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FRONTIERSがハゲタカ視される理由

特集号のエディターをしませんか?とか、特集号に投稿しませんか?というお誘いメールが、Fronteirsという雑誌社からやたらと頻繁に届くようになったのですが、これってちょっとやりすぎでは?と最近(2021年~2022年)思い始めています。

 

特集号を乱発する雑誌がハゲタカ臭を発する理由

その分野の大御所がエディターとして特集号を組む場合には、自分の知り合いの実力のある研究者に声をかけて論文投稿してもらえば、とても良い特集号ができあがります。しかし、雑誌社が特集号を乱発すると、似たようなトピックが乱立します。そして、人的ネットワークがあまり大きくない研究者が特集号のエディターになると、論文を投稿してくれる人を探すのに苦労することになります。エディター側から「お願い」して論文投稿してもらうことになるので、質の悪い論文を投稿されたとしてもこちらからお願いした立場上、リジェクトできません。これは自分の経験ですが、Frontiersの特集号のために投稿された論文を自分が査読したときに、自分はリジェクトしたかったのですが、エディターはほとんど通すことが前提の態度で、実際に自分の意見は全く聞き入れてもらえませんでした。つまり、「特集号」というのはまともな論文を投稿してくれるような十分な数の研究者の人的ネットワークをもった人がハンドリングする場合には機能しますが、「特集号」乱発によりどんな研究者にでも論文投稿のお願いをせざるを得ない状況になると、質の悪い論文でも採択されてしまうのです。査読がないわけではないので、論文著者が査読コメントに従って論文原稿を改善すれば、出版される論文のクオリティが上がりますが、本来ならリジェクトされるべきレベルの論文であっても受理されてしまうという意味で、査読が事実上ないハゲタカジャーナルと大差なくなるのです。

エディターとしてハンドリングする場合、雑誌の格や論文のレベルに応じて適切な査読者を選定することになります。投稿された論文のレベルがあまり高くないと、査読者探しに非常に苦労させられることになります。適切な査読者が見つけられない場合も、結果的に掲載される論文の質の低下につながることでしょう。

 

FRONTIERSのSNS上の評判

研究者の方々はFRONTIERSをどう見ているのでしょうか。SNS上で飛び交う意見をまとめておきたいと思います。FRONTIERSをハゲタカジャーナルと認識する人がなぜそう考えるに至ったのか、その理由に関して自らの体験談をツイートしています。もちろん、FRONTIERSはハゲタカではないと信じる研究者も多いので、両者の意見を紹介。

2022年のFRONTIERSの評判

下のツイートで報告されていますが、FRONTIERSでは査読者が査読した論文をリジェクトすると、査読フォーラムから追い出されるって、一体どういうことでしょうか。査読者がリジェクトできない論文査読システムのFrontiersって‥。


 

 

2021年のFrontiersの評判:リジェクトができない査読システム(?)

Fronteirsの雑誌では、査読者が論文をリジェクトしようとすると、査読者自身がFrontiersからリジェクトされるというシステムになっているという恐ろしいツイート。


 

 

 

フロンティアーズはハゲタカジャーナルかどうか、ツイッターでの投票結果。181票中、16.6%の研究者がハゲタカジャーナル認定、52.5%の研究者が準ハゲタカジャーナル認定。信頼のおける出版社と考える研究者が27.6%。非常に信頼できるという研究者が3.3%という結果です。なんと7割の研究者がハゲタカと考えているようです。


 

 

上の英語のツイッターの投票結果と比べると、日本人研究者の結果はだいぶ様相が異なります。ハゲタカ視している日本人研究者は英語圏の研究者よりもずっと少ないという結果。
 

下のツイートのスレッドには、いろいろ興味深いツイートがあります。

リジェクトしたら査読から外されたと憤っているツイートもありましたが、実際にその通りのようです。下のツイートに、査読システムの解説がありました。その査読内容は、エディターに考慮されるとのこと。


テニュアがとれるまえの研究者はFRONTIERSに出さないほうがよいという意見も。


ひどい論文を査読者がリジェクトしても、結局、FRONTISERはアクセプトしてしまうというツイート。


FRONTIERSの中の人が、FRONTIERSは金儲けのためのビジネスだと言っていたよというツイート。

下で紹介するいくつかのツイートでは、Frontiersではリジェクトする仕組みがないという体験が報告されています。査読はされるがリジェクトはされないという、論文を出したい研究者にとっては夢のような世界ですね。どんなに質の悪い論文であっても査読者がリジェクトできないようにしている雑誌社FRONTIERSがハゲタカジャーナルではないと言えるのか?判断は読者にお任せいたします。

