大学教授・准教授・講師・助教・研究者の年収

大学教授・准教授・講師・助教・ポスドク研究者など、研究者や大学教員の年収の「うわさ」などをまとめておきます。

国立大学教授の年収

東京大学教授の年収

1200人あまりいる東大教授の場合、年間給与の総額は約1156万円(平均年齢55.9歳、平成26年度)という平均値が公表されています。最低866万円弱から最高1800万円以上まで幅が広がっている主な理由は、40歳過ぎで教授になっても年功序列のために45歳准教授約860万円というモデル給与と大差がないのに対し、研究科長などの管理職につくと6割の手当がつくからです。つまり、管理職にならないヒラの東大教授の年収は高くとも1200万円に届かないのが普通です。(東大教授の平均年収は1156万円「職務」に見合った額といえるのか 沖大幹 東京大学教授 ironna.jp 太字強調は当サイト)

京都大学教授の年収例

京都大学大学院法学研究科教授の高山佳奈子氏(2013年、45歳時の給与)基本給660万円に賞与279万で年収940万円 (日経ビジネスONLINE 2016年4月12日)

【独占手記】私が京都大学の給与明細を公開したホントの理由 高山佳奈子 京都大教授 iRONNA

国立大学教授の年収例

東京工業大学の教員・研究者の年収

下の数字は破格のように思えます(他の1.5倍くらいの印象)。東工大は他の国立大学とは給与体系が異なるのでしょうか。

 

 

私立大学教員の年収

私立大学准教授の年収

 


 

 

専任教員は、有力私立大の助教授(35歳)、担当ノルマは4コマから5コマが平均で年収は8~900万円、40歳台では千万円を超えるのが普通 (「民主法律」233号(1998年2月発行)p.137-p.144 掲載論文 非常勤講師問題と大学教員任期制法 –大学をめぐる最近の状況と雇用形態の多様化に触れて– 脇田 滋龍谷大学)

早稲田大学の助教の年収


 

特任准教授の年収

こう打ち明ける40代女性は、任期制の「特任准教授」だ。‥ 女性の年収は終身雇用の准教授と同じ700万円台だが、4年間の任期終了後に雇用を打ち切られる。 (AERA 2018年2月26日号より抜粋 gunosy.com)

 

助教の年収


 

 

ポスドクの年収

ポスドク(博士研究員)の年収

ポスドクの年収は、給与の財源により非常に大きな開きがあります。

学術振興会 特別研究員-PD  月額362,000円(支給予定額)(参照:jsps.go.jp) (362,000円x12ヶ月=434万4000円)

学術振興会 特別研究員-SPD 月額 446,000円(支給予定額)(参照:jsps.go.jp)(446,000円x12ヶ月=535万2000円)

学振特別研究員は、その給料の中から所得税・住民税・国民年金・国民健康保険を払う必要があります。‥ 学振からの振込みは所得税だけが天引きされています。‥ サラリーマンならば、通勤手当、扶養手当、住居手当など、本人の生活状況に応じてさまざまな手当がつきます。しかし学振の場合、その種のものは一切ありません。年450万ぽっきりです。(日本学術振興会の特別研究員の給料 YAHOO!JAPAN知恵袋 2009/1/10 15:52:10)

年収500万円を受け取っているポスドクは、一部に過ぎないと思います。私の研究室では、できるだけ多くのポスドクを雇用したいと考え、年収300万円程度の支払いでがまんしてもらっています。(ポスドク問題を考える 空飛ぶ教授のエコロジー日記 2005-06-13)

 

大学教員の年収は大学によっても職階によっても異なりますが、もう一つ重要なものとして定年の年齢の違いがあります。70歳定年の大学もあれば、60歳定年の大学もあります。定年する年齢の差は生涯賃金では非常に大きな差を生みます。

関連記事 ⇒ 大学教員・職員の定年、定年延長に関する議論の纏め

関連記事 ⇒ まだアカデミアで消耗してるの?【博士の転職】

 

参考

  1. 公立の高校教師は公務員なので、各地方自治体のホームページにしっかりと給料は公開されています。‥ 公立高校の場合、45歳で年収は740万円ほど。 http://careergarden.jp/koukoukyoushi/salary/
  2. カリフォルニア大学雇用者の給与(Compensation at the University of California) University of California Employee Pay As part of its commitment to transparency and public accountability, each year the University of California publicly reports employee pay data. The report covers UC’s career faculty and staff employees, as well as part-time, temporary and student employees.

 


労働者の過半数を代表する過半数代表者

訴えられる大学

雇い止めに関連して、大学の総長らが訴えられるというニュースが相次いでいますが、告訴の理由の中で、「労働者の過半数を代表する者(過半数代表者)」が適切に選ばれていなかったという説明が目に留まりました。

3000人以上いるといわれる非常勤講師を5年で雇い止めすることなどを目的に、2013年3月に突如、強引な手段で就業規程の導入を試みた早稲田大学。これに対して、非常勤講師らが、刑事告発刑事告訴といった手段で対抗。早稲田大学の「違法行為」が露呈した結果、2017年4月、非常勤講師側の勝利に終わったのだ。‥ 大学側の説明では、過半数代表者を選任したい旨と、過半数代表者の候補者7人の名前を書いた文書を、2月14日に非常勤講師の控室にあるメーリングボックスに配布したという。同時に、大学のポータルサイトにも掲示し、2月28日までに回答を求めていたと主張し、そのうえで反応がなかったのだから、手続き上問題ないと主張した。しかし、このとき大学は入試試験の真っ最中。2月末までは非常勤講師は学内には入れないため、誰もその文書を見ることはできなかった。結局、文書が本当に配布されたのか、サイトに掲示されたのかの確認はとれなかった。何よりも大学側が「労働者の代表」として指名した7人の候補者は専任の教員ばかりであり、非常勤講師はそこに入っていなかった。大学は「過半数代表者の選任」を恣意的に進めたのだ。‥ 佐藤名誉教授と非常勤講師組合の委員長は、違法行為を承知で無理を通そうとする大学に対して、大きな行動に出る。4月8日、早稲田大学の鎌田薫総長以下理事18人を、労働基準法違反の疑いで東京地検に刑事告発したのだ。団交の内容を詳細に聞いた大野さんは、早稲田大学内の非常勤講師に今回の事態を周知し、大学と闘う賛同者を集めた。そして6月21日、大野さんら早稲田の非常勤講師17人も、鎌田総長ら理事18人を新宿労働基準監督署に刑事告訴した。また、それまで早稲田には非常勤講師の組合がなかったが、9月には非常勤講師100人以上が集結し、非常勤講師組合による早稲田ユニオン分会が立ち上がった。(早稲田大学で起こった「非常勤講師雇い止め紛争」その内幕 田中 圭太郎 gendai.ismedia.jp 2017.07.26 太字強調は当サイト)

 

東京地方検察庁 検事正 伊丹俊彦様

下記被告発人の犯罪につき、その重大性、是正の必要の緊急性に照らし、速やかな処罰を求めます。

被告発人

学校法人早稲田大学代表者(総長)理事 鎌田薫(かまたかおる)
同常任理事(法人統括、総務、人事担当)清水敏(しみずさとし)
同常任理事 橋本周司(はしもとしゅうじ)
同常任理事 内田勝一(うちだかついち)
同常任理事 大塚宗春(おおつかむねはる)
同理事13名(別紙被告発人理事目録記載の通り)

罪名 就業規則作成の手続違反(就業規則作成について、事業場の「労働者の過半数を代表する者の意見を聞かなければならない。」<労働基準法90条1項>義務の違反)(引用元:2013年4月8日 告発状 PDF 太字強調は当サイト)

 

東北大学の就業規則変更に不備があるとして、東京大学教職員組合の佐々木弾委員長ら東京の大学職員組合関係者3人が11日、労働基準法違反の疑いで、東北大と里見進総長ら幹部8人に対する告発状を仙台労働基準監督署に提出した。 告発状によると、東北大は2015~17年に就業規則を4回変更した際、「労働者の過半数を代表する者」から意見聴取した。代表者を選ぶ選挙に非常勤講師やアシスタントらを含めない不備があったという。東北大は14年、有期雇用契約を5年を超えて更新できず「雇い止め」になるよう就業規則を変更した。(「就業規則変更に不備」東北大を告発 職員組合関係者 井上充昌 朝日新聞DIGITAL 2018年1月11日20時25分 太字強調は当サイト)

 

山形大が雇い止めを目的に非正規職員の雇用契約に関する就労規則を不当に改正し、更新上限を5年間に制限したとして、東北6県の大学などの非正規教職員らでつくる「東北非正規教職員組合」の佐藤完治事務局長ら2人が23日、労働基準法違反の疑いで、小山清人学長らに対する告発状を山形労働基準監督署に提出した。 告発状などによると、労働基準法は国立大学法人が就労規則を改正する際、労働者の過半数の代表者に意見を聞くよう定めているのに、山形大は非常勤講師やアルバイトの授業補助者を除外して、平成25年と今年の2回、規則を変更したとしている。(「山形大が雇い止め目的で就労規則を不当改正」 東北非正規教職員組合らが告発状 産経ニュース 2018.2.24 10:37更新)

 

日本大学(本部・東京都千代田区)が非常勤講師を契約上限5年で雇い止めとする就業規則などをつくる際、正当な労働者過半数代表の意見聴取を行わなかったとして、日大に勤める非常勤講師2人は26日、渋谷労働基準監督署に労働基準法違反を申告しました。同日、厚生労働省内で会見しました。‥ 日大の労働者代表不正については、松村委員長ら非常勤講師組合有志3人が14日に刑事告発も行っています。(日大の「雇い止め」 労基法違反で申告 労組が会見 非常勤講師の2人 日本共産党 しんぶん赤旗 2018年2月27日)

 

労働者としての大学教員

私たちは国家公務員でなくなり、大学と契約を結んではたらく労働者となりました。(法人化以後、労働条件はどう変わったか 2005年7月版 東北大学職員組合賃金・人事制度検討委員会)

労働基準法(以下、労基法)に照らせば大学教授も一労働者に過ぎない(労基法第九条:この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。)。(大学教授が「労働者」であってはならない理由 iRONNA

 

過半数代表者とは

  1. 労働者過半数代表者の役割 労働基準法では、その事業場(※)に労働者の過半数を組織する労働組合がない場合に限り、その事業場の労働者を代表して、使用者が就業規則を制定しまたは変更する際に意見を述べ、各種労使協定の締結の当事者となる者とされています。 労使協定とは労働基準法において使用者に禁止されている事項について、過半数労働組合または過半数代表者と書面による協定を結ぶことによって、使用者に罰則が適用されなくします。‥(京都大学 労働者過半数代表 http://labor.kyoto-univ.jp)
  2. 労働者代表について36協定の締結に限らず、労働基準法の規定はほとんどが事業場単位を念頭に置いています。事業場というのは、会社という概念とはことなったものです。すなわち、事業場というのは本社、支店、支社、営業所など場所的なものを指します。これらはそれぞれが1つの事業場になります。当該事業場というのは、そういう場所的な単位ですからその事業場ごとに過半数代表を決めなければなりません。繰り返しますが、会社全体では過半数労働組合に該当しても、ある事業場だけをみた場合に組合員が半分に満たない場合には、その事業場では過半数代表者を別に選出しなければなりません。(社会保険労務士 田中靖啓事務所
  3. 労働者代表の役割 ① 労使協定を締結する ②安全衛生委員会の委員を推薦する ③ 就業規則の制定・変更時に意見を申し出る (労働者過半数代表選挙マニュアル 全医労 2010年1月作成 .doc)

 

過半数代表者が代表するものは何か

  1. 吉田事業場過半数代表者選挙 (京都大学職員組合ニュース2017年11月7日)) あなたの勤務条件にかかわります、棄権せず投票しましょう 過半数代表者選出の投票は、常勤職員、有期雇用教職員、時間雇用教職員、再雇用教職員、TA・RA など職種・職名を問わず京都大学に雇用されている方全てに投票権があります。
  2. 過半数の分母は社会保険労務士AF事務所)この場合、過半数の分母には労働者すべてを算定基礎とするとされます。つまり正社員だけでなく、パートタイマー等も分母に含めます。また過半数代表者として選出できない管理監督者もここの分母には含めないといけないとされます。
  3. 【労使協定】過半数代表者の分母は?中川清徳のブログ2017年1月22日)協定を結ぶときの過半数代表の分母には、原則として正社員の他にパートや契約社員も含まれます。正社員には管理監督者も含まれます。派遣社員は他社の従業員なので分母に含めません。
  4. 派遣元の過半数代表者(syaroshi.jp) Q 派遣会社を経営していますが、時間外・休日労働(三六)協定のことで質問があります。これまで、オフィスの正社員スタッフのみを対象に過半数代表者を選んでいました。しかし、派遣社員も対象に含めるべきだという意見もあります。現実には派遣社員を一堂に集めるのは困難で、どう対応すべきでしょうか。A 派遣社員も対象に含める必要あり
  5. 誰の代表か(過半数の分母の問題)(高井・岡芹法律事務所) 36協定に関する労基法の定めにおいては、「当該事業場」の「労働者の過半数を代表する者」とされていますが(労基法36条)、この「労働者」には、契約社員やパート、アルバイト、管理監督者等当該事業場の全ての労働者が含まれます(昭和46年1月18日 45基収第6206号、昭和63年3月14日基発第150号、平成11年3月31日基発第168号)。なお、派遣社員については、労基法34条の一斉休憩に関する労使協定については派遣先の、それ以外の労使協定等では派遣元の労働者となります。また、出向者については、出向先と出向元がそれぞれ当該出向者と部分的に労働契約関係を有していると考えられていますので、労使協定の内容によって、出向先の労働者である場合と出向元の労働者である場合があります。例えば36協定については、実際に時間外労働等を命じるのは出向先ですので、出向先の労働者に含まれるものと考えられ、24条協定(賃金控除協定)については、出向元が労働者に賃金を支払っている場合(こちらが多いと思われます)には出向元の労働者となるものと考えられます。

 

過半数代表者の選びかた

  1. 36協定の過半数代表者を選出する際の注意点(三瓶労務事務所)
  2. 労働者過半数代表選挙マニュアル 全医労 2010年1月作成 .doc

 

過半数代表者は適切に選ばれているか

よくあるのは、社長が、社中で一番の古株の人に、「この書類のここの部分に署名・押印してくれ。」というようなケースです。この点での監督官の調査は、会社の人事担当者に対する単なるヒアリングで終わるケースもあれば、最近は、過半数労働者である従業員本人を直接呼び出して、ヒアリングすることもあります。監督官は、当該従業員に対して、「あなたは、36協定の過半数代表者は誰だか知っていますか。」と質問します。適正に選出手続きが行われていれば、当該従業員は普通に答えることができるでしょう。しかし、そうでない場合、当該従業員は、過半数代表者?そんなの知りませんよ。と答えるでしょう。(失敗しない!労働代表者の選出方法 労働基準監督署対策相談室)

被告発人らは、非常勤講師らがこれを知ることのできない状態において、本件就業規則作成の意見を聴く「労働者の過半数を代表する者」の選出のための立候補者を出すため、各事業所の常勤教員に要請して立候補させ、その選出に反対の者のみ不信任の旨の投票をし、その不信任投票をしなかった者は賛成したものとして取り扱う、というやり方をした。(引用元:2013年4月8日 告発状 PDF 太字強調は当サイト)

この度、相模原労働基準監督署から下記のとおり是正勧告及び指導を受けました。
是正勧告書の要旨
①労働契約の締結に際し、労働者に対して労働条件を書面により交付していないこと。
②時間外労働・休日労働に関する36協定(特別条項含む)について、労働者の過半数を代表する者と締結をしていたが、代表者を選出するプロセスが法令に定める手順を踏んでいないこと。
③就業規則の変更について、労働者の過半数を代表する者の意見を聴いていたが、代表者を選出するプロセスが法令に定める手順を踏んでいないこと。
‥ (引用元:相模原労働基準監督署からの是正勧告等について 平成30年1月16日 関係者各位 学校法人北里研究所 理事長 小林弘祐) 太字強調は当サイト)
  1. 過半数労組のない事業場における過半数代表者の実態について 過半数代表者の選出方法 選挙8.3% 信任23.5% 全従業員が集まって話し合いにより選出した8.5% 職場ごとの代表者など一定の従業員が集まって話し合いにより選出した9.6% 社員会・親睦会などの代表者が自動的に過半数代表者になった11.2% 会社側が指名した28.2% その他・無回答10.7%  ( 資料出所 (独)労働政策研究・研修機構「労働条件決定システムの現状と方向性」(平成19年3月) なお、調査は、従業員規模1000人未満企業からの抽出調査によるもの(業種は不問)。引用元:様々な雇用形態にある者を含む労働者全体の意見集約のための集団的労使関係法制に関する研究会報告書 平成25年7月 労働政策研究・研修機構理事長 菅野 和夫 97 page / 121 PDF)
  2. 従業員代表の選出方法 選出の手続きも重要社長のための労働相談マニュアル)次のケースは、締結された36協定自体が、無効となります。(1) 労働者を代表する者を使用者が一方的に指名している場合 (2) 親睦会の代表者が自動的に労働者代表となっている場合 (3) 一定の役職者が自動的に労働者代表となることとされている場合 (4) 一定の範囲の役職者が互選により労働者代表を選出している場合 したがって、上記の場合などは、適法な選出手続きとはいえません。また、賛成反対が明確であることが必要で、「反対の人は、○月○日までに連絡するように・・・」というような意思表示の方法は、不適当と考えられます。
  3. 「労働者代表」の引き受け手がいない場合にはどうすればよいか 月刊「企業実務」 2012年1月号 労使協定の締結に必要だと企業が告知しても、「代表になりたい」と名乗りを上げる人が出てこないことはよくあります。このような場合に、会社が適任であるとみなした労働者を一方的に労働者代表に指定したのでは、民主的な方法で選出された労働者代表とは認められません。仮にきっかけは会社が与えたとしても、労働者が自主的に代表を選出したと認められるようにする必要があるのです。
  4. Q&A 過半数代表者のなり手がいない (キノシタ社会保険労務士事務所) 就業規則と36協定の届出を予定しています。それに伴って、過半数代表者を募ったのですが、立候補をする従業員が現れなかったので、適任者を推薦してもらいました。しかし、推薦された従業員から、「後で他の従業員に文句を言われそうで嫌だ」、「そんな大事なことの責任を負いたくない」、「自分が従業員の代表なんて...」と言われ、立て続けに断られてしまいました。過半数代表者のなり手がいないのですが、どうすれば良いでしょうか?
  5. 名ばかりの労働者代表が実は多い? HRプロ編集部 2014/10/15 もしかすると、労働者代表とは名ばかりで、「とりあえず、君やっておいてくれー!」と会社や上司から頼まれたいわゆる形式上の労働者代表ではなかろうか。少し自社に置き換えて考えてみてほしい。あなたの会社の労働者代表とは、真の労働者代表なのか?‥ 馴れ合いで何年も同じ人が形式上代表をやっていたり、会社から指名された人が代表の意味も分からず仕方なく代表になっていたりと、、、そのようなことはないだろうか。
  6. http://www.careership.co.jp/img-210230738.pdf  候補者をご確認いただき、異議のある方は、*月*日までに下記へその旨申し出るか、他の候補者を推薦又は自薦してください。*月*日までに異議申出及び他の候補者の推薦又は自薦が当社事業所に所属されている派遣スタッフ、契約社員及び社員の総数の過半数に満たない場合は、その拠点については下記一覧の正副代表候補者が、従業員過半数代表として選出されることになります。
  7. 協定作成・届出にあたり労働者の過半数代表者を選出する際、前掲した 労働基準法施行規則第6 条の 2、1 項 2 号では 、「 協定等をする者を選出することを明らかにして実施される・・・」と書かれてはいるが、誰が口火 を切りその場を整えるのか、また 代表者選出にあたっての民主的な手続 きは誰がどのようにして決めるのか、法には実務上の方法が具体的に規定されていない。したがって、現実には 届出の対応を迫られている会社の人事担当者が、適当な人(会社の意に沿った 行動をとってくれる人)を指名し過半数代表者として署名 を依頼することになってしまう。一方職場においては、協定の内容の周知はおろか誰が過半数代表者なのか、全く知らされていないこともある。このような方法では民主的に代表者を選出したことにはならないであろう。 (労使協定の過半数代表者選出にみる実務上の悩み 東京会 家村 啓三 3ページPDF 太字強調は当サイト)
  8. 労働基準法に定めのある現在の「過半数代表者」は、うまく機能していません。会社の親睦会の責任者が「過半数代表者」に横滑りしたり、会社が指名したり、「過半数代表者」が民主的に選ばれていない職場が6割以上あります。このような状態で、過半数代表者に重要な役割を担わせていいのかという問題意識があります。(労使コミュニケーションの切り札になるか「労働者代表制」の導入を考える 情報労連 2017/10/05

 

過半数代表者の選出

  1. 豊橋技術科学大学 過半数代表者実施要領
  2. 国立大学法人信州大学職員代表者等に関する規程
  3. 国立大学法人熊本大学における労働者の過半数代表者選出等に関する要項
  4. 国立大学法人茨城大学水戸事業場代表委員選出要領
  5. 2007年度吉田地区の過半数代表者 所信表明 3ページPDF
  6. 2007年11月 29 日 立命館大学労働者代表選出選挙 選挙管理委員会《立命館大学労働者代表選出選挙 選挙管理委員会 広報第 2号》 ◎立命館大学労働者代表選出 に向けて 候補者 の所信表明を紹介 します! 投票 の際の参考に! みなさんの意思を投票 することで明確 に示してください (4 page PDF)
  7. 関西圏大学非常勤講師組合2011年5月7日発行 立命館大学の労働者代表選挙 所信表明(5ページPDF)
  8. 京大職員組合による過半数代表選挙の解説 Togetter 2013年11月6日

 

過半数代表者の制度上の問題点

  1. より重大なことは、過半数代表者との合意が労働者の合意と推定される点です。この労働者代表というのは、大体、使用者の息のかかったような人がなることも多いのですが、使用者の意向を反映したような人との間で合意すれば全労働者が合意したということになってしまうのです。(太字強調は当サイト。引用元:11ページ/28 page PDF 『日本の私立大学 No.17』別冊 労働法制の改編と私立大学教職員の権利 『日本の私立大学 No.17』別冊 労働法制の改編と私立大学教職員の権利 講演・佐藤 敬二(立命館大学教授) 編集・発行 日本私大教連)
  2. 労働基準法に定めのある現在の「過半数代表者」は、うまく機能していません。会社の親睦会の責任者が「過半数代表者」に横滑りしたり、会社が指名したり、「過半数代表者」が民主的に選ばれていない職場が6割以上あります。このような状態で、過半数代表者に重要な役割を担わせていいのかという問題意識があります。(労使コミュニケーションの切り札になるか「労働者代表制」の導入を考える小畑 明 運輸労連中央書記長 情報労連 2017/10/05)
  3. 私はかつて「過半数代表と労働者代表委員会」という小論(日本労働協会雑誌356号〈1989年〉)において,現行の過半数代表制に重大な欠陥があるとして,常設の労働者代表委員会の設置を提案した。その後ほぼ四半世紀が経過したが,この間,過半数代表の機能が一層肥大化する一方,代表者の選出に関する一定の規定(労基法施行規則6条の2)を除いて,制度改革がまったくなされていないために,事態は一層深刻化している。第1の問題は,過半数代表者のあり方である。労働組合の組織率の低下とともに,過半数組合が存在しない事業場が増えているが,そこでは,個々の問題ごとに従業員の意見を代表する者という法律のタテマエとは異なり,通常は一人の労働者がすべての問題に関する代表となっている。しかし,一人の労働者が,すべての問題について「代表」としての役割を果たすことが不可能なのは明らかである。過半数代表制は,少なくとも過半数組合が存在しない場合には虚構と化しているのである。第2の問題は,この間の非正規労働者の急増(20%から35%へ)にもかかわらず,非正規労働者の声を反映させる仕組みが形成されていないことである。過半数組合が存在する場合でも,多くは正社員しか組織していない。パート就業規則を作成するのに正社員組合の意見を聴取すればよい(パート法7条にパート代表の意見聴取に関する努力義務規定はあるが)というのは明らかに奇妙な事態である。以上いずれの面からみても,過半数代表制はきわめて深刻な矛盾をかかえるに至っている。法律のタテマエと現実との乖離は,もはや許容しうる範囲を大きく越えているといわねばならない(提 言労働者代表制度の早急な法制化を■西谷 敏 PDF 太字強調は当サイト)

 

過半数代表者の仕事、問題点など

  1. 過半数代表からの意見聴取は,変更された就業規則の有効性に影響しないというのが裁判例の主流の考え方である (特集●労働者代表システムの今日的課題 労働条件の変更プロセスと労働者代表の関与 大内 伸哉神戸大学大学院教授 2004 12 page PDF)
  2. 国立研究開発法人放射線医学総合研究所苦情処理共同調整会議規程 第1条本規程は、国立井研究開発法人放射線医学総合研究所(以下「研究所」という。)と過半数代表者(職員の過半数を代表する者をいう。以下同じ。)とが職員の苦情を解決するため、研究所及び職員の代表する者をもって構成する苦情処理共同調整会議について必要な事項を定めることを目的とする。(PDF)
  3. 報告書によると、過半数代表制は、1947年に制定された労働基準法で設けられ、過半数労働組合とともに、同法第36条における労使協定締結の主体として位置付けられた。当時は労働組合運動が盛んだったため、「当時の立法担当者は過半数労働組合が労使協定締結の主体となる場合が普遍的となると予測していた」と考えられると紹介。「したがって、過半数代表者はあくまでこれを補完するものとして想定されていたといえる」と述べている。 だが、今日において、労働組合の推定組織率は低下を続けている。(過半数代表者」選出方法の厳格化・適正化を PDF
  4. 過半数代表が労使協定を締結した後に、たとえば過半数を組織する組合ができて右労使協定の「解約」を主張した場合、使用者としては締結当事者でない者に解約の権利はないとして従来通りの措置を継続できるとの反論が可能か、といった問題はいまだ未解決の状態にあります。(Q3 労使協定の法的意義や機能について教えてください。 明治大学法学部准教授 小西康之 2010年10月掲載 jil.go.jp
  5. 企業が過半数組合もしくは従業員過半数代表者との間に行わなければならない協議等の規定が増加してきた。それを大きく分けて,労働者側の同意を必要とする「労使協定・同意」,同意まではいかないがそれにいたるように話し合いを行う「協議」「意見聴取」「委員推薦・指名」「通知・意見陳述等」がある18)。従業員過半数代表(過半数組合を含む)の役割を必要とする項目は,従来,労働基準,職業安定の分野に多く設けられていたが,最近,それに加えて年金,会社再生・民事再生等の分野で急増した。その結果,2012年11月現在,110項目にのぼっている(表2参照)(労使関係論からみた従業員代表制のあり方 呉 学 殊 労働政策研究・研修機構主任研究員 15ページPDF)。
  6. 意見書の例 2004 年 4 月 1 日 国立大学法人東北大学 総長 吉 本 高 志 殿 意 見 書 2004 年 4 月 1 日付をもって意見を求められた就業規則案について、下記のとおり意見を提出します。 (PDF)
  7. 過半数代表制は、労働者保護の法的規制を行う際に、その規制を解除する法的規制の弾力化をはかる方法として登場した。(連合が考える労働者代表制-労働組合と労働者代表は役割が異なる-長谷川 裕子●連合・総合労働局長 PDF)
  8. 過半数代表者が、「法令によって設定された強行的規制を解除する機能(法定基準の解除機能)については担いうるよう、制度設計がなされて」おり、現行の法制上、「一定の役割を適切に果たすべき存在として位置付けられている」にもかかわらず、選出手続きに関する規定がなかったり、実際のアンケート調査によって「会社側が指名」など不適切な選出実態が明らかとなっている点だ (特集―労働組合法、労働委員会制度70年Business Labor Trend 2016.426「過半数代表者」選出方法の厳格化・適正化を――連合の従業員代表制をめぐる考え方 調査・解析部 PDF 太字強調は当サイト)

 

大学・研究機関における過半数代表者

  1. 東京大学本郷事業場教職員過半数代表団のページ (u-tokyo.ac.jp) 雇い止め問題について 11-12月月のたびたびの折衝と協議で最大の話題となったのは、来年3月末日以降発生する雇い止めに関わる問題についていかなる解決の方向性を示せるかという点でした。法人化後の非常勤職員の多くは1年契約の更新4回まで可という条件で雇用されてきましたので、来年3月末に最初の雇い止めが発生します。契約を4回も更新されて、その有能さと不可欠さの証明された方がいなくなることによって研究室等の現場に発生する業務遅滞などさまざまな不都合を生み出すだけでなく、この雇い止め規定は、東京大学での仕事を継続したいという非常勤職員の方の意欲に応えることのできない仕組みになっています。また、5年経過後の雇い止めは解雇権濫用に当たるとみなされるおそれのあることが、短時間検討会が招聘した弁護士から指摘されており、5年で雇い止めにするなら雇用継続への期待権は発生しないとの法人側の見解には重大な疑義があります。 したがって、5年経過後は一律に雇い止めで事足れりとするのではなく、合理的で納得性の高い雇用管理の仕組みを非常勤職員にも導入して有能な人材を確保できるようにするとともに、他方では、契約条件を明瞭にして、非常勤職員の雇用に恣意性が及ばないようにする工夫こそが求められているのだと考えられます。 今期代表団は当初より、雇い止め問題を最重点課題の一つとして、年度内の遅くない時期に解決の方向性を固めるべきであると主張してきました。この点は短時間検討会でも多面的に調査検討され、大きな論争点となりましたが、その第一次改善プランでは、解決の方向性を明示できず両論併記となったことがらです。 検討会が解決の方向性を打ち出せなかったことがらなので、雇い止め問題については法人側と代表団との協議を経て解決策を模索し、3月末以降の問題発生を未然に防止できる準備をすべきであったと代表団としては考えていますが、この点では法人側との間に認識のずれと行き違いがありました。 代表団が雇い止めの撤廃のために一歩足を踏み出すべきだと主張し続けてきたのに対して、法人側は、現行の雇い止め規定を維持したうえで、雇い止めにともなって発生する様々な不利益・不都合を回避するための方策を打ち出すことを当面の課題と考えたのです。
  2. 国立大学法人熊本大学における労働者の過半数代表者選出等に関する要項
  3. 労働者の過半数代表者について 佐賀大学医学部 過半数代表者選出要項(.docファイル)

 

労使関係

  1. 独立行政法人化・国立大学法人化による変化について(行政改革推進本部専門調査会小委員会のヒアリングより抜粋) 労使使関係に関する変化 労使関係は概ね良好(群馬大学)労働組合が過半数組合でないため、各事業場に過半数代表者を置いている。過半数代表者は、各事業所の職域から推薦等により選出された職域代表者の中から互選又は選挙により選出され、事業所ごとに公示された後に正式に過半数代表者となっている。大学側は、過半数代表者と年に数回懇談会を設けており、代表者5名と大学側3名~5名で労働条件に関する話し合いや要望を聞くなどし、労使関係は概ね良好である(9ページPDF)

 

36協定とは

  1. 「知らなかった」では済まされない!36協定の基礎知識 (働き方改革研究所 2015.03.02)
  2. 36協定(さぶろく協定)とは ~36協定で締結した時間を超えた場合はどうすればよいか ~ (bengo4.com)
  3. 労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)(抄)第三十六条  使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。  2 厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。  3 第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。   4 行政官庁は、第二項の基準に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。(36kyoutei_teiketsutoujisha.pdf 太字強調は当サイト)

衛生委員会について

  1. 質問 衛生委員会について教えて下さい。答  事業者は常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、衛生に関することを調査審議し、事業者に意見を述べるため、衛生委員会を設置しなければなりません。 衛生委員会の調査審議事項は、 1. 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること 2. 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること 3. 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に関すること 4. 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項 になります。 衛生委員会のメンバーは事業者が指名することになりますが、その要件は、 A. 総括安全衛生管理者またはそれ以外の者で、当該事業場において事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者 1名(議長) B. 衛生管理者 1名以上 C. 産業医 1名以上 D. 当該事業場の労働者で衛生に関し経験を有する者 1名以上 になります。  また、事業場の労働者で作業環境測定を実施している作業環境測定士をメンバーとして指名することもできます。ただし、A.以外のメンバーの半数については、当該事業場の過半数労働組合(無い場合には労働者の過半数代表)の推薦に基づいて指名しなければなりません。  衛生委員会は毎月1回以上開催するようにしなければなりません。また、議事録は3年間保存する必要があります。(厚生労働省

参考(過半数代表者)

  1. 様々な雇用形態にある者を含む労働者全体の意見集約のための集団的労使関係法制に関する研究会報告書 平成25年7月 労働政策研究・研修機構理事長 菅野 和夫  121 page PDF) 報告書公開のプレスリリース平成25年7月30日(6ページPDF 論点が整理されている)
  2. 小畑 明 著 『労働者代表制の仕組みとねらい Q&A 職場を変える切り札はこれだ! 』 eidellエイデル研究所 わが国で初めて刊行される労働者代表制の解説書。労働者代表制とは労働者の代表を選び、その代表者が経営者と協議をすること制度。労働組合のない職場でも、従業員が職場を変えることができる知恵とノウハウを紹介している。

 

参考(労働組合)

  1. 労組加入確認見直し 「誤解招かないため」 /北海道 (毎日新聞 2017年12月6日 地方版) 道教委が異動対象となっている教職員が労働組合に入っているかどうかを学校長に申告させていたことが、5日の道議会一般質問への答弁で分かった。 ‥ 道高校教職員組合連合会は「思想信条に関する情報収集は許されず、組合活動への参加を萎縮させる不当労働行為にあたる」などと声明を出した。

任期付き大学教員の任期について

大学の教員の多くは任期付きであり、どれだけ研究業績があろうが任期が終了するとその大学を去らざるを得ません。任期制の導入には、本来は研究者の流動性を高めるというポジティブな意義が想定されていたわけですが、現実としては、求職者の数に比べて大学におけるポジションの数が極めて少ないため、次のポジションを見つけることは非常に困難になっています。そのため、多くの人にとって、研究者がもはや職業として成り立たない状況です。

任期付き大学教員の雇用に関する話題をいくつか紹介します。

注意:雇止めや無期転換に関しては訴訟がいくつも起きている現状ですので、この記事執筆者(当ウェブサイト管理人)自身、法律の解釈等に関して何が正しいのかを把握しきれていません。また、法の改正も頻繁であり、記事の内容が古くなっている可能性もあります。ここで紹介した内容は鵜呑みにせずに、あくまで参考に留めてください。

雇用継続への合理的な期待

有期雇用については期限が来たら原則として契約は終了しますが、更新が繰り返されるなど、労働者に更新に対する合理的期待が認められる場合には期間満了による雇止めは無効とされます。本件の原告は大学の助教で3年間の期間雇用とされていましたが、過去2回更新されており、また、今回、助教で再任を希望した33人のうち、原告を含む3名が雇止めされたが、33名中原告を含む16名が基準を満たしていなかったことなども考えると、継続的な雇用が前提とされていたとして、更新に対する合理的期待はあったものとされました。(大学の任期付助教に対する能力不足を理由とする雇止めの有効性が争われた事案  労働判例1105号 東京地裁平成26年7月29日判決 弁護士江木大輔のブログ 2015年03月16日
)

東京医科歯科大学事件 助教に対する研究業績不足を理由とする雇止めの効力が争われた事案 事件番号 平成25年(ワ)11039号 労働判例1105号49頁 労働経済判例速報2227号28頁 本件大学の大学院医歯学総合研究科(歯学系)においては平成25年3月に任期が終了する3年任期の助教で再任を希望した33名のうち30名が再任されたことからすれば、任期のある助教も継続した雇用が前提とされているものと認められる。そして、(中略)X自身、過去2回の再任を経ていることからすれば、Xには、更新の合理的期待が認められる。 (zenkiren.com)

Xは、Y法人が設置する大学の助教に3年の期間を定めて採用され、これまで2回契約を更新された。 本件大学においては、「教員の任期に関する規則」が定められており、再任の可否を決定するに際して、研究業績等の事項について業績審査を行うものとされ、このうち研究業績評価については、インパクトファクター2.0以上の雑誌に2報以上発表する(以下「基準1」という。)ほか、その他の論文を2報以上発表する(以下「基準2」という。)こととしていた。なお、特別な事情で条件を満たすことができなかった場合は、本人及び本人が所属する分野の責任者(以下「分野長」という。)の理由書を提出することを再任の基準としていた。(平成25(ワ)11039号 地位確認等請求事件 東京地裁 平成26年7月29日判決 福島県労働委員会事務局 労働判例の紹介

龍谷大学助手雇い止め事件 係属機関・判決日 京都地方裁判所 平成23年12月22日 訴訟内容 3年の期限付きで龍谷大学(京都市)で経済学部助手を務めていた原告が、1回目の契約更新時に雇い止めを通告されたことに対し、少なくとも1回は更新されるはずであったと主張し、同大学を相手取り、労働契約上の地位確認及び雇い止め以降の未払い賃金を請求した事件。‥ 近年、多くの大学で「高学歴ワーキングプア」と呼ばれる任期付や非常勤の採用が増加し、研究者の雇い止めによる退職も増加しているという実態があるが、そのほとんどが次の再就職を案じて雇い止めを容認しているという。(机・加藤 社会保険労務士法人)

 

任期付き大学教員に関して

Q:有期契約で大学教員をしています。任期5年で1回更新可能、という契約です。現在1回更新を済ませ、2期目の3年目になります。大学でのポジションはキャリア・センターの専任教員(教授職)ですが、キャリア指導にあたるだけではなく、他の専門科目、一般科目、大学院学生の指導も担当しています。‥ 後2年半で私の契約は、打ち切られ、雇い止めを受けることとなるのでしょうか?

