NHK土曜ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』第1話、第2話 研究不正告発のもみ消し #ここぼく

NHKの土曜ドラマ『今ここにある危機とぼくの好感度について』の第2話の中で研究不正の話が取り上げられたようです。

ネタばれ

岸谷教授は「整えて」という言葉で、日常的に論文データの改ざんを指示していた。けれども、不正を追及されて「今度は言葉の意味の方を変えてきた」。「整えて」は、データの改ざんではなく「机の上を掃除しろ」という意味であると研究室内に周知徹底したのだ。(『ここぼく』が告発する意味の捏造 松坂桃李演じる危機感のない主人公のリアル 2021/5/2(日) 6:05 リアルサウンド YAHOO!JAPAN

 

元カノで非正規研究者のみのり(鈴木杏)は、岸谷教授(辰巳琢郎)の論文不正を世間に告発。大学当局は本調査に乗り出すことを余儀なくされる。だが、理事の須田(國村隼)らから過小報告のプレッシャーを受けた調査委員・上田教授(国広富之)が‥ 

(【土曜ドラマ】今ここにある危機とぼくの好感度について(2) 5/1(土) 午後9:00-午後9:49 nhk.jp

 

関連notes

私自身は責任者ではないものの、同ドラマに研究不正調査考証という形で協力させていただきました。ストーリーに責任を負う立場ではないのですが、そのような形で協力させていただいた立場としてはコメントしないわけにはいかないだろうということで、この件について、以下、コメントします。

「今ここにある危機とぼくの好感度について」第2話について Masaki Nakamura 2021/05/04 00:02 note.com

上のノートでは研究不正調査に関して一般論が説明されていました。かなり抑制の効いたコメントで、正直、自分はもどかしいものを感じます。

 

NHKドラマの不正隠蔽の描き方は誇張なのかI

上のノートでは、”ドラマではかなり誇張されて描かれているとはいえ、本ドラマで描かれているような形での研究不正調査への介入が” とドラマだからオーバーに描いているかのようにも説明しています。また研究不正隠蔽の描き方に関して憤っている大学教授もおられるようです(下のツイート)。しかし、私はOrdinary_Researchersの告発に対する東大の行動や、岡山大の事件などを見れば、むしろドラマで描かれた内容よりも今日本で現実に起きていることのほうがもっと恐ろしいと思います。ドラマでは告発したポスドク一人がキャリアを潰されただけかもしれませんが、岡山大では告発した教授二人が解雇の憂き目にあっているのです(ポスドクを軽んじるつもりはありませんが、ポスドクよりはるかに立場が強いはずの教授ですら学長に解雇されているという意味です)。要職についておられる方々はそうそう本音を表明できないとは思いますが、それにしても、正直、この温度差は一体なんなんだろうと思ってしまいます。

匿名掲示板には、匿名A氏による下のような書き込みもありました。真偽のほどは自分にはわかりませんが、Ordinary_Researchersの告発に関する東大のあの支離滅裂でデタラメな対応を目の当たりにすると、この文章が非常にリアリティを帯びて感じられます。

773匿名A ◆Zm8FyprZhE 2019/06/02(日) 03:11:58.86ID:lJqnTEYta
卒論生の時から捏造データの再現性の追試を担当させられた私と同僚は、みんなからとことん冷笑された。
辛いこと、爆発させたいことがたくさんあった。
そして、同僚は自殺した。教授室に殴り込みに来た同僚のお母さんは、未だに死の真相をしらない。
私と同僚は、愚直に誠実にやって、あれだけ馬鹿にされ、罵倒された。
もう同僚は死んだ。この世には帰ってこない。
だったら、もうこうなったら、私は真実にこだわることでとことん罵倒されたいのだよ。
東大医学部の捏造家が生き延びていることを甘受しているお前ら全員に嫌われたい。馬鹿にされたい。
(捏造、不正論文、総合スレネオ50 https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/life/1555990307/770-n)

NHKドラマの不正隠蔽の描き方は誇張なのかII

上はドラマを見ずに書きましたが、第1話を見て少し細かいストーリーがわかったので書き直します。第1話では、研究不正がなかったことにするために、告発した女性が昔好意を寄せていた男を近づけて抑え込もうとしたり、この女性ポスドクが任期切れで行先がないので助教の口を与えるかわりに黙らせようとしたりしていたり画策していました。そんな目論見は見透かされていたわけですが、このようななりふり構わぬ裏工作が本当に有り得るのかというと、あり得なくないかもしれないけれどもそうそうないんじゃないのと思います。コメディー仕立てにするために、ドラマの制作者が思いっきりありそうにないことを持ち出したのかなと思いました。その一方で、森友事件のように悪いことをした連中がみな出世していたという現実もありますので、見て見ぬふりをできる人間がいい職に就くという現実からして、絶対にないとも言えない気がします。

NHKドラマの不正隠蔽の描き方は誇張なのかIII

第2話まで見ました。ネタバレになりますが、女性ポスドクの木嶋みのりが自分のラボで起きている不正を告発すると決めたときに相談した教授が、研究分野が近いから調査委員を引き受けると言ってくれて、しかし気苦労のせいか理事たちの強硬な姿勢のせいか途中で倒れてしまい、学内一の変人教授に一時的に調査委員長のおはちが回ったのですが、その変人教授がスナックで暴力行為を働いたのがすっぱ抜かれて停職処分となり、回復したくだんの教授が再び調査委員長を務めるのですが、大学から懐柔され、来年度の研究予算を倍増するから穏便に済ませるということを受け入れてしまったようです。

こんなこと(買収)が実際に起こるのかと言えば、まああり得ないんじゃないかと思います。東大医学部の不正調査を見てもわかるように、医学部の不正の調査には他大学の医学部の研究者を調査委委員長に当てたわけで、買収するまでもなく医学の権威たちに忖度せざるをえない人達を調査委員長や調査員にしたのだろうと思います。調査委委員は公開されなかったので、自分の推測にすぎませんが。理学部の不正を担当したメンバーが、同時に医学部の調査まで引き受ければ、不正なしの1行で済ませることなどあり得なかっただろうと思います。

NHKがフィクションのドラマの中で不正調査委員長を大学が買収したことにしたことを問題視するよりも、実際に日本で起きていることが、不正調査委員長や調査委員が忖度したのではないかと強く疑われるような調査報告書になっていることのほうを問題視すべきでしょう。不正調査報告を一切せずに不正なしで済ませているような大学の関係者がNHKにケチをつけるのは、感覚がマヒしているような気がします。

 

関連tweets

不正がない場合には調査内容を報告しなくて良いということにすると、研究機関が一言「不正はなかった」というだけで、不正は完全に隠蔽できてしまいます。東大は調査報告書の全面開示を拒んでいますが、わずかに開示された部分だけでも、手作業が通常だとか、不正としか思えない記述、支離滅裂な文言が垣間見えます。ですから、東京大学医学部に関する調査と判断が本当に妥当性のあるものだったのかどうかを第三者が検証できるように、すべての調査内容を公開すべきだと自分は考えます。


 


 

『今ここにある危機とぼくの好感度について』第2話のストーリーに対する評価


 

 

 


 

『今ここにある危機とぼくの好感度について』第2話の感想

 

 

『今ここにある危機とぼくの好感度について』第1話


 

NHKドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」1話のクライマックス 2021/04/25 rena rerena

  1. Watch Ima Koko ni Aru Kiki to Boku no Kokando ni Tsuite Episode 1 2021/04/26 Michael Noonan

東京大学が医学部研究不正疑惑論文に関する調査報告書を国民に開示しないのは妥当(総務省審査会第5部会の判断)

以前、総務省の判断を紹介しました。

東京大学が医学部研究不正疑惑論文に関する調査報告書を国民に開示しないのは違法(総務省審査会第4部会の判断)

新たな総務省の答申が公開されていたので転載します。不開示にする場合には具体的な理由を示す必要がありますが、前回、東大が示した理由は法律の条文をコピペしただけのお粗末なもので第4部会に違法と認定されていました。きっと、不開示とする具体的な理由が自分でも見いだせず、苦し紛れに条文のコピペで済ませてしまったのでしょう。

違法と認定されて困った東大、今度は法律の条文のコピペに毛が生えた程度の理由を示したところ、総務省審査会第5部会は驚いたことに東大の示した理由をそのままオウム返しにして認めてしまったようです。東大も第五部会も、判断の理由をろくに示さずに不開示が妥当と言っているわけで、情報公開法が全く機能していません。日本の司法は死んでますね。

個別の図表パターンについては,当該調査において,不正の疑いありと指摘のあった事項について,図表の作成の過程を調査委員会において検証した結果を補足説明するために図示したものであるため,請求者による「誤魔化すための苦肉の策」という指摘は当たらない。したがって,東京大学の決定は妥当なものであると判断する。 … 審査請求人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。” というのですから、この答申は、常識も良識も研究者の世界の実情も無視した、東大に迎合しただけの判断でしかありません。妥当と判断した理由をちゃんと説明する責任を放棄した答申にしかなっておらず、自分の役目から逃げた司法の人間が東大に尻尾を振っただけに見えます。

東大医学部では手描きでグラフを作成してよいということに、国がお墨付きを与えたということなのでしょう。この国には研究倫理という概念がないのでしょうか。エラーバーを棒グラフの中に押し込んで、バラつきが小さく、有意差があるように見せていたことが露呈したにも関わらず、グラフと実験で得られた値は確かに一致していないけど、わざとやったわけじゃないので不正ではないという人間が正気だと言えるでしょうか。そんなセリフが東大のリーダーたち(=科学者)から出てきているのです。ほんと、この国の科学は終わってます。

いや、まあ、理研のSTAP細胞事件の対応を見たときも、この国の科学は終わっていると思ったので、別に何も終わっちゃいないのでしょうが、それでも絶望的な気持ちになります。STAPのときは、不正を疑われた調査委員長の先生が翌日には実験ノートをネット上にあげて身の潔白を証明しました。あの対応には感銘を受けました。実験した結果を論文にしたのだから、実験ノートが当然存在する。当たり前のことといえば当たり前のことです。東大医学部の疑惑論文には、実験ノートが存在するのでしょうか?論文の値が測定値と異なることは東大もはっきりと認めているわけです。だったら、測定値で本当に有意差が出るのか、示してもらいたいものです。それを示さずに不正はなかったので、何も説明しませんですって?それって研究不正があったことを知りつつ、隠蔽しているだけではないのですか???

 

諮問庁 国立大学法人東京大学
諮問日 令和 2年10月 5日(令和2年(独情)諮問第39号)
答申日 令和 3年 3月 8日(令和2年度(独情)答申第45号)
事件名 22報論文に関する調査報告書等の一部開示決定に関する件

 

答 申 書
 

第1  審査会の結論

別紙に掲げる文書1ないし文書5(以下,併せて「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした各決定は,妥当である。

第2  審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,令和2年3月26日付け第2017-58号,第2017-58の2号,第2017-58の3号及び第2017-58の4号により国立大学法人東京大学(以下「東京大学」,「東大」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った各一部開示決定(以下,順に「原処分1」ないし「原処分4」といい,併せて「原処分」という。)について,不開示部分のすべての開示を求める。

2 審査請求の理由

審査請求人が主張する審査請求の理由は,審査請求書の記載によると,おおむね以下のとおりである。

(1)東京大学は,22報論文に関する調査報告の骨子しかウェブ上で公開していない。特定研究科Bに関しては,「論文(図)5報(16図)について不正行為があったと認められた。」と結論している。それに対して,特定研究科Aに関しては,「申立のあった5名について不正行為はない」としか述べていない。これは,なんとも不可解な日本語表現である。「朝,ごはんを食べましたか?」と聞かれて,パンを食べていたのに「朝,ごはんを食べていません。」と答える「ご飯論法」は,不正を隠したい政治家の常套手段であるが,東大のこの発表の仕方はまさにご飯論法である。特定告発者が告発したのは,5名の人間ではなく5名の教授の研究室から出版された個々の論文の個々の図に関してである。なぜ,特定研究科Aに関しては特定研究科Bの調査報告と同様に,「申立てのあった論文の図に関して不正行為はない」と言えなかったのか?東大が用いたこの不可解な日本語表現は,研究不正が隠蔽されたのではないかという強い疑念を生じさせる。実際のところ,調査報告書には,むしろ,データ捏造の事実を強く示唆する文章が存在する。これまでにわずかばかり開示されたところを読んでみると,論文の図表が示すデータはオリジナルデータ(実験で得られた測定値)とほとんど異なっていたという意味合いの文章や,論文の図表作成において手作業を加えるのは特定分野の研究においては通常のことであると主張する文章が存在する。実際と異なる数値を発表するのはデータの捏造そのものであるし,統計ソフトを用いれば平均値や標準誤差などは自動的に計算され,グラフの描画まで自動的に行われるのが通常であって,人間が手作業でグラフを作成する必要性などどこにもない。報告書のこれらの記述は,図表が捏造されていたことを不正調査委員らが認めていると解釈できる。不正行為を追及された政治家が,「広く募ったが募集はしていない。」などと日本語として意味のなさない答弁をして失笑を買ったというニュースがあったが,東大の言っていることは,それと同レベルである。手作業でグラフを作成するのが通常だというのなら,それは東大特定学部Aではデータを捏造することが通常だと自ら認めているようなものであろう。

研究業績に基づいて年間およそ○円もの研究助成を受けている,日本の頂点に立つ大学には,それ相応のresearchintegrityというものが要求される。不正の有無を詳細に報告する義務があるのは当たり前すぎて,論を待たない。

東京大学は平成18年に研究倫理に関する行動規範を発表している。そこには,「研究活動について透明性と説明性を自律的に保証することに,高い倫理観をもって努めることは当然である。」「広く社会や科学者コミュニティによる評価と批判を可能とするために,その科学的根拠を透明にしなければならない」「十分な説明責任を果たすことにより研究成果の客観性や実証性を保証していくことは,研究活動の当然の前提であり・・・その責任を果たすことによってこそ,東京大学において科学研究に携わる者としての基本的な資格を備えることができる。」などの言葉がある。今回の東大が調査報告書や調査資料のほぼすべてを不開示としたのは,東大自らが過去に示した規範から大きく逸脱するものであり,現執行部による裏切り行為と言えよう。文部科学省も「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」の中で「研究者間相互の吟味・批判によって成り立つチェックシステムが不可欠である」と,相互批判の重要性を力説している。また,日本学術振興会は,「研究活動の公正性の確保及び適正な研究費の使用について確認・誓約すべき事項」において,「研究成果の発表とは,研究活動によって得られた成果を,客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ,研究者コミュニティに向かって公開し,その内容について吟味・批判を受けることである」と述べており,やはりデータを研究者コミュニティが吟味・批判できるようにすることの必要性を述べている。つまり,東大が調査報告書や調査資料を全面的に開示して,外部の研究者によるデータの吟味・批判的な分析を受けることは,研究の世界において当然のことである。このような相互批判は科学者にとって通常の営みにすぎず,東大が不開示理由とするような,将来にわたって研究が妨げられるとか,調査が妨げられるなどということはあり得ないのである。現実離れしたことを言い訳に持ち出して,法的な根拠なしにほぼすべてを不開示することは,許されない。

不正がなかったから説明しないという東大のやり方を認めると,研究不正の組織的な隠蔽を許すことになり,日本の研究倫理を大きく後退させることになる。研究者コミュニティや,さらには一般の国民が東大特定学部A論文における研究不正の有無を検証できるように,調査報告書および調査資料は全面的に開示されるべきと考える。

特定告発者の告発は,特定ニュースなどで大きく取り上げられており,特定ニュースの記事のリンクから容易にその告発文書の内容を閲覧できるほか,特定誌のウェブサイトもこの事件を取り上げており,告発文を紹介している日本のブログ記事にリンクが張られているので,こちらからも告発内容を読むことができる。この事件が報道されたときには研究者の間で大きな話題になったわけであるし,今でもこのように,世界中の研究者が容易に告発内容を閲覧できるため,特定告発者の告発内容は事実上,公開されたものといえる。よって,東大が調査報告書において告発内容を不開示にする理由も全くない。

(2)第2017-58号(原処分1)に関して

研究不正に関する告発がなされた場合に,どのような調査が行われるべきかは,文科省によりガイドラインが示されている。東京大学はこのガイドラインに従って調査したことを社会に示す責任があるし,そのガイドラインに従った事実を示したからといって「事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」ことはない。報告書の開示が,過去にさかのぼって報告書作成事務に影響することは物理的にありえない。将来に関しても,ガイドラインに従う限り何ら支障は生じ得ない。したがって,不開示とする法的根拠がない。

委員名・構成委員名を開示すれば「今後,同種の委員会が設置された際に,申立者,調査対象者及び関係者等から当該委員への圧力や干渉等が生じ」というが,既に終了している調査に関して圧力や干渉が生じて調査が妨げられることはないし,将来の調査に関しては調査終了まで氏名を公表しなければ,圧力や干渉が生じる恐れはない。実際,他大学における同様の不正調査報告では調査委員の氏名が全て公開されている(インターネットを検索すればそのような例が見つかる)。ほかの大学で当たり前にやっていることが,東大にできない理由はない。委員の氏名を不開示にすると,非告発者らと親しい人間ばかりが選出されていたのではないかという疑念すら生じさせる。調査委員会が公明正大に構成されていたのであれば調査委員氏名を不開示にする理由や根拠は存在しない。

「今後,同種の審議,検討に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある」というが,研究不正の判断基準に関しては文科省や日本学術振興会のガイドラインなど研究者コミュニティ全体のコンセンサスが存在するのだから,今後の意思決定に不当な影響が生じる恐れは全くない。よって,不開示とする根拠はない。

「調査内容等の詳細な情報を公にすれば正確な事実の把握を困難にするおそれがある」というが,調査内容の詳細な情報を公にしたからといって,将来の研究不正疑惑に関して正確な事実の把握が困難になる恐れは全くないし,どうしてそうなるのかの説明が全くなされておらず,理由になっていない。

「公にすることにより,公正かつ円滑な人事の確保が困難になる」というが,懲戒の基準を公表しないことのほうが,公正かつ円滑な人事が確保されていないことを懸念させる。

研究論文は,著者名,所属,内容等全て公開されており,その内容に関して他の研究者が疑問を抱いたときにはあらゆる質問に対して答えるのは論文著者の責務であり,実際に,そのような議論は論文出版後に研究者コミュニティにおいて活発に行われている。したがって,調査報告書や調査資料の中の論文の内容に関する記述を公開したからといって,「研究に係る事務に関し,公にすることにより自由な発想,創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ」は全くない。よって,法5条4号ホは不開示理由とはならない。

(3)第2017-58の2号(原処分2)に関して

研究不正の告発に対して大学がどのように対応すべきかは文科省がガイドラインを示しており,特定委員会がガイドラインに則って対応した内容を開示したからといってそれが将来的に同様の事例が生じたときに影響を与えうるものではない。また,論文は公開されているものなので,論文の内容に触れる部分を開示したからといって,その開示が研究者の将来の研究に何ら影響を与える恐れはない。よって,不開示にする法的根拠はない。

(4)第2017-58の3号(原処分3)に関して

「22報論文に関する調査報告書」の中のこれまでに開示されたわずかな部分を読んでも,オリジナルデータ(実験で得られた値)と論文の図表の値はほとんど異なっていたとか,図表は手作業で作成されたなどといった,データ捏造を強く示唆する文言が存在する。それに対して,東大が発表した結論は,申立のあった5名に不正はないというチグハグなものであった。不正行為の認定は疑義を呈された個々の論文の個々の図表に関して一つ一つ行われるべきものであることを考えれば,特定研究科Aの不正疑惑論文に関する発表は,不正の有無にすら言及されておらず,あたかも不正がなかったかのように見せかけているだけである。東大が不正を隠蔽するために不正無しの一言で誤魔化したようにしかみえない。東大特定研究科Aが受けている巨額の研究助成は国民の税金を原資とするものであり,捏造論文の業績に基づいて,毎年,億単位の巨額な研究助成金がこれらの捏造疑惑論文を出した研究室に配分されている。もしも研究不正が存在するのであれば,公金の横領という犯罪行為となんら変わりがない。特定告発者の詳細な告発内容を見れば,研究不正が存在している可能性が極めて高いにも関わらず,そして,実際に調査報告書にも不正を示唆する記述があるにも関わらず,なぜ東大現執行部が不正無しの一言で誤魔化したのか,審議の過程が公開されるべきである。そうでなければまともな研究者が何年も実験した結果ようやく得られる図表を,捏造者がほんの数分ででっち上げて真偽不明の結論のもと論文を作成しトップジャーナルに掲載させて,その業績に基づいて何億円もの研究助成を受けるという詐欺行為がまかり通ることになる。研究助成は,競争的な資金である。この文書を全面的に公開しないことは,日本の研究者間の競争における公平さを損ない,国民に著しい不利益をもたらす。

(5)第2017-58の4号(原処分4)に関して

エラーバーを短く見せるために手作業を入れるなどの手口は特定学B系,特定学A系に共通してみられたにも関わらず,研究不正が認定されたのは特定学B系の論文のみであった。特定学B系では当然のように研究不正とされる手口が,なぜ特定学A系では「通常」とされ,不正無しとなるのか?これは不正の隠蔽ではないのか?特定研究科Aにおける部局内調査がどのように行われ,どのような議論がなされたのかが公開されない限り,隠蔽の疑念が払拭されない。文科省や日本学術振興会が研究倫理に関しては明解なガイドラインを示しておりそれが研究者コミュニティにおけるコンセンサスとなっているのだから,部局調査の過程がそのガイドラインに沿ったものであるかぎり,将来,同様の調査がなされるときにも,問題が生じる余地はない。よって,今後の事務や研究に支障をきたすから不開示というのは理由にならない。部局内特定会議資料や部局内調査結果報告書は,特定研究科Aにおいて不正調査が公明正大に行われていたかどうかを示す重要な資料であり,東大はこれらを開示して説明責任を果たすべきである。

ヒアリング反訳資料は,すでに文字になっているのであるから,音声の場合のように個人が特定される恐れはない。個人が特定される恐れがある部分のみを不開示とし,それ以外に関しては開示すべきである。固定された長さのエラーバーを使用してグラフを作成したり,エラーバーを棒グラフの中に押し込むなど,不正行為以外の何物でもないと考えられるが,それでももし釈明の余地があるのだとすれば,このヒアリング反訳資料を公開することにより,研究者コミュニティに対して批判的な吟味を行う機会を与えるべきである。

「個別の論文説明資料」について。全体の報告書の開示部分を読むと,図表作成方法に関するパターンごとにまとめてしまうことにより,個別の図表に関しては言及しないという誤魔化しをしている。不正の認定は,疑義がもし20か所にあれば20か所に関して個々の説明があるべきで,20か所をいくつかのパターンにまとめて,パターンの説明しかしないというのは,誤魔化すための苦肉の策なのかもしれないが,不正調査報告の方法としては許容されない。研究不正の有無を第三者が検証する機会を与えるためには,個別の論文説明資料の開示が必須である。そもそも,論文の内容は学術誌に掲載されて広く公開されているものであること,個別のデータに関して疑問があれば研究者は学会や個人間のやりとりなどの場で活発なコミュニケーションをとり,疑問を解消するというのが,通常の研究者の慣習であることを考えれば個別の図表がどのような経緯を経て作成されたのかを公にすることは,研究者が普段から行っているコミュニケーションと何ら変わることはなく,それによって論文著者が不利益を将来被ることはあり得ず,開示できない理由にはならない。また,全ての論文は複数の著者からなるものであり,どの図表をどの著者が作成したかということは誰にもわからないので,個人が特定される恐れもまったくなく,その個人が説明した内容のせいで不利益を被る恐れもない。個別の論文の個別の図表の説明が,全体報告書に存在していないことを考えると,個別の論文説明資料を公開しないことは,研究不正の隠蔽を容認することになり,公益を著しく害する。

(6)結語

科学研究は,たとえ相反する研究結果が得られたとしても,研究者同士の活発な議論によりデータが吟味され,時の試練を経て正しい結論が導かれるようになっている。実験データに関する議論が公に行われることは,東大が過去に示した研究行動規範(特定年)や,文科省や日本学術振興会のガイドラインにある通り,通常のことであって,議論を公にすると将来の研究に影響するから不開示にするという言い訳は,全くもってナンセンスで,不開示理由になり得ない。東大の報告書の開示された部分には,特定分野研究の世界では図表を手作業でいじることが「通常」なのだから研究不正ではないという主旨の,思わず目を疑うような記述が存在する。このように,異常なことを「通常」と言って不正疑惑調査資料の開示を拒む姿勢を見ると,東大の現執行部が研究不正を助長する土壌をつくりだし,維持しているとみなさざるを得ない。捏造疑惑を持たれている図表作成過程において,東大がいうように本当に不正がないというのなら,他の研究者の批判や判断を仰ぐために,調査報告書や調査資料の全面的な開示を行うべきである。東大の開示拒否がまかり通れば,東大特定学部Aにおいては捏造研究者らは捏造し放題であり,捏造論文の業績に基づいて巨額の研究費を得るという犯罪的な行為が許されることになり,公益を著しく損なう。

法は適切に執行されることは,税金が正当に使用されているかどうかを国民が知るために必須である。東大からの回答に示された不開示の理由は,正当性や具体性に欠けており,法的根拠が存在しない。

第3  諮問庁の説明の要旨

本説明書は,令和2年3月26日付け第2017-58号,58の2号,58の3号及び58の4号で審査請求人あてに行った「22報論文に関する調査報告」,「平成28年度特定委員会資料」,「平成29年度特定委員会資料」及び「特定研究科A部局内特定会議資料・特定研究科A部局調査結果報告書」(本件対象文書)に係る部分開示決定につき,審査請求人から審査請求がなされた件についての理由説明である。

1 本件対象文書について部分開示とした理由について

本件対象文書は「22報論文に関する調査報告書」,「平成28年度特定委員会資料」,「平成29年度特定委員会資料」及び「特定研究科A部局内特定会議資料・特定研究科A部局調査結果報告書」である。

東京大学では,研究不正の事案については,特定委員会において調査を行っているが,22報論文に関する調査報告書等については,以下の理由に該当する部分について不開示とする決定を行った。

(1)特定委員会,調査委員会及び部局内特定会議の開催日時及び調査報告書の年月日については,東京大学として,当該委員会をどの程度の頻度で開催し,審議・検討していることが公になることにより,東京大学にとっての特定委員会事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,法5条3号及び4号柱書きに該当するため不開示とする。特定研究科A部局特定会議については,会議の回数も不開示とする。

(2)当該委員会委員長以外の委員名,調査委員会委員長以外の委員名及び部局内特定班長以外の構成員名については,研究不正が行われたかどうか等を審査するという設置の趣旨に鑑みれば,当該不開示部分を公にした場合,今後,同種の委員会が設置された際に,申立者,調査対象者及び関係者等から当該委員への圧力や干渉等が生じ,当該委員会においてだけでなく,今後の委員の選任に際して協力を得られなくなるなど,今後の当該委員会業務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,法5条3号及び4号柱書きに該当するため不開示とする。

(3)22報論文に関する調査報告書(報告書の調査の経緯,調査の概要,調査結果等),特定年度A特定委員会資料(申立書,予備調査結果(案)),特定年度B特定委員会資料(裁定(案),調査報告書(案),弁明音声反訳,弁明書,裁定,不服申立書,裁定確定後の措置),部局内特定会議資料(指摘論文・指摘内容一覧,調査結果報告書(案))及び部局調査結果報告書(調査の経緯,調査の概要,調査結果)のうち,

① 審議,検討又は協議に関する情報で,既に意思決定が行われた場合においても,今後,同種の審議,検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがある部分については,法5条3号に該当するため不開示とする。

② 特定委員会及び部局内特定会議の事務に関する情報で,当該事務の目的,その目的達成のための手法等に照らし,その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある部分については,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

③ 内容確認に関する情報で,事実を正確に把握し,その事実に基づいて評価,判断を加えて一定の決定を伴うもので,調査内容等の詳細な情報を公にすれば正確な事実の把握を困難にするおそれがある部分については,法5条4号ハに該当するため不開示とする。

④ 教職員の懲戒を伴うことになりうる人事管理に該当する事務であり,公にすることにより,公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがある部分については,法5条4号ヘに該当するため不開示とする。

⑤ 研究に係る事務に関し,公にすることにより自由な発想,創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれがある部分については,法5条4号ホに該当するため不開示とする。

(4)ヒアリング反訳資料(291枚291頁)は,被申立者からの聞き取り調査資料であり,既に意思決定が行われた場合においても,事後的に公開されることとなると,今後,同種の聞き取り調査での率直な意見の交換等を困難にするおそれがあり,法5条3号に該当するとともに,特定委員会の事務の適正な遂行に支障をおよぼすおそれがあり,同条4号柱書きに該当するため不開示とする。特に,ヒアリング内容については,プライバシー遵守を前提にヒアリングを実施しており,ヒアリング内容が公にされてしまうと,申立者からの反論や苦情等が寄せられ,そうした反論や苦情等を避けるために関係者が申告を拒んだり,真実を申告することをちゅうちょするおそれがあり,今後,同種の調査に支障を及ぼすため,係る事務の性質上,開示することはできない。

(5)個別の論文説明資料(1214枚1214頁)については,

ア 研究者の実験データ等であり,その一部でも公にされた場合,当該研究者の今後の研究活動において,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれがあるため,法5条4号ホに該当する情報として不開示とする。

イ 特定委員会部局内特定会議の事務に関する情報で,当該事務の目的,その目的達成のための手法等に照らし,その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあり,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

ウ 審議,検討又は協議に関する情報で,既に意思決定が行われた場合においても,今後,同種の審議,検討等に係る意思決定に不当な影響を与えるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

エ 内容確認に関する情報で,事実を正確に把握し,その事実に基づいて評価,判断を加えて一定の決定を伴うもので,調査内容等の詳細な情報を公にすれば正確な事実の把握を困難にするおそれがあり,法5条4号ハに該当するため不開示とする。

オ 教職員の懲戒を伴うことになりうる人事管理に該当する事務であり,公にすることにより,公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあり,法5条4号ヘに該当するため不開示とする。

これについて,審査請求人は,令和2年6月17日受付の審査請求書のなかで,原処分の取消しを求めている。

2 審査請求人の主張とそれに対する東京大学の見解

(1)審査請求人は次のように主張する。

ア 研究不正に関する告発がなされた場合に,どのような調査が行われるべきかは,文科省によりガイドラインが示されており,東京大学はこのガイドラインに従って調査したことを社会に示す責任があるし,そのガイドラインに従った事実を示したからと言って「事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」ことはない。報告書の開示が,過去にさかのぼって報告書作成事務に影響することは物理的にありえず,将来に関しても,ガイドラインに従う限り何ら支障は生じ得ない。したがって,不開示とする法的根拠がない。

イ 委員名・構成委員名については,調査委員会が公明正大に構成されていたのであれば,調査委員氏名を不開示にする理由や根拠は存在しない。

ウ 東京大学は,「正確な事実の把握を困難にするおそれがある」というが,調査内容の詳細な情報を公にしたからといって,将来の研究不正疑惑に関して正確な事実の把握が困難になる恐れは全くない。

エ 東京大学は,「公にすることにより,公正かつ円滑な人事が確保できなくなる」というが,懲戒の基準を公表しないことのほうが,公正かつ円滑な人事が確保されていないことを懸念させる。

オ 調査報告書や調査資料の中の論文の内容に関する記述を公開したからと言って法5条4号ホのようなことは全くないので,同号ホは不開示理由とはならない。

カ 特定研究科における部局内調査がどのように行われ,どのような議論がなされたのかが公開されない限り隠蔽の疑念が払拭されない。東大はこれらを開示して説明責任を果たすべきである。

キ ヒアリング反訳資料は,すでに文字になっているのであるから,音声の場合のように個人が特定される恐れはない。このヒアリング反訳資料を公開することにより,研究者コミュニティに対して批判的な吟味を味わう機会を与えるべきである。

ク 「個別の論文説明資料」は,図表作成方法に関するパターンごとにまとめてしまうことにより,個別の図表に関しては言及しないという誤魔化しをしている。いくつかのパターンにまとめて,パターンの説明しかしないというのは,誤魔化すための苦肉の策かもしれないが,不正調査報告の方法としては許容されないし,公益を著しく害する。

ケ よって,不開示部分の全ての開示を求める。

(2)しかしながら,研究不正に係る調査が調査対象となった研究者並びに所属する研究機関に対して与える影響力を鑑みると,当該調査に関する情報の公開については,慎重な対応をせざるを得ない。まして,今回のように研究不正とは認定されなかった研究者を含む調査に関しては,細心の注意を払うことを必要としている。

研究不正調査において秘匿性を確保することは,各事案において調査対象の研究者が,調査対象とされることのみを理由として,社会や研究者コミュニティにおいて不利益を被ることの回避を目的としている。

平成26年8月26日文部科学省「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」第3節「研究活動における特定不正行為への対応」の「(6)調査結果の公表」には,「①調査機関は,特定不正行為が行われたとの認定があった場合は,速やかに調査結果を公表する。②調査機関は,特定不正行為が行われなかったとの認定があった場合は,原則として調査結果を公表しない。ただし,調査事案が外部に漏えいしていた場合及び論文等に故意によるものでない誤りがあった場合は,調査結果を公表する」と明記されており,東京大学の場合,研究不正があったかどうかを調査した場合,不正行為が認定された事案については,本ガイドラインに沿って公表しているが,不正行為が認定されなかった事案については,公表していない。今回の事案については,不正行為が認定されなかった事案についても,一部具体事例を示して不正行為がなかったことを説明しており,公表した部分については,審査請求人に対しても開示しているが,その余の部分については,明らかにできない。

また,研究不正の調査については,その判定結果の如何によらず,対象となる研究者の研究活動に大きな影響を与えるものであり,かかる調査については,限りなく公平中立なものとして実施されなければならないと理解している。調査の内容について必要以上に開示することは,調査機関として担保すべき,正確な事実の把握,率直な意見の交換,意思決定の中立性などを困難にするおそれがあり,ひいては,調査機関として行う不正行為の判定結果の信頼性をも損なうことになる。

そのため,今回開示した内容は,必要かつ十分なものであると認識している。

なお,審査請求人は,懲戒の基準を公表しないことのほうが,公正かつ円滑な人事が確保されていないことを懸念させるというが,公表することにより,懲戒処分を逃れたり,量定を軽くしたりすることを意図して,調査に真実を述べなくなるおそれがあるとともに,円滑な職務遂行の妨げになるおそれがあり,懲戒の基準を公表することはできない。

また,個別の図表パターンについては,当該調査において,不正の疑いありと指摘のあった事項について,図表の作成の過程を調査委員会において検証した結果を補足説明するために図示したものであるため,請求者による「誤魔化すための苦肉の策」という指摘は当たらない。

したがって,東京大学の決定は妥当なものであると判断する。

3 結論

以上のことから,東京大学は,本件について原処分維持が妥当と考える。

第4  調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。

① 令和2年10月5日  諮問の受理

② 同日         諮問庁から理由説明書を収受

③ 同月25日      審議

④ 同年12月10日   本件対象文書の見分及び審議

⑤ 令和3年3月1日   審議

第5  審査会の判断の理由

1 本件開示請求について

本件開示請求は,本件対象文書の開示を求めるものであり,処分庁は,その一部を法5条3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とする決定(原処分)を行った。

これに対し,審査請求人は,不開示部分の開示を求めているところ,諮問庁は原処分を妥当としていることから,以下,本件対象文書の見分結果を踏まえ,不開示部分の不開示情報該当性について検討する。

2 不開示部分の不開示情報該当性について

(1)本件対象文書は,「22報論文に関する調査報告書」(文書1)並びに当該調査に係る関係委員会・会議資料及び関係調査文書である「特定年度特定委員会資料」(文書2),「特定年度B特定委員会資料」(文書3),「大学院特定研究科A・特定学部A保有の特定研究科A部局内特定会議資料」(文書4)及び「大学院特定研究科A・特定学部A保有の東京大学特定委員会A規則10条の2に基づく部局調査結果報告書」(文書5)であるところ,当該調査及び委員会等に係る情報の一部が開示されているのみで,その他具体的な調査・検証等に係る審議・検討内容等の情報の大半は不開示とされていることが認められる。

(2)文書1に係る不開示部分について

ア 当審査会事務局職員をして,諮問庁に対し,当該不開示部分の主たる不開示理由について,改めて確認させたところ,諮問庁は,以下のとおり説明する。

(ア)文書1は,東京大学が匿名の申立てを受け,複数の特定論文の内容に係る研究不正の疑いについて,大学内の研究不正事案等を調査・審議するため設置される特定委員会において,当該研究不正事案に関する調査・検証・分析・審議等を行い,その調査結果を取りまとめた報告書(22報論文に関する調査報告書)であり,当該調査報告書(文書1)自体としては,当該文書を一般及び学内に対し,一切公にしていない。

(イ)文書1の取りまとめに当たっては,特定委員会の下に調査委員会が設置されるとともに,当該調査委員会の要請を受け,調査対象者が所属する特定研究科及び特定研究所に各部局内特定会議が設置され,当該各部局内特定会議及び調査委員会によって,研究不正が疑われた調査対象の研究内容及び論文内容等に対する実験データの検証や対象者に対するヒアリング実施等を通して,様々な観点・角度から研究不正に対する詳細な調査・検証・分析等が行われ,それらの調査等の状況を踏まえつつ,特定委員会によって,最終的な調査・検証・分析・審議等が行われ,当該研究不正事案に対する調査結果(文書1)を取りまとめたものであり,当該特定委員会A並びにその下に設置される調査委員会及び各部局内特定会議においては,研究不正の調査・検証という機密情報を取り扱うその設置趣旨・目的から,各委員会・会議の委員構成,審議・運営内容及び調査手法等については一切公にしていない(なお,各委員会・会議に係る構成委員の情報は公にはしていないが,各委員会・会議の委員長及び班長については,通知文等の記載により事実として判明することがあることから,各委員会・会議の委員長及び班長のみ本件対象文書の中でその氏名について開示している。)。

(ウ)特定委員会が,本件研究不正事案調査・検証等の結果として取りまとめた文書1(22報論文に関する調査報告書)の最終的な結論は,研究不正は認定されなかった対象(研究者・研究内容・論文等)と研究不正が認定された対象(研究者・研究内容・論文等)の双方に分かれた裁定判断としての結論内容となっており,東京大学においては,当該調査結果を受け,文部科学省の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日)(以下「ガイドライン」という。)等にも基づき,特定不正行為が行われたとの認定があった事案について,その調査結果の概要として「22報論文に関する調査報告(骨子)」を,そのデータ解析資料とともに,不正行為認定の事実及びその調査結果として一般に公表している。

したがって,文書1(22報論文に関する調査報告書)自体については,飽くまで,研究不正が疑われる事案に対する結論全体を導くための東京大学内の事案の調査・検証・分析・審議等の課程を取りまとめた内部機密資料であり,また,上記のとおり,当該調査の過程及び結論として,不正が認定されなかった対象(研究者・研究内容・論文等)が含まれており,当該研究者の権利・利益を保護する必要がある内容が記載された複合的な調査検討報告書であることから,文書1(22報論文に関する調査報告書)自体を一般に公にすることはできず,文部科学省のガイドライン等も踏まえ,上記のとおり当該特定不正行為が認定された事案とその調査結果の概要等について,適正に公表を行ったものである。

(エ)文書1は,当該研究不正事案に対する上記(ア)ないし(ウ)の経緯・目的のもとに取りまとめられた調査報告書であるところ,文書1の記載内容の一部である,特定不正行為が行われたとの認定があった事案の認定事実及び調査結果については,調査結果の概要(22報論文に関する調査報告(骨子))及びそのデータ解析資料として,上記(ウ)のとおり一般に公表しており,本件開示請求に当たり,文書1の中で,一般に公表済みである当該特定不正行為が行われたとの認定があった事案の認定事実及び調査結果(調査結果の概要・データ解析資料)については,全て開示している。また,上記(イ)のとおり,各委員会・会議の委員構成,審議・運営内容及び調査手法等については一切公にしていないところ,各委員会・会議の委員長及び班長については,通知文等の記載により事実として判明することがあることから,各委員会・会議の委員長及び班長のみ文書1の中でその氏名について開示している。

(オ)一方,上記を除く文書1の不開示部分には,当該研究不正事案について,特定委員会,調査委員会及び各部局内特定会議が,調査・検証・分析等を行うに当たり,当該事案に対する事実認定・審議・検討等を行った各委員会・会議の調査運営の方法と体制,調査方針や調査の方向性,調査活動に用いた分析情報,調査に対する検討内容や判断等といった,具体的な調査手法や審議・運営内容等の極めて機微な情報が記載されており,また,当該研究不正調査の対象となり,その調査・検証の結果,不正が認定されなかった対象(研究者・研究内容・論文等)情報が記載されている。これらは,いずれも東京大学が,多様な研究分野に対する研究不正に係る調査方法とその運営体制等を恒常的に確保し,当該研究不正行為等を適正に調査・検証するための審議・検討上の内部管理情報であるとともに,研究不正が認定されなかった対象(研究者・研究内容・論文等)が調査対象とされたことのみをもって研究上の不利益を被ることのないよう,当該研究者の権利・利益を保護する必要がある情報であり,一般に公にできない非公表の機密情報である。

(カ)これら当該不正研究調査に関する各委員会・会議の調査運営の方法と体制,調査方針や調査の方向性,調査活動に用いた分析情報,調査に対する検討内容や判断等といった,具体的な調査手法や審議・運営内容等の情報及び不正が認められなかった対象に関する情報が公になった場合,今後,同種研究不正事案の調査を行う際にその研究不正事案の検証や不正の判断・分析をするための調査・審議・検討に係る具体的な調査手法や個々の分析・判断基準等を推測することが可能となってしまい,調査対象者が種々の対策を講じることを容易にし,また,調査・検証・分析等を行う当該各委員会・会議及びその構成員に対する批判,非難及び責任追及等が生じることとなり,各委員会・会議において,委員が批判や非難等を受けることを恐れて率直な意見を述べることをちゅうちょし,各委員会・会議において十分な調査,審議ができなくなり,さらに,不正が認められなかった対象となる研究者や研究内容が,いわれのない非難や中傷を受け,研究者の健全な研究体制の確保ができなくなる等,東京大学における今後の研究不正事案の調査・運営及びそれに関連する研究体制の確保等,東京大学全体の運営及び事務の適正な遂行に多大な支障を及ぼすおそれがあることから,法5条4号柱書きに該当する。

イ 以下,上記諮問庁の説明も踏まえ,検討する。

(ア)文書1は,研究不正の調査・審議等を行った東京大学の特定委員会が,その調査結果を取りまとめた報告書(22報論文に関する調査報告書)であることが認められる。

(イ)上記ア(ウ)及び(エ)の諮問庁の説明によると,文書1自体は一般に公表はしていないが,文書1の記載内容の一部である特定不正行為が行われたとの認定があった事案とその調査結果概要等については,別途一般に公表していることから,それら一般に公表した情報については,本件開示請求に当たり,文書1の中で全て開示しているとのことであり,また,公にされていない各委員会・会議の委員構成について,事実として判明することがある各委員会・会議の委員長及び班長の氏名等に係る情報については開示しているとのことであり,当審査会において,諮問庁から当該公表資料等の提示を受け,確認したところ,公表された情報等の内容については,開示されていることが認められる。

(ウ)文書1の不開示部分を見分したところ,当該不開示部分には,東京大学における特定研究不正事案について調査・検証・分析・審議等を行う特定委員会,調査委員会及び各部局内特定会議等の各委員会・会議の調査運営の方法と体制,調査方針や調査の方向性,調査活動に用いた分析情報,調査に対する検討内容や判断等といった,具体的な調査手法や審議・運営内容等の情報が記載されているとともに,当該研究不正調査の対象となり,その調査・検証の結果,不正が認定されなかった対象(研究者・研究内容・論文等)情報が記載されていることが認められる。

