ディープラーニングが実行可能なGoogleの機械学習システムTensorFlow(テンソルフロー)が誰でも利用可能に

GoogleがTensorFlowというディープラーニング(深層学習)」などを実行できる機械学習システムをオープンソースソフトウエア(OSS)として公開しました。

TensorFlow: Open source machine learning

参考

  1. tensorflow.org
  2. TensorFlow: smarter machine learning, for everyone (Google OFficial Blog, November 9, 2015):”We use TensorFlow for everything from speech recognition in the Google app, to Smart Reply in Inbox, to search in Google Photos.”
  3. GoogleがGoogle Photosの画像検索、スマート返信機能などに用いている機械学習技術をオープンソース化(TECH CRUNCH日本語版 2015年11月10日 by Sarah Perez):”このディープラーニングのフレームワークは、CPU、Nvidia GPU、Android、iOS、OSXで使うことができる実用的なC++バックエンドを持ち、またPythonのフロントエンドのインターフェイスであるNumpy、iPython Notebooksや他のPythonをベースとしたツールにも対応する。”
  4. Google、人工知能ライブラリ TensorFlow をオープンソース化。音声検索や写真認識、翻訳の基盤技術ディープラーニングを商利用可で解放(ENGADGET日本語版 BY Ittousai 2015年11月10日):”商用も可能なApache 2.0ライセンスで公開されるため、人工知能の研究者や学生からアプリ開発者、家電や自動車などのメーカーまで、実際のGoogle製品で使われるのと同等品質のソフトウェア一式を道具として導入できるようになります。”
  5. 米Google、機械学習システム「TensorFlow」をOSSとして公開(IT PRO 日経コンピュータ 2015/11/10 中田 敦):”TensorFlowはディープラーニングだけでなく、勾配アルゴリズムを使用する全ての機械学習アルゴリズムが利用可能。ユーザーはプログラミング言語の「Python」を使用して、機械学習アルゴリズムをTensorFlowに実装する。”
  6. Google、最新の機械学習システム「TensorFlow」をオープンソース化(マイナビニュース Yoichi Yamashita 2015/11/10):”Google CEOのSundar Pichai氏は「研究者からエンジニア、そしてホビイストまで、機械学習コミュニティに属する全ての人々が、論文ではなく、実際のコードを通じて活発なアイディアの交換を行うようになると期待している」と述べている。TensorFlowが機械学習研究の標準的なツールセットとして利用されるようになれば、検索の今後を支える機械学習において、Googleは研究者やコミュニティと密に関わっていける。”
  7. Googleが製品開発で活用する機械学習システム「TensorFlow」を商用利用OKでオープンソース化(GIGAZINE 2015年11月10日):”TensorFlowは高速でありながらも、モバイル端末から数千台の連結されたコンピューターまで実行できる柔軟性を持つように設計されており、「コンピュータープログラムをデータフロー形式で表現できる場合にはTensorFlowを実行できる」とのことで、研究者や企業、趣味として機械学習に取り組むユーザーなど、あらゆる機械学習コミュニティのメンバーが利用できるとGoogleは述べています。”
  8. グーグルが最新機械学習ソフトを無償公開するわけとは (THE WALL STREET JOURNAL日本語版 By ALISTAIR BARR 2015 年 11 月 10 日):”同教授らによると、ディープラーニングシステムは特定のタスクを実行できる構造をつくり、大量のデータで訓練を行わなければならない。グーグルの研究者たちは数年前、動画投稿サイトのユーチューブから約1000万枚の画像を、1万6000のコンピュータープロセッサーを結ぶネットワークに取り込むこ とで猫を認識する方法をあるシステムに教えた。このシステムは数百万のパラメーター(クリスティアニーニ教授はこれを「ノブ(取っ手)」と呼ぶ)を取り込むことが可能だが調整が必要だ。それを担当する優秀なエンジニアがいなければ、グーグルが公開したディープラーニングのアルゴリズムはあまり役に立たない。”
  9. Googleの公開した人工知能ライブラリTensorFlowを触ってみた (株式会社ネクスト Engineer Blog 2015-11-10)
  10. TensorFlow 畳み込みニューラルネットワークで手書き認識率99.2%の分類器を構築(http://qiita.com/haminiku/)

 

参考(商品・サービス紹介)

  1. 転職スキル習得に役立つお勧めのプログラミングスクール

早稲田大学が小保方氏のD論に関する記者会見

早稲田大学は小保方晴子氏の博士号取り消しに際して1年間の”執行猶予”を与えていましたが、猶予期間内に博士号取得に十分な内容の博士論文が提出されなかったとして、小保方晴子氏の博士号取り消しを確定し、その説明のための記者会見 を2015年11月2日に開きました。早稲田大学のウェブサイトでも、その概要を公表しています(「本学先進理工学研究科における博士学位論文の取扱いについて」)。

大学は、本学学位規則23条に則って、2014年10月6日付で、小保方晴子氏に授与された学位を取り消すが、学位を授与した先進理工学研究科にお ける指導・審査過程には重大な不備・欠陥があったと認められるため、一定の猶予期間を設けて再度の博士論文指導、研究倫理の再教育を行い、博士論文を訂正 させ、これが適切に履行された場合は学位を維持できることとした。

この決定に従い、先進理工学研究科では2014年11月に指導教員を選出し、論文提出・審査のスケジュールなどと共に本人への通知を行い、再度の論文指導体制を整えていたが、小保方氏の事情により、6月になるまで指導を始めることができなかった。

指導教員らは、小保方氏の来校が困難であることを考慮して、直接本人のもとを複数回訪れることに加え、メールや電話によって、草稿の内容確認や訂正 指示等の指導を行った。また、倫理教育についてもe-ラーニングでの受講環境を提供し、本人は9月までに所定の講座を修了した。

し かしながら、指導教員らの指示に従って何度か改訂稿が提出されたものの、それらの改訂稿は、なされるべき訂正作業が終了しておらず、審査に付すべ き完成度に達していないことから、先進理工学研究科では10月29日の運営委員会で協議を行い、論文審査に付すことができないことを確認した。また、小保 方氏より猶予期間の延長を求められていたが、これには応じないことをあわせて決定した。

これを受けて、大学は、10月30日の研究科長会の議を経て、「博士学位論文として相応しいもの」が提出されないまま、猶予期間が満了し、学位の取消しが確定したことを確認した。
本学先進理工学研究科における博士学位論文の取扱いについて

記者会見の模様。

【小保方氏の博士論文について】早稲田大学 記者会見 2015年11月2日

登壇者
鎌田薫 (早稲田大学 総長)
橋本周司(早稲田大学 副総長)
佐藤正志(早稲田大学 理事)
古谷修一(早稲田大学 教務部長)

1:50- (鎌田薫早稲田大学 総長)
15:30- (質疑応答)

21:20-26:40 (WILL編集 しが)2点。水準に達していないというが具体的に何が問題だったのか?もう1点、7月の時点では学位審査会での訂正要求にしたがって訂正すればそれでOKという発表だった。ところが10月だと追加事項が増えて行って、今回の発表では水準に達していなかったという。どんどんどんどん要求水準が高くなって学位取り消しの流れをつくろうとしているようにしか見えないが?
25:03- (回答)(科学的根拠の記述が不十分な具体的例)B6系統のGFP陽性細胞を用いてキメラマウスを作出したという記載があるが、用いた細胞の由来や実験結果の科学的根拠を説明しうる記述が不足している。ハードルをあげたというよりは、論文として当然記載されているはずだということの要請であります。
48:00-49:04 (毎日新聞 須田)もう一点、博士論文のもとになっているティッシューエンジニアリングパートAや小保方さんが筆頭著者になっているネイチャープロトコールなどについても疑義が指摘されている。小保方さんが早稲田大学に在学中に発表した論文なので早稲田大学が調査する義務があると思うが調査はされていないのか、その理由は。
2:19:00-2:28:04 日本経済新聞 古田。(博士論文の根拠になったTissue Engineering誌の論文の疑義に関して調査をしない)早稲田大学というのはいったい科学の研究機関なのでしょうか?
2:32:15-2:38:15 Tissue Engineeringの論文で科学の部分は担保されたと考えているのか?2点目、ハーバード大学に調査を依頼するなどの連絡をとったのか?

学位論文の修正が不十分であったと早稲田大学が判断した理由として、博士論文のもととなった米国雑誌 「Tissue Engineering Part A」に掲載された論文(Obokata et al., 2011)の内容との不一致が挙げられています。そうであれば、Tissue Engineering Part A論文における研究不正の有無を早稲田大学が調査しないのも不可解な話で、記者会見でも記者らがその点を追及しています(上の動画48:00-、2:19:00-、および2:32:15-)。

小保方氏の学位論文について具体的には、「論文中にコピー&ペーストした箇所があったこと、企業Webサイトからの写真の盗用があったこと、参考文 献情報が適切に掲載されていないこと、科学的根拠・論理性に乏しかったこと、以上の4点に問題があった」とし、再指導によって改訂稿ではコピー&ペースト や写真の盗用が行われている箇所の修正・差し替えが行われたというが、やはり「科学的根拠、および論理性が不十分」であったという。

その詳細について同大学は「現在提出されている博士論文自体は途中稿なので、コメントは差し控える」としたが、博士論文のもととなった米国雑誌 「Tissue Engineering Part A」に掲載された論文の内容との不一致があったこと、実験手順などの記述が不足していることなどがあったとした。
小保方氏学位論文取消しについて「科学的根拠、論理性に問題」 – 早稲田大 マイナビニュース 周藤瞳美 2015/11/03

