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STAP論文調査委員らにもデータ切り貼り疑惑

小保方STAP論文理研調査委員会の他の委員らの論文にもデータ切り貼り疑惑

小保方晴子氏がSTAP細胞作製を報告したNATURE論文の中でデータの捏造、改竄があったことを認定した理化学研究所の調査委員会の委員長を務めた石井俊輔委員長の研究室から出た過去の論文にデータの写真の切り貼りが指摘されたのに続いて、さらに、他の委員らの論文にも研究不正の疑惑が持ち上がるという異常な事態が生じています。これらの指摘を受けて理研は理研所属の2名の審査委員に関しては不正があったかを確認するための予備調査を開始しました。

調査委員委員の一人である田賀哲也教授が所属する東京医科歯科大学でも同様の指摘を受けて予備調査を行い、「不正があったと立証できるものはない」という結果を発表しました。

しかし、どの論文のどの図に関してどのような不正の疑いがあったのか全く報道されておらず、東京医科歯科大学の「不正なし」という判断の根拠も示されていないため、第三者には何がどうなっているのか全くわからない状態です。

論文捏造&研究不正 ‏@JuuichiJigen
細胞画像の縮小版と拡大版を一つのFigure内に掲載しただけなのに、「画像捏造(流用)」ではないか?との言いがかり(見当違い)の告発をされたSTAP論文調査委員の田賀哲也氏が所属する東京医科歯科大学は、既に予備調査を終えて、不正の証拠はなしとして本調査には進まないと発表した模様。4:48 – 2014年5月2日(https://twitter.com/JuuichiJigen/status/462196825127387136)

小保方氏代理人が苦言「STAP論文許されず、委員の論文は許される」(産経新聞 5月3日(土)14時49分配信)
三木氏はコメントの中で「STAP論文は許されず、田賀論文は許されるとすれば、画像の切り張りや引き伸ばしについて許される場合と許されない場合があることになる」と指摘。(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140503-00000540-san-soci)

インターネット上では真っ向から対立した議論があり、情報が錯綜しています。

東京医科歯科大学も、山中伸弥教授石井俊輔氏のように実験ノートや生データの有無を明らかにし、論文の図の作製においてどのような操作が行なわれたのかをもっと詳細に説明したほうが良いのではないでしょうか?STAP論文捏造疑惑の小保方晴子氏の弁護団の一人、三木弁護士からは何が研究不正にあたるのかを説明してもらいたいという要望が出ており、論文作製における図の取り扱いは現在の日本の科学研究にとって非常に重要な争点になっています。

疑惑が指摘されたが問題はなかったという説明だけでは、論文不正の指摘が「言いがかり」だったのか、それとも不正行為を「もみ消し」たのか、第三者には全くわかりません。不正疑惑を払拭するのに十分な実験ノートや生データとはどのようなものなのか、研究者の常識を知らしめる良い機会です。是非、研究者でない一般の人にも理解できるような、わかりやすい説明をして欲しいものです。

 

理研調査委3人に論文不正疑惑 予備調査を開始(14/05/02)

【追記】

インターネット上の情報によれば問題視された田賀氏の2004年の論文は、

Takao Setoguchi, Kinichi Nakashima, Takumi Takizawa, Makoto Yanagisawa, Wataru Ochiai, Masaru Okabe,Kazunori Yone, Setsuro Komiya, Tetsuya Taga. Treatment of spinal cord injury by transplantation of fetal neural precursor cells engineered to express BMP inhibitor. Experimental Neurology Volume 189, Issue 1, September 2004, Pages 33–44

であり、疑問を持たれた点の一つは、図2Cが図2Fの一部を拡大したものになっているという指摘でした(http://4.bp.blogspot.com/-R5habHlRKsA/U2OtIn9ypjI/AAAAAAAABVY/f0mNUCtjeZQ/s1600/1.png)。図2の説明文を読むと(http://1.bp.blogspot.com/-fBBP97q90KI/U2O0AD5GCWI/AAAAAAAABVo/xcV1rONjK5s/s1600/2.jpg)、図2Fはこの実験においてMAP2抗体染色(赤色)とGFAP抗体染色(緑色)を行なったことを説明するためのものであり、この実験の中でGFAP陽性アストロサイトが観察されたことが図2Cで示されています。つまり同一の実験結果なので、図2Fの一部(緑色に染色された細胞集団)を図2Cとして用いたことにはなんら問題はありません。疑義を呈した人はおそらくこの論文の図の説明を読まずに勘違いしてしまったのではないかと思われます。

参考

  1. 3委員の論文にも疑い 理研調査委「画像切り貼り」など (東京新聞 2014年5月2日 朝刊):新たに指摘があった調査委員は、理研の古関明彦グループディレクターと真貝洋一主任研究員、東京医科歯科大の田賀哲也教授。
  2. 小保方さん論文調査委、新たに3人加工疑惑 研究者5人中4人が調べられる側に (スポーツ報知 2014年5月2日6時0分):同様の論文加工で委員長を辞任した石井俊輔上席研究員(62)を含めると、当初の調査委員の研究者5人のうち4人の論文に疑いが浮上する異常事態となった。
  3. 止まらない論文狩り STAP調査委メンバーにまた新疑惑 (日刊ゲンダイ 2014年5月1日 掲載):STAP問題以降、日本では「1億総論文狩り」状態だ。
  4. 委員の論文不正「立証できるものはない」 (日刊スポーツ 2014年5月2日20時8分):医科歯科大は5月1日に予備調査を実施。05年の論文への指摘は、実験ノートに残ったデータから問題ないことを確認した。04年の論文についてはノートは残っていなかったが、同じチームの研究者に聞き取った結果、説明は合理的で問題ないと結論づけた。
  5. 東京医科歯科大・田賀教授の論文に不正なし(スポーツ報知 2014年5月2日20時14分):田賀教授に関しては、熊本大に在籍中の2004~05年に責任著者として発表した2本の論文に、画像の切り貼りや使い回しをした疑いがあるのではないかと、4月30日に医科歯科大に通報があった。
  6. 東京医科歯科大学難治疾患研究所幹細胞制御分野 (田賀 哲也 教授)ウェブサイト
  7. 小保方氏 理研に質問書「ねつ造の解釈説明を」 (NHK NEWSWEB 4月30日 12時47分):三木弁護士は「調査委員会の前の委員長は、小保方リーダーと同じようなことをしながら『不正ではない』としている。どのような行為が不正に当たるのか、規程の解釈を明らかにしてほしい」と話しています。

 

山中伸弥教授が自身の論文不正疑惑を強く否定

小保方晴子氏のSTAP論文捏造疑惑ともあいまって、DNA電気泳動の写真データの切り貼りが広く研究者の間で行なわれていた事実が発覚し、日本の科学研究の信頼性が大きく揺らぐ異常な事態になっています。

以前からインターネット上の一部のサイトで山中伸弥教授の論文に関しても疑義が指摘されていましたが、2014年4月28日に山中教授が記者会見を行いこの疑惑をきっぱりと否定しました。

20140428_1

(上図は京都大学iPS細胞研究所ウェブサイトより転載)

参考

  1.  2000年にThe EMBO Journalに掲載された論文について (京都大学iPS細胞研究所 2014.04.28):京都大学iPS細胞研究所山中伸弥教授は、同教授らが2000年に発表した論文に掲載された図に関する疑問点を指摘したウェブサイトを発見しました。当研究所は、山中教授の申し出を受け、事実関係を調査しました。
  2. 山中伸弥氏の論文画像類似事案(捏造指摘ではない)捏造、不正論文 総合スレネオ2 のコメント240で指摘された、山中伸弥氏の論文(EMBO J. 2000;19:5533-41.)の実験画像類似事案について。 (http://blog.goo.ne.jp/netsuzou/e/a703a56e46063cd81de556269b3cb3b9
  3. Shinya Yamanaka, Xiao-Ying Zhang, Mitsuyo Maeda, Katsuyuki Miura, Shelley Wang, Robert V. Farese, Jr, Hiroshi Iwao, and Thomas L. Innerarity. Essential role of NAT1/p97/DAP5 in embryonic differentiation and the retinoic acid pathway. EMBO J. Oct 16, 2000; 19(20): 5533–5541. doi:  10.1093/emboj/19.20.5533.
  4. 「今後、ノートしっかりとる」 山中氏会見、一問一答(朝日新聞デジタル2014年4月28日23時39分):元データは、共同研究者のノートにあるのか。山中 自分自身の記載漏れか、共同研究者が実験したノートを私が持っていないのか、どちらかわからないのが正直な答えだ。
  5. 山中所長会見:ネットで不正指摘 課題に研究者の説明責任 (毎日新聞 2014年04月28日 21時56 最終更新 04月28日 22時25分):…今回、山中教授は生データを示せず、不正がなかったと完全には証明できなかった。…
  6. 「内容は一点の曇りもない」「生データ無いのは恥ずかしい」 山中伸弥教授の会見内容(産経ニュース 2014.4.28 21:38):「論文に疑問を呈されたことは、去年の4月初めに把握した。共同研究者のデータは保存していなかった。指摘されているデータが自分のノートからは出てこない。これは反省するしかない。日本の科学者の見本とならないといけない立場は十分に理解している。心からおわび申し上げる。しかし、論文内容については一点の曇りもない。自分の論文に疑問を持たれるのは、死ねといわれるのに近い痛みを伴う。心より悔やんでいる」
  7. 山中教授、不正否定=共著者ノート、確認できず陳謝-14年前の論文・京大 (時事ドットコム 2014/04/28-21:17):実験の生データは山中教授のノートでは確認できなかった。共に研究の中心となった中国出身の研究者のノートに記録されている可能性もあるが、連絡が取れないという。
  8. 山中教授「反省、おわび」 過去の論文疑義でデータ発見できず(日本経済新聞 2014/4/28 19:07):京大iPS細胞研究所によると、論文にネット上で疑義が指摘された13年4月に調査を開始し、山中教授から段ボール5箱分の実験ノートの提出を受けた。
  9. 山中伸弥教授が論文の疑義に反論 ES細胞研究で データ不備には謝罪 (産経ニュース 2014.4.28 21:37):生データが自身のノートから発見できなかった点は「研究者として反省し、おわびする」と述べた。

論文疑義を受け石井俊輔氏が実験ノートを公開

小保方晴子氏らのSTAP細胞NATURE論文の疑義に関して調査を行なってきた理化学研究所調査委員会では石井俊輔・理研上席研究員が委員長を務めていましたが、その石井氏の研究室から出た過去の論文にデータ操作の疑義が生じ、石井俊輔氏は調査委員会委員長を辞任しました。石井氏の後任として、調査委員会委員で弁護士の渡部惇氏が4月26日付で新委員長に就任しました。

この件に関しては、石井俊輔氏が実験ノート、生データを公開し、行なわれた訂正に関して詳細に説明をしています。

リンク:「インターネット上で指摘されている当研究室からの論文に関する疑義について。」(理化学研究所分子遺伝学研究室ホームページ 石井俊輔 4/24;  4/28  6~9ページ追記, 4/30 10~11ページ追記)

