Category Archives: 論文の出し方

論文を投稿するジャーナルの選び方

論文をどのジャーナルに投稿しようかと悩む人がいるかもしれません。インパクトファクターが全てではないという研究者も多いですが、実際には、インパクトファクターが高いジャーナルに論文業績があるほうが、良い評価を受けられる可能性が高いことは間違いありません。

教員公募の際に、応募者の論文業績リストにインパクトファクターを書かせる大学がありますし、教員の任用・昇進に際して論文数だけでなくインパクトファクターを考慮する大学もあります。いろいろな学会が自分のところの学会誌のインパクトファクターの変化を一喜一憂したりもしています。

研究キャリア形成の途上にいる限り、研究者はインパクトファクターを度外視して論文投稿先のジャーナルを選ぶことは不可能でしょう。そこで、インパクトファクターの範囲を意識しつつ、どのジャーナルに論文を投稿したらいいのかについて自分の思うところを書いてみます。これが正しいというわけではなく、考えるための話題提供程度のつもり。

ジャーナルには歴然とした「ランク」が存在します。一つの出版社は、それぞれのランクの論文を取りこぼしなく取り込むために、異なるランクのジャーナルを用意していることが多いです。例えば、ネイチャー系であれば、Nature、Nature姉妹紙、Nature Communications、Nature Communications姉妹紙、Scientific Reportsといった感じです。セルプレスであれば、Cell、Cell姉妹紙、Cell Reports、iScienceといったところでしょうか。

ネイチャー系が一番段階付けが細かいので、これを参考に他の出版社の雑誌がどのあたりに相当するのかを考えて雑誌を選ぶのも一つの方法だと思います。

NatureかScienceかCellか(インパクトファクター40以上)

生物系の場合、「CNS持ち」という言葉があるくらいで、セル、ネイチャー、サイエンスは別格の扱いです。インパクトファクターはNature、Science、Cellのいづれも40を超えており、他のジャーナルとは一線を画しています。NatureとScienceが科学の総合誌なのに対して、Cellは名前が示す通り生物学の専門誌、特に細胞生物学の専門誌です。細胞生物学の研究成果であれば、専門誌であるCellの方が掲載されやすいはずで、総合誌と専門誌を同列に並べるは変な話なのですが、それでもCNSと一括りにされて語られることが多いです。

これらの雑誌は、既成概念を変えるような大発見であったり、長年にわたって誰も成功しえなかったようなことを成し遂げた研究成果が掲載されるものであり、conceptural advanceの大きさが絶対条件となります。

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Nature姉妹紙かCell姉妹紙か (IF=15以上)

Nature Medicine、Nature Immunology、Nature Cell Biology、Nature Neuroscienceなど、Nature姉妹紙のトップには専門誌が位置しています。Cell Pressの専門誌としては、Neuron、Immunity、Molecular Cellなどがあります。

よくリジェクトされるときの決まり文句で「専門誌のほうに出したほうがよい」というものがありますが、Nature系の一般誌であるNature CommunicationsやScientific Reportsよりもこれらの専門誌の方が上位なので、これらの姉妹紙のトップジャーナルに蹴られた際に専門誌への投稿を勧められたとしても、それより「下位」の一般誌に掲載される可能性は十分にあります。

ネイチャーの姉妹紙の中のトップジャーナルやセルプレスの専門誌のトップジャーナルは、それぞれの研究領域における最高峰に位置するものであり、インパクトファクターの大小だけでは雑誌の評価や受理される難しさは測れません。業界ごとに、このジャーナルはこうだよねという見方が存在しています。

  1. Nature Medicine: Impact factor (2020) = 53.44
  2. Nature Genetics: Impact factor (2020) = 38.333
  3. Nature Cell Biology: Impact factor (2020) = 28.824
  4. Molecular Cell: Impact factor (2020) = 17.970
  5. Nature Immunology: Impact factor (2020) = 25.606
  6. Immunity: Impact factor (2020) = 31.745
  7. Nature Neuroscience: Impact factor (2020) = 24.884
  8. Neuron: Impact factor (2020) = 17.173

 

PLOS BiologyかeLifeかNature CommunicationsかCell ReportsかCurrent BiologyかPNASか(インパクトファクター10前後の総合生命科学雑誌)

生命科学分野における総合誌で、インパクトファクターが10前後のものが多数あります。

PLOS BiologyはPLOSのフラッグシップジャーナル。eLifeは独自の編集・査読方針を打ち出した生命科学専門誌で、どちらもインパクトファクター的には同じところに位置します。理念が素晴らしくてもインパクトファクターが低いと、高い雑誌に客を奪われる傾向が強いみたい。PNASは総合科学雑誌なので、他分野の研究者からも認められやすいため、雑誌の見られ方としては、インパクトファクターの影響を受けにくい。

  1. Nature Communications: Impact factor (2020)=14.914
  2. PNAS: Impact factor (2020)=12.291
  3. Current Biology: Impact factor (2020)=10.834
  4. Cell Reports: Impact factor (2020)=9.423
  5. PLOS Biology: Impact factor (2020)=8.029
  6. eLife: Impact factor (2020)=8.14

全然関係ないけど、PNASのことを「ピーナス」と発音する日本人研究者がいまだにいるけど、それはジャーナルの名前ではなくて、男性の外部生殖器であるところのpenisにしか聞こえないので、やめたほうが良いといつも思う。ピーエヌエイエスでいいんじゃないかな。

 

Communications BiologyかPLOS姉妹紙かFrontiers専門誌か(インパクトファクター5前後の専門誌)

  1. Communications Biology: Impact factor (2020)= 5.489
  2. Journal of Biological Chemistry: Impact factor (2020)= 5.157

 

Scientific ReportsかiScienceかPLOS ONEか(オープンアクセスメガジャーナルの総合誌)

サイエンティフィックリポーツはネイチャー系ジャーナルの一番下に位置付けられています。上で戦うのに疲れたら、サイレポにトランスファーするというのは一つの選択です。

  1. Scientific Reports: Impact factor (2020)= 4.379
  2. iScience: Impact factor (2020)= 5.08
  3. PLOS ONE: Impact factor (2020)= 3.240

 

インパクトファクターで選ぶ

研究は中身が大事と言いつつもインパクトファクターを重視する研究者がほとんどですので、上記のようにインパクトファクターを意識して投稿先を選ぶことは基本的な態度だと思います。

 

トランスファーか他社の同程度の雑誌に出し直すか

最近は投稿したファイル一式をトランスファーする制度があるので、同じ出版社で雑誌のレベルを落として投稿する場合には、出し直す手間がありません。レフリーーのコメントも次の雑誌に送られるので、採否の決定がスピードアップします。

この便利なトランスファー制度のおかげで、論文の投稿先は最初のサブミッションよりも、リジェクトされたあとの方が悩みます。つまり、同じ出版社の下位ジャーナルにトランスファーするか、それとも別の出版社の同じインパクトファクターの雑誌に出し直すかで悩むわけです。自分の論文の価値を信じるなら、雑誌の格を落としたくないのですが、さっさと通る雑誌に通して楽になって次に進みたい気持ちもよぎります。

 

専門誌か総合誌かで選ぶ

論文業績を誰に対してアピールする必要があるのか?生物系の人間が、物理化学系の人たちにも業績を認めてもらう必要がある状況が想定されるのであれば、生物、物理、化学と広いスコープを持つジャーナルを選ぶという戦略があります。

 

アクセプトまでが最短最速の雑誌を選ぶ

公募されていた教員の職の最有力候補に選ばれたが、規程の論文数に足りていないため、いついつまでに論文数を増やす必要がありという状況になることがあり得ます。また、有期の職を得た場合、何年間で何報という規定を満たさないと職が更新してもらえない場合がありえます。

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そんなときは、雑誌の評判に構っている場合ではないので、要件を満たすジャーナルであればどの雑誌でも良いでしょう。そんなニーズを満たすために作られた言われているのがMDPIのジャーナル群です。