諮問庁の説明によると,これらの情報は,いずれも東京大学が,多様な研究分野に対する研究不正に係る調査方法とその運営体制等を恒常的に確保し,当該研究不正行為等を適正に調査・検証するための審議・検討上の内部管理情報であるとともに,研究不正が認定されなかった対象(研究者・研究内容・論文等)が調査対象とされたことのみをもって研究上の不利益を被ることのないよう,当該研究者の権利・利益を保護する必要がある情報であり,一般に公にできない非公表の機密情報であるとのことである。

そうすると,当該不開示部分を公にした場合,今後,同種研究不正事案の調査を行う際にその研究不正事案の検証や不正の判断・分析をするための調査・審議・検討に係る具体的な調査手法や個々の分析・判断基準等を推測することが可能となってしまい,調査対象者が種々の対策を講じることを容易にし,また,調査・検証・分析等を行う当該各委員会・会議及びその構成員に対する批判,非難及び責任追及等が生じることとなり,各委員会・会議において,委員が批判や非難等を受けることを恐れて率直な意見を述べることをちゅうちょし,各委員会・会議において十分な調査,審議ができなくなり,さらに,不正が認められなかった対象となる研究者や研究内容が,いわれのない非難や中傷を受け,研究者の健全な研究体制の確保ができなくなる等,東京大学における今後の研究不正事案の調査・運営及びそれに関連する研究体制の確保等,東京大学全体の運営及び事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとする諮問庁の説明は否定し難い。

(エ)したがって,当該不開示部分は,法5条4号柱書きに該当すると認められることから,同条3号並びに4号ハ,ホ及びヘについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。

(3)文書2ないし文書5に係る不開示部分について

ア 当審査会事務局職員をして,諮問庁に対し,当該不開示部分の主たる不開示理由について,改めて確認させたところ,諮問庁は,以下のとおり説明する。

(ア)文書2ないし文書5は,文書1(22報論文に関する調査報告書)を取りまとめるに当たり,上記(2)ア(イ)の設置経緯の下で当該研究不正事案に関する調査・検証・分析・審議等を行った各委員会及び会議の資料であり,そのうち,文書2は,特定委員会の「特定年度A特定委員会資料」であり,文書3は,同委員会の「特定年度B特定委員会資料」であり,文書4は,特定委員会の下に設置される調査委員会の要請を受け,調査対象者が所属する特定研究科Aに設置された部局内特定会議の「大学院特定研究科A・特定学部A保有の特定研究科A部局内特定会議資料(ヒアリング反訳資料及び個別の論文説明資料を含む)」であり,文書5は,同特定会議が取りまとめた「大学院特定研究科A・特定学部A保有の東京大学特定委員会規則10条の2に基づく部局調査結果報告書」であり,これら文書2ないし文書5は,いずれも文書1を取りまとめるに当たっての事前の調査・検証・分析を行った審議・検討段階の資料であり,研究不正の調査・検証という機密情報を取り扱うその設置趣旨・目的から,各委員会・会議の委員構成,審議・運営内容及び調査手法等については一切公にしていない(なお,各委員会・会議に係る構成委員の情報は公にはしていないが,各委員会・会議の委員長及び班長については,通知文等の記載により事実として判明することがあることから,各委員会・会議の委員長及び班長のみ本件対象文書の中でその氏名について開示している。)。

(イ)文書2ないし文書5の不開示部分には,当該研究不正事案について,特定委員会,調査委員会及び各部局内特定会議が,調査・検証・分析等を行うとともに,当該事案に対する事実認定・審議・検討等を行った各委員会・会議の調査運営の方法と体制,調査方針や調査の方向性,調査活動に用いた分析情報,調査に対する検討内容や判断等といった,具体的な調査手法や審議・運営内容等の極めて機微な情報が記載されており,また,当該研究不正調査の対象となった調査・検証段階の対象(研究者・研究内容・論文等)情報が記載されている。これらは,いずれも東京大学が,多様な研究分野に対する研究不正に係る調査方法とその運営体制等を恒常的に確保し,当該研究不正行為等を適正に調査・検証するための審議・検討上の内部管理情報であるとともに,一般に公にできない非公表の機密情報である。

(ウ)これら当該不正研究調査に関する各委員会・会議の調査運営の方法と体制,調査方針や調査の方向性,調査活動に用いた分析情報,調査に対する検討内容や判断等といった,具体的な調査手法や審議・運営内容等の情報及び当該研究不正調査の対象となった調査・検証段階の対象(研究者・研究内容・論文等)情報が公になった場合,今後,同種研究不正事案の調査を行う際にその研究不正事案の検証や不正の判断・分析をするための調査・審議・検討に係る具体的な調査手法や個々の分析・判断基準等を推測することが可能となってしまい,調査対象者が種々の対策を講じることを容易にし,また,調査・検証・分析等を行う当該各委員会・会議及びその構成員に対する批判,非難及び責任追及等が生じることとなり,各委員会・会議において,委員が批判や非難等を受けることを恐れて率直な意見を述べることをちゅうちょし,各委員会・会議において十分な調査,審議ができなくなり,さらに,調査・検証段階における対象(研究者・研究内容・論文等)情報が流出し,対象となる研究者や研究内容が,いわれのない非難や中傷を受け,研究者の健全な研究体制の確保ができなくなる等,東京大学における今後の研究不正事案の調査・運営及びそれに関連する研究体制の確保等,東京大学全体の運営及び事務の適正な遂行に多大な支障を及ぼすおそれがあることから,法5条4号柱書きに該当する。

イ 以下,上記諮問庁の説明も踏まえ,検討する。

(ア)文書2ないし文書5は,文書1(22報論文に関する調査報告書)を取りまとめるに当たり,当該研究不正事案に関する調査・検証・分析・審議等を行った各委員会及び会議の資料であることが認められる。また,上記ア(ア)の諮問庁の説明によると,これら文書2ないし文書5は,いずれも文書1を取りまとめるに当たっての事前の調査・検証・分析を行った審議・検討段階の資料であり,研究不正の調査・検証という機密情報を取り扱うその設置趣旨・目的から,各委員会・会議の委員構成,審議・運営内容及び調査手法等については一切公にしていない情報であるとのことである。

(イ)文書2ないし文書5の不開示部分を見分したところ,当該各不開示部分には,当該研究不正事案について,特定委員会,調査委員会及び各部局内特定会議が,調査・検証・分析等を行うとともに,当該事案に対する事実認定・審議・検討等を行った各委員会・会議の調査運営の方法と体制,調査方針や調査の方向性,調査活動に用いた分析情報,調査に対する検討内容や判断等といった,具体的な調査手法や審議・運営内容等の極めて機微な情報が記載されており,また,当該研究不正調査の対象となった,調査・検証段階の対象(研究者・研究内容・論文等)情報が記載されていることが認められ,その余の部分については,開示されていることが認められる。

諮問庁の説明によると当該不開示部分の情報は,いずれも東京大学が,多様な研究分野に対する研究不正に係る調査方法とその運営体制等を恒常的に確保し,当該研究不正行為等を適正に調査・検証するための審議・検討上の内部管理情報であるとともに,一般に公にできない非公表の機密情報であるとのことである。そうすると,当該不開示部分を公にした場合,今後,同種研究不正事案の調査を行う際にその研究不正事案の検証や不正の判断・分析をするための調査・審議・検討に係る具体的な調査手法や個々の分析・判断基準等を推測することが可能となってしまい,調査対象者が種々の対策を講じることを容易にし,また,調査・検証・分析等を行う当該各委員会・会議及びその構成員に対する批判,非難及び責任追及等が生じることとなり,各委員会・会議において,委員が批判や非難等を受けることを恐れて率直な意見を述べることをちゅうちょし,各委員会・会議において十分な調査,審議ができなくなり,さらに,調査・検証段階における対象(研究者・研究内容・論文等)情報が流出し,対象となる研究者や研究内容が,いわれのない非難や中傷を受け,研究者の健全な研究体制の確保ができなくなる等,東京大学における今後の研究不正事案の調査・運営及びそれに関連する研究体制の確保等,東京大学全体の運営及び事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとする諮問庁の説明は否定し難い。

(ウ)したがって,当該不開示部分は,法5条4号柱書きに該当すると認められることから,同条3号並びに4号ハ,ホ及びヘについて判断するまでもなく,不開示としたことは妥当である。

3 審査請求人のその他の主張について

審査請求人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。

4 本件各一部開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とした各決定については,不開示とされた部分は,同号柱書きに該当すると認められるので,同条3号並びに4号ハ,ホ及びヘについて判断するまでもなく,妥当であると判断した。

(第5部会)

委員 藤谷俊之,委員 泉本小夜子,委員 磯部 哲

別紙(本件対象文書)

文書1 22報論文に関する調査報告書

文書2 特定年度A特定委員会資料

文書3 特定年度B特定委員会資料

文書4 大学院特定研究科A・特定学部A保有の特定研究科A部局内特定会議資料

文書5 大学院特定研究科A・特定学部A保有の東京大学特定委員会規則10条の2に基づく部局調査結果報告書

 

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  • 総長H27.04.01R03.03.31五神 真  S55.03 東京大学理学部卒業 S60.04 理学博士(東京大学) H10.08 東京大学大学院工学系研究科教授
  • 理事・ 副学長 (R02.04.01 ~R03.03.31) 福田 裕穂 担当:総務、入試・高大接続、評価 S52.03 東京大学理学部卒業 S57.03 理学博士(東京大学) H06.05 東北大学理学部教授 H07.10 東京大学理学部附属植物園教授
  • 理事・ 副学長 (R02.04.01 ~R03.03.31)宮園 浩平 担当:研究、懲戒 S56.03 東京大学医学部卒業 H01.12 医学博士(東京大学) H12.08 東京大学大学院医学系研究科教授
  • 理事・ 副学長 (R02.04.01 ~R03.03.31)藤井 輝夫 担当:財務、社会連携・産学官協創 S63.03 東京大学工学部卒業 H05.03 博士(工学)(東京大学) H19.02 国立大学法人東京大学生産技術研究所教授
  • 理事・ 副学長  (R02.04.01 ~R03.03.31)大久保 達也 担当:教育、学生支援、施設 S58.03 東京大学工学部卒業 S63.03 工学博士(東京大学) H18.04 国立大学法人東京大学大学院工学系研究科教授
  • 理事・ 副学長  (R02.04.01 ~R03.03.31)白波瀬 佐和子  担当:国際、総長ビジョン広報 S56.03 同志社女子大学家政学部卒業 H09.03 社会学博士(オックスフォード大学) H22.08 国立大学法人東京大学大学院人文社会系研究科教授
  • 理事  (R02.04.01 ~R03.03.31) 境田 正樹 担当:コンプライアンス、監査、病院 H17.10 弁護士登録(第二東京弁護士会) H27.04 ~R02.03 国立大学法人東京大学理事
  • 理事 (R02.04.01 ~R03.03.31)里見 朋香 担当:事務組織、法務、人事労務 H02.03 早稲田大学法学部卒業 H18.04 国立大学法人東京大学企画調整役・総長秘書室長
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  • 監事 (R02.09.01 ~R06.08.31)棚橋 元 H02.03 東京大学法学部卒業 H04.04 弁護士登録・森綜合法律事務所入所
  1. 役員・監事略歴 令和2年9月1日現在 東京大学

 

東京大学総長選挙の怪文書について

予備選挙の結果と、次のステップである第二次候補者選びの結果とがあまりにも食い違っていて、波紋を呼んでいるようです。二次候補者は、予備選挙の結果だけでなく「調査」結果も加味されるという内規の変更が効いたということのようです。予備選挙トップだった候補者が2次候補から消えたのは、「調査」の結果ということでしょうか。

PRESIDENT Onlineの10月2日の記事によれば、宮園浩平氏に関する怪文書が流れたのだそうです。中身はというと、過去の共著論文が研究不正論文と認定されていたというもの。このことは、研究不正ウォッチをしてきた人間にしてみれば、ニュースでもなんでもありません。当サイトでも、取り上げたことがあります。

関連記事:加藤茂明研究室から出された51報の「不適切」な論文リスト

該当する論文は、取り下げられています。

J Biol Chem. 1999 May 7;274(19):12971-4. Positive and negative modulation of vitamin D receptor function by transforming growth factor-beta signaling through smad proteins. Yanagi Y, Suzawa M, Kawabata M, Miyazono K, Yanagisawa J, Kato S.

これだけなら怪文書と呼ぶほどのものではありません。東大は、東大自らフタをした臭いものを取り出すわけにもいかないので、対応済み過去を蒸し返しただけのような気がします。そんなことよりも、こちらのほうが問題なのでは?

東京大学が医学部研究不正疑惑論文に関する調査報告書を国民に開示しないのは違法

これを引きずったのだとしたら、今回の東大総長選挙のごたごたは、むしろ東大の良心のなせるわざなのかもしれないとも思えてきます。臭いものにフタをした責任者である(当時の)医学研究科長が次期総長になったら、東大医学部の「膿み」を(もしそうなら)出してほしいというOrdinary_Researchersの願いは永久に叶わないでしょう。

部外者には何もわかりませんが、東大医学部の不正疑惑潰し(棒グラフのエラーバーを手でいじって小さく見せているのにそれを研究における通常の作業と正式な報告書の中で言ってのけたり、医学系の調査内容内容は報告書を黒塗りしてほとんど何も公開しないなど)は誰の目から見ても異常なことであって、東大の中でそれが問題にならないということは考えにくいと思います。22報の調査報告書内のあの支離滅裂な文章を誰が実際に作成したのかはわかりませんが、医学部長・医学研究科長には責任があるでしょう。

宮園浩平氏の略歴

2011年(平成23年)4月 東京大学大学院医学系研究科長・医学部長 (~平成31年3月)

参考:東京大学大学院医学系研究科病因・病理学専攻分子病理学分野宮園子研究室

東大医学部研究不正疑惑関連記事紹介:

  1. 東大医学部論文の告発内容を 画像編集フリーソフトで確認する方法
  2. 医学系論文に関する報告がまだ済んでいない東大
  3. 国民の知る権利を蹂躙する東大
  4. 東京大学は医学部の不正調査をやり直すべき
  5. 東京大学医学部不正疑惑論文調査の懐疑点

 

報道

  1.  「いったい誰が土下座するのか」東大総長選をめぐるドロドロの権力争い 「怪文書」すら飛び交う異例の事態 (2020/10/02 6:00 PRESIDENT Online)  YAHOO!JAPAN NEWS  
  2. 東大総長選挙の選考過程に疑義 結果は10月2日 (中庸時評 2020/10/01 22:31 note.com)
  3. 【速報・東大総長選考】選考過程「透明ではない」が77.2% 本紙独自アンケート分析① (2020年9月30日 東大新聞オンライン)
  4. 東大総長選 “候補者の選考過程に疑義” と4学部長らが要望書 2020年9月25日 17時09分 NHK NEWS WEB
  5. 東大総長選で教員から「透明性」に疑義 有力候補者が選考から漏れる (石田かおる2020.9.25 17:52 AERA)

 

9月7日発表 第二次総長候補者

予備選でダントツトップだった宮園浩平氏が、なぜか第二次総長候補者のリストから消えています。

  • 藤井 輝夫 (理事・副学長) (予備選は54票で2位)
  • 染谷 隆夫(工学系研究科長) (予備選は14票で8位)
  • 永井 良三 (自治医科大学学長、宮内庁皇室医務主管、元東大医学部付属病院長)(経営協議会推薦)

参考

  1.  「いったい誰が土下座するのか」東大総長選をめぐるドロドロの権力争い 「怪文書」すら飛び交う異例の事態 (2020/10/02 6:00 PRESIDENT Online チーム)  YAHOO!JAPAN NEWS  

 

7月7日 予備選の結果

1位 宮園浩平 67票 :理事・副学長、元医学系研究科長

2位 藤井輝夫 54票 :理事・副学長、元生産技術研究所長

3位 (梶田隆章 24票) :宇宙線研究所長(ノーベル物理学賞を受賞)

4位 白波瀬佐和子 23票 :理事・副学長、人文社会系研究科教授

5位 大久保達也 20票  :理事・副学長、元工学系研究科長 

6位 福田裕徳 18票 :理事・副学長、元理学系研究科長

7位 石井洋二郎 16票  :中部大学教授、元理事・副学長、元総合文化研究科長

8位 染谷隆夫 14票:工学系研究科長

9位 相原博昭 14票 :大学執行役・副学長、元理事・副学長、元理学系研究科長 

10位 太田邦史  13票 :総合文化研究科長

11位 (佐藤岩夫 13票):社会科学研究所長

参考

  1.  「いったい誰が土下座するのか」東大総長選をめぐるドロドロの権力争い 「怪文書」すら飛び交う異例の事態 (2020/10/02 6:00 PRESIDENT Online チーム)  YAHOO!JAPAN NEWS  

 

4月28日 総長選考会議の内規が改定

変更点

  • 第二次総長候補者を「5名程度」から「3人以上5人以内」に
  • 「総長予定者の決定」の条の「投票の結果を考慮して総長予定者を決定する」を「調査及び意向投票の結果を考慮して総長予定者を決定する」に。

参考

  1.  「いったい誰が土下座するのか」東大総長選をめぐるドロドロの権力争い 「怪文書」すら飛び交う異例の事態 (2020/10/02 6:00 PRESIDENT Online チーム)  YAHOO!JAPAN NEWS  

参考

  1. 2020東京大学総長選考を考える
  2. 総長選考会議 次期総長予定者の選出について 東京大学

 

東京大学が医学部研究不正疑惑論文に関する調査報告書を国民に開示しないのは違法(総務省審査会第4部会の判断)

続報:日本における研究倫理の存在の耐え難い軽さ(というか、存在しない)

東京大学が医学部研究不正疑惑論文に関する調査報告書を国民に開示しないのは妥当(総務省審査会第5部会の判断)


東大における研究倫理の存在の耐え難い軽さ(というか、存在しない)

2016年の8月にOrdinary_Researchersが告発した東大の論文不正疑惑では、エラーバーを棒グラフの内部に押し込むなど同じような手口が、医学系、理学系のラボからの論文で見られました。

関連記事 ⇒ Ordinary_researchersの告発2通め11論文

グラフが手作業で適当にでっちあげられているのを見て、自分はゾッとしました。見てはいけない犯行現場を目撃してしまったような嫌な気分にさせられたのです。これ以上の不正の証拠はないだろうと思いました。

関連記事 ⇒ 告発内容を画像編集フリーソフトで確認する方法

ところが非常に驚いたことに、理学系では研究不正が認定されラボがお取り潰しになったのに対して、医学系に関しては不正無しの一言で片づけられてしまいました。それどころか、このような論文作成作法が「通常」だと東大がのたまったのです(22報論文調査報告 17~21ページ)。それが本当なら、東大医学部から出る論文は誰からも信用されなくなりますから、東大執行部によるこのようなステートメントは、東大の評判を落とし、東大の名誉を著しく傷つけると思います。

関連記事 ⇒ 医学系論文に関する報告がまだ済んでいない東大

 

東大医学部の不正疑惑論文に関しては、本当にすべての図に関して実験がなされていたのでしょうか?エラーバーを棒グラフの裏に手作業で押し込んでいた論文の図に該当する生データで、有意差は出るのでしょうか?東大にはそれを納税者や研究コミュニティに対して説明する義務があります。もちろん、すべての図に関して個別に!

分生研の不正だけやけに詳細に報告し、医学部のほうは情報がほぼなかったので医学部のほうは調査すらしなかったのかなと当初思いました。しかし、答申にある文書名から察する限り、医学部でも調査は行われていたようです。外部の研究者が調査委員として加わり、科学者としての良心と常識に基づいて調査したのでしょうから、第三者が研究不正の有無を判断する上で十分な情報量が調査資料にあるのではないかと思われます。

「22報論文に関する調査報告書」および、医学部保有の「調査班会議資料」、「部局調査結果報告書」、「個別の論文説明資料(1214頁)」、「ヒアリング反訳資料(291頁)」を公表して、科学コミュニティの判断を仰ぐのは東大執行部の責務でしょう。そもそも国民の知る権利は法的に保障されており、公開しない理由がないのです。

関連記事 ⇒ 東大医論文疑惑 知る権利を蹂躙する東大

東大では生データと発表データが食い違うのがほとんどらしいので(22報論文報告書 14ページ)、調査の生データともいうべき「個別の論文説明資料(1214頁)」と「ヒアリング反訳資料(291頁)」を吟味する必要がありそうです。みなさん、是非、東大に資料の開示請求をしてみてください。

外部リンク ⇒ 法人文書の情報公開について(東京大学)

 

さて、東大がなぜ調査内容を国民や研究者コミュニティに対して公開できないのかが謎なのですが、東京大学理事の中には科学者だけでなく弁護士もいますから、調査報告書を隠すことの違法性を承知しているはずです。法を犯してまで隠さなければいけないことって一体何なのでしょう?まさかとは思いますが、デタラメな論文業績(註:東大の報告書いわく、ほとんどの場合において、オリジナルデータすなわち実験で得られた測定値≠論文のグラフが表す数値)に基づいてAMEDや文科省から何十億円もの研究助成を受け取っている現状を現東大理事たちが積極的に守ろうとしているのだとすれば、かなりたちが悪いと言わざるを得ません。文科省やAMED、厚労省がこれを黙認しているのも、国民に対する裏切り行為だと思います。

関連記事 ⇒ 東大医 異常な論文図表作成でも不正なし

アメリカでは研究不正を隠蔽した大学が訴えられたというケースもあります。

関連記事 ⇒ デューク大学、研究不正隠しで損害賠償請求訴訟

医学部の研究室では棒グラフのエラーバーを手でいじるのが「通常」だとしたら、そんな環境にあって、まともに実験して結果を出そうと努力している多くの研究者や大学院生がハラスメントの被害に合う危険が大きいのではないですか?

情報を隠蔽することにより、研究や教育に極めて不適切な環境を積極的に維持しようと努めている(ように自分には見える)現東大執行部の責任は重大だと考えます。

 

Ordinary_Researchersの告発文を今読み返すと、非常に切迫感があります。

常習性、頻度、公正性、論文の与える影響の深刻さ等を鑑みれば、もはや看過すべきではないという結論に至った。ここで告発するのは、発見したもののごく一部に過ぎないことも申し添えておく。 … あらぬ疑いをかけられている研究室の潔白を証明する良い機会になるか、それとも膿を出すことになるか、どちらにしても東京大学にとってのみならず、日本の生命科学研究にとって良い方向へと進むきっかけになるはずである。(2016年8月14日 Ordinary_researchers 告発文1PDF

しかし、Ordinary_researchersの思惑とは裏腹に、期待されたどちらにもならず、東大が臭いものにフタをしてしまっただけでした。東大のこの行動によって、日本の研究倫理を高める努力が大きくくじかれたのではないでしょうか。

 

日本では、相変わらず研究力の低下が叫ばれる状態が続いており、日本の生命医科学研究は何一つ良い方向へ向かっていないように思います。

研究倫理や研究不正に関する概念は徹底的に破壊され、自分の頭の中の辞書は書き換えを余儀なくされました。

【え】

エラーバー【error bar】平均値を表す棒グラフなどにおいて、標準誤差や標準偏差などを示した線分のこと。通常は、統計処理ソフトで自動的に計算・描画が行なわれる。例外的に、東京大学医学部においてはエラーバーの作成は手作業で行なわれるのが通常である。

【お】

オリジナルデータ【original data】論文の図表のもととなる、観察や測定によって得られた数値や、画像などの生データ。通常は論文の数値と一致するが、東大医においてはほとんど一致しない。

【け】

けんきゅうふせい【研究不正】①実験ノートが存在しないこと、または、実験ノートが提出できないこと。〔東大・医〕定義されない。

【つ】

つうじょう【通常】①普通のことが行なわれているさま。〔東大〕異常なことが行なわれているさま。

【と】

とうだいいがくぶ【東大医学部】(東大の発表に基づき)以下に述べる5個の性質を持つ実体を「東大医学部」と定義する。
1)研究室から発表された論文の図に示されるデータと、オリジナルデータ(実験で得られる生データ)とはほとんど一致しないこと。(そのような論文を出すラボが組織内に存在すること)
2)論文の図作成にあたり、数値データをグラフにする際に、まずマイクロソフトエクセルを用いてグラフを描くこと。
3)エクセルで描いたグラフは、必ずコピペによりマイクロソフトパワーポイント(パワポ)やアドビイラストレーター(イラレ)など別のアプリケーション上に移し変えること。
4)パワポやイラレ上に移されたグラフはそのまま論文の図に使用することはせず、かならず、X軸、Y軸、棒グラフ、エラーバーを手作業でなぞる(トレース)ことにより、手書きのグラフとすること。このとき、オリジナルデータとの一致を消失せしめること。
5)論文の図で示された値がオリジナルデータとどれほど一致していなくても、不正調査委員会、大学執行部、研究資金配分機関、監督省庁からは研究不正と認定されないこと。

【ふ】

ふせいこういはない【不正行為はない】不正行為がない場合には、不正疑惑に関する調査報告を公表しなくてよいという時代錯誤な規則を逆手にとって、不正行為を揉み消したい大学が使う言葉。「調査結果の概要(医学系研究科関係)(結論)申立のあった5名について不正行為はない」

(『現代ラボ用語の基礎知識』より)

 

WORDS WITHOUT DEEDS

東京大学の科学研究における行動規範

1 科学研究は、人類の幸福と社会の発展のために欠くべからざる活動である。科学研究の成果は公開されることにより研究者相互の厳密な評価と批判にさらされ、それに耐え抜いた知識が人類共有の財産として蓄積され活用される。科学研究に携わる者は、この仕組みのもとで人類社会に貢献する責務を負っており、またそれを誇りとしている。この科学者コミュニティの一員として、研究活動について透明性と説明性を自律的に保証することに、高い倫理観をもって努めることは当然である。
2 科学研究における不正行為は、こうした研究者の基本的な行動規準に真っ向から反するものである。のみならず、研究者の活動の場である大学に対する社会の信頼をいちじるしく損ない、ひいては科学の発展を阻害する危険をもたらす。それは、科学研究の本質そのものを否定し、その基盤を脅かす、人類に対する重大な背信行為である。それゆえ、科学研究を行うにあたっては、捏造、改ざん、盗用を行わないことはもとより、広く社会や科学者コミュニティによる評価と批判を可能とするために、その科学的根拠を透明にしなければならない。科学研究に携わる者は、実験・観測等の実施者、共同研究者、研究グループの責任者など立場のいかんを問わず、説明責任を果たすための具体的な措置をとらなければならない。
3 科学研究に携わる者の責任は、負託された研究費の適正使用の観点からも重要である。大学における科学研究を有形無形に支える無数の人々に思いをいたし、十分な説明責任を果たすことにより研究成果の客観性や実証性を保証していくことは、研究活動の当然の前提であり、それなしには研究の自由はあり得ない。その責任を果たすことによってこそ、東京大学において科学研究に携わる者としての基本的な資格を備えることができる。

行動規範及び規則制定にあたっての総長声明

科学研究は、人類が未踏の領域に挑戦して知の拡大をはかり、その成果を人類全体が共有して社会に還元することを目的とする活動である。科学研究において研究者は、科学的手法を用いた研究によって得られた知識を学術論文として公知のものとし、人類共有の資産として蓄積していく。それらの知識は、客観性や実証性に裏付けられたものであり、同時代もしくは後代の研究者による追試や評価を可能とするものであるがゆえに、その科学的根拠を科学者コミュニティが自ら保証するものである。近代科学の歴史の中で人類が築いて来たこの科学研究の作法にしたがって行動することは、研究者の活動の自明の前提であり、現代においても研究者の基本的な行動規準である。また、今日のように、科学研究が細分化し専門化する状況の中においては、研究者がこうした行動規準を確実に遵守していることを、より積極的に社会に説明することが求められる。東京大学は大学憲章において研究の説明責任の重要さを掲げており、東京大学において科学研究に携わる者はそれを当然の原理としてきている。しかしながら近時、この自明のはずの研究作法が遵守されていないのではないかという疑いをよぶ事態が生じていることは、まことに遺憾であると言わなければならない。大学は、科学研究を行うとともにそれを次世代に伝えるという教育機関としての責務を負っており、研究にあたっての行動規準は学問の自由と一体のものとして、きわめて厳格に遵守されなければならない。この規準に対する違反は大学の存立の根幹を脅かす重大な行為であり、大学がそうした違反を防止するための自律的な取組みを責任をもって行うことは、大学の自治の一部である。そこで、このたび、東京大学として、科学研究の基本的な作法を行動規範として再確認するとともに、この行動規範を大学が自ら担保するための委員会制度を規則として定めることとした。こうした行動規範は、東京大学で科学研究に携わる者すべてが当然に血肉化しているはずのものであるが、万一の違反行為に対していっそう厳正かつ確実な対応が行われるようにすることが、あえてここに明文化することの目的である。今後、研究費の獲得をめぐる競争が激しくなる中でも、科学研究の原点に対する意識をたえず喚起し、研究者が相互に忌憚なく論じ合える風通しのよい研究環境を整えることによって、東京大学における科学研究の質をさらに高めていくことに努めたいと考えている。

(引用元:PDF 東京大学)*太字強調は当サイト

上の東大の声明は平成18年3月のもので、非常に力強い言葉です。残念ながらこの決意を今の東大執行部が反故にしてしまったようです。行動が伴わない言葉に、どれほどの意味があるというのでしょうか?

 

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

東京大学が医学部研究不正疑惑論文に関する調査報告書を国民に開示しないのは違法

法律の専門家ら(総務省の審査部会)によれば、東大現執行部が不正調査資料の公開を拒んでいるのは理由に正当性がなく違法だとのことです。結論の部分だけ先に紹介。

22報論文に関する調査報告書」(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。((独情)056 総務省 PDF

別紙に掲げる4文書(以下,併せて「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。
別紙(本件対象文書)
文書1 調査班会議資料
文書2 部局調査結果報告書
文書3 個別の論文説明資料
文書4 ヒアリング反訳資料
((独情)059 総務省 PDF

平成28年度 科学研究行動規範委員会資料」(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。((独情)057 総務省 PDF)

平成29年度 科学研究行動規範委員会資料」(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。((独情)058 総務省 PDF)

以下、総務省のウェブサイトで公開されている答申(PDF)の内容を転載します。それぞれの大見出しは当サイトがつけたものです。なお、文書内の「一部開示」というのは言葉が紛らわしいですが、大部分を墨塗りにしてどうでもいい部分だけを部分的に開示したり、複数の資料があった中のどうでもよい資料のごく一部だけを開示したりしていることであり、実質的には全面的な不開示の様相です。

 

東京大学が公文書『医学部研究不正疑惑に関する「22報論文に関する調査報告書」』を国民に開示しないのは違法

諮問庁:国立大学法人東京大学
諮問日:平成30年6月14日(平成30年(独情)諮問第37号)
答申日:令和元年12月2日(令和元年度(独情)答申第56号)
事件名:22報論文に関する調査報告書の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1 審査会の結論

「22報論文に関する調査報告書」(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。

第2 審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成30年2月9日付け第2017-58号により国立大学法人東京大学(以下「東京大学」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。

2 審査請求の理由

(1)不開示とした理由には根拠や正当性がない

過去の会議の日時を公開することは,会議の開催頻度を公開することになり事業遂行に支障があるというが,会議の開催頻度は目的やそのときどきの状況により異なるのが通常であろうから,今回の不正調査の会議の日時を公開したからといって,それが今後の不正調査等の会議開催頻度においてなんらかの縛りを与えるものにはならず,支障があるとは考えられない。

調査委員会の構成員名を公にすると,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるというが,これは理屈が全く逆である。意思決定の中立性を保証するためには,構成員名を公にすべきである。支障をきたす場合があるとすれば,それは委員の構成に中立性がなかった場合のみであるから,この部分を開示できないというのは,そのような疑念を生じさせる。この疑念を払拭させるためには,開示する必要がある。

審議,検討又は協議に関する情報を開示すると,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがある,というのも論理が逆になっていて,不開示の根拠にならない。調査書の目的の一つは,調査が公正に行われたことを示すことである。第三者の研究者からみてデータ捏造としか考えられないような多数の図表がなぜ不正と認定されなかったのか,どのような審議,検討がなされた結果そうなったのかを明らかにしない限り,不正なしという意思決定が中立性のもとに下されたかどうかの疑念が払拭されない。

内容確認に係る事務に関する情報を開示すると,当該事務及び事業の適正な遂行に支障があるおそれ,という理由も理由になっていない。内容確認の意味が不明であるが,これが研究不正を疑われた論文著者らの釈明や実験データの存在の有無などの内容を指すのであれば,むしろ開示することにより,内容確認が適正に遂行されたかどうかを明らかにできるはずである。

研究に関する情報を開示するとその公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれがあるという理由は,まったくもってナンセンスである。研究者が論文発表を行う場合には,どのようにして実験データが得られて,どのようなデータ処理によって論文の図表を作成したかの記述は論文の中に含めるのが通常である。研究者が不正に手を染めずにまっとうに研究をしているかぎり,論文作成にいたるプロセスの全てを公開することになんの支障もないのが,普通の研究者の感覚である。論文著者が実験ノートの片隅に殴り書きしたようなその場限りの思いつきといったものならいざしらず,このような大学の公式な最終報告書に記載された研究に関する情報が開示できない理由はない。

(2)不開示の決定は東大の行動規範に反する

「東京大学の科学研究における行動規範」には研究者の責務として,「研究活動について透明性と説明性を自律的に保証する」,「広く社会や科学者コミュニティによる評価と批判を可能とするために,その科学的根拠を透明にしなければならない」,「十分な説明責任を果たすことにより研究成果の客観性や実証性を保証していくことは,研究活動の当然の前提」といった文言が並んでいるが,不正の疑いが研究者の目からみて非常に濃いにもかかわらず調査報告書を不開示とするのは,科学者コミュニティによる評価や批判を不可能にしており,不正であるとする科学的根拠が不透明なものになっている。

不正の疑義がなぜ晴れるのかの説明を公表しないということは,これらの疑惑論文の研究成果の客観性が保証されていないということである。そのような疑惑に満ちた論文業績に基づいてこれらの論文著者らが数億円規模の研究費(=税金)を獲得しているのは,到底許容されない。

(3)不開示の決定は文科省のガイドラインに反する

論文の図に疑問がある場合に,論文読者が論文筆者に質問したり,議論したりすることは,科学者,研究者の間ではごく普通のことであり,疑義を呈された図に関してどのような過程で図が作成されたのかを説明することは,著者や研究機関の誰にとっても,何の不利益も生じ得ない。わざわざ隠す理由などどこにもない。

科学コミュニケーションを著しく阻害する東大執行部の行為は,東大自身の規範及び文科省が示す「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」の文言「研究者間相互の吟味・批判によって成り立つチェックシステムが不可欠である。」という精神に真っ向から対立するものであり,到底許されざることである。

(4)理学系と医学系における研究倫理にダブルスタンダードを持ち込んでいる

分生研の論文も同時に告発されているが,告発内容は同程度もしくは量,質においてそれ以上の悪質性があると見受けられる。それにもかかわらず,分生研の論文のみに不正を認め,医学系論文にはまったく不正行為がなかったという判断は,信じがたく,もし東大がそう主張したいのであれば,通常の研究者に対して信じるに足る説明を行う責任がある。そうでなければ,東大執行部が医学部の不正隠蔽を目的に,不開示の権限を乱用しているとしか考えられない。

(5)納税者への説明責任をまったく果たしていない

東大は,年間1000億円近い研究費,交付金を得ており,この巨額な資金が東大の研究者によって適正に使われていることを納税者に対する説明責任がある。研究不正の疑義に関する調査報告書を公開しないということは,この説明責任を放棄する行為である。

(6)発表論文は公開されており報告書で非公開とする理由がない

学術誌に掲載された論文は,著者名や所属が明記されており,これらは公開されている以上,個人情報の保護対象にする理由がない。不正疑惑を指摘された論文リスト及び告発内容も,特定ニュースの複数の記事のリンクから閲覧可能であり,事実上,公開されている。よって,論文リストや告発内容の部分を不開示とする理由もない。研究者コミュニティにおいては,実験結果や実験方法に関して読者が疑問を持てば,論文著者らに対して気軽に質問し回答を得るという文化が定着している。このような研究者間のコミュニケーションの常識に照らせば,不正が疑われるような図表の作成がどのように行われたのかの調査結果を公開することは,研究者コミュニティ内の通常の活動の範疇でしかなく,なんら著者や所属機関に不利益をもたらすものではない。仮に不利益が生じるとすれば,それは不開示により隠蔽されていたデータ捏造が露呈する場合のみであろう。

(7)不開示は公共の利益を著しく損なう

このような調査報告書の不開示がまかりとおるなら,東大医学部においてはデータ捏造がやり放題であり,それで特定雑誌等の一流誌に論文を掲載して,その業績により何億円もの研究費を獲得するということがまかり通ることになってしまう。このような行為は,日本の科学研究の進展を著しく阻害するものであり,また,特に医学部でこのような不正活動が放任されるのであれば,本来は病気や患者のための医科学研究であるべきであるのに,患者の期待に対する重大な裏切り行為でもある。

東大が公開されて当然の最終報告書を不公開にしたこと,論文著者らが告発後,反論も訂正も論文撤回もせずに1年以上沈黙していることなどを考えれば,これらが単なる図表の取扱いミスであったと考える合理性はほとんどなく,これらの状況に対するもっとも合理的な説明(仮説)は,重大な不正行為があったとするものである。東大はこの仮説を反証する証拠(今回不開示とされたすべての資料)を公開して,私の仮説が間違っていたことを証明していただきたい。研究不正を隠蔽する工作自体も,新たな研究不正であることから,不開示を認めてしまうと組織的な不正を阻止する手段が完全に失われてしまうことになり,反社会的で公益に反するこのような隠蔽行為を認める訳にはいかない。

第3 諮問庁の説明の要旨

1 本件対象文書について不開示とした理由について

本件対象文書は,「22報論文に関する調査報告書」である。本学では,研究不正の事案については,科学研究行動規範委員会において調査を行っているが,22報論文に関する調査報告書については,以下の理由に該当する部分について不開示とする決定を行った。

(1)当該委員会の開催日時については,本学として当該委員会をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

(2)当該委員会委員長以外の委員名及び部局内調査班班長以外の構成員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

(3)調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。
これについて,審査請求人は,平成30年4月16日受付けの審査請求書のなかで,原処分の取消しを求めている。

2 審査請求人の主張について

審査請求人は,「肝心な部分が全部黒塗りでは,実質的に全面的な不開示と変わらない。全面的な開示,最低でも研究(疑惑の論文の図の説明)に関する記述は全て公開すべきである。」と主張し,「今回の不正調査の会議の日時を公開したからといって,それが今後の不正調査等の会議開催頻度においてなんらかの縛りを与えるものにはならず,支障があるとは考えられない。調査委員会構成員を公表できないというのは,それは委員の構成に中立性がなかった場合のみであり,この疑念を払拭させるには開示する必要がある。審議,検討に関する情報は,どのような審議,検討がなされた結果そうなったのかを明らかにしない限り,不正なしという意思決定が中立性のもとに下されたかどうかの疑念が払拭されない。内容確認に係る事務についても,むしろ開示することにより内容確認が適正に遂行されたかどうか明らかにできるはずである。研究に関する情報についても,大学として公式な最終報告書に記載された研究に関する情報が開示できない理由はない。」不開示の決定は,東大の科学研究における行動規範に反している,不開示の決定は文科省のガイドラインに反する,理学系と医学系における研究倫理にダブルスタンダードを持ち込んでいる,納税者への説明責任をまったく果たしていない,発表論文は公開されており,報告書で非公開とする理由がない,不開示は公共の利益を著しく損なう。」等と主張している。

しかしながら,22報論文に関する調査報告書は,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため開示することはできない。

また,当該委員会開催日や当該委員会委員長・部局内調査班班長以外の委員名・構成員についても上記1にある不開示理由により開示することはできない。研究不正の調査については,その判定結果の如何によらず,対象となる研究者の研究活動に大きな影響を与えるものであり,係る調査については,限りなく公平中立なものとして実施されなければならないと理解している。調査の内容について必要以上に開示することは,調査機関として担保すべき,正確な事実の把握,率直な意見の交換,意思決定の中立性などを困難にするおそれがあり,ひいては,調査機関として行う不正行為の判定結果の信頼性をも損なうことになる。また,「不正なし」と認定した場合には,これらの要請に加えて,不正行為の認定がなされなかった被申立者への配慮も当然考慮すべき事項となってくる。そのため,今回開示した内容については,上記の理由から必要かつ十分なものであると認識としている。したがって,本学の決定は妥当なものであると判断する。以上のことから,諮問庁は,本件について原処分維持が妥当と考える。

第4 調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成30年6月14日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同月28日 審議
④ 令和元年9月5日 本件対象文書の見分及び審議
⑤ 同年10月17日 審議
⑥ 同年11月7日 審議
⑦ 同月28日 審議

第5 審査会の判断の理由

1 本件対象文書について

本件開示請求は,本件対象文書の開示を求めるものである。処分庁は,本件対象文書の一部について,法5条3号並びに4号柱書き,
ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とする原処分を行った。これに対して,審査請求人は,原処分の取消しを求めている。

2 理由の提示について

(1)開示請求に係る行政文書の一部又は全部を開示しないときには,法9条1項及び2項に基づき,当該決定をした旨の通知をしなければならず,この通知を行う際には行政手続法8条に基づく理由の提示を書面で行うことが必要である。理由の提示の制度は,処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨から設けられているものである。かかる趣旨に照らせば,この通知に提示すべき理由としては,開示請求者において,不開示とされた箇所が法5条各号の不開示理由のいずれに該当するのかが,その根拠とともに了知し得るものでなければならず,当該法人文書及び不開示箇所を特定できる記載がなければ,開示請求者に,その種類,性質等が分からず,通常,求められる理由の提示として十分とはいえない。

(2)当審査会において原処分の法人文書開示決定通知書(以下「通知書」という。)を確認したところ,「不開示とした部分とその理由」欄には,以下のとおり記載されている。

「①当該調査委員会の開催日時については,本学として当該会議をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

②当該調査委員会委員長以外の委員名及び部局内調査班
班長以外の構成員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

③調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障が生じるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障をおよぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するとして不開示とする。」

(3)上記(2)①ないし③の理由で不開示とした部分のうち,③の理由で不開示とした部分は,調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,「審議,検討又は協議に関する情報」,「本学の事務及び事業に関する情報」,「内容確認に関する情報」,「研究に関する情報」及び「人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報」に該当するものと抽象的な記載にとどまり,具体的な不開示部分が特定されておらず,頁単位での特定もされていない。また,不開示とされた部分に記載された「審議,検討又は協議に関する情報」や「本学の事務及び事業に関する情報」が,研究不正に係る調査委員会のどのような審議や検討等に関するものか,東京大学のいかなる事務や事業に関するものかといったことも全く不明である上,不開示事由についても,複数の不開示条項の規定をほぼそのまま引用したに等しい内容が書かれているにすぎない。例えば,不開示部分を公にすることによって,法5条3号にいう「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があるとする場合には,何に関する情報を公にすることにより,どのような者から誰に対していかなる圧力や干渉等が加えられることが考えられるのかといったことを示す必要があるところ,通知書では,これらが何も示されておらず,当該各不開示事由に該当すると判断した理由を具体的に示しているとは認められない。そして,当審査会において,本件対象文書を見分したところ,本件対象文書の不開示部分は多数の箇所が文字ないし頁単位で不開示とされていることが認められ,この見分結果及び上記(2)③の不開示理由の記載を踏まえると,上記(2)③の理由で不開示とされた部分は,本件対象文書の不開示部分のどの箇所であるのかを正確に把握できない。また,上記(2)①の理由で不開示とした部分は,不開示とされた情報の内容が「当該委員会の開催日時」と具体的に示されており,一部推測できる部分もあるが,具体的な不開示部分の特定がされていないことから,上記(2)①又は③のいずれの不開示部分に該当するのか正確に把握できない部分もあり,必ずしも明らかにされているとはいえない。なお,上記(2)②の理由で不開示とした部分は,「当該委員会委員長名及び部局内調査班班長以外の構成員名」と記載されており,具体的な不開示部分の特定はされていないものの,不開示とされた情報の内容
及び理由は示されていることから,直ちに理由の提示に不備があるとはいえないと思われるが,文書を全体としてみた場合,上記(2)③に該当する部分がほとんどであり,本件一部開示決定は,全体として理由の提示に不備があるといわざるを得ない。

