英文プレスリリースで研究成果を世界に発信することの重要性について

      2019/07/17




論文はせっかく出版しても意外と読んでもらえないものです。ですから、自分の論文がめでたく受理されたら、論文掲載のタイミングに合わせてできるだけ世の中に向けて宣伝する必要があります。新聞等などのメディアに記事としてとりあげてもらうために報道記者に提供する資料が、プレスリリースです。日本のメディア向けには日本語でプレスリリースを書きますが、海外の新聞や雑誌に記事にしてもらうためには、英語で書く必要があります。

まだまだ世界に発信されていない日本の研究成果

さて、日本の研究成果を世界に発信するためには絶対に必要な英語のプレスリリースですが、これを出していない大学や研究機関が多いようです。また、英文プレスリリースを出している大学であっても、日本語での本数に比べると圧倒的に少ないようです。

毎日大量に発表される英文のリリースを読んでは、どれを日本語にするかを決めているわけですが、その中で気づいたことがあります。日本の大学・研究機関の英文プレスリリースが少ない。 日本の大学・研究機関から、インパクトファクターが大きいジャーナルへの発表は、それこそ毎日のようにあるのに、英文リリースが無いのが残念でなりません。わが国の科学レベルを分かってもらえない、というのも悔しいですし、成果を出した研究者を売り込めないのももったいないことです。(日本の研究成果を世界に発信するには【日経バイオテクONLINE Vol.1909】2013.07.17 19:00 増田智子)

2014年度の研究成果に関する和文配信件数:235件    
2014年度の研究成果に関する英文配信件数:     9件
(出典:2015/5/29  第3回大学研究力強化ネットワークカンファレンス「EurekAlert!を例とした国際科学広報の効果的なあり方について」 英語による研究成果の発信:東京大学の事例紹介 東京大学本部広報室(Public Relations Office, University of Tokyo)髙祖歩美、Euan McKay)

 

国際研究広報の取り組みの広がり

英文プレスリリースを出す大学が増え始めています。

2014年

事態が好転し始めたのは,国際広報に関心をもった国内の学術研究機関の実務者や関係者が学び,互いに議論し,情報を交換できる場が増えて,海外の報道機関とのつながりがなくとも報道関係者に研究成果が届けられるプレスリリース配信サービスを国内の学術研究機関が一斉に利用し始めた2014年末辺りからである。… 2014年末には国内の13の学術研究機関がそろってEurekAlert!(https://www.eurekalert.org/)という米国発のプレスリリース配信サービスを利用し始めた注1)。(日英米の比較からみる研究成果の国際情報発信 高祖 歩美 017 年 60 巻 6 号 p. 420-428 PDF

2015年

2015年3月には,沖縄科学技術大学院大学(OIST)で国際科学広報に関するワークショップ20153)が開かれた。研究成果の英語による情報発信に関心をもった関係者およそ100名が一堂に会して各機関の現状が紹介されて,英米の報道機関や広報関係者と国際科学広報を取り巻く状況について情報交換がなされた。2015年8月には英国の報道関係者から英文プレスリリースの書き方を学ぶ講習会がOISTで開かれた。(日英米の比較からみる研究成果の国際情報発信 高祖 歩美 017 年 60 巻 6 号 p. 420-428 PDF

  1. 国際科学広報に関するワークショップ 2015報告書(OIST 87頁PDF)
  2. 集会報告 国際科学広報に関するワークショップ2015 (岡田 小枝子, 名取 薫, 小泉 周 著者情報 ジャーナル フリー HTML 2015 年 58 巻 3 号 p. 224-227)国際科学広報に関するワークショップ2015が,沖 縄科学技術大学院大学(Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University: OIST)と科学技 術広報研究会(Japan Association of Communication for Science and Technology: JACST)が主催,大学研 究力強化ネットワーク(Research University Network of Japan: RUN)が協力という形で,2015年3月19 ~ 20日に,沖縄科学技術大学院大学(沖縄県国頭郡恩納村谷茶1919-1)OISTメインキャンパスにて開催され た。
  3. 日本の科学を世界に発信するためのサマースクール開催(OISTニュース 2015-08-18)沖縄科学技術大学院大学は(OIST)は、8月15~16日の2日間、科学技術広報研究会(JACST)との共催で、国際科学広報に関する実践形式のサマーコースを実施しました。講師として英科学週刊誌「ニューサイエンティスト」編集長のローワン・フーパー氏、同誌エディトリアル・コンテンツ・ディレクターのヴァレリー・ジェイミーソン氏を迎えた同コースには、…

