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NHK Eテレ『ろんぶ~ん』 論文著者の研究者を招いて解説してもらうエンタメ論文抄読会

研究成果をわかりやすく紹介する科学番組や、サイエンスをネタにしたバラエティ番組はたくさんありますが、研究者の書いた「論文」およびその論文を書いた「研究者の思い」にフォーカスしたシリーズものの番組は今までなかったと思います。 2018年10月4日が”第一回”の放送となった、新感覚サイエンスバラエティ番組、NHK Eテレ『ろんぶーん』 を紹介します。30分番組ですが、各回のテーマに関連する論文を2報取り上げ、15分ずつそれぞれの著者とともに紹介する構成です。   『ろんぶ~ん』の放送時間と番組司会進行役 http://www4.nhk.or.jp/ron-bun/ NHK Eテレ 毎週木曜 午後11時 | 再放送 毎週土曜 午前1時(金曜深夜) 番組MC:ロンドンブーツ1号2号 田村淳、中山果奈(NHK広島局アナウンサー) ナレーション:石澤典夫   『ろんぶ~ん』という番組のコンセプト 『ろんぶ~ん』は、論文著者の研究者をスタジオに招いて自ら解説してもらい、番組MCの田村淳、中山果奈らが論文を精読するという、ジャーナルクラブ(論文抄読会)をエンターテインメントにしたような新しいコンセプトの科学番組だと思います。 小難しくてとっつきにくいイメージがある『論文』。しかし丁寧に読み解いていくとそこには知的好奇心を刺激してくれる「知の結晶」が詰まっている。この番組では、研究者が人生をかけて生み出した『論文』を“ロンブー”田村淳とともに読み解きながら知ることの面白さを味わう。(ろんぶーん Eテレ NHK)   新企画に対する視聴者の反応 こんな番組あったんだ/ ろんぶ~ん – NHK 難しくて、とっつきにくい「論文」。しかし丁寧に読み解けば、そこには知的好奇心を刺激する「知の結晶」が輝いている。“ロンブー”淳と一緒に、論文の深き世界を味わう。(かずさん@kaz_boosan 1:11 – 2018年10月6日) #ろんぶ〜ん #NHK 著者を呼ぶってすげーな。(笑わないセールスマン@altnative 7:04 – 2017年3月29日) 『ろんぶ〜ん』録画見。面白い番組だ。素人目にはマニアックな論文内容を執筆者の解説を交えて読み解く。細馬先生と斎藤さんとの並びが何とも言えない (yae~♪@yaekoeyayaeeya 5:29 – 2018年10月6日) えねーちけーの『ろんぶ〜ん』の録画を今観てるんだけど、たいへんに面白い (みとり@jaune_7 3:24 …

サイエンスZERO(ゼロ)NHK Eテレ 毎週日曜 午後11時30分 「登場!がん治療を変える新薬 免疫のブレーキを外せ」

サイエンスZERO http://www4.nhk.or.jp/zero/ Eテレ 毎週日曜 午後11時30分 | 再放送 毎週土曜 午前11時 『サイエンスZERO』は、私たちの未来を変えるかもしれない最先端の科学と技術を紹介するとともに、世の中の気になる出来事に科学と技術の視点で切り込む番組です。   「登場!がん治療を変える新薬 免疫のブレーキを外せ」 アーカイブ(一部) サイエンスZERO「登場!がん治療を変える新薬 免疫のブレーキを外せ」(ノーベル賞受賞を受けてアンコール再放送 2018年10月7日 日曜 Eテレ 午後11時30分~ 午前0時00分)【ゲスト】山口大学医学部 教授…玉田耕治,【出演】京都大学 特別教授…本庶佑,【司会】竹内薫,南沢奈央 サイエンスZERO「「生命維持の要 エクソソーム」(2018年放送; YOUTUBE;NHKオンデマンド) 出演:落谷孝広 、小島瑠璃子 、森田洋平  落谷孝広(おちやたかひろ)国立がん研究円ター研究所 分子細胞治療研究分野プロジェクトリーダー サイエンスZERO「夢の再生医療 現実へ」(2018年放送;NHKオンデマンド;YOUTUBE) 出演:八代嘉美 、山下由起子 、小島瑠璃子 、森田洋平 サイエンスZERO「驚異の進化!最新プロジェクションマッピング」(NHKオンデマンド;YOUTUBE)出演:奥寛雅 、小島瑠璃子 、森田洋平 サイエンスZERO「量子コンピューターでも解読不可能!?新しい暗号誕生なるか」( NHKオンデマンド;YOUTUBE) サイエンスZERO 「人工知能の大革命!ディープラーニング」(NHKオンデマンド;YOUTUBE)出演:松尾豊 、竹内薫 、南沢奈央  2016年放送 サイエンスZERO「日本人のルーツ発見!~“核DNA解析”が解き明かす縄文人~」(2016年放送;YOUTUBE;NHKオンデマンド)出演:篠田謙一 、竹内薫 、南沢奈央 サイエンスZERO「登場!がん治療を変える新薬 免疫のブレーキを外せ」(2015年5月;YOUTUBE)