(4)また,本件開示実施文書を確認したところ,不開示部分がある各頁の上部等には,不開示条項が付記されているが,これを理由の提示又はそれを補うものと見ることはできない。

(5)したがって,原処分は,理由の提示の要件を欠くといわざるを得ず,法9条2項の趣旨及び行政手続法8条1項に照らして違法であり,取り消すべきである。

3 本件一部開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とした決定については,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきであると判断した。

(第4部会)委員 山名 学,委員 常岡孝好,委員 中曽根玲子

 

東京大学が公文書「医学部の部局調査結果報告書等」を国民に公開しないのは違法

諮問庁:国立大学法人東京大学
諮問日:平成30年6月14日(平成30年(独情)諮問第40号)
答申日:令和元年12月2日(令和元年度(独情)答申第59号)
事件名:大学院医学系研究科・医学部が保有する部局調査結果報告書等の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1 審査会の結論

別紙に掲げる4文書(以下,併せて「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。

第2 審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成30年2月9日付け第2017-58号の4号により国立大学法人東京大学(以下「東京大学」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。

2 審査請求の理由

研究に関する情報を不開示にする理由として,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれがあるとしているが,これには根拠がない。なぜなら,論文のデータに疑問が生じたときに,論文読者である研究者が論文著者に連絡をとって質問し,回答を得るという行為は通常研究者コミュニティにおいて当たり前のように行われている行為であって,何らかの支障を生じる恐れは全くないからである。

今回の研究不正告発により,一般の研究者の常識からは理解できないような不適切な論文図表の数々が指摘されたわけであるから,著者からの聞き取り調査の資料を全面的に公開するのは,通常行われている科学コミュニケーションの範疇でしかなく,不開示とする理由にはなり得ない。科学者同士のコミュニケーションを阻害する不開示は,「東京大学の科学研究における行動規範」にある文言,「広く社会や科学者コミュニティによる評価と批判を可能とするために,その科学的根拠を透明にしなければならない」にも反している。このような言行不一致は断じて許されない。

第3 諮問庁の説明の要旨

1 本件対象文書について不開示とした理由について

本件対象文書は,医学系研究科の「調査班会議資料」,「部局調査結果報告書」,「個別の論文説明資料」及び「ヒアリング反訳資料」である。本学では,研究不正の事案については,科学研究行動規範委員会において調査を行っているが,本件対象文書は,以下の理由に該当する部分について不開示とする決定を行った。

(1)当該会議の開催日時・回数・場所については,本学として当該会議をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

(2)調査委員会委員長以外の委員名及び部局内調査班班長以外の構成員については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

(3)当該会議資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。

(4)個別の論文説明資料,ヒアリング反訳資料については,上述と同様な理由により不開示とする。

(5)調査結果報告書のうち,上述に該当する部分については同様な理由により不開示とする。

(6)個人名その他個人を識別できる情報であって,法第5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないものが記されている部分を不開示とする。これについて,審査請求人は,平成30年4月16日受付けの審査請求書のなかで,原処分の取消しを求めている。

2 審査請求人の主張について

審査請求人は,「一連の法人文書開示を求める最大の理由は,理学系論文と医学系論文が別々の調査委員会によって調査され,研究者の目からすれば同じような悪質なデータ捏造の疑いがあるにもかかわらず,理学系論文が厳格に不正認定されたのに対して,医学系論文の不正が一切認定されなかったいきさつを明らかにするためである。医学系論文に関して個別の説明がなく,告発された図の不適切さをパターンごとに整理して,個別には不正の度合いを明らかでなくしている。「部局調査報告書」にある「Ⅱ.各論文に対する部局内調査の結果」というセクションの開示は絶対に必要である。また,同様の理由により「個別の論文説明資料」及び「ヒアリング反訳資料」の中の,研究に関する一切の部分の開示も求める。研究に関する情報を不開示にする理由として,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれがあるとしているが,論文のデータに疑問が生じたときに,論文読者である研究者が論文著者に連絡をとって質問し,回答を得るという行為は通常研究者コミュニティにおいて当たり前であり,何らかの支障が生じる恐れは全くないからである。著者からの聞き取り調査資料を全面的に公開するのは,通常行われている科学コミュニティの範疇でしかなく,不開示とする理由にはなり得ない。「東京大学の科学研究における行動規範」にある「広く社会や科学者コミュニティによる評価と批判を可能とするためには,その科学的根拠を透明にしなければならない」にも反しており,このような言行不一致は断じて許されない」等と主張している。

しかしながら,部局調査班会議資料については,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため開示することはできない。

また,当該委員会開催日時や当該委員会委員長以外の委員名についても上記1にある不開示理由により開示することはできない。また,「個別の論文説明資料」については,研究者一個人の研究ノートや生データの根拠を記載した私的メモであり,研究者の公正かつ能率的な研究の遂行を不当に阻害するおそれがあるとともに,本資料は研究不正の調査のために本学が提供を受けて大学として保有しているものであり,この種の資料を開示すると今後の調査に支障を及ぼすため,開示することはできない。ヒアリング反訳資料については,プライバシー遵守を前提に,今回の調査の目的のみにヒアリングを実施しており,ヒアリング内容が公開されてしまうと今後同種の調査において関係者が申告を拒んだり,真実を申告することを回避する等の事態を誘発するおそれがあるとともに,かかる情報の開示は,当該事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれもあるため開示できない。研究不正の調査については,その判定結果の如何によらず,対象となる研究者の研究活動に大きな影響を与えるものであり,係る調査については,限りなく公平中立なものとして実施しなければならないと理解している。調査の内容について必要以上に開示することは,調査機関として担保すべき,正確な事実の把握,率直な意見の交換,意思決定の中立性などを困難にするおそれがあり,ひいては,調査機関として不正行為の判定結果の信頼性をも損なうことになる。

また,「不正なし」と認定した場合には,これらの要請に加えて,不正行為の認定がなされなかった被申立者への配慮も当然考慮すべき事項となってくる。そのため,今回開示した内容については,上記の理由から必要かつ十分なものであると認識している。したがって,本学の決定は妥当なものであると判断する。

以上のことから,諮問庁は,本件について原処分維持が妥当と考えている。

第4 調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成30年6月14日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同月28日 審議
④ 令和元年9月5日 本件対象文書の見分及び審議
⑤ 同年10月17日 審議
⑥ 同年11月7日 審議
⑦ 同月28日 審議

第5 審査会の判断の理由

1 本件対象文書について

本件開示請求は,本件請求文書の開示を求めるものであり,処分庁は,本件対象文書を特定し,その一部を法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とする原処分を行った。これに対して,審査請求人は,原処分の取消しを求めている。

2 理由の提示について

(1)開示請求に係る行政文書の一部又は全部を開示しないときには,法9条1項及び2項に基づき,当該決定をした旨の通知をしなければならず,この通知を行う際には行政手続法8条に基づく理由の提示を書面で行うことが必要である。理由の提示の制度は,処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨から設けられているものである。かかる趣旨に照らせば,この通知に提示すべき理由としては,開示請求者において,不開示とされた箇所が法5条各号の不開示理由のいずれかに該当するのかが,その根拠とともに了知し得るものでなければならず,当該法人文書及び不開示箇所を特定できる記載がなければ,開示請求者に,その種類,性質等が分からず,通常,求められる理由の提示としては十分とはいえない。

(2)当審査会において原処分の法人文書開示決定通知書(以下「通知書」という。)を確認したところ,「不開示とした部分とその理由」欄には,以下のとおり記載されている。

「①当該会議の開催日時・回数・場所については,本学として当該会議をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

②調査委員会委員長以外の委員名及び部局内調査班班長以外の構成員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

③当該会議資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障が生じるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。

④個別の論文説明資料(1214枚1214頁),ヒアリング反訳資料(291枚291頁)については,上述と同様な理由により不開示とする。

⑤調査結果報告書のうち,上述に該当する部分については同様な意
見により不開示とする。

⑥個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないものが記されている部分を不開示とする。」

(3)上記(2)①ないし⑥の理由で不開示とした部分のうち,③の理由で不開示とした部分は,当該会議資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,「審議,検討又は協議に関する情報」,「本学の事務及び事業に関する情報」,「内容確認に係る事務に関する情報」,「研究に関する情報」及び「人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報」と抽象的な記載にとどまり,具体的な不開示部分が特定されておらず,頁単位での特定もされていない。

また,不開示とされた部分に記載された「審議,検討又は協議に関する情報」や「本学の事務及び事業に関する情報」が,研究不正に係る調査委員会のいかなる審議や検討等に関するものか,東京大学のいかなる事務や事業に関するものかといったことも全く不明である上,不開示事由についても,複数の不開示条項の規定をほぼそのまま引用したに等しい内容が書かれているにすぎない。

例えば,不開示部分を公にすることによって,法5条3号にいう「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があるとする場合には,何に関する情報を公にすることにより,どのような者から誰に対していかなる圧力や干渉等が加えられることが考えられるのかといったことを示す必要があるところ,通知書では,これらが何も示されておらず,当該各不開示事由に該当すると判断した理由を具体的に示しているとは認められない。

(4)次に,上記(2)④の理由については,文書3及び文書4の名称が記載されているものの,不開示部分の理由が「上述と同様な理由」としか記載されておらず,どのような情報が,どの理由で不開示とされたのか何ら説明されておらず,文書3及び文書4の全てが上記(2)①ないし③の理由全てに該当するのか,一部がいずれかの理由に該当し,結果として全部が不開示となったのかも不明である。

(5)さらに,上記(2)⑤の理由で不開示とした部分は,調査結果報告書のうち,「上述に該当する部分」としか記載されておらず,不開示とされた部分も,そこに記載された情報の内容も,上記(2)の①ないし③のいずれの理由に該当するのかも説明されていない。

(6)そして,上記(2)⑥の理由で不開示とした部分は,具体的な不開示部分の特定はされておらず,頁単位での特定もされていない上,「個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないもの」としか記載されておらず,本件対象文書にどのような情報が記載されているか不明である。

(7)当審査会において,本件対象文書を見分したところ,本件対象文書の不開示部分は多数の箇所が文字ないし頁単位で不開示とされていることが認められ,この見分結果及び上記(2)③ないし⑥の不開示理由の記載を踏まえると,上記(2)③ないし⑥の理由で不開示とされた部分は,本件対象文書の不開示部分のどの箇所であるのかを正確に把握できない。なお,上記(2)①及び②の理由で不開示とした部分は,「当該会議の開催日時・回数・場所」,「調査委員会委員長以外の委員名及び部局内調査班班長以外の構成員名」と記載されており,具体的な不開示部分の特定はされていないものの,不開示とされた情報の内容及び理由は示されていることから,直ちに理由の提示に不備があるとはいえないと思われるが,文書を全体としてみた場合,上記(2)③ないし⑤に該当する部分がほとんどであり,本件一部開示決定は,全体として理由の提示に不備があるといわざるを得ない。

(8)また,本件開示実施文書を確認したところ,不開示部分がある各頁の上部には,不開示条項が付記されているが,これを理由の提示又はそれを補うものと見ることはできない。

(9)したがって,原処分は,理由の提示の要件を欠くといわざるを得ず,法9条2項の趣旨及び行政手続法8条1項に照らして違法であり,取り消すべきである。

3 本件一部開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とした決定については,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきであると判断した。

(第4部会)委員 山名 学,委員 常岡孝好,委員 中曽根玲子

別紙(本件対象文書)

文書1 調査班会議資料
文書2 部局調査結果報告書
文書3 個別の論文説明資料
文書4 ヒアリング反訳資料

 

東京大学が公文書「平成28年度科学研究行動規範委員会資料」を国民に開示しないのは違法

諮問庁:国立大学法人東京大学
諮問日:平成30年6月14日(平成30年(独情)諮問第38号)
答申日:令和元年12月2日(令和元年度(独情)答申第57号)
事件名:平成28年度科学研究行動規範委員会資料の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1 審査会の結論

「平成28年度 科学研究行動規範委員会資料」(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。

第2 審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成30年2月9日付け第2017-58の2号により国立大学法人東京大学(以下「東京大学」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。

2 審査請求の理由

22報論文の研究不正を告発した申立書は,東大が不正調査を適切に行ったかどうかを判断する上で重要である。発表論文には著者名や図表作成の方法などが公開されており,論文データに関する疑問は特定ウェブサイトや学術誌の論文掲載ウェブページなどインターネット上で活発に議論されることが普通である。告発内容を公表したからといって,研究の遂行が阻害されることはないし,その他,理由として挙げられたどの項目にも当てはまるものではない。告発内容は,特定ニュースなどの複数の記事で詳細に解説されており,リンクをたどれば告発文書そのものも閲覧できる状態にある。このようにほとんど公開されている告発内容を不開示にしないと業務に支障をきたすということは考えにくく,不開示の理由にならない。

第3 諮問庁の説明の要旨

1 本件対象文書について不開示とした理由について

本件対象文書は,「平成28年度 科学研究行動規範委員会資料」である。本学では,研究不正の事案については,科学研究行動規範委員会において調査を行っているが,当該委員会資料は,以下の理由に該当する部分について不開示とする決定を行った。

(1)当該委員会の開催日時については,本学として当該委員会をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

(2)当該委員会委員長以外の委員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

(3)当該委員会資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。これについて,審査請求人は,平成30年4月16日受付けの審査請求書のなかで,原処分の取消しを求めている。

2 審査請求人の主張について

審査請求人は,「22報論文の研究不正を申告した申立書は,東大が不正調査を適切に行ったかどうかを判断する上で重要である。発表論文には著者名や図表作成の方法などが公開されており,論文データに関する疑問は特定ウェブサイトや学術誌の論文掲載ウェブページなどインターネット上で活発に議論されることが普通である。告発内容を公表したからといって,研究の遂行が阻害されることはないし,その他,理由として挙げられたどの項目にも当てはまるものではない。告発内容は,特定ニュースなどの複数の記事で詳細に解説されており,リンクをたどれば告発文書そのものも閲覧できる状態にある。このようにほとんど公開されている告発内容を不開示にしないと業務に支障をきたすということは考えにくく,不開示
の理由にはならない。」等と主張している。

しかしながら,告発内容のわかる文書を本学として公表していることはなく,その内容についても,関係部局や研究者等に確認するためにも最初の科学研究行動規範委員会の資料としていたところである。告発文書並び予備調査結果文書については,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その構成かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため開示することはできない。

また,当該委員会開催日時や当該委員会委員長以外の委員名についても上記1にある不開示理由により開示することはできない。研究不正の調査については,その判定結果の如何によらず,対象となる研究者の研究活動に大きな影響を与えるものであり,係る調査については,限りなく公平中立なものとして実施しなければならないと理解している。調査の内容について必要以上に開示することは,調査機関として担保すべき,正確な事実の把握,率直な意見の交換,意思決定の中立性などを困難にするおそれがあり,ひいては,調査機関として行う不正行為の判定結果の信頼性をも損なうことになる。

また,「不正なし」と認定した場合には,これらの要請に加えて,不正行為の認定がなされなかった被申立者への配慮も当然考慮すべき事項となってくる。そのため,今回開示した内容については,上記の理由から必要かつ十分なものであると認識している。したがって,本学の決定は妥当なものであると判断する。

以上のことから,諮問庁は,本件について原処分維持が妥当と考える。

第4 調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成30年6月14日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同月28日 審議
④ 令和元年9月5日 本件対象文書の見分及び審議
⑤ 同年10月17日 審議
⑥ 同年11月7日 審議
⑦ 同月28日 審議

第5 審査会の判断の理由

1 本件対象文書について

本件開示請求は,本件対象文書の開示を求めるものである。処分庁は,本件対象文書の一部について,法5条3号並びに4号柱書き,
ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とする原処分を行った。これに対し,審査請求人は原処分の取消しを求めている。

2 理由の提示について

(1)開示請求に係る行政文書の一部又は全部を開示しないときには,法9条1項及び2項に基づき,当該決定をした旨の通知をしなければならず,この通知を行う際には行政手続法8条に基づく理由の提示を書面で行うことが必要である。理由の提示の制度は,処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨から設けられているものである。かかる趣旨に照らせば,この通知に提示すべき理由としては,開示請求者において,不開示とされた箇所が法5条各号の不開示理由のいずれかに該当するのかが,その根拠とともに了知し得るものでなければならず,当該法人文書及び不開示箇所を特定できる記載がなければ,開示請求者に,その種類,性質等が分からず,通常,求められる理由の提示としては十分とはいえない。

(2)当審査会において原処分の法人文書開示決定通知書(以下「通知書」という。)を確認したところ,「不開示とした部分とその理由」欄には,以下のとおり記載されている。

「①当該委員会の開催日時については,本学として当該会議をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

②当該委員会委員長以外の委員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

③当該委員会資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障が生じるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。」

(3)上記(2)①ないし③の理由で不開示とした部分のうち,③の理由で不開示とした部分は,当該委員会資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,「審議,検討又は協議に関する情報」,「本学の事務及び事業に関する情報」,「内容確認に係る事務に関する情報」,「研究に関する情報」及び「人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報」と抽象的な記載にとどまり,具体的な不開示部分が特定されておらず,頁単位での特定もされていない。また,不開示とされた部分に記載された「審議,検討又は協議に関する情報」や「本学の事務及び事業に関する情報」が,研究不正に係る調査委員会のどのような審議や検討等に関するものか,東京大学のいかなる事務や事業に関するものかといったことも全く不明である上,不開示事由についても,複数の不開示条項の規定をほぼそのまま引用したに等しい内容が書かれているにすぎない。

例えば,不開示部分を公にすることによって,法5条3号にいう「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があるとする場合には,何に関する情報を公にすることにより,どのような者から誰に対していかなる圧力や干渉等が加えられることが考えられるのかといったことを示す必要があるところ,通知書では,これらが何も示されておらず,当該各不開示事由に該当すると判断した理由を具体的に示しているとは認められない。そして,当審査会において,本件対象文書を見分したところ,本件対象文書の不開示部分は多数の箇所が文字ないし頁単位で不開示とされていることが認められ,この見分結果及び上記(2)③の不開示理由の記載を踏まえると,上記(2)③の理由で不開示とされた部分は,本件対象文書の不開示部分のどの箇所であるのかを正確に把握できない。なお,上記(2)①及び②の理由で不開示とした部分は,「当該委員会の開催日時」,「当該委員会委員長以外の委員名」と記載されており,具体的な不開示部分の特定はされていないものの,不開示とされた情報の内容及び理由は示されていることから,直ちに理由の提示に不備があるとはいえないと思われるが,文書を全体としてみた場合,上記(2)③に該当する部分がほとんどであり,本件一部開示決定は,全体として理由の提示に不備があるといわざるを得ない。

(4)また,本件開示実施文書を確認したところ,不開示部分がある各頁の上部には,不開示条項が付記されているが,これを理由の提示又はそれを補うものと見ることはできない。

(5)したがって,原処分は,理由の提示の要件を欠くといわざるを得ず,法9条2項の趣旨及び行政手続法8条1項に照らして違法であり,取り消すべきである。

3 本件一部開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とした決定については,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきであると判断した。

(第4部会)委員 山名 学,委員 常岡孝好,委員 中曽根玲子

 

東京大学が公文書「平成29年度科学研究行動規範委員会資料」を国民に開示しないのは違法

諮問庁:国立大学法人東京大学
諮問日:平成30年6月14日(平成30年(独情)諮問第39号)
答申日:令和元年12月2日(令和元年度(独情)答申第58号)
事件名:平成29年度科学研究行動規範委員会資料の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1 審査会の結論

「平成29年度 科学研究行動規範委員会資料」(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定は,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきである。

第2 審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成30年2月9日付け第2017-58号の3号により国立大学法人東京大学(以下「東京大学」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求める。

2 審査請求の理由

「22報論文に関する調査報告書」において裁定が導かれる過程は,論理的に矛盾している。論文の図のデータは実験で得られた数値とはほとんど異なります。でも不正ではありません。という非倫理的な裁定がどのような経緯で下されたのかを知るためには,この資料の開示が不可欠である。年間数百億円もの科学研究助成を受けている東京大学が,このような支離滅裂な物言いで不正なしの結論だけを発表するのは,あまりにも無責任すぎる。納税者や他の研究者が納得できる公正な議論が行われた証拠として,この文書を開示すべきである。不開示の理由として,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるとしているが,これは,全く逆の話であり,このような支離滅裂な裁定を何の説明もなしに公表したということは,意思決定の中立性が危ぶまれる状況なのであり,不開示の理由として適切ではない。

第3 諮問庁の説明の要旨

1 本件対象文書について不開示とした理由について

本件対象文書は,「平成29年度 科学研究行動規範委員会資料」である。本学では,研究不正の事案については,科学研究行動規範委員会において調査を行っているが,当該委員会資料は,以下の理由に該当する部分について不開示とする決定を行った。

(1)当該委員会の開催日時については,本学として当該委員会をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

(2)当該委員会委員長以外の委員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

(3)当該委員会資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。

(4)個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないものが記されている部分を不開示とする。これについて,審査請求人は,平成30年4月16日受付けの審査請求書のなかで,原処分の取消しを求めている。

2 審査請求人の主張について

審査請求人は,「文書には,研究不正の有無を裁定したときの資料が含まれているが,医学系研究科の不正疑惑論文に関して,「22報論文に関する調査報告書」の黒塗りされていない部分によれば,論文の図のデータと実験の生データ(オリジナルデータ)はほとんど一致しなかったにもかかわらず,不正なしという裁定が下された。これは研究者の常識に反する,極めて奇異な裁定であって,東京大学執行部が医学系研究科の研究不正を隠蔽しようとしているのではないかという疑念を生じさせるものである。この疑念を晴らすためには,どのようにしてこのような裁定が下されたのか,そのいきさつを東大が公開する責任がある。不開示の理由として,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるとしているが,これは全く逆の話であり,このような支離滅裂な裁定を何の説明もなしに公表したということは,意思決定の中立性が危ぶまれる状況なので,不開示の理由として適切ではない。」等と主張している。

しかしながら,裁定については,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障がでるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため開示することはできない。

また,当該委員会開催日時や当該委員会委員長以外の委員名についても上記1にある不開示理由により開示することはできない。研究不正の調査については,その判定結果の如何によらず,対象となる研究者の研究活動に大きな影響を与えるものであり,係る調査については,限りなく公平中立なものとして実施しなければならないと理解している。調査の内容について必要以上に開示することは,調査機関として担保すべき,正確な事実の把握,率直な意見の交換,意思決定の中立性などを困難にするおそれがあり,ひいては,調査機関として行う不正行為の判定結果の信頼性をも損なうことになる。

また,「不正なし」と認定した場合には,これらの要請に加えて,不正行為の認定がなされなかった被申立者への配慮も当然考慮すべき事項となってくる。そのため,今回開示した内容については,上記の理由から必要かつ十分なものであると認識している。したがって,本学の決定は妥当なものであると判断する。

以上のことから,諮問庁は,本件について原処分維持が妥当と考える。

第4 調査審議の経過

当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成30年6月14日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同月28日 審議
④ 令和元年9月5日 本件対象文書の見分及び審議
⑤ 同年10月17日 審議
⑥ 同年11月7日 審議
⑦ 同月28日 審議

第5 審査会の判断の理由

1 本件対象文書について

本件開示請求は,本件請求文書の開示を求めるものであり,処分庁は,本件対象文書を特定し,その一部を法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とする原処分を行った。これに対して,審査請求人は,原処分の取消しを求めている。

2 理由の提示について

(1)開示請求に係る行政文書の一部又は全部を開示しないときには,法9条1項及び2項に基づき,当該決定をした旨の通知をしなければならず,この通知を行う際には行政手続法8条に基づく理由の提示を書面で行うことが必要である。理由の提示の制度は,処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨から設けられているものである。かかる趣旨に照らせば,この通知に提示すべき理由としては,開示請求者において,不開示とされた箇所が法5条各号の不開示理由のいずれかに該当するのかが,その根拠とともに了知し得るものでなければならず,当該法人文書及び不開示箇所を特定できる記載がなければ,開示請求者に,その種類,性質等が分からず,通常,求められる理由の提示としては十分とはいえない。

(2)当審査会において原処分の法人文書開示決定通知書(以下「通知書」という。)を確認したところ,「不開示とした部分とその理由」欄には,以下のとおり記載されている。

「①当該委員会の開催日時については,本学として当該会議をどの程度の頻度で開催していることが公になることが本学にとっての当該事業の適正な遂行に支障がでるため,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。

②当該委員会委員長以外の委員名については,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれ
るおそれがあり,法5条3号に該当するため不開示とする。

③当該委員会資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,審議,検討又は協議に関する情報であって,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ,本学の事務及び事業に関する情報であって,当該事務及び事業の適正な遂行に支障が生じるおそれ,内容確認に係る事務に関する情報であって,正確な事実の把握を困難にするおそれ,研究に関する情報であって,その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ,及び人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報に該当する部分については,法5条3号,法5条4号柱書き,法5条4号ハ,法5条4号ホ及び法5条4号ヘに該当するため不開示とする。

④個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないものが記されている部分を不開示とする。」

(3)上記(2)①ないし④の理由で不開示とした部分のうち,③の理由で不開示とした部分は,当該委員会資料の調査の経緯,調査の概要,調査結果等に関する文書のうち,「審議,検討又は協議に関する情報」,「本学の事務及び事業に関する情報」,「内容確認に係る事務に関する情報」,「研究に関する情報」及び「人事管理の公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある情報」と抽象的な記載にとどまり,具体的な不開示部分が特定されておらず,頁単位での特定もされていない。また,不開示とされた部分に記載された「審議,検討又は協議に関する情報」や「本学の事務及び事業に関する情報」が,研究不正に係る調査委員会のどのような審議や検討等に関するものか,東京大学のいかなる事務や事業に関するものかといったことも全く不明である上,不開示事由についても,複数の不開示条項の規定をほぼそのまま引用したに等しい内容が書かれているにすぎない。

例えば,不開示部分を公にすることによって,法5条3号にいう「率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ」があるとする場合には,何に関する情報を公にすることにより,どのような者から誰に対していかなる圧力や干渉等が加えられることが考えられるのかといったことを示す必要があるところ,通知書では,これらが何も示されておらず,当該不開示事由に該当すると判断した理由を具体的に示しているとは認められない。

そして,当審査会において,本件対象文書を見分したところ,本件対象文書の不開示部分は多数の箇所が文字ないし頁単位で不開示とされていることが認められ,この見分結果及び上記(2)③の不開示理由の記載を踏まえると,上記(2)③の理由で不開示とされた部分は,本件対象文書の不開示部分のどの箇所であるのかを正確に把握できない。また,上記(2)④の理由で不開示とした部分は,「個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないもの」としか記載されておらず,本件対象文書にどのような情報が記載されているか不明であり,また,具体的な不開示部分の特定がされていないことから,上記(2)③又は④のいずれの不開示部分に該当するのか明らかではない。なお,上記(2)①及び②の理由で不開示とした部分は,「当該委員会の開催日時」,「当該委員会委員長以外の委員名」と記載されており,具体的な不開示部分の特定はされていないものの,不開示とされた情報の内容及び理由は示されていることから,直ちに理由の提示に不備があるとはいえないと思われるが,文書を全体としてみた場合,上記(2)③に該当する部分がほとんどであり,本件一部開示決定は,全体として理由の提示に不備があるといわざるを得ない。

(4)また,本件開示実施文書を確認したところ,不開示部分がある各頁の上部には,不開示条項が付記されているが,これを理由の提示又はそれを補うものと見ることはできない。

(5)したがって,原処分は,理由の提示の要件を欠くといわざるを得ず,法9条2項の趣旨及び行政手続法8条1項に照らして違法であり,取り消すべきである。

3 本件一部開示決定の妥当性について

以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ,ホ及びヘに該当するとして不開示とした決定については,理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきであると判断した。

(第4部会)委員 山名 学,委員 常岡孝好,委員 中曽根玲子

 

参考

  1. 事件名:22報論文に関する調査報告書の一部開示決定に関する件
  2. 事件名:大学院医学系研究科・医学部が保有する部局調査結果報告書等の一部開示決定に関する件
  3. 事件名:平成28年度科学研究行動規範委員会資料の一部開示決定に関する件
  4. 事件名:平成29年度科学研究行動規範委員会資料の一部開示決定に関する件
  5. 情報公開(独立行政法人等)令和元年度答申 051~(総務省)
  6. 22報論文に関する調査報告書」(一部不開示)
  7. 総務省 情報公開・個人情報保護審査会 委員名簿

 

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”アディポネクチン受容体”の機能 AdipoR1 and AdipoR2 maintain membrane fluidity in most human cell types and independently of adiponectin

トップジャーナルに出た日本の研究成果がことごとく再現されていないということを指摘した論文を紹介します。

学会などで研究者同士はたいてい知り合いになるので、他の研究者の実験結果が自分の手で再現されなかったとしても、そうそう露骨に論文内でそれを指摘することはなく、せいぜい、実験条件の微妙な違いかもとか、手技の違いかもとか、使った実験動物の系統の差かもしれないなどと言ってお茶を濁すものだと思っていました。

この論文の著者らはイントロにおいて、再現性がないアディポネクチン受容体(AdipoR1, AdipR2)の実験結果を、分野外の人間にも理解できるくらい明解に整理してくれています。

 

論文サイト(オープンアクセス、著作権CC-BY)→http://www.jlr.org/content/60/5/995.full

論文タイトル:AdipoR1 and AdipoR2 maintain membrane fluidity in most human cell types and independently of adiponectin

論文著者:Mario Ruiz, Marcus Ståhlman, Jan Borén, Marc Pilon.  

著者の所属大学:Department of Chemistry and Molecular Biology;* University of Gothenburg, Gothenburg, Sweden, Department of Molecular and Clinical Medicine/Wallenberg LaboratoryInstitute of Medicine, University of Gothenburg, Gothenburg, Sweden

 

要旨 ABSTRACT

The FA composition of phospholipids must be tightly regulated to maintain optimal cell membrane properties and compensate for a highly variable supply of dietary FAs. Previous studies have shown that AdipoR2 and its homologue PAQR-2 are important regulators of phospholipid FA composition in HEK293 cells and Caenorhabditis elegans, respectively. Here we show that both AdipoR1 and AdipoR2 are essential for sustaining desaturase expression and high levels of unsaturated FAs in membrane phospholipids of many human cell types, including primary human umbilical vein endothelial cells, and for preventing membrane rigidification in cells challenged with exogenous palmitate, a saturated FA. Three independent methods confirm the role of the AdipoRs as regulators of membrane composition and fluidity: fluorescence recovery after photobleaching, measurements of Laurdan dye generalized polarization, and mass spectrometry to determine the FA composition of phospholipids. Furthermore, we show that the AdipoRs can prevent lipotoxicity in the complete absence of adiponectin, their putative ligand. We propose that the primary cellular function of AdipoR1 and AdipoR2 is to maintain membrane fluidity in most human cell types and that adiponectin is not required for this function.

 

イントロダクション INTRODUCTION

The AdipoR1 and AdipoR2 proteins were initially identified as putative adiponectin receptors using fluorescent-labeled recombinant adiponectin as bait when screening a cDNA library expressed in Ba/F3 murine cells (1). These proteins are expressed in most/all tissues, localize to the plasma membrane, and contain seven transmembrane domains oriented such that their N terminus is cytosolic and their C terminus is extracellular (1). Since their discovery, several high-profile reports using AdipoR1/2 single- or double-knockout mice have shown that the AdipoRs regulate metabolism and in particular may improve insulin response and generally protect against metabolic syndrome complications, especially during high-fat diet challenges (24). However, other reports have not reproduced these findings. In particular, one study found that AdipoR1 and AdipoR2 may have opposite effects on metabolism (5), another showed that the double mutants are embryonic lethal (6), and other studies noted specific defects only in the retina of AdipoR1 mutant mice (78). Finally, a careful study of recombinant adiponectin, which is often used as a means of activating the AdipoRs in published experiments, suggested that any detected biological effect may be caused by the presence of contaminants such as lipopolysaccharide (9), which adds to the confusion regarding the AdipoR literature.

太字強調は当サイト。このパラグラフで引用されている文献2-4は以下の論文。

  • 文献[2]Targeted disruption of AdipoR1 and AdipoR2 causes abrogation of adiponectin binding and metabolic actions. Toshimasa Yamauchi, Yasunori Nio, Toshiyuki Maki, Masaki Kobayashi, Takeshi Takazawa, Masato Iwabu, Miki Okada-Iwabu, Sachiko Kawamoto, Naoto Kubota, Tetsuya Kubota, Yusuke Ito, Junji Kamon, Atsushi Tsuchida, Katsuyoshi Kumagai, Hideki Kozono, Yusuke Hada, Hitomi Ogata, Kumpei Tokuyama, Masaki Tsunoda, Tomohiro Ide, Kouji Murakami, Motoharu Awazawa, Iseki Takamoto, Philippe Froguel, Kazuo Hara, Kazuyuki Tobe, Ryozo Nagai, Kohjiro Ueki & Takashi Kadowaki. Nature Medicine (2007) 13:332–339 
  • 文献[3]Adiponectin stimulates AMP-activated protein kinase in the hypothalamus and increases food intake. Kubota N, Yano W, Kubota T, Yamauchi T, Itoh S, Kumagai H, Kozono H, Takamoto I, Okamoto S, Shiuchi T, Suzuki R, Satoh H, Tsuchida A, Moroi M, Sugi K, Noda T, Ebinuma H, Ueta Y, Kondo T, Araki E, Ezaki O, Nagai R, Tobe K, Terauchi Y, Ueki K, Minokoshi Y, Kadowaki T. Cell Metabolism 11 July 2007;6(1):55-68
  • 文献[4]Adiponectin and AdipoR1 regulate PGC-1α and mitochondria by Ca2+ and AMPK/SIRT1. Masato Iwabu, Toshimasa Yamauchi, Miki Okada-Iwabu, Koji Sato, Tatsuro Nakagawa, Masaaki Funata, Mamiko Yamaguchi, Shigeyuki Namiki, Ryo Nakayama, Mitsuhisa Tabata, Hitomi Ogata, Naoto Kubota, Iseki Takamoto, Yukiko K. Hayashi, Naoko Yamauchi, Hironori Waki, Masashi Fukayama, Ichizo Nishino, Kumpei Tokuyama, Kohjiro Ueki, Yuichi Oike, Satoshi Ishii, Kenzo Hirose, Takao Shimizu, Kazushige Touhara & Takashi Kadowaki. Nature  464:313–1319 (29 April 2010)

文献[4]のNature論文に関しては、Ordinary_Researchersの指摘(告発文 論文d)を確認するために当サイトでも以前、記事にしました(不正疑惑渦中の東大医学部論文 および東大分生研論文の告発内容を 画像編集フリーソフトで確認する方法)。また、文献[2]は、Ordinary_Researchersの告発文の論文bです。

More recently, the crystal structure of the AdipoRs has been solved and suggests that they may be hydrolases: a cavity opening toward the cytoplasm is a likely site for substrate entry and product exit (10). By homology with a yeast homologue, Izh2 (1112), the AdipoRs were proposed to act as ceramidases (1314). However, the ceramidase activity is at best a slow reaction (15), and it is possible that the AdipoRs may have other substrate specificities. Nevertheless, that the AdipoRs are hydrolases of some sort seems very likely because that is a conserved activity of the large CREST family of related proteins that include the AdipoRs as well as phospholipases such as the yeast Per1p, which has phospholipase A2 activity (16).

  • 文献[10]Crystal structures of the human adiponectin receptors. Hiroaki Tanabe, Yoshifumi Fujii, Miki Okada-Iwabu, Masato Iwabu, Yoshihiro Nakamura, Toshiaki Hosaka, Kanna Motoyama, Mariko Ikeda, Motoaki Wakiyama, Takaho Terada, Noboru Ohsawa, Masakatsu Hato, Satoshi Ogasawara, Tomoya Hino, Takeshi Murata, So Iwata, Kunio Hirata, Yoshiaki Kawano, Masaki Yamamoto, Tomomi Kimura-Someya, Mikako Shirouzu, Toshimasa Yamauchi, Takashi Kadowaki & Shigeyuki Yokoyama. Nature 520:312–316 (16 April 2015) “Adiponectin may broadly interact with the extracellular face, rather than the carboxy-terminal tail, of the receptors. “

Several years ago, we began studying the Caenorhabditis elegans homologues of the AdipoRs with the hope that leveraging forward genetics in this model organism would lead to new, unbiased insights into their functions. Our findings so far may be briefly summarized as follows: 1C. elegans has two AdipoR homologues, PAQR-1 and PAQR-2 (17), 2) worms lacking PAQR-2 show a morphology defect in the thin membranous tail tip and are intolerant to cold (15°C) or to saturated FA (SFA)-rich diets (1719), 3) the primary function of PAQR-2 is to maintain membrane fluidity in response to membrane-rigidifying challenges such as cold or SFA-rich diets (1820), 4) PAQR-2 function depends on a dedicated protein partner, the single-pass transmembrane protein IGLR-2, with which it colocalizes (18), 5) PAQR-2 can maintain systemic cell membrane homeostasis nonautonomously via lipid exchange among C. elegans tissues (21), and 6) PAQR-2-deficient worms can be chemically rescued by small amounts of detergents or genetically rescued by mutations that promote FA desaturation or that increase the levels of phospholipids containing long-chain PUFAs (LCPUFAs) (2022). It is also important to note that no C. elegans homologue of adiponectin has yet been identified. In addition, after several screens for paqr-2 mutant suppressors or genocopiers, we have found no evidence that PAQR-2 depends on a ligand for its function.

We recently found that several of our observations in C. elegans also hold true in mammalian cells. In particular, AdipoR2 is essential in maintaining membrane fluidity in HEK293 cells challenged with the SFA palmitic acid (PA; 16:0); it can also maintain cell-membrane homeostasis nonautonomously (1921). Furthermore, and just as in C. elegans, HEK293 cells in which AdipoR2 has been knocked down can be rescued by providing LCPUFAs exogenously or by inhibiting the expression of the plasma membrane-localized TLCD1 or TLCD2 proteins (22). The TLCDs function as limiters of LCPUFA incorporation into phospholipids, and their inhibition therefore leads to enhanced incorporation of LCPUFAs, which promotes fluidity (22).

This study focused on further exploring the roles of AdipoR1 and AdipoR2 in regulating membrane homeostasis in human cells. Specifically, we asked whether both AdipoR1 and AdipoR2 act as fluidity regulators and whether many cell types, including primary human cells, require the AdipoRs to regulate membrane fluidity. Finally, we investigated whether the AdipoRs require adiponectin to regulate membrane homeostasis.

 

材料と方法 MATERIALS AND METHODS

Cell culture

HEK293, HepG2, and 1321N1 cells were grown in DMEM containing 1 g/l glucose, pyruvate, and GlutaMAX and supplemented with 10% FBS, 1% nonessential amino acids, 10 mM HEPES, and 1% penicillin and streptomycin (all from Life Technologies) at 37°C in a water-humidified 5% CO2 incubator. Cells were subcultured twice a week at 90% confluence. HEK293, HepG2, and 1321N1 cell lines were authenticated by Eurofins. human umbilical vein endothelial cells (HUVECs) (passages 1–5) were obtained from Gibco and cultivated as described previously (23). Briefly, cells were grown in M200 medium (Gibco) containing the Low Serum Growth Supplement (Gibco) and 1% penicillin and streptomycin. Cells were subcultured twice a week at 90% confluence. TrypLE Express reagent (Gibco) was used to detach HUVEC, HEK293, and 1321N1 cells, and Accutase (GE Healthcare) was used to detach HepG2 cells. All cell types were cultivated on treated plastic flasks and multidish plates (Nunc). For microscopy experiments, cells were seeded in glass-bottom dishes (Ibidi) precoated with 0.1% porcine gelatin (Sigma-Aldrich).

FA treatment

PA, oleic acid, and EPA were dissolved/diluted in sterile DMSO (Sigma-Aldrich) and then mixed with FA-free BSA (Sigma-Aldrich) in serum-free medium for 15 min at room temperature. The molecular ratio of BSA to PA was 1:5.3 in experiments that used 400 μM PA, 1:2.65 in experiments that used 200 μM PA, and 1:0.66 in experiments that used 50 μM PA. Cells were then cultivated in serum-free media containing the FAs for 24 h prior to analysis.

siRNA treatment

The following predesigned siRNAs were purchased from Dharmacon: AdipoR1 J-007800-10, AdipoR2 J-007801-10, Nontarget D-001810-10, and SCD J-005061-07. HEK293, HepG2, and 1321N1 cell transfection was performed in complete media using 25 nM siRNA and Viromer Blue according to the manufacturer’s instructions 1X (Lipocalyx). HUVECs were transfected using 10 nM siRNA and Lipofectamine RNAiMAX Transfection Reagent following the HUVEC optimized protocol from the manufacturer (Invitrogen). Knockdown gene expression was verified 24 or 48 h after transfection.

Glucose treatment

Cells were grown in complete media containing 5, 25, or 100 mM glucose (Sigma-Aldich) for 48 h and then switched to serum-free medium supplemented with BSA (0.5%), and keeping the glucose concentration constant at 5, 25, or 100 mM for another 24 h and then analyzed.

Quantitative PCR

Total cellular RNA was isolated using RNeasy Kit according to the manufacturer’s instructions (Qiagen) and quantified using a NanoDrop spectrophotometer (ND-1000; Thermo Fisher Scientific). cDNA was obtained using a High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Applied Biosystems) with random hexamers. Quantitative PCR (qPCR) was performed with a CFX Connect thermal cycler (Bio-Rad) using HOT FIREpol EvaGreen qPCR Supermix (Solis Biodyne) and standard primers. Samples were measured as triplicates. The relative expression of each gene was calculated according to the ΔΔCT method (24). Expression of the housekeeping gene PPIA was used to normalize for variations in RNA input. Primers used were as follows: AdipoR1 forward, CCATCTGCTTGGTTTCGTGC; AdipoR1 reverse, AGACGGTGTGAAAGAGCCAG; AdipoR2 forward, TCATCTGTGTGC­TGGGCATT; Adipo2 reverse, CTATCTGCCCTATGGTGGCG; PPIA forward, GTCTCCTTTGAGCTGTTTGCAG; PPIA reverse, GGACAAGATGCCAGGACCC; SCD forward, TTCGTTGCCACTTTCTTGCG; SCD reverse, TGGTGGTAGTTGTGGAAGCC; FADS1 forward, TGGCTAGTGATCGACCGTAA; FADS1 reverse, GGCCCTTGTTGATGTGGAAG; FADS2 forward, GGGCCGTCAGCTACTACATC; and FADS2 reverse, ACAAACCAGTGGCTCTCCAG.

qPCR for adiponectin was executed on a QuantStudio7 Flex Real-Time PCR System thermal cycler using Power SYBR Green PCR Master Mix (Applied Biosystems). Two sets of primers for adiponectin were used: 1) adiponectin forward (AGGGCATCCGGGCCATAAT) and reverse (CTCCGGTTTCACCGATGTCT) and 2) adiponectin forward (TGGTGAGAAGGGTGAGAAAGG) and reverse (CTCCAATCCCACACTGAATGC), respectively. The second set of adiponectin primers was shared by Matthew Harms. cDNA from human subcutaneous abdominal adipose tissue and human breast adipose tissue was a gift from Xiao-Rong Peng and Henrik Palmgren (AstraZeneca); samples of adipose tissues were collected from patients undergoing elective surgery at Sahlgrenska University Hospital, Gothenburg, Sweden. All study subjects received written and oral information before giving written informed consent for the use of the tissue. The studies abide by the Declaration of Helsinki principles and were approved by the regional ethical review board in Gothenburg, Sweden.