実務者同士が情報を交換し,国際的な 情報発信を実践する場やコミュニティーが徐々に形成 されていった(表1)。その主要な場として,自然科学 研究機構が国内の15の学術研究機関とともに立ち上 げた「大学研究力強化ネットワーク」注2)や科学広報 の関係者が集まる「科学技術広報研究会」(Japan Association of Communication for Science and Technology: JACST)4)が挙げられる。(日英米の比較からみる研究成果の国際情報発信 高祖 歩美 2017 年 60 巻 6 号 p. 420-428 PDF))

最近は(2019年)、大学によってはかなりアクティブにEurekAlert!で英文プレスリリースを出している大学があります。そんな大学を以下の記事で纏めました。

⇒ EurekAlert!英文プレスリリース発信数 大学・研究機関ランキング

 

記者の目に留まる英語のプレスリリースの書き方

英文のプレスリリースが少ない理由は、サイエンスが理解できて、英語がネイティブで、しかも一般読者にとって読みやすい英語の文章を書ける人やチームが日本の大学や研究機関の広報部門にほとんど存在しないことが要因でしょう。大学のサポートを受けられない研究者は、自分で書くしかありません。そこで、英文のプレスリリースの書き方を紹介したサイトを紹介します。EurekAlert!のリリースをいくつか見るとすぐに気付きますが、日本語でよく見るプレスリリースと、英文のプレスリリースとでは書き方のスタイルが大きく異なります。日本のプレスリリースは研究内容の解説が中心ですが、英文のプレスリリースは「人」が中心です。そのため、日本語のリリースをそのまま英語に翻訳しただけでは記者の心に引っ掛からない可能性があります。

海外の記者は社会部の記者が主で、科学ジャーナリストはまだ多くありません。このため、記事を特にわかりやすい言葉、わかりやすい文章で書く必要があります。大事なことから先に!研究成果の社会的意義(社会貢献や影響)など、大事なことから先に書きます。逆ピラミッド型の文章構造です。社会貢献や影響、研究成果、研究の背景、詳細、最後に研究機関や研究者情報の詳しい情報の順番です。文章の最初の部分で興味を引きつけないと、記事自体を読んでもらえません。タイトル(headline)や要約(intro)はトップページやヘッドラインに掲載されるため、最も重要です。インパクトのあるわかりやすい簡潔なタイトルを付けましょう。タイトルは6~8words (90 characters maximum)程度に収める必要があります。熊本大学URA推進室 研究成果の海外国際広報 EurekAlert! を使用した海外国際広報について

レスター大学(University of Leicester)の広報(Press Office)がプレスリリースの書き方(How to Write a Press Release)を詳細に説明しており文章のスタイルを学ぶのに非常に役立ちます。

Journalists are looking for a hook which will form the main focus of their story. They like to know outcomes of research and they prefer a human angle to ensure the story has a public interest. (How to Write a Press Release)

また、英文プレスリリースの書き方の指針、具体例を交えた解説が、「研究成果を世界へ配信:なぜ、どうやって、そして誰が」の発表スライドにまとめられており、自分で英文を書く際に非常に参考になります。例えば下のスライドで説明されている英語プレスリリース(右側)の例では、まず「応用」可能性を真っ先に出して強調し、「組織、関係者紹介」や「成果・背景」をその後に登場させており、日本語のプレスリリース(左側)とは構成が異なっています。

(スライド14 一部改変 出典:研究成果を世界へ配信:なぜ、どうやって、そして誰が)

 

科学記者はプレスリリースをどう見ているのか

プレスリリースは記者の目にとまる必要があります。科学記者のプレスリリースに対する考え方を知っておくことは、記事に採用されるプレスリリースを書くうえで役立ちそうです。

