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東京大学が医学部研究不正疑惑論文に関する調査報告書を国民に開示しないのは妥当(総務省審査会第5部会の判断)

以前、総務省の判断を紹介しました。 ⇒ 東京大学が医学部研究不正疑惑論文に関する調査報告書を国民に開示しないのは違法(総務省審査会第4部会の判断) 新たな総務省の答申が公開されていたので転載します。不開示にする場合には具体的な理由を示す必要がありますが、前回、東大が示した理由は法律の条文をコピペしただけのお粗末なもので第4部会に違法と認定されていました。きっと、不開示とする具体的な理由が自分でも見いだせず、苦し紛れに条文のコピペで済ませてしまったのでしょう。 違法と認定されて困った東大、今度は法律の条文のコピペに毛が生えた程度の理由を示したところ、総務省審査会第5部会は驚いたことに東大の示した理由をそのままオウム返しにして認めてしまったようです。東大も第五部会も、判断の理由をろくに示さずに不開示が妥当と言っているわけで、情報公開法が全く機能していません。日本の司法は死んでますね。 ”個別の図表パターンについては,当該調査において,不正の疑いありと指摘のあった事項について,図表の作成の過程を調査委員会において検証した結果を補足説明するために図示したものであるため,請求者による「誤魔化すための苦肉の策」という指摘は当たらない。したがって,東京大学の決定は妥当なものであると判断する。 … 審査請求人は,その他種々主張するが,いずれも当審査会の上記判断を左右するものではない。” というのですから、この答申は、常識も良識も研究者の世界の実情も無視した、東大に迎合しただけの判断でしかありません。妥当と判断した理由をちゃんと説明する責任を放棄した答申にしかなっておらず、自分の役目から逃げた司法の人間が東大に尻尾を振っただけに見えます。 東大医学部では手描きでグラフを作成してよいということに、国がお墨付きを与えたということなのでしょう。この国には研究倫理という概念がないのでしょうか。エラーバーを棒グラフの中に押し込んで、バラつきが小さく、有意差があるように見せていたことが露呈したにも関わらず、グラフと実験で得られた値は確かに一致していないけど、わざとやったわけじゃないので不正ではないという人間が正気だと言えるでしょうか。そんなセリフが東大のリーダーたち(=科学者)から出てきているのです。ほんと、この国の科学は終わってます。 いや、まあ、理研のSTAP細胞事件の対応を見たときも、この国の科学は終わっていると思ったので、別に何も終わっちゃいないのでしょうが、それでも絶望的な気持ちになります。STAPのときは、不正を疑われた調査委員長の先生が翌日には実験ノートをネット上にあげて身の潔白を証明しました。あの対応には感銘を受けました。実験した結果を論文にしたのだから、実験ノートが当然存在する。当たり前のことといえば当たり前のことです。東大医学部の疑惑論文には、実験ノートが存在するのでしょうか?論文の値が測定値と異なることは東大もはっきりと認めているわけです。だったら、測定値で本当に有意差が出るのか、示してもらいたいものです。それを示さずに不正はなかったので、何も説明しませんですって?それって研究不正があったことを知りつつ、隠蔽しているだけではないのですか???   諮問庁 : 国立大学法人東京大学 諮問日 : 令和 2年10月 5日(令和2年(独情)諮問第39号) 答申日 : 令和 3年 3月 8日(令和2年度(独情)答申第45号) 事件名 : 22報論文に関する調査報告書等の一部開示決定に関する件   答 申 書  第1  審査会の結論 別紙に掲げる文書1ないし文書5(以下,併せて「本件対象文書」という。)につき,その一部を不開示とした各決定は,妥当である。 第2  審査請求人の主張の要旨 1 審査請求の趣旨 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(以下「法」という。)3条の規定に基づく開示請求に対し,令和2年3月26日付け第2017-58号,第2017-58の2号,第2017-58の3号及び第2017-58の4号により国立大学法人東京大学(以下「東京大学」,「東大」,「処分庁」又は「諮問庁」という。)が行った各一部開示決定(以下,順に「原処分1」ないし「原処分4」といい,併せて「原処分」という。)について,不開示部分のすべての開示を求める。 2 審査請求の理由 審査請求人が主張する審査請求の理由は,審査請求書の記載によると,おおむね以下のとおりである。 (1)東京大学は,22報論文に関する調査報告の骨子しかウェブ上で公開していない。特定研究科Bに関しては,「論文(図)5報(16図)について不正行為があったと認められた。」と結論している。それに対して,特定研究科Aに関しては,「申立のあった5名について不正行為はない」としか述べていない。これは,なんとも不可解な日本語表現である。「朝,ごはんを食べましたか?」と聞かれて,パンを食べていたのに「朝,ごはんを食べていません。」と答える「ご飯論法」は,不正を隠したい政治家の常套手段であるが,東大のこの発表の仕方はまさにご飯論法である。特定告発者が告発したのは,5名の人間ではなく5名の教授の研究室から出版された個々の論文の個々の図に関してである。なぜ,特定研究科Aに関しては特定研究科Bの調査報告と同様に,「申立てのあった論文の図に関して不正行為はない」と言えなかったのか?東大が用いたこの不可解な日本語表現は,研究不正が隠蔽されたのではないかという強い疑念を生じさせる。実際のところ,調査報告書には,むしろ,データ捏造の事実を強く示唆する文章が存在する。