Category Archives: 研究費の不正使用

ランチョンセミナー出席で学会出張の日当が減額される理由

多くのの学会では昼食時にスポンサー企業が主催するランチョンセミナーがあります。その企業の測定機器や試薬などをよく利用しているどこかの大学の先生が講演し、聴衆は企業から提供されたお弁当を頬張りながら聞くことになるわけですが、学会出張を終えてラボに戻ると、ランチョンセミナーに出席したかどうかを事務に報告しなければなりません。なぜなら、学会出張中の日当の金額が、ランチョンセミナーに出席したかどうかで変わってくるからです。ランチョンセミナーでお昼代が浮くわけではなくて、その分は日当から減額されることになります。これに関しては、大学や研究機関によってはあまり徹底されていないところもあるようで、研究者の間に不公平感がたまっているかもしれません。

 

日当の意味とは?

日当を学会参加の労務に対する報酬と理解している研究者も多いと思いますが、旅費の意味を正しく理解しておく必要があります。


 

旅費の中に含まれる「日当」(にっとう)は、社会常識としての日当とは全く意味が異なり「昼食代」のことです。旅費法上の「日当」を正確に表現すれば「昼食代等」です。研究費を使用するときに、この日当を正確に理解していないと、真面目に研究していても思わぬところで「研究費の不正使用」を疑われてしまいます。(旅費法上の日当は昼食代、学会参加費に昼食代が含まれるなら減額調整 誰も教えてくれない官公庁会計実務

 

学会のランチョンセミナー等への出席の報告の義務

2.確認事項(用務内容が「学会等参加」と「招聘」のとき) (□へのチェック)
①参加費の立替払請求を経費を問わず □する □しない □含まない → ※協賛企業等負担
②ランチョンセミナー等で食事の提供があったとき、参加費に食事代が □含まれる(   回)
会議費で食事の提供を □する □しない → ※飲み物だけの提供は「しない」にチェック (出張報告書 東京医科歯科大学


 

日当の減額調整

Q27:国際会議等の参加登録費には、以下のものが含まれている場合、どのようにすればよいでしょうか?
① モーニングセミナー等
② ランチョンセミナー等
③ イブニングセミナー等
④ ウェルカムレセプション等
A :参加登録費の内訳が公式に確認できる場合(主催者のパンフレット等に内訳が明記されている場合など)は記載された①~④の金額を差引き、確認ができない場合は、回数に応じて日当の半額を差し引きます。ただし、不参加の場合には差引くことはありません。(秋田大学

学会の公式行事として食事パーティが組み込まれていることはよくあります。学会参加費に食事代が含まれていると明言されていればわかりやすいのですが、通常、学会期間中に行われるランチョンセミナーは企業の宣伝の場に過ぎず、学会参加費とは無関係です。しかし、そのような、学会参加費に含まれていないランチョンセミナーのランチ代も日当の減額の対象になるのでしょうか?実際のところなるようです。このあたりの規則の運用に関しては、ネット上で自分が探した限り明文化されたものが見つかりませんでした。

安い給与で働いている研究者には、このような日当の減額はかなり懐が痛いと思います。ランチョンに関する取扱いは大学や研究機関によって若干の差があるのかもしれませんし、研究者間でも意識の差が大きい事柄かもしれません。

 

ランチョンセミナー出席の報告義務に関する厳格さの差

ランチョンセミナーに参加していなくてもそのようなセミナーが開催されているだけで自動的に日当が減額されてしまう極端な研究機関もあるようです。

 

ランチョンセミナー参加の有無の確認が生み出すラボ内の緊張

教授、研究者、教授秘書の間で、規則を遵守する意識に差がみられる場合があります。


 

 

日当が減額されることに対するモヤモヤ、不満、怒り


 

 

日当の減額がもたらす、ランチョンセミナー出席意欲の低下


 

 

ランチョンセミナー出席で日当を減額することの合理性に関する議論


 


 

 

 

 

 

研究費2億2000万円を阪大教授が不正経理

2017年10月25日追記

結局、大阪大学を解雇された教授は、不起訴処分になりました。

大阪大大学院情報科学研究科の元教授(54)=懲戒解雇=らが研究費を不正使用したとされる問題で、元教授が大阪府警に背任容疑で書類送検され、大阪地検が不起訴処分としたことが24日、分かった。処分は同日付で、地検は理由を明らかにしていない。
(背任容疑の阪大元教授不起訴=偽装取引で研究費不正-大阪地検 時事ドットコムニュース 2017/10/24-19:37)

 

2016年2月12日追記

大阪大学は2016年2月12日、大学院情報科学研究科の教授を懲戒解雇しました。

2015年12月28日追記

大阪大学が不正調査結果の資料(2015年12月25日付け)を、2015年12月28日に大学ウェブサイト上で公表しました(2016年2月20日の時点で既にリンク切れになっていることを確認)

大阪大学における公的研究費の不正使用について (大阪大学 2015年12月28日)
大阪大学の研究者等における公的研究費の不正使用の概要について (PDF)
大阪大学における公的研究費の不正使用に係る調査結果 (PDF)

私的流用とみなされた会社設立費用66万円及びこの会社の設立目的に関してですが、この報告書によれば、

 A教授は、A研究室等に在職しているような雇用期限のある研究補助員等に安定した雇用の場を確保するなどの目的で会社設立を考え、A教授の提案により、平成24年12月に設立したZ設立会社の代表取締役であり、A教授の研究プロジェクトの関係者が、A教授と共謀して、A研究室内で作成した実験材料(リボソーム(高純度品))をZ設立会社において作成したものと偽装して、W社に販売し、それをA研究室がW社から購入するという手法により、A教授及び同関係者が拠出していたZ設立会社の設立に必要な経費等を捻出するために大学から不正に公的研究費を支出させたことが認められる。
 また、同実験材料の作成にあたって、A研究室にあった材料及び設備を使用していること、購入手続きが平成25年1月に2回、その額は661,500円であることが確認できた。(http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2015/12/files/1228b 2016年2月20日の時点でリンク切れになっていることを確認)

と説明されています。

この資料によると預け金の未使用分の金額が170,355,116円であり、この1億7千万円がどう使われるはずだったのかが疑問として残ります。今回の不正を通報した人は、設立会社にこのお金が流れたのではないかという疑いを持っていたそうですが。報告書では、

【預け金の移し替えの疑い】③通報者から情報提供のあった、預け金の残額を設立会社に移し替えられたのではとの疑いについては、A教授、設立会社及び預け金のあった取引業者3社の証言及び証憑書類等により、預け金の移し替えの事実がないことを確認した。(http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2015/12/files/1228b)

と否定しています。

この報告書には各財源の総額がそもそもどれくらいだったのかすら記載されておらず全体像が見えません。預け金(架空請求)は平成16年度をもって止めていたということですが、1億7千万円もの大金の出所は何なのでしょうか?

