Category Archives: 科学ニュース

ゲノム情報(DNA)から顔かたちを予測する技術

平成12年12月に起きた東京都世田谷区の一家殺害事件で現場に残された犯人のDNA型をもとに、犯人の顔や容姿などを推定する試みがなされるそうです。子が親に似るのは当たり前ですが、だからといってDNA情報から顔が予測・再現できるところまで科学技術が進んできていたとは知りませんでした。

  1. 世田谷一家殺害 最新DNA型鑑定で容姿推定へ (12/30(水) 0:28 産経新聞 YAHOO!JAPAN)

 

ゲノム情報から顔かたちを予測する日本の研究

  1. 顔ゲノムモンタージュプロジェクト(科研費による「顔形状を含む可視形質を規定する遺伝要因に関する双生児研究」) 慶應義塾大学
  2. 顔形状を規定するゲノム変異の網羅的探索によるゲノム・モンタージュ技術の開発 研究種目 基盤研究(A) 研究分野 生命・健康・医療情報学 研究機関 東海大学 研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31

参考

  1. DNAの情報で顔を再現! (2019年5月10日 NHK NスぺPlus)
  2. 精度90%超え! 「顔だけで遺伝子性疾患を推定」するアプリの驚愕 スマホのカメラがセカンドオピニオンに (AI SCHOLARAI 2019.04.12 gendai.ismedia.jp)
  3. DNAから顔を正確に予測することはできるのか? (2017.10.22 19:05 6,280 author 山田ちとら GIZMODO)
  4. J. Craig Venter Human Longevity
  5. Parabon NanoLabs DNA Snapshot
  6. ゴミについたDNAから顔を復元、ポイ捨てした人をポスターにするキャンペーン 香港のNGOが、街に落ちているゴミを集めて、付着したDNAから落とし主の顔をデジタル写真に復元。ポスターにして掲示している。 (2015.05.20 WED 06:10 WIRED.JP)近未来的技術を利用した指名手配写真を思わせるこれらのポスターは、香港の非営利団体「Hong Kong Cleanup」のために、広告代理店オグルヴィが制作したものだ。
  7. 街で集めたDNAから、その人の顔を復元して3Dプリント (2013.05.09 THU 12:03 WIRED.JP) 街角に落ちている髪の毛や爪、タバコの吸い殻、チューインガムなどを集めてそれからDNAを抽出し、元 IRIEDの人の顔を復元するプロジェクトの展覧会が行われている。
  8. ヘザー・デューイ=ハグボーグ(Heather Dewey-Hagborg) 2012 Stranger Visions
  9. DNAから人相推定も 目・鼻の位置など決める遺伝子特定 (2012年9月14日 12:09 日本経済新聞)

2020年ノーベル物理学賞はブラックホール研究者のRoger Penrose, Reinhard Genzel, Andrea Ghezの3氏に

昨日のノーベル医学生理学賞に続き、今日はノーベル物理学賞の受賞者が発表されました。2020年ノーベル物理学賞はRoger Penrose, Reinhard Genzel, Andrea Ghezの3氏に授与されます。

The Nobel Prize in Physics 2020 was divided, one half awarded to Roger Penrose “for the discovery that black hole formation is a robust prediction of the general theory of relativity“, the other half jointly to Reinhard Genzel and Andrea Ghez “for the discovery of a supermassive compact object at the centre of our galaxy.” (https://www.nobelprize.org/prizes/physics/2020/summary/)

Announcement of the 2020 Nobel Prize in Physics

 

ロジャー・ペンローズの著書

  

 

2020年ノーベル物理学賞予想サイト

  1. 2020年ノーベル物理学賞予想 荒舩良孝 2020/10/06 00:53 量子コンピュータの基礎的な理論を提唱したデイビッド・ドイチュ博士。そして、ドイチュ博士とともに量子コンピュータの高速計算のアルゴリズムを完成させた数学者リチャード・ジョサ博士あたりになるのではないだろうか。また、近代科学の中心課題の1つとされる量子多体系を計算するための量子シミュレーター分野のイマニュエル・ブロッホ博士、ティルマン・エスリンガー博士なども有力のようだ。後は、光格子時計を開発し、時間を精密に測定することに成功した香取秀俊博士も受賞したらおもしろいと思う。… 物性物理学分野で有名な近藤効果を理論化した近藤淳博士がこのタイミングでノーベル賞を受賞するというのも、なかなかいいのではないかとも思う。
  2. 3年連続受賞なるか日本の注目候補は vdata.nikkei.com 細野 秀雄 年齢 67 東京工業大学栄誉教授 大野 英男 年齢 65 東北大学長 十倉 好紀 年齢 66 理化学研究所創発物性科学研究センター長 佐川 真人 年齢 77 大同特殊鋼顧問
  3. 物理学賞が最有力! ノーベル賞に最も近い「日本人科学者6人」の名前 キーワードは「創薬」「物性」「実績」 マネー現代編集部 2020.10.5 期待されているのが東京大学教授の香取秀俊氏(56歳)だ。香取氏は世界で最も精密な「光格子時計」を開発した。その誤差は300億年に1秒とも言われ、現在の「1秒の長さ」の定義に使われている「セシウム原子時計」の誤差が1億年に1秒であることと比較しても、段違いな性能であることがわかるだろう。
  4. 2020年09月30日19時30分 【特集】2020年「ノーベル賞」発表目前!3年連続の日本人受賞なら急騰必至 <株探トップ特集>kabutan.jp 名城大学終身教授の飯島澄男氏は「カーボンナノチューブ」を発見したことで知られノーベル賞の有力候補となっている。… 鉄系の超伝導体を発見し、超電導の世界に革命をもたらした東京工業大学栄誉教授の細野秀雄氏も注目されている。… 理化学研究所の十倉好紀・創発物性科学研究センター長が開発した新材料「マルチフェロイック物質」は、将来的に省エネメモリーにつながると予想されている。… 量子コンピューターに絡んで東京大学の古澤明教授や東京工業大学の西森秀稔特任教授なども候補とされている。
  5. 2020年のノーベル賞発表、5日から12日まで…韓国人の受賞者は出るか?  平和賞はトランプ大統領? =韓国報道 10/4(日) 23:13配信 WOW!KOREA  物理学賞には、米海軍研究所の物理学者であるトーマス・キャロルルイス・ペコラ博士、米バークレー大学のアレックス・ジェトル教授、英電算宇宙論研究所(ICC)のカルロス・フランク所長、カナダのビクトリア大学のフリオ・ナバーロ教授、ドイツのマックスプランク天体物理学研究所のサイモン・ホワイト元研究所長などが挙げられる。

参考

  1. 科学コミュニケーターと楽しむノーベル賞2020 2020年9月19日(土)〜 10月19日(月)
  2. ノーベル賞ってなんでえらいの? NHK チコちゃん
  3. ノーベル賞 日本科学未来館が好評だった「予想」をやめた理由とは 会員限定有料記事 毎日新聞2020年9月19日 13時00分(最終更新 9月25日 17時06分)
  4. ノーベル賞発表翌日の紙面のために新聞社が準備する多くのこと 読売新聞東京本社 編集局科学部 長谷川聖治 部長 (2014.12.5/2014年12月・2015年1月号 特集) 

 

シーギリア・ロック スリランカの謎の遺跡

第15回スリランカフェスティバル(2019年8月3日(土)、4日(日)10:00~20:00 代々木公園イベント広場)のチラシに、断崖絶壁に囲まれまれた不思議な場所の写真が写っていて、

「何だろう、これ?」と思って調べたら、シーギリア・ロックと呼ばれる場所でした。

Se7en Stages of Defense at Sigiriya, Sri Lanka – Part I

ウィルタネン彗星(46P)の軌道、位置、観察ガイド

ウィルタネン彗星とは

ウィルタネン彗星は1948年1月に天文学者ウィルタネン(Carl Alvar Wirtanen 1910-1990)が発見した彗星で、公転周期は約5.4年で太陽のまわりをまわってます。地球も動いているため、彗星が地球に接近するのは100年に一度もないぐらいのまれなことのようです。

 

ウィルタネン彗星の軌道

ウィルタネン彗星の軌道は一番遠いところでも木星の軌道付近なので、太陽系の外側には出ていかない彗星です。下のGIFアニメーションでは、2018年末から2019年初めにかけてウィルタネン彗星(ピンク色の軌道)が地球(濃い青色の軌道)に接近する様子がよくわかります。


GIFアニメーション出典:46P/Wirtanen (wikipedia)

  1. ふたご群の夜、もうひとつの流星群が現れる? (2012年12月13日 NASA Science News / AstroArts) ウィルタネン彗星と、ふたご座流星群のもととなる小惑星ファエトンの軌道
  2. Comet 46P/Wirtanen – Orbit(wirtanen.astro.umd.edu)

 

肉眼でみえるウィルタネン彗星

最接近した12月16日ごろが3.5等級の明るさだそうで、12月いっぱいは4等級台をキープするようなので、空のきれいな地域であれば肉眼でなんとか見えそうです。肉眼で彗星が観察できるチャンスは、これが平成最後になるとか。

ウィルタネン彗星の姿を確認するには、双眼鏡を用意しましょう。彗星の場合、肉眼等級と言っても、淡く広がっているため、実際に肉眼で観察するのはなかなか難しいものです。ウィルタネン彗星の観望・撮影機材 2018.11.20 天体写真の世界)

 

ウィルタネン彗星が地球に最接近する日時

彗星が地球に最接近するのは15日夜から16日未明にかけてだったそうです。

 

ウィルタネン彗星の近日点通過

ウィルタネン彗星が最も太陽に接近する(近日点)のは、2018年12月13日午前7時59分だそうです。

 

ウィルタネン彗星が見える夜空の位置

下のheavens-above.comというサイトでは、現在もしくは日時を指定したときのウィルタネン彗星の夜空における位置を教えてくれます。これは非常に便利。ただし、ウェブの表示が日本語でも、時刻の表示が日本時間でないことに注意。

下のサイトも、軌道を上から眺めた図や現在の星座の中の位置などをインタラクティブに図示してくれる。

アストロアーツなどのウェブサイトでウィルタネン彗星の見える位置が説明されています。

  1. 2018年12月 ウィルタネン彗星が4等台 (AstroArts) 
  2. ウィルタネン彗星(46P)がこれから4等台に(2018年11月1 天リフポータル)
  3. Catch these Comets in 2018(By: Bob King | January 10, 2018 SKY & TELESCOPE) 接近時の星図と日付と彗星の位置のがわかりやすい。
  4. ウィルタネン彗星輝く 太陽の周り5年半周期で運動 釧路町からも肉眼で確認(12/18 05:00 北海道新聞 どうしん)16日午前1時に撮影された画像。プレアデス星団とかなり近いところにいます。
  5. ふたご座流星群と彗星の競演 (2018.12.14 12:30 産経新聞) 14日午前に撮影された、ふたご座流星群とすばるとウィルタネン彗星の写真
  6. ウィルタネン彗星最接近 昴と競演( 2018年 12月 15日 土曜日 15時42分 南信州新聞) 13日夜に撮影されたウィルタネン彗星とプレアデス星団(すばる)と流星
  7. とらえた 特別な輝き 立山でウィルタネン彗星 (2018年12月13日 北陸中日新聞)10日午後9時ごろの撮影。

 

ウィルタネン彗星の尾の発達

彗星は別名「ほうき星」というくらいですから、素人的には立派に発達した尾を期待してしまうのですが、今回、ウィルタネン彗星の尾は発達するのでしょうか?

