Category Archives: Featured

東大医学部の疑惑論文等を画像ソフトで確認

対立する主張

ネットには真偽不明な情報が氾濫しています。正反対の主張を目にしたとき、どちらを信じればよいのでしょうか?

Ordinary_researchersの主張

東京大学は、この夏に2回にわたって届いた研究不正の告発書を受けて、規程に従って予備調査を行い、正式に調査に入ると9月20日に発表した。医学部を中心とした6つの研究室から出ている合計22本の論文で、不自然な点があるという。6つの研究室の主宰者は、いずれもその分野では名前の知れた大物教授ばかりだ。国から受けている研究費の額も大きい。 (ヤフーニュース 2016/10/15)

告発された東大教授らの一人の反論

“This is a totally groundless and false accusation by a faceless complainant,” Kadowaki told ScienceInsider in an email. “We have absolute confidence in all of our data,” he wrote. (University of Tokyo to investigate data manipulation charges against six prominent research groups.  Science News ScienceInsider By Dennis Normile Sep. 20, 2016)

 

自分達の実験データに絶対的な自信があるというのなら、さっさと実験ノートを見せて実験が行われていた事実を示し、生データを全て開示して、エラーバーをいじった棒グラフに関してp値を計算して有意差が確かにあることをみせてくれればよい。なんでそれができないのかな?

 

Ordinary_researchersの告発文書 Documents of accusation by Ordinary_researchers

Ordinary_researchersは告発文書には、論文の図のおかしさが言葉と図で説明されています。

  1. http://ow.ly/d/5cvq (12ページPDF はじめに~ 2016年8月14日)(PDF コピー
  2. 告発文1 5cvq.pdf )
  3.   http://ow.ly/d/5cvr (5ページPDF 研究資金リスト 2016年8月14日)(PDF コピー 告発文2 5cvr.pdf
  4. http://toudai20168.up.seesaa.net/image/E5918AE799BAE69687EFBC93.pdf(52ページPDF  不自然なデータの指摘 2016年8月14日) (PDF コピー 告発文3.pdf  )
  5. 追加の告発文 http://toudai20168.up.seesaa.net/image/E69DB1E5A4A7E5918AE799BAE7ACACE4BA8CE5BCBE20-20E382B3E38394E383BC.pdf (2016年8月29日)(PDFコピー

 

報道でも、不正が疑われる図の解析手法について、説明があります。

ベクトルデータの図は、Adobe Illustratorなどの作図ソフトで開くと、誌面上では1枚に見えるグラフが、X軸、数字、棒グラフのデータの棒の枠、塗りつぶしにするための黒い長方形、エラーバーを構成する横棒と縦棒など、いくつもの構成要素(オブジェクト)から成り立っていることがわかる。そして、個々のオブジェクトをずらしたり、消したりできるのだ。告発の対象になった論文で、棒グラフのデータ本体の棒を横にずらしたり削除したりすると、エラーバーがデータの下に埋め込まれていた例が多数あった。また、本来であれば1枚の図であるはずなのに複数のパーツからできていたり、あるパーツを90度回転させると、別の図でのパーツに酷似していたりする。(論文不正の告発を受けた東京大学(2) その解析方法の衝撃 ヤフーニュース 2016/10/15

 

DIY: Exposing hidden error bars in Nature papers

ところで、一次情報である論文にアクセスできる場合には、真偽のほどを自分で判断することが可能です。しかし、告発された論文の図をウェブサイトで確認してみると、JPEG形式になっており、自分も最初そうでしたしたが、どうしてあのような解析ができたのかがわからない人もいるようです(897)。そこで、告発文書で指摘されている疑惑のごく一部ではありますが、「棒グラフの背後に隠されたエラーバー」、および「使いまわされた同一のエラーバー」を実際に確認してみたいと思います。高価なアドビイラストレーターがなくても、フリーウェアで事足ります。どちらの主張が本当にgroundless(事実無根)なのか、是非ご自分の目で確かめてみてください。

 See which claim is groundless and make your own judgement

用意するもの What you need

  1. インターネットがつながるパソコン A PC with an Internet connection
  2. ベクター形式の図を取り扱える画像編集ソフト。Inkscape(インクスケープ)(無料)やアドビイラストレーター(有料)など。Vector graphics software
  3. 疑惑論文PDFへのアクセス権 Access to the paper PDF of your interest

 

手順 Step-by-step instructions to reveal hand-written error bars

ベクター形式の図を含む論文PDFの入手 Get the full paper in PDF format, not each JPEG image

不正が疑われている論文のPDFを入手します。図単体のJPEGファイルは、ベクター形式でないため解析できません。必ず論文のPDFを入手してください。もちろんPDF中の画像がベクター形式でないような論文の場合、この解析は適用できません。

一つめの例として、告発文書で指摘された東大医学部の論文の一つ、Adiponectin and AdipoR1 regulate PGC-1α and mitochondria by Ca2+ and AMPK/SIRT1をみてみます。まずは、PDFをダウンロードします。


Fig. 1, On the website, the bar graphs seem to show significant differences. 例として用いた論文の図。解析のためには、このような図単体の画像ファイルではなく、論文全体のPDFに含まれる図を対象とする必要がある。

 

