科学における仮説とは何か?

「これは科学的に正しいことが証明されている」と言われると、なにか絶対的な真実として受け入れないといけない気にさせられます。しかし、世の中にはそんな絶対的に正しいことなど存在しません。科学的に言えば、「科学的に正しいこと」とは、「今のところはまだ反証されずに残っている仮説」に過ぎないのです。この考え方は、カール・ポパーが提唱した反証可能性(Falsifiability)に基づいています。

ck12.orgはウェブを通じて世界中の子供が質の高い教育を無料で受けられるようにというコンセプトのウェブサイトですが、ポパーの反証可能性の考え方を前面に出して、「科学における仮説とは何か」(英語)を高校生向けにわかりやすく解説しています。このウェブページの著作権の形態がクリエイティブ・コモンズ・ライセンスなので、以下、日本語化して紹介します。

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仮説

「2つの仮説にまで絞り込んだ:そいつがでかくなったか、自分たちが縮んだか、どっちかだ。」

上の漫画は科学における仮説をからかっていますが、仮説という概念は科学においてもっとも重要なことの一つです。 科学研究によって、科学を進歩させるような証拠が見つけられます。科学研究の目的は通常、仮説をテストすることです。仮説を支持するかまたは退けるような証拠を見つけることによって、科学が進展するのです。

科学的な仮説とは何でしょう?

「仮説」という言葉は、「根拠のある推測」と定義できます。例えば、ある自然現象がなぜ生じるのかに関する根拠ある推測が仮説といえます。 しかし、全ての仮説がーー仮に自然界に関するものであったとしてもーー科学的な仮説というわけではありません。単に根拠のある推測というだけでなく科学的な仮説であるためには何が必要でしょうか?科学的な仮説は、次の2つの基準を満たしていなければなりません。

  • 科学的な仮説は検証可能であること
  • 科学的な仮説は反証可能であること。

科学的な仮説は検証可能でなければならない

仮説が検証可能であるとはどういうことかというと、観察をしてその結果が仮説に合うか合わないかを調べることができるような、そんな観察が可能だということです。 もしも仮説を観察によって検証できないのであれば、それは科学的ではありません。次の文を考えてみましょう。

「どんな方法を用いても観察することができない、目に見えない生き物が、私たちの周りには存在しています。」

この主張は正しいかもしれないし正しくないかもしれません。しかし、これは科学的仮説ではありません。なぜなら、検証できないからです。この仮説の内容だと、それが間違いかどうかを検証する観察手段が科学者にないのです。

科学的な仮説は反証可能でなければならない

ある仮説が検証可能なものだとしても、まだ、科学的な仮説と呼ぶには不十分です。さらに、その仮説がもし間違いの場合には間違いであるということを示すことができなければなりません。次の主張を考えて見ましょう。

「宇宙には生命が存在する惑星が他にもある.」

この主張は検証可能です。もし真実であれば、少なくとも理屈上は真実である証拠を見つけることができます。例えば、宇宙船を地球から送って宇宙を探索し生き物が存在する惑星を見つけたら報告させるようにすることができます。もしそんな惑星が見つかれば、この主張の正しさが証明できたことになります。しかし、この主張は科学的な仮説ではありません。なぜでしょう?もし仮説が間違いの場合にそれが間違いであるということを示すことが不可能だからです。 宇宙船は生き物が住んでいる惑星を見つけることは決してないかもしれませんが、だからといって生き物が住む惑星が存在しないとは必ずしもいえません。宇宙はとても広いので、全部の惑星に関して生き物がいるかどうかを調べつくすことは不可能だからです。

検証可能かつ反証可能であること

最後にもう一つ、下に図を示した例を考えてみましょう。

「2つの物体を同じ時刻に同じ高さから落とすと、地面に同時に到達する(ただし空気抵抗が存在しないものとする)」

この主張は検証可能でしょうか?可能です。あなたは2つの物体を同じ時刻に同じ高さから落として、いつ地面に達するかを観察することができます。もちろん、空気抵抗の影響を避けるために空気が存在しない状態で実験する必要はあります。しかし、そのような実験は少なくとも理論上、可能です。この主張がもし間違いの場合は、反証可能でしょうか?それも可能です。2つの物体に関して多くの組み合わせを試すことが容易にできます。そして、もし同時に着地しないような2つの物体の組み合わせを見つけたら、仮説が間違いであったということになります。仮説が間違いの場合には、間違いであることを証明することは比較的容易でしょう。

Elephant and boy falling to the ground due to gravity

一匹のゾウと一人の少年が重力によって地面に向かって落下しています。重力による力Fgravは、ゾウに対する方が少年のものよりも大きくなります。なぜなら、ゾウの方が質量が大きいからです。それにも関わらず、両者は地面に同時に達するでしょう(前提として同じ高さから同じ時刻に落ち始めて、空気抵抗はないものとします)。

仮説の正しさを証明することは可能でしょうか?

上の例で考えた、物体の落下に関する仮説が実際には間違いならば、たくさんの物体に関して実験を行うことにより遅かれ早かれ間違いだったいうことがわかるでしょう。ある仮説を反証するのには、一つの例外を見つければ事足ります。しかし、もしある仮説が実際に真実の場合はどうでしょう? 真実であるということも示し得るのでしょうか?いいえ。2つの物体が常に同時刻に着地することを示すには、考え得るあらゆる組み合わせを試す必要があるでしょう。それは不可能です。新たな物体は常に作り出されていますので、それらを全てテストしなければならないということになります。この仮説を反証するような例が将来見つかる可能性が常にあります。ある仮説が正しいと結論付けることはできませんが、その仮説を支持する証拠がより多く集まれば、その仮説が正しいという可能性がさらに高まります。

まとめ

  • 科学における仮説とは、観測により検証することができ、もし間違いであるときには反証することが可能であるような根拠ある推測のことである。
  • ほとんどの場合、仮説の正しさを証明し、そのように結論付けることはできない。なぜなら、仮説に対する反例を求めてあらゆる可能性を吟味することは一般的に不可能だから。

さらに

下のリンク先のウェブページの一番下にある、科学的仮説に関する確認クイズを試してみましょう。答えの確認を忘れずに。

http://www.batesville.k12.in.us/physics/phynet/aboutscience/hypotheses.html

おさらい

  1. 科学における仮説の役割が何かを述べよ。
  2. 科学的な仮説であるための2つの基準は何か説明せよ。
  3. 以下の2つの主張のうちどちらが科学的仮説の基準を満たすか?
    1.  酸は赤いリトマス試験紙を青色に変える。
    2. 宇宙には地球上にしか生物が存在しない。
  4. ある仮説が真実であることを証明することが通常は不可能である理由を説明せよ。
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参考

  1. Hypothesis:Testable, falsifiable statements are essential to the scientific process.(ck12.org)
  2. The Logic of Scientific Discovery, by Karl Popper (PDF, 545 pages)
  3. カール・ライムント・ポパー記念講演会講演録(日本語)(PDF) 稲盛財団 京都賞 第8回(1992年) 精神科学・表現芸術部門 カール・ライムント・ポパー (Karl Raimund Popper)哲学(20世紀の思想)
  4. カール・ポパーの生い立ちと哲学 伊勢田哲治 (PDF 12 pages)
  5. 「ポパー哲学」への手引 ― 科学的・合理的なものの見方・考え方 ―  高坂邦彦
  6. 疑似科学から見えてくる科学と社会 季刊誌『ゑれきてる』 談 戸田山和久:”科学と疑似科学を分けるたったひとつの基準はないのですが、いくつかの基準はあります。…そのなかで、一番重要なのは科学哲学者カール・ポパー(1902~1994)が提案した「反証可能性」だと思います。科学哲学としての「反証主義」というポパーの考え方は、今はあまり支持者はいないのですが、彼が出してきた「反証可能性」という科学の基準そのものは、やはり、科学らしさの大事な目安としてあります。”
  7. 理研STAP細胞検証実験の無意味さを近藤滋大阪大学教授が一般の人にもわかる言葉で解説 「難しいことはわからんが再現実験を支持する、という一般市民の方へ」

 

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細胞周期の研究で2001年にノーベル医学生理学賞を受賞しているティム・ハント博士の発言が物議をかもしています。彼はユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の名誉教授でしたが、この発言のために辞職を余儀なくされました。

“Let me tell you about my trouble with girls. Three things happen when they are in the lab: you fall in love with them, they fall in love with you, and when you criticise them they cry.”

The resignation of Sir Timothy Hunt: Can’t feminists take a joke?

Tim Hunt sorry but stands by comments on women scientists

参考

  1. Sir Tim Hunt ‘sorry’ over ‘trouble with girls’ comments(BBC NEWS 10 June 2015)

京都大学医学部元准教授を収賄容疑で逮捕

京都大医学部付属病院の元准教授(47)と、医療機器販売会社「西村器械」の元京都支店副支店長(39)がそれぞれ収賄容疑、贈賄容疑で逮捕されました。元准教授は副支店長にメールや電話で度々賄賂を要求し、ドイツの「RIMOWA(リモワ)」やアメリカの「TUMI(トゥミ)」といった海外高級ブランドのキャリーバッグやスーツケースなど(約30万円相当)を自宅に届けさせていたそうです。また、京都・祇園や横浜での飲食接待も要求していたほか、ドイツ・ライカ社製のデジタルカメラ2台(計約40万円)を購入するなど研究費を私的に流用した疑いも持たれています。

参考

  1. 西村器械株式会社:”幅広い医療機器、医療材料を取り扱う総合医 療機器商社です。特に循環器科、心臓血管外科、透析・血液浄化関連の医療機器販売 においては、永年の経験と豊富な実績を誇っています。当社の強みは、医療機関の皆様から寄せられる、現場ニーズにお応えすることによって築かれた、人と人のつながり、信頼関係にあります。”(会社情報>トップメッセージ 代表取締役社長 中井 真喜雄)
  2. 研究費流用でカメラ購入か 逮捕前に内部調査委(m3.com/共同通信 2015年6月18日):”捜査関係者によると、丸井容疑者は2012年3月、海外ブランドのデジタルカメラ数台(計数十万円相当)を研究用備品と装い購入、私的に使っていた。”
  3. バッグに祇園接待…京大病院の“おねだり汚職”は氷山の一角(日刊ゲンダイ 2015年6月17日):”「丸井容疑者ほど露骨な要求をするのは珍しいですが、例えば100万円の機器を『150万円でいいから、ひとつよろしく』などと、医師が1~2割のキックバックを受け取るなんて話は結構聞く。丸井容疑者の場合もそうでしたが、数百万円程度の安価な機器の選定については、裁量権のある医師が絶対。それだけ癒着が起こりやすいのです」”
  4. 元准教授、研究費でライカ購入か 京大病院汚職事件(朝日新聞DIGITAL 2015年6月17日):”捜査関係者によると、丸井容疑者は2012年3月ごろ、病院の研究費を不正に流用した疑いが持たれている。贈賄業者とされる医療機器販売会社からドイツ・ライカ社製のデジタルカメラ2台(計約40万円)を購入していたという。”
  5. 逮捕の京大病院元准教授、祇園で接待受けていた (TBS NEWS 2015年6月16日):”丸井容疑者は、西村器械の社員、西村幸造容疑者(39)から高級キャリーバッグ3点を受け取っていましたが、警察へのその後の取材で、祇園などの飲食店でも接待を受けていたことが新たにわかりました。”
  6. 業者から物品、総額100万円か…京大病院汚職(読売新聞YOMIURI ONLINE 2015年06月16日):”京大の内規は、100万円以上の契約時には複数社の見積書を取るよう定めている。西村器械は10機種以上、総額5000万円を超える機器を受注していたが、捜査関係者によると、この中に、西村容疑者が他社の見積書を用意したケースがあったという。”
  7. 収賄容疑の元准教授、「祇園で接待」要求 業者にメール(朝日新聞デジタル 6月16日):”京都大医学部付属病院・臨床研究総合センターの医療機器納入をめぐる汚職事件で、京都府警に収賄容疑で逮捕された元准教授の丸井晃容疑者(47)が賄賂とされたバッグ以外にも、ブランド品や電化製品を贈賄業者側から受け取っていたことが捜査関係者への取材でわかった。”
  8. 【京大病院汚職】「中堅の心臓外科でリーダー的存在」 逮捕の丸井容疑者(産経WEST 2015.6.15):”逮捕された京都大病院元准教授、丸井晃容疑者(47)は平成6年に京大医学部を卒業後、京大病院の心臓血管外科などで勤務。優れた論文を次々執筆し、平成21年には同病院の探索医療センターで始まった血管再生治療のプロジェクトに准教授として選ばれて参加するなど、中堅の心臓外科医でリーダー的存在だったという。”
  9. 京大病院汚職:「もうかってるんだから」メールで品物指定(毎日新聞2015年06月15日):”京大の内規では、随意契約は1000万円未満の取引が対象。随意契約で医療機器を選定する際、その権限は、現場で実質的な研究を行う准教授が持つ場合が多いとされる。男性医師は「随意契約は、権限を持つ1人を落とせばよく、医療機器販売会社にとって契約を取りやすいのではないか」と話し、医師と業者側の癒着が起きやすい構造を指摘。”
  10. 京大病院元准教授を収賄容疑で逮捕 受注見返りにバッグ(朝日新聞DIGITAL 2015年6月14日):”京都大医学部付属病院・臨床研究総合センター(京都市左京区)の医療機器を受注させる見返りに、業者から高級バッグを賄賂として受け取ったとして、京都府警は14日午後、同センターの元准教授(心臓血管外科)で医師の丸井晃容疑者(47)=奈良県天理市田部町=を収賄容疑で逮捕し、発表した。”

DARPA Robotics Challenge 2015 優勝した韓国チームに賞金2億5千万円

米国防高等研究計画局(DARPA)が主催する災害救助ロボットの競技会「DARPA Robotics Challenge(DRC)」の決勝戦(Final)が、2015年6月5日、6日に開かれました。予選は2013年に行われており、この予選の上位および新たに出場資格を得たチームによって決勝が行われました。

25teamsDARPA2015

このコンテストは2013年の福島第一原発事故の教訓から着想を得たものです。もし高放射能による被爆をものともしないロボットが現場で作業できていたら、爆発などの事故の拡大を食い止められていたのではないかという考えから、参加ロボットは車の運転、車から降りること、ドアを開けて通ること、バルブを締めること、壁に穴を開けること、瓦礫の部分を越えて行くこと、階段を登ることなどのさまざまなチャレンジが課されています。

DARPA2015tasks

競技の模様。
DARPA 2015 Finals: Rescue bots compete in disaster simulation challenge

災害の場面を想定しているだけに、ロボットにとってはかなりタフな状況で、転倒するロボットが多かったようです。
A Compilation of Robots Falling Down at the DARPA Robotics Challenge

優勝したのは韓国のチームKAISTでした。
Korea’s Team KAIST robot completes tasks at the 2015 DARPA Robotics Challenge (fast motion)

ファイナリストは25チーム。日本からは、Aero(東大), AIST-NEDO(産総研), HRP-2Tokyo(東大), NEDO-Hydra(東大、千葉工大、阪大、神戸大), NEDO-JSK(東大)の5チームが参加していました。

 日本から参加の5チームのうち、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「災害対応ロボット研究開発」事業の支援を受けた3チームが出場する。

