「 研究の進め方 」 一覧

なぜあなたは論文が書けないのか? 書けない理由を取り除くための40の問いかけ

amazon.co.jp なぜあなたの研究は進まないのか? なぜあなたは論文が書けないのか? なぜあなたの発表は伝わらないのか?   実験を頑張って良い結果を得ることと、それらのデータに基づいて論文原稿をまとめることは、頭や体の使い方がまったく異なる別の作業です。事実、実験は楽しくてそれだけで満足感が得られるが、その後、論文を書くのは苦痛という大学院生やポスドク研究者は相当数います。さらに、論文原稿を書き上げてから、実際にどこかの学術誌にアクセプトされるまでがまた遠い道のりです。 Work, Finish, Publish. (Michael Faraday) 「はたらき、まとめ、出版せよ」(科学者として成功した秘訣をたずねられたときのマイケル・ファラデーの答え) (参考:学術論文作成の基本 2012エルゼビア ランチョンセミナー PDF) 論文掲載に至る途上には、研究者の気持ちをくじく障壁はたくさんあるわけですが、それを全てクリアしてめでたく論文アクセプトに持っていく底力が、研究者には要求されます。この力は論文を実際に出すことによってしか身につきません。ただし、その際、見通しが良くなるような指針があるとその苦労は軽減されます。   「なぜあなたは論文が書けないのか?」という、多くの研究者をギクッとさせるタイトルの本があります(メディカルレビュー社 2016年)。自分が責められているような気分になる人がいるかもしれませんが、ご安心を。副題は、「理由がわかれば見えてくる,論文を書ききるための処方箋」となっており、論文を書くという行動に心のブレーキをかけている研究者の心強い味方となる本です。 本書のプロローグのQ3では、まず、論文が書けない人、出せない人のパターンを4つに分けて分析しています。あなたの今の状況も、以下の4つの症状のどれかに当てはまるのではないでしょうか? 症状1:論文を書こうとパソコンに向かいはするが、どうも効率が悪い。いつまでたっても仕上がらない。 症状2:論文を書きたい、あるいは書かなければならないとは思っている。しかしどこから手をつけたらいいのかわからず、堂々巡りを繰り返している気がする。 症状3:論文を書いていはいるが、クオリティが低い気がする。それぞれのパートをどのように仕上げていったらいいかわからず、しっくりこない。 症状4:論文を一度は書き上げたもののpublicationに結びついていない。どこかの段階で止まってしまっている。 (Q3 論文作成のどこが律速段階になっているか─論文欠乏症の具体的症状を考えてみたか? より) 本書では、各々の症状に対する処方箋が章仕立てになっているので、解決策がすぐに見つかります。   IMRAD(Introduction, Methods, Results And Discussion)の解説本は多数ありますが、本当に論文をアクセプトにまで持っていくための心の持ち方、時間の遣い方や生活態度、論文の各セクションの書き方のポイントをここまで実践的に教えてくれる本は、他に例がありません。論文を書くときに一番悩ましいのがディスカッションのセクションだと思いますが、これに関しても、その必要性、目的、盛り込むべき内容、典型的な書き方のパターンなど、具体的かつ実際的な解説があります。 また、せっかく論文の原稿を書き上げたのにボスが読んでくれずに放置されているという悩みを大学院生やポスドクがしばしば口にします。この問題はQ38で取り上げられており、問題点の分析および対処法が述べられています。   論文を書かなきゃいけないのに億劫がっている人には、本書の目次だけでもかなり参考になるので、以下、目次を紹介します。 プロローグ Q1 何のためにあなたは論文を書くのか,明確な答えがあるか? Q2 論文を書くことはあなたの人生にとって無駄ではないと言い切れるか? Q3 論文作成のどこが律速段階になっているか─論文欠乏症の具体的症状を考えてみたか? CHAPTER …