画像編集ソフトで論文PDFを開く  Open the PDF in Inkscape and “un-group” the objects in the PDF

この論文PDFをInkscapeで開きます。これで、図の個々のオブジェクトを編集できる状態になります。ただし、論文によっては図を構成するオブジェクトがグループ化されている場合もあるので、その場合は個々のオブジェクトがばらばらになるまで「グループを解除」する必要があります。

それではいよいよ、バーグラフを構成するオブジェクトのうち、白色や黒色に塗られた部分に相当するオブジェクトを脇にどけてみます。今回の例では、棒グラフの枠の部分のオブジェクトと、内部のオブジェクトが重なって配置されていましたが、クリックを繰り返すことにより選択するオブジェクトを変更できました。

Fig.1a, bの白塗り、あるいは黒塗りのオブジェクトを上の方に全部ずらしてみると、告発文書の説明通り、エラーバーが棒グラフの中に深く埋もれている様子が露わになりました(下図)。


Fig. 1, If you open the paper PDF in Inkscape or Adobe Illustrator, and put aside some objects on the bar graphs, the hidden parts of the error bars come into sight. You can find similar inappropriate data presentation all over this paper, as Ordinary_researchers pointed out in the documents.

この論文のほかの棒グラフも同様に処理してみると、驚いたことに全てのグラフでこのようになっています。

 

2つめの例として、東大医学部の別のラボから出たこの論文HIF-1α-PDK1 axis-induced active glycolysis plays an essential role in macrophage migratory capacityを見てみましょう。

 

告発文書によれば、この論文の図4のバーグラフでは、なんとエラーバーの長さが複数のグラフに対して2種類しかないそうです。先ほどと同様に論文のPDFファイルInkscapeで開きます。不自然な箇所の指摘は多数ありますが、とりあえず、Figure 4a i のグラフに絞ってみてみます。ここには9個の棒グラフおよびエラーバーがありますが、エラーバー以外を全て取り去り、「グループ解除」「グループ化」「整列」「配置」などを使って、エラーバーの高さがわかりやすいように整列させてみました(下図)。告発文書の指摘通り、9つのエラーバー(標準偏差)なのに、大きさが2種類しかありません。


Fig.4a i, When aligned, it becomes obvious that some error bars are identical to each other. You can find similar inappropriate data presentation in other graphs in this paper, as pointed out by Ordinary_researchers in the documents. Semba et al., 2016 Nat Commun Fig.4a iで用いられていた9つのエラーバーを整列させたところ、高さが2種類しかない

 

2022年12月25日追記:余談ですが、大文字のTをエラーバーに使ってましたっていう論文がリトラクションウォッチに紹介されてました(下のツイート)。この撤回論文はもうジョークでしかないですが、上の東大医学部の論文も、この撤回論文とやっていることが大差ないように自分には思えます。しかし、東大は何の理由も述べずにこれらの疑惑論文に不正は認められないと主張しました。そのため、上の論文は撤回されることもなく、今(2022年12月現在)でも生きています。つまり、東大の研究業績として、東大に公的補助金が流れ込むのに貢献しているというわけです。ジョークとして笑いとばすことは全くできません。実験値を表さないような棒グラフを適当に手で描いたり、エラーバーを手作業でいじるのは研究不正には該当しないとか、統計ソフトを使えば手作業を入れる余地がないにもかかわらず、手作業を挟むのが通常の論文作成の作法だなどとのたまうような大学が、10兆円ファンドの対象となる国際卓越研究大学に選ばれるのって、何かの悪い冗談ですか?って内心思います。

 

 

3つめの例として、東京大学分子細胞生物学研究所(分生研)からの論文Condensin association with histone H2A shapes mitotic chromosomes Fig.3dをみてみます。棒グラフの黒い部分を脇にどけてみると、おかしなエラーバーが現れます。図の説明によれば、Error bars represent s.e.m. (n=15 cells). ***,P<0.001. エラーバーはSEMだそうですが、やはり中に押し込んで短く見せかけています。

それだけでなく、上図3つのエラーバーを拡大して整列させてみると、大きさが同一で、しかもなぜかほんのわずか傾いていることがわかります。告発文書が指摘している通りでした。


(Fig.3d, When aligned, it becomes obvious that the error bars in Fig.3d are identical. For more detailed information, see the Ordinary_researchers’ documents.)

 

考察 Some thoughts

1番めの例のように、片側表示しているエラーバーが棒グラフの内側に入り込むなどということは、通常の論文図作成過程ではあり得ません。念のため、他の不正の疑いがない論文PDF中の棒グラフも試しましたが、このようなおかしなことは生じませんでした。この論文にはここで示した以外にも多数の棒グラフが含まれますが、ほぼ全てでエラーバーの陥没が認められました。エラーバーを短くして有意差があったかのように見せかける意図が伺われます。論文の主張を裏付けるはずの多数の実験データが、実はどれも”有意差無し”だったのだとしたら、実に衝撃的です。操作された図の多さからすると、「この実験で有意差が出てくれないと困る!」という切羽詰った動機によるものではなく、このような”作業”が常態化していることが伺われます。

2番目や3番目の例のように実験群のエラーバーがこんなふうに同一になることはあり得ません。標準偏差や標準誤差の計算すら端折って、コピペで同じエラーバーを使いまわしていることから、このような”作業”が常態化していることが伺われます。統計ソフトを使うと数値データからグラフを描くのはソフトが自動的にやってくれますので、エラーバーの位置や長さに関して手作業が介入する余地はありません。標準偏差や標準誤差の計算をはしょったどころか、計算に使うべき数値データがそもそも存在していなかった可能性すら考えられます。