Protein samples and Western blot

Cellular proteins were extracted using a lysis buffer (1% Nonidet P-40, 0.1% SDS, 10% glycerol, 1% sodium deoxycholate, 1 mM DTT, 1 mM EDTA, 100 mM HEPES, 100 mM KCl) containing Halt Protease Inhibitor Cocktail (1×; Pierce) on ice for 10 min. Upon lysis completion, cell lysates were centrifuged at 13,000 rpm for 10 min at 4°C. The soluble fraction was kept for further analysis, and the protein sample concentration was quantified using the BCA protein assay kit (Pierce) according to the manufacturer’s instructions. Twenty micrograms of protein were mixed with Laemmli sample loading buffer (Bio-Rad), heated to 37°C for 10 min, and loaded in 4% to 15% gradient precast SDS gels (Bio-Rad). After electrophoresis, the proteins were transferred to nitrocellulose membranes using Trans-Blot Turbo Transfer Packs and a Trans Blot Turbo apparatus/predefined mixed-MW program (Bio-Rad). Blots were blocked with 5% nonfat dry milk in PBS for 1 h at room temperature. Blots were incubated with anti-human AdipoR1 rabbit IgG at 1 µg/ml in 5% nonfat dry milk in PBS with Tween-20 (PBS-T; 0.05% Tween-20) overnight at 4°C following previously published recommendations (8). Blots were then washed with PBS-T and incubated with a swine anti-rabbit IgG/HRP (1:3000 dilution; Dako) and washed again with PBS-T. Blots were developed with ECL (Immobilon Western; Millipore), and the signal was visualized with a digital camera (VersaDoc; Bio-Rad). Blots were then stripped and reprobed with anti-GAPDH (14C10) rabbit IgG (1:2500 dilution; Cell Signaling). PageRuler Plus prestained protein ladder was used to assess molecular weight (Thermo Fisher Scientific). Western blots were quantified by densitometry using Image Lab version 6 software.

Lipidomics

Samples were prepared as previously described (1922). Briefly, cells were cultivated in serum-free media with or without FAs for 24 h prior to harvesting using TrypLE Express (Gibco). For lipid extraction, the pellet was sonicated for 10 min in methanol and then extracted according to published methods (25). Internal standards were added during the extraction. Lipid extracts were evaporated and reconstituted in chloroform-methanol (1:2) with 5 mM ammonium acetate. This solution was infused directly (shotgun approach) into a QTRAP 5500 mass spectrophotometer (Sciex) equipped with a TriVersa NanoMate (Advion Bioscience) as described previously (26). Phospholipids were measured using multiple precursor ion scanning, which gathers information about individual phospholipids by scoring many FA fragments in the Q3 of the mass spectrometer (2728), and triacylglycerols (TAGs) were measured using neutral-loss scanning (29). The data were evaluated using the LipidView software (Sciex). The complete lipidomics data set is provided in the supplemental Table S1.

FRAP

Live HEK293 cells were stained with BODIPY 500/510 C1, C12 (Invitrogen). Fluorescence recovery after photobleaching (FRAP) images were acquired with an LSM880 confocal microscope equipped with a live cell chamber (set at 37° and 5% CO2) and ZEN software (Zeiss) with a 40× water-immersion objective as previously described (192122).

Laurdan dye measurement of membrane fluidity

Live cells were stained with Laurdan dye (6-dodecanoyl-2-dimethylaminonaphthalene) (Thermo Fisher Scientific) at 15 μM (HEK293 and HepG2 cells) or 10 μM (HUVECs) for 45 min. Images were acquired with an LSM880 confocal microscope equipped with a live cell chamber (set at 37° and 5% CO2) and ZEN software with a 40× water-immersion objective as described previously (21). Cells were excited with a 405 nm laser, and the emission was recorded between 410 and 461 nm (ordered phase) and between 470 and 530 nm (disordered phase). Pictures were acquired with 16 bit image depth and 1,024 × 1,024 resolution using a pixel dwell of ∼1.02 μs. Images were analyzed using ImageJ version 1.47 software (30) following published guidelines (31).

Trypan blue staining

After 24 h of treatment, cell supernatant was collected, and cells were detached and mixed again with their respective supernatant. The cell suspension was then mixed 1:1 with a 0.4% trypan blue solution (Gibco) and loaded in a hemacytometer and examined immediately under the microscope. The percentage of positive and negative cells in at least four quadrants was registered.

Adiponectin (or AdipoQ) treatment

Recombinant full-length adiponectin (produced in HEK293 cells and forming high-molecular-weight and hexameric species) was purchased from Enzo and used at 5 µg/ml (14) or 10 µg/ml. Cells were then cultivated in serum-free media containing adiponectin and 400 μM PA for 24 h prior to analysis.

Statistics

t-Tests were used to identify significant differences between treatments/genotypes. Error bars show the SDs in histograms and SEMs in FRAP curves. Asterisks and hash signs are used in the figures to indicate various degrees of significance.

 

結果 RESULTS

Both AdipoR1 and AdipoR2 regulate membrane fluidity in HEK293 cells

We used siRNA to efficiently knock down the expression of AdipoR1 and AdipoR2 singly or simultaneously in HEK293 cells: qPCR confirmed the knockdown of the transcripts (Fig. 1A) , and a Western blot confirmed protein downregulation for AdipoR1 (supplemental Fig. S1A). We could not obtain a useful antibody for AdipoR2. Knockdown of AdipoR1 and/or AdipoR2 had no effect on membrane fluidity of the cells under basal culture condition as determined using FRAP (supplemental Fig. S1B–E). Note that the FRAP method measures the lateral diffusion rate of the BODIPY-C12 fluorophore used in these experiments; throughout this article we use the term “membrane fluidity” as a proxy for what is likely a complex phenomenon reflecting several distinct membrane biophysical properties such as fluidity, phase behavior, thickness, or compressibility (3234). siRNA knockdown of AdipoR1 also had little effect on the membrane fluidity of HEK293 cells challenged with 200 μM PA, but inhibiting AdipoR2 caused a clear loss of membrane fluidity under these conditions (Fig. 1B, C), while inhibiting both AdipoR1 and AdipoR2 had the most dramatic effect (Fig. 1D, E). These results demonstrate that AdipoR2 is more important than AdipoR1 in protecting against the rigidifying effects of PA but that AdipoR1 also contributes to the maintenance of membrane fluidity. In other words, AdipoR1 and AdipoR2 have partially redundant functions in membrane homeostasis. Most studies of the effects of PA on cells require relatively high concentrations to elicit a detectable effect, with 400 μM being a typical concentration. The pronounced sensitivity of the double AdipoR1/2 siRNA-treated cells to 200 μM PA suggest that these proteins are a primary mechanism protecting cells against PA lipotoxicity. Indeed, HEK293 cells treated with double AdipoR1/2 siRNA show a dramatic loss of membrane fluidity even when challenged with as little as 50 μM PA (Fig. 1F, G), which is exceptionally low compared with other published studies. Note that AdipoR2 knockdown causes membrane rigidification when cells are challenged with 200 μM palmitate but not when treated with vehicle alone. In addition, this palmitate-induced rigidification in AdipoR2 knockdown cells can be prevented by including equimolar amounts of the MUFA oleic acid, suggesting that a function of the AdipoRs during palmitate challenge is to restore SFA/unsaturated FA (UFA) balance (supplemental Fig. S1F–J). The loss of membrane fluidity in AdipoR1/2 siRNA-treated cells challenged with 200 μM PA can also be entirely suppressed by the inclusion of as little as 5 μM of the LCPUFA EPA (20:5) in the culture media (Fig. 1H, I); EPA is a potent fluidizing FA, and its ability to restore membrane fluidity in the AdipoR1/2 siRNA-treated cells is consistent with these proteins playing a role in regulating the FA composition of phospholipids.

The Laurdan dye method confirms the roles of AdipoR1/2 in membrane homeostasis

Our measurements of membrane fluidity have so far relied heavily on the FRAP method. To guard against any misleading interpretations, it is important to verify critical results with independent methods. Therefore, we also made use of the Laurdan dye method to monitor membrane fluidity. This method relies on the fact that the membrane-bound Laurdan dye emits fluorescent light at different wavelengths when water is present within the phospholipid bilayer, which happens more readily in fluid membranes. This method has the additional advantages that multiple cells are imaged simultaneously, that subcellular regions with increased rigidity can be identified, and that the images can be scored quantitatively using an automated ImageJ script (31). Analysis of membrane fluidity using the Laurdan dye method corroborates the findings using the FRAP method with the exception that it can now detect a role for AdipoR1. Specifically, we found that siRNA knockdown of AdipoR1 or AdipoR2 singly or together leads only to a minor membrane rigidification under basal conditions (supplemental Fig. S1K–M) but that both AdipoR1 and AdipoR2 are required to maintain membrane fluidity when HEK293 cells are challenged with 200 μM PA (Fig. 2A–C). Furthermore, inhibiting both simultaneously leads to a much more severe rigidifying effect of PA (Fig. 2A–C), which indicates that AdipoR1 and AdipoR2 have overlapping functions. Also, we noted that the plasma membrane appears to be most affected by rigidification when AdipoR1 and AdipoR2 are inhibited. This is particularly interesting because AdipoR1 and AdipoR2 are localized to the plasma membrane and may have an especially important function in maintaining fluidity in that membrane.

 

AdipoR1 and AdipoR2 promote membrane fluidity via several desaturases

We have previously shown that the C. elegans paqr-2 mutant has an excessively high SFA-UFA ratio among phospholipids and is unable to stimulate FA desaturation upon membrane-rigidifying challenges (cold or SFA-rich diets). This role in membrane homeostasis is also conserved for AdipoR1 and AdipoR2 in human cells. siRNA against AdipoR1 or AdipoR2 causes HEK293 cells to have excess SFAs in their phosphatidylcholines (PCs) and phosphatidylethanolamines (PEs) both under basal conditions and even more so when challenged with 200 μM PA, and this effect is increased when AdipoR1 and AdipoR2 are simultaneously inhibited (Fig. 3A, B, supplemental Fig. S2). The change in FA composition of the phospholipids correlates with reduced desaturase expression: AdipoR1 siRNA-treated cells have reduced expression of SCD and FADS2, while AdipoR2 siRNA-treated cells have reduced expression of SCD, FADS1, and FADS2 (Fig. 3C). Not surprisingly then, knockdown of AdipoR1 and/or AdipoR2 increases the lipotoxicity of PA: while 200 μM palmitate is well-tolerated by HEK293 cells treated with nontarget siRNA, knockdown of the AdipoRs greatly increases the number of dead cells in the presence of PA (but not in basal media; Fig. 3D). Altogether these results indicate that the AdipoRs redundantly maintain membrane fluidity in PA-challenged HEK293 cells by regulating the expression of desaturases and that this activity is essential in preventing lipotoxicity by SFAs. Accordingly, siRNA against AdipoR1 or AdipoR2 also causes HEK293 cells to have excess SFAs in TAGs (supplemental Fig. S2C, D), which again likely reflects decreased desaturase activity.

 

The C. elegans paqr-2 mutant, which lacks a functional PAQR-2 protein that is homologous to the AdipoRs, is unable to grow in the presence of glucose, even at concentrations as low as 4 mM. This is because the glucose is converted to SFAs by the dietary Escherichia coli, which leads to membrane rigidification in the worms (19). In other words, glucose in itself has no effect on the paqr-2 mutant. Similarly, glucose has no effect on the membrane fluidity of AdipoR1 and/or AdipoR2 siRNA-treated HEK293 cells, even when applied at concentrations of 100 mM, and it also had no effect on the SFA and MUFA content in the PCs, PEs, or TAGs of cells treated with AdipoR2 siRNA (supplemental Fig. S3). We conclude that, as with the C. elegans PAQR-2, the AdipoRs are required specifically to respond to the rigidifying challenge posed by exogenous SFAs and not for glucose tolerance.

AdipoR1 and AdipoR2 maintain membrane fluidity in several cell types

The AdipoRs are widely expressed, and it is therefore possible that they are important regulators of membrane fluidity in many, and perhaps even most, cell types. To explore this possibility, we investigated the effect of AdipoR1 and/or AdipoR2 siRNA on hepatocyte-derived HepG2 cells and astrocyte-like 1321N1 cells. siRNA knockdown in HepG2 cells reduced AdipoR1 mRNA levels by nearly 90% and AdipoR2 levels by more than 50% (supplemental Fig. S4A); siRNA knockdown of AdipoR1 caused a ∼60% reduction in protein levels (supplemental Fig. S4B, C). Knockdown of AdipoR1 alone had little effect on the membrane fluidity (measured with the Laurdan dye method) of HepG2 cells in basal media or media supplemented with 200 μM PA (Fig. 4A–C, supplemental Fig. S4D–F). In contrast, AdipoR2 knockdown caused a reduced membrane fluidity both in basal and PA-supplemented media, and this effect was greatly increased when AdipoR1 and AdipoR2 were simultaneously knocked down (Fig. 4A–C, supplemental Fig. S4D–F). As in HEK293 cells, knockdown of AdipoR1 and/or AdipoR2 resulted in the loss of cell viability upon PA challenge (supplemental Fig. S4G) and an increase in SFAs at the expense of MUFAs in PCs, PEs, and TAGs, especially when the cells were challenged with PA (supplemental Fig. S5H–M). Very similar results were obtained with the 1321N1 cell line (supplemental Fig. S4N–U). In summary, these results suggest that AdipoR1 and AdipoR2 are redundantly essential in maintaining membrane fluidity in all three cell lines tested, each representing a different type of cell, namely embryonic kidney cells, hepatocytes, and astrocytes. Maintaining membrane fluidity is likely the fundamental function of the AdipoRs and is particularly required upon membrane-rigidifying challenges such as when SFAs are provided exogenously.

 

The AdipoRs maintain membrane fluidity in human primary cells independently of adiponectin

Established cell lines harbor a multitude of mutations and are abnormal in many ways, including in lipid metabolism. It was therefore important to verify our key findings in human primary cells. We began by optimizing knockdown of AdipoR1 and/or AdipoR2 in HUVECs, being able to inhibit >90% of their expression (Fig. 5A). We then also optimized the Laurdan dye method for HUVECs and found that it clearly detected membrane rigidification when these cells were challenged with 400 μM PA (supplemental Fig. S5A–C), which is the concentration most often used to rigidify cell membranes in control cells. Knockdown of AdipoR1 alone had little effect on the HUVECs challenged with 200 μM PA (Fig. 5B–D). In contrast, AdipoR2 knockdown caused a reduced membrane fluidity in 200 μM PA-supplemented media, and this effect was greatly increased when AdipoR1 and AdipoR2 were simultaneously knocked down (Fig. 5B–D). Knockdown of AdipoR1 and/or AdipoR2 had no effect on the membrane fluidity of HUVECs grown in basal media (supplemental Fig. S5D–F). We conclude that AdipoR1 and AdipoR2 are essential in maintaining membrane fluidity in primary human endothelial cells, especially in the presence of exogenous SFAs.

 

As with the HEK293 cells, inhibition of either AdipoR1 and AdipoR2 led to reduced expression of the FA desaturases SCD, FADS1, and FADS2 (only SCD was not downregulated by AdipoR1 siRNA; Fig. 5E). Desaturase activity is essential in maintaining membrane fluidity upon a PA challenge. In particular, SCD inhibition by siRNA (supplemental Fig. S5G) led to decreased membrane fluidity of HUVECs incubated with 200 μM PA, but not in basal media (supplemental Fig. S5H–M).

Finally, we note that adiponectin, a proposed ligand for the AdipoRs, was never included in any of our experiments. Indeed, most experiments involved long periods of incubations in serum-free media (basal) or serum-free media supplemented with PA, and there is likely no expression of adiponectin from the tested cells themselves because this is an adipocyte-specific protein. As a definitive test we performed qPCR analysis using mRNA from the three studied cell lines (HEK293, HepG2, and 1321N1), HUVECs and human adipose tissue. Using this assay, we could detect strong adiponectin expression in the adipocyte sample and no expression in the cell lines or HUVECs; the house-keeping control gene PPIA was detected in all samples (Table 1, supplemental Fig. S6A). Supplementing HEK293 cells with 5 μg/ml (14) or 10 μg/ml recombinant adiponectin (produced from a mammalian cell-expression system) did not improve their ability to prevent membrane rigidification by 400 μM PA (the lowest concentration that reduced fluidity in control HEK293 cells), suggesting that adiponectin does not potentiate the activity of the AdipoRs, at least in this context (supplemental Fig. S6B, C). We conclude from this that adiponectin is not required for the ability of the AdipoRs to act as regulators of membrane fluidity in human cells.

 

 

ディスカッション DISCUSSION

The three most important conclusions from the present work are 1) both AdipoR1 and AdipoR2 maintain membrane fluidity by promoting desaturase activity and, hence, MUFA levels in phospholipids; 2) AdipoR1 and AdipoR2 help maintain membrane fluidity in multiple cell types, including primary human endothelial cells; and 3) adiponectin is not required for the function of the AdipoRs as fluidity regulators. These conclusions lead to a simple model of AdipoR function (Fig. 6) and will now be discussed in the broader context of existing literature.

 

That both AdipoR1 and AdipoR2 have similar functions is not surprising given their high degree of amino acid identity [∼66% (1)]. Many tissues express both proteins, and it is likely that many cell types also express both, as was the case for all four cell types studied here (HEK293, HepG2, 1321N1, and primary HUVECs). Coexpression of two proteins with similar functions provides redundancy, and hence robustness, in the maintenance of membrane homeostasis. We note, however, that in all cell types it was the inhibition of AdipoR2 that had the strongest effect on membrane fluidity, suggesting that AdipoR2 plays a larger role than AdipoR1. This is interesting because the AdipoR2 knockout mice are reported to have a more severe phenotype, including an enlarged brain, male sterility, low weight, and increased risk of diabetes (535), than the AdipoR1 mice, which primarily show a retina defect that is also found in humans with mutations in AdipoR1 (783637), as well as a tendency to gain weight (5). That the two genes have overlapping functions is clear from the fact that double-mutant mice lacking both AdipoR1 and AdipoR2 have more severe metabolic defects than either single mutants (2) and may even be embryonic lethal according to another study (6). The situation in mice therefore echoes that in C. elegans, in which the two AdipoR homologues, paqr-1 and paqr-2, are also partially redundant (the double mutant is more severe than the single mutant), although paqr-2 is clearly more important because it shows strong phenotypes as a single mutant (cold and SFA intolerance and a morphology defect in the thin membranous tail tip) that are accompanied by the loss of membrane fluidity (17).

The knowledge that AdipoR1 and AdipoR2 are important for membrane homeostasis, primarily promoting FA desaturation to restore fluidity, may lead to a better understanding of several of the mouse mutant phenotypes. For example, the enlarged brain of the AdipoR2 knockout mice may be secondary to an inability to sustain membrane fluidity in the mutant (5). The brain is exceedingly dependent on membrane fluidity for the process of neurotransmitter vesicle trafficking and fusion at the synapses (38). Similarly, spermatogenesis is critically dependent on an abundance of fluid membrane, and desaturase mutants are therefore sterile (39). It will be interesting to revisit these and other AdipoR2 knockout mouse phenotypes and test the specific hypothesis that they are the result of failures in membrane fluidity homeostasis. Further, several articles have implicated the AdipoRs as being important in preventing metabolic syndrome complications, for example, when mice are fed high-fat diets. Given the extensive literature documenting high SFA content and membrane rigidity in diabetics (4041), it will be very interesting to see whether the alleged protective effects of the AdipoRs may be explained precisely because they help delay or even prevent such membrane rigidification. In particular, pancreatic β-cell function depends on delicate membrane trafficking and fusion events essential for insulin secretion (42). Such processes are very sensitive to membrane rigidification, and the maintenance of membrane fluidity in β-cells may be an important function of the AdipoRs in the context of the metabolic syndrome.

The AdipoRs were initially identified as adiponectin receptors in a cDNA expression screen to identify clones that would bind fluorescently labeled recombinant adiponectin (1). Several studies later suggested that the activity of the AdipoRs, for example in preventing metabolic defects upon high-fat diets in mice, were dependent on adiponectin, usually provided in its recombinant, E. coli-expressed form (2). The functionality of recombinant adiponectin has, however, been questioned (9), and the hypothesis that adiponectin could act as a hormone may be questioned on the grounds that it is simply too abundant a serum protein to serve such a function (adiponectin is present at μg/ml levels compared with other hormones such as insulin or leptin that are present at ng/ml levels), although it is possible that much less abundant multimeric forms with dynamically regulated levels are the true nature of adiponectin as a hormone (4344). In any case, the three different cell lines and human primary cells studied here do not express adiponectin, and yet we could demonstrate clear functions for both AdipoR1 and AdipoR2 in preventing membrane rigidification by PA; the addition of recombinant adiponectin also did not improve the ability of HEK293 cells to maintain membrane fluidity when challenged with palmitate, suggesting that it is not limiting for AdipoR function in these assays. This again echoes the situation in C. elegans, in which no adiponectin homologue has so far been identified and in which several forward genetic screens for suppressors or genocopiers of paqr-2 have failed to identify a putative ligand (17202245). *太字強調は当サイト

One limitation of our experiments is that we do not know the extent of protein activity reduction achieved by the siRNA treatments. Good antibodies to these proteins have been difficult to produce. For AdipoR1, more than 15 different antibodies were recently rigorously tested, and a single one was found to specifically recognize AdipoR1 in a useful way (8). Using this antibody in Western blot shows a >90% and ∼50% reduction in AdipoR1 levels in siRNA-treated HEK293 and HepG2 cells, respectively (supplemental Figs. S1A, S4B). We also tried two different AdipoR2 antibodies without success: both produced a very high level of background bands. This likely explains why AdipoR2 antibodies have so rarely been used in studies to detect the endogenous protein. However, we are confident in the siRNA successfully inhibiting AdipoR2 in our experiments for several reasons: 1) two different siRNA oligo pairs produce the same membrane rigidification effect (19); 2) the qPCR clearly shows efficient downregulation of the AdipoR2 mRNA in cell lines and primary cells (Figs. 3C5E); 3) the effects of siRNA against AdipoR2 are additive with that of AdipoR1 knockdown; and 4) the membrane rigidification caused by siRNA against AdipoR2 is accompanied by excess SFAs in phospholipids in all cell types tested, just as it is in C. elegans (1920).

Finally, it is interesting to note that the methods used to evaluate membrane properties (FRAP and Laurdan dye fluorescence) and composition (lipidomics) did not distinguish among the various organellar membranes of the cells examined. Rather, all three methods scored the entire cells. Of the three methods, it is the Laurdan dye fluorescence that provides the best spatial resolution. An examination of the generalized polarization index pseudocolor images (e.g., Fig. 2A for HEK293 cells, Fig. 4A for HepG2 cells, and Fig. 5B for HUVECs) indicates membrane rigidification across the entire cells but clearly most pronounced in the plasma membranes. This is interesting because the AdipoRs are the only sense-and-response membrane sensors localized to the plasma membrane and may therefore be especially important for plasma membrane homeostasis. The AdipoRs may therefore complement the activities of other guardians of cellular membranes, such as PCYT1A and Tafazzin [sense and repair packing defects in the inner nuclear membrane and mitochondria, respectively (4647)], IRE1 [senses bilayer stress in the ER (48)], or the SREBPs (sense cholesterol and PC levels (4950)]. It will be interesting in the future to perform cell-fractionation experiments in AdipoR-deficient cells to better understand the organelle-specific roles of these proteins.

In conclusion, the present findings indicate that the AdipoRs are important regulators of membrane fluidity in most cell types, including human primary endothelial cells, and that they can carry out this function without any ligand being present.

 

アディポネクチンの作用機序や、”アディポネクチン受容体”の機能に対する正しい理解が、”混乱を招く論文”の存在によって阻害されているのだとしたら残念なことです。上の論文は、ややこしい状況を整理してくれる良い論文だと思いました。内部の人なら、「あー、あの論文はXXXXなんだよねー」みたいな会話をして、論文ごとの信憑性が口伝えで広がるものですが、それだと部外者には伝わりません。こうやって論文の形できっちりと書いてもらえると助かります。

 

東大医学部の論文不正疑惑問題に関して改めて思うこと

再現性が無いと断じられている論文の中には、Ordinary_Researchersによって論文の図の不適切さが指摘されていたものが含まれています。東大不正調査委員会はいまだに調査報告書を国民・研究者に公開していないため、「再現性の無い論文=データ捏造論文」の疑念が晴れていない状態です。不正がなかったと東大がいうのであれば、不正がなかったと信ずるに足る証拠と説明(実験ノートの開示、実験の生データの開示、実験データの数値と論文の図の数値がほとんど異なることに関する合理的な説明など)を国民に提供すべきです。

東大の不正調査委員会も医学部の論文に関してオリジナルデータの数値と論文のグラフが示す数値はほとんど一致しないということを認めたくらいなので(にも関わらず説明抜きで不正無しと宣言!なんじゃ、そりゃ?)、再現されないことになんの驚きもありませんが、そんな論文がいまだに「生きて」いて多額の研究費を稼ぎ、著者を昇進させ、称賛を集め続けていること、そして日本の中で誰もそれを咎める人がいないことには本当に驚かされます。

デタラメにつくったグラフの論文を著者らが撤回もせず、実験ノートを示して自らの正しさを立証するわけでもなく、所属大学は不正調査の報告を国民・納税者に対してせず、予算配分機関や監督省庁もそんな大学の隠蔽体質(=不正調査報告書を非公開)を黙認し、他の研究者もみな沈黙を守るというのは、科学研究の進展を著しく阻害する行為です。特に、不正を働く人間と同じ研究領域にいる他の研究者は、自分の実験結果と先行研究の結果が食い違うため、一貫した説明をするための無駄な労力を強いられ、論文出版も滞り、大きな被害を被ります。

もっと言えば、まともな人間が捏造ラボに所属してしまった場合、実験デザインの前提が間違っているためにどれほどがんばって実験しても期待される結果が得られず、人生をドブに捨てるだけでしょう。そのラボ内で研究者として生き残りたければ、捏造に捏造を重ねて論文を出版することになるのではないかと想像します。何しろ東大や国が不正(疑惑)を完全に黙認(公認?)したわけですから、ラボ内あるいは学部内で声をあげて不正を告発することは自殺行為でしかありません。これは臨床の話ですが、東大病院で「不適切な情報の管理と取扱い」があったとする東大の公式声明を見れば、告発者に対する東大の対応は想像がつきます。

関連記事 → 東大病院で「不適切な情報の管理と取扱い」

まともな倫理感の人は、ラボを直ちに出るか、精神を病むか、倫理観を捨てるか以外には選択肢がないのではないでしょうか?ちょっと想像しただけでも恐ろしい話です。本当に、ホラーとしか言いようがありません。


 

 

参考

  1.  
    737匿名A ◆Zm8FyprZhE 2019/04/14(日) 02:07:53.63ID:1OjPKvE+a
    AdipoRの問題をボロクソに書いている最近のJournal of Lipid Researchの論文は、Article Usageによると今のところ270アクセス 
    これが100倍くらいのアクセスになれば世の中変わるんだろうけど 
    東大新入生は、上野千鶴子の話を有り難がる前に、この論文のイントロの1段落目を読んだ方がいいよ 
    こんな学科への新振りの点数が一番高い大学に進学したことは、必ずしも幸せなことではない 
    http://www.jlr.org/content/early/2019/03/19/jlr.M092494.abstract 
     
    (引用元:捏造、不正論文、総合スレネオ49 ttp://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/life/1550116527)
  2. 783匿名A ◆Zm8FyprZhE 2019/04/14(日) 23:53:43.53ID:HxaoeLnCa>>786
    AdipoRの悲劇の始まりは、決してFACSのExpression Cloningではないと思う
    血液濃度が異様に高いアディポネクチンをホルモン扱いしたのが悲劇の始まりだと思う
    そのあたりのことがJournal of Lipid Researchのこの論文の後半に触れられている(引用元:捏造、不正論文、総合スレネオ49 ttp://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/life/1550116527)

  3. 日本オリジナル「adiponectin」とボディマッピング、ゲノム編集でCRISPR大躍進【日経バイオテクONLINE Vol.1956】(河田孝雄 2013.11.01 18:00 日経バイオテク)

 

東大医学部不正論文疑惑関連の記事一覧

STAP細胞事件の真相 小保方晴子氏の頭の中にあったもの

STAP細胞は結局あったのか無かったのか、何だったのか?という疑問をいまだに持っている人も多いかと思います。

STAP細胞事件

STAP細胞事件で炙り出されたのは、日本の生命科学研究がいかに杜撰に行われていたかということでした。2014年1月30日付けのNATURE誌に掲載された2報のSTAP細胞論文の内容を伝えた最初のニュースに接して、凄い研究者が出現したものだと自分も思い、このウェブサイトでも記事にしましたが、今から考えるとマヌケだったと思います。研究者も変わったなあ、こんな見た目の人がこんなすごいことをやってのけるんだ?と当時はびっくりしました。

記者会見&報道を鵜呑みにした、当時のマヌケな記事↓信じられないくらい簡単に体細胞を万能細胞に転換させる方法を日本人女性研究者(30)が発見!

 

STAP細胞とは

STAP細胞とは、Stimulus-triggered acquisition of pluripotency (STAP)という現象を示す細胞ことで、STAP細胞を日本語でいえば刺激惹起性多能性獲得細胞(しげきじゃっきせいたのうせいかくとくさいぼう)となります。2014年に小保方晴子研究員らを中心とする研究グループによりNATURE誌に論文報告されましたが、現在ではそんなものは存在しなかったことになっています。

STAP現象を発見したと宣伝する理研のプレスリリース↓。

マウスのリンパ球などの体細胞を⽤いて、こうした体細胞の分化型を保持している制御メカニズムが、強い細胞ストレス下では解除されることを⾒いだしました。さらに、この解除により、体細胞は「初期化」され多能性細胞へと変化することを発⾒しました。この多能性細胞は胎盤組織に分化する能⼒をも有し、ごく初期の受精胚に⾒られるような「全能性[5]」に近い性質を持つ可能性が⽰唆されました。この初期化現象は、遺伝⼦導⼊によるiPS細胞(⼈⼯多能性幹細胞)の樹⽴とは全く異質のものです。共同研究グループは、この初期化現象を刺激惹起性多能性獲得(STAP)、初期化された細胞をSTAP細胞と名付けました。(2014年1⽉29⽇ 理化学研究所 報道発表資料 PDF)

 

STAP細胞とiPS細胞との違い

STAP細胞はひとりの人間の妄想の産物およびその妄想が共同研究者の脳にも宿った結果、論文報告という意味において現実化したものですが、実在はしません。それに対して、iPS細胞は実際に存在する細胞です。

 

「STAP細胞はあります」

小保方晴子氏が記者会見で記者からの「STAP細胞はあるんでしょうか?ないんでしょうか?」という質問に答えた「STAP細胞はあります」という発言は、2014年の流行語大賞にノミネートされるほど社会的なインパクトがありました。

「STAP細胞はあります!」 4月9日反論会見 小保方氏本人と守護霊が激白!!【ザ・ファクト REPORT #3】

 

  • 流行語大賞はどれ? 「STAP細胞はあります」「ありのままで」など50語ノミネート (2014.11.19 16:25 産経ニュース)今年話題となった言葉に贈られる「2014ユーキャン新語・流行語大賞」の候補が19日、「現代用語の基礎知識」を発行する自由国民社から発表された。今年は、小保方晴子氏の「STAP(スタップ)細胞はあります」やアニメ映画「アナと雪の女王」の「ありのままで」、お笑いコンビ「日本エレキテル連合」の「ダメよ~ダメダメ」など50語がノミネート。大賞とトップ10は12月1日に発表される。
  • こっちが流行語大賞? 小保方さんの「レシピある」発言はすごい(2014.12.18 11:30 AERAdot.) やく:私は一貫して、小保方さんを擁護しています。かみさんには「あなたはインテリ女に弱い」と言われるんですが、まことにそのとおり。疑惑に答えるため4月に開いた会見で発した、「STAP細胞はあります」という言葉が新語・流行語大賞の候補になりましたが、私はそれより、「STAP細胞は200回以上作製に成功した」という言葉に重きを置きたい。検証実験の結果はまだ公表されていませんが、201回目の成功を待てばいいだけです。 ぺリー:小保方さんの「レシピのようなものはある」という発言はすごいと思いました。科学者は、レシピとは言わないでしょ。かっぽう着でレシピですからね。

 

STAP細胞の真実

結局、STAP細胞は存在しなかったと思います。あったとすれば小保方さんの頭の中にだけあったのでしょう。そして、周囲の研究者は、すくなくとも当初は、それを信じたのです。研究の過程で、アーチファクトをうっかり大発見と見間違うことはありがちです。思い込みが激しければ、死にゆく細胞の自家蛍光をGFPの蛍光と見間違った可能性は大きかったと思います。

 

関連書籍(アマゾンへのリンク)

  1. 小保方 晴子『あの日』 講談社 2016年1月29日
  2. 小保方 晴子『小保方晴子日記』 中央公論新社 2018年3月20日
  3. 須田 桃子『捏造の科学者 STAP細胞事件』文藝春秋 2015年1月7日
  4. 小畑 峰太郎『STAP細胞に群がった悪いヤツら』新潮社 2014年11月27日
  5. 黒木 登志夫『研究不正』中央公論新社 2016年4月19日
  6. 渋谷 一郎『STAP細胞はなぜ潰されたのか』ビジネス社 2016年4月22日
  7. 船瀬 俊介『STAP細胞の正体』花伝社 2015年5月25日
  8. 佐藤 貴彦『STAP細胞 事件の真相』パレード 2016年12月14日 
  9. 佐藤 貴彦『STAP細胞 残された謎』パレード 2015年12月7日
  10. 大川 隆法『小保方晴子さん守護霊インタビュー』幸福の科学出版 2014年4月18日
  11. W.ブロード, N.ウェイド『背信の科学者たち』講談社2014年6月20日
  12. 村松 秀『論文捏造』中央公論新社 2006年9月1日
  13. 田中 智之、小出 隆規、安井 裕之『科学者の研究倫理』東京化学同人 2018年6月8日

ちなみに、東京化学同人から出版された『科学者の研究倫理』は、これから科学者を目指す大学生や大学院生にぜひとも読んでいただきたい本です。研究生活を送る上で何に注意したらよいのか、どんな問題が待ち受けているのかが解説されています。
 

理研STAP細胞NATURE論文捏造事件のカテゴリー内の記事

2018年11月19日ディオバン論文不正事件の控訴審判決

アンジオテンシンII受容体拮抗系高血圧治療薬・ディオバン(一般名:バルサルタン)を巡る医師主導の臨床研究でデータを改ざんしたとして、薬事法(現・医薬品医療機器法)の第66条に基づく誇大記述・広告違反に問われたノバルティスファーマの元社員・白橋伸雄被告と同法両罰規定により起訴された法人としてのノバルティスファーマに対する控訴審判決で、東京高裁は11月19日午後、一審の無罪判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。 同裁判は、日本人の高リスク高血圧患者を対象にノバルティスのディオバンの上乗せによる心血管イベント発症抑制効果を比較検討した「Kyoto Heart Study(KHS、主任研究者:松原弘明・京都府立医科大学循環器内科教授)」の2つのサブ解析論文での不正について問われたもの。(一審の無罪判決を支持。「66条1項での対応は無理があり、新たな立法措置が必要」 2018年11月19日 PM04:38 医療NEWS QLifePro)

  1. 「ディオバン」データ改ざん、2審も無罪判決 (2018年11月19日 21時34分 読売新聞 YOMIURI ONLINE) 高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究データを改ざんしたとして薬事法(現・医薬品医療機器法)違反(誇大記述・広告)に問われた製薬大手「ノバルティスファーマ」の元社員・白橋伸雄被告(67)と法人としての同社の控訴審判決で、東京高裁は19日、無罪とした1審・東京地裁判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。 芦沢政治裁判長は、「たとえ白橋被告が虚偽のデータを提供し、それを基に虚偽の論文を学術雑誌に掲載させたとしても、薬事法が禁じる誇大記述・広告にはあたらない」と述べた。
  2. 薬事法違反を巡る裁判で一審を支持 ディオバン論文不正事件で判決、二審も無罪 (2018/11/19 満武 里奈=日経メディカル) 降圧薬バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床研究論文不正事件で医薬品医療機器等法(旧薬事法)違反の罪に問われ、一審で無罪を言い渡されたノバルティスファーマ元社員の白橋伸雄被告とノバルティスファーマの控訴審判決が11月19日、東京高裁であった。東京高裁は一審の判決を支持し、検察側の主張を棄却した。論文を掲載した行為は、旧薬事法第66条第1項の「虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない」には抵触せず、違法性はないと判断した。

 


 

ノバルティスファーマ社の降圧薬バルサルタン(商品名:ディオバン)の論文不正で、ノバ社の元社員と同社が薬事法(現・医薬品医療機器法)違反(虚偽広告)の罪に問われた事件の控訴審初公判が12日に東京高等裁判所で開かれ、即日結審した。判決は11月19日。元社員と同社に対して無罪とした東京地裁の判決を不服として、東京地検が控訴していた。… 昨年3月の判決で東京地裁は、元社員がディオバン群に有利にするために意図的にデータを改竄したとの検察の主張を認めたものの、学術雑誌の論文掲載に購入意欲を喚起する性質があるとはいえず、薬事法が規制する虚偽広告には当たらないと判断し、無罪判決を言い渡した。(NEWS ディオバン論文不正事件の控訴審判決は11月19日  2018-09-14 日本医事新報社

ノバルティスファーマ社の降圧剤(一般名バルサルタン:商品名ディオバン)を巡る京都府立医科大学での医師主導臨床試験の論文データ改ざん事件の控訴審が9月13日、東京高裁(芦澤政治裁判長)で開かれ、即日結審した。開廷時間は3分程度で、裁判所は事実関係については一審判決を踏襲し、学術論文を作成する行為が薬事法66条1項の虚偽広告に当たるかどうかを改めて判断すると見られる。(ディオバン裁判、高裁は即日結審、11月に判決 学術論文を作成する行為が薬事法違反かどうかが争点レポート 2018年9月13日 (木)高橋直純 m3.com編集部

白橋被告らは、薬事法で禁じられている「虚偽記述・広告」をしたとして起訴された。一審・東京地裁は白橋被告が臨床データを改ざんしたと認定しつつ、「論文は広告にあたらない」と判断し、無罪とした。検察側はこの日、「誇大な事柄を広く知らしめれば、法律に違反する」と主張した。(「一審は法解釈を誤った」ノバルティス論文不正で検察側
2018年9月14日14時00分 APITAL 朝日新聞DIGITAL

一審は17年3月、データ改ざんを認定したが、データに基づく論文投稿は「購入意欲を喚起させる手段と言えず、誇大広告に当たらない」として無罪を言い渡した。(2018/09/13-16:48)

一審は17年3月、データ改ざんを認定したが、データに基づく論文投稿は「購入意欲を喚起させる手段と言えず、誇大広告に当たらない」として無罪を言い渡した。(二審判決は11月19日=ノバルティス論文改ざん-東京高裁 2018/09/13-16:48  JIJI.COM

 

 

参考

  1. 金子勝の「天下の逆襲」 これは深い病だ…文書やデータの改竄に社会が驚かない異常 2018/05/30 06:00 日刊ゲンダイDIGITAL
  2. 意外な無罪判決で検察に衝撃 ディオバン事件の経過と今後 前田恒彦 | 元特捜部主任検事 2017/3/21(火) 6:00 YAHOO!JAPAN

 

 

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医学系論文に関する報告がまだ済んでいない東大

日本の科学研究史上最悪の研究不正

サイエンス記事では、弘前大の研究不正事件を史上最大級の一つとしていますが、私は個人的には東京大学医学部のデータ捏造論文(=オリジナルデータと論文データがことごとく異なる)を東大の現執行部が隠蔽(=本調査の報告書すら非公表)していることも、日本の科学研究の歴史における最大最悪の不正の一つだと思っています。

なにしろ、「論文のグラフが手描きで作られていて(=つまり、デタラメ)、オリジナルデータと論文データがことごとく異なるもの(=つまり、全部がデタラメ)」を、日本でトップの研究大学である東京大学の総長や理事ら現執行部が「研究不正とはみなさない」と公式に宣言したのです。これにより、日本の科学研究の世界において「研究倫理」という言葉は、その意味を完全に失ったように感じます。

Ordinary_Researchersが同時に告発した理学系論文の方はクロをクロとして厳正に対処した一方で、医学系論文に関してはクロをクロと呼ばずにシロと呼ぶことにして、シロなのでハイおしま、こんな屁理屈で重大な論文不正疑惑にフタをしようとする東大の破廉恥ぶりには驚き呆れます。

私はOrdinary_Researchersの告発文書を見て、いくらなんでもここまでデータ捏造の証拠を突きつけられたら誰も言い逃れはできないだろうと思っていました。


なので、まさか、科学者や弁護士という立派な経歴を持つ東大執行部の大人たちが、こんな幼稚なことを真顔で言って医学部の不正疑惑の幕引きを謀ろうとするなどとは、自分は夢にも思いませんでした。


医学系論文の一部に関してはオネストエラーあるいは雑誌社編集過程でのミスだったと説明されましたが、説明が一切なされなかった論文に関しては、デタラメな論文(=論文の図のどのグラフも実験値を表していない)にもかかわらず不正認定を免れて立派な”研究業績”として生きているため、現在も、国民の税金が原資である科学研究費が何億円という規模でこれらの”研究者”のもとに流れ込んでいます。


日本の科学研究において、そして、東大において、一刻も早く正義が回復することを願ってやみません。マスメディアも、東大が不正なしと発表したから「不正なし」と報道するのではなく、「東大が不正なしとした」ことの意味を報道し、ジャーナリストとしての使命を果たすべきです。

昨今、日本の研究力が低下したことを危惧する論説が増えていますが、研究不正を研究大学のトップが公認しているという異常さに異議を唱えずに、他の原因ばかり考えるのはおかしいと思います。研究不正の蔓延が、研究力低下の大きな要因の一つであることは論をまたないでしょう。

 

22報論文に関する調査報告の骨子で露わな自己矛盾

東大は「22報論文に関する調査報告」の本体を非公表、「骨子」のみ東京大学ウェブサイト上で公開しており、そこには医学部系に関しはわずか19文字からなる一文しかありません。ところが、この19文字だけでもすでに大きなゴマカシがあることに気付きます。Ordinary_Researchersが告発したのは、あくまでも、図が怪しい「論文について」でした。この調査報告書もタイトルが示すとおり、「論文に関する」報告です。分子細胞生物学研究所関係の結論も、

論文(図) 5報(16図)について不正行為があったと認められた

と記述されており、「論文に関して」不正があったかなかったかの結論を述べています。ところが、非常におかしなことに、医学系研究科関係に関しては、

(結論)申立のあった5名について不正行為はない

としか言っておらず、実は、論文に関する報告をしていないのです。5名の医学系教授に不正があったかどうかの話にすり替えています。Ordinary_Researchersの告発文書を読めば明らかですが、誰も医学系教授5名を告発などしていません。告発の対象はあくまで、これらの教授の研究室から出た数々の論文です。いずれも複数の著者からなる論文であり、研究不正を働いた人間が著者の中の誰なのかは、告発者にはわからないわけですから、当然のことです。医学部の論文に関して、「(結論)申立のあった○○報(□□図)について不正行為はなかった」と書けなかった理由は何でしょうか?調査委員らも東大執行部も研究不正の自覚が十分にあり、「論文について不正行為はなかった」と言い切ることにはさすがに心理的な抵抗があったために、こんな誤魔化した日本語になったのだろうと私は想像しています。開示された調査書本体の墨塗りでない部分を読むだけでもこのような痛々しいゴマカシがさらに数多く見つかりますから、調査報告書本体を東大がウェブ公開できない心情はよく理解できますが、許されることではありません。

実際、東大が報告書や調査資料の公開を正当な理由なく拒否するのは違法であるという判断が、総務省の審査部会によって出されています。

関連記事 ⇒ 調査報告書を国民に開示しないのは違法

医学系論文に関する報告がまだ済んでいない東大

東大は医学系論文に関して不正行為があったかなかったかという報告をまだきちんと国民に対してしていません。「22報論文に関する調査報告」全文を速やかに全国民に対して公開し、調査報告書の結論を導く根拠となる、個々の論文の個々の図の実験事実を証明する調査資料の全ても合わせて開示すべきです。東大医学部における研究不正の有無を判断するのは、日本の研究者コミュニティが担うべき役割であり、東大はそれに必要な全ての資料を開示する責任があります。一部の人間による情報不開示の判断は、日本の研究の公正さ(Research Integrity)や東大の名誉を貶める所業と言わざるをえません。

 

ひょっとしたら、情報を開示しない東大総長や副学長や理事らは「東京大学の科学研究における行動規範」を読んでいないのかもしれないので、念のため重要なポイントを再び紹介しておきます。

  • 研究活動について透明性と説明性を自律的に保証することに、高い倫理観をもって努めることは当然である。
  • 広く社会や科学者コミュニティによる評価と批判を可能とするために、その科学的根拠を透明にしなければならない
  • 十分な説明責任を果たすことにより研究成果の客観性や実証性を保証していくことは、研究活動の当然の前提であり … その責任を果たすことによってこそ、東京大学において科学研究に携わる者としての基本的な資格を備えることができる。

(出典:「東京大学の科学研究における行動規範」PDF)

上の東大の行動規範の言葉を借りて言うなら、十分な説明責任を果たすことにより研究成果の客観性や実証性を保証していくことは、研究活動の当然の前提であり、その責任を果たすことができないのであれば、東京大学において科学研究に携わる者としての基本的な資格を備えていないので、東大はただちに研究をやめるべきです。

 

東京大学医学部の研究不正関連記事

 

サイエンス誌が弘前大学の故 佐藤能啓氏の論文不正に関する詳細な解説記事を掲載

サイエンス誌が、弘前大学の故 佐藤能啓氏の論文不正を取り上げています。不正調査に関わった研究者の1人は、これを「史上最大級の研究不正の一つ」と位置づけています。

Researcher at the center of an epic fraud remains an enigma to those who exposed him
(By Kai KupferschmidtAug. 17, 2018 , 9:15 AM sciencemag.org)

Sato’s fraud was one of the biggest in scientific history. The impact of his fabricated reports—many of them on how to reduce the risk of bone fractures—rippled far and wide. Meta-analyses that included his trials came to the wrong conclusion; professional societies based medical guidelines on his papers. To follow up on studies they did not know were faked, researchers carried out new trials that enrolled thousands of real patients. Exposing Sato’s lies and correcting the literature had been a bruising struggle for Avenell and her colleagues. 

