若年者では抗うつ剤とプラセボに差なし LANCET

  1. 9~18歳の5260人を対象に行われた34件の臨床試験を調査
  2. 有効成分を含有しない偽薬より高い抗うつ作用がみられたのはフルオキセチンのみ(YAHOO!JAPANニュース/AFPBB News  6月9日

Comparative efficacy and tolerability of antidepressants for major depressive disorder in children and adolescents: a network meta-analysis (THE LANCET Published Online: 08 June 2016 DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S0140-6736(16)30385-3)

この論文で調査対象とされたのは、以下の14種類の抗うつ剤です。

  1. amitriptyline アミトリプチリン(トリプタノール、ラントロン) 第1世代三環系抗うつ薬
  2. citalopram シタロプラム(セレクサ)選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)。日本では未承認
  3. clomipramine クロミプラミン (アナフラニール)第1世代三環系抗うつ薬
  4. desipramine デシプラミン(パ-トフラン) 三環系抗うつ剤
  5. duloxetine デュロキセチン(サインバルタ) セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
  6. escitalopram エスシタロプラム (レクサプロ)  選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI)。シタロプラムの光学異性体のうちのS体
  7. fluoxetine フルオキセチン(プロザック) 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)。日本では未承認
  8. imipramine イミプラミン (イミドール、トフラニール) 第1世代三環系抗うつ薬
  9. mirtazapine ミルタザピン(レメロン、リフレックス) 四環系抗うつ薬。ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬 (NaSSA) 。
  10. nefazodone ネファゾドン(サーゾーン) セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
  11. nortriptyline ノルトリプチリン(ノリトレン) 第1世代三環系抗うつ薬
  12. paroxetine パロキセチン(パキシル) 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
  13. sertraline セルトラリン(ジェイゾロフト) 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
  14. venlafaxine ベンラファキシン(イフェクサー) セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

参考

  1. Comparative efficacy and tolerability of antidepressants for major depressive disorder in children and adolescents: a network meta-analysis (THE LANCET Published Online: 08 June 2016)
  2. The Lancet: Most antidepressant drugs ineffective for children and teens, according to study (EurekAlert! Public Release: 8-Jun-2016)
  3. Most antidepressants not working for children and teenagers – study (The Guardian Thursday 9 June 2016 01.48 BST)
  4.  「サインバルタがこんなに効くなんて思いませんでした」という言葉 (kyupinの日記 気が向けば更新 (精神科医のブログ) 2016-02-26 20:57:39):”結果だが、サインバルタの10㎎は目が覚めるように奏功したのである。同時に、もはや必要でなくなった薬を整理できた。彼女は、「サインバルタがこんなに効くなんて夢にも思いませんでした」と話していた。また、全ての感性が生き返ったと表現していた。臨床的に、患者さんの忍容性は時間が経つと変化することは良く経験する。”
  5. 『うつの8割に薬は無意味』 (井原 裕 朝日新聞出版 2015/5/13)
  6. サインバルタカプセル(デュロキセチン)の効果・特徴 (せせらぎメンタルクリニック|精神科・心療内科 2014.03.25) :”効果が強いわりには副作用も少なく、従来の抗うつ剤が苦手としていた「意欲」へ効果を示す点が、サインバルタが支持されている理由でしょう。意欲低下が主体のうつ病の患者さんや他の抗うつ剤で意欲が今ひとつ改善しない患者さんによく用いられます。”
  7. Irving Kirsch. Antidepressants and the Placebo Effect. Z Psychol. 2014; 222(3): 128–134. Abstract: Antidepressants are supposed to work by fixing a chemical imbalance, specifically, a lack of serotonin in the brain. Indeed, their supposed effectiveness is the primary evidence for the chemical imbalance theory. But analyses of the published data and the unpublished data that were hidden by drug companies reveals that most (if not all) of the benefits are due to the placebo effect. Some antidepressants increase serotonin levels, some decrease it, and some have no effect at all on serotonin. Nevertheless, they all show the same therapeutic benefit. Even the small statistical difference between antidepressants and placebos may be an enhanced placebo effect, due to the fact that most patients and doctors in clinical trials successfully break blind. The serotonin theory is as close as any theory in the history of science to having been proved wrong. Instead of curing depression, popular antidepressants may induce a biological vulnerability making people more likely to become depressed in the future.
  8. 抗うつ薬は本当に効くのか アービング・カーシュ (Irving Kirsch) 2010年 エクスナレッジ
  9. Irving Kirsch. Challenging Received Wisdom: Antidepressants and the Placebo Effect. Mcgill J Med. 2008 Nov; 11(2): 219–222.
  10. 抗うつ薬の時代―うつ病治療薬の光と影 デーヴィッド ヒーリー (David Healy) 2004年 星和書店
  11. 獨協医科大学越谷病院 こころの診療科 “当科は本邦の大学病院で唯一の「薬に頼らない精神科」です。患者さまは精神科に、薬物療法だけを求めているわけではないはずです。本邦精神医学の薬物療法偏重(いわゆる「薬漬け」)の現状に抗して、私どもは一石を投じるべく療養指導・精神療法中心の治療をめざしています。過量処方に疑問をお感じの患者さま、強力な薬物療法を希望しない患者さまは、どうぞ当科へおこしください。” “うつ・不安の患者さまのほとんどは、睡眠時間の極度の不足、不安定な睡眠相、過度の飲酒(成人の場合)、極端な運動不足、対人交流の乏しさなど、生活習慣 上の問題を伴っています。それらを医師の指導のもとに少しずつ是正していけば、必ずしも薬物を使わなくても、諸症状は軽快します。不眠の場合も、就床・起 床パターンと日中の活動量の見直しによって、強い睡眠薬を使わなくても治っていきます。”
  12. プラセボとは?(武田薬品工業株式会社):”乳糖やでんぷんなど、くすりとしての効き目のないもので錠剤やカプセル剤をつくり、頭痛の患者に本物のくすりとして服用してもらう実験をすると、半数くら いの人が治ってしまうこともあります。くすり(に似たもの)を飲んだという安心感が、体にひそむ自然治癒力を引き出すのかもしれません。これを「プラセボ効果」といいます。”