 

結論 Concluding remarks

実験データを統計処理してグラフを描いた経験がある人であれば、これぞまさしくデータ捏造の動かぬ証拠と考えるのが普通でしょう。これがデータ捏造ではないというのであれば、東京大学の調査委員会や論文著者は、実験ノートを開示して実験が本当に行なわれていたことを示し、実験ノートに記載され図作成に用いられた全ての数値から有意差があることを計算してみせ、何の意図でどのような操作をすればこんなデタラメな図が作成できるのかを、研究者コミュニティおよび国民に対して早急に説明する必要があります。仮に、そういった情報の開示なしに「不正はありませんでした」と言われたところで、そんな根拠のない主張を受け入れる人はあまりいないでしょう。

 

(20170807追記) m3.comに調査書本文の一部と思われる部分が記載されていたので、転載しコメントを追加します。

【医学系研究科5教授の論文の調査結果の概要】
 調査においては、実験ノート、オリジナルデータの確認を行い、これらの全部または一部失われた場合は、関連する実験ノート、その他のデータ・記録の存在および内容を確認した。その結果、全ての論文について、実験は実施されたものと認められ、本件においては捏造はないと判断した。
 他方で、雑誌に掲載された論文の図および再現データ(出版社のWebサイト上の論文の図等から得られる「ベクトルデータ」から再現された数値データ)を確認したところ、ほとんどの図で、申立者の指摘するような、再現データとオリジナルデータは一致していないという事実が確認された。
 そのため、さらにその原因を調査し、不一致が改ざんによるものか否かの確認、検討を行ったが、いずれも改ざんによって生じたものとは認められなかった。(引用元:東大・分生研教授ら、5報の論文で不正行為 調査結果を公表、医学系研究科5教授は不正なし m3.com 2017年8月2日)

実に興味深いことに、東大の不正調査委員会は、「ほとんどの図で、申立者の指摘するような、再現データとオリジナルデータは一致していない」とOrdinary_researchersの指摘を認めました。生データが図に一致しない論文を出すのは、研究不正の定義そのものですから、事実上研究不正を認めた文言と受け取れます(少なくとも自分には)。

改ざん:データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。文科省

それにもかかわらず、東京大学は何の根拠も示さずに、図とオリジナルデータの不一致は改ざんではないと主張しています。改竄ではないと判断するならその根拠を説明すべきです。改竄ではないので調査内容は公開しないという主張は、論理が破綻しています。

 

 

このような不適切なデータを含む論文が、2016年8月14日付けの告発以来長期にわたって著者からの何の釈明もなく、訂正も撤回もされないまま現在に至るまで放置されています。何も知らない世界中の研究者らは今日もこの論文を読み、引用し続けていることが、論文のArticle metricsから伺えます。

 

追記(6月20日)

T大糖○△内科の論文著者の一人が「手作業でエクセル変換したらズレただけ」と釈明したというツイートを見かけました。仮にこの発言が真実だとすれば、この著者はズレる前のエラーバーの長さとズレた後のエラーバーの長さを見ていたということになります。研究者であれば実験結果のエラーバーの大きさは非常に気になることなので、これほど長さが変われば、気付かないはずがありません。仮に、気付かなかったという言い訳が出たとしても、質や量を考えればこれは「研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる捏造」(文科省ガイドラインPDF)に該当すると思います。また、エラーバーがズレたのかどうかは別にしても、実験ノートに記録されているデータに対して正しい検定方法を適用した場合に有意差があること、さらに、このエラーバーの長さも再現されることを示す責任が論文著者にはあります。また、そのような調査を行ったかどうかを国民に報告する責任が、東京大学の調査委員会にはあります。

関連記事 ⇒ 医学系論文に関する報告がまだ済んでいない東大

 

参考

  1. 22報論文に関する調査報告書
  2. 東京大学病院糖尿病・代謝内科(科長 門脇 孝 教授)
  3. 東京大学医学部附属病院 循環器内科(小室 一成 教授)
  4. 東京大学分子細胞生物学研究所 染色体動態研究分野 渡邊 嘉典 研究室

 

論文不正疑惑のラボで起きていたもっと恐ろしい出来事

研究をやってきた人間としては、トップジャーナルの論文の図の棒グラフやエラーバーが全部デタラメという様を見せつけられるのは、一般の人が人殺しの現場を見せられるくらいのおぞましさじゃないかと思います。ところが、上で紹介した臨床系のラボが関わった東大病院の手術でトンデモないことが起きていたという報道がありました。手術で患者さんが亡くなったのですが、その経過を読んだら、基礎研究の論文におけるデータ捏造のおぞましさが吹っ飛ぶくらいの衝撃を受けました。

  1. シリーズ「検証東大病院 封印した死」(TANSA (旧称:ワセダクロニクル))

 

更新:20180221 誤字訂正 20170814 記事タイトルを短く「東大医・分生研論文疑惑を画像ソフトで確認」と変更していたのですが、旧タイトル「不正疑惑渦中の東大医学部論文および東大分生研論文の告発内容を画像編集フリーソフトで確認する方法」に戻しました。ヤフー解説記事に旧タイトルでリンクしていただいたため。 20170807 m3.comの資料を転載 20170702 簡潔な英語の注釈を付記 20170621 解析例を2つ追加

