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大学の講師とは?
大学には研究と教育を職務とするものとして、教授以下、准教授、講師、助教という職位があります。大学の講師は、准教授と助教の間に位置しています。しかし講師だけ呼び名に一貫性が無いため、助教とどっちが上なの?という疑問を持つ人もいるかと思います。曖昧さをなくすには、日本の「学校教育法」がどう定めているかを見るのが早道です。
学校教育法が定める大学講師の位置付
第九十二条 大学には学長、教授、准教授、助教、助手及び事務職員を置かなければならない。ただし、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には、准教授、助教又は助手を置かないことができる。
② 大学には、前項のほか、副学長、学部長、講師、技術職員その他必要な職員を置くことができる。
(中略)
⑩ 講師は、教授又は准教授に準ずる職務に従事する。
(e-gov 学校教育法 第九章 大学 *太字強調は当サイト)
上の法律の条文に、講師は教授、准教授に準ずるとありますので、准教授の下だということがわかります。にも拘わらず、なぜ混乱することがあるのかというと、一つには欧米のシステムの違いにあります。
講師の英語表記と欧米のシステムとの違いによる誤解と混乱
アメリカの大学のシステムでは、
- 教授(Full Professor)
- 准教授(Associate Professor)
- 助教授(Assistant Professor)
という順番ですが、講師(Lecturer)が准教授と助教授の間には来ません。アメリカの大学のシステムではLecturerは教育職で授業を行うのが役目であり、研究職の職位のシステムには組み込まれていないのです。しかし、日本の講師(Lecturer)は教授や准教授と同様に教育だけでなく研究を行います。助教だった人が昇格して講師になり、さらに昇格して准教授、教授となっていくので、日米で同じ呼称を用いていても、やることが全然違います。
- EDUCATION REPORT Assistant Professor, Associate Professor, Lecturer… What’s the Difference?(April 20, 2005. learningenglish.voanews.com)Another position is that of lecturer. Lecturers teach classes, but they may or may not have a doctorate.
ややこしいことに、イギリスにおけるLecturerはアメリカのLecturerとは異なるようです。下のリンク(Quora)の説明によれば、イギリスにはAssistant Professorという職位はもともと無くて、アメリカのAssistant Professorに相当するのがイギリスのLectuerなんだそう。ということは、日本の講師は、イギリスのLecturerに近いですね。
- Which is higher, a lecturer or an assistant professor? (Quora)
- Academic ranks in the United States (Wikipedia)
講師と非常勤講師との違い
さらにややこしいのは、「非常勤講師」にも「講師」という言葉が含まれていることです。非常勤講師は単年度契約で文字通り「非常勤」の雇用ですが、「講師」は常勤です(任期がつくのが普通かどうかは自分は知りません)。大学の非常勤講師は授業を教えるのが職務であり、研究に携わることはありません。大学の講師は、教授や准教授に準ずる扱いなので、講義を持つこともありますが、研究することおよび研究成果が求められます。
ケビン「『講師』は、主に授業のみを担当シマス。」(「准教授」と「助教」の違い 暮らし・学び・医療 学び・教育・入試 雇用・就職・働き方 2017年3月7日 09時52分(最終更新 3月7日 09時52分) コトバ解説 毎日新聞)
上の毎日新聞の解説は、海外の講師あるいは日本の非常勤講師と混同しているようです。全く正しくないので、要注意。毎日新聞が間違えるくらいに、講師という職位はマイナーな存在なんでしょう。
講師と助教との違い
繰り返しになりますが、講師が助教よりも職位が上なので、助教から昇進して講師になります。英語表記だとAssistant ProfessorからLecturerになるので、全然昇進したように感じられないかもしれません。対外的には非常に誤解を招く呼称だと思います。
一般用語としての講師からくる混乱
講師という言葉は、学校教育法が定める大学の職位でもあり、通常のありふれた日本語でもあります。人前で物を教える人はみな「講師」なので、よけいに混乱する人はするのでしょう。