ハゲタカジャーナル論文掲載 不名誉な大学ランキング【悲報】東大、阪大などの研究者も投稿していたことが発覚  (≧▽≦ )

      2018/10/31




査読システムが機能していない(事実上存在しない)ので、お金を払えば誰でも論文が出せるジャーナルがあります。英語論文を出したい著者の心理に付け込んでお金を巻き上げるイメージなので、研究者を食い物にするハゲタカジャーナル(捕食ジャーナル)と呼ばれています。英語はpredatory journalsなので、「捕食ジャーナル」のほうが英語に忠実な訳語ですが、言葉のインパクトの強さのせいか「ハゲタカジャーナル」という呼称が優勢です。

どの学術誌がハゲタカジャーナルとみなされているかについては、ジェフリー・ビール(Jefferey Beall)さんがいかがわしい雑誌社・雑誌リストをつくって公表したBeall’s listが有名です。しかしながら、Beallさんは訴訟問題を避けるために公開するのをやめたようで、今では誰かがそれを転載したものがネット上に存在するだけです。グーグルで検索すれば極めて容易にリストのコピーにたどりつけるので、ここでも面倒をさけるためにリンクは張らないことにします。

 

Beall’s Listとは

ビオール氏は、「ハゲタカ(悪徳)オープンアクセス出版」に対抗する活動で有名です。これは同氏が2010年に考え出した造語です。同年、彼は最初の悪徳学術誌リストを出版しました。そこに含まれていたのは20誌未満でしたが、その後このリストは増え続け、今では包括的な「ビオールのハゲタカ出版社リスト」(Beall’s List of Predatory Publishers)として知られています。(「『ハゲタカ出版社』は、あらゆる手を使ってまともな出版社のふりをします」Editage Insights 2015年7月24日 )

 

よい子は関わってはいけないハゲタカジャーナル

こういう悪徳な雑誌社は、「論文をうちに出しませんか?」というメールをしょっちゅう送りつけてきます。完全に分野違いであっても「エディトリアルボードに加わりませんか」というお誘いもスパム的に送りつけてきます。シツコイなあと思ってBeall’s listをチェックすると、大抵の場合そこに名前があるので、無視したほうが無難です。関わってしまうと、研究者としての自分の信用を失うことになります。

事実上査読がないわけですから、はげたかジャーナルに論文を出して「査読つき論文業績」と称するのは、ある意味研究不正と大差がなく、研究者としては終わっていると思います。

 

ハゲタカジャーナル論文掲載大学ランキング

毎日新聞の報道によれば、Predatory Journalsに最も多く投稿している大学の上位は、以下の通りです。

  1. 九州大学 147報 
  2. 東京大学 132報
  3. 大阪大学 107報
  4. 新潟大学 102報 
  5. 名古屋大学 99報
  6. 日本大学 87報
  7. 東北大学 82報
  8. 北海道大学 74報
  9. 広島大学 73報
  10. 京都大学 66報
  11. 神戸大学 63報
  12. 筑波大学 60報
  13. 慶應義塾大学 56報
  14. 千葉大学 55報
  15. 金沢大学 54報
  16. 熊本大学 48報
  17. 順天堂大学 46報
  18. 東京工業大学 44報
  19. 岡山大学 43報
  20. 岐阜大学 40報
  21. 島根大学 40報
  22. 同志社大学 40報
  23. 近畿大学 40報

*2003~2018年5月末に「粗悪」学術誌327誌に掲載された日本が関与する5076報の解析

(参考:粗悪学術誌 ハゲタカジャーナル」に名大と新潟大が対策 毎日新聞 2018年10月10日 07時00分 最終更新 10月10日 10時25分)

毎日新聞が「<粗悪学術誌>論文投稿、日本5000本超 業績水増しか」と報じました。「ハゲタカジャーナル」と呼ばれる質が十分に保証されていないインターネット専用学術雑誌とみられる中国の出版社に日本関係の論文が5076本も投稿されていたそうです。このうち筆頭著者が大学・研究機関に所属する論文は3972本。(「学術論文の闇」ハゲタカジャーナル 科学の健全な発展を妨げる腐敗の温床を一掃せよ 2018/9/4(火) 6:28 YAHOO!JAPANニュース 木村正人 | 在英国際ジャーナリスト )

インターネット専用の学術誌の中で、質が十分に保証されていない粗悪な「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、こうした学術誌を多数発行する海外の出版社を調べたところ、日本から5000本超の論文が投稿されていた。九州大と東京大、大阪大、新潟大からは各100本以上を確認した(粗悪学術誌 日本から5000本 東大や阪大 論文投稿、業績水増しか 会員限定有料記事 毎日新聞 2018年9月3日 東京朝刊)

 

ハゲタカジャーナルの実態

東大や阪大の研究者もはげたかジャーナルのお客さんになっているというのはちょっと驚きです。はげたかジャーナルでも、読んでもらえるのなら良いのではないかというツイートを見かけましたが、はげたかジャーナルはそんなものではありません。