A:「任期5年で更新1回」という労働条件に合意したうえでの就労ですので、難しい部分はありますが、‥ まず雇止めの問題に、評価の低い教員との比較は全く関係がありません。他の教員の評価が低いから、それよりも評価の高い有期労働者を雇止めしてはいけない、という根拠はないからです。‥ 厚生労働省の重要通達(昭27.2.2基収503号)では、以下のように定められております。「形式的には契約期間の定めがあっても、この契約を反復継続し、相当長期間にわたって労働契約が継続しており、実質的には期間の定めがない労働契約と認められる場合は、契約期間の満了によって労働契約を終了させる場合であっても、解雇と同様に取り扱われ、法20条(労働基準法20条)の解雇の予告を必要とする。」つまり期間満了であっても、契約が反復継続し相当長期間にわたって労働契約が継続していれば、期間満了による労働契約の終了をする場合でも、それは解雇の扱いである、ということを定めています。‥ (justanswer.jp)

上の質問者のように、5年の任期付きの教員が更新して5年を越えた場合に、無期転換できるのか?という疑問が湧きます。安西著『雇用法改正』(日本経済新聞出版社 2013/2/16)の53~55ページに、③大学の講師等5年任期制等(特殊契約)の再契約は というセクションがあり、そこでは「大学の教員等の任期に関する法律」の解説とともに、結論として、

 そして、「教育研究の必要に応じて職ごとに異なる任期とすることが可能であること。」とされ、職とは、「教授、助教授、講師、助手」をいうとされています。

これらの職は学校教育上のものであり、労働者の雇用上の権利といったものではないため、5年を超えて再任用されたからといって、任期を定めた任用は、職ごとに行うものとされているので無期転換できるものでありません。

したがって、単純に労契法第18条第1項にいう、「2以上の有期契約を通算した期間」に該当することにはならず、任期及び再任用ごとに別契約であり、通算に該当しないと解されます。これは、同じような任期制が適用される研究機関や同種のほかのケースについても同様と解してよいと思われます。(『雇用法改正』日本経済新聞出版社 2013年 54~55ページ)

と記述されています。

 

文科省による説明

オ.再任の取扱い等

大学の判断により、任期満了者の再任を妨げない運用も、逆に再任を認めない運用も可能とする。
任期制を導入するに当たっては、再任を妨げないものであるか否か(再任を妨げない場合には、必要に応じて再任後の任期の期間)をあらかじめ決定しておくこととするのが適切である。

その際、任期制は、教員の流動性を高めることにより、教育研究の活性化を図ることを目的とするものであることから、他大学や研究機関、企業等との交流をできるだけ促す方向で、制度が運用されることが望ましい。
また、再任を妨げない場合、個々の教員について再任の可否を判断するに当たっては、再任とは再びその職に採用するということであることから、通常の採用手続に基づき、選考を行うことになる(国公立大学の場合、教員の選考は教授会の議に基づき学長が行う。)ので、採用時にこの旨本人に明示しておくことが求められる。再任審査の時期等については、当該教員の円滑な異動という観点にも十分配慮した上で定める必要がある。

(引用元:大学教員の任期制 文部科学省)

 

関連する法律等

大学の教員等の任期に関する法律 (平成九年法律第八十二号)施行日: 平成二十八年四月一日 最終更新: 平成二十七年五月二十七日公布(平成二十七年法律第二十七号)改正

第四条 任命権者は、前条第一項の教員の任期に関する規則が定められている大学について、教育公務員特例法第十条第一項の規定に基づきその教員を任用する場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、任期を定めることができる。
 先端的、学際的又は総合的な教育研究であることその他の当該教育研究組織で行われる教育研究の分野又は方法の特性に鑑み、多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織の職に就けるとき。
助教の職に就けるとき。
 大学が定め又は参画する特定の計画に基づき期間を定めて教育研究を行う職に就けるとき。

2 任命権者は、前項の規定により任期を定めて教員を任用する場合には、当該任用される者の同意を得なければならない。
(国立大学、公立大学法人の設置する大学又は私立大学の教員の任期)

第五条 国立大学法人、公立大学法人又は学校法人は、当該国立大学法人、公立大学法人又は学校法人の設置する大学の教員について、前条第一項各号のいずれかに該当するときは、労働契約において任期を定めることができる
 国立大学法人、公立大学法人又は学校法人は、前項の規定により教員との労働契約において任期を定めようとするときは、あらかじめ、当該大学に係る教員の任期に関する規則を定めておかなければならない。
(出典:大学の教員等の任期に関する法律 e-gov.go.jp 太字強調は当サイト)
労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)施行日: 平成二十八年四月一日 最終更新: 平成二十七年五月二十九日公布(平成二十七年法律第三十一号)改正
(契約期間等)
第十四条 労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、三年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、五年)を超える期間について締結してはならない。
 専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
二 満六十歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)
 
(時間外及び休日の労働)
第三十六条 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。
○2 厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。
○3 第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者は、当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。
○4 行政官庁は、第二項の基準に関し、第一項の協定をする使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対し、必要な助言及び指導を行うことができる。
 
(作成の手続) 
第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
○2 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。(出典:労働基準法 e-gov.go.jp 太字強調は当サイト)
 
 
労働基準法第十四条第一項第一号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(平成十五年厚生労働省告示第三百五十六号) 労働基準法第十四条第一項第一号に規定する専門的知識等であって高度のものは、次の各号のいずれかに該当する者が有する専門的な知識、技術又は経験とする。
一 博士の学位(外国において授与されたこれに該当する学位を含む。)を有する者
二 次に掲げるいずれかの資格を有する者  イ 公認会計士 ロ 医師 ハ 歯科医師 ニ 獣医師 ホ 弁護士 ヘ 一級建築士 ト 税理士 チ 薬剤師 リ 社会保険労務士 ヌ 不動産鑑定士 ル 技術士 ヲ 弁理士
三  ‥ (出典:mhlw.go.jp 0000036407.pdf 太字強調は当サイト)
 
 
  1. 「労働基準法第14条第1号及び第2号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準を定める件の一部を改正する告示」及び「労働基準法施行規則第24条の2の2第2項第6号の規定に基づき厚生労働大臣の指定する業務を定める件の一部を改正する告示」について 厚生労働省発表 平成14年2月13日

労働契約法(平成十九年法律第百二十八号)

(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

(就業規則の変更に係る手続)
第十一条 就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第八十九条及び第九十条の定めるところによる。

(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。
 当該使用者との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と当該使用者との間で締結されたその次の有期労働契約の契約期間の初日との間にこれらの契約期間のいずれにも含まれない期間(これらの契約期間が連続すると認められるものとして厚生労働省令で定める基準に該当する場合の当該いずれにも含まれない期間を除く。以下この項において「空白期間」という。)があり、当該空白期間が六月(当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間。以下この項において同じ。)が一年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に二分の一を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間)以上であるときは、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は、通算契約期間に算入しない。

(有期労働契約の更新等)
第十九条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

(出典:労働契約法 e-gov.go.jp 太字強調は当サイト)

  1. 労働契約法改正のあらまし 厚生労働省
  2. 改正労働契約法を踏まえた労働契約に当たっての留意点について 労働契約法の一部を改正する法律(平成24年法律第56号)が平成24年8月10日に公布され 「無期労働契約への転換」、 「『雇止め法理』の法定化 」、「不合理な労働条件の禁止」といった有期労働契約に関するルールが定められ、平成25年4月1日から全面施行される。任期付教員を含め多くの有期労働契約を結ぶ大学について、本改正を踏まえて、紛争を極力未然に防止し、円滑な運用を行うためには、以下のことに留意する必要がある。‥ (文科省 /2013/05/30/1335482_3.pdf
  3. 2012.12.19版 「労働契約法改正への対応と留意点」セミナーに寄せられた質問事項とそれに対する参考コメント(NPO 学校経理研究 PDF)

 

任期付き教員の雇用に関する大学の規定

大学の規定の例をいくつか紹介します。

静岡県公立大学法人教員の任期等に関する規程 平成19年4月1日規程第1号改正平成20年4月1日、平成20年4月2日、平成21年10月1日平成24年4月1日、平成26年4月1日

(目的)

第1条この規程は、大学の教員等の任期に関する法律(平成9年法律第82号。以下「法」という。)第5条第2項及び労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「労基法」という。)第14条第1項の規定に基づき、静岡県公立大学法人(以下「法人」という。)において採用、昇任又は配置換(教育研究組織間を異動する場合に限る。)により任用する教員の任期について必要な事項を定めるものとする。(任期を定める組織等)

第2条 任期を定めて任用する教員の教育研究組織等は、別表のとおりとする。(同意)

第3条 任用に際しては、「同意書(様式第1号)」により任用される者の同意を得なければならない。

(出典:静岡県公立大学法人教員の任期等に関する規程 PDF 太字強調は当サイト)

  1. 国立大学法人熊本大学職員の任期に関する規則
  2. 広島大学のテニュア・トラック制に関する規則
  3. 国立大学法人京都工芸繊維大学教員の任期に関する規則
  4. 麻布大学特任教員に関する規則 平成20年5月29日制定

 

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参考

  1. 理研の無期雇用枠拡大は日本のアカデミアを救うのか?(21世紀の人生戦略 更新日:2017年8月15日)
  2. 労働契約の終了 (山川靖樹の社労士予備校 http://yamakawa-sr.net) 一定の期間又は一定の事業の完了に必要な期間までを契約期間とする労働契約は、他に特段の事情がない限り、契約期間の満了とともに終了し、解雇の問題は生じない。  形式的には契約期間の定めがあっても、この契約を反復更新し、相当長期間にわたって労働契約が継続されており、実質的には期間の定めがない労働契約と認められる場合は、契約期間の満了によって労働契約を終了させる場合であっても、解雇と同様に取り扱われ、法20条の解雇の予告を必要とする(昭27.2.2基収503号)。
  3. 労働者が自由な意志に基づいて、その契約内容に合意していたのであれば、特に問題はなく、契約の有効性を問われることはないでしょう。‥ 従って、使用者が、有期労働契約に更新回数の上限を設定する場合には、雇用継続に関する期待が生じないように、少なくとも当初の契約締結段階において労働者に更新回数の上限について十分に説明を行い、合意を得ておくことや、その後の更新時における手続きについても形骸化しないよう、これを厳格に行なっていくことなどが、後日、雇止めをめぐって紛争が生じた際に、その正当性を主張・立証する上で重要となるといえるでしょう。(3 page PDF jrs.ne.jp)
  4. アルカディア学報(教育学術新聞掲載コラム)No.547 有期労働契約者への人事政策 研究者・URAの特例の活用 上杉 道世(慶應義塾大学信濃町キャンパス事務長) 有期雇用契約者への人事政策は今後の大学経営の基本的課題の一つ ‥ 平成24年8月に改正労働契約法が公布され、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換することとなり、平成25年4月1日から施行された。 ‥  大学等の研究者の間から、有期労働契約の研究者等について、事実上5年が雇用の限度となることは研究の遂行に支障を生じるとの指摘があり、平成25年12月に議員立法により法改正が行なわれ、平成26年4月から施行されることとなった。 これは、「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化および研究開発等の効率的推進等に関する法律」の一部改正の中に、労働契約法の特例を盛り込むもので、無期転換のための通算契約期間が5年を越えることが必要とされていることについて、10年を超えることが必要であるとの特例を定めた。その対象となるのは、「科学技術に関する研究者または技術者」および「研究開発等に係る企画立案の業務(専門的な知識および能力を必要とするものに限る)に従事する者」である。後者について法文上は「…企画立案、資金の確保、知的財産の取得および活用、成果の普及、実用化に係る運営および管理にかかる業務」が列挙されており、URAのことである。 また「大学の教員の任期に関する法律」も合わせて一部改正され、大学の教員等が無期転換するために同じく特例を定め、10年を超えることが必要であるとされた。これにより大学の教員は常勤・非常勤にかかわらず特例の対象となる。 また、大学に在学している間に有期労働契約を大学と締結した者については、当該大学に在学している期間は、通算契約期間に参入しないこととした。TA、RAの特例である。
  5. 2014年全国カトリック学校校長・教頭合同研修会レジュメ労働関係法改正への対応~私学の人事労務施策~日時:2014年6月27日(金)10時30分より於:アルカディア市ヶ谷横浜第一社会保険労務士事務所代表社会保険労務士田中崇司(8ページPDF)
  6. 特集●研究者のキャリアと処遇 若手の教育・研究者をめぐる労働法上の問題 浜村 彰 法政大学教授 2015年 11ページPDF
  7. 先ほどの労基法の問題については大変重要な点を含んでいると思います。そして、先ほどの労働省の見解がそのままだとすれば、これは日本社会全体が相当ひっくり返るぐらいのことがこの先起こっても不思議ではないというぐらいの問題 https://gurits.exblog.jp/3488477/
  8. 一方、新規に雇用契約を結ぶ際に「更新上限は○回まで」と書かれている書類に、労働者が納得してサインした場合には、無期転換ルールが適用されない。菅弁護士は「入り口規制の問題は残っている」と指摘し、契約書に納得できない場合はサインしないようアドバイスしている。(2018年問題/3 「無期転換」目前 雇い止めも 毎日新聞 2018年2月26日 東京朝刊)
  9. 任期付き大学教員の雇い止めの問題 弁護士ドットコム
  10. 有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について (12ページPDF mhlw.go.jp)
  11. 任期付任用公務員の更新打切りに対する救済方法――近年の裁判例を踏まえた「出口規制」に係る法理のあり方の検討――川 田 鞜之 筑波ロー・ジャーナル3号(2008:3)99(62ページPDF)
  12. 大学等及び研究開発法人の研究者、教員等に対する労働契約法の特例について 労働契約法の改正により、有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図ることを目的とした「無期転換ルール」が平成25年4月から導入されていますが、研究開発能力の強化及び教育研究の活性化等の観点から「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」(平成25年法律第99 号)が平成25年12 月13 日に公布され、大学等及び研究開発法人の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの期間(原則)5年を10年とする特例が設けられました(平成26年4月1日施行)http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000043387.pdf
  13. 研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律の公布について(通知)25文科科第399号平成25年12月13日 このたび、第185回国会(臨時会)において成立した「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」(平成25年法律第99号。以下「改正法」という。)が、平成25年12月13日に公布され、労働契約法の特例、労働契約法の特例に関する経過措置及び研究開発法人の出資等の業務に係る規定については平成26年4月1日から、その他の規定については公布の日から、それぞれ施行されることとなりました。http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1344854.htm

英語で授業を行うときに使える英語表現

英語で授業をしなければならないときに使えそうな英語表現のまとめサイトのまとめ。

Classroom English: Vocabulary & Expressions for Students

参考

  1. Classroom English(教室英語集)-授業を英語で行うための表現集-PDF 20 pages) 愛知県総合教育センター「高等学校教科指導の充実に関する研究会(英語)」が平成14年3月に作成した「More English in Class-英語で授業を行うための表現集-」が基
  2. 教 室 英 語 表 現 集 (25 page PDF) 平成 20 年度小学校外国語活動に係る担当教員研修資料
  3. 教室英語 - Classroom English Useful Words ( 便利な表現)Part 2 小学校で英語を教えるときに、すべて英語でしなくても大丈夫ですけど、できるだけで話しましょう! 先生はいい見本になって、自信いっぱいでしゃべると子供はもっと頑張りたくなるでしょう!この理由でこの教室英語のページと教室英語のCDを作りました。
  4. Classroom English 教室で使う英語 (PDF 2 pages) 日本語教師アシスタントとして海外に行く前に、どんな言葉を覚えておけばいいでしょう?簡単な日常会話はもちろ
    んですが、授業で使える表現も覚えておくと便利です。
    ~

いまどきはYOUTUBEなどで大学の授業が多数公開されているので、それらも参考になります。

  1. スタンフォード大学 stanfordonline (YouTube)【物理学】 Fundamentals of Physics with Ramamurti Shankar, Classical Mechanics with Leonard Susskind, 【生命科学】 Human Behavioral Biology (Robert Sapolsky), 【人工知能】Convolutional Neural Networks for Visual Recognition,
  2. マサチューセッツ工科大学 MIT OpenCourseWare (YouTube) 【物理学】Walter Lewin:Wheel momentum, 【生命科学】Fundamentals of Biology:DNA Replication (Eric Lander),
  3. イェール大学 YaleCourses (YouTube)

MARCHって括るのいい加減やめません?

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」という本が評判です。こどもの国語教育の危機を憂える内容です。ネット上のレビューでは、この本を絶賛する声ばかりです。

しかし、自分はこの本の帯の「人工知能はすでにMARCH合格レベル」という偏差値偏重意識が結晶化したような文言に驚きを禁じえませんでした。

MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学をまとめた呼称)は、もともと受験産業関係者が作り出した言葉だそうです。

この呼び名の発案者は、旺文社で「蛍雪時代」など受験情報誌を作っていた代田恭之さんである。1960年代のことだ。 ‥ 講演で聴衆が眠くならないよう、インパクトがある名称を考えたかったのです。受験生に大学を身近に感じてもらうよう、そして、つらい受験勉強を和ませてあげようという思いからです。いくつかの大学を同じような難易度、似たような歴史と伝統、そして近隣地域で組み合わせて、グループ分けしました。 ‥ MARCHは一部の受験関係者の間で使われていたが、それほど広まったわけではない。1980年代まで新聞、雑誌に登場することはほとんどなかった。 ‥ 高校や予備校の進路指導でMARCHという言葉がぼちぼち使われはじめたが、十分に行き渡っていなかった。2000年代になってようやく、メディアでみられるようになった。‥ 「早慶MARCH関関同立 伸びている私立高校(「週刊朝日」2004年4月30日号) (小林哲夫 著 『早慶MARCH 大学ブランド大激変』 朝日新聞出版)

偏差値が似た大学をひとくくりにしたこの呼び方が、MARCHに限らずいくつか考案されており、今の日本で定着してしまっています。考案された当初は、受験生にとって良かれと思ってのことだったのかもしれません。しかし、受け手側の問題として、このように偏差値で複数の大学をひとくくりにして見ることが当たり前になってしまい、日本人の意識が偏差値漬けになってしまいました。公立高校のウェブサイトでも頻繁にMARCHという言葉を見かけますが、公教育の場で使ってよい言葉ではないでしょう。

「東ロボくん」は、東大には合格できませんが、MARCHレベルの有名私大には合格できる偏差値に達しています。(新井 紀子『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』東洋経済新報社 2018/2/2)

予備校のパンフレットならいざ知らず、あるべき教育を論じた本の中で、偏差値による大学の格付けを読者の意識に刷り込むような言葉遣いがなされていることは、看過できません。

独自の教育理念を持って教育にあたっている私立大学をいっしょくたにしてMARCHと呼ぶだけでも大学関係者に対して失礼極まりないし、「MARCHレベル」という表現によって日本に蔓延する偏差値信仰の悪弊を増長させるのはおかしいのではないでしょうか?

この本は、東洋経済新報社という大手出版社から発行されていることを考えると、「MARCHレベル」という言葉は著者だけでなく、編集者や校正など多くの人を素通りしたのでしょう。オトナがみな麻痺しているというのは、重大な問題です。

各大学にとっては、このくくられ方が悩みにもなっている。建学の精神や教育ミッションも違うし、グローバル化に向けた大学の方針にも個性がある。… この5大学の中には、「ほかの大学と一緒にしないでほしい。ウチにはウチの特色があるのに……」とこぼす教職員も少なくない。(大学受験「とりあえずMARCH」の落とし穴 大学進学アドバイザー 倉部史記 YOMIURI ONLINE 2017年12月18日 09時50分)

急きょ授業内容を変更して、「立教大学を考える」というテーマで二回の講義をすることにしました。 ‥‥ いつ創設されたかから始めて、どうやってキリスト教育を続けてきたか、そのなかでどうやって旧制大学になったか、戦争中はどういうことをやっていたのか、戦後どんな苦しい目に合い、そこから立ち直ったのかまで話しました。‥‥  感想は実に多種多様でした。「どうして立教が青山学院大や明治学院大と違うかということについて、今日は誰も全く知らないような話を聞きました。‥‥ 」「‥‥ 実はこれまで、この大学が嫌いで嫌いでたまりませんでした。しかし、卒業間際に先生の話を聞いてすごく好きになりました。」(寺崎昌男 著『大学改革 その先を読む』 東信堂

 

教育に関する本がベストセラーになり、偏差値で大学を一括りにすることが当たり前という風潮を子供に刷り込んでいる現状は、子供たちにとって良い影響を与えません。

GMARCHレベルの大学に入っても、大学ごとでかなり違いがあり、それぞれの特徴をしっかりと理解した上で試験を受けて、合格して入学しないと「こんなはずではなかった!」ということになりかねないということのようです。… でも、それって、「とりあえずMARCH」の人ばかりの落とし穴ではない気がします。… 例えば東大生。彼らはそもそも大学を選ぶ選択肢が少ない受験生の代表だと思います。(「大学受験「とりあえずMARCH」の落とし穴」ってどういうことでしょう? 読売新聞の記事より 妙典校・ブログ 武田塾 2017年12月30日)

 

偏差値偏重の風潮を助長する東ロボくんプロジェクト

東ロボ報道の中にも、日本を覆う偏差値偏重が見てとれます。公立高校は進学実績をアピールするために、その気がない高校生にも無理やり国公立大学を受験させようとする圧力がありますが、新聞記事の中で「私大なら合格できる」というのも、国公立大学が私立大学よりもレベルが上という、おかしな認識を当然のこととした言葉遣いです。

大手予備校の代々木ゼミナールの判定では「東大の合格は難しいが、私立大学には合格できる水準」だった。( 人工知能が東大模試挑戦 「私大合格の水準」 国立情報学研など 日本経済新聞 2013/11/23付)

東ロボのプロジェクトリーダーの言葉「うちの子はこんな大学に合格できるんですよ』って近所の人に自慢してみたい心境です。」(NHK)(当サイト記事つれづれすくらっぷ)にしても、どのレベルの大学には入れる知能という言い方がそもそもナンセンスです。大学に合格する難しさと入試問題自体の難しさが必ず一致するとは限らないのですから。報道機関もこのような無責任な発言を垂れ流しており、日本全体が麻痺していると思います。

 

脱偏差値へ

2020年に入試改革がありますが、入試をいじる正当性として、1点差で合否が決まる今の入試制度がおかしいという主張があります。しかし、自分は1点差で合否が決まるのは、公正さと言う点ではむしろいいことだと考えます。高校の先生の主観が入る内申書などを使うよりも、ずっとましです。それよりも、問題なのは、偏差値が1違うだけでも大学の優劣、ひいては人間の優劣まで判断してしまう人たちが少なからず存在することです。そして、このような偏差値による輪切りを助長しているのが、「MARCHレベル」などといった言葉遣いなのです。学校教育の問題点を指摘した本でこのような言葉が無神経に使われ、誰もがその異常さをスルーしているのはまったくもって不思議です。もはやほとんどの日本人にとって、当たり前すぎて、問題と感じられないのでしょうか?人々の意識から、このような感覚を払拭しないかぎり、入試の形態を変えたところで、教育改革は成功しないでしょう。

 

参考

  1. 【AI】なぜ人工知能は東大に合格できないのか?「東ロボくん」プロジェクトで分かったAIの弱点 (5ch.net)
  2. 「ロボットは東大に入れるか」成果報告会 in 2016(11/14)レポートnix in desertis 2016年11月28日
  3. 東ロボくん 模試でMARCH、関関同立「圏内」 (会員限定有料記事 毎日新聞2016年11月14日 21時46分 最終更新 11月14日 23時40分) 東京大合格を目指した人工知能(AI)「東ロボくん」開発チームは14日、大学入試センター試験の模試で、5教科8科目の合計が全国平均を上回る525点だったと発表した。東大の合格ラインには届かなかったものの、関東の「MARCH」(明治、青山学院、立教、中央、法政)、関西の「関関同立」(関西、関西学院、同志社、立命館)と呼ばれる難関私立大への合格可能性が初めて、「合格圏内」とされる80%を超えた。
  4. 小林哲夫 著 『早慶MARCH 大学ブランド大激変』 朝日新聞出版 2016年7月13日 ISBN-13: 978-4022736734
  5. 新卒採用では、なぜ学歴偏重がなくならないのか?採用担当の立場で考える (あいむあらいぶ 2016-01-28) 残念ながら、新卒採用における学歴フィルターは、この先十数年も変わらず残り続けると予測します。個人的な思いとしては、良いものでもないので、一刻も早くなくなってほしい気持ちはあります。しかし、簡単にこの仕組は解体しないでしょう。残念ながら入試で失敗して、下位ランクの大学に入ってしまった。それは、無策でいると3年後の就職活動においては、そのまま苦戦することを意味します。

更新 20180228 本文中から個人名を削除 20180223 口調をですます調に変更

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WPIサイエンスシンポジウム聴講レポート

2018年2月11日(日)に未来科学館で世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)シンポジウムが開催され、ニコニコ生放送でもインターネット中継されました(開演10:30 終了17:42 来場者数:15451人 コメント数5489 nicovideo.jp)。科学研究の世界のトップランナーたちが熱いトークを繰り広げて、とても面白いシンポジウムでした。以下、自分が聞いたセッションについてのレポート。

Part1:宇宙×地球

Part1:宇宙×地球のセッションでは、吉田直紀氏(東京大学 カブリ数物連携宇宙機構 主任研究者)が星(太陽のような恒星)が、宇宙が始まってすぐまだ何もない状態からどうやって形成されるのかを語り、コンピュータシミュレーションにより星の誕生する様子をビデオで紹介しました。難しい方程式に基づいた数値計算により、宇宙で初めて星が誕生する様子をビビッドに示して見せたのには驚きを覚えました。

続いて廣瀬敬氏(東京工業大学 地球生命研究所 所長)が地球の内部構造をどうやって明らかにしてきたかについて語りました。地球の構造を調べたくても、掘削しサンプルを取って来られるのは地表近くのみ。6400mもの深い地球の中心の状態を調べるためには、そのような高気圧、高温の状態を実験室で再現しているのだそうです。最も硬い物質であるダイアモンドを2つ押し合わせて地球の中心と同じ高圧状態を作り出し、さらにレーザーをあてることで地球内部の温度を実現。調べたい物質をこのような条件下において、その挙動を調べることにより、地球の中心部分の謎に迫ろうというわけです。地球の内部のマントル層は固体で、そのさらに内部のコアと呼ばれる領域は鉄が溶けた液体状態ですが、純粋に鉄だけだとすると観測される他の実験結果と合わないため、何か軽い元素との混合物のはずと理論的に予想されていました。金属より軽い元素として、水素、炭素、硫黄などの候補がありますが研究者によって意見が割れていて定説がありませんでした。廣瀬氏は、地球内部の圧力と温度で、マントル層が固体の状態に保たれ、なおかつコアが液体でいられるような条件を満たすためには、コアの成分としては鉄と水素でしか有り得ないという結論を得ました。実験事実に基づいて、地球の姿を正しく理解するための仮説を立て、さらに実験によりそれを検証するという科学研究の進め方がわかりやすく説明されていました。

誰しも子供のときは夜空を見上げて、多数の星を見ながら宇宙ってどうなっているんだろう?と疑問を抱くわけですが、吉田氏いわく、素人が抱く素朴な疑問が、実は現在の宇宙物理学の最先端のテーマそのものなんだそうです。このセッションの企画の意図は、研究者は一体何を考えているのかを知るということだったと思いますが、専門の研究者も実は疑問そのものは素朴なものなのだということを聞いて、へぇーっ、そうなんだ、と思いました。

廣瀬氏は、実験は1年のほとんどはうまくいかなくてがっかりするようなことの連続だけれども、1年に数日、エキサイティングな実験結果を得られることがあり、そのワクワク感が研究の原動力だと語っていました。実験は上手くいかないことがほとんどというのは、実験科学であればどんな分野でも共通するようです。

 

Part2:動物×植物

Part2:動物×植物のセッションでは、東山哲也氏(名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 副拠点長)が植物の受精の研究について語りました。めしべの内部、奥深くで起きる受精現象は、両生類の受精などとは異なり、直接観察することが非常に難しいわけです。それをいかにして可視化することに成功したかという話から始まりました。地球上にはおよそ25万種の植物があるそうですが、卵細胞が存在する部分がめしべの組織の内部になくて外側にあるような風変わりな種であるトレニア(Torenia fournieri)を実験材料に選んだことが実験成功の鍵となったそうです。多数の論文を読んでそのような種が存在することを知ったのだとか。また、シャーレの中で受精させて観察しようという試みにおいては、花粉から伸びてきた花粉管が卵細胞と合体させることがなかなかできなくて、試行錯誤の末、実は、伸びた花粉管がめしべの中を通過した場合に受精が起きることがわかったそうです。つまり、めしべは花粉管伸長のは単なる通り道でなく、精細胞に受精する能力を与える役割を担うことが分かったのです。花粉管が卵細胞のほうへ伸びていくことは知られていたわけですが、なぜそうなるのかは140年間もの間謎だったそうです。めしべの中のどの細胞が花粉管を誘引するのかを調べる目的で、めしべを構成する細胞を一つずつ破壊してやることにより、助細胞(じょさいぼう、SY)という細胞が花粉管誘引に必要ということがわかりました。それだけでなく、さらにこの誘引物質の正体を突き止め、その小さなたんぱく質をルアーと名づけました。ここまででも大発見の連続なのですが、さらに驚いたことに、このルアーと名づけられた物質は、植物の種ごとに働きが限定されており、近縁種であっても花粉管を誘引する能力はないことがわかったそうです。逆に、トレニアとは遠縁の種であるシロイヌナズナにトレニアのルアーを分泌させると、トレニアの花粉管はシロイヌナズナのめしべに引きつけられたそうです。受精の際に同種を認識する重要な遺伝子だったという発見です。これらの一連の成果は、好奇心に基づく実験が発端だったわけですが、研究の進展によって、異種植物が交雑するしないの条件が明らかになり、人為的に雑種をつくることにより人間の役にたつ新種を生み出す技術の基礎研究となり得ることがわかりました。

Part2で動物の話をしたのが、柳沢正史氏(筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構)。柳沢氏は、科学研究者は、役に立つかどうかという観点から研究を始めるものではない、そういう態度でいては日本の科学研究は滅びると強く警鐘を鳴らすメッセージを発していました。柳沢氏はエンドセリン(強力な血管収縮作用を有する生理活性物質)の発見者としても知られていますが、現在は睡眠のメカニズムの研究を推進しています。研究では仮説駆動型研究が主流です。この生命現象に重要な役割を果たしているのは、この遺伝子だあろう、だからこの遺伝子を破壊してみて、その効果が確かに予測どおりに現れるかを調べてみよう、というリバースジェネティクス(逆遺伝学)のアプローチが、仮説駆動型と言えます。それに対して、何かの遺伝子が破壊された結果、期待した現象が生じるような動物個体を選びだして、後からその遺伝子の正体を突き止めてやろうという、最初に仮説を持たないアプローチが存在し、フォワードジェネティクス(順遺伝学)と呼ばれます。柳沢氏は、マウスを実験動物として用いて、このフォワードジェネティクスのアプローチを用いた研究を行い、8000匹以上ものマウスの睡眠時の脳波や筋電図を測定することにより、期待通りに、睡眠に異常があるマウスの系統(sleepyと命名)を見つけだしました。そして、その系統ではどんな遺伝子が破壊されているのかを調べています。このようにして、いまだに謎である睡眠のメカニズムに迫ろうとしているというお話でした。柳沢氏は、良いサイエンスをするためのアドバイスとして、専門的度胸(Technical Courage)を持ちなさいと説いていました。重要な問いを立てたら、その問いに答えるためには、自分の得意な手法、自分の専門分野内で必ずしも解決しようとはせずに、使えるものは何でもやる、場合によっては実験手法や専門分野を変えてでもその問題に取り組むという勇気が必要だということです。

今日の科学業界においては、自分の仮説にあうようにデータをでっちあげたり、データの取捨選択をするような研究不正が蔓延っていますが、柳沢氏は、自分の仮説を得られる実験データよりも上に位置づけて(データが仮説に合わない場合に)仮説のほうを優先するような態度は研究不正を誘発する行為であり、してはいけないと警告を発していました。

東山氏は、研究はとにかくワクワクしてやるもの。新しい現象の発見の瞬間が一番気持ちが盛り上がる。その後、論文を書くのは苦しいが、プロフェッショナルという意識を持って、産みの苦しむを乗り越えて、論文にまで持っていくことが重要であるということを述べていました。職業としての研究者の生き方がわかる言葉でした。

柳沢氏は、日本の科学教育のあり方についても言及し、今の日本の教育は、与えられた問いに答える訓練に終始してしまっているが、科学研究で重要なことは、良い問いを見つけることであると述べていました。アメリカでは小さい子供のときから学校でShow&Tellという授業があって、ぬいぐるみでもなんでもいいから何か自分の気に入ったものを学校に持っていき、クラスのみんなのまえで、それが自分にとってどんな意味を持つのかを語らせる授業があるのだそうです。こういう教育を小さいときからずっとやっているので、考える訓練が十分なされると言います。

 

ホンキギロン(プレゼン)

さて、15時30分からはトークセッションが開催されました。最初にパネリストたちが1人ずつ自分の主張や研究内容をプレゼンし、その後、パネルディスカッションに移りました。

プレゼンのトップバッターはNATURE誌を発行しているシュプリンガー・ネイチャーのアントワーン・ブーケ(Antoine Bocquet, Tony)氏。トニーさんは日本で学位を取っていて日本語がペラペラでした。Tonyさんは、近年失速する日本の科学研究の状態を、数値グラフを見せながら説明しました。もう、どんな指標でもはっきりと数字で日本の失速ぶりが露わになっているという、キツイお話でした。

2番目の登壇は黒川清氏(政策研究大学院大学)。PCとプロジェクタの接続が不調でいつになっても用意したスライドが映し出されないというトラブルに見舞われましたが、そんなことを気にもしないで、日本の研究業界の問題点の指摘に熱弁をふるっていました。会社や組織など自分が所属する組織に忠誠を誓うのでなく、その職種のプロフェッショナルとして行動せよというお話でした。エンジニアやバンカーが日本ではメジャーな会社から同業の別のメジャーな会社に移れないという状態はおかしいと言います。研究者に関しても同様で、博士号を取得した後も同じ研究室に残って仕事をするのは、ラボのPIがその博士号取得者をテクニシャン扱いしているのと変わらないと指摘していました。プロフェッショナルであれば、組織にとらわれずに仕事ができないといけないということです。また、日本の現政権は、大学は社会の役に立つことをやれという圧力を強めていますが、黒川氏は、科学は本来curiosty-driven(好奇心に基づいて行なうべきもの)であると断言します。

JSTさきがけ研究員の戸田陽介氏は、もともとイネの研究で農学博士を取得されたのだそうですが、その後、農学x化学、農学x情報学という異分野融合の機会に恵まれることにより、農学x化学x情報学というユニークな研究分野を開拓されています。異なる分野の研究者は研究のカルチャーや考え方が違いすぎて、共同研究を行なうことも非常に難しいことが多いのですが、戸田氏のように1人で異なる分野に通じていれば、学際的な研究プロジェクトを立ち上げることが可能になり、ユニークな研究を実現できる可能性を示していたと思います。

続いて登壇したのが東大大学院時代にGENEQUEUESTというベンチャー企業を立ち上げた高橋祥子氏。GENEQUEUEST社は、個人が唾液サンプルを送付するとそこからDNAを抽出しゲノム解析を行なうことにより、個人のゲノムの特徴を特定して遺伝子カウンセリングを行なうサービス。日本の研究が失速している一つの理由が、研究費が減っていることと先に話したトニーさんが指摘していましたが、研究を加速するために会社をつくったという高橋氏の行動は、研究費問題に関して一つの解答を与えるものです。何しろ会社を作った目的がそうなので、会社社長という立場でありながら、アカデミアの研究者のマインドも持ち続けているということでした。

このセッションの最後に登場したのが落合陽一氏。大学を辞めて椅子取りゲームからめでたく抜け出しましたという言葉には驚きました。自分で会社を立ち上げて利益を出し、そのお金を大学に還元して自分の大学のポストの給料をそこから出す仕組みにしているのだそうです。これまた、日本の研究が失速した要因として大学のポスト不足が挙げられるわけですが、落合氏のやり方はこのような困難な状況をものともしない生き方で、大変大変驚かされました。1年間に65個ものプロジェクトを走らせているという多作の人です。学生数が44人、会社で雇用しているエンジニアが6人。仕事の効率がどんだけいいの?と凡人の理解をはるかに超えていました。

 

ホンキギロン(パネルディスカッション)

さて、個々のプレゼンのあと、トークセッションに移りました。ニコニコ生放送らしい企画で、パネルディスカッションの議題はインターネットの視聴者がその場の投票で選びました。投票結果は、