佐藤氏は多作でした。生涯で200以上の論文を発表したそうです。

A team of four researchers has worked since 2012 to expose scientific misconduct by Japanese boneresearcher Yoshihiro Sato, who published more than 200 papers before he died in 2016. The team hasfocused on Sato’s 33 clinical trials, together involving 5894 patients. 
… 
Today, 21 of Sato’s 33 trials have been retracted by the journals or Sato himself;

このサイエンスの記事によれば、佐藤氏は研究不正が明らかになったことで自殺したと見られているそうです。

“What happened with Sato?” I ask. “People say he committed suicide over this,” Saya says. But he doesn’t know whether that’s true.

なぜ論文を捏造したのかという疑問に対する納得のいく説明は得られていません。

But none of that explains why Sato decided to embark on his fraud—and nobody seems to be able to shed much light on that question. “Given the number of papers he published, he must have spent a very large amount of time on them,” Bolland says. “I don’t understand what his gain was. … There must have been some reason to do it.” The Keio University panel is just as puzzled. “We discussed this a lot in the committee,” Saya says. It might have been like a hobby, he suggests. A thrill. Saya uses the word “otaku,” a Japanese term often applied to people who read manga obsessively.

オタクがアニメに興じるように、論文捏造に興じたのではないかという考えが紹介されていますが、どうなんでしょう?データ捏造を面白がってやっているかどうかなど第三者には知りえません。私が個人的に最もしっくりくるのは、

「捏造研究者の研究能力」 < 「期待される研究成果」

という説明です。捏造論文に基づいて研究費を得て、さらに論文捏造を繰り返すしかないという悪循環がよく説明できます。

このサイエンス誌の記事では佐藤氏の多数の論文において共著者となった慶應大学の研究者の関わりについても紙面を割いており、この事件に関するかなり詳細なレポートになっています。

 

参考

  1. STAP細胞事件が覆い隠した科学技術立国ニッポンの「ヤバい現実」 「史上最悪の研究不正」をご存知か? (榎木 英介 2019.11.27 genda.ismedia YAHOO!JAPAN 90コメント)
  2. サイエンス誌があぶり出す「医学研究不正大国」ニッポン (榎木英介 | 病理専門医かつ科学・技術政策ウォッチャー YAHOO!JAPANニュース 2018/8/22(水) 15:19) 「嘘の大波(TIDE OF LIES)」と第されたその記事は、サイエンスの2018年8月17日号に掲載された。紙面では見開き2ページに渡り、上述の北斎風の絵が掲載されている。 記事は骨の研究者で医師の佐藤能啓氏を取り上げている。 佐藤能啓氏は、骨折とビタミンなどに関する大規模な臨床試験を行ったとして論文を発表してきた。佐藤氏の論文はほかの論文にも引用され、骨折予防の治療指針の根拠となっていた。その論文にデータの捏造、改ざんという研究不正(研究ネカト)があったのだ。
  3. 「今年の研究不正」をグローバルに振り返る 論文撤回監視サイトの「日本コーナー」18本の記事を中心に(高橋真理子 朝日新聞 科学コーディネーター 2017年12月28日 WEBRONZA) 朝日新聞11月16日付朝刊青森県版で弘前大の調査結果が伝えられているので、まずはこの記事の概略を紹介しよう。 佐藤元教授は2000年11月から03年3月まで弘前大に在籍し、その後に福岡県内の病院に移り、17年1月に64歳で死去した。米国の専門誌が16年6月に元教授の論文3本を取り下げたことなどから問題が発覚、大学が調査委員会を設置して調べ、14本の研究論文にデータ捏造などの不正があったと認定した。
  4. 弘前大学医学部所属教員による研究活動上の不正行為(捏造・盗用)の認定について文科省 報告受理日 平成29年11月16日)弘前大学医学部元教授(在職期間:平成12年11月~平成15年3月)の7本の論文取下げが平成28年6月~9月にマスコミで等で報道されたことを受け、弘前大学で予備調査(平成28年10月12日~平成29月2月1日)を行った。さらに、平成28年11月11日に匿名のメールにより弘前大学及び文部科学省に対して研究不正に関する告発があった。被告発者は、弘前大学医学部元教授及び共著者であり、その告発は平成28年11月9日にNeurology 2016; 87: 1-12に掲載されたレポートに基づくもので、上記の研究者による33本の論文には捏造、改ざんの疑いがあることを指摘したものである。この告発についての予備調査(平成28年11月28日~平成29年2月1日)と前述の予備調査を合わせた本調査委員会を平成29年3月1日に設置し、関係者へのヒアリング及び書面調査によって調査を行った。 調査の結果、研究活動における特定不正行為である「捏造」が13本、「盗用」が1本の論文において行われたものと認定した。
  5. 弘前大医学部の元教授が論文不正 症例数などデータ捏造(佐藤孝之 朝日新聞DIGITAL 2017年11月16日15時00分)弘前大学(佐藤敬学長)は14日、佐藤能啓(よしひろ)・元医学部教授(故人)が筆頭著者として2002~06年に発表した14本の研究論文にデータ捏造(ねつぞう)などの不正があったと発表した。
  6. <弘前大>元教授の論文14本に不正 大学、捏造や盗用認定河北新報 2017年11月15日) データの妥当性に疑いがあるなどとして、弘前大に在籍していた教授の論文が取り下げられた問題で、同大は14日、計14本の論文に捏造(ねつぞう)や盗用があったと発表した。共著者の1人だった佐藤敬学長の不正への関与はなかったとしている。
  7. 弘大元教授の14論文に研究不正陸奥新報 2017/11/15)弘前大学は14日、弘大医学部元教授の佐藤能啓氏が筆頭著者を務め、米国や日本の医学雑誌に掲載(1997~2006年)された論文38本のうち、14本にデータのねつ造や、論文著作者が適正に公表されない不適切なオーサーシップが認められ、研究不正があったと公表した。
  8. 研究活動の不正行為に関する調査結果について弘前大学 2017.11.15 更新)元弘前大学医学部教授(平成12年11月~平成15年3月に在職)の7本の論文取り下げが平成28年6月~9月にマスコミ等で報道されたことを受け、本学で予備調査(平成28年10月12日~平成29月2月1日)を行いました。さらに、平成28年11月11日に匿名のメールにより弘前大学及び文部科学省に対して研究不正に関する告発がありました。被告発者は、元医学部教授及び共著者であり、その告発は平成28年11月9日にNeurology 2016; 87: 1-12に掲載されたレポートに基づくもので、上記の研究者による33本の論文には捏造、改ざんの疑いがあることを指摘したものです。この告発についての予備調査(平成28年11月28日~平成29年2月1日)と前述の予備調査を合わせた本調査委員会を平成29年3月1日に設置し、関係者へのヒアリング及び書面調査によって調査を行いました。
  9. 弘大元教授の論文14本不正認定/弘大、学長責任なしWeb東奥2017年11月14日)弘前大学元医学部教授の男性(故人)が筆頭著者の論文を海外の掲載雑誌が相次いで取り下げた問題で、弘大は14日、論文14本に捏造(ねつぞう)などの研究不正があったと発表した。いずれも佐藤敬学長が共著者となっていたが、不正への関与はなく、研究内容に責任を負う立場にないと結論づけた。
  10. 元教授の論文14本に不正 弘前大が調査結果公表共同通信 2017/11/14 21:15) 弘前大(青森県弘前市)は14日、元医学部教授の男性(今年1月死去)が2002~06年、米国の医師会雑誌に発表した論文14本に捏造や盗用があったと発表した。佐藤敬学長が共著者となっていたが、英文の校正を担当したにすぎず、専門分野が異なるとして「不正には該当しない」と結論付けた。 調査対象は1997~11年に発表された骨折の予防などに関する論文38本。調査の結果、元教授の生前の証言などから、13本に症例数の水増しなどの「捏造」、1本に「盗用」があったと認定した。 元教授は00~03年、弘前大に在籍。その後、福岡県内の病院に勤務し、今年1月に64歳で死去した。
  11. 佐藤能啓、佐藤敬 弘前大学長らの33論文に対する不正や不適切さを調査した論文発表!世界変動展望 2016-11-10 21:30:00)
  12. Systematic review and statistical analysis of the integrity of 33 randomized controlled trials. Neurology December 06, 2016; 87 (23) Mark J. Bolland, Alison Avenell, Greg D. Gamble, Andrew Grey. First published 
  13. 弘前大 論文撤回で学長、第三者委設置へ /青森毎日新聞2016年9月28日 地方版)弘前大の佐藤敬学長が共著者として参加した英文の論文が主著者のデータ疑義などから今年6月に撤回され、佐藤学長のオーサーシップ(論文著者資格)が不適切とされた問題で、佐藤学長は27日の定例会見で「近く学内に第三者委員会を設け、この問題への対応を検討してもらう」と明らかにした。
  14. 佐藤能啓らの不正論文が撤回、計10報!世界変動展望 2016-07-23 00:00:01)
  15. 弘前大 元教授、論文撤回 データ疑義 佐藤学長が共著者 /青森(会員限定有料記事 毎日新聞2016年6月25日 地方版)弘前大の佐藤敬学長(66)が米医師会雑誌などに共著者として発表した英文論文3編がデータの妥当性への疑義などから撤回されたことが24日までに分かった。
  16. 見立病院、弘前大の研究不正の究明はマスコミにかかっている!世界変動展望 2016-06-18 17:35:00)
  17. JAMA取り消し、「不適切な執筆者名」 「今考えると問題」、“名誉著者”の形(2016年6月17日 成相通子 m3.com 編集部)弘前大学学長の佐藤敬氏が最終著者となっていた論文3本が6月3日に、米医師会誌JAMAとInternal Medicineから取り消された問題で、取り消しの理由がデータの整合性と執筆著者の不適切な割り当てなど、科学における不正行為に関するものだったことが分かった。
  18. 弘前大学、佐藤敬学長の論文不正を調査せず!ガイドライン無視!世界変動展望 2016-06-16 21:10:00)
  19. 佐藤能啓、佐藤敬らの論文3報が研究不正で撤回! (世界変動展望 2016-06-03 23:00:00)佐藤能啓(Yoshihiro Sato、医療法人 昌和会 見立病院 元副院長、元弘前大学教授)、佐藤敬(Kei Satoh、経歴)弘前大学学長らの論文3報が研究不正で撤回された。
  20. 佐藤能啓(Yoshihiro Sato)が筆頭、責任著者で慶応大、弘前大との共同研究論文に不正疑義! JAMAが懸念表明(世界変動展望 2015-05-21 21:10:56)

 


当初この位置に書いた記事は、独立した記事にしました。

⇒ 東大医論文(5)医学系論文に関する報告がまだ済んでいない東大


間違った医学論文・捏造論文で取得した博士号を徳島大学が取り消し

徳島大学大学院医歯薬学研究部50歳代男性教授が停職6月

2020年5月13日の徳島大学の発表によれば、教授には停職6か月の処分が下されたそうです。徳島新聞のニュース記事によれば、大学院生は3月に博士号を取り消されているとのことなので(令和2年4月20日の徳島大の発表では、令和2年3月13日に学位の授与を取り消し)、このニュースは新しい話ではなくて、下で記事にした学位取り消し事件に関して、まだ処分が定まっていなかった教授に関する処分内容の発表ということのようです。

  1. 徳島大論文ねつ造 男性教授停職6カ月 (2020/5/14(木) 15:16 徳島新聞 YAHOO!JAPAN)

 

教授がストーリーを強要、大学院生がデータ捏造

徳島大学でまた学位取り消しがありました。下の記事とは別件です。捏造の動機が、二人の言葉からうかがい知れます。

院生「教授からのプレッシャーがあり、教授の求める実験データを得ようとした

教授「厳しい言い方をし過ぎたかもしれない

つまり、教授が描いたストーリーに合う実験データを出せずにいた大学院生が、学位取得の締め切りが迫ってきたこともあり、教授の要求するデータを捏造して教授に渡し、教授が自分のストーリーで論文を執筆したというものです。今まで全然期待したデータが取れていなかった大学院生が急に都合の良いデータばかりもってきたときに、教授が信憑性をチェックしなかったのは重大な過失だと認定しています

産経WESTとNHKの記事をもとに時系列を整理すると、

2020年(令和2年)4月20日 徳島大学が研究不正を公表
2020年(令和2年)3月 博士号を取り消し
2019年 捏造論文の取り下げ
2018年(平成30年)3月 匿名のメールによる不正告発
2014年(平成26年)学術誌に捏造論文掲載

SDGsの課題解決とデータの捏造とがどう関係するのか、さっぱりわかりませんが徳島大学がお詫びの声明を出していました。

独創的研究及びSDGsの課題解決に向けた研究や教育に本学の教員全体が取り組む中で、このような研究不正行為があったことは、誠に遺憾であり深くお詫び申し上げます。 加えて、…

学長 野地 澄晴

具体的な捏造箇所の説明はありませんが、どのようにして捏造に至ったのかの説明は、大学が公表していました。一部を掲載します。これを読むと、このデータ捏造を実行したのは大学院生ですが、自分の描いたストーリーを大学院生に押し付け、捏造データを受け取って吟味することなくそのまま論文を書いた教授にもかなりの責任があると思います。

3 調査結果

調査の結果、告発対象論文1報について、次のとおり認定した。

(1)不正行為の具体的な手法・内容
① 特定不正行為
・ねつ造:出所不明データの付け足し
・改ざん:実験データの不正な方法による解析
② 特定不正行為以外の不正行為(研究活動上の不適切な行為)
・不適切なオーサーシップ

(2)不正行為に係る研究者
・A教授
研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる,ねつ造,改ざん」及び「研究活動上の不適切な行為であって,科学者の行動規範及び社会通念に照らして研究者倫理からの逸脱の甚だしい行為(不適切なオーサーシップ)」に関与した者と認定した。
・B元大学院生
「故意による、ねつ造、改ざん」に関与した者と認定した。

(3)判断理由
ア)認定した事実
① 特定不正行為(ねつ造、改ざん)
告発対象論文について、論文の結論にとって都合が良いデータを選択して作成された図があることと、出所不明のデータを付け加えることにより、複数の不正な図(改ざん及びねつ造が行われた図、改ざんが行われた図)が掲載されたことを確認し、特定不正行為(ねつ造、改ざん)が行われたことを認定した。
② 特定不正行為以外の不正行為(不適切なオーサーシップ)
告発対象論文において、論文の作成にほとんど関わっていない者を共著者として記載し、論文を投稿するに当たり、共著者全員に了解を得ないまま手続きを行い、受理されてから連絡するなどの行為を確認し、これは不適切なオーサーシップに当たると認定した。

イ)認定の理由
① A教授(責任著者)
特定不正行為
・本件研究が行われた研究室の主宰者であり、B元大学院生の指導教員であった。
・B元大学院生に対して、実験の方法や実験データの解析等に係る基本的事項を含む研究全般について、十分な指導をしていなかった。
・研究成果を発表するにあたっては、自らが用いる実験データが科学的に適正な方法と手続でなされたものであることを確認すべきであるが、それができていなかった。
・筆頭著者であるB元大学院生の作成したグラフや図を用いながら、本件論文のほぼすべてを自ら執筆した。
B元大学院生が行った実験は、相当期間、多数回に渡ってA教授の仮説と異なる結果を示しており、このことをA教授自身も十分に認識していた。
設定した締切りが近づいた時期になって、突如、B元大学院生がそれまでの実験結果と異なる実験データを提示したことについては、実験結果全体の信用性について特に慎重な検証を要すると感じるのが当然の状況にあった。
生データや実験・観察ノートを提示させ、それらを確認することを一切していなかった
・提示された実験データに再現性があるものかどうかといった事柄すら把握しておらず、後日、それらの検証を可能とするデータや資料なども保管していなかった。
これらを総合的に判断し、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことにより、不正に作成された図を利用して論文を執筆したことは、A教授自らが研究結果等をねつ造、改ざんしたものであることと何ら変わりがなく、特定不正行為に該当すると認定した。
特定不正行為以外の不正行為(研究活動上の不適切な行為)
・責任著者でありながら、論文の作成にほとんど関わっていない者を共著者として記載し、論文を投稿するに当たり、共著者全員の了承を得ないまま投稿手続きを行い、受理されてから連絡した。
以上の行為は、特定不正行為以外の不正行為として不適切なオーサーシップに該当すると認定した。

② B元大学院生(筆頭著者)
・複数の図において、データの恣意的な取捨選択出所不明のデータの付加を行っていた。
・論文に掲載された実験を実際に担当し、A教授の求める実験データを得ようとしていた。
・A教授から適切なデータの取扱い、解析方法及び研究倫理について指導されていなかったことによる知識不足のため、独自の誤った方法で論文に記載する図を作成していた。
・A教授から学位取得についてプレッシャーをかけられ、A教授の意図した実験データを厳しく要求し続けられていた。
・A教授や研究室内の指導者への相談等が十分に行えていなかった。
実験データから選択した過程を容易に追跡できる資料を保存していた。
以上のことから、B元大学院生がねつ造、改ざんを積極的に行う意思が乏しかったとはいえ、この行為は故意に研究結果等をねつ造、改ざんしたものとして、特定不正行為に該当すると認定した。

(転載元:https://www.tokushima-u.ac.jp/fs/1/4/6/5/9/9/_/gaiyou.pdf 太字強調は当サイト)

  1. 【お詫び】研究不正(ねつ造、改ざん)の調査結果及び対応について令和2年4月20日 徳島大学
  2. 徳島大大学院生が論文データ捏造、博士号取り消し(2020.4.20 21:50 産経WEST
  3. 徳島大大学院 教授ら論文不正か(2020年04月20日 18時49分 NHK NEWSWEB
  4. 徳大で論文データ不正 教授処分審議 元院生博士号取り消し (5:00 徳島新聞(要有料会員登録))
  5. https://twitter.com/plagiarismfraud/status/1252291411543638016
  6. 取り消された博士研究論文:カチオン性リポソームを担体としたmyostatin-siRNA局所導入による骨格筋量制御効果の検討 Effectiveness of cationic liposome-mediated local delivery of myostatin-targeting small interfering RNA in vivo. Dev Growth Differ2014 Apr;56(3):223-32. doi: 10.1111/dgd.12123. Epub 2014 Mar 13. (PubMed)

 

以下の記事は、上とはまた別の事件です。

学位取り消し

徳島大学では,元大学院学生(徳島大学大学院医科学教育部医学専攻博士課程(平成29年3月23日修了))の学位論文「A significant causal association between C-reactive protein levels and schizophrenia」(甲医第 1318 号・博士(医学))に関して,下記のとおり「学位を授与された者が,その名誉を汚辱する行為をしたとき」と判断し,学位授与の取り消しを決定し,学位記の返還を命じた。(徳島大学 平成30年7月6日)

 

論文の間違いが発覚した経緯

学位授与の根拠となった論文に関連し,外国人研究者が同じ公開データを使用した同じテーマの論文が,結果が逆の内容で別学術雑誌に掲載された。今回対象の論文を掲載している学術雑誌の編集者から,研究内容を確認して回答するよう要請があった。著者らは,要請を受けて再確認し,計算自体に間違いがなかったが,当初の公開データの取り間違いがあったことに気づき,論文の根幹に係る主張の間違いだと言うことで,論文撤回(H30.2.21)という結果になった。(徳島大学 平成30年7月6日)

 

研究不正の有無

特に公開データの場合は,誰もが同じことを直ぐにでも試みることができるので,データを故意に間違えて計算するという蓋然性は低く,この論文撤回に関して不正はなかったと判断した。(徳島大学 平成30年7月6日)

 

学位を取り消す根拠

  1. 学位授与の前提となる論文が事実上なくなった
  2. 研究者として当然持っているべき基本的な慎重さが欠け,主張が間違った論文を学位論文として申請した (徳島大学 平成30年7月6日)

 

徳島大学学長のコメント

このたびの事態によって損なわれた徳島大学の学位に対する社会的信頼を回復するため、大学院生に対する研究者倫理教育の醸成を図ることはもちろんのこと、論文の作成段階及び学位の申請段階において、教育・研究の達成を見る上でも、実験内容を適切に記録していることを確認させるとともに、論文審査体制を一層厳格化することにより、学位審査体制の充実、透明性、客観性の確保を図り、学位の質保証に結びつけてまいります。(学長 野地澄晴)(学位授与の取消しについて 徳島大学 2018年7月6日)

 

参考

  1. 学位授与の取消しについて(概要) 平成30年7月6日 徳島大学
  2. Retraction: A significant causal association between C-reactive protein levels and schizophrenia (Published: 21 February 2018, Scientific Reports)
  3. A significant causal association between C-reactive protein levels and schizophrenia. Scientific Reports volume 6, Article number: 26105 (2016). Published: 19 May 2016
  4. 徳島大 医学博士号取り消し 元院生の論文に誤り /徳島 (毎日新聞2018年7月7日 地方版) 論文は16年5月、英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載。男性は17年3月に博士号を取得した。だが同誌は今年2月、公開データの取り違えで結論などが誤っていたとの撤回記事を出した。
  5. 徳島大、元院生の博士学位取り消し 論文データに誤り、論文掲載誌から指摘 (産経WEST 2018.7.6 13:49)
  6. A university is revoking a student’s PhD — but not because of misconduct (Retraction Watch)
  7. 捏造、不正論文、総合スレネオ47(5ch) 82名無しゲノムのクローンさん2018/07/27(金) 22:11:37.93 https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/life/1532266799/

 

第115回日本内科学会理事選に異議あり!

第115回日本内科学会総会が、2018年4月13日(金)~15日(日)の日程で京都で開催されました。内科学会理事の選出の際にハプニングがあったようなので、ネット上の噂をまとめておきます

現場を目撃した人の証言

674名無しゲノムのクローンさん2018/04/16(月) 02:02:27.12ID:SZp399Cyx

某医療コミュニティサイトより

いやはや、驚きました!
通常は学会の定時総会など〇〇先生を理事にします。〇〇先生を評議員にします。賛成の方は拍手を・・・という感じでまったりと進んで行くのですが・・・

今年の内科学会は会場が一つしかなく他に行くところもなく居眠りしようと会場に入った途端、女性の声で「小M先生を理事にするのはおかしい。これほどグレーな先生を理事にするのは理解できない!」という内容の罵声が耳に入り、演台の門W先生がたじたじになっていました。

小M先生の事は全く知りませんでしたのでネットで検索すると、ディオバン論文の責任者の方の様で、それならグレーじゃなくてブラックじゃない!と思ってしましました。

会場の中には女性の方の発現に「そうだ!」という賛同の声をあげる方や、「会をぶち壊しにするな!」という否定的な声をあげる方もいました。

私は個人的には疑問を感じたことに自分の考えを述べるのは間違ってはいないと思いますし、言われている事も正しいと思いました。

ネットでさらに検索すると小M先生と門W先生は同門なのですね。それと両方とも論文不正の問題を抱えていることも共通してるなと思って見ていました。今日の内科学会の一番の見どころでしたね。

(一部割愛及び複数の投稿を取り纏め 引用元:http://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/life/1520931117/ )

 

反響

755名無しゲノムのクローンさん2018/04/19(木) 03:33:21.15ID:LL1qvnoox
>>753
国内では、権威を振りかざす、三内なんて今まで逆らえなかった
まして面と向かって物申す!なんて、内科学会のジャンヌダルクの降臨だったわ 
でもね、よく考えたら、MDとしてちゃんとやってけば、捏造してまで権威を振るうような人達に遠慮する事も無いわね
捏造告発の道すじを作ってきた、11jigen,ordinary researchers や匿名の貢献は大きいと思う

 

発言者本人の弁

医師の世界では、エムスリーという会社に医師用の掲示板があり。そちらで書かれているのでご存知の方も多くなっているのですが。… 会場で小室先生の理事就任を認めるか、と当時の理事長の門脇先生が言うので異議あり!とすくっと立ち上がりました。… 小室先生は黒ではないが、白でもなくグレーです。そのような理事をお迎えしてなぜ運営しなければなりませんか。こんなことをやれば日本はまた海外から失笑される。日本の研究の国際的信用が失墜している中、グレーな人をお迎えして運営するのだ、と示せばまた信用が落ちる。容認できません。これに対して門脇先生は、手続きの適正性を盾に否決するのを拒みました。しかし。わたしの質問は、なぜあまた白い人がいる中グレーな人を幹部に迎えねばならないのかというものであり議論がかみ合っていません。… (【内科学会総会】ディオバン問題:総会を荒らしてしまいました【NIPT】Posted on 2018年4月22日 by minerva-clinic 医術と戦術の女神ミネルバ 仲田洋美 オフィシャルブログ)

 

参考

  1. 第115回日本内科学会総会・講演会 テーマ:『 明治維新150年目の内科学 ~難治性疾患への挑戦~』主宰会長 河野 修興 (広島都市学園大学・広島大学名誉教授) 開催日 2018年(平成30年) 4月13日(金)~15日(日)会 場 京都市勧業館(みやこめっせ)/ロームシアター京都
  2. 日本内科学会の理事選考で東大の小室教授の就任が揉めたそうですね。小室先生、2016年度も製薬企業から864万円も講演料などを受け取っていました。年間の講演会は約50回。何をされているのでしょうか? 上 昌広 @KamiMasahiro 7:53 – 2018年4月14日
  3. 日本内科学会総会が週末、大荒れに。高血圧治療薬ディオバンの治療成績を改竄しまくり、それがバレて世界中の専門誌や研究者から総スカンされた東大の某教授は、トカゲの尻尾切りで自らは一切お咎めなし。お友だち内閣府の後押しで内科学会の理事に無事、就任したそうです。東大は堕落し失墜した。— フロリバンダ@肉球新党「猫の生活が第一」 (@UBh6y5M4ShgbKJB) 2018年4月15日

  4. 小室一成(ウィキペディア

  5. あの不祥事教授がまさかの「大本命」 東大医学部長選挙という「滑稽劇」(2014.11 選択 pp104-105 PDF)
  6. 徹底解剖 日本の大組織 東大医学部vs.順天堂大学 学閥の壁はバカの壁 ナンバー内科・外科、医局講座制、大学純血主義……。おおくの弊害を生み出した「旧体制」は崩れつつある(文鳥集 徹 (ジャーナリスト) 文芸春秋SPECIAL 2016.09.02 07:00)
  7. 東大教授6人が論文捏造!? 日本医学界の「最高峰」で起きていること だから医者の出す薬は信用できない (週刊現代 講談社 2016.09.30
  8. 懲りない東大医学部、またも論文捏造 ノバルティスファーマ事件でも責任取らず、改竄が組織の風土に?(上 昌広 Japan Business Press, JBPRESS 2016.9.5)
  9. 論文捏造&研究不正@JuuichiJigen 東大医学系の門脇孝研究室の山内敏正氏やJunji Kamon氏が筆頭著者の論文についても多数問題が指摘されていますね。驚きました。その他、阪大の下村伊一郎氏、長田重一氏、九州大の中山敬一氏の研究室の論文等にも疑義が呈されています。9:30 – 2015年1月6日
  10. 第42回 研究不正は武田も含めた医学界の「構造的問題」 (集中MediCon 1 Jan 2014)

追記・変更 20180430 発言者本人のブログ記事を紹介

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東大H26行動規範委員会資料不開示問題の答申

匿名A氏が指摘した類似画像を含む84報のうち東大の医学系研究者が著者であった12報に関して東大が予備調査の結果不正無しと結論したことに関して情報の開示請求がありましたが、東大が一部不開示の決定をしたため、それを不服とする開示請求者が審査請求を行い、それを受けて審査会が審査を行い、その結果を答申として公開していました。以下、その内容です。東大が不開示としたのは違法であると結論しています。

以下、http://www.soumu.go.jp/main_content/000506048.pdf の内容の転載。太字強調は当サイト。


 

諮問庁:国立大学法人東京大学
諮問日:平成29年6月8日(平成29年(独情)諮問第31号)
答申日:平成29年9月6日(平成29年度(独情)答申第24号)
事件名:平成26年度科学研究行動規範委員会資料等の一部開示決定に関する件

答 申 書

第1 審査会の結論
別紙に掲げる文書1ないし文書5(以下「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした決定については,理由の提示に不備がある
違法なものであり,取り消すべきである。

第2 審査請求人の主張の要旨

1 審査請求の趣旨
独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,平成29年2月8日付け第2
016-45号により国立大学法人東京大学(以下「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った一部開示決定(以下「原処分」という。)について,原処分を取り消し,出席者を除く不開示部分(以下「本件不開示部分」という。)の開示を求める。

2 審査請求の理由

(1)審査請求書
不開示とされた各議事などについて,調査・事案処理の方法・方針,委員の発言内容に係る記載は,調査委員会での審議が適切に行われたか知る上で必要な情報である。開示された各議事はほぼ全てが黒塗りされており,ひとつひとつの論文について十分に審議されたか否かが,現状の開示資料では推測することすら困難である。これでは審議内容が適切か否かを判断することができず,かえって疑念を抱かせる原因となる。「東京大学の科学研究における行動規範」にあるように研究不正は,「科学研究の本質そのものを否定し,その基盤を脅かす,人類に対する重大な背信行為」である。奇しくも ,現在,同じ研究者に対する研究不正の告発が行われており,過去の調査が適切に行われたかどうかを示すことは,研究不正に貴大学がどのような姿勢で臨んできたのかを示すことにもつながる。同じ行動規範には,「科学者コミュニティの一員として,研究活動について透明性と説明性を自律的に保証することに,高い倫理観をもって努めることは当然である」と明記され,それに続く総長声明では「この行動規範を大学自ら担保するための委員会制度を規則として定めることにした」と委員会の位置づけを説明している。こうした規範や総長声明の理念を守り,調査の審議過程及び内容の適切さを担保するためにも,貴大学には当該資料を開示して調査が適正に行われたことを示す責務がある。
発言者の特定をしなければ,審議内容を情報開示することにより,特定の者に不当に利益を与え,または不利益を及ぼすとは到底考えられない。また,個人が特定されなければ,人事に支障を及ぼすおそれもない。仮に,社会の公器としての貴大学が,原則として開示すべき資料を,例外的に不開示とするためにこのような主張を行うならば,具体的な根拠を示して主張する必要がある。そうでなければ,この主張自体が極めて不合理であり,世間から疑惑の目で見られることを,自ら容認することになろう。そのような姿勢は上記行動規範に反するものである。貴大学として,発言者が特定されないとしても,将来予定される審議において委員の意見等が公表されることを前提にすると,委員が部外の評価等を意識して素直な意見を述べることを控えるなど,意思決定の中立性や独立性が不当に損なわれるおそれがあると主張されるかもしれない。しかし,発言者が特定されないのであれば,委員の意見等が公表されたとしても素直な意見を控えるとは到底考えられない。もし意思決定の中立性や独立性が不当に損なわれるなどと主張するのであれば,発言者が特定されないにもかかわらず,素直な意見を述べることができないような調査委員を選任することを前提としており,専門家としての各調査委員を愚弄するのみならず,調査委員会の適正さそのものに疑義を生じさせる主張と言わざるを得ない。一連の資料の開示を拒むことは,研究不正を真摯に取り扱おうとする姿勢に真っ向から反するものである。さらに審議が終わった研究不正調査に関する議事の公開は,将来他の研究不正事案を審議する場合の参考となりうるものであり,貴大学の対応は,社会的に評価されるものではあれ,非難されることはありえない。なお,調査対象者については対象となった論文が公開されていることから,少なくとも責任著者と筆頭著者については対象となることが明らかなため,ヒアリングなどの議事録を含め公開すべきと考える。その他の調査対象者について個人名などは不開示でも構わない。
既に審議が終わり調査の結論は貴大学のホームページでも公開されている。そのため,議事内容が公開されることで本件の事務や事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれはない。また,同じ理由から,たとえ,審議のある時点で生じた,未成熟な情報や事実関係の確認が不十分な情報を公にしたとしても,その後,結論に至った過程を合わせて公開すれば新たに混乱を生じさせるおそれもない。加えて,結論が「不正なし」というものであるため,公開することで当該研究者の今後の研究活動にも影響を与えるおそれもない
将来に行われる類似の審議・検討・協議に係る意思決定に不当に影響を与えるおそれについては,研究不正事案というものは,事案ごとにその内容や性質が異なるものである。それぞれ個別に審議されるものであり,その都度適切に審議されることで問題は生じない。これは,本件と同じ研究者が対象となり,現在行われている研究不正調査への影響についても同様である。また,審議,検討の内容を公にすることにより,調査にあたっての考え方,主張等が明らかになり,今後の同種の調査にあたり,正確な事実の把握を困難にするおそれ又は不当な行為を容易にするおそれがあるという主張についても,同様に事案ごとに内容や性質が異なるため懸念は当たらない。逆に「何が不正に当たるのか」といった考え方などはむしろ公開することで不正の防止につながる情報で,これらを不開示の理由とすることは調査の正当性に疑念を抱かせるだけでなく,研究機関として不正に真撃に対応できているのか,その姿勢を問われかねない事態にもつながると考える。
独立行政法人は,原則として保有する情報を公開しなければならず,不開示はあくまで例外規定である。個別具体的な事情なく漫然と不開示とするのであれば,世間に対し,情報公開をする気がない大学であることを表明するに等しい。また,調査方針・手法自体は,調査委員会の判断の公正さを担保するために開示は必須であると考えられるのみならず,開示を拒むことは,逆に調査委員会の判断に対する疑義を生じさせるものであり,不開示とすることによりあたかも不正があったかのように流布されるおそれもある。現実に,一部マスコミ報道やインターネット上では本件論文の研究者に対する記事が多数掲載されており,研究者個人のみならず大学にとっても不利益が生じる事態につながっている。なお,調査過程の開示は,例えば貴大学の「分子細胞生物学研究所・旧特定研究室における論文不正に関する調査報告書(第一次)」の資料「不正な図の例」においても行われている。特定URL調査が適正に行われていることが示されており,こうした開示によって他の不正調査に悪影響が出る問題も生じていない
貴大学として,不正がなかったと認定されたにもかかわらず,議事内容が公表されることで,再び,当該調査事案が注目され,公表された一部の情報だけをもって新たに誹誘中傷が行われる可能性があるとの主張を行う可能性もある。しかしながら,そもそも本件調査事案は,同じ研究者が新たに告発を受けたことで ,現在,非常に注目されており,過去の調査内容が公表されたからといって「再び」注目されるという状況にはない。加えて,新たに誹誘中傷が繰り広げられるというのも,憶測の域を出ず,研究不正を厳に取り締まる立場にある貴大学が,法的に公表が原則となっている情報を不開示にする理由としては著しく正義に反するものである。
以上,アからカで述べた通り,貴大学が示した見解は,いずれも資料の中の個人名以外を不開示とする理由には該当しない。各議事は不正行為か否かの判定が適切に行われたかどうかを知る上で必要な情報である。議事などの資料を公開して当該委員会が研究不正事案に真摯に取り組んだ事を示し,結論に対する信頼を得ることは,上記行動規範や規則を制定した貴大学の責務である。発言者の個人が特定できる氏名等は伏せて,資料を公開すべきである。

(2)意見書
審査請求人から平成29年7月10日付け(同月11日受付)で意見書が当審査会宛てに提出された(諮問庁の閲覧に供することは適当でない旨の意見が提出されており,その内容は記載しない。)。

第3 諮問庁の説明の要旨

1 本件対象文書について不開示とした理由について
本件対象文書は「「インターネット上で指摘のあった論文の画像データに係る調査結果について」として調査結果が平成27年7月31日付けで公表されている,研究行動規範委員会の調査に関わる資料の一切。具体的には,調査にかかる会議に提出された資料,会議の議事次第,調査委員が示された資料,会議の議事録,調査報告書とその案,調査対象者から提出された実験データなどの資料,その他調査に使われた資料,調査で行われた関係者のヒアリングの記録,外部機関に調査や分析を行っていればその報告書。加えて,調査にかかった費用とその使途がわかる資料(外部調査委員への支払なども含む)」である。本学では,研究不正の事案については,科学研究行動規範委員会において調査を行っているが,請求にかかる文書は以下の5つの理由に該当する部分について不開示とする決定を行った。
① 個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないものが記されている部分を不開示とする。
② 審議,検討又は協議に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意志決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるものについては,法5条3号に該当するため不開示とする。
③ 公にすることにより,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものについては,法5条4号柱書きに該当するため不開示
とする。
④ 公にすることにより,正確な事実の把握を困難にするおそれ,若しくはその発見を困難にするおそれがあるものについては,法5条4号ハに該当するため不開示とする。
⑤ 公にすることにより,人事管理に係る事務に関し,その公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある部分については,法5条4号
ヘに該当するため不開示とする。よって,本件対象文書を平成26年度~27年度科学研究行動規範委員会資料並びに支給調書として,部分開示決定を行ったものである。これについて,審査請求人は,平成29年4月4日受付の審査請求書のなかで,原処分の取消しを求めている。

2 審査請求人の主張について
審査請求人は「開示された各議事がほぼ全て黒塗りされており,ひとつひとつの論文について十分に審議されたか否かが現状の資料では推測することすら困難であり,これでは審議内容が適切か否かを判断することができず,かえって疑念を抱かせる原因となる。調査委員会の適正さそのものに疑念を生じさせると言わざるを得ない。対象となった論文が公開されていることから,少なくとも責任著者については対象となることが明らかなため,ヒアリングなどの議事録を含め公開すべきと考えるし,結論が「不正なし」というものであれば公開することで当該研究者の今後の研究活動にも影響を与えるおそれもない。いずれの資料の中の個人名以外を不開示とする理由には該当しない。発言者の個人が特定できる氏名等は伏せて,資料を公開すべきである。」等と主張している。しかしながら,研究不正の調査については,その判定結果の如何によらず,対象となる研究者の研究活動に大きな影響を与えるものであり,かかる調査については,限りなく公平中立なものとして実施されなければならないと理解している。調査の内容について必要以上に開示することは,調査機関として担保すべき,正確な事実の把握,率直な意見の交換,意思決定の中立性などを困難にするおそれがあり,ひいては,調査機関として行う不正行為の判定結果の信頼性をも損なうことになる。また,「不正なし」と認定した場合には,これらの要請に加えて,不正行為の認定がなされなかった被申立者への配慮も当然考慮すべき事項となってくる。そのため,今回開示した内容については,上記の理由から必要かつ十分なものであると認識している。したがって,本学の決定は妥当なものであると判断する。以上のことから,諮問庁は,本件について原処分維持が妥当と考える。

第4 調査審議の経過
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成29年6月8日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同月20日 審議
④ 同年7月11日 審査請求人から意見書及び資料を収受
⑤ 同月31日 本件対象文書の見分及び審議
⑥ 同年9月4日 審議

第5 審査会の判断の理由
1 本件開示請求について
本件開示請求は,「「インターネット上で指摘のあった論文の画像データに係る調査結果について」として調査結果が平成27年7月31日付け
で公表されている,研究行動規範委員会の調査に関わる資料の一切。具体的には,調査にかかる会議に提出された資料,会議の議事次第,調査委員が示された資料,会議の議事録,調査報告書とその案,調査対象者から提出された実験データなどの資料,その他調査に使われた資料,調査で行われた関係者のヒアリングの記録,外部機関に調査や分析を行っていればその報告書。加えて,調査にかかった費用とその使途がわかる資料(外部調査委員への支払なども含む)」の開示を求めるものであり,処分庁は,法11条に規定する開示決定等の期限の特例を適用し,先行開示文書(平成28年11月9日付け第2016-45号により特定され,開示された文書)及び文書1ないし文書5(本件対象文書)を特定し,先行開示文書については全部開示したが,本件対象文書については,その一部を法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ及びへに該当するとして不開示とする原処分を行った。これに対し,審査請求人は,上記の不開示部分のうち,出席者などの個人名の特定につながる情報以外の部分(本件不開示部分)の開示を求めているが,諮問庁は,原処分を妥当としていることから,以下,本件対象文書を見分した結果を踏まえ,原処分の妥当性について検討する。

