職業を聞かれたときに、「研究をやっています」と答えると、「好きなことを仕事にできていて、いいですね。」という反応が返ってきます。しかし、研究を職業として選び、それを楽しめる境地に達するには、それなりの修行も必要で、心の持ち方も大事かと思います。
研究が楽しくない人、研究が楽しめない人も多いと思いますので、なぜ研究が楽しくないのか?という疑問に示唆を与えるツイートやネットの記事を紹介します。
目次
- 1 やりたくない研究テーマをやっているから
- 2 面白くない研究テーマで研究しているから
- 3 目指すところが低すぎるから
- 4 研究が進まないから
- 5 好きなだけでは食べていけないから
- 6 人に言われたことをやっているから
- 7 研究以外の楽しくないことが付随しているから
- 8 性に合わない、研究が楽しめないのに研究しているから
- 9 できることをやっているから
- 10 まだ研究を楽しめる段階に到達していないから
- 11 研究設備がひどすぎるから
- 12 論文を書かないといけないから
- 13 研究に向いていたから
- 14 研究は楽しくないと決めつけている人が多いだけ
- 15 一生追われる仕事だから
- 16 楽しくない仕事もやらないといけないから
- 17 プロには責任が伴うから
やりたくない研究テーマをやっているから
研究室選びで色々と決め手はあると思いますが、中の人が1番大事だと思うのは自分がやりたいかどうか?です。結局忙しさや就職先が豊富とかっていうのは決める上で大事な要素ではありますが、その研究室で自分のやりたいことができないと何も楽しくないと思います。
— 研究室ナビ (@kenkyu_navi) 2019年5月20日
研究はほとんどすべて個人研究で、自由にテーマを選んだ。代数的トポロジーによるグラフ構造の解析、微分幾何による連続体力学、学習やパターン認識、神経回路網の数理、情報幾何学を構築してこれによる統計、制御システム、情報理論などなど、数理的な方法は重んじるものの研究テーマそのものは自由に変えてきた。(研究は楽しいか 甘利俊一 理化学研究所 情報・システムソサイエティ誌 巻頭言)
面白くない研究テーマで研究しているから
研究は楽しい,そして,楽しくないのは研究じゃない.
エンタメが楽しくないと成立しないのと同じ.
— 落合陽一 (@ochyai) 2015年3月3日
目指すところが低すぎるから
35年前の某大手家電メーカーに新卒採用されたとき、直属の上司から研究開発は理想システムを想像しろと言われた。そうじゃないと半端者しか生まれないし楽しくないぞと・・・今でもその通りだと思う。
— 海の暇人 (@burn_proof) 2019年5月24日
研究が進まないから
研究楽しいっていうのは,何かわかったり研究進んだりするから楽しいのであって,全く進まなかったら何も楽しくない.先が書いてある教科書読むのとはまるで違うし,同じように楽しいもんと本当にみんな捉えているんでしょうかね.
— ぱっぷす=むぎゅたん (@Pappus_Mugyutan) 2019年2月27日
スタートが良くなかった人はそもそも楽しいゲームにエントリーできない,という現実は知っておいた方がいい(エントリーできなかった人もたくさん見てきました). (大学院生へのメッセージ 篠本 滋 version 4.5: 2016/02/12 kyoto-u.ac.jp)
好きなだけでは食べていけないから
以前養老孟司さんが「日本では、昆虫をただ好きだから、じゃ受け入れられなくなっていることが問題点」と言っているのを聞いてはっとしました。「好きだからやる」がなくなると、文化や研究はそれこそ衰退するでしょう。なにより、楽しくない!
— 中野区立小学校PTAを考える会 (@PTA72842769) 2018年12月17日
人に言われたことをやっているから
やらされる勉強は楽しくないよね。もう高校生じゃないんだから、自分が楽しくない研究はやんなくていいと思うんだ。その代わり、自分が楽しんでやれるものは何だろうって探す事は必要。研究のネタは空から降ってきたりしませんよ!
— Lingxxxxiang (@Lingxxxxiang) 2014年7月3日
人のプランで研究やっても楽しくないので,放任主義の教授で自由気ままに研究やってたほうが楽しいし能力が伸びると思うのだけど,案外それは少数派らしい.