  1. 科学・テクノロジー 未来予測 29.4%
  2. 国はこう変わるべきだ 14.7%
  3. 見習うべき他の国々はこれ 12.7%
  4. 博士号の意味 11.8%
  5. 基礎研究の本当の価値 10.8%
  6. 未来の教育 小・中・高 7.8%
  7. 今こそ大学改革 6.9%
  8. 研究者発スタートアップ 5.9%

となり、セッションは「科学・テクノロジー 未来予測」のお題でスタートしました。司会者からの質問やパネリストの自由な発言などにより、結果として、さまざまな話題に発展していきました。

↓会場の雰囲気がわかる写真を参加者の方のツイッターから無断拝借。

未来予想

高橋氏は、テクノロジーの進歩が早すぎて人がそれについていけていない。例えば、今頃になって個人が自分自身のゲノム情報を知ることが良いのか悪いのかといった議論をしている。このような未来が来ることはヒトゲノムが初めて解読され時点で予想できたことで、もっと早くから議論をしておくべきだったと言います。トニーさんは、これから来るものを予測することは非常に難しいが、既存の分野の間に新たな研究のインスピレーションがあるだろうといった趣旨のことを述べました。ちなみに、ネイチャーは来年、人工知能関連のNAURE姉妹紙Nature Machine Intelligenceを新たに創刊するそうです。

博士取得者のキャリアパス

博士号を取得後の選択肢の少なさが問題だとトニーさんが指摘していました。高橋氏は「会社を立ち上げた方がリスクが少ない」と断言し、それに対して落合氏が「150%同意」していました。黒川氏も、このような前例ができれば、後に続く人が出てきやすいだろうと述べました。

博士号の意味

高橋氏は、博士は取ったほうがよいと博士号取得を勧めます。一連の流れ、思考のプロセスをインストールできたことに意味があったそうです。落合氏は、博士号は「茶室の扉」程度の意味しかない、つまり入るのに必ず通らないといけないイニシエーション(通過儀礼)と表現していました。これによって、研究者同士が互いを理解しやすくなるというのです。また、「時間的余白」としての重要性も指摘していました。このようなまとまった「空白期間」が大切な意味を持つというのです。戸田氏は博士取得後にしばらく放浪生活を送り、「空白期間」があったそうですが、その間に自分が本当にやりたいことを考えることができて、続きの仕事をせずに新たな道に進むことができて良かったと述べていました。

外に出ることの重要性

黒川氏は、博士号は誰の下でとったかが大事で、しかもそのあとは外に出るべきだと言います。博士号取得者が別のラボに移動することで、その人がテクニシャン的な使われ方をされただけの人か、きちんと研究者として育てられた人なのかが、他に知れることになるからです。また、ネットやテレビで情報を仕入れてわかった気になってはいけないと注意していました。実際に外に出ていって、五感で感じ取る経験が重要だと言います。日本の外に出ることにより、健全な愛国心も生じるものだとのことです。

好奇心について

科学研究の出発点として大切なのは好奇心ですが、これに関してもいろいろと興味深い発言がありました。落合氏いわく、「好奇心フィルター」を一つみつけると人生が豊かになるとのことです。これには高橋氏が強く頷いていました。ちなみに落合氏にとっての好奇心フィルターは「波動」だそうです。好奇心が旺盛ならいいのかというとそうでもなくて、博士号を取得するための研究期間はむしろ好奇心をストップさせて、一つのことを最後までやりきることに全力を注がないといけない、とトニーさんが指摘していました。

科学者を育てる家庭環境

子供時代の過ごし方にも話題が及びました。落合陽一氏のお父さんは、言わずと知れたジャーナリスト落合信彦氏であり、興味深いエピソードが披露されました。高橋氏は子供のときに親の都合でフランスに住んでおり、「外国人」として現地の学校で過ごしたそうですが、日本ではどうなの?といろいろ聞かれたりして、「人と違うことの素晴らしさ」を経験できたそうです。ただ、残念なことに日本に帰国すると、女子で一緒にトイレに行かないとハブられるといった日本人特有の「同調圧力」のせいで、とても生き辛い思いをしたとのこと。そんな日本人も遺伝情報を見てみればみんな一人一人が違っていることが実感できるそうです。質疑応答の時間でも「同調圧力」が話題になりましたが、黒川氏は、人と違っていることはいいこと、偏狂はイノベーションなんだよと強調していました。

科学は楽しい

質疑応答では会場からも活発に手が上がり、会が非常に盛り上がりましたが時間もだいぶ押して、最後のまとめを振られた落合氏が、「サイエンスは練習すれば楽しい。お酒も練習すれば楽しいのと同じ。サイエンスって楽しいんだということを覚えてもらえれば。」とうまいことを言っていました。最後に、この会をプロデュースした司会者の樋江井氏が、みなさんが未来を始めるための一歩を踏み出せたら嬉しい、と締めて閉会となりました。

 

このシンポジウムがニコ生で中継されたことも含めて、科学研究の世界でもいろんな新しい、面白いことが起きているんだなあと思いました。もちろんオーソドックスな研究をされてきた方々の発表でも、示唆に富む言葉が多くとても刺激を受けました。本レポートは走り書きメモと頼りない記憶力に基づいて書いたため、紹介した内容が発言者の言葉通りではないかもしれませんし、聞き違いや自分の理解の間違いである可能性もあります(発言順にこだわらずにまとめたところもあります)。書ききれなかった内容もたくさんあります。興味を持たれた方はニコニコ動画(有料)で視聴可能です。予定よりも時間が押してしまったようですが、それだけ熱のこもった内容で、最後の聴衆の拍手の大きさからすると、参加者もみな満足して帰ったのではないかと思います。ファシリテーターとして各セッションの司会進行役を務めた梶井宏樹氏(Part1:宇宙×地球)、武田真梨子氏(Part2:動物×植物)、樋江井哲郎氏(ホンキギロン)が、研究者から適切に発言を引き出し、さらに研究者の言葉が聴衆にわかりやすく伝わるようにと尽力していたのも印象的でした。シンポジウムが発信していたメッセージは、「人とは違うことをやろう」「まだ誰もやっていない領域に恐れずに踏み込もう」「できることから始めよう」「最初の一歩をとりあえず踏み出してみよう」というもので、子供からオトナにまで刺激を与える内容でした。

 

参考

  1. 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)サイエンスシンポジウム生中継 (nicovideo.jp)
  2. CEOからのメッセージ ネイチャー・ジャパン株式会社 代表取締役社長 アントワーン・ブーケ(natureasia.com)
  3. 【戸田 陽介】ディープラーニングを利用した植物表現型の定性的・定量的計測技術の開発さきがけ
  4. 落合研究室(筑波大学)
  5. 中高生のみんな、これから“学校”のルールが変わるかもしれないよ【落合陽一インタビュー】(makeys.me 2017.06.09)
  6. 「TDK Attracting Tomorrow Lab」落合陽一さんインタビュー:波動とAI、メタマテリアルの関係を解く (GIZMODO 2017.09.04)
  7. 落合陽一インタビュー「生活・趣味・教育まで、日常に広がるAI」 (softbank.jp 20170421)
  8. 「Fairy Lights in Femtoseconds」落合陽一さんインタビュー:「アートはもうテクノロジーでしかなくなる」(GIZMODO 2015.08.17) 「アートはもうテクノロジーでしかなくなる」というのが俺の持論なんです。技法やメディアの発明はアートの表現を加速してきたけど、今ってすごい速度で発明が起こるじゃない。そしたらコンテンツよりもテクノロジーが重要になってしまう。近い将来、コンピューターと実世界の区別がつかない時代が来たら、コンピューターの殻をどうやって破るか、どうやって認識の外の世界へ越境するかということがアートになるはずです。
  9. 現役東大院生でバイオベンチャー起業 –事業と研究のシナジーを生み出す− 株式会社ジーンクエスト 代表取締役社長 高橋祥子 (ReLife 2014.09.23) 起業しようとした思ったキッカケは何でしょうか? キッカケは、このビジネスモデルを日本に創ったらどうなるのか、どんなに研究が進むのか、を自分の手で創って自分の目で確かめたいという好奇心です。
  10. 医師インタビュー企画 Vol.1 黒川 清 僕は既定路線を進むしかないと思い込んでいる学生や若い医師たちに、人生の選択肢の広さを、身をもって示したかったのです。黒川清 Kiyoshi Kurokawa 政策研究大学院大学アカデミックフェロー (career.m3.com/contents/epistle)
  11. インタビュー -第5回「中学生から海外との交流を」内閣特別顧問・イノベーション25戦略会議座長 黒川 清 氏 (Science Portal 2007年5月14日)
  12. 常識を打ち破らない限り“凋落”は続く。世界で“他流試合”を推し進めるべき 第11回 テクノロジストオピニオン第11回 政策研究大学院大学 名誉教授 黒川 清 (criprof.com/magazine/2018/01/25)
  13. 国会事故調委員長・黒川清さんの嘆き (WEB RONZA 2013年03月12日)
  14. 日本科学未来館 科学コミュニケーター 樋江井哲郎さんインタビュー~未来を決める場にいたい、未来を決める場を作りたい~ (asta vision 2015.06.10) 出てきたアイデアによって自身の行動が変わったり、意見が違う人たちがお互いに歩み寄ったり何かを決めていくような合意形成の場が理想です。
  15. 女性同士のウザイ同調圧力はこうしてできあがる!対処方法もご紹介します!(violet-tokyo.com June 7, 2016)
  16. 吉田研究室(東京大学)
  17. 廣瀬研究室 (東京工業大学)
  18. 東山研究室(名古屋大学)
  19. 柳沢研究室(筑波大学)

2017年阪大&京大入試 音波の問題の解説

出題ミスへの対応が遅れて、実に1年近くも経ってから大阪大学京都大学がそれぞれ追加合格者が出すことになった、いわくつきの音波のの問題を、出題ミスを指摘していた予備校物理講師の吉田弘幸氏が解説。

吉田弘幸先生の物理① 2017年度大学入試考察 音波の反射

吉田弘幸先生の物理② 2017年度大阪大学入試考察

10:11~ 問5でnが整数から遠い値になってしまうことについて
12:58~ 大阪大学の追加説明に関して

吉田弘幸先生の物理③ 2017年度京都大学入試考察

 

参考

  1. 音波の干渉と反射について 2017年度大阪大学および京都大学入試出題内容の検討 吉田弘幸氏による解説 (PDF)
  2. 高校物理における音波の解説 2018年1月12日 京大理 佐々真一 (PDF)
  3. 2017年度 京都大学入試問題「物理」 出題ミスとの指摘あり (四谷学院大学受験予備校 公開日:2018/01/23 最終更新日:2018/02/01)指摘のポイントは何か?大阪大学、そして京都大学、いずれも大きなポイントが2点あります。POINT1 1つの音源から異なる方向に出される音波の位相はどう考えればよいか POINT2 壁で反射された音波の位相はどう変わるか 京都大学の出題を解説 京都大学の出題の問題点(1)四方八方に出る音は、同位相で送り出されると見てよいのか?(2)壁で音波が固定端反射するとはどういうことか?
  4. 京大入試ミス 「もっと早く気付けた」6月外部会合で疑問 (鳥井真平、飼手勇介、池田知広 毎日新聞2018年2月1日 22時06分 最終更新 2月1日 22時06分) 京大がミスの可能性について、外部から初めて指摘を受けたのは1月15日。‥ 1月15日に文科省にメールで指摘した予備校「四谷学院」の教務部長、栗山潔さん(47)は「阪大も京大も条件設定の不備だったが、阪大は複数の解答を正解にして、根本的なミスを認めていない。それと比べると、京大は全面的にミスを認め、良心的だと思う」と話す。阪大のミスを指摘し、同19日に京大のミスも直接指摘した予備校講師の吉田弘幸さん(54)は「京大も文科省も早く対応したのは、阪大のケースがあったからではないか」と語った。

 

大学が公開した解説

  1. 理科問題(物理) 〔3〕Aの解説(1月12日追記)PDF 大阪大学)注意:阪大が1月12日に出したこの解説に関しては多くの批判があります。
  2. 平成29年度京都大学一般入試における物理問題 III (4)の解説 (PDF 京都大学)

 

大学入学試験問題

  1. 大学受験パスナビ過去問ライブラリー  (要登録)大学入試過去問一覧(解答・解説付き)大学入試過去問は、旺文社が刊行する「全国大学入試問題正解」に掲載している大学の過去問、解答・解説を転載しています。

 

二次試験の解答の公開を求める声

京大は入試の解答例を公表していない。記述式の問題をふまえて、「知識だけを問うのではなく、解答へのプロセスを見たい」と説明する。 様々な角度から受験生を評価しようとする姿勢は否定しない。しかし今回のように選択式の問題の解答まで非公表とする理由にはならない。専門的な問題であるほど、多数の目にさらして早期発見することのメリットも考えるべきだ。(社説 京大出題ミス 解答を公表し再発防げ 朝日新聞DIGITAL 2018年2月4日05時00分)

2017年春に実施した入試の後、全国立大学の4割を超える36校が正解や解答例を公表していなかったことが、読売新聞の調査でわかった。 ‥ 文部科学省は、各大学に解答例の開示に努めるよう求めている。国立大学協会も指針で正解や解答例の開示を努力目標としており、出題意図の公表も例示している。(東大も京大も…国立大4割、入試解答全て非公表 読売新聞2/4(日) 8:51)

京大は解答例を示していなかった。「解答の経緯や思考力をみることを重視しており、これが答えだと示せない問題もある」と説明した。 だが、採点に幅があるとしてもミスが起きることを前提に、早く回答例を公開すべきだ。それでミスが速やかに見つかれば、早めに受験生の軌道修正も期待できる。試験後1年近く経過しての対応では遅すぎる。 (社説 相次ぐ大学入試の出題ミス まず解答例の早期提示を 毎日新聞2018年2月3日 東京朝刊)

1月19日に京大にメールを送り、出題ミスの可能性を指摘した東京都杉並区の予備校講師吉田弘幸さん(54)は、「ミスの可能性に気づいたのがこの時期になってしまい、今更指摘すべきか迷った。解答が公表されていれば、もっと早くに気づけた可能性がある」と話した。 (京大ミス指摘の講師「解答公表ならもっと早く」(読売新聞YOMIURI ONLINE 2018年02月02日 12時06分)

京都大学や大阪大学で入試ミスが相次いだ問題を受けて、林文部科学大臣は、来年度の入試から解答例の開示を強く求めるなど、入試情報の開示について新たなルール作りに着手する考えを示しました。 「大阪大学に続き、京都大学においても1年近くも経過して入試ミスが発覚したことは大変遺憾です。今後ルール作りをやってまいりますが、解答例の公開をやっていただくことも、ミスがなくなることにつながる」(林芳正文科相)(TBS NEWS 2月2日(金)12時36分)

 

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Nature姉妹紙Communications Biology

ネイチャーブランドの雑誌(ネイチャー、ネイチャーの名前を冠する姉妹紙)やサイエンティフィックレポーツを発行してい出版社シュプリンガーネイチャーが、新たにオープンアクセスジャーナルCommunications Biologyを創刊しました。最初の論文は、2018年1月22日付けで公開されています。

ネイチャーシュプリンガー社の人気オープンアクセスジャーナルとしては、Nature CommunicationsとScientific Reportsがありますが、Communications Biologyは、投稿規程の記述によるとその中間のランクに位置づけられていることがわかります。

Communications Biology は、Nature Researchが提供するオープンアクセス・ジャーナルで、生物科学の全分野における高品質な論文・総説・論評を出版します。本ジャーナルで出版される論文は、特定の研究分野に新たな生物科学的知見をもたらす重要な進展情報です。

NatureおよびNature 関連誌はその編集過程において、影響度と重要度に関する最高レベルの審査基準を採用しています。学際的オープンアクセス・ジャーナルのポートフォリオ内で先駆けとなったNature Communications は、編集過程において高度な審査基準を採用し、特定分野の専門家にとって重要な進展情報を出版しています。Communications Biology は、Nature Communications を補完する役割を担っています。すなわち、生物学において比較的専門性の高いコミュニティーが注目する可能性のある重要な進展情報を出版する一方、広範な影響度・重要性を考慮したNature関連誌(Nature Communications を含む)の高度な編集基準を満たさない進展情報を提供しています。

論文が1つのNature・Nature 関連誌により不受理となった場合、自動原稿転送サービスを利用して、Communications Biologyに投稿することができます(当該原稿を担当したエディターから投稿先リンクが提供されます)。

Communications Biologyにより原稿が不受理となった場合、著者は同一の原稿転送サービスを利用して、Scientific Reports や他のNature Research出版誌に投稿することができます。

(投稿規程より)(太字強調は当サイト)

 

Communications Biology fills a specific need within the Nature Research portfolio for a high-quality, broad-scope biology journal publishing work of importance to fellow researchers without the need for articles to be of broad, general interest outside a specialist community—a theme that extends to our sister journals, Communications Chemistry and Communications Physics. (Introducing Communications Biology. Editorial)(太字強調は当サイト)

 

生物分野だけでなく、化学、物理の分野でも同じ位置づけのオープンアクセス専門誌が創刊されます。オープンアクセスという特性、雑誌の名前の付け方、ロゴデザインからすると、「Nature Communicationsの姉妹紙」というブランディングのようです。

 

Communications Chemistry

Communications Chemistry is an open access, peer reviewed journal that will publish research, reviews and commentary in the chemical sciences. We will be publishing our first articles in early March.

 

論文が1つのNature・Nature 関連誌により不受理となった場合、自動原稿転送サービスを利用して、Communications Chemistry に投稿することができます(当該原稿を担当したエディターから投稿先リンクが提供されます)。

Communications Chemistry により原稿が不受理となった場合、著者は同一の原稿転送サービスを利用して、Scientific Reports や他のNature Research出版誌に投稿することができます。

(投稿案内より 太字強調は当サイト)

 

Communications Physics

Launching soon!
We will publish our first articles in late February.nature.com/commsphys/

Communications Physics は、Nature Researchが提供するオープンアクセス・ジャーナルで、物理科学の全分野における高品質な論文・総説・論評を出版します。本ジャーナルで出版される論文は、物理学の特定の研究分野に新たな知見をもたらす重要な進展情報です。また、専門分野にかかわらず、全ての物理学者にとって重要な課題を審議するフォーラムを提供することを目指します。

論文が1つのNature・Nature 関連誌により不受理となった場合、自動原稿転送サービスを利用して、Communications Physics に投稿することができます(当該原稿を担当したエディターから投稿先リンクが提供されます)。

Communications Physics により原稿が不受理となった場合、著者は同一の原稿転送サービスを利用して、Scientific Reports や他のNature Research出版誌に投稿することができます。

(投稿案内より 太字強調は当サイト)

 

Nature Communications

Nature Communications はオンライン限定の学際的ジャーナルです。生物科学、化学、物理科学のあらゆる領域を対象範囲とし、さまざまな専門分野における高品質な重要論文を掲載することをめざします。

Nature は、これからも科学の最も重要な進歩を出版し続け、Nature 関連誌は、各専門分野における画期的な論文を掲載します。Nature Communications には、科学の領域における質の高い論文が掲載されますが、必ずしも Nature や Nature 関連誌に掲載される論文ほど広範囲にわたる科学的影響力をもつ必要はありません。むしろ、特定の科学分野でかなりの注目を集める研究の進展であることが期待されています。

他のNature、Nature 関連誌で論文原稿が不受理となった場合、著者は、論文原稿の自動転送サービスを利用して、原稿をNature Communications に投稿することができます。

(投稿規程より 太字強調は当サイト)

 

参考

  1. ネイチャー・リサーチがオープンアクセスのポートフォリオを大幅に拡大し、Communications Biology、Communications Chemistry、Communications Physicsを新たに創刊 (natureasia.com 2017年9月6日) ネイチャー・リサーチは、オープンアクセス誌のポートフォリオを拡大し、高品質の選び抜かれた論文を掲載する学際的なオープンアクセス・ジャーナル3誌、Communications Biology、Communications Chemistry、Communications Physicsを新たに創刊します。これら3誌は、オンラインジャーナルとして、CC-BYライセンスのもと、オープンアクセスのコンテンツを出版します。ネイチャー・リサーチでは、著者に提供するオープンアクセス出版の選択肢を拡げるための継続的な取り組みを行っており、今回の3誌の創刊もその一環として決定されました。これにより、すでに世界最大のオープンアクセス出版社であるシュプリンガー・ネイチャーが出版するオープンアクセス・ジャーナル群がさらに充実します。
  2. Comms Physics@CommsPhys A new @nresearchnews journal that will publish high quality primary research, reviews and commentary in all areas of the physical sciences.
  3. Nature Research@nresearchnews Bringing you the latest research and science news from Nature Research.
  4. The Nature family of journals
  5. ネイチャー・リサーチは、シュプリンガー・ネイチャーの一部です。
  6. シュプリンガー・ネイチャーは、研究、教育、専門領域において世界をリードする出版社の1 つです。
  7. Nature Communications Q&A (Science in the Open 16 November 2009):”At present NPG does not provide a rapid publishing opportunity for authors with high-quality specialist work within the Nature branded titles. The launch of Nature Communications aims to address that editorial need.”
  8. Scientific Reports についてよくある質問)Scientific Reports の出版基準は? Scientific Reports は、「技術的妥当性がある」という基準を満たした原著論文を掲載します。論文の査読は、この基準のみで行われます。個別論文の重要性については、出版後、読者の判断にゆだねます。Scientific Reports の対象範囲は?Scientific Reports の対象範囲は、ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG)の得意分野である自然科学と臨床科学を反映しています。
  9. 合併の完了によりシュプリンガー・ネイチャーが設立 (Springer.jp 2015/05/07) シュプリンガー・サイエンス+ビジネスメディアとマクミラン・サイエンス・アンド・エデュケーションの大半の事業の合併が、欧州連合や米国司法省などの主要な公正競争監視機関により承認されました。新会社の名称は「シュプリンガー・ネイチャー(Springer Nature)」となります。

京大も2017年物理出題ミスを認め追加合格

京大2017年入試物理でも出題ミスが指摘されていましたが、京都大学は入試ミスを認め、2018年2月1日16時から記者会見を行い、今回の件に関して謝罪および説明しました(NHKがインターネット中継し、18:19分ころに会見が終了)。

KyodoNews 2018/02/01 北野正雄 副学長は記者会見し「極めて遺憾」と謝罪。

 

採点のやり直しにより、17名が追加合格。追加合格の内訳は、理学部4人、工学部10人、農学部3人。第1志望に合格していたのに、第2志望以降に入学していたのは工学部7人、農学部4人。 これらの学生は、転科が認められるとのこと。他の追加合格者に関しては、2018年4月からの入学が望ましいが、既に他大学に在籍しているなど個々の状況が異なる可能性があるため、個別に希望を聞いて対応するそうです(参考:記者会見の質疑応答)。

山極寿一学長のコメント「影響を受けた受験生や学生の立場に立って、誠意をもって対応していく」(JIJI.COM 2018/02/01-16:59)

 

入試ミスの指摘と問題点の解説

京大がミスの可能性について、外部から初めて指摘を受けたのは1月15日。‥ 1月15日に文科省にメールで指摘した予備校「四谷学院」の教務部長、栗山潔さん(47)は「阪大も京大も条件設定の不備だったが、阪大は複数の解答を正解にして、根本的なミスを認めていない。それと比べると、京大は全面的にミスを認め、良心的だと思う」と話す。阪大のミスを指摘し、同19日に京大のミスも直接指摘した予備校講師の吉田弘幸さん(54)は「京大も文科省も早く対応したのは、阪大のケースがあったからではないか」と語った。(京大入試ミス 「もっと早く気付けた」6月外部会合で疑問 鳥井真平、飼手勇介、池田知広 毎日新聞2018年2月1日 22時06分 最終更新 2月1日 22時06分)

 

入試ミスの内容

該当する問題:物理問題Ⅲ(4)「せ」(別紙2参照) 配点3点 (入学試験問題PDF)

ミスの内容:問題文中に条件設定が不足していたため、正解が一つに定まらない設問となっていた。 ※ 問題の解説については「物理問題Ⅲ(4)の解説」(別紙3)を参照 (京都大学 2018年02月01日

 

京都大学による問題点の解説

壁での反射について
本問題では、音波の壁における反射は固定端反射と限定している。高校の物理の教科書によると、固定端という言葉は、一般に変位をゼロに固定する境界として与えられている。そして、音波に対する境界も同様な扱いがされている。典型的な例題が、気柱内にできる定常波であり、各教科書で図説されている。具体的には、音波が硬い壁で反射されるとき、媒質粒子の変位は符号を変える(位相が 変化する)ので、入射音波と反射音波の合成変位は0になる。すなわち境界は定常波における節となる。これが固定端反射とよばれるものである。一方、境界で圧力(密度)変化は定常波における腹となっていることも示されている。すなわち、音波が固体壁で反射されるとき、圧力(密度)変化の波の位相は変化しない。

観測する量について
音波は二種類の変化(圧力変化と変位)が互いに影響を及ぼし合いながら、空間を伝わってゆく波なので、その観測も圧力変化を検出する方法と変位を検出する方法に分類することができる。ヒトの聴覚系は耳の鼓膜で圧力変化を検出していることが知られている。これは、鼓膜の後ろが閉鎖されている構造を持つことに起因している。また、多くのマイクロフォンも後ろが閉鎖された構造を持ち、圧力変化を検出している。しかし、マイクロフォンには、変位(速度) を検出するタイプのものも存在する。このようなマイクロフォンは耳とは異なり、後方が開放された構造をもっている。
本問題においては、「運転手が音を聞く」という動作が記述されている。従って、耳の動作原理を理解している解答者が、「音波の強弱は圧力変化の大小を意味している」と考えることは自然である。ただし、問題文にある「音波は強め合ったり弱めあったり」という表現だけでは、圧力変化あるいは変位のいずれの強弱を指しているかは不明瞭である。

観測者の位置について
問題では、音源と観測者は同一地点、より正確にいえば、波長にくらべて隔たりが十分に小さいことを想定している。図3 に音源近傍での音波の様子を示す。観測者は点線の枠の中にいて、その中であればどこでも反射波の振動の位相は同じである。
反射波と直接波の干渉効果を圧力変化で観測した場合は、壁で反射してきた反射波の圧力変化の振動の位相と、音源付近の直接波の圧力変化の振動の位相を比較することになる。この場合は、図3(a) からわかるように、観測者(運転手)と音源の相対位置は関係ない。観測者がPにいようが、Qにいようが同じ位相差の干渉効果を与える。
一方、反射波と直接波の干渉効果を変位で観測した場合は、壁で反射してきた反射波の変位の振動の位相と音源付近の直接波の変位の振動の位相を比較することになる。図3(b) に示すように、波源からの直接波の変位の振動方向は、波源の近くであっても、観測点と波源の位置関係によって変わる。観測点が壁側(P)の場合と、逆側(Q)にあるときでは位相が逆であり、一方が強め合う干渉の場合は他方は弱め合う干渉となる。

まとめ
音波に関する問題を考える際には、媒質である空気の圧力変化と変位の振動が互いに影響を及ぼし合いながら空間を伝わることを正しく認識する必要がある。
等方的な波を出す点音源を考え、観測者が音源の近くで圧力変化を観測する場合は、観測者と音源の位置関係によらず、一意的に干渉条件が導かれる。一方、変位として音波を観測する場合、観測者と音源の位置関係を特定しない限り問題が不定になる。
高校の物理の教科書では、壁での音波の反射を変位で議論することが多い。これにつられて、検出装置を考えないまま音波の観測は変位の観測によるものだと安易に決めつけてしまう可能性がある。そのため、音の干渉を扱う問題では、音波の検知方法に関する注意深い記述が必要である。
本問題においては、「運転手が音を聞く」という観測動作が記述されている。耳が変位を検知していると仮定すると、固定端である壁に近づくと、音は聞こえなくなるはずである。経験上そういった現象は観測されないので、変位を観測しているとは考えにくい。しかし、耳が圧力を検知していることを前提知識としないのであれば、問題文の「音波は強め合ったり弱めあったり」の意味を明らかにするために、音波の検知方法を明記する必要があった

京都大学 2018年02月01日 別紙3 より一部抜粋して転載。太字・下線強調は当サイト)

 

参考

  1. 平成29年度京都大学一般入試 理科(物理)における入試ミスについて 京都大学 2018年02月01日
  2. 高校物理における音波の解説 2018年1月12日 京大理 佐々真一 (PDF)
  3. 音波の干渉と反射について 2017年度大阪大学および京都大学入試出題内容の検討 吉田弘幸氏による解説 (PDF)

 

報道

  1. 京大入試中の点検役、ミス問題到達せず時間切れ (読売新聞YOMIURI ONLINE 2018年02月02日 16時10分)  京都大が2017年2月に実施した2次試験(前期日程)のミスで本来合格の17人を不合格にしていた問題で、物理の試験時間中に問題を解く点検役の教員が3人配置されていたのに、実際にミスがあった設問をチェックできたのは1人だけだったことがわかった。 2人は時間切れで間に合わなかったという。京大は点検担当の教員の増員など、チェック体制の充実を検討している。 京大によると、物理では、問題の作成段階で教員14人が11回会合を開き、チェックを繰り返した。さらに、試験当日は、作成に関わらなかった教員3人を「解答委員」として配置。受験生と同じ時間帯に問題を解かせた。 物理の試験問題は、三つの大問があり、ミスがあったのは最後の大問「3」のうち最終設問だった。時間切れでチェック漏れが生じないよう、委員はそれぞれ別々の大問から解き始めたが、ミスのあった設問を解いたのは1人。解答は、京大が元々正解としていたのと同じだったという。
  2. 京大入試ミス、金銭補償も 17人の追加合格者に (京都新聞 2018年02月01日 23時00分) 選択肢二つから正解を選ぶ配点3点の問題でミスが発覚、全員を正解として合否判定をやり直した。判定をやり直した結果、不合格となる京大生もいるが、取り消しはしないという。
  3. 追加合格者へ誠実対応強調 京大入試ミス、会見2時間超 (京都新聞 2018年02月01日 23時00分) 日本有数の名門大学の入試で起きた出題ミス-。受験生の将来を翻弄(ほんろう)する事態だけに、京都大(京都市左京区)の幹部は1日、2時間20分に及んだ会見で、厳しい表情を見せながら、追加合格者へ誠実に対応すると強調した。
  4. 1点差不合格から追加合格…数学者志し「報われた」 学生ら喜びと戸惑い (産経WEST 2018.2.1 21:37)「努力が報われた」。京都大の入試ミスで、追加合格の一報を受けたという慶応大1年の男子学生(19)=横浜市=は突然の知らせを喜んだ。数学者を志し、第1志望だった京大理学部に移るという。
  5. 京大入試ミス 「もっと早く気付けた」6月外部会合で疑問 (鳥井真平、飼手勇介、池田知広 毎日新聞2018年2月1日 22時06分 最終更新 2月1日 22時06分) 京大がミスの可能性について、外部から初めて指摘を受けたのは1月15日。‥ 1月15日に文科省にメールで指摘した予備校「四谷学院」の教務部長、栗山潔さん(47)は「阪大も京大も条件設定の不備だったが、阪大は複数の解答を正解にして、根本的なミスを認めていない。それと比べると、京大は全面的にミスを認め、良心的だと思う」と話す。阪大のミスを指摘し、同19日に京大のミスも直接指摘した予備校講師の吉田弘幸さん(54)は「京大も文科省も早く対応したのは、阪大のケースがあったからではないか」と語った。
  6. 京大、受験生17人を追加合格  入試ミス、金銭補償も (岩手日報 共同通信配信 2018年02月01日)  京都大が昨年2月に実施した一般入試の物理で出題ミスが指摘された問題で、大学は1日、計28人に影響があり、うち不合格になった受験生17人を追加合格させ、京大に入学している11人に本来合格していた学科への転学科を認めると発表した。大学側はミスを認めて謝罪、山極寿一学長と理事7人が今月分から給与の一部を自主返納する方針。 京大は「問題文の条件設定が不足していたため、正解が一つに定まらなくなっていた」としている。追加合格の17人には電話で連絡し、転学科を認める11人には大学側が直接説明。いずれも他大学や予備校の授業料などにかかった費用は補償し、慰謝料も検討する。
  7. 京大ミス、17人追加合格=「誠意もって対応」学長謝罪-物理、転学対象は11人 (時事ドットコムニュース 2018/02/01-19:59) 京大は28人の意向を確認した上で、本来なら必要なかった大学の授業料や予備校の経費、慰謝料などの金銭面の補償にも対応する考えだ。 京大によると、追加合格者は工学部10人、理学部4人、農学部3人。転学希望を受け付けるのは工学部7人、農学部4人。追加合格者には京大職員が1日午後、電話で説明と陳謝を行った。
  8. 京都大学で入試出題ミス 17人を追加合格 (ytv.co.jp 02/01 19:37) 問題は大学の教員14人によって11回の会議を経て作られ、試験当日には、問題作成に関わっていない教員もチェックしていたという。‥ 大学は今後、採点時に予備校などが公表する解答例を参照するなどして、再発防止に努めたい考え。
  9. 京大、17人を追加合格 昨年の入試で出題ミス (日刊スポーツ 2018年2月1日19時21分) 京都大が昨年2月に実施した一般入試の物理で出題ミスが指摘された問題で、大学は1日、計28人に影響があり、うち不合格になった受験生17人を追加合格させ、京大に入学している11人に本来合格していた学科への転学科を認めると発表した。
  10. 京大入試ミスで受験生28人に影響 追加合格者へ連絡始める (MBS NEWS 更新:02/01 19:04)「(解答は)2通りのやり方があるんですけど、どちらにしても設定が足りなかった。もう少し大局的な目で、問題をチェックする機会をつくるべきだったと反省している」(京都大学 北野正雄副学長) この影響で28人が不合格とされたり、希望の学科に進むことができませんでした。京大は追加合格となる対象者への連絡をすでに始めたということです。 ただ、試験から1年後のミス発覚。指摘した予備校講師は複雑な心境を明かしました。 「(学生も)単純に喜べるかどうか複雑だと思う。1年経っているので、他の大学に行っている人もいるだろうし。僕自身、気がついたのは1年近く経っていたので公にするべきか迷ったけど、本人たちの努力が報われたことはよかった」(ミスを指摘した予備校講師 吉田弘幸さん)
  11. 京大入試出題ミス 17人を追加合格へ(京都府)(日テレNEWS24 2/1 18:22 読売テレビ)午後4時から始まった会見で、京都大学は、出題ミスの影響で不合格になった受験生17人を追加で合格させると発表した。‥ この試験は、工学部などの理系の学部を志望したおよそ4400人が受け、そのうち、17人は、本来合格のはずが不合格になり、11人は、合格したものの、希望の学科に進めなかったという。大学は、17人を追加合格にし、11人には、希望の学科への転科を認めるという。また、浪人していた受験生の予備校の費用や、他大学への入学金などの補償も検討しているという。
  12. 京大、受験生17人を追加合格 昨年2月、一般入試で出題ミス (東京新聞 2018年2月1日 17時53分) 京都大が昨年2月に実施した一般入試の物理で出題ミスが指摘された問題で、大学は1日、受験生17人を追加合格させたと発表した。「問題文の条件設定が不足していたため、正解が一つに定まらなくなっていた」とミスを認めた。
  13. 京大の入試出題ミス、17人追加合格に 学科移籍容認も (朝日新聞DIGITAL 2018年2月1日16時34分) 京大によると、作成段階で出題委員が11回にわたってチェックしたほか、試験当日、作成に関わっていない教員が点検するなどしていたが、ミスを発見できなかったという。追加合格者には電話で連絡するとともに、文書やホームページでも周知するという。
  14. 京都大 17人を追加合格 昨年入試出題ミス (毎日新聞2018年2月1日 16時09分 最終更新 2月1日 16時16分) 京都大(京都市)は1日、昨年2月に実施した一般入試(前期日程)の物理の問題に出題ミスがあり、17人を追加合格にしたと発表した。第1志望の学科に合格していたのに、第2志望以降の学科に入学していた11人についても希望に応じて転学科を認める措置を取る。  追加合格の内訳は▽理学部4人▽工学部10人▽農学部3人。第1志望に合格していたのに、第2志望以降に入学していたのは工学部7人、農学部4人。‥ 学内で検討したところ、問題文中に条件設定が不足していたため、正解が一つに定まらなくなっていたことが判明。この問題について受験者全員を正解とした上で、採点をやり直し、改めて合否判定をした。
  15. 京大入試ミス、17人を追加合格 学長「深く反省」(日本経済新聞 2018/2/1 16:08) 京都大は1日、記者会見を開き、2017年2月に実施した入試の物理科目で出題にミスがあり、不合格としていた受験生17人を新たに合格させたと発表した。希望者については本来合格するはずだった学部学科への入学を認める。 このほか京大に合格したものの志望学科には入れなかった11人について、希望があれば学科を移転することを認める。‥ 京大によると、追加合格となった17人の内訳は、理学部4人、工学部10人、農学部3人。
  16. 出題ミス、追加合格へ…京大「必死でケアする」(読売新聞YOMIURI ONLINE 2018年02月01日 15時00分) 合否などに影響を受けた受験生は約20人。不合格とされたほか、京大には合格したものの、希望の学科に進めなかったケースもあるという。京大幹部は「(不合格から)1年かかっているわけで、必死でケアをする」としている。
  17. 【京大入試ミス】「表沙汰にするか悩んだ」 ミス指摘した予備校講師、阪大のミスでも指摘 (産経WEST 2018.2.1 12:26更新)  大阪大に続き、京都大でも入試ミスを指摘したのは東京の予備校講師、吉田弘幸さん(54)だった。取材に「1年近くたっていたので、受験生のことを考えると表沙汰にするか悩んだ」と明かしていた。
  18. 京大入試で出題ミス「解答不能な設問」指摘相次ぐ(テレ朝news 2018/02/01 11:50)京都大学の去年の一般入試で「解答不能な設問がある」と指摘が相次いだ問題で、大学側が出題ミスがあったことを認めました。
  19. 京大、入試ミス認め追加合格へ (REUTERS2018年2月1日 / 11:49 / 1時間前更新) 共同通信 京都大が昨年2月に実施した一般入試の物理の問題について、出題ミスを認め、不合格とした受験生を新たに合格させる方針であることが、1日までに関係者への取材で分かった。京大によると、1日午後4時に記者会見し、詳細を説明する予定。「内容は会見で明らかにする」としている。
  20. 大手予備校の解答例も真っ二つ、なぜ? 京大出題ミス ( 石倉徹也、後藤一也 朝日新聞DIGITAL 2018年2月1日11時04分)波が固定された壁に反射する場合、横波と縦波ではふるまいが変わる。横波では、波の「山」が反転して「谷」になって反射するため、波の形がずれる。一方、縦波では、空気の「密」は「密」のまま反射するため波の形はずれない。 指摘があった京大の問題は、この波の形のずれを元に、解答を導く。予備校が出版している解答例は、壁の反射で波の形がずれると想定したか、ずれないと想定したかで解答が分かれた。京大に設問の不備を指摘した京都市の予備校講師の男性(31)は「音波をどちらで考えるかによって、壁での反射の解釈が分かれてしまう。問題の条件設定があいまいだ」と指摘していた。
  21. 京大が出題ミス認め謝罪へ 追加合格者出す方針 (朝日新聞DIGITAL 2018年2月1日10時54分) 京都大(京都市)が昨年2月に実施した一般入試(物理)について外部から「解答不能な設問がある」という指摘が複数寄せられていた問題で、京大は出題ミスを認め、複数の追加合格者を出す方針を決めた。大学関係者が明らかにした。1日午後にも記者会見して謝罪し、一連の経緯と今後の対応について説明する。各学部で合否に影響した受験生を集計し、追加合格の人数を確定させる。
  22. 京都大 追加合格へ 昨年2月入試、物理で解答不能設問 (毎日新聞2018年2月1日 10時03分 最終更新 2月1日 12時19分)京都大(京都市)が昨年2月に実施した一般入試(前期日程)の物理の問題について、不適切な設問があったとの検証結果をまとめた。合否判定をやり直して、不合格とした複数の受験生を追加合格とする措置をとる方針。1日午後4時から記者会見して発表する。
  23. 京大、入試ミス認め追加合格へ 昨年実施、物理の問題 (東京新聞 2018年2月1日 07時17分) 京都大が昨年2月に実施した一般入試の物理の問題について、出題ミスを認め、不合格とした受験生を新たに合格させる方針であることが、1日までに関係者への取材で分かった。
  24. 昨年の京大入試でもミス、追加合格へ 阪大で指摘の予備校講師が「解答できない」(産経WEST 2018.2.1 07:15更新) 京都大が昨年2月に実施した一般入試の物理の問題について、出題ミスを認め、不合格とした受験生を新たに合格させる方針であることが、1日までに関係者への取材で分かった。
  25. 京大、入試ミス認める…20人近く合否など影響 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2018年02月01日 06時00分) 京都大(京都市)が2017年2月に実施した2次試験(前期日程)に出題ミスがあったとする検証結果をまとめたことが31日、関係者への取材でわかった。
  26. 京大も出題ミス 追加合格へ (NHK NEWS WEB 2月1日 4時08分) 京都大学が去年行った2次試験の物理で、出題ミスが明らかになり、大学は当時、不合格と判定した複数の受験生を追加合格にすることが文部科学省などへの取材でわかりました。京都大学は、1日、記者会見を開いて詳細を明らかにする方針です。
  27. 京都大 昨年2月の入試で出題ミス 追加合格へ (毎日新聞2018年2月1日 01時57分 最終更新 2月1日 02時05分) 京都大が昨年2月に実施した一般入試の物理の問題について、出題ミスを認め、不合格とした受験生を新たに合格させる方針であることが31日、関係者への取材で分かった。

