「理研CDB解体」提言に理研CDB研究者が反論

理研CDBのグループディレクターの一人として理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)の運営に関わる林茂生氏が神戸新聞の取材に答え、理研CDB解体論に反対する意見を述べました。

6月12日に公表された「研究不正再発防止のための提言書」では、STAP細胞論文捏造事件が起きた原因は理研CDBの構造的な問題であると断定されています。

STAP問題の背景には、研究不正行為を誘発する、あるいは研究不正行為を抑止できない、CDBの組織としての構造的な欠陥があった

(1)このようにSTAP問題の背景には複合的な原因があるが、以上に見たとおり、これらの原因はCDBが許容し、その組織体制に由来するものでもあった。すなわち、小保方氏のRULへの採用過程においては、竹市センター長、西川副センター長(当時)、相澤副センター長(当時)を始めとする人事委員会メンバーはSTAP細胞の研究成果獲得を第一義とするあまり、客観的資料を基に本人の資質と研究内容を精査する通常の採用プロセスの手順を、悉く省略した。小保方氏がPIとして率いる研究ユニットは、国立大学法人大学院においては准教授クラスが運営する研究部門(講座)に匹敵するのであり、そのようなハイレベルの研究ユニットを運営するPIとしてのスタンダード域に達していない研究者を職権により杜撰なプロセスを以て採用した、竹市センター長をはじめとする理研CDBのトップ層の責任は極めて重いと言わざるをえない。またCDBの運営にあたるGD会議は、STAP研究の秘密保持を最優先とする方針を容認し、結果としてSTAP研究について多くの研究者による研究内容の評価の機会が失われた。さらに、CDBにおいてはデータの記録・管理の実行は研究者任せであり、CDBの組織全体としての取り組みはほとんどなかった。これらSTAP問題の背景にある原因は、いずれもCDBが許容し、その組織体制に由来するものでもあった。言い換えれば、研究不正行為を誘発する、あるいは研究不正行為を抑止できない、CDBの組織としての構造的な欠陥があり、これを背景にSTAP問題が生じた、と言わなければならない。

(2)このCDBのガバナンスについて、CDB報告書は次のとおり指摘している。
「CDBは2000年4月発足以来、竹市センター長の下、2013年3月末に2名の副センター長(GD)が退任するまで、2005年に1名のGDが交代した以外、同じGDメンバーで運営されてきた。・・・一方、この10年余の間に、運営主体を構成するメンバーは、それぞれが担当するマネージメント領域を牽引する立場となり、このことがCDBの運営における専門化、分業化をもたらし、同時に醸成された相互信頼意識が、「彼が言うことなら間違いない」、「彼に任せておけば安心」との無意識のお任せ、寄り掛かりをもたらし、又はその結果としての独善を拡大させてきた可能性がある」(CDB報告書16頁)。ほとんど同一のメンバーによる長期のガバナンスは、相互信頼意識を醸成するが、同時に馴れ合いを生む土壌となる。研究不正行為を誘発する、あるいは研究不正行為を抑止できない、CDBの構造的な欠陥の背景には、このようなCDBトップ層の馴れ合い関係によるガバナンスの問題があると指摘せねばならない。

研究不正再発防止のための提言書より一部転載)

参考

  1. 研究不正再発防止のための提言書 (研究不正再発防止のための改革委員会委員長 岸輝雄 平成26年6月12日)(理研ウェブサイト上のPDFリンク)
  2. 「解体提言は不当」理研再生研幹部研究員・林氏に聞く (神戸新聞2014/6/18 08:00):”…林氏は「組織運営への批判は率直に認めるが、組織全体が否定されるのは心外。誠実に科学に向き合う研究員や日本の将来のためにならない」と訴えた。…”
  3. 小保方氏の採用経緯、通常と違った 理研・林氏一問一答 (神戸新聞 2014/6/18 08:00):”…過去に不正があったかどうかや、積み上げてきた研究成果などの認識なしに、(再生研が)『不正を生む構造的欠陥があった』『解体すべき』と断言するのはさすがに不当ではないか。誠実に研究している研究者が大勢いる」…”

小保方晴子研究ユニットリーダーの研究室の冷凍庫から『ES細胞』が見つかる

小保方晴子研究ユニットリーダーが”STAP細胞”として若山教授に渡していたものは実はES細胞であったという疑惑を裏付ける事実が次々と明らかになっています。

NHKなどの報道によると、小保方研究室の冷凍庫からは「ES」とラベルされた容器が見つかり、その中の細胞の遺伝子を解析したところ、若山教授が保存していたSTAP幹細胞の遺伝子の特徴と一致するという調査結果が出ました。

また、日経サイエンスなどの報道にあるように、小保方氏らのNATURE論文に付随するデータとして公開されていたSTAP細胞の遺伝子データ内に、胎児のうちに死亡するはずの「トリソミー」を示す情報が含まれていることが指摘されました。胎児のうちに必ず死亡してしまうので、STAP細胞を作るときに使われたはずの「生まれてから1週間のマウス」は存在しえないことになります。「存在しないもの」からSTAP細胞を作ったという小保方氏の主張は、信憑性が全くないといわざるを得ません。

STAP細胞が存在する可能性を示す科学的証拠などもともと何もなかったというのに、それでもなおSTAP細胞の存在の可能性を検証しようとすることは、果たして科学的な態度と言えるのでしょうか?

参考

  1. STAP細胞 元細胞の由来 論文と矛盾 (日経サイエンス 号外 2014年6月11日):”理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーが作ったSTAP細胞の一部が,論文に記したような新生児マウスの細胞から作った ものではないことが,理研の内部資料から明らかになった。小保方氏らが論文とともに公開した遺伝子データを新たな手法で解析したところ,STAP細胞に含 まれるほぼすべての細胞が,8番染色体が3本ある「トリソミー」であることが判明。マウスの場合,8番トリソミーは胎児のうちに死亡し,生まれることはな い。STAP細胞は新生児マウスから取って作ったのではなく,シャーレで培養された細胞だと考えられる。8番トリソミーは研究室で培養されているES細胞 (胚性幹細胞)の2 ~ 3割に見られるとの報告があり,この“STAP細胞” はES細胞だった可能性が高い。”
  2. STAP問題 冷凍庫に「ES」容器(NHK NEWSWEB 6月16日 19時51分):”…これについて日本分子生物学会の副理事長で九州大学の中山敬一教授は、「これまではSTAP細胞はあるという前提で話が進んでいたが、今回の分析結果は実際にはES細胞だった可能性を強く示している。こうしたデータが明らかになった以上、ミスでは説明がつかず、人為的な混入も考えられるので、小保方さんや笹井さんがみずから会見し、説明するのが科学者としての義務だ」と指摘しています。”
  3. STAP細胞:小保方研究室に「ES」と書かれた容器(毎日新聞 2014年06月16日 23時32分 最終更新 06月17日 05時29分) “「STAP細胞」の論文不正問題で、理化学研究所の関係者によると、理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB、神戸市)の小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダーの研究室の冷凍庫からラベルに「ES」と書かれた容器が見つかった。

竹市雅俊センター長らによる記者会見【2014/6/12】

【STAP細胞】9竹市雅俊センター長らによる記者会見【2014/6/12】

参考

  1. STAP細胞の論文問題で 独立行政法人 理化学研究所 は、小保方晴子研究ユニットリーダーが所属する理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)の竹市雅俊センター長らが12日に会見し、一連の経緯や問題点などを自己点検した検証結果を公表すると発表しました。再発防止のため見直すべき点などを盛り込んだ「提案書」の取りまとめに向けた作業を行う、外部の有識者でつくる改革委員会が終了次第、生中継でお届けいたします。

■18:30メド~ 改革委員会によるブリーフィング

【登壇者】
岸輝雄   委員長
間島進吾  委員長代理
市川家國  委員
塩見美喜子 委員
竹岡八重子 委員
中村征樹  委員

■20:00メド~ 竹市雅俊センター長らによる記者会見
【登壇者】
坪井裕  理化学研究所 理事
竹市雅俊 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター長
鍋島陽一 CDB自己点検検証委員会 委員長

(http://live.nicovideo.jp/watch/lv182653123)

「勇気ある行動をとっている研究者が複数名いることは、理研にとって大きな救い」

理化学研究所の研究不正再発防止のための改革委員会は、2014年6月12日に「研究不正再発防止のための提言書」を理研理事長野依良治氏に提出し、その内容が公開されました。

「小保方さん所属組織”解体”を」理研の改革委員会(14/06/12)

日本を代表する研究機関である理研で起きた前代未聞の研究不正の解明にあたり、理研内で真相と科学的真実の解明のため勇気ある行動をとっている研究者が複 数名いることは、理研にとって大きな救いである。本委員会はかかる研究者の勇気に敬意を表すると共に、このような行動により不利益な扱いをされることがな いよう、理研に対し、強く求めるものである。

Nature論文は全て撤回される見通しとなったが、STAP問題が日本の科学研究の信頼性を傷つけている事実は消えることはない。日本の代表的な研究機 関である理研が、STAP問題を真摯に総括し再発防止策を実行することができるのか、国内外から注目されている。STAP問題のような研究不正をめぐる不 祥事は、科学者自らによって解明、解決されなくてはならない。(http://news.mynavi.jp/news/2014/06/12/526/)