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WPIサイエンスシンポジウム聴講レポート

2018年2月11日(日)に未来科学館で世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)シンポジウムが開催され、ニコニコ生放送でもインターネット中継されました(開演10:30 終了17:42 来場者数:15451人 コメント数:5489 nicovideo.jp)。科学研究の世界のトップランナーたちが熱いトークを繰り広げて、とても面白いシンポジウムでした。以下、自分が聞いたセッションについてのレポート。 Part1:宇宙×地球 Part1:宇宙×地球のセッションでは、吉田直紀氏(東京大学 カブリ数物連携宇宙機構 主任研究者)が星(太陽のような恒星)が、宇宙が始まってすぐまだ何もない状態からどうやって形成されるのかを語り、コンピュータシミュレーションにより星の誕生する様子をビデオで紹介しました。難しい方程式に基づいた数値計算により、宇宙で初めて星が誕生する様子をビビッドに示して見せたのには驚きを覚えました。 続いて廣瀬敬氏(東京工業大学 地球生命研究所 所長)が地球の内部構造をどうやって明らかにしてきたかについて語りました。地球の構造を調べたくても、掘削しサンプルを取って来られるのは地表近くのみ。6400mもの深い地球の中心の状態を調べるためには、そのような高気圧、高温の状態を実験室で再現しているのだそうです。最も硬い物質であるダイアモンドを2つ押し合わせて地球の中心と同じ高圧状態を作り出し、さらにレーザーをあてることで地球内部の温度を実現。調べたい物質をこのような条件下において、その挙動を調べることにより、地球の中心部分の謎に迫ろうというわけです。地球の内部のマントル層は固体で、そのさらに内部のコアと呼ばれる領域は鉄が溶けた液体状態ですが、純粋に鉄だけだとすると観測される他の実験結果と合わないため、何か軽い元素との混合物のはずと理論的に予想されていました。金属より軽い元素として、水素、炭素、硫黄などの候補がありますが研究者によって意見が割れていて定説がありませんでした。廣瀬氏は、地球内部の圧力と温度で、マントル層が固体の状態に保たれ、なおかつコアが液体でいられるような条件を満たすためには、コアの成分としては鉄と水素でしか有り得ないという結論を得ました。実験事実に基づいて、地球の姿を正しく理解するための仮説を立て、さらに実験によりそれを検証するという科学研究の進め方がわかりやすく説明されていました。 誰しも子供のときは夜空を見上げて、多数の星を見ながら宇宙ってどうなっているんだろう?と疑問を抱くわけですが、吉田氏いわく、素人が抱く素朴な疑問が、実は現在の宇宙物理学の最先端のテーマそのものなんだそうです。このセッションの企画の意図は、研究者は一体何を考えているのかを知るということだったと思いますが、専門の研究者も実は疑問そのものは素朴なものなのだということを聞いて、へぇーっ、そうなんだ、と思いました。 廣瀬氏は、実験は1年のほとんどはうまくいかなくてがっかりするようなことの連続だけれども、1年に数日、エキサイティングな実験結果を得られることがあり、そのワクワク感が研究の原動力だと語っていました。実験は上手くいかないことがほとんどというのは、実験科学であればどんな分野でも共通するようです。   Part2:動物×植物 Part2:動物×植物のセッションでは、東山哲也氏(名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所 副拠点長)が植物の受精の研究について語りました。めしべの内部、奥深くで起きる受精現象は、両生類の受精などとは異なり、直接観察することが非常に難しいわけです。それをいかにして可視化することに成功したかという話から始まりました。地球上にはおよそ25万種の植物があるそうですが、卵細胞が存在する部分がめしべの組織の内部になくて外側にあるような風変わりな種であるトレニア(Torenia fournieri)を実験材料に選んだことが実験成功の鍵となったそうです。多数の論文を読んでそのような種が存在することを知ったのだとか。また、シャーレの中で受精させて観察しようという試みにおいては、花粉から伸びてきた花粉管が卵細胞と合体させることがなかなかできなくて、試行錯誤の末、実は、伸びた花粉管がめしべの中を通過した場合に受精が起きることがわかったそうです。