…平成16年度以前の大学等支払い期間側の支払い関係書類は既に保存期限が到来したため廃棄されており、… 書類保存期限超過のため詳細は不明であるが、取引業者3社に残されている170,355,116円の預け金を確認した。(http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2015/12/files/1228b)

 

 

初回投稿記事ここから * * * * * * * * * * * *

 

四方哲也 大阪大学大学院情報科学研究科教授が研究費の不正な経理処理を行っていたことが明らかになりました。不正に処理されていた金額は、JSTでの研究費と阪大での研究費を合わせると少なくとも2億2000万円に上るそうです(参考:時事通信社)。

大阪大学によりますと、不正な経理処理を行っていたのは大阪大学大学院情報科学研究科の四方哲也教授(52)ら3人です。不正に関する情報が寄せられたことから、大学が調査委員会を設けて調査した結果、四方­教授らは、10年以上前から架空の取り引きで複数の業者から物品を購入したように装う­などして支払われた研究費を、業者に預ける「預け金」と呼ばれる不正な経理処理を行っ­ていたということです。業者に保管されていた金額は合わせて1億7000万円余りに上­るということです。また、66万円の研究費の私的流用もあったということで、大学は、­関係者の処分や刑事告訴を検討することにしています。(大阪大学 教授など3人が不正経理処理 処分を検討 NHKニュース https://www.youtube.com/watch?v=uJ2QgKWEk1g)

大阪大学大学院教授 1億5000万円余の不正経理か
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多くの報道では私的流用もあったとしていますが、本人は否定しています。

四方教授は大学側の調査に「預け金を作る指示をしたことはない。66万円は会社設立のためで私的流用ではない」と説明したという。時事ドットコム 2015/12/25-23:45

総額のうち66万円は、学内で作製した実験材料を教授が設立に関わった企業が製造したと偽り、最終的に大学が購入する形にして代金を支払っていた。大学は、このケースは私的流用にあたると判断している。(阪大不正経理2.2億円 教授や名誉教授ら3人 読売新聞 YOMIURI ONLINE2015年12月26日)

また実験材料の偽装取引に用いた会社の設立費用約66万円は私的流用と認定し、詐欺罪で大阪府警への告訴を検討している。研究費2億7400万円、阪大院教授ら3人が不正経理 産経ニュース 2015.12.26 08:51

大阪大学教員基本情報によれば、この教授は長期にわたってJSTの研究員・研究リーダーも務めていました。

1997年10月~2000年09月 科学技術振興事業団さきがけ21研究員
2000年10月~2003年09月 科学技術振興事業団さきがけ21研究員
2004年11月~2010年03月 科学技術振興機構・ERATO 金子複雑系生命プロジェクト・グループリーダー
2009年10月 ~       科学技術振興機構・ERATO 動的微小反応場プロジェクト・統括

科学技術振興機構(JST)の研究費に関する不正については、調査結果が科学技術振興機構(JST)のウェブサイトで公開されています。

(2)不正使用と認定した事業名および不正使用額
①     事業名     戦略的創造研究推進事業(総括実施型研究)
研究実施期間     平成16年度~21年度
不正使用額     85,246,405円
不正認定期間     平成16年度~20年度
②     事業名     戦略的創造研究推進事業(個人型研究)
研究実施期間     平成14年度~17年度
不正使用額     7,918,550円
不正認定期間     平成16年度~17年度

(3)不正使用の内容
上記事業の直執行研究費に関して、平成16年度~20年度までの期間に、取引先企業3社で合計93,164,955円の預け金および品名替があったことが判明した。
なお、私的流用は確認されなかった。

①当事者
四方 哲也 大阪大学 大学院情報科学研究科 教授(元JSTプロジェクトグループリーダー)(以下、A元グループリーダーという)
B 元JSTプロジェクトスタッフ

②関与した取引先企業
a.W社
1)    期間    :平成16年度~20年度
2)    不正使用額    :71,904,875円
3)    種別    :預け金および品名替
4)    内容    :消耗品の架空請求および伝票記載と異なる消耗品などの納入
b.X社
1)    期間    :平成16年度
2)    不正使用額    :11,321,620円
3)    種別    :預け金
4)    内容    :消耗品の架空請求
c.Y社
1)    期間    :平成16年度
2)    不正使用額    :9,938,460円
3)    種別    :預け金
4)    内容    :消耗品の架空請求
(平成27年12月25日 科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業に係る研究費の不正使用調査結果について 別紙1)

税金が原資である公的研究費が2億円以上も不正に利用されていたというのであれば、納税者である国民に対して大阪大学が事の顛末を直接説明すべきです。本来であれば大阪大学は不正調査結果の詳細をウェブサイト上で速やかに公表すべきであるにもかかわらず、該当教授が所属する大阪大学大学院情報科学研究科」のウェブサイトをシャットダウンするという真逆の対応をしています。(追記:2016年1月5日に情報科学研究科のウェブページにアクセス可能になっていましたが依然として「教員一覧」のリンクがつながっていません)。

(追記) 大阪大学は2015年12月28日になってようやく調査結果(12月25日付け資料)をウェブサイトで公表しました。

20151228OsakaDaigaku

 