参考

  1. 研究不正再発防止のための提言書 (独立行政法人理化学研究所 平成26年6月12日)(理研ウェブサイト内PDFリンク):”…また本委員会の聴取に対し、竹市センター長は、小保方氏の採用を決めた人事委員会のメンバーは、「同時に採用された他のPIに比べ、小保方氏は研究者としてのトレーニングが不足している」、と認識していたが、小保方氏自身の研究テーマに研究予算をつける必要等を考慮すると研究員ではなくRULとして採用する必要があった、と答えている。以上の経過から、理研CDBは、小保方氏の研究者としての資質と実績を評価して、というよりも、小保方氏のSTAP研究の成果が魅力的であり、小保方氏をRULに採用することにより、iPS細胞研究を凌駕する画期的な成果を獲得したいとの強い動機に導かれて小保方氏を採用した可能性がきわめて高い。…”
  2. CDB 自己点検の検証について (平成26 年6 月10 日 CDB 自己点検検証委員会) (理研ウェブサイト上のPDFリンク)
  3. 研究不正の再発防止にはCDB解体など抜本的な改革が必要 – 理研改革委員会 (マイナビニュース 2014/06/12):”…また、提言書では小保方氏の採用に信じがたい杜撰さがあったとしており、採用に加担した竹市センター長や西川副センター長(当時)、相澤副センター長(当時)などの理研 発生・再生科学総合研究センター(理研CDB)のトップにも責任があるとするほか、理研本体の研究不正防止に対する認識不足やガバナンス体制の脆弱性、責任の所在が明らかになることを怖れての及び腰での取り組みなどを指摘しており、再発防止に向け、理研に対し、対象となる論文が取り下げられた場合であっても、個人および責任の明確化と相応の厳しい処分の実施、ならびにコンプライアンス担当理事と研究担当理事の交代、そしてCDBの解体ともし新たに発生・再生科学分野を含む新組織を立ち上げるのであれば、トップ人員を刷新し、理研のためではなく、日本全体の研究力強化に貢献できる体制の構築などを掲げている。…”
  4. 理研:改革委、再生研の解体提言…「関係者厳しい処分を」 (毎日新聞 最終更新 06月12日 22時09分):”…小保方氏には「研究者としての資質に重大な疑義がある」として「極めて厳しい処分」を求め、CDBの竹市雅俊・センター長、共著者の笹井芳樹・副センター長ら幹部の処分と交代を盛り込んだ。…”
  5. 竹市・笹井氏ら4人の辞任求める 理研改革委(日本経済新聞 2014/6/12 19:58):”…再生医療の中核拠点である理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市、CDB)を早急に解体するとともに、竹市雅俊センター長、笹井芳樹副センター長ら上層部4人の辞任を求めた。…”
  6. 「小保方氏の採用過程、信じがたい杜撰さ」 理研改革委 (朝日新聞DIGITAL 2014年6月12日21時27分):”…通常実施する英語による公開、非公開のセミナーをせず、推薦状もない状態だったのに採用を決めるなど、「にわかには信じがたい杜撰(ずさん)さ」と批判した。…”

改革委員会が理研理事全員の交代を求める

報道によれば、研究不正再発防止のための改革委員会が理化学研究所の理事の入れ替えを求める内容を盛り込んだ報告書を来週にも公表するそうです。STAP細胞論文不正事件の真相究明は、日本のサイエンスの信頼を取り戻すためには不可欠です。理化学研究所の運営には、自分自身の保身や組織の防衛でなく、日本の科学研究の将来を本当に考えられる人が望まれます。

理事長 野依 良治 (就任年月日 2003年10月1日)
主要経歴
1963年4月     京都大学採用
1968年2月     名古屋大学理学部助教授
1972年8月     同大学理学部教授
1997年1月     同大学大学院理学研究科長・理学部長(併任)
2002年4月     同大学高等研究院長(併任)

理事 川合 眞紀 (就任年月日2010年4月1日)
主要経歴
1985年5月     理化学研究所採用
1991年5月     同研究所表面化学研究室主任研究員
2004年3月     東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
独立行政法人理化学研究所表面化学研究室招聘主任研究員(非常勤)
2009年4月     独立行政法人理化学研究所基幹研究所副所長(非常勤)

理事 古屋 輝夫 (就任年月日2009年4月1日)
主要経歴
1979年4月     理化学研究所採用
2006年2月     独立行政法人理化学研究所横浜研究所研究推進部長
2008年7月     同総務部長

理事 大江田 憲治 (就任年月日 2011年4月1日)
主要経歴
1980年4月     日本学術振興会奨励研究員
1982年4月     住友化学工業(株)採用
2002年7月     住友化学工業(株)生物環境科学研究所
分子生物グループ・グループマネージャー
2007年1月     内閣府 大臣官房審議官(科学技術政策担当)
2010年4月     住友化学(株)フェロー

理事 坪井 裕 (就任年月日 2012年9月19日)
主要経歴
1982年4月     科学技術庁採用
2000年6月     科学技術庁原子力局核燃料課長
2008年8月     文部科学省研究開発局開発企画課長
2009年7月     文部科学省大臣官房政策課長
2010年7月     経済産業省大臣官房審議官(地域経済担当)
2012年9月     退職(役員出向)

理事 米倉 実 (就任年月日2013年4月1日)
主要経歴
1981年4月     科学技術庁採用
2004年1月     文部科学省研究振興局基礎基盤研究課長
2006年7月     独立行政法人理化学研究所経営企画部長
2009年7月     経済産業省大臣官房審議官(地域経済担当)
2010年7月     独立行政法人宇宙航空研究開発機構執行役
2012年1月     筑波大学理事・副学長
2013年3月     退職(役員出向)
http://www.riken.jp/about/executive/

 

研究不正再発防止のための改革委員会 (平成26 年4 月10 日現在)
市川 家國 信州大学医学部 特任教授
岸 輝雄 新構造材料技術研究組合 理事長
塩見 美喜子 東京大学大学院理学系研究科 教授
竹岡 八重子 光和総合法律事務所 弁護士
中村 征樹 大阪大学全学教育推進機構 准教授
間島 進吾 中央大学商学部 教授、公認会計士
http://www.riken.jp/~/media/riken/pr/topics/2014/20140410_2/140410_1.pdf

参考

  1. 理研の全理事に交代要求へ 改革委「自浄作用が不十分」 野依氏は除く (産経ニュース 2014.6.6 10:00)新型万能細胞とされる「STAP(スタップ)細胞」の論文不正問題で、外部有識者でつくる理化学研究所の改革委員会が、理研の理事全員の交代を求める方針を固めたことが5日、分かった。来週にも公表する報告書に盛り込む。トップの野依良治理事長(75)の交代は求めず、同氏に理事5人の最適な配置を求める。

STAP細胞NATUREレター論文のメインデータも捏造か

小保方晴子理化学研究所研究ユニットリーダーが筆頭著者になっている2報のSTAP細胞NATURE論文のうちアーティクルの方の論文ではデータ捏造・改竄の研究不正が理研調査委員会により認定されていましたしかし、もう一つのレターの論文でも実は不正の事実があることを示す報告書を、理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの検証チームがまとめていました。

それによるとSTAP細胞を利用して作製したマウス胎児の写真と、胚性幹細胞(ES細胞)を利用して作製したマウス胎児の写真が、実は同一個体の別カットの写真だったそうです。

STAP 不正認定以外にも複数の疑義 2014年5月21日

NHKの取材に答えて日本分子生物学会の副理事長の九州大学中山敬一教授は、

再発防止のためには、今後、速やかに調査を行い、すべてを 公表することが欠かせない。理化学研究所が、こうした疑義を把握していながら公表せず、正式な調査も行わなかったのだとすると大きな問題だ。

とコメントしています。

参考

  1. STAP 不正認定以外にも複数の疑義(NHK NEWSWEB 5月21日 20時05分):NHKが取材したところ調査委員会が認定した2つの不正以外にも論文の複数の画像やグラフに疑義があるとする調査内容の文書を小保方リーダーが所属する神戸市の理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの検証チームがまとめていたことが分かりました。それによりますと、STAP細胞が万能性を持つ証拠として2種類の異なる細胞から作ったとしていた2枚の光るマウスの写真が実際には、2枚とも同じ種類の細胞を使って出来たマウスの写真だったとしています。また、STAP細胞の万能性を示すものとして異なる種類のマウスで撮影していたという2枚の写真が実際には、1匹のマウスの写真だったとしています。
  2. STAP問題:不正認定以外の画像2件に疑義(毎日新聞 2014年05月21日):それぞれの画像の元データなどを調べたところ、胚性幹細胞(ES細胞)を使った実験結果として掲載された画像は、実際はSTAP細胞を使ったとされる実験の画像だった。
  3. STAP細胞の論文に新たな画像の誤り(ニッカンスポーツ2014年5月21日22時21分):理化学研究所は21日、STAP細胞の論文に新たな画像の誤りが見つかったことを明らかにした。別の実験結果を示す2匹のマウスとした写真が、同じマウスの別カット写真だったとしている。

ダンゴムシの交替制転向反応に触覚が関与

日本の高校生が、ダンゴムシで交替制転向反応が生ずるメカニズムに触覚が関与していることを実証する研究報告により2014年インテル国際学生科学技術フェアに入賞しました。

ダンゴムシは壁にぶつかっったときに右に曲がると、その次にまた壁にぶつかったら場合今度は左に曲がり、以降右、左、交互に曲がる傾向があり、「交替制転向反応」と呼ばれています。

【YOUTUBE動画】ダンゴムシは壁にぶつかり右に曲がると次は左に曲がる習性がある。トリビアの泉

 