2 理由の提示について
(1)開示請求に係る法人文書の一部又は全部を開示しないときには,法9条1項及び2項に基づき,当該決定をした旨の通知をしなければならず,この通知を行う際には,行政手続法8条に基づく理由の提示を書面で行うことが必要である。理由の提示の制度は,処分庁の判断の慎重・合理性を担保してその恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて不服申立てに便宜を与える趣旨から設けられているものである。かかる趣旨に照らせば,この通知に提示すべき理由としては,開示請求者において,不開示とされた箇所が法5条各号の不開示事由のいずれに該当するのかが,その根拠とともに了知し得るものでなければならない。上記の理由の提示として,不開示事由が複数あるときに,具体的な不開示部分を特定していない場合には,各不開示事由と不開示とされた部分との対応関係が明確であり,当該行政文書の種類,性質等とあいまって開示請求者がそれらを当然知り得るような場合を除き,通常,求められる理由の提示として十分とはいえない。
(2)そこで,まず,原処分における理由の提示の妥当性について検討すると,当審査会において,諮問書に添付された原処分に係る法人文書開示決定通知書を確認したところ,原処分においては,本件対象文書(総ページ数553ページ)のうちの不開示部分とその理由について,「個人名その他個人を識別できる情報であって法5条1号ただし書イ,ロ,ハのいずれにも該当しないものが記されている部分を不開示とする。」,「審議,検討又は協議に関する情報であって,公にすることにより,率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれがあるものについては,法5条3号に該当するため不開示とする。」,「公にすることにより,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものについては,法5条4号柱書きに該当するため不開示とする。」,「公にすることにより,正確な事実の把握を困難にするおそれ,若しくはその発見を困難にするおそれがあるものについては,法5条4号ハに該当するため不開示とする。」及び「公にすることにより,人事管理に係る事務に関し,その公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがある部分については,法5条4号ヘに該当するため不開示とする。」とされているだけで,どの不開示部分が上記の不開示事由のいずれに該当するのか不明であるばかりか,不開示事由についても,各不開示条項の規定をほぼそのまま引用したに等しい内容が書かれているにすぎず,当該不開示事由に該当すると判断した理由を具体的に示しているとはいえない。なお,各開示実施文書を見てみると,不開示部分がある各ページの上部には不開示条項が付記されているが,これを理由の提示又はそれを補うものと見ることはできない。
(3)以上を踏まえると,確かに,原処分においては,不開示の理由として,法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ及びヘは示されているものの,本件対象文書のどの部分が,どのような根拠により,これら不開示事由のいずれに該当するのかが開示請求者において了知し得るものになっているとはいえないから,理由の提示の要件を欠くといわざるを得ず,法9条1項及び2項の趣旨並びに行政手続法8条に照らして違法であるの
で,原処分は取り消すべきである。

3 本件一部開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書につき,その一部を法5条1号,3号並びに4号柱書き,ハ及びヘに該当するとして不開示とした決定については,その理由の提示に不備がある違法なものであり,取り消すべきであると判断した。

(第1部会)
委員 岡田雄一,委員 池田陽子,委員 下井康史

別紙(本件対象文書)
文書1 平成26年度科学研究行動規範委員会資料(67枚67頁)
文書2 平成27年度科学研究行動規範委員会資料(216枚216頁)
文書3 平成27年度科学研究行動規範委員会資料(128枚128頁)
文書4 平成27年度科学研究行動規範委員会資料(132枚132頁)
文書5 支給調書(8枚10頁)

 


 

参考

  1. 情報公開(独立行政法人等平成29年度答申 001~050 平成29年度(独情)024
  2. 答申状況<情報公開・個人情報保護審査会<総務省
  3. 情報公開・個人情報保護関係 答申データベース検索 (総務省)【 行情:10308件、独情:1123件、行個:1987件、独個:627件 (平成30年4月20日00:26現在) 】
  4. 情報公開・個人情報保護関係 判決データベース検索(総務省)

東大医論文疑惑 知る権利を蹂躙する東大

東大医学部のフェイク論文が不正とされない謎  国民の知る権利を蹂躙する東大

日本は民主主義の国家であり、主権は国民に存在します(日本国憲法)。国民主権を保証するための一つとして、表現の自由が憲法で保障されています(日本国憲法第二十一条)。表現の自由は、情報を得たり、共有したり、発信したりする自由が含まれると解釈されます。つまり、必要な情報を得る権利、「知る権利」が国民にはあるわけです。国民の知る権利を保障するのが、それと表裏一体の関係にあるの行政側の説明責任です。説明責任が果たされないと、国民の知る権利が侵害されます。

大学での科学研究を可能にしているのは研究費であり、その原資は税金です。大学で研究する以上、その研究成果は国民に直接、または間接的に国民に還元される必要がありますし、研究費が公正に使われていることを国民がチェックする体制が保証されていなければ、民主主義が成り立ちません。研究不正は、税金が正しく使われなかった状態ですから、研究不正の調査報告は、納税者である国民に対してなされるべきものです。納税者には知る権利があり、大学には説明責任があります。

東大が1年間に使う研究費の総額はどれくらいでしょうか?少なくとも1000億円は軽く超えるはずです。もちろん、国民の税金がその原資です。東京大学から出た科学論文に不正があるという告発がなされ(⇒記事)、東大は調査委員会を立ち上げて調査を行いましたが、その報告書はなぜか公開されませんでした。これでは、説明責任を全く果たしていません(⇒記事)。不正が無い場合には説明しないという時代錯誤なふざけたガイドラインにすがっているようですが(⇒ヤフー記事)、不正なしとした根拠を示さない限り、第三者には本当に不正がなかったのかどうかのチェックができません。実際、告発された論文を見ると、専門家から見て、不正がなかったと考えることが極めて困難なものです(⇒記事)。このような事例に関して、不正なし、だからそれ以上の説明はしないというのは、不正の隠蔽を強く疑わせる行為であり、決して許されません。

国民の知る権利を実効性のあるものにするための法律として、情報公開法があります。その第五条によれば、情報は公開が原則であり、情報を開示しなくてよい例外的な場合が列挙されています。東大はこの例外の解釈を不当に広くとることにより、情報の開示を拒んでいます。しかし、東大のこのようなやり方は違法であるという答申が、以前、匿名A氏が指摘した84報のうちの東大医学系論文12報に関する研究不正疑惑予備調査結果の隠蔽の際に出ています(⇒記事東大の発表、総務省の答申)。東大は違法性を認識しつつ同じやり方を繰り返しているのですから、国民の知る権利を蹂躙しているといわざるを得ません。東大の科学研究の行動規範を遵守しないどころか、「東大医学部のデータ捏造の有無の判断材料となるような何がしかの情報」を隠すためであれば法をも犯すというのは、大変な暴挙です。科学研究の在り方以前の話として、法や民主主義を真っ向から否定しています。

東京大学というのは、大勢の優れた才能の集まりであって、誰か個人の所有物ではありません。東大の現執行部の一部の人間が東大を私物化し、身勝手な法解釈をすることによって医学部の中の誰かの不正を隠蔽するような行為は、東京大学の科学研究の高潔さ(Research Integrity)を貶めています。法を遵守し科学研究行動規範を実践するという当たり前のことができない人間は、東大の運営にかかわるべきではないでしょう。

 

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「東京大学の科学研究における行動規範」(PDF)には、

研究活動について透明性と説明性を自律的に保証することに、高い倫理観をもって努めることは当然である。

広く社会や科学者コミュニティによる評価と批判を可能とするために、その科学的根拠を透明にしなければならない

十分な説明責任を果たすことにより研究成果の客観性や実証性を保証していくことは、研究活動の当然の前提であり … その責任を果たすことによってこそ、東京大学において科学研究に携わる者としての基本的な資格を備えることができる。

とあります。東京大学が不正調査報告書を公開しないのは自身の行動規範から逸脱しているのではないでしょうか?説明責任を果たさない奴は科学研究に携わる資格なしと自分で言っているわけですから。

「行動を伴わない言葉は無益である」

ギリシャ時代から言われてきましたが、まさにこのことかと思います。

文科省も、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」の中で、

研究者間相互の吟味・批判によって成り立つチェックシステムが不可欠である。

と言っています。大学の監督省庁としての責任はないのでしょうか?

日本学術振興会の「研究活動の公正性の確保及び適正な研究費の使用について確認・誓約すべき事項」でも、

国費による研究費支援が増加する中、国費の効果的活用の意味でも研究の公正性の確保がより一層求められる。

とか、

研究成果の発表とは、研究活動によって得られた成果を、客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ、研究者コミュニティに向かって公開し、その内容について吟味・批判を受けることである。

などとあります。実に良く練られた力強い文章で、研究者であれば、読んでるだけで身が引き締まる思いがするはずです。

学術誌に掲載された論文には、著者名や所属が明記されており、報告書で墨塗りする必要がある個人情報とは言えないでしょう。発表論文の実験結果や実験方法に関して読者が疑問を持てば、論文著者らに対して気軽に質問し回答を得るというのは、研究者コミュニティにおいては当たり前のことです。不正が疑われた図表の作成がどのように行なわれたのかは、研究者みんなが知りたいことですし、その調査結果は隠すような種類のものではありません。調査報告書を公開することは、研究者コミュニティ内の通常のコミュニケーションとなんらかわりません。また、調査内容が公表されたからといって、論文著者や所属機関が不利益を被ることないでしょう。もし不利益が生じるとすれば、それは、データ捏造が露呈するケースくらいではないでしょうか?

不正が認定されないときには調査内容を公表しなくていいというなら、研究機関が組織的に隠蔽した場合にはデータ捏造がやりたい放題になってしまいます。NATURE等の一流誌に論文を掲載して、その業績により何億円もの研究費を獲得するという、悪魔のような循環が断ち切れなくなるわけです。これでは日本の科学研究の進展が著しく阻害されます。性善説を捨てようという議論がありますが、研究者だけでなく、大学の執行部だって不正を働く可能性があるという観点で制度をつくっておかないと、大変なことになります。岡山大学で研究不正を告発した教授二人が大学の学長によって解雇されるというとんでもない事件が起きてるのが、いい例です。大学執行部の公正さを前提とする制度は、欠陥があるのです。

公開するのが当然の最終報告書を東大が公開できない理由があるとしたら、それは、やっぱり研究不正があったからではないか?と考えるのは自然なことでしょう。東大医学部の不正が隠蔽されているということを仮説として採用すれば、報告書の開示された部分の日本語の支離滅裂さとか、そのほか、あらゆる矛盾した状況を、矛盾なく説明できてしまいます。

2016年8月に告発されたというのに、その後、論文著者らが反論も訂正も論文撤回もせずに2年近く経過しています。単なる図表の取り扱いミスだったら、普通何らかのアクションがあるのが当然でしょう。昔STAP細胞騒ぎで世の中がひっくり返ったときは、疑われた調査委員長のラボは実験ノートを翌日には公開して、実験がきちんと行なわれていたことを研究者コミュニティに示しました。あれは模範的な行動だったと思います。論文の図が示す値はデタラメですと東大が自分で認めた以上、最低限、速やかな訂正か撤回がないのはおかしいのではないでしょうか?

ネイチャーなどの雑誌社も、データが正しくないと大学が認めた論文をいつまで放置するのでしょう?論文著者が説明責任を果たさないのであれば、編集部で撤回するのが、筋でしょう。

万が一、現在の東大の執行部の人たちが東大医学部の不正行為を知りつつ隠し、疑惑論文の論文業績で新たに研究費を獲得しているのならば、それは詐欺行為というべきでしょう。実際、海の向こうの話ですが、研究不正を隠蔽したデューク大学は捏造研究者とともに訴えられていて、6億ドル(~600億円)以上の支払いを求められる訴訟になっています(参考:bna.com)。大学首脳陣が研究不正を隠蔽した場合、大学が窮地に陥りますから、東大の現執行部の責任は重大です。

 

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エラーバーを短くするのは研究不正ですよ

論文のストーリーに合う有意差を作り出すために、エラーバーを手作業で動かして短くしてしまうのは、もちろん研究不正です。当たり前のことですが、実例をいくつか拾って紹介し確認しておきたいと思います。新入生が実験を始める時期ですし。

不正例1

Science Signaling 7:ra114, 2014 (hereafter referred to as “Paper 1”)

Chemistry & Biology 21:453-458, 2014 (hereafter referred to as “Paper 2”)

ORI found that Respondent knowingly falsified and/or fabricated data and related text by altering the experimental data to support the experimental hypothesis. Specifically:
1. ORI found falsified and/or fabricated data in Paper 1 in:
c. Figure 6D by manually manipulating the error bars to increase statistical significance of the kinase assay

2. ORI found falsified and/or fabricated data in Paper 2 in:
b. Figure 4A by manipulating data points and reducing error bars and failing to report that JM-HER3 construct had cloning tags

(引用元:https://www.federalregister.gov/documents/2015/08/31/2015-21421/findings-of-research-misconduct

不正例2

Biomed. Chromatogr. 24(4):351-357, 2010 (hereafter the “BC 2010 article”). Specifically, ORI found that the Respondent:

Falsified and fabricated Figure 4 of the BC 2010 article; (中略)In the bottom panel, the Respondent reported the measurement of DMP concentrations in liver samples obtained from three rats at 1, 30, 90, 180, 300, and 720 minutes after a single injection of 5 mg/kg DMP, requiring a total of 18 rats, while the actual data that he had plagiarized, originally generated prior to the Respondent’s arrival in the laboratory by a former postdoctoral researcher, was from plasma samples from a single rat, and the error bars for both panels were fabricated.

(引用元:https://www.federalregister.gov/documents/2012/12/28/2012-31287/findings-of-research-misconduct)

アメリカでは必ずしも論文になっていなくても、学会発表や投稿用原稿中の不正も不正と見なすようです。

不正例3

PHS finds the Respondent engaged in scientific misconduct by falsifying and fabricating data that were reported in a scientific manuscript intended for publication entitled “Increased renin transcription after inhibition of NF-YA with RNAi reveals through regulation of Ea element and Ear2” and at two professional scientific meetings.

Specifically, PHS found that:

2. Respondent falsified Figures 4, 5, 6, and 8 in the manuscript by claiming in the figure legends that 4 independent repetitions contributed to each figure’s results when the actual numbers of repetitions were n=3 for Figure 4, n=1 for Figure 5, n=3 for Figure 6, and n=2 for Figure 8; in Figure 5, error bars based on the Student’s t test further falsely claim that n was >2. He further falsified Figures 6 and 8 by reporting smaller standard errors of the mean than were obtained from the actual data, thereby giving an enhanced impression of rigor for the reported experiments.

(引用元:https://www.federalregister.gov/documents/2008/11/04/E8-26270/findings-of-scientific-misconduct

下は、実験をせずにデータポイントを捏造した例。

不正例4

Specifically, PHS found that Dr. Prasad:

(1) Fabricated data to calculate a standard error of the mean for Bcl-2 mRNA intensity values for the sham group: 16 values (four percentages for each of the four brain regions assayed), when only a single sham value of 100% was actually available, for the error bars shown in Figures 2 and 3 of a manuscript, “Regional expression of Bcl-2 MRNA and mitochondrial cytochrome c release after experimental brain injury in the rat,” submitted to Brain Research, and included in Figures 11 and 12 of NINDS grant application R01 NS41918-01, “Neurochemical mechanisms in traumatic brain injury;” and(以下略)

(引用元:https://www.federalregister.gov/documents/2002/09/05/02-22565/findings-of-scientific-misconduct

下では、SEMをSDとして報告したものも、うっかりミスといういいわけがあったのかもしれませんが、当然の注意を怠った(RECKLESSLY)不正とみなされています。

不正例5

Cell 167(6):1571-1585, 2016 (hereafter referred to as “Paper 1”)

Proceedings of the National Academy of Sciences 112(19):E2447-E2456, 2015 (hereafter referred to as “Paper 2”)

ORI found that Respondent engaged in research misconduct by intentional, knowing, or reckless falsification and/or fabrication of the research record by selectively reporting by inappropriate inclusion/omission or alteration of data points in ten (10) figures and falsely reporting the statistical significance based on falsified data in ten (10) figures across the two (2) papers and supplementary material. Specifically, ORI found that:

  • In Paper 1, Respondent falsified and/or fabricated the research record in:

—Figure 7F, by reporting that error bars represented standard deviation, when they actually represented standard error of the mean (SEM.)

  • In Paper 2, Respondent falsified and/or fabricated the research record in:

—Figure 7A (right), by reporting that error bars represented standard deviation, when they actually represented standard error of the mean (SEM.)

(引用元:https://www.federalregister.gov/documents/2018/02/23/2018-03766/findings-of-research-misconduct

下の例も論文掲載前の段階での不正認定。

不正例6

ORI found that Respondent engaged in research misconduct by intentionally, knowingly, or recklessly causing false data to be recorded, falsifying and/or fabricating data and related images by alteration and/or reuse and/or relabeling of experimental data, and reporting falsified and/or fabricated data in one (1) manuscript subsequently submitted for publication:

“Amphotericin primarily kills human cells by binding and extracting cholesterol.” Submitted for publication to the Proceedings of the National Academy of Sciences [withdrawn prior to peer review] (hereafter referred to as “Manuscript 1”)

Specifically, ORI found that:

In Manuscript 1, Respondent falsified and/or fabricated the results of Surface Plasmon Resonance data on page S7 of the Supporting Information to make the error bars smaller than the actual results of experimentation

(引用元:https://www.federalregister.gov/documents/2017/12/15/2017-26961/findings-of-research-misconduct

これくらいで十分でしょう。

 

京都大iPS細胞研究所で論文不正

★2018.1/22放送 NHKニュース7 京大iPS細胞研究所で論文のねつ造や改ざん★

経緯

経緯

iPS細胞研究所相談室に、同研究所所属の助教が著者である論文の信憑性について疑義があるとの情報が寄せられた。これを受け、相談室において研究所に保存されていた1次データ(実験機器の測定値をそのままエクセルファイルに写したもの)から論文の一部のグラフの再構成を試みたところ、論文通りのグラフを再現することができず、論文の主張を裏付けることができなかったことから、平成29年7月3日、大学の通報窓口へ通報が行われた。通報を受け、予備調査を行った結果、本格的な調査を行うことが必要であると判断し、外部委員を含む調査委員会を設置し、調査を開始した。

結論

調査の結果、論文を構成する主要な図6個すべて、また補足図6個中5個において捏造と改ざんが認められる。これらの捏造または改ざん箇所の多くは、論文の根幹をなす部分において論文の主張にとって重要なポイントで有利な方向に操作されており、論文の結論に大きな影響を与えていると認められる。かつ、論文の図作成過程において、正しい計算方法に基づき正しい数値を入力するという基本事項が徹底されていなかった。

(京都大学における研究活動上の不正行為に係る調査結果について(概要) PDF)

 

データ捏造が認定された論文

  1. In Vitro Modeling of Blood-Brain Barrier with Human iPSC-Derived Endothelial Cells, Pericytes, Neurons, and Astrocytes via Notch Signaling. Stem Cell Reports Volume 8, Issue 3, 14 March 2017, Pages 634-647 Available online 23 February 2017. 論文著者:Kohei YamamizuMio Iwasaki2 Hitomi Takakubo1 Takumi Sakamoto3 Takeshi Ikuno1Mami Miyoshi1 Takayuki KondoYoichi Nakao3 Masato Nakagawa2 Haruhisa Inoue4 Jun K.Yamashita1  所属1:Laboratory of Stem Cell Differentiation, Department of Cell Growth and Differentiation, Center for iPS Cell Research and Application (CiRA), Kyoto University, 53 Shogoin Kawahara-cho, Sakyo-ku, Kyoto 606-8507, Japan 2:Department of Life Science Frontier, CiRA, Kyoto University, Kyoto 606-8507, Japan 3:Department of Chemistry and Biochemistry, Waseda University, Tokyo 169-8555, Japan 4:Laboratory of Stem Cell Medicine, Department of Cell Growth and Differentiation, CiRA, Kyoto University, Kyoto 606-8507, Japan

オピニオン

記者会見で質問された流れで、山中伸弥所長が自身の進退に言及する発言があったようです。所内の助教が単独で働いたと思われる不正行為の責任をとって所長が辞職するようなことはおかしいという意見がツイッター等で数多くみられました。また、研究不正の指摘を受けてきちんとした調査を行い公表した大学をむしろ評価すべきだという声もあります。

山中先生は、この問題となった論文の著者ではない。研究所長として管理責任はあるとしても、大学の組織上、研究所長がそれぞれの研究室が発表する論文の内容に立ち入ることは、普通はない。論文に関しては、筆頭著者を含め、全著者が責任を取るべきである。大きな研究所のトップは、自分自身の研究室の研究内容について全責任を負うのは当然だが、他者の研究室の内容・運営に口出しする事はない。研究の内容・指導・予算管理は研究室単位で独立して管理される。常識的に考えても、研究所長が多くの研究室の細かい生のデータまですべて目を通すことなど不可能だ。山中先生は日本の宝であり、この研究所が山中先生がいなくなっても存立しうるものかどうか、わずかな常識があればわかるはずだ。この件で、山中先生が辞職することなどあってはならない。(京大論文不正;これでいいのか、日本メディア 中村祐輔のシカゴ便り 01232018)(一部のみ抜粋して紹介)

  1.  山中教授が悪いみたいな感じのニュースになっていますが、あくまで組織の長として謝罪しているのであって、彼を辞任に追い込むのは早計でしょう。これで辞職して海外に行ってしまったら、日本は大きな宝を失う。
  2. きちんと調査をして、不正認定した組織の長が辞任しなくてはならない状況になれば、組織はますます隠蔽するようになるだろう。>山中所長、辞職の可能性に言及 助教の論文不正問題(テレビ朝日系) – Yahoo!ニュース
  3. 研究不正疑義に対して、適切に調査して公表した組織は「プラス評価」をすべき。 不正があったと公表したら、組織にとって「マイナス評価」になってしまうと、不正隠蔽した方が得策という事になってしまいます。
  4. 山中所長に「やめないで」の声続々 記者から「辞任」質問も出るが… (JCASTニュース 2018/1/23 15:50)

 

報道

  1. iPS細胞研の山中所長をめぐる記事に批判集中 共同通信は内容「差し替え」認める 炎上を受け、BuzzFeed Newsは共同通信に取材した。 (BUZZFEED NEWS 2018/01/26 17:59 Kensuke Seya 瀬谷健介 BuzzFeed News Reporter, Japan):”共同通信は通信社として、契約する全国の新聞社にニュースを提供している。ネット上では、少なくとも東京新聞、北海道新聞、西日本新聞、佐賀新聞が、共同通信に提供された初報の「山中氏、科学誌創刊に深く関与か」の記事を配信したとわかる。”
  2. 共同通信さん、京大iPS研の論文不正に山中伸弥所長が関わっているかのような記事を公開し非難轟々→しれっとタイトル&内容改変 (togetter)
  3. 山中所長が給与全額寄付 京大iPS研、論文不正 (共同通信 2018/1/25 20:45 https://this.kiji.is/329123813377803361) 京都大iPS細胞研究所の論文不正問題を受け、山中伸弥所長が、給与を当面の間、研究所に全額寄付するとの考えを示していることが25日、分かった。今月の給与から寄付するとしている。 論文の研究費約310万円のうち、一般の人から募った寄付金「iPS細胞研究基金」の二百数十万円が使われていたための措置という。 山中所長は不正を発表した22日の記者会見で「多くの方から頂いた支援が使われてしまった」と謝罪。発表後に対応を検討し、寄付する考えを担当者らに伝えた。 24日に京都市内で行われた講演では、寄付金が使われていたことや今後の寄付活動について、「どうしたら皆さまに納得していただき、自分自身が納得できるのか。最良の方法を探したい」と発言していた。 問題の論文を掲載した米科学誌ステム・セル・リポーツは、山中氏が国際幹細胞学会の理事長を務めていた2012年に、学会と出版社が提携する形で創刊を発表。 科学誌のホームページなどによると、山中氏は現在この科学誌の編集委員の一人だが、既に不正問題とは関係なく理事長を退任している。研究所は「科学誌の編集委員は通常、所属する研究機関の論文の審査には関与しない」としている。 京大は22日、山水康平特定拠点助教(36)の論文で捏造と改ざんがあったと発表した。
  4.  山中氏、科学誌創刊に深く関与か 京大、iPS研の論文不正発表 (共同通信 2018/1/25 14:25 https://this.kiji.is/329123813377803361) (archive.org) 京都大iPS細胞研究所の研究不正で、問題の論文を掲載した米科学誌ステム・セル・リポーツの創刊に、当時、国際幹細胞学会の理事長を務めていた山中伸弥・研究所長が深く関わったことが25日、分かった。 この論文の審査に山中氏は関与していないとみられるが、現在も編集委員の一人となっている。科学誌の論文審査制度に対しては、不正を見抜く仕組みが不十分だとの声もある。 山中氏はノーベル賞を受賞した2012年、学会と米出版社が提携し新たな科学誌を創刊すると発表。無料公開を原則とし、iPS細胞などの幹細胞に関する基礎研究から医療応用までの幅広い領域の論文を扱うとした。(注:14:25のこの記事は、思わせぶりな書き方で悪意に満ちており、実際ツイッターなどでも多くの人が批判していました。炎上したせいか、20:45には異なる印象を与える記事に差し替えられています。)
  5. 「不正防げず後悔、反省」山中所長、表情険しく 辞任可能性も (産経WEST 2018.1.22 21:22):”約2時間に及ぶ会見の終わり際、責任の取り方として所長を辞める場合もあるかどうか問われると「もちろん全ての可能性は考えている」と前を見据えた。”
  6. 山中所長「辞任も検討」 京大iPS研・助教の論文不正 (京都新聞 2018年01月22日 22時20分):”同研究所長の山中伸弥教授は京都市左京区の京大で開いた会見で、「論文不正を防げなかったことについて強く反省している。所長の辞任を含めて責任の取り方を検討したい」と謝罪した。”
  7. 京大iPS論文不正 再生医療 金看板に傷 (毎日新聞2018年1月22日 22時30分 最終更新 1月23日 01時40分):”データの捏造や改ざんに手を染めた山水(やまみず)康平・特定拠点助教(36)は2014年11月に同研究所に着任し、18年3月までの任期付きの研究者。… 同研究所は、不正防止のために研究内容を厳しく管理する体制を敷いている。3カ月に1回は全ての研究者の実験ノートを確認し、論文を発表する場合は元データや画像などの提出をルール化している。‥‥ ただ、提出させるだけで詳しい内容までは確認しない体制になっており、実際には100%の提出実績に至っていないという。山水助教のノートの提出率は86%だったが、かなり高い割合で、問題の論文についてもデータや画像を全て提出していた。”
  8. iPS研の特定拠点助教、論文に捏造や改ざん (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2018年01月22日 19時20分):”京都大は22日、同大iPS細胞研究所に所属する山水康平・特定拠点助教(36)(幹細胞生物学)が昨年2月に米科学誌に発表したiPS細胞(人工多能性幹細胞)に関する研究論文で、グラフ12個のうち11個に捏造や改ざんの不正行為があったと発表した。 山水助教は「論文の見栄えを良くしたかった」と不正を認めているという。京大は既に科学誌の出版社に対し、論文の取り下げを申請している。”
  9. 山中所長、辞職の可能性に言及 助教の論文不正問題 (KFB福島放送 2018-01-22 20:11:57) :”山中所長も会見で自身の辞職の可能性について言及しています。”
  10. 京大iPS細胞研究所で論文のねつ造や改ざん (NHK NEWS WEB 1月22日 17時45分):”京都大学はiPS細胞研究所に所属する助教が中心となって去年発表した論文の11の図にねつ造などの不正があったと発表しました。大学は、不正はこの助教が行ったと認定し、論文が掲載された雑誌に撤回を申請するとともに、近く関係者を処分することにしています。京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長らは記者会見を開き、所属する山水康平助教が中心となって、去年2月に発表した論文に不正があったと発表しました。論文は、ヒトのiPS細胞から脳の血管にある「血液脳関門」という組織を作ることに成功したという内容で、主要な6つの図のすべてと補足データの5つの図の合わせて11の図にねつ造や改ざんが認められたということです。改ざんやねつ造は、論文の結論に合わせて操作されていて、大学ではデータの解析や図の作成を行った山水助教が不正をしたと認定しました。助教は「私がやりました。論文の見栄えをよくしたかった」と話しているということです。”
  11. 京大iPS研助教らの論文で捏造・改ざん発表 (日本経済新聞 2018/1/22 17:37):”京都大学は22日、iPS細胞研究所の山水康平特定拠点助教らの論文について捏造(ねつぞう)と改ざんの不正があったと発表した。研究所に保存していた実験データから成果の根拠となるグラフを再現できず、調査を進めていた。”

 

参考

  1. 研究活動上の不正行為に係る調査結果について(京都大学 2018年1月22日)

  2. 京都大学iPS細胞研究所 CiRA(サイラ)増殖分化機構研究部門(山下 潤 教授)
  3. iPS細胞から血液脳関門モデルの作製に成功  (京都大学 研究成果 2017年02月27日):”山水康平 iPS細胞研究所(CiRA=サイラ)特定拠点助教、山下潤 同教授らの研究グループは、ヒトiPS細胞から血液脳関門(物質が血中から脳内へ入るのを制限している脳毛細血管)のモデルを作製することに初めて成功しました。今後、このモデルを用いることで、血液脳関門の機能やアルツハイマー病などの神経変性疾患と脳血管の関連についてのさらなる理解や薬の開発に役立つことが期待されます。 本研究成果は、2017年2月24日午前2時に米国の科学誌「Stem Cell Reports」でオンライン公開されました。”
  4. 「(ノートを)出さない人は不正をしているとみなします」

現代ラボ用語の基礎知識

ラボでは当たり前に使われている言葉でも、一般の人には新鮮に響くことがあるようです。そんな、ラボ特有の言い回しをまとめてみました。(生物系のラボ。随時追加、変更あり)

  1. アクセプト【accept】投稿した論文が受理(掲載許可)されること。「リバイスに1年もかかったけど、やっとアクセプトされたよ!」「おめでとう!」
  2. アクティビティ【activity】いい論文をコンスタントに出している状態。「あのラボはアクティビティが高いね。」
  3. あてうま【当て馬】採用される人が予め決まっている公募の面接に呼ばれる他の候補者のこと。「東○大に面接に呼ばれたんだって?」「どうせ当て馬だと思うけど、しっかり準備して行くよ。」
  4. あとがない【後が無い】①研究職の任期が切れる寸前だが、次の職がまだ決まっていない状態。「この論文、絶対通ってくれないと。俺、後が無いから。」 ②出すジャーナルを下げすぎて、もうこれ以上下げられない状態。 「サイレポにも蹴られて、もう後が無いよ。」「大丈夫、ジャーナルなんて、ほかにいくらでもあるから。」「いや、俺もう、後がないから。」
  5. あれ、どうなった?【あれ、どうなった?】何も考えていないボスが、学生に進捗状況を聞くときに使う、いい加減な言葉。「おい、あれ、どうなった?」「今、実験している最中です。」「おお、そうか!」 「あれ、どうなった?」「あれってなんですか?」「あれだよ、あれ、ほら、その‥。」

  1. いいしごと【いい仕事】雑誌のインパクトファクターが、その雑誌の個々の論文の価値を示すものではないという批判は常に存在するが、現実的なこととして、インパクトファクターの高いジャーナルに出た論文や人を高く評価する傾向が多くの人に見られる。そのため、「いい仕事=いい論文」と、同義語のように用いられることが多い。「これはきっといい仕事になると思うよ。」「彼は凄くいい仕事をしていてね。」
  2. いいとこねらう【いいとこ狙う】トップジャーナルへの掲載を目指すこと。「これなら、いいとこ狙えるんじゃない?」
  3. イエローチップ【yellow tip】ピペットマンで200マイクロリットルまでを測りとるためのチップ。もともと純正のものは黄色だったことから。他社製品であろうと、色が何色であろうと、イエローチップと言えばこのサイズのチップのことを意味する。「昔は、貧乏なラボでは、イエローチップを洗って再利用していたんだぞ。」「昔は、ラボに新しく入って最初の仕事は、イエローチップを(ラックに)詰めることだったんだよ。」「いつの時代だよ?」
  4. いきのこる【生き残る】アカデミアにおいて大学教員などのパーマネントの研究職を得ること。あるいは、任期付きであっても順調に次の職を得るか任期更新が行われ、コンスタントに仕事ができている状態。サバイブする、と同義。「なんとか生き残ることができた。」 「もう自分は生き残れないと思う。」 「今の時代、生き残るだけでも大変だね。」
  5. いちゃもん【イチャモン】投稿論文に対する差読者のコメントの中で、差読者が、実行不可能な実験などを著者に要求してくること。「(査読コメントに目を通した後、)こんなの、イチャモンだよ!(怒)」
  6. いっぱつアクセプト【一発アクセプト】リバイスを経ることなく速やかに投稿論文が受理されること。「ジャーナル下げたら、一発アクセプトだった。」
  7. いわれたことだけ【言われたことだけ】①最近の若者が、言われたことだけしかやらないこと。論文投稿中の研究者が、リバイスの際に、差読者に言われたことだけしかやらないこと。「原稿の修正や追加実験は、言われたことだけにしといたほうがいいよ。」
  8. インパクトファクター【impact factor】雑誌のランキングを決める数値指標で毎年算出される。「PLOS ONEのインパクトファクターって今いくつくらいだっけ?」

  1. うえから【上から】少しでもインパクトファクターの高いジャーナルに論文を出すことを目的として、駄目もとでトップジャーナルからから順番に投稿を試みること。最初にネイチャーやセル、サイエンスのどれかに投稿し、リジェクトされた場合には、同じ出版社の姉妹紙でもう少し通りやすいところや、あるいはインパクトファクターなどを考慮して他の出版社の学術誌に、ランキングを下げながら順にトライしていくこと。 「(この仕事、)どこに出すの?」「上からトライしてみようかな、と。」
  2. うつくしい【美しい】研究者が用いる場合には、美しい女性でも、美しい絵画でもなく、美しい「ストーリー」を持った研究成果を指すことが多い。「今週のネイチャーのあの論文、美しいストーリーだね。」”Beautiful work! Congratulations!”
  3. うぷす【Oops!】オッと。アメリカ帰りの研究者が、何かちょっとした失敗をしたときに思わず発してしまう言葉。英語がさほどしゃべれるようになっていなくても、感情を表す言葉だけは、なぜか口をついて出てくる。ただし、発音は日本語化している。「うっぷす。(試薬を)入れる量、間違えた!」

  1. えいぶんこうせい【英文校正】論文原稿の中に、ネイティブに意味が取れない箇所がないかチェックすること。「違う意味に直されちゃったよ。」「誤解される表現だったんじゃない?」
  2. エディターキック【editor kick】査読にまわされずに、編集者や編集部の判断で蹴られること。「だめもとでネイチャーに出したら、あっさりエディターキックを食らった。」
  3. エネルギー【energy】研究を行なうために必要な情熱やエネルギーのこと。「ボスと話をすると、エネルギーを吸い取られちゃうなあ。」
  4. エラーバー【error bar】平均値を表す棒グラフなどにおいて、標準誤差や標準偏差などを示した線分のこと。通常は、統計処理ソフトで自動的に計算・描画が行なわれる。例外的に、東京大学医学部においてはエラーバーの作成は手作業で行なわれるのが通常である(出典)。「エラーバー、もっと短くならないの?」
  5. えぬ【n】実験サンプルの例数。「nを増やせば、有意差出るかも。」
  6. エタチン【エタ沈】エタノール沈殿の略。DNAの精製過程で、塩とエタノールの混合液中でDNAを沈殿させるステップ。「行こうよ。エタ沈で止めておけばいいじゃん。」
  7. エッペン【Eppendorf tube】エッペンドルフチューブの略。生物系のラボで最も多用される1.5mlチューブのこと。本来はエッペンドルフ社の製品を指すが、高価なため安価な他社製品を使うラボが多い。しかし、どの会社の製品であっても1.5mlチューブのことをエッペンと呼ぶことが通常になっている。「エッペンちょっと分けてもらっていい?」「エッペンなくなりかけているから、次、注文しておいて。」「このラボ、エッペン、エッペンドルフのを使ってるんだ?金持ちだね。」

  1. おかね【お金】研究費のこと。「あのラボはお金がないから、(そこに進学するのは)やめといたほうがいいよ。」 「今年はお金があまりない。」 「金持ちのラボ」
  2. おけしょう【お化粧】一般的な意味は、女性(最近は男性も)が粉末や液体など様々な化学物質を顔などの皮膚表面に付着させることにより、強調すべき顔のパーツを強調し、強調したくない部分を目立たなくするなど、自分の見栄えを良くする行為のことである。そこから転じて、画像データなどでストーリーに合わない部分を隠したり、目立たなくさせたり、また、見せたい部分だけを強調するなどして論文の図を作成する行為。「あれはほんのお化粧の範疇であり、データ捏造にはあたらない。」
  3. おしこむ【押し込む】権威のある研究者が、出来の悪い(=論文業績が足りない)部下の研究者を、無理やりどこかの大学のパーマネント職に就けてしまうこと。「最近は状況が厳しすぎて、昔みたいにどこかに押し込むこともできなくなった。」(想像)
  4. おちる【落ちる】①大学教員公募に落ちること。「今回もまた落ちた。」 申請していた研究費が審査の結果、不採択になること。「今年もまた落ちた。」
  5. オーディナリーリサーチャーズ【Ordinary_researchers】「普通の研究者たち」。東京大学医学部および東京大学分子細胞生物学研究所の研究不正疑惑を2016年8月に告発した研究者たちが、匿名で告発を行なう際に名乗ったニックネーム。
  6. おとす【落とす】投稿するジャーナルのランクを下げること。「これ以上落としたくない。」
  7. オネストエラー【honest error】うっかりミス。または、データ捏造を誤魔化すための見え透いた言い訳。「指摘された論文の図に関してですが、すべてオネストエラーであり、雑誌編集部に修正を依頼しております。」
  8. おもいつく【思い付く】何か新しいアイデアが自分の頭の中に浮かぶこと。または、部下からの提案を却下してしばらく経ったあとで、そのアイデアがボスの頭の中で想起されること。
  9. オリジナルデータ【original data】論文の図表のもととなる、観察や測定によって得られた数値や、画像などの生データ。通常は論文の数値と一致するが、東大医においてはほとんど一致しない。

  1. カウントする【countする】論文業績として評価する数に入れること。「ファーストじゃないとカウントされないよ。」 「理研BSIでは、NEURON以上じゃないとカウントされないって聞いたけど、ホント?」
  2. かえってくる【返ってくる】投稿していた論文が、査読を終えて雑誌編集部から返されてくること。「論文どうだった?」「まだ返ってこない。」「遅いね。」
  3. かえる【帰る】留学先から帰国して日本で職を得ること。または、海外でPIの職についていた人が、日本にポジションを得て帰国すること。「日本に帰りたいけど、職がない。」 「ハーバードの●●先生、日本に帰ってたんだ?知らなかった。」
  4. かきました【書きました】論文草稿や研究費の申請書を書けたと思っている学生が返事に使う言葉。日本語の文章であっても、主部と述部の対応がなっていなかったり、英語の場合には中学生レベルの文法の間違いやスペルミスのオンパレードであったりと、想像を絶するレベルで、全く書けていないことが多い。本人の言葉を鵜呑みにせず、一刻も早く見せてもらってチェックすることが重要である。「書いた?」「書きました!」
  5. がくせい【学生】通常の日本語では大学生のことを指す言葉だが、学部学生がいない研究環境においては、大学院生のことを指す。 「最近の学生は研究一辺倒じゃなくて、プライベートな時間もしっかり確保する人が多いんだね。」
  6. がくちょうのけんげん【学長の権限】研究不正を告発した教員を逆に解雇したり、気に入らない教員の雇用延長を取り消す力。また、白日の下に晒され、誰がどう見ても明らかとしか言いようのない研究不正を揉み消す力。「最近あちこちの大学で起きていることをみれば、学長の権限強化が非常に危険なことは明らかだと思う。」
  7. かけんひ【科研費】科学研究費補助金の略称。「科研費の締め切りっていつだっけ?」「そろそろ科研費、書き始めないと。」「今年、科研費が一つも獲れなかった。」
  8. かせつ【仮説】研究の対象としている自然現象に関して、最も合理的と思われる説明を”仮”に設定したもの。多くの科学研究においては、この仮説の正しさを検証することを目的として、実験が行なわれる。いわば、研究の芯となる部分。本来、大学院生を含めた研究者一人一人が、自分が現在行なっている研究に関する仮説を持っていて然るべきであるが、実際には、仮説なしに研究生活を送っている人が相当数存在する。仮説不在の研究は、研究目的が曖昧になり、しばしば迷走し、何年経っても論文としてまとまらない恐れがある。また、労働集約型ラボにおいては、そもそも研究室全体に仮説不在のことがある。現実的には、執筆の段階になってから、論文をうまく構成する都合上、実験結果に合わせて仮説が立てられることもある。仮説検証型ではないタイプの科学研究も存在するが、そのような場合でも、「仮説」の意味を広く捉えれば、何らかの意味でそこに仮説が存在している(と、個人的には考えている)。「TESTABLEでないものは、仮説とは呼ばないよ。」
  9. ガチ【ガチ】大学教員公募において、候補者が予め決まっておらず、応募者の中での真剣勝負になること。「この公募ってガチかなぁ?」「ガチ公募なんて、そうそうないよ。」
  10. がんばんなきゃだめだよ【頑張んなきゃ駄目だよ】ボスが大学院生を叱咤激励するときに使う言葉。何をどう頑張れば良い実験結果を出せるのかがわからず途方に暮れている大学院生にとっては、このような励まされ方はあまりうれしくない。「頑張んなきゃ駄目だよ!」「はぁ。」
  11. かく【書く】①論文の原稿を書くこと。「データもたまってきたし、そろそろ書き始めよっかな。」  論文を出すこと。「最近、書いてないのでやばい。」

  1. キムワイプ【Kimwipe】ラボ内で最も普通に使われている「ちり紙」みたいなもの。拭いたり、吸ったり、あらゆる実験用途に使われる。もちろん、家庭で使われるちり紙よりもずっと高価。「こら、キムワイプで鼻かむな!」
  2. きょうはきげんがいい【今日は機嫌がいい】ボスの機嫌が良い日であること。感情の振れが激しく、独裁者として振舞うボスの下で働く者にとって、日々変化するボスの機嫌の状態を把握しておくことは、仕事のストレスを最小化するうえで大変重要である。そのため、ボスの機嫌の状態に関して、ラボ内で緊密に情報交換が行なわれるのが常である。「ボス、今、鼻歌うたってなかった?」「うん。今日は、かなり機嫌がいいよね。」「頼みごとを切り出すなら今だよ。」
  3. ギルソン【Gilson】ギルソン社のピペットマンのこと。ピペットマン(←商品名)のシェアが余りにも大きいため、どの会社の製品であってもマイクロピペットのことはピペットマンと呼ばれる。そこで、「ギルソンのピペットマン」であることを明示するために使われる言葉。「このラボ、(ピペットマンが)全部ギルソンなんだ?金持ちだね。」「ギルソンは堅いから、自分はこっち(Finnpipette)のほうが好きなんだよね。」