Journalists Comment on Science Press Releases (COMPASSBLOGS):Alan Boyle, Bryn Nelson, Chris Joyce, Ed Yong, Erik Vance, Hillary Rosner, Mark Fischetti, Susan Moran

 

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良く書けたプレスリリースから学ぶ

英文プレスリリースの書き方を学ぶ最良の方法は、EurekAlert!や大学のウェブサイトのプレスリリースを実際にいくつも読んでみて、良くかけていると思われるものをピックアップし、書き出し、情報を出す順番、文体、構成などを研究することです。気に入ったものが見つかれば、それをテンプレートにして、自分の研究内容を当てはめてみると書き方の勉強になります。自分の研究に近い論文のプレスリリースを見てみたり、今ニュースメディアで話題になっている研究成果のプレスリリースを探して読んでみるのもよいでしょう。

例えば、こんな感じ。線虫を用いた研究ですが、ヒトに関する話から始めて、スムーズに研究内容につないでいます。

 

プレスリリースサイト

  1. EurekAlert! is an online, global news service operated by AAAS, the science society. EurekAlert! provides a central place through which universities, medical centers, journals, government agencies, corporations and other organizations engaged in research can bring their news to the media. EurekAlert! also offers its news and resources to the public. EurekAlert! features news and resources focused on all areas of science, medicine and technology
  2. EurekAlert!日本語版
  3. AlphaGalileo is a trusted independent business to business service for the research and media communities. Our Service is based on three fundamentals: the widest range of research topics, many types of news material, and a multilingual friendly service that delivers the services demanded by our users. As well as science, medicine and technology we cover social science, humanities, arts and high-tech business
  4. ResearchSEA is Asia’s first research news portal, a one-stop centre where journalists and the public can access news and local experts from the research world in Asia. Since 2004, ResearchSEA has been helping research institutions and connecting research in Asia with the global community. We can turn complex research papers into compelling press releases, distribute them to journalists, monitor your news coverage, train and inform researchers on the media, and more.
  5. Newswise  is where journalists choose, connect,and use smart news. A free newswire for journalists.  A press release distribution service for public relations professionals.

 

EurekAlert!(ユーレックアラート)で英文および日本語のプレスリリースを投稿

別の記事にまとめました

⇒ EurekAlert!(ユーレックアラート)の利用方法とよくある誤解について

 

主要な大学・研究機関の英語プレスリリース・研究ニュースサイト

  1. Caltech research news
  2. MIT News
  3. Japan Science and Technology Agency (JST) Press Rleases
  4. 高エネルギー加速器研究機構(KEK)プレスリリース(英語)
  5. 沖縄科学技術大学院大学(OIST)プレスリリース(英語)
  6. 大阪大学研究ニュースResOU(英語)
  7. 東京大学研究ニュース(英語)
  8. 京都大学研究ニュース(英語)
  9. 理研プレスリリース(英語)

 

英文プレスリリースに必要なネイティブチェックをどうするか

RIKENやOISTのように外国人の比重が大きい研究機関は英語のネイティブが多いのかもしれませんが、普通の大学の場合、プレスリリースの英文校正が頼めるようなネイティブが学内に存在しません。これが、英文リリース発信のハードルを上げているのではないかと思います。もちろんお金を払えば英文校正サービスは多数あります。

英文校正エナゴでは、お客様の研究成果を世に広め論文の引用(サイテーション)を飛躍的に増やす、コンテンツ編集パッケージサービスをご用意しています。プレスリリースやコンテンツライティングの経験豊富なエナゴのスタッフが、研究成果にふさわしい評価を得るお手伝いをさせていただくサービスです。サイテーションブースターでは3つのサービスをご用意しています。プレスリリース作成、簡潔なアブストラクト作成、ツイッター投稿文作成です。

納期 7営業日 料金 44,000円

サイテーション(被引用数)ブースター Enago enago.jp)

 機関の研究成果を国際的にアピールできる英文プレスリリースを作成します。同じ分野の研究者だけにとどまらず、広く一般の人々の関心を惹きつける内容を意識し、制作いたします。 プレスリリースに含まれる内容 タイトル サブタイトル プレスリリース本文(内容に応じ、200~400ワード程度で作成)料金 1本 50,000円(税別)(エダンズの英語版プレスリリース作成サービス)