早稲田大学の今回の決定に対して、小保方晴子氏は不満の意を表明しています。

2015年11月2日

小保方晴子

私は、学位論文について、実質的な審査対象論文と異なった初期構想時の論文を誤って提出したことに対し、論文訂正と再度の論文指導を受 ける機会を与えて頂きました。このため、大学設置の調査委員会によって指摘された問題点をすべて修正して論文を再提出したところ、このたび、前回の授与時 判断と異なった結論を出されました。

昨年、総長からは、指導過程および学位授与の審査過程に重大な不備・欠陥があったとの理由から、猶予期間を設けて論文訂正と再度の論文 指導を受ける機会を与えるとし、これが適切に履行された場合には取り消さず学位を維持する、とのご決定を戴きました。私はこれに従い履行したにも関わらず の今回の決定には失望しています。

このような経緯の下での今回の判断は、総長のご決定の趣旨及びその背景にある大学調査委員会報告書のご意見に大きく外れるものであり、学位規則の取消要件にも合致しないものであると思います。

前回の学位授与は、私の在学中に研究活動を指導し研究の進捗状況等の報告をさせて頂いていた教官の先生方らによって、正式な審査過程を 経たうえで授与されたものです。しかし、今回の同じ研究科における再度の審査過程では、今回の修正論文は博士に値しないとされることは、前回の授与時判断 と大きくかい離する結論であり、指導過程、審査過程の正当性・公平性について大きな疑問があります。

今回は、修正論文提出前から、担当教官によって、「今回は合格する可能性はとても低い」と伝えられ、不合格の理由においても、審査教官 から「博士として認めることのできないのは一連の業界の反応を見ても自明なのではないか」とのコメントがあり、学術的な理由とはかけ離れ、社会風潮を重視 した結論を出されたことは明らかです。また、今回の修正作業は、入院中、加療中での修正作業となり、思考力・集中力などが低下しており博士論文に能力を発 揮できる健康状態ではないとの診断書を大学に提出しておりましたが、ほぼ6年前の米国に保存されている研究資料を提出することなどを求められ、しかも厳し い時間制限等が課されるなど、心身への状況配慮などは一切なされず、むしろそれが不合格の理由にも採用されました。

修正論文提出後、「審査教官とのやり取りは始まったばかり」との説明を受けましたが、一回のやり取りだけで不合格の判定をされ、それに 対する私の意見も聞く耳を全く持って頂けない状況でした。これでは、当初から不合格を前提とした手続きであり、とても不公正なものであったと思います。こ の点については、大学にも改善をお願いしましたが、残念ながら聞き入れて頂けませんでした。

博士論文の骨子となる内容はSTAP研究の足掛かりとなった研究成果であり、理研で行われた検証実験においても一定の再現性が認められているものです。

博士論文執筆当時、この研究が広く役立つ研究に成長していく事を夢見て日々を過ごしていました。私の研究者の道は不本意にも門が閉じら れてしまいましたが、いつか議論が研究の場に戻る日を期待し、今回の再提出した博士論文や関連するデータは年度内をめどに随時公開して参る所存です。

以上
小保方さん「早稲田大学の決定はとても不公正」博士号「取り消し」にコメント(全文)弁護士ドットコム 2015年11月02日

 

参考

  1. 小保方氏の博士論文に関する早稲田大学記者会見 島田さんによる文字おこし TOGETTER
  2. <STAP細胞問題>小保方氏の博士論文取り消し でも早稲田大学の責任は? (THE PAGE 粥川準二 2015.11.03):”… 以上を理解する限り、研究機関としての早稲田大学は、研究や論文のどの部分に責任を持っているのかが曖昧なままです。”
  3. 早大:小保方氏の博士号取り消しへ 再提出論文で判断 (毎日新聞 2015年10月30日):”小保方氏は博士論文に盗用や不適切な記述があると認定され、大学の指示で再提出したが、学内の審査委員会が検討した結果、博士号取り消しが妥当と判断したとみられる。”
  4. 早大 小保方さんの博士号取り消しへ 猶予期間の延長認めず (スポニチアネックス2015年10月31日):”早稲田大は30日までに、STAP細胞を発見したと主張した理化学研究所の元研究者、小保方晴子氏の博士号を取り消す方針を固めた。…関係者によると、小保方氏側は猶予期間の延長を求めたが、認められなかったという。”
  5. 「小保方晴子氏の博士学位論文に対する調査報告書」に対する早稲田大学大学院先進理工学研究科 教員有志の所見 2014年7月24日:”1. Tissue Engineering 誌論文におけるデータの改竄疑惑への言及が存在しない点 科学研究論文において,データの信頼性を損なう改竄・捏造が致命傷であることは,改めて言うまで もありません。しかし,博士論文のもととなっているTissue Engineering 誌の論文には,明白と言ってよい画像の改竄(報告書における「実験結果欺罔行為」)が認められています。具体的には,Tissue Engineering 誌論文の図2、図3、図4 に電気泳動写真が掲載されていますが,まったく異なる遺伝子群の発現パターンに関して,同じゲルの写真を上下反転したり,一部切り抜いて流用したりすると いった改竄・捏造が既にネット上でも指摘されています。このうち,図3 は,博士論文においても図16 として採録されています。Tissue Engineering 誌の図3 は,ネット上での指摘を受け,責任著者のVacanti 教授によって,改竄が指摘された4 つの遺伝子群のデータを削除する形で修正(correction)されています。その理由は,「類似した見かけのデータを,複数の著者が編集したために起 きた過失」とされています。しかしながら,同様の図の改竄は,多くの場合Correction で済むものではなく,様々な科学論文誌においてRetraction(論文撤回)の対象となってきました。実際の写真を検討すると,「過失」というレベル ではないことは明らかで,学位取り消しの条件である「不正の方法」に相当するのではないかとの疑義があります。にもかかわらず,調査報告書では,「そもそ も博士学位論文の条件として査読付き欧文論文が前提となっており,このTissue Engineering 誌論文には修正がなされていること」を理由にデータの意図的な改竄(調査報告書に言う実験結果欺罔行為)には該当しないと結論付けています。しかしなが ら,Tissue Engineering 誌において,Vacanti 教授は強い影響力を持つと推測されるFounding Editor であり,軽微な「過失による修正」にとどめている編集方針には疑義があります。したがって,この論点については改めて独自の調査がなされてしかるべきと考 えます。”
  6. 調査報告書 早稲田大学大学院先進理工研究科における博士位論文関す調査委員会 平成 26 年 7月 17 日 (PDF 82ページ)
  7. ”アイデア&データの盗用、実験しなくても論文になる、事実の捏造、研究妨害、広報やネットと連携させた情報操作は、早稲田バイオサイエンスの『文化』と思っています。気の毒なことに彼女はその中で育ったのだと思います。実験のための基礎研究教育も極めて不十分です。特にTWInsには、そういった研究者が多く、『科学者の行動規範を纏めたシンガポール宣言』が出された、もとのもとのもとをたどれば、早稲田大学理工、化学科と生命医科に行き着きます。…”(尾崎 美和子  2014年3月10日
  8. 小保方晴子氏、早稲田大学博士号取り消しに1年間の猶予期間 (2014年10月13日投稿記事)
  9. 早稲田大学 先進理工学研究科有志教員が「小保方氏博士論文の調査報告書に対する所見」を公開(2014年7月24日投稿記事)
  10. 早稲田大学が、小保方晴子氏の博士論文に関する調査書を公開(2014年7月19日投稿記事)
  11. ハーバード大学バカンティ教授らがデータ捏造疑惑論文(Obokata et al., 2011)を「訂正」(2014年3月19日投稿記事)

iPAD Proとアップルペンシル 2015年11月発売

iPAD Proになって画面が大型化するのが魅力の一つですが、それよりもインパクトがあるのがアップルペンシル。アニメーター、デザイナー、サイエンティスト、エンジニアなどクリエイティブな仕事をするプロフェッショナルのためのツールになるのかもしれません。
Animator at Disney are testing the Apple Pencil

iPAD Proでは、マイクロソフト社のワード、エクセル、パワーポイントも活用できるようです。
Apple Pencil – Demos

タブレットPCとスタイラスペンで手書きのような感覚が得られるのかといえば、まだまだそうでもないのが現状です。しかし、アップルが普通のスタイラスペンでなく、iPAD Proのため「アップルペンシル」を作りました。
Apple Pencil | Hands On

iPAD Proとアップルペンシルは2015年11月に発売される予定です。

参考

  1. アップル iPAD Pro(公式サイト)
  2. マイクロソフトのSurface BookとアップルのMacBook Proの徹底スペック比較 (GIZMODO 2015.10.13)
  3. Windows10搭載「Surface Book」「Surface Pro 4」のスペックを対抗製品のiPad ProやMacBook Pro、旧Surface端末と比較 (Gigazine 2015年10月07日)
  4. 「Surface Book」と「Surface Pro 4」はどちらを選べばいい?――Microsoft新モデルを徹底チェック (1/6) 正統進化の12.3型Windowsタブレット「Surface Pro 4」と、突然登場した13.5型2in1ノート「Surface Book」。これら新モデルはどちらを選ぶべきなのだろうか。(前橋豪 ITmedia 2015年10月07日)

CRISPR-Cas9でpol遺伝子62コピーを破壊

臓器移植の治療において問題となる臓器不足の解決策として、ヒトの臓器と大きさや生理学的特性が近いブタの臓器を利用することが議論されています。しかし、ブタの臓器をヒトへ移植した場合に、ブタ内在性レトロウイルスが患者に感染する恐れがあるという問題が指摘されてきました。この問題を解決するアプローチとして、最新のゲノム編集技術CRISPR-Cas9(クリスパーキャスナイン)を利用して、ブタのゲノム中に存在する内在性レトロウイルス(porcine endogenous retroviruses (PERVs))のpol遺伝子62コピーを同時に破壊し、感染する恐れを劇的に減少させることにハーバード大学の研究グループが成功しサイエンス誌に発表しました。今回の遺伝子破壊実験はブタ腎由来上皮細胞PK15に対して行われ、共培養されたヒト細胞株HEK-293への感染の有無がqPCR法により調べられました。

