科研費に採択される人と不採択になる人の違い

科研費に採択される人と不採択になる人にはどんな違いがあるのでしょうか?

科研費に採択される人は国語力がある 不採択の人には国語力がない

不採択になる理由はいくつもありますが、一番低レベルな不採択の理由は国語力がないこと。つまり、科研費の申請書は日本語で書かれるものですが、その日本語が文法、構文、読みやすさ、論理性といった点でダメダメだということです。まともな日本語の文章になっていない場合、審査委員がわざわざそれを読み解く労を取ってくれるでしょうか。もちろん、そんな親切な審査委員はいないと思います。

日本語の力は小学生の時期につくものだと思います。国語力がない大人は、小学生向けの国語の参考書をつかって勉強するのが早道です。

  1. 福嶋 隆史 “ふくしま式200字メソッド”で「書く力」は驚くほど伸びる!  2013/7/19 大和出版(アマゾン)「全体」を構成する技術 文章全体の根幹=骨組みを構築する、そのためのスキル この本は、骨組みを築き上げるための言語技術を伝授する本 主な読者対象は小・中学生の子を持つ親の方々、及び学校や塾の先生方ですが、高校生やビジネスマン、あるいは一般の大人が読んでも当然、役立ちます。とくに今回は小論文も取り上げており、幅広い読者を想定した本
  2. 福嶋隆史「ビジネスマンの国語力」が身につく本 言葉を自在に操るための論理思考トレーニング 2010/12/11 大和出版(アマゾン)大人向け「国語力=論理的思考力」を伸ばす方法 『「本当の国語力」が驚くほど伸びる本』の骨組みを維持しながらも、そこに新しい肉付けを多数ほどこした結果、見事に進化し、「大人のための本」として生まれ変わりました。
  3. 福嶋 隆史 「本当の国語力」が驚くほど伸びる本: 偏差値20アップは当たり前!  2009/7/18 大和出版(アマゾン)

科研費に出す研究者はまとまった勉強時間が取れないくらい忙しい人が多いと思いますが、もしなんとか勉強時間をひねりだせる人であれば、この本がおすすめです。文例は医学系で大学の卒論の文章程度の日本語かと思いますが、科研費の文章レベルに近いと思います。みんなが陥りがちな、不明瞭な文章(一意に意味が取れない)を避ける方法などがみっちりトレーニングできます。一冊こなせば、国語力(正確な文章を書く力)に関しては一皮むけるでしょう。自分は一冊一通りやりましたが(リライティングの実戦練習)、正直、結構ハードで疲れました。しかし、書く力が弱いと感じている人は、一度は通るべき道です。

  1. 林 健一 こうすれば医学情報が伝わる!! わかりやすい文章の書き方ガイド (ライフサイエンス選書) 2014/10/8 ライフサイエンス出版 (アマゾン)

時間がない人は下の本がおすすめ。

  1. 酒井 聡樹  100ページの文章術 -わかりやすい文章の書き方のすべてがここに- 2011/3/10 本書の特徴は,100ページと短いながら,わかりやすい文章の書き方のすべてを解説している(アマゾン)

 

科研費に採択される人は抽象・具体を行き来できる 不採択の人は抽象・具体の書き分けが下手

具体例を抽象化して概念にすることは研究者が普段行っていることです。自分の実験系から得られデータ(具体例)に基づいて、どれだけ一般化できるかを考え、抽象化したものすなわちコンセプト(概念)のレベルに昇華して議論するわけです。トップジャーナルにリジェクトされる一番の理由がconceptual advanceがないということであることからしても、conceptualization概念化がいかに大事かわかります。

  1. 細谷 功 具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ 2014/11/27 dZERO(アマゾン)

 

科研費に採択される人は読み手の存在を意識している 不採択の人は読み手のことを考えない

科研費の申請書は審査委員に読んでもらうために書くものです。つまり相手、人間が向こうにいるのです。しかも、応募者の研究内容を初めて聞く人達です。よっぽどうまく説明しない限り、何をやるのか、なぜやるのか、なぜ重要なのかといったことは伝わりません。不採択になる人は、誰に読んでもらうのかという意識が欠如しています。自分が書くことだけでいっぱいいっぱいで、それが人に読まれるものであることがわかっていないのです。

 

