フィンランドの学校教育制度がベストな秘密をマイケル・ムーアが暴く

      2018/09/29






 

学校教育制度のお手本として真っ先に挙げられる国が、フィンランドです。

教育改革を成功させた国、フィンランド

国際的に標準化されたテストの結果において、1960年代にはアメリカと同様に低迷していたフィンランドですが、教育改革を断行したおかげで2000年代には教育レベルは世界一になりました。

フィンランドの学校教育の秘密を探るべく、マイケル・ムーアがフィンランドに赴きます。下のYOUTUBE動画は、マイケル・ムーアが監督したドキュメンタリー映画、『Where to Invade Next』 (2015年)の中のフィンランドの教育に関する部分。

Why Finland has the Best Education by Michael Moore(『Where to Invade Next』 2015年より)

このドキュメンタリーを観ると、フィンランドの教育ポリシーの真髄がよくわかります。

 

教育レベルNo.1フィンランドの秘密:宿題は出さない!

日本では、学校が宿題をたくさん出すことにより、子供が家で自主的に学習する習慣を身につけさせることができるという主張をよく見かけます。しかし、フィンランドの教育が成功している要因のひとつは、その真逆で、宿題を出さないことなのです。学校に強制された宿題をやることは、「自主性」に矛盾しますからね。

子供たちに宿題はありません。宿題に時間を費やすよりも、子供らしく過ごして、生活を楽しむことにより多くの時間を使うべきだからです。

They do not have homework. They should have more time to be kids, to be youngsters, to enjoy the life.(フィンランド教育省クリスタ・キウル(Kirsta Kiuru)大臣)

 

宿題ゼロは本当か?

マイケル・ムーアは(おそらく高校生と思われる)生徒たちに、本当に宿題がゼロなのかを確かめるべく「昨夜は宿題をやるのに何時間かけたの?」と聞いたところ、かえってきた答えは、「10分程度」、「10分から20分くらいかな。」、「宿題はあんまりないね。」というものでした。

 

宿題をするよりも大切なこと

「宿題」という言葉は、死語なんですよ。

The whole term “homework” is kind of obsolete.(高等学校校長Pasi Majassari氏名)

高等学校の校長先生であるPasi Majassari 氏は、生徒は学校が終わったらたくさんやることがあるから宿題は出さないと言います。マイケル・ムーアがすかさず、たくさんやることって?と聞くと、Majassari 氏は、友達と一緒に過ごしたり、家族と一緒に過ごしたり、スポーツをしたり、音楽を演奏したり、読書をしたりすることだと説明します。

小学校1年生を受け持つ先生は、子供たちは(宿題をやらなくても)木登りして遊んでいれば、いろいろな発見があると説明します。

 

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学校の授業時間が短いほうがよい理由

学校の時間は一週間で平均20時間しかないそうです。長い授業時間で詰め込まない理由は何でしょうか?

脳は時々休まないといけないんです。常に勉強、勉強、勉強ってしていたら、学べなくなってしまうんです。勉強を長時間続けることは、意味がないんです。

Your brain has to– it has to relax every now and then. If you just constantly work, work, work, then you stop learning. And there’s no use of doing that for a longer period of time.(校長Leena Liusvaara氏)

 

学校教育の時間を減らし教育効果を高めるフィンランド

西欧世界の国の中でフィンランドは、学校で過ごす時間や期間が一番少ない。学校の時間を減らすことで、より効果的な教育を行なっている。

Finland students have the shortest school days and the shortest school years in the entire western world. They do better by going to school less.

 

フィンランド人の語学力

驚いたことに、フィンランドではマルチリンガルが当たりまえです。インタビューされた生徒たちの多くは、フィンランド語、スウェーデン語、英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語の中の2~3ヶ国語を話すと言います。交換留学生としてアメリカの学校を経験したフィンランドの生徒は、フィンランドに戻ってきて良かったことは何?と聞かれて、「選択問題(multiple choice exams)を解かされなくて済むことかな。」と答えます。4つの選択肢から正解をひとつ選べというタイプの問題をフィンランドでは出さないそうです。そのかわり、答えを書かせるのです。

 

テストのための授業を行うことの愚かさ

日本の高等学校でも、大学入学試験の問題を解けるように生徒の学習指導を行なうことを重視するきらいがあります。アメリカでは、大学入学者選抜に使われるSAT(Scholastic Assessment Test;大学進学適性試験)がありますが、テストで良い成績をとらせることを目的として授業を行なうことの無意味さを、フィンランドの人々は指摘しています。

フィンランドに来て何度も何度も繰り返しフィンラドの人々に指摘されたことを一つ挙げるなら、それは、アメリカは「標準化テストのために教える」のをやめるべきだということです。

If there was one thing I heard over and over again from the Finns, it was that America should stop teaching to a standardized test. (マイケル・ムーア)

もしも教師が生徒に、試験で良い成績をあげせるために教えているのだとしたら、それは何も教えていないことに等しい。

If what you are teaching your students is to do well on those tests, then you’re not really teaching them anything.(フィンランドの数学の教諭)

 

学校教育の目的は何か

学校は幸せを見つけるためにあるのです。自分がどうすれば幸せになるのかを知る方法を見つけるために学校があるのです。

School is about finding your happiness, finding, finding a way to learn what makes you happy. (フィンランドの学校の教諭)

 

学校教育で重要な科目とは?