下のツイートでも、リジェクトしようとした査読者が逆に査読から排除されたという体験が報告されています。

下のツイートも、リジェクトしようとした査読者が、新しい査読者にすげ替えられたという体験。

 

特集号のエディターをやった人の経験談。そもそもリジェクトするシステムが存在しない!という内情を暴露。

 


 

 
FRONTIERSに出して蹴られることなんてあるの?という疑問をみんなが持っているのか、こんな投票が。リジェクトされる論文もあるようですが、採択率はかなり高い模様。

 


 

2020年のFrontiersの評判

 

 

 
数多くの質の悪い論文をリジェクトしたエディターがFRONTIERSから切られてしまったそう。


 

 

2019年のFrontiersの評判

 

 

2018年のFrontiersの評判

 


 

2017年のFrontiersの評判:Beallのリスト消滅

  1. Frontiers: vanquishers of Beall, publishers of bunk BY LEONID SCHNEIDER SEPTEMBER 18, 2017 For Better Science My earlier reporting made it a credible possibility that this Swiss publisher was behind the January 2017 shut-down and removal of Jeffrey Beall’s list of “potential, possible, or probable predatory scholarly open-access publishers”, and it was now indeed verified by an article in Chronicle of Higher Education.
  2. Beall’s list: gone but not lost TOM CULLEY Clarivate JANUARY 24, 2017

 

2016年のFrontiersの評判

 

 

2015年のFrontiersの評判:Beallのリストへ追加

Frontiersジャーナルは、あのBeall’s listに2015年に加えられました。そして、Frontiersがハゲタカジャーナルか否かに関する論争、FrontiersとBeall氏とのバトルが勃発し、結果としてFrontiersが勝利することになります。

  1. Backlash after Frontiers journals added to list of questionable publishers Mollie Bloudoff-Indelicato Nature volume 526, page613 (2015) Published: 23 October 2015 ”Researchers on social media have been split by the decision of academic librarian Jeffrey Beall” ”he has received dozens of e-mails from the scientific community outlining bad practices at Frontiers.”

 
FRONTIERSにも厳しいエディターはいるということ。

 

2014年のFrontiersの評判

 

2013年のFrontiersの評判

スプリンガーネイチャーの主要な株主であるホルツブリンク・パブリッシング・グループが、フロンティアーズにも投資して経営に参画するというお知らせ。

The Holtzbrinck Publishing Group, at the time owner of Nature Publishing Group and now majority shareholder of SpringerNature, makes an investment in Frontiers and a Holtzbrinck representative is appointed to the Frontiers Board of Directors. (https://www.frontiersin.org/about/history)

 

参考

  1. ホルツブリンク・パブリッシング・グループとBC パートナーズが マクミラン・サイエンス・アンド・エデュケーションの大半の事業と シュプリンガー・サイエンス+ビジネスメディアの全事業との合併合意を発表 2015年1月14日

FRONTIERSもハゲタカジャーナルだと?!

FRONTIERSの始まり

FRONTIERSは2007年にスイスの神経科学者によって、オープンサイエンスの理念のもとに創刊された雑誌です。最初はFrontiers in Neuroscienceだけだったと思いますが、2010年にはFrontiers in Psychiatry、Frontiers in Psychology、Frontiers in Neurology、Frontiers in Physiology、Frontiers in Pharmacology、Frontiers in Plant Science、Frontiers in Microbiology、Frontiers in Cellular Infection Microbiology、Frontiers in Endocrinology、 Frontiers in Immunology、Frontiers in Geneticsの11個の雑誌が新たに加わりました。Wikipediaでみると、Frontiers in ~という名称の雑誌は全部で123誌が刊行されています。

  1. https://www.frontiersin.org/about/history

 