つまり、めしべは花粉管伸長のは単なる通り道でなく、精細胞に受精する能力を与える役割を担うことが分かったのです。花粉管が卵細胞のほうへ伸びていくことは知られていたわけですが、なぜそうなるのかは140年間もの間謎だったそうです。めしべの中のどの細胞が花粉管を誘引するのかを調べる目的で、めしべを構成する細胞を一つずつ破壊してやることにより、助細胞(じょさいぼう、SY)という細胞が花粉管誘引に必要ということがわかりました。それだけでなく、さらにこの誘引物質の正体を突き止め、その小さなたんぱく質をルアーと名づけました。ここまででも大発見の連続なのですが、さらに驚いたことに、このルアーと名づけられた物質は、植物の種ごとに働きが限定されており、近縁種であっても花粉管を誘引する能力はないことがわかったそうです。逆に、トレニアとは遠縁の種であるシロイヌナズナにトレニアのルアーを分泌させると、トレニアの花粉管はシロイヌナズナのめしべに引きつけられたそうです。受精の際に同種を認識する重要な遺伝子だったという発見です。これらの一連の成果は、好奇心に基づく実験が発端だったわけですが、研究の進展によって、異種植物が交雑するしないの条件が明らかになり、人為的に雑種をつくることにより人間の役にたつ新種を生み出す技術の基礎研究となり得ることがわかりました。 Part2で動物の話をしたのが、柳沢正史氏(筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構)。柳沢氏は、科学研究者は、役に立つかどうかという観点から研究を始めるものではない、そういう態度でいては日本の科学研究は滅びると強く警鐘を鳴らすメッセージを発していました。柳沢氏はエンドセリン(強力な血管収縮作用を有する生理活性物質)の発見者としても知られていますが、現在は睡眠のメカニズムの研究を推進しています。研究では仮説駆動型研究が主流です。この生命現象に重要な役割を果たしているのは、この遺伝子だあろう、だからこの遺伝子を破壊してみて、その効果が確かに予測どおりに現れるかを調べてみよう、というリバースジェネティクス(逆遺伝学)のアプローチが、仮説駆動型と言えます。それに対して、何かの遺伝子が破壊された結果、期待した現象が生じるような動物個体を選びだして、後からその遺伝子の正体を突き止めてやろうという、最初に仮説を持たないアプローチが存在し、フォワードジェネティクス(順遺伝学)と呼ばれます。柳沢氏は、マウスを実験動物として用いて、このフォワードジェネティクスのアプローチを用いた研究を行い、8000匹以上ものマウスの睡眠時の脳波や筋電図を測定することにより、期待通りに、睡眠に異常があるマウスの系統(sleepyと命名)を見つけだしました。そして、その系統ではどんな遺伝子が破壊されているのかを調べています。このようにして、いまだに謎である睡眠のメカニズムに迫ろうとしているというお話でした。柳沢氏は、良いサイエンスをするためのアドバイスとして、専門的度胸(Technical Courage)を持ちなさいと説いていました。重要な問いを立てたら、その問いに答えるためには、自分の得意な手法、自分の専門分野内で必ずしも解決しようとはせずに、使えるものは何でもやる、場合によっては実験手法や専門分野を変えてでもその問題に取り組むという勇気が必要だということです。 今日の科学業界においては、自分の仮説にあうようにデータをでっちあげたり、データの取捨選択をするような研究不正が蔓延っていますが、柳沢氏は、自分の仮説を得られる実験データよりも上に位置づけて(データが仮説に合わない場合に)仮説のほうを優先するような態度は研究不正を誘発する行為であり、してはいけないと警告を発していました。 東山氏は、研究はとにかくワクワクしてやるもの。新しい現象の発見の瞬間が一番気持ちが盛り上がる。その後、論文を書くのは苦しいが、プロフェッショナルという意識を持って、産みの苦しむを乗り越えて、論文にまで持っていくことが重要であるということを述べていました。職業としての研究者の生き方がわかる言葉でした。 柳沢氏は、日本の科学教育のあり方についても言及し、今の日本の教育は、与えられた問いに答える訓練に終始してしまっているが、科学研究で重要なことは、良い問いを見つけることであると述べていました。