参考

  1. 石井俊輔氏が責任著者となっている論文に関する疑義を頂きました(warblerの日記 2014-04-24) 石井俊輔氏が責任著者である論文についての疑義(PDFリンク)
  2. Toshio Maekawa, Y Sano, T Shinagawa, Z Rahman, T Sakuma, S Nomura, JD Licht, and Shunsuke Ishii. ATF-2 controls transcription of Maspin and GADD45α genes independently from p53 to suppress mammary tumors. Oncogene 27, 1045-1054, 2008
  3. Chie Kanei-Ishii, Teruaki Nomura, Jun Tanikawa, Emi Ichikawa-Iwata and  Shunsuke Ishii. Differential Sensitivity of v-Myb and c-Myb to Wnt-1-induced Protein Degradation.  Journal of Biological Chemistry 279, 44582-44589, 2004
  4. 調査委員会委員長辞任のお知らせ(理研ウェブサイト上のPDFファイルへのリンク)(理化学研究所 石井分子遺伝学研究室ホームページ 上席研究員 石井俊輔 2014年4月25日):昨夕、インターネット上で私どもの研究室から発表された2つの論文についての疑義が公開されました。これらの疑義については即日、実験ノートのコピー、オリジナルデータを示しながら、研究不正ではないことを、研究室のホームページに掲載しました。しかしこのような状況で、STAP細胞論文についての調査委員会の委員長の任務を継続することは、調査委員会および理研に迷惑をおかけすることになります。そこで委員長の職を辞し、調査委員会から身を引くことが賢明と判断し、委員長の職を辞することを申し出、研究所に承認して頂きました。このような事態に至ったことは不徳の致す所であり、皆様に色々なご迷惑をおかけした事を深くお詫び申し上げます。
  5. 理研調査委員長 みずからも画像切り貼りの指摘受け辞任の意向(NHK NEWSWEB 4月25日 12時39分):石井委員長らが7年前に発表した乳がんの論文で、遺伝子の実験結果の画像を注釈を付けないまま切り貼りしたりしていたなどとする指摘があり、石井委員長は、委員長を辞任する意向を理化学研究所に対し伝えたということです。
  6. 理研のSTAP調査委員長辞任へ 自身の論文に疑義(日本経済新聞 2014/4/25 12:22):石井氏は自らの研究室のホームページで、論文の説明の順番に合わせて画像を入れ替えていたことを明らかにしたうえで「疑念を抱かせてしまったこと、迷惑をかけたことを深くおわび申し上げる」と謝罪した。「オリジナルデータはすべて保存しており、いつでも開示できる」とも説明し、実験ノートを写した画像も公開した。すでに訂正の手続きを取っており、学術誌側も了承しているという。
  7. STAP理研調査委員長が辞任 自身の論文で画像加工(朝日新聞デジタル2014年4月25日12時05分):「切り張りではないか」と不正の疑いがインターネット上で指摘され、石井氏は24日、訂正の手続きをとったとする文書を自身の研究室のサイトで公表した。
  8. STAP細胞:石井・理研調査委員長が辞任(毎日新聞 2014年04月25日 12時13分 最終更新04月25日 14時05分):理研は石井氏の論文不正疑惑の指摘について予備調査を始めた。不正の疑いがあると判断すれば、STAP細胞論文と同様に調査委を発足させる。
  9. STAP論文:理研、信頼失墜に拍車 調査委員長が辞任 (毎日新聞 2014年04月26日 07時45分):STAP細胞論文の小保方(おぼかた)晴子・理研研究ユニットリーダーの画像切り張りを調査委は改ざんと認定したのに対し、石井氏は「自分(の論文)は1枚の画像の中の順番を入れ替えただけ」と違いを強調した。ある国立大教授は「不正に変わりはない。だが、実験ノートも示しており、データを開示していないSTAP細胞論文とは、問題の重みに違いがある」と分析する。
  10. 指弾された小保方氏と同じことをしていた! 理研・石井調査委員長が「画像切り貼り」で辞任 (JCASTニュース2014/4/25 15:33):「真正な画像データが存在していることは中間報告書でも認められています」という小保方氏の反論については、「これは非常に話が簡単でし て…」と、わざわざ前置きしたうえで「差し替え用の真正と思われる画像があるということと、論文投稿時に、非常に不確実なデータを、意図的にあるいは非意 図的に使ったということは全く別問題。不正の認定は後者の『論文投稿時にどういう行為が行われたか』なので、それは関係ない」と一蹴していた。
  11. STAP細胞騒動~理研の石井氏と丹羽氏の論文疑惑~(探偵ファイル 森口尚史 元 東京大学特任教授):石井氏と小保方さんでは不正のレベルが段違いである。前者は論文の結論には影響しないし、開示された生データのお陰で石井氏への疑義は晴れる。一方、後者 は論文全域にわたる不正であって結論に甚大な影響を及ぼすものであり、小保方さんは自らの疑義を晴らせるに十分な生データを開示していない。

世間一般の人々に対する科学者の説明責任

STAP細胞論文におけるデータ捏造、改竄の不正行為は研究者や研究経験者から見れば100%明白であり、その悪質さに関しては全く議論の余地すらないと思われました。それにもかかわらず、理研調査委員会によって不正行為の当事者と認定された小保方晴子氏が2014年4月9日に行った釈明記者会見後の世論調査では、小保方さんの説明を信じると答えた人が3分の1程度もいました。

ヤフージャパンのサイトによれば、「あなたは、小保方リーダーの説明に納得しましたか?」という質問に対して、24万6千53人が回答し、51.7%の人が「納得できなかった」のに対し、30.3%の人が「納得した」と答えています。またテレビ番組『新報道2001』が首都圏500人を対象に行なった世論調査でも、「納得する」人が35.2%、「納得できない」人が49.2%で、ヤフーのアンケートと同様の結果になっています。

研究のことは難しくて全くわからないけれども、すごい発見をした小保方さんが全ての失敗の責任を擦り付けられていて可哀想と思っている人が世の中では3分の1を占めているのです。これは驚くべき高い数字です。

このような事態が生じる一因は無責任なテレビ番組制作にあるでしょう。面白おかしければ良いという発想なのか、非常に偏った考え方を持つ人をゲストの一部に加えて、TVスタジオでとんでもない発言を繰り広げさせ、そんなデタラメをそのままお茶の間に垂れ流しにしているのです。発言した人が大学教授の肩書きを持っていたり社会的に地位の高い人であれば、実際にそのコメントを真に受けてしまう視聴者が一定の割合で出てきてしまいます。

小保方氏会見 なぜ問題は起きたのか? 新報道2001 2014年4月13日(1/5)

武田邦彦 小保方論文(STAP細胞)1/2 間違ってて当たり前!

激論! STAP問題 “研究開発法案”の行方 新報道2001 2014年4月20日(2/3)

科学者が科学者のコミュニティの中だけで発言していては不十分であり、もっと一般的なメディアを使って一般の人に対して正しい情報を発信していく必要があります。研究者のブログを読むのはほとんどの場合研究者でしかないため、研究者がいくらブログで今回のSTAP細胞論文捏造事件を論じても世間一般には全く伝わらないのです。インターネットがこれほど普及していても、一般の人に対するテレビの影響力は絶大です。

参考

  1. 涙の会見で巻き起こる”擁護論”に意義あり!ノーベル賞学者が怒った 「小保方さんは科学者失格!」ノーベル化学賞を2010年に受賞した根岸英一教授が、「コピペは偽造、嘘つきということだ」と本誌に怒りの告発(週刊文春2014年4月24日号):科学者が間違いを起こすことは当然ありますが、多 少でも意図的に行われたとしたら、 科学の世界では犯罪です。科学者失格なのです。 … そういう方は最初から研究してはいけない人間だということです。再現できない実験だったら公表することは許されないのです。 

 

 

 

笹井芳樹 理研CDB副センター長が記者会見

STAP細胞NATURE論文捏造事件においてNATURE論文の執筆で主要な役割を果たした理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長が2014年4月16日記者会見を行い、NATURE論文投稿に至るまでの経緯を説明しました。

笹井芳樹氏会見質疑応答全収録;STAP細胞問題16日午後、都内

まずNATURE論文作製に笹井氏がどのように関わったのかという点に関して。

  • 実験の大部分(論文中の80パネルのうち75パネル)は、小保方氏が若山研究室の客員研究員だった2011年春より2年間の間に小保方氏によって行われた。
  • 実験データの解析と図表の作成も若山研究室で小保方氏がほとんどの部分を行なった。
  • NATURE誌への投稿論文は小保方氏と若山氏により一度書かれ、2012年春にネイチャー誌に一度投稿されたが却下された。
  • 2012年12月中旬に小保方氏がユニットリーダーとして登用される際の人事選考委員会において、小保方、若山両氏らがまとめた論文原稿の完成度が、研究の内容や発見の重要さに見合うだけのものになっておらず論文採択は難しいだろうという意見が出された。このため、竹市センター長より、論文作成を手伝うことを依頼され、2012年12月下旬より、論文原稿の書き直しの協力を開始。
  • 2013年3月に小保方氏がユニットリーダーとして採用され、その直後の3月10日にネイチャーに論文を投稿。
  • 投稿前の2月前後に、STAP現象の試験管内の評価に関する実験技術の指導も行なっている。
  • 論文のリバイスの段階における追加実験や技術指導も行なった。
  • 新しく追加された実験であるライブ・セル・イメージングなどの生データについては一緒に解析を行った。

笹井氏が論文著者として名を連ねるに至った経緯に関しては、バカンティ教授より強い要請を受けたためと説明しています。また、レター論文で責任著者になっていることに関しては、2013年9月の改訂論文の投稿時に若山氏から強く頼まれて3人目の責任著者になったのだそうです。

笹井芳樹氏を小保方晴子氏の上司と位置付けての報道もなされていましたが、笹井氏に小保方氏の実験に関して監督責任があったのでしょうか?その点に関しても笹井氏は説明をしています。

  • 研究不正とみなされた2つの実験データも含め、多くの実験データはすでに図表になっていたため、生データやノートを見る機会はなかった。
  • 自分の大学院生を指導する ときは『ノートを持ってきて見せなさい』と言えるが、小保方研究ユニットリーダーはあくまで独立した研究室のリーダーであり自分の研究室の部下ではないため、実験ノートや生データを見せなさい、とはならなかった。

捏造論文が世に出てしまった経緯に関して。

  • 今回の研究は複数のシニア研究者が複雑に関与した特殊な共同研究のケース。論文を書き上げたのが自分で、前段階である実験を指導したのが若山さんで別の人間であるという例外的な事情。
  • 現実的、過去の実験データにさかのぼって一つ一つの 生データをすべて確認することは難しい。

笹井氏はSTAP現象があることを前提としなければ容易に説明できないデータがあると述べてきましたが、捏造や改竄データが認定された論文の他のデータを正しいと信じろというのは無理なことです。笹井氏はなぜそれでもSTAP現象があると考えているのでしょうか?そのような質問に対しても回答がありました。

  • 配布資料に使った写真では、小保方氏が一人で解析できた実験結果は極力排除してある。
  • 実験の途中から投入することのできない細胞もあるし、撮影した画像などは、1コマ1コマ日付も入っており、これらをいじればすぐにわかってしまう。
  • 科学論理の立て方の問題になってしまうのだが、遺伝子解析をしたときに、STAP細胞が今まで知られている細胞でないことは事実。

博士論文をコピペしていたり、以前の論文でもDNAのゲルの写真を反転して図を捏造した疑いがインターネット上で指摘されていますが、研究者としての資質が問われるような人間を理研のユニットリーダーとして採用した理研の人事における責任は非常に重大です。採用の経緯に関しても説明がありました。

  • 「2012年12月中旬、小保方さんの研究リーダー採用の審査は、他の研究リーダーの選考と同様に人事委員会において、本人の研究プロジェクトの計画と現 在の研究のプレゼンテーションをお聞きし、さらに、委員が詳細な議論を行い、研究の独創性、挑戦性、研究の準備状況を中心に評価しました。これまでの小保 方さんの指導者からの評価も参考にしました。通常の手続きと同様で一切偏りがなかったと考えています。私を始め多くの人事委員は、本人と会い、話をしたの は採用面接が初めてです」
  • (研究者としての小保方氏をどう見るか)「非常に豊かな発想力があると感じています。それは採用時の人事委員会の皆の一致するところであります。ただ、トレーニングが足りなかったところ。未熟と いう言葉を使いたくないのですが、科学者として身につけるべきだったのに身についてなかった部分は、今回の発表後に明らかになりました。データ管理におけ る取り違えを生み出したりするなど、ある種のずさんさがあったと思います。その両極端が一人の人間の中にあるのかなと。シニアの研究者として私が後悔する のは、Natureの論文を2回も出すということはなかなかできることではない。しかし彼女の弱い部分を、もっとしっかりと認識して、背伸びをするだけで なく足下をきちんと固めることができなかったことを、非常につらく思っております」

今回の記者会見は、NATURE論文掲載に至るまでの経緯がようやく詳細に説明されたという点で意義がありました。

捏造論文発表の責任を笹井氏がどの程度負うべきかという点に関しては、さまざまな意見があります。記者会見の中で笹井氏は、自分は論文執筆を頼まれて手伝っただけであり、今回のSTAP細胞の研究発表ではあまり重要な役回りではなかったと言いたげでした。しかし過去の読売新聞の報道が正しければ、

STAP論文、掲載1週間前に最終稿…若山教授———­–読売新聞 3月23日(日)8時49分配信
STAP(スタップ)細胞の論文の主要な著者の一人である若山照彦・山梨大教授(46)は、読売新聞の取材に対し、論文の最終稿が理化学研究所のチームから届いたのは、掲載の約1週間前だったことを明らかにした。…若山教授によると、最終稿が理研発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹・副センター長(52)らから届いたのは、英科学誌「ネイチャー」で掲載が決まってから1か月後の今年1月。すでに大幅な修正ができない時期で、若山教授は自分の研究部分以外はチェックしなかった。論文は1月30日付で同誌に掲載された。

ある時点からは若山氏を蚊帳の外に置いて笹井氏が論文投稿の主導権を握っていたのではないかと推測されます。論文の最終原稿を共同研究者に見せずに投稿し、受理されて世に発表される直前になってからようやく原稿を渡すというのは相手を非常に軽んじる行為だからです。このような行為と記者会見での笹井氏の説明とは矛盾しないのでしょうか?