 

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論文数世界ランキングで日本は6位に後退

全米科学財団(National Science Foundation, NSF)が、世界の科学技術の動向をまとめた報告書Science and Engineering Indicators 2018を発表しました。2016年の論文数世界ランキングで、日本は6位。論文総数が減少傾向にある国は日本だけで、その凋落ぶりが際立ちます。

論文数ランキング1位は中国 、以下、2.アメリカ、3.インド、4.ドイツ、5.イギリス、6.日本。7.フランス、8.イタリア、9.韓国、10.ロシア、11.カナダ、12.ブラジルの順。

(出典:Science and Engineering Indicators 2018)

中国の台頭は、総論文数だけでなく被引用数ランキングトップ1%論文のランキングで見ても、著しいものがあります。

(出典:Science and Engineering Indicators 2018)

 

ちなみに前回の報告書Science and Engineering Indicators 2016では、日本は3位でした。Science and Engineering Indicators 2018のレポートでは、ドイツ、イギリス、インドに抜かれて6位に転落したということになります。

(出典:Science and Engineering Indicators 2016)

 

10年前の報告書

日本が論文数2位という時代が、かつてありました。

(出典:Science and Engineering Indicators 2008)

 

報道

  1. 科学論文数、日本6位に低下…米抜き中国トップ (読売新聞 YOMIURI ONLINE2018年01月25日 15時13分):”【ワシントン=三井誠】科学技術の研究論文数で中国が初めて米国を抜いて世界トップになったとする報告書を、全米科学財団(NSF)がまとめた。 … 報告書は各国の科学技術力を分析するため、科学分野への助成を担当するNSFが2年ごとにまとめている。2016年に発表された中国の論文数は約43万本で、約41万本だった米国を抜いた。日本は15年にインドに抜かれ、16年は中米印、ドイツ、英国に続く6位。”
  2. 科学・工学分野の論文数、中国が初の首位 米国抜く 日本6位 米財団調査産経ニュース 2018.1.25 18:07更新)【ワシントン=塩原永久】各国の科学技術力の分析に当たる全米科学財団(NSF)がこのほどまとめた報告書で、科学技術の論文数で中国が初めて米国を上回り世界首位となったことが分かった。日本は6位となり、新興国ではインドにも追い抜かれており、科学技術立国としての基盤低下が懸念されそうだ。

 

Science and Engineering Indicators

  1. Science and Engineering Indicators
  2. Science and Engineering Indicators 2018 Chapter 5 Academic Research and Development > Outputs of S&E Research: Publications
  3. Science and Engineering Indicators 2016
  4. Science and Engineering Indicators 2014
  5. Science and Engineering Indicators 2012 (PDF, 592 pages)
  6. Science and Engineering Indicators 2010 (PDF, 566 pages)
  7. Science and Engineering Indicators 2008 DigestDigest PDF (36 pages)
  8. Science and Engineering Indicators 2006
  9. Science and Engineering Indicators 2004 (Archived page)
  10. Science and Engineering Indicators 2002 (Archived page)
  11. Science and Engineering Indicators 2000 (Archived page)
  12. Science and Engineering Indicators 1998 (Archived page)
  13. Science and Engineering Indicators 1996 (Archived page)
  14. Science and Engineering Indicators 1993 (Archived page)

 

参考

  1. 研究力向上 論点 平成29年11月 内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)(PDF 41 pages)
  2. 論文の引用動向による日本の研究機関ランキング(Clarivate Analytics)本分析は、後続の研究に大きな影響を与えている論文(高被引用論文)数をもとに、世界の中で日本が大きなインパクトを与えている分野における国内で存在感のある研究機関を把握しようという試みです。 研究機関や研究者個人が特定の集合の中でどのくらいの位置にいるのかを分析する指標として、高被引用論文などの相対的な指標による分析に注目が集まっています。
  3. 国立大学協会政策研究所所長自主研究 運営費交付金削減による国立大学への影響・評価に関する研究~国際学術論文データベースによる論文数分析を中心として~ 平成27年5月鈴鹿医療科学大学学長 豊田長康(PDF 148 pages)
  4. 論文数で日本は世界2位から4位に 複数国への特許出願数は1位維持 (Science Portal News 2017年8月17日):”科学技術・学術政策研究所が日本を含めた世界主要国の科学技術活動を体系的に分析した「科学技術指標2017」をまとめ、このほど公表した。そのうち論文については「科学研究のベンチマーキング2017」としてより詳細に分析した。公表資料によると、2013~15年の3年間に日本が出した論文数は、10年前の米国に次ぐ世界2位から4位に下がり、中国、ドイツに抜かれた。日本の科学研究力の低下傾向があらためて浮き彫りになったが、一方で特許出願に着目すると現時点ではまだ世界有数の技術力を維持していることがうかがえる。「科学技術指標2017」によると、2013~15年の年平均の論文数の世界一は20年前、10年前と変わらず米国がトップ。日本は64,013件で、03~05年の67,888件から減少している。これに対し13~15年の中国は219,608件。03~05年の51,930件と比べて約4倍も増えた。10年前より論文数が増えて13~15年の数が64,747件になったドイツにも抜かれて日本は世界4位に落ちた。日本の研究者数は2016年時点で66.2万人。中国、米国について3位で、論文数順位は研究者数順位を下回った。”
  5. 調査資料 – 262  科学研究のベンチマーキング 2017 -論文分析でみる世界の研究活動の変化と日本の状況- 2017年 8月 文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術・学術基盤調査研究室  村上 昭義 伊神 正貫 DOI: http://doi.org/10.15108/rm262(PDF 230 pages
  6. 科学技術・学術政策研究所 科学技術指標・科学計量学 » 科学技術指標 » 科学技術指標2016(目次) » 4.1.2研究活動の国別比較
  7. NISTEP科学技術・学術政策ブックレット Ver 2 日本の大学における研究力の現状と課題 科学技術政策研究所
    平成25年4月 (PDF 36 pages)
  8. 調査資料– 239  科学研究のベンチマーキング2015  -論文分析でみる世界の研究活動の変化と日本の状況-  2015年8月 文部科学省科学技術・学術政策研究所科学技術・学術基盤調査研究室 阪彩香 伊神正貫(PDF 199 pages)
  9. 論文データにみる日本の化学、アジアの化学 日本化学会春季年会2013年3月24日(日)トムソン・ロイター学術情報ソリューション棚橋佳子(PDF 33 pages)
  10. 科学技術政策研究レビュー 第3巻 研究レビュ- 3-1 研究活動の国際化 ~世界の変化を見る~ 研究レビュ- 3-1-1 OECD主要国中心の活動状況 ~論文生産における日本の位置の把握 国際共著論文にみる日本の位置の把握~ 科学技術基盤調査研究室 阪 彩香  研究レビュ- 3-1-2 論文の分析から見る開発途上国の研究活動と日本との国際共著 第1調査研究グループ 加藤 真紀  研究レビュ- 3-1-3 研究者国際流動性の論文著者情報に基づく定量分析 ~ロボティクス、コンピュータビジョン及び電子デバイス領域を対象として~ 科学技術動向研究センター 古川 貴雄 (PDF118ページ)
  11. 平成23年度研究開発評価シンポジウム~研究開発機関の現状分析に基づく研究戦略の在り方について~日本および世界の論文投稿状況の分析ー これからの方向性を探る ー東京大学評価支援室インスティテューショナル・リサーチ担当船守美穂2012年3月6日(PDF
  12. 平成22年(2010年)版科学技術白書  解説 論文成果に見る我が国の状況 国・地域別論文発表数(上位25か国・地域)1988年(昭和63年)ー1998年(平成10年)ー2008年(平成20年)
  13. 日本の「数学」研究の脆弱さ、露呈。 論文数の世界シェア、中国に抜かれ第6位! 旺文社 教育情報センター 18 年 6 月 文部科学省科学技術政策研究所(NISTEP; NationalInstituteofScienceand TechnologyPolicy)は先ごろ、諸科学の礎となる数学研究について、日本と主要国の現状及び他分野研究者の数学に対する認識などを分析、『忘れられた科学-数学』(POLICYSTUDYNo.12/2006 年 5 月)にまとめた。 (PDF 8 pages)

 

過去の報道

  1. 無残な科学技術立国、人口当たり論文数37位転落 (団藤保晴 | ネットジャーナリスト、元新聞記者 YAHOO!JAPANニュース 2015/5/10(日) 6:06):”科学技術立国を唱えてきた日本の無残な実情が見えました。人口当たり論文数を指標にすると東欧の小国にも抜かれて世界で37位に転落です。国立大学法人化で始まった論文総数の減少傾向が根深い意味を持つと知れます。国際的に例が無い、先進国での論文長期減少の異常を最初に指摘して反響を呼んだ元三重大学長、豊田長康氏が新たに作成したグラフを《いったい日本の論文数の国際ランキングはどこまで下がるのか!!》から引用します。 “
  2. India ranked fifth in region in paper publication (K. S. Jayaraman nature INDIA Published online 13 April 2015 doi:10.1038/nindia.2015.47):”Indian scientists published far less science papers than China in 2014 and trailed behind Japan, South Korea and Australia, according to an analysis of scientific output from countries in the Asia-pacific region1. “

京大2017年入試物理でも出題ミスの指摘

追記

新しい記事 → 京大も2017年物理出題ミスを認め追加合格が17名(うち、既に京大の他学科在籍者11名)になったことが2018年2月1日の記者会見で発表されました。

* * * 以上、追記 * * *

 

2017年阪大入試物理の出題ミスを2017年8月に指摘していた予備校の先生が、京都大学の2017年物理においても出題ミスがあったのではないかという指摘をしています。

2017年京都大学前期日程物理IIIの問題文

 

 

京都大学 前期日程 物理 Ⅲ 問題文(代々木ゼミナール)

 

京大に対する出題ミスの指摘

京大の2017年入試物理でも出題ミスがあるという指摘がなされました。

 

問題点の解説

 

割れている予備校の解答

(せ)の選択問題の解答が駿台は①、河合塾と代ゼミは②と割れています。

  1. 駿台の解答 大学入試解答速報 京都大(物理問題III) せ①
  2. 河合塾 2017年国公立大二次試験 解答速報 京都大学(前期)物理 解答例 物理問題III せ②
  3. 代々木ゼミナール 2017年入試問題と解答例 京都大学 前期日程 物理III せ②

 

新しい記事 → 京大も2017年物理出題ミスを認め追加合格

 

京大の2017年入試物理IIIに関するツイート

ツイッター上の様々な意見を紹介します(*随時追加、変更)

  1. 京大の問題(車が壁に平行に走るときの波の干渉の部分だけ)を解いてみた。反射での位相の振る舞いは難しいかも。SEGの先生の「車の位置での波が云々」は、言いがかりに過ぎないように思われる。 / “卵と壁?あるいは京大の音波の問題を解…
  2. さらに言えば、縦波の音波の反射条件を指定するとき、固定端や自由端という単語を使うのは避けるべき。「反射の際、位相は変化しないとする」などの方が紛れがない。それにしても、反射の際疎密波の位相が反転する特殊な壁って現実的に考えられるのだろうか。京大2017物理入試問題ミス疑惑の件。
  3. @thunderbirdroid なるほど、反射波の干渉では音を変位波とするか密度波とするかで答えが逆になるのな 音が全方位に出てること、音源と観測点の距離がゼロなことから、出題意図は密度波に思われるが、それなら壁を固定端と表現するべきではなかった
  4. 返信先: さん反射については「固定端反射と見なす」と言ってるからその前提で考えれば良いけど、「(直接波と反射波の)音波が弱め合う」という条件が微妙といえば微妙。まあ大多数の受験生は「音波が弱め合う」=「定常波の節」と考えると思いますけど。
  5. 返信先: さん 固定端という表現をすれば、高校生は「位相が反転した」と解釈して、弱め合う条件を「経路差が波長の整数倍」と解きます。それは責められないでしょう。 個人的に疑問なのは、「固定端」という表現をしたとき、作題チームは正しく音波の反射を捉えていたのだろうか、という点です。
  6. よしだひろゆき‏ @y__hiroyuki 大阪大学の問題は問題としては一応成立していて,出題者が解答を間違えたのと,その後の説明が論理的,物理的に破綻しているのに対して,京都大学の問題は,問題自体が破綻している。21:49 – 2018年1月17日
  7. 高井隼人‏ @takaiphys6 阪大は6月の入試問題検討会に出席していたので,そこで指摘されているが,京大は出席していないので,話題にはなったが京大にその声は届いていない。阪大と同様,解答速報は駿台の解答速報のみ他と違う。青本でも指摘されている。だから赤本と青本で答えが違う。結局困るのは,過去問を解く受験生。4:04 – 2018年1月12日
  8. 早川由紀夫‏ @HayakawaYukio  京都大学入試2017年物理「空気中の音波の反射条件は固定端反射とみなすものとする」う~む。 13:00 – 2018年1月10日

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報道

  1. 京大入試の物理問題「解答不能」と指摘 正解は非公表 (朝日新聞DIGITAL 2018年1月22日12時27分):”吉田さんは19日、「本来は全員に得点を与えるべきだ」と指摘するメールを京大に送付。20日には文部科学省に対して、指導を求めるメールを送った。吉田さんは大阪大の入試ミスでも、大学側に問題の不備を指摘した。この時にミスが判明した問題も、物理で音波に関する設問だった。文科省は、京大に検証を含めた対応を促した。 一方、京大は取材に「解答に至った経緯を含む思考力をも重視する問題が多く、一義的な解答を示せない問題の正解を示すことによる混乱を招かないよう、正解は一律非公表としている」とコメントしている。”
  2. 京大入試、物理に「解答不能」…予備校講師指摘 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2018年01月21日 08時36分):”京都大(京都市)が2017年2月に実施した一般入試の物理の問題について、「条件が不足しており、解答不能ではないか」などの指摘が出ていることがわかった。 京大は解答例を公表しておらず、対応を検討しているという。 京大に出題ミスの可能性を指摘しているのは、東京都杉並区の予備校講師・吉田弘幸さん(54)。大阪大の昨年2月の入試についても、物理の出題ミスを8月に阪大に伝えていた。”
  3. 京大入試、解答不能と指摘 昨年2月、物理の問題 (共同通信社 2018/1/21 12:24):”京都大が昨年2月に実施した一般入試の物理の問題について、「解答が不能ではないか」などの指摘が複数あったことが21日、大学側への取材で分かった。”
  4. 京大入試「解答不能」と複数の指摘 昨年2月、物理の問題 阪大の入試の誤りを指摘の塾講師も (産経WEST 2018.1.21 12:35更新)
  5. 京大 物理の問題に解答不能の指摘 昨年入試で (毎日新聞2018年1月21日 12時35分 最終更新 1月21日 13時36分):”京都大が昨年2月に実施した一般入試の物理の問題について、「解答が不能ではないか」などの指摘が複数あったことが21日、大学側への取材で分かった。”

 

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阪大が2017年入試物理出題ミスを解説

阪大2017年入試「物理」出題ミスを2018年1月6日に公表した大阪大学が、正答が3つあるという主張に関して1月12日に追加説明を公表しました。模範解答および採点にあたっての考え方が、非常に詳細に述べられています。

しかし、”問題Aの前文に、音叉は常に決まった振動数の音を発することが明示されているため、問題の前提条件としてはどちらかのモードのみで振動していると考える。”と言いつつ、”A-I. では逆位相振動モードを設定していた。A-III. の問4では振動モードを特定していなかった。”という説明自体、ロジックが完全に破綻しています。

矛盾した説明しかできないということは、つまりは、この説明は苦し紛れでつくっただけで、本当のことを伝えていないということでしょう

音叉とは、軸についている二本の腕が振動することにより、ある特定の振動数をもつ音波を発生する装置である。音叉の腕の振動の様子(モード) にはさまざまなタイプがあり、主に、二本の腕が互いに逆向きに振動するモード(以下、「逆位相振動モード」と呼ぶ、A-I. で設定した振動モード) と二本の腕が同じ向きに振動するモード(以下、「同位相振動モード」と呼ぶ) がある。音叉の基本的な振動モードは一般に逆位相振動モードであり、逆位相振動モードの方が実験的に観測されやすいと思われる。ただ音叉の振動を実験的に観測した著者による参考文献Russell, D. A. (2000). \On the sound eld radiated by a tuning fork.” American Journal ofPhysics, 68(12), 1139-1145. https://doi.org/10.1119/1.1286661 および同著者によるWeb ページhttp://www.acs.psu.edu/drussell/Demos/TuningFork/fork-modes.html によると、同位相振動モードで振動している様子も実際に観測されている。音叉を一つ定めたとき、同位相振動モードおよび逆位相振動モードはどちらもその音叉に対して可能な振動モードであるが、一般にそれぞれ異なる振動数の音波を発生する(前述の参考文献)。問題Aの前文に、音叉は常に決まった振動数の音を発することが明示されているため、問題の前提条件としてはどちらかのモードのみで振動していると考える。

A-I. では逆位相振動モードを設定していた。A-III. の問4では振動モードを特定していなかった。しかし、問5においては同位相振動モードで振動していることを前提として問題が作られていた。

理科問題(物理) 〔3〕Aの解説(1月12日追記)(大阪大学) (一部を抜粋。太字強調は当サイト)

阪大がこのよう模範解答を公表したことは、非常に歓迎すべきで、高校生、受験生の物理の勉強にも有益でしょう。しかし、出題ミスの釈明部分に関して言えば、全くなんの正当化にもなっていません。

〔3〕Aの問題文中には、、音叉に複数の振動モード(同位相または逆位相)が存在するという記述はありません。この物理の問題は、音叉がどのように振動して音を出すのかという予備知識を受験生に要求しておらず、むしろ、A-Iで受験生を誘導するような形で、逆位相振動モードによって音が発生する様子を図で丁寧に説明していたわけです。音叉の振動モードの可能性を複数考えると答えが一つに定まらないため、出題者の意図として、この段階で問題の条件設定をそのように絞ったということのはずです。ですから、受験生にしてみれば、A-Iでの誘導に則って、A-III問4も音叉が「逆位相振動モード」で音を発生させているという前提で解くのが当然でしょう。

A-Iの中で音叉が「逆位相振動モード」で音を出すことを丁寧に説明して受験生を誘導しておきながら、突然、A-IIIでは「同位相振動モード」で考えた答えのほうが「正答」で、「逆位相振動モード」で考えた答えも追加で正答とする阪大の態度は、矛盾しています。当然、外部からの最初の2回の指摘を却下した理由として、「同位相振動モード」で考えた答え2d=(n-1/2)λが正答だからというロジックは成り立ちません。

この追加説明は、物理の説明に関する部分は納得のいくものですが、出題ミスに関する釈明としては全く説得力がないと思います。大問のなかで分かれている小問ごとに、実は問題設定はバラバラなんですよというのは、これまでの入試の出題方法の常識を否定するような主張です。

 

阪大の追加説明に対する世の中の反応

 

阪大はなぜ誤りを認めないのか

問5との整合性を考えて問4を同位相振動モードと考え直した受験生がいたであろうという配慮から、そのような答えに3点を与えるのはやむを得ないかもしれません。しかし、本来あるべき採点、すなわち、問4で同位相振動モードで考えた解答(=誤答)は0点(配点3点)、逆位相(=正答)で考えた答えに3点、問5は設問の矛盾から問題が成立しないので全員に4点(配点4点)として採点をやり直せば、1月6日の追加合格者30人以外にも、もっと多くの合格者が出るはずです。出題ミスに伴う変則的な採点方法のせいで、問4、問5を一番正しく答えた人の中に不利益を被る人が出たという批判を恐れるあまり、阪大は誤答を頑なに認めないのかもしれません。

210ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/12(金) 22:44:07.38ID:???
この言い訳見苦しすぎるよね。
素直に間違えちゃったゴメンちゃいって言えないのかと

 

214ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/13(土) 01:11:11.78ID:???>>215
阪大さん恥の上塗りをしてしまったね。 都合のいい論文必死でググったんですね。

 

218ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/13(土) 09:14:15.03ID:???
まあそうしないと、今まで正解した人を不正解にしなきゃいけないもんな。
そうすると合格のラインが下がって、新たな合格者が30人じゃ効かないw

 

227ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/13(土) 12:05:09.78ID:???>>228
合格者を不合格にできないけど、それは表立って言えないから捻り出された理屈じゃない?

 

232ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/13(土) 13:29:08.05ID:???
それまでの解答を不正解にすると、合格ラインが下がり、逆転合格者が
さらに増えることになる。それをふせぐために両方正解にし、30名で抑えた
というのが真相だろう。

 

279ご冗談でしょう?名無しさん2018/01/15(月) 00:47:01.66ID:KVLUo8Ec
物理的正しさとは関係なく一度正答とし合格として入学を認め9ヶ月経過したものを不合格にはできん。むりやりのコジツケせずにそう弁明すればいいのに。

 

(引用元:阪大入試出題ミス https://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/sci/1515285792/ 投稿の一部のみ)

 

参考

  1. 平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点の誤りについて 大阪大学 2018年1月6日(土)(1月12日追記)
  2. 高校物理における音波の解説 (PDF) 2018年1月12日 京大理 佐々真一
  3. 仕方がないので,昨日の阪大の発表を受けた小論を作成しました。
  4. Vibrational Modes of a Tuning Fork (acs.psu.edu)

 

その他のツイート

上で紹介した以降も、阪大の1月12日の説明の矛盾を指摘するツイートが多数発信されているので、目に留まったものを挙げておきます。

  1. ぼくには(もちろん、ミスがないのがベストだが、ミスをしてしまったなら)A の方が B よりもずっとずっとマシに思える。 本気で B を主張するなら、今後、阪大の入試では全てが明示的に書かれていない限りは断りなく状況をどんどん変更するということにならないか?
  2. 阪大の追加説明では、 A「音の反射について勘違いしていたお恥ずかしい」 と認めればいいところを、 B「勘違いはしていない。問1で音叉の(通常の)振動の仕方を述べたが、問4,5では(極めて珍しい)別の振動の仕方をすると断りなく状況を変更した」 としている。
  3.   で音叉モードの説明が追加されているけど、仮にそれが通るとしたら、 今度は、なぜ問5を問題文の不整合と見なし一律加点扱いにしたかの説明が要るね。 追加説明の理屈では、問題5は問題1とは独立であり、前文と整合していれば良く、実際は整合している考え方に見える。
  4. モードによって振動数が変わるから阪大の言い訳は間違ってるわけだけど、おそらくこの調子だと「ⅠとⅢで音叉の振動数は同じと書いたが、同じ音叉を使ったとはどこにも書いていない。ⅢではⅠとは別の音叉を実験に使うことを前提として作問した」って言いそう(笑)
  5. なので阪大の説明は後付っぽくて、多分真相は「どっかの位相をπ間違えてました」なんだろう。そうすると2d=(n-1/2)λが不正解っぽくなってくるが、同相モードの別音叉を使っているという解釈をすると一応は辻褄が合うのでこれも正解にしたいということなのだろう。理由はともあれ採点方針は妥当と思う。
  6. 音叉の振動モードで残るのは基音と倍音だけ。それ以外は周波数も違うし、音量も少なく、すぐに減衰してしまう。 特に重心が動くモードの減衰はとても速いだろう。  
  7. Hal TasakiさんがMasaki Oshikawaをリツイートしました 強く賛成。 昨日の資料の(嘘であることが見え見えの)異常な言い訳に固執しても得るものは何もない。むしろ、あんな「バレバレの後出し」を認めたら試験、というか、論理的な対話そのものが成立しなくなる。
  8. 昨年の阪大入試物理の件、続報 阪大の見解が公表されていますが、問題の前半での導入と矛盾しています。常識的にも、試験という限定された舞台での「お約束」としても、これはあり得ないでしょう。こんな話が通るようでは(入試に限らず)試験というものが成立しなくなる。
  9. 公式暗記やパターン処理でも多くの入試問題は解ける。でもそのような表面的思考では解けず、現象を真摯に受けとめ基本法則から丁寧に考えなければ解けない問題が良問。今回の阪大のやつは実は良問だったのに、作題者自身がハマったとはね。
  10. 阪大物理入試採点ミスの件、当局の内容の解説として「音叉の二本の枝が逆位相で振動するモードと同位相で振動するモードがある」とされる過去の論文を論ってるが、オリジナルの解答を正解に含めるための強烈な後付け対策のような気がしてならない。
  11. まとめると,大阪大学が想定した同位相振動モードは,音叉部分の重心が左右に揺れるので,音叉がある別の物体に固定されていないと発生しないし,その物体と共振しないと音が減衰する.したがって,地面に反射壁と音叉とマイクロフォンが固定された状況では発生しない.力学的に無理.
  12. 返信先: さん あまり波動は得意でないので誤りかもしれませんが、リード文に「音叉は逆向きに振動する」と書いてある以上その下で解くべきですよね? だとしたらこの解説は模範解答を無理矢理正当化したように感じます
  13. 返信先: さん、さん それにモードが
  14. 異なると振動数が変わるはずなので,問5で500Hzが使えなくなります。
  15. 音叉の同位相モードを最初に前提していた、という説明をしたのね。逆位相モードをA-Iで問うていて続くA-IIIでは一転して暗黙に同位相を前提にするのは不自然すぎる。壁の反射と同じく、他の振動モードを考えるならもっと多様な位相ずれも同時に考慮する必要があるわけで、むーん。
  16. 大阪大学の入試の物理の問題。阪大解説では、音叉の振動モードを持ち出して、苦しい説明をしています。一番大きい振動は基本波で、逆相振動です。同相振動は、高次のモードで、振幅はかなり小さくなります。問題では、音が強くなる位置を問うているので、基本波で逆相振動以外には有り得ません。
  17. 阪大物理の追加説明 A-I で設定した仮定を A-III で逆にしても正解って、酷すぎる。
  18. 当の阪大が紹介している外部サイトで同位相モードの振動数は基本振動と振動数が異なる。で、大問の冒頭部で「500Hzの音を発する音叉」といわれたものが基本振動数500Hzのものと同位相モード振動数500Hzのものの少なくとも2つあって使い分けられているとか誰がまともに信じるかボケ
  19. 阪大から、「答えが二つあること」の解説がでた。 まさかの(僕が音叉のことをよく理解していないときに可能性の一つとして適当に書いた)表と裏での密度波の位相の反転を根拠にしていた。うーむ。
  20. 大阪大学の言い訳がひどいと物理屋の間で話題に(togetter)
  21. ”なおAとBは独立した内容の問題である。”と但し書きがある以上、Aの中の実験I,II,IIIで使われた音叉の振動モードは同一であると受験者が理解するのが当然。阪大の後出し説明は、詭弁ではないか。 阪大2017年入試「物理」出題ミスの真相

 

報道

  1. 阪大 入試ミス 「解説」ミス?でさらに疑念 物理問題 (毎日新聞2018年2月17日 01時21分 最終更新 2月17日 01時47分) 大阪大にミスを指摘した予備校講師の吉田弘幸さん(54)は「条件の修正がない以上、問4も(1)のタイプしか考える余地はない」と指摘する。大学で物理学を研究するある男性教授は「前の問題文で示した設定を、続く設問で説明なく覆すのは、非常識を通り越して異常だ」と批判した。 さらに、(2)のタイプの振動は、根拠にした00年の学術論文などによると「(1)よりも振動数は低くなる」とあり、ここでも矛盾が生じる。東京大の押川正毅教授(理論物理学)は「冒頭で500ヘルツとあるので、この音波が全ての問題に適応されると解釈せざるを得ない」とし、大阪大の解説について「この理屈が認められるなら、問題で与えた設定と異なる勝手な条件で考えた解答も全て正解とせざるを得なくなる」と指摘した。
  2. 入試ミスの阪大、音叉の振動はAとBのモードあるのに… (朝日新聞DIGITAL 2018年1月13日07時21分 (会員限定記事)石倉徹也、後藤一也、合田禄):”大阪大が入試ミスで本来合格の30人を不合格にしていた問題で、阪大は12日、設問の誤りについての説明資料を発表した。一般的でないケースを前提に問題が作られ、その場合の解答のみ当初正しいとしていた。”

更新・変更 20180301 毎日新聞2018年2月17日の記事があることに気付いて追加

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阪大2017年入試「物理」出題ミスの真相

新しい記事⇒阪大が2017年入試「物理」出題ミスを解説

2018年1月6日の報道によれば、大阪大学が2017年前期日程の物理の問題で出題ミスおよびそれに伴う採点ミスをしていたことが明らかになりました。

出題・採点においてミスがあった問題

注意:この問題を解くうえで、〔3〕のA.の問題文中の実験条件、および、問A-I,A-IIで説明されている条件設定なども重要になりますので、問題文全体(PDF)(10ページ~)をご覧ください。

 

大阪大学の説明

問4 には複数の解答が存在したが、採点時において特定の解答(下記「当初の正答」)
のみを正解として扱ってしまった(採点誤り)。また、問5 については問4 の特定の解答の
みを前提とした出題であったため、問4 の複数の解答(下記「検討後の正答」)と整合しな
いこととなった(出題誤り)。
問4:当初の正答 2d=(n-1/2)λ → 検討後の正答 2d=nλ2d=(n-1)λ2d=(n-1/2)λ
のうちのいずれか一つ
問5:問題の数値設定に不整合 → 全員に4 点を付与

(大阪大学 2018年1月6日(土))

 

しかし、物理の問題なのに、異なる答えがどちらも正解というのは不可解です。大手予備校はどのような解答を出していたのでしょうか?

 

大手予備校や大手出版社の解答例

注意:以下は、2018年1月6日の報道以前の解答です。報道後、リンク先の予備校の解答は修正・変更されたものがあります。

  1. 駿台予備校  2d=nλ  駿台 2017年度 大学入試解答速報 大阪大前期日程  物理 解答例 問題3
  2. 代々木ゼミナール  d=1/2 (n – 1/2)λ 代々木ゼミナール 入試問題と解答例 大阪大学 前期日程 物理 〔3〕(注:20180112に確認したところ、修正されていた)
  3. 河合塾2d=(n – 1/2)λ 2017年国公立大二次試験・私立大入試解答速報 大阪大学(前期)物理(注:20180111に確認したところ、阪大の説明に従い、誤答を正答としたまま本来の正答を追加していた)
  4. O文社の阪大の解答間違えてるな。教えてあげた方が良いかな。教えてあげた某塾はまだ直していない。怖いのは、阪大も誤答を正解としていること。— よしだひろゆき (@y__hiroyuki) 2017年8月7日

  5. いま確認したら,赤本の解答も旺文社河合塾と同じだった。— よしだひろゆき (@y__hiroyuki) 2017年8月12日

  6. 問5で与えられた数値から考えると、問4の僕の答えは誤りということになります。しかし、理屈としては僕の解答が誤っているとは思えなかったので、代々木ゼミナール、河合塾、駿台予備校、東進ハイスクール等の解答速報や旺文社の赤本の解答と照らし合わせたところ、旺文社代々木ゼミナール河合塾2d=(n-0.5)λ
    駿台予備校東進ハイスクール2d=nλというふうに、やはり解答が割れています。学校の先生にも訪ねては見たのですが、いまいち要領を得ず、高校の仲間数人と議論した結果やはり僕の解答に間違いはないように思われます。
    (以下の問題は今年度の大阪大学の前期入試問題なのですが、過去問演習の際、少し違和感を感じたのでご意見お聞かせいただけますでしょうか。YAHOO知恵袋 2017/9/19 18:23:45)

 

驚いたことに大手予備校や大手出版社の解答が、割れています。掲示板でもそれが話題になっていました。

 

掲示板での感想戦

778 :大学への名無しさん:2017/02/28(火) 22:57:56.02 ID:MpJ7Frr00

物理の波動の問4 駿台やと2d=nλで 代ゼミやと2d=(n-1/2)λやったんやけど
どっちが正解なん?

779 :大学への名無しさん:2017/02/28(火) 23:42:35.77 ID:mlXatSip0

>>778
駿台のが正解ちゃう?
代ゼミのは固定たん反射でかんがえてるんちゃうかな

780 :大学への名無しさん:2017/02/28(火) 23:48:07.06 ID:Aii/Xnwg0

>>778
河合も代ゼミと同じだった気が

781 :大学への名無しさん:2017/02/28(火) 23:48:50.13 ID:6wg68lH+0

>>779
問題に固定端ってかいてるで

782 :大学への名無しさん:2017/02/28(火) 23:55:05.03 ID:mlXatSip0

>>781
本間や
死んだ

(引用元の掲示板:【阪大】大阪大学理系★14【理系】https://tamae.5ch.net/test/read.cgi/kouri/1457517988/

177名前を書き忘れた受験生2017/03/06 21:06
>>176
そこの答え駿台と河合で違ったんだが…

 

178名前を書き忘れた受験生2017/03/06 21:08
>>176
それ、2d=nλやで、駿台の答えもそれ。
音波の強弱は光波と違って疎密で考えるから

 

179名前を書き忘れた受験生2017/03/06 21:09177
駿台が正しいよ あれは音叉が縦やから反射波と疎密が一致する。(1)でも誘導がついてるし。

(引用元の掲示板:2017年度大阪大学合格最低点予想スレ – 大阪大学掲示板 http://www.100ten.info/osaka/68/?sort=all

 

代ゼミ、河合塾、旺文社、赤本は大阪大学の「当初の正答」に同じで、駿台の答えが、「新たに追加された正答」と同じのようです。さて、物理の問題の答えとしては、どちらが正しいのでしょうか?

