研究が楽しめない17の理由

職業を聞かれたときに、「研究をやっています」と答えると、「好きなことを仕事にできていて、いいですね。」という反応が返ってきます。しかし、研究を職業として選び、それを楽しめる境地に達するには、それなりの修行も必要で、心の持ち方も大事かと思います。

研究が楽しくない人、研究が楽しめない人も多いと思いますので、なぜ研究が楽しくないのか?という疑問に示唆を与えるツイートやネットの記事を紹介します。

 

やりたくない研究テーマをやっているから

研究はほとんどすべて個人研究で、自由にテーマを選んだ。代数的トポロジーによるグラフ構造の解析、微分幾何による連続体力学、学習やパターン認識、神経回路網の数理、情報幾何学を構築してこれによる統計、制御システム、情報理論などなど、数理的な方法は重んじるものの研究テーマそのものは自由に変えてきた。(研究は楽しいか 甘利俊一 理化学研究所 情報・システムソサイエティ誌 巻頭言)

 

面白くない研究テーマで研究しているから

 

目指すところが低すぎるから


 

研究が進まないから

スタートが良くなかった人はそもそも楽しいゲームにエントリーできない,という現実は知っておいた方がいい(エントリーできなかった人もたくさん見てきました). (大学院生へのメッセージ 篠本 滋  version 4.5: 2016/02/12 kyoto-u.ac.jp

 

好きなだけでは食べていけないから


 

人に言われたことをやっているから

 

研究以外の楽しくないことが付随しているから


 

性に合わない、研究が楽しめないのに研究しているから

自分は何が好きで何が好きではないのか、何に興味があって何には興味がないのか、その辺りを自分でわかっていないと、向いていない世界に入り込んでしまう恐れがあります。これは決して簡単なことではなくて、好きなことと得意なことがズレている場合には特に厄介です。


 

もし自分で考えることを楽しむことが出来れば、研究を楽しめているということです。「どういう結果がでれば自分の仮説が証明できるのか」を考えて研究することはとても楽しいことです。研究することはものすごくポジティブなことだと思います。誰も失敗したいと思って研究をする人はいません。成功したい、良い結果を出したいとポジティブに考えて研究をします。それが出来ないと、苦痛以外の何物でもありませんので、とっとと別の道に進みましょう。(広島大学大学院統合生命科学研究科 浮穴研究室のホームページ 雑感

 

できることをやっているから

自分が修士課程のときは、「そんなことやっても当たり前の結果が得られるだけでは?」と全く興味の持てない研究テーマを与えられました。そして、当然得られるはずの結果を得るための実験がなかなかうまくいかずに、非常にストレスフルな研究生活を送りました。

実験のやりかたを習得する程度の目的であればそれでもよいのでしょうが、実験技術を一通りマスターしたあとは、やはり未知の世界に踏み込んだ方が、研究は面白くなると思います。


 

まだ研究を楽しめる段階に到達していないから

研究室の見学に来た高校生や学部学生に最先端の実験設備や実験内容を見せれば、「研究って、面白そう!」と思ってもらえます。しかし、研究をそこまで面白くするための長い努力の過程にはおそらく思いが及ばないはずです。

研究を楽しむためには、特に実験科学の場合、正確な実験手技の習得、必ず何か結論が得られるように適切に実験をデザインする能力、仮説を立ててそれを実証していく論理力、思い通りにいかなくてもくじけずにアプローチを修正していく柔軟性など多様な能力を伸ばしていくことが必要になります。


 

研究に限りませんが、成功できたら楽しいというのではなく、成功に至る道のり全部を楽しめないと、毎日楽しいことが何もないという状態に陥ります。

 

研究設備がひどすぎるから


 

論文を書かないといけないから

論文を書くのが苦痛だと研究はしんどくなります。論文を出さないかぎり、どんなに面白い実験データを得ていても、何も仕事をしていない人と変わらないからです。

Silvia博士 生活を犠牲にしない論文量産術」の記事でも取り上げましたが、研究を楽しむためには、論文を書くことを苦しい、大変だ、と思わなくてすむだけの論文執筆スキルを習得し、書く習慣を身に付ける必要があります。


 

 

研究に向いていたから

自分が研究に向いているかを知る20の質問」の記事で取り上げた質問項目、「褒められるのが嬉しいからという理由で道を選ぼうとしてはいないか?」にも関連することですが、それが得意で周囲からもそれに向いてるよと言われたとしても、自分が心からそれを好きでないのであれば、やはり楽しめないのではないかと思います。ただし、研究の場合には好きというだけで食べられる職業でもないので、このへんの判断は難しいところです。

好きなことを仕事にすべきか、得意なことを仕事にすべきかという議論をネットでみたことがありますが、好きでなおかつ得意なことを仕事にできれば理想的です。


 

研究は楽しくないと決めつけている人が多いだけ

研究は時間は取られるし、お金にはならないし、傍から見ていたら何が楽しいのかわからない、なんともオタクな世界だと思います。

 

一生追われる仕事だから


 

最後におまけ。研究が楽しくないというより、研究者という職には楽しくない業務もあるよという話。

楽しくない仕事もやらないといけないから

実験だけやっていればいい、研究だけやっていればいいという時期は、研究者のキャリアの中であまり長くはないのかも。

プロには責任が伴うから

イチロー選手は子供からの相談に答えて、子供のときに、楽しいから好きだからという気持ちっでやることと、それを大人になって仕事としてやることは全く別物だと言います。子供時代に感じた楽しさは、プロになるとゼロになるそうです。なぜなら、、プロにはプロとしての責任が伴うし、失敗と向き合うことが必要になるから。

プロの研究者も、結果を出し続けないといけないので、純粋に自然の不思議さに魅かれたからというだけで実験をしているわけにもいきません。実験のほとんどは期待外れなので、それに向かい合う態度も大事になります。