これまでにわずかばかり開示されたところを読んでみると,論文の図表が示すデータはオリジナルデータ(実験で得られた測定値)とほとんど異なっていたという意味合いの文章や,論文の図表作成において手作業を加えるのは特定分野の研究においては通常のことであると主張する文章が存在する。実際と異なる数値を発表するのはデータの捏造そのものであるし,統計ソフトを用いれば平均値や標準誤差などは自動的に計算され,グラフの描画まで自動的に行われるのが通常であって,人間が手作業でグラフを作成する必要性などどこにもない。報告書のこれらの記述は,図表が捏造されていたことを不正調査委員らが認めていると解釈できる。不正行為を追及された政治家が,「広く募ったが募集はしていない。」などと日本語として意味のなさない答弁をして失笑を買ったというニュースがあったが,東大の言っていることは,それと同レベルである。手作業でグラフを作成するのが通常だというのなら,それは東大特定学部Aではデータを捏造することが通常だと自ら認めているようなものであろう。 研究業績に基づいて年間およそ○円もの研究助成を受けている,日本の頂点に立つ大学には,それ相応のresearchintegrityというものが要求される。不正の有無を詳細に報告する義務があるのは当たり前すぎて,論を待たない。 東京大学は平成18年に研究倫理に関する行動規範を発表している。そこには,「研究活動について透明性と説明性を自律的に保証することに,高い倫理観をもって努めることは当然である。」「広く社会や科学者コミュニティによる評価と批判を可能とするために,その科学的根拠を透明にしなければならない」「十分な説明責任を果たすことにより研究成果の客観性や実証性を保証していくことは,研究活動の当然の前提であり・・・その責任を果たすことによってこそ,東京大学において科学研究に携わる者としての基本的な資格を備えることができる。」などの言葉がある。今回の東大が調査報告書や調査資料のほぼすべてを不開示としたのは,東大自らが過去に示した規範から大きく逸脱するものであり,現執行部による裏切り行為と言えよう。文部科学省も「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」の中で「研究者間相互の吟味・批判によって成り立つチェックシステムが不可欠である」と,相互批判の重要性を力説している。また,日本学術振興会は,「研究活動の公正性の確保及び適正な研究費の使用について確認・誓約すべき事項」において,「研究成果の発表とは,研究活動によって得られた成果を,客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ,研究者コミュニティに向かって公開し,その内容について吟味・批判を受けることである」と述べており,やはりデータを研究者コミュニティが吟味・批判できるようにすることの必要性を述べている。つまり,東大が調査報告書や調査資料を全面的に開示して,外部の研究者によるデータの吟味・批判的な分析を受けることは,研究の世界において当然のことである。このような相互批判は科学者にとって通常の営みにすぎず,東大が不開示理由とするような,将来にわたって研究が妨げられるとか,調査が妨げられるなどということはあり得ないのである。現実離れしたことを言い訳に持ち出して,法的な根拠なしにほぼすべてを不開示することは,許されない。 不正がなかったから説明しないという東大のやり方を認めると,研究不正の組織的な隠蔽を許すことになり,日本の研究倫理を大きく後退させることになる。研究者コミュニティや,さらには一般の国民が東大特定学部A論文における研究不正の有無を検証できるように,調査報告書および調査資料は全面的に開示されるべきと考える。 特定告発者の告発は,特定ニュースなどで大きく取り上げられており,特定ニュースの記事のリンクから容易にその告発文書の内容を閲覧できるほか,特定誌のウェブサイトもこの事件を取り上げており,告発文を紹介している日本のブログ記事にリンクが張られているので,こちらからも告発内容を読むことができる。この事件が報道されたときには研究者の間で大きな話題になったわけであるし,今でもこのように,世界中の研究者が容易に告発内容を閲覧できるため,特定告発者の告発内容は事実上,公開されたものといえる。よって,東大が調査報告書において告発内容を不開示にする理由も全くない。 (2)第2017-58号(原処分1)に関して 研究不正に関する告発がなされた場合に,どのような調査が行われるべきかは,文科省によりガイドラインが示されている。東京大学はこのガイドラインに従って調査したことを社会に示す責任があるし,そのガイドラインに従った事実を示したからといって「事務の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」ことはない。報告書の開示が,過去にさかのぼって報告書作成事務に影響することは物理的にありえない。将来に関しても,ガイドラインに従う限り何ら支障は生じ得ない。したがって,不開示とする法的根拠がない。 委員名・構成委員名を開示すれば「今後,同種の委員会が設置された際に,申立者,調査対象者及び関係者等から当該委員への圧力や干渉等が生じ」というが,既に終了している調査に関して圧力や干渉が生じて調査が妨げられることはないし,将来の調査に関しては調査終了まで氏名を公表しなければ,圧力や干渉が生じる恐れはない。実際,他大学における同様の不正調査報告では調査委員の氏名が全て公開されている(インターネットを検索すればそのような例が見つかる)。ほかの大学で当たり前にやっていることが,東大にできない理由はない。委員の氏名を不開示にすると,非告発者らと親しい人間ばかりが選出されていたのではないかという疑念すら生じさせる。調査委員会が公明正大に構成されていたのであれば調査委員氏名を不開示にする理由や根拠は存在しない。 …