また会見では、iPS細胞の山中伸弥氏への対抗心があったのではないかと質問されて、完全に否定しました。しかし、多くの報道にあったとおり、

 理研、STAP細胞報道資料の一部撤回 iPS細胞との比較分(日本経済新聞 2014/3/18 19:47 )
… iPS細胞との性能を比較した説明資料で、STAP細胞の作製効率は30%と、iPS細胞の0.1%より優位性があるとしていた。資料はSTAP細胞の論文の共著者である理研の笹井芳樹副センター長を中心に作成した。山中伸弥・京都大教授は2月10日の記者会見で反論。0.1%というiPS細胞の作製効率は2006年当時のもので、現状では20%以上とした。(http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1805T_Y4A310C1000000/

自分の専門分野の最新状況を知らないわけがないにも関わらず、わざわざiPS細胞の古い資料を引き合いに出してSTAP細胞の優位性を強調する行為は、対抗心の表れと言えないのでしょうか?

今回の記者会見の内容は言葉だけ聞けば整合性があるようにも思えますが、言葉と行動が合致しているのかどうかが問題です。

参考

  1. 科学研究面に関する説明資料 理化学研究所 笹井芳樹 (理研ウェブサイトPDFファイル)
  2. 【STAPキーマン 笹井氏会見詳報】(1)山中氏のライバル謝罪「共著者として心痛の極み」(産経ニュース2014.4.16 15:54)
  3. 理研笹井氏「依頼を受け参加」/一問一答(ニッカンスポーツ 2014年4月16日22時23分)
  4. 小保方晴子さんも理研も批判せず 笹井芳樹さんの会見はマスコミの追及を巧みに回避【STAP細胞】(HUFFPOST 2014年04月16日)
  5. 笹井氏STAP説明に、同僚「理解できない」 (読売新聞 2014年04月17日 10時04分):(理研発生・再生科学総合研究センターでの同僚の)研究者の一人は「会見で示されたデータに、ネイチャー論文以上のものはなかった。論文の信頼性が失われている以上、そのデータをもって合理性が高いと言われても正直、理解できない」と指摘。
  6. 【STAP細胞】笹井氏「有力な仮説」強調も新事実なく 争点には「分からない」 (産経ニュース 2014.4.17 10:24):STAP細胞がさまざまな細胞に分化できる重要な証拠となる画像が、小保方氏の博士論文の関連画像から流用された問題については「小保方氏から、真正画像があったが取り違えたと聞いている」と説明。ただ、小保方氏の不服申立書によると、「真正画像」の撮影は平成24年6月で、論文がネイチャー誌に投稿された同年4月より後。この矛盾を指摘されると笹井氏は「私が論文に関与する以前の話なので、どこでどう撮影されたのか分からない」と釈明した。
  7. STAP細胞 笹井氏の記者会見を受けて (HUFFPOST 東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門 特任教授 上昌広 投稿日: 2014年04月17日 16時48分):筆者は、この記者会見を聞いて違和感を抱いた。それは、「最後の段階で論文仕上げに協力しただけ」で、「実際に指導したのは若山照彦教授である」との主張を繰り返したからだ。この発言に納得する人は少ないだろう。笹井氏は、理研の再生科学総合研究センターのナンバー2だ。一般企業に例えれば、理研本部はホールディング・カンパニー、再生科学総合研究センター は事業会社に相当する。笹井氏は、一つの事業会社の副社長で、今春に社長昇格が予想されていた実力者である。センターの経営に大きくかかわってきたと考え るのが普通だ。通常、経営者は、経営判断に関して責任を負う。現に、記者会見では、小保方晴子氏のユニット・リーダーへの抜擢人事には関係したと明言している。今回の不祥事について、任命責任を負うのが当たり前だ。ところが、彼の発言からは、そのような気配は感じられなかった。まるで、自分のことを理研のリーダーと思っていないように見えた。
  8. 笹井氏の会見。「自分はギフトオーサーであるから、責任を取るつもりはない」と言っているようにしか聞こえない。これは、研究者社会を成り立たせているルールを、根本から否定しているのではないだろうか?(近藤滋 ‏@turingpattern)
  9. STAP細胞を前提にしないと説明できない?(大隅典子の仙台通信2014年 04月 16日):「STAP現象」ではなくても説明できるのではないか、という私見を記します。
  10. 「共著者としてあり得ない」=理研改革委の岸委員長-笹井氏「ノート見てない」で (時事ドットコム 2014/04/18-16:07):岸委員長は笹井氏について「実験ノートとかを知らなかったというのは、あまり強調すべきことではない」と述べ、重要な発見を世に問う論文の共著者としては不適切との考えを示した。

 

 

2014年4月9日に行われた小保方晴子氏の記者会見に関する補充説明

小保方晴子氏が2014年4月9日にSTAP細胞NATURE論文疑惑に関する記者会見を行いましたが、反響があったポイントなどに関する補足説明が小保方晴子氏の弁護団より公表されました。

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4月9日の記者会見に関する補充説明

 4月9日の記者会見における小保方晴子氏の発言に関して、いろいろな意見が出ていることを鑑みて、補充説明として小保方氏から聞き取りました点をご紹介いたします。

小保方晴子 弁護団

1 STAP細胞の存在について

(1)200回以上成功したと述べた点について 私は、STAP細胞の実験を毎日のように行い、しかも1日に複数回行うこともありました。STAP細胞の作成手順は、①マウスから細胞を取り出して、②いろいろなストレスを与え(酸や物理的刺激など)、③1週間程度培養します。この作業のうち、1と2の作業は、それ自体にそれほどの時間はかからず、毎日のように行って、並行して培養をしていました。培養後に、多能性マーカーが陽性であることを確認して、STAP細胞が作成できたことを確認していました。このようにして作成されたSTAP細胞の幹細胞性については、培養系での分化実験、テラトーマ実験やキメラマウスへの寄与の実験などにより、複数回、再現性を確認しています。 STAP細胞の研究が開始されたのは5年ほど前のことですが、2011年4月には、論文に中心となる方法として記載した酸を用いてSTAP細胞ができることを確認していました。その後、2011年6月から9月頃には、リンパ球のみならず、皮膚や筋肉や肺や脳や脂肪など、いろいろな細胞について、酸性溶液を含む様々なストレス条件を用いてSTAP細胞の作成を試みました。この間だけで100回以上は作成していました。 そして、2011年9月以降は、脾臓由来のリンパ球細胞(CD45+)を酸性溶液で刺激を与えて、STAP細胞を作成する実験を繰り返していました。このSTAP細胞を用いて、遺伝子の解析や分化実験やテラトーマの実験などを行うので、たくさんのSTAP細胞が必要になります。この方法で作ったものだけでも100回以上はSTAP細胞を作成しています。また、今回発表した論文には合わせて80種類以上の図表が掲載されており、それぞれに複数回の予備実験が必要であったことから、STAP細胞は日々培養され解析されていました。このことから、会見の場で200回と述べました。

(2)第三者によって成功している点について 迷惑がかかってはいけないので、私の判断だけで、名前を公表することはできません。 成功した人の存在は、理研も認識しておられるはずです。

2 STAP細胞作製レシピの公表について

STAP 細胞を作る各ステップに細かな技術的な注意事項があるので、一言でコツのようなものを表現することは難しいのですが、再現実験を試みて下さっている方が、 失敗しているステップについて、具体的にポイントをお教えすることについては、私の体調が回復し環境さえ整えば、積極的に協力したいと考えております。状況が許されるならば、他の方がどのステップで問題が生じているかの情報を整理して、現在発表されているプロトコールに具体的なポイントを順次加筆していくことにも積極的に取り組んでいきたいと考えております。 また、現在開発中の効率の良いSTAP細胞作製の酸処理溶液のレシピや実験手順につきましては、所属機関の知的財産であることや特許等の事情もあり、現時点では私個人からすべてを公表できないことをご理解いただきたく存じます。 今の私の置かれている立場では難しい状況ですが、状況が許されるならば実験を早く再開して、言葉では伝えにくいコツ等がわかりやすいように、映像や画像等を盛り込んだプロトコールとして出来るだけ近い将来に公開していくことに努力していきたいと考えております。

3 4月12日朝刊での新聞記事について

同日、一部新聞の朝刊において「STAP論文新疑惑」と題する記事が掲載されましたが、事実確認を怠った誤った記事であり、大きな誤解を招くものであって、許容できるものではありません。この説明は同日中に代理人を通じて同新聞社にお伝えしています。 (1)メスのSTAP幹細胞が作成されており、現在、理研に保存されております。したがって、オスの幹細胞しかないというのは、事実と異なります。 (2)STAP幹細胞は、少なくとも10株は現存しています。それらはすでに理研に提出しており、理研で保管されています。そのうち、若山先生がオスかメスかを確かめたのは8株だけです。それらは、すべてオスでした。若山先生が調べなかったSTAP幹細胞について、第三者機関に解析を依頼し染色体を調べたところ、そこにはメスのSTAP幹細胞の株も含まれていました。記事に書かれている実験は、このメスのSTAP幹細胞を使って行われたものです。

4 STAP幹細胞のマウス系統の記事について

2013年3月までは、私は、神戸理研の若山研究室に所属していました。ですから、マウスの受け渡しというのも、隔地者間でやりとりをしたのではなく、一つの研究室内での話です。この点、誤解のないようお願いします。 STAP幹細胞は、STAP細胞を長期培養した後に得られるものです。 長期培養を行ったのも保存を行ったのも若山先生ですので、その間に何が起こったのかは、私にはわかりません。現在あるSTAP幹細胞は、すべて若山先生が樹立されたものです。若山先生のご理解と異なる結果を得たことの原因が、どうしてか、私の作為的な行為によるもののように報道されていることは残念でなりません。

追記

4月9日の会見は「不服申し立て」に関する記者会見であり、準備期間も不十分で、しかも公開で時間も限られた場であったことから、STAP細胞の存在や科学的な意義についての説明を十分にすることができませんでした。しかしこのような事情をご理解頂けず、説明がなかったとして批判をされる方がおられることを悲しく思っております。理 研や調査委員会のご指示や進行具合にもよりますし、私の体調の問題もあるので、確かなお約束はできませんが、真摯な姿勢で詳しく聞いて理解してくださる方 がいらっしゃるなら、体調が戻り次第、できるだけ具体的なサンプルや写真などを提示しながらの科学的な説明や質問にじっくりお答えする機会があれば、あり がたく存じます。(会見形式では到底無理ですので、たぶん数名限定での説明になると思いますが・・・。)

以上

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若山氏との間で行なわれたサンプルのやり取りで129系統マウスがなぜかB6系統やF1系統に化けていた件に関しては、全て若山氏側の問題だと主張するものであり、対決姿勢が鮮明になりました。若山氏と小保方氏各々が当時の実験ノートを持ち寄って照合すれば、どちらサイドで何が起きたのか明らかになることでしょう。

小保方氏はSTAP細胞を200回以上作製したそうですが、そのような実験結果を本当に得ていたという主張を研究者に認めさせたければ、実験ノート、サンプルなどの物的証拠を示すべきであって、言葉で何を言ってもサイエンスの世界では通用しません。研究者世界の常識として、実験ノートにその200回分のSTAP細胞作製記録がなければならないのです。