Frontiersジャーナルのインパクトファクター

フロンティアジャーナルのインパクトファクターはFrontiers in Immunologyの7.561を筆頭に高い値を持っています。

  1. Frontiers in Immunology IF(2020)=7.561
  2. Frontiers in Cell and Developmental Biology IF(2020)=6.684
  3. Frontiers in Nutrition IF(2020)=6.576
  4. Frontiers in Oncology IF(2020)=6.244
  5. Frontiers in Cardiovascular Medicine IF(2020)=6.05
  6. Frontiers in Bioengineering and Biotechnology IF(2020)=5.89
  7. Frontiers in Pharmacology IF(2020)=5.81
  8. Frontiers in Plant Science IF(2020)=5.753
  9. Frontiers in Aging Neuroscience IF(2020)=5.75
  10. Frontiers in Microbiology IF(2020)=5.64
  11. Frontiers in Molecular Neuroscience IF(2020)=5.639
  12. Frontiers in Endocrinology IF(2020)=5.555
  13. Frontiers in Cellular Neuroscience IF(2020)=5.505
  14. Frontiers in Cellular and Infection Microbiology IF(2020)=5.293
  15. Frontiers in Molecular Biosciences IF(2020)=5.246
  16. Frontiers in Chemistry IF(2020)=5.221
  17. Frontiers in Medicine IF(2020)=5.091
  18. Frontiers in Marine Science IF(2020)=4.912
  19. Frontiers in Neuroscience IF(2020)=4.677
  20. Frontiers in Genetics IF(2020)=4.599
  21. Frontiers in Environmental Science IF(2020)=4.581
  22. Frontiers in Physiology IF(2020)=4.566
  23. Frontiers in Synaptic Neuroscience IF(2020)=4.506
  24. Frontiers in Ecology and Evolution IF(2020)=4.171
  25. Frontiers in Psychiatry IF(2020)=4.157
  26. Frontiers in Neuroinformatics IF(2020)=4.081
  27. Frontiers in Energy Research IF(2020)=4.008
  28. Frontiers in Neurology IF(2020)=4.003
  29. Frontiers in Neuroanatomy IF(2020)=3.856
  30. Frontiers in Public Health IF(2020)=3.709
  31. Frontiers in Physics IF(2020)=3.56
  32. Frontiers in Behavioral Neuroscience IF(2020)=3.558
  33. Frontiers in Materials IF(2020)=3.515
  34. Frontiers in Earth Science IF(2020)=3.498
  35. Frontiers in Neural Circuits IF(2020)=3.492
  36. Frontiers in Pediatrics IF(2020)=3.418
  37. Frontiers in Veterinary Science IF(2020)=3.412
  38. International Journal of Public Health IF(2020)=3.38
  39. Frontiers in Systems Neuroscience IF(2020)=3.289
  40. Pathology and Oncology Research IF(2020)=3.201
  41. Frontiers in Human Neuroscience IF(2020)=3.169
  42. Frontiers in Psychology IF(2020)=2.99
  43. Frontiers in Integrative Neuroscience IF(2020)=2.763
  44. Frontiers in Surgery IF(2020)=2.718
  45. Frontiers in Neurorobotics IF(2020)=2.65
  46. Frontiers in Computational Neuroscience IF(2020)=2.38

参照:Journal Impact Factors and CiteScores

 

Frontiersはハゲタカジャーナルか

MDPIはハゲタカか?という疑問を持って以前記事を書きました。ネット上の研究者の意見をいろいろ見ていたら、Frontiersに対して懐疑的な見方が存在することを知りました。MDFPIの記事を書いた以上、Frontiersに関して書かないのは片手落ちかと思い、この記事を書いています。

Frontiersはオープンサイエンスのプラットフォームとして創刊されたいきさつがあることから、自分はまさかハゲタカジャーナルと見られる可能性があるなどとは想像すらしませんでした。ところが、Frontiersには、あの有名なBeall氏のリストに加えられた過去があります。2015年10月にBeall氏はFrontiersをリストに加えましたが、Fronteirs側は激しく反発し、彼の勤務先であるコロラド大学デンバー校に乗り込んで激しく抗議して大学に圧力をかけた結果、大学は2016年1月に不正調査委員会を立ち上げ図書館員であるBeall氏の行為について正式な調査を行いました。失職の危機に晒されるまで追い詰められたBeall氏は、ようやくFrontiersをリストから外しました。「Beall’s list」そのものも、2017年1月15日に姿を消しました。

  1. Backlash after Frontiers journals added to list of questionable publishers Mollie Bloudoff-Indelicato Nature volume 526, page613 (2015) Published: 23 October 2015 
  2. Beall-listed Frontiers empire strikes back BY LEONID SCHNEIDER SEPTEMBER 14, 2016 For Better Science
  3. Frontiers: vanquishers of Beall, publishers of bunk BY LEONID SCHNEIDER SEPTEMBER 18, 2017 For Better Science
  4. Why Beall’s blacklist of predatory journals died Paul Basken, The Chronicle of Higher Education 22 September 2017 University World News
  5. フロンティアーズ社(Frontiers)(スイス) 白楽の研究者倫理

 

Beall’s listの最期

  1. Controversial website that lists ‘predatory’ publishers shuts down Andrew Silver Nature Published: 18 January 2017 
  2. No More ‘Beall’s List’ Librarian removes controversial list of “predatory” journals and publishers, reportedly in response to “threats and politics.” By Carl Straumsheim January 18, 2017
  3. Why did Beall’s List of potential predatory publishers go dark? January 17, 2017 Retraction Watch

