ジョン・マドックス賞は、学術誌Natureの名物編集長であったジョン・マドックス氏(1925~2009)を記念して創設された賞で、困難や逆風に遭いながらも公共の利益のために科学的な根拠を世に広めることに貢献した人に授与されます。
The John Maddox Prize recognises the work of individuals who promote sound science and evidence on a matter of public interest, facing difficulty or hostility in doing so. (The John Maddox Prize, Sense about science)
2017年度のジョン・マドックス賞は、子宮頸がんワクチンの危険性に関して科学的なエビデンスが無いことを指摘し、子宮頸がん予防ワクチン接種の重要性を訴えてきた医師・ジャーナリストの村中璃子氏が受賞しました。
Great to see @bronwenmaddox (Lady (Brenda) Maddox in background) give the #MaddoxPrize to @rikomrnk, celebrating life of Sir John Maddox @senseaboutsci @nature https://t.co/uGlBWXr33i pic.twitter.com/1crtS2sYC3
— Roger Highfield (@RogerHighfield) 2017年11月30日
HPVワクチンは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐワクチンだ。日本では、2013年4月に小学6年生から高校1年生の女子を対象に公費で打てる定期接種となったが、注射後に痛みやけいれんなど多様な症状を訴える声が相次ぎ、同年6月に国は積極的に国民に勧めることを停止した。この頃からマスメディアは、けいれんや痛みを訴える女の子を積極的に取り上げ、「怖いワクチン」というイメージが世の中に広く浸透。ほとんど接種する人がいなくなった。村中さんも2014年頃、テレビでけいれんする女の子を見て、「これは薬害なのか?」と疑いを持って取材を始めたという。ところが、小児科医や小児精神科医を取材したところ、ワクチンを打っていなくても、思春期特有の症状として同様の症状を訴える子供が多いことに気づく。1年ほど取材を重ね、2015年10月から、雑誌「ウェッジ」などに、HPVワクチン接種後の多彩な症状は薬害ではないのではないかと科学的に検証する記事を次々に発表していった。(海外の一流科学誌「ネイチャー」 HPVワクチンの安全性を検証してきた医師・ジャーナリストの村中璃子さんを表彰 BUZZ FEED NEWS 2017/12/1)
副反応として報告されているものの多くは接種時の疼痛(とうつう)や接種部位の腫れだ。そのデータでは未回復は186人だが、「因果関係を問わない副反応」と自己申告のあったもの。仮に186人全員の症状が子宮頸がんワクチンによるものだとしても、発症率は0.005%だ。一方、日本で認可されている4価ワクチンの効果は約60%。米国などで承認されている9価ワクチンなら90%以上が守られる。新しいワクチンと検診とを併用することで、子宮頸がんで亡くなる人を限りなくゼロに近くできる。(「医師とメディア人」二足のわらじを履く理由 あの英誌「ネイチャー」が選んだ日本人女医 東洋経済ONLINE 2017年12月01日)
目次
日本外国特派員協会 会見映像
Muranaka & Fujimoto: “Libel lawsuit caused by HPV (human papillomavirus) vaccine pseudoscience” (FCCJchannel 日本外国特派員協会 会見映像 オフィシャルサイト 2016/12/06 に公開)(49:25)
HPVワクチン薬害訴訟問題
2016(平成28)年7月27日 HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)薬害訴訟提訴にあたっての声明 本日、HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の接種によって深刻な副反応被害を受けた63名の被害者が、国及び製薬会社(グラクソ・スミスクライン株式会社、MSD株式会社)に対して、損害賠償請求訴訟を東京、名古屋、大阪及び福岡の各地裁に提訴しました。(HPVワクチン薬害訴訟全国弁護団)
本日現在、訴状を受け取っておりませんので、上記訴訟についてのコメントは差し控えますが、様々な症状によって苦しまれている方々につきましては、心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い回復をお祈りしています。.. (中略).. 報告されている様々な症状とHPVワクチンとの因果関係は医学的・科学的に明らかになっておらず、弊社は「サーバリックス®」のベネフィットが副反応のリスクを上回るものであることを確信しております。(子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の訴訟に関するGSKの声明 GSK 27 July 2016)