この補充説明の文書で、「現在開発中の効率の良い」STAP細胞作製の酸処理溶液のレシピや実験手順は公表できないという不思議な表現が唐突に出てきました。もちろん、「現在開発中の効率の良いSTAP細胞作製方法」を今公表する必要はありません。しかし、小保方氏は「NATURE論文で用いたSTAP細胞作製方法」の 具体的なコツを(本当に実験結果を得ていたのなら)直ちに公表し、これ以上世界中の研究室で無駄な研究費や労力が使われないようにすべきです。

行動を伴わない言葉は全く無意味です。論文発表した以上、他の研究者が再現でき るように尽力するのは論文著者の義務であって、それが研究者社会のルールです。研究者としてのルールを守らない人間は、研究者の世界に存在すべきではありません。

データ捏造、データ改竄としか考えられない、あり得ない「ミス」を犯してしまって己の未熟さを反省していますという言葉が出てくる一方で、このような生物学を愚弄するかのような言動がダラダラと続いていることは、研究者には許容し難いことです。

実験ノートをきちんとつけること、発表に際して実験データを改変しないことなどは研究者の常識であり研究者に当然備わっているはずの倫理観です。研究能力以前の問題です。それらを全く持たない人をユニットリーダーに登用した理化学研究所の責任は重大です。

理研調査委員会は2014年4月1日の記者会見で小保方晴子氏のデータ捏造、改竄を認定しましたが、それはこの捏造論文事件の一部に過ぎず、なぜこのような事件が生じたのかその全体像を示すような説明が全く理研側からなされていません。

参考

  1. 小保方氏が発表の文書 全文(NHK NEWS WEB 4月14日 13時20分)
  2. 4月9日の記者会見に関する補充説明(毎日新聞ウェブサイト http://www.mainichi.co.jp/pdf/20140414science.pdf)
  3. 小保方氏、会見の「補充説明」弁護士通じ発表 STAP細胞作製の第三者を「理研も認識」(J-CASTニュース 2014/4/14 16:03):これに対し、理研側は同日、「細胞の多能性マーカーが陽性になる段階までは確認した研究者がいることは認識している。しかし、これはSTAP細胞があったかどうかを結論付けるものではなく、STAP細胞があると言えるものではない」とコメントした。

虫垂にも役割

盲腸(虫垂炎)になってしまったときに治療で切り取られることが多い虫垂(ちゅうすい)。取っても困らない虫垂なら最初からなければ盲腸になって痛い思い をせずに済むのにと思ったことはありませんか?

何のためにあるのかわからなかった虫垂にも実は重要な役割があることを発見したという研究成果が報告されました。

参考

  1. Generation of colonic IgA-secreting cells in the caecal patch (Masahata et al., Nature Communications 5, Article number:3704 doi:10.1038/ncomms4704 Published10 April 2014)
  2. 無用の長物と考えられていた虫垂の免疫学的意義を解明~炎症性腸疾患の制御に繋がる新たな分子機構~(プ レスリリース 大阪大学、科学技術振興機構(JST)平成26年4月10日):大阪大学 大学院医学系研究科 感染症・免疫学講座(免疫制御学)/免疫学フロンティア研究センターの竹田 潔 教授らのグループは、私たちの体で不必要な組織と考えられていた虫垂に存在するリンパ組織が、粘膜免疫で重要な役割を果たすIgA注1)の産生に重要 な場であり、腸内細菌叢注2)の制御に関与していることを突き止めました。
  3. 虫垂は無用の長物にあらず、免疫に重要 (マイナビニュース 2014/04/12):「無用の長物」と考えられていた虫垂のリンパ組織が、粘膜免疫で重要な免疫グロブリン(Ig)Aを産生しており、腸内細菌叢(そ う)の制御に関与していることを、大阪大学大学院医学系研究科感染症・免疫学講座の竹田潔教授らが初めて突き止めた。
  4. 竹田潔研究室(大阪大学大学院 医学系研究科 予防環境医学講座 免疫制御学研究室、大阪大学免疫学フロンティア研究センター 粘膜免疫学研究室):免疫と環境因子がどのように絡み合い、どのような異常により病気が発症するのか、を解明しようとするプロジェクトが進行中です。
  5. 虫垂炎(ウィキペディア):虫垂炎(ちゅうすいえん、英: appendicitis)は、虫垂に炎症が起きている状態である。虫垂とは右下腹部にある盲腸から出ている細長い器官である。
  6. 盲腸と虫垂:「盲」というのは「突き抜けてない」と言 う意味で、大腸も小腸も先が抜けていますが、盲腸は先がめくらになっています。だから「盲」なのです。もともとはどこかにつながっていたらしいのですが、 先が細くなって退化しています。まるで芋虫がぶら下がっているようなので「虫状突起」または「虫垂」と呼ばれます。
  7. 盲腸と虫垂は別の臓器なんでしょうか? 違いがよく分かりません。(Yahoo!知恵袋 2006/9/23 08:07:22):盲腸は長さ約5cmの臓器で、その先に虫垂がヒモの様にくっ付いています。盲腸は腸ですが虫垂はそうではありません。…盲腸の先に細長く続いているのが虫垂です。虫垂は小指くらいの小さな突起です。
  8. たかが盲腸されど盲腸:虫垂炎は19世紀になってやっと盲腸周囲炎の原因であることが判明し、一八八三年カナダの開業医グロベスが初めて虫垂切除術に成功しました。今では虫垂炎で死なずに済みます。

不正行為対応ガイドライン

以下の文章は、文部科学省及び独立行政法人日本学術振興会が公表している科研費の使用等に関するガイドラインですが、税金を使って研究を行なっている日本の研究者の間で共有されているべき事項です。

科研費が国民の貴重な税金で賄われていることを十分認識し、科研費を公正かつ効率的に使用するとともに、研究において不正行為を行わないよう留意してください。

研究成果の発表とは、研究活動によって得られた成果を、客観的で検証可能なデータ・資料を提示しつつ、研究者コミュニティに向かって公開し、その内容について吟味・批判を受けることである。

不正行為は、科学そのものに対する背信行為であり、研究費の多寡や出所の如何を問わず絶対に許されない。これらのことを個々の研究者はもとより、研究者コミュニティや大学・研究機関、研究費の配分機関は理解して、不正行為に対して厳しい姿勢で臨まなければならない

公表した研究成果に誤りや不正行為が関わっていたことに気づいたら、直ちに研究者コミュニティに公表し、取り下げることが必要である。

「競争的資金に係る研究活動における不正行為対応ガイドライン」(平成18年8月:科学技術・学術審議会研究活動の不正行為に関する特別委員会)では以下の行為を不正行為としている。

(1) 捏 造:存在しないデータ、研究結果等を作成すること。

(2) 改ざん:研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること。

(3) 盗 用:他の研究者のアイデア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用すること。

 

論文等において不正が認定された場合や研究費の不正使用が認定された場合は、競争的資金等の返還に加えて、認定された年度の翌年度から最長10年間、競争的資金等への申請が制限される。

捏造、改ざん、盗用の不正が認定されたときの措置の対象者は以下の者が該当する。

(1) 不正行為に関与したと認定された者(2~10年)

(2) 不正行為に関与したとまでは認定されないものの、不正行為があったと認定された研究に係る論文等の内容について責任を負う者として認定された著者(1~3年)

(日本学術振興会のウェブサイト http://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/15_hand/data/h26/kakenhi_checklist.pdf より一部を抜粋、一部赤文字で強調)

理研が小保方ユニットリーダーの契約を更新

STAP細胞論文の筆頭著者である小保方晴子氏の雇用契約を理研が更新したというニュースを聞いて絶句した研究関係者も多いのではないでしょうか?

世間一般の人には理解されにくいことですが、年収300万円程度、1年契約という経済的にも精神的にも非常に不安定な状況に置かれながらも真面目に研究に勤しんで結果を出し続けている誠実な研究者が多いのが、日本の研究者社会の現状です。

そして博士号取得後にそのような努力を数年間続けても結局研究職では定職が得られずに科学者としてのキャリアをあきらめざるを得なくなり、この4月から別の職種に就いた人も多いの実情なのです。

職を得ることに関してはそんな過酷な競争を強いられる研究の世界で、研究者の想像を絶するような「不適切なデータの取り扱い」により論文を出した人が、4月からも引き続き理研でPI(PRINCIPAL INVESTIGATOR, 研究室の主宰者)のポジションに残れてしまうというのは衝撃的です。

 

研究者を雇う立場の研究者や研究所には、健全で公正な研究者間の競争を保証する責務があります。研究不正に対する厳正な対処がなされなければ、それは著しい不公平感を生み出し、真面目な研究者のやる気を失わせ、日本の科学研究を停滞させるでしょう。

参考

  1. 理研、小保方氏の契約更新…調査結果確定せず (読売新聞YOMIURI ONLINE 2014年04月10日 08時49分):小保方氏が所属する理研発生・再生科学総合研究センターによると、理研の調査委員会がSTAP細胞の論文に不正があったと認定したものの、調査結果は確定しておらず、処分も決まっていないことから、契約を更新した。
  2. 論文騒動の裏に“理研の利権争い”? (東スポWeb 2014年03月16日 16時00分):小保方さんクラスなら年収約800万円ほどで、75%の家賃補助も出る。
  3. 理研が落ちた「わな」:再生医療の覇権争い iPS先行で (毎 日新聞 2014年03月19日 16時16分 最終更新 03月19日 16時19分):研究不正の疑いがもたれている小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダーは5年契約で、給与と は別に総額1億円の研究予算が与えられている。
  4. あまりにも異常な日本の論文数のカーブ(ある医療系大学長のつぼやき 2012年06月27日):この図をみると、少し太めの赤線で示されている日本の論文数が、多くの国々の中で唯一異常とも感じられるカーブを描いて減少していますね。
  5. 研究力シンポの報告(1)”あまりにも異常な日本の論文数のカーブ”revisited(ある医療系大学長のつぼやき 2013年11月17日 ):今回の分析では、このトムソン・ロイター社の論文数のデータにおいても、先進国の中で日本だけが減少していることは明白です。

2014年4月9日小保方晴子氏、記者会見で反論【全編動画2時間36分12秒】

STAP細胞論文問題で理研の調査委員会によって不正行為を認定された小保方晴子氏が2014年4月9日に大阪市内で記者会見を行いました。

【全編動画】STAP細胞問題で小保方晴子氏が会見 (2時間36分12秒)

この度はSTAP細胞に関する論文の作成に関し、私の不注意、不勉強、未熟さ故に多くの疑念を生み、理化学研究所及 び共同執筆者の皆様をはじめ、多くの皆様にご迷惑をおかけしてしまったことを心よりお詫(わ)び申し上げます。また、責任を重く受け止め、深く反省してお ります。本当に申し訳ありませんでした。今日まで、筆頭著者である私から何も情報の発信が出来なかったことを重ねてお詫び申し上げます。

国際間をまたぐ2つの研究室で、2本分のNature論文のデータを同時にまとめ執筆していく作業は私の能力を遥(はる)かに越えていたのかも知 れませんが、私はその時々に論文発表に向け全力で取り組んで参りました。生物系の論文の基本的な執筆法や提示法について不勉強なままでの作業になり、それ に加え私の不注意も加わり、結果的に多数の不備が生まれてしまったことを大変情けなく、申し訳なく思っております。それでも私はSTAP現象がいつか必ず 誰かの役に立つと信じ、研究を続けてきました。多くの研究者の方々から見れば、考えられないようなレベルでの間違いだと思いますが、この間違いによって論 文の研究結果の結論に影響しない事と、なにより実験は確実に行われておりデータも存在していることから、私は決して悪意をもってこの論文を仕上げた訳では ないことをご理解いただきたく存じます。

そもそも私が正しく図表を提示していたならば、調査委員会自体も必要なく、お忙しい中、調査に参加してくださった調査委員の先生方にも心からのお 詫びと感謝を申し上げます。しかし、調査結果では、事実関係をよく理解していただかないまま不正と判定されてしまいました。弁明と説明の機会を十分に与え てくださったならば、必ず間違いが起こった経緯を理解していただけるものと思いますので、昨日不服申し立てをさせていただきました。

STAP現象は何度も確認された真実です。私はSTAP現象に出会って以降、この現象を発表する使命感と共に、毎日実験に取り組んでまいりまし た。そして、この現象のメカニズムが詳しく理解され、いつか多くの人に役立つ技術にまで発展させていける日を夢見てきました。どうかSTAP現象が論文の 体裁上の間違いで否定されるのではなく、科学的な実証・反証を経て、研究が進むことを何よりも望んでおります。