 東京大学の稲葉雅幸教授らのチーム「NEDO―JSK」は、13年のプレ大会で優勝した「シャフト」を輩出した研究室。高出力モーター駆動の人型ロボットで挑む。シャフトの技術を応用し、前回を超える活躍ができるか注目される。

 東大の中村仁彦教授らのチーム「NEDO―Hydra」は、電気油圧で全身を動かす世界初のロボットで参戦。「構成部品や制御回路、すべてゼロから作った」(中村教授)。手や足にかかる力を計測でき、工具をつかむ力やバルブを回す力を測りながら、繊細な動きができる。

 産業技術総合研究所から出場するチーム「AIST―NEDO」は10年以上の運用実績のある「HRP―2」を改良。産総研の金広文男ヒューマノイド研究グループ長によると「不整地の走破、階段は成功率が高い。工具の扱いや車の運転などは成功に向け調整している」という。(日刊工業新聞 ニュースイッチ 2015年06月03日)

中国のIntelligent Pioneerと日本のNEDO-Hydraは棄権し、23チームでの優勝争いとなりました。日本勢は10位、11位、14位、最下位という成績で、他国に大きく水をあけられてしまいました。

DRC FINALS TEAM STANDINGS
TEAM SCORE TIME
TEAM KAIST 8 44:28
TEAM IHMC ROBOTICS 8 50:26
TARTAN RESCUE 8 55:15
TEAM NIMBRO RESCUE 7 34:00
TEAM ROBOSIMIAN 7 47:59
TEAM MIT 7 50:25
TEAM WPI-CMU 7 56:06
TEAM DRC-HUBO AT UNLV 6 57:41
TEAM TRAC LABS 5 49:00
TEAM AIST-NEDO 5 52:30
TEAM NEDO-JSK 4 58:39
TEAM SNU 4 59:33
TEAM THOR 3 27:47
TEAM HRP2-TOKYO 3 30:06
TEAM ROBOTIS 3 30:23
TEAM VIGIR 3 48:49
TEAM WALK-MAN 2 36:35
TEAM TROOPER 2 42:32
TEAM HECTOR 1 02:44
TEAM VALOR 0 00:00
TEAM AERO 0 00:00
TEAM GRIT 0 00:00
TEAM HKU 0 00:00

(引用:http://www.theroboticschallenge.org/)

参考

  1. DARPA ROBOTICS CHALLENGE FINALS 2015
  2. 災害ロボコンテスト、韓国チームが優勝 日本勢は最高10位 (日本経済新聞 2015/6/7):”韓国科学技術院のチームは44分台で8つすべての課題をクリアし、賞金200万ドル(約2億5000万円)を獲得した。2位は米フロリダの大学などで作る研究機関IHMC、3位は米カーネギーメロン大のチームが受賞した。”
  3. 【DRC Finals 現地レポート】日本チーム棄権、転倒…どうなる!?(日刊工業新聞 ニュースイッチ 2015年06月06日):”日本からは5チーム出場していたが、競技開始を前にNEDO-Hydraチームが棄権。「もともと出場予定だったロボットのハードが不調で、バックアップ機でテストに出たが不調。最終的に棄権に至った」(NEDO-Hydraチーム関係者)。”
  4. 東大チーム転倒し苦戦…災害救援ロボット競技会 (読売新聞YOMIURI ONLINE 2015年06月06日):”日本勢は、東京大の3チーム、東京大・千葉工大・大阪大・神戸大の合同チーム、産業技術総合研究所の計5チームで、いずれも決勝からの参加。13年に予選が開かれ、東大卒業生らが起業したSCHAFT(シャフト)社が1位になったが、米グーグル社に買収され、「商業用ロボットの開発を優先する」として決勝戦を辞退した。”
  5. DARPAロボティクスチャレンジ、これが全24体の選手達だ! (GIZMODO 2015.06.06):”ガイドには25体ありますが、中国のIntelligent Pioneerは残念ながら出場しないようです。”
  6. ロボットが運転する、壊す、上る、「DARPA Robotics Challenge」がスタート(IT PRO by 日経コンピュータ 2015/06/06):”米国防高等研究計画局(DARPA)が主催する災害救助ロボットの競技会「DARPA Robotics Challenge(DRC)」の決勝戦(Final)が、2015年6月5日(米国時間)に米国カリフォルニア州ポモナ市の「Fairplex」で開幕した。”
  7. 危険な事故現場などで活躍する次世代ロボットの競技会、「DARPA Robotics Challenge」の本戦開催が今週末に迫る(現代ビジネス 2015年6月4日):”DARPA(米国防高等研究計画局)が主催する次世代ロボットの競技会、「DARPA Robotics Challenge(DRC)」が(米国時間の)今月5日(金)~6日にかけて米カリフォルニア州のイベント会場「フェアプレックス」で開催される。”
  8. 今年のDRCは日本から5チームが参戦!“第二のシャフト”は生まれるか? 米国防総省主催の原発・災害対応ロボット競技会が現地5日に開幕  (日刊工業新聞 ニュースイッチ 2015年06月03日):”
  9. グーグル、ロボット開発で国防総省にそっぽ (日刊工業新聞 ニュースイッチ2015年03月07日):”
    傘下のシャフトがコンテスト不参加へ 2013年12月にフロリダ州で開かれた前回のDRCでは、NASAやカーネギーメロン大学、軍事用ロボットを開発するボストン・ダイナミクス(グーグルが買収済)を差し置いて、シャフトがダントツの1位となり、その技術力が大いに注目されました。”

「ピペド」 、2chから国会へ 

真島省三 日本共産党衆議院議員が、平成27年5月19日(火曜日)に行われた第189回国会 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第3号で質問に立ち、 日本の科学研究力を低下させている雇用不安、研究不正、研究教育体制の不備などさまざまな問題を取り上げました。その中で、匿名掲示板2chから生まれた「ピペド」という言葉を持ち出し、「ピペド」という言葉に象徴される日本のバイオ系研究室のブラック企業ぶりを指摘しました。

これは、大学院生たちがネット上で、まさにブラック企業のように働かされている状況を自虐的に称してピペット奴隷、その略語としてピペドと言ったのが、今ちょっとそういう関係の人たちの間で広がっているんです。

このピペドというのは、生命科学の必需品であるピペットという細長い形をした吸ったり出したりする道具をひたすら使って朝から晩まで実験をし続ける若手研究者のことを指しているということなんですね。

バイオ研究というのは非常に労働集約型で、その作業はなかなか機械化ができないという中で、ピペットでさまざまな試薬をまぜて、反応をさせて、細胞を培 養したりという工程が続きます。実験をすればするほど成果が上がっていく、そういう分野でもあるんですね。だから、教授に言われるがままに奴隷のように働 かされている。(第189回国会 平成27年5月19日 科学技術・イノベーション推進特別委員会  真島 省三 委員)

成果至上主義、劣悪な研究環境問題で政府をただす 真島議員 衆院科技特
日本共産党の真島省三衆院議員は5月19日、衆院科学技術特別委員会で理研STAP論­文不正の背景にある過度の競争的研究環境、成果至上主義をあおる競争的研究予算、任期­制研究者・ポスドク問題などについて政府をただしました。

10:41 (真島議員)ところでですね、これはちょっと質問通告しておりませんが、大臣にお聞きします。ピペドというのを御存じでしょうか、ピペド。御存じなければ、御存じないでいいんですけれども。ピペドという言葉があるんですが。
10:56 (山口国務大臣)ピペドというのは、何らかの省略の言葉、略語なんでしょうけれども、ちょっと今のところ聞き覚えはございません。

 

参考

  1. 第189回 国会 科学技術・イノベーション推進特別委員会 第3号(平成27年5月19日)(衆議院 会議録)
  2. 科学技術特別委員会 2015年5月19日 (火)(4時間13分)(衆議院TVインターネット審議中継ビデオライブラリ)
  3. 競争で研究力が低下 真島議員 政府の科学政策批判 (真島省三日本共産党衆議院議員ウェブサイト):”日本共産党の真島省三議員は5月19日の衆院科学技術・イノベーション特別委員会で、小泉内閣により競争的資金の重点配分や任期制など競争的政策が進められた以降、大学や研究機関に成果至上主義がもたらされている問題を取り上げました。”
  4. ピペドとは、分子生物学を専門とする大学院生やポスドクを揶揄した言葉である。 2ちゃんねるの生物板を発祥とするインターネットスラングであり、現在では各種のウェブコミュニティに浸透している。このスラングは、学会誌や全国紙、商業誌の漫画、新書などでも言及されており、一般社会においても認知が広まっている。 (ja.yourpedia.org

研究者のための”10個のシンプルな原則”集

Ten Simple Rules(10のシンプルな原則)は、プロの研究者を目指す人が遭遇する数々のチャレンジを乗り越えるためのコツを教えるガイド集です。PLOS Computational Biology誌のヒット企画。

博士号をとるために

研究者になるためには、大学院を受験して研究室に所属し、数年間、研究のトレーニングを受けることになります。指導教官とは師弟関係としての付き合いが一生続くことになるので、研究室選び、指導教官選びは親を選ぶのと同じくらいに重要です。研究者としての運命を決定付けてしまうラボ選びで失敗しない方法は?理想的な大学院生のあり方は?

Ten Simple Rules for Graduate Students 「大学院生のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Finishing Your PhD 「学位取得のための10個のシンプルな原則」

学会発表に必要なスキル

研究者にとって、発表能力を磨くことはとても大切。良いポスターの作り方や学会での口演をうまくこなすコツは?

Ten Simple Rules for a Good Poster Presentation 「ポスター発表を成功させるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Making Good Oral Presentations 「学会発表を成功させるための10個のシンプルな原則」

論文の書き方と通し方

論文はどうやって書けばいいのでしょうか?研究者として生きていくための最重要スキルにもかかわらず、誰もちゃんと教えてくれないという落とし穴にはまらないように。

Ten Simple Rules for Writing Research Papers 「研究論文を書くための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Better Figures 「論文の図作製のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple (Empirical) Rules for Writing Science 「科学論文を書くための10個のシンプルな経験則」

サブミッション(投稿)、リジェクト(却下)、リサブミッション(再投稿)、リビジョン(改訂)などを経て最終的に論文をアクセプト(受理)されるまでの道のりは、論文を書き上げる作業とはまた別の大変さがあります。途中で心が折れてしまわないために重要なことは?

Ten Simple Rules for Getting Published (日本語訳:『投稿した論文がリジェクトされてもへこたれないために~論文を出すための10個のシンプルな原則』

価値ある科学研究を行うために

科学に貢献するような優れた研究はどうしてこんなに少ないのでしょう?なぜ多くの研究結果はただ忘れ去られるだけなののでしょうか?この「10の原則」は計算機科学者リチャード・ハミングの講演内容“You and Your Research”(1986)をまとめたもの。

Ten Simple Rules for Doing Your Best Research, According to Hamming 「ハミングが説く、一流の研究をするためのシンプルな10原則」

論文発表したデータに再現性をもたせるために

生データは全て保存しておき、データ解析に用いた手法、スクリプト、手順なども全部記録し保存しておけば、第三者がデータ解析をやり直したとしても同じ結果が再現されるはずです。また、生データを全てインターネット上で公開して第三者が再利用可能な状態にすれば、またあらたな発見が生まれるかもしれません。データ捏造などの研究不正が起きる余地をなくすこともできます。

Ten Simple Rules for Reproducible Computational Research 「再現性のある計算機科学研究のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for the Care and Feeding of Scientific Data 「科学データを第三者に活用してもらうための10個のシンプルな原則」

ポスドク先のラボ選び

無事に博士号を取得した次に大きな選択となるのが、どこでポスドクをやるかです。その先、アカデミックポストが得られるかどうかは、ポスドク時代にどれだけの研究成果を出せたかにかかっているため、将来を見据えたうえで慎重に選ぶ必要があります。

ノーベル賞受賞者の多くはノーベル賞受賞者の研究室での研究経験があるという事実は、ラボ選びにおける見逃せないポイント。真核生物の遺伝子にはイントロンがあることを発見して1993年にノーベル医学・生理学賞を受賞した(フィリップ・シャープと共同受賞)イギリスの分子生物学者リチャード・ロバーツ博士のアドバイスにも耳を傾けてみましょう。

Ten Simple Rules for Selecting a Postdoctoral Position (Correction) 「ポスドク先の研究室を選ぶためのシンプルな原則10個」
Ten Simple Rules to Win a Nobel Prize 「ノーベル賞をとるためのシンプルな原則10個」

職を得るために

さて、ポスドクの修行時代を終えると、いよいよ職探し。アカデミアかインダストリーかという選択は、非常に大きな決断力を要します。博士号取得直後に民間に就職という選択もありますし、ポスドクまで経験してから民間に転ずるキャリアパスもあります。学生時代に製薬会社などでインターンシップを経験しておくのも職業選択における視野を広げるのに役立つでしょう。自分の人生がかかったジョブインタビュー(面接試験)を乗り切る方法は?

Ten Simple Rules for Approaching a New Job 「ジョブ獲得交渉を成功させるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Choosing between Industry and Academia 「インダストリーかアカデミアかを正しく選ぶための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Internship in a Pharmaceutical Company 「製薬企業でのインターシップを成功させるための10個のシンプルな原則」

研究費を獲得するために

お金がないと研究できません。研究グラント(研究費)を勝ち取る秘訣は何でしょうか?

Ten Simple Rules for Getting Grants 「グラント獲得のためのシンプルな原則10個」

教育と研究の両立

教育も、研究者の重要な職務。しかし、多くの場合、教育者になるための教育を受けていない研究者が大学の教員として教壇に立つことになります。授業の準備に膨大な時間をとられて大変ですが、研究とのバランスを取りながら優れた教育を行う秘訣は?