Genome-wide inactivation of porcine endogenous retroviruses (PERVs)

Abstract The shortage of organs for transplantation is a major barrier to the treatment of organ failure. While porcine organs are considered promising, their use has been checked by concerns about transmission of porcine endogenous retroviruses (PERVs) to humans. Here, we describe the eradication of all PERVs in a porcine kidney epithelial cell line (PK15). We first determined the PK15 PERV copy number to be 62. Using CRISPR-Cas9, we disrupted all 62 copies of the PERV pol gene and demonstrated a >1000-fold reduction in PERV transmission to human cells using our engineered cells. Our study shows that CRISPR-Cas9 multiplexability can be as high as 62 and demonstrates the possibility that PERVs can be inactivated for clinical application to porcine-to-human xenotransplantation.
Published Online October 11 2015 Science DOI: 10.1126/science.aad1191

参考

  1. Yang et al., 2015. Genome-wide inactivation of porcine endogenous retroviruses (PERVs). Science DOI: 10.1126/science.aad1191. Published Online October 11 2015
  2. 遺伝子の改変数、10倍超に向上 – ゲノム編集、実用化へ前進(マイナビニュース 2015/10/12):”生物の遺伝情報を改変する「ゲノム編集」という最新技術を使い、ブタの遺伝子62個を操作して働かなくさせたと米ハーバード大医学部などのチームが11日付米科学誌サイエンス電子版に発表した。”
  3. Gene editing could make pig organs safe for human transplant pigs (WIRED.CO.UK 12 October 15 by K.G Orphanides)
  4. Dunn et al., 2015. Genetic Modification of Porcine Endogenous Retrovirus (PERV) Sequences in Cultured Pig Cells as a Model for Decreasing Infectious Risk in Xenotransplantation. April 2015 The FASEB Journal vol. 29 no. 1 Supplement LB761
  5. 「日本の移植・再生医療〜次の半世紀に向けて〜」 第50回日本移植学会総会報告4 (MediPress 2014/12.19):”移植臓器の不足を解決するもう一つの方法として、人間以外の動物からの移植を可能にする技術を研究している鹿児島大学医歯学総合研究科再生・移植医療学の山田和彦先生が、実用化を目指した3つの研究システムを紹介しました。第一は、臓器不足を早期に解決するための直接的手段として、ブタや霊長類の腎臓を移植するモデルで、現在米国で行っている研究の内容について解説されました。”
  6. ブタを医学・医療に使う意義 ―現状と将来 自治医科大学 先端医療技術開発センター 小林 英司 (Biophilia Vo.5 No.2 2009)
  7. 人獣共通感染症 第124回 新刊書「異種移植とはなにか」:” 第三の微生物学の観点では、ブタ由来のさまざまな微生物による感染の防止が問題となる。とくにブタの染色体に組み込まれているブタ内在性レトロウイルスが移植を受けた人に感染するだけでなく、家族など周辺の人への感染を起こし、さらには社会にまで感染を広げるおそれがないかという点が大きな問題になっている。”
  8. 異種移植(臨床)の歴史:”1992年Czaplickiがブタの心臓を、1993年Makowkaがブタの肝臓を移植しているが、結果としては超急性に拒絶されている。”
  9. 生命操作ー復刻版ーケーススタディ30例 23 ブタが「命の恩人」 (NHK):”アメリカ、オハイオ州に住むエリック・トーマスさんは、ブタが命の恩人だという。 1992年、彼は肝臓病から昏睡状態におちいり生命が危うくなったのだが、肝臓移植のための臓器が届くまで、豚の肝臓を一時的に代用して、血液を体外で循環させる治療をうけた。5日後、無事に人の肝臓を移植して、今はとても元気に生活している。”
  10. Xenotransplantation
  11. Auckland Island Pigs Animal Experimentation Experiments in NZ Australian news report

最先端IT・エレクトロニクス総合展 CEATEC JAPAN 2015

[ROHM] 「Lazurite Fly」が実現する折り鶴飛行体 – 飛行デモンストレーション – (CEATEC JAPAN 2015)

CEATEC JAPAN 2015 BOE 46インチ透明タッチ液晶ディスプレイ デモンストレーション

描いた絵が楽器になる「クラフトがっき」、iPhoneやiPad連携。導電性ペンで自由にお絵かき、最大4人でセッション可

CEATEC 2015: Omron’s Ping Pong Robot

村田製作所チアリーディング部 #CEATEC 2015 デモ

長井工高生のけん玉ロボット、シーテック会場で連続技成功

中も外も「村田」のスマートグラス「Cool Design Smart Glass」、鯖江市コラボでメガネ感追求

CEATEC JAPAN 2015 ch1 ライブ配信 by 京都FCPUG映像クラブ (10月6日(火)、メディアコンベンションをライブ配信)

参考

  1. CEATEC JAPAN 2015 ( シーテック ジャパン 公式サイト )

全自動洗­濯物折り畳み機 laundroid(ランドロイド)

全自動洗­濯物折り畳み機 laundroid(ランドロイド)は、seven dreamers laboratories・パナソニック・大和ハウス工業の3社による開発でシーテック2015で発表されました。

The Panasonic Laundroid in action

A demonstration of “Laundroid,” the world’s first automated laundry-folding robot

参考

  1. CEATEC JAPAN 2015(シーテック ジャパン 2015)(Combined Exhibition of Advanced Technologies)  2015年10月7日(水)~ 10日(土)

2015年ノーベル物理学賞は東京大宇宙線研究所の梶田隆章教授(56)ら二人に

2015年ノーベル物理学賞は東京大宇宙線研究所の梶田隆章教授(56)とカナダ・クイーンズ大のアーサー・マクドナルド名誉教授(72)に授与されました。

「ニュートリノ振動」をとらえる 質量発見までの長い道のり 梶田隆章 (PDF 18ページ 一般向け解説記事)

ニュートリノで探る宇宙2 梶田隆章 全学自由ゼミナール2006年12月12日 (一般大学生向け PDF 43ページ)

参考

  1. 梶田隆章・東大教授にノーベル物理学賞 素粒子ニュートリノの質量発見(産経新聞 10月6日)
  2. 梶田 隆章 (Takaaki Kajita) 東京大学宇宙線研究所宇宙ニュートリノ観測情報融合センター

2015年医学生理学賞は北里大学の大村智氏ら3人に

Announcement of the Nobel Prize in Physiology or Medicine 2015

大村智博士の業績に関するレビューアーティクル。

Ivermectin, ‘Wonder drug’ from Japan: the human use perspective
Andy CRUMP and Satoshi ŌMURA
Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci. 2011 Feb 10; 87(2): 13–28.
Abstract Discovered in the late-1970s, the pioneering drug ivermectin, a dihydro derivative of avermectin—originating solely from a single microorganism isolated at the Kitasato Intitute, Tokyo, Japan from Japanese soil—has had an immeasurably beneficial impact in improving the lives and welfare of billions of people throughout the world. Originally introduced as a veterinary drug, it kills a wide range of internal and external parasites in commercial livestock and companion animals. It was quickly discovered to be ideal in combating two of the world’s most devastating and disfiguring diseases which have plagued the world’s poor throughout the tropics for centuries. It is now being used free-of-charge as the sole tool in campaigns to eliminate both diseases globally. It has also been used to successfully overcome several other human diseases and new uses for it are continually being found. This paper looks in depth at the events surrounding ivermectin’s passage from being a huge success in Animal Health into its widespread use in humans, a development which has led many to describe it as a “wonder” drug.

 Philosophy of new drug discoveryS Omura. Microbiol Rev. 1986 Sep; 50(3): 259–279.

参考

  1. <大村さんノーベル賞>土に着目で大発見 寄生虫駆除で熱帯の生活改善 (東京新聞2015年10月6日 永井理):”メルク社から研究費は出るが、北里大の研究室員は五人。世界と競うには工夫が必要と考えた大村氏は、目標を動物薬に絞った。「動物薬は人からの転用が多く、研究開発が進んでいなかったから」という。…大村氏と研究室メンバーは、どこへ行くにもポリ袋を携帯。変わった微生物のいそうな場所を見つけると土を持ち帰って数千例を分析した。共同研究を 始めて三年目の七四年、富士山を望む静岡県伊東市にある川奈のゴルフ場近くで取った土から、役立ちそうな化合物を出す放線菌が見つかった。その化合物がエバーメクチンだった。”
  2. <ノーベル賞>医学生理学賞に大村氏…寄生虫感染症の薬開発(毎日新聞 10月5日):”スウェーデンのカロリンスカ研究所は5日、2015年のノーベル医学生理学賞を大村智(さとし)北里大特別栄誉教授(80)と米ドリュー大のウィリアム・ キャンベル博士(85)、中国中医科学院の女性科学者の屠ゆうゆう(と・ゆうゆう)首席研究員(84)の3氏に授与すると発表した。受賞理由は、大村氏と キャンベル氏が「寄生虫によって引き起こされる感染症の治療の開発」、屠氏が「マラリアの新規治療法に関する発見」。”
  3. <中国>屠氏、初のノーベル自然科学受賞へ 国挙げ成果誇示(毎日新聞 10月5日)

オレゴン州の大学で銃乱射 学生・教員9人犠牲

2015年10月1日(木)にアメリカ、オレゴン州にあるアムクア・コミュニティ・カレッジ(Umpqua Community College)で一人の男が大学構内で銃を乱射し、学生ら10人が死亡(射殺された犯人一人を含めた人数)したと報道されています。警察との銃撃戦で死亡した犯人は同大学の26歳の学生クリス・ハーパー・マーサー(Chris Harper Mercer)と特定されました。なお、初期の報道は混乱し、死亡者数や犯人の情報が異なって伝えられていたようです。