参考

  1. 华东师范大学 计算机科学与软件工程学院 四方哲也
  2. 大阪大学における公的研究費の不正使用に係る懲戒処分について(大阪大学 2016年2月12日)
  3. 阪大教授を懲戒解雇 (毎日新聞2016年2月12日):”大阪大教授ら3人が総額2億7500万円の研究費を不正に経理処理していた問題で、阪大は12日、大学院情報科学研究科の四方(よも)哲也教授(52)を懲戒解雇した。…”
  4. 大阪大学における公的研究費の不正使用について (大阪大学 2015年12月28日) 大阪大学の研究者等における公的研究費の不正使用の概要について 大阪大学における公的研究費の不正使用に係る調査結果(2016年2月20日の時点で既にリンク切れになっていることを確認)
  5. 戦略的創造研究推進事業に係る研究費の不正使用調査結果について (科学技術振興機構(JST)平成27年12月25日 科学技術振興機構報 第1160号):別紙1 不正使用調査結果詳細
  6. 繰り返される研究費不正~単年度主義のせい?(ヤフーニュース 榎木英介 2015年12月26日 12時3分):”「預け金」とは何か “取引のある卸の業者などに頼んで、様々な物品を購入したことにして予算を使い切ったことにしておく。しかし実際には使っていないから、年度をまたいでも研究費が残るという仕組みである。”
  7. 阪大不正経理 最大2.7億円 教授ら3人関与 (毎日新聞2015年12月26日 00時38分):”大阪大大学院教授が研究費を不正に経理処理していた問題で、不正処理の総額が最大で約2億7500万円に上る可能性があることが分かった。25日、阪大が記者会見して明らかにした。関わったのは大学院情報科学研究科の四方(よも)哲也教授(52)ら3人。うち66万円は四方教授が私的に流用した疑いがあり、懲戒処分や詐欺容疑での刑事告訴を検討している。ほかの2人は、7年前に退職した大学院工学研究科の卜部格(うらべいたる)元教授(70)と50代の男性元助手。 “
  8. 阪大不正経理2.2億円 教授や名誉教授ら3人 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2015年12月26日):”不正を行っていたのは、教授と工学研究科の名誉教授(70)、50歳代の元助手。3人は2002年3月末までともに同科に所属していた。…教授は名誉教授のもとで助教授を務めた後、情報科学研究科に移った。”
  9. 阪大院教授ら、研究費2億円以上不正処理か(TBS News 12月25日20:17):”大阪大学によりますと、大学院情報科学研究科の四方哲也教授(52)ら3人は、大阪大学や科学技術振興機構からの研究費のうち、使い切らなかった分を物品を購入している取引業者に預けるなどの方法で、最大およそ2億7500万円を不正に経理処理していた疑いがあるということです。”
  10. 阪大教授ら研究費不正=「預け金」など2億円超―大学、刑事告訴を検討 (excite.ニュース/時事通信社 2015年12月25日 23時45分):”大阪大は25日、大学院情報科学研究科の四方哲也教授(52)ら3人が、物品を購入したように装い業者側に現金をプールさせる「預け 金」を行うなどし、2014年度までに少なくとも研究費約2億2000万円を不正使用していたと発表した。同大は刑事告訴や業者への返還請求を検討する。 同大によると、関与していたのは四方教授と大学院工学研究科の卜部格・元教授(70)、50代の元助手。”
  11. 大阪大学 教授など3人が不正経理処理 処分を検討 (NHK NEWS WEB 12月25日 18時31分):”大阪大学は、大学院の教授など3人が10年以上前から物品を購入したように装うなどして研究費を業者に預ける不正な経理処理を行っていたとする調査結果を発表しました。業者には1億7000万円余りが保管されていたということで、大学は処分などを検討することにしています。これは25日に大阪大学が記者会見して発表しました。それによりますと、不正な経理処理を行っていたのは大阪大学大学院情報科学研究科の四方哲也教授(52)ら3人です。”
  12. 阪大教授ら3人研究費不正 1億円超、業者に預け金 (ライブドアニュース/共同通信 2015年12月25日):”大阪大(大阪府吹田市)は25日、大学院情報科学研究科の四方哲也教授(52)と大学院工学研究科の元教授(70)、元助手の3人が研究費1億446万円を不正使用していたと確認したと発表した。取引業者に内容不明の約1億7千万円も預けており、不正使用分と重複する可能性があるとしている。大阪大によると、不正使用の時期は10年以上前から2014年10月にかけてで、対象には科学技術振興機構の研究費約9300万円や大学の運営費交付金などが含まれる。”
  13. 阪大院教授、1億5000万円 一部私的流用か(毎日新聞 2015年12月25日):”大阪大大学院の50代の男性教授が10年以上前から、研究費を不正に経理処理した疑いがあることが25日、大学などへの取材で分かった。不正処理は少なくとも1億5000万円に上り、科学技術振興機構(JST)の研究費も含まれる。一部は私的に流用されたとみられ、大学は刑事告訴や処分を検討している。 “
  14. 阪大教授が1億5千万円不正経理か 10年以上、一部は私的流用(産経WEST2015.12.25):”大阪大大学院情報科学研究科の50代の男性教授が、10年以上にわたって不正な経理処理を行っていた疑いを持たれていることが、25日、大学への取材でわかった。業者に研究費を預けるなどの手口で、不正経理は少なくとも1億5千万円にのぼり、一部は私的に流用していたという。”
  15. JST、四方哲也・大阪大学教授研究費不正問題で9300万円の不正確認 私的流用はなし(クリスチャントゥデイ 2015年12月25日17時18分):”不正が行われたのは、研究者の要求に基づき、JSTのスタッフ自らが経理処理し研究費を執行する「戦略的創造研究推進事業の直執行」の研究費。現在は制度の改正に伴い廃止され、研究機関での執行(委託研究)に移行しているという。”
  16. 阪大院教授が不正経理か 研究費1億5000万円 (日本経済新聞 2015年12月25日):”昨年、不正に関する情報が寄せられたことから、同大学が調査委員会を設けて調査していた。”
  17. 公的研究費の不正使用防止への取組 (大阪大学)stopkenkyuhifusei
  18. 科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(ERATO) 金子複雑系生命プロジェクト(研究期間2004年11月~2009年10月):構成的生物学実験グループリーダー 四方哲也 実施場所 大阪大学
  19. 科学技術振興機構・戦略的創造研究推進事業(ERATO) 四方動的微小反応場プロジェクト(研究期間2009年~2014年):研究総括 四方哲也 大阪大学大学院情報科学研究科教授
  20. 大阪大学研究者総覧 研究者詳細 教員基本情報 情報科学研究科 バイオ情報工学専攻 四方哲也(YOMO Tetsuya)
  21. ERATOの沿革:” 昭和56年(1981年)に創造科学技術推進事業(Exploratory Research for Advanced Technology;ERATO)が発足しました。その後、第2期科学技術基本計画や総合科学技術会議の推進戦略など、新しい時代の要請を踏まえ発展的 に解消し、平成14年度(2002年度)より戦略的創造研究推進事業・総括実施型研究(ERATO)として新たなスタートを迎えました。”
  22. ERATO:”以下の骨子をもってプログラムが運営されている。研究期間:約5年間 研究費:15億円を上限とした必要額” (ウィキペディア)
  23. ERATO 戦略的創造研究推進事業 2015-2016:研究期間 約5年間 研究費 12億円を上限とした必要額
  24. 科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ) 追跡評価用資料 (追跡調査報告書) 研究領域「形とはたらき」 (1997~2002) 研究総括  丸山工作
  25. 【社会】大阪大学大学院教授 1億5000万円余の不正経理 一部は私的に流用か(2ch.net)

京都大学医学部元准教授を収賄容疑で逮捕

京都大医学部付属病院の元准教授(47)と、医療機器販売会社「西村器械」の元京都支店副支店長(39)がそれぞれ収賄容疑、贈賄容疑で逮捕されました。元准教授は副支店長にメールや電話で度々賄賂を要求し、ドイツの「RIMOWA(リモワ)」やアメリカの「TUMI(トゥミ)」といった海外高級ブランドのキャリーバッグやスーツケースなど(約30万円相当)を自宅に届けさせていたそうです。また、京都・祇園や横浜での飲食接待も要求していたほか、ドイツ・ライカ社製のデジタルカメラ2台(計約40万円)を購入するなど研究費を私的に流用した疑いも持たれています。