— M. Morise (忍者系研究者) (@m_morise) 2018年2月25日
研究以外の楽しくないことが付随しているから
かねたがD進しないなんてありえないって言われるけど、純粋に心から「今研究が楽しくない」からD進したくない。(理由はともあれ研究という行為は楽しいけど、どうしても納得いかないことがあって楽しくない)
— かねた (@answer_is_only) 2019年3月10日
性に合わない、研究が楽しめないのに研究しているから
自分は何が好きで何が好きではないのか、何に興味があって何には興味がないのか、その辺りを自分でわかっていないと、向いていない世界に入り込んでしまう恐れがあります。これは決して簡単なことではなくて、好きなことと得意なことがズレている場合には特に厄介です。
研究は楽しい。これ単なる事実ではなく自己成就するべき予言。
研究者は楽しくない研究をしない。楽しめない人は研究者にならない。院生もこれに準じ、楽しくない研究をさせない。楽しめない学生は入れない。
楽しくない大学院はない。— Shigeyuki Oba (@shigepong) 2014年10月14日
ぼくは、大学の頃プログラミングを専攻しましたが、諦めました。
四年生は研究室にこもってまして、毎日15時間8ヶ月くらいやりましたが、自分に合わないと。
プログラミングが楽しくないようであれば壁にぶち当たります。
何事も好きじゃないと続けられないって大学生の頃気付けたことが収穫😂
— にゃも@台湾台中🇹🇼海外移住・留学 (@Shohei192) 2018年10月1日
もし自分で考えることを楽しむことが出来れば、研究を楽しめているということです。「どういう結果がでれば自分の仮説が証明できるのか」を考えて研究することはとても楽しいことです。研究することはものすごくポジティブなことだと思います。誰も失敗したいと思って研究をする人はいません。成功したい、良い結果を出したいとポジティブに考えて研究をします。それが出来ないと、苦痛以外の何物でもありませんので、とっとと別の道に進みましょう。(広島大学大学院統合生命科学研究科 浮穴研究室のホームページ 雑感)
できることをやっているから
自分が修士課程のときは、「そんなことやっても当たり前の結果が得られるだけでは?」と全く興味の持てない研究テーマを与えられました。そして、当然得られるはずの結果を得るための実験がなかなかうまくいかずに、非常にストレスフルな研究生活を送りました。
実験のやりかたを習得する程度の目的であればそれでもよいのでしょうが、実験技術を一通りマスターしたあとは、やはり未知の世界に踏み込んだ方が、研究は面白くなると思います。
研究って、出来ないことが出来るようになるから嬉しいわけで、出来ることが分かっていることをやっても楽しくないよ。ただ、プロの研究者は出来たことを公開しないといけない。出来ていないノートはただの落書きに過ぎない。(続く)
— 佐々真一 (@sasa3341) 2014年5月8日
まだ研究を楽しめる段階に到達していないから
研究室の見学に来た高校生や学部学生に最先端の実験設備や実験内容を見せれば、「研究って、面白そう!」と思ってもらえます。しかし、研究をそこまで面白くするための長い努力の過程にはおそらく思いが及ばないはずです。
研究を楽しむためには、特に実験科学の場合、正確な実験手技の習得、必ず何か結論が得られるように適切に実験をデザインする能力、仮説を立ててそれを実証していく論理力、思い通りにいかなくてもくじけずにアプローチを修正していく柔軟性など多様な能力を伸ばしていくことが必要になります。
「研究はしんどいですよ。全然楽しくない。楽しくなってくるのは研究始めて20年後くらいです。だから研究者はみんなマゾです」って僕が院試受ける前の院試の説明会でとある教授が言ってた。その説明会に来て院試受けたのは僕だけだった。
— chikiwo (@chikiwo) 2011年2月24日
研究に限りませんが、成功できたら楽しいというのではなく、成功に至る道のり全部を楽しめないと、毎日楽しいことが何もないという状態に陥ります。
研究設備がひどすぎるから
