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研究に行き詰ったときに状況を打開する方法:18のアイデア

  2021/05/22    研究力強化, 研究生活

実験するたびに思い通りの結果が得られて、研究がさくさくと進めば研究者の人生はとても楽でいいのですが、そんな風に物事がうまく運ぶことはそうそうありません。実験というものは、ほとんどが失敗の連続で、あれこれ手を変え品を変え条件検討をしていってようやくうまくいく実験条件にたどり着き、そこで初めてまとまったデータが出せてなんとか論文発表に漕ぎ着けるというのが、ありがちな研究の進み方なんじゃないかと思います(個人差あり)。 自分は研究が上手くいったことが少ないのでどれくらい参考になるかわかりませんが、ネット上の記事も紹介しつつ、研究に行き詰ったときに状況を打開する方法を考えてみたいと思います。   できて当たり前の実験ができなくて行き詰まる場合 実験手技の習得 実験が下手なせいでうまくいくはずの実験が上手くいかなくて行き詰まる場合には、確実な実験手技を身に付けることで問題が解決します。 大学院修士課程の頃は自分は、あとから振り返ると実験が下手くそでした。自分が最初に取り組んだ分子生物学実験なんて、ピペットマンでチューブからチューブへ溶液を移して、溶液同士を混ぜたり、チューブを遠心して上清を吸い取ったり、沈殿を溶かしたりする程度の操作しかしないので、人によってうまい下手が生じるなんてなさそうに思えるかもしれませんが、なぜか大きな差が出てくるものです。単純な操作でも手技の良し悪しでまず差がつきます。さらに、ひとつひとつのステップできちんとチェックをして、うまくいかなかったステップがあればすぐにそれに気づいて、すぐに戻ってやり直して着実に前に進んでいけるかどうかでも差がつきます。 できて当たり前の実験で失敗するのは、非常に大きなストレスです。自分は人より不器用ということはない、どちらかといえば手先は器用なほうだし、注意力や集中力もあるはずで、人にできて自分にできないことなんてあるわけがないという自信がどこかにあるからこそ実験科学の道に入ったわけなのです。ところがいざ実験を始めてみると、先輩たちがすいすいとこなしている実験がなぜか自分がやるとうまくいかないということを経験しました。 実験操作には確率でぶれるようなことはないので、うまくいくにも失敗するにも再現性があると思います。うまくいく方法でやれば、誰がやってもうまくいくはずなのです。できるはずの実験ができないで行き詰ったときは、その実験が上手くできている先輩や同僚に頼んで、一連の実験操作を見せてもらうか、実際に一緒に実験をやってもらうか(見てもらう)するのが良いと思います。失敗の原因に気付くことができるかもしれませんし、特に心当たりがなかったとしても、ちょっとした何かが自分の中で無意識であっても修正されて、それ以降かならずうまくいくようになるものです。 腕が悪くてうまくいかないときのほとんどは、実験の段取りが悪くてスピーディーさにかけるときである。‥ 何度も同じ実験を繰り返していると突然うまくいくことがあるのは、その実験に慣れて効率よく早くおこなえるようになるからである。研究が進むひとは、実験も早いし正確だ。ここで小結。うまくいくはずの実験がうまくいかないときは、操作は正確にスピーディーに。(研究につまづいたら 東原和成 ┃ 化学 ┃ 2009年2月号 )   うまくいってほしい実験が上手くいかなくて行き詰まる場合 ひとつひとつの実験のステップはうまくできているはずなのに、期待通りの結果が得られないことがあります。その場合には、何かcriticalな条件があることに気付けていないか、あるいは、作業仮説がそもそも間違っているという2つの可能性が考えられます。 うまくいく実験条件を突き詰める criticalな条件を探すというのは実は研究における通常のことなので、決して行き詰っているわけではありません。これは考え方を変えることです。取りこぼしがないようにあらゆる可能性を最初に考えてから条件を絞り込んでいくしかありません。 うまくいく方法を見つけるためには、なぜうまくいかないのか、どうすればうまくいくのか、原理的な部分にまで降りて行って考えるしかありません。 研究テーマに対する行き詰まり感は消えず、むしろそれは強まる一方で、‥ その分野の研究の第一人者の論文をその人が学生であったころまでさかのぼって、調べてみたりもしました。