参考

  1. 米の国際学生科学技術フェア、日本の高校生2人が入賞(朝日新聞DIGITAL 2014年5月17日22時31分):世界の高校生が科学研究の成果を競うインテル国際学生科学技術フェア(ISEF)が米ロサンゼルスで開かれた。最終日の17日、表彰式があり、富山県立高岡高3年の林靖人(やすひと)さん(17)が動物科学部門の2等、宮城県仙台第二高3年の山中美慧(みえ)さん(17)がエネルギー・運輸部門の2等にそれぞれ選ばれた。
  2. Intel ISEF 2014 ファイナリスト研修会:Intel ISEF 2014 への出場に備え、3月27日から 3月30日までの 4 日間、国際的な舞台で勝ち抜くための論理構築やコミュニケーション力、プレゼンテーション技術の向上を図るためのファイナリスト研修会がインテル株式会社つくばオフィスと東京オフィスにて開催されました。
  3. オカダンゴムシの交替性転向反応はなぜ起こるのか? 林 靖人(富山県立髙岡高等学校2年) (つくば生物ジャーナル Tsukuba Journal of Biology (2013) 12)(PDF リンク):本研究では、交替性転向反応が障害物と接触する触角の方向性によって最終的に決定されているという仮説をたて、これを検証した。ダンゴムシは最初の転向後、BALMによって曲がった向きと反対側へ傾くように進み、次の分岐点では、接触した触角とは逆方向に転向する。これによって結果的に交替性転向反応を示すと考えられる。
  4. 知の回廊 第56回『ダンゴムシから進化を読む』 ダンゴムシから進化を読む 陸棲等脚類はなぜ集合するのか (中央大学 YOUTUBE動画):節足動物 甲殻類 等脚目 ワラジムシ亜目 フナムシ ワラジムシ ダンゴムシ オカダンゴムシ(Armadillidium vulgare) クチクラ バソトシン バソプレッシン アンギオテンシンII 抗利尿ホルモン 水分摂取
  5. ダンゴムシ迷路・娘の自由研究用(YOUTUBE動画 BGMあり)
  6. ダンゴムシの迷路
  7. ダンゴムシの意思決定 Decision-making in pill bugs The 27th Annual Conference of the Japanese Society for Artificial Intelligence, 2013 (PDF link):ダンゴムシの交替性転向反応は,BALM 以外にも走触性(Hughes, 1989)や記憶(Kupfermann, 1966)など,複数の機構が並列的に作用して実現されている可能性が高く(右田・森山, 2005),これらを統合して転向方向を選択する意思決定機構の存在が予想される.著者らは,ダンゴムシ個体にT字路を連続して遭遇させた実験(Moriyama, 1999)でしばしば観察された,転向方向の変更(図1)は,ダンゴムシの意思決定が顕著に反映された現象なのではないかと考えている.転向方向の変更は,個体がT字路において転向した後,次のT字路へ達するまでに停止し,後進で直前のT字路へ引き返し,前回の転向とは逆の方向へ転向することで達成される(図1).後進を含むこの一連の行動はBLAMでは説明できないため,転向方向の変更は別の機構の働きによって現れると考えられる.
  8. 川合隆嗣 無脊椎動物における交替性転向反応研究の展開と問題点について  動物心理学研究 第61巻第1号 83-93 (2011)(PDFリンク):交替性転向反応(turn alternation)と呼ばれる現象がある。これは,連続する分岐点において,動物がある方向に曲がると,その次の分岐点では前とは逆の方向に高確率で曲がる傾向を指す。…この傾向は,微生物から昆虫に至るまで幅広い無脊椎動物の間で観察することができ,1950年代から数多くの実験がなされている。…しかしながら,交替性転向反応のメカニズムや制御変数に関する統一的な見解は未だに得られていない。…脚を持たない無脊椎動物におけるメカニズムまで説明できる一般性の高い仮説は,現在のところない
  9. オカダンゴムシの交替性転向反応 : 通路長・転向方向・転向回数の効果(PDFリンク 関西学院大学リポジトリ 人文論究, 60(3): 113-125 2010-12-10):少なくともワラジムシ目の動物において現在最も有力な仮説とされているのは,Hughes(1985)のBALM(bilaterally asymmetrical leg movements)仮説である。この仮説では,反応が交替性に現れる原因を,左右の脚の運動量差を均一にするメカニズムが生体に働くためであるとしている。例えば,ある分岐点で右に曲がると左脚を多く使用することになる。すると次には,左右の脚の運動量を均衡にしようと右脚が活動性を上げる。すなわち,左に曲がるということになる。
  10. オカダンゴムシの交替性転向反応とその逃避行動としての意味(日本応用動物昆虫学会誌 50(4), 325-330, 2006-11-25)(PDFオープンアクセスリンク):オカダンゴムシは交替性転向反応を示すことが知られている.この反応の機構として,左右の脚にかかる負荷を均等にするというBALM仮説が知られている.
  11. R. N. HUGHES. Mechanisms for turn alternation in woodlice (Poreellio Beaber): The role of bilaterally asymmetrical leg movements. Animal Learning & Behavior.1985, 13 (3), 253-260 (PDFリンク):Along with results of the other experiments, this result in particular supported an explanation for woodlouse alternation based on bilaterally asymmetrical leg movements (BALM)arising from the negotiation of forced turns. Such asymmetry is seen as biasing an animal to turn in the opposite direction to a preceding forced turn.
  12. R. N. HUGHES. TURN ALTERNATION IN WOODLICE (PORCELLIO SCABER). Anim. Behav ., 1967, 15, 282-286 (PDFリンク):As the persistence of the tendency seems to depend on time, it might be rewarding to seek a neural controlling mechanism involving the establishment of a short-term memory trace somewhere in the central nervous system (as suggested by Kuferman, 1966), or else, at a more peripherallevel, greater inhibition of neural components of the limbs adjacent to the outer wall of a maze turn i.e. the limbs that have to `walk further’ .

DNA電気泳動写真のレーンの切り貼りの是非

小保方氏のSTAP論文問題は日本の生命科学研究者全体を巻き込む大騒動に発展していますが、DNAの電気泳動写真の切り貼りはどこまでなら許されるのでしょうか?雑誌の投稿規程に具体的にやってはいけないことが記述されている場合があります。

例えばMolecular Biology of the Cellの投稿規程には、

Authors may delete or crop irrelevant parts of a gel image (such as blank lanes) but should explicitly describe such manipulations in the figure legend and should add lines to the image to show where sections have been deleted. (http://www.molbiolcell.org/site/misc/ifora.xhtml)

とあり、空白のレーンなど不要な部分を除去することは構わないがその場合は除いた部分がわかるように線を引くこと、また図の説明文中にその旨をはっきりと記述することを要求しています。

Molecular Cell誌でも、

Groupings and consolidation of data (e.g., cropping of images or removal of lanes from gels and blots) must be made apparent and should be explicitly indicated in the appropriate figure legends. (http://www.cell.com/molecular-cell/authors)

 ゲルの写真でレーンを除いたりする場合には行なわれた操作が明瞭にわかるようにし、かつ、図の説明文で説明せよとあります。

Neuropsychopharmacology誌はもう少し具体的で、

Vertically sliced gels that juxtapose lanes that were not contiguous in the experiment must have a clear separation or a black line delineating the boundary between the gels. (http://www.nature.com/npp/author_instructions.html)

実験では隣接していなかったレーンを切り貼りにより並べる場合には、隙間を入れるかまたは黒い線でゲルの境界に線を入れるように求めています。

これらの規程からすると、論文には必要の無いサンプルも電気泳動してしまったためそのレーンを除いて図を作るということは、そのことを明示すれば問題ないようです。だったらレーンを並べ替えてしまってもいいのかとなると、そこまで細かい規程は見当たらずグレーゾーンに突入しているかもしれません。では同一のゲルではなく2枚のゲルのレーンを並べてもいいのかとなるとさらに疑問が膨らみます。しかし2枚のゲルの写真から一つの図を作ることが絶対にダメともいえないようで、

Molecular Pharmacology誌の投稿規程を読むと、

The groupings of images from different parts of the same gel, or from different gels, fields, or exposures must be made explicit by the arrangement of the figure (e.g., using dividing lines or ensuring white space separates lanes from different gels) and in the text of the figure legend. (http://molpharm.aspetjournals.org/site/misc/ifora.xhtml)

異なるゲルであってもレーンの間にちゃんと線を入れれば良いという記述があります。しかしさすがに移動度が極端に異なる2枚のゲルの一方を拡大・縮小して非科学的な操作により自分が合わせたいバンドの位置を合わせて並べるという行為まで許容しているとは考えにくいでしょう。

明示せずレーンを入れ替える切り貼りも、拡大縮小をデタラメに行なって2枚のゲルを張り合わせる切り貼りも、どちらもやってはいけないことです。日本のトップの研究者たちが出した論文の中で普通に「切り貼り」が行われていたという事実は驚くべきことですが、前述の2つでは悪質さの程度全く異なるため、「切り貼り」と言う言葉で両者を同列に並べるような報道姿勢は誤解を招き好ましくありません。

 

 

 

 

小保方氏らがNATURE誌に発表した酸処理による方法ではSTAP細胞作製は再現されず~香港の研究者が論文発表

小保方氏らによりNATURE誌に発表されたSTAP細胞作製ですが、その再現に取り組んできた香港中文大学の李嘉豪(Kenneth Ka Ho Lee)教授は、小保方氏らが発表した方法ではSTAP細胞は作れなかったという論文を発表しました。

Mei Kuen Tang, Lok Man Lo, Wen Ting Shi, Yao Yao, Henry Siu Sum Lee, Kenneth Ka Ho Lee. Transient acid treatment cannot induce neonatal somatic cells to become pluripotent stem cells. F1000Research 2014, 3:102 (doi: 10.12688/f1000research.4382)

 

STAP論文問題をずっと取り上げててきたカリフォルニア大学医学部デービス校の幹細胞研究者ポール・ノフラー博士は、この論文はNATURE編集部が撤回するのが当然だという意見を自身のブログで表明しています。

I believe it is really only a question of when, not if, Nature will editorially retract them.(http://www.ipscell.com/2014/05/perspectives-on-lee-lab-f1000-paper-that-stap-cell-method-does-not-work/

NATURE誌もネイチャーブログやネイチャーニュースで理研の対応などSTAP問題の状況を逐次伝えてきており、編集部がこの問題を深刻に受け止めていることが窺えます。

2014年5月8日 Misconduct verdict stands for Japanese stem-cell researcher
2014年4月25日 Investigator of controversial stem-cell study resigns
2014年4月9日 Acid-bath stem-cell scientist apologizes and appeals
2014年4月1日 Stem-cell scientist found guilty of misconduct
2014年3月10日 Call for acid-bath stem-cell paper to be retracted

参考

  1. STAP細胞論文、Nature編集部が“強制撤回”も 「結論近い」 (1/2)(ITMEDIA 2014年05月12日):STAP細胞の論文を掲載した英科学誌ネイチャーは9日、理化学研究所が不正と確定させた調査結果に関して「独自に評価を進めており、結論に達しつつある。何らかの対応をしたい」と表明し、編集部の判断で論文を撤回することも含め、近く対応を決める可能性を示唆した。

小保方氏側が要求した再調査をしない 理化学研究所が決定

STAP論文捏造疑惑に関して小保方晴子氏の研究不正を理化学研究所の調査委員会が認定したことに対して、小保方氏の弁護団は再調査を求める申し立てを行なっていました。弁護士らは追加資料を4日付で提出したことを明らかにしていましたが、理化学研究所は再調査をしないという決定を下しました。

【STAP細胞】6再調査せず 調査委員会による記者会見 前半【2014/5/8】

【STAP細胞】7再調査せず 理化学研究所による記者会見 後半【2014/5/8】

理研の審査結果を説明する文書では、小保方氏らの申し立てに対して項目ごとに丁寧に反証を示しています。

STAP細胞論文のデータは不可解なことだらけですが、その中でもデータ捏造を決定的なものにしたのは、テラトーマ作製の図が博士論文の異なる実験結果からの流用だったという事実の発覚でした。これに関して小保方氏は画像を取り違えてしまっただけで正しい画像がある(調査書中の「画像B」)と主張していました。そこで、画像Bが真正なものかどうかが争点になるわけですが、この理研調査委員会の審査結果を読むと実験条件に関する記載が実験ノート中に全くないため、正しい実験をしたという小保方氏の主張には何の根拠もないことがわかります。

