「 日本の研究制度の問題点 」 一覧

若者は現状を見切り無謀な挑戦の回避を

アカデミアの現実(学部学生の皆さんへ) 実験科学の場合ですが、大学の先生は研究のための「戦力」が必要なので、学生が自分たちの大学院に進学してくれることを望みます。しかし、(多くの先生方の)ホンネを暴露すれば、それはその先生自身のため(=自分の研究を推進するため)が第一義的な理由であって、学生のため(=学生の人生にとって良かれという気持ち)では必ずしもありません。実際、優秀だと見込んでいた学生が就職したり他大学の院に進学してしまい、がっかりしたという先生の声を聞くことがめずらしくありません。大学院に進学した中のごく、ごく、ごく一部は研究者としてアカデミアの世界で生き残ることでしょう。それ以外の人は、自分で自分の人生を勝手に見つけるしかありません。そんなことは当たり前じゃないかという外野の声が聞こえてきそうですが、漠然と「研究者になれたらいいなあ。」と思っている学生と、「とりあえず、大学院生が入ってきてくれないと困る。」という先生との間のあやふやな期待感の膨らみが、キャリアパスに関する冷静な分析の必要性をウヤムヤにする恐れがあります。 あなたが博士号を取得してさらに独立した研究室主宰者のポジションを得るときに要求される研究業績のレベルは、既にパーマネントの職にいる教授が研究室を維持するために要求されるレベルとは、全く異なり、そのハードルははるかに高いのです。つまり、「一流誌には届かなかったけれど、とりあえず論文がやっと出せて良かった。」と教授と一緒に喜んでいるようでは、あなたに研究者としての未来はないのです。今後、日本の科学研究の制度が変わるかもしれませんが(改善してほしいと思いますが)、現実を冷静に見たうえで自分が納得できる選択、後で後悔しない選択をする必要があります。 会社なら、会社の業績に多大な貢献をした社員は出世こそすれ首を切られることはないだろう。アカデミアではそのラボの主要な研究テーマで主要な論文業績を挙げた人間が切り捨てられ、ボスだけが安泰というシステム。これを仕方がないで済ませるのなら、若者にチャレンジを勧めるのは詐欺的ではないか? — 日本の科学と技術 (@scitechjp) 2018年6月16日 そういったところの教育を見ていると、博士の1年目の最初に「この中でプロフェッサーになれるのは3%。残りの97%はなれない。ではなれなかったときに、どういうキャリアを描くのか」ということについて、1週間合宿して議論させるんです。 (人口減少時代のウソ/ホント 大学と人材を腐らす「19世紀式」を脱せよ 検証・大学教育改革 with 田中弥生(4) 森田 朗 日経ビジネスONLINE 2015年9月29日)   平成30年科学技術白書が公表される 2018年6月14日の日刊工業新聞の社説には、文部科学省が12日に発表した科学技術白書を受けて、オピニオンが掲載されていました。その後半部分を引用します。 00年になってからノーベル賞自然科学系3賞を受賞した日本人(外国籍含む)は17人になる。だが、日本の科学研究の現状が白書の記した通りだとすると、果たして将来にわたってノーベル賞受賞者が出るのかどうか心配になる。 人間は一定程度、豊かになると、がむしゃらさがなくなるのかもしれない。だが、天然資源小国の日本にとって最大の資源は「知」である。「知」が衰退すれば、国全体の活力も失われることは火を見るよりも明らかだ。 白書は「イノベーションの根幹を担う人材の力、多様で卓越した知を生み出す学術研究や基礎研究を支える研究資金といった基盤的な力の強化が必要」と記す。もちろん研究資金が豊富な方がよいのは当たり前だが、それだけではない。若者に現状に甘んじることなく、研究に限らず、何事にも世界にチャレンジする意識を植え付けることが重要ではないだろうか。 引用元:https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00477378 この社説の主張があまりにも今の研究の現場の感覚から乖離しているため、若者たちが勘違いしないように、この社説に対するツイートをまとめておきます。 若者の意識を変えればうまくいくと考えるのは思考停止であり、戦時中の特攻精神の称賛と同じで無責任です。社説を書く立場の人がこのような認識では良くないと思います。若者が研究にチャレンジできる環境をどうつくるかを議論して欲しいです。https://t.co/hqXaBHDuXP — Satoshi Tanaka (@sato51643335) 2018年6月13日 https://t.co/OLL17zj1Bm 日本の研究力が落ちている理由は簡単、博士までとっても『任期付研究員』、要するに『フリーター』にしかなれない可能性が高いからです。たいていの人は貧乏くらいは我慢できるが、生きていけないレベルになると無理。 — buvery (@buvery) 2018年6月14日 40歳頃に任期切れで家族ともども路頭に迷う可能性が99%くらいの競争に「挑戦する意識を植え付け」ない方がいい。「将来にわたってノーベル賞受賞者が出るのかどうか心配」する前に研究者から自殺者が出ないか心配すべき。生命維持も危うい人達に「豊かになると、がむしゃらさがなくなる」って何? — 日本の科学と技術 (@scitechjp) 2018年6月14日 社説/科学技術白書 若者に挑戦する意識を植え付けよう | …

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任期が切れた助教はどこへ行くのか?