参考

  1. 西村器械株式会社:”幅広い医療機器、医療材料を取り扱う総合医 療機器商社です。特に循環器科、心臓血管外科、透析・血液浄化関連の医療機器販売 においては、永年の経験と豊富な実績を誇っています。当社の強みは、医療機関の皆様から寄せられる、現場ニーズにお応えすることによって築かれた、人と人のつながり、信頼関係にあります。”(会社情報>トップメッセージ 代表取締役社長 中井 真喜雄)
  2. 研究費流用でカメラ購入か 逮捕前に内部調査委(m3.com/共同通信 2015年6月18日):”捜査関係者によると、丸井容疑者は2012年3月、海外ブランドのデジタルカメラ数台(計数十万円相当)を研究用備品と装い購入、私的に使っていた。”
  3. バッグに祇園接待…京大病院の“おねだり汚職”は氷山の一角(日刊ゲンダイ 2015年6月17日):”「丸井容疑者ほど露骨な要求をするのは珍しいですが、例えば100万円の機器を『150万円でいいから、ひとつよろしく』などと、医師が1~2割のキックバックを受け取るなんて話は結構聞く。丸井容疑者の場合もそうでしたが、数百万円程度の安価な機器の選定については、裁量権のある医師が絶対。それだけ癒着が起こりやすいのです」”
  4. 元准教授、研究費でライカ購入か 京大病院汚職事件(朝日新聞DIGITAL 2015年6月17日):”捜査関係者によると、丸井容疑者は2012年3月ごろ、病院の研究費を不正に流用した疑いが持たれている。贈賄業者とされる医療機器販売会社からドイツ・ライカ社製のデジタルカメラ2台(計約40万円)を購入していたという。”
  5. 逮捕の京大病院元准教授、祇園で接待受けていた (TBS NEWS 2015年6月16日):”丸井容疑者は、西村器械の社員、西村幸造容疑者(39)から高級キャリーバッグ3点を受け取っていましたが、警察へのその後の取材で、祇園などの飲食店でも接待を受けていたことが新たにわかりました。”
  6. 業者から物品、総額100万円か…京大病院汚職(読売新聞YOMIURI ONLINE 2015年06月16日):”京大の内規は、100万円以上の契約時には複数社の見積書を取るよう定めている。西村器械は10機種以上、総額5000万円を超える機器を受注していたが、捜査関係者によると、この中に、西村容疑者が他社の見積書を用意したケースがあったという。”
  7. 収賄容疑の元准教授、「祇園で接待」要求 業者にメール(朝日新聞デジタル 6月16日):”京都大医学部付属病院・臨床研究総合センターの医療機器納入をめぐる汚職事件で、京都府警に収賄容疑で逮捕された元准教授の丸井晃容疑者(47)が賄賂とされたバッグ以外にも、ブランド品や電化製品を贈賄業者側から受け取っていたことが捜査関係者への取材でわかった。”
  8. 【京大病院汚職】「中堅の心臓外科でリーダー的存在」 逮捕の丸井容疑者(産経WEST 2015.6.15):”逮捕された京都大病院元准教授、丸井晃容疑者(47)は平成6年に京大医学部を卒業後、京大病院の心臓血管外科などで勤務。優れた論文を次々執筆し、平成21年には同病院の探索医療センターで始まった血管再生治療のプロジェクトに准教授として選ばれて参加するなど、中堅の心臓外科医でリーダー的存在だったという。”
  9. 京大病院汚職:「もうかってるんだから」メールで品物指定(毎日新聞2015年06月15日):”京大の内規では、随意契約は1000万円未満の取引が対象。随意契約で医療機器を選定する際、その権限は、現場で実質的な研究を行う准教授が持つ場合が多いとされる。男性医師は「随意契約は、権限を持つ1人を落とせばよく、医療機器販売会社にとって契約を取りやすいのではないか」と話し、医師と業者側の癒着が起きやすい構造を指摘。”
  10. 京大病院元准教授を収賄容疑で逮捕 受注見返りにバッグ(朝日新聞DIGITAL 2015年6月14日):”京都大医学部付属病院・臨床研究総合センター(京都市左京区)の医療機器を受注させる見返りに、業者から高級バッグを賄賂として受け取ったとして、京都府警は14日午後、同センターの元准教授(心臓血管外科)で医師の丸井晃容疑者(47)=奈良県天理市田部町=を収賄容疑で逮捕し、発表した。”

【研究費不正】北大教授夫婦が二重に研究費を獲得

夫婦ともに研究者というカップルは多いのですが、新聞報道によれば、研究の実態は一つなのに研究費を二重取りしていたという例が北海道大学で発覚しました。

有賀早苗教授の側には研究の実態がないにもかかわらず、2006年度に800万円、07年度に750万円を不正受給していたという。(朝日新聞 2015年5月1日)

研究者が受給した科学研究費補助金の内容は、KAKEN科学研究費助成事業上で公開されています。

研究機関:北海道大学
研究種目:基盤研究(B)
配分額 総額:17750千円2006年度:8000千円 (直接経費:8000千円)2007年度:9750千円 (直接経費:7500千円, 間接経費:2250千円)
研究課題番号:18390253 家族性パーキンソン病PARK7原因遺伝子DJ-1の機能解析と創薬 Function of DJ-1, a causative gene for familial Parkinson’s disease PARK7
代表者:有賀 早苗 北海道大学・大学院・農学研究科・教授
研究分担者:有賀 寛芳 北海道大学・大学院・薬学研究院・教授

研究機関:北海道大学
研究種目:特定領域研究
配分額 総額:8200千円2006年度:4100千円 (直接経費:4100千円)2007年度:4100千円 (直接経費:4100千円)
研究課題番号:18023002 パーキンソン病PARK7の原因遺伝子DJ-1の機能解析
代表者:有賀 寛芳 北海道大学・大学院・薬学研究院・教授
研究分担者:有賀 早苗 北海道大学・大学院・農学研究院・教授

研究成果の概要も同じくデータベース上で公開されています。2つの研究プロジェクトの成果報告書は以下の通り。

研究課題番号:18390253 研究概要(最新報告)
1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能
DJ-1はTH, DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2,6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番目のシステイン(C106)が、-SOH, SO_2H, SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH, DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。

2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用
虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。
更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。

研究課題番号:18023002 研究概要(最新報告)
1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能
DJ-1はTH, DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生 型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2, 6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番月のシステイン(C106)が、-SOH, SO_2H, SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH, DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。

2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用
虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。
更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。

夫婦の研究テーマが非常に近く、共同研究として発表論文でも互いに共著者として名前を入れ合う例は珍しくなく、その場合は似たような成果報告書になることがあるかもしれません。夫婦である二人の研究がどれくらい独立しているのかを外部の人間が判断するのは難しいものがあります。

ただ上の報告書を見ると、2つの異なる研究助成であるはずなのに、報告書の文章が完全に一致しています。いくらなんでも、これでは釈明の余地はないのでしょう。せめて、二人の研究代表者がそれぞれ独立に報告書を書いていれば、こういうことは起きえないわけで、あまりにも露骨過ぎたかなと思います。論文報告が複数あれば、2つに振り分けるなどしておけば2つは別の研究だと主張できたかもしれません。

まあいずれにせよ今回は、「研究の実態がなかった」という北大の内部調査結果が、不正と判断する根拠になったのでしょう。

参考

  1. 教授夫婦、研究費不正取得 北大が処分、1550万円(産経ニュース2015.5.1):”北海道大は1日、農学研究院の有賀早苗教授(59)が、実体のない研究に科学研究費を申請し、計約1550万円を不正取得したとして、停職10カ月の懲戒処分にしたと発表した。…有賀教授は平成18年から19年にかけて、パーキンソン病患者に特有のがん遺伝子に関する研究費を申請したが、計画通り研究が行われておらず、研究成果などが夫の有賀特任教授が代表者となっている別の報告書と同じ内容だった。”
  2. <北大>科学研究費を不正受給 教授夫婦を停職10カ月 (Yahoo!ニュース/毎日新聞 5月1日:”北海道大は1日、国から計1550万円の科学研究費補助金を不正受給したとして、同大大学院農学研究院の有賀早苗教授(57)と夫で同大大学院薬学研究院の寛芳特任教授(64)を停職10カ月にしたと発表した。
  3. 研究費1550万円を不正受給、北大教授を停職10カ月(朝日新聞デジタル 2015年5月1日):” 北海道大学は1日、夫の研究を妻の研究としても申請し、計1550万円の公的研究費を受けていたとして、大学院農学研究院の有賀早苗教授(57)と、夫で大学院薬学研究院の有賀寛芳特任教授(64)を、ともに停職10カ月の懲戒処分にしたと発表した。”