関連記事 ⇒ MDPIはハゲタカジャーナルなのか?気になるMDPIの評判まとめ

PLOS ONEのIF、採択率、査読期間、評判

PLOS ONEとは

PLOS ONEは、PLOS(Public Library of Science)が2006年に創刊したオンラインジャーナルです。地球上のどこの誰でもネットにアクセスできさえすれば無料で科学論文を読むことができるという点が画期的でした。大学にいるときに文献検索していると、ほとんどの論文が無料で読めるのが当たり前だと錯覚しますが、たまに自宅からアクセスすると読みたい論文が40ドルなど支払い画面に誘導されて、所属大学が出版社と契約して高いお金を払っていただけであって、実は科学論文というものはほとんどの場合が無料ではなかったことに気付かされます。

また、PLOS ONEはデータが確かなものであれば、研究の意義は(あまり?)問わないという点も画期的でした。研究の意義を決めるのは、その論文が出版された後、その論文を読んだ読者にゆだねればよいという発想です。

PLOS ONEの守備範囲はもともと生物学や医学でしたが、後に工学や人文社会科学なども含むようになったようです。そのためか、基礎科学の研究者から見ると、非科学的と思える突飛な論文が出版されて物議を醸したりします。

関連記事 ⇒ 人間の手の精巧さは創造主なる神の賜物 PLOS ONE

こんな論文が掲載されてしまったということは、査読や編集がちゃんとしていたのかという疑念を生じさせますが、PLOS ONEをハゲタカジャーナルと見なす研究者はとりあえずいないはず。

PLOS ONEのインパクトファクター

PLOS ONEは2006年の創刊で、最初インパクトファクターが2009年4.351、そして2010年は4.411と好調な滑り出しだったと思います。しかし、2011年は4.092と翳りが見え始め、2012年には3.730と4を切ってしまいました。PLOS ONEに続いて同じコンセプトのオープンアクセスジャーナルが多数創刊されたせいか、その後インパクトファクターは下がり気味で、2020年のインパクトファクターは3.240になっています。

  1. The Rise and Fall of PLOS ONE’s Impact Factor (2012 = 3.730) By PHIL DAVISJUN 20, 2013  The scholarly kitchen
  2. PLOS One (Wikipedia)

PLOS ONEの採択率

PLOS ONEの採択率は、当初70%程度と非常に高かったような記憶がありますが、今みてみたら45%前後でした(2019年)。

  1. PLOS ONE Journal Information 

 

PLOS ONEの査読期間

投稿してから、エディターキックを食らうかそれとも査読にまわるかの決定までの日数は2週間程度。査読後の可否の決定までが45日前後、最終的にアクセプトかリジェクトかの決定までが3か月程度というのが、PLOS ONEが公表しているタイムスケジュール実績になっています。

  1. PLOS ONE Journal Information 

まあ普通それくらいかかるでしょうとは思いますが、MDPIなどのように査読の質を犠牲にしても速さ命で突き進むジャーナルを見慣れてしまうと、遅いと感じる人も多いのではないでしょうか。研究者のほとんどは、限られた年数の間に論文のアクセプトまでこぎつけないと次がないという崖っぷちの生活をしているので、アクセプトまでのスピード感は、論文投稿者が望む最大のサービスだと言えます。

  1. https://scirev.org/journal/plos-one/ 

 

PLOS ONEの評判

PLOS ONEは、創刊当初は採択率7割で出せば通る救済雑誌のイメージを自分は持っていたのですが、その後、採択率はもう少し厳しくなったようで、最近は4~5割の間みたいです。PLOS ONEを良い雑誌と見なすか、良い雑誌とは見ないかは、その人が普段どのレベルのジャーナルに出しているかにもよるので、何とも言えないところです。

ツイッターでは辛口の声も聞かれますが、リアルでどうかというと、自分はPLOS ONEを持ち上げる人に出会ったことはありませんが、かといって、PLOS ONEのことをことさらけなす人にも出会ったことがありません。

ネットのレビューサイトに、多数の経験談が掲載されているのでURLだけ紹介しておきます(英語読むのがめんどくさいので)。査読がどれくらい厳しいのか、などの情報が得られると思います。

  1. https://scirev.org/reviews/plos-one/ 

個人的なことをいうと、もともとPLOS (Public Library of Science)の理念は素晴らしいと思っていたので、そのPLOSが明確なコンセプトのもとにつくったPLOS ONEにも良い印象があります。高い採択率のオープンアクセスジャーナルでサイエンティフィックな意義にはこだわらないという以上、玉石混交になるのは想定内なのではないでしょうか。

PLOS ONEは創刊当初の勢いを失っているように思います。競合他社が同様の戦略を採用しており、Nature系のScientific ReportsやCell Press社のiScienceなどに勢いを感じます。

 

参考

  1. PLOS ONEのこれまで,いま,この先 佐藤 翔 情報管理/57 巻 (2014) 9 号 p. 607-617 DOI https://doi.org/10.1241/johokanri.57.607

インパクトファクター2018学術誌ランキング

 

なぜあなたの研究は進まないのか?
なぜあなたは論文が書けないのか?
なぜあなたの発表は伝わらないのか?

Science Research Writing 


医学雑誌のインパクトファクターは、記事を分けました。

関連記事⇒ 医学系の学術雑誌インパクトファクター 2018ランキング


インパクトファクター2019年6月発表

毎年6月にクラリベイト(Clarivate)がJournal Citation Reports (JCR) を発表しています。2019年6月には前年度の集計JCR2018 が発表されます。ClarivateのJCRは契約をしている大学や研究機関しか見ることができないのですが、各雑誌社が多くの場合に自分の雑誌のインパクトファクターを直ちにウェブサイトに掲載するので、最新の数値を雑誌サイトで調べることが簡単にできます。

以下、Nature 43.070(2018)と表記した場合、2019年6月に発表された2018年のジャーナルサイテーションインデックス(JCR)(つまり、インパクトファクター)という意味です。

主なジャーナルの最新のインパクトファクターを見てみます。

NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE 79.258(2017)-70.670(2018)
JAMA-JOURNAL OF THE AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION 47.661(2017)-51.273(2018)
Nature 41.577(2017)-43.070(2018)
SCIENCE 41.058(2017)-41.037(2018)
NATURE MATERIALS 39.235(2017)-38.887(2018)
NATURE BIOTECHNOLOGY 35.724(2017)-31.864(2018)
NATURE MEDICINE 32.621(2017)-30.641(2018)
CELL 31.398(2017)-36.216(2018)
NATURE GENETICS 27.125(2017)-25.455(2018)
NATURE METHODS 26.919(2017)-28.467(2018)
Nature Chemistry 26.201(2017)-23.193(2018)
Cell Stem Cell 23.290(2017)-21.464(2018)
BMJ-British Medical Journal 23.259(2017)-27.604(2018)
CANCER CELL 22.844(2017)-23.916(2018)
NATURE NEUROSCIENCE 19.912(2017)-21.126(2018)
NATURE CELL BIOLOGY 19.064(2017)-17.728(2018)
NEURON 14.318(2017)-14.403(2018)
MOLECULAR CELL 14.248(2017)-14.548(2018)
NATURE STRUCTURAL & MOLECULAR BIOLOGY 13.333(2017)-12.109(2018)
Nature Protocols 12.423(2017)-11.334(2018)
Nature Communications 12.353(2017)-11.878(2018)
PLOS MEDICINE 11.675(2017)-11.048(2018)
Molecular Psychiatry 11.640 (2017)-11.973(2018)
Science Advances 11.511(2017)-12.804(2018)
Nature Plants 11.471(2017)-13.297(2018)
EMBO JOURNAL 10.557(2017)-11.227(2018)
GENOME RESEARCH 10.101(2017)-9.944(2018)
DEVELOPMENTAL CELL 9.616(2017)-9.190(2018)
PROCEEDINGS OF THE NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES OF THE UNITED STATES OF AMERICA (PNAS) 9.504(2017)-9.580(2018)
GENES & DEVELOPMENT 9.462(2017)-8.990(2018)
Molecular Plant 9.326(2017)-10.812(2018)
CURRENT BIOLOGY 9.251(2017)-9.193(2018)
PLOS BIOLOGY 9.163(2017)-8.386(2018)
PHYSICAL REVIEW LETTERS 8.839(2017)-9.227(2018)
JOURNAL OF CELL BIOLOGY 8.784(2017)-8.891(2018)
EMBO REPORTS 8.749(2017)-8.383(2018)
PLANT CELL 8.228(2017)
Cell Reports 8.032(2017)
eLife 7.616(2017)
NEURAL NETWORKS 7.197(2017)
Stem Cell Reports 6.537(2017)
Science Signaling 6.378(2017)
CEREBRAL CORTEX 6.308(2017)
GLIA 5.846(2017)
BMC BIOLOGY 5.770(2017)
FASEB JOURNAL 5.595(2017)
Journal of Molecular Cell Biology 5.595(2017)
PLoS Genetics 5.540(2017)
DEVELOPMENT 5.413(2017)
Scientific Data 5.305(2017)
SLEEP 5.135(2017)
Human Molecular Genetics 4.902(2017)
Cells 4.829(2017)
FEBS Journal 4.530(2017)
RNA 4.490(2017)
BIOESSAYS 4.419(2017)
Scientific Reports 4.122(2017)
GENETICS 4.075(2017)v
JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY 4.010(2017)
METHODS 3.998(2017)
Open Biology 3.286(2017)
CEREBELLUM 3.199(2017)
Frontiers in Neural Circuits 3.131(2017)
HIPPOCAMPUS 3.966(2017)
PLoS Computational Biology 3.955(2017)
Biochemical Journal 3.857 (2017)
BMC GENOMICS 3.730(2017)
CELL CALCIUM 3.718(2017)
NEUROSCIENCE 3.382(2017)
Zoological Letters 2.900(2017)
PLoS One 2.766(2017)
G3-Genes Genomes Genetics 2.742(2017)
BMC Developmental Biology 2.427(2017)
Neuroscience Research 2.277(2017)
Biology Open 2.217(2017)
Mechanisms of Development 1.900 (2017)
JoVE 1.184(2017)