無作為臨床試験を含む、圧倒的な科学的エビデンスがあることから、主張の内容に根拠はないとMSDは信じています。(2016年7月27日 MSD株式会社 PDF)
ワクチン副作用、63人提訴 子宮頸がん、15~22歳女性(KyodoNews 2016/07/27 に公開)
Wedge掲載記事をめぐる訴訟問題
- WEDGE infinity 特集:子宮頸がんワクチン問題
- 訴状(PDF) 平成28年8月17日
- 村中璃子氏ら被告の裁判 当日の詳細 (みかりんのささやき 2017-02-19)
- 村中璃子氏の裁判を傍聴して 鍵を握るA氏の証言 『音声反訳』はなぜすぐ出てこなかった?(天国に届くといいなぁ 2017/06/15)
子宮頸がんワクチンに関する議論
子宮頸(けい)がんワクチンの接種後に、原因不明の体の痛みなど、重い症状の訴えが相次いだ 問題で、先週、追跡調査の結果や今後の対応について厚生労働省の会議が開かれました。このワクチンとどう向き合えばいいのか?土屋敏之解説委員に聞きます。(くらし☆解説 「どうする?子宮頸がんワクチン」 土屋 敏之 解説委員 NHK 2015年09月25日)
- HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)(薬害オンブズパースン会議):”2009(平成21)年10月、HPVワクチン(サーバリックス)が厚生労働省により承認され、日本国内での販売が開始された。開始後から厚生労働省は部会を設置し、公費助成や定期接種化に向けた取り組みを開始したが、当会議は、2010(平成22)年11月、「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種に関する当会議の見解」を作成し、主に接種対象者の自己決定権を保障するという観点から問題提起をした。しかし、同月、ワクチン接種に関し公費助成が決定され、2013(平成25)年4月には予防接種法が改正され、定期接種化が実施された。こうした流れの中、HPVワクチンの被接種者は累計約770万人(延べ人数)となったが(厚生労働省発表資料)、これら被接種者のうち、一定数の者に、ギラン・バレー症候群や急性散在性脳脊髄炎などの重篤な自己免疫性疾患等の副反応被害が発生した。”
- TWEETS (twitter.com) #子宮頸がんワクチン
- サルでもわかる 子宮頸がんワクチン問題(1)(inkブログ 2017-09-25)
- 「救えるはずの患者を救えない」 子宮頸がんワクチン副作用「問題」はなぜ起きた?「このままでは誰も救われない」(石戸諭 BuzzFeed 2016/12/3):”いまもなお、ワクチン接種の副作用が報道され、因果関係の有無を中心に論争が続いている。しかしその構図は、大多数の専門家が一致した見解をとるなか、一部の研究者が「因果関係がある」と主張している、というものだ。”
- 少女たちの人生を狂わせた? 「子宮頸がんワクチン」の実態 (iza イザ 2016.07.27):”接種を受けた約338万人のうち、健康被害の報告があった全2584人。そのうち発症日や症状が出た後の経過が確認できたのは1739人。うち症状が回復した患者は1550人(約89.1%)、未回復は186人(約10.7%)。”
- 子宮頚がんワクチンの行方 ー捏造報道の真偽ー (Dr.和の街医者日記 2016年07月28日)
- 放射能と子宮頸がんワクチン カルト化からママを救う 対談 開沼博×村中璃子(後篇)(WEDGE REPORT 2016年4月21日)
- (拡散希望)HPVワクチン被害者のnature誌への勇気ある訴えを知ってください (ほたかのブログ 2015-12-29)
- The world must accept that the HPV vaccine is safe. But the science alone will not be enough to build public and political confidence, says Heidi Larson.(NATURE COLUMN 01 December 2015) 削除されたコメント欄に寄せられていた42のコメント(アーカイブ)
- 瀬戸内寂聴から考えた子宮頸がんワクチン<ワクチンの処方箋・その1>(Dr.村中璃子の世界は病気で満たされている 村中 璃子 日経ビジネス ONLINE 2015年10月22日):”HPVはセックスやキスを介して簡単に感染する、皮膚や粘膜に常在するありふれたウイルスです。 … HPVを発見したドイツ人のハラルド・ハウゼン氏は、この発見により2008年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。… 仮に初期で見つかれば子宮の入り口にある子宮頚部を切り取る手術で命は助かります。しかし、子宮の入り口とはつまるところ膣の奥。プライベートなことなので大声でそれを訴える女性は多くありませんが、子宮頸がんの手術を受けた結果、性生活が楽しめなくなった、そのため性生活がうまくいかなくなり妊娠を諦めたという女性がたくさんいます。また、仮に妊娠しても子宮の入り口を切り取っているため早産になりやすく、妊娠継続がうまくいかないというケースも多々あります。日本では少なくとも年間1万人の女性がこの手術を受けています。”