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中学理科の教科書が教える仮説駆動型研究

  2017/07/25    研究の進め方

研究目的が曖昧なまま実験を続ける大学院生、仮説をもたずに研究している研究者、実験結果を得ていないのにグラフを作成してしまうトンデモナイ人、考察が書けずに悩む人、次の研究テーマが思い浮かばない人など、研究の現場にはさまざまな悩みや問題を抱えた人たちがいます。いまいちど、中学校の理科の教科書に立ち戻って、研究の進め方に関する基本事項を再確認してみるというのはいかがでしょう? 以下、中学校1年生の理科の教科書(教育出版)の最初の数ページから、一部を抜粋して引用・紹介します。 理科学習の進め方 進め方1 疑問を持つ はじめに、不思議に思ったことや疑問に思ったこと、知りたいことなどをはっきりさせておきましょう。 進め方2 課題を設定する 知りたいことや調べたいことがはっきりしたら、これから取り組む課題を設定しましょう。 進め方3 仮説をもち、計画をたてる 課題がきまったら、自分はその課題に対してどのような考えかたをもっているか、どのようにしたら自分の考えが正しいかどうかわかるのかを話し合いましょう。 自分の考えは仮説としてノートに書いておき、調べたあとで振り返ることができるようにしておきましょう。 進め方4 観察や実験を行い、結果を得る 自分で立てた計画に沿って、実際に観察や実験を行い、得られた結果は、あとで考察しやすいように表などにまとめましょう。また、結果をグラフに表すと、知りたいことがわかりやすくなる場合があります。 進め方5 得られた結果をもとに考察する 観察や実験が終わったら、得られた結果からどのようなことがわかるか、そして、自分の立てた仮説は正しいといえるか、考察し、自分の考えを発表しあいましょう。 進め方6 新たな疑問から、さらなる課題へ みんなの考えがまとまり、設定した課題が解決したら、観察や実験を行ってわかったことが、次にどのように役に立つのか考えましょう。また、調べてみて、新たな疑問が生じたら、次の課題を設定して、さらに調べていきましょう。 (中学校理科1 教育出版 文部科学省検定済教科書 中学校理科用 17教出 理科731 平成28年度 2~6ページ) 日本の中等教育の教科書は科学的な態度を育むように書かれています。高校の教科書にも、研究の進め方が解説されています。以下、啓林館の「生物基礎」から一部を抜粋して紹介。 ●私たちの探求活動● 仮説を立てずに観察・実験する方法もありますが、ここでは仮説を設定する方法で考えます。 <課題の発見> 最初は自然現象をよく観察することです。疑問を生み出す方法を紹介します。まず比較という方法があります。.. 5W1Hを活用する方法もあります。「何が(Who)」「何を(What)」「いつ(When)」「どこで(Where)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」のパターンで疑問をつくってみます。 .. この課題でやろうと思ったら、同じテーマですでに研究されているかどうかを調べてみます。 <仮説の設定> 仮説を設定します。考えつく限りの仮説をあげていましょう。仮説が立ったら、その仮説は、どのような観察や実験を行えば証明できるのかを考えて実験・観察を計画します。実験・観察から得られる結果から、立てた仮説が論理的に導かれるように計画する必要があります。 <観察・実験> 観察・実験で大切なことは「再現性」です。 .. 因果関係を調べるときには「対照実験」の設定も必要です。対照実験とは、比較のために対象とする条件以外を同じにして行う実験のことです。 .. <結果の記録と処理> 結果の記録は正確に行うように心がけます。 .. <考察> 実験などの結果かが仮説の正しさを証明したかを考察します。結果が仮説と矛盾しないかを考えます。ひとつの仮説を検証すると、そこから新しい疑問や課題が生じてくるものです。また明らかになった知見が、これまでに知られていることとどう関係するかも考える必要があります。 .. <報告書の作成と発表> 研究したことは報告にまとめて、発表するようにしましょう。 .. …

沼研の伝説的なエピソード (沼正作1929-92)

  2016/04/22    研究の進め方

沼正作博士は、神経伝達物質の受容体やイオンチャネル等の一次構造を次々と決定していき、脳内で働くさまざまな神経機能素子の分子的実体や構造機能相関を明らかにすることにおいて多大な貢献をした科学者です。あの怒涛の業績を産み出した沼研では、どのように研究が進められていたのでしょうか?当時、京都大学医化学教室(医化学第二講座) 沼 研究室で活躍された研究者の方々が語るエピソードには、非常に興味深いものがあります。   研究に対する厳しさ 大学院に入って数日後に 「君,もう大学院をやめなさ い」 と言われました。当時私の研究していた酵素は室温で数秒で失活する酵素で,私が不安定を言い訳の材料にしたことに沼先生は激怒しました。  (医 化 学 教 室 と 私) フラコレが夜中にとまって活性画分を失ったとき: 「何でや。」 「フラコレがとまっておりました。」 「君なんでみとらんのや。フラコレなんて故障するにきまっとる。夜中じゅう起きてチェックするのが当然で私はいつもそうしてますよ。」 (医 化 学 教 室 と 私) 「コンピューターに間違いはつきもの。ヌクレオチドシークエンスをアミノ酸に読み替えるのは,目で全部チェックしないとコンピューター間違えますからね。今までずっとそうしてきましたから。そのおかげで,これまでの論文1つも間違いがありませんわ。」 (医 化 学 教 室 と 私) 沼 先生が風邪を引いたヒトに向かってよく言っていたことですが, 「緊張感が足りないと風邪を引きます。緊張感を保って ACTH を分泌するようにしておけば風邪は引きませんよ。従って私は風邪を引いたことがない。」 …