ウ 画像B の存在について
(ア)画像B について、不服申立て者は、補充書(1)において、実験ノートの75 ページ
の記述をもとに、正しいと主張する画像B の元となるテラトーマが2012 年1 月24 日に取
り出されたなどとする。
(イ)しかしながら、75 ページには日付がなく、近傍のページで日付があるのは、73 ペー
ジ(「6/28」)、76 ページ(「2/29」もしくは「2/19」(いずれか判読不能))、81 ページ(「10
月」)のみである(いずれも年の記載なし)。このように、75 ページに記載されている実験
が2012 年1 月24 日に行われたことを確認できない。また、75 ページには、このテラトー
マがどのような細胞と方法を用いて作製されたかについては記載されていない。
(ウ)不服申立て者は、実験ノートの117 ページの記述をもとに、正しいと主張する画像B
が2012 年6 月9 日に撮影された、としている(補充書(1)「第3、3」及び同「第3、
4」等)。しかし117 ページには日付がなく、「染色(Differentiation assay)(ES コロニー)」
と記載されているだけで、これがどのようなサンプルを、どのような抗体を用いて染色さ
れたのかについては記載されていない。(http://www.riken.jp/pr/topics/2014/20140508_1/

参考

  1. 研究論文の疑義に関する調査委員会による調査結果に対する不服申立ての審査結果について (独立行政法人理化学研究所 2014年5月8日)
  2. STAP論文 調査委と理研の会見一問一答 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2014年05月09日 03時41分):理化学研究所の調査委員会と理研が8日、東京都内で開いた記者会見の主なやりとりは以下の通り。…理研が現在行っている検証実験で、STAP細胞の存在が確認された場合には、今回の判断は変わるのか。 「調査委の判断は、STAP細胞の有無とは関係ない。ネイチャーに投稿した論文に改ざんと捏造(ねつぞう)があったということだ」…
  3. STAP論文、再調査せず 小保方氏の不正確定へ (東京新聞2014年5月7日 19時46分):新たな万能細胞とされたSTAP細胞の論文問題で、理化学研究所の調査委員会が小保方晴子氏側の不服申し立てを退け、再調査しないとの結論をまとめたことが7日、分かった。
  4. STAP論文:理研委、再調査せず 不正確定へ (毎日新聞 2014年05月07日 20時01分、最終更新 05月07日 20時50分);新たな万能細胞とされる「STAP細胞」の論文不正問題を巡り、理化学研究所の調査委員会(委員長・渡部惇弁護士)は7日、筆頭著者の小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダー(30)が求めていた再調査をしない方針を決めた。
  5. 小保方氏の異議退ける…理研調査委、再調査せず (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2014年05月07日 14時30分):STAP(スタップ)細胞の論文問題で、理化学研究所の調査委員会は6日の会合で、研究不正があったとの認定は不当とする小保方晴子ユニットリーダーの不服申し立てを退け、再調査しないとの結論をまとめた。
  6. STAP問題 理研調査委 再調査せずと結論 (NHK NEWSWEB 5月7日 14時16分):STAP細胞を巡る問題で理化学研究所の調査委員会は、ねつ造などの不正はなかったとする小保方晴子研究ユニットリーダーの不服申し立てを退け、再調査は行わないとする結論をまとめました。

メスにペニス、オスに膣、 北大研究者が発見

メスにペニス、オスに膣、 セックスでのオスメスの役割が逆になっている例を北海道大学の研究者が世界で初めて発見

オスは積極的に多数のメスと交尾しようとし、メスは受け入れるオスを選ぶというのが交尾行動における一般的なオスメスの役割だと考えられます。メスが積極的に多数のオスを相手にする(promiscuous)、オスメスの性行動での役割がひっくり返った生き物はこれまでにいくつか知られていましたが、外部生殖器の構造まで逆になっている例はありませんでした。ところがブラジルの洞窟に棲むある昆虫の種では、メスにペニス、オスに膣があり、交尾行動に入ると40~70時間もの間メスがオスをがっちりつかんで離さないという、いわばオスメスの役割におけるSWAP現象が発見されました。

Neotrogla_curvata_annotated(交尾の体勢もオスメスが通常の昆虫とは逆でメスがオスに乗りかかっています。写真:北海道大学プレスリリースより)

論文のタイトルは、Female Penis, Male Vagina, and Their Correlated Evolution in a Cave Insect
(洞窟棲昆虫の「雌の陰茎」と「雄の膣」の間に見られた共進化)。

この昆虫は2010年に新種として発見されたもので、その後生殖器の構造と性行動を詳細に解析した結果、今回の発見につながりました。

カレントバイオロジーを発行しているセルプレス社では、論文が世間に与えたインパクトを測る指標Article level metricsのスコアを論文ごとに表示しています。それによると今回の論文のインパクトはカレントバイオロジーで発表されこの計測の対象となった論文3,157報の中で、堂々の1位。他の雑誌も含めてスコアを計測した209万798報の論文の中でも46位という非常に高い順位です。メスにペニスというのが衝撃的で、世界中のニュースサイト、ブログ、ツイッターで取り上げられ、非常に大きなインパクトを与えたことがわかります(リンク:この論文のArticle level metrics)。

参考

  1. Kazunori Yoshizawa, Rodrigo L. Ferreira, Yoshitaka Kamimura, Charles Lienhard. Female Penis, Male Vagina, and Their Correlated Evolution in a Cave Insect. Current Biology. DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2014.03.022:
  2. 交尾器が雌雄で逆転した昆虫の発見-雌がペニスを持つ洞窟棲チャタテムシ-(北海道大学プレスリリース 2014/4/18)
  3. 吉澤和徳の研究室:準新翅類(半翅系昆虫)の系統と進化に関する研究。News 雌がペニスを持ち,それを使って交尾中雄を拘束する昆虫に関する論文がでました.
  4. Female insect uses spiky penis to take charge – Brazilian cave creatures’s marathon sex sessions extract nourishment along with sperm from reluctant male (Nature News 17 April 2014)
  5. In sex-reversed cave insects, females have the penises (ScienceDaily April 17, 2014): “Although sex-role reversal has been identified in several different animals, Neotrogla is the only example in which the intromittent organ is also reversed,” says Kazunori Yoshizawa from Hokkaido University in Japan.
  6. Lienhard, C., Do Carmo, T.O., and Ferreira, R.L. A new genus of Sensitibillini from Brazilian caves (Psocodea: ‘Psocoptera’: Prionoglarididae). Rev. Suisse Zool.. 2010; 117: 611–635
  7. In weird Brazilian cave insects, male-female sex organs reversed (Reuters  Thu Apr 17, 2014 12:09pm EDT): “Evolution of novelties like a female penis is exceptionally rare. That’s why I was really surprised to see the structure,” entomologist Kazunori Yoshizawa of Japan’s Hokkaido University said by email. Yoshizawa said that although sex-role reversal has been documented in several different types of animals, these insects are the sole example in which the “intromittent organ” – the male sex organ – is reversed, Yoshizawa said.
  8. 男女逆転…メスがオスに交尾器挿入する昆虫発見 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2014年05月04日 17時44分):北海道大の吉沢和徳准教授(昆虫形態学)らの研究チームは、メスがオスの体に交尾器を挿入して交尾する昆虫を、ブラジルの洞窟で発見したと、米学術誌「カレント・バイオロジー」で発表した。

 

イグ・ノーベル賞受賞報道記事

  1. イグ・ノーベル賞 雌雄逆の昆虫発見 日本人研究者に生物学賞 (NHK NEWS WEB 9月15日 11時15分) ノーベル賞のパロディーとしてユニークな研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の授賞式がアメリカのハーバード大学で行われ、メスにオスのような生殖器がある昆虫を発見した北海道大学などの研究者が「生物学賞」に選ばれ、日本人の受賞は11年連続となりました。
  2. 雄と雌「逆転」の虫を研究、日本人らにイグ・ノーベル賞 (朝日新聞DIGITAL 森本未紀、小堀龍之 2017年9月15日08時06分) 受賞したのは吉澤和徳・北海道大准教授(46)、上村佳孝・慶応大准教授(40)、海外の研究者のチーム。ブラジルの洞窟で見つかった新種の虫の雌が「ペニス」のような器官を持ち、それを使って雄と交尾することを解明した。性差とは何かを考えさせるとして、研究が評価された。
  3. メスが「男性器」持つ虫発見…イグ・ノーベル賞(読売新聞YOUMIURI ONLINE 2017年09月15日 22時06分)受賞したのは、北海道大の吉澤和徳准教授(46)(昆虫学)、慶応大の上村佳孝准教授(40)(進化生物学)らで、ブラジルの洞窟にすむシラミに近いチャタテムシという昆虫の仲間は、メスが交尾器をオスに挿入することを発見した。
  4. イグ・ノーベル賞 交尾器「雌雄逆転」の昆虫、日本人発見 (毎日新聞2017年9月15日 13時10分 最終更新 9月15日 14時06分) ユニークな科学研究などに贈られる「イグ・ノーベル賞」の授賞式が14日、米マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大で開かれた。ブラジルの洞窟に生息する昆虫の雌に、雄のような形状の交尾器(性器)があることを発見した吉澤和徳北海道大准教授(46)や上村佳孝慶大准教授(40)ら4人が生物学賞を共同受賞した。

理研が過去の全論文(2万報超)を自主点検

理化学研究所研究員2800余名が関わる過去の全論文(2万報超)にデータ捏造、改竄、盗用などの不正行為がないか自主点検

STAP細胞NATURE論文の捏造問題の処理にあたっている理研の調査委員会の調査委員長や調査委員らの過去の論文にデータ捏造、改竄の疑義が唱えられるという異常な事態になっていますが、理研の研究者は自分の過去の論文の粗探しをされることを恐れて、STAP細胞問題に関わることに尻込みしてしまっているようです。

ジャパンタイムズの記事によると、理化学研究所の元研究者トーマス・クヌッフェル(Thomas Knopfel)氏は、理研在職中に研究不正を問題にしようとしたらむしろ激しいハラスメントに会い、理研で研究を続けることが不可能になったと述べ、研究不正に関して非常に甘い理研の隠蔽体質を強く批判しています。