‥ いつ研究のブレークスルーとなる論文を出したか、それはどのような理由によるか、という点に着目して論文を読み直してみました。(研究者への軌跡 古本 強 広島大学理学部・大学院理学研究科)   仮説を修正する・仮説を捨てて新しい仮説を考える 自分が考えた仮説が間違っている場合には、それを実証しようとしても全てが徒労に終わることもあります。古い話で恐縮ですが、ゲノムが全て解読される前の時代では、一つ重要な遺伝子が見つかると、そのファミリーメンバーとなる2番目、3番目の遺伝子を探すというのが研究を発展させる常套手段でした。しかしタイプ1以外に、タイプ2,タイプ3などが存在するのかどうかは、その答えは見つけてみないかぎり 誰にもわかりませんでした。タイプ1を見つけたラボで、新しく入ってきた大学院生にタイプ2以降を見つけさせる実験テーマを与えた場合、タイプ1よりも重要な機能をもつタイプ2や3を見つけることができてヒーローになれるかもしれません。逆にその遺伝子がゲノム上にそもそも1つしかなかった場合には、何も見つけられず全てが徒労に終わる危険性もあります。 仮説によっては、その仮説を反証できるような実験が考えられることもあり、それをやってみるというのも一つのアイデアです。作業仮説が間違っている(間違っていそう)場合には、仮説を修正するか、どこかで見切りをつけてその仮説はあきらめて別のことを考えるかが得策です。仮説を捨てられなくてズルズルとお付き合いするとどんどん時間が無駄になります。いわゆるサンクコストの増大です。仮説をもっともらしいものに修正するというのは、研究における通常の作業です。 間違った予測のもとに、間違った力点が置かれた実験をやったとしてもね、実験結果として出てくるのは、いつでも客観的なファクトのわけですよ。間違った仮説のもとに実験をやっていれば、当然はじめのうちは予測と実験結果がずれてくるわけです。そういう場面にぶつかったときにどうするかで、正しい方向に戻れるか、どんどん間違った方向に深入りしてしまうかが分かれる。(立花隆・利根川進『精神と物質』)     再現性が得られなくて行き詰まる場合 細胞や組織をすりつぶしてサンプルを調整して行う生化学実験などは、同じロットのサンプルで実験を繰り返す限り、再現性は比較的高いものです。しかし、動物個体などを使った実験の場合は、個体ごとのばらつきが大きく再現性が悪くなっていきます。自分の経験だと、個体の例数を増やすほどバラつきが大きくなったり、実験条件を精密にしていけばしていくほどバラつきが大きくなるようなことがありました。いい加減な実験をしている人間のほうがよっぽど対照群と実験群との差が出るんじゃないかと思ったほどです。 個体でバラつきが大きくなる理由としては、実験する時刻の違い、個体の栄養状態の違い、発生時期の違い、遺伝学的な背景の違いなど、いろいろあると思います。個体差の大きさに関しては、10人の人に同じ言葉を投げかければ、10人10通りの反応が返ってくるであろうことからも想像できると思います。 バラつきに対処するためには、まずは野生型(対照群)に関して実験をして、バラつきの大きさを把握しておく必要があります。「介入実験」をした場合に有意差が出るかどうかは、欲しい差の大きさを決めて、差があったときに差が検出できるサンプルサイズを予め計算しておくのがよいでしょう。そのサンプルサイズが現実的に実行不可能な大きさになってしまうのなら、その実験には手を出さないことです。 遺伝学的な背景が均一な系統で実験するなどの工夫も可能かもしれません。ただしその場合は、いわゆる外的妥当性が低いという欠点からは逃れられません。   作業が膨大過ぎて終わりが見えなくなり行き詰まる場合 人の手を借りる いまどきの科学研究は、網羅的にやるのが当たり前になってきています。そうなると一人あるいは少人数で網羅的にやるのはなかなか大変でしょう。その場合の解決方法としては、人の手を借りる、マンパワーを投入するというのが一つの方策だと思います。腐らずに一人で頑張っていれば、ボスが見かねて技術員をつけてくれるかもしれません。いっそ頼み込んだら、すぐにでも考えてくれるかもしれません。 実験を自動化する 誰もが応援を頼める立場にいるわけではないでしょう。個人が抱える問題を個人で解決するしかない場合には、実験や測定、観察などを自動化してしまうという方法もありえます。 …