  1. グレー【gray(米) grey(英)】研究不正を「クロ」、不正のない実験・研究を「シロ」としたときに、好ましくないが不正とまではいえないような行為をグレーと呼ぶことがある。また、新聞などのメディアは断定的な表現を避ける意図で、限りなくクロに近いものであっても、単にグレーと呼ぶことがある。実際には、グレーゾーンに、万人が納得するようなシロクロの境界を引くことは難しい。「研究って、どうしてもグレーな部分ってあるよね。」「あの論文は、ちょっとグレーじゃない?」
  2. クレジット【credit】その人がその研究をしたという評価、仕事に対する貢献度を認めること。研究成果を論文発表するときには、複数の著者場合の並び順や、コレスポンディングオーサーになるかどうかにより、クレジットの度合いが表される。また、論文執筆において他人の研究成果を正しく引用することは、その人の貢献を認めて正統なクレジットを与えているということになる。「共同研究の場合、クレジットをどう分け合うかが難しい。」「共同研究者にクレジットを全部持っていかれた。」「共同研究は歓迎だけど、クレジットはちゃんと欲しい。」

  1. けられる【蹴られる】論文がリジェクトされること。「ネイチャーに蹴られた。」
  2. けんきゅうをやめる【研究を辞める】アカデミアの研究職を辞めること。民間などで研究以外の職に就いたり、アカデミアの中でもURAなど事務系の研究支援職に転ずることが多い。「彼、研究辞めちゃったんだって?」 「君が研究を辞めるなんて、もったいないよ。」
  3. けんきゅうふせい【研究不正】①わかりやすく言えば、実験ノートが存在しないこと、または、実験ノートが提出できないこと。捏造(fabrication)、改竄(falsification)、盗用(plagiarism)の3つをまとめて、研究不正(research misconduct)とする定義が一般的(参照:文科省)。実験はしたが期待した有意差が出なかったときにエラーバーを短く見せかけて有意差があったかのようにする行為は、文科省の定義では、「改竄」になるが、有意差をでっちあげているわけだから一般的な言葉遣いでの”捏造”であり、「捏造」と「改竄」を厳密に分けることには意味がない。「実験ノートを出さない人は、研究不正をしていると見なします。」(参考)「やっぱり科学における犯罪ですよね、不正は。」(2008年分生シンポ記録PDF) ②〔東大・医〕定義されない。存在しない。「不正行為はない」(参考

  1. コネ【connection】大学教員になるときに(しばしば)必要とされる、研究者(採用側)と研究者(応募者)との間の人間的な強い繋がり。「公募に出しても、呼ばれもしないんです。」「コネがないとねぇ。」
  2. コピペ【copy & paste】コピーアンドペーストを縮めた言い方。一つのアプリケーションで対象物をコピーし、別のあるいは同一のアプリケーションでそれを貼り付ける行為。例えば、ウェブブラウザ上でNIHのウェブサイトの文章をコピーし、マイクロソフトワード上で書きかけのD論に貼り付けるなどすれば、非常に効率よく博士論文をでっちあげることができる。別の使い方として、図1のゲルの写真のバンドの一部をコピーし、図2や図3、図4のゲルの写真にペーストすれば、簡単に複数データを作り出すことができるため、実験をせずに論文を作成できる。東京大学分子細胞生物学研究所の一部のラボでは論文量産にあたってこのテクニックが多用されていた。コピペの応用範囲は思ったよりも広く、棒グラフのエラーバーのコピペもまた実験データ量産に有効で、東京大学医学部の研究者らがそれを実践していたことが2016年8月に明らかとなり、世間を驚嘆させた(詳細)。「コピペは駄目だぞ!」「コピペは文化だという大学もあるらしいw。」「エラーバーまでコピペしちゃうという発想は、普通の研究者の頭じゃ絶対に出てこないよね。」
  3. ごりおし【ゴリ押し】大御所の研究者が、ペーペーのエディターに、権威をもってして論文を通させること。雑誌社に雇用されている編集者は多少の研究経験の後すぐに編集者になっている場合もあり、このような力関係のアンバランスが生じる恐れがある(と個人的に想像している)。「なぜこれがネイチャー?」「ゴリ押ししたんじゃないの?」
  4. コレスポ【Corresponding author】コレスポンディングオーサー(責任著者)を短く縮めた言い方。文字通りの意味は編集部とやりとりをする著者のことだが、通常は研究代表者で、研究の全責任を負う人になる。「この仕事は全部自分の研究費でやったし、論文も全部自分で書いたのだから、コレスポ取らせてほしいよね。」
  5. こんせぷちゅあるあどばんす【conceptual advance】研究成果が、既成の概念の変更を迫るくらいに革新的であること。トップジャーナルには必須とされ、これがないとリジェクトされる理由になる。「コンセプチュアル・アドバンスがないと、ネイチャーなんて通りっこないよ。」”The paper does not provide the conceptual advance needed for publication in Science.” “Manuscripts may be rejected because they represent a relatively small conceptual advance on our present state of knowledge.” “A referee has raised major conceptual concerns about the advance your findings represent.”
  6. コンタミ【Contamination】細胞を培養しているときに、酵母やカビ、雑菌がシャーレの中に混入して繁殖してしまうこと。または、生きものや試薬に関して、本来あるべきでないものが、混じってきてしまうこと。「コンタミさせないように、注意しろよ。」 「コンタミで、培養細胞を駄目にした。」  「きっと、RNaseがコンタミしてたんじゃないの?」
  7. コントロール【control】対照実験のこと。ネガティブコントロールやポジティブコントロールのこと。「コントロールが甘いと論文にならないよ。」

  1. さ【差】実験群と対照群の間でみられる有意差のこと。「なかなか差が出せなくて苦労してる。」 「ところであの実験、差は出たの?」 「残念、差が出なかった。」
  2. サイエンス【Science】①アメリカの学術誌でネイチャーと並んで最も権威があるジャーナルとされる。研究者が考える理想的な科学研究の在り方。「そんなの、サイエンスじゃないよ。」
  3. さいげんされた【再現された】データ捏造などの論文不正を疑われた著者が、実験をやり直して論文の主張どおりの実験結果を見せることにより、不正行為があったかどうかをウヤムヤにするときに使う常套句。当たり前のことだが、仮に実験結果が再現されたとしても、それは最初の実験に不正行為がなかったことの証明にはならない。「指摘のあった論文の図に関しては、残念ながら実験ノートの存在を確認できませんでした。しかしながら、実験をやり直したところ論文と同様の結果が得られましたので、不正行為はなかったものと考えております。」

  4. さいげんできない【再現できない】トップラボに留学した日本人ポスドクがしばしば陥る罠。そのラボでセル、サイエンス、ネイチャーなどのトップジャーナルに論文を出したポスドクのあとを引き継ぐ研究テーマを任されたにも拘らず、その論文のメインデータが自分の手では再現できないこと。「実はあの論文、再現できないんだよね‥。」

  5. サイレポ【Scientific Reports】サイエンティフィックリポーツは、ネイチャーを出版しているのと同じ出版社によるオープンアクセスジャーナルで、掲載に係る審査において研究意義の大きさを問わないという特色がある。また、掲載料(ライセンス料)が比較的高額なため、お金を出せば誰でも掲載できる雑誌でしょ?という誤解をする人がたまにいる。ネイチャーの姉妹紙の中で最も掲載が容易であることは間違いない。 「研究費いっぱい貰っているくせに、サイレポにばかり論文出してるラボってどうなの?」
  6. さちる【飽和る】saturateするという英語から。蛍光画像取得時などにおいて、シグナル強度が強い部分では、測定された値との直線性が失われ、値の伸びが飽和状態にあること。「GFPの発現が強すぎて、この部分、さちってるね。」  「8ビットじゃなくて16ビットで画像取得しないと、さちっちゃうよ。」
  7. さんい【3位】3位とは、大阪大学のことである。(編注) マグロでなら日本一の大学と豪語する近畿大学の広告戦略を是非見習ってほしい。「3位じゃダメなんです。」(阪大)「マグロ大学って言うてるヤツ、誰や?」(近畿大学
  8. さんかげつ【三ヶ月】投稿論文がREVISIONとなった場合に著者に与えられる期間は3ヶ月(90日)であることが多い。

  1. シーエヌエス【CNS】セル(Cell)、ネイチャー(Nature)、サイエンス(Science)という生命科学分野のトップジャーナル3つをまとめた呼称。「CNSに論文があっても、職をとるのは難しい。」
  2. じだいがよかった【時代が良かった】古き良き時代に、あまり論文業績がなくても大学教員(パーマネント)になれた人が、現在の暗澹たるジョブマーケットの状態を目にして口にする安堵の言葉。「いやぁ、自分はラッキーだった。まだ、時代が良かったから。今だったら、絶対に生き残れていない。」
  3. じっけんノート【実験ノート】研究者が実験を行なう際に実験内容すなわち、実験日、実験目的、実験条件、実験手順、実験結果、考察などを逐次記録したノートのこと。〔東大・医〕定義されない。
  4. じぶんもそれをかんがえていた【自分もそれを考えていた】上の立場の人間が、研究のクレジットを奪取しようとして意図的に、あるいは無意識に発する言葉。「先輩、こんな実験やってみたら結構面白いことになるんじゃないかと思ったんですけど?」「あ、それ自分も考えていたんだよね。どう?やってみない?」「‥‥(誰の研究だと思ってやがんでぃ。。)」
  5. しめきり【締め切り】原稿を書き上げて、編集者に送ることが期待されている最終的なタイミング。または、原稿を書き始めるきっかけとなる最初のタイミング。「ねえ、原稿を依頼されているのがあるんだけど、僕は忙しいから、君、書かない?」「締め切りはいつですか?」「一応、昨日までなんだけど。」「‥‥。」
  6. しょく【職】パーマネントの職。またはテニュアトラックの職。ジョブ。 「職が見つからない。」
  7. しょくさがし【職探し】パーマネントの職、またはテニュアトラックの職を探すこと。 「職探し、うまくいってる?」 「いやぁ、なかなか、難しいです。」
  8. ジャーナル【journal】①学術誌のこと。「今の仕事は、どこのジャーナルに出すの?」 ジャーナルクラブ(学術雑誌に掲載された論文をひとつ選んで、ラボのみんなで読む会合)のこと。「今日ってジャーナルの日だっけ?」「今週のジャーナル、俺当たってるんだけど、論文何にしよう?」
  9. ジョブ【job】職に同じ。
  10. しょくをとる【職をとる】パーマネントの職やテニュアトラックの職、すなわちPIの職に就くこと。「彼は職が取れなかったので、研究を辞めた。」

  1. スクープ【scoop】良い実験結果に関する情報を競合する研究者が手に入れて、先にその実験結果に関する論文を出すこと。「プレプリントサーバーに出して、スクープされたりしないの?」
  2. ストーリー【story】論文において、実験データに基づき、論理的に一貫性があるように構成された一連の主張のこと。「ストーリーありきの論文。」「あのラボは、ストーリーに合わないデータを出しても教授が絶対に認めないから、不正が起きたんだよ。」「今やってる実験の結果次第でストーリーが変わってしまうので、結果を知るのが恐い。」「なかなかいいストーリーにならなくて、苦労している。」
  3. すぺーすがない【スペースがない】エディターが論文をリジェクトするときの定番の表現。電子ジャーナル全盛の時代になって、あまり見かけなくなったような気がする。デートに誘ったときに返ってくる言葉、「忙しくて時間がないの。ゴメンね。」と同じようなもの(だと個人的には思う)。
  4. すべてはつながってくる【全ては繋がってくる】①世の中における真理の一つ。“You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.” (Steve Jobs)  ラボのメインの仕事ではない研究テーマや、メインストーリーから外れる実験を学生に無理強いするときにボスが使う言葉。「全ては繋がって来るんだよ!」「‥」

  1. そうじ【掃除】研究費申請書や論文が書けなくて煮詰まっているボスが突然始める生産的な作業。「先生が急に教授室の中のそうじ始めたよ。」「だいぶ煮詰まってんだね。」

  1. たからくじみたい【宝くじみたい】大学教員公募で一つのポジションに数百人の応募者が殺到して、ほとんど当たる可能性がない状態。実際には、一つの当たりくじが特定の人に既に配布済みである(ことが多い)点で、宝くじとは異なる(自分の個人的な見解)。「最近の若い人(=研究者)は本当に可哀想だと思うよ。大学のポジションが少なすぎて、(ほとんど当たることのない)宝くじみたいな状態になっているから。」
  2. だす【出す】①論文を投稿すること。「(今書いている論文は)どこに出すの?」「もうどこかに出したの?」 ②論文発表すること。 「最近、出してないなあ。」 大学教員公募に応募すること。「君は今、どこか、出してる?」「とりあえず、出し続けるしかないですかねぇ。」
  3. たたかう【戦う】研究者が戦う相手といえば、それはエディターやレビューアーのことである。戦いは、リジェクトのメールを受け取った瞬間から始まる。エディターキックの場合には、査読に回すようエディターにアピールする。良いレビューが得られずにリジェクトされた場合には、レビューアーのコメントに対して反論する。反論のやりかたは、コメントが誤解に基づく場合にはそれを指摘し、また、反駁するために追加実験が必要な場合にはそれを行ない、その実験結果を根拠に反論したりする。「論文どうなった?」「蹴られたよ。」「戦わないんだ?」「もう、(学位の締め切りに間に合わせるためには、査読や論文受理までのプロセスが)速いジャーナルに出すしかないと思うんだよね。」
  4. たんじゅんか【単純化】(ストーリーに合わない実験データを無視することにより)ストーリーをシンプルにして差読者が理解しやすい論文構成にし、トップジャーナルに通る可能性を高める行為。個人的にはどうかと思う。「ちょっと単純化しすぎじゃない?」

  1. つうじょう【通常】①普通のことが行なわれているさま。 〔東大〕異常なことが行なわれているさま。注)Ordinary_Researchersの告発に答えて、東京大学は、エラーバーを手作業でいじって出鱈目な図を作成することが医・生命科学の研究分野においては「通常」という見解を出した。しかしながら、(東大医学部に足を踏み入れたことがない自分が知る限り、)エラーバーを手作業でいじる操作は、論文作成において決して一般的ではない。よって、東大のいう「通常」は、一般的な日本語での「異常」に対応すると考えられる。
  2. つかいすて【使い捨て】①ピペットマンのチップ、エッペン、PCRチューブ、細胞培養用のディッシュやプレート、コーニング、ファルコン、スライドガラス、カバーガラス、保護手袋など、ディスポーザブルな器具や製品のこと。「それは使い捨てだから、プラスチックのほう(のゴミ箱)に捨ててくれる?」
    任期付きポジションで働く研究者・大学教員の大部分のこと。「日本の研究力が急速に落ちてきてるんだって!」「これだけ研究者を使い捨てにしているんだから、当然じゃないの?」[参考] 「成果と連動しない任期制度は人の使い捨てにほかならない。」[参考] 「ポスドクが使い捨てにされる現状は、どう考えても異常。」[参考] 「プロジェクト研究のような期限付き資金で大学に雇用された研究者は、プロジェクトの終了とともに使い捨てられる。」[参考] 「研究を支えている若手研究者が使い捨てにされる一方、その成果を享受する立場の教授だけは研究の世界を末永く生き続ける。」[参考]
    (特に、雇い止めを強行する大学に勤務する)事務職員、研究補助職員(ラボ・テクニシャン)のこと。
    (特に、雇い止めを強行する大学に勤務する)非常勤講師のこと。「日本の大学は非常勤講師を使い捨てるブラック大学」 [参考]

  1. でぃすくりぷてぃぶ【descriptive】自然現象を観察し記載しただけで、その現象を作り出しているメカニズムに迫れていない研究。それ自体は決して悪いことではないが、トップジャーナルに投稿した論文が却下されるときの理由としては、しばしば使われる表現。descriptiveに対する言葉として、mechanisticがある。「今のところまだディスクリプティブだからなあ(メカニスティックなところまで踏み込めていないので、現状だといいジャーナルを狙うのが難しい)。」
  2. でぃーろん【D論】博士論文のこと。「D論、書いてる?」「D論、間に合わない。。」
  3. でき【出来】大学教員公募における出来レースのこと。「ねえ、JREC-INに東工大の准教授の募集が出てたよ!」「どうせ出来だよ。」
  4. できました【出来ました】出来たと思っている学生が返事に使う言葉。実際にはまったく出来ていないことが多い。本人の言葉で判断せず、実験結果や生データをチェックすることが非常に重要である。「出来た?」「出来ました!」
  5. でる【出る】論文が受理されること。学術誌に論文が掲載されること。「学会でしゃべってた仕事、どこに出たの?」「あの研究室は論文出てるよね。」

  1. とうだいいがくぶ【東大医学部】(東大の発表に基づき)以下に述べる5個の性質を持つ実体を「東大医学部」と定義する。
    1)研究室から発表された論文の図に示されるデータと、オリジナルデータ(実験で得られる生データ)とはほとんど一致しないこと。(そのような論文を出すラボが組織内に存在すること)
    2)論文の図作成にあたり、数値データをグラフにする際に、まずマイクロソフトエクセルを用いてグラフを描くこと。
    3)エクセルで描いたグラフは、必ずコピペによりマイクロソフトパワーポイント(パワポ)やアドビイラストレーター(イラレ)など別のアプリケーション上に移し変えること。
    4)パワポやイラレ上に移されたグラフはそのまま論文の図に使用することはせず、かならず、X軸、Y軸、棒グラフ、エラーバーを手作業でなぞる(トレース)ことにより、手書きのグラフとすること。このとき、オリジナルデータとの一致を消失せしめること。
    5)論文の図で示された値がオリジナルデータとどれほど一致していなくても、不正調査委員会、大学執行部、研究資金配分機関、監督省庁からは研究不正と認定されないこと。
  2. とおる【通る】論文が受理されること。「ネイチャー通ったんだ、おめでとう!」
  3. どうてい【同定】ある働きを持つ物質を特定すること。 「アルツハイマー病の原因遺伝子のひとつが同定された。」
  4. とくめいエー【匿名A】画像類似論文88報(他での指摘も含めれば111報)をインターネット上で匿名で指摘した人物のこと。(参考
  5. どこ?【何処?】普段まったく実験しない教授が何を思いついたのか急に実験を始めたときに、試薬の場所がわからないため、近くの研究員に保管場所を尋ねるときに使われる言葉。「ねえ、コンピテントセルって何処だっけ?」
  6. どりょくしょう【努力賞】卒業論文(学士号)や修士号は、ネガティブデータしか出なくても、すなわち、学術誌への論文発表ができなくても、取れるという意味。「修士までは努力賞だけど、博士は違うぞ。」
  7. どう?【どう?】ボスが大学院生に、良い実験結果が出たかどうかを聞くときに使うことば。「最近、どう?」「いやーっ、なかなか難しくて。」

  1. なぜこれがねいちゃー?【何故これがNature?】自分はいい研究をしていると自惚れている、思い込みの激しい研究者が、毎週木曜日に発する、負け惜しみの言葉。ちなみに木曜日は週刊誌Natureの発売(刊行)日である。ネイチャーに掲載される論文は、話題性があったり、ほんとうにいい研究成果であったり、一見凡庸な実験データであっても新しい視点から解釈されていてストーリーのまとめ方やライティングがうまかったり(要するに、見せ方、売り方がうまい)、何かしらアクセプトされるだけの理由がある(と個人的には思っている)。「なぜ、この論文がネイチャーなんだろう?」「うちの論文なんて、レビューにすら回らなかったのに。」「(著者が)エディターとお友達なんじゃないの?」「大御所のところからは出やすくて、いいよね。」
  2. なぜやっていない?【何故、やっていない?】論文をまとめる段階になって、ストーリーを構成する上で必要な実験データが足りないことがわかったときにボスが発する言葉。「こんなの、必要になることがわかりきっていた実験なのに、なぜ、やっていないんだ?」「‥‥(そんな実験やるだけ無駄だから止めろと言ったのはボスなんだけどなぁ。。)」
  3. ななえた【7エタ】ラボで滅菌を目的として多用される、70%エタノールのことらしい。自分は使ったことも、周りで使っているのを聞いたこともないが。「7エタで ラベルが消えた 君の名は?」(研究者川柳「川柳 in the ラボ2017」より)

  1. ネイチャー【Nature】①最高の権威があるとされる学術雑誌の一つ。ちょっと良さげな実験結果を出した学生をおだててるために、お調子者のボスが使う言葉。「おー、すごいねー。ネイチャーいけるよ!」「これ、ネイチャーだよ、ネイチャー!」
  2. ネガコン【negative control】シグナルが出ないことが期待されるように実験条件を設定した、対照実験のこと。「しまった、ネガコン置くの忘れた。」
  3. ねつぞう【捏造】実験していない(実験ノートがない、実験ノートに記述がない)のに、実験データを存在せしめること。「今の大学院は研究するところではない 捏造するところだ こうなるはずだ』『こう応用できるはずだ』『役に立たないことはするな』とボスから言われる場所、それが今の大学 例えば、捏造の追試だとしてもこれがお前の仕事だ。誇りを持てよ。誇りをもてないお前は不純だ』と私は言われた。誇りを持ち私は頑張った。スクリーニングで使えたはずの系がなぜシングルクローンで上手くいかないのか?プライマーがなぜ2つともセンス鎖なのか? 同じ形の図の縦軸がなぜ概念的に全く違うのか? 疑問は沢山あったが頑張った 数年後、大型予算が切り替わり、私は捨てられた 『君はネガティブだ。もう手に負えない。勝手にしろ』 ネガティブなのは前任者のデータだろ。その後、共に苦しんだ同僚が一人自殺した。」(匿名A)
  4. ねばる【粘る】投稿論文に対する差読者からの否定的な評価を覆し、アクセプトを勝取るために、反論を試みたり、忍耐強く何度ものリバイスを繰り返すこと。「リジェクトされてすぐに諦めたけど、もうちょっと粘ってみればよかった。」

  1. ノンスペ【non-specific】非特異的な効果による実験結果。「この一番濃いバンドは、ノンスペじゃないの?」
  2. のーととらなくてだいじょうぶ?【ノート取らなくて大丈夫?】学生に実験の手順を教えているときに、メモを取らないでも全部頭に入るんだ、すごい、この学生はかなり優秀に違いないと思いながら説明し終えたところ、いざ学生にやってもらおうとすると一人では何もできず、説明したことをもう一度全部聞かれて脱力させられることがあるため、メモを取らずに聞こうとする学生に対しては、予め一言声をかけておいたほうがよいと思われるフレーズ。

  1. はかせ【博士】博士号のこと。「このままだと、博士とれそうにない。」
  2. ばかやろう!【馬鹿野郎!】かつて、ボスが学生を励ますために用いられた言葉。現在では、アカデミックハラスメントになる恐れがあるため、この言葉の使用は推奨されない。
  3. パブリケーション【publication】論文業績のこと。「彼は、パブリケーションがいい。」

  1. ぴーあい【PI】Principal Investigator 研究室の主宰者、研究代表者。教授や准教授。テニュアトラック助教がPIになることもある。PI染色と言う場合のPIはpropidium iodideという、核酸を染める色素のこと。 「金沢大でテニュア・トラック助教を募集してたね。」「それって、PI?」
  2. ピーせん【P-1000】ギルソン社のピペットマンのシリーズで1000マイクロリットルまでの容量を扱うためのモデル。または、他社製品の同様のモデル。「P-1000借してもらっていい?」
  3. ひっかかる【引っ掛かる】ランクを下げたジャーナルに論文を投稿した結果、その雑誌に掲載を受理されること。「サイレポに何とか引っ掛かって良かった。」
  4. ひっかける【引っ掛ける】よそのラボに先を越されないうちに、論文を投稿しておくこと。同じジャーナルであれば、よそのグループからの同じ内容の論文が掲載されたとしても、それ以前に投稿していた場合には「同時」とみなしてもらえることが多いことから。「どこか(のジャーナル)にひっかけておかないと。よそに出されたらお終いだからな。」
  5. ひとのことにかまっているばあいではない【人のことにかまっている場合ではない】任期つきの教員が、自分が生き残ることに精一杯で、大学院生の研究の指導を行うだけの精神的な余裕、時間的な余裕がないこと。「もともと、指導していた学生の仕事だったのに、結果が出はじめたとたん、助教の先生がテーマを自分のものにしちゃって、ファーストで論文を書いて出しちゃったらしいよ。」「任期付きだから、人のことにかまっている場合ではないんじゃない?」「あの助教の先生、いつも自分の実験で忙しそうにしていて、ちょっと、学生の面倒見が悪くない?」「任期付きだから、人のことにかまっている場合ではないんじゃない?」
  6. ピーにじゅう【P-20】ギルソン社のピペットマンのシリーズで20マイクロリットルまでの容量を扱うためのモデル。または、他社製品の同様のモデル。P-20,P-200,P-1000の3モデルがラボで最もよく使われ、実験を遂行するための必須アイテムといえる。ピペットマンは高価なため、P-2やP-10が無い場合には、1マイクロリットルであってもP-20で代用することが多い。「P-20ちょっと借りていい?」「P-2が必要なんだけど、ボスが買ってくれない。」「P-10も、あると便利なんだけどなぁ。」
  7. ピーにひゃく【P-200】ギルソン社のピペットマンのシリーズで200マイクロリットルまでの容量を扱うためのモデル。または、他社製品の同様のモデル。「P-200借りるね。」
  8. ピペットマン【Pipetman】ギルソン社のマイクロピペット(溶液をマイクロリットル吸入、排出できる精巧なピペット)の商品名。あまりにも普及しているため、他社製品であっても、マイクロピペットのことはピペットマンと呼ばれることが多い。「ちょっと、ピペットマン借りていい?」「液吸いすぎて、ピペットマンの中に入っちゃった。」「今度からフィルター付きのチップを使ったら?」
  9. ひょうしだけ【表紙だけ】時代錯誤も甚だしい教授が、科研費申請書や博士論文の所内締め切り日に、とりあえず表紙だけ出しておけばいいと考えている場合に、発せられる言葉。「そんなの、表紙だけ出しとけばいいんだよ。」「‥‥」
  10. ひょうじゅんごさ【標準誤差】棒グラフにエラーバーをつけるときに使う短いほうのやつ。「標準偏差だとエラーバーが大きくなるから、標準誤差にしとけよ。」

  1. ファースト【first】共著者による連名の論文において、著者名の順番が一番最初にくる人、すなわち第一著者(first author)のこと。第一著者が論文のほとんどの仕事を行なったとみなされることが多いため(仮にそうでなかったとしても)、複数の研究者がかかわった仕事でファーストオーサーになることは、研究者にとって非常に重要である。「ファースト何報持ってる?」「ファーストで書かなきゃね。」
  2. フェノクロ【phenol-chroloform extraction】フェノール=クロロフォルム抽出。DNAの精製過程における一ステップ。「フェノクロやるの面倒臭い。」
  3. ふせいこういはない【不正行為はない】不正行為がない場合には、不正疑惑に関する調査報告を公表しなくてよいという時代錯誤な規則を逆手にとって、不正行為を揉み消したい大学が使う言葉。「調査結果の概要(医学系研究科関係)(結論)申立のあった5名について不正行為はない」
  4. I am/We are pleased【be pleased】 ”喜んで‥” 論文投稿後にエディターから送られて来るdecisionメールを読み始めた研究者が、一番期待して探し求める言葉。論文が受理されたことを伝えるときに必ず含まれている語句。”I am pleased to inform you that your manuscript has been accepted for publication in XXXX (ジャーナル名). ”  “We are pleased to inform you that your manuscript ‘XXXXXX(論文タイトル)’ has been provisionally accepted for publication in XXXX (ジャーナル名).”
  5. ブルーチップ【blue tip】ピペットマンで1000マイクロリットルまでを測りとるためのチップ。もともと純正のものは青色だったことから。他社製品であろうと、色が何色であろうと、ブルーチップと言えばこのサイズのチップのことを意味する。「ブルーチップの先を切って使えば?」
  6. プロナス【Proceedings of the National Academy of Science】中堅どころの学術誌のひとつ。 ピーエヌエーエス(PNAS)とも呼ばれる。ピーナスと呼ぶ日本人も結構な数いるが、penis(ペニス)の英語の発音と同じに聞こえるため、控えたほうがいいと個人的には思う。
  7. プログレス【progress】プログレスミーティング、研究の進捗状況をボスに報告するために研究室内で定期的に開かれるミーティングのこと。ラボミーティングとも呼ばれる。「今週プログレスが当たってるんだけど、しゃべることない。どうしよう?」

  1. ほうりつがない【法律が無い】セクハラ行為を働いて相手の精神を破壊したり、アカハラにより学生や部下の人生を滅茶苦茶にしたり、データを捏造して論文を出したり、明らかな研究不正を揉み消したり、研究不正が常態化したラボに巨額の研究費を配分し続けるような行為は、いずれも「犯罪(的)」だ(と自分は思う)が、そのような行為を裁く法律が現時点で存在しないこと。「人が亡くなっているのに誰も裁かれないなんておかしいよね。」「法律がないんだよね。」
  2. ポスドク【postdoc】ポストドクトラルフェロー(postdoctoral fellow)のこと。「卒業したあともポスドクで残るの?さっさと(今のラボから)出たほうがいいよ。」 「彼は学生時代の業績が凄くて、ポスドクをやらずにいきなりPIになった。」
  3. ポジコン【positive control】必ずうまくいくはずの対照実験。「何がポジコンになるかなぁ。」
  4. ボス【boss】研究室の主宰者である教授や准教授のこと。「こないだ駅でボスに会っちゃった。」
  5. ボスめし【ボス飯】お昼ごはんや夕食で、学生やボスドクがボスと一緒に食事をすること、またはその食事。「ボス飯になっちゃったよ。」
  6. ボスカッション【boss-cussion】ボスとディスカッションをすること。

  1. まける【負ける】自分がやっているのと同じ研究内容の論文を、競合するよその研究グループに先に出されてしまうこと。「頑張んないと、負けちゃうよ!」
  2. まつ【待つ】論文を投稿したあと、査読されて編集部から返事が来るのを待っていること。「もう投稿したの?」「うん、今(返事を)待っているところ。」

  1. めし、いく【飯、行く】大学院生や研究者がみんなでそろって学食などでお昼ご飯を食べるラボで、お互いを誘うために掛ける言葉。「メシ、行く?」「俺、ゲル流してる最中だから、後にするわ。」「ご飯、行きますか?」「先に行っててくれる?反応かけてから、行くから。」

  1. もってる【持っている】(ある特定のトップジャーナルに)論文を掲載されている業績がある。「彼はネイチャーを持っているのに、なかなか職が取れない。」
  2. もどる【戻る】学外の場所にいる大学院生が、再びラボに行くこと。全ての時間を研究に捧げている大学院生にとって、ラボは「行く」場所ではない。ラボがホームポジションであり、「戻る」と表現される。(研究室の飲み会が終わって)「(家に)帰る?、(それともラボに)戻る?」
  3. ものとり【モノ取り】 特定の働きを持つ未知の遺伝子を同定する仕事。「ゲノムが全部解読されて、ものとりで論文が書ける時代は終わった。」

  1. やられる【やられる】他のグループに同じ内容の論文を先に出されること。「やられちゃったよ。どうしよう?」「ジャーナル下げるしかないんじゃない?」
  2. やりました【やりました】実験等をちゃんとやれたと思っている学生が返事に使う言葉。実際にはまったくやれていないことが多いので、本人の言葉で判断せず、実験結果や生データをチェックすることが非常に重要である。「やった?」「やりました!」

  1. よばれる【呼ばれる】①大学教員に応募した人が、書類選考を通過し、面接試験に呼ばれること。「全然、呼ばれないの?」「何箇所かに呼ばれてはいるんだけど。」 大型の研究費の申請において、書類選考を通過し、面接試験に呼ばれること。「毎年呼ばれるんだけど、なかなか通らない。」

  1. ラスト【last】ラストオーサー(last author)のこと。ラストオーサーの人は通常、研究代表者とみなされる。「職が取れたので、この論文のラストをもらった。」「ラストをくれるなんて、いい教授だね。」
  2. ラボ【lab】大学の研究室(laboratory)のこと。「晩御飯のあと、またラボに戻らなきゃ。」 「えーっ、そうなの?(悲)」
  3. ラボミーティング【lab meeting】大学院生や研究員が進捗状況をボスに報告するためにラボ内で定期的に開かれるミーティングのこと。「来週ラボミーティング当たっているから、気が重い。」

  1. I/We regret 【regret】 ”残念ながら‥” 論文投稿後にエディターから送られて来るdecisionメールの中で、研究者が一番目にしたくない言葉。悪い知らせを伝える文に必ず含まれている語句  “I regret to inform you that we cannot publish your manuscript in XXXX (ジャーナル名).” “I regret that we are unable to publish it in XXXX (ジャーナル名).”  “We regret to say that we will not be able to accept this manuscript for publication in XXXX (ジャーナル名)”
  2. リジェクト【reject】投稿論文の却下。英語で名詞形だとrejectionだが、日本語では名詞としても使われる。「ネイチャーに出したけど、速攻でリジェクトされた。」「PNASにリジェクトを食らった。」
  3. リトラ【re-transformation】もともと精製してあるDNAの量を増やすために、大腸菌に再度トランスフォーメーションすること。「(DNAの)量が少ないから、リトラしてから使ってね。」
  4. リバイス【revise】投稿論文の改訂。英語で名詞形だとrevisionだが、日本語の中では名詞としても使われる。「論文のリバイス中なので忙しい。」「論文が返ってきた。リバイスだった。ラッキー。」
  5. りゅうがくする【留学する】博士課程を終えた人間が、海外でポスドクをすること。「最近は留学する人が減ったね。」「留学しても、帰る場所がないからね。」

  1. るいじ【類似】似ているように見えて異なること。または、似ているように見えて、実際に、同一である(疑いが強い)こと。「匿名Aを名乗る人物が、類似画像を含む論文を多数指摘した。」

  1. ろんぶんがある【論文がある】(ある特定の学術誌に)論文が掲載された業績がある。「論文はあるんだけど、なかなか職が見つからない。」「彼はネイチャーに論文がある。」
  2. ろんぶんがない【論文がない】年齢相応の論文業績がないこと。論文業績が不足していること。「彼は論文がないからなぁ。」
  3. ろんぶんのけつろんはかわらない【論文の結論は変わらない】「論文データ捏造発覚→オネストエラーであったと主張→論文訂正→論文の結論は変わらない→不正はなかった」という、不正逃れのフローを構成する、常套句。実際のところ、論文の結論が変わろうが変わるまいが、研究不正の疑わしさも変わらないことに注意。

 

  1.          【       】①朝研究室に入るときや、夜帰るときに、研究室の誰にも声をかけないで出入りしている状態。無言でラボに入ったりラボから帰る大学院生やポスドクが、結構多い。ただし、これはラボに長くいて馴染んでいる人の場合の話で、新しくラボに入ったばかりであったり、よそのラボにお邪魔する場合には、「お早うございます。」「お先に失礼します。」と、普通に挨拶するのが一般的。もちろん、毎回常に声に出してほがらかに挨拶をする人も存在する。教官や技術補佐職員などのスタッフは、声に出して挨拶する人が多いように思う。また、挨拶の動作が最小化された結果、アイコンタクトやかすかな会釈など、当事者同士のみで意志の疎通が行なわれていることもある。 大学院生がいつのまにか来なくなっても、誰も話題にしない状態。もちろん、望ましいことではない。「●●って最近見ないね。」「大学院辞めて、田舎に帰ったらしいよ。」 アメリカで日本人ポスドクが、アメリカ人らとの会話の中で言葉をはさむタイミングが見つからなくてずっと黙っていると、いつまでも、存在しないものとして扱われる、その状態。”●×△, △■□◇◆.” “△●×△◆◇?” “△●■□◆×△×◇”. “△●!” “△×◇!” “△, ◆×●■□◆◆×△■□◆×□×◇.” “■□◆.”

編注

阪大の広告に関して

  • さんい【3位】3位とは、大阪大学のことである。

「3位じゃダメなんです」という広告には、いろいろ考えさせられた。

まず、ダメーっ!と恐い顔をしている阪大学長さんの顔をみると、子供が学年3番の好成績を取って帰ってきたのに、「なぜ1番が取れないの!」と怒り出す親を思い出した(空想)。ダントツで学年トップの生徒は、勉強が好きでやっているだけで順位なんてそもそも気にもしていない。成績が2位や3位、それ以下の生徒は順位を気にしながら、親から競争心を煽られて勉強していたりする。

この広告はまた、「ピンクの象を想像 しないでください」という、心理系自己啓発本にありがちな教訓を思い起こさせる。自分で自分にこんな「万年3位」という暗示をかけてしまっていいのだろうか。また、学内外の皆の脳裏に焼きついた「3位」という言葉を完全に消去するためには、この先いったいいくら広告料を使えばいいのだろうか?

さらに、阪大といえば、世界一の研究成果を挙げている先生がたくさんいるのに、たった一つのモノサシで測っただけの3位という自虐的なイメージを、莫大な広告料を払って全世界にアピールするのってどうなんだろう?

そもそも、順位というのは結果であって、目的ではない。順位を上げようという意識で努力する人間は、なかなかトップにはなれないと思うし、一時的になったとしても、すぐにその座から転落するのがオチである。だいたい、何処の誰かわからない人たちが勝手につくった大学ランキングを気にするのは、受験産業が作り出した偏差値を信仰して歪んだ感覚になっている受験生と大差ないのではないか。「うちは日本で3番の大学なんです」という大学に行きたいと思う学年成績トップの高校生が、はたして、いるだろうか?自分を測るモノサシなんて、自分でつくればええやんか!

いろいろ書いてきて、あらためてこの広告を見てみたら、キャッチコピーの後にはゴニャゴニャと良いことも書かれていた。しかし、そんなものはほとんど読まれないので(自分は読んでなかったか、読んでもすぐ忘れてた)、メインのフレーズの中に一番伝えたいメッセージが込められていない広告は、効果がないか、今回のように逆効果だと思う。

どうもこの広告は中身は研究者、業界の人に向けられたもののように感じるが、新聞広告を打った以上、一般の人を対象にしたかったのであろう。しかし、一般の人は阪大が3位なんてことを誰も意識していないと思う。大阪の人にとって阪大は1番だし、東京の人からみれば一地方大学でしかない。つまり、阪大関係者以外の誰も、阪大が3番と意識していない。そんなわけで、広告の内容と広告の訴求対象がマッチしていないように思う。

いずれにせよ、催眠心理学が教えるところによれば、人間はイメージした通りのものになるというから、ネガティブなメッセージを伝えたいわけでもない限り、ネガティブなイメージを広告の前面に出すやり方はやめたほうがいいと思う。

以上、広告って難しい!という感想でした。

 

 

参考

  1. クレジット【credit】「科学者の研究への貢献を認めることをクレジット(credit)といいます。」(科学の健全な発展のために -誠実な科学者の心得ー 日本学術振興会 PDF14ページ). Caudri et al., Doing science: how to get credit for your scientific work. Breathe (Sheff). 2015 Jun; 11(2): 153–155. (PubMed)
  2. じぶんもそれをかんがえていた【自分もそれを考えていた】今、ちょうどそれを云おうと思ってたんだ。 何も考えていないボスが、下から出て来た自分が思い付きもしなかった良いアイディアを聞いて、恰も自分も同じことを考えていたかの様に取り繕う際の常套句。@Xenopus007
  3. たたかう【戦う】最後に「受理」という甘美な果実を手にするためには、投稿誌の編集者や査読者という強敵と戦い抜くだけの知力と忍耐力、そして決断力が必要である。(ポール・J・シルヴィア著『できる研究者の論文作成メソッド』 推薦の言葉 三中信宏 より)
  4. でぃすくりぷてぃぶ【descriptive】「この研究は基本的にしっかりした内容であるが、記載的過ぎる難がある。」(The ‘Descriptive’ Curse). Arturo Casadevall. Mechanistic Science. Infect Immun. 2009 Sep; 77(9): 3517–3519.(PubMed)

参考(その他)

  1. あなたの大学でしか通用しない「用語」(マイナビ 2015/04/18)

 

研究生活カテゴリーの記事一覧

NHKスペシャル『追跡 東大研究不正』

2017年12月10日(日)午後9時00分~9時49分に、NHKスペシャル 追跡 東大研究不正 ~ゆらぐ科学立国ニッポン~ が放送されました。NHKの番組説明を読むと、研究不正問題の背景となる日本の科学政策の問題点に関して批判的なメッセージを伝えることが一番の狙いのようです。

激化する国際競争の中で変容してきた科学研究費の配分を巡って、翻弄される科学者の姿。そして、科学技術立国を掲げ、研究成果を国の発展につなげようという施策が、皮肉にも、科学を停滞させかねないという現実。(NHKスペシャル 追跡 東大研究不正 ~ゆらぐ科学立国ニッポン~)

 

視聴者は、この番組をどのように見て、メッセージをどのように受け取ったのでしょうか?番組に関するツイートをいくつか紹介します。

激化する研究費獲得競争が研究不正の要因なのか?

NHKスペシャルの番組予告では、「優秀なはずの科学者たちがなぜ不正を?」というフレーズが使われていました。また、番組内では、研究費獲得競争の激化を要因の一つとしてかなり強調していました。その主張を根拠として、番組内では東大の若手PIの言葉を通じて、ラボの運営がいかにお金のかかることかを説明していました。

しかし、東大で新たにPIに採用されるような人は、業績もあり競争的研究資金の獲得能力があると認められた人たちです。また、競争に負けて予算が全く取れなかった人が、実験できないのでデータを捏造するというものでもありません。研究不正で話題になるのは、多くの場合、普通の研究者よりも桁違いの研究予算を取っている人たちです。

優秀な科学者がなぜ捏造するのか?数億円の研究予算を獲得している研究者がなぜ捏造するのか?パーマネント職が欲しい若手研究者がなぜ捏造するのか?これらの疑問を統一的に説明できるのが、上のツイートの『研究費が足りないから不正が起きるのではなくて足りないのは成果に見合う能力です。』という分析ではないかと思います。「研究費の額=その研究費で期待される成果の大きさ」に見合う能力が足りないときに、その人は研究不正を働いて帳尻を合わせようとすると考えると、とてもしっくりきます。だとすれば、研究不正を防止するひとつの方法として、いくら優秀な科学者であっても、その人の能力以上に研究予算をあげないことが考えられます。

 

インパクトファクター至上主義の是非

番組内では、教授が高インパクトファクターの国際誌に論文を掲載しようとしたことがあたかも悪いことと受け取られかねない説明だったと思います。分生研加藤研の不正調査報告書にも同じような論調がありました。しかし、良い研究をして良いとされる雑誌に論文を掲載されるように努力することは研究者として当然のことであり、そのこと自体は何も悪くありません。部下の能力や意志を無視してそれを強要したり、不正を働いてまでするから問題なのです。上で紹介した分析『足りないのは成果に見合う能力』は、ここでも当てはまります。

業績欄にセル、サイエンス、ネイチャーがないと(あっても?)なかなかパーマネントの職が取れないようなご時世なのですから、部下の将来を考えて、これらのいわゆる一流誌に論文を出させようと叱咤激励してくれるボスは、本来なら、むしろ良いボスでしょう。

 

アカデミックにおけるパーマネントなポストの不足に関して

 

研究不正を働く人ってどんな人?

