Category Archives: URA(リサーチ・アドミニストレーター)

大学における第3の職種URAとは?科研費獲得増の効果は?

大学には第三の職種が生まれているそうです。第1の職は、大学教授、講師、助教などの「教員」、第2が事務職員、そしてそのどちらでもない第3の職が、「ゆーあーるえー(URA)」だとのこと。

ポスドクからURAへ転ずることを考えている人も多いと思うので、URAの現状を見ておきたいと思います。結論を先に言えば、大学によって雇用条件(無期雇用への転換の可能性など)が大きく異なるようですので、その見極めが大切です。

また、ポスドクが1万人以上存在するのに対して(参考PDF)、URAの人数は全国合わせた総数がせいぜい1000人程度であり(参考サイト)、募集中の件数がたかだか十数人程度なので(JREC-IN)、ポスドクの数%がURAに興味を持ったとすると、競争率は数十倍にもなります。ポスドク1万人計画の尻ぬぐいのつもりなのか、博士号取得者の受け皿としてのURAという言われ方をよくしますが、焼け石に水でしかありません。確かにURAには元研究者が多いが、研究者が希望すれば誰でもURAになれるという比率ではないのです。URAになったとしても、ほとんどの場合、数年の任期しかないので再び職探しが待っています(無期雇用への転換の有無は、大学によって、あるいはその時々の状況によって対応が全く異なるので要注意)。

 

URAとは?

朝日新聞の記事(の無料で読める部分)によるとURAとは、研究力強化を支える専門職「ユニバーシティー・リサーチ・アドミニストレーター」(University Research Administrator)の略。現在、例えば京都大学には46人ものURAが存在しているそうで、その7割が元研究者。残り3割は企業からの転身。URAの職務は、競争的資金の獲得支援を始めとして、研究広報(研究成果を社会に発信)、大型プロジェクトの企画・運絵などその守備範囲はかなり幅広いものになります。

 

URAを先駆的に導入した大学

  1. リサーチ・アドミニストレーター(URA)を育成・確保するシステムの整備 事業進捗状況評価結果等について(平成23年度開始機関)(文部科学省)

 

URAによる外部資金獲得支援の効果

東京都市大学

東京都市大学のウェブページには、「研究推進アドミニストレーションセンターRAC(2018年4月設置)」とあり、2018年度に初めてURAが科研費申請支援をしたのだとすると、その成果として2019年度の科研費が3割アップしたことになります。下の棒グラフで見るとかなり目を引く成果。

東京都市大学は文部科学省の科学研究費助成事業(科研費)の2019年度獲得が前年度比3割増になるなど、研究力向上で成果を挙げている。… 申請書には学長、副学長、研究支援のリサーチアドミニストレーター(URA)の3者が目を通す。(引用元:東京都市大の科研費獲得が3割増えた裏側 2019年07月12日 日刊工業新聞 ニュースイッチ

京都大学

また京都大学は、URAの支援を受けられる対象者を理系に限定せず、人文・社会科学系にも広げた。URAが同分野の科学研究費助成事業(科研費)の申請書作成など助けた案件は、7割と高率で採択された。(引用元:研究者が力を発揮できる環境つくる“キーマン”を知っていますか?  2018年1月11日 日刊工業新聞 / 2018年01月13日 ニュースイッチ

(出典:科研費申請支援を基軸とした『研究支援の好循環』 2016-09-01 京都大学学術情報デポジトリ KURENAI )

早稲田大学

大学として研究戦略センターによるサポートを強化した結果、昨年度1名、今年度は4名が採択されました。(昨年採択分を含めた5名のうち4名を研究戦略センターが支援。なお、過去25年間では通算24名が採択されています)(引用元:WASEDA Research 研究戦略センターの挑戦 Mon, 18 Jan 2016 早稲田大学

信州大学

信州大学URAが企画・実施した業務事例(平成24~25年度に競争的資金に採択された案件の一部抜粋)
JSPS科研費初心者向け申請支援活動学内平均より1割程度高い採択率を得た

研究・産学官連携拠点形成文理融合・異分野融合・産学官地域連携国際基礎研究URAが大きく介入して獲得した競争的資金(信州大学取り分)H23年度:11億円、H24年度:68億円、H25年度:44億円

(引用元:信州大学URAシステム

徳島大学

平成26年度科研費
支援25件 採択10件   採択率40.0%
(大学全体 応募633件 採択173件 採択率27.3%
平成27年度科研費
支援35件 採択13件   採択率37.1%
(大学全体 応募664件 採択203件 採択率30.6%