参考

  1. 各雑誌社のウェブサイト
  2. クラリベイト プレスリリース
  3. 2018 Journal Citation Reports
  4. [2018年] 最新インパクトファクター 基礎医学・生命科学 負け犬主義。2018年06月27日02:13

 


インパクト・ファクターとは?

ジャーナル・インパクト・ファクター(Journal Impact Factor)は、学術雑誌の影響力を測る指標で、対象年における引用回数を、対象年に先立つ 2 年間にそのジャーナルが掲載したソース項目の総数で割ることによって計算されますインパクトファクターについて  Clarivate Analytics)。

The Impact Factor of journal J in the calendar year X is the number of citations received by J in X to any item published in J in (X-1) or (X-2), divided by the number of source items published in J in (X-1) or (X-2). (Measuring  a journal’s impact. ELSEVIER)

日本語で説明されたほうがわかりやすいですね。

2010年のIFは次のように計算されます。

IFX =2008年と2009年にジャーナルX誌が掲載した論文の2010年の総引用回数
2008年と2009年にジャーナルX誌が掲載した全ての引用可能な論文数

お気付きだと思いますが、2010年のIFは2011年以降に利用できるようになります。(nue.riec.tohoku.ac.jp

 

インパクトファクターが高いジャーナルに論文が通るかどうかで、研究者は一喜一憂しますが、インパクトファクターの動向が気がかりなのは、雑誌社にとっても同じです。ちなみに、研究分野や雑誌のスコープにより数字の出方がかなり異なるため、分野や性格の違う雑誌同士でインパクトファクターを比較して優劣を論じるのは無意味です。

しかし、現実的にはインパクトファクターは研究者の業績の目安として使われることが多く、ファカルティポジションへの応募書類の中の業績一覧にインパクトファファクターを併記させる大学があるなど、人物評価の基準として用いられることがあるようです。

インパクトファクターの調べ方

毎年クラリベイトという会社が学術誌のインパクトファクターを計算して、公表しているようです。多くの雑誌社は自分の雑誌のインパクトファクターをウェブサイト上で紹介しています。インターネットを検索すると、インパクトファクターの一覧表がヒットします。

 

2016年のインパクトファクターが、公表されました。その中から一部を紹介します(参照サイト: researchgate.net/post/New_Impact_factors_2017_for_Journals_are_released_nowbioxbio.com/ifCell Press Journal Metrics、個々のジャーナルサイトなど)

2017年の6月に発表されるインパクトファクターは、「2016年のインパクトファクター」です。ややこしいですが、当サイトでは、Nature 40.137(2016)-41.577(2017)のように表示することにします。

雑誌研究分野別インファクトファクター一覧

科学総合誌

  1. Nature (ネイチャー)40.137(2016) (推移:31.434 – 34.48 – 36.101 – 36.28 – 42.351 – 41.456 – 38.138 – 40.137(2016) bioxbio.com)
  2. Science (サイエンス)37.205(2016) (推移:28.103 – 29.747 – 31.364 – 31.201 – 31.027 – 31.477  –  33.611 – 34.661 –  37.205(2016)   bioxbio.com)
  3. Nature Communications (ネイチャーコミュニケーションズ)12.124(2016) (推移:7.396 – 10.015 – 10.742 – 11.470 – 11.329 – 12.124(2016) bioxbio.com)
  4. PNAS (Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America) (ピーエヌエイエス)9.661(2016) (推移:bioxbio.com
  5. Scientific Reports (サイエンティフィックリポーツ)4.259(2016) (推移:2.927 – 5.078 – 5.578 – 5.228 – 4.259(2016) bioxbio.com

 

生物学総合誌

  1. Cell 30.41(2016)(セル) (推移:32.242 – 28.71 – 30.41(2016) bioxbio.com)
  2. PLOS Biology (プロスバイオロジー)9.797(2016) (推移:9.343 – 8.668 – 9.797(2016) bioxbio.com)
  3. Current Biology (カレントバイオロジー) 8.851(2016) (推移:9.571 – 8.983 – 8.851(2016) bioxbio.com)
  4. Cell Reports (セルリポーツ)8.282(2016) ( 推移:7.87 – 8.358 – 8.282(2016) bioxbio.com)
  5. elife (イーライフ)7.725(2016) (推移:9.322 – 8.282 – 7.725(2016) bioxbio.com)
  6. BMC Biology 6.779(2016) (推移:7.984 – 6.967 – 6.779(2016) bioxbio.com)
  7. Proceedings of the Royal Society B-Biological Sciences  4.940(2016)
  8. PLOS ONE (プロスワン)2.806(2016) (推移:3.234 – 3.057 – 2.806(2016) bioxbio.com)
  9. Biology Open (バイオロジーオープン)2.095(2016) 

 



 

発生生物学

  1. Genes & Development 9.413(2016) (推移 13.623 – 12.075 – 12.889 – 11.659 – 12.444 – 12.639 – 10.798 – 10.042 – 9.413(2016) bioxbio.com)
  2. Developmental Cell 9.174(2016) (推移 12.882 – 13.363 – 13.946 – 14.03 – 12.861 – 10.366 – 9.708 – 9.338 – 9.174(2016) bioxbio.com)
  3. Development 5.843(2016) (推移 6.812 – 7.194 – 6.898 – 6.596 – 6.208 – 6.273 – 6.462 – 6.059 – 5.843(2016) bioxbio.com)
  4. Developmental Biology 2.944(2016) (推移 4.416 – 4.379 – 4.094 – 4.069 – 3.868 – 3.637 – 3.547 – 3.155 – 2.944(2016) bioxbio.com)
  5. Differentiation 2.567(2016)
  6. Development Growth & Differentiation 2.145(2016)
  7. Developmental Dynamics 2.004(2016)
  8. International Journal of Developmental Biology 1.981(2016)
  9. Mechanisms of Development 1.333(2016) (推移 2.534 – 2.827 – 2.958 – 2.833 – 2.383 – 2.238 – 2.440 – 2.041 – 1.333(2016) bioxbio.com)

 

ゲノム科学・遺伝学

  1. Nature Genetics 27.959(2016)
  2. Genome Research  11.922(2016)
  3. Genome Biology  11.908(2016)
  4. PLoS Genetics 6.100(2016)
  5. Genetics 4.556(2016)
  6. BMC Genomics 3.729(2016)
  7. Genomics 2.801(2016)

 

