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ウィルタネン彗星(46P)の軌道、位置、観察ガイド

ウィルタネン彗星とは

ウィルタネン彗星は1948年1月に天文学者ウィルタネン(Carl Alvar Wirtanen 1910-1990)が発見した彗星で、公転周期は約5.4年で太陽のまわりをまわってます。地球も動いているため、彗星が地球に接近するのは100年に一度もないぐらいのまれなことのようです。

 

ウィルタネン彗星の軌道

ウィルタネン彗星の軌道は一番遠いところでも木星の軌道付近なので、太陽系の外側には出ていかない彗星です。下のGIFアニメーションでは、2018年末から2019年初めにかけてウィルタネン彗星(ピンク色の軌道)が地球(濃い青色の軌道)に接近する様子がよくわかります。


GIFアニメーション出典:46P/Wirtanen (wikipedia)

  1. ふたご群の夜、もうひとつの流星群が現れる? (2012年12月13日 NASA Science News / AstroArts) ウィルタネン彗星と、ふたご座流星群のもととなる小惑星ファエトンの軌道
  2. Comet 46P/Wirtanen – Orbit(wirtanen.astro.umd.edu)

 

肉眼でみえるウィルタネン彗星

最接近した12月16日ごろが3.5等級の明るさだそうで、12月いっぱいは4等級台をキープするようなので、空のきれいな地域であれば肉眼でなんとか見えそうです。肉眼で彗星が観察できるチャンスは、これが平成最後になるとか。

ウィルタネン彗星の姿を確認するには、双眼鏡を用意しましょう。彗星の場合、肉眼等級と言っても、淡く広がっているため、実際に肉眼で観察するのはなかなか難しいものです。ウィルタネン彗星の観望・撮影機材 2018.11.20 天体写真の世界)

 

ウィルタネン彗星が地球に最接近する日時

彗星が地球に最接近するのは15日夜から16日未明にかけてだったそうです。

 

ウィルタネン彗星の近日点通過

ウィルタネン彗星が最も太陽に接近する(近日点)のは、2018年12月13日午前7時59分だそうです。

 

ウィルタネン彗星が見える夜空の位置

下のheavens-above.comというサイトでは、現在もしくは日時を指定したときのウィルタネン彗星の夜空における位置を教えてくれます。これは非常に便利。ただし、ウェブの表示が日本語でも、時刻の表示が日本時間でないことに注意。

下のサイトも、軌道を上から眺めた図や現在の星座の中の位置などをインタラクティブに図示してくれる。

アストロアーツなどのウェブサイトでウィルタネン彗星の見える位置が説明されています。

  1. 2018年12月 ウィルタネン彗星が4等台 (AstroArts) 
  2. ウィルタネン彗星(46P)がこれから4等台に(2018年11月1 天リフポータル)
  3. Catch these Comets in 2018(By: Bob King | January 10, 2018 SKY & TELESCOPE) 接近時の星図と日付と彗星の位置のがわかりやすい。
  4. ウィルタネン彗星輝く 太陽の周り5年半周期で運動 釧路町からも肉眼で確認(12/18 05:00 北海道新聞 どうしん)16日午前1時に撮影された画像。プレアデス星団とかなり近いところにいます。
  5. ふたご座流星群と彗星の競演 (2018.12.14 12:30 産経新聞) 14日午前に撮影された、ふたご座流星群とすばるとウィルタネン彗星の写真
  6. ウィルタネン彗星最接近 昴と競演( 2018年 12月 15日 土曜日 15時42分 南信州新聞) 13日夜に撮影されたウィルタネン彗星とプレアデス星団(すばる)と流星
  7. とらえた 特別な輝き 立山でウィルタネン彗星 (2018年12月13日 北陸中日新聞)10日午後9時ごろの撮影。

 

ウィルタネン彗星の尾の発達

彗星は別名「ほうき星」というくらいですから、素人的には立派に発達した尾を期待してしまうのですが、今回、ウィルタネン彗星の尾は発達するのでしょうか?

 

双子座流星群とウィルタネン彗星

自分はふたご座流星群は見逃しましたが、YOUTUBEに非常に見応えのある動画があったので紹介します。ド迫力の流星、多数の人工衛星(?)、徐々に位置を変える彗星と見入ってしまい、何回繰り返し見ても飽きません。

2018年ふたご座流星群 ウィルタネン彗星と流れ星(Nyanta8355 2018/12/10)

 

ウィルタネン彗星の撮影方法

赤道儀の架台があれば望遠レンズをカメラにつけて星の日周運動を追尾撮影できます。これにより露光時間が長くても星が流れずに写ります。彗星もゆっくり動いていきますが、そのズレがわからない範囲の露光時間にすれば、彗星と星の両方がブレない状態で写ります。こうして撮影された彗星は、下の動画の8:25~。