- 子宮頸がんワクチンのせいだと苦しむ少女たちをどう救うのか 日本発「薬害騒動」の真相(後篇)(村中璃子 (医師・ジャーナリスト) WEDGE REPORT 2015年10月23日) :”身体に表現されている症状について否定したり『心因性だから』と片付けたりするのも問題です。こうした対応を行うと、大抵の場合は症状が悪化します。”
- あの激しいけいれんは本当に子宮頸がんワクチンの副反応なのか 日本発「薬害騒動」の真相(前篇)(村中璃子 医師・ジャーナリスト WEDGE REPORT 2015年10月20日):”去る9月17日、専門家らによる厚生労働省のワクチン副反応検討部会が行われた。子宮頸がんワクチンについて議論したのは1年2カ月ぶり。 部会は今回も「ワクチンによる重篤な副反応の多くは心的なものが引き起こす身体の症状」との見解は覆さなかったが、「積極的な接種勧奨の差し控え」という奇妙な日本語の判断も継続するとした。差し控えにより接種率はかつての7割から数%にまで落ち込んでいる。”
ワクチン接種に関する談義
- 子宮頸がんワクチンについて高2の娘を持つ母です。最近周囲の同級生ママ友さんたちと“子宮頸がんワクチン”について話すことがありました。‥‥ 娘さんを持つお母様方は、“子宮頸がんワクチン”についてどのように考えてらっしゃいますか?なにが子どものためなのか、皆さまの声をお聞かせください。(井戸端会議 2016/09/02)
厚生労働省のウェブサイト
ジョン・マドックス賞受賞に関する報道
- Women’s health champion, Dr Riko Muranaka, awarded the 2017 John Maddox Prize for Standing up for Science (Mark Staniland, NPG プレスリリース 30 November 2017)
- Q&A: Japanese physician snares prize for battling antivaccine campaigners (By Dennis Normile, ScienceMag.org news Nov. 30, 2017 , 2:00 PM):”A Japanese physician and writer who is under fire from antivaccination groups for defending a cervical cancer vaccine won an international award today for her perseverance.”
- 「医師とメディア人」二足のわらじを履く理由 あの英誌「ネイチャー」が選んだ日本人女医 (東洋経済ONLINE 2017年12月01日):”世界屈指の科学論文誌、英『ネイチャー』などが主宰する「ジョン・マドックス賞」。2017年の受賞者が医師・ジャーナリストの村中璃子氏に決定し、11月30日に授賞式が行われた。”
- 海外の一流科学誌「ネイチャー」 HPVワクチンの安全性を検証してきた医師・ジャーナリストの村中璃子さんを表彰 ネイチャーは日本の状況を、「このワクチンの信頼性を貶める誤った情報キャンペーンが全国的に繰り広げられた」と厳しく批判。(岩永直子 BuzzFeed News Editor, Japan BUZZ FEED NEWS 2017/12/1 10:30):”HPVワクチンの安全性を検証する発信を続けてきた医師でジャーナリストの村中璃子さんが11月30日(ロンドン時間)、イギリスの一流科学誌「ネイチャー」元編集長の功績を記念したジョン・マドックス賞を受賞した。”
- ジョン・マドックス賞に日本人医師 村中璃子氏、子宮頸がんワクチン問題について発信 (産経ニュース 2017.12.2 16:33):”英科学誌「ネイチャー」などが主宰し、公益に資する科学的理解を広めることに貢献した個人に与えられる「ジョン・マドックス賞」の2017年受賞者に、子宮頸(けい)がんワクチン問題について積極的に発信してきた医師でジャーナリストの村中璃子氏が選ばれた。”
- BBC Mixes Up Two Asian Women During Cringeworthy Radio Interview (By Kimberly Yam, HUFFPOST/MEDIA 12/04/2017 06:17 pm ET) During a Friday segment on the radio program, host Jenni Murray introduced her guest as Japanese doctor Riko Muranaka, who won the 2017 John Maddox Prize for “promoting science” about the HPV vaccine. However, the woman Murray was talking to on-air wasn’t Muranaka at all, but Trinh T. Minh-ha, a Vietnamese filmmaker. “Riko, why did you pursue this subject?” Murray asks Minh-ha, who remains silent.