東工大生命理工(元)教授が研究費を私的流用

研究費の不正使用が起きる状況は、お金が足りなくなる次年度の物品購入に充てるための預け金、学生の学会出張旅費に充てるための裏金作りなど、ラボのため、研究のためという場合がほとんどでしょう。もちろんいかなる不正も許されるものではありませんが、最も悪質なのは私的な流用、つまり研究者が公的なお金を自分のポケットに入れてしまうことです。

東京工業大学大学院生命理工学研究科の教授(既に定年退職)が研究費の不正使用により逮捕されました。

研究費詐欺事件 東工大元教授が架空請求持ちかけか(FNNnewsCH 2014/11/16)

試薬などを購入したと見せかけて購入費を業者にプールする「預け金」の手口を用いて、計約1490万円をだまし取っていた疑いです。これらのお金は自家用車の購入やクレジットカードの支払いといった私的な目的に流用されていたと見られています。

東工大元教授 研究費を車購入に流用

逮捕されたのは、実験用試薬の架空発注に関与していた(元)教授、教授の秘書、化学製品卸会社「東光化成」の役員と同社の社員の4人です。この研究室の准教授の研究費の一部も、同様の手口でこの教授の手に渡っていたようですが、東工大の発表によれば准教授自身はこの「預け金」処理に関与していなかったということです。

今回明らかになったお金の流れはこうです。教授は取引業者と結託し、実験用試薬を架空に発注します。大学は架空の請求書に従いその代金をこの業者に支払います。この架空の発注・請求が繰り返されると、研究費が「預け金」として業者にプールされていきます。業者はプールされたこのお金を、教授秘書が管理する銀行口座に振り込み、結果的に、教授個人にお金が還流されます。NHKの報道によれば、業者の方もプール金の一部を会社の経営資金に当てていたそうで、教授と業者の双方にメリットがありました。研究者が獲得した研究費の管理を実際に行うのは大学なので、研究者と業者に大学が騙されたという構図です。

多くのメディアの報道によると、東光化成に試薬を架空発注を繰り返して約1490万円を着服したことが今回の逮捕の理由です。しかし共同通信やNHKの報道によれば、別の業者にも実験器具など物品を架空発注しており、逮捕容疑とは別に約1900万円の研究費を不正に使っていたとのことです。1900万円の研究費不正使用に関しては、2014年1月10日に東工大が既に報告書を公開しています。

既に明らかになっていたこれらの不正経理問題のため、先日(2014年11月5日)文部科学省により発表された国立大学法人評価委員会の評価結果においても、東工大は最低評価を受けていました。

東工大 法令順守で最低の評価

 

参考

  1. 東工大元教授 研究費を車購入に流用 (NHK NEWSWEB 11月15日):”岡畑元教授については、今回の逮捕容疑となった1490万円の研究費の流用とは別に、実験器具などの架空発注を行うなどして、およそ1900万円の研究費を不正に使用していたことが、ことし1月に明らかになっています。… 一方、業者のほうも、プールされた金の一部を運転資金として使っていたということです。”
  2. 元教授が業者に手口持ち掛けか 東工大の研究費詐取事件(47NEWS/1共同通信 2014/11/15):”東工大によると、岡畑容疑者は別業者にも物品を架空発注し、逮捕容疑とは別に約1900万円の研究費を不正に使っていたことが、学内の調査で判明している。”
  3. 東工大元教授ら1490万詐欺容疑で逮捕(niccansports.com (共同) 2014年11月15日):”東工大によると、岡畑容疑者は別業者にも物品を架空発注し、逮捕容疑とは別に約1900万円の研究費を不正に使っていた。”
  4. 東工大元教授ら逮捕 研究費1490万円を不正流用容疑(朝日新聞 2014年11月15日):”研究費約1490万円を不正に流用したとして、警視庁は15日、東京工業大学(本部・東京都目黒区)の元教授岡畑恵雄(よしお)容疑者(67)=川崎市麻生区=と取引業者の役員ら計4人を詐欺容疑で逮捕し、発表した。”
  5. 東工大の元教授逮捕…研究資金1490万円詐取(読売ONLINE 2014年11月15日 14時35分):”実験用試薬などを架空発注して大学から研究資金約1490万円をだまし取ったとして、警視庁は15日、東京工業大大学院生命理工学研究科の元教授、岡畑恵雄容疑者(67)(川崎市麻生区)ら4人を詐欺容疑で逮捕した。”
  6. 東工大元教授ら4人を逮捕=研究費、1490万円詐取容疑-警視庁(時事ドットコム 2014年11月15日):”岡畑容疑者は詐取した金を車の購入費やカードの支払いなどに充てていたという。”
  7. 東京工業大学大学院生命理工学研究科元教授の研究室における研究費の不正使用と関係者の処分等について発表資料PDFファイル 東京工業大学 2014年1月10日):”●平成20年に元教授と秘書で預け金を始め、平成25年3月まで架空発注・請求が行われた。 ●元教授及び秘書は、引き出した資金を研究室のために使用したと主張しているが、記録等は廃棄されているため証明する資料は存在せず、その使途は不明である。 ●不正に使用されたと現時点で認められる研究費の額は、記録等に基づき裏付けがとれたもの、今後精査を要するものを合わせて、約1,900万円である。”
  8. 研究費不正が影響、東工大また最低評価 国立大評価委(朝日新聞DIGITAL 2014年11月5日):”文部科学省の国立大学法人評価委員会は5日、2013年度の評価結果を発表した。研究費不正が繰り返されたとして、東京工業大に対し、5段階で最も悪い「重大な改善事項がある」とした。”
  9. 国立大学法人東京工業大学の平成25年度に係る業務の実績に関する評価結果(PDFリンク)(文部科学省 平成25年度 各法人の評価結果) ”平成 23 年度評価において、長期にわたり新学長を選任できなかったことにより「法人の運営に重大な改善が必要」とされたことの主因である研究費の不適切な経理について、平成 24 年 10 月の新体制発足以降、学長を中心に教育研究資金の管理・監査体制の強化を図るなど全学一体となった取組がなされてきたところであるが、平成 24 年度を含む過年度において再び研究費の不適切な経理が確認されていることは、平成 23 年度評価において指摘した、大学を挙げた不正の防止、コンプライアンス機能の強化の取組が実効を挙げておらず、東京工業大学の中期目標の前文「大学の基本的な目標」に掲げる「社会と世界から信用される大学を目指す」という点に照らして極めて深刻な事態であると考える。”
  10. 東工大生命理工の名誉教授が在職中に研究費約1900万円を不正使用していたことが発覚