この度は本当に申し訳ありませんでした。

小保方晴子

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/articles/ASG49421KG49PTIL009.htmlより転載)

参考

  1. 小保方氏「不服申し立てに際してのコメント」全文(朝日新聞デジタル2014年4月9日12時59分):小保方晴子ユニットリーダーが9日の会見時に配布した「不服申し立てに際してのコメント」の全文
  2. 質疑応答・全54問】小保方さんSTAP細胞記者会見全文 「ねつ造と言われた気持ち」「ぶりっ子報道について」ほか(http://logmi.jp/10299)
  3. 涙の会見で巻き起こる”擁護論”に意義あり!ノーベル賞学者が起こった「小保方さんは科学者失格!」ノーベル化学賞を2010年に受賞した根岸英一教授が、「コピペは偽造、嘘つきということだ」と本誌に怒りの告発。(週刊文春2014年4月24日号):「これは基本的な、あってはならないミステイクです。どうやら、偽造という要素も入ってるように思えます。 科学者が間違いを起こすことは当然ありますが、多少でも意図的に行われたとしたら、 科学の世界では犯罪です。科学者失格なのです。  …そういう方は最初から研究してはいけない人間だということです。 …どんなに複雑な実験であっても、再現できない実験だったら公表することは許されないのです。 再現不可能だということは、間違いか意図的な嘘のいずれかであるはずです。」(STAP細胞の懐疑点PART317)
  4. STAP作製法「今すぐ公開すべきだ」…米学者 (読売オンライン 2014年04月10日 15時28分):米国の世界的な幹細胞学者、ルドルフ・イエーニッシュ米マサチューセッツ工科大教授が9日、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダー (30)がSTAP(スタップ)細胞の作製法を論文発表する意向を9日の記者会見で明らかにしたことについて、「論文にする必要はない。今すぐ公開すべき だ」と批判した。
  5. 小保方氏説明会見、識者に聞く STAP問題(朝日新聞  2014年4月10日(木) 配信):名古屋大教授・森郁恵 切り張りをした画像について、2枚の画像がそれぞれ存在するので「改ざん」には当たらないと主張していたが、別々の画像を1枚にした時点で科学の世界では「ないものを作った」ことになる。写真の取り違えについては、自分で気づいてネイチャーに訂正を出した際、今年2月に撮り直した写真を出したと言っていた。これも科学者の常識に反する。実験をした時期に撮った写真を提出すべきだ。
  6. 研究者が見た小保方氏会見 「強引な主張」「証拠示して」「上司に説明責任」(産経ニュース2014.4.10 11:31)  難波名誉教授は、「小保方氏はSTAP細胞の作製に200回以上成功したと話しているが、科学的証拠なしに信じるのは困難。サンプルが保存してあるならそれを示してほしい」と、検証可能なデータの開示が不可欠との認識を示した。
  7. もうほっとけばいい(ハフィントンポスト 山口浩 駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部教授  2014年04月11日 10時46分):もしどうしても存在すると主張したいのであれば、「つべこべいわずにさっさと作ってみせろ」「できたとする証拠や求められてる資料をとっとと出せ」というだけのことで、これまでそれをやらなかったのは、世界中の研究者による追試験が1つも成功していないことを併せ考えれば、できないからだろうと考えるのが自然だ。
  8. ノートがあるならもっておいで。。。。(野尻美保子(平常モード) ‏@Mihoko_Nojiri )

小保方晴子氏の不服申立書が公開

明日2014年4月9日の記者会見を前にして、 小保方晴子氏の不服申立書が新聞などを通じて公開されました。申し立て書の内容は、小保方氏の行為は理研の規程によって定義される研究不正には当たらないという論理展開になっています。

すなわち、(1―2)については、もともと、「研究活動によって得ら れた結果等を真正でないものに加工する」という行為態様がなく、「改ざん」が疑われる事案ではなく、論文への掲載方法が適切か否かの問題にすぎないのに、 これらを混同して研究不正の認定を行っている点で妥当でない。

また、(1―5)についても、「存在しないデータや研究結果 を作り上げ」るという行為態様がなく、「捏造」が疑われる事案ではなく、論文に掲載する時点で、誤った画像を掲載してしまったという問題にすぎないのに、 これらを混同して研究不正の認定を行っている点で妥当でない。(http://www.yomiuri.co.jp/science/20140408-OYT1T50192.html?from=ycont_navr_os)

室谷弁護士は「研究不正とは、成果がなかったのに、あったかのように偽装することだ」と説明。その上で、小保方氏が細胞のDNAを分離する解析「電 気泳動」の画像データを切り貼りし、改ざんをしたと認定されたことについて「画像を見やすいようにしただけ」。「発表の仕方が不適切だからといって、研究 活動で得られた結果が虚偽になるわけではない」と語気を強めた。

さらに、論文とは実験条件の違う画像を他から転用し、「捏造に当たる」と指摘されたことについても、本来掲載すべきだった画像が存在する点を強調し、「動機がない」と不正を否定した。(www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201404/0006848140.shtml)

本来掲載すべきだった画像が存在するという主張を正当化するためには、当然その画像データを得たときの実験ノートをもとに画像データが得られた過程を説明できなければなりません。先に行なわれた理研の調査委員会では実験ノートに基づいて記録を追跡することが不可能だったというのですから、差し替え用の画像の存在は、不正の疑いを晴らす根拠にならないでしょう。

4月9日の記者会見で小保方氏がどのような説明を行なうのかが注目されます。

ニコニコ生放送(番組ID:lv175328217)
小保方晴子氏 記者会見 生中継<STAP細胞・最終報告書に対する不服申し立て>

2014/04/09(水) 開場:12:50 開演:13:00
【説明者】小保方晴子 理化学研究所・細胞リプログラミング研究ユニットリーダー、三木秀夫 弁護士、室谷和彦 弁護士

参考

  1. 不服申立書の全文・上(読売オンライン2014年04月08日 23時08分)
  2. 不服申立書の全文・下(読売オンライン2014年04月08日 23時08分)
  3. 小保方さんが理研に要望「不服審査の委員の半数以上は法律家にすべき」(弁護士ドットコム 2014年04月08日 20時46分)
  4. 小保方氏の代理人弁護士、理研に不満あらわ (ニッカンスポーツ 2014年4月8日23時2分):代理人の室谷和彦弁護士は約1時間、大阪弁護士会館(大阪市北区)の会議室に集まった数十人の報道陣を前に、提出直前まで手を加えた約20ページの申立書に沿って熱弁を振るった。…質疑応答では、画像を取り違えた経緯に質問が集中。室谷弁護士が腕組みし「資料がなく、分析もできないので分からない」と考え込む場面も。
  5. STAP論文「調査に疑問点多数」 小保方氏代理人が会見(神戸新聞 2014/4/8 22:57):

小保方晴子氏が2014年4月9日に記者会見【ニコニコ生放送】

1月28日の記者会見以来公の場に姿を現していなかった小保方晴子氏ですが、ついに、2014年4月9日に記者会見を開くそうです。4月1日に行なわれたSTAP細胞論文調査委員会の記者会見では小保方氏が単独でデータ捏造、改竄を行なったと結論付けられましたが、これを不服とする申し立てを8日に行い、9日の記者会見で研究不正認定に対する反論を行なう予定です。

小保方晴子氏が反論することで、理化学研究所調査委員会による小保方晴子ユニットリーダーの研究不正行為の認定が覆る可能性はあるのでしょうか?弁護士ドットコムの記事が参考になります。

小保方博士はDNAの電気泳動の写真でレーンの切り貼りを行なったことに関しては悪意はなかったと反論していますが、調査委員会のいう「悪意」とは法律用語であって通常の日本語とは意味が異なるようです。4月1日の最終報告記者会見に同席していた理研側の弁護士も、悪意というのは知っていながらという意味、故意ということ、と説明していました。小保方博士は、見栄えが良くなる様に切り貼りしたと主張しているので、「悪意」(=故意)を自ら認めていることになるようです。

博士論文からの画像流用に関しては小保方博士は単純なミスだったと反論しています。問題が指摘された図はSTAP現象を示すこの論文のメインとなる図であるため、取り違えたという説明には説得力がありません。

みなが一番知りたいことはどうしてこのような「論文の体をなしていない」論文が世に出てしまったのかということでしょう。いったいどんな研究体制でSTAP細胞の研究が行なわれたのか、研究や論文作製の全体像がわかるような説明が小保方晴子氏の口から語られることが期待されます。

4月9日の記者会見で小保方氏がどのような説明を行なうのかが注目されます。

ニコニコ生放送(番組ID:lv175328217)
小保方晴子氏 記者会見 生中継<STAP細胞・最終報告書に対する不服申し立て>

2014/04/09(水) 開場:12:50 開演:13:00
【説明者】小保方晴子 理化学研究所・細胞リプログラミング研究ユニットリーダー、三木秀夫 弁護士、室谷和彦 弁護士

参考

  1. STAP論文「不正があった」とする理研調査委「最終報告書」 弁護士はどう見るか? (弁護士ドットコム2014年04月07日 21時50分):今回の最終報告書では、客観的な資料にもとづき、研究不正行為を認定することが困難なものについては全て否定しているうえ、博士論文で使用された画像と今 回の論文で使用された画像が『同一のもの』と断定せずに『酷似するもの』と判断するなど、非常に慎重な判断を行っていると評価することができます
  2. STAP細胞:小保方氏、9日に記者会見…7日入院 (毎日新聞 2014年04月07日 17時39分、最終更新 04月07日 20時37分): 小保方氏は「私のミスでこんなに大きな問題になり申し訳ないが、調査に納得できない。私から説明したい」と話し、本人の意向で記者会見を開く。…小保方氏は調査委に関して「イエス、ノーで答える質問が多く、言いたいことが言えなかった」と不満を述べているという。
  3. 小保方氏 8日不服申し立て 9日会見へ (NHK NEWSWEB 4月7日 17時30分):弁護士によりますと、小保方リーダーは心身の状況が不安定なため、7日、入院したということですが、会見には出席するということです。
  4. 小保方氏、9日に会見へ 理研に不服申し立て (ITmedia  2014年04月07日 17時29分 更新):会見の出席者は、小保方氏と代理人の三木秀夫弁護士、室谷和彦弁護士。
  5. 小保方氏、9日に記者会見へ(産経ニュース2014.4.7 17:33):新型万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の論文不正問題で、理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダー(30)は不正を認定した調査 委員会の最終報告は承服できないとして、理研に対し8日に不服申し立てを行う方針を決めた。9日に大阪市内で記者会見する。
  6. 小保方氏、9日会見=STAP細胞、発表後初 (ウォール・ストリート・ジャーナル 2014年 4月 07日 18:19 JST):1月28日にSTAP細胞の発表記者会見を開いて以降、小保方氏が公の場に出るのは初めて。
  7. 小保方氏、体調不良で入院…9日に記者会見 (読売オンライン2014年04月07日 19時12分):STAP細胞の論文に捏造や改ざんがあるとした理化学研究所の調査委員会の最終報告書について、不正を認定された小保方晴子ユニットリーダー(30)が8日に理研に不服申し立てを行った上で、9日午後、大阪市内のホテルで記者会見すると、代理人の弁護士が明らかにした。
  8. 小保方氏、9日に記者会見 理研へ8日不服申し立て(ニコニコニュース/共同通信デジタル:ニュース一覧 2014年4月7日(月)17時58分配信):三木弁護士によると、小保方氏は心身の状態が不安定だとして、7日に入院した。
  9. 小保方氏、9日に記者会見…所属する理研と全面対決か(サンスポ 2014.4.7 20:29):申し立てでは、理研が調査委員会の委員を入れ替えて再調査し、捏造や改ざんがあったとの結論を撤回するよう求める。
  10. 理研 疑惑4点“グレー”判断も「論文の体をなさない」(スポニチ2014年3月15日):STAP細胞の論文に不適切な画像データなど数々の疑義が寄せられている問題で、理化学研究所の調査委員会は14日、都内で中間報告の会見を行い、「論文の体をなしていない」と撤回を求めた。

2014年4月7日理化学研究所丹羽博士らがSTAP細胞検証実験計画で記者会見

STAP細胞検証実験を行なう神戸理研の丹羽博士らが、実験計画を説明するための記者会見を2014年4月7日に東京で開きました。

「STAP細胞」論文問題 共同執筆者、STAP細胞検証実験の概要を発表(14/04/07)

STAP細胞作製プロトコール(Protocol Exchange)の責任著者が今になってSTAP細胞が「あるかどうか分からない」のだとすると、あのプロトコールは一体何だったのでしょうか?NATURE誌のSTAP細胞論文は小保方氏のみが研究不正で断罪されましたが、NATURE論文疑惑の釈明として後から出されたSTAP細胞作製プロトコールの著者は小保方、笹井、丹羽(責任著者)の3氏です。

理研調査委員会の最終報告にあるようにデータ捏造、改竄は小保方氏一人の行為だったとしても、この「後出しプロトコール」こそが研究不正の組織的隠蔽工作そのものだと感じた人も多いはずです。STAP細胞が「あるかどうか分からない」 のにSTAP細胞作製プロトコールを連名で発表した責任は誰がどう取るのでしょうか?