理研の野依良治理事長は石井俊輔氏がSTAP細胞論文調査委員会の委員長を辞任するという事態を受け、4月25日に理研の研究リーダーらに対して、画像の切り貼りや盗用などの不正がないかを自主的に点検するよう文書で指示していたことが明らかになりました。

参考

  1. 理研、論文の自主点検指示=対象研究者2800人余(時事ドットコム 2014/05/04-14:37):理研では年間約2500本の論文を出しているが、指示文書では、どの時点までさかのぼって点検するかは明示していない。
  2. 理研 全研究者に論文の自主点検指示 (NHK NEWSWEB 5月4日 11時28分):理化学研究所は少なくともこの10年の間に書かれた論文を対象とする方針で、この間の論文の数は2万を超えるとみられるということです。
  3. 小保方氏側「調査委の信用なくなった」と不信感(読売新聞 YOMIURI ONLINE 2014年05月04日 13時25分):「STAP細胞の問題に関わると、自分の研究にも厳しい目が向けられると思うようだ」。理研のある幹部は、読売新聞の取材に対し、委員の論文の確認作業が思うように進んでいないことを認めた。
  4. STAP問題で理研、全研究者の論文を自主点検 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2014年05月04日 13時25分):STAP(スタップ)細胞の論文問題を受け、理化学研究所が、理研のすべての現職研究者約3000人がかかわる論文について自主点検していることが3日、わかった。
  5. ‘STAPgate’ shows Japan must get back to basics in science – Misconduct, and covering it up, common in nation’s labs (The Japan Times Apr 20, 2014):(Thomas Knopfel) “I personally had been severely harassed (and finally found unsuitable to continue my work at Riken) because I was not willing to tolerate events that in my word constitute ‘research misconduct.’ ”
  6. ドイツ人教授「理研は“STAP”以前も改ざんあった」(テレ朝NEWS 04/17 19:01):理化学研究所の元研究者、トーマス・クヌッフェル氏:「(Q.論文の盗用など見たことがあるか?)ええ、見たことがあります。私は、それについて批判しま したが、うまくいかなかった。批判に対する前向きな反応はなく、逆に私の立場が危うくなりました。それは、理化学研究所で育まれた一種の『文化』だと思い ます」【クヌッフェル教授のインタビュー動画】

STAP論文調査委員らにもデータ切り貼り疑惑

小保方STAP論文理研調査委員会の他の委員らの論文にもデータ切り貼り疑惑

小保方晴子氏がSTAP細胞作製を報告したNATURE論文の中でデータの捏造、改竄があったことを認定した理化学研究所の調査委員会の委員長を務めた石井俊輔委員長の研究室から出た過去の論文にデータの写真の切り貼りが指摘されたのに続いて、さらに、他の委員らの論文にも研究不正の疑惑が持ち上がるという異常な事態が生じています。これらの指摘を受けて理研は理研所属の2名の審査委員に関しては不正があったかを確認するための予備調査を開始しました。

調査委員委員の一人である田賀哲也教授が所属する東京医科歯科大学でも同様の指摘を受けて予備調査を行い、「不正があったと立証できるものはない」という結果を発表しました。

しかし、どの論文のどの図に関してどのような不正の疑いがあったのか全く報道されておらず、東京医科歯科大学の「不正なし」という判断の根拠も示されていないため、第三者には何がどうなっているのか全くわからない状態です。

論文捏造&研究不正 ‏@JuuichiJigen
細胞画像の縮小版と拡大版を一つのFigure内に掲載しただけなのに、「画像捏造(流用)」ではないか?との言いがかり(見当違い)の告発をされたSTAP論文調査委員の田賀哲也氏が所属する東京医科歯科大学は、既に予備調査を終えて、不正の証拠はなしとして本調査には進まないと発表した模様。4:48 – 2014年5月2日(https://twitter.com/JuuichiJigen/status/462196825127387136)

小保方氏代理人が苦言「STAP論文許されず、委員の論文は許される」(産経新聞 5月3日(土)14時49分配信)
三木氏はコメントの中で「STAP論文は許されず、田賀論文は許されるとすれば、画像の切り張りや引き伸ばしについて許される場合と許されない場合があることになる」と指摘。(http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140503-00000540-san-soci)

インターネット上では真っ向から対立した議論があり、情報が錯綜しています。

東京医科歯科大学も、山中伸弥教授石井俊輔氏のように実験ノートや生データの有無を明らかにし、論文の図の作製においてどのような操作が行なわれたのかをもっと詳細に説明したほうが良いのではないでしょうか?STAP論文捏造疑惑の小保方晴子氏の弁護団の一人、三木弁護士からは何が研究不正にあたるのかを説明してもらいたいという要望が出ており、論文作製における図の取り扱いは現在の日本の科学研究にとって非常に重要な争点になっています。

疑惑が指摘されたが問題はなかったという説明だけでは、論文不正の指摘が「言いがかり」だったのか、それとも不正行為を「もみ消し」たのか、第三者には全くわかりません。不正疑惑を払拭するのに十分な実験ノートや生データとはどのようなものなのか、研究者の常識を知らしめる良い機会です。是非、研究者でない一般の人にも理解できるような、わかりやすい説明をして欲しいものです。

 

理研調査委3人に論文不正疑惑 予備調査を開始(14/05/02)

【追記】

インターネット上の情報によれば問題視された田賀氏の2004年の論文は、

Takao Setoguchi, Kinichi Nakashima, Takumi Takizawa, Makoto Yanagisawa, Wataru Ochiai, Masaru Okabe,Kazunori Yone, Setsuro Komiya, Tetsuya Taga. Treatment of spinal cord injury by transplantation of fetal neural precursor cells engineered to express BMP inhibitor. Experimental Neurology Volume 189, Issue 1, September 2004, Pages 33–44

であり、疑問を持たれた点の一つは、図2Cが図2Fの一部を拡大したものになっているという指摘でした(http://4.bp.blogspot.com/-R5habHlRKsA/U2OtIn9ypjI/AAAAAAAABVY/f0mNUCtjeZQ/s1600/1.png)。図2の説明文を読むと(http://1.bp.blogspot.com/-fBBP97q90KI/U2O0AD5GCWI/AAAAAAAABVo/xcV1rONjK5s/s1600/2.jpg)、図2Fはこの実験においてMAP2抗体染色(赤色)とGFAP抗体染色(緑色)を行なったことを説明するためのものであり、この実験の中でGFAP陽性アストロサイトが観察されたことが図2Cで示されています。つまり同一の実験結果なので、図2Fの一部(緑色に染色された細胞集団)を図2Cとして用いたことにはなんら問題はありません。疑義を呈した人はおそらくこの論文の図の説明を読まずに勘違いしてしまったのではないかと思われます。

参考

  1. 3委員の論文にも疑い 理研調査委「画像切り貼り」など (東京新聞 2014年5月2日 朝刊):新たに指摘があった調査委員は、理研の古関明彦グループディレクターと真貝洋一主任研究員、東京医科歯科大の田賀哲也教授。
  2. 小保方さん論文調査委、新たに3人加工疑惑 研究者5人中4人が調べられる側に (スポーツ報知 2014年5月2日6時0分):同様の論文加工で委員長を辞任した石井俊輔上席研究員(62)を含めると、当初の調査委員の研究者5人のうち4人の論文に疑いが浮上する異常事態となった。
  3. 止まらない論文狩り STAP調査委メンバーにまた新疑惑 (日刊ゲンダイ 2014年5月1日 掲載):STAP問題以降、日本では「1億総論文狩り」状態だ。
  4. 委員の論文不正「立証できるものはない」 (日刊スポーツ 2014年5月2日20時8分):医科歯科大は5月1日に予備調査を実施。05年の論文への指摘は、実験ノートに残ったデータから問題ないことを確認した。04年の論文についてはノートは残っていなかったが、同じチームの研究者に聞き取った結果、説明は合理的で問題ないと結論づけた。
  5. 東京医科歯科大・田賀教授の論文に不正なし(スポーツ報知 2014年5月2日20時14分):田賀教授に関しては、熊本大に在籍中の2004~05年に責任著者として発表した2本の論文に、画像の切り貼りや使い回しをした疑いがあるのではないかと、4月30日に医科歯科大に通報があった。
  6. 東京医科歯科大学難治疾患研究所幹細胞制御分野 (田賀 哲也 教授)ウェブサイト
  7. 小保方氏 理研に質問書「ねつ造の解釈説明を」 (NHK NEWSWEB 4月30日 12時47分):三木弁護士は「調査委員会の前の委員長は、小保方リーダーと同じようなことをしながら『不正ではない』としている。どのような行為が不正に当たるのか、規程の解釈を明らかにしてほしい」と話しています。

 

山中伸弥教授が自身の論文不正疑惑を強く否定

小保方晴子氏のSTAP論文捏造疑惑ともあいまって、DNA電気泳動の写真データの切り貼りが広く研究者の間で行なわれていた事実が発覚し、日本の科学研究の信頼性が大きく揺らぐ異常な事態になっています。

以前からインターネット上の一部のサイトで山中伸弥教授の論文に関しても疑義が指摘されていましたが、2014年4月28日に山中教授が記者会見を行いこの疑惑をきっぱりと否定しました。

20140428_1

(上図は京都大学iPS細胞研究所ウェブサイトより転載)

