Category Archives: 相対性理論

一般相対論の予言から100年 重力波をついに検出

一般相対性理論を完成させたアインシュタインはその理論に基づき、1916年に重力波の存在を予言しました。この予言から100年後の今、アメリカのLIGO(レーザー干渉計重力波天文台)の研究グループが重力波を直接観測することに世界で初めて成功しました。下の動画はこの研究成果を発表する記者会見の模様です。

LIGO detects gravitational waves (National Science Foundation)

0:00- France Cordova氏(アメリカ科学財団ディレクター) の挨拶
2:25 – 重力波の説明ビデオ放映
4:00 – 12:43 David Reitze氏が重力波観測の成功を報告 “We did it! “ 。2つのブラックホール連星が合体し重力波が発生すること、地球に届いた重力波をどうやって検出したかの説明。
12:54 - 21:13 Gabrieal Gonzalez氏が今回の観測結果をわかりやすく説明しています。
14:08- LIGOの説明
14:48- 観測された重力波データの説明
21:43 – 31:02 Rainer Weiss氏が重力波研究の歴史と測定装置について解説
31:25 - 39:45 Kip Thorne氏
40:00 – 44:25 France Cordova氏
44:25 – 質疑応答

、この輝かしい研究成果はフィジカル・レビュー・レターズ誌に報告されました。

GravitationalWaveAbstract-1 (LIGO Scientific Collaboration and Virgo Collaboration) Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger. Phys. Rev. Lett. 116, 061102 – Published 11 February 2016. DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102)

地球に到達した重力波は2015年の9月14日に、米国ルイジアナ州リビングストンとワシントン州ハンフォードに設置された2つの検出器で記録されていました。

2016AbbottFig1(DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102)

今回観察された重力波の発生源となったのは、2つのブラックホールの衝突と考えられています。今回衝突した2つのブラックホールの大きさは、太陽の質量のそれぞれ36倍と29倍で、この2つが衝突後に太陽の質量の62倍の大きさブラックホールを形成し、太陽の質量3つ分が重力波として放出されたと考えられます。

2016AbbottFig2(DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102)

今回重力波を記録することに成功した2つの検出器は、リビングストンとハンフォードに設置されており、2つの距離は3000km離れています。

2016AbbottFig3(DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102)

今回の研究は、重力波を世界で初めて直接検出したと同時に、ブラックホール連星の2つブラックホールが合体する瞬間を捉えたということに関しても世界初となります。

CONCLUSION
The LIGO detectors have observed gravitational waves from the merger of two stellar-mass black holes. The detected waveform matches the predictions of general relativity for the inspiral and merger of a pair of black holes and the ringdown of the resulting single black hole. These observations demonstrate the existence of binary stellar-mass black hole systems. This is the first direct detection of gravitational waves and the first observation of a binary black hole merger. (DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102)

参考

  1. B. P. Abbott et al. (LIGO Scientific Collaboration and Virgo Collaboration). Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger. Phys. Rev. Lett. 116, 061102 – Published 11 February 2016. DOI:http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevLett.116.061102
  2. LIGO Caltech News
  3. 重力波、世紀の発見をもたらした壮大な物語 ノーベル賞級発見の手法と意義、天文学の新たな広がりを詳しく解説 (ナショナルジオグラフィック日本版 2016.02.12)
  4. 重力波の直接観測に成功! 13億年前のブラックホール衝突の余波検出、正式発表 (GIZMODO.JP 2016.02.12)
  5. ついに重力波の観測に成功、光による宇宙観測を補完することで宇宙研究が大きく広がる可能性 (GIGAZINE 2016年02月12日)
  6. Gravitational Waves Discovered Proving Einstein’s Theory (Sequence Media Group)
  7. Search for Gravitational Waves by LIGO Scientific Collaboration, Particle Physics at the Year of 250th Anniversary of Moscow University (page 152) :””In the last few years a number of long-baseline, laser interferometric gravitational wave detectors have begun operation. These include the Laser Interferometer Gravitational Wave Observatory (LIGO) detectors located in Hanford, Washington and 3000 km away, in Livingston, Louisiana. It is the joint Caltech-MIT project supported by the USA National Science Foundation.””
  8. LIGO Physicist Kip Thorne speaks to RT on gravitational waves discovery (RT)
  9. 重力波とは(KAGRA 大型低温重力波望遠鏡):”アインシュタインの一般相対性理論によれば、質量をもった物体が存在すると、それだけで時空にゆがみができます。さらにその物体が(軸対称ではない)運動をすると、 この時空のゆがみが光速で伝わっていきます。これが重力波です。重力波はすべてを貫通し、減衰しないと考えられています。”
  10. What is the difference between a stellar mass black hole and a super massive black hole? (Institute of Astronomy, University of Cambridge):” stellar mass black holes are around 3-10 times the mass of the Sun, whilst supermassive black holes are 10^5-10^10 times the mass of Sun”
  11. Stellar mass black holes (http://jila.colorado.edu)
  12. Baumgarte and Shapiro. Binary black hole mergers. Physics Today. Oct. 2011
  13. 重力波ってなんだろう (THE HUFFINGTON POST/東京大学大学院理学系研究科 特任研究員 秋本祐希 2016年02月13日)
  14. 重力波、装置改造2日後に観測 明確なデータに驚きの声(朝日新聞DIGITAL 2016年2月13日):”アインシュタインの「最後の宿題」とされた重力波を初めて観測したと米研究チームが報告した。…”
  15. 「重力波を初観測」米中心の国際研究チーム 発表(NHK NEWS WEB 2月12日):”アメリカを中心とした国際研究チームは、11日、宇宙空間にできた「ゆがみ」が波となって伝わる現象、いわゆる「重力波」を初めて直接観測することに成功したと発表しました。重力波の観測は、ノーベル賞に値する成果とも言われ、日本の専門家も「天文学の飛躍的な発展につながる」と述べて高く評価しています。…”
  16. 重力波の間接的な存在証明(重力波研究の歴史 KAGRA 大型低音重力波望遠鏡):”… ハルス先生とテーラー先生は、連星中性子星という、極めて強い重力場を持つ中性子星同士が互いに近接して連星系をなす、極めて稀な天体(PSR1913+16)を1974年に発見しました。そして、もし、その連星運動から強い重力波が発生していたら、連星系の回転の勢いが奪われ、連星の公転周期が短くなるはずだと予測しました。何年にもわたって、PSR1913+16という中性子星連星系の公転周期の変化を観測したところ、1979年、ついに、その公転周期の短縮変化が重力波が原因であると仮定して得られる理論的な予想と、誤差1%程度で一致する結果を得て、結果、これが重力波の間接的な存在検証となりました。この成果により、二人の先生は1993年にノーベル賞を受賞されました。”
  17. The Nobel Prize in Physics 1993 (nobelprize.org) :”The Nobel Prize in Physics 1993 was awarded jointly to Russell A. Hulse and Joseph H. Taylor Jr. “for the discovery of a new type of pulsar, a discovery that has opened up new possibilities for the study of gravitation””