- 子宮頸がんワクチン問題めぐる英表彰、報じられぬ日本 新聞では「産経」「道新」のみ (JCASTニュース 2017/12/ 6 19:14):” 12月6日時点で国内メディアで記事が受賞の記事が確認できるのは、産経新聞、東洋経済オンライン、バズフィード・ジャパン、北海道新聞のみ。”
- HPVワクチン問題で啓蒙、医師の村中璃子氏にジョン・マドックス賞 (山川真智子 NewSphere Dec 8 2017) BLOGOS コメント(26):”HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)は、世界的にその有効性が認められているが、接種後に深刻な副反応が出ていると報じられたことで、2013年に70%だった日本での接種率は、現在1%を切っている。 そんななか、ワクチンへの恐怖をあおる報道や発表の間違いを科学的な視点で正した功績が認められ、医師でジャーナリストの村中璃子氏が、ネイチャー誌などが選出するジョン・マドックス賞の今年の受賞者に決定した。”
参考
- ジョン・マドックス賞受賞スピーチ全文「10万個の子宮」村中璃子 Riko Muranaka 2017/12/09
- 村中璃子オフィシャルサイト 執筆記事一覧 村中璃子 RIKO MURANAKA @rikomrnk “村中 璃子 Riko Muranaka, M.D., M.A. 医師・ジャーナリスト 世界保健機構(WHO)の新興・再興感染症チーム等を経て、メディアへの執筆をはじめる。2017年、科学誌「ネイチャー」等の主催するジョン・マドックス賞を受賞。京都大学医学研究科非常勤講師。一橋大学社会学部出身、社会学修士。北海道大学医学部卒。”
- 追悼 ジョン・マドックス(1925~2009)(PDF) (NATURE DIGEST|VOL 6|JUNE 2009):”2009 年 4 月 12 日に死去したジョン・マドックスは、1966 ~ 73 年と 1980 ~ 95 年にNatureの編集長を務めた。それまで科学研究の評価の点でもジャーナリスティックな報道活動の点でも、仲間意識や素人くささが抜けなかったNatureは、彼が編集長に就任したことをきっかけにして、挑発的で専門的な学術誌へと大きく変貌した。”
書籍
- 10万個の子宮:あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか 村中 璃子 著 平凡社 2018/2/9
子宮頸がんワクチンについて
- 子宮頸がん予防ワクチン予防接種について(八王子市 更新日:平成28年6月29日)
- 子宮頸がん予防ワクチン(星川小児クリニック):”子宮頸がんの原因は、ほぼ100%がヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染です。多くの場合、性交渉(皮膚や粘膜同士の接触)によって感染すると考えられていて、発がん性HPVは、すべての女性の約80%が一生に一度は感染していると報告があるほどとてもありふれたウイルスです。このため、性行動のあるすべての女性が子宮頸がんになる可能性を持っています。… 子宮頸がん予防ワクチン接種後の、広範な疼痛・運動障害の頻度は10万回の接種当たり数例と決して多くありません。2013年12月に開催された第6回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会に示されたデータをみても、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、ギラン・バレー症候群の自然発症の頻度と比べても1桁少ない結果でした。 … 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会は、子宮頸がん予防ワクチンによる副反応そのものの発生頻度は非常に低く、接種と広範な疼痛・運動障害の因果関係については、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を自然発症した患者が紛れ込んでいる可能性が高いとの判断を示しました。”
その他関連するサイト・ブログ記事
- 村中璃子氏の不適切な取材の全容 (みかりんのささやき~子宮頸がんワクチン被害のブログ~ 2016-04-03)
これまでの報道
- 子宮頸がんワクチン ワクチン未接種で同様症状15例報告 (毎日新聞 2017年7月28日):”子宮頸(けい)がんワクチン接種後の痛みや運動・知覚障害などについて議論している厚生労働省の有識者検討部会は28日、こうした症状に詳しい小児科医4人からの聞き取りをした。ワクチンを接種していなくても同様の症状があったとする計15例の報告があり、回復の経過などを検討したが、ワクチン接種と症状の因果関係などの議論は進まなかった。 “
5ちゃんねる(旧 2ちゃんねる)
- 【ジョン・マドックス賞】日本人医師 村中璃子氏、子宮頸がんワクチン問題について発信 日本人初受賞 2017/12/02(土) 19:42:05.81 – 2017/12/04(月) 22:41:30.97 http://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1512211325/