 

双子座流星群とウィルタネン彗星

自分はふたご座流星群は見逃しましたが、YOUTUBEに非常に見応えのある動画があったので紹介します。ド迫力の流星、多数の人工衛星(?)、徐々に位置を変える彗星と見入ってしまい、何回繰り返し見ても飽きません。

2018年ふたご座流星群 ウィルタネン彗星と流れ星(Nyanta8355 2018/12/10)

 

ウィルタネン彗星の撮影方法

赤道儀の架台があれば望遠レンズをカメラにつけて星の日周運動を追尾撮影できます。これにより露光時間が長くても星が流れずに写ります。彗星もゆっくり動いていきますが、そのズレがわからない範囲の露光時間にすれば、彗星と星の両方がブレない状態で写ります。こうして撮影された彗星は、下の動画の8:25~。

Let’s Photograph Comet 、46P Wirtanen

一般的な彗星の撮影方法を説明したサイトを紹介。

最も簡単な彗星の撮影方法は、広角レンズを付けたデジタル一眼レフカメラをカメラ三脚に固定して撮影する固定撮影です。(天体写真の世界 > 天体写真の撮影方法 > 彗星の撮影方法

 

ウィルタネン彗星の軌道要素

ウィルタネン彗星の軌道要素 (Orbital elements)は以下のウェブサイトに掲載されています。

  1. Comet 46P/Wirtanen Orbital Elements(theskylive.com)
  2. 軌道要素(aerith.net)

 

参考

  1. A Bright Green ‘Christmas Comet’ Will Fly the Closest to Earth in Centuries (By Christina Caron Dec. 15, 2018 New York Times)

参考(論文)

  1. Evolution of the orbit of comet 46P/Wirtanen during 1947-2013. Krolikowska, M. & Sitarski, G. Astronomy and Astrophysics, v.310, p.992-998

参考(その他)

  1. シミュレーションで推測、太陽系第9惑星存在の可能性 2016年1月21日 Caltech  / AstroArts
  2. 軌道要素(ウィキペディア)

 

 

 

シベリアで凍っていた線虫が4万2千年ぶりに生き返る

生きた線虫が、シベリア永久凍土の更新世 後期の地層(4万2千年前)から回収されました。

どうやって年代を特定?

論文では異なる場所で得られた2サンプルから、線虫を見つけていますが、そのうちの古かったほうに関しては、掘削により3.5mの深さから得られたコア(地質試料)の中から見つかりました。このコアには植物の残骸も含まれていて、その放射性炭素年代測定(radiocarbon dating)により、このコア中に含まれる生体試料の古さは41700 ±1400 年前と推定されました。

 

どうやって生き返らせた?

Permafrost samples (1–2 g) were placed into Petri dishes with the Prescott–James medium and cultivated at 20°C for several weeks [4]. The clonal cultures of nematodes were obtained from the enrichment culture.

凍土サンプル1~2g程度を、培養液を含むペトリディッシュに移し、数週間、培養したんだそうです。そうすると、線虫のクローンが回収できたとのこと。つまり、凍っていた一匹が動き出した瞬間を観察したというわけではなく、たまたまサンプル中に存在していた「生育可能な一匹」が培養中で増殖した結果、増えてきた線虫たちを観察できたということです。

 

研究はどれくらい大変だったの?

場所や地質年代などがことなるサンプルを300以上も試したうち、2つのサンプルから生育可能な線虫が存在したのだそうです。

 

線虫の種類は?

18S rRNA遺伝子をPCR法により増幅し、その塩基配列を決定して、種々の線虫の遺伝子47種と比較した結果、属はPlectusとわかり、形態学的な特徴からPlectus parvusに相当すると考えられました。もう一方のサンプル中(3万2千年前)に含まれていた線虫は、Panagrolaimus detritophagusと考えられました。

 

途中で混入した可能性は?

著者らはディスカッションのセクションで、季節によって仮に凍土の表面が融けることがあったとしてもせいぜい80cmくらいまでで、1.5mの深さ以上が融解することは9000年前でもなかったはずだと述べています。また3.5mの深さだと凍土は非常に固くなっており、外的な要因で外部から線虫が凍土の内部に入り込む余地はないと断言しています。

 

これまでの記録は?

凍った状態の線虫を生き返らせたこれまでの記録は、39年(Tylenchus polyhypnusという種)や25年半(Plectus murrayiという種)という報告がありました。これらの記録を一気に4万年以上も塗り替えたことになります。

 

研究の意義は?

論文中の著者らの言葉を借りれば、

the first data demonstrating the capability of multicellular organisms for longterm cryobiosis in permafrost deposits of the Arctic.

the first viable multicellular organisms, namely, soil nematodes, have been isolated from permafrost deposits.

our data demonstrate the ability of multicellular organisms to survive long-term (tens of thousands of years) cryobiosis under the conditions of natural cryoconservation.

永久凍土から多細胞生物を生き返らせることができた最初の例だそうです。この論文は、地球上で自然に生じる凍結条件のもとで数万年もの長い間、多細胞生物が生きながらえる能力を備えていることを初めて示したものです。

もし地球全体が長期間氷で閉ざされるような気候になったとしも、線虫のような動物だけは何万年でも生きながらえて、気候が好転したときに再び生命活動を再開するのでしょう。

 

原著論文

  1. Viable Nematodes from Late Pleistocene Permafrost of the Kolyma River Lowland. Shatilovich et al., 2018. Doklady Biological Sciences, 2018, Vol. 480, pp. 100–102.

 

参考

  1. シベリアの永久凍土の中で4万年も凍りついていた虫が息を吹き返す (Gigazine 2018年07月27日 13時00分)
  2. Viable Nematodes from Late Pleistocene Permafrost of the Kolyma River Lowland. Shatilovich et al., 2018. Doklady Biological Sciences, 2018, Vol. 480, pp. 100–102.
  3. Worms frozen in permafrost for up to 42,000 years come back to life (By The Siberian Times reporter 26 July 2018)
  4. FROZEN IN TIME Siberian worms spring back to life after 42,000 years lying dormant in permafrost rising hopes of a cryogenics breakthrough Scientists in Russia coax ancient worms back to life after being frozen since the time of the woolly mammoth (By Will Stewart
    27th July 2018, 12:06 am Updated: 27th July 2018, 12:13 am)

 

Cryptobiosis/ Cryobiosisに関する論文

  1. Moss survival through in situ cryptobiosis after six centuries of glacier burial. Cannone et al., Sci Rep. 2017; 7: 4438. Published online 2017 Jun 30. doi: 10.1038/s41598-017-04848-6
  2. Recovery and reproduction of an Antarctic tardigrade retrieved from a moss sample frozen for over 30 years. Tsujimoto et al., Cryobiology Volume 72, Issue 1, February 2016, Pages 78-81

 

放射性炭素年代測定

放射性炭素年代測定: 自然界には、重さの違う3種の炭素同位体(12C,13C,14C)が存在します。このうち14Cは放射性同位体と呼ばれ、地球上に絶え間なく降り注ぐ宇宙線が大気中で原子核反応をして作られる一方、半減期5730年で放射壊変により減少していきます(5730年で半分に減少します)。こうして生成量と減少量がつりあい、環境中の14C濃度は一定となります。このとき炭素の割合は
12C : 13C :14C = 0.99 : 0.01 : 1.2×10-12
となっており、14Cは通常の(12C)炭素の約1兆分の1の割合で現在の自然界に存在しています。炭素元素は酸化されてCO2となり、大気圏、生物圏、水圏へと拡散して、12C,13Cと共に14Cも植物体やそれを食する動物体に取り込まれます。動植物が生命活動を行っている間は、動植物が体内に取り込んでいる炭素の割合は環境(自然界)の割合と平衡状態にあります。ところがその動植物が死んでしまうと、体内に取り込まれていた12C と13Cは安定しているのに対して、 14Cは新たに補充されることないため、半減期に従って時間の経過とともに一定の割合で減少します。この14Cが規則的に減少するという性質が正確に時を刻む時計の役割を果たし、これを利用して年代測定を行なうことができるのです。動物中の初期14C量と減少後14C量を比較することにより、生物が死んでから今日まで経過した時間を推定する方法が放射性炭素年代測定法です。(放射性炭素年代測定の概要 株式会社加速器分析研究所

生物が生きているときは,その炭素は大気中のCO,の炭素と同じ濃度で14Cを含んでいるが,生物体に有機物として固定された炭素は大気中の14Cとは無関係となり,生物の死後その有機物中の14Cは5730年の半減期で減少する。すなわち,5730年前の生物遺体中の14Cは半分に減少し,5730×2年前のものは(1/2)×(1/2)に減少する割合で減少する。この減少量を測定して,その生物が何年前に生存していたかを推定することができる。しかし,この推定には次のことが正確に知られている必要がある。1) 14Cの半減期の値,2)過去の大気中の14C濃度,3)生存している生物体の炭素と大気中のCO2の炭素の中の14C濃度の関係。(引用元:放射性炭素14Cに よる年代測定 木越邦彦 地学雑誌 94-7 (1985) PDF

Radiocarbon dating, also known as carbon-14 dating, is a radioactive decay-based method for determining the age of organic remains that lived within the past 50,000 years.

Most carbon-14 is created from nitrogen-14 in the earth’s upper atmosphere as a consequence of cosmic ray bombardment. It is one of several similarly formed cosmogenic nuclides. Newly formed carbon-14 atoms oxidize to carbon dioxide and become thoroughly mixed with the other atmospheric gases, through atmospheric dynamics. Upon reaching the earth’s surface, a small percentage of carbon-14 containing carbon dioxide is taken up by plants and then incorporation into plant biomolecules via photosynthesis. It becomes incorporated into the biomolecules of heterotrophic organisms (animals) via the food chain.