神経科学

  1. Nature Neuroscience 17.839(2016)
  2. Neuron 14.024(2016)
  3. Frontiers in Neuroendocrinology 9.425(2016)
  4. Journal of Neuroscience    5.988(2016) (推移 7.452 – 7.178 – 7.271 – 7.115 – 6.908 – 6.747 – 6.344 – 5.924 – 5.988(2016) bioxbio.com)
  5. Frontiers in Molecular Neuroscience 5.076(2016)
  6. Frontiers in Cellular Neuroscience 4.555(2016)
  7. Frontiers in Aging Neuroscience 4.504(2016)
  8. Frontiers in Neuroinformatics 3.870(2016)
  9. Frontiers in Neuroscience 3.566(2016)
  10. Frontiers in Neurology 3.552(2016)
  11. Frontiers in Neuroanatomy 3.267(2016)
  12. Frontiers in Neural Circuits 3.005(2016)
  13. European Journal of Neuroscience  2.941(2016)
  14. Journal of Neuroscience Methods 2.554(2016)
  15. Journal of Neuroscience Research 2.481(2016)
  16. BMC Neuroscience 2.312(2016)
  17. Neuroscience Letters 2.180(2016)
  18. Neuroscience Research 2.060(2016)

 

細胞生物学、分子生物学、その他の生物学専門誌

  1. Nature Biotechnology 41.667
  2. Nature Methods 25.062
  3. Nature Cell Biology 20.060
  4. Molecular Cell  14.714
  5. Nucleic Acids Research (NAR)  10.162(2016) (推移 6.878 – 7.479 – 7.836 – 8.026 – 8.278 – 8.808 – 9.112 – 9.202 – 10.162(2016) bioxbio.com)
  6. EMBO J 9.792(2016)
  7. Molecular Plant  8.827(2016)
  8. Plant Cell 8.688(2016)
  9. Journal of Cell Biology (JCB)  7.955(2016)
  10. Cell Reports 8.282(2016)
  11. Frontiers in Ecology and the Environment 8.039(2016)
  12. Biochimica et Biophysica Acta (BBA)- General subjects  4.702(2016)
  13. Frontiers in Pharmacology 4.400(2016)
  14. Journal of Biological Chemistry (JBC) 4.125(2016)
  15. Biochemical and Biophysical Research Communications (BBRC)  2.466(2016)
  16. Genes to Cells 1.993(2016)
  17. Cell Structure and Function 1.900(2016)

化学

  1. Nature Chemistry 25.870(2016)
  2. Journal of the American Chemical Society (JACS) 13.858(2016)
  3. Angewandte Chemie-International Edition  11.994(2016)
  4. Bulletin of the Chemical Society of Japan 2.297(2016)
  5. Chemistry Letters 1.801(2016)

 

物理 物理化学 材料科学 工学

  1. Nature Materials 39.737(2016)
  2. Nature Nanotechnology 38.986(2016)
  3. Nature Photonics 37.852(2016)
  4. Physical Review Letters 8.462(2016)
  5. Soft Robotics 8.649 (2016)

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

医学系雑誌のインパクトファクター

医学雑誌のインパクトファクターは、記事を分けました。

関連記事⇒ 医学系の学術雑誌インパクトファクター 2018ランキング

医学系総合誌

  1. New England Journal of Medicine (NEJM)  72.406(2016)
  2. LANCET 47.831(2016)-53.254(2017) –59.102(2018)
  3. JAMA (Journal of the American Medical Association) 44.405(2016)
  4. Nature Medicine 29.886(2016)

 

医学系専門誌

  1. LANCET Oncology   33.900(2016)
  2. Cancer Cell 27.407(2016)
  3. Journal of Clinical Oncology 24.008(2016)
  4. LANCET Neurology 26.284(2016)
  5. Immunity 22.845(2016)
  6. Nature Immunology 21.506(2016)
  7. JACC (Journal of the American College of Cardiology) 19.896(2016)
  8. Molecular Psychiatry 13.204(2016)
  9. Journal of Clinical Investigation 12.784(2016)
  10. Liver Cancer 7.854(2016)
  11. Frontiers in Immunology 6.429(2016)
  12. Epilepsia 5.295(2016)

 

参考

  1. New Impact factors (2017) for Journals are released now (https://www.researchgate.net/post/New_Impact_factors_2017_for_Journals_are_released_now)
  2. NATURE RESEARCH JOURNAL METRICS ネイチャーおよびネイチャー姉妹紙のインパクトファクター一覧など
  3. Cell Press Journal Metrics JCR(2016) セル・プレスジャーナルのインパクトファクター一覧
  4. Frontiers journals indexed in the 2016 Journal Citation Reports (Table 1) フロンティアジャーナルのインパクトファクター一覧
  5. ELSEVIER Journal Metrics: Find the latest metrics for Elsevier’s journals per subject area ELSEVER社が出版する学術雑誌のインパクトファクター総覧(分野別)
  6. Journal IF (bioxbio.com) ジャーナル・インパクトファクター検索サイト
  7. Journal Citation Reports (JCR) で最新版(2016年)のインパクトファクターが公表されました (鹿児島大学附属図書館 情報サービス課情報調査支援係 2017.6.15):” 2017年6月14日付(米国時間)で最新版Journal Citation Reports (JCR) がリリースされ、インパクトファクターをはじめとする、ジャーナルの各種指標の最新データ(2016年)が公表されました。世界81か国から236分野、11,459誌が収録されています。”
  8. World’s most influential journals for 2017 unveiled in the Journal Citation Reports from Clarivate Analytics (Clarivate Analytics News releases):”PHILADELPHIA, June 14, 2017 /PRNewswire/ — Clarivate Analytics today released the 2017 Journal Citation Reports (JCR), an annual update of the world’s most influential and comprehensive resource for information on highly cited, peer-reviewed publications and the source of Journal Impact Factor (JIF) scores. “
  9. World’s most influential journals for 2017 unveiled in the Journal Citation Reports (tass.com June 14,2017 16:00 UTC+3) :”Clarivate Analytics today released the 2017 Journal Citation Reports (JCR), an annual update of the world’s most influential and comprehensive resource for information on highly cited, peer-reviewed publications and the source of Journal Impact Factor (JIF) scores.”
  10. Scientific Reports 2017年発表インパクトファクター 4.259 (http://www.natureasia.com/ja-jp/srep/):”2016 Journal Citation Reports (Thomson Reuters, 2017) Scientific Reports は、一次研究論文を扱う、オープンアクセスの電子ジャーナルです。本誌は、自然科学(生物学、化学、物理学、地球科学)のあらゆる領域を対象としています。
  11. ACMG’s Genetics in Medicine Journal Receives Record High Impact Factor of 8.229 for 2016: GIM Now in Top 2.5% of All Indexed Journals (PR Newswire/American College of Medical Genetics and Genomics 15 Jun, 2017, 11:33 ET):”The American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG) announced that the Thomson Reuters Impact Factor Journal Citation Reports has just increased the impact factor of the ACMG’s peer-reviewed medical genetics and genomics journal, Genetics in Medicine (GIM) to 8.229 for 2016, up from 7.710 in 2015. GIM is currently ranked 10 of 166 titles in the Genetics & Heredity category and is the top-ranked of genetic journal that has a primarily clinical focus.”
  12. Clinical Chemistry Impact Factor Rises to 8, the Highest in the History of the Journal (Newswise/American Association for Clinical Chemistry (AACC) 15-Jun-2017 1:00 PM EDT):”AACC, a global scientific and medical professional organization dedicated to better health through laboratory medicine, is pleased to announce that the impact factor of its journal, Clinical Chemistry, has risen to 8.008 in the 2016 Thomson Reuters Journal Citation Reports. This impact factor places Clinical Chemistry in the top 2.6% of 12,062 ranked academic journals and speaks to the significant influence of the science it publishes on laboratory medicine and patient care.”
  13. Celebrating a high performing new journal in quantum information (EurekAlert!/University of New South Wales Public Release: 15-Jun-2017):”UNSW Sydney is proud of the early publication performance, influence and reach of its Nature Partner Journal npj Quantum Information, from advancing discovery to affecting public discourse. At a time of the year when the Journal Citation ReportsTM are published, UNSW sees npj Quantum Information’s inaugural Impact Factor in the context of a variety of journal-based metrics that provide a richer view of the journal’s performance. For 2016, the range of performance metrics, which are made available on the journal website, include:2-year Impact Factor: 9.111   Immediacy Index: 1.560   Eigenfactor® score: 0.00060   Article Influence Score: 4.617″
  14. 日本発化学ジャーナルの行く末は? (日本最大の化学ポータルサイト Chem-Station 2015/11/20)