笹井氏は、NATURE論文の中に多数の不正データが見つかった現時点でもなおSTAP現象でしか説明がつかない部分があると述べています。だとすれば、NATURE論文にまだ残っているという信頼できるデータが何なのかのまず最初に説明をすべきではないでしょうか?それをやらずにSTAP細胞の検証実験に踏み切った場合、STAP細胞捏造論文を出した著者らがさらに多額の税金を使ってSTAP細胞「仮説」の検証実験を行うことに国民が理解を示せるでしょうか?

小原雄治・国立遺伝学研究所特任教授は産経ニュースへ寄稿した中で、

理研は今後、細胞の存在を調べる再現実験を行うというが、まずは論文の真正なデータを検証可能な形で明らかにし、再現実験に値するかどうか見極めた方がいいのではないか。もしリンパ球の目印がなければ、再現実験は幽霊を追い掛けるようなものだ。(http://sankei.jp.msn.com/science/news/140407/scn14040710100003-n1.htm)

と指摘しています。

参考

  1. 「STAP現象はあくまでも一つの仮説」 論文の共著者・丹羽氏が記者会見で明言(弁護士ドットコム 2014年04月07日 21時13分):丹羽氏によると、STAP細胞の研究においては、主に、論文の構成に関するアドバイスを小保方ユニットリーダーにおこなっていた。2014年2月以降は、実験手順書(プロトコル)を作成するため、実験の流れを3回ほど確認したが、自ら手を動かして実験をしていたわけではなかったという。
  2. STAP論文問題、検証実験の詳細は 会見の一問一答(朝日新聞デジタル 2014年4月7日23時11分):丹羽氏は、どのようにSTAP細胞の研究にかかわったのか。丹羽 2013年1月から研究に参加した。論文の構成への助言や、幹細胞の研究をしているので、その方面から適切に表現できるよう助言した。直接、実験はしていない。
  3. 「共著者の1人として心よりおわび」 丹羽氏が記者会見 再現実験へ(ITメディアニュース2014年04月07日 14時42分 更新):丹羽氏はNature論文の撤回に同意しており、STAP細胞の存在については、「あるかどうか分からない」という立場。「あるかどうかを知りたいというスタンスから、検証実験に参加することにした」
  4. 小保方氏を検証に加えず 理研チームが会見、「協力は得たい」(産経ニュース 2014.4.7 15:45):実験責任者の相沢慎一特別顧問は、小保方氏しか知らない実験のテクニックもあり得るとして「協力を得られるものなら得たい」と話した。
  5. STAP論文の共著者が7日会見(日本経済新聞 2014/4/4 22:30):理化学研究所は7日午後、新型万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の存在を検証する実験計画を説明するため、論文の共著者の一人である理研発生・再生科学総合研究センターの丹羽仁史・プロジェクトリーダーらが東京都内で記者会見する。
  6. Haruko Obokata,Yoshiki Sasai & Hitoshi Niwa. Essential technical tips for STAP cell conversion culture from somatic cells.     Protocol Exchange  (2014) doi:10.1038/protex.2014.008. Published online 5 March 2014. Corresponding author Correspondence to:Hitoshi Niwa (niwa@cdb.riken.jp)
  7. 「理研は元データ開示し根本的検証を」 小原雄治・国立遺伝学研究所特任教授(産経ニュース 2014.4.7 10:31):小保方晴子氏らは捏造とされた画像について、本来の画像が存在するとしているが、調査委員会の最終報告では、実験ノートの不備などで、それが真正なものとは証明できなかったと解釈できる。
  8. 調査委員会報告の概要を受けてのコメント(理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 笹井 芳樹 2014 年 4 月1日)(PDFリンク):なお、Figure 2 の免疫染色の画像の件では、以前に、画像の不正流用の組織的な隠匿などの疑義を問う一部の報道がありましたが、そう言った事実は一切ないことをここに述べさせていただきます。Figure 2 の免疫染色の画像の取り違いの調査委員会への報告の際、私どもの当初の説明に不十分なものがあったとのご指摘も報告書にございましたが、これは自己点検での発見された過誤を追加報告する際の私どもの不手際によるものであり、隠蔽とは次元の異なるものであります。…刺激惹起性多能性獲得という現象の真偽は、今後の生物学研究に大きな影響をもつものであり、今後、その検証は厳密かつ公正に行うことが必須であると思います。また、理研には、そうした集中的な検証に貢献する責務があると思っております。仮に、今回疑義を生じたデータを除いてみたとしも、その他のデータで刺激惹起性多能性獲得を前提としない説明が容易にできないものがあると私は考えており、理研内外での予断のない再現検証に対して積極的に協力して、真偽の解明に貢献したいと思っております。

【実録】「生命科学研究を考えるガチ議論」シンポジウム

2013年12月5日(木)の夜、第36回日本分子生物学学会年会企画として行なわれた「生命科学研究を考えるガチ議論」。近藤 滋氏(大阪大学大学院 教授, 年会大会長, ガチ議論代表)、宮川 剛氏(藤田保健衛生大学 教授, ガチ議論スタッフ)らが企画し、宮野 公樹氏(京都大学学際融合教育研究推進センター准教授・総長学事補佐)がファシリテーター役を務めて、川上 伸昭氏(文部科学省政策評価審議官)、斉藤 卓也氏(文部科学省タスクフォース戦略室長)、鈴木 寛氏(元文部科学副大臣)、原山 優子氏(内閣府総合科学技術会議常任議員)、安宅 和人氏(ヤフー株式会社・CSO)らをパネリストに迎えてのこの集まり。神戸国際会議場1階メインホールを埋め尽くした研究者らとともに何が議論されどのような結論が導かれたのでしょうか?

日本の科学を考える(http://scienceinjapan.org)ウェブサイトで、シンポ・テープ起こしが順次公表されています。

トピック1【諸悪の根源、単年度予算制度】 単年度予算制度によって、年度末駆け込みによる無駄な使用、残券ゼロ化の無駄な努力、そし て預かり金という不正、などの諸問題が発生。全ての公的研究費の複数年度予算化をお願いしたいという提案。アンケートでは「研究費の基金化を全ての種目について進めるべきだと思いますか?」に対して「はい」が88%。約9割が基金化を希望しているという結果。

トピック2【研究者の雑用が多すぎ】

トピック3【研究者のポスト問題】 ポスドク1万人計画後、ポスト競争が加熱。競争過多で研究にマイナス。常勤と非常勤の待遇の差が大きすぎ。5年、あるいは10年の雇い止めも大問題。提案:安定性と競争性を担保する日本版テニュアトラックのようなものができないか。身分そのものは安定させるけれども、基本報酬は低く抑え、競争的なアドオン給与をつける。よほどのことがない限りテニュアが取得できるように。「このようなテニュアトラック制度、導入してほしいですか?」約9割が導入を希望。

トピック4【ギャンブル性が高すぎる競争的研究費】当たるか外れるかのall or none。安定した基盤的研究費の導入を提案。研究者の過去の実績の評価に主に基づき、研究費の額が緩やかに変動。突然ゼロになったり極端に増えるということはなし。アンケートでは、9割以上がこのような研究費の導入を希望。

などのトピックをはじめ、さまざまな話題に関して議論が行なわれたようです。

リンク:第36回日本分子生物学学会年会企画「生命科学研究を考えるガチ議論」シンポジウム書き起こし

 

「実験ノートがない=研究不正」

小保方氏は3年間の研究生活で実験ノートがたったの2冊しかなく、しかも日付が書いていなかったり実験条件が明記されていなかったりして、理研のSTAP細胞論文調査委員会が実験事実の有無を確認するために実験ノートの記述を追跡調査することが不可能だったそうです。

追記:小保方氏はノートの冊数に関しては4~5冊あると後に反論しています(2014年4月9日小保方晴子氏、記者会見で反論【全編動画2時間36分12秒】)。

国会に参考人として意見を求められた京都大学の山中伸弥教授は、「実験ノートがない=不正行為」とみなすと発言しました。実験科学の研究者の中で、この山中教授の意見に対して異論を持つ人はいないでしょう。

国会で山中教授「ノートのチェック徹底を」(14/04/04)

「研究不正を予防する一つの重要な方法は、日ごろの研究記録をきちっと残すことだと思います。そのためには、ノートの記録が非常 に単純なことでありますが、大切です。ノートのチェックを徹底させる。本当に私たちもチェックしています。僕たちは(ノートを)出さない人は、『不正をし ていると見なします』と言明しています」(京都大学・山中伸弥教授:)(http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000024478.html

参考

  1. ラボノート(理化学研究所): “ラボノート”ってご存知でしたか? 実験ノートとも呼ばれ、研究者等が実験データやアイデアを記録し、第三者が確認をとる仕様となっていて、研究の過程を証明するためのノートです。
  2. 理研最終報告 小保方氏「承服できぬ」 不正指摘に激しく反発(YAHOOニュース/産経新聞 4月1日(火)15時35分配信):小保方氏は1日に発表したコメントで、調査結果を「驚きと憤りの気持ちでいっぱい」「改竄、捏造と決めつけられたことは、とても承服できません」と激しい言葉で非難し、近く、理化学研究所に不服申し立てをする考えを示した。
  3. スッピン反論に“理研のドン”怒った!小保方氏「懲戒解雇」も(東京スポーツ2014年04月04日 09時00分):「問題が発覚した段階でも相当怒ってましたが、今回の彼女の態度で、怒りはピークに達しています。理研の看板に傷をつけておいて、反省しないどころか、不 服申し立てですからね。野依さんは『徹底的にやる!』と豪語しており『理研に著しい損害を与えた』という理由で、懲戒解雇処分も視野に入れているそうで す」
  4. 小保方氏側が理研調査は不十分と主張へ(ニッカンスポーツ2014年4月5日12時32分):STAP細胞の論文不正問題で、理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーが理研への不服申し立てで「理研の調査は不十分で(捏造(ねつぞう)と認定 した)最終報告は推測にすぎない」と主張する方針であることが5日、分かった。代理人を務める三木秀夫弁護士が明らかにした。
  5. 利権闘争、セクハラ… 小保方晴子氏が隠し持つ「爆弾」とは(Yahooニュース/NEWS ポストセブン 4月4日(金)16時6分配信):例えば、ユニットリーダーに対して給与とは別に支給される研究費が、理研内部ではどのように使用されているか。年間30億円という巨額の税金で運営される理研で、その予算獲得のために、いかにいびつな権力闘争があるか…などなど。もっと突っ込めば、彼女には、実は長年悩んでいるセクハラやパワハラ問題などもあるし、それこそ今メディアで囁かれている上層部との“関係”についての真相も暴露しかねない。そうなったら、内部は大混乱に陥りますよ

大学院受験者から100万円 東大教授が解雇

諭旨解雇

東京大学は、大学院教授(男性、50歳代)に対し、概要以下のような事実を認定し、3月28日付けで、諭旨解雇の懲戒処分を行った。

(1) 教授は、平成22年夏頃、甲(仮名)から、教授就任の祝儀の名目で現金100万円を受領した。また、その後、甲が本学大学院の入学試験の受験を希望していることなどを知ったにもかかわらず、当該金員を返還しなかった。
(2) 教授は、平成22年の大学院入試の受験を希望していた甲に対し、当該入試への出願を見送って平成23年の大学院入試を受験するように働きかけた。 教授は甲に対し、平成23年の大学院入試について、何らかの優遇を受けられるかのように思わせる態度をとっていたが、平成23年の大学院入試の出願時期に なると、それまでの態度を翻し、大学院学生として受け入れることは難しいことを告げるなどして甲を翻弄した。
(3) 教授は、甲が平成23年の大学院入試を受験した際、口述試験の試験委員として質問を行い、採点に関与するなど、大学院入試の公正性、厳格性に疑念を生じさせる行為を行った。