自分が研究に向いているかどうかを知る23の質問 ~プロの研究者になるために必要な素養とは?進路に迷っている人のためのチェックリスト~

  2016/04/18    研究の進め方

  なぜあなたの研究は進まないのか? なぜあなたは論文が書けないのか? 考える力、やり抜く力 私の方法   高校や大学時代の学業成績の良し悪しと、研究者としての向き不向きとはあまり関係がありません。なぜなら、学校のテストでは、必ず正解がある問題が他人から与えられ、数十分間のうちに自分の頭だけを使ってそれを解いて解答用紙に書き記すことができるかどうかが試されるのに対して、研究においては、正解があるかどうかすらわからない問題を自分で考えついて、数か月から数年間にもわたる他の研究者と協同した取り組みによりそれを明らかにし、さらに論文として発表する能力が求められるからです。両者では、頭の使い方が全く違うため、学校の勉強ができた人が研究もできるとは限らないのです。もちろん、ある程度の基礎学力があることは前提となります。専門分野の知識に加えて、論文を書くための英語運用能力も必要です。 大学院博士課程進学などの進路を決めるにあたって、自分は研究者になれるだろうか?研究者に向いているだろうか?と悩む人は多いと思います。 プロの研究者になるために絶対に必要な素養とは、何でしょうか?どういう人が研究者として生き残るのでしょうか? 進路を迷っている人向けに、参考になりそうなアドバイスをまとめました(ここで想定しているのは、数学や理論物理ではなく実験科学です)。 と、その前に。 今の日本では、研究に向いている人でも研究者として生き残れる人はごくわずかしかいないという現実を直視したほうがよいので、お勧めの関連記事をまず紹介しておきます。 若者は現状を見切り無謀な挑戦の回避を アカデミア研究者雇用状況の過酷な現実 任期が切れた助教はどこへ行くのか? 職を獲れる研究者になるための20のポイント アカデミックポジションの倍率 大学院やポスドク先の研究室の選び方 さて、それでは本題へ。 長くなるので、はじめに一覧(目次)を示しておきます。 1.運がいいか 2.褒められるのが嬉しいからという理由で道を選ぼうとしてはいないか? 3.大学までの勉強と、大学院における研究との違いを理解できているか? 4.良いメンター(師匠)を見つけられるか? 5.人一倍強い好奇心があるか? 6.自分の頭を使ってものを考えているか? 7.コミュニケーションの大切さを理解しているか? 人と関わることの重要性を認識し、実践できるか? 8.競争に勝つマインド(心構え)があるか? 9.頑張ってしまわないか? 10.研究に没入し、解決すべき問題に集中し続けることができるか? 11.職業選択に迷いはないか? 12.正念場で頑張れるだけの体力、気力、忍耐力、意志の強さはあるか? 13.素直さがあるか? 14.野心はあるか? 15.緻密な論理的思考能力があるか? 16.楽天的か? 17.孤独に耐えて、自分の価値を信じ切れるか? 18.人間力があるか? 19.一生スキルアップが必要と心得ているか? 20. …