不正使用5億3500万円 北大最終報告

北海道大学は預け金などの不正経理に関して調査をしてきましたが、このたび最終調査報告書をまとめ公表しました。研究費を私的に流用していた教授は刑事告訴されています。

本学における公的研究費等の不適切な経理処理について、昨年11月に平成19年度以 降に預け金の記録がある在職教員の調査結果公表後、①平成16年度から平成18年度に おいてのみ預け金の記録がある在職教員にかかる調査、②退職者・転出者にかかる調査、 及び③講座等名による帳簿にかかる調査の結果、総額50,638,330円(該当教員等 15名内退職者・転出者2名)の不適切な経理処理があったと調査委員会が認定し、13 名の教員について懲戒処分等が決定した。 これにより、平成19年度以降に預け金の記録がある在職教員の調査結果を含め、不適 切な経理処理として認定された額は、総額534,935,445円、総人数56名の教員 への懲戒処分等が決定した。PDF

 

参考

  1. 公的研究費等の不適切な経理処理について(最終報告)北海道大学 平成26年7月15日 (PDF
  2. 北大の不適切経理、計5億3500万円 教員59人関与 (朝日新聞DIGITAL 2014年7月15日):”…遺伝子病制御研究所に所属していた60代の元教授1人に私的流用があったとして、北大は昨年6月、元教授と取引業者1社を詐欺容疑で北海道警に告訴した。…”
  3. 北大預け金最終報告 総額5億3400万円に 06年度以前5千万円 (北海道新聞 07/15):”…北大の山口佳三学長は15日記者会見し、帳簿が残る2004年度以降の学内調査の最終報告を発表した。新たに5063万8330円の不正が判明、総額は計5億3493万5445円に上るとし、 …”

小保方晴子ユニットリーダーの研究費は5ヵ年契約で1億円

2014年3月14日に行われた理研の記者会見の質疑応答の中で、小保方ユニットリーダーに配分されているお金が年間で研究費1000万、人件費1000万円合計2000万円であることが明らかにされました。人件費というのは小保方氏本人の給与ではなくて、研究補助の技術員等を雇うためのお金です。5ヵ年契約で、総計1億円が小保方晴子ユニットリーダーに研究費として配分されるということです。

非常に優れた業績を上げている人だけが理研で職を得ることができ、しかも優れた業績を出し続けることが要求されてしかるべきです。本来そういう場所であるにも関わらず、データの写真の切り貼りをやってはいけないとは思わなかったと言う、研究者として何のトレーニングも受けていない人間が紛れ込んできて、1億円もの研究費を配給されるのですから、小保方氏を採用した理研CDBの責任が問われないというのはあり得ないことでしょう。税金をドブに捨てているようなものです。

小保方ユニットのウェブサイトを見ても技術員などのメンバーが一人も見当たりませんし、コピーアンドペーストで論文の図を作るのなら実験をたくさんする必要もないでしょう。巨額な研究費が一体何に使われているのか非常に不思議です。

2014年3月14日の記者会見を見る限り、調査委員会は論文の図に関して6項目を挙げて悪意のある改ざんがあったかどうかを調べると述べており、自らのタスクをかなり限局してしまっています。これでは理研が本気でこの問題に取り組んでいるということがあまり伝わってきません。研究費が本当に正しく使用されていたのか、問題にされていない図に関しても本当にそれに対応する実験が行われた形跡があるのかどうかなど、もっと研究不正の可能性を広く捉えて調査し発表すべきでしょう。実験が本当に行われていたのかどうかは、実験ノートの記述の有無や、必要な試薬や消耗品の購入履歴を調べることによっても確かめられるはずです。

理研の理事は調査委員会の結果報告を受けて処分を考えるという内容の発言をしていましたから、調査対象が最初からあまりにも狭いと、不正が見逃されてしまい適切な処分が下されなくなる恐れがあります。

小保方ユニットリーダーの場合 研究費・人件費各々1000万(合計2000万)

参考

  1. 理研が落ちた「わな」:再生医療の覇権争い iPS先行で(毎日新聞 2014年03月19日 16時16分 最終更新 03月19日 16時19分):STAP細胞の研究拠点である神戸市の理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)には年間30億円が配分される。研究不正の疑いがもたれている小保方(おぼかた)晴子・研究ユニットリーダーは5年契約で、給与とは別に総額1億円の研究予算が与えられている。
  2. 理研について 人員・予算(理化学研究所ウェブサイト):平成25年度予算合計844億4300万円。発生・再生科学総合研究事業費29億3700万円

研究不正の責任は研究機関にも

文部科学省が研究不正防止徹底のためにガイドラインを改正し平成26年2月18日に公表しました。

研究不正が取り沙汰されてから何年間も沈黙を続ける大学や、研究費の不正使用が明らかになった研究者の氏名を公表しない大学など、納税者に対する説明責任を果たしていない大学や研究機関が数多く見受けられることから、不正を働いた研究者の所属する研究機関への罰則を盛り込んだ今回のガイドライン改正は歓迎すべきものと思われます。

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大阪大学の公的研究費の不正使用防止への取り組み

研究費の着服と論文データ捏造は研究不正としては種類が異なりますが、納税者の視点からすればどちらも言葉はきついですが「税金泥棒」以外の何者でもありません。

See also,

⇒ 論文を捏造してもクビにならない不思議な国立大学

⇒ 京都大学大学院薬学研究科元教授に対して懲役2年の実刑判決

参考記事

  1.  「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」の改正について(文部科学省):研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)(平成26年2月18日改正)  (PDF:894KB
  2. 研究不正防止へ文科省指針改正 大学などの責任問う (日本経済新聞2014/2/18 13:38):研究者本人への罰則を強化するだけでなく、所属先の管理責任を問うことにした。
  3. 研究費不正使用:文科省、ガイドライン改正(毎日新聞 2014年02月18日):文部科学省は18日、研究費の不正使用があった研究機関に対し、不正をした研究者の氏名を含めた調査結果を原則210日以内に同省に報告するよう義務づけると発表した。

賄賂受領の京大薬元教授に対し懲役2年の実刑

物品納入業者から賄賂を受け取った罪に問われた裁判で、辻本豪三(元)京都大学大学院薬学研究科教授(61)に対する判決が17日に東京地方裁判所で言い渡されました。辻本豪三元教授は、医療機器販売会社「メド城取(しろとり)」から渡されたクレジットカードを使って自分の遊興費や家族との飲食代、子への援助などの支出に使っており、これらの合計約940万円分の利益が賄賂と認定されたものです。

億単位の研究費を動かす立場の大学教授が業者から賄賂を受け取り、納入業者の選定で便宜を図るという行為は悪質な行為ですが、今回の事件は実はそれだけにとどまらないようです。