 

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リジェクトへの怒り・落胆【論文を出す力】

研究者には論文を書く能力が必要ですが、それだけでなく、論文を世に出す(=アクセプトに漕ぎ着ける)力も必要です。両者は重なる部分もありますが、質的に全く異なります。論文を書くうえで重要なのは知性ですが、論文を出すときに重要なのはリジェクトされたときの落胆、怒り、失望、疑念などの感情をコントロールする力、揺るぎない信念、状況を見極める客観性や判断力です。

リジェクトに対する心構えが出来ているだけで、受けるダメージ及び回復力が変わってくると思いますので、これから論文を出す人の参考になりそうな記事を紹介しようと思い立ちました。また、結果だけを見ると、みんな順調に論文を通しているように思えるかもしれませんが、実際には、他人には想像がつかないような苦労の末になんとかアクセプトまで漕ぎ着けたという場合がほとんどです。そんな論文出版の苦労を分かち合える記事を、以下に紹介します。

折れない心

何年もかけてやってきたプロジェクトの成果が、辛辣なコメントともにリジェクトとなった場合は、自分の研究者としての能力を否定された気分になり、相当なダメージを受けるが、折れないタフな心をもってアクセプトになるまで戦い続けるしかない。 …

散々追加実験を頑張った上での再投稿にも関わらず、やはりリジェクトとなった場合は時間的にも精神的にも相当ダメージは大きく、また半年〜1年前にもどって別のジャーナルにいちから投稿し直しとなる、、、 (有名ジャーナルに論文が掲載される意義 IMAYOSHI LAB 2013年11月22日)

最近、友人の一人の論文が、Natureにacceptされたのですが、それが実にすさまじい闘いだったのです。彼が最初の論文を書き上げたのが、3年ほど前。まず、Natureに送りました。Editorial kickにはならず、レビューに回りましたが(トップジャーナルでは、レビューに回るだけでも凄いのです)、rejectされました。レビューアーからのコメントがあったため、追加実験を行って全てのコメントに答えた上で再投稿した。しかし、結果はやはりreject。そこで、彼はScienceに投稿しました。Scienceでもレビューに回りましたがreject。これだけでも凄すぎるのに、これからが彼の凄いところでした。Scienceで得たコメントで指摘された点を改善し、なんと再びNatureへ投稿。再びレビューに回るも、reject。再実験を重ねた上、レビューアーのコメントに答えて、Editorへ抗議。その後、結局、acceptされたのです。(Never give up! Alltid Leende April 22nd, 2013

まず青い方からこの表をみる。サイエンスの689というのは、最初の投稿先がサイエンスでそのままサイエンスに採用された論文が689報あるということである。サイエンスに蹴られてnatureに採用されたのが82報あるということ。しかしcell誌にはサイエンスリジェクト論文は一つも載らなかった(natureリジェクト論文も載っていない)。(サイエンスに蹴られた論文がネイチャーに載る・・・ がんの分子腫瘍学・遺伝学 2012年10月22日)

 

批判を受け止める力

Coping with publication rejection is a key skill for any academic. It can require emotional fortitude, an ability to profit from criticism, and, sometimes, negotiating skills. Many papers in the scientific literature were initially rejected, often sparking vigorous scientific discussions before their eventual publication, whether in the same journal or a different one. (Riding Out Rejection By Kate Yandell The Scientist March 1, 2015)

 

リジェクトされた時にやるべきこと

一度リジェクトされただけであきらめてしまうのは、マラソンを走りながら、ゴールのわずか数センチ手前であきらめてしまうようなものだ。もし著者が掲載に強い意志を持っているならば、次に取るべきステップは、リジェクトのレターにあるコメントすべてを正確に理解することである。 (原稿がリジェクトされた時の対処法 根拠と経験に基づく見解 Karen L. Woolley, PhD; and J. Patrick Barron, BA. CHEST 2009; 135:573-577. Ronbun.jp 大鵬薬品工業株式会社)

論文を書き上げることとそれをアクセプトさせることには、恋愛と結婚ほどの違いがある。論文を書き続ける限りリジェクトとのつきあいは切れないと 思った方がよい。私の場合、二本目の論文がリジェクトされて、それはそのままお蔵入りとなった。思えばその時、それから合計 33 回もリジェクトされるようになるとはちょっと想像していなかった。最初のリジェクトの時には、自分の人格が否定されたようでずいぶん落ち込んだ。もちろん 今でも、リジェクトされたときのショックは大きい(とくに、一週間に二度リジェクトの手紙をもらったときなど)。しかしものは考えようで、リジェクトされたとは思わないようにしている。つまり、どこかの大先生に論文を読んでもらったのだと思うことである。たいていの場合、その論文のどこがいけないのか指摘 が付いてくる。それらを参考にして論文を改訂し、別の雑誌に投稿すればいいだけの話だ。(これから論文を書く若者のために 改訂第二版 1999.1.21. ver. 2.1 酒井 聡樹 )

 

リジェクトという名の授業料

論文に限らず、拒絶されるのは自分を見直す良い機会だと思います。

研究者、とくにチームのリーダーは、人から学ぶ機会が少なくなるものである。レビューアーのコメントの中には、書いた本人が気づかなかったような議論がなされていることがある。そして、論理の展開に落とし穴があることが指摘されている。そのような議論をクリアするために、追加実験を行い、実験結果を見直すと、新しい発見が生まれてきたことを経験している。また、確実な論拠を得て、論理の展開がしっかりしたものとなり、論文の価値が高まっていくのを実感することがある。レビューアーの中には、ここまで結果を出せば論文になるよと、到達目標を提示してくるケースがある。このような到達目標の多くは、研究者にとり、難度の高いものである場合が多い。「それができれば苦労しない」というわけである。しかし、ここで一念奮起をしてみると、目標を絞っているものなので、意外と短期間にブレークスルーしてしまうことがある。そうなるとレビューアーさまさまである。このような「良い」レビューアーは、まさに教師である。リジェクトという高い授業料を払う価値があるものでもある。査読に関する理想と現実

 

15回リジェクトされた論文

Lynn Margulis (1938-2011)

Her ground breaking endosymbiotic theory paper, which suggested that eukaryotic organelles have evolved from the symbiosis between multiple prokaryotic organisms, has been rejected by no less than 15 journals, until it was finally accepted by the Journal of Theoretical Biology. Prof. Margulis kept submitting her revolutionary paper again and again because she knew she’s right and believed in her hypothesis. (“I am sorry to inform you” or how to deal with paper rejection. labguru.com December 03, 2012 By Chen Guttman)

 

リジェクト:苦難の始まり

最初の投稿から、すでに8ヶ月が経っていた。その後、別の雑誌に投稿し直してレビューされている最中に、ほんの少しだけ僕たちの仕事に似た論文が別の雑誌に出た。僕はその論文にはすぐに気がついたが、内容は一見似ていたが完全に違っていたので、全く影響はないだろうと思っていた。しかし、それは甘かった。(苦労の論文 2005年12月01日 ハエが星見た maplefly.exblog.jp)

 

アクセプトまでの苦難の道のり

それはもうここでは語り尽くせないほどの苫難の道のりでした。先ほどのCCS と油田の 研究は最初Natureに投稿しましたが,案の定, 3 日後にEditor reject されました。 … このEditor rejectを教訓にcover letterを徹底的に改定した後,次に投稿したのが Scienceでした。… 3 名のReviewer に回った結果のrejectでした。… わずか1 週間程度で必死に論文の改定と原稿よりも分厚いrebuttal 文書を作成してEditorに送り付けた結果, 再審査が 認められました。… Editor からの 返答は追加3名計5 名!のReviewerによる審査の結果, ポジティブが2 名,ネガティブが2 名, 超ネガティブが1名でのrejectでした。Reviewerが5人というところも驚きでしたが,超ネガティブなReviewerのコメントにはさらに驚かされ,A4 紙5枚に渡るコメントを頂き,最後に「まだまだ言いたいことは沢山あるが, もう疲れた」と書き添えられていました。… 半年間にも及んだScieneとの戦いもここで幕切れとなりました。 その後,仕方がないので次はPNASに出すかという気持ちが完全に間違いでした。原稿に「Scienceでいい所まで行ったんだぞ」といううぬぼれが出ていたのだと思います。あっさりとEditor rejectされました。… それからは気を入れなおしてNature Geoscienceを経由してNature Communicationsに投稿し,最終的に掲載が決定したのはNatureに投稿してから1 年半が経過していました。実のところ Natureにreject された時にNature Communicationsへの投稿を推薦されたのですが, この時に投稿してもアクセプトされなかったと思います。Scienceとの戦いで論文のクオリティ ーが上がったことは間違いなく,そう思うとあの時の戦いは無駄ではなかったと思っています。(CiNii地圏微生物学のおはなし〜論文投稿の厳しさと優しさ〜 Japanese Society of Microbial Ecology 微生態和文誌30巻1号)