Ten Simple Rules To Combine Teaching and Research 「教育と研究を両立させるための10個のシンプルな原則」

研究者のお仕事

研究者がこなすべき仕事は、自分の論文を書くだけでなく、他人の論文を査読したり、レビュー論文を書いたり、学会でセッションの座長を務めたり、学会やワークショップの企画・運営を行うなど、キャリアアップするにつれていろいろと増えていきます。

Ten Simple Rules for Reviewers 「査読者のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Writing a Literature Review 「レビュー論文を書くための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Chairing a Scientific Session 「学会で座長の役を無事に果たすための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Organizing a Scientific Meeting 「研究集会を開催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Running Interactive Workshops 「インタラクティブなワークショップを開催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules to Achieve Conference Speaker Gender Balance 「学会講演者の男女比を適切にするための10個のシンプルな原則」

共同研究を成功させるコツ

研究は一人でやるよりも共同してやったほうが大きな成果が得られやすいもの。しかし、人と人との間にはいろいろな思惑の違いも生じます。また、分野が異なる研究者同士では話す言葉がお互いに理解できなくて、研究の話が噛みあわないということがしばしば起こります。

Ten Simple Rules for a Successful Collaboration 「共同研究を成功させるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for a Successful Cross-Disciplinary Collaboration 「異分野間での共同研究を成功させるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Cultivating Open Science and Collaborative R&D 「オープンサイエンスと協同研究開発の基盤づくりのための10個のシンプルな原則」

学び続ける研究者

研究者は、自分の仕事を深めるためにも、また仕事の幅を広げるためにも、一生勉強し続ける必要があります。コーセラ(coursera.com)などインターネット上の無料プログラムを利用すれば、大学レベルの内容を誰でも学ぶことができるという素晴らしい時代になりました。何歳であっても、何か新しいことを学び始めるのに遅過ぎるということはありません。

Ten Simple Rules for Lifelong Learning, According to Hamming 「ハミングが説く、一生涯賢く学び続けるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Online Learning 「オンライン学習活用のための10個のシンプルな原則」

知的財産権をいかに守るか

Ten Simple Rules to Protect Your Intellectual Property 「あなたの知的財産権を守るための10個のシンプルな原則」

研究者が経済的にも成功する方法

研究職は元来金銭的に恵まれていないものです。しかし、研究成果をお金に換える方法を学べば、経済的にも報われた人生に。

Ten Simple Rules To Commercialize Scientific Research 「科学研究の成果をお金にするための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Starting a Company 「研究者が起業するための10個のシンプルな原則」

研究者コミュニティや社会への貢献

研究者は研究者コミュニティの中で生活しています。コミュニティの一員として認められたという感覚はとても重要ですし、研究者がコミュニティのためにできることはたくさんあります。

Ten Simple Rules for Building and Maintaining a Scientific Reputation 「科学者としての評判を築き上げ保つための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Getting Ahead as a Computational Biologist in Academia 「計算生物学者としてアカデミアの世界で成功するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Developing a Short Bioinformatics Training Course 「バイオインフォマティクス短期トレーニングコースを開催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules of Live Tweeting at Scientific Conferences 「ツイッターで学会の実況中継をするための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Editing Wikipedia 「ウィキペディアを編集するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Getting Involved in Your Scientific Community 「自分の研究分野の科学コミュニティに参加するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for the Open Development of Scientific Software 「科学研究用ソフトウェアのオープンデベロップメントを行うための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Starting a Regional Student Group 「学生の地域ネットワークを立ち上げるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Getting Help from Online Scientific Communities 「オンライン科学コミュニティから有用な助言を得るための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Providing a Scientific Web Resource 「科学研究リソースをウェブ上で提供するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Organizing an Unconference 「アンカンファレンスを主催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Organizing a Virtual Conference—Anywhere 「バーチャルカンファレンスを主催するための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for a Community Computational Challenge
Ten Simple Rules for Teaching Bioinformatics at the High School Level 「高校生にバイオインフォマティクスを教えるための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Aspiring Scientists in a Low-Income Country 「低所得国で上を目指す研究者のための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Writing a PLOS Ten Simple Rules Article 「PLOS 10個のシンプルな原則を書くための10個のシンプルな原則」

計算生物学分野の話題

Ten Simple Rules for Effective Computational Research 「計算機科学的な研究を効果的に行うための10個のシンプルな原則」
Ten Simple Rules for Reducing Overoptimistic Reporting in Methodological Computational Research 「計算機科学的な研究による方法論の成果をあまりにも楽観的に報告してしまわないための10個のシンプルな原則」

 

参考

  1. Ten Simple Rules (PLOS Computational Biology)
  2. リチャード・W・ハミング 「研究にどう取り組むべきか」 ベル通信研究所セミナー 1986年3月7日 日本語訳(himazu archive 2.0)

 

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論文を出すための10個のシンプルな原則

あなたがこの世を去って長い年月が経ったとき、あなたの科学的遺産は、主として、あなたがこの世に書き残した論文とそれらの論文が放つインパクトです。(When you are long gone, your scientific legacy is, in large part, the literature you left behind and the impact it represents.) - フィリップ・E・ボーン

データを取り終え、論文を書き上げ、学術雑誌に投稿してアクセプト(受理)されてようやく仕事が一つ完結します。しかし、投稿してすぐアクセプトされることなど滅多になく、多くの場合最初にリジェクト(却下)を食らいます。何年間も心血を注いだ仕事が却下されれば、誰でもへこむもの。そこからアクセプトに持っていくところで、研究者としての力量やタフさが問われます。

では、この「論文を出す力」はどうすれば身につくのでしょうか?

若い研究者向けに行われた講演の内容に加筆してまとめた、「論文を出すためのシンプルな10原則」という記事が、以前、PLoS Computational Biology誌に掲載されました。一番大事なことは、自分の仕事をどれだけ客観的に見ることができるか。その記事Bourne PE (2005) Ten Simple Rules for Getting Published. PLoS Comput Biol 1(5): e57. doi:10.1371/journal.pcbi.0010057を以下に訳出しました。

ーーーー

目次

論文を出すためのシンプルな10原則

フィリップ・E・ボーン

原則1:たくさんの論文を読んで、他人の優れた仕事やダメな仕事から学びなさい

批評家になるのに早すぎるということはありません。ジャーナルクラブは、グループで論文の批評を行うものですが、そのような類の対話をする素晴らしい機会 です。毎日少なくとも論文2報を詳細に読み(あなたの専門分野だけでなく)、それらの論文のクオリティについて考えることも、役に立ちます。多読のもう一つの大きな効用ーそれは自分自身の仕事をよりよく客観視するのに役立つことです。コンピューターの画面の前やラボの実験ベンチで毎晩夜遅くまで過 ごしていると、自分の仕事が画期的なものだとあまりにも簡単に思い込んでしまいます。そうではない可能性がかなり高いのですが、あなたのメン ターも同じ罠にはまってしまう可能性があるため、原則2があります。

原則2:あなたが自分の仕事を客観的に捉えられるようになればなるほど、あなたの仕事は最終的により良いものになる。

悲しいかな、自分自身の仕事を客観的に捉えることができない科学者もいます。そういう人は決して一流の科学者にはなれないのです。エディター(編集者)やレビューアー(査読者)らの客観的な物の見方を早い時期に学びなさい。

原則3:良いエディターやレビューアーはあなたの仕事を客観的にみてくれます。

エディトリアルボード(編集委員会)のクオリティが、レビューの過程がどのようなものかを示す最初のヒントになります。自分が論文発表したいと思っているジャーナルの発行人欄を見てごらんなさい。一流のエディターは、レビューが一流であることを要求しそれを実現します。サブミット(投稿)する前に、エネルギーを注ぎ込んで原稿のクオリティを上げましょう。理想的なことを言えば、レビューはあなたの論文のクオリティを上げてくれるものなのです。しかし、もし根本的な欠陥があれば、レビューアーらはそんなアドバイスをしてくれないでしょう。

原則4:英語を使いこなして書くということができていないのなら、早めにレッスンを受けなさい。後々、非常に役に立ちます。

これは文法だけの問題ではなく、もっと重要なこととして、理解の問題です。優れた論文というものは、説明が巧みなので、全くの部外者にも複雑なア イデアが理解できるようになっているのです。最も高名な科学者はたいていの場合、最もロジカルで、簡潔な表現を用いながら、刺激に満ちたレクチャーをしますよね?このことは、彼らが書く論文にも当てはまります。英文雑誌に良い論文を出すこととは無関係の職にあなたが将来就くにして も、わかりやすい文章を書くことは有益です。良い英語でわかりやすく書かれていない投稿論文は、サイエンスが際立って良いわけでも無い限り、たいてい リジェクトされるか、うまくいっても広範囲に及ぶ編集作業が必要なため出版が遅れます。

原則5:リジェクションを受けとめられるようにしなさい。

客観的でいられないと、リジェクションを受け入れるのが辛いものになりますし、この先、リジェクトはされるものなのです。サイエンスの世界で生きる以上、リ ジェクトされることはいくらでもあります。一流のサイエティストであってもです。論文がリジェクトされたり大幅なリビジョンが要求された場合における正し い反応は、レビューアーの言うことによく耳を傾け、主観的ではなく客観的に対応することです。レビューはあなたの論文がどのようにジャッジされているのかを反映していますから、それを受け入れられるようになりましょう。もしレビューアーたちが全員一致で論文のクオリティが低いというのであれば、固執せず気持ちを切り替えましょう。ほとんど全ての場合、彼らの言い分が正しいのです。もしメジャーなリビジョンが要求されたのなら、そうしなさい。問題にされたポイントひとつひとつに対処したことをカバーレターに記し、修正箇所がはっきりとわかる形で原稿の本文を直しなさい。リビジョンが何回も必要になるのは、当事者全員にとって苦痛を伴うことであり、論文の発表を遅らせることにもなります。

原則6:何が良いサイエンスをつくるのかは明らかですー研究トピックの新しさ、関連する文献を包括的にカバーしていること、良いアイデア、強力な統計的裏付けを含む良い解析、示唆に富むディスカッション。何が良いサイエンスレポートをつくるのかは明らかですー良い構成、テーブルや図の適切な利用、 適度な長さ、想定した読者に向けて書くことー明らかなことを無視してはいけません。

初稿を自分で読み直すときはこれらの構成要素を客観的にみるようにし、自分のメンターには頼らないようにしなさい。その仕事で利害関係が生じない同僚に論文を読んでもらい、率直な意見を得るようにしなさい。そのとき、トピックと同じ分野で研究していない人を含めるようにしなさ い。

原則7:追求したいクエスチョンの着想を得たその日のうちに論文を書き始めなさい。

この原則は論文発表に重点を置きすぎだという人がいるかもしれないが、こうすれば研究の範囲が定まるし仮説駆動型サイエンスも容易になる。初めて論文を書く人は、知っていることをなんでもかんでも論文に詰め込もうとしがちです。あなたが書いた学位論文はなんでもかんでも詰め込む場所でした。あなたの発表論文は簡潔で、最低限の文字数で最大限の情報を伝えなければなりません。著者へのガイドをよく読んでそれに従いなさい。エ ディターもレビューアーもそうします。研究を進めながらきちんと文献目録のデータベースを管理して、その中の論文を読みなさい。

原則8:研究者のキャリアの早い段階でレビューアーになりなさい

他人の論文をレビューすることは、より良い論文を書く助けになります。手始めに、あなたのメンターと共同作業しなさい;メンターがレビュー中の論文をもらって、レビューの最初のバージョンを作りなさい(たいていのメンターは喜んでそうさせてくれるはずです)。それから、メンターが提出する最終版のレビューを読んでみなさい。可能であれば、本誌では可能ですが、他のレビューアーが書いたレビューも読んでみなさい。そうすることで、自分が書いたレビューのクオリティを評価する重要な能力が身につきますし、うまくいけば、自分自身の仕事をより一層客観的にみることができるようになります。また、あなたはレビューのプロセスやレビューのクオリティを理解することができるようになります。このような理解は、自分の論文をどのジャーナルに出すかを決めるうえでも重要です。

原則9:論文をどこに出したいのかを早い段階で決めなさい。

この原則で、あなたが行っている仕事の形や細かさの程度や新しさが決まります。多くのジャーナルには投稿前問い合わせの制度がありますので、それを使いましょう。論文を書く前であっても、仕事の斬新さはどれくらいあるのか、また、あるジャーナルが興味を持ってくれそうかという感覚を得なさい。

原則10:クオリティが全てです。

質の高いジャーナルに論文を一本出すことのほうが、何本かの論文を質の低いジャーナルに出すよりも良いのです。論文のインパクトの有無を隠すことはますます難しくなってきています。グーグルスカラーやISIウェブ・オブ・サイエンスなどのツールがテニュア審査委員会や雇用者によって利用され、あなたの仕事のクオリティの指標がはじき出されています。かつてはジャーナルの名前だけが指標として使われていました。現在のデジタル世界では、誰にでも、ある論文にインパクトがないかどうか分かってしまいます。インパクトファクターが高いジャーナルに論文を発表するように努力しなさ い。そのようなジャーナルにもしアクセプトされれば、あなたの論文も高いインパクトを持つことになるでしょう。

あなたが世を去って長い年月が経ったとき、あなたの科学的な遺産の大部分が何かといえば、それは書き残した論文とそれらの論文の持つインパクトということになります。未来の世代の科学者が賞賛するようなものをあなたが遺せるように、これらの10個のシンプルな原則がお役に立てば幸いです。

 

Ten Simple Rules for Getting Published

Philip E Bourne

Citation: Bourne PE (2005) Ten Simple Rules for Getting Published. PLoS Comput Biol 1(5): e57. doi:10.1371/journal.pcbi.0010057

Copyright: © 2005 Philip E. Bourne. This is an open-access article distributed under the terms of the Creative Commons Attribution License, which permits unrestricted use, distribution, and reproduction in any medium, provided the original author and source are properly credited.

The student council (http://www.iscbsc.org/) of the International Society for Computational Biology asked me to present my thoughts on getting published in the field of computational biology at the Intelligent Systems in Molecular Biology conference held in Detroit in late June of 2005. Close to 200 bright young souls (and a few not so young) crammed into a small room for what proved to be a wonderful interchange among a group of whom approximately one-half had yet to publish their first paper. The advice I gave that day I have modified and present as ten rules for getting published.

Rule 1: Read many papers, and learn from both the good and the bad work of others.

It is never too early to become a critic. Journal clubs, where you critique a paper as a group, are excellent for having this kind of dialogue. Reading at least two papers a day in detail (not just in your area of research) and thinking about their quality will also help. Being well read has another potential major benefit—it facilitates a more objective view of one’s own work. It is too easy after many late nights spent in front of a computer screen and/or laboratory bench to convince yourself that your work is the best invention since sliced bread. More than likely it is not, and your mentor is prone to falling into the same trap, hence rule 2.

Rule 2: The more objective you can be about your work, the better that work will ultimately become.

Alas, some scientists will never be objective about their own work, and will never make the best scientists—learn objectivity early, the editors and reviewers have.

Rule 3: Good editors and reviewers will be objective about your work.

The quality of the editorial board is an early indicator of the review process. Look at the masthead of the journal in which you plan to publish. Outstanding editors demand and get outstanding reviews. Put your energy into improving the quality of the manuscript before submission. Ideally, the reviews will improve your paper. But they will not get to imparting that advice if there are fundamental flaws.

Rule 4: If you do not write well in the English language, take lessons early; it will be invaluable later.

This is not just about grammar, but more importantly comprehension. The best papers are those in which complex ideas are expressed in a way that those who are less than immersed in the field can understand. Have you noticed that the most renowned scientists often give the most logical and simply stated yet stimulating lectures? This extends to their written work as well. Note that writing clearly is valuable, even if your ultimate career does not hinge on producing good scientific papers in English language journals. Submitted papers that are not clearly written in good English, unless the science is truly outstanding, are often rejected or at best slow to publish since they require extensive copyediting.

Rule 5: Learn to live with rejection.

A failure to be objective can make rejection harder to take, and you will be rejected. Scientific careers are full of rejection, even for the best scientists. The correct response to a paper being rejected or requiring major revision is to listen to the reviewers and respond in an objective, not subjective, manner. Reviews reflect how your paper is being judged—learn to live with it. If reviewers are unanimous about the poor quality of the paper, move on—in virtually all cases, they are right. If they request a major revision, do it and address every point they raise both in your cover letter and through obvious revisions to the text. Multiple rounds of revision are painful for all those concerned and slow the publishing process.

Rule 6: The ingredients of good science are obvious—novelty of research topic, comprehensive coverage of the relevant literature, good data, good analysis including strong statistical support, and a thought-provoking discussion. The ingredients of good science reporting are obvious—good organization, the appropriate use of tables and figures, the right length, writing to the intended audience—do not ignore the obvious.