「これで良いのか,京都大学の公益通報」という法律事務所のインターネット記事によると、辻本豪三(元)京都大学教授の行っていたことは業者から賄賂を受け取っていたことにとどまらないようです。しかも、辻本豪三教授の研究室内で行われていた研究費の不正に関して過去に内部通報があったにもかかわらず、京都大学は「調査の結果、通報対象事実は認められませんでした」としか回答せず、事実上不正を黙認していたのいうのですから驚きます。これではせっかく勇気を持って内部告発した人間がまったく報われません。辻本豪三教授が行っていたことは、なかなか巧妙です。

教授は,自らNPO法人をつくり,知人を理事長に据え,教室員らを理事にした。もちろんNPO法人を実質的に動か していたのは教授である。そのやり方の概略は,たとえば公的資金を原資とする研究および調査教授業務の一部を当該NPO法人に請け負わせることにして,見積もりを出させる。その見積もりはNPO法人に所属する教室員などに作成させ,最終的には教授がチェックする。調査自体も教室員にアルバイトとしてやらせて,アルバイト料を支払っていた。教室員らはこれがNPO法人の仕事などと思わず,むしろ教授の指示によるので研究活動の一端かと思って手伝っていたよう である。しかし最も大きな問題は、NPO法人への委託費と作業をした教室員に対するアルバイト料の間に大きな差があることで、このマージンがどのように使われたかは不明である。
本来なら,外部委託研究費の使途明細はすべて京大事務局において管理する仕 組みになっているのだが,NPO法人を間に通すと,その部分は別人格法人の会計処理になるので大学当局の管理も監査も及ばない。NPO法人の監督は京都府が行うが,京都府は金の使い途の当・不当までは干渉しない。それ故,NPO法 人における請負金額の使途明細はすべていわば水面下に沈められて,誰も問題にしようがなくなってしまうのである。このように間にNPO法人を通すことによ って,教授は個人秘書ともいうべき理事長を指図して,管理・監査の及ばない金を自由に使う ことが出来るというわけである。(「これで良いのか,京都大学の公益通報」より引用 http://kawanaka-law.jp)

参考ウェブサイト

  1. 京大元教授に懲役2年の判決 物品納入めぐる汚職事件(朝日新聞デジタル 2014年2月17日15時27分):吉村裁判長の言葉「提供された利益を自分の遊興や家族との飲食、子への援助などに見さかいなく使ってお り、公的立場にいることを踏まえた分別が感じられない。同種事案のなかでも違法性の高い悪質な事案で、実刑が相当」
  2. 京大の元教授に懲役2年の実刑判決(NHK NEWS WEB 2月17日 16時32分) :東京地方裁判所の吉村典晃裁判長は「研究の第一人者として多額の予算を獲得できる立場を悪用した悪質な犯行だ。辻本元教授はゲノム創薬科学分野の第一人者として多額の予算を獲得できる立場を悪用した。賄賂は自分の遊興費などに見境なく使っていて分別が感じられない。国立大学の機器調達の適正さを大きく損ねる悪質な犯行だ」と指摘。
  3. これで良いのか,京都大学の公益通報(川中法律事務所 Posted on 2月 10th)

東工大生命理工 元教授が1900万円を不正使用

新しい記事⇒「研究費不正疑惑のあった東京工業大学大学院生命理工学研究科元教授が逮捕」(2014年11月15日)

東京工業大学生命理工学研究科の元教授が、2008年から退職した2013年の5年間に架空発注を67回繰り返して代金を業者にプールし、秘書が卒業生から預かった20人分の通帳に振り込ませ、それを引き出して使っていたことが明らかになりました。

新聞報道によれば元教授と秘書は、使途は大型の実験機器の修理などで、私的流用はないと説明しているそうです。しかしながら東工大の発表によると、「元教授及び秘書は、引き出した資金を研究室のために使用したと主張しているが、 記録等は廃棄されているため証明する資料は存在せず、その使途は不明である。」との見方を示しており、元教授を懲戒解雇相当、秘書を懲戒解雇にしています。同じ研究室の准教授に関しては。自分の研究費の一部も預け金に利用されていたことを知らなかったそうで、予算管理責任のみを問われて「訓告」とされています。

公的研究費がもしも私的に流用されていれば、それは犯罪です(関連記事「東大教授を詐欺容疑で逮捕」)。1900万円もの巨額なお金はいったいどこに消えたのでしょうか?誰が何に使ったのでしょう?それを明らかにして世間に公表する責任が東工大にはあります。今後の調査の進展が待たれます。

参考

    1. 東京工業大学大学院生命理工学研究科元教授の研究室における 研究費の不正使用と関係者の処分等について東京工業大学ニュース2014年1月10日):本件につきましては、今後も事件の内容について、引き続き詳細に調査を実施し、新たに明らかになった事項が生じた場合にはその結果を公表いたします。
    2. 東工大名誉教授、研究費1900万円を不正使用(朝日新聞 2014年1月10日23時32分):東京工業大学は10日、同大の名誉教授が、生命理工学研究科の教授だった2008年から退職する昨年3月までの約5年間、当時の秘書とともに研究費計約1900万円を不正に使用していたと発表した。名誉教授と秘書は同大の調査に対して不正使用は認め、名誉教授の称号の返上を申し出たが、「大型の実験機器の修理などに使った。私的流用はない」などと説明しているという。同大は研究費と退職金の返還を求める。
    3. 1900万円を架空発注 元東工大教授、解雇相当(共同通信2014/01/10 20:54)
    4. 東京工業大学大学院生命理工学研究科ウェブサイト:東京工業大学生命理工学部は、生命理学科、生体機構学科、生物工学科、生体分子工学科の4学科で平成2年6月に創設され、続いて平成4年4月には、大学院生命理工学研究科がバイオサイエンス、バイオテクノロジーの2専攻で発足いたしました。
    5. 東工大、次期学長候補がまた辞退 不正経理問題 (日本経済新聞2012/2/17 13:25):東京工業大(東京・目黒)の次期学長に就任予定だった前工学部長の岡崎健教授(62)が、研究室の研究費不正経理問題をめぐり、学長候補の辞退届を提出したことが17日、分かった。 東工大では当初の学長候補だった大倉一郎前副学長(67)も昨年7月に不正経理で辞退しており、極めて異例の事態となった。
    6. 東工大で副学長が研究費不正使用か 調査委設置(スポニチ2011年7月29日 18:34):東京工業大は29日、大倉一郎副学長(66)が、年度内に使い切れず大学に返還する必要があった研究費を取引業者にプールし、不正に使用した可能性があるとして実態解明のための調査委員会を設置したと発表した。大倉副学長は今年10月に次期学長に就任することが決まっていたが、28日に一身上の都合として辞退。

京都大学薬学研究科元教授に懲役3年を求刑

⇒ 業者と癒着した辻本豪三(つじもとごうぞう)京都大学大学院薬学研究科元教授に対して東京地裁が懲役2年の実刑判決 2014年2月17日

高額研究機器の納入業者を選定する慣行上の職務権限があることを認識した上で業者側に購入予定を告げるなどして便宜供与し、収賄罪に問われていた辻本豪三(つじもとごうぞう)京都大学大学院薬学研究科元教授に対して、検察側は懲役3年を求刑しました。

辻本豪三元教授は、京都大学が物品を調達する際に業者選定で医療機器販売会社「メド城取」に有利な取り計らいをし、謝礼として約943万円相当の賄賂を受けたとされています。