International Journal of Advanced Computer Technology(IJACT)というコンピュータ科学分野のオープンアクセス(OA)雑誌が、“Get me off Your Fucking Mailing List”と題し、本文にも同じ内容が繰り返されているだけの論文を受理したことが、米コロラド大学デンバー校図書館のJeffrey Beall氏のブログで報じられています。(「そのメーリングリストから私を外せ」と繰り返し書かれているだけの論文が受理される Current Awareness Portal 2014年11月25日

もちろん、ハゲタカジャーナルのリストに掲載されている雑誌が全てこのレベルではなく、査読が全く行われていないかどうかを第三者が検証するのは困難なため、まともな雑誌との境界は曖昧です。実際、出版社側が抗議した結果、リストから外された出版社もあるようです。しかし、研究費に恵まれており、研究大学を名乗る東大、阪大、九大などの研究者がこのような雑誌に論文を投稿するのは、恥でしかないでしょう。

 

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ハゲタカジャーナルがなぜ問題か

ヤフー記事のコメントを見ると、論文数を稼ぐためには仕方がないとか、中にはいい論文もあるはずとか、実情にそぐわないコメントが多数並んでいます。研究者は自分が苦労して書き上げた論文を学術誌に投稿するとき、当然その学術誌にはどんな論文が掲載されているかを気にします。いい論文が多数掲載されている雑誌がいい雑誌とみなされるからです。質の悪い論文しか掲載されていない雑誌にわざわざ自分の論文を投稿したいと思う研究者はいません。

実質的に査読がないわけですから、どんないい加減な論文でも通ります。つまり、まともに研究していない研究者が評価される一方で、苦労して時間をかけてまともなジャーナルに論文を出す研究者のほうが、単純な論文数による業績評価では負けてしまい淘汰されてしまうという事態になりかねません。これでは科学研究が成り立ちません。だからハゲタカジャーナルを許してはいけないのです。

 

ハゲタカジャーナル投稿防止に関する大学の取り組み

九州大学

安易な論文投稿先ジャーナルの選択は、ご自身の研究成果に疑念を生じさせ、引いては九大の研究力に悪影響を及ぼす恐れがありますことから、研究成果の公開方法について慎重に検討する必要があります。 対処方法として、エルゼビア社のScopus論文データベース(研究者プロファイリングツールPure、研究力分析ツールScival)を利用されることをお勧めします。これらは一定の評価基準の下、審査(査読)を受けた論文のみ登録されており、世界大学ランキング等に様々な形で活用されていることから、一定の保証を得ていると思われます。投稿先のジャーナル選択のみならず、共同研究の相手方の選考などにもご活用下さい。 今後、このような不名誉な形で本学が報道されることがないよう、一致協力して、努めて参りたいと思います。ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。(【研究論文の投稿に当たって】2018/09/05 九州大学

名古屋大学

査読なしで論文を掲載しているなら学術誌とは言えない。大学の信頼や研究者モラルに関わる問題で、対策をしっかり取る(名古屋大学高橋雅英副学長)(<粗悪学術誌>「ハゲタカジャーナル」に名大と新潟大が対策 2018/10/10(水) 7:00配信 鳥井真平 毎日新聞

新潟大学

新潟大は9月、ハゲタカジャーナルへの投稿を控えるよう、年内にも学術誌への論文投稿ルールを新たに設けることを決めた。全研究者に注意喚起し、研究倫理教育セミナーでハゲタカジャーナルの存在を周知する(粗悪学術誌 ハゲタカジャーナル」に名大と新潟大が対策 毎日新聞 2018年10月10日 07時00分)

熊本大学

熊本大学がハゲタカジャーナルへの投稿に関して注意を促すウェブページを作成していましたが、現在では削除してしまったようです。無難なところだけキャッシュから紹介します。

ハゲタカジャーナルへの投稿は、不当な掲載料の請求を受ける、取り下げを確認するまで二重投稿のリスクを抱えるなど、研究活動への大きな支障となります。また、ハゲタカジャーナルへの掲載はかえって自身の業績評価を下げ、その影響は本学全体の評価に及ぶ可能性もあります。 つきましては、下記をご参照いただき、ハゲタカジャーナルへの投稿リスクを十分ご理解の上、論文の投稿先を慎重にご検討下さいますようお願いいたします。

Web出版の利便性を悪用して、掲載料によって不当に利益を得ようとする出版社が一部に存在します。そのような出版社では、編集顧問・査読委員会による査読が行われておらず、サイトの更新も遅く頻度も適切とは言えません。また、これらのジャーナルに論文が掲載された場合、逆に業績としてネガティブな評価を受ける危険もあります。

 

研究者がハゲタカジャーナルに投稿する理由

熊本大学のウェブページ(現在は削除 キャッシュ)に、ハゲタカジャーナルに投稿する研究者の心理を分析した論文「あなたがハゲタカジャーナルに研究成果を発表する5個の(よくない)理由」が紹介されていました。