Be objective about these ingredients when you review the first draft, and do not rely on your mentor. Get a candid opinion by having the paper read by colleagues without a vested interest in the work, including those not directly involved in the topic area.

Rule 7: Start writing the paper the day you have the idea of what questions to pursue.

Some would argue that this places too much emphasis on publishing, but it could also be argued that it helps define scope and facilitates hypothesis-driven science. The temptation of novice authors is to try to include everything they know in a paper. Your thesis is/was your kitchen sink. Your papers should be concise, and impart as much information as possible in the least number of words. Be familiar with the guide to authors and follow it, the editors and reviewers do. Maintain a good bibliographic database as you go, and read the papers in it.

Rule 8: Become a reviewer early in your career.

Reviewing other papers will help you write better papers. To start, work with your mentors; have them give you papers they are reviewing and do the first cut at the review (most mentors will be happy to do this). Then, go through the final review that gets sent in by your mentor, and where allowed, as is true of this journal, look at the reviews others have written. This will provide an important perspective on the quality of your reviews and, hopefully, allow you to see your own work in a more objective way. You will also come to understand the review process and the quality of reviews, which is an important ingredient in deciding where to send your paper.

Rule 9: Decide early on where to try to publish your paper.

This will define the form and level of detail and assumed novelty of the work you are doing. Many journals have a presubmission enquiry system available—use it. Even before the paper is written, get a sense of the novelty of the work, and whether a specific journal will be interested.

Rule 10: Quality is everything.

It is better to publish one paper in a quality journal than multiple papers in lesser journals. Increasingly, it is harder to hide the impact of your papers; tools like Google Scholar and the ISI Web of Science are being used by tenure committees and employers to define metrics for the quality of your work. It used to be that just the journal name was used as a metric. In the digital world, everyone knows if a paper has little impact. Try to publish in journals that have high impact factors; chances are your paper will have high impact, too, if accepted.

When you are long gone, your scientific legacy is, in large part, the literature you left behind and the impact it represents. I hope these ten simple rules can help you leave behind something future generations of scientists will admire.

 

参考

  1. Bourne PE (2005) Ten Simple Rules for Getting Published. PLoS Comput Biol 1(5): e57. doi:10.1371/journal.pcbi.0010057
  2. プロフェッショナルな科学研究者になるためのキャリア形成ガイド:「10個のシンプルな原則」集

 

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グーグル年次開発者会議 Google I/O 2015 (The Annual Developers Conference) が2015年5月28日、29日の2日間サンフランシスコのモスコーンセンター(Moscone Center)で開催される

Google I/O 2015 – Keynote (2:08:27)

参考

  1. Google I/O 2015: “Google I/O is for developers – the creative coders who are building what’s next. Each year, we explore the latest in tech, mobile & beyond.”
  2. Google I/O 2015基調講演で見えた熾烈なAppleへの対抗心 (週刊アスキー2015年05月30日):”
    グーグルは5月28、29日の2日間、開発者向けイベント『Google I/O 2015』を開催した。… Android OSの次期バージョン“M”が披露されるなど、注目の発表がいくつかあった。… 今回特に驚かされたのが『Googleフォト』として、アルバムサービスを強化してきた点だ。… IoT機器向けのOSとなる『Brillo』やそれらを結ぶ『WEAVE』を投入するなど、着々とIoT分野の開拓にも余念がない。… 非接触のモバイル決済サービス『Android Pay』も開始。…”
  3. Googleは勝負所をさらに強化した – 私はこう見る「Google I/O 2015」(小山安博編)(マイナビニュース 2015/05/30):”米Googleの開発者向けカンファレンス「Google I/O 2015」の基調講演では、次期Androidのプレビュー版「M Developer Preview」をはじめ、様々なトピックスが出た。”
  4. 「Google I/O 2015」開催 – iOSを強く意識した基調講演に(マイナビーニュース2015/05/29):”米西海岸時間の28日、米サンフランシスコでGoogleの開発者向けカンファレンス「Google I/O 2015」が開催され、Sundar Pichai氏などによる基調講演が行われた。ここでは、モバイル関連を中心に基調講演での発表内容についてレポートしよう。”
  5. Google I/O 2015開幕–「Android M」開発者プレビューやIoTプラットフォームなど発表 (CNET Japan 2015/05/29):”Googleの開発者会議「Google I/O」が米国時間5月28日、サンフランシスコで開幕した。…次期モバイルOS「Android M」の開発者プレビューが発表されるとともに、決済プラットフォーム「Android Pay」をはじめとする搭載機能の詳細が明らかになった。またその他にも新サービス「Google Photos」やIoT用プラットフォーム「Brillo」が発表されたほか、「Cardboard」などの既存製品のアップデートなどが明らかになった。 “
  6. グーグルが明かしたワクワク5つの近未来 開発者会議の基調講演を読み解く(松村太郎/東洋経済ONLINE 2015年05月29日)
  7. io2015 (techcrunch.com)
  8. Google I/O 2015 Wrap-Up: Bangs and Whimpers (SLASH GEAR, May 30, 2015)
  9. 「Android M」、指紋認証技術を搭載 (CNET|Japan 2015/05/29):”1年以上前からうわさされていた指紋センサの追加は、Googleと「Android」にとって重要なステップとなる。Microsoft、Apple、サムスンなどは、すでに指紋認証技術を自社製品に取り入れているからだ。”
  10. Google Photosハンズオン:怖いくらい賢い(GIZMODO日本版 2015.05.30):”Google I/Oで、新たな写真管理サービスGoogle Photosが発表されました。米Gizmodoのマリオ・アギラー記者とブレント・ローズ記者によるファーストインプレッションは上々のようです”
  11. Google、IoTプラットフォームProject Brillo発表。Android派生の超軽量OS(engadget日本版 2015年05月29日):”Project Brillo はPCやスマートフォンなど従来の『コンピュータ』だけでなく、自動車からドアロックまであらゆるものをスマートにつなぐ IoT (Internet of Things)、もののインターネット向けプラットフォーム。”
  12.  米グーグル、「スマートジーンズ」開発 リーバイスと(日本経済新聞 2015/5/30):”サンフランシスコ市内で開いた開発者会議「グーグルI/O」で披露したデモでは、タッチパッドの機能を持たせた布地の一部を指でたたいてスマホの音楽を再生したり、上下になぞって音量を操作したりしてみせた。”

ブラック企業の構造と研究者の雇用不安

先日、京大の山中伸弥教授が、「京大iPS細胞研究所は、これが民間企業ならすごいブラック企業」という表現をしたそうです(記事)。しかし、これは決して京都大学のiPS細胞研究所に限った話ではありません。研究者の雇用不安は、現在の日本の科学研究全体を覆う非常に深刻な問題です。

ブラック企業とは、定義にもよりますが、労働者を劣悪な労働条件で酷使し、峻烈な選別を行い、非情に使い捨て、組織だけが成長するような会社のことです(参照:コトバンク)、これはそっくりそのまま今の研究の世界にも当てはます。

研究室では、任期付きの研究者は少しでも早く成果を出さないといけないので必然的に長時間労働を強いられます。ポスドクの報酬は年齢や学歴からは一般の人が想像できないくらいに低く、時給換算したら国が法で定める最低賃金並みになります。ポストの数があまりにも少ないため、ある程度の成果を挙げたとして もそう簡単に定職は見つかりません。任期が切れたり財源が途切れれば、ボスが温情を施したくても研究者はラボを去らざるをえません。しかし買い手市場のおかげで研究室はまた新たな労働力を調達して存続し発展できます。現在の日本の科学研究において、研究室というのは構造的にブラック企業そのものなのです。

ブラック企業の場合は経営者の人格や経営姿勢が問われるところですが、研究室の場合は教授の人柄が良く部下思いであったとしても、現在の研究制度が抱えるこの構造的問題をどうすることもできません。

日本の科学技術政策に関する提言の中では、「至高の科学力で世界に先んじる」とか、 「世界的な卓越した教育研究拠点の形成」などと非常に耳当たりの良いフレーズが飛び交っていますが、人生設計もままならずに不安に苛まされているポスドクや任期付き教員ばかりという暗澹たる研究の現場で、そのような崇高な目標が本当に実現し得るのでしょうか?

”ポスドク等の約40%の年収は400 万円以下である。また半数以上が退職金や住宅手当の支給を受けられない。”

”任期制であることが結婚、子どもを持つこと、住宅購入などに影響すると考えている人の割合は70%もしくはそれ以上”

“1週間の労働時間は平均54.8 時間、40%以上が60 時間を超え、100 時間を超える人もいる”

”13%程度が自身もしくは配偶者の実家から経済的援助をうけている。年齢別では41 歳以上の人、また子どもの有無別では子どもがいる人が実家から援助を受けている率が高く、…”

“給与の財源は文部科学省研究費助成金( 26% )、その他の競争的資金(22%)、戦略的創造研究推進事業とグローバルCOE プログラム(それぞれ8%)が多く、上司の研究費による雇用が中心である”

“78%の人が次の職を探している。…大学や研究所での求人が少ないこと、公募していても形式的で内部昇格が多いことを危惧している。” (引用元:生命系における博士研究員(ポスドク)ならびに任期制助教及び任期制助手等の現状と課題 平成23年 日本学術会議題)

「世界最高水準の卓越した研究」の担い手の多くが、1年契約で年収が300万円台のポスドク(博士研究員)や時給1000円程度のラボテクニシャン(技術員) だったりするのが実際のところです(人件費の財源や機関にもよる)。しかも、彼らは成果を挙げても、どれほど優れた実験技術を持っていても、何歳になっても報酬は増えず生活の保証もありませ ん。せめて、能力や成果に応じてパーマネントの職を得る機会や、昇給の機会を与えるような人事制度へ早急に変えない限り、日本の科学研究は国際的な競争力を失っていくでしょう。

“ポスドクを複数回繰り返す35 才以上のポスドク(シニアポスドク)が2012 年の調査で全体の37.1%に達しています” (引用元:生科連からの<重要なお願い> 生物科学学会連合 ポスドク問題検討委員会

「酷使」や「使い捨て」というのは認識の問題もありますが、日夜研究に勤しんで、(少なくともボスがその地位に安泰で居られる程度の)論文成果(インパクトファクター5~10)を挙げ、ラボに対してもサイエンスにおいても貢献した研究者が、研究を辞めて教育職や研究事務に転向したり、研究や教育とは全く無関係な職に転じたり、最悪の場合完全に失業するしかないというのが、日本の科学研究の現状です。成果が出ない人間を切り捨てるブラック企業。成果が出ている人間をも切り捨てる研究所。現在の日本の研究社会は、ある意味、ブラック企業よりも更にブラックかもしれません。

”「お前が研究者をやめてくれて心底ほっとした」
母親もそんな言葉で大卒初任給ほどの待遇で居場所を探してきた息子の転身を心から喜んでくれ、…”
ポスドクからポスドクへ 円城塔 日本物理学会誌 Vol.263, No.7, 2008  PDF

 

 

参考

  1. 提言 生命系における博士研究員(ポスドク)ならびに任期制助教及び任期制助手等の現状と課題 平成23年(2011年)9月29日 日本学術会議 基礎医学委員会 (PDF55ページ)
  2. 生科連からの<重要なお願い> 生物科学学会連合より行政(国、地方)、企業、大学・研究機関、および研究者コミュニティーに対するお願い今、次世代を担う若手研究者が窮地に陥っています。ポスドク(任期付博士研究員)の雇用促進と研究者育成に是非ご協力ください。平成27 年4 月(第二版)生物科学学会連合 ポスドク問題検討委員会(PDF16ページ)
  3. 理研の松本理事長、人事制度の一本化・英語の公用語化などの改革案を発表 – 「他の研究機関の手本となるようなモデルを構築したい」(マイナビニュース 2015/05/25):”2つ目の柱は「至高の科学力で世界に先んじて新たな研究開発成果を創出する」となっている。”
  4. 地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省):平成26年度東京都最低賃金時間額888円
  5. 平成19 年度文部科学省科学技術振興調整費 女性研究者支援モデル育成事業「研究者養成のための男女平等プラン」成果 2007-1 研究者養成のための男女平等プランに関する調査(3)若手研究者の現状と支援ニーズ調査報告書(聞き取り調査編)(PDF194ページ):”具体的な数字を挙げてくれた例によれば、手取りで毎月18 万円程度ということであった(J 助手・20 代・男)。なお規程上は、早稲田大学全学共通で、助手には年間3 ヶ月分の賞与が与えられているとのことである。したがってJ さんの年間所得は270 万円前後と推定される。”
  6. アカデミックの世界は理不尽か? (Chem-Station)
  7. 作家の読書道 第101回:円城塔さん (インタビュー記事):”大学の状況って2000年を過ぎたあたりからものすごく変わって、これからどうなるかも全然わからない。下手をすると、各地を転々としながら、だいたい2年から5年任期の中で最後の1年は次の行き先を探さなくちゃいけない。定年が60歳だとすると、あと30年間くらい数年刻みで転々とする生活をやっていくのはさすがに無理だと思ったんです。”
  8. ポスドクからポスドクへ 円城塔 (日本物理学会誌 Vol.263, No.7, 2008  PDF)
  9. すごいことになってる  (アメリカポスドクの歩き方 2012/04/23): “十分な業績と能力があって人柄もよいポスドクが特任助教という名のポスドクへ平行移動していたり、同じように十分な業績と能力と人柄のよい任期付助教がそのまま任期付助教として平行移動している。最近多い。これはびっくりした。本当にびっくりと同時に本当に日本の科学の停滞がはじまってることを実感した。…Nature級の論文をもつ助教が任期切れで他へうつるのにほとんど論文のない准教授はそのままそのラボに残る。”
  10. STAP問題が照らし出した日本の医学生物学研究の構造的問題(小野昌弘のブログ Masahiro Ono’s blog 2014年04月02日):”彼らには土日なし、夜11時まで、というのが標準的な長時間労働が強制されるが、研究者という名目だけで、自分の研究を教授の許可なしには自由に発表できない。そして老いた教授たちがいつまでも職に居座っているから、若者が大学・研究機関で定職に就ける見込みは殆ど無い。彼らはいつまでも下働きとしてこき使われている。そして彼ら若者を「指導」している教授たち自身がどれだけ最新科学を理解しているかは疑問なのだから、当然その下についている大学院生・研究員たちは、「ピペド」以上の存在にはなれない。しかも定職がない・学位がかかっているといった弱みにつけこまれて日常的に教授から理不尽な圧力をかけられる。こうした異常な事態が普通に見られる。”

 

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CiRA これが民間企業ならすごいブラック企業

2015年5月23日に橿原ロイヤルホテル(奈良県橿原市)で奈良県立医科大学開学70周年記念式典が執り行われ、京都大の山中伸弥教授が記念講演を行いました。その中で所長を務める京都大iPS細胞研究所(CiRA)について、CiRAの約300人の教職員のうち9割が不安定な有期雇用であることから、「これが民間企業ならすごいブラック企業。何とかしないといけない」と、研究者の雇用不安にも言及したそうです。

 