「最先端の研究できるよ」って言われて東工大来たのに、実際に研究を始めてみたら、実験機器は古くて壊れかけてるやつばかりだし、研究費が少なくて試薬とか無駄遣いできないから、効率よく実験する方法を考えるのに無駄な時間取られるし(手を動かしたほうが早いのに)、全然楽しくない
— きよし (@kiyoshi_ss) 2017年3月23日
論文を書かないといけないから
論文を書くのが苦痛だと研究はしんどくなります。論文を出さないかぎり、どんなに面白い実験データを得ていても、何も仕事をしていない人と変わらないからです。
「Silvia博士 生活を犠牲にしない論文量産術」の記事でも取り上げましたが、研究を楽しむためには、論文を書くことを苦しい、大変だ、と思わなくてすむだけの論文執筆スキルを習得し、書く習慣を身に付ける必要があります。
研究は楽しいけど論文書くのは全く楽しくない
— しゅがーたろう (@12guitar21) 2019年5月16日
こんなこと言うと怒られるんだろうが研究は楽しいのだが論文を現在社会で認められているようなフォーマットに基づいて書いてpublishするところまでもっていくのあまり楽しくないといつも思う
— 白色矮星 (@_white__dwarf_) 2016年5月7日
研究に向いていたから
「自分が研究に向いているかを知る20の質問」の記事で取り上げた質問項目、「褒められるのが嬉しいからという理由で道を選ぼうとしてはいないか?」にも関連することですが、それが得意で周囲からもそれに向いてるよと言われたとしても、自分が心からそれを好きでないのであれば、やはり楽しめないのではないかと思います。ただし、研究の場合には好きというだけで食べられる職業でもないので、このへんの判断は難しいところです。
好きなことを仕事にすべきか、得意なことを仕事にすべきかという議論をネットでみたことがありますが、好きでなおかつ得意なことを仕事にできれば理想的です。
研究が楽しくない研究者は辞めろってあれ暴論でしょ。本人には苦痛でしかないけど職能として得られたが故の職業選択としての研究職ってあり得るでしょ。できるやつがやりゃあいいんだよ何でもよ
— Kentaro TAO (@taoizm) 2017年8月13日
研究は楽しくないと決めつけている人が多いだけ
研究は時間は取られるし、お金にはならないし、傍から見ていたら何が楽しいのかわからない、なんともオタクな世界だと思います。
本人が楽しくないから研究辞めるのは全然構わないけれど、本当に楽しんでやっている人たちに向かって「ほんとはこんなことやってても面白くないんでしょ?」って勝手に決めつけられているようで嫌な気分。
— 稲田のりこ (@noriko_inada) 2016年12月25日
一生追われる仕事だから
ホストが会うときに「研究職はやめときな。あれは常に論文を書かなきゃいけないし、Grantも申請せにゃならん。常に何かに追われて人生楽しくないよ。あんたはまだギリ間に合う。やめときな。」と最近よく言われる。事情にかなり詳しいこの人、絶対ただのAirbnbのホストではない…。
— numba shushi (@NSushi) 2019年2月4日
最後におまけ。研究が楽しくないというより、研究者という職には楽しくない業務もあるよという話。
楽しくない仕事もやらないといけないから
実験だけやっていればいい、研究だけやっていればいいという時期は、研究者のキャリアの中であまり長くはないのかも。
大学や研究機関の外部評価委員をさせていただいたけど、評価の仕事って、先方の教員や研究者が見たくない実状を見て、それを相手に伝える仕事なんですよね。だから楽しくないし、恨まれる。
— ICHIRO SATOH (@ichiro_satoh) 2013年4月13日
プロには責任が伴うから
イチロー選手は子供からの相談に答えて、子供のときに、楽しいから好きだからという気持ちっでやることと、それを大人になって仕事としてやることは全く別物だと言います。子供時代に感じた楽しさは、プロになるとゼロになるそうです。なぜなら、、プロにはプロとしての責任が伴うし、失敗と向き合うことが必要になるから。
プロの研究者も、結果を出し続けないといけないので、純粋に自然の不思議さに魅かれたからというだけで実験をしているわけにもいきません。実験のほとんどは期待外れなので、それに向かい合う態度も大事になります。