「人間の手が精巧にできているのは創造主なる神のおかげ」とする論文を掲載した学術誌プロスワン(PLOS ONE)に対して科学者から非難が殺到

プロスワン(PLOS ONE)は、学術雑誌の出版社PLOSが2006年に創刊したオープンアクセスジャーナルです。論文の価値は雑誌掲載後に研究者が決めるべきという編集方針と、紙面の制約がないオンラインジャーナルという特性から、投稿された論文の採択率が高いという特徴があります(採択率70%程度といわれる)。論文が受理されやすいわりにはインパクトファクターも比較的高めなので、多くの研究者に支持されています。日本人研究者にも馴染みの深いメジャーな学術誌の一つです。 ところが、2016年1月5日にこのプロスワンに掲載された中国人研究者の論文「Biomechanical Characteristics of Hand Coordination in Grasping Activities of Daily Living」(日常生活での把持動作における手の協調運動の生体力学的な特徴)が、研究者に衝撃を与えています。 (http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0146193) なんと、この論文の中で著者らは、「手の精巧な構造は、創造主なる神のおかげである」と1度ならず3回も繰り返し述べているのです。 まずアブストラクトで(該当箇所を太字で示しました)、 “The explicit functional link indicates that the biomechanical characteristic of tendinous connective architecture between muscles and articulations is the proper design by the Creator to perform a multitude of daily tasks in a comfortable way.”(http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0146193) と述べ、イントロダクションでも、 “Hand coordination should […]

誰でもわかる 今年のノーベル賞~生理学・医学 物理学 化学賞~【日本科学未来館×Newton×ニコ生】

誰でもわかる 今年のノーベル賞~生理学・医学 物理学 化学賞~【日本科学未来館×Newton×ニコ生】 黒田有彩(司会、NHK Eテレ『高校講座 物理基礎』MC) 髙橋麻美(日本科学未来館 科学コミュニケーター 生理学・医学賞チームリーダー) 谷明洋 (日本科学未来館 科学コミュニケーター 物理学賞チームリーダー) 松浦麻子(日本科学未来館 科学コミュニケーター 化学賞チームリーダー) 詫摩雅子(日本科学未来館) 髙嶋秀行(Newton本誌・ムック 編集部長) ※本番組は2015年10月25日にニコニコ生放送で放送されました

ポール.J・シルヴィア博士の「生活を犠牲にせず論文をたくさん書く方法」

「できる研究者の論文生産術 どうすれば『たくさん』書けるのか」の著者ポール.J・シルヴィア氏が2012年4月27日に行った講演の動画があります。しかしこの講演ではとりとめもなく延々とフリートークが続くので、ポイントを掴むには彼の著書を読むほうが早いです。 たくさんの論文が書けるのは生まれつきの才能ではなくスキルです。だから、そのやり方を学ぶことができます。(前書きより) この本には非常に実践的な教えが書かれています。原稿が書きかけのままで憂鬱な気分になっている教授から出てくる典型的な言い訳が、「書く時間が見つからない」というものです。しかし、講義の時間がみつからないと言い訳する教授はいません。予定された授業の時間がきたら、授業をするしかないからです。論文を書くのも全く同じで、何曜日の何時から何時までは論文を執筆する時間と決めて、その時間には他の予定は一切入れずに論文の執筆に専念するということを習慣化しなさいと説いています。科学者はプロのライターなのですから、講義の時間に必ず講義をするのと同様、書くと決めた時間に必ず書きなさいとシルヴィアさんは言います。 ちなみにポール・シルヴィアさんが自分で決めた執筆の時間帯は、平日の朝8時から10時までだそうです。朝起きたら、着替えもせずシャワーも浴びず、Eメールのチェックもせず、珈琲を淹れてすぐに机に向かうとのこと。 論文を書けない理由は実はまだまだあります。現実的なところでは、書く前にデータの解析をしなければいけないとか、論文を書き始める前に参考文献を読まなければいけない、などなど。しかし、大丈夫です。シルヴィアさんは、これらもみな「ライティング」とみなします。論文の書き方の本を読むことまでも「ライティング」に含めます。これでもう書かない理由はほとんど潰されてしまいました。 論文を書く環境が悪い、椅子の座り心地が良くない、机が悪いと言って悪あがきする人がいるかもしれません。そういう人達のために、シルヴィアさんはこの本の執筆に使った机と椅子の写真を見せています。インターネットがつながらない部屋、引き出しもない机、質素な椅子。ウインドウズOSすら載っていないPC,DOS上で動くワープロソフト。書くためにはそれで十分だったとシルヴィアさんは言います。 それでもまだ、書く気が起こらない、インスピレーションが湧いてこない、どうしても書けない(Writer’s block)という人がいます。そんな人たちへの最も効果的な処方箋がまさに「決めた時間に書くことの習慣化」なのです。 論文をたくさん書かなければいけない研究者のためのライフハックツールとでも言うべき本。 How to Write a Lot – Paul J Sylvia (http://exordio.qfb.umich.mx/archivos%20pdf%20de%20trabajo%20umsnh/Leer%20escribir%20PDF%202014/Escritura%202014/How%20to%20Write%20a%20Lot%20-%20Paul%20J%20Sylvia.pdf)(73ページPDFへのリンク) Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 1 (1時間1分31秒) Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 2 (44分46秒) Paul […]