同じカテゴリーの記事一覧

Ordinary_researchersの告発2通め11論文

東大の論文不正を告発する文書が2016年8月に2回に分けて東大などの関係各所へ送付されました。1つめの告発文書の論文は以前紹介しましたので(記事)、2016年8月29日の2つめの告発文書に記載された論文を紹介します。

小室一成氏の研究室より出された論文

Nature Communications 7, Article number: 11635 (2016) doi:10.1038/ncomms11635 Published online:18 May 2016. HIF-1α-PDK1 axis-induced active glycolysis plays an essential role in macrophage migratory capacity. Hiroaki Semba, Norihiko Takeda, Takayuki Isagawa, Yuki Sugiura, Kurara Honda, Masaki Wake, Hidenobu Miyazawa, Yoshifumi Yamaguchi, Masayuki Miura, Dana M. R. Jenkins, Hyunsung Choi, Jung-whan Kim, Masataka Asagiri, Andrew S. Cowburn, Hajime Abe, Katsura Soma, Katsuhiro Koyama, Manami Katoh, Keimon Sayama, Nobuhito Goda, Randall S. Johnson, Ichiro Manabe, Ryozo Nagai & Issei Komuro 問題点:エラーバーの長さが2種類のみの図

International Heart Journal Vol. 57 (2016) No. 2 p. 198-203. http://doi.org/10.1536/ihj.15-332. Shorter Heart Failure Duration Is a Predictor of Left Ventricular Reverse Remodeling During Adaptive Servo-Ventilator Treatment in Patients With Advanced Heart Failure.Teruhiko Imamura1), Koichiro Kinugawa1), Daisuke Nitta1), Issei Komuro2) 1) Department of Therapeutic Strategy for Heart Failure, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo 2) Department of Cardiovascular Medicine, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo. Released on J-STAGE 20160322   [Advance Publication] Released 20160311. 問題点:奇妙なまでに一致する平均値とSD PubPeer.comでの議論https://pubpeer.com/publications/26973264

Scientific Reports 5, Article number: 14453 (2015) doi:10.1038/srep14453. Published online: 25 September 2015. Angiotensin II receptor blockade promotes repair of skeletal muscle through down-regulation of aging-promoting C1q expression. Chizuru Yabumoto, Hiroshi Akazawa, Rie Yamamoto, Masamichi Yano, Yoko Kudo-Sakamoto, Tomokazu Sumida, Takehiro Kamo, Hiroki Yagi, Yu Shimizu, Akiko Saga-Kamo, Atsuhiko T. Naito, Toru Oka, Jong-Kook Lee, Jun-ichi Suzuki, Yasushi Sakata, Etsuko Uejima & Issei Komuro 問題点:Fig.7 完全に一致するエラーバーの長さ PubPeer.comでの議論https://pubpeer.com/publications/26571361

Scientific Reports 6, Article number: 25009 (2016) doi:10.1038/srep25009. Published online:05 May 2016. Activation of endothelial β-catenin signaling induces heart failure. Akito Nakagawa, Atsuhiko T. Naito, Tomokazu Sumida, Seitaro Nomura, Masato Shibamoto, Tomoaki Higo, Katsuki Okada, Taku Sakai, Akihito Hashimoto, Yuki Kuramoto, Toru Oka, Jong-Kook Lee, Mutsuo Harada, Kazutaka Ueda, Ichiro Shiojima, Florian P. Limbourg, Ralf H. Adams, Tetsuo Noda, Yasushi Sakata, Hiroshi Akazawa & Issei Komuro 問題点:繰り返される数字;均一化された背景

 

渡邊嘉典氏の研究室より出された論文

Cell  123(5):803–817; 2 December 2005.DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.cell.2005.09.013 The Kinetochore Protein Moa1 Enables Cohesion-Mediated Monopolar Attachment at Meiosis I. Shihori Yokobayashi ,Yoshinori Watanabe 問題点:異なる実験なのに非常に良く似た画像;不自然に揃うネガティブデータと縦軸が違うのに揃う高さ PubPeer.comでの著者らの回答:https://pubpeer.com/publications/16325576

Nature 455, 251-255 (11 September 2008) | doi:10.1038/nature07217; Received 8 April 2008; Accepted 27 June 2008; Published online 17 August 2008. Heterochromatin links to centromeric protection by recruiting shugoshin. Yuya Yamagishi, Takeshi Sakuno, Mari Shimura & Yoshinori Watanabe 問題点:異なるSDを持つ同一データ;背景が均一なウェスタンブロット画像;背景が均一化された蛍光顕微鏡画像;グラフのデータは実在するのか?;切り貼りされ、縁の奇妙な酵母培養ディッシュ

Science 08 Oct 2010:Vol. 330, Issue 6001, pp. 239-243 DOI: 10.1126/science.1194498. Two Histone Marks Establish the Inner Centromere and Chromosome Bi-Orientation. Yuya Yamagishi, Takashi Honda, Yuji Tanno, Yoshinori Watanabe 問題点:数学的にあり得ないSD

Nature Cell Biology 12, 500 – 506 (2010)  Published online: 11 April 2010 | doi:10.1038/ncb2052 Shugoshin–PP2A counteracts casein-kinase-1-dependent cleavage of Rec8 by separase. Tadashi Ishiguro, Koichi Tanaka, Takeshi Sakuno & Yoshinori Watanabe 問題点:部分的に諧調を変更した培養ディッシュ;粗雑なグラフ PubPeer.comでの著者らの回答https://pubpeer.com/publications/20383139