 

正答に関して議論しているツイート等

以下に紹介するツイート等は、2018年1月6日の報道を受けた議論です。

音波の伝搬においては変位,流速,圧力,温度,すべてが変化する。これらは単純な関係(微分とか)でつながっていて,ぜんぶ整合的に動く。変位に着目しようが圧力偏差に着目しようが,粗密に着目しようが音波という現象はひとつである。 ‥‥ 空気中を伝わってきた音波が硬い壁にぶつかる場合,圧力は同位相,変位や流速は逆位相で反射することが分かる。同位相・逆位相は着目する物理量によって異なるが,音波の反射というひとつの現象を,異なる視点から眺めたものに過ぎない。(引用元:阪大入試をダシに音波の話

‥‥ ということを、問題文の前半できちんと「解説・確認」しているからです。(この「この記述があるのに問4で間違えたのが解せないんだよね。という言葉に100%同意する具合です。ただし、こうした知識を持ち、丁寧に順を追った解説まで行う出題者が壁の”反射”を取り違えるような取り扱いをするとは全く感じられません。定義の取り違えではなく、単純な忙しさなどからくるケアレスミスなら理解できるのですが・・・) それに対して、出題者が壁を「境界条件」どのような境界条件で取り扱うかを間違えたということは、個人的には可能性は低いことだと感じます(引用元:大阪大学 2017年度前期日程「物理」を「面白い物理エッセイ」として読んでみる

 

阪大の対応に関するツイート等

阪大の発表だと、当初の正答は正答であり、当初は誤答とした解答も正解として認めるような言い方をしています。「物理として正しい正答」はどれなのか、「出題ミスを踏まえたうえで、採点、合否判定の都合上、やむなく点を与えると言う意味での正答」がどれなのかという区別がなされていません。阪大の説明を受け売りして、新聞も「正答が3つあった」と報道していますから、これでは、物理を勉強している高校生が混乱させられます。当初正答としたものが実は誤答だったという事実を認めない大阪大学の態度は、誠実さからは程遠いと思います。

(阪大に採点ミスを指摘した吉田弘幸氏)「物理という科目は、問題の組み立てがきちんとしていれば誰が解いても正解は1つになるが、今回の問題のような音の伝わり方については勘違いが起きやすい。誤って不合格とされ、1年近く、そのままにされていた受験生のことを思うと悲しい気持ちになる。外部からの指摘があった際、しっかりと検証できる体制を整えてほしい」(大阪大出題ミス ”検証できる体制を” 改善求める声相次ぐ NHK NEWS WEB 1月7日 19時31分)

 

問題作成ミスのまとめ

問題作成者が問4を(おそらく)誤答(2d=(n-1/2)λ)し、それに基づいて問5を作成したため、受験生がもし問4を出題者と同様に誤答(2d=(n-1/2)λ)すれば問5で矛盾が生じないが、問4を正解(2d=nλ)した受験生は、問5では問題設定(nは自然数)との矛盾(計算したnが自然数からかけ離れる)に遭遇する、ということのようです。この矛盾を気にせずに問5で問われている音速を計算することはできるため、問4の答えが異なる駿台と代ゼミでも、問5の答えの数値は一致しています。

なお、阪大は誤答だったとは言わずに、正答が複数あったという言い方をしているため、新聞やテレビでもそのように報道されていますので、注意を要します。

 

新しい記事⇒阪大が2017年入試「物理」出題ミスを解説(←阪大は問4を誤答したとは認めていません)

 

大阪大学の謝罪記者会見

大阪大学30人追加合格 去年の入試でミス 3回指摘(18/01/07)

 

このミスにより本来であれば合格していた30名が不合格とされていたそうです。今更ながらですが、この30名に関して、大阪大は追加合格者として入学を認め、金銭的な補償も行う方針です。

昨年の入試で合格していたはずの大阪府内の男性(19)は現在、再び阪大を目指して予備校に通う。自宅に6日午前11時ごろ、電話がかかってきた。相手は阪大。追加合格を知らせる内容だった。(大阪大採点ミス 予備校通い、突然電話で「合格」に混乱 毎日新聞2018年1月6日 22時03分(最終更新 1月6日 23時27分)
 

追加合格となった30人の内訳は理学部が4人、医学部が2人、歯学部が1人、薬学部が2人、工学部が19人、基礎工学部が2人。(大阪大が昨年の入試で出題と採点ミス 30人の追加合格者を発表 3度目の間違い指摘で判明。ねとらぼ 2018年01月06日 19時30分)

 

入試問題ミス発覚時系列まとめ

(参考元:読売新聞2018年1月7日紙面、NHKウェブ記事朝日新聞DIGITALFNNニュース

  • 問題があった物理の入試問題作成には10人以上の教員が関与、開催された学内会議は15回以上。
  • 2017年2月25日 大阪大学入学試験前期日程 物理の試験を実施
  • 2017年2月28日 駿台予備校や代々木ゼミナール、河合塾の解答速報が異なることがインターネット掲示板で話題に
  • 2017年3月6日 駿台予備校や河合塾の解答速報が異なることがインターネット掲示板で話題に
  • 2017年3月9日 大阪大学入学試験合格発表
  • 2017年6月10日(外部からの1回目の指摘) 駿台予備学校大阪校物理講師 古大工(こだいく)晴彦氏が、「物理教育を考える会」(高校・大学教員、予備校講師らが近畿の大学入試について意見交換をする会)で、阪大の試問題作成責任者の教員に「解答が間違っている」と指摘。阪大教員は「本学の解答で良いと思う」と説明。
  • 2017年8月7日 予備校講師吉田弘幸氏が阪大のミスに気づいたツイートを発信

  • 2017年8月9日 (外部からの2回目の指摘)吉田弘幸氏が阪大に対して入試問題ミスの可能性を指摘するメール。阪大は、問4の正解として2d=(n-1/2)λと伝えるだけの回答を返信。それを見て吉田氏は、その「正解」(誤答)に基づいて阪大の採点が行われたことを危惧し、さらに詳しい説明を伝えるも、阪大からはそれに対して返答なし。
  • 2017年9月 吉田氏は文部科学省大学振興課にも「大学ではミスに気付かず、誤った解答例に基づいて採点・合否判定が行われたようです」と阪大の入試問題ミスを伝えるメールを送信。文科省からは「大阪大学に事実の確認などを行ったうえで、問い合わせに対して回答を行うことを促すことはできます」という返信があるも、それ以上の対処はなされず。
  • 2017年9月19日 ヤフー知恵袋で、高校生がこの問題に対する「違和感」を訴える
  • 2017年12月4日(外部からの3回目の指摘)入試問題ミスを指摘する(さらに別の人(大学教員といううわさ)からの)メールが阪大に届く。
  • 2017年12月19日 問題作成責任者以外の教員4人も加わって検討。入試問題ミスを認める。
  • 2017年12月27日~28日 合格判定のやり直し
  • 2018年1月6日 記者会見にて事情説明
  • 2018年1月 不合格者の状況や阪大への入学の意志などを確認する予定

 

入試問題ミスへの対応が遅れた原因

(参考元:読売新聞2018年1月7日日曜日朝刊紙面第28面の記事)

  • 1回目、および2回目の指摘に対しては、問題作成責任者と副責任者の2名の教授のみで検討し、学内での情報共有はなし。
  • 大阪大学には、入試問題ミスを指摘された際の対応を定めたマニュアル等は存在せず。

 

大阪大学は意図的に隠したのではないのか

報道では、指摘を受けた教授らが学内で情報を共有しなかったため対応が遅れたということです。しかし、このような大失態が明らかになると文科省からの評価が下がるという懸念があったから、という可能性はないのでしょうか。2017年度を振り返ってみると、大阪大学は文科省から様々な評価を受ける機会がありました。

  • 2017年6月10日(外部からの1回目の指摘)
  • 2017年6月30日 文部科学省が「指定国立大学法人」を発表。東大、京大、東北大が選ばれる。大阪大学は選にもれ、「指定候補」どまり。(文科省
  • 2017年8月9日 (外部からの2回目の指摘)
  • 2017年8月23日 大阪大学が平成29年度「データ関連人材育成プログラム」に他3大学とともに選定される(PDF文科省)
  • 2017年11月30日 大阪大学が、「研究大学強化促進事業」中間評価で他4大学・研究機関とともに「S」ランクの評点(最高の評価)を獲得。(PDF 文科省)
  • 2017年12月4日(外部からの3回目の指摘)

 

責任の所在は何処に

人間に間違いはつきものですから、今回の問題を入試問題作成責任者個人の責任に帰するべきではありません。連絡を受けた文科省や大阪大学が適切な対応を直ちにとらなかったという「組織としての責任」が厳しく問われるべきでしょう。大阪大学は2018年1月の発表で、「正答が複数あったのに他の正答に点を与えなかった採点ミス」などと、体面を取り繕うような説明をしました。このような、最初の答えが誤答でないという印象操作をするのは、問題を矮小化しようとする組織の体質の顕れではないでしょうか。

出題ミスより深刻な故意の学術的ミス(実際の誤りの隠蔽と虚偽の弁明)を冒しており、教育的効果としては、こちらの方が格段に悪質 — レッドカード である。(http://www7b.biglobe.ne.jp/~fortran/wave/QT.html

大学入試における出題ミスというのは、今に始まったことではなく、何十年も前から存在する問題です。その問題を今までずっと放置してきた文科省や大阪大学のガバナンス(組織統治)のお粗末さが一番の要因だと思います。本来なら不合格とされた人たちに謝罪すべき立場の文科省が、上から目線で「遺憾である」などというのも無責任で、当事者意識が欠如しているようです。

大阪大学の入試ミスを受けて、文部科学省は全国の大学に対して、外部からの指摘で入試ミスの可能性が判明した場合は、直ちに組織的な体制で検証するなど再発防止を図るよう通知しました。大阪大学は、去年2月に行った入試の物理で出題ミスがあり、本来は合格だった30人を不合格としていたことを今月、明らかにしました。これを受けて、文部科学省は9日、全国の国公立と私立の大学に対し、再発防止を図るよう通知しました。(阪大入試ミス受け 文科省 再発防止へ全国の大学に通知 NHK NEWS WEB 1月10日 5時30分)

正答が3つというのは真実ではないわけで、真実に反することを公式発表した阪大は、ウソをついたと言ってよいでしょう。そのウソを、新聞社がどこもかしこも真に受けて報道するものですから、多くの人はそれをまた信じてしまいます。

朝日新聞 2018年1月12日05時00分 社説 ミスがあったのは音波に関する二つの設問で、一つは、解答が三つあるのに一つしか正答と認めず、これを前提に次の設問を出していた。

東京新聞 2018年1月11日社説 ミスが判明したのは、音波に関する問題だった。三つの正答があるのに、一つのみを正答として扱った設問があり、さらにその解答を前提にして次の問いが立てられていた。連鎖して誤りとなった

中日新聞 2018年1月11日社説 ミスが判明したのは、音波に関する問題だった。三つの正答があるのに、一つのみを正答として扱った設問があり、さらにその解答を前提にして次の問いが立てられていた。連鎖して誤りとなった

読売新聞 2018年01月10日 06時05分 社説 音波に関する問題で、正答が三つあるのに、一つのみを正解とした。この答えを基に数値を求める次の設問も成立しなくなった。

毎日新聞 2018年1月10日 東京朝刊 社説 ミスがあったのは物理で、最初の設問に三つの正答があるのに、正解を一つに限定していた。さらに次の設問はこの解答を前提に作られたため、関連して間違いとなった

京都新聞 2018年01月08日社説 ミスがあった問題は2問あり、1問は正答が三つあったが、阪大は一つのみを正答とした。この問題の正答を前提にもう一つの1問が作成されており、別の二つの回答では問題が成立しなくなった。

産経ニュース 2018.1.8 21:49 阪大によると、ミスがあったのは物理が必須科目の工学部、基礎工学部、理学部の一部学科の受験生など3850人が解いた問題。正答は複数あったが、特定の解答のみを正答としていた。この解答を前提にした次の問題も不適切だったとした。

日経新聞 2018/1/8 0:15 音波に関する数式を解答する設問に正答は3つあったが、1つのみを正答として採点。この解答を前提に数値を求める次の問題も成立しなくなった。

阪大は、外部からの再三にわたる指摘を長い間無視してきたうえに、この期に及んでまだなお真実を捻じ曲げた説明をしました。科学者を育てるはずの研究大学が、入学試験の時点ですでに科学的な真実をないがしろにし、受験生のことを顧みずに組織の保身に走っているのだとしたら、本当にとんでもない話です。来年以降もずっと、日本の高校生や阪大受験生は2017年のこの過去問を解くたびに、正答が3つもあるのかと混乱させられるのでしょうか。
 

高校生・受験生へのメッセージ

 

 

新しい記事⇒阪大が2017年入試「物理」出題ミスを解説(←正答が3つという理由の説明)

 

参考

  1. 平成29年度大阪大学一般入試(前期日程)等の理科(物理)における出題及び採点の誤りについて 大阪大学 2018年1月6日(土)
  2. 大阪大学大学入試の物理の出題ミス発覚の背景(1年間)(https://togetter.com/li/1187976) (吉田弘幸氏ツイートのまとめ)

 

報道

  1. 阪大入試ミス “1年遅れ合格”の経済的損失は1人1000万円超 (日刊ゲンダイ 2018年1月13日):”4大卒でサラリーマン人生を選べば、22歳から40年ほどの労働時間がある。一般的に、1年ロスすると、生涯賃金の2・5%を失うと考えられています。阪大卒業後、一流企業に入社し、年功序列で順調に出世。生涯賃金4億円と仮定すれば、1000万円は失ったことになります。”
  2. 阪大の問題作成者「本学解答で良い」 予備校講師指摘に朝日新聞DIGITAL2018年1月9日22時32分):”駿台予備学校の大阪校などで物理を教える古大工(こだいく)晴彦さん(56)は昨年6月、高校や大学の教員、予備校講師が近畿の大学入試について意見交換をする「物理教育を考える会」で、阪大の問題作成者の教員に「解答が間違っている」と指摘した。だが、教員は「本学の解答で良いと思う」と説明。”
  3. 大阪大、本来不合格の受験生合格 入試ミス問題で調査委設置へ (上毛新聞 2018/01/08):”大阪大が昨年2月に実施した入試の物理科目でミスがあり、本来合格していた30人を不合格にしていた問題で、本来不合格だったのに合格となった受験生が同数程度いたことが8日、大学関係者への取材で分かった。”
  4. 大阪大学入試ミス 合格通知が届いた学生“揺れる思い” (8カンテレ 1/8 20:36) :”「1年間、他の大学行ってたんで、悔しいっていうよりは、何やろうみたいな。まだ正直、今行っている大学に通い続けるか、阪大行くかっていうことは決めてないですけど、初めからやる苦しさっていうのを覚えてるんで、それもう1回やるんかみたいな。友達とか周りの人とかから意見聞いてるんですけど、ほんまに半々」”
  5. 追加合格の1人から転入の相談 大阪大、検証委も検討 (朝日新聞DIGITAL 2018年1月8日18時54分):”大阪大の入試の出題と採点に誤りがあり、本来合格の30人を不合格にしていた問題で、阪大は8日、追加合格とした30人全員と連絡が取れたと明らかにした。うち他大学に通う1人から阪大の2年次への転入について「説明を聞きたい」と相談があったという。…  阪大は30人について、今春の入学か、他大学で学んでいる場合は履修状況を確認した上で2年次に転入できるようにする方針を決めている。1月末までに転入学の意思を確認し、本人や家族と協議する。ただ、今年の入試の準備をしている浪人生もいるとみられることから、最終的な意思決定は3月末までとし、他大学を受験した上で決めることも可能とする。”
  6. 追加合格の男性「望んだ形でなかったが…」阪大入試ミス (朝日新聞DIGITAL 1/8 17:55):”男性は6日、阪大から電話で追加合格と謝罪の連絡を受けた。対応の遅さに怒りも感じたが、「うれしい気持ちが一番強かった」と振り返る。苦しかった浪人生活の努力が第1志望合格という目標達成に結びつき、「望んだ形ではなかったが、努力の成果を確認できたから」だという。…  男性は現時点では、阪大への転入学は考えていないという。いま、学びたいことが学べる環境にあるといい、「置かれた環境で精いっぱい頑張り、後に『やっぱりここで良かった』と感謝できるような大学生活を送ることを心掛けることが大切なのではないかというのが私の考え」と記した。”
  7. 不適切対応の経緯 調査委設置へ 追加合格30人と連絡、1人入学の意思示す (産経WEST 2018.1.8 11:24):”大阪大が昨年実施した入試の物理科目で出題と採点にミスがあり、受験生30人を不合格としていた問題で、阪大は8日、外部から複数回指摘があったにもかかわらず、適切に対応できなかった経緯などを調べる委員会を近く設置する方針を明らかにした。今後人選などを進める方針。… また阪大は8日、追加合格となった30人全員と7日夜に連絡が取れたと明らかにした。このうち他大学に通う1人が、阪大への入学の意志を示しているという。”
  8. 別の大学に入学、追加合格「今さら言われても」(読売新聞 YOMIURI ONLINE 2018年01月08日 08時59分);”大阪大が2017年2月に実施した一般入試のミスで本来合格していた30人を不合格にしていた問題で、追加で合格になった男性(20)が7日、読売新聞の取材に応じた。 男性は現在、大阪府内の別の大学に通っており、「今さら合格と言われても、どうしようもない」と戸惑いを見せた。”
  9. 大阪大入試ミス 外部指摘を学内で共有せず、対応半年遅れに (日本経済新聞 2018/1/8 0:15):”音波に関する数式を解答する設問に正答は3つあったが、1つのみを正答として採点。この解答を前提に数値を求める次の問題も成立しなくなった。”
  10. 社説:阪大の入試ミス  救済遅らせた思い込み京都新聞 2018年01月08日掲載):”ミスがあった問題は2問あり、1問は正答が三つあったが、阪大は一つのみを正答とした。この問題の正答を前提にもう一つの1問が作成されており、別の二つの回答では問題が成立しなくなった。”
  11. 大阪大出題ミス 予備校講師語る (FNNニュース 01/08 06:23):”大阪大学によると、出題ミスがあったのは、2017年2月に実施された入学試験の物理の問題で、解答が3つあるのに1つの解答だけを正解とし、さらに、その解答を前提として、次の問題を出していた。この問題ミスを大学に指摘した予備校講師・吉田弘幸さんは、大学とのやり取りを「(問題について)設定が不自然ではないかと指摘させていただいて、(これに対しては)大学の解答ですね、結論、これだけが知らされてきました。出題者側に勘違いがあるのではと思い、その点をもう一度、メールで指摘させていただいた。これについては、大学からの回答はいただけませんでした」と語った。”
  12. 大阪大出題ミス ”検証できる体制を” 改善求める声相次ぐ (NHK NEWS WEB 1月7日 19時31分)
  13. 阪大入試ミス、30人追加合格…指摘2度スルー (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2018年01月06日 23時11分)
  14. 大阪大採点ミス 外部からの指摘、3度目で認める (毎日新聞2018年1月6日 18時18分 最終更新 1月7日 00時37分)
  15. 阪大、入試で採点などミス 30人不合格 (日テレNEWS24 1/7(日) 1:14):”出題や採点にミスが見つかったのは、昨年度の大阪大学の入試問題で出題された物理の問題2問。問題で得られる正解が3つあるにもかかわらず、1つのみを正解とするなどしていた。”
  16. 大阪大採点ミス 予備校通い、突然電話で「合格」に混乱 (毎日新聞2018年1月6日 22時03分 最終更新 1月6日 23時27分)
  17. 大阪大 去年の入試で出題ミス 30人が不合格にNHK NEWS WEB 1月6日 19時15分)
  18. 阪大で入試ミス、30人追加合格=外部の指摘2回見逃す (時事ドットコムニュース 2018/01/06-18:55)
  19. 阪大入試ミス30人追加合格 昨年の物理 指摘2度見過ごす(読売新聞2018年1月7日日曜日朝刊紙面第1面):”物理の試験は3850人が受験。音波に関する二つの問題のうち、数式を問う「問4」(3点)で三つの正答があったのに、一つのみを正答として採点した。このため、問4の解答を前提に数値を求める「問5」(4点)が成立しなくなった。”
  20. 「受験生の人生狂わせた」 阪大入試ミス  作成者 「正しい」思い込み(読売新聞2018年1月7日日曜日朝刊紙面第28面)

 

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類似する入試問題

 

 

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Tumor Biology誌の論文107報が撤回

2017年も残すところわずかとなりましたが、今年も研究不正の話題に事欠きませんでした。以下に紹介するのは、今年4月の出来事。

以下、エディテージ・インサイトの記事の一部を転載(Creative Commons)


シュプリンガーが中国人著者による論文107本を大量撤回

シュプリンガーが、がん研究を扱うオープンアクセスジャーナルTumor Biology誌に掲載されている107本の論文を撤回することを発表しました。これは、史上最大規模の大量撤回となります。編集長のトルニー・スティグブランド(Torgny Stigbrand)氏は、「厳格な調査の結果、査読プロセスの不正を認めざるを得ない証拠が見つかった」とし、出版倫理委員会(COPE)の勧告に基づいて撤回の判断を下したと説明しています。昨年末には、シュプリンガー・ネイチャーおよびバイオメド・セントラルによる浄化作戦の一環で、不正査読とオーサーシップ操作の疑いがあるとして、同誌の論文25本が撤回されました。

2016年に25本の論文が撤回された、シュプリンガーによる先述の浄化作戦の延長として、今回は107本の論文撤回に至りました。これらの論文は2012~2016年に出版されたもので、興味深いことに、多くが中国の著者(北京大学、上海交通大学、復旦大学、中国医科大学などの名門機関の研究者も含まれる)によって執筆されたものでした。ただし、このスキャンダルは、中国の研究の質を反映するものではありません。中国は、世界の科学研究および科学出版をリードする国の1つであり、ゲノム工学や核融合の分野において著しい貢献を果たしています。シュプリンガーのアルナウト・ジェイコブス(Arnout Jacobs)氏は、「今回の大量撤回は、世界中の論文を対象にしており、中国だけを標的にしたものではない」ことを強調しています。

出典元:「エディテージ・インサイト Sneha Kulkarni 2017年11月30日


 

撤回された107報の論文リスト

  1. Zhang, J., Xu, F. & Ouyang, C. (2012) Joint effect of polymorphism in the N-acetyltransferase 2 gene and smoking on hepatocellular carcinoma Tumor Biol. 33:1059-1063, doi 10.1007/s13277-012-0340-4
  2. Chen, X., Liang, L., Hu, X. et al. (2012) Glutathione S-transferase P1 gene Ile105Val polymorphism might be associated with lung cancer risk in the Chinese population Tumor Biol. 33:1973-1981, doi 10.1007/s13277-012-0457-5
  3. Zhang, Y. & Liu, C. (2013) The Interaction between Smoking and GSTM1 variant on lung cancer in the Chinese Population Tumor Biol. 34:395-401, doi 10.1007/s13277-012-0562-5
  4. Li, CY., Yuan, P., Lin, SS. et al. (2013) Matrix metalloproteinase 9 expression and prognosis in colorectal cancer: a meta-analysis Tumor Biol. 34:735-741. doi 10.1007/s13277-012-0601-2
  5. Zhang, RC. & Mou, SH. (2013) Polymorphisms of excision repair gene XPD Lys751Gln and hOGG1 Ser326Cys might not be associated with hepatocellular carcinoma risk: A meta-analysis Tumor Biol. 34:901-907, doi 10.1007/s13277-012-0625-7
  6. Dong, Y., Zhuang, L. & Ma, W. (2013) Comprehensive assessment of the association of ERCC2 Lys751Gln polymorphism with susceptibility to cutaneous melanoma Tumor Biol. 34:1155-1160, doi 10.1007/s13277-013-0657-7
  7. Wang, J., Xu, Y., Fu, Q. et al. (2013) Association of GSTT1 Gene Polymorphisms with the Risk of Prostate Cancer: An Updating Meta-analysis Tumor Biol. 34:1431-1440, doi 10.1007/s13277-012-0640-8
  8. Huang, Y., Liu, X., Kuang, X. et al. (2013) CYP2D6 T188C variant is associated with lung cancer risk in the Chinese population Tumor Biol. 34:2189-2193, doi 10.1007/s13277-013-0755-6
  9. Liu, C. & Wang, H. (2013) XRCC3 T241M polymorphism is associated risk of hepatocellular carcinoma in the Chinese Tumor Biol. 34:2249-2254, doi 10.1007/s13277-013-0765-4
  10. Li, F., Liu, Y., Fu, T. et al. (2013) Associations of three common polymorphisms in CD95 and CD95L promoter regions with gastric cancer risk Tumor Biol. 34:2293-2289, doi 10.1007/s13277-013-0773-4
  11. Li, W., Wu, H. & Song, C. (2013) TGF-?1 -509C/T (or +869T/C) polymorphism might be not associated with hepatocellular carcinoma risk Tumor Biol. 34:2675-2681, doi 10.1007/s13277-013-0818-8
  12. He, J. & Xu, G. (2013) LEP gene variant is associated with prostate cancer but not with colorectal cancer Tumor Biol. 34:3131-3136, doi 10.1007/s13277-013-0881-1
  13. Wu, D., Jiang, H., Gu, Q. et al. (2013) Association between XRCC1 Arg399Gln polymorphism and hepatitis virus-related hepatocellular carcinoma risk in Asian population Tumor Biol. 34:3265-3269, doi 10.1007/s13277-013-0899-4
  14. Yin, Y., Feng, L. & Sun, J. (2013) Association between Glutathione S-transferase M 1 null genotype and risk of ovarian cancer: a meta-analysis Tumor Biol. 34:4059-4063, doi 10.1007/s13277-013-0995-5
  15. Xu, JQ., Liu, P., Si, MJ. et al. (2013) MicroRNA-126 inhibits osteosarcoma cells proliferation by targeting Sirt1 Tumor Biol. 34:3871-3877, doi 10.1007/s13277-013-0974-x
  16. Chen, H., Tang, C., Liu, M. et al. (2014) Association of XRCC1 gene single nucleotide polymorphisms and susceptibility to pancreatic cancer in Chinese Tumor Biol. 35:27-32, doi 10.1007/s13277-013-1001-y
  17. Tian, X., Ma, P., Sui, C. et al. (2014) Comprehensive assessment of the association between tumor necrosis factor-alpha G238A polymorphism and liver cancer risk Tumor Biol. 35:103-109, doi 10.1007/s13277-013-1012-8
  18. Li, ZC., Zhang, LM., Wang, HB. et al. (2014) Curcumin inhibits lung cancer progression and metastasis through induction of FOXO1 Tumor Biol. 35:111-116, doi 10.1007/s13277-013-1013-7
  19. Jin, B., Dong, P., Li, K. et al. (2014) Meta-analysis of the association between GSTT1 null genotype and risk of nasopharyngeal carcinoma in Chinese Tumor Biol. 35:345-349, doi 10.1007/s13277-013-1047-x
  20. Sun, HL., Han, B., Zhai, HP. et al. (2014) Association between Glutathione S-transferase M1 null genotype and risk of gallbladder cancer: a meta-analysis Tumor Biol. 35:501-505, doi 10.1007/s13277-013-1070-y
  21. Xu, W., Wang, F., Ying, L. et al. (2014) Association between Glutathione S-transferase M1 null variant and risk of bladder cancer in Chinese Han population Tumor Biol. 35:773-777, doi 10.1007/s13277-013-1105-4
  22. Luo, S., Guo, L., Li, Y. et al. (2014) Vitamin D receptor gene ApaI polymorphism and breast cancer susceptibility: a meta-analysis Tumor Biol. 35:785-790, doi 10.1007/s13277-013-1107-2
  23. Chen, H., Zhou, B., Lan, X. et al. (2014) Association between single nucleotide polymorphisms of OGG1 gene and pancreatic cancer risk in Chinese Han population Tumor Biol. 35:809-813, doi 10.1007/s13277-013-1111-6
  24. Lv, S., Turlova, E., Zhao, S. et al. (2014) Prognostic and clinicopathological significance of survivin expression in bladder cancer patients: a meta-analysis Tumor Biol. 35:1565-1574, doi 10.1007/s13277-013-1216-y
  25. Liu, C., Yin, L., Chen, J. et al. (2014) The apoptotic effect of shikonin on human papillary thyroid carcinoma cells?through mitochondrial pathway Tumor Biol. 35:1791-1798, doi 10.1007/s13277-013-1238-5
  26. Shen, L., Chen, XD. & Zhang, YH. (2014) MicroRNA-128 promotes Proliferation in Osteosarcoma Cells by Down-Regulating PTEN Tumor Biol. 35:2069-2074, doi 10.1007/s13277-013-1274-1
  27. Ma, Z., Guo, W., Gong, T. et al. (2014) CYP1A2 rs762551 polymorphism contributes to risk of lung cancer: a meta-analysis Tumor Biol. 35:2253-2257, doi 10.1007/s13277-013-1298-6
  28. Geng, S., Wang, X., Xu, X. et al. (2014) Steroid receptor coactivator-3 promotes osteosarcoma progression through up-regulation of FoxM1 Tumor Biol. 35:3087-3094, doi 10.1007/s13277-013-1406-7
  29. Cheng, C., Chen, ZQ. & Shi, XT. (2014) MicroRNA-320 inhibits osteosarcoma cells proliferation by directly targeting fatty acid synthase Tumor Biol. 35:4177-4183, doi 10.1007/s13277-013-1546-9
  30. He, G., Chen, G., Chen, W. et al. (2014) Lack of association of XRCC1 rs1799782 genetic polymorphism with risk of pancreatic cancer: A meta-analysis Tumor Biol. 35:4545-4550, doi 10.1007/s13277-013-1598-x
  31. Han, M., Lv, S., Zhang, Y. et al. (2014) The prognosis and clinicopathology of CXCR4 in gastric cancer patients: a meta-analysis Tumor Biol. 35:4589-4597, doi 10.1007/s13277-013-1603-4
  32. Han, S., Cai, Z., Peng, L. et al. (2014) Ployamidoamine dendrimer loposome mediated survivin antisense oligonucleotide inhibits hepatic cancer cell proliferation by inducing apoptosis Tumor Biol. 35:5013-5019, doi 10.1007/s13277-014-1661-2
  33. Wang, L., Chen, Z., Wang, Y. et al. (2014) The association of c.1471G&>A genetic polymorphism in XRCC1 gene with lung cancer susceptibility in Chinese Han population Tumor Biol. 35:5389-5393, doi 10.1007/s13277-014-1702-x
  34. Yao, C., Lv, S., Han, M. et al. (2014) The association of Crk-like adapter protein with poor prognosis in glioma patients Tumor Biol. 35:5695-5700, doi 10.1007/s13277-014-1754-y
  35. Pei, J., Lou, Y., Zhong, R. et al. (2014) MMP9 activation triggered by epidermal growth factor induced FoxO1 nuclear exclusion in none small cell lung cancer Tumor Biol. 35:6673-6678, doi 10.1007/s13277-014-1850-z
  36. Chen, J., Huang, Q. & Wang, F. (2014) Inhibition of FoxO1 nuclear exclusion prevents metastasis of glioblastoma Tumor Biol. 35:7195-7200, doi 10.1007/s13277-014-1913-1
  37. Liu, L., Zou, J., Wang, Q. et al. (2014) Novel microRNAs expression of patients with drug resistant and sensitive chemotherapy of Epithelial Ovarian Cancer and preliminary analysis Tumor Biol. 35:7713-7717, doi 10.1007/s13277-014-1970-5
  38. Huang, J., Sun, C., Zhang, T. et al. (2014) Potent antitumor activity of HSP90 inhibitor AUY922 in adrenocortical carcinoma Tumor Biol. 35:8193-8199, doi 10.1007/s13277-014-2063-1
  39. Mao, D., Zhang, Y., Lu, H. et al. (2014) Molecular basis underlying inhibition of metastasis of gastric cancer by anti-VEGFa treatment Tumor Biol. 35:8217-8223, doi 10.1007/s13277-014-2095-6
  40. Lu, H., Li, H., Mao, D. et al. (2014) Nrdp1 inhibits growth of colorectal cancer cells by nuclear retention of p27 Tumor Biol. 35:8639-8643, doi 10.1007/s13277-014-2132-5
  41. Wang, F., Xiao, W., Sun, J. et al. (2014) MiRNA-181c inhibits EGFR-signaling-dependent MMP9 activation via suppressing Akt phosphorylation in glioblastoma Tumor Biol. 35:8653-8658, doi 10.1007/s13277-014-2131-6
  42. Cen, G., Ding, HH., Liu, B. et al. (2014) FBXL5 targets Cortactin for ubiquitination-mediated destruction to regulate gastric cancer cell migration Tumor Biol. 35:8633-8638, doi 10.1007/s13277-014-2104-9
  43. Wang, X. & Cao, X. (2014) Regulation of metastasis of pediatric multiple myeloma by MMP13 Tumor Biol. 35:8715-8720, doi 10.1007/s13277-014-2147-y
  44. Zhou, X. & Qi, Y. (2014) PLGF inhibition impairs metastasis of larynx carcinoma through MMP3 downregulation Tumor Biol. 35:9381-9386, doi 10.1007/s13277-014-2232-2
  45. Xu, JQ., Zhang, WB., Wan, R. et al. (2014) MicroRNA-32 inhibits osteosarcoma cells proliferation and invasion by targeting Sox9 Tumor Biol. 35:9847-9853, doi 10.1007/s13277-014-2229-x
  46. Ding, H., Zhu, Y., Chu, T. et al. (2014) Epidermal growth factor induces FoxO1 nuclear exclusion to activates MMP7-medidated metastasis of larynx carcinoma Tumor Biol. 35: 9987-9992, doi 10.1007/s13277-014-2067-x
  47. Li, X., Zhang, G., Huai, YJ. et al. (2014) Association between APE1 T1349G polymorphism and prostate cancer risk: Evidence from a meta-analysis Tumor Biol. 35:10111-10119, doi 10.1007/s13277-014-2115-6
  48. Yang, YQ., Qi, J., Xu, JQ. et al. (2014) MicroRNA-142-3p, a novel target of tumor suppressor Menin, inhibits osteosarcoma cell proliferation by down-regulation of FASN Tumor Biol. 35:10287-10293, doi 10.1007/s13277-014-2316-z
  49. Ye, Y., Zhou, X., Li, X. et al. (2014) Inhibition of epidermal growth factor receptor signaling prohibits metastasis of gastric cancer via downregulation of MMP7 and MMP13 Tumor Biol. 35:10891-10896, doi 10.1007/s13277-014-2383-1
  50. Wang, J., Su, H., Han, X. et al. (2014) Inhibition of fibroblast growth factor receptor signaling impairs metastasis of hepatocellular carcinoma Tumor Biol. 35:11005-11011, doi 10.1007/s13277-014-2384-0
  51. Duan, JH. & Fang, L. (2014) MicroRNA-92 promotes gastric cancer cell proliferation and invasion through targeting FXR Tumor Biol. 35:11013-11019, doi 10.1007/s13277-014-2342-x
  52. Li, XD., Zhang, YJ. & Han, JC. (2014) Betulin inhibits lung carcinoma proliferation through activation of AMPK signaling Tumor Biol. 35:11153-11158, doi 10.1007/s13277-014-2426-7
  53. Piao, YR., Jin, ZH., Yuan, KC. et al. (2014) Analysis of Tim 3 expression in prostate cancer Tumor Biol. 35:11409-11414, doi 10.1007/s13277-014-2464-1
  54. Liu, S., Gong, Z., Chen, M. et al. (2014) Lgr5-positive cells are cancer stem cells in skin squamous cell carcinoma Tumor Biol. 35:11605-11612, doi 10.1007/s13277-014-2488-6
  55. Xu, WJ., Guo, BL., Han, YG. et al. (2014) Diagnostic value of alpha-fetoprotein-L3 and Golgi protein 73 in hepatocellular carcinomas with low AFP levels Tumor Biol. 35:12069-12074, doi 10.1007/s13277-014-2506-8
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  57. Li, K., Zhong, C., Wang, J. et al. (2014) Association of androgen receptor Exon 1 CAG repeat length with risk of hepatocellular carcinoma: a case-control study Tumor Biol. 35:12519-12523,doi 10.1007/s13277-014-2570-0
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  60. Peng, C., Zhou, K., An, S. et al. (2015) The effect of CCL19/CCR7 on the proliferation and migration of cell in prostate cancer Tumor Biol. 36:329-335, doi 10.1007/s13277-014-2642-1
  61. Han, G., Xie, S., Fang, H. et al. (2015) The AIB1 gene polyglutamine repeat length polymorphism contributes to risk of Epithelial Ovarian Cancer Risk: a case-control study Tumor Biol. 36:371-374, doi 10.1007/s13277-014-2661-y
  62. Lu, J., Yin, X. & Jiang, J. (2015) Sports-induced blood sugar utilization prevents development of pancreatic ductal adenocarcinoma Tumor Biol. 36:663-667, doi 10.1007/s13277-014-2684-4
  63. Jiang, Y., Sun, S., Liu, G. et al. (2015) Nrdp1 inhibits metastasis of colorectal cancer cells by EGFR-signaling-dependent MMP7 modulation Tumor Biol. 36:1129-1133, doi 10.1007/s13277-014-2726-y
  64. Zhang, Z., Yan, Z., Yuan, Z. et al. (2015) SPHK1 inhibitor suppresses cell proliferation and invasion associated with the inhibition of NF-?B Pathway in hepatocellular carcinoma Tumor Biol. 36:1503-1509, doi 10.1007/s13277-014-2665-7
  65. Huang, J., Jia, J., Tong, Q. et al. (2015) Knockdown of cancerous inhibitor of protein phosphatase 2A may sensitize Metastatic Castration-Resistant Prostate Cancer Cells to Cabazitaxel Chemotherapy Tumor Biol. 36:1589-1594, doi 10.1007/s13277-014-2748-5
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  67. Li, C., Zhao, Z., Zhou, Z. et al. (2015) Augmented TGF? receptor signaling induces apoptosis of pancreatic carcinoma cells Tumor Biol. 36:2815-2819, doi 10.1007/s13277-014-2908-7
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  69. Liu, M., Zhang, K., Zhao, Y. et al. (2015) Evidence for involvement of steroid receptors and coactivators in neuroepithelial and meningothelial tumors Tumor Biol. 36:3251-3261, doi 10.1007/s13277-014-2954-1
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  72. Li, S., Lei, X., Zhang, J. et al. (2015) Insulin-like growth factor 1 promotes growth of gastric cancer by inhibiting foxo1 nuclear retention Tumor Biol. 36:4519-4523, doi 10.1007/s13277-015-3096-9
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  74. Chen, Y., Tian, Y., Ji, Z. et al. (2015) CC-chemokine receptor 7 is Overexpressed and Correlates with Gowth and Metastasis in Prostate Cancer Tumor Biol. 36:5537-5541, doi 10.1007/s13277-015-3222-8
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  76. Chen, B., Hou, Z., Li, C. et al. (2015) MiRNA-494 inhibits metastasis of cervical cancer through Pttg1 Tumor Biol. 36:7143-7149, doi 10.1007/s13277-015-3440-0
  77. Li, R., Shi, X., Ling, F. et al. (2015) MiR-34a suppresses ovarian cancer proliferation and motility by targeting AXL Tumor Biol. 36:7277-7283, doi 10.1007/s13277-015-3445-8
  78. Zhang, Y., Li, A., Peng, W. et al. (2015) Efficient inhibition of growth of metastatic cancer cells after resection of primary colorectal cancer by soluble Flt-1 Tumor Biol. 36:7399-7407, doi 10.1007/s13277-015-3434-y
  79. Jiang, Y., Meng, Q., Qi, J. et al. (2015) MiR-497 promotes metastasis of colorectal cancer cells through Nrdp1 inhibition Tumor Biol. 36:7641-7647, doi 10.1007/s13277-015-3489-9
  80. Zhao, Z., Xi, H., Xu, D. et al. (2015) Transforming growth factor ? receptor signaling restrains growth of pancreatic carcinoma cells Tumor Biol. 36:7711-7716, doi 10.1007/s13277-015-3466-3
  81. Guo, H., Xu, Y. & Fu, Q. (2015) Curcumin inhibits growth of Prostate carcinoma via miR-208-mediated CDKN1A activation Tumor Biol. 36:8511-8517, doi 10.1007/s13277-015-3592-y
  82. Liu, G., Zhu, Z., Lang, F. et al. (2015) Clinical significance of CUL4A in human prostate cancer Tumor Biol. 36:8553-8558, doi 10.1007/s13277-015-3580-2
  83. Zhao, J., Kong, Z., Xu, F. et al. (2015) A role of MMP-14 in the regulation of invasiveness of nasopharyngeal carcinoma Tumor Biol. 36:8609-8615, doi 10.1007/s13277-015-3558-0
  84. Chen, L., Xu, L. & Wang, G. (2015) Regulation of Met-mediated proliferation of thyroid carcinoma cells by miR-449b Tumor Biol. 36:8653-8660, doi 10.1007/s13277-015-3619-4
  85. Du, Y., Wang, Y., Zhang, F. et al. (2015) Regulation of metastasis of bladder cancer cells through WNT signaling pathway Tumor Biol. 36:8839-8844, doi 10.1007/s13277-015-3563-3
  86. Zhang, XT., Zhang, Z., Xin, YN. et al. (2015) Impairment of growth of gastric carcinoma by miR-133-mediated Her-2 inhibition Tumor Biol. 36:8925-8930, doi 10.1007/s13277-015-3637-2
  87. Gong, C., Zhang, Y., Chen, Y. et al. (2015) High expression of ErbB3 binding protein 1 (EBP1) predicts poor prognosis of pancreatic ductal adenocarcinoma (PDAC) Tumor Biol. 36:9189-9199, doi 10.1007/s13277-015-3625-6Date: 16th June 2017As an update to the retraction note, further investigation has revealed that the compromised peer review process was through no fault of the authors.
  88. Ma, X., Li, X., Lu, X. et al. (2015) Interaction between TNFR1 and TNFR2 dominates the clinicopathologic features of human hypopharyneal carcinoma Tumor Biol. 36:9421-9429, doi 10.1007/s13277-015-3684-8
  89. Fang, C., Shen, Y., Qi, P. et al. (2015) Astrocyte elevated gene-1 mediates insulin-like growth factor 1-induced the progression of cardiac myxoma Tumor Biol. 36:9769-9777, doi 10.1007/s13277-015-3739-x
  90. Song, JG., Xie, HH., Li, N. et al. (2015) SUMO-specific protease 6 promotes gastric cancer cells growth via de-SUMOylation of FoxM1 Tumor Biol. 36:9865-9871, doi 10.1007/s13277-015-3737-z
  91. Sun, E., Zhang, W., Wang, L. et al. (2016) Down-regulation of Sphk2 Suppresses Bladder Cancer Progression Tumor Biol. 37:473-478, doi 10.1007/s13277-015-3818-z
  92. Wang, H., Yang, M., Xu, J. et al. (2016) Survivin mRNA-circulating tumor cells are associated with tumor metastasis in prostate cancer Tumor Biol. 37:723-727, doi 10.1007/s13277-015-3812-5
  93. Yan, J., Zhang, Y., Shi, W. et al. (2016) The critical role of HMGA2 in regulation of EMT in epithelial ovarian carcinomas Tumor Biol. 37:823-828, doi 10.1007/s13277-015-3852-x
  94. Niu, H., Zhang, X., Wang, B. et al. (2016) The clinical utility of image-guided iodine-125 seed in patients with unresectable pancreatic cancer Tumor Biol. 37:2219-2223, doi 10.1007/s13277-015-4045-3
  95. Xu, G., Qi, F., Zhang, J. et al. (2016) Overexpression of OCT4 contributes to progression of hepatocellular carcinoma Tumor Biol. 37:4649-4654, doi 10.1007/s13277-015-4285-2
  96. Fan, JY., Yang, Y., Xie, JY. et al. (2016) MicroRNA-144 mediates metabolic shift in ovarian cancer cells by directly targeting Glut1 Tumor Biol. 37:6855-6860, doi 10.1007/s13277-015-4558-9
  97. Pan, J., Lu, F., Xu, H. et al. (2016) Low p21 level is necessary for the suppressive effects of micoRNA-31 on glioma cell migration and invasion Tumor Biol. 37:9663-9670, doi 10.1007/s13277-016-4788-5
  98. Li, J., Song, Z., Wang, Y. et al. (2016) Overexpression of SphK1 enhances cell proliferation and invasion in triple-negative breast cancer via the PI3K/AKT signaling pathway Tumor Biol. 37:10587-10593, doi 10.1007/s13277-016-4954-9
  99. Li, Y., Dong, M., Kong, F. et al. (2015) Octamer transcription factor 1 mediates epithelial-mesenchymal transition in colorectal cancer Tumor Biol. 36:9941-9946, doi 10.1007/s13277-015-3766-7
  100. Li, S., Gao, Y., Ma, W. et al. (2016) Ginsenoside Rh2 inhibits invasiveness of glioblastoma through modulation of VEGF-A Tumor Biol. 37:15477-15482, doi 10.1007/s13277-015-3759-6
  101. Shi, Y., Tan, Y., Zeng, D. et al. (2016) MiR-203 suppression in gastric carcinoma promotes Slug-mediated cancer metastasis Tumor Biol. 37:15483-15488, doi 10.1007/s13277-015-3765-8
  102. Sun, J., Ding, W., Zhi, J. et al. (2016) MiR-200 suppresses metastases of colorectal cancer through ZEB1 Tumor Biol. 37:15501-15507, doi 10.1007/s13277-015-3822-3
  103. Gao, F., Wang, T., Zhang, Z. et al. (2016) Regulation of activating protein-4-associated metastases of non-small cell lung cancer cells by miR-144 Tumor Biol. 37:15535-15541, doi 10.1007/s13277-015-3866-4
  104. Peng, Z., Xu, T., Liao, X. et al. (2016) Effects of radiotherapy on nasopharyngeal carcinoma cell invasiveness Tumor Biol. 37:15559-15566, doi 10.1007/s13277-015-3960-7
  105. Liu, W., An, J., Li, K. et al. (2016) MiR-429 regulates gastric cancer cell invasiveness through ZEB proteins Tumor Biol. 37:15575-15581, doi 10.1007/s13277-015-4094-7
  106. Zhang, Z., Zhou, Q., Miao, Y. et al. (2016) MiR-429 induces apoptosis of glioblastoma cell through Bcl-2 Tumor Biol. 37:15607-15613, doi 10.1007/s13277-015-4291-4
  107. Zhang, Z., Song, X., Feng, X. et al. (2016) Norcantharidin modulates miR-655-regulated SENP6 protein translation to suppresses invasion of glioblastoma cells Tumor Biol. 37:15635-15641, doi 10.1007/s13277-015-4447-2