The radiocarbon dating method is based on the fact that plant and animal tissue levels of carbon-14 remain relatively constant during life, but taper off at a predictable rate in surviving remains. The half-life of carbon-14 is 5730 years. Typically, traces of radiocarbon can be detected in organic remains up to 50,000 years old. (Radiocarbon dating The University of Arizona Accelerator Mass Spectrometry Laboratory )

 

言葉

  1. 永久凍土 permafrost
  2. 更新世 Pleistocene
  3. 放射性炭素年代測定 radiocarbon dating

 

参考

  1. Online Developmental Biology: Introduction to C. elegans

 

火星が2018年7月31日に最も接近

夜の南天低いところに異様に赤く明るく光る星が目につきますが、それは火星で、現在地球にかなり接近しているため明るく見えています。

火星大接近2018(国立天文台)

2003年8月以来の最接近で、2018年7月31日に火星は地球に最も近づきます。ちなみに衝(Opposition)(火星が太陽の正反対の位置にくる)は7月28日(日本時間)。

What’s Up for July 2018

火星大接近2018は、「大接近」とも呼ばれる近い距離での最接近となります。このころの火星はマイナス2.8等の明るさで輝き、視直径は24秒角を超えます。(大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 国立天文台)

 

参考

  1. 火星大接近 2018年夏、南の空の赤い星に注目! 7月31日 地球再接近 距離:5760万km (astroarts.co.jp)
  2. Watch for it: Mars will be CLOSEST to Earth in over 30 years (theweathernetwork.com)
  3. 火星が地球に最接近(2018年7月)(国立天文台
  4. 火星の大接近と小接近 (国立天文台)

体の細胞の遺伝情報を直接書き換える初の試み

人間の体の構造や機能の設計図となるのが遺伝子配列です。この配列の一部が通常と異なると、正常に機能するたんぱく質が作られなくて遺伝的な病気になることがあります。アリゾナ州出身のブライアン・マデュー(Brian Madeux)さん(44)は、イズロン酸-2-スルファターゼ (iduronate–2-sulfatase)という酵素の遺伝子にそうした異常があり、ハンター(Hunter)症候群と呼ばれる遺伝性代謝異常症に悩まされてきました。症状が広範囲にわたるため、2年に一回はなにかしらの手術を受けなければならないような生活をおくってきたそうです。

MPS II (Hunter syndrome) is a progressive disorder that primarily affects males and is caused by mutations in the gene encoding the iduronate-2-sulfatase (IDS) enzyme which is also required for the degradation of GAGs. Children with MPS II begin showing symptoms of developmental delay by age 2 – 3 years. Depending on the severity of the mutation and degree of residual enzyme activity, affected individuals may experience delayed development and develop enlarged internal organs, cardiovascular disorders, stunted growth, skeletal abnormalities and hearing loss. (About MPSI and MPI IIsangamo.com)

ムコ多糖症Ⅱ型 (Mucopolysaccharidosis)
グリコサミノグリカンのデルマタン硫酸(DS)とヘパラン硫酸(HS)の分解に必要なライソゾーム酵素であるIduronate-2-sulfatase の先天的欠損により発症するX連鎖劣性遺伝性疾患である。発症頻度は、約5万人にひとりとされている。日本では、約200症例が報告されている。(小児慢性特定疾病情報センター)

現在の遺伝子工学の技術を用いると、人間の遺伝子の本体であるDNAの塩基配列を「書き換える」ことが可能になっています。ゲノム編集と呼ばれるこのような「書き換え」は、すでに遺伝学的な病気の治療に用いられてきましたが、遺伝子を正常に書き換えた細胞を体内に戻すという方法でした。今回、マデューさんの治療にあたって、ゲノム編集のための道具を体内に送り込んで、マデューさんの体の中の細胞の中のDNAを直接、書き換えてしまおうという戦略が用いられました。ゲノム編集技術のやり方に関しては、現在CRISPR-CAS9という最新の方法が世を席捲していますが、今回の遺伝子治療にあたってはCRISPR-CAS9が登場する以前から研究が進められてきていたジンクフィンガーヌクレアーゼ (Zinc Finger Nucleases, ZFNs) というゲノム編集技術およびウイルスベクターを用いた技術が用いられています。遺伝子書き換えのターゲットとなるのは、今回の治療では肝細胞で、肝細胞のなかのわずかな割合でもゲノム改変に成功できれば、治療効果が期待できるのだそうです。

今回の臨床試験がうまくいけば、マデューさんは、人類が初めて、ゲノム編集技術を用いて体内の細胞の遺伝子を書き換えた例となります。成功しそうかどうかがわかるのに少なくとも1ヶ月はかかるそうです。

人間は自分の両親から受け継いだ遺伝的な性質には抗えないというのが、これまでの一般的な認識だったと思います。今回は、肝臓の細胞のごく一部とはいえ、生まれ持っている遺伝情報を人為的に書き換える最初の例になるという点において、非常に画期的なことだと思います。

 

参考

  1. About MPS I and MPS II (Sangamo Therapeutics)
  2. AP Exclusive: US Scientists Try 1st Gene Editing in the Body (VOA NEWS November 15, 2017 11:14 AM Associated Press)
  3. A human has been injected with gene editing tools to cure his disabling disease. Here’s what you need to know (By Jocelyn Kaiser Science News Nov. 15, 2017 , 6:01 PM)
  4.  遺伝子修復治療 世界初の臨床試験開始 (毎日新聞 2017年11月16日 20時25分 最終更新 11月16日 20時25分)
  5. 人間の体内で遺伝子編集する初の試みが実施へ (MIT Technology Review)
  6. For the First Time, Gene Editing Is Taking Place Inside the Human Body (MIT Technology Review)
  7. US scientists try 1st gene editing in the body (SciPol November 15, 2017)
  8. In a first, scientists edit genes inside a man’s body to try to cure a disease. What’s next? (By Ariana Eunjung Cha, Washington Post November 16 at 7:00 AM)
  9. The First Man to Have His Genes Edited Inside His Body (By Sarah Zhang, The Atlantic Nov 15, 2017)
  10. In a Major First, Scientists Edit DNA Within the Human Body (Kristen V. Brown GIZMODO)
  11. Experimental new technique aims to edit man’s DNA inside his own body (
    by Alessandra Potenza THE VERGE Nov 15, 2017, 3:33pm EST)
  12. Scientists Have Tried First-Ever Gene Editing Directly Inside a Patient’s Body (PETER DOCKRILL Science Alert 16 NOV 2017
  13. Method of the Year 2011: Gene-editing nucleases – by Nature Video
  14. 患者のゲノム、直接書き換え 米で世界初の臨床試験(朝日新聞DIGITAL ワシントン=香取啓介 2017年11月16日23時25分 閲覧は要登録)
  15. 体内で直接ゲノム編集 米国で初の臨床試験 (東京新聞 2017年11月17日 10時05分

呼吸に必要な酵素の遺伝子を持っていない(?)不思議な細菌を発見

地表に現れたマントル由来の岩石に湧く泉で、どのような生物がいるか調べたところ、27種の微生物の遺伝子が見つかった。周辺は強アルカリ性で、約40億年前の地球に似た過酷な環境という。 そのうち、岩石に付着した細菌では、酸素を使った呼吸など生命維持に必要とされるエネルギーを得るための遺伝子を一つも持っていなかった。(どうやって生きてるのか…「常識外れ」の細菌、泉で発見 朝日新聞 DIGITAL7/21(金) 23:27

論文はこちら。

The ISME Journal , (21 July 2017) | doi:10.1038/ismej.2017.111

Unusual metabolic diversity of hyperalkaliphilic microbial communities associated with subterranean serpentinization at The Cedars

Shino Suzuki, Shun’ichi Ishii, Tatsuhiko Hoshino, Amanda Rietze, Aaron Tenney, Penny L Morrill, Fumio Inagaki, J Gijs Kuenen and Kenneth H Nealson

Water from The Cedars springs that discharge from serpentinized ultramafic rocks feature highly basic (pH=~12), highly reducing (Eh<−550 mV) conditions with low ionic concentrations. These conditions make the springs exceptionally challenging for life. Here, we report the metagenomic data and recovered draft genomes from two different springs, GPS1 and BS5. GPS1, which was fed solely by a deep groundwater source within the serpentinizing system, was dominated by several bacterial taxa from the phyla OD1 (‘Parcubacteria’) and Chloroflexi. Members of the GPS1 community had, for the most part, the smallest genomes reported for their respective taxa, and encoded only archaeal (A-type) ATP synthases or no ATP synthases at all. Furthermore, none of the members encoded respiration-related genes and some of the members also did not encode key biosynthesis-related genes. In contrast, BS5, fed by shallow water, appears to have a community driven by hydrogen metabolism and was dominated by a diverse group of Proteobacteria similar to those seen in many terrestrial serpentinization sites. Our findings indicated that the harsh ultrabasic geological setting supported unexpectedly diverse microbial metabolic strategies and that the deep-water-fed springs supported a community that was remarkable in its unusual metagenomic and genomic constitution.

(Copyright © 2017, Rights Managed by Nature Publishing Group)

 

 

海馬から大脳皮質への記憶転送の学説が覆る

記憶は海馬でまず短期的に形成され、後に大脳皮質に記憶情報が転送されて長期的に固定化されると考えられてきました。しかし、MITの利根川研究室が2017年4月7日のサイエンス誌に発表した論文によれば、記憶痕跡細胞は海馬だけでなく最初から大脳皮質でも形成されます。しかし、大脳皮質の記憶痕跡細胞は、最初はいわばサイレントな状態で存在し、その後活動するようになります。

「学習時の記憶情報は前頭前皮質にもすでに存在したのです。この実験結果は、記憶が徐々に転送されるという従来の学説に反するものです。」と北村博士は述べた。(原文:“Already the prefrontal cortex contained the specific memory information,” Kitamura says. “This is contrary to the standard theory of memory consolidation, which says that you gradually transfer the memories. The memory is already there.”)(参考:MITニュース

 

(

(出典:http://www.riken.jp/en/pr/press/2017/20170407_1/)

プレスリリース

  1. Neuroscientists identify brain circuit necessary for memory formation New findings challenge standard model of memory consolidation. ( MIT News April 6, 2017 Anne Trafton):”When we visit a friend or go to the beach, our brain stores a short-term memory of the experience in a part of the brain called the hippocampus. Those memories are later “consolidated” — that is, transferred to another part of the brain for longer-term storage.”
  2. Ingredients for lasting memories (RIKEN April 7, 2017):”Published in Science magazine, the study proves the existence of long-lasting engram cells in the frontal part of the brain and shows how connections with other brain regions allow these cells to mature as new memories become permanent. “
  3. 海馬から大脳皮質への記憶の転送の新しい仕組みの発見 -記憶痕跡(エングラム)がサイレントからアクティブな状態またはその逆に移行することが重要- (理化学研究所 2017年4月7日 ):”理化学研究所(理研)脳科学総合研究センター理研-MIT神経回路遺伝学研究センターの利根川進センター長と北村貴司研究員、小川幸恵研究員、ディーラジ・ロイ大学院生らの研究チームは、日常の出来事の記憶(エピソード記憶)が、マウスの脳の中で時間経過とともに、どのようにして海馬から大脳新皮質へ転送され、固定化されるのかに関する神経回路メカニズムを発見しました。”

 

報道(海外)

  1. Rules of memory ‘beautifully’ rewritten (BBC 7 April 2017 By James Gallagher):”The US and Japanese team found that the brain “doubles up” by simultaneously making two memories of events. One is for the here-and-now and the other for a lifetime, they found. It had been thought that all memories start as a short-term memory and are then slowly converted into a long-term one.”

