早稲田大学が小保方氏の博士論文調査書を公開

早稲田大学が、小保方晴子氏の博士論文に関する調査書を公開しました。小保方氏の学位論文における不正行為は認めつつも、「博士論文における不正行為と博士号取得との間に因果関係は存在しない」ので学位は取り消さないという結論です。

どういうことかというと、小保方氏の場合は既に海外の学術誌に論文が一報出ていたので、それによりすでに博士号の取得条件が満たされており、大学に提出する博士論文は(不正があろうがなかろうが)学位取得の審査に大きな影響を与えるものではなかったという論理です。

小保方晴子氏の博士取得までの経緯は報告書にまとめられています。

平成20年4月1日    早稲田大学理工学術院先進理工学研究科生命医科学専攻博士課程進学     
平成20年9月1日    ハーバード大学で研究開始          
平成21年8月末    日本に帰国    
平成22年6月30日    Tissue Engineering誌へ論文投稿       
平成22年9月30日    Tissue Engineering誌が論文受理                 
平成23年3月15日    早稲田大学が小保方氏に対して博士学位授与       
平成23年4月    理研CDB客員研究員
報告書 8ページの内容を簡略化して記載)

学位取り消しをしないという判断において考慮されたもう一つの点は、学位取得者はすでにそれに基づいて社会的な地位を得ていて影響が大きすぎる、というもの。

“… 大学から博士の学位を授与された者は、それを前提として就職する等、生活の基盤及び社会的関係を築いており、それに伴い、多くの人がその前提のもと、その 者との社会的関係を築いていくのが通常であるところ、学位を取り消すことは、学位授与を前提として形成された、これらの生活及び社会的関係の多くを基礎か ら破壊することになり、学位を授与された者及びその者と関わり合いをもった多くの者に対し、不利益を中心とする多大な影響を与えることになる。…” (報告書47-48ページ)

研究者としての能力がないにもかかわらず不正行為により業績を挙げ、研究者として生き残り、教育者としての能力もないのに大学でポジションを得ている人たちが存在する一方で、真面目に研究をして実績もあるのに職を得られず研究の世界から去っていく人が多いという不条理な現実があります。早稲田大学の今回の決定は、サイエンスに蔓延するこの著しい不公平感をさらに助長するものです。

“…本件博士論文には、著作権侵害行為、創作者誤認惹起行為、意味不明な記載、論旨が不明瞭な記載、Tissue誌論文との記載内容と整合性がない記載、及び論文の形式上の不備と多くの問題箇所が認められた。そして、本来であれば、これらの問題箇所を含む本件博士論文が博士論文審査において合格に値しないこと、本件博士論文の作成者である小保方氏が博士学位を授与されるべき人物に値しないことも、本報告書で検討したとおりである。
しかし、本件においては、本研究科の博士論文審査において本件博士論文が合格とされ、本件博士論文の作成者である小保方氏に対して博士学位が授与されてしまった。
このことは、博士学位を授与した早稲田大学、及び早稲田大学において過去に博士学位を取得した多くの人々の社会的信用、並びに早稲田大学における博士学位の価値を大きく毀損するものであった。…(報告書78ページ)

早稲田大学がいくら報告書の中で小保方氏らを厳しい、批判的な言葉で糾弾したとしても、行動が伴わなければ説得力を持ちません。「早稲田大学から授与された博士号には全く価値がな い」というメッセージを早稲田大学自らが日本中に発信しているだけのことです。

困ったことに、この問題は早稲田大学だけにとどまりません。日本で研究レベルがトップク ラスという私立大学の現状がこれでは、日本人の研究者が世界に出て行ったときに、「日本の大学から授与された博士号には全く価値がない」とみなされる恐れがあります。

また、報告書では提出論文が「下書き」だったのかどうかを論点の一つにしています。自分の大学院生活の集大成である博士論文を製本するときに、「下書き」と「本物」とを取り違える大学院生などいません。本来なら荒唐無稽すぎて論点にすらなり得ないのに、驚くべきことに、早稲田大学調査委員会は小保方氏の「うっかり下書き製本」説を真実だと認め、小保方氏の主張に寄り添う理由を挙げています。

“本調査において、小保方氏は、「本件博士論文は、最終的な完成版の博士論文ではなく、作成初期段階の博士論文を誤って製本してしまったものである。」等と供述する。また、小保方氏からは、かかる主張の根拠として、最終的な完成版の博士論文であると主張する論文(以下「小保方氏主張論文」という。)が平成26年5月28日に本委員会に対して提供され、小保方氏は、「小保方氏主張論文は、主査及び副査の本件公聴会における指導を受けて、公聴会時点の論文を修正して作成したものである。」等と供述する。…”(報告書34ページ)

“…本調査において、小保方氏から本取り違えの主張が初めてなされたのは、(a)平成26年4月30日であったが、小保方氏が本委員会に対して小保方氏主張論文を送付したのは、同年5月27日であり、主張が初めてなされた時点から小保方氏主張論文の送付がなされるまでに1か月程度の期間が経過しており、このことは、本取り違えの主張の真実性を否定する可能性がある。…”(報告書39ページ)

“…小保方氏主張論文が、本件博士論文の問題点を指摘され、最近作成したも(d)のだとすれば、「問題がある」等として報道等において厳しく批判がなされた序章の修正もなされているのが通常であるが、小保方氏主張論文の序章においては、この点が修正等されず残されている。また、ウェブサイトにおいて「問題がある」等として取り上げられているFig. 6の画像、Fig. 12のIの画像、Fig. 17等の修正がなされているのが通常であるが、やはり、小保方氏主張論文においては修正等されず残されている。…”(報告書38ページ)

こちらが本物でしたといって3年以上も遅れて提出された博士論文中には、まだ、下書きのときの不正行為の痕跡が修正されずにそのままたくさん残っていたので、最近作成されたものではないという証拠になるという、なんとも好意的な解釈です。

 

Tissue Engineering誌論文の内容を下敷きにしたという博士論文に数多くの不正行為が見つかったのですから、逆に、この不正まみれの博士論文と同じ研究内容のTissue Engineering誌論文にはそもそも不正行為がなかったのかどうかが非常に気になります。ここを追及しないのもおかしいのですが、調査書ではほとんど問題視していません。

“…第2章から第4章までは、Tissue誌論文で論述されている実験と同一、又は、その一連のものとして行われた実験をもとに記載されている。
Tissue誌は、いわゆる査読付欧文学術雑誌であり、その分野の高度の専門的知識をもち、かつ独立、公平性の高い査読者が論文内容のオリジナリティ、教育的価値及び有効性を考慮に入れた上で、内容を評価、検証し、その結果、内容の明確性、正確性、論理性等が掲載に値するとされた場合のみ、掲載を許される。そのため、Tissue誌がその掲載を受理したことは、査読者が上記一連の実験の実在性に疑問をもたなかったことを示している。
この事実に加えて、本調査においては、以下の事情が認められた。
(a) 小保方氏は、「これらの実験は主にハーバード大学で実施した。」、「それを裏付けるデータ等(ラボスタッフ共通の実験ノート等)は同大学に存在する。」等と供述する。
(b) S氏は、小保方氏と同様の供述をした上、さらに具体的に、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●等と供述する。
(c) 平成21年から平成22年の日付が入った小保方氏のノートの抜粋(写し)及び顕微鏡写真等の電子データが存在している。
これらの事情等に照らすと、本件博士論文第2章から第4章のもととなった実験の実在性を推認できる。..”