アメリカでは小さい子供のときから学校でShow&Tellという授業があって、ぬいぐるみでもなんでもいいから何か自分の気に入ったものを学校に持っていき、クラスのみんなのまえで、それが自分にとってどんな意味を持つのかを語らせる授業があるのだそうです。こういう教育を小さいときからずっとやっているので、考える訓練が十分なされると言います。   ホンキギロン(プレゼン) さて、15時30分からはトークセッションが開催されました。最初にパネリストたちが1人ずつ自分の主張や研究内容をプレゼンし、その後、パネルディスカッションに移りました。 プレゼンのトップバッターはNATURE誌を発行しているシュプリンガー・ネイチャーのアントワーン・ブーケ(Antoine Bocquet, Tony)氏。トニーさんは日本で学位を取っていて日本語がペラペラでした。Tonyさんは、近年失速する日本の科学研究の状態を、数値グラフを見せながら説明しました。もう、どんな指標でもはっきりと数字で日本の失速ぶりが露わになっているという、キツイお話でした。 2番目の登壇は黒川清氏(政策研究大学院大学)。PCとプロジェクタの接続が不調でいつになっても用意したスライドが映し出されないというトラブルに見舞われましたが、そんなことを気にもしないで、日本の研究業界の問題点の指摘に熱弁をふるっていました。会社や組織など自分が所属する組織に忠誠を誓うのでなく、その職種のプロフェッショナルとして行動せよというお話でした。エンジニアやバンカーが日本ではメジャーな会社から同業の別のメジャーな会社に移れないという状態はおかしいと言います。研究者に関しても同様で、博士号を取得した後も同じ研究室に残って仕事をするのは、ラボのPIがその博士号取得者をテクニシャン扱いしているのと変わらないと指摘していました。プロフェッショナルであれば、組織にとらわれずに仕事ができないといけないということです。また、日本の現政権は、大学は社会の役に立つことをやれという圧力を強めていますが、黒川氏は、科学は本来curiosty-driven(好奇心に基づいて行なうべきもの)であると断言します。 JSTさきがけ研究員の戸田陽介氏は、もともとイネの研究で農学博士を取得されたのだそうですが、その後、農学x化学、農学x情報学という異分野融合の機会に恵まれることにより、農学x化学x情報学というユニークな研究分野を開拓されています。異なる分野の研究者は研究のカルチャーや考え方が違いすぎて、共同研究を行なうことも非常に難しいことが多いのですが、戸田氏のように1人で異なる分野に通じていれば、学際的な研究プロジェクトを立ち上げることが可能になり、ユニークな研究を実現できる可能性を示していたと思います。 続いて登壇したのが東大大学院時代にGENEQUEUESTというベンチャー企業を立ち上げた高橋祥子氏。GENEQUEUEST社は、個人が唾液サンプルを送付するとそこからDNAを抽出しゲノム解析を行なうことにより、個人のゲノムの特徴を特定して遺伝子カウンセリングを行なうサービス。日本の研究が失速している一つの理由が、研究費が減っていることと先に話したトニーさんが指摘していましたが、研究を加速するために会社をつくったという高橋氏の行動は、研究費問題に関して一つの解答を与えるものです。何しろ会社を作った目的がそうなので、会社社長という立場でありながら、アカデミアの研究者のマインドも持ち続けているということでした。 このセッションの最後に登場したのが落合陽一氏。大学を辞めて椅子取りゲームからめでたく抜け出しましたという言葉には驚きました。自分で会社を立ち上げて利益を出し、そのお金を大学に還元して自分の大学のポストの給料をそこから出す仕組みにしているのだそうです。これまた、日本の研究が失速した要因として大学のポスト不足が挙げられるわけですが、落合氏のやり方はこのような困難な状況をものともしない生き方で、大変大変驚かされました。1年間に65個ものプロジェクトを走らせているという多作の人です。学生数が44人、会社で雇用しているエンジニアが6人。仕事の効率がどんだけいいの?と凡人の理解をはるかに超えていました。   ホンキギロン(パネルディスカッション) さて、個々のプレゼンのあと、トークセッションに移りました。ニコニコ生放送らしい企画で、パネルディスカッションの議題はインターネットの視聴者がその場の投票で選びました。投票結果は、 科学・テクノロジー 未来予測 29.4% …