 

報道(日本)

  1. 脳内で記憶の固定化、過程を解明…利根川教授ら (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2017年04月07日 07時04分):”【ワシントン=三井誠】脳内で短期的な記憶が長期的な記憶に変わって固定化される過程を明らかにしたと、米マサチューセッツ工科大(MIT)の利根川進教授と北村貴司研究員らが7日付の米科学誌サイエンスに発表する。”

ハチの脳には他者を見て学ぶ柔軟性 Science誌

ハチの自然な行動のレパートリーの範疇に入らないような課題であったとしても、ハチは柔軟にそれを学ぶことができ、しかも第三者は既に学んだハチの行動を見ることによりそれを学ぶことができることがわかりました。2017年2月24日号のサイエンス誌が伝えています。下の動画は、ボールを決められた地点まで運ぶと褒美がもらえるということを学習したハチの行動。この研究グループは過去の研究でハチが紐をひっぱって報酬を手に入れる作業を学ぶことができることを発見していましたが、紐を引っ張るような行動はハチの本来の行動に近いものです。それに対して、今回の研究では、ボールを転がして運ぶ行動を学ばせることに成功しています。このように、自然なハチの行動パターンとはいえないような新しい行動を学べるだけの柔軟さをハチの脳が備えている、ということを示した点に、今回の研究の意義があります。

参考

  1. Olli J. Loukola, Clint J. Perry, Louie Coscos, Lars Chittka. Bumblebees show cognitive flexibility by improving on an observed complex behavior. Science  24 Feb 2017:Vol. 355, Issue 6327, pp. 833-836 DOI: 10.1126/science.aag2360
  2. Bumble bees are surprisingly innovative (Science News By Virginia MorellFeb. 23, 2017 , 2:00 PM)
  3. Ball-rolling bees reveal complex learning (EurekAlert! Public Release: 23-Feb-2017 Queen Mary University of London) Bumblebees can be trained to score goals using a mini-ball, revealing unprecedented learning abilities, according to scientists at Queen Mary University of London (QMUL). Their study, published in the journal Science, suggests that species whose lifestyle demands advanced learning abilities could learn entirely new behaviours if there is ecological pressure. Project supervisor and co-author Professor Lars Chittka from QMUL’s School of Biological and Chemical Sciences, said: “Our study puts the final nail in the coffin of the idea that small brains constrain insects to have limited behavioural flexibility and only simple learning abilities.” Previous research has shown that bumblebees could solve a range of cognitive tasks, but these have so far resembled tasks similar to the bees’ natural foraging routines, such as pulling strings to obtain food. This study examines bees’ behavioral flexibility to carry out tasks that are not naturally encountered by the insects.

同じ研究グループの過去の研究

  1. Bumblebees show social learning October 19, 2016 – 06:20

アフリカツメガエルのゲノムが解読される

発生生物学の実験材料としてよく用いられるモデル動物アフリカツメガエル(Xenopus laevis)ゲノムの塩基配列が解読され、今週のNature誌に論文が発表されました。

Adam M. Session,    Yoshinobu Uno,    Taejoon Kwon,    Jarrod A. Chapman,    Atsushi Toyoda,    Shuji Takahashi,    Akimasa Fukui,    Akira Hikosaka,    Atsushi Suzuki,    Mariko Kondo,    Simon J. van Heeringen,    Ian Quigley,    Sven Heinz,    Hajime Ogino,    Haruki Ochi,    Uffe Hellsten,    Jessica B. Lyons,    Oleg Simakov,    Nicholas Putnam,    Jonathan Stites,    Yoko Kuroki,    Toshiaki Tanaka,    Tatsuo Michiue,    Minoru Watanabe,    Ozren Bogdanovic,    Ryan Lister,    Georgios Georgiou,    Sarita S. Paranjpe,    Ila van Kruijsbergen,    Shengquiang Shu,    Joseph Carlson,    Tsutomu Kinoshita,    Yuko Ohta,    Shuuji Mawaribuchi,    Jerry Jenkins,    Jane Grimwood,    Jeremy Schmutz,    Therese Mitros,    Sahar V. Mozaffari,    Yutaka Suzuki,    Yoshikazu Haramoto,    Takamasa S. Yamamoto,    Chiyo Takagi,    Rebecca Heald,    Kelly Miller,    Christian Haudenschild,    Jacob Kitzman,    Takuya Nakayama,    Yumi Izutsu,    Jacques Robert,    Joshua Fortriede,    Kevin Burns,    Vaneet Lotay,    Kamran Karimi,    Yuuri Yasuoka,    Darwin S. Dichmann,    Martin F. Flajnik,    Douglas W. Houston,    Jay Shendure,    Louis DuPasquier,    Peter D. Vize,    Aaron M. Zorn,    Michihiko Ito,    Edward M. Marcotte,    John B. Wallingford,    Yuzuru Ito,    Makoto Asashima,    Naoto Ueno,    Yoichi Matsuda,    Gert Jan C. Veenstra,    Asao Fujiyama,    Richard M. Harland,    Masanori Taira    & Daniel S. Rokhsar.  Genome evolution in the allotetraploid frog Xenopus laevis. Nature 538,336–343(20 October 2016)doi:10.1038/nature19840
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東京大学の平良眞規博士、カリフォルニア大学・ダニエル・ロクサー博士とリチャード・ハーランド博士らを中心とする国際コンソーシアムが共同して行った成果です。日本の多数の大学、研究機関がこのコンソーシアムに参加しています。プレスリリースによると本研究論文の日本人の著者は、東京大学(平良眞規、近藤真理子、道上達男、鈴木穣)、国立遺伝学研究所(藤山秋佐夫、豊田敦)、名古屋大学(松田洋一、宇野好宣)、広島大学(高橋秀治、彦坂暁、鈴木厚)、基礎生物学研究所(上野直人、山本隆正、高木知世)、産業技術総合研究所(浅島誠、原本悦和、伊藤弓弦)、北海道大学(福井彰雅)、長浜バイオ大学(荻野肇)、山形大学(越智陽城)、国立成育医療研究センター(黒木陽子)、東京工業大学(田中利明)、徳島大学(渡部稔)、立教大学(木下勉)、メリーランド大学(太田裕子)、北里大学(回渕修治、伊藤道彦)、バージニア大学(中山卓哉)、新潟大学(井筒ゆみ)、沖縄科学技術大学院大学(安岡有理)ら(敬称略)。%e2%96%a0web_%e3%83%ad%e3%82%b4

ちなみに、世界で初めてゲノムが解読されたカエルは、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)ではなくその近縁種である熱帯ツメガエル(Xenopus tropicalis)で、2010年のサイエンス誌に発表されました。

utokyopressrelease20161020%e5%9b%b32a(図は東京大学プレスリリースより)

アフリカツメガエルのゲノムは、進化の過程で比較的最近、近縁異種が交配しゲノムが倍化した「異質4倍体」と考えられています(下図)。ゲノムサイズが大きく複雑になったためにゲノム解読が困難となり、生物学で用いられるモデル動物の中では一番ゲノム解読が遅れていました。

%e5%9b%b31(進化の過程で遺伝子重複が生じた時期(ピンクの星印)。図は東京大学プレスリリースより)

%e5%9b%b33(交雑後にゲノム重複し不稔を免れた仕組み。図は東京大学プレスリリースより)

hdy201365f1(Xenopus laevisの18本の染色体が近縁2種由来であること示すペア Uno et al., 2013 Heredity Fig.1より)

参考

  1. Genome evolution in the allotetraploid frog Xenopus laevis. Nature 538,336–343(20 October 2016)doi:10.1038/nature19840
  2. Lab frog Xenopus laevis genome sequence shows what happens when genomes collide — African clawed frog got double the normal number of genes thanks to hybridization millions of years ago (EurekAlert! / University of California – Berkeley Public Release: 20-Oct-2016)
  3. アフリカツメガエルの複雑なゲノムを解読:脊椎動物への進化の原動力「全ゲノム重複」の謎に迫る(東京大学プレスリリース 2016/10/20)
  4. 東京大学 平良眞規研究室
  5. XenBase

報道

  1. 東大など、アフリカツメガエルのゲノムを解読 – 「全ゲノム重複」解明の鍵(マイナビニュース 周藤瞳美 2016/10/20):”東京大学(東大)などは10月20日、2種類の祖先種が異種交配して「全ゲノム重複」したとされるアフリカツメガエルのゲノムの全構造を明らかにしたと発表した。”
  2. アフリカツメガエルのゲノム解読=脊椎動物の謎解明に期待-東大など(時事ドットコムニュース):”東京大と米カリフォルニア大などの国際研究チームは、アフリカツメガエルの全遺伝情報(ゲノム)を解読したと発表した。アフリカツメガエルは近縁種の異種交配で生まれたため2種類のゲノムを受け継いでおり、研究によく使われるモデル生物の中ではゲノム解読が遅れていた。論文は20日付の英科学誌ネイチャーに掲載された。”
  3. アフリカツメガエル、ゲノム解読に成功 進化の謎に迫る(朝日新聞デジタル 瀬川茂子 2016年10月20日02時01分):”通常の2倍の染色体を持つ生物(4倍体)として知られるアフリカツメガエルのゲノム解読に日米の国際共同チームが成功した。”

DNAの解析でキリンは4種に分類される

動物のキリンは、種としてはひとつだけから成っており、亜種としていくつかに分かれるとこれまで考えられてきました。しかし、見た目は同じようにみえるキリンですが、DNAレベルでの解析から4種に分けるべきだと主張する論文が、カレント・バイオロジーに掲載されました。DNAの差がこれほど大きければ、これらの4種間が野生で交尾することはないだろうと著者は述べています。

“We have studied the genetic relationships of all giraffe subspecies from across the continent. We found, that there are not only one, but at least four genetically highly distinct groups of giraffe, which apparently do not mate with each other in the wild. This we found looking at multiple nuclear genes considered to be representative of the entire genome” says Professor Axel Janke, researcher at the Senckenberg Biodiversity and Climate Research and Professor at the Goethe University in Frankfurt, Germany. “Consequently, giraffe should be recognized as four distinct species despite their similar appearance.” (EurekAlert! 8-Sep-2016)