教授の行為は、就業規則第38条第5号に定める「大学法人の名誉又は信用を著しく傷つけた場合」及び同条第8号に定める「この規則及び大学法人の諸規則によって遵守すべき事項に違反し」た場合に該当し、同規則第39条第5号に定める諭旨解雇の懲戒処分を行ったものである。

http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_260331_j.html

実在しないSTAP細胞作製の再現実験は無駄

「実在しないSTAP細胞作製の再現実験は研究費と時間の無駄遣い」

STAP細胞を報告した小保方博士らのNATURE論文にデータ捏造やデータ改竄が見つかったことから、STAP細胞の存在に対する疑義が大きくなりました。STAP細胞が存在するかどうかは科学的な検証が必要なため、理化学研究所の調査委員会のミッションではないとして議論の対象外に置かれました。調査委員会は疑義が指摘された論文の図のみを取り上げたため、残りの論文の図に関して小保方博士らが本当に実験した証拠があるのかどうかは全く明らかではありません。

STAP細胞が存在するという実験的な証拠は、信頼するに足るものが存在しない状態です。それでもSTAP現象が本当ならば非常に重要な発見になるため、世界中でSTAP細胞を再現する試みが行なわれています。残念ながら、いまだに誰も成功していません。

そんな努力を続けてきた研究者の一人、香港中文大学のケニース・リー(李)博士は、ついに再現実験を止めると表明しました。

李博士は、「自分はSTAP細胞が存在するとは思わないし、これ以上この実験を続けることは労力や研究費の無駄遣いになる。」「自分の実験に戻りたい。」と述べています。

Kenneth Ka-Ho Lee · The Chinese University of Hong Kong

Thank you all for your excellent suggestions on improving the data.  Personally, I don’t think STAP cells exist and it will be a waste of manpower and research funding to carry on with this experiment any further.

実験ノートを見せられないけれども実験データは正しいと主張したところで、それを信じる研究者はいません。

参考

  1. 「捏造ではありません」ナマ声で反論 小保方さん“臨戦態勢”へ 「週刊新潮」が直撃 (産経ニュース 2014.4.3 11:27):「週刊新潮」によると、神戸市内でその姿を発見されるや、「STAP細胞は捏造ではありません!」と、質問される前からこう言い放ったという。
  2. ラボノート (理化学研究所):“ラボノート”ってご存知でしたか? 実験ノートとも呼ばれ、研究者等が実験データやアイデアを記録し、第三者が確認をとる仕様となっていて、研究の過程を証明するためのノートです。

香港のリー博士が「酸処理なし・機械刺激のみ」の条件でSTAP細胞作製再現に成功??【否定】

【注意】当初ポジティブに報道された李博士のこのSTAP細胞に関する実験結果ですが、李博士自身否定的な見解に落ち着いたようです。

 

香港中文大学(The Chinese University of Hong Kong)のケニース・リー(Kenneth Ka-Ho Lee)博士が、ヴァカンティ教授が発表したプロトコールの一部を変更した方法によりSTAP細胞作製に成功したかもしれないという実験結果をリサーチゲート(researchgate.net)に投稿しました。

多能性獲得の分子マーカーOCT4などの遺伝子発現が、機械刺激後培養3日目で検出されたという実験結果です。

KennethLee_qPCR_20140401

LEE博士の実験結果によれば、酸処理はむしろ逆効果で、破砕処理(TRITURATON)の機械的刺激のみのほうが条件として良いといえます。

LEE博士は、現段階での実験結果にはいろいろな解釈があり得るので、STAP細胞ができたとは言わない、と慎重なコメントを出しています。

“Potentially, expression of these pluripotent markers could be the bi-product of un-regulated gene expression by the dying or stressed cells. I agree 100% with Paul Knoepfler’s comments.

I am not claiming that “STAP” cells exsist  – only presenting the results of our research as it is – which is open to interpretation.  Please, don’t Hype up this data!” (Kenneth Ka-Ho Lee

またStem Cell Blogを運営するノフラー博士はリー博士のこの実験結果に対して懐疑的な態度を示しています。

Let’s see how this develops, but I remain skeptical that this is a specific induced pluripotency-related event related to trituration and that what you are seeing here is STAP cells. I hope I’m wrong and it is something real on the STAP front, but I doubt it. Thanks again, Ken, for all the hard work that your lab is doing! Paul (Paul Knoepfler · University of California, Davis)

JCASTニュースによれば、

3日放送のテレビ朝日系「モーニングバード」とフジテレビ系「とくダネ!」はリー教授に直接電話で話を聞いた。リー教授は、STAP細胞の生成に成功したとか存在しているとか言ったことはない、と完全否定し、

「実験結果を報告しただけで、それがSTAP細胞だと勘違いされてしまった。STAP細胞に関しては、実験を始めて3日後に細胞は死んでしまい失敗してしまいました。できた細胞はSTAP細胞の特質すらありませんでした」

と語っていた。

とのこと。

さらに新しい朝日新聞の報道によると、李博士は

李教授は「本当にSTAP細胞ならマーカーの値は数百倍程度に上がるはず。誤解を与える伝え方をして反省している」と話した。

とのことです。結局、李博士はSTAP細胞の再現実験の試みは止めるそうです。

参考

  1. ResearchGate.net Review of article: Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency.Haruko Obokata, Teruhiko Wakayama, Yoshiki Sasai, Koji Kojima, Martin P Vacanti, Hitoshi Niwa, Masayuki Yamato, Charles A
  2. 香港中文大学、STAP細胞作製の再現に成功か(WIRED.JP 2014.4.2 WED 修正版4.3):李氏は、自分の実験結果(現在公開されている手法ではSTAP細胞は作製されないとするもの)を『Nature』に提出し、3月24日に同誌から掲載を拒否されていたが、同氏はその後、ヴァカンティ氏の手法の応用に取りかかった。李氏は自らのすべての実験プロセスを、オープンソース・プラットフォーム「ResearchGate」において、リアルタイムで公開…「わたしはSTAP細胞が存在していると主張しているわけではない。わたしがResearchGateに掲載した実験結果は、非常に初期のものだからだ。わたしはヴァカンティ氏のプロトコルを追試した。それは、小保方氏のプロトコルとは大きく異なるものだ」「わたしが提供した情報は、酸に浸す処理というよりは物理的な研和処理が幹細胞を誘発するかどうかについて、ほかの研究所が追試するときに助けになると確信している」
  3. Prof LEE Ka Ho Kenneth 李嘉豪(香港中文大学 生物医学学院 The Chinese University of Hong Kong, School of Biomedical Scinces)
  4. Blogger Reports STAP Success(The Scientist April 1, 2014):Lee now claims he has succeeded at reproducing STAP using Vacanti’s protocol—well, sort of.
  5. 関由行 ‏@yoshiyuki_seki 12時間 @TJO_datasci @yulimekko 8倍程度ですからねー。ESだと数百倍は発現しているので、8倍程度では発現しているとはみなせないと思いますよ。
  6. 香港の大学でSTAP細胞の作成に成功?? ネットで「理研は小保方に謝れ!」騒ぎになったが誤報だった (JCASTニュース 2014/4/ 3 17:43)
  7. 「STAP細胞が存在する証拠ない。エイプリルフールのジョークというべきだった」香港の李教授が自ら否定 (The Huffington Post 2014年04月03日 10時14分 JST):STAP細胞生成の再現に香港中文大学の李嘉豪教授が成功したと報道された件について、李教授は4月2日、自らのTwitterでこれを否定した。…「小保方さんの実験方法ではSTAP細胞は再現できませんでした。他の人がやっても時間の無駄です。STAP細胞は存在しないと思います」…
  8. STAP細胞再現、一転訂正 香港の研究者(朝日新聞デジタル 2014年4月3日22時00分):STAP細胞とみられる多能性幹細胞の培養に成功した可能性がある、と公表していた香港中文大の李嘉豪教授が3日、朝日新聞の取材に、できたのはSTAP細胞ではない可能性が高いことを明らかにした。再現実験もやめるという。

調査委員会最終報告で小保方氏の不正を認定

2014年4月1日に理化学研究所のSTAP細胞NATURE論文調査委員会が最終報告となる記者会見を行い、小保方氏のデータ捏造・改竄の研究不正を認定する結論を下しました。DNAの電気泳動ゲルの写真のレーンの切り貼りを改竄と認定し、また、博士論文の図をNATURE誌の論文の図に流用した行為を捏造と判断しました。研究論文の疑義に関する調査報告書は3月31日付けの書類として公表されています。

中間報告書のスライドでゲルの写真に「修正」が加えられていたことに関しては質疑応答のときに記者から質問が出ましたが、石井調査委員長は未発表データなので削って欲しいと著者らの申し出があったために削ったと説明しました。

小保方氏はこの最終報告を受けて、「驚きと憤りの気持ちでいっぱいです。」「とても承服できません。」「到底容認できません。」という声明を出しました。

調査委員会の調査報告書(3月31日付け)を受け取りました。驚きと憤りの気持ちでいっぱ
いです。特に,研究不正と認定された2点については,理化学研究所の規程で「研究不正」の対
象外となる「悪意のない間違い」であるにもかかわらず,改ざん,ねつ造と決めつけられたこと
は,とても承服できません。近日中に,理化学研究所に不服申立をします。
このままでは,あたかもSTAP細胞の発見自体がねつ造であると誤解されかねず,到底容認
できません。小 保 方 晴 子(http://www3.riken.jp/stap/j/p9document8.pdf

理化学研究所が研究不正の定義を極度に狭く解釈するのを逆手に取って、小保方氏が反撃に転じた格好です。理研と小保方氏の間の泥仕合に発展する様相を呈してきました。本日の記者会見での竹市センター長のコメントによれば理化学研究所は小保方氏をユニットリーダーとして迎えるにあったって研究室のセットアップ費用を1500万円をかけているそうです。それに加えて小保方晴子ユニットリーダーに割り当てられた研究費が年間1千万円、部下を雇うための人件費として1千万円、そして週刊誌などの情報によれば年俸が800万円~1千万円程度だそうです。これらが全て税金で賄われていることを考えると、データ捏造・改竄を全く悪いことと認識できない倫理観の人間を研究リーダーとして雇い入れた理化学研究所の責任は非常に重いものがあります。

今回の最終報告でも結局のところ本当に実験がなされていたのかが曖昧なままでした。テラトーマ形成の実験の図に対応するHE(ヘマトキシリン・エオジン)染色のプレパラートは調査委員が確認したそうです。しかしそのスライドガラスには日付や実験条件のラベルがなく、また実験ノートも杜撰でまともに日付や実験条件が書き込まれておらず、そのプレパラートが本当にその実験を行ったときのものかどうかを実験ノートをもとに追跡、検証できなかったというのですから、「実験は行われていたと思う」と調査委員がコメントするのはお人良し過ぎます。どんな実験条件のプレパラートかわからない以上、その実験が行われた証拠は見つからなかったと言うべきです。

小保方氏の実験ノートの現物を調査委員会が入手したのが中間報告を行った3月14日よりも後だったというのも、本気で調査がなされていなかったことを物語っています。書き換え、廃棄、付け足しなどを許さないように実験ノートやデータの入ったPCは直ちに調査委員会の管理下に置くべきだったでしょう。

小保方氏は論文の図を作製する根拠となった実験が正しく行われたことを立証する責任があります。第三者が客観的に検証可能な実験ノートの記載がないのであれば、その実験は行われなかった可能性が高いとみなすのが、通常の研究者の研究不正に対するスタンスでしょう。悪意があったかとかミスかどうかという議論以前に、コピペで博士論文を作成し、実験ノートをまともに付けない人を研究者として雇っていることがおかしいのです。