参考

  1. iPS細胞研究所の9割有期雇用 山中教授「民間企業ならすごいブラック企業。何とかしないと」 奈良で講演産経WEST 2015.5.24):”一方で、所長を務める京都大iPS細胞研究所(CiRA)については、約300人の教職員のうち9割が不安定な有期雇用であることから、「これが民間企業ならすごいブラック企業。何とかしないといけない」と指摘。”
  2. 開学70周年記念式典を挙行しました(奈良県立医科大学 2015年5月27日):”記念講演 細井理事長・学長と古家理事(附属病院長)が座長となり、山中伸弥京都大学iPS細胞研究所所長・教授を講師にお迎えし、iPS細胞が移植治療だけでなく難病治療薬の開発にも重要な役割を果たし始めている等「iPS細胞研究の現状と医療応用に向けた取り組み」について、ご講演いただきました。”

 

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痕跡細胞からの記憶想起にシナプス増強は不要

逆行性健忘においても、記憶は痕跡細胞の中に保持されていることをMITの利根川研究室がマウスの実験で明らかにし、サイエンス誌に発表しました。論文タイトルはEngram cells retain memory under retrograde amnesia。

マウスを小箱に入れ、弱い電気刺激を与えて小箱の環境が怖いことを記憶させました。通常、こうした体験をさせた翌日に、マウスを同じ小箱に置くと怖い体験を思い出してマウスは“すくみ”ます。しかし、マウスが小箱は怖いと記憶した直後に、シナプス増強が起こらないようにする薬剤を与えると、マウスは怖い体験の記憶を失って、同じ小箱に入れられてもすくみませんでした。

ところが、翌日、怖い体験をした小箱とは別の小箱に同じマウスを入れ、怖い体験の記憶痕跡を人工的に活性化したところ、記憶を失ったはずのマウスがすくみました。これは、シナプス増強がなくても記憶は痕跡細胞群の中に直接、保存されていることを意味します。理化学研究所60秒でわかるプレスリリースより)

論文著者は、Tomás J. Ryan, Dheeraj S. Roy, Michele Pignatelli, Autumn Arons, Susumu Tonegawaで、最初の3人に関してはcontributed equally to this workとのことです。

Tonegawa Lab Members (利根川研究室ラボメンバー The RIKEN Brain Science Institute and the Picower Institute for Learning and Memory at MIT)

参考

    1. Engram cells retain memory under retrograde amnesia. Science 29 May 2015: Vol. 348 no. 6238 pp. 1007-1013 DOI: 10.1126/science.aaa5542 (Sciencemag.org)
    2. 記憶痕跡回路の中に記憶が蓄えられる-神経細胞同士のつながりの強化は記憶の想起には不要- (理化学研究所 2015年5月29日 60秒でわかるプレスリリース):より詳細な報道発表資料
    3. 逆行性健忘:発症前の過去のことがらを思い出すことができなくなること。外傷性脳損傷や認知症で発症することが多い。(理研プレスリリース補足説明
    4. 思い出せないけど…脳には記憶残る 理研がマウスで実験(朝日新聞デジタル 2015年5月29日):”認知症などで過去を思い出せないのは、記憶が失われたのではなく、残っているのに取り出せないだけ――。そんな可能性を示すマウス実験の成果を、理化学研究所のグループが29日付米科学誌サイエンスに発表する。”

日本の科学技術イノベーション総合戦略

新聞報道によると、日本政府は2015年5月28日、国の研究開発の指針となる今年の「科学技術イノベーション総合戦略」の原案を総合科学技術・イノベーション会議の会合で示しました。

参考

  1. 2015年(平成27年)5月28日 第9回基本計画専門調査会 (木)14:00~16:00 中央合同庁舎8号館6階 623会議室 配布資料  資料1第5期科学技術基本計画に向けた中間取りまとめ(案)(PDF28ページ)、資料2今後の予定について、資料3第8回基本計画専門調査会議事録(案)
  2. 総合科学技術・イノベーション会議(Council for Science, Technology and Innovation):総合科学技術・イノベーション会議は、内閣総理大臣、科学技術政策担当大臣のリーダーシップの下、各省より一段高い立場から、総合的・基本的な科学技術・イノベーション政策の企画立案及び総合調整を行うことを目的とした「重要政策に関する会議」の一つです。
  3. 科学技術イノベーション総合戦略2015構成(案)(PDF1ページ)
  4. CRDS-FY2014-FR-01 研究開発の俯瞰報告書 主要国の研究開発戦略(2015年)(PDF191ページ)
  5. 科学技術:おもてなしシステムを重点課題に 政府(毎日新聞 2015年05月28日):”2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、多言語翻訳できるロボットの開発や、バスと信号機が通信して定時運行を可能にする「次世代都市交通システム」の実用化など、観光客のための「おもてなしシステム」構築を、重点課題として掲げた。”
  6. 自動運転車など科技戦略案提示 政府、16年度予算から振り分け(日本経済新聞 2015/5/28):”年間約4.5兆円で推移する科学技術関係予算を、2016年度予算から自動運転車や農作業の自動化といった重点分野に振り分ける。”
  7. 科学技術イノベーション総合戦略2014 ~未来創造に向けたイノベーションの懸け橋~ 平成26年6月24日 閣 議 (PDF82ページ)

学振 申請書の書き方と面接対策

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ネットで公開されている学振(日本学術振興会特別研究員)申請書の書き方ガイド・面接対策まとめ

心の準備

学術振興会特別研究員の審査方針に、「学術の将来を担う優れた研究者となることが十分期待できること」とあります。ですから、「私は、学術の将来を担う優れた研究者になります。」と公言する覚悟をまず持ちましょう。この公約を表現したものが学振申請書になります。

採用申請は、たかが10ページ程度の文章ですが、 書く精神的、肉体的負担は大きく、私も胃痛を生まれて初めて経験しました 「私は、誰よりも優秀なので、お金をもらうべきである」ぐらいの不遜さで書いた方が、個人的に採用されやすいと思っています( ω ) (めざせ学振!! かんたん特別研究員DC1採用申請の書き方 (文系院生向けです。) オニテンの読書会 2017-02-08

トップレベルの大学や研究所で研究職を取ろうと思ったら、大学院での目標を単に修士号の取得、博士号の取得に設定していてはだめです。 修士のうちにジャーナルに査読論文を出版して早めに学振をとり、博士課程では自力で論文を最低でも数本は出版するぐらいの心構えでなくてはそういうポジションは狙えません。 博士号などは、研究者にとって自動車免許程度のものであり、博士合格基準をはるかに上回る成果を挙げて博士号など「おまけ」でもらう、というレベルでないと厳しいでしょう。…学振になるべく早く採用されることが研究者として生き残っていく上で重要なポイントです。戸谷研 学生心得

不採用になったのは、君の存在性が否定されたからではないよ。(クマムシさんからの学振アドバイス

学振に落ちる人のほとんどは、トップを目指す覚悟が足りません。… 『うちの大学からの採用者なんてほとんど居ない』と嘆くあなたは、東大の、MITの院生にも負けない自信を持っていますか?(学振DC1を本気で狙うためにすべき4つのこと はてな匿名ダイアリー 2009-01-20)

【学振・都市伝説】特に学振DC1について、投稿論文業績、指導教員の知名度、大学のレベルが、採用の基準に関わるという噂を聞く。これは明らかに嘘で、投稿論文なし、知名度の低い指導教員、東大京大ではないが、DC1で採択された人を沢山知っている。そんなM2の皆さんは、悲観する必要はない。(@Markchloroさんによる学振書類書き方 まとめ

 

学振申請書の書き方

心構えから具体的な細かい書き方まで、網羅的でバランスの良いアドバイス集がネット上に多数あります。

学振特別研究員になるために~2018年度申請版  東京工業大学で開催された 日本学術振興会特別研究員 公募にかかる学内説明会 (2017年3月9日) での講演資料 (講師は『学振申請書の書き方とコツ DC/PD獲得を目指す若者へ』(講談社 2016年)の著者)

学振申請書を磨き上げる11のポイント [文章編・前編] 日本最大の化学ポータルサイト Chem-Station 2013/5/8 一般的な話題, 化学者のつぶやき 学振, 申請書, 科研費 投稿者: cosine

学振申請書を磨き上げる11のポイント [文章編・後編] 日本最大の化学ポータルサイト Chem-Station 2013/5/9 一般的な話題, 化学者のつぶやき 学振, 申請書, 科研費 投稿者: cosine

採択される申請書は申請者の抑えきれない情熱が文字に置き換えられたものである。もし申請書にイージーなミスが発見されたとすれば、申請者は書類を読み返す手間さえ惜しんだのだと、その程度の情熱しかなかったのだと冷徹な評価が下されてしまうだろう。学振に通るための5つのポイント 日本バイオロギング研究会の会報に寄稿した大学院生向けの文章 2013年5月2日

日本学術振興会 特別研究員(PD)に採用されるための申請書の書き方とその考察 Published on Mar 12, 2016 2016年3月12日に若手の会で発表した時に用いたスライド

博士課程で特別研究員(学振)として活躍するために U-runner’s View April 23 [Mon], 2012, 23:59

 

どう審査されるかの理解

採点基準と採点方法がわかると、どう書いたらいいかわからないという悩みが解消します。採点のポイントに即して書けば良いのですから。

日本学術振興会特別研究員申請対策説明会「審査について」京都大学 研究推進部研究推進課研究助成掛 平成29年3月22日(PDF) K.U.RESEARCH 京都大学研究支援 日本学術振興会特別研究員(DC・PD・RPD・海外特別研究員

 

一貫性を持たせること

「現在までの研究状況」と、「これからの研究計画」が統一的な学理の中で、一貫した流れになると良いです。(あしたからがんばる ―椀屋本舗 December 24, 2012 学振に2回落ちて3回目で通った話

最初から最後までぶれずに一本の筋を通すこと(PDF 申請書類作成にあたり注意した点 2013/4/5 2014年度(平成26年度)日本学術振興会特別研究員応募に関する説明会

書類はひとつの物語になっていなければならない。物語が「自分語り」でも「研究分野史」でもなく、自分の研究が後世から見たときにちゃんと歴史的物語になることを想定して、その筋道をすっと通してあれば、読み手はおもしろく読めるはずだ。【理想論】(@rhetoricoさんによる【学振書類】の書き方  togetter >人文 2013年4月20日

 

読める日本語で書くこと

日本語が危ういレベルの人は、これを良い機会と捉えて、国語力をもっと上げましょう。作文技術を習得するための本が多数出版されています。

ひとりの審査員が何人分もの申請書をみるので、審査員によっては誤字脱字、常体敬体、その他文章の体裁に乱れがあるもの、一言でいうと読みにくいものは中身を確認することなく切り捨てられる可能性がある。企画書などでも同じだと思うが、人に読んでもらうレベルに達していない文章はアカン、ということです。(学振とかの申請書の書き方について書いてみる Beyond the Silence Sound of Science 2016-03-21)

 

人に見せてもらうこと

百聞は一見に如かず。実例を見ると、「そう書けばいいのか!」ということが簡単にわかります。

同じ研究室ですでに学振を もらっている人がいたら、その人の研究計画書は絶対に勉強になるので、参考にするにせよしないにせよ、もらって見てみましょう。(学振取るまで(NAIST 版)

自分の申請書を書き上げる前にやるべきことがあります。… 一度書き上げてしまった申請書は、質が悪くても、自分の目には良い申請書に映ってしまいます。1. 学振に採用された人の申請書を集める(先輩から) 2. 学振に採用された人の申請書を集める(Webから) 3. 集めた申請書を採点する (学振特別研究員 申請書(DC1/DC2/PD)の書き方:審査員視点を忘れるな Sizzleがはしる 2016-03-24 )

この申請書,決してひとりで書くものではないんですね.… どんなに意気込んで「自分だけで!」なんて思っても,先生・先輩方の書く科研等の申請書に勝てるはずがありません.研究のアピール方法,書類の見易さ,図の使い方などなど...これは実際に聞いてみないと分かりません.近くにいる先生,学会などでお世話になっている先輩等,様々な人から情報を集めてください.(MINEHIROの日本学術振興会特別研究員DC1への道 ~申請書作成編~ 帯広畜産大学 環境微生物学研究室 2014/2/14

過去の申請書資料を学内者限定で閲覧できる大学もあるようです(京大)。

 

人に読んでもらうこと

自分で何回読み返しても、誤字脱字、論理のギャップや矛盾、説明の過不足、冗長さや無駄な語句、読みにくさ、レイアウトの悪さ、その他細かい点、根本的な考え違いなどになかなか気づけないものです。

指導教官とのやりとりだけだと、どうしても視野が狭くなって専門性が強くなりがちなので、それ以外の人に読んでもらうのも大事だと思います。(学振の申請書を書く時に気をつけたこと

私の場合は、初めて他の人(ラボ出身の先輩)に申請書を読んでもらいました。自分では見落としていた思いがけないポイントを多数指摘してもらって、わかりやすい申請書になったと思います。今回通ったのはこれが一番でかかったのでは、と個人的には思っています。(学振の申請書を書く時に気をつけたこと 酵母研究者の長くて短い一日 2011年3月 3日

申請書を交換できる友人を持とう(一番重要)◦ひとりよがりで書き上げてうまくいく人は少ない。◦恥ずかしがらずに人に見せる(学振&科研費申請書で気をつけたこと EVERNOTE更新日 2017/05/01

【学振申請書・大前提】学振に採用された経験のある人と、知り合いになれるかどうかが、採用の為の最大の秘訣である。そして、いろいろアドバイスをもらい、コメントしてもらう事が大切。(@Markchloro さんによる学振書類書き方のまとめ togetter 2013年5月7日

自分の周りには読んでくれそうな人がいないからといって諦めないでください。真剣さと覚悟を持って頼めば、いままでほとんど話したことがなかった先輩、先生も喜んで手助けしてくれるはずです。

 

わかりやすく書くこと

わかりやすい申請書を書ける人は、肝心なことが何かをよく考え抜いていて、論理もよく整理できていることが多い。([学振]申請書と論文の違い

何も知らない人に研究内容を説明する文章を作ります。(学振DCを取る方法(僕の場合) http://www.oishi.info.waseda.ac.jp/~takayasu/dc.html)

“研究目的が明快でない申請書はその時点で×”ともおっしゃっていた.申請書全文を読んで,審査員自ら研究目的を悟ってくれることはない.(審査員経験者から申請書の書き方について聞いてみた ちゃらんぽらんな新米漁師のブログ 2010年5月12日

最初に「これまでの研究」って書くじゃないですか。いきなり「研究」を書きすぎなんです。いきなり専門的すぎるんです。やっぱり読む側は申請書を書く人間にも、そのテーマにも興味をもっていくれるわけじゃないんですから、読む側にも納得できそうな問題提起を明示して、そこから「これまでの研究」と「現在の状況」をつなげていくのがいいんじゃないかな、って。(■絶対に受かるとは思わない学振申請書の書き方  はてな匿名ダイアリー 2016-03-28

 

申請書の具体例

生物学、医学、化学、コンピュータサイエンス、人文社会科学など分野は違っていても、良い申請書には論理的な流れ、熱意、ビジョンが見えるという共通点があり、実例から多くのことが学べます。

学振・海外学振の書き方  学振申請書の具体例 http://科研費.com/how-to-write-gakushin/

学振取るまで(NAIST 版)

2008年度にPDに通ったときの書類を置いておきます。 (http://jj57010.web.fc2.com/gakushin.html):社会科学・法哲学の内容 申請者の注釈付き

学振PDに提出した計画書をアップします 「人文学」の「外国語教育」枠で応募 2012年「不採用」 2013年「採用」 (こにしき(言葉、日本社会、教育)  April 09, 2014)