 

2年にわたるNatureとの戦い

そこで、満を持して再投稿。今回はいけるんとちゃうか、という強い期待。そして……。平成26年1月16日、ドキドキしながらNatureからのメールを開けたところ、ああ3回目のreject。机の上に倒れ臥した。しばらく起き上がれなかった。… ほぼ倒れそうになりながらも、追加実験を行い、再投稿してみたが、「Yasu、もうリバイスももう4回目だし、Natureとしてもこれ以上この論文を扱うことはできない」とEditorから最終通告。再度、翻意を促すメールを送ってみたが、残念ながらゲームセット。2014年3月14日、2年にわたるNatureとの闘いが終わった。正直言って、Reviewerに恵まれなかったのが痛かった。… 3回目のリバイスの時に、laser ablation実験データについて、異なる記載をしていたらReviewer 3は追加実験を求めなかったのではないか。そもそも、最初の投稿時に、もっとデータを付けてから投稿するべきではなかったのか。色々な思いが胸をよぎる。YASUの呟き No. 10 激闘の果てに

 

論文投稿の苦しみ

論文投稿の苦しみ   2003年の冬頃だったと思いますが、ずっと研究してきた成果として、Natureに投稿しました。… 私の論文は、投稿から1週間以内にリジェクトされました。… 私の論文は、2-3週間かけて文面を書き換えて、Scienceに投稿しました。残念ながら、こちらも1週間でリジェクトされました。次は、順番通りCellです。Cellはフルペーパーなので、Figureの数量を増やしたり、章立てを見なおしたりといった大改訂が必要となり、投稿準備に数週間を要しました。この時点で既に季節は春を迎えていました。Cellへの投稿は、査読され、ネガティブコメントは多かったもののリバイズの機会まで辿り着きました。… この結果が来たのは既に初夏になっていました。そこから何としても論文を通したいと、追加実験を行うものの、狙ったデータが思い通りに出ません。… 苦し紛れに論点を変え、結論をやや弱くして再提出しました。残念ながらCellへの再提出もリジェクトとなりました。Cellに投稿した日から半年、Natureに出してからは1年の時がかかっています。当時の私は、研究の本質は何も進歩しないにも関わらず、1年経っても論文が通らないという日々に葛藤していました。「もうブランドジャーナルでなくて良いから論文として終わりにしたい」気を抜くとそんな弱音が出てしまう状態でした。しかし、私の上司が選んだ次の投稿先は、Natureの姉妹誌、Nature Cell Biol.(NCB)でした。… NCBの査読結果はCellと同様に、ネガティブなリバイズ。数ヶ月の追加実験をして、再提出したもののリジェクトでした。(medister Dr’sブログ 学術論文事業を始めたきっかけ ~オープン・アクセス学術誌立ち上げ記 ゼネラルヘルスケア 竹澤慎一郎 )

 

努力と結果

博士課程1年のとき、それまでの研究をまとめて『Cell』に投稿した。結果はエディターによるリジェクト。学位の取得を優先して論文のランクを下げたいと思ったが、武藤教授は実験を追加してもう1回『Cell』に出そうと言う。1年間努力し、コメントに応えるデータを出して再度投稿したが、またリジェクトされた。リジェクトを繰り返す中、上田泰己氏や木村暁氏のような優秀な人たちの活躍を論文などで知り、「自分なんかがこの世界で生きていくのはとても無理だ」という思いがあった。転機となったのは、2回目のリジェクトの後のことだ。次にどうするかについて、武藤教授は迷われていた。そこで青木さんは、いろいろな雑誌を見て、『Nature Genetics』に出しましょうと提案した。それほど下がっていないハードルに、厳しいのではないかとも言われたが、さらに実験を追加して博士課程3年の6月に投稿。すると、予想もしていなかったほどスムーズに、10月には受理されたのだ。「最初に『Cell』に蹴られた後、1年間必死に実験を行ったことが論文掲載というかたちで認められて、研究を続けてもいいんじゃないかという気持ちを少しもてるようになりました」。(制がんを目指して、真摯に研究に取り組み続ける (1)福井大学 医学部医学科 教授 青木 耕史さん jst.go.jp 科学者としての働き方。

 

Shooting for the moon

Nature reject → Science reject → Nature Chemical Biology reject → Nature Communications 2 vs 0でアクセプト,という経緯を辿りました.実験できるドクターが3人もこの研究に関わっていたし,内容が内容なのでNatureは当たり前,何か良からぬ事が起きてダメだったとしてもNature姉妹誌が下限レベルだと思っていました.結局その滑り止めの一つであるNature Communicationsに落ち着いたんですが,嬉しいというよりむしろ残念な結果となりました.(12 生きた細胞内の温度分布測定 詳細  内山聖一 研究内容)

初稿にあたる論文は、Natureとその姉妹紙、Science、そしてCellとエディターにリジェクトされ続けました。まあ、これはある程度想定の範囲内です。そして、ようやくMolecular CellというSopko2006が掲載された科学誌で、レビュー(審査員による査読)に回りました。カバーレターで、Sopkoらの論文を引き合いに出して「彼等の結果を覆す」と主張したおかげかもしれません。しかし、帰ってきたコメントはよいものではなく、エディターによってリジェクトという結論が下されました。

リジェクトしてきた審査員の1人は、どうもトロントのグループに近い人だったようで、「この仕事はSopkoらの仕事を否定するものではなく、補完的なものである」というコメントがありました。そう、私たちの戦略は見事に失敗したのです。自分の学会発表がそうであったように、私はこれまで闘いを挑むような論文を書いたことはありません。今回は御大にそそのかされて(?)、自分に出来ないことをやってしまったようです。そこで、論文の主旨を1から作り直しました。

真面目にSopkoらの仕事も引用し、比べ、私たちとの研究の違いを書きました。すると、実際にSopkoらの仕事が私たちの仕事と補完的な仕事であることが、私にも分かってきたのです。トップジャーナルに載せようとするばかりに見るべきところが見えていなかった、初稿の論文はいろんな意味で不完全でした。私の論文執筆能力が十分でないからなのかもしれませんが、これまでたいていの場合、初稿で書いた論文がリジェクトされて、繰り直し書き直して満足のいく論文になります。すんなり通ってしまったら不完全なものが発表されてしまう、それよりはいいのかもしれません。

さて、書き直した論文は、Genome Research誌に投稿しました。これは、ゲノム研究ではトップのジャーナルです。科学誌はしばしば、「インパクトファクター」と呼ばれる、どれだけその科学誌に掲載された論文がその先に引用されているかという指標をもとに評価されます。この指標には賛否両々論あるものの、やはりそれなりに、それぞれの科学誌に掲載される難しさ、要求するスタンダードの高さを反映しています。

今回の論文については、私はインパクトファクター10以上の科学誌に絶対に掲載するつもりでした。泥臭い話ですが、たくさんの研究費や人材をつぎ込んでもらったし、結果もしっかりとしたものが得られている。あとは私ががんばるしかない。この論文が「よい科学誌」とよばれるものに掲載されないのだとしたら、私の責任以外のなにものでもない。そういう意味では、インパクトファクター13以上のGenome Research誌は、次の候補としては適切だと思われました。(第4章:gTOW6000を世にはなつ HM’s webpage 2013-01-22)

 