HuffPost Japanの記事「小保方晴子さんが単独で『STAP細胞論文を捏造・改ざん』理研が最終報告書」に対して多数寄せられたフェイスブック上のコメントはほとんどが、理化学研究所は小保方晴子氏一人に全部の責任を擦り付けて、トカゲの尻尾きりをしたに過ぎない、小保方氏はかわいそう、がんばれ!小保方さん、という論調ばかりです(https://www.facebook.com/HuffPostJapan)。今回の研究不正に対して早い段階から毅然とした取り組みを行なわなかったせいで理研は研究者社会からの信用を失い、データ捏造を行なった小保方氏に世間の同情が集まるというおかしな事態になっています。

 

STAP細胞:記者質問【全】4/1理研調査委

参考

  1. 研究論文の疑義に関する調査報告書(研究論文の疑義に関する調査委員会 委員長 石井 俊輔、委員 岩間 厚志、古関 明彦、眞貝 洋一、田賀 哲也、渡部 惇 平成26 年3 月31 日)(PDFファイル):(1-2)論文1:Figure 1i の電気泳動像においてレーン3 が挿入されているように見える点。 調査結果 小保方氏と笹井氏の連名により提出されたFigure 1i の元になったゲルの写真の電子ファイルと実験ノート類及び同図の作成経緯と方法の書面による説明、並びに両氏からの個別の聴取内容を精査した結果、Figure 1i の図は2 つのパルスフィールド電気泳動ゲルを撮影した2枚の写真に由来する加工画像であることを確認した。同電気泳動においては、合計29 のサンプルを、サンプル1 から14 をゲル1 に、サンプル15 から29 をゲル2 に電気泳動したこと、Figure 1i のレーン1, 2, 4, 5 がゲル1 の左から1, 2, 4, 5 番目のレーン(標準DNA サイズマーカーをレーン0 として左から番記)に相当し、レーン3 がゲル2 のレーン1(同)に相当することを、各ゲルに写った写真情報から確認した。なお、ゲル1 のレーン3とゲル2 のレーン1 はともにT 細胞受容体遺伝子再構成を示すポジティブコントロールであり、それぞれ脾臓のCD45+血液細胞とCD45+CD3+ T リンパ球由来のDNA のPCR 産物を泳動したものである。画像の加工については、ゲル1 のレーン1, 2, 3, 4, 5 の写真において本来レーン3 が存在していた場所にゲル2 のレーン1 の写真が単純に挿入されたものではなく、前者のゲルにおける標準DNA サイズマーカーレーンの泳動距離が後者のそれに比して約0.63 倍であり、Figure 1i の作成時に前者を縦方向に約1.6 倍に引き伸ばす加工をした上で後者が挿入されたことを、前者に写った埃類の位置関係の縦方向への歪み等から確認した。また後者については写真に淡く写ったスメアが消失して挿入されていることからコントラストの調整も行われていたと判断した。そこで小保方氏に説明を求めたところ、T 細胞受容体遺伝子の再構成のポジティブコントロールを明瞭に示すためにはゲル2 のレーン1 が適しており、ゲル1とゲル2 のそれぞれの標準DNA サイズマーカーの泳動について双方のゲルにおいて、標準DNA サイズマーカーの対数値と泳動距離が良好な直線性を保っている関係にあることを目視で確認した上で、ゲル1 の写真を縦方向に引き伸ばし、標準DNA サイズマーカーの位置情報に基づいてレーン3 の写真の挿入位置を決定したとの説明があった。検証の結果、ゲル1 とゲル2 の間には、標準DNA サ
    イズマーカーの対数値と泳動距離について直線性の保持は見られず、説明どおりに標準DNA サイズマーカーの位置情報に基づいてレーン3 を配置することが無理であること、仮にFigure 1i のレーン3 に見られるT 細胞受容体遺伝子再構成バンド群の位置に近い標準DNA サイズマーカー群に絞ってそれらの位置情報に基づいてレーン3 の画像を配置するとFigure 1i のレーン3 に見られるT 細胞受容体遺伝子再構成バンドとは異なる位置にT 細胞受容体遺伝子再構成バンドが来ることから、説明を裏付けることはできなかった。説明とは逆に、Figure 1i のレーン3 に見られるT 細胞受容体遺伝子再構成バンド群の位置に合わせる形でレーン3 の画像を配置すると、ゲル1 とゲル2 の標準DNA サイズマーカーバンドの位置にずれが生じることから、Figure 1i の画像加工時には、標準DNA サイズマーカーを基準にしていたのではなく、T 細胞受容体遺伝子再構成バンド群の位置を隣接するレーン4 のそれらに合わせる形で図の挿入が行われたことが示唆された。電気泳動されたサンプルについては、実験ノート類などの記載やサンプルチューブのラベルなど小保方氏から提供された各種の情報は、Figure 1i のレーン1, 2,4, 5 は論文のとおりであること、論文で「Lymphocytes」とラベルされたレーン3はCD45+CD3+ T リンパ球であることを示していた。 評価(見解) 論文に掲載された画像が、2枚の別々に電気泳動されたゲルの写真から作成された合成画像であることは、画像の詳細な解析から間違いない。この論文で重要な役割を持つFACS-Sorted Oct4-GFP 陽性細胞群2 つに由来するサンプルが泳動された2 つのレーンを含む複数のレーンの画像を、意図的に且つ軽微とは言いがたい約1.6 倍の倍率で縦方向に引き伸ばした画像に、ポジティブコントロールの役割を持つ1 つのレーンをコントラスト調整して配置することで合成している。加えて、当該1 レーンの貼り付け操作において、科学的な考察と手順を踏まないでT 細胞受容体遺伝子再構成バンドを目視で配置していることなどは、2枚の異
    なるゲルのデータをあたかも1枚のゲルで流したかのように錯覚させるだけでなく、データの誤った解釈を誘導する危険性を生じさせる行為である。当時の小保方氏には、このような行為が禁止されているという認識が十分になかった、また、このようなデータをその真正さを損なうことなく提示する方法についてNature 誌が指定していることを認知していなかったともうかがえる点がある。研究者を錯覚させるだけでなく、データの誤った解釈へ誘導することを、直接の目的として行ったものではないとしても、そのような危険性について認識しながらなされた行為であると評価せざるを得ない。T 細胞受容体遺伝子再構成バンドを綺麗に見せる図を作成したいという目的性をもって行われたデータの加工であり、その手法が科学的な考察と手順を踏まないものであることは明白である。よって、改ざんに当たる研究不正と判断した。改ざんされた画像は、小保方氏が行った実験データを元に、同氏が作成したものであり、笹井、若山、丹羽の三氏は、この実験及び画像データ作成に関与していない。三氏は、小保方氏から、論文投稿前に、すでに改ざんされた画像をその事実を知らされないまま示されており、この改ざんは容易に見抜くことができるものではなかったことなどから、三氏については、研究不正はなかったと判断さ
    れる。(1-5)笹井、小保方両氏から、以下の修正すべき点が見つかったとの申し出を受け、この点についても調査した。論文1:Figure 2d, 2e において画像の取り違えがあった点。また、これらの画像が小保方氏の学位論文に掲載された画像と酷似する点。 調査結果 2 月20 日に笹井氏と小保方氏より、修正すべき点についての申し出とこれに関する資料の提出を受けた。申し出の内容は、論文1の脾臓の造血系細胞から作製したSTAP 細胞からの分化細胞並びにテラトーマの免疫染色データ画像の一部(Figure 2d 下段中央の1枚とFigure 2e 下段の3枚)が、実際には骨髄の造血系
    細胞から作製したSTAP 細胞を用いた画像であること、正しい画像に訂正することを考えているという2点であり、提出された資料はこれらの画像のファイルであった。小保方氏から、それぞれの実験の過程で、脾臓及び骨髄に由来する血液細胞のサンプルに対し、いずれもhemato(hematopoietic:血液系の意味)というラベルを用いていたため混乱が生じ、同氏において画像の取り違えをしてしまったとの説明を受けた。その後、論文1の画像は、小保方氏の早稲田大学における学位論文に掲載された画像と酷似することが判明した。上記の申し出の際、これらの図が小保方氏の学位論文に掲載されたデータから得られたものであるとの言及はなかった。笹井氏と小保方氏の両氏より、学位論文のデータは、学術雑誌への投稿論文に使用することが可能と理解していたため言及する必要はないと考えていたとの説明を受けた。論文1では生後1週齢のマウス脾臓由来細胞を酸処理することにより得られた
    STAP細胞が用いられているが、他方、学位論文では生後3ないし4週齢の骨髄由来細胞を細いピペットを通過させる機械的ストレスをかけることにより得られたsphere細胞(球状細胞塊形成細胞)が用いられており、実験条件が異なる。小保方氏は、この条件の違いを十分に認識しておらず、単純に間違えて使用してしまったと説明した。論文1の画像を解析すると学位論文と似た配置の図から画像を
    コピーして使用したことが認められた。また論文1の画像は、2012年4月にNature誌に投稿したものの採択されなかった論文にすでに使用されており、その論文においては、学位論文に掲載されている機械的ストレスによって得られたsphere細胞からの分化細胞の免疫染色画像3枚と、テラトーマのヘマトキシリン・エオジン染色画像3枚、並びに免疫染色データ画像3枚に酷似した画像が使用されていたことを確認した。小保方氏は、その後Nature誌に再投稿するにあたり、酸処理により得られたSTAP細胞を用いた画像に一部差し替えを行っているが、その際にも、この画像の取り違えに気付かなかったと説明した。委員会では、実験ノートの記述や電子記録等から、上記各画像データの由来の追跡を試みたが、3年間の実験ノートとして2冊しか存在しておらず、その詳細とは言いがたい記述や実験条件とリンクし難い電子記録等からこれらの画像データの由来を科学的に追跡することは不可能であった。笹井氏は、2月20日の委員会のヒアリングの数日前に小保方氏から画像の取り違え等について知らされ、論文を訂正するための正しいデータを至急取り直すことを小保方氏に指示したと説明した。実際に、訂正のために提出されたテラトーマに関する画像の作成日の表示は2014年2月19日であった。笹井氏から、学位論文は投稿論文に使用できると認識していた、正しいと思われるデータが得られたことから、学位論文の画像が使用されていた件については委員会のヒアリングでは言及しなかったが、この点については深く反省しているとの説明を受けた。評価(見解) 小保方氏が学位論文の画像に酷似するものを論文1に使用したものと判断した。データの管理が極めてずさんに行われていたことがうかがえ、由来の不確実なデータを科学的な検証と追跡ができない状態のまま投稿論文に使用した可能性もある。しかしながら、この2つの論文では実験条件が異なる。酸処理という極めて汎用性の高い方法を開発したという主張がこの論文1の中核的なメッセージであり、図の作成にあたり、この実験条件の違いを小保方氏が認識していなかったとは考えがたい。また、論文1の画像には、学位論文と似た配置の図から切り取った跡が見えることから、この明らかな実験条件の違いを認識せずに切り貼り操作を経て論文1の図を作成したとの小保方氏の説明に納得することは困難である。このデータはSTAP 細胞の多能性を示す極めて重要なデータであり、小保方氏によってなされた行為はデータの信頼性を根本から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたものであると言わざるを得ない。よって、捏造に当たる研究不正と判断した。小保方氏は、客員研究員として若山研在籍時、またその後もチームリーダーとしてテラトーマ作製の実験を行っており、若山氏は、所属する研究室の主宰者として、またこのような実験を指導する立場でともに研究を行っていた者として、これらのデータの正当性、正確性、管理について注意を払うことが求められていた。笹井氏についても、本論文執筆を実質的に指導する立場にあり、データの正当性と正確性を自ら確認することが求められていた。もとより、両氏は、捏造に関与したものではなく、データの正当性等について注意を払わなかったという過失によりこのような捏造を許すこととなったものであるが、置かれた立場からし
    ても、研究不正という事態を招いたことの責任は重大であると考える。丹羽氏は、論文作成の遅い段階でこの研究に参加したものであり、画像データの抽出等には関与しておらず、不正は認められなかった。なお、上述のとおり、画像の取り違えに関する笹井氏らの当初の説明には、不十分なものがあった。このような行為は委員会の調査に支障をきたす恐れがあり、真摯な対応が求められるところである。
  2. 調査報告書に対するコメント」(小 保 方 晴 子 平成26年4月1日)(理研ウェブサイト上のPDFファイル):
  3. 調査委員会報告の概要を受けてのコメント(理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター
    笹井 芳樹 2014 年4 月1日)(理研ウェブサイト上のPDFファイル)