参考

  1. Multi-locus Analyses Reveal Four Giraffe Species Instead of One (Current Biology Published: September 8, 2016)
  2. Giraffes more speciose than expected: Gene analyses reveal that there are not one, but 4 giraffe species (EurekAlert! Goethe University Frankfurt Public Release: 8-Sep-2016)
  3. キリン、実は4種類? 独チームが遺伝子解析で新説(朝日新聞DIGITAL ワシントン=小林哲 2016年9月10日11時28分):”キリンを遺伝子解析した結果をもとに、アフリカ全体でただ一つの種に属するとしてきた従来の学説に反して「異なる四つの種に分類されるべきだ」とする新説を、ドイツなどの研究チームが米専門誌カレント・バイオロジー電子版に発表した。”
  4. キリン、単独種でなく4種 (ロイター 2016年 09月 9日 02:05 JST):”これまで亜種を含めて一つの種と考えられていたキリンが、実は独立した四つの種に分かれているとする遺伝子解析の結果を、ナミビアの「キリン保護基金」やドイツの研究者らのチームが8日付の米科学誌カレントバイオロジーに発表した。”
  5. キリンは4種、遺伝子解析=保護策に活用も-独大学など(NIFTY NEWS/時事通信 2016年09月09日 14時14分):”これまでキリンは1種とされてきたが、ドイツ・フランクフルト大などは遺伝子解析で4種に分かれると発表した。アフリカに生息するの遺伝子を解析すると、四つの種に分類されることが分かった。体の形などに基づく従来の分類では一つの種で、種の下の亜種レベルで九つに分類されることが多い。”
  6. キリン 単独種ではなく4種に分けられると研究で明らかに(LIVEDOOR NEWS 2016年9月9日 13時1分):”米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された論文によると、研究チームはアフリカ全域のキリン190頭の皮膚からサンプルを採取し、そのDNAを調べた。”
  7. birth of a giraffe (キリンの雄同士の儀式化した闘争行動、雄と雌の交尾、出産の映像)
  8. Giraffe Vs Giraffe Deadliest Fight Ever Seen – Nat Geo Wild (オス同士の激しい闘争行動。後頭部に打撃を与えて、相手を気絶させるキリン)
  9. 数秒以内に終了するキリンの交尾

  10. 9割が同性愛! キリンの異常な愛情とは? (世界中の仰天ニュースをお届け! 2014年1月18日):”戦いを通じて雄同士で愛情が芽生えるのでしょうか。何と争った後には雄同士で首を愛撫しあい、そのままセックスを始めるというのです。驚くべきはその割合。動物学者の推定によるとおよそ74%~95%ものキリンが雄同士でセックスをするのだとか。”

 

手の発生と魚の胸びれの発生とに共通の仕組み

手は、進化的には魚の胸鰭(むなびれ)の部分に相当すると考えられています。しかし、魚の鰭には鰭条(きじょう)と呼ばれるスジが多数ありますが、指があるわけでもなく、その構造は手とは似ても似つかぬものです。そのため、手のどの部分が鰭のどの部分に対応するのかはわかりません。

シカゴ大学ニール・シュービン博士の研究グループがマウスの前肢やゼブラフィッシュの胸鰭の形成に関与する遺伝子の発現機構を調べたところ、そこに一つの共通性が浮かびあがってきました。

これまでの研究でシュービン博士らは、ゼブラフィッシュよりも進化の過程でゲノムの変化が少ないスポッテッド・ガーという魚のゲノムを調べ、マウスの”手”になる部分で遺伝子の発現を制御することができる特定のゲノム領域(エンハンサー)を見つけていました。スポッテッド・ガーの「手のエンハンサー」をゼブラフィッシュに導入し、発生の時期にこのエンハンサーが働いた細胞がその後何になるのか追跡調査してみたところ、鰭のスジの部分になっていることがわかったのです(下の写真)。

limb and fin UChicagoNewsマウスの前肢(左)とゼブラフィッシュの胸鰭(右)を標識するエンハンサーの働き(緑色)(シカゴ大学ニュースより)

マウスの”手”の部分の形成には、Hoxa13とHoxd13という2つの遺伝子関わっており、この2つの遺伝子の働きをなくすと、手の部分が形成されなくなることが知られています。そこで、ゼブラフィッシュでも同様にHoxa13とHoxd13の遺伝子の働きをなくしてみたところ、鰭のスジがある部分が小さくなり、かわりに、鰭の根元の部分の硬い骨からなる領域が増大することがわかりました。指=ヒレのスジの部分というわけでは決してありませんが、形がまったく異なっていても、遺伝子の働きという視点でみると共通性が見えてくるのは面白いものです。

研究チームの中村哲也研究員:「魚が陸上生物へ進化したメカニズムの解明に向け、大きな一歩だ」(魚のひれにある骨、哺乳類の手に進化 シカゴ大確認 日経新聞 2016/8/20

参考

  1. Tetsuya Nakamura, Andrew R. Gehrke, Justin Lemberg, Julie Szymaszek & Neil H. Shubin. Digits and fin rays share common developmental histories.  Nature Published online 17 August 2016
  2. Evolutionary biology: Fin to limb within our grasp. By Aditya Saxena and Kimberly L. Cooper Nature News & Views 17 August 2016
  3. Discovery reveals evolutionary path from fins to fingers — New gene-editing methods help map cells linking fish fins and mammal limbs. (By John Easton. U Chicago News August 18, 2016)
  4. シュービン研究室ウェブサイト(シカゴ大学)
  5. ニール・シュービン(ウィキペディア)
  6. Andrew R. Gehrke, Igor Schneider, Elisa de la Calle-Mustienes, Juan J. Tena, Carlos Gomez-Marin, Mayuri Chandran, Tetsuya Nakamura, Ingo Braasch, John H. Postlethwait, José Luis Gómez-Skarmeta, and Neil H. Shubin. Deep conservation of wrist and digit enhancers in fish. PNAS U.S.A. January 20, 2015
    vol. 112 no. 3
  7. Marcus C. Davis, Randall D. Dahn & Neil H. Shubin. An autopodial-like pattern of Hox expression in the fins of a basal actinopterygian fish. Nature 24 May 2007;Vol447
  8. Neil Shubin (U. Chicago): Finding Tiktaalik, the Fossil Link Between Fish and Land Animals

生浜高校生物部が殻なし鶏卵の孵化に成功

殻無しの状態で卵を培養してヒヨコを誕生させることは、長らく不可能と考えられていました。

しかし、千葉県立生浜(おいはま)高等学校生物部(顧問:田原豊先生)では、食用鶏卵を割卵した内容物を透明プラスチックラップの中へ移して胚を培養する「ラップ法」の研究を続けた結果、2012年6月22日、7月8日、7月15日に計3個体のヒヨコを誕生させることに成功しています。その年度の実験だけでも300個以上の卵を用いて試行錯誤を続けたそうですが、成功したときの条件下での実験に限れば、10個中3個が孵化したため、成功率率30%とのこと。

最初の成功例では、56時間保温後に割卵していたそうですが、その後の研究により保温時間無しでも孵化に成功。また、最近では鶏卵だけでなくウズラ卵の孵化にも成功しているそうです。

生浜高校生物部のこれらの研究成果は数々の賞に輝いていますが、今年、NHK番組『ガッテン!(ためしてガッテン)』(5月18日(水)放送)で取り上げられたことがきっかけとなり、世界的な反響を呼んでいます。

Does this answer which one came first?
Amazing video shows an egg transform into a chicken using a plastic cup and cling film but NO SHELL in school science experiment
(Mail Online By Louise Cheer for Daily Mail Australia Published: 08:35 GMT, 8 June 2016)

 

Bizarre experiment shows egg grow into a chick WITHOUT a shell (Mirror 12:02, 7 Jun 2016 Updated 14:21, 8 Jun 2016 By Kara O’Neill)

 

Video shows how to incubate an egg without the shell
A class of high school students in Japan have used a plastic cup and cling film to incubate and “hatch” a chicken egg without the shell. (CNET June 7, 201611:53 PM PDT by Michelle Starr)

 

Students create a baby chick from an egg without a shell (NEW YORK POST By Alexandra Klausner June 8, 2016)

 

ザ!世界仰天ニュース 高校生が「殻を割った卵からヒヨコをふ化

生浜高校生物部顧問の田原豊先生らが新しい方法を報告した論文。

A Novel Shell-less Culture System for Chick Embryos Using a Plastic Film as Culture Vessels
The Journal of Poultry Science Vol. 51 (2014) No. 3 p. 307-312

NoShell

 

参考

  1. 千葉県知事賞 殻無し卵孵化への挑戦! ー誕生ー 千葉県立生浜高等学校生物部 (PDFファイル):””生物部の顧問である田原豊先生は食用有精卵を割卵し殻無し状態で発生を詳しく観察する実験を30年以上先輩の方々と続けてこられた。しかし、誕生には一度も成功していなかった。この実験に興味を持った私たちはヒヨコを誕生させることを目標に、この研究を開始することにした。”
  2. 千葉県教育長賞 殻無し卵孵化への挑戦!Ⅱ -保温0時間割卵- (PDFファイル)(千葉県立生浜高等学校 3年次 チームピヨちゃん):”千葉県立生浜高等学校生物教室では,2012年独自に開発したプラスチック製人工容器内でニワトリのヒナ誕生に成功した。しかし,この成果は保温0時間での割卵ではなく,保温56時間前後の割卵での成功であった。このとき,割卵時期はとても重要で56時間前後が最適と結論付けられた。ところが,2011年に同様の研究を行っていた千葉県立船橋高等学校の谷春菜さん他2名の研究により,保温0時間割卵では孵化は不可能であるが,卵殻外で途中までは培養が可能であるという報告があった。千葉県立船橋高等学校の谷春菜さんらの方法を再検証し,孵化に至らない主な原因は異常な率の奇形発生,カルシウム不足および孵化が近づいた時期の酸欠であることを突き止めた。すでにカルシウム不足と酸欠の対処法は先輩たちが解き明かしていたので,奇形を発生させないための条件を突き止めることが出来れば,誕生の可能性がでてくるのではないかと考えた。”
  3. 千葉県立生浜高等学校 理科通信 TOPICS
  4. 速報:チームピヨちゃん快挙!殻無しウズラ卵孵化研究 (特集記事 生物室通信 千葉県立生浜高等学校):”平成26年12月22日からお台場にて行われていた、日本学生科学賞中央審査会で、本校研究チーム「チームピヨちゃん」が、読売新聞社賞を受賞しました。”
  5. 6月22日(水) 本校の殻なし卵孵化研究、更に世界を駆けめぐる (生浜NOW 千葉県立生浜高等学校)
  6. 日本の高校生が「殻無しの卵からヒナを誕生」させた! 千葉県の高校生物部の研究が世界で話題に (POUCH 田端あんじ 2016年6月15日):”現在は、ニワトリのみならずウズラのヒナをも孵すことにも成功したという、生浜高校生物部。一体なぜ、今再び彼らの研究が注目を集めているのかといいますと、それは今年5月18日(水)放送のNHK番組『ガッテン!(ためしてガッテン)』で取り上げられたから!”
  7. 三重県総合教育センター課題研究講座 生物教材 No.114 「ニワトリのふ化の観察 -殻無し卵を用いた観察方法-」 :”これまで適当な観察法がなかったために授業での展開が難しかったのですが、1995年に日本生物教育会の千葉大会で千葉工業高校の田原先生が発表された「殻無し卵のふ化実験」は新しい観察法で、飯南高等学校でも生徒の関心の高い観察・実験となっています。”

相手の体に触れない新しい”体位” カエルで発見

カエルの受精は体外で起こりますので、雌が産んだ未受精卵に雄がただちに精子をかけられるよう、予め雄が雌を抱きかかえるような体勢をとります。この行動は「包接」と呼ばれますが、カエルの包接の”体位”はこれまで6種類が知られていました。

