、これでようやく進みそうですか?
— ロジーさん (@10xgenomics_) November 28, 2021
研究職を任期付きにすればアクティビティが上がるっているのは、例えて言えば、マラソン選手に短距離走を走らせて「100mは12秒で走れたね。このペースで42.195キロ走れば、きっと世界トップレベルのタイムが出るよ。頑張って」みたいな感じかも。
— 中島淳一 (@postagbstarjp) November 25, 2021
研究者は任期制によって人間としての生存権が常に脅かされていることについて
雇う側になって考えれば分かりますよね。
任期付きは「首にしたいから」設定している。本当にポジションが無い分野もありますから、任期付きなんて肯定すると、ホームレスになる研究者が出てきても驚かないですね。まあそれを望んでいるのかなと。— (@tkmpkm1_mkkr) November 29, 2021
任期付きポジションはアメリカだと何に相当するんだろうか?テニュア制度とは全く違うし。ソフトマネーポジションかと思ったけど、グラント取り続ければいいわけで、これもちがう。どんなに業績があっても、一定時間が経つと自動消滅。家族も路頭に迷う仕組み。あまりにあまりに非人道的な任期付き。
— muffmuff (@muffmuff5) November 30, 2021
任期付きに対する世間の見方
任期制研究者さあ、業界のことを知らない知人とかに任期制だって知られると「甲斐性なし」扱いになるから、辛いよね
まあ実際に給料も安いし不安定だしね。一方で業界内では重要とみなされる業績だったりするから余計に。仙人みたいに人里離れて生きなきゃ無理かな— おいかわ (@kie_o) November 30, 2021
彼は結婚相談所で奥さんと知り合ったが、相談所を成婚退会した後に、理研の研究員が任期制だと相手方に知られて、あんな有名な研究所なのに契約社員だなんて騙されたと入籍を反対されたらしい。哀しいな。
— くにぴょん (@aprilone__78) November 3, 2019
任期制が研究力の低下をもたらしていることについて
他国で採用されているからといって若手の任期制を肯定する傍、シニアがそのパーマネント職を正当化するために、目指す若手の志という甘美な概念を利用するのはダメです。
実際は(シニアは知らんが)若手ポジションが任期付きばかりという事実の方が、目指す人の減る大きな要因ではないか— らむ (@mutselbalance) April 11, 2021
まあ運が悪い奴は仕方ない!って思うならそれもまた日本のアカデミアの運命だろう。
ただそれだと優秀であれば優秀な人ほど、色々考えてしまう。まあ任期制肯定はどんな道理があったとしてもそれを聞いたら志願者が減る。ただそれだけは命題として真です。
— (@tkmpkm1_mkkr) November 30, 2021
当たり前だけど、任期付き大学教員を増やせば相応にブラックラボも増えるし、それに伴ってアカデミア志望の人材は減ると思うよ。「任期切れて食べていけない、家族を養えない」は「研究費とれないから研究できない」の比じゃないからね。ちょっとした制度じゃ回復きかないくらい崩壊すると思うよ。
— しそごはん用研究者(薬学部助教) (@ONODA_in_Onodac) November 29, 2021
任期制がないと成果無しでテニュアに居座る人が増えるみたいな考え方がありますが、任期制があろうがなかろうがそういう人は絶対に一定数出てくる。成果を出さない人を減らすことに注力するあまり、成果を出せそうな人まで任期制で死んでいってる現状では、日本のサイエンスが良くなることはないだろう
— 壱番魔晄炉 (@HydrangeaMV) November 28, 2021
雇用側と被雇用側との立場の違いについて
人を雇った経験のある人は任期制肯定派なのかな
— Carinotetra (@Mari_MSstar) November 30, 2021
任期制を肯定する意見に対する反対意見
結局は任期付を肯定してる人はそれまでに何人の犠牲と屍が横たわっているかを考慮せずに自己陶酔に陥っているだけなんですよ Ken(犬)究者@任期付研究員(求職中)@tanuki_ken
上の意見に自分も同感で、日本で名の通ったラボにいて、教授のもとでそれなりの(その分野では十分に一目置かれるだけの)成果を挙げている人が、結局パーマネント職に就けずに路頭に迷う危機に瀕しているというのが、今の日本の現状だと思います。研究者として十分に成功していても、職がないのです。大ボスであっても、多大な貢献をしてくれた部下の職の世話ができないくらいに、アカデミアのパーマネントポジションは限られているのです。研究者としてスーパーサクセスフルな人だけがかろうじて生き残れる、そんな業界に足を踏み入れたいという若者がどれだけいるのでしょうか。
煽りでもなんでも無く、純粋に疑問なんだが、任期性を肯定する理由って何なの? https://t.co/CUrfjd6yeK
— 雲南きのこ老師✨ (@SMBKRHYT) November 30, 2021
女性専用公募にしろ任期制にしろ,安全圏からご立派な大義名分掲げて下の世代に負担を強いることを肯定する奴は心底許せないし,軽蔑する.