ツイッターなどで話題になっている、はてな匿名ダイアリーの記事の一部を抜粋して紹介します。全文は引用元サイトでごらんください。 周囲のパーマネントの職についている人と比べても、むしろかなり研究者としての能力を発揮しているにもかかわらず、任期付き職であるがために、去らざるを得ない人が多いのではないでしょうか?   講義だって持ったし学生の指導だってやった。自分で外部資金取ってきて、論文だって毎年筆頭をひとつは出したさ。 … 公募もずいぶん出した。北から南、東から西。ときには海の向こう。渾身の研究計画を書いて、業績欄には年齢を超える数の論文をならべた。10にひとつは面接に呼ばれた。その都度イチから推敲したプレゼンを準備し、見知らぬ土地で熱く語った。 … だけども、内定の声はかからなかった。 … 多くの先生方に言われたのは「何とかしてやりたい気持ちはあるが…こればかりは」というやつだ。 … 学生は言ってくれたりもする。「先生に見てもらえて良かった」と。 … こうして任期切れ助教は大学を去る。次にどこにいくのかは、僕だって知らない。 (引用元:任期切れた助教はどこにいくの はてな匿名ダイアリー anond:20180326180513) この記事に関するネット上の感想などをいくつか紹介します。 知っている先生の中で、金持っている人に電話しろ。会社にも。そうすれば誰かが誰か知り合いを見つけてくれる。(anond:20180326180513) アラフォー特任助教です。僕もこの年度末で任期満了です。新着論文レビューにも書いたことがあります。留学先でも論文を出しました。グラントもとってます。でもアカデミアからリタイアです。… 日本でも海外でもアカデミアの職が見つかりませんでした。… 現在のアカデミア研究業界はおかしすぎないですかね?(anond:20180326180513)   このアンケートを見ている皆さんは、「任期切れで研究職・大学教員職を失ってその後無職or専業非常勤講師orフリーター」などの不安定なキャリアに陥った人を — TJO (@TJO_datasci) 2018年3月30日 参考 「博士」に未来はあるか—若手研究者が育たない理由 (仲野 徹 nippon.com 2018.03.14) 博士課程を出た先輩がなかなか任期なしポストに就けない事態を目の当たりにする若者が、博士課程への進学をためらうのは当然のことだろう。 無題 研究者の声 (BioMedサーカス.com 2012年6月21日更新) 大学院での研究では同期よりも先輩よりもimpact factorの高い雑誌に論文が掲載された。これまでの研究室の歴史の中で自分の論文が一番高いimpact factorだった。しかし、自分だから当然の結果だと思っていた。そのときは、挫折などは凡人が感じるものだと心の底から信じきっていた。雲行きが怪しくなったのは、某財団から奨学金を獲得して海外に留学してからだった。奨学金も特に苦労せずに獲得できたため、海外のLabで自分が研究すれば2年ほどでCellやNature、Scienceに論文が出るものだと思っていた。