参考(追加)

  1. 「メディアによる大袈裟な『重力波騒動』:あれは本当に重力波の波形なのか?」
  2. ノーベル賞がいくつあっても足りない重力波の観測 その感動を伝えられない大手メディアに価値なし(伊東 乾 2016.2.15 JBPRESS)
  3. 「重力波観測」の特報に胸が高鳴る6つの理由 揺らぐシャープに「重力波スマホ」開発の気概は?(山根 一眞 2016年2月15日 日経ビジネス)
  4. 重力波の直接観測に成功! 13億年前のブラックホール衝突の余波検出、正式発表 (GIZMODO.JP 原文は英文サイトのMaddie Stone氏の記事)
  5. 重力波、世紀の発見をもたらした壮大な物語 ノーベル賞級発見の手法と意義、天文学の新たな広がりを詳しく解説 (NATIONAL GEOGRAPHIC日本版 原文は英文サイトのNadia Drake氏の記事
  6. ついに重力波の観測に成功、光による宇宙観測を補完することで宇宙研究が大きく広がる可能性 (Gigazine)

アインシュタインの「一般相対性理論」100周年

アインシュタインは1905年に特殊相対性理論を発表しましたが、1915年に一般相対性理論に辿りつきました。この年の11月にアインシュタインはベルリンで4回の講演を行い、自分の理論を発表しています。

アインシュタインが1915年にドイツ・ベルリンのプロイセン科学アカデミーで一般性相対理論を発表したときの論文(プリンストン大学のアーカイブへのリンク)。

  1. On the General Theory of Relativity. November 4, 1915 
  2. On the General Theory of Relativity (Addendum) November 11, 1915 
  3. Explanation of the Perihelion Motion of Mercury from the General Theory of Relativity. November 18, 1915 
  4. The Field Equations of Gravitation. November 25, 1915

一般相対性理論100周年を記念したセミナーも世界各地で開催されています。

カリフォルニア工科大学Kip Thorne教授によるレクチャー「Einstein’s General Relativity, from 1905 to 2005: Warped Spacetime, Black Holes, Gravitational Waves, and the Accelerating Universe」(November 16, 2005)。
Einstein’s General Relativity, from 1905 to 2005 – Kip Thorne – 11/16/2005

ロベルト・ダイクラーフ(Robbert Dijkgraaf)教授によるレクチャー。
100 Years of General Relativity

参考

  1. The Collected Papers of Albert EinsteinThe Berlin Years 1914-1917 
  2. On the Generalized Theory of Gravitation by Albert Einstein. Scientific American Vo.182, No.4, pp13-17. April 1950.
  3. Relativity priority dispute (Wikipedia):”Undisputed and well known facts: General relativity:Einstein gave four lectures on his theory on Nov 4, Nov 11, Nov 18 and Nov 25 in Berlin”
  4. Scientific American Volume 313, Issue 3. 100 Years of General Relativity
  5. 日経サイエンス 2015年12月号 特集:アインシュタイン 一般相対論100年