英文プレスリリースの書き方~日本の研究成果を世界に発信するために

論文はせっかく出版しても意外と読んでもらえないものです。ですから、自分の論文がめでたく受理されたら、論文掲載のタイミングに合わせてできるだけ世の中に向けて宣伝する必要があります。新聞等などのメディアに記事としてとりあげてもらうために報道記者に提供する資料が、プレスリリースです。日本のメディア向けには日本語でプレスリリースを書きますが、海外の新聞や雑誌に記事にしてもらうためには、英語で書く必要があります。 まだまだ世界に発信されていない日本の研究成果 さて、日本の研究成果を世界に発信するためには絶対に必要な英語のプレスリリースですが、これを出していない大学や研究機関が多いようです。また、英文プレスリリースを出している大学であっても、日本語での本数に比べると圧倒的に少ないようです。 毎日大量に発表される英文のリリースを読んでは、どれを日本語にするかを決めているわけですが、その中で気づいたことがあります。日本の大学・研究機関の英文プレスリリースが少ない。 日本の大学・研究機関から、インパクトファクターが大きいジャーナルへの発表は、それこそ毎日のようにあるのに、英文リリースが無いのが残念でなりません。わが国の科学レベルを分かってもらえない、というのも悔しいですし、成果を出した研究者を売り込めないのももったいないことです。(日本の研究成果を世界に発信するには【日経バイオテクONLINE Vol.1909】2013.07.17 19:00 増田智子) 2014年度の研究成果に関する和文配信件数:235件     2014年度の研究成果に関する英文配信件数:     9件 (出典:2015/5/29  第3回大学研究力強化ネットワークカンファレンス「EurekAlert!を例とした国際科学広報の効果的なあり方について」 英語による研究成果の発信:東京大学の事例紹介 東京大学本部広報室(Public Relations Office, University of Tokyo)髙祖歩美、Euan McKay) 記者の目に留まる英語のプレスリリースの書き方 英文のプレスリリースが少ない理由は、サイエンスが理解できて、英語がネイティブで、しかも一般読者にとって読みやすい英語の文章を書ける人やチームが日本の大学や研究機関の広報部門にほとんど存在しないことが要因でしょう。大学のサポートを受けられない研究者は、自分で書くしかありません。そこで、英文のプレスリリースの書き方を紹介したサイトを紹介します。EurekAlert!のリリースをいくつか見るとすぐに気付きますが、日本語でよく見るプレスリリースと、英文のプレスリリースとでは書き方のスタイルが大きく異なります。日本のプレスリリースは研究内容の解説が中心ですが、英文のプレスリリースは「人」が中心です。そのため、日本語のリリースをそのまま英語に翻訳しただけでは記者の心に引っ掛からない可能性があります。 海外の記者は社会部の記者が主で、科学ジャーナリストはまだ多くありません。このため、記事を特にわかりやすい言葉、わかりやすい文章で書く必要があります。大事なことから先に!研究成果の社会的意義(社会貢献や影響)など、大事なことから先に書きます。逆ピラミッド型の文章構造です。社会貢献や影響、研究成果、研究の背景、詳細、最後に研究機関や研究者情報の詳しい情報の順番です。文章の最初の部分で興味を引きつけないと、記事自体を読んでもらえません。タイトル(headline)や要約(intro)はトップページやヘッドラインに掲載されるため、最も重要です。インパクトのあるわかりやすい簡潔なタイトルを付けましょう。タイトルは6~8words (90 characters maximum)程度に収める必要があります。(熊本大学URA推進室 研究成果の海外国際広報 EurekAlert! を使用した海外国際広報について) レスター大学(University of Leicester)の広報(Press Office)がプレスリリースの書き方(How to Write a Press Release)を詳細に説明しており文章のスタイルを学ぶのに非常に役立ちます。 Journalists are looking for a hook which will form the main focus of their story. They like […]