UCC Oregon Gunman is Chris Harper Mercer, 26, Body Armor, 3 Pistols, Long Gun, Full Ammunition

動機に関しては捜査の進展を待つ必要がありますが、犯人は教室で学生らを並べて立たせ、キリスト教徒かどうかを聞き、キリスト教徒だと答えた人に対しては頭に向けて銃を発射したという情報があります。

“The shooter was lining people up and asking if they were christian. If they said yes, then they were shot in the head. If they said no, or didn’t answer, they were shot in the legs. “ (Chris Harper-Mercer: Everything we know about the Oregon school gunman on Saturday. The Telegraph 12:59AM BST 03 Oct 2015

 

コミュニティカレッジでは様々な年齢の人たちがそれぞれの夢と希望と目的を持って学んでいました。銃撃事件が発生したときにライティングの授業を担当していた助教授も犠牲になっています。

Behind the numbers: victims of Oregon community college shooting identified (The Guardian 2 October 2015)

Oregon shooting victims ranged in age from 18 to 67

今回の事件の被害者となった9名の方たちを追悼するための動画です。
Remembering Oregon shooting victims: students starting out, passionate writing instructor

オレゴン州で起きた銃乱射事件を受けて、声明を発表するオバマ大統領。
Watch President Obama address deadly Oregon shooting

参考

  1. 米乱射、容疑者は授業履修の学生…銃13丁押収 (YOMIURI ONLINE 2015年10月03日):”米西部オレゴン州ローズバーグの2年制大学で起きた銃乱射事件で、地元警察は2日、クリス・ハーパー・マーサー容疑者(26)のアパートや事件現場で、合計13丁の銃を押収したと発表した。”
  2. Chris Harper Mercer identified as Oregon college shooting suspect (KIRO7 Posted: 5:58 p.m. Thursday, Oct. 1, 2015)
  3. Oregon Shooting at Umpqua College Kills 10, Sheriff Says (The New York Times OCT. 1, 2015)
  4. Umpqua Community Collegeウェブサイト
  5. Dr. Kent Hovind – Current Events – Gunman Chris Harper Mercer, Winchester, Oregon

科研費申請書を書いたら審査員の目で読み返す

科研費の審査基準や採点方法は明確に定められており、文書化されて一般に公開されています。

shinsa

研究目的や計画の欄をどう書いたらいいのかわからない人は、逆に、その欄に何がどのように書いてあれば評点が高くなるのかを知れば、通りやすい申請書が書けるかもしれません。

既に申請書を書き上げた人も、審査の手引きの採点項目・採点基準をみながら自分が審査員になったつもりで再度チェックしてみてはいかがでしょうか?

参考

  1. 誰も教えてくれなかった”通る”科研費申請書の書き方
  2. はじめての科研費申請に役立つウェブサイト

大学教員公募が必ずしも公募でない理由

 

100通の お祈り手紙に 心折れ (詠み人知らず ラボ川柳)

父親からのアドバイス⇒【世間の常識】募集が出たときには採用される人は既に決まっている


応募する側から見ると、大学の人事は実に不可解ですが‥

 いいかベイベーきいてくれ。人事の数だけモノサシがあるんだよ。大学教員公募戦線仏恥義理シェキナベイベー

下のウェブ記事にも教員人事の本質、オファーを勝ち取るための具体的な戦略に関するアドバイスがあり、落ち続けている人にとっては認識を改める助けになる内容だと思います。

公募に落ちた時「なんで自分が」と思うということは、自分の業績に自信があるのでしょう。それは素晴らしいことだと思います。しかし、それが人に評価されるかどうかはまた別の話です。ここでいう評価とは、「その研究が素晴らしい」ということより、「この人を採用したいと思うか」という点が重要です。どんなに優秀でも、その公募で必要とする人材にマッチしなけれは採用されません。(研究者として生きていくコツ gist.github.com/kaityo256

 

大学教員になるための熾烈な競争

博士号を取得した人の多くは研究者として生きることを望みますが、アカデミアで常勤職を得るのが非常に困難な状況は依然として続いています。

かなりの数(数十~数百のオーダー)の応募書類を書き,ほぼ全ての大学から不採用を告げられ,いくつかの大学から面接に呼ばれ,そのうちの一つの大学からオファーをもらえば,例えその大学が何処のどのような大学であろうと御の字と考えなければならないのが現状である.【大学教員への道】有益な書籍・サイト akt37 2013年9月7日

関連記事 ⇒ アカデミックポジションの倍率はどれくらい?

大学教員”公募”の実態

日本の研究力を強化するには、優秀な研究者が公正な競争の結果PI (Principal Investigator)の職に就けて、さらに自分の研究を発展させられるような体制を整備することが必要です。しかしながら、現実はというと、大学の教員募集要項で「公募」と称しておきながら実際には公募でないことが多いという強い不満の声が聞かれます。

大学教員の採用については、形式的には公募制がとられていても、その情報の流通が十分でないために、結果として閉鎖的な人事が行われている場合もあると言われている。大学における教育研究の活性化のために 文部科学省

公募の偽装を公に認める大学はないでしょうが、まずは現実を直視するところから始めないことには、対応策が見出せないでしょう。以下では、公募出来レースの真相、問題点、応募者への現実的なアドバイスなどを議論している、インターネット上の有益な記事を紹介します。

さらに頭に来るのは、「公募」と称して自分も参加したポスト獲得競争において、明らかに自分よりも業績や能力に劣ると思われる候補者が選ばれることをしばしば経験することでしょう。そのたびに、この国にはフェアな競争がないと絶望的な気持ちになることは想像に難くありません。
ポスドクから見たダメ教員 5号館のつぶやき 2007年 10月 28日

このブログ記事では興味深い議論がなされており、論文業績の格差にも関わらずなぜ内部昇進が行われるのかの内情を説明するコメントが紹介されています。

多くの教員は業績があって採用されて、その後成果を上げられなくなっていっています。特に最近は。なぜか?まず週に講義を5-6コマ担当し、入試・教務・学生委員会など委員に選ばれれば必ず出る必要のあるさぼれない委員会や会議が週平均1.5回くらいあります。校費は昔は100万以上あったのが今は10-40万です。大手の大学と違って、卒業研究の指導も教授自ら真剣に手取り足取りやる必要があります。そのうちちょっとデキの良い学生は大手の大学の大学院に行ってしまい、自分のところには誰も来ないか、来ても2年間バイトにあけくれるモラトリアム組です。そして、論文も急速に出なくなり、着任当時は当たっていた科研費も次第に当たらなくなります。 ここで公募で(場合によっては所属ラボのお陰もあって)すばらしい業績をもつポスドクと競っても、地方で苦労して教育と運営をしている教員は負けるでしょう。しかし、そのポスドクも慣れない教育と運営に四苦八苦しているうちに結局は前任者と同じ運命をたどるでしょう。 そこで現場で行われているのは、公募条件を厳しくして当該内部候補しか当てはまらないような募集をするのです。ポスドクから見たダメ教員 5号館のつぶやき 2007年 10月 28日

地方大学ならではの悩みがあるようで、実際に公募要項にもその理解を求めるような記述をしている大学もあります。

応募資格(3)地方大学の現状を理解して教育・研究および大学運営に対応できる者
岩手大学は男女共同参画を推進しています(http://www.iwate-u.ac.jp/gender/)。 …
(https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorDetail?fn=4&id=D115080098&ln_jor=0)

公正な審査をすっ飛ばした結果、最悪の事態を迎えたのが、あのSTAP細胞事件でした。小保方氏がリクルートされたときの状況が詳細に報道され、公募の実態の一端が一般の人の目にも明らかになった珍しい事例です。

2)運営における不誠実なヤラセ行為を止めよ
私は、STAP問題にあった背景の本質の1つは、「人事」であったと思っています。ところが、メディアなどでは、これを真正面から取り上げた記事を見たことがありません。1つは、小保方氏をCDBのユニットリーダーに採用した「出来レース」。これは、理研CDBの関係者は「出来レースではない」と言い張るが、本当でしょうか。幹細胞の分野のPIを募集するという「公募」の英文を書いたのは、一体誰だったのでしょうか?昨今の科学研究体制への苦情と提言 わがまま科学者 2014年12月29日

RIKENですらこうなのですから、偽装公募の問題は地方大学に限ったものではなさそうです。公募だったはずの人事が、フタを開けてみたら内部昇進させていただけだったという例は、首都圏にある日本有数の研究大学でも見受けられます。学生を優れた研究者に育て上げることが期待される研究大学であれば、PIの任用にあたっては極めて高い研究能力(=研究業績)が要求されて然るべきなのですが。

自分が教官となって自覚させられることは、研究成果を挙げていない人間が大学院の学生を指導できるわけがないということの一語につきる。
新大職組新聞1996年3月29日【検証・大学改革④】「同情するなら職をくれ!」その後ー研究妨害とはこのことだ 露崎史朗(元大学院自然科学研究科)

業績欄のレベルについては、今の日本の助教(40歳前後)はおろか、准教授(45歳前後)でも今のポスドクよりも業績欄が寂しいことは珍しくないように思います。… 結局、現在のバイオ業界は、ポスドクが次のステップに行くための業績の最低ラインだけを著しく上げている(Nature/Cell /Scienceクラスの論文が必須)にも関わらず、いったん助教や准教授となった人たちは過剰なまでに守るという図式になっていて、これこそが、今のポ スドク就職難の原因なのではないかと思います。(BioMedサーカス.com 研究者の声:オピニオン 2013年12月15日更新 執筆者:ポスドク@関東地方)