参考

  1.  2000年にThe EMBO Journalに掲載された論文について (京都大学iPS細胞研究所 2014.04.28):京都大学iPS細胞研究所山中伸弥教授は、同教授らが2000年に発表した論文に掲載された図に関する疑問点を指摘したウェブサイトを発見しました。当研究所は、山中教授の申し出を受け、事実関係を調査しました。
  2. 山中伸弥氏の論文画像類似事案(捏造指摘ではない)捏造、不正論文 総合スレネオ2 のコメント240で指摘された、山中伸弥氏の論文(EMBO J. 2000;19:5533-41.)の実験画像類似事案について。 (http://blog.goo.ne.jp/netsuzou/e/a703a56e46063cd81de556269b3cb3b9
  3. Shinya Yamanaka, Xiao-Ying Zhang, Mitsuyo Maeda, Katsuyuki Miura, Shelley Wang, Robert V. Farese, Jr, Hiroshi Iwao, and Thomas L. Innerarity. Essential role of NAT1/p97/DAP5 in embryonic differentiation and the retinoic acid pathway. EMBO J. Oct 16, 2000; 19(20): 5533–5541. doi:  10.1093/emboj/19.20.5533.
  4. 「今後、ノートしっかりとる」 山中氏会見、一問一答(朝日新聞デジタル2014年4月28日23時39分):元データは、共同研究者のノートにあるのか。山中 自分自身の記載漏れか、共同研究者が実験したノートを私が持っていないのか、どちらかわからないのが正直な答えだ。
  5. 山中所長会見:ネットで不正指摘 課題に研究者の説明責任 (毎日新聞 2014年04月28日 21時56 最終更新 04月28日 22時25分):…今回、山中教授は生データを示せず、不正がなかったと完全には証明できなかった。…
  6. 「内容は一点の曇りもない」「生データ無いのは恥ずかしい」 山中伸弥教授の会見内容(産経ニュース 2014.4.28 21:38):「論文に疑問を呈されたことは、去年の4月初めに把握した。共同研究者のデータは保存していなかった。指摘されているデータが自分のノートからは出てこない。これは反省するしかない。日本の科学者の見本とならないといけない立場は十分に理解している。心からおわび申し上げる。しかし、論文内容については一点の曇りもない。自分の論文に疑問を持たれるのは、死ねといわれるのに近い痛みを伴う。心より悔やんでいる」
  7. 山中教授、不正否定=共著者ノート、確認できず陳謝-14年前の論文・京大 (時事ドットコム 2014/04/28-21:17):実験の生データは山中教授のノートでは確認できなかった。共に研究の中心となった中国出身の研究者のノートに記録されている可能性もあるが、連絡が取れないという。
  8. 山中教授「反省、おわび」 過去の論文疑義でデータ発見できず(日本経済新聞 2014/4/28 19:07):京大iPS細胞研究所によると、論文にネット上で疑義が指摘された13年4月に調査を開始し、山中教授から段ボール5箱分の実験ノートの提出を受けた。
  9. 山中伸弥教授が論文の疑義に反論 ES細胞研究で データ不備には謝罪 (産経ニュース 2014.4.28 21:37):生データが自身のノートから発見できなかった点は「研究者として反省し、おわびする」と述べた。

論文疑義を受け石井俊輔氏が実験ノートを公開

小保方晴子氏らのSTAP細胞NATURE論文の疑義に関して調査を行なってきた理化学研究所調査委員会では石井俊輔・理研上席研究員が委員長を務めていましたが、その石井氏の研究室から出た過去の論文にデータ操作の疑義が生じ、石井俊輔氏は調査委員会委員長を辞任しました。石井氏の後任として、調査委員会委員で弁護士の渡部惇氏が4月26日付で新委員長に就任しました。

この件に関しては、石井俊輔氏が実験ノート、生データを公開し、行なわれた訂正に関して詳細に説明をしています。

リンク:「インターネット上で指摘されている当研究室からの論文に関する疑義について。」(理化学研究所分子遺伝学研究室ホームページ 石井俊輔 4/24;  4/28  6~9ページ追記, 4/30 10~11ページ追記)

参考

  1. 石井俊輔氏が責任著者となっている論文に関する疑義を頂きました(warblerの日記 2014-04-24) 石井俊輔氏が責任著者である論文についての疑義(PDFリンク)
  2. Toshio Maekawa, Y Sano, T Shinagawa, Z Rahman, T Sakuma, S Nomura, JD Licht, and Shunsuke Ishii. ATF-2 controls transcription of Maspin and GADD45α genes independently from p53 to suppress mammary tumors. Oncogene 27, 1045-1054, 2008
  3. Chie Kanei-Ishii, Teruaki Nomura, Jun Tanikawa, Emi Ichikawa-Iwata and  Shunsuke Ishii. Differential Sensitivity of v-Myb and c-Myb to Wnt-1-induced Protein Degradation.  Journal of Biological Chemistry 279, 44582-44589, 2004
  4. 調査委員会委員長辞任のお知らせ(理研ウェブサイト上のPDFファイルへのリンク)(理化学研究所 石井分子遺伝学研究室ホームページ 上席研究員 石井俊輔 2014年4月25日):昨夕、インターネット上で私どもの研究室から発表された2つの論文についての疑義が公開されました。これらの疑義については即日、実験ノートのコピー、オリジナルデータを示しながら、研究不正ではないことを、研究室のホームページに掲載しました。しかしこのような状況で、STAP細胞論文についての調査委員会の委員長の任務を継続することは、調査委員会および理研に迷惑をおかけすることになります。そこで委員長の職を辞し、調査委員会から身を引くことが賢明と判断し、委員長の職を辞することを申し出、研究所に承認して頂きました。このような事態に至ったことは不徳の致す所であり、皆様に色々なご迷惑をおかけした事を深くお詫び申し上げます。
  5. 理研調査委員長 みずからも画像切り貼りの指摘受け辞任の意向(NHK NEWSWEB 4月25日 12時39分):石井委員長らが7年前に発表した乳がんの論文で、遺伝子の実験結果の画像を注釈を付けないまま切り貼りしたりしていたなどとする指摘があり、石井委員長は、委員長を辞任する意向を理化学研究所に対し伝えたということです。
  6. 理研のSTAP調査委員長辞任へ 自身の論文に疑義(日本経済新聞 2014/4/25 12:22):石井氏は自らの研究室のホームページで、論文の説明の順番に合わせて画像を入れ替えていたことを明らかにしたうえで「疑念を抱かせてしまったこと、迷惑をかけたことを深くおわび申し上げる」と謝罪した。「オリジナルデータはすべて保存しており、いつでも開示できる」とも説明し、実験ノートを写した画像も公開した。すでに訂正の手続きを取っており、学術誌側も了承しているという。
  7. STAP理研調査委員長が辞任 自身の論文で画像加工(朝日新聞デジタル2014年4月25日12時05分):「切り張りではないか」と不正の疑いがインターネット上で指摘され、石井氏は24日、訂正の手続きをとったとする文書を自身の研究室のサイトで公表した。
  8. STAP細胞:石井・理研調査委員長が辞任(毎日新聞 2014年04月25日 12時13分 最終更新04月25日 14時05分):理研は石井氏の論文不正疑惑の指摘について予備調査を始めた。不正の疑いがあると判断すれば、STAP細胞論文と同様に調査委を発足させる。
  9. STAP論文:理研、信頼失墜に拍車 調査委員長が辞任 (毎日新聞 2014年04月26日 07時45分):STAP細胞論文の小保方(おぼかた)晴子・理研研究ユニットリーダーの画像切り張りを調査委は改ざんと認定したのに対し、石井氏は「自分(の論文)は1枚の画像の中の順番を入れ替えただけ」と違いを強調した。ある国立大教授は「不正に変わりはない。だが、実験ノートも示しており、データを開示していないSTAP細胞論文とは、問題の重みに違いがある」と分析する。
  10. 指弾された小保方氏と同じことをしていた! 理研・石井調査委員長が「画像切り貼り」で辞任 (JCASTニュース2014/4/25 15:33):「真正な画像データが存在していることは中間報告書でも認められています」という小保方氏の反論については、「これは非常に話が簡単でし て…」と、わざわざ前置きしたうえで「差し替え用の真正と思われる画像があるということと、論文投稿時に、非常に不確実なデータを、意図的にあるいは非意 図的に使ったということは全く別問題。不正の認定は後者の『論文投稿時にどういう行為が行われたか』なので、それは関係ない」と一蹴していた。
  11. STAP細胞騒動~理研の石井氏と丹羽氏の論文疑惑~(探偵ファイル 森口尚史 元 東京大学特任教授):石井氏と小保方さんでは不正のレベルが段違いである。前者は論文の結論には影響しないし、開示された生データのお陰で石井氏への疑義は晴れる。一方、後者 は論文全域にわたる不正であって結論に甚大な影響を及ぼすものであり、小保方さんは自らの疑義を晴らせるに十分な生データを開示していない。

世間一般の人々に対する科学者の説明責任

STAP細胞論文におけるデータ捏造、改竄の不正行為は研究者や研究経験者から見れば100%明白であり、その悪質さに関しては全く議論の余地すらないと思われました。それにもかかわらず、理研調査委員会によって不正行為の当事者と認定された小保方晴子氏が2014年4月9日に行った釈明記者会見後の世論調査では、小保方さんの説明を信じると答えた人が3分の1程度もいました。

ヤフージャパンのサイトによれば、「あなたは、小保方リーダーの説明に納得しましたか?」という質問に対して、24万6千53人が回答し、51.7%の人が「納得できなかった」のに対し、30.3%の人が「納得した」と答えています。またテレビ番組『新報道2001』が首都圏500人を対象に行なった世論調査でも、「納得する」人が35.2%、「納得できない」人が49.2%で、ヤフーのアンケートと同様の結果になっています。

研究のことは難しくて全くわからないけれども、すごい発見をした小保方さんが全ての失敗の責任を擦り付けられていて可哀想と思っている人が世の中では3分の1を占めているのです。これは驚くべき高い数字です。

このような事態が生じる一因は無責任なテレビ番組制作にあるでしょう。面白おかしければ良いという発想なのか、非常に偏った考え方を持つ人をゲストの一部に加えて、TVスタジオでとんでもない発言を繰り広げさせ、そんなデタラメをそのままお茶の間に垂れ流しにしているのです。発言した人が大学教授の肩書きを持っていたり社会的に地位の高い人であれば、実際にそのコメントを真に受けてしまう視聴者が一定の割合で出てきてしまいます。

小保方氏会見 なぜ問題は起きたのか? 新報道2001 2014年4月13日(1/5)

武田邦彦 小保方論文(STAP細胞)1/2 間違ってて当たり前!