「人間の手が精巧にできているのは創造主なる神のおかげ」とする論文を掲載した学術誌プロスワン(PLOS ONE)に対して科学者から非難が殺到

プロスワン(PLOS ONE)は、学術雑誌の出版社PLOSが2006年に創刊したオープンアクセスジャーナルです。論文の価値は雑誌掲載後に研究者が決めるべきという編集方針と、紙面の制約がないオンラインジャーナルという特性から、投稿された論文の採択率が高いという特徴があります(採択率70%程度といわれる)。論文が受理されやすいわりにはインパクトファクターも比較的高めなので、多くの研究者に支持されています。日本人研究者にも馴染みの深いメジャーな学術誌の一つです。 ところが、2016年1月5日にこのプロスワンに掲載された中国人研究者の論文「Biomechanical Characteristics of Hand Coordination in Grasping Activities of Daily Living」(日常生活での把持動作における手の協調運動の生体力学的な特徴)が、研究者に衝撃を与えています。 (http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0146193) なんと、この論文の中で著者らは、「手の精巧な構造は、創造主なる神のおかげである」と1度ならず3回も繰り返し述べているのです。 まずアブストラクトで(該当箇所を太字で示しました)、 “The explicit functional link indicates that the biomechanical characteristic of tendinous connective architecture between muscles and articulations is the proper design by the Creator to perform a multitude of daily tasks in a comfortable way.”(http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0146193) と述べ、イントロダクションでも、 “Hand coordination should […]

ポール.J・シルヴィア博士の「生活を犠牲にせず論文をたくさん書く方法」

「できる研究者の論文生産術 どうすれば『たくさん』書けるのか」の著者ポール.J・シルヴィア氏が2012年4月27日に行った講演の動画があります。しかしこの講演ではとりとめもなく延々とフリートークが続くので、ポイントを掴むには彼の著書を読むほうが早いです。 たくさんの論文が書けるのは生まれつきの才能ではなくスキルです。だから、そのやり方を学ぶことができます。(前書きより) この本には非常に実践的な教えが書かれています。原稿が書きかけのままで憂鬱な気分になっている教授から出てくる典型的な言い訳が、「書く時間が見つからない」というものです。しかし、講義の時間がみつからないと言い訳する教授はいません。予定された授業の時間がきたら、授業をするしかないからです。論文を書くのも全く同じで、何曜日の何時から何時までは論文を執筆する時間と決めて、その時間には他の予定は一切入れずに論文の執筆に専念するということを習慣化しなさいと説いています。科学者はプロのライターなのですから、講義の時間に必ず講義をするのと同様、書くと決めた時間に必ず書きなさいとシルヴィアさんは言います。 ちなみにポール・シルヴィアさんが自分で決めた執筆の時間帯は、平日の朝8時から10時までだそうです。朝起きたら、着替えもせずシャワーも浴びず、Eメールのチェックもせず、珈琲を淹れてすぐに机に向かうとのこと。 論文を書けない理由は実はまだまだあります。現実的なところでは、書く前にデータの解析をしなければいけないとか、論文を書き始める前に参考文献を読まなければいけない、などなど。しかし、大丈夫です。シルヴィアさんは、これらもみな「ライティング」とみなします。論文の書き方の本を読むことまでも「ライティング」に含めます。これでもう書かない理由はほとんど潰されてしまいました。 論文を書く環境が悪い、椅子の座り心地が良くない、机が悪いと言って悪あがきする人がいるかもしれません。そういう人達のために、シルヴィアさんはこの本の執筆に使った机と椅子の写真を見せています。インターネットがつながらない部屋、引き出しもない机、質素な椅子。ウインドウズOSすら載っていないPC,DOS上で動くワープロソフト。書くためにはそれで十分だったとシルヴィアさんは言います。 それでもまだ、書く気が起こらない、インスピレーションが湧いてこない、どうしても書けない(Writer’s block)という人がいます。そんな人たちへの最も効果的な処方箋がまさに「決めた時間に書くことの習慣化」なのです。 論文をたくさん書かなければいけない研究者のためのライフハックツールとでも言うべき本。 How to Write a Lot – Paul J Sylvia (http://exordio.qfb.umich.mx/archivos%20pdf%20de%20trabajo%20umsnh/Leer%20escribir%20PDF%202014/Escritura%202014/How%20to%20Write%20a%20Lot%20-%20Paul%20J%20Sylvia.pdf)(73ページPDFへのリンク) Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 1 (1時間1分31秒) Paul Silvia, PhD – How to Publish a Lot and Still Have a Life Pt 2 (44分46秒) Paul […]

「科学をあなたのポケットに」の講談社ブルーバックスが創刊50周年!