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村中璃子氏に2017年度ジョン・マドックス賞

ジョン・マドックス賞は、学術誌Natureの名物編集長であったジョン・マドックス氏(1925~2009)を記念して創設された賞で、困難や逆風に遭いながらも公共の利益のために科学的な根拠を世に広めることに貢献した人に授与されます。 The John Maddox Prize recognises the work of individuals who promote sound science and evidence on a matter of public interest, facing difficulty or hostility in doing so. (The John Maddox Prize, Sense about science) 2017年度のジョン・マドックス賞は、子宮頸がんワクチンの危険性に関して科学的なエビデンスが無いことを指摘し、子宮頸がん予防ワクチン接種の重要性を訴えてきた医師・ジャーナリストの村中璃子氏が受賞しました。 Great to see …

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“量子コンピューター”開発成功のイムパクト

ImPACT(内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム)のプレスリリースおよび報道によると、初めての国産量子コンピューターの開発に成功したとのことです。 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の山本 喜久 プログラム・マネージャーの研究開発プログラムの一環として、日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長 鵜浦 博夫 以下、NTT)NTT物性科学基礎研究所 量子光制御研究グループの武居 弘樹 上席特別研究員、本庄 利守 主任研究員らのグループ、情報・システム研究機構 国立情報学研究所(東京都千代田区、所長 喜連川 優 以下、NII)情報学プリンシプル研究系の河原林 健一 教授、加古 敏 特任准教授らのグループ、および東京大学(東京都文京区、総長 五神 真)生産技術研究所 合原 一幸 教授、神山 恭平 特任助教らのグループは、光の量子的な性質を用いた新しい計算機「量子ニューラルネットワーク(QNN)」をクラウド上で体験できるシステムを開発し、2017年11月27日より公開いたします。   量子コンピュータを実現するハードウェアとしては、ゲート型、アニール型、ニューラルネットワーク型の異なる3つのアプローチがあります。インターネットを介して実機を体験できるクラウドウェブサイトとしては、IBMがゲート型15ビットマシンを、D-WAVEがアニール型2000ビット、12000結合マシンを今年に入って次々と公開しています。また、Googleも来年春にはゲート型49ビットマシンを公開する予定です。今回、日本から公開されるニューラルネットワーク型2000ビット、400万結合マシンは、世界最大規模の量子コンピュータであり、これまでの限界を30倍以上拡大した2000ビットまでの組み合わせ最適化問題が解けます。(山本 喜久 ImPACTプログラム・マネージャーのコメント 量子ニューラルネットワークをクラウドで体験 ~量子を用いた新しい計算機が使えます~JST 平成29年11月20日) スーパーコンピューターをはるかにしのぐ性能が期待される次世代のコンピューター、「量子コンピューター」の初の国産機の開発に成功したと国立情報学研究所やNTTなどのチームが発表しました。(初の国産量子コンピューター 無料公開 NHK NEWS WEB 11月20日 19時14分)   しかしながら今回の成果を「量子コンピューター」と呼ぶことに関して、インターネット上で異論が湧き起こっています。 これを量子コンピューターだと思っているのは地球上で数人(つまり当事者のみ)だけですから、ランダムに数人の別の研究者に問い合わせれば高い確率で問題に気づいたと思うのですが、今回、マスコミの方は、当事者の言葉をそのまま垂れ流しただけで、まったく検証していないということでしょうか。 https://t.co/LkE4BDkIX0 — Tomoyuki Morimae (@TomoyukiMorimae) 2017年11月21日 研究者としては「量子コンピュータ」とは呼べないものを研究者が「世界最大規模の量子コンピュータを開発した」と言って大大的に広報したということ。報道が勝手に書いたとかなら、またマスゴミが、で済むんですが、研究領域が大切にしている言葉の定義を研究者自身が広報のために歪めて使うというのは、研究倫理の問題にもなるんじゃないかと思います。‥(中略)‥ ビッグデータ、人工知能、IoT・・・。量子コンピュータもそのうちのひとつのバブリワードなわけで、バブリワードを使ってプレスしたほうがPR効果が大きいという判断なんでしょうね。‥(中略)‥ なんだかアホらしい話ですが、最近の大学や研究機関のプレスリリースは研究者としての誠実さよりも、バズること、世の中にウケることが最優先になっています。(内閣府ImPACTの誇大広告広報と量子コンピュータの話 人間とテクノロジー 2017-11-21) NTTの量子コンピュータのやつ改めて読んだけど、思ったより全然量子コンピュータじゃなくてびっくりしてる …