研究費が潤沢にあるラボならこういうサービスが利用できますが、多くの研究室にとってこのような費用の捻出は困難でしょう。ラボに負担させず、大学が研究支援のための英語ネイティブスピーカーを雇用する制度が整備することが望まれます。

 

参考

  1. Working with Public Information Officers Dennis Meredith, North Carolina: Glyphus, 2010| 広報とのつきあい方 デニス・メレディス 著(2010) 飯島由多加 訳、岡田小枝子 編(2014)
  2. 熊本大学URA推進室 研究成果の海外国際広報 EurekAlert! を使用した海外国際広報について 研究成果が出たら、いち早く世界に向けて発信しませんか? 支援したプレスリリース一覧
  3. 研究成果を世界へ配信:なぜ、どうやって、そして誰が  RA協議会第1回年次大会・2015.9.2 今羽右左 デイヴィッド 甫(KURA)、小泉 周(NINS)、倉田 智子(NIBB)スライド60枚  http://slideshowjp.com))
  4. ISCWサマースクール2015 国境を越えて:効果的な国際科学広報発信とは 沖縄科学技術大学院大学(OIST)・科学技術広報研究会(JACST) 2015年8月15日(土)・16日(日)
  5. 平成27年度第1回大学研究力強化ネットワーク・カンファレンスを開催(2015/5/29開催)
    EurekAlert!の概要説明(AAAS EurekAlert!担当マネジャーBrian Lin) 資料
    EurekAlert!事例紹介 東京大学 特任研究員 高祖歩美、特任研究員 Euan McKay 資料
    事例紹介2 OIST コミュニケーション・広報ディビジョン・メディアセクションマネージャー 名取薫 資料
    事例紹介3 広島大学 シニアURA 三代川 典史資料
    国際科学広報ワークショップ2015報告 沖縄科学技術大学院大学 准副学長 森田洋平資料
    ResearchSEA 日本特派員 角林元子資料
    「英文ブレスリリース解剖劇場:更なる深層」 京大 国際・広報担当 シニアURA David H Kornhauser)資料
    英文プレスリリース作成のための学内個別アンケートのフォーマット 東京大学 資料
  6. 岡田 小枝子, 名取 薫, 小泉 周  国際科学広報に関するワークショップ2015 情報管理 Vol. 58 (2015) No. 3 p. 224-227 (J-STAGE)
  7. AAAS広報担当者とEurekAlert! の活用に関する意見交換会を開催(2015/2/15):”英文プレスリリースに関しては、日本語プレスリリースの単なる翻訳ではなく、英語文章表現に適した構成で書かれた方が効果が高い”
  8. How to Write a Press Release(レスター大学University of Leicester)
  9. How to write a press release (America nSociety for Biochemistry and Molecular Biology, ASBMB)
  10. “Extra! Extra! Read all about it!”: Science writing for press releases
  11. Press release guidelines for scientists (spacetelescope.org)
  12. Guest Post: Writing a press release – a guide for researchers Published 03/09/2009
  13. 研究成果の「誇張」は、プレスリリースにもある(ライター:粥川準二  エナゴ学術英語アカデミー):”ニュースが誇張されていたり、センセーショナルだったり、警告的だったりすることで、メディアやジャーナリストを非難することがよくあるが、われわれの知見の核心は、調査で見つかった誇張のほとんどは最初からメディアで生じたわけではなく、研究者や彼らが所属する研究機関が作成したプレスリリースの文章にすでに存在していた、ということである。”
  14. The perils of Science by press release: ‘overly exaggerated presentation of research findings’ Anthony Watts / June 8, 2014
  15. Exaggerations and Caveats in Press Releases and Health-Related Science News (PLOS ONE)
  16. Science Press Releases: Good, Bad or Zombies? Friday, January 18, 2013
  17. Taming Beastly Press Releases 11 September, 2012 by Liz Neeley
  18. Communicating Science: Press Releases at EHP

 

その他

  1. サイエンスポータル ニュース・プレスリリース
  2. 研究者のための科学広報入門(基礎生物学研究所 広報国際連携室)

 

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