Tissue誌は査読付英文誌ですが、実は小保方氏が留学した先のハーバード大学チャールズ・バカンティ教授が作った雑誌です。論文受理の判断において、差読者による査読結果だでけでなく編集者の意向が大きく反映されることを考えれば、自分がFounding Editorである雑誌に自分の論文を掲載させることがいかに容易なことかは想像に難くありません。しかも、小保方氏の論文に関してはインターネット上でDNA電気泳動の写真データに関して疑義が持ち上がり、バカンティ教授が後から「修正」をしています。このようないきさつと、今回の問題の重大性を考えれば、ハーバード大学に存在するはず実験ノートの内容をチェックするくらいのことは当然すべきだったはずです。バカンティ教授に対してコンタクトをとらずに、まともな調査ができたのか甚だ疑問です。

参考

  1. 「先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」調査報告について(早稲田大学 2014/07/19):”2014年3月31日に設置した「大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」による調査報告書が7月17日、早稲田大学総長 鎌田薫に提出されましたので、以下の通り公表いたします。…”
  2. 先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会調査報告書 全文(7月19日掲載)(PDFファイル
  3. 先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会調査報告書概要(7月17日掲載)(PDFファイル)
  4. 先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会調査報告書 別紙(7月19日掲載)(PDFファイル
  5. 早稲田大学大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会の設置について (早稲田大学 2014/03/28):”早稲田大学は、3月17日付で先進理工学研究科から調査委員会設置の要請を受け、小保方晴子氏(2011年 先進理工学研究科博士後期課程修了、同 博士(工学)取得)の博士学位論文に関する調査委員会を3月31日付で立ち上げることといたしました。…”
  6. Haruko Obokata, Koji Kojima, Karen Westerman, Masayuki Yamato, Teruo Okano, Satoshi Tsuneda, and Charles A. Vacanti. Tissue Engineering Part A. March 2011, 17(5-6): 607-615. doi:10.1089/ten.tea.2010.0385.
  7. 文部科学省の研究大学強化促進事業の支援対象大学に選定 「国際研究大学」の地位確立を目指した研究環境の整備・改革を加速 (早稲田大学 ニュース 2013/08/06):このたび、本学が文部科学省の「研究大学強化促進事業」における支援対象大学に選定されました。本事業は、世界水準の優れた研究活動を行う大学群を増強し、我が国全体の研究力の強化を図るため、大学等による、研究マネジメント人材群の確保や集中的な研究環境改革等の研究力強化の取組を支援するものです。
  8. Tissue Engineering, Parts A, B, & C Founding Editor Charles A. Vacanti, MD Brigham and Women’s Hospital

AIDS研究者ら多数が搭乗していたマレーシア航空MH17便がミサイルにより撃墜され乗客乗員全員が死亡

ウクライナ東部でミサイルにより撃墜された旅客機(マレーシア航空MH17便)にはオーストラリアのメルボルンで開催される第20回国際エイズ会議(International AIDS Conference, 7/20-24)に出席する予定の研究者や活動家が多数搭乗していました。
Hundred renowned experts on board MH17

100-Plus HIV/AIDS Researchers On MH17: ‘Devastating Impact’

参考

  1.  The 20th International AIDS Conference (AIDS 2014)
  2. 旅客機撃墜「なぜこんなことに」 各国で憤りや自粛モード(日本経済新聞 2014/7/19 1:47):”…同機にはメルボルンで20日から開かれる「第20回国際エイズ会議」に参加する研究者らも搭乗していた。会議の会場では搭乗者の約3分の1に当たる100人前後が会議参加者との情報が流れ、動揺が広がった。…”
  3. 豪で国際エイズ会議開会 マレー機乗客も参加予定 (朝日新聞DIGITAL 2014年7月20日):”ウクライナ東部上空で撃墜されたとみられるマレーシア航空機の乗客の一部が参加予定だった「第20回国際エイズ会議」が20日、豪南東部メルボルンで始まった。豪メディアは当初、約100人の乗客が会議に参加予定と報じていたが、実際は6人だったという。参加者の一人で、国際機関「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」で戦略・投資・効果局長を務める国井修さん(51)=ジュネーブ在住=は朝日新聞の電話取材に対し、「マレーシア航空は料金も安く搭乗を検討していたが、私は帰りの日程が合わず別の航空会社にした。素晴らしい仕事をしていた方々が犠牲になり、怒りが止まらない」と語った。…”
  4. AIDS researcher Joep Lange confirmed among dead in Malaysia jet shoot-down (The Washington Post,  July 17 at 11:51 PM)

早稲田大学博士論文不正認定も学位は取消さず

STAP細胞論文捏造事件に絡んで小保方晴子氏の出身大学である早稲田大学における博士論文不正が問題になりました。早稲田大学は調査委員会を立ち上げて不正の解明に当たってきましたが、ついにその調査結果が公表され、ニコニコ生放送で中継されました。

博士論文の実験結果の図が、コスモバイオなどのウェブサイトから写真を転用していたことが明らかになったことが不正を裏付ける決定的証拠とみなされたにもかかわらず、「あれは下書きでした。」と言ってのけた小保方晴子氏のあの発言はあまりにも衝撃的でした。あの時、誰もが妄言と受け止めたはずです。

ところが、今日、あの日よりもさらに大きな衝撃が走りました。早稲田大学は、小保方氏の「下書き」という妄言を認め、あとから提出された博士論文を受け入れたのです。実験ノートはほとんど確認できなかったと認める一方で、該当する実験は行なわれたものと認定。早稲田大学の学位授与の過程はでたらめすぎて、もう言葉を失います。

副査に名を連ねていたハーバード大学のバカンティ教授は、小保方氏の博士論文を読むように頼まれたことはないと発言していたにもかかわらず、その点に関しては記者会見でも回答は言葉を濁されていました。記者会見の受け答えを聞く限り、早稲田大学はバカンティ教授に対して正式なコンタクトを取らなかったようです。これでは、まともな調査だったとは到底考えられません。

小保方 学位取り消さない早稲田調査委に「納得いかない」記者が続出7/17【全】

【会場のご案内】2014/07/17(木) 開場:16:50 開演:17:00

理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーが、2011年に
早稲田大学大学院先進理工学研究科で博士号を取得した論文に
文章や画像の流用が指摘された問題で、同大学が2014年3月31日に設置した
「大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」
による調査報告書が、7月17日中に鎌田薫 早稲田大学総長に提出される予定です。
大学側は小保方氏に授与した博士号の取り扱いを検討する方針です。

ニコニコ生放送では、小林英明 調査委員会 委員長による記者会見の模様を
生中継でお届けいたします。

小保方氏の博士論文は、1月にSTAP細胞論文を発表した後、ネットで
問題点が指摘されました。英語で書かれた約100ページの論文のうち、
冒頭の約20ページの文章が米国立衛生研究所のサイトとほぼ同じ記述だったほか、
実験結果の画像としてバイオ系企業のサイトに掲載された写真を
切り取って使ったのではないかと疑われています。