判決は来年2014年2月17日に予定されています。

辻本豪三元京大教授は、脂肪センサーとして働くたんぱく質GPR120の欠損が、肥満の原因になるという発見などで知られており、ゲノム創薬の第一人者でした。

以下の動画は、東京地方裁判所で初公判が開かれた当時のニュース。検察側は冒頭陳述で「辻本被告は京大教授になる前から飲食接待などを受けていて、その結果メド城取は独占的に研究機器などを受注していた」と指摘。辻本被告は「金を受け取っていたことは間違いないが賄賂という認識も、便宜を図ったという認識もなかった」と起訴事実を否認。

京都大学 元教授 贈収賄事件 元教授ら、起訴事実を否認(YOUTUBE)

⇒ 業者と癒着した辻本豪三(つじもとごうぞう)京都大学大学院薬学研究科元教授に対して東京地裁が懲役2年の実刑判決 2014年2月17日

参考

  1. 元京大教授に3年求刑 物品購入汚職事件で地検(日本経済新聞 2013/11/15 21:26)
  2. Ichimura et al. Dysfunction of lipid sensor GPR120 leads to obesity in both mouse and human. Nature 483, 350–354 (15 March 2012) | doi:10.1038/nature10798

  3. 脂肪センサーGPR120が食事性肥満の原因遺伝子であることの発見(京都大学 2012年2月20日)
  4. 辻本豪三(ウィキペディア)

北大20教授らが研究費不正4億8千万円

⇒ 北海道大学が最終報告:公的研究費の不正使用5億3500万円

平成25 年11月13日の北海道大学の発表「公的研究費等の不適切な経理処理について」によると、研究費等の不適切な経理処理があり、教授20人を含む教員44名が関与していたことが明らかになりました。不正の内容は、いわゆる「預け金」と呼ばれるものです。また教員1名に関しては私的流用も発覚しました。

預け金の経理不正を成り立たせるためには、研究者と業者が結託し、大学事務がそれを見逃すという3者の協同が不可欠であり、各々の責任が問われるべきです。

北大は改善策として管理体制等の強化等の取り組みを示しています。

  1. 納品物品の事後抽出確認(平成23年10月から実施)
  2. 納品先までの職員の同行(平成23年10月から実施)
  3. 宅配便など、納品受付センター未経由納品物等の第三者確認(平成25年3月から実施)
  4. 反復使用を防止するため、納品受付センター経由物品のマーキング対応(平成25年3月から実施)
  5. 資産管理対象納品物品のシリアル番号の届出義務化(平成25年3月から実施)
  6. 納品後の随時確認(平成25年4月から実施)
  7. 教員と業者との直接接触を極力回避するための電子購買システムの導入(平成26年度から実施予定)

不正経理の手口

「預け金」とは、業者と架空取引を行い、契約した物品が納入されていないの
に納入されたなどとして代金を支払い、その支払金を当該業者に管理させるも
の。業者に対して、適時の支払いができないことを知りながら物品を納入させ
るなどした後に、業者に架空取引を指示して代金を支払い、先に納入させた物
品などに対する代金の支払いに充てることを含むものである。

「品名替え」とは、業者から実際に納品を受ける物品に対する支払いのために、
業者に指示してその物品とは別の物品が納入されたなどとして代金の請求をさ
せて、その支払いをなしているものである。

参考ウェブサイト

  1. 公的研究費等の不適切な経理処理についてPDF) 平成25年11月13日 国立大学法人北海道大学総長 山口 佳三
  2. 平成24年12月21日 国立大学法人北海道大学 公的研究費等の不適切な経理処理にかかる調査結果について(中間報告)(PDF)
  3. 2013年7月22日改訂 国立大学法人北海道大学 研究費不正使用防止計画 (PDF)
  4. 2007-04-27 北海道大学研究戦略室コラム「不正経理の徹底排除を」:誠に残念ながら、本学においても教員による不正経理事件が発生してしまった。新聞各紙などですでに報じられており詳細は控えるものの、カラ発注によるキックバックや、カラ出張、カラ謝金といった、非常に稚拙だが、関係者間で口裏を合わせ書類を整備すれば発見しにくくなる、悪質な手法である。

東大教授を詐欺容疑で逮捕

東京新聞(2013年7月26日 朝刊)によると、東京大学政策ビジョン研究センター秋山昌範教授(55)が、公的研究費を着服した疑いで逮捕されました。詐欺の手口は、IT関連会社社長らと共謀してデータベース作成を発注したように装い、東大に虚偽の請求書を提出。2010年3月から2011年9月の間、7回にわたり業者の口座に研究費計1890万円を振り込ませ詐取したということです。

秋山昌範教授の略歴は東京大学政策ビジョン研究センターウェブサイトによると、

1983年 3月  徳島大学医学部医学科卒業
2005年10月 マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院客員教授
2009年 8月  東京大学政策ビジョン研究センター教授

ということで、医療IT(インフォメーションテクノロジー)が専門だそうです。

研究費名目で約2,200万円だまし取った疑い 東大教授逮捕

このテレビニュースによると、着服したお金は私的に使用していたとみられているそうです。研究者の倫理について考えるとき、このように不正により作り出したお金を研究者が自分のポケットに入れたのかそれとも研究室運営に使ったのかを区別することは非常に重要です。なぜなら、昔は、今なら不正とみなされるようなことによりお金を工面してそれで学生が学会に参加できるようにすることがむしろ普通だった時代もあるからです。しかしながら現在では科学研究費の運用に関しては以前よりも柔軟性が持たされており、また、学生の学会参加もフェローシップなどによりサポートする制度が増えてきたため、そのようなことをする必要性が薄れ、研究費の適切な使用に関しては以前よりも厳格になっています。研究費の使用に関しては研究者個人ではなく大学の事務が支出の管理をしているため、今回の事件は東京大学の事務サイドが研究者に騙されたという図式です。事務方が研究者に対して使途の厳格さを強く求めれば求めるほど、研究者側からすれば研究がやりにくくなります。逆にそこを緩くすると、今回のような事件が起こりやすくなるわけで、どこかに適切なバランスが必要です。

 

追記2017年12月13日

研究費名目で東大と岡山大から計約2180万円をだまし取ったとして詐欺罪に問われた元東大政策ビジョン研究センター教授、秋山昌範被告(60)=懲戒解雇=の控訴審判決公判が13日、東京高裁で開かれた。栃木力裁判長は「研究費を自主返納した」として懲役3年とした1審東京地裁判決を破棄し、懲役3年、執行猶予5年を言い渡した。 控訴審で秋山被告側は無罪を主張し、有罪だったとしても執行猶予付きの判決が相当と主張していた。 判決理由で栃木裁判長は、詐欺罪が成立するとした1審の判断は相当とした上で、1審判決後に秋山被告が国に研究費の全額を自主返納したことから「財産的被害は回復した」と指摘。「実刑は現時点では重すぎる」として執行猶予付きが相当と判断した。(「研究費返納した」元東大教授、2審は猶予判決 研究費詐取事件で東京高裁 産経ニュース 2017.12.13