Nature 2011 Jun 1;474(7352):477-83. doi: 10.1038/nature10179. Condensin association with histone H2A shapes mitotic chromosomes. Kenji Tada,Hiroaki Susumu,Takeshi Sakuno & Yoshinori Watanabe 問題点:エラーバーが調節された可能性;ノイズが消失した背景;その他グラフについて

EMBO Reports 2011 Oct 28;12(11):1189-95. doi: 10.1038/embor.2011.188. Acetylation regulates monopolar attachment at multiple levels during meiosis I in fission yeast. Ayano Kagami, Takeshi Sakuno, Yuya Yamagishi, Tadashi Ishiguro, Tatsuya Tsukahara, Katsuhiko Shirahige, Koichi Tanaka, Yoshinori Watanabe 問題点:背景が均一なウェスタン画像

Science 2015 Sep 11;349(6253):1237-40. doi: 10.1126/science.aaa2655. The inner centromere-shugoshin network prevents chromosomal instability. Yuji Tanno,Hiroaki Susumu,Miyuki Kawamura,Haruhiko Sugimura,Takashi Honda, Yoshinori Watanabe 問題点:SDも含めて高さの同じデータ;データの10%に揃うSEM;背景が白紙の画像

 

Ordinary_researchersは、告発文書を東京大学、文部科学省、厚生労働省、JST, JSPS, AMED, 内閣府、掲載誌の編集部、マスコミ各社に送付したそうですが、私の知る限り、一般には公開しませんでした。誰がアップロードしたものかはわかりませんが、2つめの告発文書PDFへのリンクが2chで紹介されているのをたまたま見かけたので、ここに転載します。

注意:この文書で指摘された問題の一部に関しては、PubPeer.com上で議論されており、著者らが回答しているものもあります。そちらも合わせてご覧ください。

東京大学医学部および東京大学分子生物学研究所(以下,分生研)の研究者らが発表した論文について,8月15日に投函した告発に続き,ここに新たに追加の告発を行う.… 2016年8月29日 Ordinary_researchers (http://toudai20168.up.seesaa.net/image/E69DB1E5A4A7E5918AE799BAE7ACACE4BA8CE5BCBE20-20E382B3E38394E383BC.pdf

 

 

ベクター画像とは?

ベクトルデータの図は、Adobe Illustratorなどの作図ソフトで開くと、誌面上では1枚に見えるグラフが、X軸、数字、棒グラフのデータの棒の枠、塗りつぶしにするための黒い長方形、エラーバーを構成する横棒と縦棒など、いくつもの構成要素(オブジェクト)から成り立っていることがわかる。そして、個々のオブジェクトをずらしたり、消したりできるのだ。  (論文不正の告発を受けた東京大学(2) その解析方法の衝撃YAHOO!JAPANニュース)

エラーバーの長さをチェックする方法

資料

  1. 告発文1 5cvq.pdf (12ページPDF はじめに~ 2016年8月14日)
  2. 告発文2 5cvr.pdf (5ページPDF 研究資金リスト 2016年8月14日)
  3. 告発文3.pdf (52ページPDF  不自然なデータの指摘 2016年8月14日)
  4. 追加の告発文 http://toudai20168.up.seesaa.net/image/E69DB1E5A4A7E5918AE799BAE7ACACE4BA8CE5BCBE20-20E382B3E38394E383BC.pdf (2016年8月29日)

 

参考

  1. 東京大学医学部付属病院 循環器内科(小室一成教授)
  2. KAKEN科学研究費助成事業データベース
  3. 渡邊研究室 東京大学分子細胞生物学研究所 染色体動態研究分野
  4. KAKEN科学研究費助成事業データベース
  5. 捏造、不正論文 総合スレネオ 34 :0159名無しゲノムのクローンさん2017/02/18(土) 16:47:18.74
  6. 論文不正の告発を受けた東京大学(1) どこまで調査をするのか? (YAHOO!JAPANニュース詫摩雅子  | 科学ライター&科学編集者 2016/10/15(土) 16:00):”9月1日までに東京大学は2通目の告発書を受け取る。今度は2人の教授、11本の論文が挙げられていた。・医学部のE教授研究室から出ている2015年の3本と2016年の1本の合計4本・分子細胞生物学研究所(分生研)のF教授研究室から2005年から2015年に出された7本 ネットにはその前から流れていたようだが、大手メディアがこの件を報じたのは9月1日からだ。 “
  7. 論文不正の告発を受けた東京大学(2) その解析方法の衝撃 (YAHOO!JAPANニュース 詫摩雅子  | 科学ライター&科学編集者 2016/10/15(土) 22:00)
  8.  