 

番組が東大医学部捏造論文疑惑に触れなかったことに関して

捏造論文を出すラボは、何度でも捏造論文を繰り返し出す不思議な現象が見られます。これもまた、以下の不等式

期待される成果の大きさ > 本人の能力 + 本人のモラル

が成立する限り、捏造が繰り返されると考えれば合点がいきます。

 

参考

  1. NHKスペシャル「追跡 東大研究不正~ゆらぐ科学立国ニッポン~」 2017年12月10日 171210 http://www.dailymotion.com/video/x6bgb75

  2. 捏造、不正論文 総合スレネオ 425ちゃんねる *閲覧注意)

 

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ディオバン臨床研究不正事件まとめ

(不完全なまとめ 随時変更あり)

ディオバン事件の概要

今回の問題は、ノ社の依頼で臨床研究をした大学の研究者が、降圧剤としての効能自体ではなく、高血圧以外の疾病、例えば、心疾患などに対しても効能があるとする論文を発表し、それが、医学専門誌等での広告宣伝に使われたことで、他社の同種薬より優れている、との認識を医療関係者に持たせた。ところが、その根拠となった臨床試験のデータが不正に作られていたことが判明し、論文が撤回された、というものです。(高血圧薬ディオバン問題、難航する真相解明 検察、公取委の出方は?Asahi Judiciary 2013/08/26)

 

ノバルティス社の関与

ノバルティスの薬ディオバンの効果を調べる5つの臨床研究で、ノバルティスの社員がデータの統計処理を一手に引き受けていました。

ノバルティスの三谷元社長は、臨床試験や論文執筆への会社としての関与を否定していた。 しかし、3月28日に毎日新聞が、京都府立医大が実施した臨床試験の統計解析に、ノバルティスの元社員(既に退職)が関与していたことをすっぱ抜く。 この元社員は、臨床試験データの統計処理のプロで、大阪市立大学などの非常勤講師の肩書も持っていた。ノバルティス社員の立場を表に出さず、京都府立医大のほか、東京慈恵会医科大、千葉大、滋賀医科大、名古屋大で、ディオバンの論文作業にかかわっていたという。 (製薬業界の資金提供に疑惑の目 医学論文捏造疑惑、「ディオバン事件」の罪深さ 経済界 2013年7月2日)

ノバルティス社の報告書の中に、元社員が市大の非常勤講師の身分を使えば許されると思い込んでいたとか、会社も同様に解釈していたと書かれていました。大きな製薬企業の報告書として、そのような恥ずかしいことが堂々と書かれていること自体に問題の深刻さを感じました。(山口委員 2014年4月17日 第1回 臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会 議事録 厚生労働省

当該元社員は、当時、ある学術機関(大阪市立大学)の非常勤講師でもありました。このため、当該元社員は、臨床研究に関わる活動と弊社の業務とを区別しておけば、臨床研究に深く携わることができると理解していました。つまり、学術機関における立場により、臨床研究への関与が正当化されると考えていたのです。また、当該元社員だけでなく、当時の上司や他の社員、研究者も同様の考えをもっていました。(バルサルタンを用いた5つの医師主導臨床研究におけるノバルティスファーマ株式会社の関与に関する報告書  ノバルティスファーマ株式会社 2013年7月29日 PDF)

ノバルティスの報告書には臨床研究への関与は一個人でなく会社の業務と認めたような記述があります。厚生労働省の報告書では、ノバルティス社が臨床研究に会社として関与したと断定しています。

当該元社員らの上司とノバルティスファーマの経営陣の一部の者は、当該元社員の研究への関与の程度について認識していた、ないしは認識して然るべきであったといえます。一方、経営陣のうちの上層部の者は 当該元社員の日々の業務については把握していなかった と考えられます。(バルサルタンを用いた5つの医師主導臨床研究におけるノバルティスファーマ株式会社の関与に関する報告書  ノバルティスファーマ株式会社 2013年7月29日 PDF 6ページ)
 
これらを総合的に判断すると、当該元社員が今回の事案に深く関与していた実態がノバルティス社にとって最近になって判明したものとは言い難い。また、当該元社員の関与のみならずその上司及び一部の経営陣による認識などの人的状況、並びに当該元社員にかかる必要経費の会社負担及び会社の意図及び期待等を伴った奨学寄附金の提供などの金銭的状況などから、今回の事案は、当該元社員一個人が関与していたというよりは、実態としてはノバルティス社として今回の事案に関与していたと判断すべきものである。(高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた 対応及び再発防止策について (報告書) 平成26年4月11日 高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する 検討委員会 参考資料1 PDF)

 

何が問題なのか

ノバルティスの社員が論文の上で身分を隠して関与し、しかもデータの統計処理の段階で不正に操作していたことを問題視する報道が多いですが、仮に、この社員が論文上で身分を明かしており、統計処理でも不正を働いていなかったとしたら、問題はなかったと言えるのでしょうか?

実は、データ取得時に不適切なデータの取り扱いを行っていた医師が存在した可能性を追及する報道があります。

当時の医局員の雰囲気では「これは慈恵 HEART Study」ではなく「望月 HEART Study」と揶揄する声もあり、皆きちんと報告していた。望月氏の症例だけで一次エンドポイントの症例に80件の差が付いている。バルサルタンが心血管系イベントの発生を抑制したという論文の結果は、ほぼ望月氏の症例だけから出されている。(「JHSから手を引いたわけ」元慈恵医大医師の供述調書 m3.com 2016年1月23日

 

東大の調査報告書の中では、千葉大に在籍時の研究について、「(千葉大在籍時の)不正行為を直接の理由として、当該教員を処分する権限もない」としている。さらに千葉大に対して、「既に退職した研究者に対し、懲戒処分を行うことができないとしても、一定の範囲で措置を取ることができる」と指摘している。一方の千葉大は、処分を現在の在籍者に限定した上で、東大に処分を検討するように伝えてきた経緯がある。 (「小室氏処分の権限なし」、東大と千葉大  m3.com 2015年4月2日)

もしも、臨床研究を率いたリーダーたちが自らデータ操作をしていたのだとしたら、論外です。しかし、仮に研究者に捏造の強い意思がなくても、データの不適切な操作が起きる余地はいくらでもあります。実験では、いくら実験条件を予め決めていても、例数に入れていいのかどうかという微妙なサンプルの例が出てきてしまい、その匙加減が有意差のありなしにつながる恐れがあるからです。研究室がノバルティス社から数千万円~億の資金援助を受けているのに、ノバルティス社の不利になること、すなわち、そのラボの教授の希望に沿わないようなことを、下の人間ができるはずがありませんから、意識して、あるいは、無意識に、実験群や対照群の例数にこれを含めるべきかどうかという段階で強いバイアスがかかってしまうことは容易に想像できます。

バルサルタンの効能に関する臨床研究を行うに際して、もっとも重要な患者データの統計解析を、バルサルタンの販売会社であるノバルティス社の現職社員が身分を明示せずに行うということは、明らかに不公正といわざるをえない。
 この点に関して、Lancet論文には、「データ解析は大阪市立大学統計解析グループが担当したが、本グループは本試験実施グループ及び資金提供者とは独立していた。」「資金提供者は、試験計画、データ回収、データ解析、データ解釈及び報告書作成には関与しなかった。」との記述がある。しかし、これらの記述中の「資金提供者」がノバルティス社を指していることは明白であって、患者データの統計解析がすべてA社員の下で行われた事実、A社員の下で作成した表及び図がそのまま論文中に掲載されている事実に照らし、これらの記述は不実であることが明白である。
  Lancet論文は、この不実記述の一事をもって、すでに科学論文としての価値がないといっても過言ではなく、そのような不実記述をした望月教授の責任は極めて重い。(臨床試験『Jikei Heart Study』に関する 調査委員会(中間)報告書(訂正版)2013年7月30日 2013年8月29日訂正 PDF)

本事件は、利益相反状況の下においてデータ操作という科学的不正が行われたという点に問題の核心がある。すなわち、血圧値の操作があったことが明らかとなっている慈恵医大試験では、まさに臨床研究の客観性・正当性が損なわれているのであって、その点を無視して、開示されていたから利益相反の観点からは問題がない、とするのは全くの詭弁である。(ディオバン事件に関する意見書 薬害オンブズパースン会議 2013年9月11日 PDF)

 

使途が自由な多額のお金を研究室に与えることにより大手製薬会社は自社に有利な研究論文を期待し、資金援助を受けた研究室もまたそれに応えるという”ズブズブの関係”が成立していたことは、ノバルティスの報告書でも認めています。

その後の懇親会ではノバ社社長が「早く論文化して広報活動に使わせてください」とお願いしてきたと言う。2010年12月に松原氏は、白橋氏に「年明けには論文を進めます。来年の奨学寄付金について社長に頼んでください」とメールしていた。(「詰問すると白橋さんは目を見開いて睨んできた」府立医大元教授 ノバ社・府立医大論文改ざん事件、第18回公判 m3.com 2016年3月21日 高橋直純)

これら5つの研究は、ノバルティスファーマの奨学寄附金による支援を受けていました。これらの奨学寄附金は、名目上は使途を特定していませんが、ノバルティスファーマは奨学寄附金が当該研究の支援に用いられることを意図及び期待し、また奨学寄附金を受け取る側も、奨学寄附金が研究の支援を意図していることを認識していました。(バルサルタンを用いた5つの医師主導臨床研究におけるノバルティスファーマ株式会社の関与に関する報告書  ノバルティスファーマ株式会社 2013年7月29日 PDF 6~7ページ)

最近ネットでは、「広告記事」が多くみられますが、今の場合は、「広告論文」みたいなものです。共著者の一人の所属が論文にはっきりとノバルティスと書いてあれば、「広告論文」だということに読者は気付けます。

しかし、所属を表示しなかったことが問題の本質ではありません。大学の研究室が一企業から多額の研究費を援助してもらって、その企業の商品の効能を調べて論文を出すという行為自体が問題です。なぜなら、これは不正行為を容易に生み出す構図になっているからです。今回はたまたま、第三者が気づく極端なデータ操作があったために発覚しただけで、もっと微妙な不正行為だったら、気付かれずに済んだでしょう。

○宮田委員 曽根先生に1つ質問があります。Reporting Biasというのは大問題だと思うのですが、これはCOIを厳密化する、マネージメントを厳密化するだけで防げるものなのですか。海外ではどのような手段が講じられているのでしょうか。
○曽根委員 Reporting Biasというのは、臨床研究のファンディングが企業からであれば人間の場合起こるのだという理解でマネージメントをすべきだと私は理解しています。性善説よりはむしろ性悪説。だから、マネージメントが必要だということです。その場合に企業との利害関係の開示が非常に重要です。開示あるいは公開ですね。最初から企業との金銭の関係について開示、公開しておけば、その研究者は報告あるいは発表する場合に、自律的に中立的な立場で発表するのではないかということが、1つの大きなポイントです。それから、臨床試験であれば、先ほどのゲルシンガー事件、ペンシルバニア大学の場合には、あの遺伝子治療薬が効けば儲かるということをB教授は当然考えていたのです。効けば薬になる。しかし、結果的に臨床試験の途中で見付かったのでペナルティとなったのです。あの遺伝子治療そのものの臨床試験の実施は正しいという理解でいいと思うのです。しかし、COIマネージメントは、疑惑を招かないようにするためには、深刻なCOI状態にあるB教授は臨床研究チームのメンバーになっても単なる分担医師としてであり、責任医師(Principal Investigator)はベンチャー企業と関係のない人にすることがマネージメントです。
○宮田委員 公開だけでは不足ということですね。
○曽根委員 公開だけでは駄目です (第2回高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会 議事録 2013年9月2日 厚生省)

さらに見逃せないのは、臨床研究で不正行為が明らかになった医学部の研究者らの一部は、他の論文でも不正行為が発覚していることです。日頃からデータ捏造論文を出していた人たちが、ディオバンの臨床研究でも不正論文を出したという事実をどう受け止めればいいのでしょうか?

 

医師主導臨床試験

東京慈恵会医科大学 JIKEI HEART Study 責任者::望月正武教授(2007年に、慈恵医大を退職)

京都府立医大学 KYOTO Heart Study

千葉大学 VART (The Valsartan Amlodipine Randomized Trial) 責任者:循環器内科学 小室一成教授

滋賀医科大学 SMART (the Shiga Microalbuminuria Reduction Trial)

名古屋大学 NAGOYA HEART Study

 

問題となった論文リスト

JIKEI HEART STUDY

  1. Lancet 2007;369:1431-9

KYOTO HEART Study

  1. Eur Heart J 2009;30:2461-9

VART

  1. Effects of valsartan and amlodipine on cardiorenal protection in Japanese hypertensive patients: the Valsartan Amlodipine Randomized Trial. Hiroya Narumi, Hiroyuki Takano, Satoshi Shindo, Miwa Fujita, Hiroshi Mizuma, Yoichi Kuwabara & Issei Komuro on behalf of the VART Investigators. Hypertension Research (2011) 34, 62–69 (2011) doi:10.1038/hr.2010.186. Received:07 June 2010 Revised:01 July 2010 Accepted:01 July 2010 Published online:07 October 2010 Corrigendum: 05 January 2011 Corrigendum: 23 May 2013

NAGOYA HEART Study

  1. Comparison Between Valsartan and Amlodipine Regarding Cardiovascular Morbidity and Mortality in Hypertensive Patients With Glucose Intolerance NAGOYA HEART Study. Takashi Muramatsu, Kunihiro Matsushita, Kentaro Yamashita, Takahisa Kondo, Kengo Maeda, Satoshi Shintani, Satoshi Ichimiya, Miyoshi Ohno, Takahito Sone, Nobuo Ikeda, Masato Watarai, Toyoaki Murohara, for the NAGOYA HEART Study Investigators  https://doi.org/10.1161/HYPERTENSIONAHA.111.184226 Hypertension 2012;59:580-586. Originally published January 9, 2012 Correction – July 01, 2015
  2. Rationale and design of the NAGOYA HEART Study: Comparison between valsartan and amlodipine regarding morbidity and mortality in patients with hypertension and glucose intolerance. Kunihiro Matsushita, MD, PhD, Takashi Muramatsu, MD, Takahisa Kondo, MD, PhD, Kengo Maeda, MD, PhD, Satoshi Shintani, MD, PhD, Toyoaki Murohara, MD, PhD, on behalf of the NAGOYA HEART Study Group. Department of Cardiology, Nagoya University Graduate School of Medicine, 65 Tsurumai, Showa-ku, Nagoya 466-8550, Japan. Journal of Cardiology July 2010 Volume 56, Issue 1, Pages 111–117 DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.jjcc.2010.03.004
  3. Effects of Valsartan Versus Amlodipine in Diabetic Hypertensive Patients With or Without Previous Cardiovascular Disease. Kentaro Yamashita, MD, PhD, Takahisa Kondo, MD, PhD, Takashi Muramatsu, MD, PhD, Kunihiro Matsushita, MD, PhD, Takanori Nagahiro, MD, Kengo Maeda, MD, PhD, Satoshi Shintani, MD, PhD, Toyoaki Murohara, MD, PhD. Department of Cardiology, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan. DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.amjcard.2013.07.043 The American Journal of Cardiology December 1, 2013 Volume 112, Issue 11, Pages 1750–1756

SMART

  1. Reduction of Microalbuminuria in Patients With Type 2 Diabetes: The Shiga Microalbuminuria Reduction Trial (SMART). Diabetes Care 2007;30:1581–1583. DOI: 10.2337/dc06-2493. 2014年3月論文撤回

  2. Impact of Renin-Angiotensin System Inhibition on Microalbuminuria in Type 2 Diabetes: A Post Hoc Analysis of the Shiga Microalbuminuria Reduction Trial (SMART). Hypertension Research 2008  論文撤回: 27 March 2014

 

捏造論文の後始末

このうち京都府立医科大学が行ったKYOTO HEART Studyと東京慈恵会医科大学が行ったJikei heart Studyでは両大学の調査で人為的なデータ操作の可能性が指摘され、滋賀医科大学が行ったSMART研究、千葉大学が行ったVART Studyではデータの不一致などから大学側の調査で科学論文として不適切と結論づけられた。このうちVART studyの試験デザイン論文以外は既に撤回されている。この中でNHSは唯一論文撤回まで行われていなかったが、今回撤回を求める勧告が出たことにより、関連研究すべてが撤回に追い込まれる可能性が高まった。(【ディオバン問題】NAGOYA HEART Study追加調査、論文撤回が妥当と判断 QLifePro 医療NEWS 2017年11月24日)

 

裁判のゆくえ

元社員側の主張は、多額の奨学寄付金を目論む医師らがノバ社に有利なように自らデータ改ざんに及んだ、などというものだった。そのため、一連の臨床研究に関与した医師らが次々と証人出廷し、お互いに責任をなすりつけ合う泥仕合の様相を呈した。 (意外な無罪判決で検察に衝撃 ディオバン事件の経過と今後 前田恒彦 元特捜部主任検事 YAHOO!JAPAN NEWS 2017/3/21)

辻川靖夫裁判官は、心血管イベントの水増しなどについて「意図的な改ざんであった」などと不正を認定した。ただ、論文掲載の過程自体は通常の過程と同様であり、「それ自体が購入意欲を喚起・昂進させる手段としての性質を有するとは言い難い」として、旧薬事法(現・医薬品医療機器等法)第66条1項の誇大広告に当たらないと判断した。 (ディオバン臨床研究不正 ノバルティスと白橋被告に無罪判決 ミクス Online 2017/03/17)

製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬「ディオバン」に関する論文不正事件で、東京地検は29日、薬事法(現・医薬品医療機器法)違反の罪に問われた同社と元社員の白橋伸雄被告(66)を無罪とした東京地裁判決を不服として控訴した。(ノバルティス論文不正、検察が控訴 法解釈の誤り主張へ 朝日新聞 DIGITAL 2017年3月29日18時37分)

 

再発防止策

薬の効果を調べる臨床研究で、データ監視や情報公開などの実施手続きを定めた臨床研究法が成立した。 製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)の研究データ改ざん事件などで浮き彫りになった製薬会社と医師らとの癒着をただし、臨床研究を適正化する狙いがある。(製薬会社からの資金提供 新法を不正抑止の契機に 毎日新聞 2017年4月16日 THE社説一覧)

 

公式発表・報告書

厚生労働省

  1. 高血圧症治療薬の臨床研究事案を踏まえた 対応及び再発防止策について (報告書) 平成26年4月11日 高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する 検討委員会 参考資料1 PDF)

ノバルティスファーマ株式会社

  1. バルサルタンを用いた5つの医師主導臨床研究におけるノバルティスファーマ株式会社の関与に関する報告書 (ノバルティスファーマ株式会社 2013年7月29日)(PDF)

東京慈恵会医科大学 Jikei Heart Study

  1. 臨床試験『Jikei Heart Study』に関する調査委員会最終報告書 2014年12月12日 東京慈恵会医科大学 Jikei Heart Study調査委員会 委員長橋本和弘(副学長、学術担当理事 (PDF
  2. 臨床試験『Jikei Heart Study』に関する 調査委員会(中間)報告書(訂正版) 2013年7月30日 2013年8月29日訂正 東京慈恵会医科大学 Jikei Heart Study調査委員会委員長 橋本和弘(医学科長)(PDF)

京都府立医科大学 Kyoto Heart Study

  1. 「Kyoto Heart Study」臨床研究の調査報告について公表資料(7月11日記者発表):「Kyoto Heart Study」臨床研究に係る調査報告書(PDFファイル)

名古屋大学 NAGOYA HEART Study

  1. 「NAGOYA HEART Study」に関する追加調査について 平成29年11月22日 名古屋大学 (PDF

千葉大学 VART study

  1. 臨床研究「VART study」についての調査報告(最終)掲載日:2014/07/15

滋賀医科大学 SMART

  1. 臨床研究「SMART」に関する調査報告 国立大学法人滋賀医科大学 平成25年12月19日 PDF(厚生労働省ウェブサイト上)

 

 

ディオバン事件に関する分析的な論文・論考

  1. 週刊日本医事新報 4808号 2016年06月18日 特別企画:ディオバン事件 問題点と教訓を考える  (1)第一部 由井芳樹氏 インタビュー ARBを用いた臨床試験の問題点 [特別企画:ディオバン事件 問題点と教訓を考える] PDF
  2. 「ミニゼミ」報告から ディオバン臨床研究問題と利益相反(その1) 早川浩司 新しい薬学をめざして43, 23-31(2015).(PDF)
  3. 「バルサルタン事件」の倫理・規制・政策論的分析─ 被験者の保護と研究の公正性の確保に向けて ─ 栗原千絵子1)* 1  齊尾 武郎2)* 2 1)独立行政法人放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター 2)フジ虎ノ門健康増進センター Clin Eval 41(4)2014 (PDF)
  4. Valsartan撤回論文を読む:その基本的な欠陥について 齊尾 武郎* フジ虎ノ門健康増進センター Clin Eval 41(4) 2014 (PDF)
  5. バルサルタン臨床研究不正疑惑などについてー重大な研究不正の事例リストの部分的改訂ー 菊地重秋 IL SAGGIATORE, No.41 (2014) pp. 72-93所収(投稿版)(PDF
  6. ディオバン事件に関する意見書 (薬害オンブズパースン会議 2013年9月11日 PDF):”かつて、研究者が企業と経済的関係を持つことは、産学の「癒着」として学問研究の中立・公正を守るために回避すべきものとされていた。しかしそれはいつしか産学「連携」と名を変えて、むしろ積極的に推進すべきものと言われるようになった。”

 

一般向けの分析的な記事など

  1. 2017年7月15日公開シンポジウム「臨床試験・治験は誰のためのものか?~患者の語りから考える」第1部講演:隈本邦彦(江戸川大学)「適正かつ公正な臨床試験とは:ディオバン事件から見えてきたもの」
  2. ノバルティス、1兆円売上の薬で研究不正発覚…巨額寄付得た医学部、劇的効果の論文撤回 (Business Journal 2016.11.19):”この事件について、研究論文が発表された当時から疑義を呈してきたのが、医師で臨床研究適正評価教育機構理事長の桑島巌氏だ。今年9月に『赤い罠 ディオバン臨床研究不正事件』(日本医事新報社)を上梓した桑島氏に、ディオバン事件および日本の臨床研究の現状について聞いた。”
  3. 関係者は責任逃れに必死 「ディオバン裁判」呆れた実態 (集中 Medical Confidential 15Jul2016):”「自発的に虚偽の報告をした」などと自ら改ざんを認める医師の存在に加え、6月初旬に開かれた公判では、検察側が指摘した改ざん以外にも、カルテとデータが異なる例が複数存在していることが明らかにされた。 仮に白橋被告が一部の改ざんを行っていたとしても、被告以外の手による改ざんも混在しているとなれば、あまりのいいかげんさにあきれる他ない。「白橋被告がデータを改ざんしたとしても、それは自社商品を有利に売り込むためと説明がつくし、同情もできる。それに対して、医師側が行った改ざんの理由として考えられるのは人事やカネ。まったく同情できません」(業界誌記者)。”
  4. ノバルティスファーマの不祥事 高額年収・給料のからくり、MBS近藤光史が大暴露 2014/07/27 に公開 こんちわコンちゃんお昼ですのMBSアナウンサー近藤光史さんがスイスの製薬会社ノバルティスの 高血圧治療薬「ディオバン(一般名バルサルタン)の不正操作を詳細に暴露します。
  5. スクープ!逮捕された元社員の「盟友」ウソつきノバルティス社に協力した「疑惑の医師」を直撃! (週刊現代 gendai.ismedia.jp 2014.07.08 プレミアム会員限定記事):”彼の名は松原弘明医師(57歳)。彼こそが、白橋容疑者と二人三脚で、京都府立医科大学で大規模な臨床試験を行っていた責任者である。だが、ディオバンが問題になり始めた昨年2月末、松原医師の姿は京都府立医大病院から忽然と消えた。”
  6. 「理事長が責任逃れ」慈恵会医科大の醜聞 (FACTA ONLINE 2014年1月号 DEEP):”五つの大学で論文の臨床データが不正操作されていた、いわゆる「ディオバン問題」。京都府立医科大の吉川敏一学長や滋賀医大の馬場忠雄学長らが謝罪に追われたのは記憶に新しい。しかし、火中にあって今日に至るまで、トップが責任逃れを決め込んでいる大学がある。”
  7. 高血圧薬ディオバン問題、難航する真相解明 検察、公取委の出方は?郷原信郎弁護士に聞く (法と経済のジャーナル Asahi Judiciary 2013/08/26 朝日新聞社 聞き手・筆者:村山治 ):”今回の問題は、ノ社の依頼で臨床研究をした大学の研究者が、降圧剤としての効能自体ではなく、高血圧以外の疾病、例えば、心疾患などに対しても効能があるとする論文を発表し、それが、医学専門誌等での広告宣伝に使われたことで、他社の同種薬より優れている、との認識を医療関係者に持たせた。ところが、その根拠となった臨床試験のデータが不正に作られていたことが判明し、論文が撤回された、というものです。”
  8. 疑惑の薬 ~論文データ操作の闇~ NHK クローズアップ現代 No.3388 2013年7月31日(水)放送:”まず、ほかの高血圧の薬を飲んだ111人。論文では、脳卒中などの患者が34人も出た、としていました。ところが、カルテを調べると、20人しかいませんでした。14人も増やす操作が行われていました。一方、「ディオバン」を飲んでいた112人。脳卒中などを起こした患者は、論文では14人とされていましたが、カルテを調べると、2人多い、16人でした。調査の結果、薬の効果に大きな違いはなかったのです。”
  9. 製薬業界の資金提供に疑惑の目 医学論文捏造疑惑、「ディオバン事件」の罪深さ (経済界 2013年7月2日 ジャーナリスト/山下剛平):”論文は、京都府立医科大学の松原弘明教授(当時、今年2月末に辞職)が中心となってまとめられたもの。論文撤回当初、ノバルティスの三谷元社長は、臨床試験や論文執筆への会社としての関与を否定していた。 しかし、3月28日に毎日新聞が、京都府立医大が実施した臨床試験の統計解析に、ノバルティスの元社員(既に退職)が関与していたことをすっぱ抜く。 この元社員は、臨床試験データの統計処理のプロで、大阪市立大学などの非常勤講師の肩書も持っていた。ノバルティス社員の立場を表に出さず、京都府立医大のほか、東京慈恵会医科大、千葉大、滋賀医科大、名古屋大で、ディオバンの論文作業にかかわっていたという。”

 

インターネット上のまとめ記事

  1. ノバルティス ディオバン(バルサルタン)臨床研究データ捏造疑惑 (diovan-novartis.blogspot.jp)
  2. ディオバン事件ウィキペディア
  3. 京都府立医科大学 松原弘明の不正 京都府立医科大学循環器内科、関西医科大学第二内科の松原弘明氏の論文での研究不正疑惑について (blog.goo.ne.jp/matsubaralaboratory)

 

報道記事

  1. 【ディオバン問題】NAGOYA HEART Study追加調査、論文撤回が妥当と判断 (QLifePro.com 医療NEWS 2017年11月24日 PM04:30):”名古屋大学公正研究委員会は11月22日、降圧薬・ディオバン(一般名:バルサルタン、ノバルティスファーマ)をめぐり同大学医学部で実施された臨床研究・NAGOYA HEART Study(略称:NHS、研究責任者:同大循環器内科教授・室原豊明氏)ついて追加調査を実施した結果、「Hypertension」誌に掲載された同研究の試験デザイン論文、主論文、サブ解析論文の3本の撤回が適当との判断に至ったと発表した。”
  2. 名古屋大、ディオバン論文に撤回勧告、2014年の「最終報告」から一転 学外からの指摘で再調査、疑惑症例除外で「有意差が出なかった」(m3.com 2017年11月23日 高橋直純):”ノバルティスファーマ社の降圧剤であるARB「ディオバン」を巡る研究不正で、名古屋大学は11月22日、同大における臨床研究「Nagoya Heart Study」(NHS)において、妥当性に欠けるエンドポイントの判定があったなどとして、「論文撤回が適当」と勧告する追加調査を公表した。過去にも調査が行われており、2014年12月の「最終報告」では、「データの恣意的な操作はなかった」として、「イベントの定義やNHSに関わったノバ社員の肩書に関する修正」のみを求めていたが、新たな調査の結果、判断が大きく変わることになった。”
  3. バルサルタン 臨床研究データ改ざん 名大「論文撤回が妥当」 手順不適切 追加調査結果毎日新聞 2017年11月23日 中部朝刊):”製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」を巡る臨床研究データ改ざん事件で、名古屋大の学内委員会は22日、同大医学部教授らのチームが行った臨床試験の論文3本を「適切な手順を踏んでおらず、撤回が妥当」と判定した。近く論文掲載誌の編集部に通知する。 “
  4. 製薬会社からの資金提供 新法を不正抑止の契機に (毎日新聞 2017年4月16日 THE社説一覧):”薬の効果を調べる臨床研究で、データ監視や情報公開などの実施手続きを定めた臨床研究法が成立した。 製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)の研究データ改ざん事件などで浮き彫りになった製薬会社と医師らとの癒着をただし、臨床研究を適正化する狙いがある。”
  5. 意外な無罪判決で検察に衝撃 ディオバン事件の経過と今後 (前田恒彦 元特捜部主任検事 YAHOO!JAPAN NEWS 2017/3/21)
  6. データ改ざん論文 ノバルティスと元社員無罪 広告に当たらず (東京新聞 2017年3月17日 朝刊):”<医薬品問題に取り組む民間団体「薬害オンブズパースン会議」事務局長の水口真寿美弁護士の話> 大規模な研究不正があっても、刑事責任を問うには、薬事法(現医薬品医療機器法)の広告規制に引っかけるしかないのが現状で、その枠組みの限界を露呈したと言える。研究不正を罰する法制度が必要だ。”
  7. ディオバン臨床研究不正 ノバルティスと白橋被告に無罪判決 (ミクス Online 2017/03/17 03:52):”辻川靖夫裁判官は、心血管イベントの水増しなどについて「意図的な改ざんであった」などと不正を認定した。ただ、論文掲載の過程自体は通常の過程と同様であり、「それ自体が購入意欲を喚起・昂進させる手段としての性質を有するとは言い難い」として、旧薬事法(現・医薬品医療機器等法)第66条1項の誇大広告に当たらないと判断した。”
  8. バルサルタンデータ改ざん事件 結審、来年3月に判決毎日新聞 2016年12月15日 20時59分 最終更新 12月15日 20時59分):”製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」を巡る臨床研究データ改ざん事件で、医薬品医療機器法(旧薬事法)違反(虚偽記述・広告)に問われた元社員、白橋伸雄被告(65)と同社に対する東京地裁(辻川靖夫裁判長)の公判は15日、結審した。”
  9. 「JHSから手を引いたわけ」元慈恵医大医師の供述調書 ノバ社・府立医大論文改ざん事件、第4-6回公判 (高橋直純 m3.com 2016年1月23日 閲覧は要登録)
  10. 降圧剤データ改ざん ノバルティス社も否認 初公判毎日新聞 2015年12月16日 19時31分 最終更新 12月16日 23時23分):”製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)を巡る臨床試験データ改ざん事件で、薬事法(現医薬品医療機器法)違反(虚偽広告)に問われた元社員、白橋伸雄被告(64)は16日、東京地裁(辻川靖夫裁判長)であった初公判で「改ざんしていない。統計に関わったが、医師の研究を手伝っただけ」と起訴内容を否認し、無罪を主張した。法人としてのノ社も「白橋被告による不正は確認できない」と否認した。”
  11. 「小室氏処分の権限なし」、東大と千葉大 東大が「研究不正なし」の報告書、言い分食い違いも (池田宏之 m3.com 2015年4月2日):”東大の調査報告書の中では、千葉大に在籍時の研究について、「(千葉大在籍時の)不正行為を直接の理由として、当該教員を処分する権限もない」としている。さらに千葉大に対して、「既に退職した研究者に対し、懲戒処分を行うことができないとしても、一定の範囲で措置を取ることができる」と指摘している。一方の千葉大は、処分を現在の在籍者に限定した上で、東大に処分を検討するように伝えてきた経緯がある。”
  12. 千葉大、不可解証言放置で幕引き、VART論文調査 小室氏の責任指摘も、関与は見えないまま (池田宏之 m3.com 2014年7月16日):”降圧剤「ディオバン」(販売元:ノバルティスファーマ社)を巡る論文不正疑惑で、千葉大学は7月15日、同大のディオバンの臨床試験「the Valsartan Amlodipine Randomized Trial(VART study)」に関する「研究活動の不正行為対策委員会」(委員長:松元亮治千葉大理事)による内部調査の最終報告書を公表した(報告書は、同大ホームページに掲載)。”
  13. 降圧剤 データ改ざん前、脳卒中抑制効果なし (中日新聞 中日メディカルサイト 2014年6月14日):”製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤ディオバンをめぐる京都府立医大の臨床研究データ改ざん事件で、東京地検特捜部が改ざん前のデータを解析したところ、論文でうたわれていた脳卒中の抑制効果を確認できなかったことが、関係者への取材で分かった。”
  14. 降圧剤不正事件 産学の根深い癒着を断て (琉球新報 2014年6月13日 08:16):”大手製薬会社ノバルティスファーマが販売する降圧剤「ディオバン」をめぐり、東京地検特捜部は、京都府立大の臨床試験で得たデータを有利になるように操作して医学論文に掲載させたとして、薬事法違反(虚偽広告)の疑いで元社員を逮捕した。‥‥ 寄付を受けた研究者がその薬を投与して効果を検証し、データは売れ行きを伸ばすように改ざんされていた。詐欺のような話である。 欧米では、製薬会社が不正なデータを用いて利益を上げれば、数百億円から数千億円単位の賠償金を科す制度があるが、国民の負担が支える医療保険から製薬会社の利益を得ている日本にはない。”
  15. ディオバン問題 JIKEI HEART Study LANCET誌掲載のメイン図表に重大な誤り (ミクス Online 2013/10/21 03:53):”降圧薬・ディオバン(一般名:バルサルタン)をめぐり、東京慈恵会医科大学などで実施された大規模臨床試験「JIKEI HEART Study」で、医学誌「The LANCET」に掲載されたメイン図表のカプランマイヤー(Kaplan-Meier)曲線(図1)に重大な誤りがあることが明らかになった。”
  16. ディオバン問題検討委が初会合 新たに2試験で論文とカルテデータに食い違いも (ミクス Online 2013/08/12 03:53):”降圧薬・ディオバン(一般名:バルサルタン、ノバルティス ファーマ)をめぐる臨床研究でデータの改ざんがあったことを受け、厚労省は「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」(委員長:森嶌昭夫名古屋大学名誉教授)を設置し、8月9日に省内で初会合を開いた。検討委で、新たに大学の内部調査の中間結果が報告された、「VART Study(研究の中心となった施設:千葉大学)」、「SMART Study(滋賀医科大学)」の2試験でも、新たにカルテデータと論文データの食い違いが発見されたことが分かった。”
  17. 「ディオバン」の本当の効能とは?疑惑があっても使い続けられるのか? (HUFFINGTONPOST.JP 2013年07月31日 19時30分 JST | 更新 2013年08月01日 00時23分 JST):”製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬ディオバンをめぐる一連の論文不正事件で、京都府立医大に続き、東京慈恵会医大でもデータ操作などの不正が確認された。”
  18. クローズアップ2013:降圧剤 京都府立医大の論文撤回騒動 製薬社員も名連ね (毎日新聞 2013年03月28日 東京朝刊) 京都府立医大のチームによる降圧剤「バルサルタン」の臨床試験論文3本が、掲載した学会誌から「重大な問題がある」との理由で撤回された。血圧を下げる本来の効能は否定されていないが、脳卒中などのリスクを下げる働きもあるとした論文の信頼性は揺らいでいる。論文をPRに利用してきた製薬会社「ノバルティスファーマ」(東京)の社員が、試験に関係する別の論文で統計解析責任者として名を連ねていたことや、ノ社が論文責任者側に1億円余の奨学寄付金を提供していたことが取材で判明した。関係者の説明責任が問われている。【河内敏康、八田浩輔】(blog.goo.ne.jp/matsubaralaboratory)

 

書籍

  1. 赤い罠 ディオバン臨床研究不正事件 桑島 巖 日本医事新報社 2016/9/16
  2. 偽りの薬 バルサルタン臨床試験疑惑を追う 毎日新聞科学環境部 河内 敏康,‎ 八田 浩輔 毎日新聞出版 2014/12/5 「論文不正」―記者の元に届いた1通のメールから全てが始まった。ノバルティスファーマ日本法人社長への直接取材、臨床試験に関与した元社員宅への訪問、たび重なる謝罪会見、厚労省の検討委員会、内部告発者の出現…二人の新聞記者が、地を這うように現場を駆ける!降圧剤「バルサルタン」をめぐる、巨大製薬企業・ノバルティスファーマと大学病院の癒着に迫った900日―!日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞、調査報道の真骨頂!

 

関連する話題

  1. 武田薬品に飛び火する誇大広告疑惑 米医学誌で指摘した京大医師に直撃 (週刊ダイヤモンド  DIAMOND ONLINE 2014.3.2):”国内製薬最大手である武田薬品工業が、高血圧治療に使う自社の降圧剤の効き目を誇大宣伝していた疑惑が浮上している。ノバルティス ファーマの降圧剤「ディオバン」に関する論文の問題を、英医学誌「ランセット」で統計的な矛盾点として示した京都大学病院循環器内科の医師、由井芳樹氏が、今度は武田の降圧剤「ブロプレス」に関する論文に対して、疑問点を指摘したのだ。”

 

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東京大学は医学部の不正調査をやり直すべき

報道によれば、東大医学部の論文の図のほとんどに関して、残されていたオリジナルデータと論文の図で示されたデータとは一致しなかったという事実を、調査委員会も認めている。また、エラーバーが手作業で作成されたことも、調査委員会は認めている。ここまで聞けば、論文データは捏造されていたと理解するのが、常識的な感覚であろう。それにもかかわらず、東大の調査委員会は何の根拠も示さずに、捏造ではなかった、だからこれ以上の説明はしないと言ってお終いにした。「へ?」ってなもんである。

東大執行部は気が狂っているのか?この気違いじみた報告書を受け取って良しとした文科省やAMEDもまた、まともに対応したとは到底思えない。(←ていうか、グル?上からの指示?) 捏造ではないということを誰もきちんと説明できないような、デタラメな図表だらけの論文が複数指摘されたにもかかわらず、東大は、「不正行為はない」 の7文字をウェブ上に掲載しただけである。報告書の本文すら一般国民には公開していない。記者会見当日に報道関係者には配布したのかもしれないが、大手メディアは分生研のことばかり詳細に報じたので、医学部の疑惑がどうなったのかについては、一般の人間には知る由もない。年間何百億円も税金を使っている東大が、このような重大な疑惑に関する調査報告書の本文すら国民から隠すのは無責任極まりない。矛盾に満ちた支離滅裂な内容だからきっと見せたくなかったのだろうと想像する。

情報が乏しいとはいえ、断片的にでもネット上で報じられたこれらの事実を前にしたときに、現東大執行部が医学部の研究不正を隠蔽したという以外の受け止め方が、どうしてできようか。もっといえば、東大執行部だけでなく、それを黙認した文科省などの監督省庁、つまりは、日本が国を挙げて研究不正を公認したという見方をする方が現実に即しているのかもしれない。できれば否定したい考えではあるが、これを反証する材料が見当たらない。恐ろしい話である。こんなことが今の日本で起こり得るのかと考えると、本当にゾッとする。

ウソであってほしい、自分の錯覚であってほしいと思うが、ネイチャーのウェブサイトに行けば、全てのグラフのエラーバーが全部デタラメという論文がそこに、まるで何事もなかったかのような顔をして今日も存在しており、この異常な世界の中で自分が生きているという現実を、再確認させられる。Ordinary_researchersはそれぞれの雑誌編集部にも告発内容を伝えているので、ネイチャーなど雑誌の編集長はこの状況を理解しているはずなのだが、なぜここまであからさまな論文に関してすら即刻対処しないのだろうか。


エラーバーを手作業で適当にくっつけたような、真正でないデータの図表からなるネイチャー論文等の業績に基づいて、この先さらに何億円、何十億円もの研究予算がこれらのラボに注ぎ込まれるのかと考えると、怒りが収まらない。(←てか、コレ、犯罪じゃね?) 科研費申請の時期に研究計画調書がなかなか書けなくて、ウンウン唸りながらも頑張っている大勢の研究者達が、滑稽に見えてくる。

事の重大さは、個人が暴走したSTAP細胞事件の比ではない。にもかかわらず、この重大事件を取り上げた新聞や大手メディアは今のところ皆無である。日経サイエンス10月号が、この医学部不正疑惑問題への東大の対応に関してつつましやかに疑問を呈したのが、かろうじて目に留まっただけである。このような深刻な事態に異議を唱えずに、日本の科学研究が失速していると嘆くのだとしたら、実に愚かなことである。捏造ラボが巨額の研究資金を使ってさらに捏造論文を出し続けても、科学の進展に全く寄与しない。税金の無駄遣いだし、捏造ラボ内のまともな大学院生や研究者らの人生を破壊するし、研究者コミュニティに対しては大きな迷惑となるだけである。医学系の論文の場合は、一般の人が大きな不利益を被る可能性もある。

誠実な研究者が何年も努力してやっと一本の論文を仕上げている間に、実験結果に有意差が出ようが出まいがエラーバーを短く見せかけたグラフで論文を出して、研究費も職も取っていくような人たちが、咎められずにいる。普通の人間が地道に研究して論文業績を多少積み上げたところで、任期が切れてもその先に職はなく、それでお終いである。今の日本では、研究不正を働いた人間のほうが高い確率で生き残ることができるんじゃないか?若者たちがこんな世界に来たいと思うわけがない。真面目に働いている大多数の研究者を見たときに職業として成り立っていないうえに、これほど研究不正が蔓延っている状況とあっては、若い人たちに研究職を勧めることができない。


Ordinary_researchersに指摘された東大医学部の論文が捏造であろうことや、東大の現執行部がその研究不正を隠蔽したというのは、自分の仮説に過ぎない。しかし、図表のおかしさを指摘された論文著者らが1年以上もダンマリを決め込み、釈明も論文の訂正も何もせずにこれらの論文を放置してきたという事実を見れば、うっかりミスだったのだろうと善意に解釈することは、自分には到底できない。東大の支離滅裂な説明や、調査書本文をウェブ公開せずに逃げ切ろうとする姿勢などをみるにつけ、自分の仮説が正しいのだろうという思いが強まる。

本当に研究不正がなかったのであれば、捏造不正の疑いを晴らすために、指摘された論文ごとに、さらに、指摘された実験の図ひとつひとつについて、実験ノートの存在の有無(その図のもととなった実験が本当に行なわれたのか)、実験データの数値(論文で示された数値と一致するのか)、有意差のありなし(論文で示された有意差が本当にあり、論文の結論が支持されるのか)、図表の不備が生じた理由などの報告があってしかるべきである。なにしろ、通常の研究者の目から見たらまっクロだよねという図の指摘なのだから、そのくらいのことをしない限り、データ捏造の疑いは晴れない。

 

 

分生研の不正疑惑を厳格に調査したのと同じ基準に則って、医学部の不正疑惑は調査をやり直すべきである。東大の医学部不正疑惑に関する報告(2017年8月1日)は、実験ノートはあったりなかったり、確認できたオリジナルデータの数値は論文の図とはほとんど違ってた、でも似たような実験はしていたみたいだから、不正はないと結論するという、およそサイエンティストがまとめた報告とは思えないような支離滅裂な代物である。東大は、生物学および医学の分野では、数値処理ソフトで描いたグラフに手を加えることが通常だと言う。なんのジョークだ、それ?あまりにも恥ずかしすぎて、報告書本文がウェブに掲載できないのも当然かと思う。

東京大学の執行部は、東大医学部不正隠蔽仮説が反証されるような材料がもし存在するのであれば、速やかに開示すべきである。それは、日本一の研究大学を自認する東京大学が研究者コミュニティや納税者に対して負うべき当然の責任であろう。研究不正が存在したのであれば、不正の隠蔽に加担した者も含めて、行為に見合うペナルティを受けるべきである。研究の世界を無法地帯化するのは、本当に勘弁願いたい。

 

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