日本でも大学入試に必要な主要五科目が重視され、芸術系の科目はほとんど誰の眼中にもなかったりします。マイケル・ムーア氏によればアメリカも似たようなもので、共通テストに無い科目、芸術、詩、公民などの科目は学校教育のカリキュラムから捨て去られているそうです。これを聞いて、フィンランドの先生たちが大変驚いています。フィンランドの教育においては、まったく違う考え方をします。

私たちは子供たちに必要なことなら何でも教える努力をしています。それは、脳をできるだけうまく使えるようにするためです。体育、芸術、音楽など、脳の働きを良くしてくれるものであればどんなことでも教えるのです。

We try to teach them everything that they need so that they could actually use their brain as well as they can, including PE, including arts, including music– anything that can actually make brain work better.

 

学校間の格差が存在しないフィンランド

教育熱心な日本人の親なら、自分が住んでいる地区で一番良い高校はどこか、私立高校にやるとしたらどこが一番良いのかと考えます。

もし標準化テストがここフィンランドには存在しないのなら、一体どうやってどの学校が一番良い学校かを知るのですか?学校ランキングのリストが必要じゃないですか。

If you don’t have standardized tests here in Finland, how do you know which schools are the best? You know, people need a list.(マイケル・ムーア)

しかし、フィンランドにおいては、そのような疑問を持つことすらありません。なぜなら、学校のレベルが均一になるように制度化されていて、学校間の優劣が存在しないからです。

あなたの家の近所にある学校が、一番良い学校です。

The neighborhood school is the best school.(フィンランド教育相大臣)

新しい土地に引越したとしても、その地区で一番良い学校がどこかと気にする必要がないそうです。なにしろ、どこの学校も完全に同じなので。ちなみに、授業料を徴収することが違法なため、フィンラドにはほとんどの場合、私立の学校が存在しないそうです。

アメリカでは教育はビジネスになっており、日本でも教育産業が公教育に深く入り込んでいます。2020年の認定民間英語試験導入を強行するなど、生徒のことはそっちのけで、癒着した官・民がこぞってビジネスチャンスを拡げようとしているようにしか、自分には見えません。しかし、フィンランドの教育政策はそのようなビジネス指向の考え方とは、一線を画すようです。

A lot of my teaching is based on what the kids want and what they see for their future. (フィンランドの教諭)

 

フィンランドの教育改革のアイデアはフィンランドが独自に編み出したわけではない

教育政策アドバイザーのPasi Sahlberg氏は、フィンランドの教育のアイデアは実はアメリカから来ていると説明してます。

It’s not that we have figured out something that nobody else has done in education. That’s wrong. Many of these things that have made Finland perform well in education are initially American ideas.(教育政策アドバイザーPasi Sahlberg氏)

 

教育の目的:幸せを感じられる人間に

結局のところ、教育の目的って何なのでしょうか?将来、社会が変容してどんな状況になっても生き抜くことができる資質を養うことが教育の目的だと思いますが、もっと根本的なところまで降りていけば、「教育の目的を考えること=人間が生きる目的」を考えることと同じであるように思います。前に他の教師も言っていましたが、ここでも別の教師がまったく同じ考えを示しています。

私たちが教えたいのは、子供たちが自分自身のために考えること、自分たちが学んでいる対象に関して深く考えることです。幸せな人間になること、他人を大事にし、自分自身を大事にすることを教えたいのです。

We try to teach them to think for themselves and to be critical to what they’re learning. We try to teach them to be happy person, to be– respect others and respect yourself. (フィンランドの数学教諭)

教育の目的は、子供が幸せを見つける手助けをすることだと言い切る数学の教師に対して、マイケル・ムーアは驚いてみせます。

ムーア:数学の先生の口から真っ先に出てくる「子供たちに学校で学んでほしいこと」が、「幸せになること、幸せな人生を送ること」なわけだ?

数学教諭:その通り。

ムーア:で、あなたは数学の先生なわけですよね。

数学教諭:その通り。

Moore: So the math teacher says– the first thing out of your mouth of what you wanted these students to get out of school was to be happy, have a happy life.

Teacher: Yep.

Moore: And you’re the math teacher?

Teacher:Yep.

 

結局、フィンランドの学校教育においては、勉強、勉強と生徒を追い立てるのではなく、学校の勉強以外のこと、友達と遊んだりして学ぶことのほうがはるかに重要であるというスタンスが貫かれています。

友達と遊んで社会性を身に付け、人間として成長する時間が、いつ取れますか?学校だけでなく、もっとたくさんの生活が子供たちにはあるのです。

When do they have their time to play and socialize with their friends and grow as human beings? ‘Cause there’s so much more life around than just school. (フィンランドの校長先生)

 

参考

  1. Where to Invade Next (2015) Movie Script(この映画の全スクリプト)
  2. Michael Moore’s ‘Where to Invade Next’ Idolises the Finnish Education System (Morgan Walker 04/14/2016 FINLAND Today finlandtoday.fl)
  3. Do U.S. public-school students have to get a hall pass to leave the classroom? (Quora.com)
  4. 10 TRUTHS ABOUT THE FINNISH EDUCATION SYSTEM(strangerless.com)
  5. クリスタ・キウル フィンランド教育科学相 2013年11月18日 日本記者クラブでの記者会見(YOUTUBE動画1:01:57)
  6. Bryan Bruce interviews Dr Pasi Sahlberg (YOUTUBE 30:49)

  7. Finnish Lessons: What the World Can Learn from Educational Change in Finland. Pasi Sahlberg, director general of the Centre for International Mobility and Cooperation, discussed Finland’s approach to education at the Askwith Forum on Tuesday, April 23, 2013 YOUTUBE 1:27:59)
  8. Finland and PISA (The Programme for International Student Assessment)

 - フィンランドの教育制度, 学校教育