 

 

面接の対策

せっかく知らない人にアピールする場なので、この研究は面白そうだなと思ってもらいたいでしょう。面接官を楽しませるのが目標です。(学振DCを取る方法(僕の場合)

それよりも、予め用意してきたスピーチを、重要な点や研究の特長は特に強調しつつ、4分間流れるように披露するのが結局一番良いのである。(学振研究員面接審査について:スピーチ編

それでも想定外の質問はくるものだけど,これ以上ない!!ってくらいに準備しておくとなんとかそこで自信を保った回答ができます.(学振 面接 感想戦

業績がほとんどない中で採用になったのは、提案した研究のおもしろさ(わくわく感ときっちり感)を共感してもらえたからだと思います。(学振面接に行く (本番編)

 

【注意】申請書、面接の様式は変更されている部分があります。最新情報を公式サイトでご確認下さい。

 

参考

  1. 日本学術振興会特別研究員

 

更新:20170513 新たな検索結果を追加

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1994年ノーベル経済学賞のナッシュ氏が死去

映画「ビューティフル・マインド」のモデルとなった1994年ノーベル経済学賞受賞の数学者ジョン・ナッシュ氏(86)と夫人のアリシア・ナッシュさん(82)が、5月23日に乗車中のタクシーの事故のため亡くなりました。ニュージャージー州で帰宅する途中で、タクシーは別の車を追い越そうとした際にガードレールに衝突し、夫妻が車外へ投げ出されたそうです。19日にノルウェーで行われたアーベル賞の授賞式に参加し自宅に帰る途中でした。

参考

  1. ‘Beautiful Mind’ mathematician John Nash, wife killed in car crash (CNN May 25, 2015):”John Forbes Nash Jr., the Princeton University mathematician whose life inspired the film “A Beautiful Mind,” and his wife died in a car crash Saturday, according to New Jersey State Police.”
  2. ‘A Beautiful Mind’ Mathematician John Nash and His Wife Killed in New Jersey Taxi Crash (ABC NEWS May 24, 2015):”Princeton University mathematician and Nobel Prize winner John Nash, whose life was the subject of the film “A Beautiful Mind,” was killed in a taxi crash along with his wife in New Jersey on Saturday. “
  3. John Nash, Nobel Prize Winner and Subject of ‘A Beautiful Mind,’ Killed in Car Crash (NBC NEWS): “John Nash, winner of the Nobel prize in economics and the subject of the movie “A Beautiful Mind,” was killed with his wife Saturday in a car crash in New Jersey, according to state police.”
  4. John F. Nash Jr., Math Genius Defined by a ‘Beautiful Mind,’ Dies at 86 (New York Times, MAY 24, 2015):”John F. Nash Jr., a mathematician who shared a Nobel Prize in 1994 for work that greatly extended the reach and power of modern economic theory and whose long descent into severe mental illness and eventual recovery were the subject of a book and a film, both titled “A Beautiful Mind,” was killed, along with his wife, in a car crash on Saturday in New Jersey. He was 86.”
  5. ‘A Beautiful Mind’ mathematician John Nash killed in taxi crash (7online.com):”The Nobel Prize-winning mathematician whose struggle with schizophrenia was chronicled in the 2001 movie “A Beautiful Mind” has died in a taxi crash along with his wife in New Jersey. “
  6. John F. Nash, Jr. and Louis Nirenberg share the Abel Prize (THE ABEL PRIZE):”The Norwegian Academy of Sciences and Letters has decided to award the Abel Prize for 2015 to the American mathematicians John F. Nash, Jr. and Louis Nirenberg “for striking and seminal contributions to the theory of nonlinear partial differential equations and its applications to geometric analysis.” The President of the Academy, Kirsti Strøm Bull, announced the new laureates today 25 March. They will receive the Abel Prize from His Majesty King Harald at a ceremony in Oslo on 19 May.”
  7. John F. Nash, Jr. and his wife Alicia killed in car accident (THE ABEL PRIZE):”John F. Nash, Jr., who together with Louis Nirenberg received the Abel Prize on Tuesday 19 May, was killed in a taxi accident on the New Jersey Turnpike on Saturday afternoon local time. Nash (86) and his wife Alicia (82) were on their way home after a week of Abel celebrations in Oslo and Bergen when they were both killed in the car crash.”
  8. ジョン・ナッシュさん事故死 米数学者、半生映画化も(朝日新聞DIGITAL2015年5月25日):”19日には、ノルウェー政府が数学での研究実績を評価するために設けた「アーベル賞」の授賞式のため、オスロを訪れていた。米メディアによると、23日に帰国し、空港から自宅に戻る途中に事故に遭ったという。”
  9. 米数学者のジョン・ナッシュさんが交通事故死、半生映画化も(CNN 2015.05.25):”米ニュージャージー州の警察当局は25日までに、米プリンストン大学の数学者で、その半生が映画「ビューティフル・マインド」の題材にもなったジョン・ナッシュさんが交通事故で死亡したと発表した。”
  10. 「ゲーム理論」でノーベル賞の米数学者が事故死 ジョン・ナッシュ氏、映画化でアカデミー賞(産経ニュース 2015.5.25);”米プリンストン大学教授などを歴任、複数の人間や国家などの間の相互作用をモデル化した「ゲーム理論」分野の業績で、94年にノーベル経済学賞を受賞した。”
  11. Home Page of John F. Nash, Jr. (http://web.math.princeton.edu/jfnj/)
  12. Prize Seminar, December 8, 1994 The Work of John Nash in Game Theory (nobelprize.org)

論文から学ぶHypothesis-driven research

もともと記載的な学問である解剖学などは別として、サイエンスの世界ではまず仮説を立ててそれを検証するという仮説駆動型研究が”作法”であり、今後もそうそう変わらないでしょう。ビッグデータの時代といわれている現在は、最初にデータありきの「データ駆動型」研究もあるとは思いますが、解析方法を選ぶ際に、そこになんらかの仮説が存在しているはずです。

研究費の申請書を書くにしても、論文を書くにしても、プレゼンテーションをするにしても、検証すべき仮説が中心に据えられます。にもかかわらず、仮説駆動型の研究姿勢が日本で十分に教育されてきたかといえば、不思議なことに全くそうはみえません。いいジャーナルに論文を出すことに困難を感じる日本人が多いとすれば、それは仮説駆動型の研究を行うための教育がほとんどなされていこなかったせいではないかと思います。

研究のやり方の違いにもびっくりしました。日本では、針でも突っ込んで何が出てくるか見てみようという調子だけれど、エックルス先生は、予想を頭の中で組み立て、計画的に実験する。(未知に挑戦する私の脳  伊藤 正男  JT生命誌研究館 サイエンティスト・ライブラリー

 

研究室における仮説不在の教育の実態は、実験科学に限らないようです。広中平祐 著『生きること 学ぶこと』にも同様のことが指摘されています。

 この「仮説」ということについては欧米人と日本人では、考え方がかなり違う。欧米人はまず仮説をたててから演繹するという考え方が強い。
私はよく、米国の学生に向かって、
「君たちは今どういうことを研究しているのか」
 と質問することがある。そうすると、彼らは、まず自分のもっている仮説を説明する。
ところが、日本の学生に同じような質問をすると、大抵、
「私は代数を勉強しています」
「幾何を勉強しています」
 という答えが返ってくる。
 要するに、米国の学生はまず仮説を立てて、それからいろいろ演繹してみて、ダメだったらその仮説を変えればいいという考え方をするが、日本の学生は、とにかく何かを勉強してみて、それを足場にして論文を書いてみようと考える。そして、それがつまらなくなってきたら方向を変えて何か新しい方向を決めればいい、それまでのやり方を改良していけばいい、こういう研究態度が非常に多いのである。
 仮説を立てるということは、ある意味で勇気のいることである。というのは、数学の分野でも物理の分野でも、初めに立てた仮説は大抵ダメだというジンクスがあるからだ。
 しかし、仮説を立てて一生懸命研究しているうちに意外な発見が生まれるのである。だから私は、初めに立てた仮説はダメなものでも、やはり仮説は立てなければならないと思う。
 そういう意味で、若い読者諸君が今後、創造的な仕事をしていこうとするならば、この仮説を立てて演繹するという考え方をもっと採り入れるべきだと思うのである。
(広中平祐 著『生きること 学ぶこと』集英社文庫1984年 114~115ページ)

 

大学院生が仮説不在のまま5年間なんとなく実験を続けて何かしら実験結果を得たとしても、完全に手遅れであり、それらのデータをもとに良いストーリーをつくることは困難です。

研究を始める時、計画を立てるとき、実験をするときには、必ず自分なりの仮説を構築してから始める癖をつけてください。そうすることが、結局はゴールへの最短で最善の道になるのです。仮説も無しに、やってみなければ分からない、やってみたらできるかもしれないと力任せに実験をするような愚かな真似を決してしないでくださいそんな事をしてもサイエンスとしては何の意味も 無く、ただの博打でしかないのですから。(必ず仮説を定義する 総合技術コンサルティング&人材育成 ジャパン・リサーチ・ラボ)

一つの研究はその成果を論文にまとめることにより一区切りつくわけですが、良いストーリーがないと良い論文にはなりません。また、仮説が書かれていない研究提案書で研究費を申請しても、通る可能性は低いでしょう。「仮説」と聞くと仰々しく感じる人がいるかもしれませんが、そもそも研究の場で使われる仮説とは何でしょうか?

 「まず実験をしてみてそれから考えよう」ということは多くの研究者がとっている姿勢で、一見これには仮説がないように思えるが、本当は違うと思う。例えば、変異体の遺伝学的スクリーニングは、関与している遺伝子の存在を仮定してそれを検証する実験であるし、あるタンパク質の細胞内局在を見る実験は、それが特定のオルガネラや領域に局在しているのではないかという仮説の検証である。ただ、仮説をどれだけ意識するか、どれだけ深い仮説をもつかには研究者によって大きな違いがあると思う。グラント申請レベルのプロジェクトに仮説があるのは当然であるが、どんなに些細な実験にも仮説は存在するはずである。仮説がなければ検証不可能で、そのような実験は目的を失っている。…(【細胞生物,Vol 15, No. 1 (2004)巻頭言より転載】東京大学大学院医学系研究科 水島研究室 分子生物学分野

仮説とは、簡単にいえば、「合理性のある提案」だとDavid Lindsay氏は著書の中で説明しています。ただし仮説は2つの特徴を備えていなければなりません。一つは「これまでの知見と矛盾しない」こと。もう一つは「検証可能である」ことです。

There are many texts on the philosophy of science and scientific method that deal extensively with the hypothesis but, in short, we can describe it as ‘a reasonable scientific proposal’. It is not a statement of fact but a statement that takes us just beyond known information and anticipates the next logical step in a sequence of supportable precepts. The hypothesis has to have two attributes to be useful in scientific investigation: it must fit the known information and it must be testable. To comply with the first attribute, you the scientist have to read and understand the literature. To comply with the second, you have to do an experiments. In essence, the paper you are about to write concerns nothing other than those two things. You can see why the hypothesis is so central to scientific writing. (強調のため一部太字 引用元:David Lindsay, Scientific Writing = Thinking in Words, page 7)

あまり教育的でない研究室に入ってしまった大学院生であっても、実際の論文を読むことにより仮説駆動型研究の何たるかを学ぶことができます。論文を構成する上でhypothesisがどのように使われているかを、以下、5つの論文を例に見てみます。

(1)その研究分野における比較的大きな仮説

この例ではまず仮説を提示し、仮説を検証するための実験結果を述べ、その実験結果が仮説に合うものであったと結論しています。

Neuronal oscillations have been hypothesized to play an important role in cognition and its ensuing behavior, but evidence that links a specific neuronal oscillation to a discrete cognitive event is largely lacking. We measured neuronal activity in the entorhinal-hippocampal circuit while mice performed a reward-based spatial working memory task. During the memory retention period, a transient burst of high gamma synchronization preceded an animal’s correct choice in both prospective planning and retrospective mistake correction, but not an animal’s incorrect choice. Optogenetic inhibition of the circuit targeted to the choice point area resulted in a coordinated reduction in both high gamma synchrony and correct execution of a working-memory-guided behavior. These findings suggest that transient high gamma synchrony contributes to the successful execution of spatial working memory. Furthermore, our data are consistent with an association between transient high gamma synchrony and explicit awareness of the working memory content. (強調のため一部太字 引用元:Cell 157(4):845-857の要旨)

(2)実験一つ分の小さな仮説

仮説と一口にいっても、ある研究分野に何十年も君臨しているような大きなものから、下の例のように、研究論文の中で自分で設定した小さな仮説まで様々なものがありえます。

Given that LPA is known to activate cortical contractility via the Rho/Rock pathway, we hypothesized that a mechanical polarization mechanism of the cell cortex could trigger the transformation of progenitor cells into stable-bleb cells (Carvalho et al., 2013). To test this hypothesis, we treated stable-bleb cells with the Rho kinase inhibitor Y-27632 or the myosin-II inhibitor Blebbistatin (Figure 2C). Treated cells lost their characteristic polarization, supporting a critical role for Rho/Rock-mediated cortical contractility in driving stable-bleb cell transformation. (強調のため一部太字 引用元:Cell 160(4):673-685のResultsセクションの一部)

(3)論文一つをまとめるための仮説

Hyothesizeという言葉は研究論文で比較的広い意味合いで用いられることもあります。下の例では、採用した方法論の有効性を示すのにHyothesizeという言葉が使われています。

Since computational modeling suggests that a failure to segregate protein damage may result in a reduced fitness (Erjavec et al., 2008) and functions crucial for cellular fitness are often performed by parallel partly redundant pathways, we hypothesized that machineries involved in the partitioning of protein aggregates could be identified by systematically screening for genetic interactions between SIR2 and nonessential and essential genes using synthetic genetic arrays (SGA) analysis ( Tong et al., 2001 and Tong et al., 2004). Using this approach, we found that cells lacking Sir2p share many genetic interactions with the conditional actin mutant, which is a result of sir2Δ cells showing a defect in CCT-chaperonin-dependent folding of actin. (強調のため一部太字 引用元:Cell 140(2):257-267 イントロダクション)

(4)因子を発見するための仮説

何か新規の因子を(偶然)発見した場合には仮説に基づいたストーリーを作りにくいのではないかと思う人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。合理的な理由に基づいてある因子の存在を仮定し、その因子が満たすべき条件を挙げ、実際にそれらの条件を満たす因子を発見したという下の論文のような論理展開は、実際の発見のいきさつがどうであれ適用可能です。

Given the potential for nutrients to stimulate inflammatory pathways and the importance of keeping these pathways in check, we hypothesized that previously unrecognized counterregulatory mechanisms might exist to protect cells from activation of inflammatory pathways during physiological fluctuations in nutrient exposure or in nutrient-rich conditions. We reasoned that a factor participating in such a coordinating mechanism between nutrient and inflammatory responses would be expected to meet several criteria: (1) the gene product should be present in tissue types responsible for nutrient clearance from blood, such as adipose tissue; (2) expression or activity should be regulated by both nutritional and inflammatory stimuli; (3) the factor should regulate inflammatory signaling components and/or gene expression (cells or tissues lacking such a factor would then exhibit excess or prolonged inflammation in response to challenges by both nutrients and inflammatory mediators); (4) the factor should regulate cellular metabolism, and its absence should result in impaired cellular metabolic function; and (5) through regulation of metabolic function in particular cell types and organs, the factor should also impact systemic metabolism.
In this study, we identify six-transmembrane protein of prostate 2 (STAMP2) as a factor meeting these criteria. (強調のため一部太字 引用元:Cell 129(3):537-548 イントロダクション)