Let’s Photograph Comet 、46P Wirtanen

一般的な彗星の撮影方法を説明したサイトを紹介。

最も簡単な彗星の撮影方法は、広角レンズを付けたデジタル一眼レフカメラをカメラ三脚に固定して撮影する固定撮影です。(天体写真の世界 > 天体写真の撮影方法 > 彗星の撮影方法

 

ウィルタネン彗星の軌道要素

ウィルタネン彗星の軌道要素 (Orbital elements)は以下のウェブサイトに掲載されています。

  1. Comet 46P/Wirtanen Orbital Elements(theskylive.com)
  2. 軌道要素(aerith.net)

 

参考

  1. A Bright Green ‘Christmas Comet’ Will Fly the Closest to Earth in Centuries (By Christina Caron Dec. 15, 2018 New York Times)

参考(論文)

  1. Evolution of the orbit of comet 46P/Wirtanen during 1947-2013. Krolikowska, M. & Sitarski, G. Astronomy and Astrophysics, v.310, p.992-998

参考(その他)

  1. シミュレーションで推測、太陽系第9惑星存在の可能性 2016年1月21日 Caltech  / AstroArts
  2. 軌道要素(ウィキペディア)

 

 

 

火星が2018年7月31日に最も接近

夜の南天低いところに異様に赤く明るく光る星が目につきますが、それは火星で、現在地球にかなり接近しているため明るく見えています。

火星大接近2018(国立天文台)

2003年8月以来の最接近で、2018年7月31日に火星は地球に最も近づきます。ちなみに衝(Opposition)(火星が太陽の正反対の位置にくる)は7月28日(日本時間)。

What’s Up for July 2018

火星大接近2018は、「大接近」とも呼ばれる近い距離での最接近となります。このころの火星はマイナス2.8等の明るさで輝き、視直径は24秒角を超えます。(大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 国立天文台)

 

参考

  1. 火星大接近 2018年夏、南の空の赤い星に注目! 7月31日 地球再接近 距離:5760万km (astroarts.co.jp)
  2. Watch for it: Mars will be CLOSEST to Earth in over 30 years (theweathernetwork.com)
  3. 火星が地球に最接近(2018年7月)(国立天文台
  4. 火星の大接近と小接近 (国立天文台)

京大らがブラックホール連星を可視光観察

京大らがブラックホール連星の放射エネルギー変動を可視光領域で観察

はくちょう座V404は、ブラックホールと恒星とが近接した連星で、X線新星として知られています。X線新星はアウトバーストと呼ばれる急激な増光現象を不定期に生じますが、1989年のアウトバースト以来26年ぶりのアウトバーストが2015年6月に起こり、京都大学らの国際的な共同研究チームが観測を行いました。アウトバースト時のブラックホール近傍からの放射エネルギーの振動現象はこれまでこれまでX線領域でしか観測されていませんでしたが、今回の観測によりアウトバースト時の可視光の変動が初めて捉えられ、2016年1月7日付けのNature誌で報告されました。

Repetitive patterns in rapid optical variations in the nearby black-hole binary V404 Cygni (Nature 529,54–58 (07 January 2016)doi:10.1038/nature16452 Received 25 July 2015  Accepted 13 November 2015 Published online 06 January 2016 )

Repetitive patterns in rapid optical variations in the nearby black hole binary V404 Cygni (*再生に際してBGMの音量に注意)