【出席者】
小林英明 調査委員会 委員長(長島・大野・常松法律事務所 弁護士)

http://live.nicovideo.jp/watch/lv186404938

参考

  1. 早稲田大学 常田聡 研究室の博士論文のコピペ疑惑 他者著作物との類似性が見られた博士論文  (計23報)
  2. 小保方氏の博士論文、盗用疑惑の調査公表へ 早大 (産経ニュース2014.7.16 21:18):理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーの博士論文に文章や写真の盗用が疑われた問題で、早稲田大は16日、調査委員会の結果を17日に公表すると明らかにした。
  3. 博士学位取り消しについて 早稲田大学 2013/10/21 早稲田大学は、下記のとおり、不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明しましたので、当該学位について、授与の取り消しを決定しました。現在、本人に学位記の返還を求めています。(注:後日学位記の返還があった。2013年12月26日追記)

不正使用5億3500万円 北大最終報告

北海道大学は預け金などの不正経理に関して調査をしてきましたが、このたび最終調査報告書をまとめ公表しました。研究費を私的に流用していた教授は刑事告訴されています。

本学における公的研究費等の不適切な経理処理について、昨年11月に平成19年度以 降に預け金の記録がある在職教員の調査結果公表後、①平成16年度から平成18年度に おいてのみ預け金の記録がある在職教員にかかる調査、②退職者・転出者にかかる調査、 及び③講座等名による帳簿にかかる調査の結果、総額50,638,330円(該当教員等 15名内退職者・転出者2名)の不適切な経理処理があったと調査委員会が認定し、13 名の教員について懲戒処分等が決定した。 これにより、平成19年度以降に預け金の記録がある在職教員の調査結果を含め、不適 切な経理処理として認定された額は、総額534,935,445円、総人数56名の教員 への懲戒処分等が決定した。PDF

 

参考

  1. 公的研究費等の不適切な経理処理について(最終報告)北海道大学 平成26年7月15日 (PDF
  2. 北大の不適切経理、計5億3500万円 教員59人関与 (朝日新聞DIGITAL 2014年7月15日):”…遺伝子病制御研究所に所属していた60代の元教授1人に私的流用があったとして、北大は昨年6月、元教授と取引業者1社を詐欺容疑で北海道警に告訴した。…”
  3. 北大預け金最終報告 総額5億3400万円に 06年度以前5千万円 (北海道新聞 07/15):”…北大の山口佳三学長は15日記者会見し、帳簿が残る2004年度以降の学内調査の最終報告を発表した。新たに5063万8330円の不正が判明、総額は計5億3493万5445円に上るとし、 …”

西塚泰美先生曰く「すべての論文は 嘘だと思って読みなさい」

本庶佑博士がSTAP問題についてコメントした「新潮45」の記事(全文PDF)の中で、他人の書いた論文を読むときの心得が説かれています。これから研究者を目指す人、大学院生にとっては必読の教育的な内容です。

子供の頃から、教科書や本の内容、新聞記事など、印刷されて世に出回っているものは「真実」であると信じて、疑うことを知らずに育って大人になってしまった人は、学術論文も当然真実だけが書かれていると思い込んでいるかもしれません。そのような素直で正直な性格の人は、要注意です。

中世イスラムの科学者イブン・アル=ハイサムも、過去の科学者が書いた書物を鵜呑みにするなと戒めています。

真実を捜し求める者というのは、古い書物から学ぶ際に、書かれていることを性格的に信頼してしまうような人間ではなく、むしろ、自分が書物を信じてしまうことに疑いを持ち、書物から集めた事柄に問いかけるような人間である。

論拠や実演には従うが、あらゆる種類の不完全さや欠陥でいっぱいの人間の言葉には従わないような人間である。このように、科学者の書いたものを吟味する人間の義務というのは、もし真実を学ぶことが目的なのであれば、読んだこと全てを敵にまわすこと、書かれた内容の中核および周辺に注意を向けながら、あらゆる側面からその書物に挑むことである。

また、読んだ内容を批判的に吟味する際には、自分自身を信用しないようにしなければならない。そうすることにより、偏見や甘さに陥ることを避けることができよう。(イブン・アル=ハイサム, 965-1040 訳:当サイト)

The seeker after the truth is not one who studies the writings of the ancients and, following his natural disposition, puts his trust in them, but rather the one who suspects his faith in them and questions what he gathers from them, the one who submits to argument and demonstration, and not to the sayings of a human being whose nature is fraught with all kinds of imperfection and deficiency. Thus the duty of the man who investigates the writings of scientists, if learning the truth is his goal, is to make himself an enemy of all that he reads, and, applying his mind to the core and margins of its content, attack it from every side. He should also suspect himself as he performs his critical examination of it, so that he may avoid falling into either prejudice or leniency.(イブン・アル=ハイサム, 965-1040.https://en.wikiquote.org/wiki/Alhazen)

 

本庶先生いわく、

”しばしば秀才が陥る罠ですが論文に書いてあることがすべて正しいと思い一生懸命知識の吸収に励むあまり、真の科学的批判精神を失うという若者が少なくありません”

では一体どのような態度で他人の論文に接するべきなのでしょうか?

”重要なことは雑誌に公表された論文をそのまま信じてはいけないと言うことです。私は大学院の指導教官であった西塚泰美先生(元神戸大学長)から「すべての論文は嘘だと思って読みなさい」と教えられました。まず、疑ってかかることが科学の出発点です。教科書を書きかえなければ科学の進歩はありません。”

なぜ他人の論文を疑ってかからないといけないのか?それは論文を書いた科学者も所詮は人間のため、自分の思い込みによってデータを取捨選択してしまったり、データの解釈を誤ってしまう可能性があるからです。

”データの加工ということは多くの論文である意味で避けられないところがあります。例えば、顕微鏡下で見た写真の中で自分の考え方に合うと思われる一部分の場所を拡大したり、その部分を集めてくるという作業は意識的・無意識的に係わらず多くの研究者たちが行うことだと思います。通常はそれが意図的な変更でないことを別の方法で検証したデータをつけます。読む方としては当然そういうことも計算に入れて論文を読む必要があります。”

実際のところ、世に出回っている論文のうち、どれくらいの割合で間違いが存在するのでしょうか?

”私の大雑把な感覚では論文が公表されて1年以内に再現性に問題があるとか、実験は正しいけれども、解釈が違うとか、実験そのものに誤りがあるとか言った理由で誰も読まなくなる論文が半分はあります。2 番目のカテゴリーとしては、数年ぐらいはいろいろ議論がされ、まともに話題になりますが、やがてこの論文が先と同様に様々な観点から問題があり、やはり消えていくもの30%ぐらいはあるでしょう。論文が出版されてから20 年以上も生き残る論文というのはいわゆる古典的な論文として多くの人が事実と信じるようになる論文で、まず20%以下だと考えております。中には最初誰も注目しなかったのに5~10年と次第に評価が上がる論文もあります。”

以前、「医学生物学論文の70%以上が、再現できない!」というネイチャーの記事が話題になりましたが、ウソや間違いが論文発表されている割合は思いのほか高いようです。

STAP細胞はまだ詳細な調査報告結果が発表されましたが、不正の疑義が呈されても、「研究不正はなかった」の一言で誤魔化して、実験が正しく行われていた証拠を一切見せない大学もあります。そんな論文を信じていいいのかどうか、ご自分でご判断ください。

関連記事 ⇒ 東大医学部疑惑論文をフリーソフトで確認

 