— Ph.D.アルパ力 (@ReseArpaca) April 11, 2021
研究者側が中途半端に任期制を肯定するからいつまでたっても任期制がなくならないし、より悪い運用のされ方をする。
— 壱番魔晄炉 (@HydrangeaMV) November 28, 2021
任期制肯定派の人だけ任期付にすれば良いよ(´・_・`)
— (@sky_disk) November 30, 2021
任期付きという現実
任期付きだったし、任期切れる前に助教→特任助教で異動したけど、「落ちたね」的なことを3名ほどに直接言われ、自尊心は低下した。たぶん業績ない私が悪いのよね、と。今もそんな感じで、生きている。
— Ayako I (@ishikawaayako) November 30, 2021
TLに任期付きポジションの話題がちょっと盛り上がってますが、わたくし当事者でして、今年度末で任期がきれます。職を探して公募にはアプライし続けていますが、状況はなかなか厳しいです。ポスドクなら、という引き合いはありますが・・・
— Ryosuke O. Tachibana (@ro_tachi) November 29, 2021
勝利条件が見えないこともそうだけど、撤退条件が見えないことも大きな問題だと思う。民間就職が難しいから撤退できないってのもわかるけど、任期付きを転々として業績が増えなくてどんどん泥沼になってる人結構いる(分野関係ないラボにいる人とか)。 https://t.co/fowuddG6NZ
— Ken McAlinn (@kenmcalinn) November 29, 2021
負け犬と言うことで皆、相手にもしないかもしれないが某研のチームリーダーで次の職が見つからず一時的にポスドクになった人もいるし、某国研で室長だが任期が切れたらポスドクで今も50代くらいでそのままとかの人も知っておる。俺はそういう世界だとは学生の時知らなかったのは残念だわ。
— (@tkmpkm1_mkkr) November 29, 2021
任期付きの話題が盛んやな。運が悪いと5年しかないのに学内雑務が投げられ、研究しない学生を押し付けられ等あるので不満は大きいよね。給与も安く手当てが無かったり、退職金が無いのが当たり前ですし。
私の分野は運よくポストに恵まれた時期なので上手くいっていますが後輩とかは心配。— ドクターちゃんちゃん (@moyamoyadoara) November 30, 2021
ちなみに私は任期切れで研究を辞めました。
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任期付き教員・研究者に関する議論再燃
いつまでたっても全然解決の見通しが立たない問題なので、ときおりこうやって議論が燃えさかります。たしか、8か月くらい前にもツイッターがにぎわっていました。
任期制の話題で炎上してるというので見に行ってきた。
老若男女を問わず、研究者の研究環境として「安定した雇用」「研究する予算と時間、精神的な余裕」が重要である。任期と予算という2択にするのは筋が悪いと思う。 pic.twitter.com/bUmAVbTexS
— 神戸大学大学院 保健学研究科 寄生虫学 (@kobe_para) April 11, 2021
任期付き大学教員・任期付き研究者に関する義路の結論
任期なし、人気あり
任期あり、人気なし— ロジーさん (@10xgenomics_) December 1, 2021