著者:木邑真理子, 磯貝桂介, 加藤太一, 上田佳宏 (京都大学), 中平聡志 (JAXA), 志達めぐみ (理研), 榎戸輝揚, 堀貴郁, 野上大作 (京都大学), Colin Littlefield (Wesleyan University、アメリカ), 石岡涼子, Ying-Tung Chen, Sun-Kun King, Chih-Yi Wen, Shiang-Yu Wang, Matthew J. Lehner, Megan E. Schwamb, Jen-Hung Wang, Zhi-Wei Zhang (Institute of Astronomy and Astrophysics, Academia Sinica、台湾), Charles Alcock (Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics、アメリカ), Tim Axelrod (University of Arizona、アメリカ), Federica B. Bianco (New York University、アメリカ), Yong-Ik Byun (Yonsei University、韓国), Wen-Ping Chen (National Central University、台湾), Kem H. Cook (Institute of Astronomy and Astrophysics, Academia Sinica、台湾), Dae-Won Kim (Max Planck Institute、ドイツ), Typhoon Lee (Institute of Astronomy and Astrophysics, Academia Sinica、台湾), Stuart L. Marshall (Kavli Institute for Particle Astrophysics and Cosmology (KIPAC), Stanford University、アメリカ), Elena P. Pavlenko, Oksana I. Antonyuk, Kirill A. Antonyuk, Nikolai V. Pit, Aleksei A. Sosnovskij, Julia V. Babina, Aleksei V. Baklanov (Crimean Astrophysical Observatory、クリミア), Alexei S. Pozanenko, Elena D. Mazaeva (Space Research Institute of the Russian Academy of Sciences、ロシア), Sergei E. Schmalz (Leibniz Institute for Astrophysics、ドイツ), Inna V. Reva (Fesenkov Astrophysical Institute、カザフスタン), Sergei P. Belan (Crimean Astrophysical Observatory、クリミア), Raguli Ya. Inasaridze (Ilia State University、アメリカ), Namkhai Tungalag (Mongolian Academy of Sciences、モンゴル), Alina A. Volnova, Igor E. Molotov (Space Research Institute of the Russian Academy of Sciences、ロシア), Enrique de Miguel (Universidad de Huelva、スペイン), 笠井潔 (スイス), William L. Stein (アメリカ), Pavol A. Dubovsky (Vihorlat Observatory、スロバキア), 清田誠一郎 (千葉), Ian Miller (イギリス), Michael Richmond (Rochester Institute of Technology、アメリカ), William Goff (ギリシャ), Maksim V. Andreev (Russian Academy of Sciences、ロシア), 高橋弘允 (広島大学), 小路口直冬, 杉浦裕紀, 竹田奈央, 山田英史, 松本桂 (大阪教育大学), Nick James (イギリス), Roger D. Pickard (The British Astronomical Association, Variable Star Section (BAA VSS)、イギリス), Tam?s Tordai (Hungarian Astronomical Association、ハンガリー), 前田豊 (長崎), Javier Ruiz (Observatorio de Cantabria、スペイン), 宮下敦 (成蹊気象観測所、東京), Lewis M. Cook (Center for Backyard Astrophysics、アメリカ), 今田明 (京都大学) & 植村誠 (広島大学)(プレスリリース 平成28年1月7日 京大、JAXA、RIKEN、広島大学

Astronomers Say Black Holes Can Be Spotted Using Home-Use Telescope

参考

  1. Repetitive patterns in rapid optical variations in the nearby black-hole binary V404 Cygni. Nature 529,54–58 (07 January 2016)doi:10.1038/nature16452
  2. ブラックホール近傍から出る規則的なパターンを持つ光の変動を可視光で初めて捉えることに成功-ブラックホールの「またたき」を直接目で観測できる機会に期待-(jaxa.jp プレスリリース 京都大学、宇宙航空研究開発機構、理化学研究所、広島大学 平成28年1月7日):”「アウトバースト」…天体が突然明るく光る現象。X線新星の場合、光度がたった数日で100倍以上も明るくなり、その後数十日から数百日かけてゆっくりと元の明るさに戻る”
  3. ブラックホール近傍から出る規則的なパターンを持つ光の変動を可視光で初めて捉えることに成功 -ブラックホールの「またたき」を直接目で観測できる機会に期待-(京都大学 研究成果 2016年01月07日)
  4. ブラックホール周辺の瞬き、初観測…京大など(読売新聞YOMIURI ONLINE 2016年01月07日):”ブラックホールの周辺で、星が明滅する瞬きのような光が出ているのを世界各地の望遠鏡を使って初めて観測したと、京都大や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの国際研究チームが発表した。”
  5. ブラックホール「瞬き」見えた!=「アウトバースト」の光初観測—京大(WSJ/時事通信 2016年1月7日):”昨年6月、26年ぶりにアウトバーストが起き、世界15カ国の専門家らに呼び掛け、35台の望遠鏡で18日間、可視光を撮影した。”
  6. 京大、ブラックホールの「またたき」を可視光で観測することに成功 (マイナビニュース 2016/01/07):”京都大学(京大)は1月7日、今までX線でしか観測できないと考えられていたブラックホール近傍からの放射エネルギーの振動現象を可視光で捉えることに成功したと発表した。”
  7. Federica Bianco su V404 Cygni, il buco nero che si vede
  8. ブラックホール連星はくちょう座V404星がアウトバースト(AstroArts/VSOLJニュース 2015年6月29日)
  9. 連星(れんせい)(ウィキペディア):2つの恒星が両者の重心の周りを軌道運動している天体
  10. 新星(しんせい)(ウィキペディア):恒星(白色矮星)の表面に一時的に強い爆発が起こり、それまでの光度の数百倍から数百万倍も増光する現象
  11. 降着円盤(こうちゃくえんばん、accretion disk):ブラックホールや中性子星や白色矮星のようなコンパクト星に落ち込むガスや塵が、高密度天体の周りに形成する円盤。可視光線やX線などのさまざまな電磁波を放射する。
  12. V404 Cygni (Wikipedia)
  13. X線天文学の誕生とその発展(小田稔):1960年代,1970年代には,X線星からX線を放射させているのは,連星を形成している高密度の星に恒星から流れ込むプラズマが解放する重力エネルギーだということがはっきりしてきた.