研究テーマの選び方 21のポイント

  2016/04/10    研究の進め方

いざ大学院生として研究室に配属されたり、ポスドクとして新しいラボで働き始めたときの最初の悩みは、研究テーマとして何を選ぶかということです。フェローシップをとるために半年前に書いた研究計画があったとしても、実際にラボに来てみるとラボの状況やボスの考えが変わっていて、研究テーマを一から考え直すことになるのは珍しくありません。 大学院生活が5年経過したとき、手元にあるものが「複数の、脈絡ない研究課題の、小さな成果の寄せ集め」 https://t.co/pVETi1pf3R という人は多いと思います。研究テーマ選び、研究の進め方を指導しない教授も多いです(いわゆる放置)。研究テーマの選び方 18のポイント https://t.co/PO9ultkzSO — 日本の科学と技術 (@scitechjp) 2018年1月20日   それでは、どのような点に注意して研究テーマを決めればよいのでしょうか?自分が興味を持てるトピックを選ぶことや、与えられた年数で答えが出る(=論文が出せる)程度の大きさのクエスチョンを設定するといったことは当然のことですが、他にもいろいろ考えるべきポイントがあります。 ポイント21個一覧 1.研究テーマはボスから与えられるもの? [責任の所在] 2.研究テーマ選びの落とし穴 [研究の意義] 3.研究テーマ選びの落とし穴  [手段と目的] 4.ホームランだけを狙いに行かないこと [リスク管理] 5.研究テーマ選びに際して論文を数多く読み、よく考えることの重要性 [研究動向の把握] 6.論文を読んでわかった気にならないこと、批判的に論文を読むこと [批判的精神] 7.論文を出発点にするのでなく自分が観察した現象から出発すること [独創性] 8.再現実験・追試から入ること [巨人の肩に乗る] 9.夢中になれる研究テーマを選ぶこと [研究にのめり込めるか?] 10.タイムリーであること 11.研究テーマ選びでボスと意見が合わないとき 12.研究テーマ選びでラボ内のほかのメンバーと競合したとき 13.そのラボのアドバンテージを研究テーマに反映させること 14.ラボの中心的テーマをやるか、主流から外れたテーマを選ぶか 15.ラボの体制と研究テーマ選び 16.前任者の実験結果が追試できないとき 17.誰もやりたがらない研究テーマしか残っていないとき 18.裏実験・裏テーマの勧め [独立心の涵養] 19.絶対に失敗しないテーマ 20.それで職が獲れるのか? 21.できることでなく、知りたいことをやる それでは、順番に見ていきましょう!   1.研究テーマはボスから与えられるもの? [責任の所在] そもそも、研究テーマは誰が決めるべきものなのでしょうか?やってほしいテーマをボスが提示することも、学生やポスドクの自主性に任せられることも、どちらのケースもあります。その中間として、漠然とした方向性や大きな枠組みだけが与えられる場合も多いでしょう。教授の教育ポリシーや、研究助成を受けている課題、ラボ全体の研究の進展状況なども関係するので、ボスとよく話し合うことが大切です。また、ボスが与えてくれた研究テーマが当たる保証は全くありません。むしろうまくいかないことのほうが多いでしょう。そのときにどうやって研究の軌道修正をするかは、研究している本人の力量にかかっています。 誰かの助力が欲しければ、その人のところに行きなさい。その人からあなたのところに来てくれることは決してない。(Stephen …

論文出版に向けての、ボスとの協同作業

  2015/05/05    研究の進め方

大学院に進学した学生や新しいポスドクが、新しいラボでしばらくの間研究テーマを模索し、やがて面白そうでしかも自分にできそうなことを見つけて研究を始める。ボスもそれを認めて、やりたいようにやらせる。数年後、ラッキーなことにそれなりに実験データが溜まってきて、論文を書き始める。しかし、いざ書くとなると、なかなか筆が思うように進まない。それはなぜかというと、せっかく得られた実験結果から導き出せる結論があまりにも弱いから。こうなってしまうと、良い論文を出すことは困難です。 研究プロジェクトを一度始めてしまうと、研究分野にもよりますが数ヶ月、あるいは数年間、その研究を続けることになります。その努力が良い論文として結実しないことには、本人の研究者としてのキャリアが危ぶまれますし、ラボも停滞します。最終的なアウトプットの段階でこのような後悔をしないためには、どうすればいいのでしょうか? 良い科学研究論文を能率よくラボから出すための指針を、ハーバード大学の化学者、ホワイトサイズ教授が短いエッセイにまとめています。この文章はかなり有名で、既にいろいろなところで紹介されています。 これを書いたジョージ・ホワイトサイズ教授は、これまで950本以上の論文を書いており、1981年から1997年の間でもっともよく引用された 1,000人の科学者のうち、5位にランキングされている人であり、さらに2011年12月の時点で、現存する科学者の中で一番h指標が高い研究者なので す。ハーバード大学でMITを取り、同大学で教授になって、300人を超える学生と学者を指導してきました。(http://www.editage.jp/insights/a-3-page-guide-to-scientific-writing) 以下のサイトでは、日本語訳も紹介されています。 今回紹介する文献“Whitesides’ Group: Writing a Paper”では、世界一線級の化学者であるGeorge M. Whitesides教授が自ら、優れた論文執筆法を解説しています。具体的には『アウトライン法』――すなわち、始めに論文の枠組み(アウトライン)を作り、研究データの蓄積と同時並行して何度も修正を加えてゆく、実験データはその時々で補完、図表重視のアピールを心がけ、テキストを書くのは一番最後、という論文作成法――の提唱を通じ、研究のプロダクティビティ・時間効率の向上に効果的たる仕事術にも触れています。(http://www.chem-station.com/blog/2009/12/whitesides_group_writing_a_pa.html) もともとAdvanced Materialsという学術誌に2004年に掲載されたものですが、このジャーナルのアクセスランキングでいまでも上位に入るほどの人気エッセイです。 英語の原文はこちら:Whitesides’ Group: Writing a Paper, Whitesides, G.M., Advanced Materials, 2004, 16, 1375-1377. (ラボのウェブサイト上のPDFリンク)。 ホワイトサイズ教授が論文執筆について語るインタビュー動画 Publishing Your Research 101 – Episode 1: How to Write a …