参考

  1. STAP 論文問題私はこう考える 分子生物学会ウェブサイト内 PDFリンク 本庶 佑 元役員 2014年7月9日 新潮社「新潮45」July 2014 p28~p33より転載)
  2. NIH mulls rules for validating key results (31 July 2013):”…In a 2011 internal survey, pharmaceutical firm Bayer HealthCare of Leverkusen, Germany, was unable to validate the relevant preclinical research for almost two-thirds of 67 in-house projects. Then, in 2012, scientists at Amgen, a drug company based in Thousand Oaks, California, reported their failure to replicate 89% of the findings from 53 landmark cancer papers….
  3. ”白楽は、大学院生の頃から、論文を吟味しながら読む習慣がある。というか、まともな研究者は全部そうだろう。論文をハナから信じることはない。むしろ、間違っている点はどこか、不備な点・足りない点はどこかと思って読む。そうでなければ、その論文を越える研究ができない。他の研究者の研究成果は、まず、吟味する。しつこく、徹底的に吟味する。イヤラシイほど吟味する。そして、ほとんどの場合、間違っている点・不備な点・足りない点を見つけてしまう。” (研究倫理 白楽ロックビルのバイオ政治学 研究界の不祥事の全体像

STAP検証実験の無意味さを阪大教授が解説

ヤフー意識調査「STAP細胞の検証、小保方氏も参加させるべき?」では10万票以上もの投票があり、実に85%もの人が「参加させるべき」と答えています。不正行為を行なった張本人が検証実験を行うことを認める世論は、科学者の常識からは大きくかけ離れたものです。

このような状況を憂えてか、大阪大学生命機能研究科の近藤滋教授が、STAP細胞検証実験の無意味さをわかりやすく例え話を用いて解説しました。納税者である一般市民に向けたメッセージで、とても面白く、一読の価値があります。(注:文中の「NASA」は「理研」です。詳しくは全文をお読み下さい。)

“…つまり、「ネッシーを見つけた」と信じうる物は一切無い上に、インチキの証拠はいくつ
もあるのです。にもかかわらずNASA は、かなりの費用(原資は国民の税金です)を投じ
て、前回と同じメンバーの「調査隊」にもう一度ネッシー捜索に派遣しました。あなたは、
この調査隊を信用し、税金を使って調査を続けることを支持しますか?…”

(近藤滋氏による一般市民向け解説文へのリンク ⇒ http://www.mbsj.jp/admins/committee/ethics/20140704/20140707_comment_kondo.pdf)

参考

  1. 日本分子生物学会 STAP細胞問題等についての、各理事からの自主的なコメント
  2. “…日本でトップと言われる研究機関が現在の科学的方法論を否定し、不正行為があった研究でも、再現実験をして正しければ良い、と言う、間違った考え方を蔓延させ、不正を助長させる危険を含んでいます。…”(PDFリンク 篠原 彰 理事 2014年7月4日)
  3. “…再現するべき事実が存在しませんので、再現実験は意味を持たないと考えます。…”(PDFリンク 町田 泰則 理事 2014年7月6日)
  4. 近藤 滋 理事(2014年7月7日 PDFリンク
  5. “…残念ですが、以上の現実認識に鑑み、「金が絡めば不正をする人も必ず出てくる」という前提で物
    事を考える必要があります。…現行のシステムではその事件が起きた組織が調査を行うので、当然のことながら組織防衛に走ります。まずは隠蔽に向かい、逃げきれないと判断すれば、手のひらを返して尻尾切りに走ります。…科学者がまとまって話合い、速やかに行動するシステム作りが何より優先すると思います。…”(PDFリンク 中山 敬一 副理事長 2014年7月8日)
  6. “…実は、大変驚いたことに再現性に疑問が浮上した後に(3 月5 日)小保方、笹井、丹羽によるプロトコール即ちSTAP 細胞を作成するための詳細な実験手技を書いたものが、ネイチャー・プロトコール・エクスチェンジというネット誌に発表されました。これには、STAP 細胞として最終的に取れた細胞にはT 細胞受容体の再構成が見られなかったと明確に書いてあります。もしこの情報を論文の発表(1月30日)の段階で知っていたとすると、ネイチャー論文の書き方は極めて意図的に読者を誤解させる書き方です。この論文の論理構成は該博な知識を駆使してSTAP 細胞が分化した細胞から変換によって生じ「すでにあった幹細胞の選択ではない」ということを強く主張しております。しかし、その根本のデータが全く逆であるとプロトコールでは述べており、捏造の疑いが高いと思います。…。また、STAP 細胞作製法について2013 年10 月31 日に国際特許が申請されております。その時点でこの特許の発明者として名前が挙がっている人は小保方のみならず、理研では若山、笹井、東京女子医大の大和、ハーバード大学のバカンティ兄弟、小島です。この方々はコンセプトや実験に係わったということです。例えば犯罪において実行者と指令者がいた時、実行者のみが責任を負うということはあり得ないので、論文の論理構成を行い、これに基づいて論文を書いた主たる著者には重大な責任があります。…” (PDFリンク 本庶 佑 元役員 2014年7月9日 新潮社「新潮45」July 2014 p28~p33より転載)
  7. “…公正な競争が成立するためには研究者間の信頼のみならず、研究者を抱える研究機関と研究者コミュニティとの間の信頼と協力が不可欠です。…研究者コミュニティを信頼し協力する姿勢を明確にしない機関は健全で公正な研究機関としての評価と尊敬を受けることができず、存立が危ぶまれます。…” (PDFリンク 岡田 清孝 理事 2014年7月10日)

STAP細胞=ES細胞混入説は査読者が指摘済み

ネイチャー誌に掲載され、ようやく取り下げられたSTAP細胞論文ですが、最終的にネイチャーに掲載される前にも、2012年にネイチャー、セル、サイエンスに投稿されていました。ネイチャー掲載後に噴出した疑問の多くは、査読段階ですでに指摘されていたという事実を毎日新聞が伝えています。

参考

  1. STAP論文:12年サイエンス審査時 ES細胞混入指摘 (毎日新聞 2014年07月05日):”STAP細胞の論文不正問題で、小保方(おぼかた)晴子・理化学研究所研究ユニットリーダー(当時は客員研究員)らが、2012年7月にほぼ同じ内容の論文を米科学誌サイエンスに投稿した際、審査した査読者からES細胞(胚性幹細胞)が混入した可能性を指摘されていたことが、毎日新聞が入手した資料で明らかになった。…”
  2. STAP論文:ネイチャー検証不足露呈 編集者判断強く (毎日新聞 2014年07月05日):”…取材で判明した英科学誌ネイチャーなど3誌の査読者たちの指摘は、ES細胞の混入以外にも、専門家の間で現在議論されているSTAP細胞を巡る科学的な疑問点をほぼ網羅していた。…”

インターネット上の研究不正疑義も匿名の告発に準じて取り扱う「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」案 のパブリックコメント募集中~8月1日まで

インターネット上の研究不正疑義も匿名の告発に準じて取り扱うという内容を盛り込んだ「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」案に関するパブリックコメントの募集が現在行なわれています。

本節で対象とする不正行為(特定不正行為)は、投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータや調査結果等の捏造、改ざん及び盗用である。ただし、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠った場合を除き、故意によるものではないことが根拠をもって明らかにされたものは不正行為には当たらない。(第3節 研究活動における不正行為への対応 1-(3))

特定不正行為の疑いがインターネット上に掲載されていることを、当該特定不正行為を指摘された者が所属する機関が確認した場合、当該機関に匿名の告発があった場合に準じて取り扱うものとする。(3-4 告発の受付によらないものの取扱い③)

「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(案)について

ガイドライン案、パブリックコメント提出フォームなどへのリンク:

「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」案のパブリックコメント(意見公募手続)の実施について 意見・情報受付開始日 2014年07月03日 意見・情報受付締切日 2014年08月01日 http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000698&Mode=0

参考

  1. パブリックコメント:意見募集中案件詳細 産業一般 /科学技術振興 「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」案のパブリックコメント(意見公募手続)の実施について (電子政府の総合窓口 イーガヴ) 意見・情報受付締切日    2014年08月01日
  2. 不正調査、ネットでの指摘も対象に 文科省の新指針案 (朝日新聞デジタル 2014年7月3日01時21分):”…STAP論文ではネット上の指摘が不正発覚のきっかけになったことから、指摘を把握した段階で調査を始めるよう大学や研究機関に求める。…”
  3. 研究不正、ネットの指摘で調査も 文科省が新指針 (日本経済新聞 2014/7/3 0:00): “…インターネットで疑問点が指摘された場合でも、科学的根拠など必要な情報を含んでいれば、告発と同様に扱うとした。…”
  4. 研究不正新指針:組織の責任明確化 罰則も規定 (毎日新聞 2014年07月03日 00時58分(最終更新 07月03日 01時12分):”…インターネット上で指摘された疑義も告発と同様に扱うことも盛り込んだ。…”
  5. 「研究者の基本」欠落も不正=定義見直し、指針改定へ-文科省 (時事ドットコム 2014/07/03-00:05) :”…STAP細胞問題を受け、改定案は研究不正の定義に「研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を怠った」場合を加え、故意でなくても不正行為に当たるとした。…”

小保方氏の再現実験即時停止を分生が要求

NATURE論文がついに今週撤回されましたが、STAP細胞研究不正の真相の全容解明には程遠い状態です。理研は小保方晴子氏にこれ以上言い訳をさせないために、本人一人による再現実験を行わせる決定を下し、「再現実験」が始まりました。

このような理研のやり方を批判する声明を、日本分子生物学会が発表しています。

2014 年7 月4 日
理事長声明『STAP 細胞論文問題等への対応について、声明その3』
特定非営利活動法人 日本分子生物学会
理事長 大隅 典子
7月2日付けで理化学研究所よりSTAP 細胞に関する2報のNature 論文が撤
回されたとの発表がありました。日本分子生物学会は当該論文について当初か
ら同研究所の適切な対応や早期の論文撤回を求めておりましたので、約半年も
かかったものの、事態が一歩進んだことについては評価致します。
一方で、多くの論文不正についての疑義がきちんと分析されず、それに関わ
った著者らが再現実験に参加することについては、当分子生物学会会員を含め
科学者コミュニティーの中から疑問視する声が多数挙がっております。このよ
うに当該機関が論文不正に対して適切な対応をしないことは、科学の健全性を
大きく損なうものとして、次世代の研究者育成の観点からも非常に憂慮すべき
問題であるとともに、税金という形で間接的に生命科学研究を支えて頂いてい
る国民に対する背信行為です。
今回の研究不正問題が科学者コミュニティーを超えて広く国民の関心を惹く
ことに至ったのは、論文発表当初に不適切な記者発表や過剰な報道誘致が為さ
れたことに原因があり、それらは生命科学研究の商業化や産業化とも関係して
いると考えられます。このように科学を取り巻く環境の変化に対して、われわ
れ科学者はより一層の倫理観の醸成に努める必要があり、多くの優秀な科学者
を擁する理化学研究所にはその模範となるような姿勢を示すことを強く希望し
ます。
上記のような現状を早期に解決して頂くために、ここに改めて日本分子生物
学会理事長として以下の点を理化学研究所に対して希望致します。
・ Nature 撤回論文作成において生じた研究不正の実態解明
・ 上記が済むまでの間、STAP 細胞再現実験の凍結

http://www.mbsj.jp/admins/statement/20140704_seimei.pdf

参考

  1. ネイチャースペシャル THE RISE AND FALL OF STAP (nature.com) :ネイチャー誌がSTAP細胞に関するこれまでの記事を整理して一覧にしています。
  2. 日経サイエンス「STAP細胞の正体」 古田彩(編集部) 詫摩雅子(科学ライター)):”…論文に掲載された「STAP幹細胞」10株は,すべて途中ですり替わっている。STAP幹細胞は若山氏が小保方氏にマウスを渡し,小保方氏がSTAP細胞を作って,若山氏がこれを培養してSTAP幹細胞にした。2株は若山氏が渡したのとは別の系統のマウスの細胞で,その遺伝子的な特徴は,若山氏自身が作ったES細胞に一致する。残る8株は若山研にはなかったマウスの細胞で,出所は不明である。…”
  3. 小保方晴子リーダー「出勤」しばらくは実験ノート揃えたりお茶の準備 (JCASTテレビウォッチ 2014/7/ 3 10:22):”…実証実験の統括責任者・CDBの相澤慎一特別顧問は「実験の準備ができていないので、実験ノートを揃えるとか、お茶の道具を揃えるとか、そういうたぐいのことに時間を使うことになる」と話す。前代未聞の騒動の割にはのんびりしているが、それやこれやの準備で本格的な実証実験に入るのは2か月後の9月ごろになるという。…”
  4. 小保方氏参加の検証実験、第三者監視下 24時間モニターで透明性確保 (産経ニュース 2014.7.2 23:51):”…検証実験の責任者でセンター特別顧問の相沢慎一氏は2日の会見で「本人が参加して、どうしても再現できないというところまでやらせ てもらいたい」と話した。…”

 

2014年7月2日のヴァカンティ氏の声明

Statement for news media

In science, the integrity of data is the foundation for credible findings. I am deeply saddened by all that has transpired, and after thoughtful consideration of the errors presented in the RIKEN report and other concerns that have been raised, I have agreed to retract the papers.  Although there has been no information that cast doubt on the existence of the stimulus-triggered acquisition of pluripotency (STAP) cell phenomenon itself, I am concerned that the multiple errors that have been identified impair the credibility of the manuscript as a whole.  I am encouraged by recent news which suggests that Minister Hakubun Shimomura and RIKEN President Ryoji Noyori will allow sufficient time to replicate the core STAP cell concept that my brother Martin and I originally hypothesized, and trust that it will be verified by the RIKEN as well as independently by others.

– Charles A. Vacanti, MD

July 2, 2014

(https://research.bwhanesthesia.org/research-groups/cterm/statement)

Retraction: Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency

Retraction: Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency

Haruko Obokata,
Teruhiko Wakayama,
Yoshiki Sasai,
Koji Kojima,
Martin P. Vacanti,
Hitoshi Niwa,
Masayuki Yamato
& Charles A. Vacanti

Nature
511,
112
(03 July 2014)
doi:10.1038/nature13598

Published online
02 July 2014

Several critical errors have been found in our Article and Letter (http://dx.doi.org/10.1038/nature12969), which led to an in-depth investigation by the RIKEN Institute. The RIKEN investigation committee has categorized some of the errors as misconduct (see Supplementary Data 1 and Supplementary Data 2). Additional errors identified by the authors that are not discussed in RIKEN’s report are listed below.

(1) Figure 1a and b in the Letter both show embryos generated from STAP cells, not a comparison of ES- and STAP-derived chimaeric embryos, as indicated in the legend.

(2) Extended Data Fig. 7d in the Article and Extended Data Fig. 1a in the Letter are different images of the same embryo and not, as indicated in the legends, a diploid chimaera embryo and tetraploid chimaera embryo.