 

同じカテゴリーの記事一覧

東大医学系4研究室11報に疑義 予備調査へ

新しい関連記事

  1. 東京大学が医学部研究不正疑惑論文に関する調査報告書を国民に開示しないのは違法
  2. 不正疑惑渦中の東大医学部論文 および東大分生研論文の告発内容を 画像編集フリーソフトで確認する方法
  3. 2016年8月29日にOrdinary_researchersが告発した論文のリスト(東京大学2研究室11報)
  4. 匿名の告発を受けた医学部教授ら6人の不正疑惑論文22報に関して東京大学が本調査を実施へ
  5. 東大分生研教授のNatureなど7報、東大医学部教授のNature communicationsなど4報の不正疑惑を指摘する告発文書を東大が受理、予備調査へ
  6. Ordinary_researchersの告発2通め11論文

 

* * *

 

東京大学の医学系の研究室がこれまでに発表してきた数多くの論文のデータにきわめて不自然な点があることを告発する匿名の文書(2016年8月14日付)が、文科省や東京大学に対して届けられました。東京大学は8月22日付けでこの告発を受理し直ちに予備調査に入りました。予備調査は原則として30日以内に結論を出すことが規定されています。

一例を挙げると、データのばらつきが少なく見えるように、エラーバーを棒グラフの中に押し込んで隠してしまったようなデータ改竄の可能性が指摘されています。

Nature2013Nov28Vol503(7477)493-9Fig5d

Nature 2013 Nov 28;503(7477):493-9 Fig.5d (nature.com 原図) (告発文書 http://xfs.jp/ に掲載された図を、スペースを省くために一部改変)

 

告発対象となっている11論文は、以下の通り。

門脇 孝 教授の研究室から発表された論文

(東京大学医学部付属病院 糖尿病・代謝内科 門脇研究室ウェブサイト)

  1. Yamauchi T, Kamon J, Ito Y, Tsuchida A, Yokomizo T, Kita S, Sugiyama T, Miyagishi M, Hara K, Tsunoda M, Murakami K, Ohteki T, Uchida S, Takekawa S, Waki H, Tsuno NH, Shibata Y, Terauchi Y, Froguel P, Tobe K, Koyasu S, Taira K, Kitamura T, Shimizu T, Nagai R, Kadowaki T. Cloning of adiponectin receptors that mediate antidiabetic metabolic effects. Nature 2003 Jun 12;423(6941):762-9.
  2. Yamauchi T, Nio Y, Maki T, Kobayashi M, Takazawa T, Iwabu M, Okada-Iwabu M, Kawamoto S, Kubota N, Kubota T, Ito Y, Kamon J, Tsuchida A, Kumagai K, Kozono H, Hada Y, Ogata H, Tokuyama K, Tsunoda M, Ide T, Murakami K, Awazawa M, Takamoto I, Froguel P, Hara K, Tobe K, Nagai R, Ueki K, Kadowaki T. Targeted disruption of AdipoR1 and AdipoR2 causes abrogation of adiponectin binding and metabolic actions. Nat Med. 2007 Mar;13(3):332-9. Epub 2007 Feb 1.
  3. Okamoto M, Ohara-Imaizumi M, Kubota N, Hashimoto S, Eto K, Kanno T, Kubota T, Wakui M, Nagai R, Noda M, Nagamatsu S, Kadowaki T. Adiponectin induces insulin secretion in vitro and in vivo at a low glucose concentration. Diabetologia 2008 May;51(5):827-35. doi: 10.1007/s00125-008-0944-9. Epub 2008 Mar 28.
  4. Iwabu M, Yamauchi T, Okada-Iwabu M, Sato K, Nakagawa T, Funata M, Yamaguchi M, Namiki S, Nakayama R, Tabata M, Ogata H, Kubota N, Takamoto I, Hayashi YK, Yamauchi N, Waki H, Fukayama M, Nishino I, Tokuyama K, Ueki K, Oike Y, Ishii S, Hirose K, Shimizu T, Touhara K, Kadowaki T. Adiponectin and AdipoR1 regulate PGC-1alpha and mitochondria by Ca(2+) and AMPK/SIRT1. Nature 2010 Apr 29;464(7293):1313-9. doi: 10.1038/nature08991. Epub 2010 Mar 31.
  5. Awazawa M, Ueki K, Inabe K, Yamauchi T, Kubota N, Kaneko K, Kobayashi M, Iwane A, Sasako T, Okazaki Y, Ohsugi M, Takamoto I, Yamashita S, Asahara H, Akira S, Kasuga M, Kadowaki T. Adiponectin enhances insulin sensitivity by increasing hepatic IRS-2 expression via a macrophage-derived IL-6-dependent pathway. Cell Metab. 2011 Apr 6;13(4):401-12. doi: 10.1016/j.cmet.2011.02.010.
  6. Shojima N, Hara K, Fujita H, Horikoshi M, Takahashi N, Takamoto I, Ohsugi M, Aburatani H, Noda M, Kubota N, Yamauchi T, Ueki K, Kadowaki T. Depletion of homeodomain-interacting protein kinase 3 impairs insulin secretion and glucose tolerance in mice. Diabetologia 2012 Dec;55(12):3318-30. doi: 10.1007/s00125-012-2711-1. Epub 2012 Sep 16.
  7. Okada-Iwabu M, Yamauchi T, Iwabu M, Honma T, Hamagami K, Matsuda K, Yamaguchi M, Tanabe H, Kimura-Someya T, Shirouzu M, Ogata H, Tokuyama K, Ueki K, Nagano T, Tanaka A, Yokoyama S, Kadowaki T. A small-molecule AdipoR agonist for type 2 diabetes and short life in obesity. Nature 2013 Nov 28;503(7477):493-9. doi: 10.1038/nature12656. Epub 2013 Oct 30. (著者らによる日本語での解説 ライフサイエンス 新着論文レビュー)

 