(出典:Stigbrand, T. Tumor Biol. (2017). https://doi.org/10.1007/s13277-017-5487-6)

 

報道

  1. Science journal retracts 107 research papers by Chinese authors (South China Morning Post 23 April, 2017, 11:45pm, UPDATED 12 June, 2017, 12:53pm):”A major international publisher has retracted 107 research papers by Chinese authors after learning about irregularities in their peer review process. The Springer Nature publishing company said on Thursday the papers were published in the journal Tumor Biology between 2012 and last year. The authors supplied the journal’s editors with made-up contact information of third-party reviewers.”
  2. 撤回107中国论文的国际期刊有幽灵编委(网易 2017-05-20 07:22:11 来源: 澎湃新闻网(上海) )
  3. 中国が学術不正防止に本腰 (エナゴ学術英語アカデミー 2017年5月17日)
  4. 曾撤回中国107篇论文的期刊,如今被SCI除名 (新浪 2017年07月19日 09:23 澎湃新闻)

現代ラボ用語の基礎知識

ラボでは当たり前に使われている言葉でも、一般の人には新鮮に響くことがあるようです。そんな、ラボ特有の言い回しをまとめてみました。(生物系のラボ。随時追加、変更あり)

  1. アクセプト【accept】投稿した論文が受理(掲載許可)されること。「リバイスに1年もかかったけど、やっとアクセプトされたよ!」「おめでとう!」
  2. アクティビティ【activity】いい論文をコンスタントに出している状態。「あのラボはアクティビティが高いね。」
  3. あてうま【当て馬】採用される人が予め決まっている公募の面接に呼ばれる他の候補者のこと。「東○大に面接に呼ばれたんだって?」「どうせ当て馬だと思うけど、しっかり準備して行くよ。」
  4. あとがない【後が無い】①研究職の任期が切れる寸前だが、次の職がまだ決まっていない状態。「この論文、絶対通ってくれないと。俺、後が無いから。」 ②出すジャーナルを下げすぎて、もうこれ以上下げられない状態。 「サイレポにも蹴られて、もう後が無いよ。」「大丈夫、ジャーナルなんて、ほかにいくらでもあるから。」「いや、俺もう、後がないから。」
  5. あれ、どうなった?【あれ、どうなった?】何も考えていないボスが、学生に進捗状況を聞くときに使う、いい加減な言葉。「おい、あれ、どうなった?」「今、実験している最中です。」「おお、そうか!」 「あれ、どうなった?」「あれってなんですか?」「あれだよ、あれ、ほら、その‥。」

  1. いいしごと【いい仕事】雑誌のインパクトファクターが、その雑誌の個々の論文の価値を示すものではないという批判は常に存在するが、現実的なこととして、インパクトファクターの高いジャーナルに出た論文や人を高く評価する傾向が多くの人に見られる。そのため、「いい仕事=いい論文」と、同義語のように用いられることが多い。「これはきっといい仕事になると思うよ。」「彼は凄くいい仕事をしていてね。」
  2. いいとこねらう【いいとこ狙う】トップジャーナルへの掲載を目指すこと。「これなら、いいとこ狙えるんじゃない?」
  3. イエローチップ【yellow tip】ピペットマンで200マイクロリットルまでを測りとるためのチップ。もともと純正のものは黄色だったことから。他社製品であろうと、色が何色であろうと、イエローチップと言えばこのサイズのチップのことを意味する。「昔は、貧乏なラボでは、イエローチップを洗って再利用していたんだぞ。」「昔は、ラボに新しく入って最初の仕事は、イエローチップを(ラックに)詰めることだったんだよ。」「いつの時代だよ?」
  4. いきのこる【生き残る】アカデミアにおいて大学教員などのパーマネントの研究職を得ること。あるいは、任期付きであっても順調に次の職を得るか任期更新が行われ、コンスタントに仕事ができている状態。サバイブする、と同義。「なんとか生き残ることができた。」 「もう自分は生き残れないと思う。」 「今の時代、生き残るだけでも大変だね。」
  5. いちゃもん【イチャモン】投稿論文に対する差読者のコメントの中で、差読者が、実行不可能な実験などを著者に要求してくること。「(査読コメントに目を通した後、)こんなの、イチャモンだよ!(怒)」
  6. いっぱつアクセプト【一発アクセプト】リバイスを経ることなく速やかに投稿論文が受理されること。「ジャーナル下げたら、一発アクセプトだった。」
  7. いわれたことだけ【言われたことだけ】①最近の若者が、言われたことだけしかやらないこと。論文投稿中の研究者が、リバイスの際に、差読者に言われたことだけしかやらないこと。「原稿の修正や追加実験は、言われたことだけにしといたほうがいいよ。」
  8. インパクトファクター【impact factor】雑誌のランキングを決める数値指標で毎年算出される。「PLOS ONEのインパクトファクターって今いくつくらいだっけ?」

  1. うえから【上から】少しでもインパクトファクターの高いジャーナルに論文を出すことを目的として、駄目もとでトップジャーナルからから順番に投稿を試みること。最初にネイチャーやセル、サイエンスのどれかに投稿し、リジェクトされた場合には、同じ出版社の姉妹紙でもう少し通りやすいところや、あるいはインパクトファクターなどを考慮して他の出版社の学術誌に、ランキングを下げながら順にトライしていくこと。 「(この仕事、)どこに出すの?」「上からトライしてみようかな、と。」
  2. うつくしい【美しい】研究者が用いる場合には、美しい女性でも、美しい絵画でもなく、美しい「ストーリー」を持った研究成果を指すことが多い。「今週のネイチャーのあの論文、美しいストーリーだね。」”Beautiful work! Congratulations!”
  3. うぷす【Oops!】オッと。アメリカ帰りの研究者が、何かちょっとした失敗をしたときに思わず発してしまう言葉。英語がさほどしゃべれるようになっていなくても、感情を表す言葉だけは、なぜか口をついて出てくる。ただし、発音は日本語化している。「うっぷす。(試薬を)入れる量、間違えた!」

  1. えいぶんこうせい【英文校正】論文原稿の中に、ネイティブに意味が取れない箇所がないかチェックすること。「違う意味に直されちゃったよ。」「誤解される表現だったんじゃない?」
  2. エディターキック【editor kick】査読にまわされずに、編集者や編集部の判断で蹴られること。「だめもとでネイチャーに出したら、あっさりエディターキックを食らった。」
  3. エネルギー【energy】研究を行なうために必要な情熱やエネルギーのこと。「ボスと話をすると、エネルギーを吸い取られちゃうなあ。」
  4. エビデンス【evidence】①科学的主張を裏付ける実験結果のこと。②相手を論破する目的で使われる、科学的な根拠があるかのように思わせるための言葉。「ひろゆきさん、こちらにはエビデンスがあるんです。」(サントリー)「エビデンスとは、体脂肪を減らすのを助けるという保健の用途に関する表示の許可を得る再に根拠としたヒト試験結果を指します。」(サントリー)
  5. エラーバー【error bar】平均値を表す棒グラフなどにおいて、標準誤差や標準偏差などを示した線分のこと。通常は、統計処理ソフトで自動的に計算・描画が行なわれる。例外的に、東京大学医学部においてはエラーバーの作成は手作業で行なわれるのが通常である(出典)。「エラーバー、もっと短くならないの?」
  6. えぬ【n】実験サンプルの例数。「nを増やせば、有意差出るかも。」
  7. エタチン【エタ沈】エタノール沈殿の略。DNAの精製過程で、塩とエタノールの混合液中でDNAを沈殿させるステップ。「行こうよ。エタ沈で止めておけばいいじゃん。」
  8. エッペン【Eppendorf tube】エッペンドルフチューブの略。生物系のラボで最も多用される1.5mlチューブのこと。本来はエッペンドルフ社の製品を指すが、高価なため安価な他社製品を使うラボが多い。しかし、どの会社の製品であっても1.5mlチューブのことをエッペンと呼ぶことが通常になっている。「エッペンちょっと分けてもらっていい?」「エッペンなくなりかけているから、次、注文しておいて。」「このラボ、エッペン、エッペンドルフのを使ってるんだ?金持ちだね。」

  1. おかね【お金】研究費のこと。「あのラボはお金がないから、(そこに進学するのは)やめといたほうがいいよ。」 「今年はお金があまりない。」 「金持ちのラボ」
  2. おけしょう【お化粧】一般的な意味は、女性(最近は男性も)が粉末や液体など様々な化学物質を顔などの皮膚表面に付着させることにより、強調すべき顔のパーツを強調し、強調したくない部分を目立たなくするなど、自分の見栄えを良くする行為のことである。そこから転じて、画像データなどでストーリーに合わない部分を隠したり、目立たなくさせたり、また、見せたい部分だけを強調するなどして論文の図を作成する行為。「あれはほんのお化粧の範疇であり、データ捏造にはあたらない。」
  3. おしこむ【押し込む】権威のある研究者が、出来の悪い(=論文業績が足りない)部下の研究者を、無理やりどこかの大学のパーマネント職に就けてしまうこと。「最近は状況が厳しすぎて、昔みたいにどこかに押し込むこともできなくなった。」(想像)
  4. おちる【落ちる】①大学教員公募に落ちること。「今回もまた落ちた。」 申請していた研究費が審査の結果、不採択になること。「今年もまた落ちた。」
  5. オーディナリーリサーチャーズ【Ordinary_researchers】「普通の研究者たち」。東京大学医学部および東京大学分子細胞生物学研究所の研究不正疑惑を2016年8月に告発した研究者たちが、匿名で告発を行なう際に名乗ったニックネーム。
  6. おとす【落とす】投稿するジャーナルのランクを下げること。「これ以上落としたくない。」
  7. オネストエラー【honest error】うっかりミス。または、データ捏造を誤魔化すための見え透いた言い訳。「指摘された論文の図に関してですが、すべてオネストエラーであり、雑誌編集部に修正を依頼しております。」
  8. おもいつく【思い付く】何か新しいアイデアが自分の頭の中に浮かぶこと。または、部下からの提案を却下してしばらく経ったあとで、そのアイデアがボスの頭の中で想起されること。
  9. オリジナルデータ【original data】論文の図表のもととなる、観察や測定によって得られた数値や、画像などの生データ。通常は論文の数値と一致するが、東大医においてはほとんど一致しない。

  1. カウントする【countする】論文業績として評価する数に入れること。「ファーストじゃないとカウントされないよ。」 「理研BSIでは、NEURON以上じゃないとカウントされないって聞いたけど、ホント?」
  2. かえってくる【返ってくる】投稿していた論文が、査読を終えて雑誌編集部から返されてくること。「論文どうだった?」「まだ返ってこない。」「遅いね。」
  3. かえる【帰る】留学先から帰国して日本で職を得ること。または、海外でPIの職についていた人が、日本にポジションを得て帰国すること。「日本に帰りたいけど、職がない。」 「ハーバードの●●先生、日本に帰ってたんだ?知らなかった。」
  4. かきました【書きました】論文草稿や研究費の申請書を書けたと思っている学生が返事に使う言葉。日本語の文章であっても、主部と述部の対応がなっていなかったり、英語の場合には中学生レベルの文法の間違いやスペルミスのオンパレードであったりと、想像を絶するレベルで、全く書けていないことが多い。本人の言葉を鵜呑みにせず、一刻も早く見せてもらってチェックすることが重要である。「書いた?」「書きました!」
  5. がくせい【学生】通常の日本語では大学生のことを指す言葉だが、学部学生がいない研究環境においては、大学院生のことを指す。 「最近の学生は研究一辺倒じゃなくて、プライベートな時間もしっかり確保する人が多いんだね。」
  6. がくちょうのけんげん【学長の権限】研究不正を告発した教員を逆に解雇したり、気に入らない教員の雇用延長を取り消す力。また、白日の下に晒され、誰がどう見ても明らかとしか言いようのない研究不正を揉み消す力。「最近あちこちの大学で起きていることをみれば、学長の権限強化が非常に危険なことは明らかだと思う。」
  7. かけんひ【科研費】科学研究費補助金の略称。「科研費の締め切りっていつだっけ?」「そろそろ科研費、書き始めないと。」「今年、科研費が一つも獲れなかった。」
  8. かせつ【仮説】研究の対象としている自然現象に関して、最も合理的と思われる説明を”仮”に設定したもの。多くの科学研究においては、この仮説の正しさを検証することを目的として、実験が行なわれる。いわば、研究の芯となる部分。本来、大学院生を含めた研究者一人一人が、自分が現在行なっている研究に関する仮説を持っていて然るべきであるが、実際には、仮説なしに研究生活を送っている人が相当数存在する。仮説不在の研究は、研究目的が曖昧になり、しばしば迷走し、何年経っても論文としてまとまらない恐れがある。また、労働集約型ラボにおいては、そもそも研究室全体に仮説不在のことがある。現実的には、執筆の段階になってから、論文をうまく構成する都合上、実験結果に合わせて仮説が立てられることもある。仮説検証型ではないタイプの科学研究も存在するが、そのような場合でも、「仮説」の意味を広く捉えれば、何らかの意味でそこに仮説が存在している(と、個人的には考えている)。「TESTABLEでないものは、仮説とは呼ばないよ。」
  9. ガチ【ガチ】大学教員公募において、候補者が予め決まっておらず、応募者の中での真剣勝負になること。「この公募ってガチかなぁ?」「ガチ公募なんて、そうそうないよ。」
  10. がんばんなきゃだめだよ【頑張んなきゃ駄目だよ】ボスが大学院生を叱咤激励するときに使う言葉。何をどう頑張れば良い実験結果を出せるのかがわからず途方に暮れている大学院生にとっては、このような励まされ方はあまりうれしくない。「頑張んなきゃ駄目だよ!」「はぁ。」
  11. かく【書く】①論文の原稿を書くこと。「データもたまってきたし、そろそろ書き始めよっかな。」  論文を出すこと。「最近、書いてないのでやばい。」

  1. キムワイプ【Kimwipe】ラボ内で最も普通に使われている「ちり紙」みたいなもの。拭いたり、吸ったり、あらゆる実験用途に使われる。もちろん、家庭で使われるちり紙よりもずっと高価。「こら、キムワイプで鼻かむな!」
  2. きょうはきげんがいい【今日は機嫌がいい】ボスの機嫌が良い日であること。感情の振れが激しく、独裁者として振舞うボスの下で働く者にとって、日々変化するボスの機嫌の状態を把握しておくことは、仕事のストレスを最小化するうえで大変重要である。そのため、ボスの機嫌の状態に関して、ラボ内で緊密に情報交換が行なわれるのが常である。「ボス、今、鼻歌うたってなかった?」「うん。今日は、かなり機嫌がいいよね。」「頼みごとを切り出すなら今だよ。」
  3. ギルソン【Gilson】ギルソン社のピペットマンのこと。ピペットマン(←商品名)のシェアが余りにも大きいため、どの会社の製品であってもマイクロピペットのことはピペットマンと呼ばれる。そこで、「ギルソンのピペットマン」であることを明示するために使われる言葉。「このラボ、(ピペットマンが)全部ギルソンなんだ?金持ちだね。」「ギルソンは堅いから、自分はこっち(Finnpipette)のほうが好きなんだよね。」

  1. グレー【gray(米) grey(英)】研究不正を「クロ」、不正のない実験・研究を「シロ」としたときに、好ましくないが不正とまではいえないような行為をグレーと呼ぶことがある。また、新聞などのメディアは断定的な表現を避ける意図で、限りなくクロに近いものであっても、単にグレーと呼ぶことがある。実際には、グレーゾーンに、万人が納得するようなシロクロの境界を引くことは難しい。「研究って、どうしてもグレーな部分ってあるよね。」「あの論文は、ちょっとグレーじゃない?」
  2. クレジット【credit】その人がその研究をしたという評価、仕事に対する貢献度を認めること。研究成果を論文発表するときには、複数の著者場合の並び順や、コレスポンディングオーサーになるかどうかにより、クレジットの度合いが表される。また、論文執筆において他人の研究成果を正しく引用することは、その人の貢献を認めて正統なクレジットを与えているということになる。「共同研究の場合、クレジットをどう分け合うかが難しい。」「共同研究者にクレジットを全部持っていかれた。」「共同研究は歓迎だけど、クレジットはちゃんと欲しい。」

  1. けられる【蹴られる】論文がリジェクトされること。「ネイチャーに蹴られた。」
  2. けんきゅうをやめる【研究を辞める】アカデミアの研究職を辞めること。民間などで研究以外の職に就いたり、アカデミアの中でもURAなど事務系の研究支援職に転ずることが多い。「彼、研究辞めちゃったんだって?」 「君が研究を辞めるなんて、もったいないよ。」
  3. けんきゅうふせい【研究不正】①わかりやすく言えば、実験ノートが存在しないこと、または、実験ノートが提出できないこと。捏造(fabrication)、改竄(falsification)、盗用(plagiarism)の3つをまとめて、研究不正(research misconduct)とする定義が一般的(参照:文科省)。実験はしたが期待した有意差が出なかったときにエラーバーを短く見せかけて有意差があったかのようにする行為は、文科省の定義では、「改竄」になるが、有意差をでっちあげているわけだから一般的な言葉遣いでの”捏造”であり、「捏造」と「改竄」を厳密に分けることには意味がない。「実験ノートを出さない人は、研究不正をしていると見なします。」(参考)「やっぱり科学における犯罪ですよね、不正は。」(2008年分生シンポ記録PDF) ②〔東大・医〕定義されない。存在しない。「不正行為はない」(参考

  1. コネ【connection】大学教員になるときに(しばしば)必要とされる、研究者(採用側)と研究者(応募者)との間の人間的な強い繋がり。「公募に出しても、呼ばれもしないんです。」「コネがないとねぇ。」
  2. コピペ【copy & paste】コピーアンドペーストを縮めた言い方。一つのアプリケーションで対象物をコピーし、別のあるいは同一のアプリケーションでそれを貼り付ける行為。例えば、ウェブブラウザ上でNIHのウェブサイトの文章をコピーし、マイクロソフトワード上で書きかけのD論に貼り付けるなどすれば、非常に効率よく博士論文をでっちあげることができる。別の使い方として、図1のゲルの写真のバンドの一部をコピーし、図2や図3、図4のゲルの写真にペーストすれば、簡単に複数データを作り出すことができるため、実験をせずに論文を作成できる。東京大学分子細胞生物学研究所の一部のラボでは論文量産にあたってこのテクニックが多用されていた。コピペの応用範囲は思ったよりも広く、棒グラフのエラーバーのコピペもまた実験データ量産に有効で、東京大学医学部の研究者らがそれを実践していたことが2016年8月に明らかとなり、世間を驚嘆させた(詳細)。「コピペは駄目だぞ!」「コピペは文化だという大学もあるらしいw。」「エラーバーまでコピペしちゃうという発想は、普通の研究者の頭じゃ絶対に出てこないよね。」
  3. ごりおし【ゴリ押し】大御所の研究者が、ペーペーのエディターに、権威をもってして論文を通させること。雑誌社に雇用されている編集者は多少の研究経験の後すぐに編集者になっている場合もあり、このような力関係のアンバランスが生じる恐れがある(と個人的に想像している)。「なぜこれがネイチャー?」「ゴリ押ししたんじゃないの?」
  4. コレスポ【Corresponding author】コレスポンディングオーサー(責任著者)を短く縮めた言い方。文字通りの意味は編集部とやりとりをする著者のことだが、通常は研究代表者で、研究の全責任を負う人になる。「この仕事は全部自分の研究費でやったし、論文も全部自分で書いたのだから、コレスポ取らせてほしいよね。」
  5. こんせぷちゅあるあどばんす【conceptual advance】研究成果が、既成の概念の変更を迫るくらいに革新的であること。トップジャーナルには必須とされ、これがないとリジェクトされる理由になる。「コンセプチュアル・アドバンスがないと、ネイチャーなんて通りっこないよ。」”The paper does not provide the conceptual advance needed for publication in Science.” “Manuscripts may be rejected because they represent a relatively small conceptual advance on our present state of knowledge.” “A referee has raised major conceptual concerns about the advance your findings represent.”
  6. コンタミ【Contamination】細胞を培養しているときに、酵母やカビ、雑菌がシャーレの中に混入して繁殖してしまうこと。または、生きものや試薬に関して、本来あるべきでないものが、混じってきてしまうこと。「コンタミさせないように、注意しろよ。」 「コンタミで、培養細胞を駄目にした。」  「きっと、RNaseがコンタミしてたんじゃないの?」
  7. コントロール【control】対照実験のこと。ネガティブコントロールやポジティブコントロールのこと。「コントロールが甘いと論文にならないよ。」

  1. さ【差】実験群と対照群の間でみられる有意差のこと。「なかなか差が出せなくて苦労してる。」 「ところであの実験、差は出たの?」 「残念、差が出なかった。」
  2. サイエンス【Science】①アメリカの学術誌でネイチャーと並んで最も権威があるジャーナルとされる。研究者が考える理想的な科学研究の在り方。「そんなの、サイエンスじゃないよ。」
  3. さいげんされた【再現された】データ捏造などの論文不正を疑われた著者が、実験をやり直して論文の主張どおりの実験結果を見せることにより、不正行為があったかどうかをウヤムヤにするときに使う常套句。当たり前のことだが、仮に実験結果が再現されたとしても、それは最初の実験に不正行為がなかったことの証明にはならない。「指摘のあった論文の図に関しては、残念ながら実験ノートの存在を確認できませんでした。しかしながら、実験をやり直したところ論文と同様の結果が得られましたので、不正行為はなかったものと考えております。」

  4. さいげんできない【再現できない】トップラボに留学した日本人ポスドクがしばしば陥る罠。そのラボでセル、サイエンス、ネイチャーなどのトップジャーナルに論文を出したポスドクのあとを引き継ぐ研究テーマを任されたにも拘らず、その論文のメインデータが自分の手では再現できないこと。「実はあの論文、再現できないんだよね‥。」

  5. サイレポ【Scientific Reports】サイエンティフィックリポーツは、ネイチャーを出版しているのと同じ出版社によるオープンアクセスジャーナルで、掲載に係る審査において研究意義の大きさを問わないという特色がある。また、掲載料(ライセンス料)が比較的高額なため、お金を出せば誰でも掲載できる雑誌でしょ?という誤解をする人がたまにいる。ネイチャーの姉妹紙の中で最も掲載が容易であることは間違いない。 「研究費いっぱい貰っているくせに、サイレポにばかり論文出してるラボってどうなの?」
  6. さちる【飽和る】saturateするという英語から。蛍光画像取得時などにおいて、シグナル強度が強い部分では、測定された値との直線性が失われ、値の伸びが飽和状態にあること。「GFPの発現が強すぎて、この部分、さちってるね。」  「8ビットじゃなくて16ビットで画像取得しないと、さちっちゃうよ。」
  7. さんい【3位】3位とは、大阪大学のことである。(編注) マグロでなら日本一の大学と豪語する近畿大学の広告戦略を是非見習ってほしい。「3位じゃダメなんです。」(阪大)「マグロ大学って言うてるヤツ、誰や?」(近畿大学
  8. さんかげつ【三ヶ月】投稿論文がREVISIONとなった場合に著者に与えられる期間は3ヶ月(90日)であることが多い。

  1. シーエヌエス【CNS】セル(Cell)、ネイチャー(Nature)、サイエンス(Science)という生命科学分野のトップジャーナル3つをまとめた呼称。「CNSに論文があっても、職をとるのは難しい。」
  2. じだいがよかった【時代が良かった】古き良き時代に、あまり論文業績がなくても大学教員(パーマネント)になれた人が、現在の暗澹たるジョブマーケットの状態を目にして口にする安堵の言葉。「いやぁ、自分はラッキーだった。まだ、時代が良かったから。今だったら、絶対に生き残れていない。」
  3. じっけんノート【実験ノート】研究者が実験を行なう際に実験内容すなわち、実験日、実験目的、実験条件、実験手順、実験結果、考察などを逐次記録したノートのこと。〔東大・医〕定義されない。
  4. じぶんもそれをかんがえていた【自分もそれを考えていた】上の立場の人間が、研究のクレジットを奪取しようとして意図的に、あるいは無意識に発する言葉。「先輩、こんな実験やってみたら結構面白いことになるんじゃないかと思ったんですけど?」「あ、それ自分も考えていたんだよね。どう?やってみない?」「‥‥(誰の研究だと思ってやがんでぃ。。)」
  5. しめきり【締め切り】原稿を書き上げて、編集者に送ることが期待されている最終的なタイミング。または、原稿を書き始めるきっかけとなる最初のタイミング。「ねえ、原稿を依頼されているのがあるんだけど、僕は忙しいから、君、書かない?」「締め切りはいつですか?」「一応、昨日までなんだけど。」「‥‥。」
  6. しょく【職】パーマネントの職。またはテニュアトラックの職。ジョブ。 「職が見つからない。」
  7. しょくさがし【職探し】パーマネントの職、またはテニュアトラックの職を探すこと。 「職探し、うまくいってる?」 「いやぁ、なかなか、難しいです。」
  8. ジャーナル【journal】①学術誌のこと。「今の仕事は、どこのジャーナルに出すの?」 ジャーナルクラブ(学術雑誌に掲載された論文をひとつ選んで、ラボのみんなで読む会合)のこと。「今日ってジャーナルの日だっけ?」「今週のジャーナル、俺当たってるんだけど、論文何にしよう?」
  9. ジョブ【job】職に同じ。
  10. しょくをとる【職をとる】パーマネントの職やテニュアトラックの職、すなわちPIの職に就くこと。「彼は職が取れなかったので、研究を辞めた。」

  1. スクープ【scoop】良い実験結果に関する情報を競合する研究者が手に入れて、先にその実験結果に関する論文を出すこと。「プレプリントサーバーに出して、スクープされたりしないの?」
  2. ストーリー【story】論文において、実験データに基づき、論理的に一貫性があるように構成された一連の主張のこと。「ストーリーありきの論文。」「あのラボは、ストーリーに合わないデータを出しても教授が絶対に認めないから、不正が起きたんだよ。」「今やってる実験の結果次第でストーリーが変わってしまうので、結果を知るのが恐い。」「なかなかいいストーリーにならなくて、苦労している。」
  3. すぺーすがない【スペースがない】エディターが論文をリジェクトするときの定番の表現。電子ジャーナル全盛の時代になって、あまり見かけなくなったような気がする。デートに誘ったときに返ってくる言葉、「忙しくて時間がないの。ゴメンね。」と同じようなもの(だと個人的には思う)。
  4. すべてはつながってくる【全ては繋がってくる】①世の中における真理の一つ。“You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards. So you have to trust that the dots will somehow connect in your future.” (Steve Jobs)  ラボのメインの仕事ではない研究テーマや、メインストーリーから外れる実験を学生に無理強いするときにボスが使う言葉。「全ては繋がって来るんだよ!」「‥」

  1. そうじ【掃除】研究費申請書や論文が書けなくて煮詰まっているボスが突然始める生産的な作業。「先生が急に教授室の中のそうじ始めたよ。」「だいぶ煮詰まってんだね。」