(3) There is an erroneous description in Fig. 1a in the Letter. The right panel of Fig. 1a is not a ‘long exposure’ image at the camera level but a digitally enhanced one.

(4) In Fig. 4b of the Letter, STAP cell and ES cell are wrongly labelled in a reverse manner.

(5) In the Article, one group of STAP stem cells (STAP-SCs) was reported as being derived from STAP cells induced from spleens of F1 hybrids from the cross of mouse lines carrying identical cag-gfp insertions in chromosome 18 in the background of 129/Sv and B6, respectively, and that they were maintained in the Wakayama laboratory. However, further analysis of the eight STAP-SC lines indicates that, while sharing the same 129×B6 F1 genetic background, they have a different GFP insertion site. Furthermore, while the mice used for STAP cell induction are homozygous for the GFP transgene, the STAP-SCs are heterozygous. The GFP transgene insertion site matches that of the mice and ES cells kept in the Wakayama laboratory. Thus, there are inexplicable discrepancies in genetic background and transgene insertion sites between the donor mice and the reported STAP-SCs.

We apologize for the mistakes included in the Article and Letter. These multiple errors impair the credibility of the study as a whole and we are unable to say without doubt whether the STAP-SC phenomenon is real. Ongoing studies are investigating this phenomenon afresh, but given the extensive nature of the errors currently found, we consider it appropriate to retract both papers.

http://www.nature.com/nature/journal/v511/n7507/full/nature13598.html

相澤慎一氏がSTAP現象検証計画を説明

【STAP現象】11検証計画 小保方晴子氏の参画や計画の詳細に関する会見【2014/7/2】

小保方氏の実験参画についてや今後の検証実験の詳しい進め方について説明となります。15分19秒のところで、動画が数分飛んでいます。
【出席者】
●相澤慎一 実験総括責任者(理研 発生・再生科学総合研究センター 特別顧問)
●齋藤茂和 理研 神戸事業所 所長

小保方氏の現在の状態について

24:28 (記者)小保方さんに今日お会いになった方(音声不明瞭)でいいんですけど、今日の様子どうだったのかということと、皆さんに、検証実験に参加する上での挨拶ですとか意気込みを語るようなことはあったんでしょうか?
(相沢氏)小保方さんは、まだそのへん、使い物になるような状態じゃ、あっ、すいません。星野監督が松井に言うように、使い物にならないなんて、30を越した女性のユニットリーダーに使う言葉としては全く不適当な言葉なんで、取り消させて下さい。要するにまだそんなに、彼女に納得がいくような条件よりもはるかに遠く、物事はできないような状態なんです、精神状態が。少しそれが落ち着いて彼女なりに実験ができるという状態にいつなってくれるのかという、生活環境も含めたですね、配慮が、当面私としては最大のテーマで、今の時点で彼女にすぐ実験をやってどこまで行くのよ?とか、そういうことは、正直言ってとてもできる状態ではありません。というのは、なぜそういうことを申し上げられるのかと言うと、一ヶ月前ほどから主治医の許可のあるとき時々こちらに来られるようになって、その時助言を求めるというふうな時間があったときの彼女とのコンタクトの中での私の判断はそういうことで、少し生活的にある程度きちっとした生活が送れるようにすることが今まず第一という状態です。

小保方氏が検証実験中にも不正を行いかねないという危惧について

23:11 (記者)そもそもなぜモニタリングをするということなんでしょうか?
(相沢氏)なぜモニタリングをするかというのはですね、そのようにしなさいという改革推進本部からの指示なので、それは推測をするしかできないんですけれども。推測をすると、「多く世の中には、そこまでやらないと彼女は何か魔術を使って不正を持ち込むのではなかろうかという危惧があるためにそれを求めてる」と、これは私の推測です。

23:56(記者)小保方氏と丹羽氏との実験を分ける理由は何でしょうか?
(相沢氏)それも基本的に改革推進本部から、2つに分けて基本的に行いなさいということで、「同じところでやっていると、丹羽さんの、(丹羽)責任者の行なう実験の中に、彼女がこそっと細胞とか何とかを混ぜてしまうかもしれない」とか、そういうことを危惧されてのことであろうと、これも私の推測です。

検証実験の意義について

34:14 (記者)そもそもこの検証実験の目的というか意義は何なのでしょうか?論文が撤回されて、科学的根拠がないということだと、あるかどうかを示すんだったらもう一回論文を出し直せばいいと大多数の人は考えると思うんですけど。これをやる意味っていうのは何なんでしょうかね?

34:29 (相沢氏)そういうご意見のあることは重々承っています。もう無いものなんだから検証実験をわざわざ国民の税金を使ってまでやる必要はないんではなかろうかというご意見を承っております。そういうご意見の強いことも重々承知しておりますが、しかし、科学的に見たときに全て、一点の曇りも無く(STAP細胞が)無いよというわけではなくて、やっぱり最終的な決着は本人が参加して、「しかし、やっぱり、どうしても再現できませんでしたね。」というのがですね、STAP現象・細胞は無いよということには、できるならばそこまでやることが、最善の、科学研究をやるものとしては、そこまでなんとかやらせていただきたいと、そういうふうに思っています。

実験の練習の必要性について

54:00 日経サイエンスの古田です。準備段階と、その後の実際の実験に入る段階というところの違いを教えていただきたいんですが。…
55:30(古田氏)準備って何ですか?マウスを渡して練習するってことですか?
(相沢氏)そうですね。
(古田氏)実験手技の練習をする?
(相沢氏)はい。酸浴の練習もすることになると思いますね。そういうふうにして再現できたとしても、それは再現できたとは認めない。あくまで再現は管理された新たな実験室で第三者の立会いのもとでやった実験だけを再現されたとみなす。…

 

高橋PL「理研の倫理観にもう耐えられない」

「理研の倫理観にもう耐えられない」と、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターに所属する高橋政代プロジェクトリーダーが理研を厳しく批判しました。

NHKの報道ですが、

“高橋リーダーはSTAP細胞の問題で、小保方リーダーに指摘されている数多くの疑義について説明させないまま、検証実験に参加させるなどの対応を取っている理化学研究所について、「理研の倫理観に、もう耐えられない」などと、ツイッターを通じて批判しました。”(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140702/k10015693461000.html)

と、ついに理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)内部の研究者から批判の声が上がりました。

参考

  1.  Masayo Takahashi@masayomasayo 理化学研究所 発生再生科学総合研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト プロジェクトリーダー。眼科歴25年。網膜変性疾患専門。(高橋政代氏のTWITTERアカウント)
  2. 「理研の倫理観にもう耐えられない」 (NHK NEWSWEB 7月2日 18時11分):”iPS細胞を使った世界初の臨床研究を進めている理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーはSTAP細胞の問題で、小保方晴子研究ユニットリーダーに、指摘されている数多くの疑義について説明させないまま検証実験に参加させるなどした理化学研究所の対応は問題だとして、今後、新たな患者への臨床研究を中止する可能性を示しました。…”
  3. 高橋政代プロジェクトリーダーコメント 高橋政代プロジェクトリーダーの個人のツイッター上での発言について、多数お問合せを頂いております。これを受け、高橋リーダーから以下のコメントがありましたのでお知らせ致します。(独立行政法人理化学研究所 2014年7月2日):お騒がせして申しわけありません。現在移植手術に向け細胞培養を行っている患者さんの臨床研究については順調に推移しており予定通り遂行します。ネット上で「中止も含めて検討」と申し上げたのは、様々な状況を考えて新規の患者さんの組み入れには慎重にならざるを得ないというのが真意で、中止の方向で考えているということではありません。臨床研究そのものには何の問題もありませんし、一刻も早く治療法を作りたいという信念は変わっておりません。理研が一日も早く信頼を回復し、患者さんが安心して治療を受けられる環境が整うことを期待しています。高橋政代
  4. Masayo Takahashi at TEDxTokyo 2014