藤田 敏郎 教授の研究室から発表された論文

(東京大学・先端科学技術研究センター 臨床エピジェネティクス講座 藤田研究室ウェブサイト)

  1. ShengYu Mu,    Tatsuo Shimosawa,    Sayoko Ogura,    Hong Wang,    Yuzaburo Uetake,    Fumiko Kawakami-Mori,    Takeshi Marumo,    Yutaka Yatomi,    David S Geller,    Hirotoshi Tanaka    & Toshiro Fujita. Epigenetic modulation of the renal β-adrenergic–WNK4 pathway in salt-sensitive hypertension. Nature Medicine 17, 573–580 (2011) doi:10.1038/nm.2337

 

辻 省次 教授の研究室から発表された論文

東京大学医学部附属病院 神経内科 辻研究室ウェブサイト

  1. Mitsui J, Matsukawa T, Ishiura H, Fukuda Y, Ichikawa Y, Date H, Ahsan B, Nakahara Y, Momose Y, Takahashi Y, Iwata A, Goto J, Yamamoto Y, Komata M, Shirahige K, Hara K, Kakita A, Yamada M, Takahashi H, Onodera O, Nishizawa M, Takashima H, Kuwano R, Watanabe H, Ito M, Sobue G, Soma H, Yabe I, Sasaki H, Aoki M, Ishikawa K, Mizusawa H, Kanai K, Hattori T, Kuwabara S, Arai K, Koyano S, Kuroiwa Y, Hasegawa K, Yuasa T, Yasui K, Nakashima K, Ito H, Izumi Y, Kaji R, Kato T, Kusunoki S, Osaki Y, Horiuchi M, Kondo T, Murayama S, Hattori N, Yamamoto M, Murata M, Satake W, Toda T, Dürr A, Brice A, Filla A, Klockgether T, Wüllner U, Nicholson G, Gilman S, Shults CW, Tanner CM, Kukull WA, Lee VM, Masliah E, Low PA, Sandroni P, Trojanowski JQ, Ozelius L, Foroud T, Tsuji S. Mutations in COQ2 in familial and sporadic multiple-system atrophy. N Engl J Med. 2013 Jul 18;369(3):233-44. doi: 10.1056/NEJMoa1212115. Epub 2013 Jun 12.

 

高柳 広 教授の研究室から発表された論文

(東京大学大学院医学系研究科 免疫学 高柳研究室ウェブサイト)

  1. Komatsu N, Okamoto K, Sawa S, Nakashima T, Oh-hora M, Kodama T, Tanaka S, Bluestone JA, Takayanagi H. Pathogenic conversion of Foxp3+ T cells into TH17 cells in autoimmune arthritis. Nat Med. 2014 Jan;20(1):62-8. doi: 10.1038/nm.3432. Epub 2013 Dec 22. (著者らによる日本語での解説 ライフサイエンス 新着論文レビュー)
  2. Takaba H, Morishita Y, Tomofuji Y, Danks L, Nitta T, Komatsu N, Kodama T, Takayanagi H. Fezf2 Orchestrates a Thymic Program of Self-Antigen Expression for Immune Tolerance. Cell 2015 Nov 5;163(4):975-87. doi: 10.1016/j.cell.2015.10.013.

 

 

”我々自身も研究者であり,他者の論文の不正を検証するような行為は不毛であると当初は考えていた.しかし,常習性,頻度,公正性,論文の与える影響の深刻さ等を鑑みれば,もはや看過すべきではないという結論に至った.ここで告発するのは,発見したもののごく一部に過ぎないことも申し添えておく.”(はじめに  Ordinary_researchersの告発文書 http://ow.ly/d/5cvq より)

”もちろん、我々が行ったこれらの確認作業は,論文著者の関知できないところで図形の変形が起きる可能性を完全に否定するものではない.いずれにせよ,生データと照らし合わせれば,すべての疑問は氷解するはずである.
 東京大学には直ちに正式な調査をお願いしたい.あらぬ疑いをかけられている研究室の潔白を証明する良い機会になるか,それとも膿を出すことになるか,どちらにしても東京大学にとってのみならず,日本の生命科学研究にとって良い方向へと進むきっかけになるはずである.
 きわめて遺憾なことに,東京大学がかかる告発を有耶無耶にするよう扱ったり,隠蔽しようとしたりする,あるいは告発者に何らかの圧力をかけようとするなどといった話も耳にする.我々が匿名にしたのも,最後の話があるためである.この告発をもとにした調査を粛々と実施するという行動を以って,こうした風聞がただの下らない噂であることを示してもらいたい.”(さいごに Ordinary_researchersの告発文書 http://ow.ly/d/5cvq より)

告発文書(ダウンロードサイト)

  1. ”はじめに 近年,論文捏造事件が大きな社会問題となっている.言うまでもなく,科学論文においてはデータが真正であることが絶対条件となる.… ” (12ページ PDF) http://ow.ly/d/5cvq (上昌広氏がツイッターで共有しているダウンロードサイトへのリンク)
  2. ”研究資金リスト”(5ページ PDF) http://ow.ly/d/5cvr
  3. データの不自然さの指摘 (52ページ PDF) http://xfs.jp/ (上昌広氏がツイッターで共有しているダウンロードサイトへのリンク)(*既に削除されたようです)