研究成果が新聞掲載されるプレスリリース書法

研究成果を社会に還元する一つの方法は、マスメディアを通じて世間に研究成果を知らしめることです。そのためには、論文発表のタイミングに合わせて、新聞、テレビ、雑誌、ウェブメディアなどに記事として取り上げてもらう必要があります。それを実現させるためには、報道記者に興味と関心を持ってもらえるようなプレスリリースを書く必要があります。大学の広報やURAがプレスリリース作成のサポートをする場合でも、最初の原稿は研究者が作ることになるでしょう。 そこで、プレスリリースを書く上で参考になりそうなウェブサイトを紹介します。 プレスリリースに対する考え方、文章を作成するにあたっての具体的な注意事項など、細やかな情報が得られるのが、生理学研究所・広報展開推進室の「科学者から国民への情報発信の意義と方法」。 プレスリリースは、たしかにメディアの目に触れ、そこでいったん解釈され、読者に仲介されはするが、あくまでその情報の最終的な受け手は、国民であることを忘れてはならない。プレスリリースの文章を書くときには、それを手にする国民一般、小中高校生からお年寄りまでを目に浮かべ、彼らに語りかけるように正確で分かりやすい記述にこころがけることが重要である。(科学者から国民への情報発信の意義と方法 生理学研究所・広報展開推進室) プレスリリースとはそもそも何か?プレスリリースの具体的なプロセス、プレスリリースの文章の構造、その他、記者との対応方法まで、教科書的にまとまっているのが、京大「虎の巻」。   (スライド13) 研究成果発表「虎の巻」 – 京都大学 (PDF) これらを参考にして、あとは実際の例を見ながら自分の文章を書いてみると良いでしょう。 プレスリリースの例 サイエンスポータル ニュース・プレスリリース 北海道大学プレスリリース(研究発表)の記事一覧 (PDF) 金沢大学研究トピック 参考 科学者から国民への情報発信の意義と方法 生理学研究所・広報展開推進室 / 小泉 周 科学者から国民への情報発信の意義と方法 (化学と生物 Vol. 49 (2011) No. 7 p. 503-508)(J-STAGE) 研究成果発表「虎の巻」 – 京都大学 (PDF) 研究者のための科学広報入門(基礎生物学研究所 広報国際連携室) 大阪大学企画部広報課報道係が支援するプレスリリース発信 プレスリリース競争が研究者の仕事なのか インターネットで変わる高等教育の形 (日経ビジネスONLINE 田中 深一郎 2013年1月25日):”大学も予算が年々厳しくなっているから、毎年、文部科学省に『今年は新聞掲載が何件、テレビの放映が何件あった』と、具体的な数字を報告しないといけない”   同じカテゴリーの記事一覧