  1. たからくじみたい【宝くじみたい】大学教員公募で一つのポジションに数百人の応募者が殺到して、ほとんど当たる可能性がない状態。実際には、一つの当たりくじが特定の人に既に配布済みである(ことが多い)点で、宝くじとは異なる(自分の個人的な見解)。「最近の若い人(=研究者)は本当に可哀想だと思うよ。大学のポジションが少なすぎて、(ほとんど当たることのない)宝くじみたいな状態になっているから。」
  2. だす【出す】①論文を投稿すること。「(今書いている論文は)どこに出すの?」「もうどこかに出したの?」 ②論文発表すること。 「最近、出してないなあ。」 大学教員公募に応募すること。「君は今、どこか、出してる?」「とりあえず、出し続けるしかないですかねぇ。」
  3. たたかう【戦う】研究者が戦う相手といえば、それはエディターやレビューアーのことである。戦いは、リジェクトのメールを受け取った瞬間から始まる。エディターキックの場合には、査読に回すようエディターにアピールする。良いレビューが得られずにリジェクトされた場合には、レビューアーのコメントに対して反論する。反論のやりかたは、コメントが誤解に基づく場合にはそれを指摘し、また、反駁するために追加実験が必要な場合にはそれを行ない、その実験結果を根拠に反論したりする。「論文どうなった?」「蹴られたよ。」「戦わないんだ?」「もう、(学位の締め切りに間に合わせるためには、査読や論文受理までのプロセスが)速いジャーナルに出すしかないと思うんだよね。」
  4. たんじゅんか【単純化】(ストーリーに合わない実験データを無視することにより)ストーリーをシンプルにして差読者が理解しやすい論文構成にし、トップジャーナルに通る可能性を高める行為。個人的にはどうかと思う。「ちょっと単純化しすぎじゃない?」

  1. つうじょう【通常】①普通のことが行なわれているさま。 〔東大〕異常なことが行なわれているさま。注)Ordinary_Researchersの告発に答えて、東京大学は、エラーバーを手作業でいじって出鱈目な図を作成することが医・生命科学の研究分野においては「通常」という見解を出した。しかしながら、(東大医学部に足を踏み入れたことがない自分が知る限り、)エラーバーを手作業でいじる操作は、論文作成において決して一般的ではない。よって、東大のいう「通常」は、一般的な日本語での「異常」に対応すると考えられる。
  2. つかいすて【使い捨て】①ピペットマンのチップ、エッペン、PCRチューブ、細胞培養用のディッシュやプレート、コーニング、ファルコン、スライドガラス、カバーガラス、保護手袋など、ディスポーザブルな器具や製品のこと。「それは使い捨てだから、プラスチックのほう(のゴミ箱)に捨ててくれる?」
    任期付きポジションで働く研究者・大学教員の大部分のこと。「日本の研究力が急速に落ちてきてるんだって!」「これだけ研究者を使い捨てにしているんだから、当然じゃないの?」[参考] 「成果と連動しない任期制度は人の使い捨てにほかならない。」[参考] 「ポスドクが使い捨てにされる現状は、どう考えても異常。」[参考] 「プロジェクト研究のような期限付き資金で大学に雇用された研究者は、プロジェクトの終了とともに使い捨てられる。」[参考] 「研究を支えている若手研究者が使い捨てにされる一方、その成果を享受する立場の教授だけは研究の世界を末永く生き続ける。」[参考]
    (特に、雇い止めを強行する大学に勤務する)事務職員、研究補助職員(ラボ・テクニシャン)のこと。
    (特に、雇い止めを強行する大学に勤務する)非常勤講師のこと。「日本の大学は非常勤講師を使い捨てるブラック大学」 [参考]

  1. でぃすくりぷてぃぶ【descriptive】自然現象を観察し記載しただけで、その現象を作り出しているメカニズムに迫れていない研究。それ自体は決して悪いことではないが、トップジャーナルに投稿した論文が却下されるときの理由としては、しばしば使われる表現。descriptiveに対する言葉として、mechanisticがある。「今のところまだディスクリプティブだからなあ(メカニスティックなところまで踏み込めていないので、現状だといいジャーナルを狙うのが難しい)。」
  2. でぃーろん【D論】博士論文のこと。「D論、書いてる?」「D論、間に合わない。。」
  3. でき【出来】大学教員公募における出来レースのこと。「ねえ、JREC-INに東工大の准教授の募集が出てたよ!」「どうせ出来だよ。」
  4. できました【出来ました】出来たと思っている学生が返事に使う言葉。実際にはまったく出来ていないことが多い。本人の言葉で判断せず、実験結果や生データをチェックすることが非常に重要である。「出来た?」「出来ました!」
  5. てにゅあとらっくせいど【テニュアトラック制度】①若手研究者がまず任期付の雇用形態で自立した研究者として採用され、数年後に審査により終身もしくは定年制の職(テニュアポスト)を得る仕組み。②一般的なテニュアトラック制度ではない東北大学テニュアトラック制度のこと。(参照記事
  6. でる【出る】論文が受理されること。学術誌に論文が掲載されること。「学会でしゃべってた仕事、どこに出たの?」「あの研究室は論文出てるよね。」

  1. とうだいいがくぶ【東大医学部】(東大の発表に基づき)以下に述べる5個の性質を持つ実体を「東大医学部」と定義する。
    1)研究室から発表された論文の図に示されるデータと、オリジナルデータ(実験で得られる生データ)とはほとんど一致しないこと。(そのような論文を出すラボが組織内に存在すること)
    2)論文の図作成にあたり、数値データをグラフにする際に、まずマイクロソフトエクセルを用いてグラフを描くこと。
    3)エクセルで描いたグラフは、必ずコピペによりマイクロソフトパワーポイント(パワポ)やアドビイラストレーター(イラレ)など別のアプリケーション上に移し変えること。
    4)パワポやイラレ上に移されたグラフはそのまま論文の図に使用することはせず、かならず、X軸、Y軸、棒グラフ、エラーバーを手作業でなぞる(トレース)ことにより、手書きのグラフとすること。このとき、オリジナルデータとの一致を消失せしめること。
    5)論文の図で示された値がオリジナルデータとどれほど一致していなくても、不正調査委員会、大学執行部、研究資金配分機関、監督省庁からは研究不正と認定されないこと。
  2. とおる【通る】論文が受理されること。「ネイチャー通ったんだ、おめでとう!」
  3. どうてい【同定】ある働きを持つ物質を特定すること。 「アルツハイマー病の原因遺伝子のひとつが同定された。」
  4. とうほくだいこうぶん【東北大構文】①AはAではないという構文のこと。政治家・小泉進次郎氏の進次郎構文”AはAである”と対比されることが多い。「東北大学テニュアトラック制度は、一般的なテニュアトラック制度ではない」(東北大学理事・副学長)(参考
  5. どう?【どう?】ボスが大学院生に、良い実験結果が出たかどうかを聞くときに使うことば。「最近、どう?」「いやーっ、なかなか難しくて。」
  6. とくめいエー【匿名A】画像類似論文88報(他での指摘も含めれば111報)をインターネット上で匿名で指摘した人物のこと。(参考
  7. どこ?【何処?】普段まったく実験しない教授が何を思いついたのか急に実験を始めたときに、試薬の場所がわからないため、近くの研究員に保管場所を尋ねるときに使われる言葉。「ねえ、コンピテントセルって何処だっけ?」
  8. どりょくしょう【努力賞】卒業論文(学士号)や修士号は、ネガティブデータしか出なくても、すなわち、学術誌への論文発表ができなくても、取れるという意味。「修士までは努力賞だけど、博士は違うぞ。」

  1. なぜこれがねいちゃー?【何故これがNature?】自分はいい研究をしていると自惚れている、思い込みの激しい研究者が、毎週木曜日に発する、負け惜しみの言葉。ちなみに木曜日は週刊誌Natureの発売(刊行)日である。ネイチャーに掲載される論文は、話題性があったり、ほんとうにいい研究成果であったり、一見凡庸な実験データであっても新しい視点から解釈されていてストーリーのまとめ方やライティングがうまかったり(要するに、見せ方、売り方がうまい)、何かしらアクセプトされるだけの理由がある(と個人的には思っている)。「なぜ、この論文がネイチャーなんだろう?」「うちの論文なんて、レビューにすら回らなかったのに。」「(著者が)エディターとお友達なんじゃないの?」「大御所のところからは出やすくて、いいよね。」
  2. なぜやっていない?【何故、やっていない?】論文をまとめる段階になって、ストーリーを構成する上で必要な実験データが足りないことがわかったときにボスが発する言葉。「こんなの、必要になることがわかりきっていた実験なのに、なぜ、やっていないんだ?」「‥‥(そんな実験やるだけ無駄だから止めろと言ったのはボスなんだけどなぁ。。)」
  3. ななえた【7エタ】ラボで滅菌を目的として多用される、70%エタノールのことらしい。自分は使ったことも、周りで使っているのを聞いたこともないが。「7エタで ラベルが消えた 君の名は?」(研究者川柳「川柳 in the ラボ2017」より)

  1. ネイチャー【Nature】①最高の権威があるとされる学術雑誌の一つ。ちょっと良さげな実験結果を出した学生をおだててるために、お調子者のボスが使う言葉。「おー、すごいねー。ネイチャーいけるよ!」「これ、ネイチャーだよ、ネイチャー!」
  2. ネガコン【negative control】シグナルが出ないことが期待されるように実験条件を設定した、対照実験のこと。「しまった、ネガコン置くの忘れた。」
  3. ねつぞう【捏造】実験していない(実験ノートがない、実験ノートに記述がない)のに、実験データを存在せしめること。「今の大学院は研究するところではない 捏造するところだ こうなるはずだ』『こう応用できるはずだ』『役に立たないことはするな』とボスから言われる場所、それが今の大学 例えば、捏造の追試だとしてもこれがお前の仕事だ。誇りを持てよ。誇りをもてないお前は不純だ』と私は言われた。誇りを持ち私は頑張った。スクリーニングで使えたはずの系がなぜシングルクローンで上手くいかないのか?プライマーがなぜ2つともセンス鎖なのか? 同じ形の図の縦軸がなぜ概念的に全く違うのか? 疑問は沢山あったが頑張った 数年後、大型予算が切り替わり、私は捨てられた 『君はネガティブだ。もう手に負えない。勝手にしろ』 ネガティブなのは前任者のデータだろ。その後、共に苦しんだ同僚が一人自殺した。」(匿名A)
  4. ねばる【粘る】投稿論文に対する差読者からの否定的な評価を覆し、アクセプトを勝取るために、反論を試みたり、忍耐強く何度ものリバイスを繰り返すこと。「リジェクトされてすぐに諦めたけど、もうちょっと粘ってみればよかった。」

  1. ノンスペ【non-specific】非特異的な効果による実験結果。「この一番濃いバンドは、ノンスペじゃないの?」
  2. のーととらなくてだいじょうぶ?【ノート取らなくて大丈夫?】学生に実験の手順を教えているときに、メモを取らないでも全部頭に入るんだ、すごい、この学生はかなり優秀に違いないと思いながら説明し終えたところ、いざ学生にやってもらおうとすると一人では何もできず、説明したことをもう一度全部聞かれて脱力させられることがあるため、メモを取らずに聞こうとする学生に対しては、予め一言声をかけておいたほうがよいと思われるフレーズ。

  1. はかせ【博士】博士号のこと。「このままだと、博士とれそうにない。」
  2. ばかやろう!【馬鹿野郎!】かつて、ボスが学生を励ますために用いられた言葉。現在では、アカデミックハラスメントになる恐れがあるため、この言葉の使用は推奨されない。
  3. パブリケーション【publication】論文業績のこと。「彼は、パブリケーションがいい。」

  1. ぴーあい【PI】Principal Investigator 研究室の主宰者、研究代表者。教授や准教授。テニュアトラック助教がPIになることもある。PI染色と言う場合のPIはpropidium iodideという、核酸を染める色素のこと。 「金沢大でテニュア・トラック助教を募集してたね。」「それって、PI?」
  2. ピーせん【P-1000】ギルソン社のピペットマンのシリーズで1000マイクロリットルまでの容量を扱うためのモデル。または、他社製品の同様のモデル。「P-1000借してもらっていい?」
  3. ひっかかる【引っ掛かる】ランクを下げたジャーナルに論文を投稿した結果、その雑誌に掲載を受理されること。「サイレポに何とか引っ掛かって良かった。」
  4. ひっかける【引っ掛ける】よそのラボに先を越されないうちに、論文を投稿しておくこと。同じジャーナルであれば、よそのグループからの同じ内容の論文が掲載されたとしても、それ以前に投稿していた場合には「同時」とみなしてもらえることが多いことから。「どこか(のジャーナル)にひっかけておかないと。よそに出されたらお終いだからな。」
  5. ひとのことにかまっているばあいではない【人のことにかまっている場合ではない】任期つきの教員が、自分が生き残ることに精一杯で、大学院生の研究の指導を行うだけの精神的な余裕、時間的な余裕がないこと。「もともと、指導していた学生の仕事だったのに、結果が出はじめたとたん、助教の先生がテーマを自分のものにしちゃって、ファーストで論文を書いて出しちゃったらしいよ。」「任期付きだから、人のことにかまっている場合ではないんじゃない?」「あの助教の先生、いつも自分の実験で忙しそうにしていて、ちょっと、学生の面倒見が悪くない?」「任期付きだから、人のことにかまっている場合ではないんじゃない?」
  6. ピーにじゅう【P-20】ギルソン社のピペットマンのシリーズで20マイクロリットルまでの容量を扱うためのモデル。または、他社製品の同様のモデル。P-20,P-200,P-1000の3モデルがラボで最もよく使われ、実験を遂行するための必須アイテムといえる。ピペットマンは高価なため、P-2やP-10が無い場合には、1マイクロリットルであってもP-20で代用することが多い。「P-20ちょっと借りていい?」「P-2が必要なんだけど、ボスが買ってくれない。」「P-10も、あると便利なんだけどなぁ。」
  7. ピーにひゃく【P-200】ギルソン社のピペットマンのシリーズで200マイクロリットルまでの容量を扱うためのモデル。または、他社製品の同様のモデル。「P-200借りるね。」
  8. ピペットマン【Pipetman】ギルソン社のマイクロピペット(溶液をマイクロリットル吸入、排出できる精巧なピペット)の商品名。あまりにも普及しているため、他社製品であっても、マイクロピペットのことはピペットマンと呼ばれることが多い。「ちょっと、ピペットマン借りていい?」「液吸いすぎて、ピペットマンの中に入っちゃった。」「今度からフィルター付きのチップを使ったら?」
  9. ひょうしだけ【表紙だけ】時代錯誤も甚だしい教授が、科研費申請書や博士論文の所内締め切り日に、とりあえず表紙だけ出しておけばいいと考えている場合に、発せられる言葉。「そんなの、表紙だけ出しとけばいいんだよ。」「‥‥」
  10. ひょうじゅんごさ【標準誤差】棒グラフにエラーバーをつけるときに使う短いほうのやつ。「標準偏差だとエラーバーが大きくなるから、標準誤差にしとけよ。」

  1. ファースト【first】共著者による連名の論文において、著者名の順番が一番最初にくる人、すなわち第一著者(first author)のこと。第一著者が論文のほとんどの仕事を行なったとみなされることが多いため(仮にそうでなかったとしても)、複数の研究者がかかわった仕事でファーストオーサーになることは、研究者にとって非常に重要である。「ファースト何報持ってる?」「ファーストで書かなきゃね。」
  2. フェノクロ【phenol-chroloform extraction】フェノール=クロロフォルム抽出。DNAの精製過程における一ステップ。「フェノクロやるの面倒臭い。」
  3. ふせいこういはない【不正行為はない】不正行為がない場合には、不正疑惑に関する調査報告を公表しなくてよいという時代錯誤な規則を逆手にとって、不正行為を揉み消したい大学が使う言葉。「調査結果の概要(医学系研究科関係)(結論)申立のあった5名について不正行為はない」
  4. I am/We are pleased【be pleased】 ”喜んで‥” 論文投稿後にエディターから送られて来るdecisionメールを読み始めた研究者が、一番期待して探し求める言葉。論文が受理されたことを伝えるときに必ず含まれている語句。”I am pleased to inform you that your manuscript has been accepted for publication in XXXX (ジャーナル名). ”  “We are pleased to inform you that your manuscript ‘XXXXXX(論文タイトル)’ has been provisionally accepted for publication in XXXX (ジャーナル名).”
  5. ブルーチップ【blue tip】ピペットマンで1000マイクロリットルまでを測りとるためのチップ。もともと純正のものは青色だったことから。他社製品であろうと、色が何色であろうと、ブルーチップと言えばこのサイズのチップのことを意味する。「ブルーチップの先を切って使えば?」
  6. プロナス【Proceedings of the National Academy of Science】中堅どころの学術誌のひとつ。 ピーエヌエーエス(PNAS)とも呼ばれる。ピーナスと呼ぶ日本人も結構な数いるが、penis(ペニス)の英語の発音と同じに聞こえるため、控えたほうがいいと個人的には思う。
  7. プログレス【progress】プログレスミーティング、研究の進捗状況をボスに報告するために研究室内で定期的に開かれるミーティングのこと。ラボミーティングとも呼ばれる。「今週プログレスが当たってるんだけど、しゃべることない。どうしよう?」

  1. ほうりつがない【法律が無い】セクハラ行為を働いて相手の精神を破壊したり、アカハラにより学生や部下の人生を滅茶苦茶にしたり、データを捏造して論文を出したり、明らかな研究不正を揉み消したり、研究不正が常態化したラボに巨額の研究費を配分し続けるような行為は、いずれも「犯罪(的)」だ(と自分は思う)が、そのような行為を裁く法律が現時点で存在しないこと。「人が亡くなっているのに誰も裁かれないなんておかしいよね。」「法律がないんだよね。」
  2. ポスドク【postdoc】ポストドクトラルフェロー(postdoctoral fellow)のこと。「卒業したあともポスドクで残るの?さっさと(今のラボから)出たほうがいいよ。」 「彼は学生時代の業績が凄くて、ポスドクをやらずにいきなりPIになった。」
  3. ポジコン【positive control】必ずうまくいくはずの対照実験。「何がポジコンになるかなぁ。」
  4. ボス【boss】研究室の主宰者である教授や准教授のこと。「こないだ駅でボスに会っちゃった。」
  5. ボスめし【ボス飯】お昼ごはんや夕食で、学生やボスドクがボスと一緒に食事をすること、またはその食事。「ボス飯になっちゃったよ。」
  6. ボスカッション【boss-cussion】ボスとディスカッションをすること。

  1. まける【負ける】自分がやっているのと同じ研究内容の論文を、競合するよその研究グループに先に出されてしまうこと。「頑張んないと、負けちゃうよ!」
  2. まつ【待つ】論文を投稿したあと、査読されて編集部から返事が来るのを待っていること。「もう投稿したの?」「うん、今(返事を)待っているところ。」

  1. めし、いく【飯、行く】大学院生や研究者がみんなでそろって学食などでお昼ご飯を食べるラボで、お互いを誘うために掛ける言葉。「メシ、行く?」「俺、ゲル流してる最中だから、後にするわ。」「ご飯、行きますか?」「先に行っててくれる?反応かけてから、行くから。」

  1. もってる【持っている】(ある特定のトップジャーナルに)論文を掲載されている業績がある。「彼はネイチャーを持っているのに、なかなか職が取れない。」
  2. もどる【戻る】学外の場所にいる大学院生が、再びラボに行くこと。全ての時間を研究に捧げている大学院生にとって、ラボは「行く」場所ではない。ラボがホームポジションであり、「戻る」と表現される。(研究室の飲み会が終わって)「(家に)帰る?、(それともラボに)戻る?」
  3. ものとり【モノ取り】 特定の働きを持つ未知の遺伝子を同定する仕事。「ゲノムが全部解読されて、ものとりで論文が書ける時代は終わった。」

  1. やられる【やられる】他のグループに同じ内容の論文を先に出されること。「やられちゃったよ。どうしよう?」「ジャーナル下げるしかないんじゃない?」
  2. やりました【やりました】実験等をちゃんとやれたと思っている学生が返事に使う言葉。実際にはまったくやれていないことが多いので、本人の言葉で判断せず、実験結果や生データをチェックすることが非常に重要である。「やった?」「やりました!」

  1. よばれる【呼ばれる】①大学教員に応募した人が、書類選考を通過し、面接試験に呼ばれること。「全然、呼ばれないの?」「何箇所かに呼ばれてはいるんだけど。」 大型の研究費の申請において、書類選考を通過し、面接試験に呼ばれること。「毎年呼ばれるんだけど、なかなか通らない。」

  1. ラスト【last】ラストオーサー(last author)のこと。ラストオーサーの人は通常、研究代表者とみなされる。「職が取れたので、この論文のラストをもらった。」「ラストをくれるなんて、いい教授だね。」
  2. ラボ【lab】大学の研究室(laboratory)のこと。「晩御飯のあと、またラボに戻らなきゃ。」 「えーっ、そうなの?(悲)」
  3. ラボミーティング【lab meeting】大学院生や研究員が進捗状況をボスに報告するためにラボ内で定期的に開かれるミーティングのこと。「来週ラボミーティング当たっているから、気が重い。」

  1. I/We regret 【regret】 ”残念ながら‥” 論文投稿後にエディターから送られて来るdecisionメールの中で、研究者が一番目にしたくない言葉。悪い知らせを伝える文に必ず含まれている語句  “I regret to inform you that we cannot publish your manuscript in XXXX (ジャーナル名).” “I regret that we are unable to publish it in XXXX (ジャーナル名).”  “We regret to say that we will not be able to accept this manuscript for publication in XXXX (ジャーナル名)”
  2. リジェクト【reject】投稿論文の却下。英語で名詞形だとrejectionだが、日本語では名詞としても使われる。「ネイチャーに出したけど、速攻でリジェクトされた。」「PNASにリジェクトを食らった。」
  3. リトラ【re-transformation】もともと精製してあるDNAの量を増やすために、大腸菌に再度トランスフォーメーションすること。「(DNAの)量が少ないから、リトラしてから使ってね。」
  4. リバイス【revise】投稿論文の改訂。英語で名詞形だとrevisionだが、日本語の中では名詞としても使われる。「論文のリバイス中なので忙しい。」「論文が返ってきた。リバイスだった。ラッキー。」
  5. りゅうがくする【留学する】博士課程を終えた人間が、海外でポスドクをすること。「最近は留学する人が減ったね。」「留学しても、帰る場所がないからね。」

  1. るいじ【類似】似ているように見えて異なること。または、似ているように見えて、実際に、同一である(疑いが強い)こと。「匿名Aを名乗る人物が、類似画像を含む論文を多数指摘した。」

  1. ろんぶんがある【論文がある】(ある特定の学術誌に)論文が掲載された業績がある。「論文はあるんだけど、なかなか職が見つからない。」「彼はネイチャーに論文がある。」
  2. ろんぶんがない【論文がない】年齢相応の論文業績がないこと。論文業績が不足していること。「彼は論文がないからなぁ。」
  3. ろんぶんのけつろんはかわらない【論文の結論は変わらない】「論文データ捏造発覚→オネストエラーであったと主張→論文訂正→論文の結論は変わらない→不正はなかった」という、不正逃れのフローを構成する、常套句。実際のところ、論文の結論が変わろうが変わるまいが、研究不正の疑わしさも変わらないことに注意。

  1.          【       】①朝研究室に入るときや、夜帰るときに、研究室の誰にも声をかけないで出入りしている状態。無言でラボに入ったりラボから帰る大学院生やポスドクが、結構多い。ただし、これはラボに長くいて馴染んでいる人の場合の話で、新しくラボに入ったばかりであったり、よそのラボにお邪魔する場合には、「お早うございます。」「お先に失礼します。」と、普通に挨拶するのが一般的。もちろん、毎回常に声に出してほがらかに挨拶をする人も存在する。教官や技術補佐職員などのスタッフは、声に出して挨拶する人が多いように思う。また、挨拶の動作が最小化された結果、アイコンタクトやかすかな会釈など、当事者同士のみで意志の疎通が行なわれていることもある。 大学院生がいつのまにか来なくなっても、誰も話題にしない状態。もちろん、望ましいことではない。「●●って最近見ないね。」「大学院辞めて、田舎に帰ったらしいよ。」 アメリカで日本人ポスドクが、アメリカ人らとの会話の中で言葉をはさむタイミングが見つからなくてずっと黙っていると、いつまでも、存在しないものとして扱われる、その状態。”●×△, △■□◇◆.” “△●×△◆◇?” “△●■□◆×△×◇”. “△●!” “△×◇!” “△, ◆×●■□◆◆×△■□◆×□×◇.” “■□◆.”

編注

阪大の広告に関して

  • さんい【3位】3位とは、大阪大学のことである。

「3位じゃダメなんです」という広告には、いろいろ考えさせられた。

まず、ダメーっ!と恐い顔をしている阪大学長さんの顔をみると、子供が学年3番の好成績を取って帰ってきたのに、「なぜ1番が取れないの!」と怒り出す親を思い出した(空想)。ダントツで学年トップの生徒は、勉強が好きでやっているだけで順位なんてそもそも気にもしていない。成績が2位や3位、それ以下の生徒は順位を気にしながら、親から競争心を煽られて勉強していたりする。

この広告はまた、「ピンクの象を想像 しないでください」という、心理系自己啓発本にありがちな教訓を思い起こさせる。自分で自分にこんな「万年3位」という暗示をかけてしまっていいのだろうか。また、学内外の皆の脳裏に焼きついた「3位」という言葉を完全に消去するためには、この先いったいいくら広告料を使えばいいのだろうか?

さらに、阪大といえば、世界一の研究成果を挙げている先生がたくさんいるのに、たった一つのモノサシで測っただけの3位という自虐的なイメージを、莫大な広告料を払って全世界にアピールするのってどうなんだろう?

そもそも、順位というのは結果であって、目的ではない。順位を上げようという意識で努力する人間は、なかなかトップにはなれないと思うし、一時的になったとしても、すぐにその座から転落するのがオチである。だいたい、何処の誰かわからない人たちが勝手につくった大学ランキングを気にするのは、受験産業が作り出した偏差値を信仰して歪んだ感覚になっている受験生と大差ないのではないか。「うちは日本で3番の大学なんです」という大学に行きたいと思う学年成績トップの高校生が、はたして、いるだろうか?自分を測るモノサシなんて、自分でつくればええやんか!

いろいろ書いてきて、あらためてこの広告を見てみたら、キャッチコピーの後にはゴニャゴニャと良いことも書かれていた。しかし、そんなものはほとんど読まれないので(自分は読んでなかったか、読んでもすぐ忘れてた)、メインのフレーズの中に一番伝えたいメッセージが込められていない広告は、効果がないか、今回のように逆効果だと思う。

どうもこの広告は中身は研究者、業界の人に向けられたもののように感じるが、新聞広告を打った以上、一般の人を対象にしたかったのであろう。しかし、一般の人は阪大が3位なんてことを誰も意識していないと思う。大阪の人にとって阪大は1番だし、東京の人からみれば一地方大学でしかない。つまり、阪大関係者以外の誰も、阪大が3番と意識していない。そんなわけで、広告の内容と広告の訴求対象がマッチしていないように思う。

いずれにせよ、催眠心理学が教えるところによれば、人間はイメージした通りのものになるというから、ネガティブなメッセージを伝えたいわけでもない限り、ネガティブなイメージを広告の前面に出すやり方はやめたほうがいいと思う。

以上、広告って難しい!という感想でした。

 

 

参考

  1. クレジット【credit】「科学者の研究への貢献を認めることをクレジット(credit)といいます。」(科学の健全な発展のために -誠実な科学者の心得ー 日本学術振興会 PDF14ページ). Caudri et al., Doing science: how to get credit for your scientific work. Breathe (Sheff). 2015 Jun; 11(2): 153–155. (PubMed)
  2. じぶんもそれをかんがえていた【自分もそれを考えていた】今、ちょうどそれを云おうと思ってたんだ。 何も考えていないボスが、下から出て来た自分が思い付きもしなかった良いアイディアを聞いて、恰も自分も同じことを考えていたかの様に取り繕う際の常套句。@Xenopus007
  3. たたかう【戦う】最後に「受理」という甘美な果実を手にするためには、投稿誌の編集者や査読者という強敵と戦い抜くだけの知力と忍耐力、そして決断力が必要である。(ポール・J・シルヴィア著『できる研究者の論文作成メソッド』 推薦の言葉 三中信宏 より)
  4. でぃすくりぷてぃぶ【descriptive】「この研究は基本的にしっかりした内容であるが、記載的過ぎる難がある。」(The ‘Descriptive’ Curse). Arturo Casadevall. Mechanistic Science. Infect Immun. 2009 Sep; 77(9): 3517–3519.(PubMed)

参考(その他)

  1. あなたの大学でしか通用しない「用語」(マイナビ 2015/04/18)

 

研究生活カテゴリーの記事一覧

東大が雇い止めを撤廃

 

 

東大が5年雇い止め規定撤廃へ 来年4月、無期に転換可能

東京大が、有期契約の教職員の雇用を最長でも5年までとする規定を、来年4月に撤廃する方針を固めたことが15日、関係者への取材で分かった。改正労働契約法で来年4月以降、5年を超えて働けば無期契約への転換を申請できる「無期転換ルール」が始まるが、東大では規定で5年を超えることができず、労働組合などが「無期転換逃れだ」と廃止を求めていた。

東大教職員組合や首都圏大学非常勤講師組合によると、東大の有期雇用職員はパートタイムで約5千人、フルタイムで約3千人いる。12日に開かれた幹部会議で規定を削除する方針が示されたという。(共同通信 2017/12/15 12:12)

 

東大の雇い止めに関する報道・分析記事

  1. 東京大学がついに「雇い止め撤回」を決めた、二つの事情 (田中 圭太郎 ジャーナリスト 現代ビジネス 2017.12.14)
  2. 「東大、お前もか」大学で進まぬ有期雇用の「無期転換」 対応しなくても適法? (弁護士ドットコム 2017年10月04日):”労働条件が「不当」であるが「適法」な場合、労働法が保障した闘い方は、労働者が団結して労働組合として交渉し、数の力の労働運動で「不当」な労働条件をあらためさせることです。実際に、日本郵政グループ労働組合などは、有期雇用社員が積極的に労働組合に加入し、会社と交渉することにより、無期転換制度の法定前に8万人もの無期転換を実現しています。本来、無期転換ルールは、使用者にとっても業務に習熟した人材を確保するメリットがあります。雇用が安定した良い労働環境の職場には、優秀な人材が集まります。労働者を使い捨てるようないわゆる「ブラック企業」は、淘汰されなければなりません。労働組合を中心に結集し職場環境を改善することが求められます。”
  3. 東大雇い止め許せない 吉良議員、非常勤職員と懇談 (しんぶん赤旗 2017年9月29日):”東大は、2013年に改正された労働契約法の「無期転換ルール」から逃れるために、非常勤職員に対し、5年以上の契約更新をせず雇い止めにしたり、6カ月の空白をおいて新たに有期契約をするなど、違法・脱法行為を行っています。東大教職員組合(東職)、首都圏大学非常勤講師組合の両組合は、東京大学に対し、契約を更新し、希望者全員を無期転換するよう求めています。”
  4. 東大、職員4800人雇い止めで失職も…組合と大学側が全面対決、国の働き方改革に逆行 (深笛義也/ライター Business Journal 2017.09.28)
  5. 東京大学が非常勤職員8000人大半の雇い止めを強行か (週刊金曜日ニュース 2017年9月5日):”東京大学で働く約8000人の非常勤教職員の大半が、来年4月以降雇い止めされる可能性が高くなった。8月7日に開かれた東京大学教職員組合と首都圏大学非常勤講師組合との団体交渉で、大学側が明確にした。”
  6. 「東京大学のやり方は大問題」非常勤雇用ルール巡って労組が緊急会見 最大数万人に影響…? (田中 圭太郎 現代ビジネス 2017.08.23):”東京大学には、特任教員や看護師・医療技術職員などの「特定有期雇用教職員」2694人と、パート教職員の「短時間勤務有期雇用教職員」約5300人の非常勤職員がいる。あわせて約8000人のほとんどに、2018年以降は「無期雇用職員」への転換を申し込む権利が発生するはずだった。ところが、東京大学は改正法が施行された2013年に、非常勤教職員の雇用のルールを「密かに」変更、独自のルールを設けていたという。”
  7. 東京大学で起こった、非常勤職員の「雇い止め争議」その内幕 最大10万人に影響が及ぶ可能性も (田中 圭太郎 現代ビジネス 2017.08.17):”日本の大学の雄である東京大学が、約8000人の非常勤教職員の雇用形態に多大な影響を与える新たな方針を、去る8月7日に開かれた組合との団体交渉で明確にした。このままでは、大半の非常勤教職員は2018年4月以降雇い止めされることになる可能性があるという。大学側の一方的な決定を受け入れることはできない、と組合は反発。東京労働局への指導の申し入れを検討、さらには刑事告発に発展する可能性が出てきた。”

 

参考

  1. 12.4『ストップ雇い止め』緊急院内集会を動画で紹介((2)山形大、早稲田大)(全大教 2017/12/15)
  2. 時間雇用教職員の「通算雇用期間5年上限」撤廃を求める申入れ 2017年12月15日 京都大学職員組合 中央執行委員長 白岩 立彦 (http://zendaikyo.or.jp)京都大学総長  山極 壽一 殿  職員組合は、有期雇用教職員の無期転換ルールの対応について、これまで就業規則における「通算雇用期間5年上限」の撤廃並びに「例外措置」適用制度の活用促進等を求めてきました。先日11月9日にも団体交渉を実施しましたが、京都大学法人からは「通算雇用期間5年上限」にかかる方針を見直す姿勢が見られませんでした。
    一方、政府・国会では、厚生労働大臣が「無期転換ルールを避けることを目的として、無期転換権が発生する前に雇止めをすることや、更新年限や更新回数の上限を一方的に設けるといったことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましくない…。そのような事案を把握した場合には、都道府県労働局においてしっかり啓発指導を行ってまいりたい」と答弁しました。これを受け文部科学省は各国立大学に対し無期転換ルールへの対応を求める通知を発し、12月1日の衆院文部科学委員会でも文部科学省審議官が「各国立大学法人が適切に対応するようお願いしています」と答弁しています。また、いくつかの都道府県労働局において国立大学への啓発指導が行われました。
    こうした中、徳島大学、岡山大学、名古屋大学などでは有期雇用の非常勤教職員にかかる年限雇止めの方針が大きく見直され、多くの非常勤教職員に無期転換の道が開かれました。そして、ついには東京大学においても、12月12日に「通算雇用期間5年上限」の廃止が役員懇談会及び科所長会議で了承されたとのことです。
    これらの情勢に鑑み職員組合は、京都大学法人においても労働契約法、「同一労働同一賃金」を含む働き方改革への対応のために関係規則の改正の検討を行い、時間雇用教職員の就業規則上の「通算雇用期間5年上限」を撤廃するよう、改めて求めるものです。
    なお、組合員の雇用更新等の課題については必要になれば別途所属の部局等に個別に申入れる予定であることを申し添えます。
  3. 雇止め問題 ~名古屋大学の場合 佐々木 康俊(名古屋大学職員組合 書記次長)(PDF) 全大教時報 Vol.41-No.4(2017.10)2017/10/10
  4. 非常勤講師・非常勤職員の5年(3年)上限との闘い ~国立大での闘争が360万人の無期転換のカギに~ 志田 昇(首都圏大学非常勤講師組合 書記長)(PDF) 全大教時報 Vol.41-No.3(2017.8)2017/08/10
  5. 各国立大学法人及び大学共同利用機関法人における 無期転換ルールへの対応状況に関する調査 結果概要(平成28年度) 文部科学省大臣官房人事課 (PDF)全国立大学法人(86法人)及び大学共同利用機関法人(4法人)に対し、平成 29年3
    月31日時点における無期転換ルールへの対応方針について調査を実施。

 

東大雇い止め撤回報道

  1. 東大「雇い止め」、文科省が対応要請 急遽方針転換、規則改正へ (産経ニュース 2017.12.15 07:04):”東京大学が有期雇用職員を最長5年で雇い止めにするルールを設けていることに対し、文部科学省が調査の上、労働契約法の趣旨にそぐわないとして「慎重な対応」を要請していたことが14日、分かった。東大が急遽「引き続き採用しない」というルールを変え、継続雇用に転換する方針を決めたことも判明。”
  2. 5年雇い止め規定撤廃へ 東大、無期に転換可能 (産経ニュース 2017.12.15 12:07更新):”東京大が、有期契約の教職員の雇用を最長でも5年までとする規定を、来年4月に撤廃する方針を固めたことが15日、関係者への取材で分かった。改正労働契約法で来年4月以降、5年を超えて働けば無期契約への転換を申請できる「無期転換ルール」が始まるが、東大では規定で5年を超えることができず、労働組合などが「無期転換逃れだ」と廃止を求めていた。”
  3. 東大「5年契約上限」削除 無期雇用実現へ 組合の要求実る 8000人に“朗報”(日本共産党 しんぶん赤旗 2017年12月14日):”東大は、12日の科所長会議で「働き方改革への対応のための関係規則の改正方針(案)」と題する文書を提示。「部局における事情や優秀人材の確保を考慮し、更新回数4回、通算契約期間5年を上限とする一律の規定を削除」する方針を示しました。”
  4. 東大、有期教職員に安定雇用の道 5年で雇い止め撤廃へ (米谷陽一、沢路毅彦 朝日新聞 2017年12月15日04時24分):”ただ、すべての有期雇用の教職員が無期契約になれるわけではない。新しい規則では、プロジェクト単位の仕事など終了時期が明らかな業務には、更新回数や契約期間の上限を設けられる。無期雇用になっても、契約の対象業務がなくなれば雇用契約は切れる。”
  5. 東大、教職員5年での雇い止め撤廃…来年度から (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2017年12月15日 18時27分):”期で5年働くと期限なく働けるようになる労働契約法の「無期転換ルール」の趣旨に反する規定だとして、労働組合が撤廃を求めていた。東大だけで対象者は約8000人に上り、他大学にも影響を与えそうだ。”
  6. 東京大学「無期転換ルール」適用へ 有期の雇用上限撤廃…ただし全員じゃない (弁護士ドットコム 2017年12月15日 19時49分):”東京大学が、一律5年と決めていた有期雇用の上限を撤廃する方針を固めた。来年4月から、「無期転換ルール」の適用が始まりそうだ。12月12日、大学が東京大学教職員組合に方針を示した。”
  7. 東大 教職員の5年雇い止め規定撤廃へ (毎日新聞 2017年12月15日 17時19分):”東京大が、有期契約の教職員の雇用を最長でも5年までとする規定を、来年4月に撤廃する方針を固めたことが15日、関係者への取材で分かった。改正労働契約法で来年4月以降、5年を超えて働けば無期契約への転換を申請できる「無期転換ルール」が始まるが、東大では規定で5年を超えることができず、労働組合などが「無期転換逃れだ」と廃止を求めていた。”