Willaert2016PeerJGraphicalAbstract6Positions(PeerJ 4:e2117 https://doi.org/10.7717/peerj.2117)

インドの研究者らは、ボンベイナイトフロッグ(英語名:Bombay night frogs, 学名:Nyctibatrachus humayuni)が、この6つのいずれでもない、新しい体位で包接することを発見し、この新しい体位を「背面またぎ」(Dorsal straddle)と命名しました。

DorsalStraddle(PeerJ 4:e2117 https://doi.org/10.7717/peerj.2117)

この体位の特徴は、雄は雌を抱きかかえることはせず、葉や木の枝をつかんだりして体を保持しながら雌の背中の上にまたがる格好になり、雌の背中に精子を放出するというものです。射精後に雄は雌から離れ、そのあと、雌が産卵します。背中を伝わり落ちてきた精子が、産み出された未受精卵に到達して受精が起こると考えられます。

… しかし、ハンケン氏が面白いと思ったのはその後だった。

「ほとんどのカエルは、メスが産卵するのと同時にオスが精子を出します。ボンベイナイトフロッグの場合、メスはオスが去ってだいぶ経ってから卵子を放出します。これにはとても驚きました」

 ダス氏とその研究チームは、この時間差はオスの精子がメスの背中を下りてきて受精するのを待つためではないかと考えている。ハンケン氏も、おそらくその 推測は正しいだろうとしながらも、卵子と精子が正確にいつどこで出会うのかについてこの研究は言及していないと指摘した。 (カエルの交尾に「7番目の体位」発見 NATIONAL GEOGRAPHIC日本版 2016.06.17)

Froggy Style: New Sex Position Discovered Among Frogs and Toads

参考

  1. Willaert B, Suyesh R, Garg S, Giri VB, Bee MA, Biju SD. (2016) A unique mating strategy without physical contact during fertilization in Bombay Night Frogs (Nyctibatrachus humayuni) with the description of a new form of amplexus and female call. PeerJ 4:e2117 https://doi.org/10.7717/peerj.2117
  2. Doing it froggy style: Kermit Sutra’s seventh position revealed (New Scientist By Sandrine Ceurstemont 14 June 2016)
  3. The ‘Dorsal Straddle’ Is a Newly Discovered Froggy Sex Position (Discover By Carl Engelking | June 14, 2016 6:00 am)
  4.  New sex position ‘froggy style’ found by studying mating habits of FROGS (MIRROR Online 11:59, 14 Jun 2016 Updated 12:18, 14 Jun 2016 By Katherine Clementine)
  5. カエルの交尾に「7番目の体位」発見 メスの背中に射精する「背中またぎ」、「ドラマを見ているよう」とインドの研究者 (NATIONAL GEOGRAPHIC日本版 2016.06.17)
  6. カエルの特異な交尾、体に触れない「7番目の体位」 研究 (YAHOO!JAPANニュース AFP=時事 6月15日(水)16時37分配信)

クラゲの中に入り込んで泳ぐ魚をオーストラリアの写真家が撮影

オーストラリアの写真家ティム・サミュエル(Tim Samuel)氏が海中で不思議な光景を目撃し、撮影した写真をインスタグラムに投稿したものが話題になっています(2015年12月、オーストラリアのバイロン・ベイで撮影)。


それは、クラゲの中にすっぽりと入り込んだまま泳いでいた魚でした。魚を逃がしてあげようかと悩んだけれども、結局、この魚の運命は自然に任せることにしたそうです。

“I definitely thought about setting it free, but in the end decided to just let nature run its course.” (Tim Samuel)

Photo shows ocean oddity: A fish inside a jellyfish

この魚は何でしょうか?

クイーンズランド大学海洋科学センターの海洋生物学者イアン・ティベット氏によると、この魚はアジの仲間の幼魚と考えられる。捕食する外敵から身を守るため、クラゲの毒針のかげに隠れる習性があると言われている。

ハワイ大学の生物学教授ロバート・キンジー3世はハフポストUS版の取材に対し、この魚がアジ科の一種であると確認した。(クラゲにはまったお魚さん、オーストラリアの海をゆーらゆら(画像) (The Huffington Post日本語版 Chris D’Angelo 2016年06月08日)

一方、このクラゲの種類は?

米ノースカロライナ大学ウィルミントン校のロブ・コンドン准教授は、ヒドロ虫綱のクラゲではないかと推測する。

約200種のクラゲを発見してきた分類学者リサ・アン・ガーシュウィン氏も、クラゲの種を知りたいと考えている。同氏によれば、このクラゲは箱虫(はこむ し)鋼と鉢虫(はちむし)鋼が合わさったような外見をしているという。(Living Fish Found Inside Jellyfish in Bizarre Underwater Scene.NATIONAL GEOGRAPHIC By Elaina Zachos 米井香織 訳 PUBLISHED June 7, 2016)

魚がどのようにしてクラゲの中に入り込んでしまったのか不思議ですが、下の動画のように魚がクラゲにちょっかいを出しているうちにはまり込んだのかもしれません。

Fish Commandeers Jellyfish

クラゲの傘の内側に隠れて外敵から身を守る習性を示す魚もいます。
Jellyfish becomes a floating safehouse for tiny fish!

 

参考

  1. クラゲに閉じ込められて泳ぐ魚、オーストラリアで撮影 (CNN.co.jp 2016.06.08 Wed posted at 10:48 JST)
  2. Living Fish Found Inside Jellyfish in Bizarre Underwater Scene (NATIONAL GEOGRAPHIC By Elaina Zachos 米井香織 訳 PUBLISHED June 7, 2016)
  3. 珍写真「クラゲに入った魚」が話題、専門家に聞いた (NATIONAL GEOGRAPHIC日本語版 2016.06.10)
  4. クラゲにはまったお魚さん、オーストラリアの海をゆーらゆら(画像)(The Huffington Post日本語版 Chris D’Angelo 2016年06月08日)

一般相対論の予言から100年 重力波をついに検出

一般相対性理論を完成させたアインシュタインはその理論に基づき、1916年に重力波の存在を予言しました。この予言から100年後の今、アメリカのLIGO(レーザー干渉計重力波天文台)の研究グループが重力波を直接観測することに世界で初めて成功しました。下の動画はこの研究成果を発表する記者会見の模様です。

LIGO detects gravitational waves (National Science Foundation)

0:00- France Cordova氏(アメリカ科学財団ディレクター) の挨拶
2:25 – 重力波の説明ビデオ放映
4:00 – 12:43 David Reitze氏が重力波観測の成功を報告 “We did it! “ 。2つのブラックホール連星が合体し重力波が発生すること、地球に届いた重力波をどうやって検出したかの説明。
12:54 - 21:13 Gabrieal Gonzalez氏が今回の観測結果をわかりやすく説明しています。
14:08- LIGOの説明
14:48- 観測された重力波データの説明
21:43 – 31:02 Rainer Weiss氏が重力波研究の歴史と測定装置について解説
31:25 - 39:45 Kip Thorne氏
40:00 – 44:25 France Cordova氏
44:25 – 質疑応答

、この輝かしい研究成果はフィジカル・レビュー・レターズ誌に報告されました。

GravitationalWaveAbstract-1 (LIGO Scientific Collaboration and Virgo Collaboration) Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger. Phys. Rev. Lett. 116, 061102 – Published 11 February 2016. DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102)

地球に到達した重力波は2015年の9月14日に、米国ルイジアナ州リビングストンとワシントン州ハンフォードに設置された2つの検出器で記録されていました。

2016AbbottFig1(DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102)

今回観察された重力波の発生源となったのは、2つのブラックホールの衝突と考えられています。今回衝突した2つのブラックホールの大きさは、太陽の質量のそれぞれ36倍と29倍で、この2つが衝突後に太陽の質量の62倍の大きさブラックホールを形成し、太陽の質量3つ分が重力波として放出されたと考えられます。

2016AbbottFig2(DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102)

今回重力波を記録することに成功した2つの検出器は、リビングストンとハンフォードに設置されており、2つの距離は3000km離れています。

2016AbbottFig3(DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102)

今回の研究は、重力波を世界で初めて直接検出したと同時に、ブラックホール連星の2つブラックホールが合体する瞬間を捉えたということに関しても世界初となります。

CONCLUSION
The LIGO detectors have observed gravitational waves from the merger of two stellar-mass black holes. The detected waveform matches the predictions of general relativity for the inspiral and merger of a pair of black holes and the ringdown of the resulting single black hole. These observations demonstrate the existence of binary stellar-mass black hole systems. This is the first direct detection of gravitational waves and the first observation of a binary black hole merger. (DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102)

参考

  1. B. P. Abbott et al. (LIGO Scientific Collaboration and Virgo Collaboration). Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger. Phys. Rev. Lett. 116, 061102 – Published 11 February 2016. DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102
  2. LIGO Caltech News
  3. 重力波、世紀の発見をもたらした壮大な物語 ノーベル賞級発見の手法と意義、天文学の新たな広がりを詳しく解説 (ナショナルジオグラフィック日本版 2016.02.12)
  4. 重力波の直接観測に成功! 13億年前のブラックホール衝突の余波検出、正式発表 (GIZMODO.JP 2016.02.12)
  5. ついに重力波の観測に成功、光による宇宙観測を補完することで宇宙研究が大きく広がる可能性 (GIGAZINE 2016年02月12日)
  6. Gravitational Waves Discovered Proving Einstein’s Theory (Sequence Media Group)
  7. Search for Gravitational Waves by LIGO Scientific Collaboration, Particle Physics at the Year of 250th Anniversary of Moscow University (page 152) :””In the last few years a number of long-baseline, laser interferometric gravitational wave detectors have begun operation. These include the Laser Interferometer Gravitational Wave Observatory (LIGO) detectors located in Hanford, Washington and 3000 km away, in Livingston, Louisiana. It is the joint Caltech-MIT project supported by the USA National Science Foundation.””
  8. LIGO Physicist Kip Thorne speaks to RT on gravitational waves discovery (RT)
  9. 重力波とは(KAGRA 大型低温重力波望遠鏡):”アインシュタインの一般相対性理論によれば、質量をもった物体が存在すると、それだけで時空にゆがみができます。さらにその物体が(軸対称ではない)運動をすると、 この時空のゆがみが光速で伝わっていきます。これが重力波です。重力波はすべてを貫通し、減衰しないと考えられています。”
  10. What is the difference between a stellar mass black hole and a super massive black hole? (Institute of Astronomy, University of Cambridge):” stellar mass black holes are around 3-10 times the mass of the Sun, whilst supermassive black holes are 10^5-10^10 times the mass of Sun”
  11. Stellar mass black holes (http://jila.colorado.edu)
  12. Baumgarte and Shapiro. Binary black hole mergers. Physics Today. Oct. 2011
  13. 重力波ってなんだろう (THE HUFFINGTON POST/東京大学大学院理学系研究科 特任研究員 秋本祐希 2016年02月13日)
  14. 重力波、装置改造2日後に観測 明確なデータに驚きの声(朝日新聞DIGITAL 2016年2月13日):”アインシュタインの「最後の宿題」とされた重力波を初めて観測したと米研究チームが報告した。…”
  15. 「重力波を初観測」米中心の国際研究チーム 発表(NHK NEWS WEB 2月12日):”アメリカを中心とした国際研究チームは、11日、宇宙空間にできた「ゆがみ」が波となって伝わる現象、いわゆる「重力波」を初めて直接観測することに成功したと発表しました。重力波の観測は、ノーベル賞に値する成果とも言われ、日本の専門家も「天文学の飛躍的な発展につながる」と述べて高く評価しています。…”
  16. 重力波の間接的な存在証明(重力波研究の歴史 KAGRA 大型低音重力波望遠鏡):”… ハルス先生とテーラー先生は、連星中性子星という、極めて強い重力場を持つ中性子星同士が互いに近接して連星系をなす、極めて稀な天体(PSR1913+16)を1974年に発見しました。そして、もし、その連星運動から強い重力波が発生していたら、連星系の回転の勢いが奪われ、連星の公転周期が短くなるはずだと予測しました。何年にもわたって、PSR1913+16という中性子星連星系の公転周期の変化を観測したところ、1979年、ついに、その公転周期の短縮変化が重力波が原因であると仮定して得られる理論的な予想と、誤差1%程度で一致する結果を得て、結果、これが重力波の間接的な存在検証となりました。この成果により、二人の先生は1993年にノーベル賞を受賞されました。”
  17. The Nobel Prize in Physics 1993 (nobelprize.org) :”The Nobel Prize in Physics 1993 was awarded jointly to Russell A. Hulse and Joseph H. Taylor Jr. “for the discovery of a new type of pulsar, a discovery that has opened up new possibilities for the study of gravitation””