味方を得てアクセプト

いよいよ、Nature に投稿されて……。古寺氏: はい。2009年10月のことです。でも、すぐには載らなかったのです。インパクトのある成果だし、推敲も重ねたし、論文には自信がありました。しかし、いきなりエディターリジェクト。紋切り型のお断り文章をもらって、かなりがっかりしました。どうしていいかわかりませんでしたね。… 仕方なく、次にScience にも投稿してみたのですが、これもエディターリジェクトでした。そこで、時間をかけてもう一度論文を推敲し直しました。どうしたらインパクトのある論文に仕上げることができるのだろうかと、文字通り昼も夜も考えながら。そしてその成果を、もう一度Nature に投稿したのです。2010年5月に、Letterとして。しかし、それでもまた、エディターリジェクトでした。

もうダメだと思ったのですが、安藤教授が、ミオシン研究の世界的な権威の研究者に見てもらおうと、論文を送ってくださったのです。筋肉の研究で有名な方と、ミオシンVの研究で有名な方です。そうしたら、その2人とも大絶賛してくれて。そのうえ、Nature のエディターに推薦の手紙を書いてくれたのです。… とうとうエディターから、「考え直したら、確かにすごい内容です」という連絡が来て、論文をレフリーに回してくれることになりました。そこからは、とんとん拍子でした。(動くミオシンの撮影に成功! 古寺 哲幸氏 Nature著者インタビュー2010年11月4日)

 

自身を客観的に見る

何回かリジェクト食らってたみたいですが、ストーリーを変えて、本人も納得した形になって投稿したら、好意的なコメントが来て、追加実験をいくつか加えたら、それなりにいいジャーナルに驚くほどあっさりと受理されたようです。ストーリーがやっぱり大事ですね。データをいっぱい出したい気持ちや、本当のいきさつをさておいて、読者が読んですんなり納得できる、無理のないストーリーにまとめるのが大事です。結局Reviewerも主張が裏付けられているかどうかを判断するだけで、筋が通っていたらそれ以上の批判は難しいものです。(研究雑話(1)Wunderbarな日々 2017-03-13)

 

私はリジェクトが好きだ

諸君 私はリジェクトが好きだ
諸君 私はリジェクトが好きだ
諸君 私はリジェクトが大好きだ

瑣末な批判が好きだ
追試要求が好きだ
データ追加が好きだ
検定やり直しが好きだ
大幅改訂が好きだ
文献追加が好きだ
図表削除が好きだ

Natureで、Scienceで
Cellで、PNASで
EmBioで、C.B.で
科研費で、学振で

この地上で行われるありとあらゆるリジェクト行動が大好きだ

文献をならべたレビューの一斉発射を無意味として査読無しでリジェクトするのが好きだ
再投稿された論文をリジェクトさせた時など心がおどる

(風流記 2007年10月5日 参考:「諸君 私は戦争が好きだ」)

 

リジェクトするときに使える英語表現

  • We regret to say that ~
  • We regret to inform you that ~
  • We regret that we are unable to publish it in XXXX.
  • We regret to say that we will not be able to accept this manuscript for publication in XXXX.

 

リジェクトの味

参考

  1. “Inside Nature” ―Nature誌編集の舞台裏(?) (かたつむりは電子図書館の夢をみるか 2008-06-21) 去る6/19、筑波大学若手イニシアティブセミナーとして行われたNature ジャパンのエグゼクティブディレクター、中村康一氏の講演会に行ってきました。… 「どんなに質がいい論文でもNatureとして興味持てなかったら落とす」とのことで、過去にはこの段階で後にノーベル賞を受賞する論文を落としてしまったこともあるそうだけど、未だにそのスタイルは崩していない、と。… ただ、ここでも他の学術出版と違うのは、査読者はあくまでコメントを求められるだけで、最終的な掲載の可否は全部編集者が決める、とのこと。
  2. サイエンスに蹴られた論文がネイチャーに載る・・・ (がんの分子腫瘍学・遺伝学 2012年10月22日) サイエンスの689というのは、最初の投稿先がサイエンスでそのままサイエンスに採用された論文が689報あるということである。サイエンスに蹴られてnatureに採用されたのが82報あるということ。しかしcell誌にはサイエンスリジェクト論文は一つも載らなかった(natureリジェクト論文も載っていない)。
  3. Nature Geoscienceからリジェクト、その反省と分析 (黒猫の旅 2013年9月18日)
  4. 論文がRejectされた時。~戦うべきか、否か、それが問題だ~ YASUの呟き No. 15
  5. 論文が却下されました – どうしたらよいでしょうか? (Ben Mudrak, PhD American Journal Experts):”3つめのオプションが最も一般的です。査定者から受け取ったコメントを慎重に考慮して、論文を修正して、別の雑誌に論文を投稿します。”
  6. 8 Scientific Papers That Were Rejected Before Going on to Win a Nobel Prize (Science Alert FIONA MACDONALD 19 AUG 2016)
  7. 論文リジェクトの種類 (むしのみち 2010-05-08):”リジェクトは研究者にとっての試練のようなものですが*1、どんな種類があるのか、自身の研究をもとにまとめておきたいと思います*2。”
  8. regectされた時のモチベーションの高め方というものを教えてください。(論文がregectになりました 教えて!goo 質問者:cueda 2005/08/05)

 

 

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論文投稿から採否までの査読期間早わかり

学術誌に論文を投稿すると、最初の数日間はエディターからの連絡が来ないことを祈ります。一週間もすると、レビューにまわしてもらえたのではないかという期待が芽生えます。1ヶ月もすると、早く返事がもらえないのかとやきもきし始めます。1ヶ月も待たされたあげく、エディターに蹴られて、レビューにすら回してもらえていなかったことがわかると、かなりがっかりです。オンラインでステータスをチェックしたり、あるいはエディターからの連絡により、自分の論文がレビューにとりあえず回ったことがわかると、ほっとします。しかし、それからさらに1ヶ月、2ヶ月と待たされると、落ち着かない日々を過ごすことになります。

さて、論文を投稿してから、エディターからの返事をもらうまで、どれくらい待てば良いのでしょうか?日数は、ジャーナルによってかなりの開きがあります。

SciRevというウェブサイトは、研究者の体験をまとめて、ジャーナルごとの統計を出しています。例えばネイチャーの場合、エディターキックは平均11日、レビューから返ってくるのが平均1.9ヶ月、アクセプトされた論文の場合、平均3.8ヶ月かかっています(n=22)。サイエンスの場合は査読に回らなかった場合の平均が13日、査読から返ってくるのが平均1.6ヶ月、アクセプトされた場合にトータルでかかった時間は平均5.6ヶ月となっています(n=19)。eLifeは査読にまわらなかった場合のリジェクションの平均は10日、査読が戻ってくるのは1.3ヶ月、受理された原稿の場合のトータルの日数は平均1.7ヶ月と迅速です(n=17)。PLOS ONEの場合は、レビューに回らず却下された場合の平均は16日、レビューが返ってくるまでの平均は2.6ヶ月、アクセプトされた場合の総日数は3.7ヶ月となっています(n=62)。

研究者は自分の体験をSciRevに投稿することができます。

 

いつまで待っても音沙汰が無い場合、エディターに催促のメールを出したほうがよいでしょう。すぐに結果が返ってくることがあります。

If, after many weeks you do not receive the reviews of your paper, you should make polite inquiries with the appropriate editor. When a journal takes a long time to process a paper, the bottleneck almost always is a tardy reviewer. Sometimes a note from the author provokes the editor to contact the overdue reviewer, who in turn could deliver the review in a day or two. (From Science to Citation By Stephen G. Lisberger)

催促のメールを書く場合、どのような英文が適切でしょうか?文例を挙げて説明しているウェブサイトを紹介します。

I would be grateful if you could let me know whether there has been any further progress on my submission.
(How do I write an inquiry to the editor about my manuscript’s current status? Editage Insights Mar 22, 2016)

Could you let me know when I can expect notice regarding the decision of the editorial board? (英語のメールで論文を寄稿した後の返信を事務局に催促する書き方:「私の論文はどうなりましたか?」と質問する場合 weblio英語の勉強コラム 英文メールフォーマット・テンプレ 2013/01/16)

I was wondering about the status of my manuscript [title, reference number] that I submitted on [date]. Have you heard back from the referees yet? (When / how should I ask about a manuscript’s status in review? http://academia.stackexchange.com)

参考

  1. SciRev:”Share your experience with the scientific review process and select an efficient journal for submitting your manuscripts.”
  2. Submission to first decision time (Cofactor 5th Apr 2013)
  3. Acceptance to publication time (Cofactor 13th Jun 2012)