(参照:徳島大学におけるプレアワード活動について RA協議会第1回年次大会 2015年9月2日 PDF

神戸大学

北海道大学

URAステーションは平成27年度から、経験豊かな北海道大学の教授経験者(退職後9年以内、特任教授を含む)を科研費アドバイザーとして、科研費申請書類の添削を行う「科研費添削制度」を実施しています。ご協力いただくアドバイザーは毎年100名以上、利用件数も100件を超えています。特に基盤研究(C)、若手研究種目で効果が高く、各種目ともに添削利用者の採択率が未利用者の採択率を有意に上回っています。

(転載元:HTMLリンク

 

弘前大学

平成29年7月より本学研究戦略アドバイザーに就任され,科研費獲得支援事業の支援を受けていない課題に対して科研費のアカデミックチェックをご対応いただき,45件中14件平成31年度科研費新規採択(31.1%)となっている。これは本学の新規採択率(21.3%)だけでなく,全国平均※(平成30年度24.9%)も上回るものである。(令和元年度科研費獲得スキル向上セミナー 弘前大学研究戦略アドバイザー倉石泰先生 弘前大学

 

URAの雇用形態

URAという職業の雇用の形態に関しては、下の読売新聞の社説が参考になります。

URAの雇用は安定しておらず、任期が5年未満という形態が大半だ。優秀な人材を確保するには、処遇の改善を検討することが欠かせない。URAをあくまで自分たちの補助要員と見ている大学教員も少なくない。(日本の科学研究 支援人材の活用で低迷打開を 2019/08/12 05:00 読売新聞オンライン)*太字強調は当サイト

 

URAの雇用条件 年収・任期

また、URAの募集要項も一つの判断材料になります。

現在JREC-INに出ているURAの公募をみると、すべてが任期付きでしかもほとんどが無期転換の可能性がなさそうなものばかりです。給与も、求められる高度な専門性を考えると高いとは思えません。URAが、「教員職のような深く高度な専門性をもつとともに、事務職のような分野に偏らない知識と経験、大学等機関全体をみる俯瞰能力が求められる。その両者を両立できる人材」(リンク)といわれているのとは裏腹に、これらの公募要項を見る限り、数年の任期で終了というところが多く、論文を出してもその先の定職が無いポスドクと扱われ方が大差ないように思えます。

  1. 東京大学 アイソトープ総合センター 学術支援専門職員(特定短時間勤務有期雇用教職員)募集 [契約期間] 2019年11月1日以降のできる早い時期(応相談) ~ 2020年3月31日 URA (リサーチ・アドミニストレーター)的業務に取り組める方を優先します。
  2. お茶の水女子大学 リサーチ・アドミニストレーター(URA)の公募 給与:国立大学法人お茶の水女子大学年俸制適用職員給与規程に基づき支給する。基本年俸360~450万円(経験に応じて決定)〔年俸を12月で割った額を毎月支給〕税金及び福利厚生費(雇用保険料、共済組合掛金)の自己負担分を控除する。 雇用期間:2020年1月1日以降手続き完了日~2020年3月31日。年度毎に勤務状況及び業務実績を審査のうえ、労使双方の合意により更新することが有り得る。ただし、更新する場合は、当初の採用日より5年を限度とし、年度の末日以前において雇用期間が5年に達する場合は、当該年度の前年度末日をもって雇用期間の満了日とする。
  3. 名古屋市立大学 産学官連携担当のリサーチ・アドミニストレーター(URA)(特任教授または特任准教授)の公募 給与 就業規則に基づき支給(給料は年俸制に準ずるため、通勤手当・退職手当の支給なし)特任教授 年額804万円程度・特任准教授 年額642万円程度 ※年額は目安であり増減する可能性有  常勤(任期あり)単年度契約(採用日から令和3年3月31日まで)、ただし、年度ごとの業務業績の評価により令和7年3月31日まで雇用期間を更新することができます。
  4. 鳥取大学 リサーチ・アドミニストレーター(URA)助教 常勤(任期あり)5年
  5. 学習院大学 リサーチ・アドミニストレーター(本院での職名は専門嘱託) 給与 月額380,000円 常勤(任期あり)契約期間満了後、勤務成績及び態度により更に1年間の雇用契約更新の可否を判断する。契約更新は、2回まで可とし、雇用期間の最長は令和5年3月31日までとする。
  6. 関西医科大学 リサーチ・アドミニストレーター(URA)募集(教育研究基盤整備企画室) ◆任期◆任用日から3年間(年度ごとに契約更新)※採用後3年目に任期の延長審査あり、最長、採用日から5年間
  7. 筑波大学 プログラムコーディネーター(OPERA食の未来を拓く革新的先端技術の創出) 【雇用期間】  令和2年1月1日から令和2年3月31日(予算状況、勤務状況等によって令和6年12月31日まで更新の可能性有)
  8. 筑波大学 人工知能科学センター リサーチ・アドミニストレーター (部局業務専従支援) 公募要領 任期:令和2年3月31日(年度ごとの勤務成績、評価及び予算の状況により、令和5年3月31日まで更新の可能性があります)
  9. 筑波大学 計算科学研究センター リサーチ・アドミニストレーター(部局業務専従支援) 公募要領 常勤(任期あり)任期:単年度契約。勤務評価による年度毎の更新により,採用日から最長5年まで更新可。
  10. 筑波大学 アイソトープ環境動態研究センター リサーチ・アドミニストレーター (部局業務専従支援) 公募要領 任期:令和2年3月31日 (年度ごとの勤務成績、評価及び予算の状況により、 令和5年3月31日まで更新の可能性があります)
  11. 山梨大学 研究推進・社会連携機構 URAセンター リサーチ・アドミニストレーターの公募について 常勤(任期あり) 3年最長10年 ※更新に関しては、雇用期間終了までに実績等を審査の上、勤務の状況や予算状況を勘案して、更新を判断)
  12. 理化学研究所 連携促進コーディネーター募集(W19101)(科技ハブ産連本部 本部長室)   単年度契約の任期制職員で、評価により採用日から7年を迎えた年度末を上限として再契約可能。 ただし、能力、契約満了時の業務量、勤務成績、勤務態度、所属しているセンター等若しくは研究室等又は従事しているプロジェクトの存続及び当研究所の経営の状況、予算状況等により、再契約可能期間については変更になる場合もあります。また、原則として65歳を超えての再契約は行いません。 2013年4月1日以降、当研究所との有期雇用の通算契約期間が10年を超えることはありません。原則、試用期間有り(2ヵ月)。