(5)複数の仮説の検討

ある現象を説明するために(相対立する)複数の仮説を提示し、各々から予言される内容と実際の実験結果との整合性を検証することによりどちらの仮説が正しいかを示すという組み立て方も論文に強い説得力を与えます。

At present, two theories attempt to link airway epithelial ion transport to lung defense and predict how mutations in CFTR adversely affect these relationships. One theory, the “hypotonic (low salt) ASL/defensin” hypothesis, postulates that normal airway epithelia are covered by an ASL with a [NaCl] sufficiently low (≤ 50 mM NaCl) to activate defensins and create an antimicrobial “shield” on airway surfaces (31, 38 and 10). Generation of a low [NaCl], hypotonic ASL reflects selective transepithelial absorption of salt but not water from ASL, presumably a consequence of putative airway epithelial water impermeability or surface forces (31, 44 and 46). Defensin inactivation by iso- or hypertonic ASL (i.e., [NaCl] > 100 mM) in CF is postulated to reflect the Cl impermeability of CF epithelial cells (38 and 10). The second theory, the “isotonic volume transport/mucus clearance hypothesis,” predicts that airway epithelia regulate the volume (height) of ASL by isotonic ion and water transport to optimize mucus clearance (Boucher 1994a). In CF, the rate of isotonic ion and water (volume) transport is abnormally high, which is predicted to reduce ASL volume, concentrate mucus, and lead to abnormal mucus transport and retention of tenacious mucus masses (plaques) in airways that serve as the nidus of infection (14 and 5).
… By measuring ASL ion composition, we tested key predictions of the hypotonic (low salt) ASL/defensin hypothesis: (1) that normal airway epithelia generate and maintain hypotonic (or low salt) solutions on airway surfaces, and (2) that CF airway surface liquid is isotonic (Joris et al. 1993) or hypertonic (with excess salt) (Gilljam et al. 1989). A second series of experiments tested key aspects of the isotonic hypothesis: (1) that normal airway epithelia are isotonic volume-absorbing epithelia that produce an isotonic ASL; (2) that CF airway epithelia absorb volume isotonically at abnormally high rates; and (3) that mucus transport is deranged by depletion of the ASL through excessive isotonic volume absorption. (強調のため一部太字 引用元:Cell 95(7):1005-1015のイントロダクションの一部を抜粋)

Good science would pit theory A against theories B, C, D and E with an experiment where each theory gave different predictions. (引用元:Nakagawa and Cuthill. Effect size, confidence interval and statistical significance: a practical guide for biologists. Biol. Rev. (2007), 82, pp. 591–605. doi:10.1111/j.1469-185X.2007.00027.x

いずれにせよ、仮説の提示→検証結果の報告という流れにするのが典型的な論文の書き方です。しかし、実験科学ではそもそもうまくいくはずの実験が最初のステップで躓いたり、予想に反したことが結果が得られることも多いので、実験データが何も得られていない段階で仮説を立てることに抵抗感がある人もいるかもしれません。その点に関しては、Whitesides博士のアドバイスが参考になります。

当初は仮説Aを検証すべく始めた研究だが、実際のデータを眺めてみると、仮説Bのほうがよりよく説明できるようだ――仮にこうなってしまっても、心配はい らない。すべての事項を書き出し、仮説・目的・データの最適たるコンビネーションを選びとればよい。完成した論文上での研究目的と、仕事に取り掛かる理由 付けとしての研究目的は、往々にして異なるものだ。良質な科学といえども、大抵は日和見主義的・修正主義的なものだ。(Whitesides’ Group: Writing a paper 化学者のつぶやき Chemi-station)

このアドバイスは、仮説なしに始めた研究だが実際のデータが出たあとで仮説を考え始める人をも勇気付けます。

参考

  1. 記載型と仮説駆動型の研究(長束・鈴木研究室ブログ2017年02月08日):”現代生物学では仮説駆動(Hypothesis driven)型研究が高く評価されます。”
  2. David Lindsay, Scientific Writing = Thinking in Words (PDFリンク
  3. Martyn Shuttleworth (Aug 1, 2009). How to Write a Hypothesis. Retrieved May 23, 2015 from Explorable.com: https://explorable.com/how-to-write-a-hypothesis
  4. 東京大学大学院新領域創成科学研究科情報生命科学専攻 コラム:”仮説の実験的検証にとどまらず、大量データから帰納的に真実を導く素養を持った研究者を養成する計画です。(森下真一) … これまでの仮説駆動型の研究スタイルでは、研究者がそれまで蓄えた知識と深い洞察のもとに仮説をたて、それを巧妙かつ小規模な実験によって検証するという ことで生命科学が進められてきました。一方、データ駆動型では、ハイスループットな測定装置を使って、まずは網羅的に大量データを取得し、それを貯めてお き、解くべき問題に応じて、その中から仮説候補を探し出すということで研究が進められます。(高木利久)”
  5. 東京大学 大学院理学系研究科 生物科学専攻 黒田研究室ウェブサイト:”…これらの手法は、これまでの知識に基づき仮説を立て検証するという仮説駆動型のアプローチです。これまでの生命科学では一般的な方法です。…一方、…これらのアプローチは、大規模データをあるアルゴリズ ムに則り計算機によりアンバイアスに解析するデータ駆動型のアプローチです。最近発展してきているビッグデータの解析と同じコンセプトを持つアプローチで す。”
  6. バイオサイエンスデータベースセンター(NBDC)の進捗と合同ポータルサイトの開設 (ライフサイエンス委員会報告 資料2 平成24年1月26日)(PDF):”仮説駆動型からデータ駆動型(データ中心科学)へ”
  7. Theory vs. Hypothesis vs. Law… Explained!
  8. 良い科学研究論文を能率よくラボから出すために~学生・ポスドクがボスとやるべき協同作業

 

更新 20170623 広中平祐の著書から引用

 

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アマミホシゾラフグ 2015年新種トップ10に

何年も前から奄美大島の海底でダイバーらによって目撃されていたミステリーサークル。誰が一体何の目的でこのような不思議な幾何学模様を海底の砂場に作っていたのか、その謎が解けたのが2014年でした。ミステリーサークルをつくっていたのは、新種のフグ。このフグが「新種トップ10」に選ばれました。

「新種トップ10」は、米ニューヨーク州立大の国際生物種探査研究所(State University of New York College of Environmental Science and Forestry (ESF))が毎年選び、分類学の父と呼ばれる植物学者リンネの誕生日5月23日に合わせて発表しているものです。

ESF: Top 10 New Species for 2015

Pufferfish: ‘Crop Circles’ under the Sea
Torquigener albomaculosus
Location: Japan

How it made the Top 10: Scientists recently solved a 20-year-old mystery under the sea and discovered a new fish. Intricate circles with geometric designs about six feet (2 meters) in diameter, found on the seafloor off the coast of Amami-Ōshima Island, were as weird and unexplained as crop circles. They turn out to be the work of a new species of pufferfish, Torquigener albomaculosus. Males construct these circles as spawning nests by swimming and wriggling in the seafloor sand. The nests, used only once, are made to attract females. The nests have double edges and radiating troughs in a spoke-like geometry. The design isn’t just for show. Scientists discovered the ridges and grooves of the circle serve to minimize ocean current at the center of the nest. This protects the eggs from the turbulent waters and possibly predators too. Yoji Okata, an underwater photographer, first observed the artistic behavior. Subsequently, a team of ichthyologists and a television crew carried out an expedition to record the phenomenon.

ESFによる説明を日本語に訳しておきます。

フグ:海底のミステリーサークル
Torquigener albomaculosus
場所:日本
トップ10に選ばれた理由:最近、科学者らは20年来の海底の謎を解き、新種の魚を発見しました。奄美大島の海岸沖の海底で発見された直径約2メートルの幾何学的なデザインをもった複雑なサークルは、ミステリーサークルと同様に奇妙で説明がつかないものでした。そのサークルは新種のフグTorquigener albomaculosusによって作られたものであることが明らかになりました。雄が、海底の砂場を体をよじらせて泳ぎながら、産卵用の巣としてこれらのサークルを構築します。その巣は、一度きりしか使われませんが、メスを誘い寄せるために作られるのです。その巣は、縁が2重になっていて、車輪のスポークのような幾何模様の放射状の溝があります。このデザインは単に見せるためだけではありません。科学者の発見によると、サークルにある畝と溝は巣の中心部分で潮の流れを最小にする効果があります。このことにより卵はかき乱すような水野流れや、おそらくは捕食者からも守られているのです。水中写真家の大方洋二氏が初めてこの芸術的な行動を観察しました。その後、魚類学者のチームとテレビクルーがこの現象を記録するための調査を行いました。

アマミホシゾラフグを紹介したBBCの番組。アマミホシゾラフグのオスがミステリーサークルを作るプロセスや、産卵行動が、美しい映像で紹介されています。

Japanese Pufferfish Masterpiece – BBC Life story David Attenborough (7分17秒)

Attracting attention is an essential part of winning a mate. The world’s oceans are filled with brilliant colours,…all designed to make their wearers conspicuous. Unfortunately this small, Japanese puffer fish is dull,…almost to the point of invisibility but to compensate,…he is probably nature’s greatest artist. To grab a female’s attention, he creates …something that almost defies belief. His only tools are his fins. In his head, a plan of mathematical perfection. He ploughs the sand, breaking it up into the finest of particles. These shells aren’t just rubbish to be removed,…he uses them to decorate the bridges of his construction. He can’t rest for more than a moment, but must work 24 hours…a day for a week, or the current will destroy his creation. A final tidy up and his masterpiece is complete. Nowhere else in nature does an animal construct something…as complex and perfect as this. If this doesn’t get him noticed, nothing will. Now it’s ready for inspection. A female, swollen with eggs. To make sure she gets the best view, he encourages her into the centre. Inspection over,…she withdraws to await the final stage of the process. By the next morning all the softest sand is now in the middle. The centre of the arena has been flattened. Right on cue here she is. This is what she wanted. It’s a perfect bed for her eggs. The male now grasps her cheek and then fertilises her miniscule eggs. And with a quick flick of his fins, he buries them. They carry on like this until she has finished laying. An hour of his rough affection leaves a love bite on her cheek. Finally, she leaves. He stays to fan the eggs until they hatch,…while his extraordinary work of art fades away around him. (転載元Transcript)

番組のシーンの概略。

0:23 色鮮やかな他の海の生き物たちに比べると、アマミホシゾラフグはとても地味で目立ちません。しかし、おそらく自然界でもっともすばらしい芸術家なのです。
0:38 オスはメスを惹きつけるために、ほとんど信じられないようなことをします。
0:54 彼が用いる道具は、ヒレだけ。
1:55 彼は休むことなく、1日24時間、1週間働かなければなりません。そうしないと、潮の流れが彼の創作物を壊してしまうことになるでしょう。
2:22 彼のマスターピースの完成
3:42 メスが登場し雄がつくった作品をチェック
4:16 メスは一度退場し、最終工程を待ちます。翌朝までには、一番やわらかい砂が真ん中に集められています。アリーナの真ん中の部分は平らにされています。
5:08 メスにとって完璧な産卵の場ができあがっています。オスはメスのほほを噛み、メスが産んだ卵に精子をかけ受精させます。
5:25 オスはひれをパタパタと動かして卵を埋めます。メスが卵を産み切るまでこれらの行動が繰り返されます。
6:38 メスは去り、オスは卵の世話をするために残ります。

参考

  1. ESF: Top 10 New Species for 2015 On the list: agile spider, North American dinosaur and fish that makes circles in the sand (ESF, State University of New York College of Environmental Science and Forestry 5/21/2015)
  2. Keiichi Matsuura. A new pufferfish of the genus Torquigener that builds “mystery circles” on sandy bottoms in the Ryukyu Islands, Japan (Actinopterygii: Tetraodontiformes: Tetraodontidae). Ichthyological Research January 2015, Volume 62, Issue 2, pp 207-212 Date: 06 Sep 2014
  3. 奄美大島の海底にミステリーサークルを作るフグ「アマミホシゾラフグ」が世界の新種トップ10(2015年)に選ばれました (PDFリンク)(国立科学博物館 平成27年5月21日):”独立行政法人国立科学博物館(館長:林良博)の名誉研究員、松浦啓一が2014年に新種として発表した「アマミホシゾラフグTorquigener albomaculosus Matsuura, 2014」が、国際生物種探査研究所(ニューヨーク州立大学)の世界の新種トップ10(2015年)に選ばれました。”
  4. あのフグがついに新種!(ブログ 水中写真家・大方洋二の魚って不思議! 2014/9/7):”奄美大島の海底で発見されたミステリーサークル。NHK「ダーウィンが来た!」で長期ロケを行い、放送後にインターネットで情報が流れたために海外のメディアから問い合わせが殺到。あの BBCも取材に訪れたほど。”
  5. SBI講座『ミステリーサークルの謎』:”2014年2月2日、瀬戸内町公民館で「大島海峡ミステリーサークルの謎」についての講演会が開催されました。講演会の様子やミステリーサークルが出現する奄美大島海峡について、マリンステイションのダイビングスタッフ伊藤がお伝えします。…講師の松浦啓一さんは水産学博士で魚類分類学のスペシャリスト。…このミステリーサークルは2007年に清水で伊藤が初めて発見して以来、正体は謎のまま。まさにミステリーだったのですが、2011年に水中写真家の大方洋二さんとともに、フグとサークルの関係を確認しました。なんと大方洋二さんは今から20年程前にも嘉鉄でサークルを見た事があったそうです。”
  6. アマミホシゾラフグ フグ科 学名 Torquigener albomaculosus 奄美大島・瀬戸内町の清水と嘉鉄海域で発見された海底ミステリーサークルの作者である。(せとうちなんでも探検隊 奄美大島の瀬戸内町文化遺産活用実行委員会のプロジェクト)
  7. See the top 10 new species of 2015 – in pictures (The Guardian 21 May 2015):”A cartwheeling spider and a dinosaur dubbed the ‘chicken from hell’ are among the 10 most amazing creatures chosen by scientists from over 18,000 species new to science in the last year. Find out more on the SUNY College of Environmental Science and Forestry website”
  8. アマミホシゾラフグ:巣作り名人、「新種トップ10」に (毎日新聞 2015年05月21日):”同研究所は生物多様性の保全などを目的に08年からトップ10を発表。今回は昨年新種とされた約1万8000種から選んだ。”
  9. ミステリーサークル描くフグ「世界の新種」に (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2015年05月22日):”鹿児島・奄美大島で海底に美しい「ミステリーサークル」を描くフグが、国際的な研究組織が選ぶ今年の「世界の新種トップ10」に入ったと、国立科学博物館が21日発表した。…同館の松浦啓一・名誉研究員(66)らが新種と確認し、昨年、星をちりばめたような模様から「アマミホシゾラフグ」と命名した。…調査に参加した水中写真家の大方洋二さん(73)は、「何十年も潜って一番驚いた発見」と喜んでいる。”
  10. NHK ミラクル・スピーシーズ ダーウィンが来た!:”新種TOP10とは?アメリカのニューヨーク州立大学・国際生物種探査研究所は、毎年5月23日、分類学の父で植物学者のカール・リンネの誕生日にあわせて、前年度に発見された18000種にも及ぶ新種の中からTOP10を選出し、発表しています。”
  11. 海底のミステリーサークルができるまで。
  12. NHK総合「ダーウィンが来た!生きもの新伝説」 – 世紀の発見!海底のミステリーサークル – 放送日 2012年9月9日(日) 19:30~20:00 (gooテレビ番組):”シッポウフグの仲間がやって来た。フグは地面を掘ったり、海藻を抜きながらミステリーサークルをつくっていた。胸びれや尾びれなど、体全体を使って、発見から6日目にミステリーサークルができていた。さらにフグは、貝殻の欠片を集めて、丸くて真ん中に細かい砂があり、スジ模様や起伏などのある形を作っていた。”