参考(追加)

  1. 「メディアによる大袈裟な『重力波騒動』:あれは本当に重力波の波形なのか?」
  2. ノーベル賞がいくつあっても足りない重力波の観測 その感動を伝えられない大手メディアに価値なし(伊東 乾 2016.2.15 JBPRESS)
  3. 「重力波観測」の特報に胸が高鳴る6つの理由 揺らぐシャープに「重力波スマホ」開発の気概は?(山根 一眞 2016年2月15日 日経ビジネス)
  4. 重力波の直接観測に成功! 13億年前のブラックホール衝突の余波検出、正式発表 (GIZMODO.JP 原文は英文サイトのMaddie Stone氏の記事)
  5. 重力波、世紀の発見をもたらした壮大な物語 ノーベル賞級発見の手法と意義、天文学の新たな広がりを詳しく解説 (NATIONAL GEOGRAPHIC日本版 原文は英文サイトのNadia Drake氏の記事
  6. ついに重力波の観測に成功、光による宇宙観測を補完することで宇宙研究が大きく広がる可能性 (Gigazine)

30年間冷凍保存のクマムシが生き返る

国立極地研究所の研究者らは、1983年11月に南極昭和基地周辺で採取されたコケ試料を30年ぶりに解凍し、コケ試料中に含まれていたクマムシの個体を蘇生させ繁殖能力を確認することに成功しました。

餌のクロレラを与えて飼育すると、1匹はあまり食べずに死んだが、もう1匹は5回産卵し、14匹がかえった。また、コケの中から卵が見つかり、水につけると6日後にかえり、餌を与えると成長して産卵した。 (毎日新聞2016年1月15日)

Long-term survival has been one of the most studied of the extraordinary physiological characteristics of cryptobiosis in micrometazoans such as nematodes, tardigrades and rotifers. In the available studies of long-term survival of micrometazoans, instances of survival have been the primary observation, and recovery conditions of animals or subsequent reproduction are generally not reported. We therefore documented recovery conditions and reproduction immediately following revival of tardigrades retrieved from a frozen moss sample collected in Antarctica in 1983 and stored at −20 °C for 30.5 years. We recorded recovery of two individuals and development of a separate egg of the Antarctic tardigrade, Acutuncus antarcticus, providing the longest records of survival for tardigrades as animals or eggs. One of the two resuscitated individuals and the hatchling successfully reproduced repeatedly after their recovery from long-term cryptobiosis. This considerable extension of the known length of long-term survival of tardigrades recorded in our study is interpreted as being associated with the minimum oxidative damage likely to have resulted from storage under stable frozen conditions. The long recovery times of the revived tardigrades observed is suggestive of the requirement for repair of damage accrued over 30 years of cryptobiosis. Further more detailed studies will improve understanding of mechanisms and conditions underlying the long-term survival of cryptobiotic organisms. (Tsujimoto et al., Cryobiology doi:10.1016/j.cryobiol.2015.12.003)

クマムシは体長1ミリ弱程度の、比較的どこにでも生息している生き物です。

「たるに変身 クマムシ(Water Bear)の秘密」  (乾眠する様子 3:01-)

クマムシはありきたりな生き物であるにもかかわらず、極端な低温や高温、真空、高圧、放射能などに耐えて生き延びることができることから、地球最強の生物と目される非常にユニークな存在です。

クマムシさんのうた(科学未来館フルバージョン)

Water Bear Don’t Care – SciTunes #14

クマムシの英語名は、Tardigradesですが、熊のようにのそのそ歩くことからwater bearとも、また、苔が好物なことから、moss pigletsとも呼ばれます。

Tardigrades Are Weird, Gross & Beautiful (ケイティ・ウェイン(Catie Wayne)によるクマムシの紹介動画)

クマムシは、極端な乾燥条件では代謝活動を停止するクリプトビオシスと呼ばれる状態になります。水分が補給されると再び生命活動が始まります。

乾眠してから復活するヨコヅナクマムシ (クマムシ博士の動画)

Tardigrades and Cryptobiosis (クリプトビオシスの説明 2:49-)

参考

  1. Recovery and reproduction of an Antarctic tardigrade retrieved from a moss sample frozen for over 30 years.  (Cryobiology Available online 25 December 2015 doi:10.1016/j.cryobiol.2015.12.003 Megumu Tsujimoto, Satoshi Imura and Hiroshi Kanda)
  2. 南極のクマムシ、30年を超える凍結保存から目覚め、繁殖に成功 (国立極地研究所 プレスリリース 2016年1月14日):”国立極地研究所(所長:白石和行)の辻本 惠 特任研究員を中心とする研究グループは、南極昭和基地周辺で1983年11月に採取され、30年と半年の間凍結保存されていたコケ試料からクマムシを取り出し、その蘇生直後の回復と繁殖(注1)の様子を記録することに成功しました。クリプトビオシス(注2)能力を持ち、「最強動物」とも呼ばれるクマムシの、これまでの最長生存記録は乾眠(注3)状態の室温保存で9年でしたが、今回の研究ではその記録を大幅に更新しました。”
  3. クマムシが30年ぶりに覚醒 (むしブロ クマムシ博士のドライ日記 2016-01-12)
  4. クマムシ30年冷凍、蘇生 南極で採取、産卵・繁殖も (毎日新聞2016年1月15日)
  5. 30年以上前に南極で採取されたクマムシが蘇生して繁殖! – 極地研 (マイナビニュース 2016/01/15)
  6. 高知大学キャンパス内のクマムシ

京大らがブラックホール連星を可視光観察

京大らがブラックホール連星の放射エネルギー変動を可視光領域で観察

はくちょう座V404は、ブラックホールと恒星とが近接した連星で、X線新星として知られています。X線新星はアウトバーストと呼ばれる急激な増光現象を不定期に生じますが、1989年のアウトバースト以来26年ぶりのアウトバーストが2015年6月に起こり、京都大学らの国際的な共同研究チームが観測を行いました。アウトバースト時のブラックホール近傍からの放射エネルギーの振動現象はこれまでこれまでX線領域でしか観測されていませんでしたが、今回の観測によりアウトバースト時の可視光の変動が初めて捉えられ、2016年1月7日付けのNature誌で報告されました。

Repetitive patterns in rapid optical variations in the nearby black-hole binary V404 Cygni (Nature 529,54–58 (07 January 2016)doi:10.1038/nature16452 Received 25 July 2015  Accepted 13 November 2015 Published online 06 January 2016 )

Repetitive patterns in rapid optical variations in the nearby black hole binary V404 Cygni (*再生に際してBGMの音量に注意)

著者:木邑真理子, 磯貝桂介, 加藤太一, 上田佳宏 (京都大学), 中平聡志 (JAXA), 志達めぐみ (理研), 榎戸輝揚, 堀貴郁, 野上大作 (京都大学), Colin Littlefield (Wesleyan University、アメリカ), 石岡涼子, Ying-Tung Chen, Sun-Kun King, Chih-Yi Wen, Shiang-Yu Wang, Matthew J. Lehner, Megan E. Schwamb, Jen-Hung Wang, Zhi-Wei Zhang (Institute of Astronomy and Astrophysics, Academia Sinica、台湾), Charles Alcock (Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics、アメリカ), Tim Axelrod (University of Arizona、アメリカ), Federica B. Bianco (New York University、アメリカ), Yong-Ik Byun (Yonsei University、韓国), Wen-Ping Chen (National Central University、台湾), Kem H. Cook (Institute of Astronomy and Astrophysics, Academia Sinica、台湾), Dae-Won Kim (Max Planck Institute、ドイツ), Typhoon Lee (Institute of Astronomy and Astrophysics, Academia Sinica、台湾), Stuart L. Marshall (Kavli Institute for Particle Astrophysics and Cosmology (KIPAC), Stanford University、アメリカ), Elena P. Pavlenko, Oksana I. Antonyuk, Kirill A. Antonyuk, Nikolai V. Pit, Aleksei A. Sosnovskij, Julia V. Babina, Aleksei V. Baklanov (Crimean Astrophysical Observatory、クリミア), Alexei S. Pozanenko, Elena D. Mazaeva (Space Research Institute of the Russian Academy of Sciences、ロシア), Sergei E. Schmalz (Leibniz Institute for Astrophysics、ドイツ), Inna V. Reva (Fesenkov Astrophysical Institute、カザフスタン), Sergei P. Belan (Crimean Astrophysical Observatory、クリミア), Raguli Ya. Inasaridze (Ilia State University、アメリカ), Namkhai Tungalag (Mongolian Academy of Sciences、モンゴル), Alina A. Volnova, Igor E. Molotov (Space Research Institute of the Russian Academy of Sciences、ロシア), Enrique de Miguel (Universidad de Huelva、スペイン), 笠井潔 (スイス), William L. Stein (アメリカ), Pavol A. Dubovsky (Vihorlat Observatory、スロバキア), 清田誠一郎 (千葉), Ian Miller (イギリス), Michael Richmond (Rochester Institute of Technology、アメリカ), William Goff (ギリシャ), Maksim V. Andreev (Russian Academy of Sciences、ロシア), 高橋弘允 (広島大学), 小路口直冬, 杉浦裕紀, 竹田奈央, 山田英史, 松本桂 (大阪教育大学), Nick James (イギリス), Roger D. Pickard (The British Astronomical Association, Variable Star Section (BAA VSS)、イギリス), Tam?s Tordai (Hungarian Astronomical Association、ハンガリー), 前田豊 (長崎), Javier Ruiz (Observatorio de Cantabria、スペイン), 宮下敦 (成蹊気象観測所、東京), Lewis M. Cook (Center for Backyard Astrophysics、アメリカ), 今田明 (京都大学) & 植村誠 (広島大学)(プレスリリース 平成28年1月7日 京大、JAXA、RIKEN、広島大学