 

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村中璃子氏に2017年度ジョン・マドックス賞

ジョン・マドックス賞は、学術誌Natureの名物編集長であったジョン・マドックス氏(1925~2009)を記念して創設された賞で、困難や逆風に遭いながらも公共の利益のために科学的な根拠を世に広めることに貢献した人に授与されます。

The John Maddox Prize recognises the work of individuals who promote sound science and evidence on a matter of public interest, facing difficulty or hostility in doing so. (The John Maddox Prize, Sense about science)

2017年度のジョン・マドックス賞は、子宮頸がんワクチンの危険性に関して科学的なエビデンスが無いことを指摘し、子宮頸がん予防ワクチン接種の重要性を訴えてきた医師・ジャーナリストの村中璃子氏が受賞しました。

HPVワクチンは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐワクチンだ。日本では、2013年4月に小学6年生から高校1年生の女子を対象に公費で打てる定期接種となったが、注射後に痛みやけいれんなど多様な症状を訴える声が相次ぎ、同年6月に国は積極的に国民に勧めることを停止した。この頃からマスメディアは、けいれんや痛みを訴える女の子を積極的に取り上げ、「怖いワクチン」というイメージが世の中に広く浸透。ほとんど接種する人がいなくなった。村中さんも2014年頃、テレビでけいれんする女の子を見て、「これは薬害なのか?」と疑いを持って取材を始めたという。ところが、小児科医や小児精神科医を取材したところ、ワクチンを打っていなくても、思春期特有の症状として同様の症状を訴える子供が多いことに気づく。1年ほど取材を重ね、2015年10月から、雑誌「ウェッジ」などに、HPVワクチン接種後の多彩な症状は薬害ではないのではないかと科学的に検証する記事を次々に発表していった。(海外の一流科学誌「ネイチャー」 HPVワクチンの安全性を検証してきた医師・ジャーナリストの村中璃子さんを表彰 BUZZ FEED NEWS 2017/12/1)

副反応として報告されているものの多くは接種時の疼痛(とうつう)や接種部位の腫れだ。そのデータでは未回復は186人だが、「因果関係を問わない副反応」と自己申告のあったもの。仮に186人全員の症状が子宮頸がんワクチンによるものだとしても、発症率は0.005%だ。一方、日本で認可されている4価ワクチンの効果は約60%。米国などで承認されている9価ワクチンなら90%以上が守られる。新しいワクチンと検診とを併用することで、子宮頸がんで亡くなる人を限りなくゼロに近くできる。(「医師とメディア人」二足のわらじを履く理由 あの英誌「ネイチャー」が選んだ日本人女医 東洋経済ONLINE 2017年12月01日)

 

日本外国特派員協会 会見映像

Muranaka & Fujimoto: “Libel lawsuit caused by HPV (human papillomavirus) vaccine pseudoscience” (FCCJchannel 日本外国特派員協会 会見映像 オフィシャルサイト 2016/12/06 に公開)(49:25)

HPVワクチン薬害訴訟問題

2016(平成28)年7月27日 HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)薬害訴訟提訴にあたっての声明 本日、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の接種によって深刻な副反応被害を受けた63名の被害者が、国及び製薬会社(グラクソ・スミスクライン株式会社、MSD株式会社)に対して、損害賠償請求訴訟を東京、名古屋、大阪及び福岡の各地裁に提訴しました。(HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団)

本日現在、訴状を受け取っておりませんので、上記訴訟についてのコメントは差し控えますが、様々な症状によって苦しまれている方々につきましては、心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い回復をお祈りしています。.. (中略).. 報告されている様々な症状とHPVワクチンとの因果関係は医学的・科学的に明らかになっておらず、弊社は「サーバリックス®」のベネフィットが副反応のリスクを上回るものであることを確信しております。(子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の訴訟に関するGSKの声明 GSK 27 July 2016)

無作為臨床試験を含む、圧倒的な科学的エビデンスがあることから、主張の内容に根拠はないとMSDは信じています。(2016年7月27日 MSD株式会社 PDF)

 

ワクチン副作用、63人提訴 子宮頸がん、15~22歳女性(KyodoNews 2016/07/27 に公開)

  1. HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団ウェブサイト(https://www.hpv-yakugai.net/

 

Wedge掲載記事をめぐる訴訟問題

  1. WEDGE infinity 特集:子宮頸がんワクチン問題
  2. 訴状PDF) 平成28年8月17日
  3. 村中璃子氏ら被告の裁判 当日の詳細 (みかりんのささやき 2017-02-19)
  4. 村中璃子氏の裁判を傍聴して 鍵を握るA氏の証言 『音声反訳』はなぜすぐ出てこなかった?(天国に届くといいなぁ 2017/06/15

 

子宮頸がんワクチンに関する議論

子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に、原因不明の体の痛みなど、重い症状の訴えが相次いだ 問題で、先週、追跡調査の結果や今後の対応について厚生労働省の会議が開かれました。このワクチンとどう向き合えばいいのか?土屋敏之解説委員に聞きます。(くらし☆解説 「どうする?子宮頸がんワクチン」 土屋 敏之 解説委員 NHK 2015年09月25日)

  1. HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)(薬害オンブズパースン会議):”2009(平成21)年10月、HPVワクチン(サーバリックス)が厚生労働省により承認され、日本国内での販売が開始された。開始後から厚生労働省は部会を設置し、公費助成や定期接種化に向けた取り組みを開始したが、当会議は、2010(平成22)年11月、「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種に関する当会議の見解」を作成し、主に接種対象者の自己決定権を保障するという観点から問題提起をした。しかし、同月、ワクチン接種に関し公費助成が決定され、2013(平成25)年4月には予防接種法が改正され、定期接種化が実施された。こうした流れの中、HPVワクチンの被接種者は累計約770万人(延べ人数)となったが(厚生労働省発表資料)、これら被接種者のうち、一定数の者に、ギラン・バレー症候群や急性散在性脳脊髄炎などの重篤な自己免疫性疾患等の副反応被害が発生した。”
  2. TWEETS (twitter.com) #子宮頸がんワクチン
  3. サルでもわかる 子宮頸がんワクチン問題(1)inkブログ 2017-09-25)
  4. 「救えるはずの患者を救えない」 子宮頸がんワクチン副作用「問題」はなぜ起きた?「このままでは誰も救われない」(石戸諭 BuzzFeed 2016/12/3):”いまもなお、ワクチン接種の副作用が報道され、因果関係の有無を中心に論争が続いている。しかしその構図は、大多数の専門家が一致した見解をとるなか、一部の研究者が「因果関係がある」と主張している、というものだ。”
  5. 少女たちの人生を狂わせた? 「子宮頸がんワクチン」の実態 (iza イザ 2016.07.27):”接種を受けた約338万人のうち、健康被害の報告があった全2584人。そのうち発症日や症状が出た後の経過が確認できたのは1739人。うち症状が回復した患者は1550人(約89.1%)、未回復は186人(約10.7%)。”
  6. 子宮頚がんワクチンの行方 ー捏造報道の真偽ー (Dr.和の街医者日記 2016年07月28日)
  7. 放射能と子宮頸がんワクチン カルト化からママを救う 対談 開沼博×村中璃子(後篇)(WEDGE REPORT 2016年4月21日)
  8. (拡散希望)HPVワクチン被害者のnature誌への勇気ある訴えを知ってください (ほたかのブログ  2015-12-29)
  9. The world must accept that the HPV vaccine is safe. But the science alone will not be enough to build public and political confidence, says Heidi Larson.(NATURE COLUMN 01 December 2015) 削除されたコメント欄に寄せられていた42のコメント(アーカイブ
  10. 瀬戸内寂聴から考えた子宮頸がんワクチン<ワクチンの処方箋・その1>(Dr.村中璃子の世界は病気で満たされている 村中 璃子 日経ビジネス ONLINE 2015年10月22日):”HPVはセックスやキスを介して簡単に感染する、皮膚や粘膜に常在するありふれたウイルスです。 … HPVを発見したドイツ人のハラルド・ハウゼン氏は、この発見により2008年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。… 仮に初期で見つかれば子宮の入り口にある子宮頚部を切り取る手術で命は助かります。しかし、子宮の入り口とはつまるところ膣の奥。プライベートなことなので大声でそれを訴える女性は多くありませんが、子宮頸がんの手術を受けた結果、性生活が楽しめなくなった、そのため性生活がうまくいかなくなり妊娠を諦めたという女性がたくさんいます。また、仮に妊娠しても子宮の入り口を切り取っているため早産になりやすく、妊娠継続がうまくいかないというケースも多々あります。日本では少なくとも年間1万人の女性がこの手術を受けています。”
  11. 子宮頸がんワクチンのせいだと苦しむ少女たちをどう救うのか 日本発「薬害騒動」の真相(後篇)(村中璃子 (医師・ジャーナリスト) WEDGE REPORT 2015年10月23日) :”身体に表現されている症状について否定したり『心因性だから』と片付けたりするのも問題です。こうした対応を行うと、大抵の場合は症状が悪化します。”
  12. あの激しいけいれんは本当に子宮頸がんワクチンの副反応なのか 日本発「薬害騒動」の真相(前篇)(村中璃子 医師・ジャーナリスト WEDGE REPORT 2015年10月20日):”去る9月17日、専門家らによる厚生労働省のワクチン副反応検討部会が行われた。子宮頸がんワクチンについて議論したのは1年2カ月ぶり。 部会は今回も「ワクチンによる重篤な副反応の多くは心的なものが引き起こす身体の症状」との見解は覆さなかったが、「積極的な接種勧奨の差し控え」という奇妙な日本語の判断も継続するとした。差し控えにより接種率はかつての7割から数%にまで落ち込んでいる。”

 

ワクチン接種に関する談義

  1. 子宮頸がんワクチンについて高2の娘を持つ母です。最近周囲の同級生ママ友さんたちと“子宮頸がんワクチン”について話すことがありました。‥‥ 娘さんを持つお母様方は、“子宮頸がんワクチン”についてどのように考えてらっしゃいますか?なにが子どものためなのか、皆さまの声をお聞かせください。(井戸端会議 2016/09/02)

 

厚生労働省のウェブサイト

  1. 子宮頸がん予防ワクチンQ&A

 

ジョン・マドックス賞受賞に関する報道

  1. Women’s health champion, Dr Riko Muranaka, awarded the 2017 John Maddox Prize for Standing up for Science (Mark Staniland, NPG プレスリリース 30 November 2017)
  2. Q&A: Japanese physician snares prize for battling antivaccine campaigners (By Dennis Normile, ScienceMag.org news Nov. 30, 2017 , 2:00 PM):”A Japanese physician and writer who is under fire from antivaccination groups for defending a cervical cancer vaccine won an international award today for her perseverance.”
  3. 「医師とメディア人」二足のわらじを履く理由 あの英誌「ネイチャー」が選んだ日本人女医 (東洋経済ONLINE 2017年12月01日):”世界屈指の科学論文誌、英『ネイチャー』などが主宰する「ジョン・マドックス賞」。2017年の受賞者が医師・ジャーナリストの村中璃子氏に決定し、11月30日に授賞式が行われた。”
  4. 海外の一流科学誌「ネイチャー」 HPVワクチンの安全性を検証してきた医師・ジャーナリストの村中璃子さんを表彰 ネイチャーは日本の状況を、「このワクチンの信頼性を貶める誤った情報キャンペーンが全国的に繰り広げられた」と厳しく批判。(岩永直子 BuzzFeed News Editor, Japan BUZZ FEED NEWS 2017/12/1 10:30):”HPVワクチンの安全性を検証する発信を続けてきた医師でジャーナリストの村中璃子さんが11月30日(ロンドン時間)、イギリスの一流科学誌「ネイチャー」元編集長の功績を記念したジョン・マドックス賞を受賞した。”
  5. ジョン・マドックス賞に日本人医師 村中璃子氏、子宮頸がんワクチン問題について発信 (産経ニュース 2017.12.2 16:33):”英科学誌「ネイチャー」などが主宰し、公益に資する科学的理解を広めることに貢献した個人に与えられる「ジョン・マドックス賞」の2017年受賞者に、子宮頸(けい)がんワクチン問題について積極的に発信してきた医師でジャーナリストの村中璃子氏が選ばれた。”
  6. BBC Mixes Up Two Asian Women During Cringeworthy Radio Interview (By Kimberly Yam, HUFFPOST/MEDIA 12/04/2017 06:17 pm ET) During a Friday segment on the radio program, host Jenni Murray introduced her guest as Japanese doctor Riko Muranaka, who won the 2017 John Maddox Prize for “promoting science” about the HPV vaccine. However, the woman Murray was talking to on-air wasn’t Muranaka at all, but Trinh T. Minh-ha, a Vietnamese filmmaker. “Riko, why did you pursue this subject?” Murray asks Minh-ha, who remains silent.
  7. 子宮頸がんワクチン問題めぐる英表彰、報じられぬ日本 新聞では「産経」「道新」のみ (JCASTニュース 2017/12/ 6 19:14):” 12月6日時点で国内メディアで記事が受賞の記事が確認できるのは、産経新聞、東洋経済オンライン、バズフィード・ジャパン、北海道新聞のみ。”
  8. HPVワクチン問題で啓蒙、医師の村中璃子氏にジョン・マドックス賞 (山川真智子 NewSphere Dec 8 2017) BLOGOS コメント(26):”HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)は、世界的にその有効性が認められているが、接種後に深刻な副反応が出ていると報じられたことで、2013年に70%だった日本での接種率は、現在1%を切っている。 そんななか、ワクチンへの恐怖をあおる報道や発表の間違いを科学的な視点で正した功績が認められ、医師でジャーナリストの村中璃子氏が、ネイチャー誌などが選出するジョン・マドックス賞の今年の受賞者に決定した。”

 

参考

  1. ジョン・マドックス賞受賞スピーチ全文「10万個の子宮」村中璃子 Riko Muranaka 2017/12/09
  2. 村中璃子オフィシャルサイト 執筆記事一覧 村中璃子 RIKO MURANAKA @rikomrnk “村中 璃子 Riko Muranaka, M.D., M.A. 医師・ジャーナリスト 世界保健機構(WHO)の新興・再興感染症チーム等を経て、メディアへの執筆をはじめる。2017年、科学誌「ネイチャー」等の主催するジョン・マドックス賞を受賞。京都大学医学研究科非常勤講師。一橋大学社会学部出身、社会学修士。北海道大学医学部卒。”
  3. 追悼 ジョン・マドックス(1925~2009)(PDF) (NATURE DIGEST|VOL 6|JUNE 2009):”2009 年 4 月 12 日に死去したジョン・マドックスは、1966 ~ 73 年と 1980 ~ 95 年にNatureの編集長を務めた。それまで科学研究の評価の点でもジャーナリスティックな報道活動の点でも、仲間意識や素人くささが抜けなかったNatureは、彼が編集長に就任したことをきっかけにして、挑発的で専門的な学術誌へと大きく変貌した。”

 

書籍

  1. 10万個の子宮:あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか 村中 璃子 著 平凡社 2018/2/9

 

子宮頸がんワクチンについて

  1. 子宮頸がん予防ワクチン予防接種について(八王子市 更新日:平成28年6月29日)
  2. 子宮頸がん予防ワクチン(星川小児クリニック):”子宮頸がんの原因は、ほぼ100%がヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染です。多くの場合、性交渉(皮膚や粘膜同士の接触)によって感染すると考えられていて、発がん性HPVは、すべての女性の約80%が一生に一度は感染していると報告があるほどとてもありふれたウイルスです。このため、性行動のあるすべての女性が子宮頸がんになる可能性を持っています。… 子宮頸がん予防ワクチン接種後の、広範な疼痛・運動障害の頻度は10万回の接種当たり数例と決して多くありません。2013年12月に開催された第6回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会に示されたデータをみても、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、ギラン・バレー症候群の自然発症の頻度と比べても1桁少ない結果でした。 … 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会は、子宮頸がん予防ワクチンによる副反応そのものの発生頻度は非常に低く、接種と広範な疼痛・運動障害の因果関係については、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を自然発症した患者が紛れ込んでいる可能性が高いとの判断を示しました。”

 

その他関連するサイト・ブログ記事

  1. 村中璃子氏の不適切な取材の全容 (みかりんのささやき~子宮頸がんワクチン被害のブログ~ 2016-04-03)

 

これまでの報道

  1. 子宮頸がんワクチン ワクチン未接種で同様症状15例報告 (毎日新聞 2017年7月28日):”子宮頸(けい)がんワクチン接種後の痛みや運動・知覚障害などについて議論している厚生労働省の有識者検討部会は28日、こうした症状に詳しい小児科医4人からの聞き取りをした。ワクチンを接種していなくても同様の症状があったとする計15例の報告があり、回復の経過などを検討したが、ワクチン接種と症状の因果関係などの議論は進まなかった。 “

 

5ちゃんねる(旧 2ちゃんねる)

  1. 【ジョン・マドックス賞】日本人医師 村中璃子氏、子宮頸がんワクチン問題について発信 日本人初受賞 2017/12/02(土) 19:42:05.81 – 2017/12/04(月) 22:41:30.97 http://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1512211325/

 

“量子コンピューター”開発成功のイムパクト

ImPACT(内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム)のプレスリリースおよび報道によると、初めての国産量子コンピューターの開発に成功したとのことです。

内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の山本 喜久 プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として、日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 鵜浦 博夫 以下、NTT)NTT物性科学基礎研究所 量子光制御研究グループの武居 弘樹 上席特別研究員、本庄 利守 主任研究員らのグループ、情報・システム研究機構 国立情報学研究所(東京都千代田区、所長 喜連川 優 以下、NII)情報学プリンシプル研究系の河原林 健一 教授、加古 敏 特任准教授らのグループ、および東京大学(東京都文京区、総長 五神 真)生産技術研究所 合原 一幸 教授、神山 恭平 特任助教らのグループは、光の量子的な性質を用いた新しい計算機「量子ニューラルネットワーク(QNN)」をクラウド上で体験できるシステムを開発し、2017年11月27日より公開いたします。

 

量子コンピュータを実現するハードウェアとしては、ゲート型、アニール型、ニューラルネットワーク型の異なる3つのアプローチがあります。インターネットを介して実機を体験できるクラウドウェブサイトとしては、IBMがゲート型15ビットマシンを、D-WAVEがアニール型2000ビット、12000結合マシンを今年に入って次々と公開しています。また、Googleも来年春にはゲート型49ビットマシンを公開する予定です。今回、日本から公開されるニューラルネットワーク型2000ビット、400万結合マシンは、世界最大規模の量子コンピュータであり、これまでの限界を30倍以上拡大した2000ビットまでの組み合わせ最適化問題が解けます。(山本 喜久 ImPACTプログラム・マネージャーのコメント 量子ニューラルネットワークをクラウドで体験 ~量子を用いた新しい計算機が使えます~JST 平成29年11月20日

スーパーコンピューターをはるかにしのぐ性能が期待される次世代のコンピューター、「量子コンピューター」の初の国産機の開発に成功したと国立情報学研究所やNTTなどのチームが発表しました。(初の国産量子コンピューター 無料公開 NHK NEWS WEB 11月20日 19時14分

 

しかしながら今回の成果を「量子コンピューター」と呼ぶことに関して、インターネット上で異論が湧き起こっています。

研究者としては「量子コンピュータ」とは呼べないものを研究者が「世界最大規模の量子コンピュータを開発した」と言って大大的に広報したということ。報道が勝手に書いたとかなら、またマスゴミが、で済むんですが、研究領域が大切にしている言葉の定義を研究者自身が広報のために歪めて使うというのは、研究倫理の問題にもなるんじゃないかと思います。‥(中略)‥

ビッグデータ、人工知能、IoT・・・。量子コンピュータもそのうちのひとつのバブリワードなわけで、バブリワードを使ってプレスしたほうがPR効果が大きいという判断なんでしょうね。‥(中略)‥

なんだかアホらしい話ですが、最近の大学や研究機関のプレスリリースは研究者としての誠実さよりも、バズること、世の中にウケることが最優先になっています。(内閣府ImPACTの誇大広告広報と量子コンピュータの話 人間とテクノロジー 2017-11-21)

 

追記20171010

ついに、この研究成果の共同研究者もこれは量子コンピュータではないと認めていることが、毎日新聞により報道されました。

チームのメンバーの西森秀稔・東京工業大教授は毎日新聞の取材に「計算の一番本質のところで量子効果を使っていない」と話す。
共同研究者に名を連ねる井上恭・大阪大教授も「『これは量子コンピューターと違う』と言う人がいたら反論できない」と話した。
(「スパコン超え」国産コンピューター 「量子」命名に異論 集積回路、従来のまま (毎日新聞 2017年12月10日 東京朝刊))

大きな差を生む小さな習慣:実験ノートの効果的な書き方

日々実験を行っている大学院生やポスドクなどの研究者は、毎日必ず実験ノートを付けているわけですが、当たり前のように毎日やっているそのやり方の僅かな差が、数年後には大きな差となって、もしかしたらそれが研究者として成功できるかどうかを決める違いとなってしまうかもしれません。そこで、実験ノートの書き方に関するアドバイスをいくつか紹介します(詳細は、引用元の記事をご覧ください)。

 

世の中にはトンデモナイ人間も存在するので、一応、当たり前のことの確認から。

実験ノートは実験者が実際にその実験を行ったことを示す唯一の物的証拠

実験したのであれば、実験ノートが存在する。実験ノートが存在しないのであれば、実験していなかったとみなされる。普通の研究者にとって、何の問題もないことです。

実験ノートは実験者が実際にその実験を行ったことを示す唯一の物的証拠実験ノートには何を記録するのか? Life + Chemistry 2017-04-29)

実験ノートとは、あなたがその実験を実際に行ったことを示す唯一の物的証拠です(信州大学図書館 PDF

(ノートを)出さない人は不正をしているとみなします」(国会で山中教授「ノートのチェック徹底を」14/04/04)

 

では、実験ノートのつけ方に関するアドバイスの記事を2つ紹介(太字強調は当サイト)。独立した2つの記事ですが、これを見ると、成功するノウハウというものは、一つの形に収斂するようです。

 

ノートは、毎日論文を書いているようなもの

ノートの構成は論文と同じようになっていて、「タイトル」、「日付」、「目的」、「方法」、「結果」、「考察」などの事項が箇条書きで示されています。‥‥ 目的に加え、研究の「背景」や「基礎情報」も書いてありますので、自分がどうしてこの実験をしなければならないのかをすぐにつかむことができます。さらには、「操作成功の基準」、「実験成功の基準」、「実験成功の場合の次の実験」、「結果の予想と対策」といった一般的なノートには見慣れない事項も記録されています。「ノートには実験の条件やサンプルのロットなど細かい情報を記録しますが、さらに実験の基準や対照を詳細に書く点が特徴です。記録する事項が非常に多くて大変だし、時間がかかると思われるかもしれません。でも、ノートを書くことでデータを得るために必要な条件が絞られるので、結果的には無駄な実験をしなくてすみます。実験のトータルの時間は変わりませんよ」と木村先生は話します。‥‥ ノートは実験を記録するのではなく、考えることと結び付けられるようになっていて、研究力に不可欠な科学的な思考の訓練や論文の書き方の練習になります。ノートには実験記録と研究力の向上というふたつの目的があります。(研究ノートの意義を考える① 総合研究大学院大学額融合推進センター

 

ノートを”プチ論文”化

実験ノートを「プチ論文」にするのです。必要な構成は次のとおり。(1)タイトル(2)日付(3)実験目的(4)材料・方法(5)実際におこなった手技(6)結果(7)考察 ほとんどの学生は指導しないと、ノートには(5)実際におこなった手技、だけをちょこっとメモ程度に書くだけしかしません。しかし大切だけど意外に難しいのは、(1)タイトルと、(3)実験目的ですね。(中略)実験ノートをプチ論文化すると、日々の実験が楽しくなってきます。 目的を明らかにして、しっかりと結果を記載し、それに対していろいろと考察をしてみる。これは論理性や科学的思考の訓練になるだけでなく、実際に論文を執筆するときにとても役に立つはずです。(小保方リーダー&若手研究者必読!今さら人に聞けない「正しい実験ノート」の書き方 中山敬一 [日本分子生物学会副理事長、九州大学教授] DIAMOND ONLINE 2014.4.23

 

論文を効率良く書けるかは実験ノートのつけ方次第

Good note-book discipline is enormously helpful. When you have finished an experiment, try to record your conclusion in words on the same page with your findings. Make tables. Draw graphs and stick them into the book. Keep a separate book in which to record summaries of results from many experiments and group them by subject. Some experiments will provide results for several summaries. Not only are well-ordered note-books useful when you write a paper, but the prompt recording of summaries compels you to give critical thought to each experiment at the best time, and may move you to repeat a control test while you still have the materials.

(Vernon Booth. Writing a Scientific Paper. Biochem. Soc. Trans. 3 (1) 1-26 (1975) 太字強調は当サイト)

 

マイケル・ファラデーに学ぶ論文化のための効率的な実験ノートのつけ方

  • 生データのままにしておかずに,毎日,文章にして定稿化
  • 実験上の不備,失敗についても事実の記録として避けずに記し
  • 通常の実験ノートにあるような実験方法実験結果のみならず,研究方針研究計画参考文献なども記し
  • 研究ノートはすでに論文の下原稿

(転載元:ファラデーの電気分解の法則 —原論文を読み解く—(前編) 金児 紘征(秋田大学名誉教授) Electrochemistry, 83(11))

 

ノートの付け方以前の話として、ノートの中身となる部分、つまり実験をそもそもどうやるかということも重要です。

「3ない実験」をするな

僕らの研究スタイルというブログで紹介されていたのですが、この「山中教授の『3ない実験』の戒め」は、耳が痛い人も多いはず!

「3つのことが抜けてる実験をしたら俺は叱るぞ」(by 山中教授)

①目的がない実験
目的のはっきりしない実験。実験することそのものが目的となっているような実験。
②コントロールがない実験
実験をしている人なら説明不要ですね。例えば細胞に薬品Aを与えて、その10時間後の変化を見るといった実験の際は、コントロールとして何も与えていないグループを作成し、比較対象とします。 ‥‥ 意外とパイロット実験でコントロールを行なってない人がいたりしますね。
③後片付けがない
実験ノートの記録なども含め、実験器具など後片付けのない実験。‥‥ また最近の試みとして、実験結果をこまめにFigure化しています。これで後片付けのない実験を防いでいます。(引用元:山中教授に学ぶ3ないルール 僕らの研究スタイル;出典:「賢く生きるより辛抱強いバカになれ」山中教授・稲盛和夫 共著)

研究者にとって実験ノートとは

研究者にとって、日々の実験結果や思考の過程を記している実験ノートは、「人生そのもの」だと思います。この感覚は、研究者であれば皆が共有しているものでしょう。

世界でただ一つのデータが書かれているラボノートは、命の次に大事なものだよ(伏見先生 研究ノートの意義を考える③

研究者にとって実験ノートは「命の次に大事なもの」(若山教授 弁護士ドットコムNEWS 2014年06月16日)

生命科学研究者にとって、実験ノートは「命」(実験ノートの基本:日付と生データは必須、実験室外持ち出し禁止

WEB RONZA 2014年04月07日)

 

実験ノートの所有権について

実験ノートは誰のものでしょうか?現実としては、大学院生やポスドクがラボを出るときに、実験ノートも持って出ることが多いと思います。

しかし、実験のノートの所有権は個人に帰属せず、研究機関のものであるという理解が、現在では一般的です。

ノートは研究室の共有財産であるから、誰が見ても判るように心がけて記載すること。(新入生へのアドバイス

実験ノート等の資料は当該研究者個人に帰属せず、研究チームひいては研究機関に帰属することを、研究者等は理解しなければならない。実験ノート等資料の管理責任は管理責任者が負う。(熊本大学発生医学研究所

「記録」がない実験は、行われなかった実験に等しい。無駄である。
実験ノートは研究室の財産である(機関所有が原則)。(実験ノート(ラボノート)の記載について 兵庫医療大学・薬学部・生体防御学 PDF

研究ノートは研究者個人のものであり,私的領域に属するものだと長く考えられてきた。皆が横並びで研究ノートを導入し,利用していたわけではなかった。研究ノートを使用すべきだと,大学で言われるようになったのは,2000年前後に産学連携や特許取得が関心を集めた頃からである。知的財産の保護の観点から研究ノートの導入が求められた。2004年の国立大学法人化により,知的財産権が大学帰属になり,研究ノートは研究者個人の問題というよりは機関の問題へと変質した。研究ノートは公共的領域に属するものだと理解され始めたのである。(研究不正と研究データガバナンス 小林 信一 PDF

 

実験ノートの開示請求

データ捏造論文が発覚したのに研究機関がその不正をウヤムヤにしようとするのを見れば、誰だって、「本当に実験したというのなら、実験ノートを出せ!」と言いたくなります。実験ノートの開示に関して、これまでの事例を紹介したブログやネットの記事を紹介します。

1 不開示決定した法人文書の名称

①小保方氏の実験ノート(計179枚)
②「研究論文に関する調査委員会」資料のうち、旧CDB若山照彦研究室のSTAP細胞研究に関する実験ノート部分(計534枚)
2 不開示とした理由
本件法人文書は、「研究論文に関する調査委員会」における調査に使用されたものであり、これを公にすることにより以後の同種の調査に支障をきたすおそれがあることから、「独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律」第5条第3号の不開示情報に該当し、その全部を不開示とする。 (理研が開示を拒否した理由。DORAのブログ 2017/8/24)

 

下に紹介する答申書の中では、実験ノートがいかなる性格もつものかに関する議論がなされています。

各研究者が実験ノートの開示に関して大きな問題としているのは、「実験ノートが、研究のきわめて正直な具体的記録であり、研究上のアイデアのみならず、自己批判的な記述も多々含まれることになることから、自然科学者にとって、これを第三者に閲覧されることはきわめて耐え難いことである」(農研機構研究者の意見)という点である。(答申書55~56ページ  諮問番号:平成20年(独情)諮問第100号 事件名:平成17年度プロジェクト研究「ゲノム育種による効率的品種育成技術の開発」委託事業実績報告書等の一部開示決定に関する件 PDF

 

参考

  1. 僕は論文をこう書いてきた  ラボノートから論文を生みだす 理学研究科化学専攻 金森 主祥 (PDF
  2. 誰も教えてくれなかった 実験ノートの書き方 (研究を成功させるための秘訣)(Chem-Station 化学書籍レビュー 2017/8/18)
  3. 特集:研究倫理 研究不正と研究データガバナンス 小林 信一(PDF):”本当のことを言えば,多くの研究者たち,特に年長の研究者が研究不正問題に不熱心なのである。(中略)「研究ノートを出せと言われても,昔はみんな研究ノートをまともに作っていなかったし,保管もしていない」「いまさら研究ノートがないのは間違いだと,とやかく言われるのはいやだ」と言う先生もいた。”
  4. 実験ノートは誰の所有物か?Life + Chemistry 2017-06-17)
  5. 「実験ノート」なるもの-第3回 「実験ノートの書き方」の理想と現実カガクDe暮らす 2015年7月29日)
  6. 学生時代の実験ノート(穐田宗隆)(1)
  7. 研究ノートの書き方(エナゴ学術英語アカデミー
  8. Vernon Booth. Writing a Scientific Paper. Biochem. Soc. Trans. 3 (1) 1-26 (1975)

 

研究生活カテゴリーの記事一覧

体の細胞の遺伝情報を直接書き換える初の試み

人間の体の構造や機能の設計図となるのが遺伝子配列です。この配列の一部が通常と異なると、正常に機能するたんぱく質が作られなくて遺伝的な病気になることがあります。アリゾナ州出身のブライアン・マデュー(Brian Madeux)さん(44)は、イズロン酸-2-スルファターゼ (iduronate–2-sulfatase)という酵素の遺伝子にそうした異常があり、ハンター(Hunter)症候群と呼ばれる遺伝性代謝異常症に悩まされてきました。症状が広範囲にわたるため、2年に一回はなにかしらの手術を受けなければならないような生活をおくってきたそうです。

MPS II (Hunter syndrome) is a progressive disorder that primarily affects males and is caused by mutations in the gene encoding the iduronate-2-sulfatase (IDS) enzyme which is also required for the degradation of GAGs. Children with MPS II begin showing symptoms of developmental delay by age 2 – 3 years. Depending on the severity of the mutation and degree of residual enzyme activity, affected individuals may experience delayed development and develop enlarged internal organs, cardiovascular disorders, stunted growth, skeletal abnormalities and hearing loss. (About MPSI and MPI IIsangamo.com)

ムコ多糖症Ⅱ型 (Mucopolysaccharidosis)
グリコサミノグリカンのデルマタン硫酸(DS)とヘパラン硫酸(HS)の分解に必要なライソゾーム酵素であるIduronate-2-sulfatase の先天的欠損により発症するX連鎖劣性遺伝性疾患である。発症頻度は、約5万人にひとりとされている。日本では、約200症例が報告されている。(小児慢性特定疾病情報センター)

現在の遺伝子工学の技術を用いると、人間の遺伝子の本体であるDNAの塩基配列を「書き換える」ことが可能になっています。ゲノム編集と呼ばれるこのような「書き換え」は、すでに遺伝学的な病気の治療に用いられてきましたが、遺伝子を正常に書き換えた細胞を体内に戻すという方法でした。今回、マデューさんの治療にあたって、ゲノム編集のための道具を体内に送り込んで、マデューさんの体の中の細胞の中のDNAを直接、書き換えてしまおうという戦略が用いられました。ゲノム編集技術のやり方に関しては、現在CRISPR-CAS9という最新の方法が世を席捲していますが、今回の遺伝子治療にあたってはCRISPR-CAS9が登場する以前から研究が進められてきていたジンクフィンガーヌクレアーゼ (Zinc Finger Nucleases, ZFNs) というゲノム編集技術およびウイルスベクターを用いた技術が用いられています。遺伝子書き換えのターゲットとなるのは、今回の治療では肝細胞で、肝細胞のなかのわずかな割合でもゲノム改変に成功できれば、治療効果が期待できるのだそうです。

今回の臨床試験がうまくいけば、マデューさんは、人類が初めて、ゲノム編集技術を用いて体内の細胞の遺伝子を書き換えた例となります。成功しそうかどうかがわかるのに少なくとも1ヶ月はかかるそうです。

人間は自分の両親から受け継いだ遺伝的な性質には抗えないというのが、これまでの一般的な認識だったと思います。今回は、肝臓の細胞のごく一部とはいえ、生まれ持っている遺伝情報を人為的に書き換える最初の例になるという点において、非常に画期的なことだと思います。

 

参考

  1. About MPS I and MPS II (Sangamo Therapeutics)
  2. AP Exclusive: US Scientists Try 1st Gene Editing in the Body (VOA NEWS November 15, 2017 11:14 AM Associated Press)
  3. A human has been injected with gene editing tools to cure his disabling disease. Here’s what you need to know (By Jocelyn Kaiser Science News Nov. 15, 2017 , 6:01 PM)
  4.  遺伝子修復治療 世界初の臨床試験開始 (毎日新聞 2017年11月16日 20時25分 最終更新 11月16日 20時25分)
  5. 人間の体内で遺伝子編集する初の試みが実施へ (MIT Technology Review)
  6. For the First Time, Gene Editing Is Taking Place Inside the Human Body (MIT Technology Review)
  7. US scientists try 1st gene editing in the body (SciPol November 15, 2017)
  8. In a first, scientists edit genes inside a man’s body to try to cure a disease. What’s next? (By Ariana Eunjung Cha, Washington Post November 16 at 7:00 AM)
  9. The First Man to Have His Genes Edited Inside His Body (By Sarah Zhang, The Atlantic Nov 15, 2017)
  10. In a Major First, Scientists Edit DNA Within the Human Body (Kristen V. Brown GIZMODO)
  11. Experimental new technique aims to edit man’s DNA inside his own body (
    by Alessandra Potenza THE VERGE Nov 15, 2017, 3:33pm EST)
  12. Scientists Have Tried First-Ever Gene Editing Directly Inside a Patient’s Body (PETER DOCKRILL Science Alert 16 NOV 2017
  13. Method of the Year 2011: Gene-editing nucleases – by Nature Video
  14. 患者のゲノム、直接書き換え 米で世界初の臨床試験(朝日新聞DIGITAL ワシントン=香取啓介 2017年11月16日23時25分 閲覧は要登録)
  15. 体内で直接ゲノム編集 米国で初の臨床試験 (東京新聞 2017年11月17日 10時05分