    (⇒日本語通訳版 高橋 政代 at TEDxTokyo 2014
  5. 小保方氏が理研に出勤、STAP細胞検証実験に参加

 

小保方晴子研究ユニットリーダーらによるSTAP細胞の検証実験7月1日~11月30日

理化学研究所はSTAP細胞の存在を調べるための検証実験に小保方晴子研究ユニットリーダーを参加させると発表しました。検証実験の期間は7月1日~11月30日の5ヶ月間。

生物学の研究者の本音が飛び交うインターネット匿名掲示板(STAP細胞の懐疑点 PART488 http://wc2014.2ch.net/test/read.cgi/life/1404116917/)での反応の一部を紹介します(字句の一部を●●に変更)。

133 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 19:52:22.36
スゴいね理研って
山ほど残っている論文疑惑については消極的なのに
捏造容疑者に再現実験させるとか狂気の沙汰

336 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 20:44:26.34
理研ぐるみで捏造するんだろw

337 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 20:44:34.25
理研が再現実験しても
だれも信用しないから
やっても マジ意味無い。

347 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 20:45:55.73
論文の取り下げ決定したんだろ
再現するための根拠からして消滅、全ては白紙ってことじゃないか
実験自体全くの無意味なのに何をやろうというんだ
再現実験=これから1から論文作りなおすということ?
理研が何をしようとしてるのか全く理解できない

398 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 20:55:56.48
再現実験したければ小保方が引き受けてくれるところを自力で探すべきなのだが

467 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 21:12:09.22
再現実験では捏造そのものを断定することは出来ないんだよ。
失敗しても
「もしかしたら、まだ把握できていない繊細な条件があり、再現できなくなったのかも」
とか言われたら、「科学的な検証」を重視する竹市センター長は否定できないものw
だから、サンプル調査や論文疑惑調査の方に注力すべきなんだよ。
こんな当たり前のことすら理研のお●●さん達は理解できないのですね。

472 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 21:13:30.88
本人がやりたければ来てもいいよ
ではなく
小保方様、どうかきてくださいませ
理研終わり過ぎ

521 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 21:28:25.73
捏造の張本人が検証実験!!
腹痛いわ 理研の誰が決めてんのよ

952 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 23:13:06.85
オボコメントを堂々とホームページに載せる理研
恥知らずにも程がある

984 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/30(月) 23:21:04.65
日本の科学は狂っている

参考

  1. 小保方氏がSTAP検証に参加 懲戒委の審査、一時停止 (日本経済新聞2014/6/30 19:10):理化学研究所は30日、STAP細胞が存在するかどうかの検証実験に、小保方晴子研究ユニットリーダー(30)を参加させると発表した。期間は7月1日~11月30日の5カ月間を予定し、実験をビデオで記録するなど透明性を確保するとしている。…

STAP細胞ネイチャー論文撤回

報道によると英科学誌ネイチャー(NATURE)に掲載されていた小保方晴子氏らによるSTAP細胞論文2報は、7月3日号で撤回されるとのことです。

参考

  1. STAP細胞:ネイチャーが論文撤回へ 研究成果白紙に (毎日新聞 2014年06月30日):STAP細胞の論文不正問題で、英科学誌ネイチャーが7月3日号で関連論文2本を撤回する見通しであることが、複数の関係者への取材で分かった。…
  2. STAP「白紙」に…論文撤回へ、小保方氏同意 (YOMIURI ONLINE 2014年06月30日 13時26分): … 論文の筆頭著者である理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーを始め、14人の著者全員が撤回に同意しているといい、ネイチャーにその経緯や理由などを説明した文書が掲載される。…

STAP問題の闇

STAP細胞捏造事件は、立場の異なるさまざまな人々の思惑が交錯して生じたものであり、真実の姿がなかなか見えてきません。

なぜすぐにばれるような幼稚なデータ捏造をしたのか?

なぜそれが周りの誰にも気付かれずに、NATURE論文2報掲載に至ったのか?

なぜ研究実績ゼロ(どころか博士論文ですでに捏造)の人を日本のサイエンスの最高峰に位置する理化学研究所がほとんど「無試験」で研究リーダー(=大学准教授相当の役職)として迎え入れたのか?

誰がどこまで研究不正に加担したのか?

共同研究者らはいつからデータ捏造に気付いていたのか?

研究不正の事実がこれほど明らかなのに、なぜ理化学研究所はまともな調査をしないのか?(調査で明らかになってしまっては困ることは何なのか?)

なぜ理研CDBは捏造を確定させたにも関わらず規程に則って解雇するどころか、雇用の延長を保証し「助言」まで仰ぐのか?(理研CDBは、小保方氏に暴露されては困るような弱みを何か握られているのか?)

なぜ竹市理研CDBセンター長、野依理研理事長、下村博文文部科学大臣らは、捏造データの上に成り立っていて科学的根拠が皆無のSTAP現象を小保方氏に「再現」をしてもらいたがるのか?

なぜ理研の科学者は何の科学的根拠もない仮説を魅力的だとして、それを検証をしようとするのか?

なぜこのような国民の税金をドブに捨て続ける行為が今の日本で許されるのか?

なぜ理研内部の研究者から、事を正そうとする声がもっと出てこないのか?

なぜ誰も責任を取らないのか?

誰が理研をコントロールしているのか?

 

 

SAP細胞捏造は科学研究の世界の3大不正として教科書に載ると言われましたが、教科書に掲載する事例とするなら、事件の全体像が明らかになっていなければなりません。

STAP細胞で大儲けした人間を許してはいけない」というインターネットの記事は、これまでの報道では全く見えてこない部分に光を当て、”米国ではとっくに時代遅れになりつつある「特許」「科学研究」「インサイダー」三位一体の経済犯罪が、法規制の進んでいない日本に持ち込まれ、あざとく利ざやが抜かれた可能性”を指摘しています。

参考

  1. STAP細胞で大儲けした人間を許してはいけない(JBPRESS 2014.06.23):”STAP問題の闇は深い”
  2. 小保方発表で暴騰したセルシード株(http://sonarmc.com 2014年3月18日):”…つまり「何かうまい話」がセルシードの経営者から伝えられなければ「継続性に疑義の生じた会社」(会計監査でつぶれる可能性を指摘された会社)の ファイナンスに応じることは通常はない。それも半端でない総発行株数の30%近い大量の株式が新たに発行されるわけだから、「何か」がなければ株価は大幅 に下がるのである。ところが同社株は1月30日に小保方発表で40%も暴騰し、UBSは新株予約権を1月30日と31日の2日間で全部行使して市場で即座に売却し、数億円のサヤぬきに見事に成功している。以上記述したことは全部公表事実で誰でもネットで確認できる。…”
  3. 小保方研究に関与する企業の株価が急上昇――STAP細胞騒動に株価操作疑惑 (週刊金曜日ニュース 2014 年 4 月 30 日)”…STAP細胞の真偽をめぐる騒動で、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーの共同執筆者である大和雅之・東京女子医科大学教授の上司が取締役を務めるベンチャー企業の株価が、英科学誌『ネイチャー』電子版がその存在をトップ記事で載せたあと、急上昇していたことがわかった。…”
  4. ヤフーファイナンス (株)セルシード