Silvia博士 生活を犠牲にしない論文量産術

「できる研究者の論文生産術 どうすれば『たくさん』書けるのか」の著者ポール.J・シルヴィア氏が2012年4月27日に行った講演の動画があります。しかしこの講演ではとりとめもなく延々とフリートークが続くので、ポイントを掴むには彼の著書を読むほうが早いです。

たくさんの論文が書けるのは生まれつきの才能ではなくスキルです。だから、そのやり方を学ぶことができます。(前書きより)

この本には非常に実践的な教えが書かれています。原稿が書きかけのままで憂鬱な気分になっている教授から出てくる典型的な言い訳が、「書く時間が見つからない」というものです。しかし、講義の時間がみつからないと言い訳する教授はいません。予定された授業の時間がきたら、授業をするしかないからです。論文を書くのも全く同じで、何曜日の何時から何時までは論文を執筆する時間と決めて、その時間には他の予定は一切入れずに論文の執筆に専念するということを習慣化しなさいと説いています。科学者はプロのライターなのですから、講義の時間に必ず講義をするのと同様、書くと決めた時間に必ず書きなさいとシルヴィアさんは言います。

ちなみにポール・シルヴィアさんが自分で決めた執筆の時間帯は、平日の朝8時から10時までだそうです。朝起きたら、着替えもせずシャワーも浴びず、Eメールのチェックもせず、珈琲を淹れてすぐに机に向かうとのこと。

論文を書けない理由は実はまだまだあります。現実的なところでは、書く前にデータの解析をしなければいけないとか、論文を書き始める前に参考文献を読まなければいけない、などなど。しかし、大丈夫です。シルヴィアさんは、これらもみな「ライティング」とみなします。論文の書き方の本を読むことまでも「ライティング」に含めます。これでもう書かない理由はほとんど潰されてしまいました。

論文を書く環境が悪い、椅子の座り心地が良くない、机が悪いと言って悪あがきする人がいるかもしれません。そういう人達のために、シルヴィアさんはこの本の執筆に使った机と椅子の写真を見せています。インターネットがつながらない部屋、引き出しもない机、質素な椅子。ウインドウズOSすら載っていないPC,DOS上で動くワープロソフト。書くためにはそれで十分だったとシルヴィアさんは言います。

それでもまだ、書く気が起こらない、インスピレーションが湧いてこない、どうしても書けない(Writer’s block)という人がいます。そんな人たちへの最も効果的な処方箋がまさに「決めた時間に書くことの習慣化」なのです。

論文をたくさん書かなければいけない研究者のためのライフハックツールとでも言うべき本。

How to Write a Lot – Paul J Sylvia (http://exordio.qfb.umich.mx/archivos%20pdf%20de%20trabajo%20umsnh/Leer%20escribir%20PDF%202014/Escritura%202014/How%20to%20Write%20a%20Lot%20-%20Paul%20J%20Sylvia.pdf)(73ページPDFへのリンク)

Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 1 (1時間1分31秒)

Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 2 (44分46秒)

Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 3 (31分59秒)

Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 4 (1時間18分4秒)

 

ポール.J・シルヴィア氏の著書

 

 

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米 海兵隊の輸送機MV22オスプレイが着陸に失敗し墜落

ハワイニュースナウで報道された墜落の瞬間を捉えた映像。
Hawaii military aircraft Osprey crash / Hawaii News Now

オスプレイはヘリコプターのように垂直離着陸ができ、しかも飛行機のように速く飛べる、両者のいいとこどりをしたような画期的な航空機です。

オスプレイ開発が始まったきっかけ、開発における相次ぐ事故、初の戦闘までを描いたドキュメンタリー番組「FLIGHT OF THE V-22 OSPREY (THE MILITARY CHANNEL)」。
V22 Osprey Documentary (44:53)

参考

  1. 1 killed, 21 injured in Osprey crash at Bellows Air Force Station (HAWAII NEWS NOW, May 18, 2015):”According to the military, an MV-22 Osprey from the 15th Marine Expeditionary Unit experienced a “hard landing” while conducting training at the Marine Corps Training Area at Bellows.The aircraft had 22 people on board when it went down around 11:40 a.m. According to the military, one Marine died and 21 were transported to local hospitals for assessment and treatment. On Monday morning, one Marine remained in critical condition, and three others were still hospitalized, but stable, officials said. The remaining Marines were treated and released.”
  2. オスプレイ、ハワイで着陸失敗 1人死亡21人搬送(朝日新聞デジタル 2015年5月18日):”… 海兵隊仕様のMV22は、すでに米軍普天間飛行場に24機配備されており、陸上自衛隊も同機種のオスプレイを2018年度までに米側から計17機購入することを決め、佐賀空港への配備を検討している。このほか、米国防総省は今月11日、米空軍仕様で特殊部隊などの輸送に使用するオスプレイCV22を計10機、横田基地(東京都福生市など)に配備すると発表している。…”
  3. Accidents and incidents involving the V-22 Osprey (Wikipedia)

小保方晴子氏の「STAP細胞」にES細胞が混入していた件で、何者かがES細胞を若山研から盗んだとする告発状を兵庫県警が受理 捜査へ

あのSTAP現象とは一体何だったのでしょうか?科学的には、STAP細胞の正体はES細胞だったという結論に落ち着きました。

しかし、STAP細胞事件は全く終わっていません。ES細胞を若山研究室から持ち出して小保方晴子氏の冷凍庫に保管し、小保方氏が培養する「STAP幹細胞」のシャーレに混入させた人間は一体誰か?という一番肝心な疑問が残っています。

研究室の出入りは厳重には管理されておらず誰でも出入り可能だったとはいえ、実験内容や実験スケジュールを熟知している人間でないかぎり培養中の細胞への混入を行うことなどはまず不可能でしょう。

日本のサイエンスの信頼回復のためには犯人の特定が必要だとして、容疑者不詳の窃盗容疑の告発状が兵庫県警に提出され、受理されました。

複数の報道内容を合わせると、今回の告発状を提出していたのは元・理化学研究所研究員の石川智久氏で、告発に至った動機を以下のように語っています。なお、今回2015年5月14日付けで受理された告発状の内容は「容疑者不詳の窃盗」ですが、2015年1月の段階では、当時の報道によれば、小保方晴子氏を告発の対象にした文面になっていました。

以下の動画はおそらく2015年1月の頃の内容です。


2:33 (なぜ告発を?)

まじめに研究している研究者は今回のことは許しがたいと思っていると思うので。

かといって、研究者が犯人探しができるかというとできないし、それと、学術界が、これまで調査委員会がいろいろ調べた結果、いいところまでいったけど最終的に犯人の特定はできなかったということで。で犯人を特定するためには警察の介入が必要であろうということが考えられるので。やはり白黒明確にするしかないだろうと。じゃあ、誰がやるの?と。私しかないでしょう。

それはどういうことかというと、大学教授といえども被雇用者です。国家公務員、準国家公務員ですよね。そうすると、学長に対して、私が告発してもいいでしょうかと言ったら大学のほうから絶対にストップが来るでしょう。あるいは理化学研究所の中の研究員がいくらやろうと思ったって理化学研究所ははそれを承諾しないでしょう。そうなってくると誰がやるのか?一般市民がやっていいの?と。一般市民は知識がないのでそれはできない。私はたまたま去年の3月31日まで理化学研究所の研究をしてましたから内部の状態もよく知ってますし。

日本の社会から、正義が今失われていることを危惧していまして。やはり今回の件に関しては社会正義というものを守らなくちゃいけない。それと同時に日本の学術的な、研究の信用をもう一度復活させなくてはいけない。もしここで犯人を特定しなかったならば、ここ20年ぐらいは日本の学術界はは国際的な信用を失うことになるだろうと。…ベル研究所のヘンドリック・シェーンの場合にはきちんと裁判にも持っていったというのもあります。今回もきちんとそれをやらないといけないだろう。

この動画も2015年1月の時点での内容です。

小保方晴子氏への理研OBの刑事告発に対し、小保方氏の代理人・三木弁護士が反論!

参考

  1. STAP問題 告発状を警察が受理 (毎日放送 MBS NEWS):”告発状は今年1月に理研の元研究員の石川智久氏が提出していました。”
  2. STAP不正、窃盗容疑の告発受理…容疑者不詳 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2015年05月15日):”告発状などでは、理研の旧「発生・再生科学総合研究センター」(神戸市中央区)で2013年3月までの間に、小保方晴子・元研究員(31)が当時所属していた研究室から、何者かがES細胞入りのチューブ80本を盗んだとしている。”
  3. <STAP問題>ES細胞の窃盗容疑で告発受理 兵庫県警 (ヤフーニュース/毎日新聞 5月15日):”STAP細胞論文問題で、論文の共著者である若山照彦・山梨大教授(当時、理化学研究所チームリーダー)の研究室からES細胞(胚性幹細胞)が盗まれたとして、理研OBの男性が容疑者不詳で窃盗容疑の告発状を提出し、兵庫県警が受理したことが15日、明らかになった。…県警によると、受理は14日付。横浜市の理研研究所で上級研究員だった男性(60)が今年1月に告発状を提出していた。”
  4. ES細胞持ち出し混入の疑い 告発状受理 (NHKWEB 2015年5月15日):”STAP細胞の問題では、理化学研究所が、実際には別の万能細胞のES細胞だったと結論づけていますが、これを受けて研究者から警察に提出されていた告発状が受理されていたことが分かりました。”
  5. ES細胞を盗んだ?「刑事告発」された小保方さん――警察はどう動くのか(ヤフーニュース/弁護士ドットコム 2月2日):”STAP論文の筆頭著者である小保方晴子・元理化学研究所研究員が、既存の万能細胞であるES細胞を盗んで「STAP細胞」と偽った疑いがあるとして、刑事告発された。元理研上級研究員の石川智久氏(60)が1月下旬、兵庫県警に告発状を提出したのだ。…今回の告発状の提出を受けて、小保方氏の代理人をつとめる三木秀夫弁護士は「小保方氏がES細胞を窃盗したという事実はなく、その動機もない。告発状の内容は事実に反している」とコメントしている。”
  6. 窃盗で小保方氏を告発した石川博士「名誉毀損?受けて立つ」(東スポWeb 2015年01月28日):”…STAP細胞論文の不正問題に関連して、理化学研究所の元研究者で理学博士の石川智久氏(60)が26日、同論文の主著者で元理研研究員の小保方晴子氏(31)が研究室から胚性幹細胞(ES細胞)を盗んだとして、窃盗容疑での告発状を兵庫県警に提出した。県警は受理するか否かを慎重に検討する。…石川氏は言う。「小保方氏は当時、ハーバード大学のバカンティ教授の博士研究員として主な籍を置き、理研へは客員として出向している立場だった。A社から出向している人物がB社の物を盗んだとなれば、B社の知的財産を盗んだということになります。小保方氏もこれと同じ」…現段階で石川氏の告発状は兵庫県警に受理されていない。「(受理されるまで)これから半年、1年かかるか分からない。告発状を警察が用意したフォーマットに書き直したり、分かりにくい部分について警察から説明の要請があると思うので、真摯に応えていく。私のこの告発の究極のゴールは立件まで持っていくこと。先々は詐欺罪、横領罪まで進むべき。国民の税金が無駄に使われた実験なので、厳しく追及していかなくてはならない」”
  7. 窃盗容疑で小保方晴子氏を刑事告発へ(東スポWeb 2015年01月24日):”告発状に添付される証拠は、小保方研究室にあった「2つの箱」に入っていた「チューブ」の写真。1つ目の箱のチューブにはES細胞が入っていた。2つ目の箱のチューブには「STAP幹細胞」と書かれているものがあったという。だが、その中身はES細胞など別の細胞が入っていたという。”
  8. 小保方氏保管の「STAP細胞」はES細胞 理研外部調査委員会報告書と記者会見の模様【FULL動画】

辛い状況の仲間を助ける、ドブネズミの共感力

大変な思いをしている人に手を差し伸べるのは、人間や犬などの高等な動物だけが持つ優しさかというとそうでもないようです。関西学院大学の研究グループが、ラット(ドブネズミ)にも仲間を助ける感覚が存在していることを2015年5月12日にAnimal Cognition誌で報告しました。

下の写真に示すように、2つの区画のうち水を張ったほうに一匹のラットを入れ、他方にも別のラットを入れます。真ん中の透明な仕切りにはドアがついていて、水がないほうにいるラットはそのドアを開けて、水中にいるラットを助け出すことができるつくりになっています。このような装置で、ラットが水中の仲間を助けるため仕切りのドアを開けるかどうかを調べる実験を行いました。

RatRescueAnnotated
(説明の語句を除く写真部分は関西学院大学報道資料より転載)

この実験の結果、ラットが、水中にいる仲間のラットを助ける行動をとることが明らかになりました。

面白いことに、自分自身にこの辛い”水責め”経験があるラットのほうが、仲間を助けるまでの時間が早いということが示されました。下記の図で、横軸はセッション回数、縦軸はドアを開けるのにかかった時間。自らも”水責め”された経験があるラットは、2、3回のセッション後には仲間を速やかに助けることを学習しています。

RatRescue2
(関西学院大学報道資料より転載)

自分自身が過去に苦しんだことがある人のほうが、他人の苦しみを察する能力が高いということに通じるのでしょうか。

参考

  1. Nobuya Sato, Ling Tan, Kazushi Tate, Maya Okada. Rats demonstrate helping behavior toward a soaked conspecific. Animal Cognition, 12 May 2015 ; DOI: 10.1007/s10071-015-0872-2
  2. 溺れる友に手を差し伸べるラット  —ラットにおける援助行動— (関西学院大学 報道資料2015年5月11日)(PDFファイル3ページ):”関西学院大学文学部・佐藤暢哉教授およびその研究グループは、齧歯(げっし)類であるラットが、窮地に陥っている仲間のラットに対して共感し、その苦境から助け出すことを示しました。”
  3. Rats will try to save other rats from drowning (ScienceDaily May 12, 2015):”Rats have more heart than you might think.”
  4. ラットに共感能力:「助けなきゃ」水責めに仲間が反応 (毎日新聞 2015年05月12日):”ラットは、水に入れられた仲間がいると苦境を察して助けようとすると、関西学院大(兵庫県西宮市)の研究グループが実験で示し、独の比較認知科学誌(電子版)で12日発表した。”