【研究費不正】北大教授夫婦が二重に研究費を獲得

夫婦ともに研究者というカップルは多いのですが、新聞報道によれば、研究の実態は一つなのに研究費を二重取りしていたという例が北海道大学で発覚しました。

有賀早苗教授の側には研究の実態がないにもかかわらず、2006年度に800万円、07年度に750万円を不正受給していたという。(朝日新聞 2015年5月1日)

研究者が受給した科学研究費補助金の内容は、KAKEN科学研究費助成事業上で公開されています。

研究機関:北海道大学
研究種目:基盤研究(B)
配分額 総額:17750千円2006年度:8000千円 (直接経費:8000千円)2007年度:9750千円 (直接経費:7500千円, 間接経費:2250千円)
研究課題番号:18390253 家族性パーキンソン病PARK7原因遺伝子DJ-1の機能解析と創薬 Function of DJ-1, a causative gene for familial Parkinson’s disease PARK7
代表者:有賀 早苗 北海道大学・大学院・農学研究科・教授
研究分担者:有賀 寛芳 北海道大学・大学院・薬学研究院・教授

研究機関:北海道大学
研究種目:特定領域研究
配分額 総額:8200千円2006年度:4100千円 (直接経費:4100千円)2007年度:4100千円 (直接経費:4100千円)
研究課題番号:18023002 パーキンソン病PARK7の原因遺伝子DJ-1の機能解析
代表者:有賀 寛芳 北海道大学・大学院・薬学研究院・教授
研究分担者:有賀 早苗 北海道大学・大学院・農学研究院・教授

研究成果の概要も同じくデータベース上で公開されています。2つの研究プロジェクトの成果報告書は以下の通り。

研究課題番号:18390253 研究概要(最新報告)
1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能
DJ-1はTH, DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2,6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番目のシステイン(C106)が、-SOH, SO_2H, SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH, DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。

2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用
虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。
更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。

研究課題番号:18023002 研究概要(最新報告)
1)DJ-1の機能解析-ドパミン生合成におけるDJ-1の機能
DJ-1はTH, DDCに直接結合し、活性を正に制御することを明らかにした。パーキンソン病患者で見られるDJ-1変異体にはその活性がない。また、ヘテロ変異体は野生 型DJ-1に対し、dominant negative効果を示し、ヘテロ変異も発症の一因となることが示唆された。H_2O_2, 6-OHDAなどで細胞に酸化ストレスを与えると、DJ-1の106番月のシステイン(C106)が、-SOH, SO_2H, SO_3Hと酸化される。軽度のC106酸化はTH, DDC活性を上昇させ、過度の酸化は逆に活性抑制を示したことにより、弧発性パーキンソン病発症におけるDJ-1機能が類推された。

2)DJ-1とDJ-1結合化合物による神経変性疾患治療薬への応用
虚血性脳梗塞モデルラット脳へのDJ-1注入により顕著に症状が抑制された。DJ-1結合化合物は、DJ-1のC106への過度の酸化を抑制することで、DJ-1活性を維持することを明らかとした。
更に、DJ-1結合化合物の更なる活性上昇を狙って、in silicoで構造改変した。また、250万化合物ライブラリーを使ったin silico大規模スクリーニングで、DJ-1結合化合物を複数単離した。

夫婦の研究テーマが非常に近く、共同研究として発表論文でも互いに共著者として名前を入れ合う例は珍しくなく、その場合は似たような成果報告書になることがあるかもしれません。夫婦である二人の研究がどれくらい独立しているのかを外部の人間が判断するのは難しいものがあります。

ただ上の報告書を見ると、2つの異なる研究助成であるはずなのに、報告書の文章が完全に一致しています。いくらなんでも、これでは釈明の余地はないのでしょう。せめて、二人の研究代表者がそれぞれ独立に報告書を書いていれば、こういうことは起きえないわけで、あまりにも露骨過ぎたかなと思います。論文報告が複数あれば、2つに振り分けるなどしておけば2つは別の研究だと主張できたかもしれません。

まあいずれにせよ今回は、「研究の実態がなかった」という北大の内部調査結果が、不正と判断する根拠になったのでしょう。

参考

  1. 教授夫婦、研究費不正取得 北大が処分、1550万円(産経ニュース2015.5.1):”北海道大は1日、農学研究院の有賀早苗教授(59)が、実体のない研究に科学研究費を申請し、計約1550万円を不正取得したとして、停職10カ月の懲戒処分にしたと発表した。…有賀教授は平成18年から19年にかけて、パーキンソン病患者に特有のがん遺伝子に関する研究費を申請したが、計画通り研究が行われておらず、研究成果などが夫の有賀特任教授が代表者となっている別の報告書と同じ内容だった。”
  2. <北大>科学研究費を不正受給 教授夫婦を停職10カ月 (Yahoo!ニュース/毎日新聞 5月1日:”北海道大は1日、国から計1550万円の科学研究費補助金を不正受給したとして、同大大学院農学研究院の有賀早苗教授(57)と夫で同大大学院薬学研究院の寛芳特任教授(64)を停職10カ月にしたと発表した。
  3. 研究費1550万円を不正受給、北大教授を停職10カ月(朝日新聞デジタル 2015年5月1日):” 北海道大学は1日、夫の研究を妻の研究としても申請し、計1550万円の公的研究費を受けていたとして、大学院農学研究院の有賀早苗教授(57)と、夫で大学院薬学研究院の有賀寛芳特任教授(64)を、ともに停職10カ月の懲戒処分にしたと発表した。”

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