ホールケーキの残りが3日後でもぱさつかない科学的な切り分け方

The Scientific Way to Cut a Cake

参考

  1. Francis Galton. Cutting a Round Cake on Scientific Principles. Nature 75, 173 (20 December 1906) | doi:10.1038/075173c0; ((閲覧にはNATUREに対して購読料を支払うことが必要))
  2. 100年以上前に考案された「ケーキをダメにしない切り方」がネットで爆発的シェア! 意外な発想に驚くこと間違いなし!! (ロケットニュース24)

CAG-GFPを15番染色体の片方に持つマウスの謎

「CAG-GFPを15番染色体にヘテロで持つマウスはどこ由来なのか?」

京都大学iPS細胞研究所で遺伝子組み換えマウスが管理区域外で見つかり、文部科学省が厳重注意、山中伸弥所長が謝罪記者会見を開くということが以前ありました。

今回のSTAP細胞論文捏造事件では、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)で正体不明の遺伝子組み換えマウス(CAG-GFPを15番染色体にヘテロで持つマウス)が使われていたことが明らかになっており、遺伝子組み換えマウス管理の杜撰さという点では、事の重大さは先の京大の件とは比較になりません。小保方氏が若山氏から供給されたマウス以外は使っていないというのなら、一体誰がどこからこの遺伝子組み換えマウスを理研CDB内に持ち込み、小保方氏の実験にそれが入り込んできたのか?大きな謎です。このようなデタラメなことが起きた真相を明らかにすることもせずに、このようなデタラメの上に成り立っていた「STAP現象」の再現性を科学的に検証しよ うとするのはあまりにも不毛です。ましてや世界に冠たる理研の科学者たちが、データ捏造が確定した(理研調査委員会 による)人間の「助言」を求めるなど、あり得ないことです。

参考

  1. 「監視下で小保方氏参加実験を」 理研・竹市センター長(神戸新聞 2014/6/26 22:03):”… 理研再生研で進められている検証実験には、小保方氏は助言しているが、立ち会ってはいないという。…”

2014年6月16日
CDBに保全されているSTAP関連細胞株に関する検証について
発生・再生科学総合研究センター
センター長 竹市雅俊

背景
STAP論文では、脾臓から採取された免疫細胞が弱酸性にさらされることにより、多能性を獲得することを報告した。STAP細胞から増殖可能な細胞株としてSTAP幹細胞が作製された。STAP論文に関する疑惑が明らかになった後、山梨大学若山教授は第三者研究機関にSTAP幹細胞株のDNA解析を依頼した。その情報は理研と共有され、理研はCDBに保全されているSTAP関連幹細胞株の解析を進めてきた。
CDB小保方研STAP幹細胞株の検討目的
CDBに保全されているSTAP関連細胞株(STAP幹細胞、FI-幹細胞株)およびそれらから作出されたキメラマウスの遺伝子情報を比較解析し、各細胞株間の遺伝子レベルの相違と起源に関する客観的に検証可能なデータを得ることを目的とする。

CDBで保全されている小保方研細胞株の解析と結果
小保方研細胞株サンプルの遺伝子解析(遺伝的背景およびCAG-GFP挿入部位の確認)
• 小保方研細胞株サンプルのSTAP幹細胞6株に関して、遺伝的背景を6種のSNPマーカーを用いて検査したところ、以下の結果が得られた。GLS-1およびGLS-11については核型の解析も行った。
1. FLS-3およびFLS-4: B6129F1: CAG-GFP, ♂
2. GLS-1およびGLS-11: B6: oct4-GFP, ♂(核型の解析ではY染色体の一部に欠失が見られる)
3. AC129-1およびAC129-2: 129B6F1: CAG-GFP ♂ (129 CAG-GFP マウス由来とされたが, 129B6F1由来であることが判明)。
• CDBでは、若山氏から、STAP幹細胞のCAG-GFP遺伝子挿入位置の情報提供を受け、上記STAP幹細胞株のCAG-GFP遺伝子挿入部位を検証した。
STAP幹細胞株AC129-1およびAC129-2は、18番染色体GFPの挿入を持つ若山研GFPマウスと同じ部位に、1コピーのCAG-GFP遺伝子の挿入を持つことが判明した。かつ、相同染色体の両方に挿入されていることも若山研GFPマウスと一致した。他方、FLS-3およびFLS-4に関しては、15番染色体の片方の染色体にGFP遺伝子が挿入されていることが判明した。また、CAG-GFP遺伝子は複数コピーがタンデムに並んだ形で挿入されていた。
これらの結果は若山研のサンプルの解析結果と一致した。

解析結果に対する見解
1.若山氏が提供されたとされる光るマウス(CAG-GFP遺伝子保持マウス)から小保方氏がSTAP細胞を作成し、それを若山氏が受け取って樹立したSTAP幹細胞株に関して、保管されていたストックの解析から、CAG-GFP遺伝子の挿入状況の違いにより、STAP幹細胞は2種類の異なる遺伝子型のマウス由来であることがわかった。一方は、若山氏が提供した(CAG-GFPを18番染色体にホモで持つ)もの、もう一方は由来不明(CAG-GFPを15番染色体にヘテロで多コピー持つ)のものであった。
2.CAG-GFPを15番染色体にヘテロで持つマウスがどこ由来なのか、そのマウス個体がSTAP細胞からSTAP幹細胞が樹立された時期に若山研(あるいは小保方研)に生存個体として存在していたのかは不明であり、今後、さらなる検証を進める。
http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/topics/2014/20140616_2/20140616_2_1.pdf

小保方氏 年間研究費2千万円 笹井氏6億円

理化学研究所は研究費使途の全面開示を~小保方晴子氏(年間2千万円)と笹井芳樹氏(年間6億円)は研究費を何に使ったのか?

理化学研究所は小保方晴子氏が研究データを捏造したという判断を下しましたが、小保方晴子氏はそれを否定しています。小保方晴子氏の年間予算は2千万円、共同研究者である笹井芳樹氏の年間予算は6億円。STAP細胞研究不正の過程を明らかにするためには、小保方晴子氏や笹井芳樹氏ら他の共同研究者が研究費で何を購入していたのか、何に使っていたのか、その詳細を明らかにすることが絶対必要です。研究費の出所は国民が払っている税金なのですから、国民には真相を知る権利があり、理化学研究所には説明責任があります。

週刊誌で報道された理化学研究所の開示内容によれば、小保方晴子氏と笹井芳樹氏の11ヶ月間の出張回数は計55回で旅費総額が496万円にも上るそうです。情報開示の要請に対して詳細を「黒塗り」にしているようでは、公表すると問題が生ずるようなやましい使い方であったと疑われても仕方がないでしょう。「黒塗り」開示は、データ捏造にとどまらず研究費の不正使用まで疑わせるものであり、理研CDBの組織ぐるみの不正が危惧されます。その疑いを払拭するためには、理研CDBは全てを明らかにすべきです。そうでなければ、自浄作用のない理研CDBは一度解体すべきという意見への反論も全く説得力を持ちません。

【週刊文春】告発スクープ 小保方晴子さん笹井教授 年間6億円の研究費の使い道