理研STAP細胞検証実験の無意味さを近藤滋大阪大学教授が一般の人にもわかる言葉で解説 「難しいことはわからんが再現実験を支持する、という一般市民の方へ」

ヤフー意識調査「STAP細胞の検証、小保方氏も参加させるべき?」では10万票以上もの投票があり、実に85%もの人が「参加させるべき」と答えています。不正行為を行なった張本人が検証実験を行うことを認める世論は、科学者の常識からは大きくかけ離れたものです。 このような状況を憂えてか、大阪大学生命機能研究科の近藤滋教授が、STAP細胞検証実験の無意味さをわかりやすく例え話を用いて解説しました。納税者である一般市民に向けたメッセージで、とても面白く、一読の価値があります。(注:文中の「NASA」は「理研」です。詳しくは全文をお読み下さい。) “…つまり、「ネッシーを見つけた」と信じうる物は一切無い上に、インチキの証拠はいくつ もあるのです。にもかかわらずNASA は、かなりの費用(原資は国民の税金です)を投じ て、前回と同じメンバーの「調査隊」にもう一度ネッシー捜索に派遣しました。あなたは、 この調査隊を信用し、税金を使って調査を続けることを支持しますか?…” (近藤滋氏による一般市民向け解説文へのリンク ⇒ http://www.mbsj.jp/admins/committee/ethics/20140704/20140707_comment_kondo.pdf) 参考 日本分子生物学会 STAP細胞問題等についての、各理事からの自主的なコメント “…日本でトップと言われる研究機関が現在の科学的方法論を否定し、不正行為があった研究でも、再現実験をして正しければ良い、と言う、間違った考え方を蔓延させ、不正を助長させる危険を含んでいます。…”(PDFリンク 篠原 彰 理事 2014年7月4日) “…再現するべき事実が存在しませんので、再現実験は意味を持たないと考えます。…”(PDFリンク 町田 泰則 理事 2014年7月6日) 近藤 滋 理事(2014年7月7日 PDFリンク) “…残念ですが、以上の現実認識に鑑み、「金が絡めば不正をする人も必ず出てくる」という前提で物 事を考える必要があります。…現行のシステムではその事件が起きた組織が調査を行うので、当然のことながら組織防衛に走ります。まずは隠蔽に向かい、逃げきれないと判断すれば、手のひらを返して尻尾切りに走ります。…科学者がまとまって話合い、速やかに行動するシステム作りが何より優先すると思います。…”(PDFリンク 中山 敬一 副理事長 2014年7月8日) “…実は、大変驚いたことに再現性に疑問が浮上した後に(3 月5 日)小保方、笹井、丹羽によるプロトコール即ちSTAP 細胞を作成するための詳細な実験手技を書いたものが、ネイチャー・プロトコール・エクスチェンジというネット誌に発表されました。これには、STAP 細胞として最終的に取れた細胞にはT 細胞受容体の再構成が見られなかったと明確に書いてあります。もしこの情報を論文の発表(1月30日)の段階で知っていたとすると、ネイチャー論文の書き方は極めて意図的に読者を誤解させる書き方です。この論文の論理構成は該博な知識を駆使してSTAP 細胞が分化した細胞から変換によって生じ「すでにあった幹細胞の選択ではない」ということを強く主張しております。しかし、その根本のデータが全く逆であるとプロトコールでは述べており、捏造の疑いが高いと思います。…。また、STAP 細胞作製法について2013 年10 月31 日に国際特許が申請されております。その時点でこの特許の発明者として名前が挙がっている人は小保方のみならず、理研では若山、笹井、東京女子医大の大和、ハーバード大学のバカンティ兄弟、小島です。この方々はコンセプトや実験に係わったということです。例えば犯罪において実行者と指令者がいた時、実行者のみが責任を負うということはあり得ないので、論文の論理構成を行い、これに基づいて論文を書いた主たる著者には重大な責任があります。…” (PDFリンク 本庶 佑 元役員 2014年7月9日 新潮社「新潮45」July 2014 p28~p33より転載) “…公正な競争が成立するためには研究者間の信頼のみならず、研究者を抱える研究機関と研究者コミュニティとの間の信頼と協力が不可欠です。…研究者コミュニティを信頼し協力する姿勢を明確にしない機関は健全で公正な研究機関としての評価と尊敬を受けることができず、存立が危ぶまれます。…” (PDFリンク 岡田 清孝 理事 2014年7月10日)