下のツイートのように助教→講師→准教授と上がっていく人がいるときに、もしそのポジションが公募で出ていても既に当確の人がいるわけですから、業績で上回るポスドクが応募したとしてもチャンスは無いでしょう。フタを開けてみたら「内部昇進かよ!」という例は私大に限らず国立でも見たことがあります(首都圏の超有名な研究大学)。

 

みせかけの公募はいつの時代にもあるようです。

また,ある地方に県立大学が開設されることになり,学会誌の求人欄にて,その教授や助教授の募集の公示が出 ておりました。それには,ちょうど私の専門分野に関係する部門のポストがありました。 当時の私は,一応の論文数もあったので,教授職に応募するべく自信 を持って書類を作成し,大学開設準備室へ送付しました。 しかし,締め切り後,面接の通知もなく,一ヶ月ほどして紙切れ一枚の不採用の通知。なぜ不採用な のか自分でも疑問に思えてなりませんでした。
ところが,翌年に開設されたその大学の教員リストを見ると,なんと,全部,地元の旧帝大のOBであることを知り,唖然とし,腹立たしさも覚えまし た。 しかも,私が応募した部門の採用者の業績はそれほど多くはありませんでした。 結局,その採用者以外の応募者ははじめから「当て馬」であり,利用さ れただけでした。
公募には,「候補者が決まっているが,公募で採用を決めたという形式にする」ためのものと,文字通り「広く門戸を開いた完全に平等な人材募集」の2種類があることを,そして,いずれの場合でも,複数の著名な方々からの推薦書が絶大な効果をもたらすことを,私は学びました。大学院博士課程のあなたへ、たやすく研究者の道、諦めないで! 大槻義彦の叫び  2015-07-12

こうなると公募に応募書類を出す意味がどれだけあるのか、ということになりますが。

公募の体裁を取っていながら、実際は出来公募だったり、教員選考委員にコネを持った他の応募者がいるので、面接に呼ばれてもコネがなければ採用に至るのは難しく連敗を重ねてしまうことが多いようだ。しかし、デキ公募でも選考委員全員の意見が「デキ公募」で完全に一致していることは稀である。即ち、公平に選考しよう(したい)と考えている選考委員は少数だが存在する。
(私の公募に対する心構えメモ http://www.geocities.jp/ryannmaryu16/point.html

運、縁、コネの重要性

就職において人間関係が重要というのは普遍の真理です。

しかしほとんどの場合、多人数の横並び状態です。私やあなた程度の研究者はたくさんいるのです。ドングリの背比べの中で採用の確率を上げるプラスアルファが縁なのです。
 縁は作ることができます。方法は単純で、真摯に他人と関われば良いのです。ただし他人と関わるだけでは、縁は作れません。真摯な態度が必要です。真摯と言っても、何か高度なことではありません。裏切らない、見下さない、見捨てない、卑屈にならないなど普通のことを実践すれば良いだけです。
 一方、他人と関わるには動かねばなりません。学会や研究会、勉強会など人が集まる場にコミットする必要があります。研究室に居るだけでは、あなたを知るのはあなただけです。「コミットする」とは、参加だけを意味しません。討論で質問したり、懇親会で話をしたりを含みます。そこであなたの存在は他人の記憶に刷り込まれます。他人に認知されて初めてあなたは何者かに成るのです。
 科学者を志す人の多くにとって、そういうのが億劫なのは良く分かります。しかし、研究内容は第一に論文、第二に学会発表で知らせることができますが、その他の属性については直接関わって知ってもらうしかありません。温和な性格、鋭い頭脳、辛抱強さ、責任感の強さなどの良い属性を書類で伝えるのは難しいでしょう。ところが教員採用の場合、研究業績がコンパラブルであれば、案外そういう部分が大事な要因なのです。その部分がまさにプラスアルファです。(どうすれば大学教員になれるか 長束・鈴木研究室ブログ 2016年07月12日)

Q. やっぱりコネ?
A. はい.私も大学人になってから身に染みて感じていることなのですが,“採用する側として” も,やっぱりコネが必要です.というのも,僅か1名の教員を採用するのに,どこの馬の骨とも知れない人を引っぱってくるよりも,「私が保証しますから」という内部の推しがあったほうが採る側としては安心なのです.
大学教員になる方法3 Deus ex machinaな日々 2011年9月27日

今回の公募もコネ公募ではなく、JREC-IN を見て応募したガチ公募でした。しかし、応募してからわかったことでしたが、受け入れ先の教授の先生は、私と深いつながりのある先生と、かつて同じ研究室にいたことがあったそうです。常にシンポジウムで顔を合わすような先生ならたいてい知っているわけですが、現在の互いの研究がそこまで似ているとは限らず、意外な接点というのは把握しきれません。今回はその深いつながりの先生の名前を「所見がもとめられる研究者」として挙げたわけではなかったのですが、ちゃんとその先生にも調査が入っていました。なので、応募した私としては完全なガチ公募ではあったのですが、採用側や上のほうの先生たちの間で様々な思惑 (コネ的な側面) が本当になかったのかと言えば、どうなのかなあ、という印象は持っています。… 「コネも実力のうち」と言われることもありますが、本当にそれに近い話で、さらに「コネも運のうち」とも言えるんじゃないかなと思いました。というのは、コネというのは自分で把握できるようなものだけではないからです。自分のコネだけでなく周囲の人間のコネも大いに関係あります。雇う側として、身元が確かな人のほうが安心するのは自明です。
教員公募、内定をもらって思うこと  研究者って自称ギタリストと何が違うの? 2015-01 19

Q:コネなしでアカデミックポストに就くことなんてできるんですか? (YAHOO!JAPAN 知恵袋 jackruccelさん 2008/4/2702:14:30)

A:公募でよい人が応募してくるとは限らないので、あらかじめ選考側からよさそうな人を探して、公募に出さないかと勧誘することも多いです。自分たちだけでわからないときは、周りの大御所に誰かいないかと聞きます。どちらにせよ、大事なのは名前が思い浮かぶような存在であることです。… コネは厳然として重要です。… 偉い人の頭の中に浮かぶような存在感が必要なのです。共同研究や学会活動を通じてよく知られている、好感持たれているというのも含めての「コネ」です。(YAHOO!JAPAN 知恵袋  tecnical_errorさん 2008/4/2708:49:46)

 

公募により教員を採用していることを明言している大学もあります。

また、オホーツクキャンパスでは公募制に切り替えてから、採用目的に合致するか期待以上の研究能力と教育者としての資質をもつ人材が得られるようになってきた。その結果、当該学科・研究室の研究レベルや教育レベルが向上しつつあり、全体が活性化し始めている。さらにこれらの人材は現在進行中の学部・学科再編のキーパーソンになりつつある。今のところ、公募制の長所だけが目立ち、短所は表面化していない。教員選考手続における公募制の導入状況とその運用の適切性 東京農業大学 自己点検評価書

 

大学側のニーズを汲み取ることの重要性

公募が本当に公募なのか、公募でどんな人材が求められているのかは、ひとえに採用する大学側の都合であり、応募する側には知りえないことです。

公募広告が出ていても実は候補者がいたり、内部昇進を形式上カムフラージュするために公募したりと、ようするに「デキレース」とか「見せかけ公募」ってえのがあるのわ確かだ。でもなベイベーきいてくれ、デキレースかどうかなんて、応募するおいらたちにはわからねえのよ。だから、あれこれと余計なことを考えている暇があったら、応募すりゃいいじゃねえか!デキがいいとか良くないとかいった制度批判もすぐに過熱する傾向があるぜ。気をつけるんだな、そうゆう議論に時間を奪われちゃあいけねえぜ。そいつは貴重な公募応募活動時間の浪費だ。目をさますんだシェキナベイベー!! デキレースかどうかなんてかんがえるんじゃねえぜ! 大学教員公募戦線仏恥義理シェキナベイベー

一流の研究実績を持つ人物を求めている人事だったら研究実績だけ見て教歴は考慮されないかもしれないし、教育指導に優れた人物を求めている人事だったら研究実績はそんなに重視されないかもしれない。それだけのことサ。学位をとってから民間企業の研究所だとか公的機関だとかで研究に専念してきた研究者が大学教員になる例は珍しくない。助手の経験もなく、講義の経験もなく、大学独特の教室運営に関する経験も無い彼らに求められているのは教歴かい?それとも研究能力かい?
いいかベイベーきいてくれ。人事の数だけモノサシがあるんだよ。人事の数だけものさしがある 大学教員公募戦線仏恥義理シェキナベイベー

大学の都合は別として、採用する側から見た理想的な候補者像はというと。

採りたいと思う候補者には、共通点があることに気づきました。その共通点は複数あるのですが、まず挙げたい点は、採用された場合、自分にどのような役割が期待されているのかをしっかりと自覚しているということです。これは、単に担当する科目がわかっているというようなレベルではありません。所属することになる学科やセンターの教員構成やバランス、学生数等を把握し、自分の専門性や年齢等を勘案して、求められるポジションや役割を自ら見出しているというようなものです。そして、そのビジョンが、こちらの要求と合致している、あるいはそれ以上のものであるという共通点です。
(大学教員公募の面接(実施側の立場) 大学の教員生活 2012年11月16日)