Astronomers Say Black Holes Can Be Spotted Using Home-Use Telescope

参考

  1. Repetitive patterns in rapid optical variations in the nearby black-hole binary V404 Cygni. Nature 529,54–58 (07 January 2016)doi:10.1038/nature16452
  2. ブラックホール近傍から出る規則的なパターンを持つ光の変動を可視光で初めて捉えることに成功-ブラックホールの「またたき」を直接目で観測できる機会に期待-(jaxa.jp プレスリリース 京都大学、宇宙航空研究開発機構、理化学研究所、広島大学 平成28年1月7日):”「アウトバースト」…天体が突然明るく光る現象。X線新星の場合、光度がたった数日で100倍以上も明るくなり、その後数十日から数百日かけてゆっくりと元の明るさに戻る”
  3. ブラックホール近傍から出る規則的なパターンを持つ光の変動を可視光で初めて捉えることに成功 -ブラックホールの「またたき」を直接目で観測できる機会に期待-(京都大学 研究成果 2016年01月07日)
  4. ブラックホール周辺の瞬き、初観測…京大など(読売新聞YOMIURI ONLINE 2016年01月07日):”ブラックホールの周辺で、星が明滅する瞬きのような光が出ているのを世界各地の望遠鏡を使って初めて観測したと、京都大や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの国際研究チームが発表した。”
  5. ブラックホール「瞬き」見えた!=「アウトバースト」の光初観測—京大(WSJ/時事通信 2016年1月7日):”昨年6月、26年ぶりにアウトバーストが起き、世界15カ国の専門家らに呼び掛け、35台の望遠鏡で18日間、可視光を撮影した。”
  6. 京大、ブラックホールの「またたき」を可視光で観測することに成功 (マイナビニュース 2016/01/07):”京都大学(京大)は1月7日、今までX線でしか観測できないと考えられていたブラックホール近傍からの放射エネルギーの振動現象を可視光で捉えることに成功したと発表した。”
  7. Federica Bianco su V404 Cygni, il buco nero che si vede
  8. ブラックホール連星はくちょう座V404星がアウトバースト(AstroArts/VSOLJニュース 2015年6月29日)
  9. 連星(れんせい)(ウィキペディア):2つの恒星が両者の重心の周りを軌道運動している天体
  10. 新星(しんせい)(ウィキペディア):恒星(白色矮星)の表面に一時的に強い爆発が起こり、それまでの光度の数百倍から数百万倍も増光する現象
  11. 降着円盤(こうちゃくえんばん、accretion disk):ブラックホールや中性子星や白色矮星のようなコンパクト星に落ち込むガスや塵が、高密度天体の周りに形成する円盤。可視光線やX線などのさまざまな電磁波を放射する。
  12. V404 Cygni (Wikipedia)
  13. X線天文学の誕生とその発展(小田稔):1960年代,1970年代には,X線星からX線を放射させているのは,連星を形成している高密度の星に恒星から流れ込むプラズマが解放する重力エネルギーだということがはっきりしてきた.

113番目の元素の発見で理研が命名権を獲得

113番目の元素の発見者は日本の理研と認定される見込みで、命名権の獲得により「初めての日本発の元素」が誕生します。

原子番号113の元素にはウンウントリウム (ununtrium) という仮の名称が与えられています。理化学研究所の森田浩介博士らのグループは線形加速器を用いて亜鉛(原子番号30)をビスマス(原子番号83)に衝突させる実験を行い、1個のウンウントリウムの合成に初めて成功し2004年9月28日に発表しました。その後も研究を続け、2005年、2012年とこれまでに合計3個のウンウントリウム検出に成功していました。2012年の成果によって日本初の新元素発見が確定したと思われたにも関わらず、ロシア=アメリカ共同研究グループとの先取権獲得競争もあり、国際的な認定が今の今まで見送られてきました。

産経新聞の報道によれば、理研による113番元素の発見がようやく国際的に認定される運びとなり、日本(理研)がこの新しい元素に対する命名権を獲得することが確実になりました。

審査は新元素を認定する国際純正・応用化学連合(IUPAC)と、国際純粋・応用物理学連合(IUPAP)の合同作業部会が実施。関係者によると、作業部会は理研を113番元素の発見者として承認する報告書を化学連合側に提出した。物理学連合側の同意を踏まえて正式決定する。日本初の新元素、国際認定へ 理研に113番の命名権、「ジャポニウム」有力 産経新聞 2015.12.26

Japanese discovery of element 113 – Periodic Table of Videos

元素の周期表には百十数個の名前が並んでいますが、これまでに日本で命名された元素は一つもありません。

The NEW Periodic Table Song (Updated)

原子番号113番の元素ウンウントリウム (ununtrium) (仮称)に対して、ついに、日本にゆかりのある名前が与えられることになります。

理研の仁科芳雄博士は昭和15年、93番が存在する可能性を加速器実験で示したが検出できず、直後に米国が発見。その加速器は戦後、原爆製造用と誤認した連合国軍総司令部(GHQ)によって破壊されてしまった。113番は仁科博士の研究を受け継ぐチームが発見したもので、雪辱を果たした形だ。日本初の新元素 悲願100年、米露独の独占崩す 産経新聞 12月26日

参考

  1. Ununtrium (Wikipedia)
  2. 日本初の新元素、国際認定へ 理研に113番の命名権、「ジャポニウム」有力 (産経新聞 2015年12月26日)
  3. 日本初の新元素 悲願100年、米露独の独占崩す (産経新聞 2015年12月26日 長内洋介)
  4. 【祝!のはずでした…】113番目の元素 命名権を日本の理化学研究所が獲得!?(日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ 2015年08月17日 雨宮崇):”つい先日の2015年8月12日、日本の科学史に残るビックニュースが発表されました!…いえ、【されるはずでした】。。。どんなビックニュースを期待していたかというと、「113番目の元素の命名権を、理化学研究所の研究グループが獲得!」というニュースです。もし現実になったら日本の科学史に残る快挙だったこのニュース。先日まで韓国で開かれていた国際学会で、「命名権がどの研究グループに与えられるか」が決まるはずだったのですが、どうやら今回は決まらず、次回以降の会議に持ち越されるようです。”
  5. 【祝・新元素発見】理研が113番元素の合成に成功!(文部科学省):”理研・仁科加速器研究センターの森田浩介准主任研究員らのグループが長年取り組んできた新元素合成の実験で、新たな成果が生まれました!2004年、2005年に続き、今年8月に3度目の合成とその新たな崩壊経路を確認することに成功しました。これは、新元素の発見の「確定」につながる成果であります。今回の合成は、実に7年ぶりの成功であり、実験開始からこれまで、元素合成のために原子を衝突させた回数は100兆回を超えます。”
  6. 新元素113命名権獲得へ近づく (日本化学会 2012年9月27日):”理化学研究所(野依良治理事長)は26日、新たに3個目の113番元素同位体の合成に成功した、と発表した。理化学研究所の仁科加速器研究センターの森田浩介准主任研究員らのグループが合成、崩壊経路を確認、27日の日本物理学会英文誌「Journal of Physical Society of Japan」オンラインに掲載される。野依理事長は「理研ではこれまでにも2個の113元素の同位体を合成しているが、今回の成果は従来の2個とは異なる崩壊経路を辿り、既知核に到達したことを確認した。これは新元素発見の証拠を一段と盤石とする成果で、元素命名権の獲得に大きく近づいた。周期表には多くの元素が載っているが、これまでに日本が命名した元素はない。命名権を取得し、周期表に日本発の元素をぜひ載せたい」と述べている。”
  7. Element 113 Uncovered by Japanese Scientists: “Ununtrium”
  8. Element 113: Ununtrium Reportedly Synthesized In Japan (Huff Post 09/26/2012)
  9. Search for element 113 concluded at last (RIKEN Press Release, September 27, 2012)
  10. Science mini-story (2) ~日本発・113番元素登場~ (有機化学美術館):”ちなみに今回の113番元素はすでに2004年2月にロシアチームが発見を報告していますが、これは証拠不十分で確定的とはいえないデータです。今回の理研の場合は1原子だけの結果とはいえ信憑性の高いデータであり、今後再現性が確認できれば日本チームに命名権が与えられる可能性は十分あると思われます。”
  11. 新元素113番 (理化学研究所 仁科加速器研究センター):”RILACによって加速された亜鉛イオンをビスマスに衝突させました。80日間にもおよぶ連続照射実験を続け、1個の113番元素が合成されました。新元素の発見は、目的とする原子核のできる確率が極端に小さいためとても困難です。世界中でその発見を競っています。113番元素の場合、原子核同士を100兆回も衝突させる必要がありました。”
  12. 新発見の113番元素 (理化学研究所 2004年9月28日):”今回、合成された原子核は1個です。この原子核は合成されるや否や、連続した4回のアルファ崩壊とそれに引き続く自発核分裂によって崩壊しました。この一連の崩壊の寿命および崩壊エネルギーなどから、原子番号113 (質量数278の278113)の原子核が初めて合成されたと結論付けられました。 今後、複数合成して再現性を確かめるなどして、今回のデータを補強すれば、将来、113番元素の命名権があたえられる可能性があります。その場合、周期表に歴史的な成果として、明確に足跡を残すことになります。… 113番元素については、今年2月にロシアの研究所が、「115番新元素の原子核(質量数、288と287)の初合成に成功し、その崩壊連鎖上の原子核として原子番号113、質量数284と283の原子核も発見した」と発表していますが、崩壊連鎖が既知の原子核まで到達していないため、現在はこれら115番、113番元素の命名権を獲得するに至っていません。ロシアのフレロフ核反応研究所のグループでは、実験データを積み重ね、より確かなものにしようとする努力が払われています。ただすべての崩壊の連鎖が未知の自発核分裂で終わっており、純粋実験的に原子番号Zと質量数Aを決めることができないのが現状です。元素に命名権を与える、国際純粋応用物理学連合(IUPAP; International Union of Pure and Applied Physics)と国際純正応用化学連合(IUPAC;International Union of Pure and Applied Chemistry)の合同ワーキンググループの報告によれば実験結果はかなり確実であるとしながらも既知核への連結がないことをもって、いまだ命名権を与えるに至っていないと報告しています。”
  13. Ununtrium – Video Learning – WizScience.com (https://www.youtube.com/watch?v=BtbHCb0WB8g): “The first report of ununtrium was in August 2003, when it was identified as an alpha decay product of element 115, ununpentium. These results were published on February 1, 2004, by a team composed of Russian scientists at Dubna , and American scientists at the Lawrence Livermore National Laboratory”