世間一般の人々に対する科学者の説明責任

STAP細胞論文におけるデータ捏造、改竄の不正行為は研究者や研究経験者から見れば100%明白であり、その悪質さに関しては全く議論の余地すらないと思われました。それにもかかわらず、理研調査委員会によって不正行為の当事者と認定された小保方晴子氏が2014年4月9日に行った釈明記者会見後の世論調査では、小保方さんの説明を信じると答えた人が3分の1程度もいました。 ヤフージャパンのサイトによれば、「あなたは、小保方リーダーの説明に納得しましたか?」という質問に対して、24万6千53人が回答し、51.7%の人が「納得できなかった」のに対し、30.3%の人が「納得した」と答えています。またテレビ番組『新報道2001』が首都圏500人を対象に行なった世論調査でも、「納得する」人が35.2%、「納得できない」人が49.2%で、ヤフーのアンケートと同様の結果になっています。 研究のことは難しくて全くわからないけれども、すごい発見をした小保方さんが全ての失敗の責任を擦り付けられていて可哀想と思っている人が世の中では3分の1を占めているのです。これは驚くべき高い数字です。 このような事態が生じる一因は無責任なテレビ番組制作にあるでしょう。面白おかしければ良いという発想なのか、非常に偏った考え方を持つ人をゲストの一部に加えて、TVスタジオでとんでもない発言を繰り広げさせ、そんなデタラメをそのままお茶の間に垂れ流しにしているのです。発言した人が大学教授の肩書きを持っていたり社会的に地位の高い人であれば、実際にそのコメントを真に受けてしまう視聴者が一定の割合で出てきてしまいます。 小保方氏会見 なぜ問題は起きたのか? 新報道2001 2014年4月13日(1/5) 武田邦彦 小保方論文(STAP細胞)1/2 間違ってて当たり前! 激論! STAP問題 “研究開発法案”の行方 新報道2001 2014年4月20日(2/3) 科学者が科学者のコミュニティの中だけで発言していては不十分であり、もっと一般的なメディアを使って一般の人に対して正しい情報を発信していく必要があります。研究者のブログを読むのはほとんどの場合研究者でしかないため、研究者がいくらブログで今回のSTAP細胞論文捏造事件を論じても世間一般には全く伝わらないのです。インターネットがこれほど普及していても、一般の人に対するテレビの影響力は絶大です。 参考 涙の会見で巻き起こる”擁護論”に意義あり!ノーベル賞学者が怒った 「小保方さんは科学者失格!」ノーベル化学賞を2010年に受賞した根岸英一教授が、「コピペは偽造、嘘つきということだ」と本誌に怒りの告発(週刊文春2014年4月24日号):科学者が間違いを起こすことは当然ありますが、多 少でも意図的に行われたとしたら、 科学の世界では犯罪です。科学者失格なのです。 … そういう方は最初から研究してはいけない人間だということです。 …再現できない実験だったら公表することは許されないのです。