研究成果を世界に発信する英文プレスリリース

論文はせっかく出版しても意外と読んでもらえないものです。ですから、自分の論文がめでたく受理されたら、論文掲載のタイミングに合わせてできるだけ世の中に向けて宣伝する必要があります。新聞等などのメディアに記事としてとりあげてもらうために報道記者に提供する資料が、プレスリリースです。日本のメディア向けには日本語でプレスリリースを書きますが、海外の新聞や雑誌に記事にしてもらうためには、英語で書く必要があります。 まだまだ世界に発信されていない日本の研究成果 さて、日本の研究成果を世界に発信するためには絶対に必要な英語のプレスリリースですが、これを出していない大学や研究機関が多いようです。また、英文プレスリリースを出している大学であっても、日本語での本数に比べると圧倒的に少ないようです。 毎日大量に発表される英文のリリースを読んでは、どれを日本語にするかを決めているわけですが、その中で気づいたことがあります。日本の大学・研究機関の英文プレスリリースが少ない。 日本の大学・研究機関から、インパクトファクターが大きいジャーナルへの発表は、それこそ毎日のようにあるのに、英文リリースが無いのが残念でなりません。わが国の科学レベルを分かってもらえない、というのも悔しいですし、成果を出した研究者を売り込めないのももったいないことです。(日本の研究成果を世界に発信するには【日経バイオテクONLINE Vol.1909】2013.07.17 19:00 増田智子) 2014年度の研究成果に関する和文配信件数:235件     2014年度の研究成果に関する英文配信件数:     9件 (出典:2015/5/29  第3回大学研究力強化ネットワークカンファレンス「EurekAlert!を例とした国際科学広報の効果的なあり方について」 英語による研究成果の発信:東京大学の事例紹介 東京大学本部広報室(Public Relations Office, University of Tokyo)髙祖歩美、Euan McKay) 記者の目に留まる英語のプレスリリースの書き方 英文のプレスリリースが少ない理由は、サイエンスが理解できて、英語がネイティブで、しかも一般読者にとって読みやすい英語の文章を書ける人やチームが日本の大学や研究機関の広報部門にほとんど存在しないことが要因でしょう。大学のサポートを受けられない研究者は、自分で書くしかありません。そこで、英文のプレスリリースの書き方を紹介したサイトを紹介します。EurekAlert!のリリースをいくつか見るとすぐに気付きますが、日本語でよく見るプレスリリースと、英文のプレスリリースとでは書き方のスタイルが大きく異なります。日本のプレスリリースは研究内容の解説が中心ですが、英文のプレスリリースは「人」が中心です。そのため、日本語のリリースをそのまま英語に翻訳しただけでは記者の心に引っ掛からない可能性があります。 海外の記者は社会部の記者が主で、科学ジャーナリストはまだ多くありません。このため、記事を特にわかりやすい言葉、わかりやすい文章で書く必要があります。大事なことから先に!研究成果の社会的意義(社会貢献や影響)など、大事なことから先に書きます。逆ピラミッド型の文章構造です。社会貢献や影響、研究成果、研究の背景、詳細、最後に研究機関や研究者情報の詳しい情報の順番です。文章の最初の部分で興味を引きつけないと、記事自体を読んでもらえません。タイトル(headline)や要約(intro)はトップページやヘッドラインに掲載されるため、最も重要です。インパクトのあるわかりやすい簡潔なタイトルを付けましょう。タイトルは6~8words (90 characters maximum)程度に収める必要があります。(熊本大学URA推進室 研究成果の海外国際広報 EurekAlert! を使用した海外国際広報について) レスター大学(University of Leicester)の広報(Press Office)がプレスリリースの書き方(How to Write a Press Release)を詳細に説明しており文章のスタイルを学ぶのに非常に役立ちます。 …

PLoSONE 精巧な手は創造主なる神の賜物

プロスワン(PLOS ONE)は、学術雑誌の出版社PLOSが2006年に創刊したオープンアクセスジャーナルです。論文の価値は雑誌掲載後に研究者が決めるべきという編集方針と、紙面の制約がないオンラインジャーナルという特性から、投稿された論文の採択率が高いという特徴があります(採択率70%程度といわれる)。論文が受理されやすいわりにはインパクトファクターも比較的高めなので、多くの研究者に支持されています。日本人研究者にも馴染みの深いメジャーな学術誌の一つです。 ところが、2016年1月5日にこのプロスワンに掲載された中国人研究者の論文「Biomechanical Characteristics of Hand Coordination in Grasping Activities of Daily Living」(日常生活での把持動作における手の協調運動の生体力学的な特徴)が、研究者に衝撃を与えています。 (http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0146193) なんと、この論文の中で著者らは、「手の精巧な構造は、創造主なる神のおかげである」と1度ならず3回も繰り返し述べているのです。 まずアブストラクトで(該当箇所を太字で示しました)、 “The explicit functional link indicates that the biomechanical characteristic of tendinous connective architecture between muscles and articulations is the proper design by the Creator …