無期転換の可能性が募集要項から読み取れる大学・研究機関

  1. 京都大学 特定専門業務職員(リサーチ・アドミニストレーター、URA)の募集 常勤(任期あり) 2023年3月31日 ※評価に基づき、延長可能
  2. 神戸大学 URA(リサーチ・アドミニストレーター)/特命政策研究職員 常勤(任期あり)在籍期間中の業務・業績等の評価及び予算等により、パーマネント職へ移行の場合あり 定年 60歳 任期 2023年3月31日まで
  3. 高エネルギー加速器研究機構 研究支援戦略推進部職員公募 URA19-1(URAまたはジュニアURA)  任期: 2022年3月31日までとする。(更新の可能性あり。任期中70歳に到達する場合は、70歳に達する日の属する年度 の末日を任期の終期とする。)

 

URAの公募情報

  1. 現在URAを公募中の大学(JREC-IN)

 

今、大学にはURAと呼ばれる第三の職種が生まれていると冒頭に書きはしましたが、募集要項から現状を読み取ると、なりたいと思わせるだけの職業としての魅力が見出せません。雇用制度や評価制度(キャリアパス)をもっと整備する必要がありそうです。

URAって何が楽しいの?

URAは普段どんな仕事をしているのか?何を考えて仕事をしているのか?どんなやりがいを感じているのか?がわかる記事を紹介。KURAの広報は、広告代理店がつくってるの?と思うくらいの上手さ。

京都大学URA KURA

  1. 京大の「実は!」Vol.21 「京都大学のURAの実は!」 
  2. 先輩URAの声 

 

大阪大学URA 経営企画オフィス 研究支援部門

  1. URAメールマガジン

 

参考(URA)