実験が本当に行われたのかどうかさえ疑わしいと指摘されていますが、文科省のガイドラインによれば、

(3)特定不正行為か否かの認定
① 調査委員会は、上記(2)により被告発者が行う説明を受けるとともに、調査によって得られた、物的・科学的証拠、証言、被告発者の自認等の諸証拠を総合的に判断して、特定不正行為か否かの認定を行う。証拠の証明力は、調査委員会の判断に委ねられるが、被告発者の研究体制、データチェックのなされ方など様々な点から客観的不正行為事実及び故意性等を判断することが重要である。なお、被告発者の自認を唯一の証拠として特定不正行為と認定することはできない。
② 特定不正行為に関する証拠が提出された場合には、被告発者の説明及びその他の証拠によって、特定不正行為であるとの疑いが覆されないときは、特定不正行為と認定される。また、被告発者が生データや実験・観察ノート、実験試料・試薬等の不存在など、本来存在するべき基本的な要素の不足により、特定不正行為であるとの疑いを覆すに足る証拠を示せないときも同様とする。
(研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン 平 成 2 6 年 8 月 2 6 日 文部科学大臣決定 PDF)(*赤色の文字と下線での語句の強調は、当ブログによる)

となっています。論文の図の根拠となる実験の記述が実験ノートに存在しないなど、実験が行なわれた形跡がない場合にも研究不正と認定されるような判断基準が定められています。

資料

  1. 告発文1 5cvq.pdf (12ページPDF はじめに~ 2016年8月14日)
  2. 告発文2 5cvr.pdf (5ページPDF 研究資金リスト 2016年8月14日)
  3. 告発文3.pdf (52ページPDF  不自然なデータの指摘 2016年8月14日)
  4. 追加の告発文 http://toudai20168.up.seesaa.net/image/E69DB1E5A4A7E5918AE799BAE7ACACE4BA8CE5BCBE20-20E382B3E38394E383BC.pdf (2016年8月29日)

 

参考

  1.  東大、医学系4教授、11の論文不正疑惑を予備調査 匿名の告発文が発端、「もはや看過すべきではない」 (m3.com レポート 2016年9月1日)(記事閲覧は要登録) :”告発文は匿名で、本文は12ページ弱にわたる。加えて、11の各論文のグラフなどの問題点を指摘した資料(52ページ)、各論文の研究資金リストを付けている。”
  2. 東大の教授4人を名指し、論文11本に不正告発 (TBS NEWS 01日10:55):”東京大学の医学系の研究室が発表した論文11本に改ざんなどの不正を指摘する告発があり、大 学が事実関係の確認を始めました。先月中旬、東京大学に届いた告発文には、教授4人が名指しされていたということです。”
  3. 東大の医学論文に不正指摘=4研究室の11本、予備調査開始(時事ドットコムニュース 2016/09/01-12:39):”東大と文部科学省などによると、指摘があったのは、東大の医学系研究室が報告した生活習慣 病に関わる論文11本で、4研究室の教授らが責任著者となり、2003年から15年までにネイチャーなど海外の科学誌に掲載された。告発文は、論拠となる 図版に不自然な点があると指摘している。”
  4. 東大 医学論文に不正疑惑 4研究室対象、本部が予備調査 (毎日新聞2016年9月1日 07時40分(最終更新 9月1日 10時33分)):”東京大の医学系4研究室が報告した論文計11本に捏造(ねつぞう)や改ざんといった研究不正の疑いがあるとする匿名の告発があり、大学本部が予備調査を8月22日に始めていたことが分かった。”
  5. 医学論文11本に不正疑い 東大が予備調査(日本経済新聞 電子版 2016/8/31 20:00):”東京大に所属する4つの研究グループによる医学系の研究論文に不正の疑いが浮上し、東大が予備調査を始めたことが31日までにわかった。”
  6. 東大の論文11本に不正疑惑 匿名で告発、予備調査開始(朝日新聞DIGITAL 2016年9月1日17時33分):”東京大の医学系4研究室の論文11本に捏造(ねつぞう)や改ざんなどの不正の疑いがあるとする告発があり、大学が予備調査を始めたことがわかった。”
  7. 東大論文で不正疑惑 11本を予備調査(産経ニュース 2016.9.1 11:26更新):”東京大の4つの医学系研究グループが発表した計11本の研究論文に不正の疑いがあるとする匿名の告発があり、東大が告発内容を精査する予備調査を始めたことが1日、分かった。”
  8. 当ウェブサイト上での過去のアンケート結果
    pastpolls20160903
  9. 東大は、今回の11報の告発を本調査するなら、昨年に理由を言わずにシロにした12報も再調査すべきでしょう。完全に同根ですから。関連がないと考えるならもはや科学者ではありません。(匿名A 捏造問題にもっと怒りを 日本の科学を考えるガチ議論
  10. 内閣府 科学技術政策担当大臣等政務三役と総合科学技術・イノベーション会議有識者議員との会合 議事次第 平成26年8月7日 資料 調-1-2 高い研究倫理を東京大学の精神風土に(25.10.8) 
  11. 東京大学が類似画像論文に関する予備調査結果を発表: ”不正行為が存在する疑いはない”論文12報のリスト
  12. 研究に関する不正の告発受付窓口 文部科学省
  13. 東大医学部の研究不正 (医療ガバナンス研究所理事長のブログ 2016年9月2日)

 

更新 20170508 Cell Metab 2011の著者の説明を追加

 

同じカテゴリーの記事一覧