一方でポスドクを経て次のテニュアトラックに臨む場合、求められる像は異なる。基本的に学科・学部のスタッフの一員としての職を担うことになるからだ。多少のばらつきはあるにせよ、研究だけではなく、プログラムの運営など範囲の広い貢献が期待される。数年間のポスドクを経ても、そういった全てを担える経験 が備わっている事はほぼなく、それは面接する側も理解している。だから面接ではこれら全てを担えるか、その素養を計られる(国立研究機関などであればまた変わってくるとは思うが)。要は研究グループへの貢献だけではなく組織への貢献の期待。恐らくはこの点がポスドクの面接とテニュアを得るための面接の大きな相違点と思う。テニュアを得る際の面接では、この違いを明確に理解して、自分に何が欠けていてそれを補う意欲、補わなくては話にならないという理解を明示する。
アカデミア永久職獲得まで(3) 勢い余って話し過ぎないこと Kagakusah.net 2014年5月11日

募集側にいる大学教員との感覚のズレ(温度差)を埋めるためには,日頃大学という場所で,どのようなことが問題になっているかを知ることは有益であると僕は考えている.例えば,次のような言葉の意味を簡潔に説明できるであろうか.●高大接続 ●リメディアル教育 ●FD(Faculty Development) ●SD(Staff Development) ● JABEE ●ティーチングポートフォリオ ●アドミッションポリシー ●カリキュラムポリシー ●ディプロマポリシー ●AO入試   ●大学設置基準 ●教養部 ●リベラルアーツ ●グローバル化 ●全入時代 ●割愛採用 ●マル合教員  ● ....知らない言葉がある公募戦士には,大学教育や大学改革に関する本を何でもいいから一冊読むことをお勧めする.【大学教員への道】有益な書籍・サイト akt37 2013年9月7日

 

職には呼ばれるもの

コレ―ジュ(コレ―ジュ・ド・フランス)で君のやった講演はすごく印象がよかったし、その印象はずっと続いている。フランソワ・ペルーが退職して、そのポストが空いた。候補者はたくさんいんるのだが、いずれもぱっとしない。われわれの中で、君を推す者が何人かいる。君がぜひやりたいと言えば選ばれるはずだ」(ベノワ・B・マンデルブロがアンドレ・リシュネロヴィチから受けた電話)

引用元:ベノワ・B・マンデルブロ『フラクタリストーマンデルブロ自伝ー』早川書房2013年 397ページ

公募といっても採用側は事前にめぼしい人に目をつけて応募を促したり、それこそコネを駆使して良さげな候補を事前に探すようなので、その段階で声がかからない人にはほとんどチャンスがないのではないかと個人的には思います。

それは、2017年1月のことでした。私は、東京大学教養学部統合自然科学科・学科長、大学院総合文化研究科・広域科学専攻生命環境科学系・教授及び同研究科人事委員会・委員長を務められている先生より、お電話で、私の教授としての採用が決定したことと、着任が6月初旬となる見込みであることを告げ、「来て下さいますね?」というお言葉をいただきました。 …  この公募に応募しないか、と人事委員の中の先生よりお声がけいただいた当初より、私が応募する場合は兼任が必須である旨をお伝えしてありました。(東大から「内定取り消し」を受けた大学教授がどうしても伝えたいこと 2019.03.01 現代ビジネス)*太字強調は当サイト

逆に言えば、公募に出し続けて玉砕を繰り返すよりも、公募が出る前に事前に声がかかるような人間になるにはどうすればよいかに注力したほうが、職を得る早道かもしれません。

 

関連記事 ⇒ まだアカデミアで消耗してるの?【博士の転職】

 

【世間の常識】募集が出たときには採用される人は既に決まっている

世間の表面に出てきたときには、全て終わっているんだよ。体裁を整えるために募集をかけて試験をやっているだけなんだから。だから、声がかかるように普段からそういう活動をしておかないとだめ。試験で優秀な人間が採用されるわけではない。」大学教員の職探しが熾烈なことを父親に話したときに、父親はそう言いました。「それが世間の常識なのに、お前は何を今頃寝ぼけたことを言っているんだ」と呆れられました。父親は学校を卒業するとき商社や銀行を受けたらしいのですが、採用された人間はみな親戚などが事前にその会社の上層部に根回ししていた人だけだったとのこと。その体験によって世間の常識を学び、それ以降はその常識に従ってこれまで生きてきたので、職探しで困ったことはないそうです。これは、民間の話ですが。職が得られなくて苦しんでいるのは、研究ばかりやってきて、こういった世間の常識をわきまえていない研究者だけなのかもしれません。

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参考

  1. 人事の数だけものさしがある 大学教員公募戦線仏恥義理シェキナベイベー
  2. 大学教員公募についてのメモ 私(52連敗)が大学教員公募で内定ゲットするまでの履歴やメモ
  3. どうすれば大学教員になれるか 長束・鈴木研究室ブログ 2016年07月12日
  4. 教員公募、内定をもらって思うこと (研究者って自称ギタリストと何が違うの?クソ田舎助教から、政令指定都市に逃亡しました 2015-01 19)
  5.  JREC-IN利用者座談会開催報告2012年3月24日@JST東京本部
  6. 【大学教員への道】有益な書籍・サイト akt37 2013年9月7日
  7. 大学教員公募の面接(実施側の立場) 大学の教員生活 2012年11月16日

同じカテゴリー内の記事一覧

STAP細胞の存在を否定するNATURE2論文

小保方氏らによる2報のSTAP細胞NATURE論文は既に取り下げられていますが、STAP細胞は存在しなかったと結論付ける2つの報告がNATURE誌に掲載されました。一つは日本の理化学研究所によるもの。他方はハーバード大学を中心とした研究グループによるものです。

STAP cells are derived from ES cells. Daijiro Konno,Takeya Kasukawa,Kosuke Hashimoto,Takehiko Itoh,Taeko Suetsugu,Ikuo Miura,Shigeharu Wakana,Piero Carninci & Fumio Matsuzaki. Nature 525,E4–E5(24 September 2015) doi:10.1038/nature15366. Received 23 January 2015,Accepted 20 July 2015,Published online 24 September 2015

Failure to replicate the STAP cell phenomenon. Alejandro De Los Angeles, Francesco Ferrari, Yuko Fujiwara, Ronald Mathieu, Soohyun Lee, Semin Lee, Ho-Chou Tu, Samantha Ross, Stephanie Chou, Minh Nguyen, Zhaoting Wu, Thorold W. Theunissen, Benjamin E. Powell, Sumeth Imsoonthornruksa, Jiekai Chen, Marti Borkent, Vladislav Krupalnik, Ernesto Lujan, Marius Wernig,  Jacob H. Hanna, Konrad Hochedlinger, Duanqing Pei, Rudolf Jaenisch, Hongkui Deng, Stuart H. Orkin, Peter J. Park  & George Q. Daley. Nature 525, E6–E9 (24 September 2015) doi:10.1038/nature15513. Received 10 November 2014, Accepted 22 July 2015, Published online 24 September 2015

参考

  1. <STAP細胞>133回の再現実験ですべて作れず(毎日新聞 9月24日(木)2時0分配信):”STAP細胞論文の研究不正問題で、米ハーバード大のグループなどが計133回の再現実験ですべてSTAP細胞を作れなかったとの報告を、24日付の英科学誌ネイチャーに発表した。理化学研究所も「STAP細胞はES細胞(胚性幹細胞)由来だった」との試料解析結果を報告した。”

米政府の日本盗聴をウィキリークスが公表

targettokyo

“… The lesson for Japan is this: do not expect a global surveillance superpower to act with honour or respect. There is only one rule: there are no rules.” (Julian Assange)

参考

  1. WikiLeaks Target Tokyo Today, Friday 31 July 2015, 9am CEST, WikiLeaks publishes “Target Tokyo”, 35 Top Secret NSA targets in Japan including the Japanese cabinet and Japanese companies such as Mitsubishi, together with intercepts relating to US-Japan relations, trade negotiations and sensitive climate change strategy. The list indicates that NSA spying on Japanese conglomerates, government officials, ministries and senior advisers extends back at least as far as the first administration of Prime Minister Shinzo Abe, which lasted from September 2006 until September 2007. The telephone interception target list includes the switchboard for the Japanese Cabinet Office; the executive secretary to the Chief Cabinet Secretary Yoshihide Suga; a line described as “Government VIP Line”; numerous officials within the Japanese Central Bank, including Governor Haruhiko Kuroda; the home phone number of at least one Central Bank official; numerous numbers within the Japanese Finance Ministry; the Japanese Minister for Economy, Trade and Industry Yoichi Miyazawa; the Natural Gas Division of Mitsubishi; and the Petroleum Division of Mitsui.
  2. 米の日本盗聴、個人宅も対象か 優先度つけ分類 (朝日新聞DIGITAL2015年8月1日):”ウィキリークスは、NSAのデータから日本国内の盗聴対象を抽出したとする電話番号のリストを公表した。ターゲットは内閣府や経済産業省などの省庁や日本銀行、大手民間企業にも及んでいる。”
  3. 米NSA、日本の内閣や各省庁、三菱などを盗聴か:Wikileaksが暴露(THE NEW CLASSIC 最終更新日:2015.08.01 / 公開日:2015.07.31):”またオーストラリアのTHE SATURDAY PAPERは、盗聴リストに菅官房長官や日銀・黒田東彦総裁などの番号が含まれていたことも報じている。”
  4. 日本盗聴:米、説明避ける「反応しない」 欧州と対応に差(毎日新聞 2015年08月01日 東京夕刊):”NSAによる同盟国も含む諸外国の盗聴は、13年に米中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン容疑者の情報などを元に各国で大きく報道された。対象とされた独仏など欧州諸国やブラジルなどは強く反発。公に米国を非難して説明を要求したり、首脳の訪米を見合わせたりした。NSAはメルケル独首相の携帯電話を盗聴していたとの疑惑もあり、オバマ氏は同年10月、「独首相の通信傍受をしない」と電話でメルケル氏に約束した。”

非公開で行われてきた「自治体向け連絡会」:「高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する自治体向け連絡会」