誰でもわかる 今年のノーベル賞~生理学・医学 物理学 化学賞~【日本科学未来館×Newton×ニコ生】

誰でもわかる 今年のノーベル賞~生理学・医学 物理学 化学賞~【日本科学未来館×Newton×ニコ生】 黒田有彩(司会、NHK Eテレ『高校講座 物理基礎』MC) 髙橋麻美(日本科学未来館 科学コミュニケーター 生理学・医学賞チームリーダー) 谷明洋 (日本科学未来館 科学コミュニケーター 物理学賞チームリーダー) 松浦麻子(日本科学未来館 科学コミュニケーター 化学賞チームリーダー) 詫摩雅子(日本科学未来館) 髙嶋秀行(Newton本誌・ムック 編集部長) ※本番組は2015年10月25日にニコニコ生放送で放送されました

Silvia博士 生活を犠牲にしない論文量産術

  2015/05/20    出版, 研究力強化, 論文投稿

「できる研究者の論文生産術 どうすれば『たくさん』書けるのか」の著者ポール.J・シルヴィア氏が2012年4月27日に行った講演の動画があります。しかしこの講演ではとりとめもなく延々とフリートークが続くので、ポイントを掴むには彼の著書を読むほうが早いです。 たくさんの論文が書けるのは生まれつきの才能ではなくスキルです。だから、そのやり方を学ぶことができます。(前書きより) この本には非常に実践的な教えが書かれています。原稿が書きかけのままで憂鬱な気分になっている教授から出てくる典型的な言い訳が、「書く時間が見つからない」というものです。しかし、講義の時間がみつからないと言い訳する教授はいません。予定された授業の時間がきたら、授業をするしかないからです。論文を書くのも全く同じで、何曜日の何時から何時までは論文を執筆する時間と決めて、その時間には他の予定は一切入れずに論文の執筆に専念するということを習慣化しなさいと説いています。科学者はプロのライターなのですから、講義の時間に必ず講義をするのと同様、書くと決めた時間に必ず書きなさいとシルヴィアさんは言います。 ちなみにポール・シルヴィアさんが自分で決めた執筆の時間帯は、平日の朝8時から10時までだそうです。朝起きたら、着替えもせずシャワーも浴びず、Eメールのチェックもせず、珈琲を淹れてすぐに机に向かうとのこと。 論文を書けない理由は実はまだまだあります。現実的なところでは、書く前にデータの解析をしなければいけないとか、論文を書き始める前に参考文献を読まなければいけない、などなど。しかし、大丈夫です。シルヴィアさんは、これらもみな「ライティング」とみなします。論文の書き方の本を読むことまでも「ライティング」に含めます。これでもう書かない理由はほとんど潰されてしまいました。 論文を書く環境が悪い、椅子の座り心地が良くない、机が悪いと言って悪あがきする人がいるかもしれません。そういう人達のために、シルヴィアさんはこの本の執筆に使った机と椅子の写真を見せています。インターネットがつながらない部屋、引き出しもない机、質素な椅子。ウインドウズOSすら載っていないPC,DOS上で動くワープロソフト。書くためにはそれで十分だったとシルヴィアさんは言います。 それでもまだ、書く気が起こらない、インスピレーションが湧いてこない、どうしても書けない(Writer’s block)という人がいます。そんな人たちへの最も効果的な処方箋がまさに「決めた時間に書くことの習慣化」なのです。 論文をたくさん書かなければいけない研究者のためのライフハックツールとでも言うべき本。 How to Write a Lot – Paul J Sylvia (http://exordio.qfb.umich.mx/archivos%20pdf%20de%20trabajo%20umsnh/Leer%20escribir%20PDF%202014/Escritura%202014/How%20to%20Write%20a%20Lot%20-%20Paul%20J%20Sylvia.pdf)(73ページPDFへのリンク) Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 1 (1時間1分31秒) Paul Silvia, PhD …