雇止めに関する各大学・研究所の対応状況

平成25年(2013年)4月の労働契約法改正から5年というリミットの最終年度となった今、大学や研究機関では、研究支援を行ってきた有期雇用事務職員、研究室秘書、研究補佐員(ラボテクニシャン)の雇止め問題が深刻化しています。 今起きている問題は全て2013年の時点で予想されていたことですが、残念ながら、有効な手が打たれないまま今に至ってしまいました。下記の榎木英介氏の記事(2013年)では、この法律が日本の科学研究に及ぼす影響に関して、議論されています。 労働契約法改正は科学者コミュニティにどのような影響をあたえるか … 一つは、たとえ望んだとしても、常勤雇用の研究者や研究補助者を増やせないという現状がある。… 二つ目は、この法改正の解釈が専門家間で異なっていることである。… 三点目にあげたいのが、「無期契約」の意味である。…  (労働契約法改正は朗報か 榎木英介 BioMedサーカス.com 2013年11月7日更新)   教授から厚い信頼を寄せられ、大学院生にも慕われて、専門的な職務を遂行する高い能力を持った人たちの雇用が継続できない、現在の日本の研究システムは本当に矛盾しています。 (以下、引用箇所の太字強調は当サイトによる) 今までの大学の説明会で、これだけの人が出席したことがあっただろうかという、物凄い大盛況の会場の模様で、空いた席も無い状況だった。… 研究室秘書さんからは、怒涛のごとく質問が飛び交い、中には泣き出してしまう人もいた位で、とても可哀想だった。そもそも、改正労働契約法の趣旨が、雇用期間が5年を超えて働き続ける場合、無期転換しなくてはならないという、雇用の安定を図る制度のはずが、むしろ雇い止めを助長する制度になってしまったという皮肉な結果になっているのが問題なのだ。 (無期支援員(仮称)制度についての説明会が突然に開催されました 国立大学職員の趣味日記 2017年02月18日) 安定した雇用自体が一部を除いて望めなくなっていて、さらに研究環境を悪化する方向に追い詰めています。とりわけ技術職員の皆さんの技術が継承できない、質が保てないというのはとても大きな問題です。スキルアップしてやっとこれからというところでやめなければならない。賽の河原の石積みのような状況で、中で働いている職員の方々も職業に誇りを持てないというのを感じました。  また、正規職員と非正規職員との間の身分の違いみたいなものによる差別や分断が研究職場をより荒んだものにしているように思います。.. 誰も得する人がいないのに、荒んだ研究環境が続いているというところに絶望感を感じます。私はこういう状況を何とかしなければと言い続けて15年以上になりますが、なかなか明るい兆しが見えないというのが正直なところです。(KOKKO 2015年11月号 特集 疲弊する研究現場のリアル)   雇い止め撤廃へ向けた各大学・研究機関の動き 2017年12月19日現在、大学により対応がかなりばらついています。早い段階から雇い止め撤廃に動いた大学もあれば、未だに雇い止めを強行しようとしている大学や研究機関もあります。 東大教職員組合の佐々木彈執行委員長によれば、有期雇用者を無期雇用に転換する際、大学側が、資金不足でできないと言い訳する場合があるという。しかし、「無期雇用化に昇給や待遇改善は必要ない。現職を雇い止めしたところで、業務が続くなら後任を雇わなければならない。金が無ければ無期雇用に出来ないというのは都市伝説。合理性はない」と批判した。 文科省が昨年度実施した調査では、86の国立大学法人のうち、有期職員に契約更新の上限を設けていないのは、浜松医科大や秋田大など6校。約6割にあたる56校は無期転換について「職種によって異なる対応を行う」と事実上の様子見状態だった。 (東大の非正規教職員「5年上限ルール」撤廃へ キャリコネ 2017年12月19日)   以下では、各大学や研究機関個における最新の動きに関する新聞報道等を紹介します。 全国立大学法人(86法人)及び大学共同利用機関法人(4法人)を対象に、平成29年3月31日時点における無期転換ルールへの対応方針について実施された調査結果によれば(PDF)、①契約更新に上限を設けない(原則、無期転換する)と回答したのは、三重大学、秋田大学、浜松医科大学、京都教育大学、奈良教育大学、愛知教育大学の6大学しかありませんでしたでした。 三重大学 三重大学で5年を超えて働いている事務補佐員、技術補佐員、非常勤講師をはじめ有期雇用労働者のみなさん 来年4月1日から学長への申出により「無期雇用」に転換できます。(三重大学教職員組合 2017年12月 週刊あのつ第198号 20171219.pdf) ①契約更新に上限を設けない(原則、無期転換する)パートタイム職員については、契約更新に上限を設けない(原則、無期転換する)が、フルタイム職員については従来から雇用期間が通算3年を超えないこととしている。また、パートタイム職員から引き続きフルタイム職員として雇用された場合、通算5年を超えて雇用できないこととし、原則、フルタイムのまま無期転換権が生じないようにしている。なお、このような場合であっても雇い止めをするのではなく、パートタイム職員として雇用を継続できることとなっている。(PDF  平成29年3月31日時点における無期転換ルールへの対応方針 文部科学省) 三重大学教職員組合 浜松医科大学 ①契約更新に上限を設けない(原則、無期転換する)(PDF  …

理研が研究者の無期雇用枠を拡大へ

読売新聞が報じたところに拠れば、理化学研究所は任期付き研究者を無期雇用に転換する制度を4月から導入することを決めました。PIだけでなく一般の研究者にも適用されるようです。 報道 理研、終身雇用を4割に…「任期付き」から選抜 (YOMIURI ONLINE 2017年01月08日):”日本最大級の研究機関・理化学研究所(理研)は、60歳の定年まで働ける長期雇用の研究者を、将来的に全体の4割に増やす方針を決めた。” ネット上の反応 これは大変化ですね。准主任研究員(113番元素の森田さんとか)は任期付研究員しか雇えないとか、プロジェクト型の研究センターは全員任期付だったのに。 / 理研、終身雇用を4割に…「任期付き」から選抜 : 読売新聞 https://t.co/CD3HJuaHgo — Dr. Roy Ich-Meyer (@ichimiyar) 2017年1月8日 そもそもがなんのために任期付の研究者を増やしたのか、そしてなぜその方針を修正するのか、それらが語られなければ「定見に欠く」との批判が不可避であろうぞ。 / 理研、終身雇用を4割に…「任期付き」から選抜(読売新聞) https://t.co/UR2FU33WQz — 念波 (@nennpa) 2017年1月8日 研究者の受け皿は社会的にあまり無いことが明らかになってしまいましたからね。厳しくしすぎると志す人がいなくなる? >理研、終身雇用を4割に…「任期付き」から選抜(読売新聞) https://t.co/1CZanprmrO #Yahooニュース — net2ml (@net2ml) 2017年1月8日 理研、終身雇用を4割に…「任期付き」から選抜(読売新聞) – Yahoo!ニュース https://t.co/R4eKP0TfAM #Yahooニュース …