原子力発電の問題点の一つは、放射性廃棄物の処理をどうするかということです。

高レベル放射性廃棄物とは原子力発電所の使用済燃料のうち、ウラン・プルトニウムなど約95%を再処理した後の、高レベル放射性廃液をガラス固化体にしたもの。これまでに、25,000 本相当の発電を行っており、約2,200 本が青森県六ヶ所村で貯蔵管理されている。製造直後のガラス固化体は、放射線量約1,500Sv/h、表面温度200℃であるが、30~50 年かけて100℃まで冷却し、最終処分を行う。その後、放射線量が十分低くなるには数千年が必要である。(参考:http://www.city.gifu.lg.jp/secure/28434/summary.pdf

高レベル放射性廃棄物の搬入開始 六ケ所村

高レベル放射性廃棄物の処分方法は、地層処分と呼ばれる方法が良いとされています。しかし、受け入れ自治体が見つかっていないという問題があります。そのため、これまでの自治体任せの手上げ方式を改め、科学的に適正が高いと考えられる地域をマッピングした「科学的有望地」を国が提示するという政策の転換がなされました。

2000 年 「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(最終処分法)」公布。実施主体である原子力発電環境整備機構(原環機構)設立
2002年12月 応募区域を全国の市町村から公募

2007 年1 月 高知県東洋町が文献調査受入の応募。しかし、地元住民が反発し同4 月に町長が落選、応募は取り下げ。
2015年(平成27年)5 月22 日 基本方針を改定し、閣議決定
(参考:http://www.city.gifu.lg.jp/secure/28434/summary.pdf, http://www.jsce.or.jp/committee/rm/News/news1/hlw.pdf

このような事情から、国が地方自治体向けに非公開で「情報提供」を行ってきましたが、このようなやり方に対して強い批判が生じています。

一部メディアから、自治体向け連絡会を非公開で行うことに関して報道があるが、仮に公開で
行った場合、参加・発言をしただけで報道の対象となることが懸念され、参加・発言を控える自
治体が出ることが見込まれたため、非公開とした。…国としては、個別会場ごとの質疑は非公開とし、全ての連絡会終了後に、まとめとして公表する予定である。http://www.city.gifu.lg.jp/secure/28434/summary.pdf

政府は高レベル放射性廃棄物の最終処分について、本年五月二十二日に最終処分法に基づく基本方針の改定を閣議決定した。報道等によ ると、経済産業省は、閣議決定を受け、全国九ブロックで開催しているシンポジウム「いま改めて考えよう地層処分」とは別に、都道府県単位で自治体向け説明 会を非公開で開催しているとのことである。この説明会については、五月二十二日開催の第三回最終処分関係閣僚会議の「資料1」において「地方自治体への情 報提供(連絡会の開催)」として公表されているところではあるが、同資料においては説明会が非公開である旨の記述はない。しかるに、政府はこの自治体向け 説明会を非公開とするのみならず、開催日程、出席自治体、議事内容等を一切公表していない。このことは、「国民の理解と協力」を掲げた「基本方針」と矛盾するのみならず、この間原子力委員会や福島県民健康管理調査などで「秘密会議」の存在が明らかになり、強い疑念と批判を招いた反省を踏まえていないと言わ ざるを得ない。(衆議院ウェブサイト:平成二十七年六月二十二日提出 質問第二八七号 高レベル放射性廃棄物の最終処分に係る地方自治体向け非公開説明会に関する質問主意書 提出者 阿部知子

参考

  1. High Level Nuclear Waste: Edwards in Schreiber, Feb 11, 2015
  2. 回答 高レベル放射性廃棄物の処分について 平成24年(2012年)9月11日 日本学術会議 (PDF 42 pages): ”地層処分をNUMO に委託して実行しようとしているわが国の政策枠組みが行き詰まりを示している第一の理由は、超長期にわたる安全性と危険性の問題に対処するに当たっての、現時点での科学的知見の限界である。安全性と危険性に関する自然科学的、工学的な再検討にあたっては、自律性のある科学者集団(認識共同体による、専門的で独立性を備え、疑問や批判の提出に対して開かれた討論の場を確保する必要がある。 ”
  3. 高レベル放射性廃棄物最終処分施設の立地選定をめぐる問題 (レファレンス 平成22年2月号 経済産業課 山口 聡)
  4. 高レベル放射性廃棄物の処分について一緒に考えてみませんか? (NUMO原子力発電環境整備機構)(PDF 44 pages)
  5. 『高レベル放射性廃棄物の最終処分に関する自治体向け連絡会(岐阜県)』に係る報告 (PDFファイルへのリンク) 日 時:平成27 年6 月17 日(水)14:00~16:00 場 所:長良川国際会議場 大会議室 説明者:中部経済産業局資源エネルギー環境部/部長 経済産業省資源エネルギー庁放射性廃棄物等対策室/室長補佐 原子力発電環境整備機構(NUMO)/部長、課長代理
  6. 土木学会岩盤力学委員会ニュースレターNo.1 わが国における高レベル放射性廃棄物処分事業の現状 (原子力発電環境整備機構  高橋美昭)
  7. 地層処分ポータル (原子力発電環境整備機構, NUMO, Nuclear Waste Management Organization of Japan):”高レベル放射性廃棄物の地層処分についてさまざまな疑問に対する情報を見つけることができます。”
  8. 岐阜市議会 平成27年第3回定例会 6月22日 質問日3日目 1/3 (岐阜市公式チャンネル YOUTUBE)
  9. 原子力資料情報室声明 高レベル放射性廃棄物の最終処分にかんする自治体向け説明会の非公開問題について (原子力資料情報室 2015/06/03)
  10. エネ庁佐賀市で説明会、核のごみ最終処分地選定 (佐賀新聞 2015年05月30日):”原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定について、経済産業省資源エネルギー庁が全都道府県で実施する自治体向け説明会が29日、佐賀市の自治会館であった。22日に閣議決定された最終処分の新たな基本方針を説明したが、全て非公開で、参加した市町数も明らかにしなかった。”
  11. 地層処分技術WG(第12回会合) 平成27年3月24日(火)9:00~11:00 YOUTUBE動画 (1:40:07)
  12. 高レベル放射性廃棄物処分について 平成25年12月 資源エネルギー庁 (PDF20ページ):”総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会 地層処分技術WG 委員名簿
    委員長 杤山修 原子力安全研究協会処分システム安全研究所所長(放射性廃棄物WG委員)
    委員 宇都 浩三 産業技術総合研究所企画本部企画副本部長(日本火山学会推薦)
    遠藤邦彦 日本大学名誉教授(日本第四紀学会推薦)
    長田昌彦 埼玉大学地圏科学研究センター准教授(日本応用地質学会推薦)
    小峯秀雄 茨城大学工学部都市システム工学科教授(土木学会推薦)
    田所敬一 名古屋大学大学院環境学研究科地震火山研究センター准教授(日本地震学会所属)
    遠田晋次 東北大学災害科学国際研究所教授(日本活断層学会紹介)
    德永朋祥 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授(放射性廃棄物WG委員)
    丸井敦尚 産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門総括研究主幹(日本地下水学会推薦)
    山崎晴雄 首都大学東京大学院都市環境科学研究科教授(放射性廃棄物WG委員)
    吉田英一 名古屋大学博物館教授(館長)(放射性廃棄物WG委員)
    渡部芳夫 産業技術総合研究所地質調査情報センター長/深部地質環境研究コア代表(日本地質学会推薦)
  13. Meeting the challenge: Geological disposal of UK higher activity radioactive waste 

  14. History & Treatment of Nuclear Waste

  15. Nuclear Waste Disposal Documentary

  16. 7/31 どうする?!核のゴミ-最終処分と合意形成を考える日独シンポジウム(地球座 吉田明子):”ドイツでは、当初から最終処分場の候補地と考えられてきたゴアレーベンが、地層の安定性と住民・市民社会の反対とによって2013年に白紙撤回され、2014年、連邦議会のもとに「最終処分場委員会」がつくられてあらたな議論が始まったところです。委員会には、政治家だけでなく労働組合、宗教団体、環境保護団体などの市民代表を含む33人が参加し、すべての議論に透明性をもたせながら合意形成をはかろうとしています。”

  17. GERMANY – NUCLEAR POWER: Gorleben refuses to go nuclear

自由と平和のための京大有志の会の声明


戦争は、防衛を名目に始まる。

戦争は、兵器産業に富をもたらす。

戦争は、すぐに制御が効かなくなる。

戦争は、始めるよりも終えるほうが難しい。


戦争は、兵士だけでなく、老人や子どもにも災いをもたらす。

戦争は、人々の四肢だけでなく、心の中にも深い傷を負わせる。


精神は、操作の対象物ではない。

生命は、誰かの持ち駒ではない。

海は、基地に押しつぶされてはならない。

空は、戦闘機の爆音に消されてはならない。


血を流すことを貢献と考える普通の国よりは、

知を生み出すことを誇る特殊な国に生きたい。


学問は、戦争の武器ではない。

学問は、商売の道具ではない。

学問は、権力の下僕ではない。

総理から前線へ

生きる場所と考える自由を守り、創るために、

私たちはまず、思い上がった権力にくさびを打ちこまなくてはならない。

 

 

注:上記の文章は「自由と平和のための京大有志の会」の声明を転載したものです。また、写真やYOUTUBE動画は当サイトscienceandtechnology.jpが紹介のために挿入したものであり、声明とは直接関係ありません