激論! STAP問題 “研究開発法案”の行方 新報道2001 2014年4月20日(2/3)

科学者が科学者のコミュニティの中だけで発言していては不十分であり、もっと一般的なメディアを使って一般の人に対して正しい情報を発信していく必要があります。研究者のブログを読むのはほとんどの場合研究者でしかないため、研究者がいくらブログで今回のSTAP細胞論文捏造事件を論じても世間一般には全く伝わらないのです。インターネットがこれほど普及していても、一般の人に対するテレビの影響力は絶大です。

参考

  1. 涙の会見で巻き起こる”擁護論”に意義あり!ノーベル賞学者が怒った 「小保方さんは科学者失格!」ノーベル化学賞を2010年に受賞した根岸英一教授が、「コピペは偽造、嘘つきということだ」と本誌に怒りの告発(週刊文春2014年4月24日号):科学者が間違いを起こすことは当然ありますが、多 少でも意図的に行われたとしたら、 科学の世界では犯罪です。科学者失格なのです。 … そういう方は最初から研究してはいけない人間だということです。再現できない実験だったら公表することは許されないのです。 

 

 

 

笹井芳樹 理研CDB副センター長が記者会見

STAP細胞NATURE論文捏造事件においてNATURE論文の執筆で主要な役割を果たした理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長が2014年4月16日記者会見を行い、NATURE論文投稿に至るまでの経緯を説明しました。

笹井芳樹氏会見質疑応答全収録;STAP細胞問題16日午後、都内

まずNATURE論文作製に笹井氏がどのように関わったのかという点に関して。

  • 実験の大部分(論文中の80パネルのうち75パネル)は、小保方氏が若山研究室の客員研究員だった2011年春より2年間の間に小保方氏によって行われた。
  • 実験データの解析と図表の作成も若山研究室で小保方氏がほとんどの部分を行なった。
  • NATURE誌への投稿論文は小保方氏と若山氏により一度書かれ、2012年春にネイチャー誌に一度投稿されたが却下された。
  • 2012年12月中旬に小保方氏がユニットリーダーとして登用される際の人事選考委員会において、小保方、若山両氏らがまとめた論文原稿の完成度が、研究の内容や発見の重要さに見合うだけのものになっておらず論文採択は難しいだろうという意見が出された。このため、竹市センター長より、論文作成を手伝うことを依頼され、2012年12月下旬より、論文原稿の書き直しの協力を開始。
  • 2013年3月に小保方氏がユニットリーダーとして採用され、その直後の3月10日にネイチャーに論文を投稿。
  • 投稿前の2月前後に、STAP現象の試験管内の評価に関する実験技術の指導も行なっている。
  • 論文のリバイスの段階における追加実験や技術指導も行なった。
  • 新しく追加された実験であるライブ・セル・イメージングなどの生データについては一緒に解析を行った。

笹井氏が論文著者として名を連ねるに至った経緯に関しては、バカンティ教授より強い要請を受けたためと説明しています。また、レター論文で責任著者になっていることに関しては、2013年9月の改訂論文の投稿時に若山氏から強く頼まれて3人目の責任著者になったのだそうです。

笹井芳樹氏を小保方晴子氏の上司と位置付けての報道もなされていましたが、笹井氏に小保方氏の実験に関して監督責任があったのでしょうか?その点に関しても笹井氏は説明をしています。

  • 研究不正とみなされた2つの実験データも含め、多くの実験データはすでに図表になっていたため、生データやノートを見る機会はなかった。
  • 自分の大学院生を指導する ときは『ノートを持ってきて見せなさい』と言えるが、小保方研究ユニットリーダーはあくまで独立した研究室のリーダーであり自分の研究室の部下ではないため、実験ノートや生データを見せなさい、とはならなかった。

捏造論文が世に出てしまった経緯に関して。

  • 今回の研究は複数のシニア研究者が複雑に関与した特殊な共同研究のケース。論文を書き上げたのが自分で、前段階である実験を指導したのが若山さんで別の人間であるという例外的な事情。
  • 現実的、過去の実験データにさかのぼって一つ一つの 生データをすべて確認することは難しい。

笹井氏はSTAP現象があることを前提としなければ容易に説明できないデータがあると述べてきましたが、捏造や改竄データが認定された論文の他のデータを正しいと信じろというのは無理なことです。笹井氏はなぜそれでもSTAP現象があると考えているのでしょうか?そのような質問に対しても回答がありました。

  • 配布資料に使った写真では、小保方氏が一人で解析できた実験結果は極力排除してある。
  • 実験の途中から投入することのできない細胞もあるし、撮影した画像などは、1コマ1コマ日付も入っており、これらをいじればすぐにわかってしまう。
  • 科学論理の立て方の問題になってしまうのだが、遺伝子解析をしたときに、STAP細胞が今まで知られている細胞でないことは事実。

博士論文をコピペしていたり、以前の論文でもDNAのゲルの写真を反転して図を捏造した疑いがインターネット上で指摘されていますが、研究者としての資質が問われるような人間を理研のユニットリーダーとして採用した理研の人事における責任は非常に重大です。採用の経緯に関しても説明がありました。

  • 「2012年12月中旬、小保方さんの研究リーダー採用の審査は、他の研究リーダーの選考と同様に人事委員会において、本人の研究プロジェクトの計画と現 在の研究のプレゼンテーションをお聞きし、さらに、委員が詳細な議論を行い、研究の独創性、挑戦性、研究の準備状況を中心に評価しました。これまでの小保 方さんの指導者からの評価も参考にしました。通常の手続きと同様で一切偏りがなかったと考えています。私を始め多くの人事委員は、本人と会い、話をしたの は採用面接が初めてです」
  • (研究者としての小保方氏をどう見るか)「非常に豊かな発想力があると感じています。それは採用時の人事委員会の皆の一致するところであります。ただ、トレーニングが足りなかったところ。未熟と いう言葉を使いたくないのですが、科学者として身につけるべきだったのに身についてなかった部分は、今回の発表後に明らかになりました。データ管理におけ る取り違えを生み出したりするなど、ある種のずさんさがあったと思います。その両極端が一人の人間の中にあるのかなと。シニアの研究者として私が後悔する のは、Natureの論文を2回も出すということはなかなかできることではない。しかし彼女の弱い部分を、もっとしっかりと認識して、背伸びをするだけで なく足下をきちんと固めることができなかったことを、非常につらく思っております」

今回の記者会見は、NATURE論文掲載に至るまでの経緯がようやく詳細に説明されたという点で意義がありました。

捏造論文発表の責任を笹井氏がどの程度負うべきかという点に関しては、さまざまな意見があります。記者会見の中で笹井氏は、自分は論文執筆を頼まれて手伝っただけであり、今回のSTAP細胞の研究発表ではあまり重要な役回りではなかったと言いたげでした。しかし過去の読売新聞の報道が正しければ、

STAP論文、掲載1週間前に最終稿…若山教授———­–読売新聞 3月23日(日)8時49分配信
STAP(スタップ)細胞の論文の主要な著者の一人である若山照彦・山梨大教授(46)は、読売新聞の取材に対し、論文の最終稿が理化学研究所のチームから届いたのは、掲載の約1週間前だったことを明らかにした。…若山教授によると、最終稿が理研発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹・副センター長(52)らから届いたのは、英科学誌「ネイチャー」で掲載が決まってから1か月後の今年1月。すでに大幅な修正ができない時期で、若山教授は自分の研究部分以外はチェックしなかった。論文は1月30日付で同誌に掲載された。

ある時点からは若山氏を蚊帳の外に置いて笹井氏が論文投稿の主導権を握っていたのではないかと推測されます。論文の最終原稿を共同研究者に見せずに投稿し、受理されて世に発表される直前になってからようやく原稿を渡すというのは相手を非常に軽んじる行為だからです。このような行為と記者会見での笹井氏の説明とは矛盾しないのでしょうか?

また会見では、iPS細胞の山中伸弥氏への対抗心があったのではないかと質問されて、完全に否定しました。しかし、多くの報道にあったとおり、

 理研、STAP細胞報道資料の一部撤回 iPS細胞との比較分(日本経済新聞 2014/3/18 19:47 )
… iPS細胞との性能を比較した説明資料で、STAP細胞の作製効率は30%と、iPS細胞の0.1%より優位性があるとしていた。資料はSTAP細胞の論文の共著者である理研の笹井芳樹副センター長を中心に作成した。山中伸弥・京都大教授は2月10日の記者会見で反論。0.1%というiPS細胞の作製効率は2006年当時のもので、現状では20%以上とした。(http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1805T_Y4A310C1000000/

自分の専門分野の最新状況を知らないわけがないにも関わらず、わざわざiPS細胞の古い資料を引き合いに出してSTAP細胞の優位性を強調する行為は、対抗心の表れと言えないのでしょうか?

今回の記者会見の内容は言葉だけ聞けば整合性があるようにも思えますが、言葉と行動が合致しているのかどうかが問題です。

参考

  1. 科学研究面に関する説明資料 理化学研究所 笹井芳樹 (理研ウェブサイトPDFファイル)
  2. 【STAPキーマン 笹井氏会見詳報】(1)山中氏のライバル謝罪「共著者として心痛の極み」(産経ニュース2014.4.16 15:54)
  3. 理研笹井氏「依頼を受け参加」/一問一答(ニッカンスポーツ 2014年4月16日22時23分)
  4. 小保方晴子さんも理研も批判せず 笹井芳樹さんの会見はマスコミの追及を巧みに回避【STAP細胞】(HUFFPOST 2014年04月16日)
  5. 笹井氏STAP説明に、同僚「理解できない」 (読売新聞 2014年04月17日 10時04分):(理研発生・再生科学総合研究センターでの同僚の)研究者の一人は「会見で示されたデータに、ネイチャー論文以上のものはなかった。論文の信頼性が失われている以上、そのデータをもって合理性が高いと言われても正直、理解できない」と指摘。
  6. 【STAP細胞】笹井氏「有力な仮説」強調も新事実なく 争点には「分からない」 (産経ニュース 2014.4.17 10:24):STAP細胞がさまざまな細胞に分化できる重要な証拠となる画像が、小保方氏の博士論文の関連画像から流用された問題については「小保方氏から、真正画像があったが取り違えたと聞いている」と説明。ただ、小保方氏の不服申立書によると、「真正画像」の撮影は平成24年6月で、論文がネイチャー誌に投稿された同年4月より後。この矛盾を指摘されると笹井氏は「私が論文に関与する以前の話なので、どこでどう撮影されたのか分からない」と釈明した。
  7. STAP細胞 笹井氏の記者会見を受けて (HUFFPOST 東京大学医科学研究所 先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門 特任教授 上昌広 投稿日: 2014年04月17日 16時48分):筆者は、この記者会見を聞いて違和感を抱いた。それは、「最後の段階で論文仕上げに協力しただけ」で、「実際に指導したのは若山照彦教授である」との主張を繰り返したからだ。この発言に納得する人は少ないだろう。笹井氏は、理研の再生科学総合研究センターのナンバー2だ。一般企業に例えれば、理研本部はホールディング・カンパニー、再生科学総合研究センター は事業会社に相当する。笹井氏は、一つの事業会社の副社長で、今春に社長昇格が予想されていた実力者である。センターの経営に大きくかかわってきたと考え るのが普通だ。通常、経営者は、経営判断に関して責任を負う。現に、記者会見では、小保方晴子氏のユニット・リーダーへの抜擢人事には関係したと明言している。今回の不祥事について、任命責任を負うのが当たり前だ。ところが、彼の発言からは、そのような気配は感じられなかった。まるで、自分のことを理研のリーダーと思っていないように見えた。
  8. 笹井氏の会見。「自分はギフトオーサーであるから、責任を取るつもりはない」と言っているようにしか聞こえない。これは、研究者社会を成り立たせているルールを、根本から否定しているのではないだろうか?(近藤滋 ‏@turingpattern)
  9. STAP細胞を前提にしないと説明できない?(大隅典子の仙台通信2014年 04月 16日):「STAP現象」ではなくても説明できるのではないか、という私見を記します。
  10. 「共著者としてあり得ない」=理研改革委の岸委員長-笹井氏「ノート見てない」で (時事ドットコム 2014/04/18-16:07):岸委員長は笹井氏について「実験ノートとかを知らなかったというのは、あまり強調すべきことではない」と述べ、重要な発見を世に問う論文の共著者としては不適切との考えを示した。