ブルーバックスは講談社が出版している新書シリーズで、「科学をあなたのポケットに」をキャッチフ レーズとして1963年に創刊されました。今年2013年は50周年にあたります。 記念すべきブルーバックスの第1冊目「人工頭脳時代― 頭 脳労働の革命が始まっている」 (1963年)の後、「相対性理論の世界」(1966年)、「量子力学の世界」(1967年)、「マックスウェルの悪魔」(1970年)、「ブラック・ ホール」(1975年)、「クォーク」(1981年)、「フェルマーの大定理が解けた!」(1995年)、「消えた反物質」(1997年)、「記憶力を強 くする」(2001年)、「iPS細胞とはなにか」(2010年)など、50年間のブルーバックスの発行点数は1800を超えるそうです(累計部数は7千 万)。後にノーベル賞を受賞した日本人研究者が執筆していた本もいくつもあり、かなり本格的なサイエンス入門書シリーズと言えます。 50年間の歴代ベスト10は、 「子どもにウケる科学手品77」後藤道夫(著)1998年 75万部 「ブラックホール」ジョン・テイラー(著)、渡辺正(訳)1975年 63万部 「相対性理論の世界」J・A・コールマン(著)、中村誠太郎(訳)1966年 63万部 「四次元の世界」都筑卓司(著)1969年 57万部 「パズル・物理入門」都筑卓司(著)1968年 36万部 「量子力学の世界」片山泰久(著)1967年 33万部 「マックスウェルの悪魔」都筑卓司(著)1970年 32万部 「計画の科学」加藤昭吉(著)1965年 32万部 「統計でウソをつく法」ダレル・ハフ(著)、高木秀玄(訳)1968年 31万部 「電 気に強くなる」橋本尚(著)1969年 30万部 となっており、1960年代はブルーバックスの黄金時代であったようです。このころは物理学やパズルの人気が高いことがわかります。ちなみに21世紀(2001年~)の売上ベスト3を見てみると、 「記憶力を強くする」池谷裕二(著)2001年 24万部 「『分かりやすい説明』の技術 」藤沢晃治(著)2002年 20万部 「進化しすぎた脳」池谷裕二(著)2007年 17万部 となっており、現代の人々が脳科学や生きるためのスキルに興味を持っている様子が窺えます。 参考 講談社ブルーバックス ブルーバックス創刊50周年記念 『ブルーバックス物語』ダウンロード(PDF:6.7MB)

出版社の新書に見るサイエンス啓蒙~相対性理論を例に

難解な科学をわかりやすく一般の人に伝える。これはとても難しいことですが、さまざまな出版社が工夫を凝らしてサイエンス関連の新書を出版しています。サイエンスのトピックとして外せないのが、子供から大人まで全ての人を魅了するアインシュタインの相対性理論。 相対性理論をわかりやすく解説した本がこれほど数多く出版されているということは、裏を返せばそれだけ難解なのでしょうか。 【講談社ブルーバックス(新書)】 「科学をあなたのポケットへ」の理念のもと、難解になりがちな科学の内容をやさしく噛み砕いて解説。 ブルーバックス 高校数学でわかる相対性理論 特殊相対論の完全理解を目指して 竹内淳(著) 2013年 ブルーバックス アメリカ最優秀教師が教える 相対論&量子論―はじめて学ぶ二大理論 スティーヴン.L・マンリー、スティーヴン・フォーニア(著)、 吉田 三知世(訳) 2011年 ブルーバックス新装版 相対論のABC―たった二つの原理ですべてがわかる 福島 肇 (著) 2007年 ブルーバックス 新装版 相対論的宇宙論―ブラックホール・宇宙・超宇宙 佐藤 文隆 (著), 松田 卓也 (著) 2003年 ブルーバックス新装版 四次元の世界―超空間から相対性理論へ 都筑 卓司 (著) 2002年(初版1969年) ブルーバックス 20世紀物理はアインシュタインとともに―同時代の物理学者との交流と論争 中村 誠太郎 (著) 2000年 ブルーバックス 図解・わかる相対性理論 数式なしできちんと理解できる 池田和義(著) 1999年 ブルーバックス 相対論対量子論―徹底討論・根本的な世界観の違い メンデル・サックス (著), 原田 稔 (訳) 1999年 ブルーバックス らくらく相対論入門―常識を捨てれば相対論が見える エリック チェイソン (著), 久志本 克己 (訳) 1991年 ブルーバックス 一般相対論入門―事象と時空を考える ロバート ゲロック (著), 山岸 賢吾 (訳)  1986年 ブルーバックス 10歳からの相対性理論 アインシュタインがひらいた道 都筑卓司(著) 1984年 ブルーバックス 相対論の再発見―統一理論への道しるべ 藤井 […]