Clark, A. M. and Thompson, D. R., “Five (bad) reasons to publish your research in predatory journals.” J Adv Nurs. 2017 Nov; 73(11):2499-2501

  1. I do not care about my external reputation 論文出すことのほうが大事でしょ
  2. I do not believe in myself or my work どうせ、たいした仕事じゃないし
  3. Publication numbers count most 論文って数が一番大事だから
  4. I cannot be bothered to read え、これって普通の雑誌だよね
  5. I have given up お手軽なんだもん、いいじゃん

*日本語意訳は当サイト

無責任な出版を厳しく戒めていますので、是非本文をお読みください(全文リンク)。

 

ハゲタカジャーナルの手口と見抜く方法をJeffrey Beallさんが解説

Jeffrey Beall on Open Access Publishing: How publishers dupe authors

  1. ハゲタカ出版社を見抜くためのチェックリスト(Andrea Hayward | 2018年2月7日 Editage Insights
  2. VIDEO: Authors beware: Avoid falling prey to predatory journals and bogus conferences (Interview with Dr. Anne Woods & Shawn Kennedy. Editage)

 

参考

  1. 粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」に名大と新潟大が対策 (毎日新聞 2018年10月10日 07時00分 最終更新 10月10日 10時25分) ヤフーコメント224個
  2. 「学術論文の闇」ハゲタカジャーナル 科学の健全な発展を妨げる腐敗の温床を一掃せよ (2018/9/4(火) 6:28 YAHOO!JAPANニュース 木村正人)
  3. 劣悪な学術誌「ハゲタカジャーナル」とは?  掲載料が目当て、 根拠乏しい「疑似科学」を拡散 国内の大学でも、こうした出版業者からの勧誘に載らないよう注意喚起が広まっている。(ハフポスト日本版編集部 2018年09月03日 12時57分 JST)信頼性が低い研究論文を掲載する「ハゲタカジャーナル」と呼ばれる学術サイトが、SNSで話題になっている。毎日新聞が9月3日、日本から5000本を超える論文が、ハゲタカジャーナルに投稿されている内容の記事を掲載したことがきっかけだ。
  4. ネット専用 粗悪学術誌、九大が対策 学内で投稿自粛指導(会員限定有料記事 毎日新聞2018年9月3日 06時30分 最終更新 9月3日 06時37分) 九州大は学内の研究者や学生を対象に、インターネット専用の学術誌の中で「ハゲタカジャーナル」と呼ばれる粗悪な学術誌に論文を投稿しないよう指導を始めた。
  5. 粗悪学術誌 日本から5000本 東大や阪大 論文投稿、業績水増しか(会員限定有料記事 毎日新聞 2018年9月3日 東京朝刊)
  6. 捕食ジャーナル – 倫理学分野にすら登場(エナゴ学術英語アカデミー Last updated Aug 30, 2018 粥川準二)
  7. 「捕食ジャーナル」で誰が論文を発表しているのか?(後編)(エナゴ学術英語アカデミー Last updated Aug 30, 2018 粥川準二)
  8. Jeffrey Beall: ‘Predatory publishers threaten scientific integrity, are embarrassment to India’Written (Shyamlal Yadav | Hyderabad | Updated: July 20, 2018 7:57:26 am TheIndianEXPRESS)
  9. Inside India’s fake research paper shops: pay, publish, profit (by Shyamlal Yadav. July 19, 2018 2:38:26 pm IndiaExpress.com)
  10. Cabell’s Blacklist: A New Way to Tackle Predatory Journals. Soumitra Das and Seshadri Sekhar Chatterjee. Indian J Psychol Med. 2018 Mar-Apr; 40(2): 197–198.
  11. Cabell’s New Predatory Journal Blacklist: A Review (By RICK ANDERSON JUL 25, 2017 The Scholarly Kitchen)
  12. 「ハゲタカ出版」のリストとブログの内容が削除される (2017年1月20日 Current Awareness Portal)
  13. No More ‘Beall’s List’ (Carl Straumsheim January 18, 2017 InsideHigherEd.com)
  14. <記事紹介> なぜ研究者は「ハゲタカジャーナル」で論文を出版してしまうのか(ワイリー・サイエンスカフェ 投稿日: 2016年8月24日 作成者: admin)
  15. ねつ造医学論文を出版する捕食出版社:クロエ・コスタ(Chloe Costa)、2015年5月15日(研究倫理(ネカト) 白楽ロックビルのバイオ政治学
  16. Predatory open-access publishing (Wikipedia)

  17. 「そのメーリングリストから私を外せ」と繰り返し書かれているだけの論文が受理される(Current Awareness
    Posted 2014年11月25日)
  18. Get me off Your Fucking Mailing List
  19. 単なる“金もうけ”の疑いのあるオープンアクセス出版社のリスト(2014年版)(Current Awareness Portal 2014年1月7日)
  20. 単なる“金もうけ”の疑いのあるオープンアクセス出版社のリスト(2013年版)(Current Awareness Portal 2012年12月10日)

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