 

 

2014年4月9日に行われた小保方晴子氏の記者会見に関する補充説明

小保方晴子氏が2014年4月9日にSTAP細胞NATURE論文疑惑に関する記者会見を行いましたが、反響があったポイントなどに関する補足説明が小保方晴子氏の弁護団より公表されました。

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4月9日の記者会見に関する補充説明

 4月9日の記者会見における小保方晴子氏の発言に関して、いろいろな意見が出ていることを鑑みて、補充説明として小保方氏から聞き取りました点をご紹介いたします。

小保方晴子 弁護団

1 STAP細胞の存在について

(1)200回以上成功したと述べた点について 私は、STAP細胞の実験を毎日のように行い、しかも1日に複数回行うこともありました。STAP細胞の作成手順は、①マウスから細胞を取り出して、②いろいろなストレスを与え(酸や物理的刺激など)、③1週間程度培養します。この作業のうち、1と2の作業は、それ自体にそれほどの時間はかからず、毎日のように行って、並行して培養をしていました。培養後に、多能性マーカーが陽性であることを確認して、STAP細胞が作成できたことを確認していました。このようにして作成されたSTAP細胞の幹細胞性については、培養系での分化実験、テラトーマ実験やキメラマウスへの寄与の実験などにより、複数回、再現性を確認しています。 STAP細胞の研究が開始されたのは5年ほど前のことですが、2011年4月には、論文に中心となる方法として記載した酸を用いてSTAP細胞ができることを確認していました。その後、2011年6月から9月頃には、リンパ球のみならず、皮膚や筋肉や肺や脳や脂肪など、いろいろな細胞について、酸性溶液を含む様々なストレス条件を用いてSTAP細胞の作成を試みました。この間だけで100回以上は作成していました。 そして、2011年9月以降は、脾臓由来のリンパ球細胞(CD45+)を酸性溶液で刺激を与えて、STAP細胞を作成する実験を繰り返していました。このSTAP細胞を用いて、遺伝子の解析や分化実験やテラトーマの実験などを行うので、たくさんのSTAP細胞が必要になります。この方法で作ったものだけでも100回以上はSTAP細胞を作成しています。また、今回発表した論文には合わせて80種類以上の図表が掲載されており、それぞれに複数回の予備実験が必要であったことから、STAP細胞は日々培養され解析されていました。このことから、会見の場で200回と述べました。

(2)第三者によって成功している点について 迷惑がかかってはいけないので、私の判断だけで、名前を公表することはできません。 成功した人の存在は、理研も認識しておられるはずです。

2 STAP細胞作製レシピの公表について

STAP 細胞を作る各ステップに細かな技術的な注意事項があるので、一言でコツのようなものを表現することは難しいのですが、再現実験を試みて下さっている方が、 失敗しているステップについて、具体的にポイントをお教えすることについては、私の体調が回復し環境さえ整えば、積極的に協力したいと考えております。状況が許されるならば、他の方がどのステップで問題が生じているかの情報を整理して、現在発表されているプロトコールに具体的なポイントを順次加筆していくことにも積極的に取り組んでいきたいと考えております。 また、現在開発中の効率の良いSTAP細胞作製の酸処理溶液のレシピや実験手順につきましては、所属機関の知的財産であることや特許等の事情もあり、現時点では私個人からすべてを公表できないことをご理解いただきたく存じます。 今の私の置かれている立場では難しい状況ですが、状況が許されるならば実験を早く再開して、言葉では伝えにくいコツ等がわかりやすいように、映像や画像等を盛り込んだプロトコールとして出来るだけ近い将来に公開していくことに努力していきたいと考えております。

3 4月12日朝刊での新聞記事について

同日、一部新聞の朝刊において「STAP論文新疑惑」と題する記事が掲載されましたが、事実確認を怠った誤った記事であり、大きな誤解を招くものであって、許容できるものではありません。この説明は同日中に代理人を通じて同新聞社にお伝えしています。 (1)メスのSTAP幹細胞が作成されており、現在、理研に保存されております。したがって、オスの幹細胞しかないというのは、事実と異なります。 (2)STAP幹細胞は、少なくとも10株は現存しています。それらはすでに理研に提出しており、理研で保管されています。そのうち、若山先生がオスかメスかを確かめたのは8株だけです。それらは、すべてオスでした。若山先生が調べなかったSTAP幹細胞について、第三者機関に解析を依頼し染色体を調べたところ、そこにはメスのSTAP幹細胞の株も含まれていました。記事に書かれている実験は、このメスのSTAP幹細胞を使って行われたものです。

4 STAP幹細胞のマウス系統の記事について

2013年3月までは、私は、神戸理研の若山研究室に所属していました。ですから、マウスの受け渡しというのも、隔地者間でやりとりをしたのではなく、一つの研究室内での話です。この点、誤解のないようお願いします。 STAP幹細胞は、STAP細胞を長期培養した後に得られるものです。 長期培養を行ったのも保存を行ったのも若山先生ですので、その間に何が起こったのかは、私にはわかりません。現在あるSTAP幹細胞は、すべて若山先生が樹立されたものです。若山先生のご理解と異なる結果を得たことの原因が、どうしてか、私の作為的な行為によるもののように報道されていることは残念でなりません。

追記

4月9日の会見は「不服申し立て」に関する記者会見であり、準備期間も不十分で、しかも公開で時間も限られた場であったことから、STAP細胞の存在や科学的な意義についての説明を十分にすることができませんでした。しかしこのような事情をご理解頂けず、説明がなかったとして批判をされる方がおられることを悲しく思っております。理 研や調査委員会のご指示や進行具合にもよりますし、私の体調の問題もあるので、確かなお約束はできませんが、真摯な姿勢で詳しく聞いて理解してくださる方 がいらっしゃるなら、体調が戻り次第、できるだけ具体的なサンプルや写真などを提示しながらの科学的な説明や質問にじっくりお答えする機会があれば、あり がたく存じます。(会見形式では到底無理ですので、たぶん数名限定での説明になると思いますが・・・。)

以上

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若山氏との間で行なわれたサンプルのやり取りで129系統マウスがなぜかB6系統やF1系統に化けていた件に関しては、全て若山氏側の問題だと主張するものであり、対決姿勢が鮮明になりました。若山氏と小保方氏各々が当時の実験ノートを持ち寄って照合すれば、どちらサイドで何が起きたのか明らかになることでしょう。

小保方氏はSTAP細胞を200回以上作製したそうですが、そのような実験結果を本当に得ていたという主張を研究者に認めさせたければ、実験ノート、サンプルなどの物的証拠を示すべきであって、言葉で何を言ってもサイエンスの世界では通用しません。研究者世界の常識として、実験ノートにその200回分のSTAP細胞作製記録がなければならないのです。

この補充説明の文書で、「現在開発中の効率の良い」STAP細胞作製の酸処理溶液のレシピや実験手順は公表できないという不思議な表現が唐突に出てきました。もちろん、「現在開発中の効率の良いSTAP細胞作製方法」を今公表する必要はありません。しかし、小保方氏は「NATURE論文で用いたSTAP細胞作製方法」の 具体的なコツを(本当に実験結果を得ていたのなら)直ちに公表し、これ以上世界中の研究室で無駄な研究費や労力が使われないようにすべきです。

行動を伴わない言葉は全く無意味です。論文発表した以上、他の研究者が再現でき るように尽力するのは論文著者の義務であって、それが研究者社会のルールです。研究者としてのルールを守らない人間は、研究者の世界に存在すべきではありません。

データ捏造、データ改竄としか考えられない、あり得ない「ミス」を犯してしまって己の未熟さを反省していますという言葉が出てくる一方で、このような生物学を愚弄するかのような言動がダラダラと続いていることは、研究者には許容し難いことです。

実験ノートをきちんとつけること、発表に際して実験データを改変しないことなどは研究者の常識であり研究者に当然備わっているはずの倫理観です。研究能力以前の問題です。それらを全く持たない人をユニットリーダーに登用した理化学研究所の責任は重大です。

理研調査委員会は2014年4月1日の記者会見で小保方晴子氏のデータ捏造、改竄を認定しましたが、それはこの捏造論文事件の一部に過ぎず、なぜこのような事件が生じたのかその全体像を示すような説明が全く理研側からなされていません。

参考

  1. 小保方氏が発表の文書 全文(NHK NEWS WEB 4月14日 13時20分)
  2. 4月9日の記者会見に関する補充説明(毎日新聞ウェブサイト http://www.mainichi.co.jp/pdf/20140414science.pdf)
  3. 小保方氏、会見の「補充説明」弁護士通じ発表 STAP細胞作製の第三者を「理研も認識」(J-CASTニュース 2014/4/14 16:03):これに対し、理研側は同日、「細胞の多能性マーカーが陽性になる段階までは確認した研究者がいることは認識している。しかし、これはSTAP細胞があったかどうかを結論付けるものではなく、STAP細胞があると言えるものではない」とコメントした。