  1. リサーチ・アドミニストレーター協議会 
  2. 教員でも職員でもない「第三の職種」研究者支えるURA (有料会員限定記事 佐藤剛志 2019年11月11日15時00分 朝日新聞デジタル)
  3. 【座談会】研究推進支援のプロフェッショナルURAとめざす研究活動の活性化(週刊医学会新聞 第3343号 2019年10月21日)2018年度の調査1)によると,1200人を超えるURAが日本全国で活躍 京大にはURAが多数所属しているため,分業が進んでいます 理工系の学部では早ければ学部生で研究室に入り,修士課程では研究費申請に触れることもかなりあると思います。対して医学部出身の先生は,臨床を経て博士課程に進学して初めて,基礎研究活動の一環で研究費獲得が必要となるケースが多いです。研究費の種類や申請方法などをより丁寧に詳しくお伝えする必要 研究室外からの支援がより一層効果的だと感じます。ただし,医学部の研究者のポテンシャルはかなり高いので,少しの支援で大きな成果が得られる URAが少ない大学では分業せず各人がこれらの幅広い業務に従事しますが,外部資金獲得支援の優先順位が高くなっている 研究プロジェクト企画や申請書作成支援をURAの主業務として求める機関が多い 研究者との接点作りに科研費への申請を活用しています。研究領域を問わずほとんどの研究者が申請するので,科研費申請支援は多くの研究者にURAを知ってもらう機会となっています。 URAは支援を通じて研究内容を知ることができます。それだけでなく産学連携や成果発信などの研究周辺の活動に取り組むモチベーションや悩みなども知る機会となります。そうすると今度は,研究者の悩みに即した支援プログラムや研究活動に即したファンドをURAから紹介できるようになるのです。
  4. 日本の科学研究 支援人材の活用で低迷打開を (2019/08/12 05:00 読売新聞オンライン)
  5. 大学「殻」破り積極交流 企業へ橋渡し、専門組織も (2019/5/23 22:00 日本経済新聞)
  6. 若手研究者支援の新たな取り組み リサーチ・アドミニストレーター協議会2019年度年次大会で、早期キャリア研究者の国際化や共同研究を後押しするためのさまざまな施策が、シュプリンガー・ネイチャーや京都大学から報告された。欧州のHorizon 2020をはじめ、コラボレーションに特化した助成金プログラムを提供する資金配分機関も増加 シュプリンガー・ネイチャーは、2019年9月に東京で開催されたリサーチ・アドミニストレーター(RA)協議会の年次大会で京都大学によるセッションに参加し、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の達成をめざす若手研究者への支援や、効果的なコラボレーションの鍵が国内外のネットワーク構築にあることなどについて述べ、意見を共有した。 SDGsとは、世界の課題に取り組むことを目的とした共通の国際目標であり、2015年に193の国連加盟国によって採択 2017年に日本に導入されたNature Masterclasses のオンライン講座「Scientific Writing and Publishing」は、数十の短いレッスンで構成されるeラーニングコースで、ネイチャー・リサーチの編集者が動画やクイズを使い、論文の執筆や公開のポイントについて解説
  7. (議論のまとめ)高度専門人材・研究環境支援人材(URA等)の活用に関するタスクフォース  更新日:2018年10月26日 URAは、既存の教員職、事務職の垣根を超え、大学全体の研究および研究に関連する活動を高めるために活躍する人材として期待される。よって、教員職のような深く高度な専門性をもつとともに、事務職のような分野に偏らない知識と経験、大学等機関全体をみる俯瞰能力が求められる。その両者を両立できる人材を目指す。 教員の教授・准教授・講師・助教に対応したURA等4階級制の全国統一化を図ることが流動性を考えた場合にも望ましい。
  8. 大学と企業の知をつなぐ 千葉大URA 渡辺史武さん (ちば The People 2018/6/6 1:00 日本経済新聞 電子版) (会員限定記事)
  9. RA協議会 第1回年次大会 セッションレポート 「コラボリーセッション:研究戦略立案のための研究力データ分析と外部資金獲得、JST情報資産の活用」2015-12-03T11:54:01+09:00 COLABORY/Beats! 
  10. 日本の研究力を高めるために – 大学研究力強化ネットワークが本格稼働 (2014/09/26 16:13 マイナビニュース)25の大学・研究機関で構成される「大学研究力強化ネットワーク」は9月3日、参加大学などの研究担当理事などが集う全体会議を開催し、これまで進めてきた研究力向上に向けたタスクフォースの概況などを話し合った。 … こうした提言などを行う組織的なものとして、RU11(学術研究懇談会)やURA(リサーチアドミニストレーター)ネットワークがあるが、同ネットワークでは、そうした既存のネットワークとの連携も今後、積極的に行い、大学・研究機関として、本当にどの程度の資金が何に必要なのか、といったことの情報共有などを図っていくとする。

 

参考(その他)

  1. 大学ファクトブック
  2. 研究マネジメント人材の育成に向けた調査分析事業 (文部科学省)本事業は、大学等が、研究経営システムを強化するため、リサーチ・アドミニストレーター(以下、「URA」という。)及び産学官連携コーディネーター(以下、「CD」という。)等に対して、研究経営能力等の育成に向けた研修の実施により、産学官連携活動の持続可能な体制整備及びURA、CD等を含む研究支援業務を担当する人材の資質向上を図るとともに、研究マネジメント人材育成のための体制整備及び強化を行うために必要となる要素及び課題を抽出し、調査・分析を行ったものである。