科研費に採択される人は客観的 不採択になる人は独りよがり

科研費に採択される人はゴルゴ13のように自分を客観視できる人です。不採択になる人は独りよがりな部分が何かしらあります。そもそも研究の仮説が突飛すぎて、根拠がちゃんと書かれていなくて受け入れられない、審査委員は専門家なんだからわかるよなとばかりに難解な語句を散りばめる、略語をいきなり使う、論文の図をコピペしていて中の文字が小さすぎて読めないのに気にもしていない、論文の図中には不要な情報がたくさんあるのに知らんぷり、といった具合です。

 

科研費に採択される人は細部にまで神経が行き届く 不採択になる人は雑

採択される人の調書は例えば図を見ると非常に見やすく作られています。図の大きさ、図の中の構成要素の配置、整列のさせ方、強調の仕方、配置、記号の使い分けなどすべてに「意図」が隠されています。それに対して、不採択になる人の調書の図は、雑です。ページのレイアウトからはみ出していたり、図が不必要に大きかったり、図の周りの余白が大きすぎたり、図中の文字のフォントが馬鹿でかかったり、図のなかみが整列されていなかったり、図なのに全然視覚的に情報を伝えるものになっていなかったり。

 

科研費に採択される人の申請書には整合性がある 不採択になる申請書は矛盾がある

科研費は、何がやりたいのかが不明瞭な申請書が採択されることはありません。申請書全体を通じて、一貫した主張が大事なのです。それに対して、不採択調書は、何かしら矛盾があります。一番致命的な矛盾は、研究目的と実験課題が合致していないこと。その実験課題はその研究目的を達成するために必要なのか?その研究目的を達成するためにはもっと違う実験が必要だったり、もっと一歩先の解析までやる必要があったり。

申請書に矛盾がある人は人間的にも矛盾があるというわけでは決してありません。気づけていないだけです。そういう意味では、自分の書いたものを客観的に見直すことができる人できない人という違いに帰着できます。

 

科研費に採択される人は第三者に読んでもらう 不採択者は一人で書いて出す

なんでも一人でやろうとする人よりも、周りを巻き込んで行く人のほうが仕事ができるものです。研究者の周りには研究者しかおらず、研究者は皆忙しいので、「読んでもらえない?」とお願いすることは勇気のいることです。ついつい気が引けたり、おっくうになったり、面倒くさく感じて一人で書いて出す人が多いのではないでしょうか。しかし申請書を読むのが第三者である以上、第三者の目に自分の申請書がどう映るのか、初めてその内容に触れる人にとって理解しやすいものなのかどうかを確認する作業は非常に大事です。普段からお互いに科研費申請書を読みあうことができるような信頼関係を築いておくことが大事です。これは科研費に限らず論文を段階においても同様です。

  1. ココナラ(”科研費”で検索すると添削サービスを提供する元研究者、研究支援経験者などが数十件ヒットします)

 

科研費に採択される人は情報を取りにいく 不採択になる人は情報に興味がない

いまどき科研費応募を支援するものはいろいろあります。書籍が何冊も出版されていますし、URAが支援している大学も多いです。事務方が頑張ってしっかり読んでくれているところも多いと思います。どの大学でも科研費の書き方の説明会を開催して、外部から講師を呼んだり、審査委員経験者にしゃべってもらったり、科研費をとりなれている研究者に講師をやってもらったりしています。採択された研究計画調書を閲覧できるようにしている大学も結構あるようです。このようにいくらでも支援ツール、支援の機会があるにもかかわらず、不採択になる人はそれらに興味がなかったり、あまり活用していません。もったいない話です。もちろんネット上にも参考になるノウハウがいくらでも転がっています。

科研費に採択される人は様式の指示や留意事項を守る 不採択になる人は無視する

科研費の様式には指示や留意事項がはっきり書かれています。それは評価ポイントと完全に対応しているので、その指示を無視するということは評価されにくいものを書くということです。例えば、学術の潮流や発展を説明してから、問いをどう設定したか書けと書いているのに潮流や最近の発展に言及せずに自分のやってきたことばかり書く人がいます。他人の文献を引用していないということは、その研究領域の潮流の説明をしていないということです。

科研費に採択される人は、書くべき場所に書くべきことを書いているのに対して、不採択になる人は、書くべき場所に書くべきことを書いていなかったり、別の場所に書いていたりします。

科研費に採択される人は応募していた人 不採択になる人は応募するのをやめてしまう

応募しなければ採択されないのは当たり前です。しかし不採択が2回くらい続くと応募するのをやめてしまう人が結構います。3年くらいすれば審査委員も入れ替わるので、出し続けていれば評価してくれる顔ぶれになるかもしれません。