物品納入業者から賄賂を受け取った罪に問われた裁判で、辻本豪三(元)京都大学大学院薬学研究科教授(61)に対する判決が17日に東京地方裁判所で言い渡されました。辻本豪三元教授は、医療機器販売会社「メド城取(しろとり)」から渡されたクレジットカードを使って自分の遊興費や家族との飲食代、子への援助などの支出に使っており、これらの合計約940万円分の利益が賄賂と認定されたものです。
億単位の研究費を動かす立場の大学教授が業者から賄賂を受け取り、納入業者の選定で便宜を図るという行為は悪質な行為ですが、今回の事件は実はそれだけにとどまらないようです。
「これで良いのか,京都大学の公益通報」という法律事務所のインターネット記事によると、辻本豪三(元)京都大学教授の行っていたことは業者から賄賂を受け取っていたことにとどまらないようです。しかも、辻本豪三教授の研究室内で行われていた研究費の不正に関して過去に内部通報があったにもかかわらず、京都大学は「調査の結果、通報対象事実は認められませんでした」としか回答せず、事実上不正を黙認していたのいうのですから驚きます。これではせっかく勇気を持って内部告発した人間がまったく報われません。辻本豪三教授が行っていたことは、なかなか巧妙です。
教授は,自らNPO法人をつくり,知人を理事長に据え,教室員らを理事にした。もちろんNPO法人を実質的に動か していたのは教授である。そのやり方の概略は,たとえば公的資金を原資とする研究および調査教授業務の一部を当該NPO法人に請け負わせることにして,見積もりを出させる。その見積もりはNPO法人に所属する教室員などに作成させ,最終的には教授がチェックする。調査自体も教室員にアルバイトとしてやらせて,アルバイト料を支払っていた。教室員らはこれがNPO法人の仕事などと思わず,むしろ教授の指示によるので研究活動の一端かと思って手伝っていたよう である。しかし最も大きな問題は、NPO法人への委託費と作業をした教室員に対するアルバイト料の間に大きな差があることで、このマージンがどのように使われたかは不明である。
本来なら,外部委託研究費の使途明細はすべて京大事務局において管理する仕 組みになっているのだが,NPO法人を間に通すと,その部分は別人格法人の会計処理になるので大学当局の管理も監査も及ばない。NPO法人の監督は京都府が行うが,京都府は金の使い途の当・不当までは干渉しない。それ故,NPO法 人における請負金額の使途明細はすべていわば水面下に沈められて,誰も問題にしようがなくなってしまうのである。このように間にNPO法人を通すことによ って,教授は個人秘書ともいうべき理事長を指図して,管理・監査の及ばない金を自由に使う ことが出来るというわけである。(「これで良いのか,京都大学の公益通報」より引用 http://kawanaka-law.jp)
参考ウェブサイト
- 京大元教授に懲役2年の判決 物品納入めぐる汚職事件(朝日新聞デジタル 2014年2月17日15時27分):吉村裁判長の言葉「提供された利益を自分の遊興や家族との飲食、子への援助などに見さかいなく使ってお り、公的立場にいることを踏まえた分別が感じられない。同種事案のなかでも違法性の高い悪質な事案で、実刑が相当」
- 京大の元教授に懲役2年の実刑判決(NHK NEWS WEB 2月17日 16時32分) :東京地方裁判所の吉村典晃裁判長は「研究の第一人者として多額の予算を獲得できる立場を悪用した悪質な犯行だ。辻本元教授はゲノム創薬科学分野の第一人者として多額の予算を獲得できる立場を悪用した。賄賂は自分の遊興費などに見境なく使っていて分別が感じられない。国立大学の機器調達の適正さを大きく損ねる悪質な犯行だ」と指摘。
- これで良いのか,京都大学の公益通報(川中法律事務所 Posted on 2月 10th)