 

サイエンス(Science)に論文を出す方法

ネイチャー(Nature)に論文を出す方法があるからには当然サイエンス(Science)に論文を出す方法もあります。サイエンスのエディターらが日本を含め世界各国のさまざまな大学でセミナーを行っており、そのスライドなどがインターネット上で閲覧できます。

ネイチャーとサイエンスの名前はどちらも最も権威のある学術誌としてよく並べて挙げられますが、サイエンスへの掲載に当たっては、著者らが高名な学者かどうか、権威のある研究所に属しているかどうかなどは一切関係がないことが明言されており、自分の研究分野の第一人者との議論や共同研究を論文掲載のための戦略の一つとして勧めているネイチャーとは若干異なるスタンスであるように思われます。

04 Pamela Hines(PUblishing in Science: Outliers, Closers, & Leaders by Pamela J. Hines, Senior Editor, SCIENCE, AAAS http://www.docin.com/p-345432859.html)

Hines noted that Science publishes research articles that “shine with quality”, stand out from the pack (i.e. are not similar to already published reports), and can be recognized as “outliers, closers, and leaders”. As she explained, an outlier is a research paper on a fresh, unexpected topic; a closer is one that presents unequivocal evidence to resolve a scientific debate; and a leader is one that moves science forward by “defining new questions”.

Manuscripts that are immediately rejected by Science are not of broad interest, report a minor scientific advance, draw conclusions not sufficiently supported by the evidence, are lacking in mechanistic insight, or report “permutations of known phenomena” (i.e. research repeated in a new biological model system); these latter papers are more suitable to publication by specialty journals. Hines’ suggestion for new authors is to focus on the “logic of thought flow”, as this aspect of good writing has a strong influence on the editorial decision.

(http://www.scielosp.org/scielo.php?pid=S0021-25712010000400014&script=sci_arttext)

参考

  1. Publishing in Science: Outliers, Closers, & Leaders by Pamela J. Hines, Senior Editor, SCIENCE, AAAS (http://www.docin.com/p-345432859.html
  2. Communications from the view at Science by Pamela J.Hines, SCIENCE, AAAS (https://arc.uchicago.edu/sites/default/files/Hines_REESE2010.pdf)
  3. A Guide to Writing the Model Article by Stella Hurtley, Senior Editor, Science (http://www.jsps.org/news/files/dr.%20Stella%20Hurtley.pdf)
  4. Valerie Matarese. Emerging concepts in high-impact publishing: insights from the First Brazilian Colloquium on High Impact Research and Publishing. Ann. Ist. Super. Sanità vol.46 n.4 Roma Oct./Dec. 2010 http://dx.doi.org/10.4415/ANN_10_04_14 (http://www.iss.it/binary/publ/cont/ANN_10_04_14.pdf

 

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ネイチャー(Nature)に論文を出す方法

論文が掲載された雑誌のインパクトファクターの高さと、その論文自体の価値の高さは必ずしも一致しません。そのため、雑誌のインパクトファクターにとらわれずに論文の内容そのものを評価すべきだという議論がよくなされます。しかしながら、分野外の論文の価値を評価するのは非常に難しいため、雑誌のネームバリューで論文業績が評価されるということは避けられません。

そんなこともあって、いまどき、ネイチャー(Nature)、サイエンス(Science)、セル(Cell)(生命科学分野の場合)、あるいはそれらの姉妹紙などにファーストオーサーの論文を出していないと、アカデミックな世界でジョブマーケットに出て行くことが難しいという現実があります。テニュアトラック制度に乗っているPI(Principal Investigator)も、自分のラボからこのようなトップジャーナルに論文を出さないとテニュア獲得の可能性が下がるでしょう。

それでは一体、Natureなどのハイプロファイルジャーナル(High-profile journals)に論文を出すための秘訣や戦略のようなものは存在するのでしょうか?

日本のラボで仕事をする日本人ポスドクよりも、海外のラボに留学した日本人ポスドクの方が一流誌に論文が出やすいということはよく言われます。なぜそうなるのかといえば、海外のトップラボのボスは良い論文を書く方法論を身につけているからです。そのため、せっかく同じような実験データを得ていながら、かたやネイチャー、かたやインパクトファクターの低い雑誌という結果にもなります。

Natureに論文を出すための方法論はどこでどう身につければよいのでしょうか?もちろん、良いボスがいる一流のラボで仕事をして直接学ぶのがベストの方法ですが、実は、良い論文を書くためのワークショップをNature自身が多数開催しています。また、インターネット上で、それらの内容が公開されています。

planyourpaper(参照:ネイチャーライティングワークショップ http://www.jbr-pub.org/UploadFile/Nature%20Writing%20Workshop.pdf 30ページ)

良い論文というのは、我々の自然に対する理解を深めるような研究報告です。つまりConceptual Advanceがなければいけません。Conceptual Advanceがどのようなもので、それが論文掲載の決定にどう関わってくるかに関しては、

Novelty and conceptual advance
• Anything that has not been published before is novel, but not all
novel findings are considered interesting, or of sufficient conceptual
advance, for a journal
• Different journals use different criteria to gauge the level of
conceptual advance and readers’ potential interest

Common types of conceptual advance
• Unexpected phenomenon
• Never before seen
• Mechanistic insight
• Technical breakthrough
• Resource value

(参照:ネイチャーライティングワークショップ http://www.jbr-pub.org/UploadFile/Nature%20Writing%20Workshop.pdf 19ページ)

と説明されています。

ネイチャーに論文を出す方法について、ネイチャーのエディターが解説した動画。

How to Publish in Nature – Leslie Sage (SETI Talks)

ネイチャーが論文をアクセプトするかどうかは一体誰が決めているのでしょうか?それは、レビューアー(差読者)ではなくネイチャーの編集者であると明言されています。

The judgement about which papers will interest a broad readership is made by Nature‘s editors, not its referees. One reason is because each referee sees only a tiny fraction of the papers submitted and is deeply knowledgeable about one field, whereas the editors, who see all the papers submitted, can have a broader perspective and a wider context from which to view the paper. (http://www.nature.com/nature/authors/get_published/)

Nature, Nature Physics and Nature Communicationsなどの編集者も務めたDan Csontos博士が、ネイチャーに論文を出す秘訣を解説。

How to get published in top-ranked journals

Dr Dan Csontos. He is a science writer, editor and publishing consultant at Elevate Scientific, based in Lund, Sweden. Before founding Elevate he was a science editor with the international journals Nature, Nature Physics and Nature Communications, and a science editor and project manager with Macmillan Science Communications in London.

 

ネイチャー論文の要旨の書き方

ABSTRACTの書き方だけでなく、ネイチャーに投稿する際の要点が、https://www.natureasia.com/pdf/ja-jp/nature/authors/gta-2017.pdfにまとめられています。

 

参考

  1. Foundation Scientific Writing and Publishing Workshop:Trainers: Dr.Myles Axton (Nature Genetics Chief Editor), Dr.Wayne Peng (Formerly an Associate Editor, Nature)(ネイチャーライティングワークショップ 284 page PDF)
  2. How to get published in Nature (and its sister journals) Ed Gerstner,Executive Editor. Nature Communications. March 2014 (PDF link)
  3. How to get published in Nature Publishing Group Journals. By Nick Campbell.Assistant Publisher and Executive Editor NPG Nature Asia-Pacific (PDFリンク
  4. Publishing your research in Nature journals,  Myles Axton, Chief Editor, Nature Genetics. Taiwan, November 2014. (37 pages PDFリンク)
  5. How to get published in Nature Communications. Nicky Dean, Associate Editor Nature Communications. (PDF link)
  6. Scientific writing 101 (Nature Structural & Molecular Biology, Feb 2010;17(29):139 EDITORIAL)(PDF link)
  7. Getting published in Nature: the editorial process (nature.com)
  8. サイエンス(Science)に論文を出す方法
  9. 圧倒的に生産性の高い人(サイエンティスト)の研究スタイル (ニューロサイエンスとマーケティングの間 – Being between Neuroscience and Marketing 2008-10-18) :1. まずイシューありき 2. 仮説ドリブン 3. アウトプットドリブン 4. メッセージドリブン

 

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