参考

  1. 自由と平和のための京大有志の会
  2. まず、総理から前線へ。(広告批評)
  3. 糸井重里さん・後編 「ほんとうかな」と自問する力 (毎日新聞 2015年02月17日):”でも、これも今なら戻してって言いますよ。戦争に対する考えが深まっていないですよ。戦争はゲームや子供のチャンバラごっこではない。単純に戦争になった時に総理が前線に行けばすむっていう話じゃないんじゃないって思う。これは何かをやりたければ、「○○をやってから言え」っていうのと同じ論理だもん。紋切り型を上手な決まり文句にしただけですよ。決まり文句で批判するだけで、戦争を無くすこともできなければ、実際のところ何にもなんない。ちょっと考えが甘いし、鳩の絵を描けば平和っていうのと同じ感じで引っかかります。”

南部 陽一郎(1921-2015)

ノーベル物理学賞の南部陽一郎氏(94)が死去(15/07/17) 動画削除済み

南部陽一郎さん訃報に悼む声相次ぐ 動画削除済み

南部陽一郎の名を抜きにしては、現代の素粒子理論のどの面も語れません。クォークが多次元の「ひも」で結ばれているという「ひも理論」も、湯川秀樹の中間子理論を大きく進化させた「色の量子力学」も、素粒子の質量を決める理論である「ヒッグス機構」も、そのどれを取っても最初の発端は南部のアイデアです。現在の素粒子論では陽子も中性子も素粒子ではなく、その三分の一のかけらに相当するクォークが素粒子であることが確定していますが、このクォークを考え る決定的一歩になった「西島ゲルマンの公式」も、実は南部が西島和彦に与えたヒントが基礎になっていると言われています。つまり、南部は一人で「現代素粒子理論」の骨組みをつくったような人です。(どこがスゴイか 南部陽一郎 特別寄稿 原子力文化 2008 11月号)

南部の思想は現代の素粒子論の中にまさに空気のように満ち溢れており,小林と益川の理論は日米の加速器実験によって見事に実証された.素粒子物理学の50年 「対称性の破れ」を中心に 科学 Jan.2009)

大阪大学未来トーク 04 「物理学の周辺」南部陽一郎(2013.7.16) (1:05:06)

南部陽一郎氏インタビュー(福井新聞 2008年10月)(4:38)

参考

  1. Yoichiro Nambu (Google Scholar)
  2. Nobel Lecture by Yoichiro Nambu (32 minutes):”The Nobel Lecture of Yoichiro Nambu was presented by Giovanni Jona-Lasinio.
  3. クォーク 第2版(電子書籍) 南部陽一郎 著 1998年 (講談社ウェブサイト)
  4. Quarks:Frontiers in Elementary Particle Physics by Yoichiro Nambu:クォークの英訳版。サンプルの章が読める。
  5. 量子物理学の展望 江沢洋,恒藤敏彦 編 岩波書店 上巻(1977年)下巻(1978年)(岩波書店ウェブサイト):”量子力学は自然の原子的構造に切りこみ,我々の物質観を根本から変えてきた.本書は,量子物理学の現状を把握し将来への展望を得ることを意図して編集され,日本物理学界第一線の研究者30氏の協力により完成した.”
  6. 素粒子物理学の50年 「対称性の破れ」を中心に 科学 Jan.2009 大栗博司
  7. どこがスゴイか 南部陽一郎 特別寄稿 原子力文化 2008 11月号 (http://jimnishimura.jp)
  8. 日本人が世界に誇れる天才は南部陽一郎 その仕事とは 南部陽一郎の独創性の秘密をさぐる(1)現代化学 2009 2月号 (http://jimnishimura.jp)
  9. 最初の論文がすでにノーベル賞クラスだった南部陽一郎 南部陽一郎の独創性の秘密をさぐる(2) 現代化学 2009 3月号 (http://jimnishimura.jp
  10. 本格的大仕事まで8年間のトンネルを貫通した南部の精神 南部陽一郎の独創性の秘密をさぐる (3) 現代化学 2009 4月号 (http://jimnishimura.jp
    NambuHimitsu3
  11. 南部 陽一郎 特別栄誉教授・名誉教授がご逝去されました (大阪市立大学 2015年07月17日):”…同氏は、昭和24年4月に本学創設後、同年9月理工学部助教授として就任、翌25年3月教授となり、昭和31年8月退職までの間、創設期の理工学部物理学科の礎を築いてこられました。…”

 

岩田聡 (いわたさとる) 1959-2015

岩田聡 (いわたさとる) 1959.12.6-2015.7.11

岩田聡氏は高校生のとき、ヒューレットパッカード社製のHP-65というプログラム関数電卓でゲームを作っていました。東京工業大学を卒業後、大企業へは就職せず、社員数わずか数名という小さな会社、HAL研究所にプログラマーとして就職し、ゲーム開発を行いました。

【天才】任天堂 岩田社長のプログラマーとしての凄さ

任天堂がファミコンを開発した頃から、HAL研究所は任天堂のファミコンのゲーム開発に関与するようになり、両社の関係が構築されました。2000年に岩田氏は任天堂に入社、そしてわずか2年後の2002年には代表取締役社長に抜擢されました。任天堂は1889年創業以来、山内家による同族経営の会社だったことから、この人事は異例中の異例といえます。

2005年のゲームデベロッパーカンファレンスでのプレゼンテーション。冒頭で、「私は名刺の上では会社の社長ですが、頭の中はゲームデベロッパーです。しかし、心の中ではゲーマーなのです。」という名セリフが聞かれます。

Satoru Iwata 2005 GDC Keynote – Part 1

“On my business card, I am a corporate president. In my mind, I am a game developer. But in my heart, I am a gamer. “

参考

  1. 社長が訊く(任天堂):”任天堂の各ホームページで展開している、さまざまなプロジェクトの経緯や背景を社長自らが開発スタッフに訊くインタビュー企画「社長が訊く」へのリンク集です。 ”
  2. 岩田聡さんのコンテンツ。(ほぼ日刊イトイ新聞 2015年7月13日)
  3. 追悼:任天堂 岩田聡社長 HAL研究所の天才新入社員と高校2年生の思い出 by 藤本健(週刊アスキー 2015年7月13日)
  4. 岩田聡(ウィキペディア)

STAP細胞論文研究不正の後始末にかかった費用

STAP細胞論文で研究不正行為が確定した小保方晴子氏(31)に対して理化学研究所が論文掲載料60万297円の返還を請求していましたが、7月初めに小保方氏の代理人が返還に応じる意志を伝え、2015年7月6日に入金が確認されたそうです。

英科学誌ネイチャーの論文掲載料合計60万297円の内訳は神戸新聞によれば、

アーティクル:32万3948円
レター論文:27万6349円

ちなみにSTAP細胞論文問題で理化学研究所が論文不正の調査や検証にかけた一連の経費の総額は8360万円に上るそうです。その内訳は今年3月の毎日新聞の記事によれば、

二つの調査委員会          940万円
保存試料の分析          1410万円
検証実験(実験室整備費など含む) 1560万円
検証実験の立会人旅費        180万円
自己点検検証委員会          80万円
改革委員会             400万円
メンタルケア            200万円
広報経費(記者会見会場費など)   770万円
法律事項など専門家への相談    2820万円

また、理研が小保方氏に支給した研究費は約2年間で約4600万円とのこと(読売新聞)。

結局、「約1億3千万円+本人の給与」という金額が、「STAP細胞」というアイデアに費やされたことになります。

研究費4600万円を使って研究不正行為を働いても、論文掲載料60万円しか返さなくて良いという、現在の日本の研究不正処理が果たして妥当なものなのかは、議論が望まれます。

② 日米ともに、捏造、改ざん、盗用を研究不正と定義しており、表面的には同じように
見えるが、米国は研究計画の申請から研究成果の発表までを対象としているのに対して、
文部科学省の研究不正ガイドラインは研究成果の発表のみを対象としている。そのため、
特に改ざんの定義は異なったものになっている。
③ 日本では、米国の研究不正規律ではみられない再実験を、研究不正の調査方法として
位置づけているが、論理的にも現実的にもその有効性には疑問がある。

⑤ 日本では、研究者の倫理観や行動規範の立場から研究記録の保存を求める傾向がある。
米国では、研究記録の不存在は、研究不正の定義に基づき改ざんであり、かつ故意性の
証拠とされる。この違いは、研究不正を研究発表の段階に限定するか否かの違いに由来
する。…我々は研究不正を適切に扱っているのだろうか

 

参考

  1. STAP論文:不正問題 調査に8360万円 理研、突出した代償に (毎日新聞 2015年03月21日):”STAP細胞論文問題で、理化学研究所が論文不正の調査や検証にかけた一連の経費が総額8360万円に上ったことが分かった。”
  2. 小保方氏が論文掲載料の返還請求に応じる 理研口座に60万円 (スポニチ Sponichi Annex2015年7月7日):”小保方氏の研究費について理研は、実際に実験は行われ、不正に使われたとは言えないとしており、請求の対象は論文掲載料に限定した。STAP問題では検証実験や調査費用などに4千万円近くかかったが、規定などを理由に理研が負担した。”
  3. STAP細胞問題 小保方氏が論文掲載料60万円返還 (神戸新聞2015/7/7):”理化学研究所は7日、STAP細胞論文で研究不正行為が確定した小保方晴子氏(31)が、論文掲載料約60万円の返還請求に応じ、理研が指定した口座に全額入金したと発表した。”
  4. 小保方氏、STAP論文掲載費60万円を返還 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2015年07月07日):”STAP細胞の論文不正問題で、理化学研究所は7日、4件の不正があったと認定した小保方晴子・元研究員から、論文掲載費約60万円の返還を受けたと発表した。”
  5. 小保方晴子ユニットリーダーの研究費は5ヵ年契約で1億円
  6. 【追悼】笹井芳樹(1962- 2014)
  7. 我々は研究不正を適切に扱っているのだろうか(下) ―研究不正規律の反省的検証― (国立国会図書館デジタルコレクション PDFリンク)