Frontiersがハゲタカジャーナル視されうる状況について

特集号のエディターになりませんかとやたらめったらいろんな研究者に勧誘をして、特集号を乱発するのは、ハゲタカジャーナルの特徴と考えられます。リサーチトピックのエディターを引き受けると、大変みたいです(やったことはない)。だいたい知り合いの研究者に論文投稿してくれない?とお願いして回ることになるのでしょう。また、エディター・雑誌社側から研究者にお願いしているため、質の低い論文を投稿されてしまってもリジェクトしにくくく、結果としてレベルの低い特集号になってしまう危険があります。

FRONTIERS(フロンティアーズ)はハゲタカジャーナル視されているのか

Frontiersは、自分はハゲタカだと思っていなかったのですが、最近(2021年~2022年)やたらと特集号のエディターお誘いを送りつけたり、特集号のエディターを引き受けた人からの論文投稿の誘いが送り付けられてきたりというのが頻発していて、ハゲタカ臭が出てきた印象があります。

みんながどう思っているのかなと思っていたところ、ツイッター上でのアンケート調査の結果が出ていました。

MDPIをハゲタカ視する人は約6割、Frontiersをハゲタカ視する人が3割強いることがわかります。フロンティアーズをハゲタカ認定する人が3割を超えていたのは自分としては意外でした。

関連記事 ⇒ FRONTIERSがハゲタカ視される理由

 

参考

  1. BEALL’S LIST OF POTENTIAL PREDATORY JOURNALS AND PUBLISHERS https://beallslist.net/

 

論文を投稿するジャーナルの選び方

論文をどのジャーナルに投稿しようかと悩む人がいるかもしれません。インパクトファクターが全てではないという研究者も多いですが、実際には、インパクトファクターが高いジャーナルに論文業績があるほうが、良い評価を受けられる可能性が高いことは間違いありません。

教員公募の際に、応募者の論文業績リストにインパクトファクターを書かせる大学がありますし、教員の任用・昇進に際して論文数だけでなくインパクトファクターを考慮する大学もあります。いろいろな学会が自分のところの学会誌のインパクトファクターの変化を一喜一憂したりもしています。

研究キャリア形成の途上にいる限り、研究者はインパクトファクターを度外視して論文投稿先のジャーナルを選ぶことは不可能でしょう。そこで、インパクトファクターの範囲を意識しつつ、どのジャーナルに論文を投稿したらいいのかについて自分の思うところを書いてみます。これが正しいというわけではなく、考えるための話題提供程度のつもり。

ジャーナルには歴然とした「ランク」が存在します。一つの出版社は、それぞれのランクの論文を取りこぼしなく取り込むために、異なるランクのジャーナルを用意していることが多いです。例えば、ネイチャー系であれば、Nature、Nature姉妹紙、Nature Communications、Nature Communications姉妹紙、Scientific Reportsといった感じです。セルプレスであれば、Cell、Cell姉妹紙、Cell Reports、iScienceといったところでしょうか。

ネイチャー系が一番段階付けが細かいので、これを参考に他の出版社の雑誌がどのあたりに相当するのかを考えて雑誌を選ぶのも一つの方法だと思います。

NatureかScienceかCellか(インパクトファクター40以上)

生物系の場合、「CNS持ち」という言葉があるくらいで、セル、ネイチャー、サイエンスは別格の扱いです。インパクトファクターはNature、Science、Cellのいづれも40を超えており、他のジャーナルとは一線を画しています。NatureとScienceが科学の総合誌なのに対して、Cellは名前が示す通り生物学の専門誌、特に細胞生物学の専門誌です。細胞生物学の研究成果であれば、専門誌であるCellの方が掲載されやすいはずで、総合誌と専門誌を同列に並べるは変な話なのですが、それでもCNSと一括りにされて語られることが多いです。

これらの雑誌は、既成概念を変えるような大発見であったり、長年にわたって誰も成功しえなかったようなことを成し遂げた研究成果が掲載されるものであり、conceptural advanceの大きさが絶対条件となります。

関連記事 ⇒ ネイチャー(Nature)に論文を出す方法

関連記事 ⇒ サイエンス(Science)に論文を出す方法

 

Nature姉妹紙かCell姉妹紙か (IF=15以上)

Nature Medicine、Nature Immunology、Nature Cell Biology、Nature Neuroscienceなど、Nature姉妹紙のトップには専門誌が位置しています。Cell Pressの専門誌としては、Neuron、Immunity、Molecular Cellなどがあります。

よくリジェクトされるときの決まり文句で「専門誌のほうに出したほうがよい」というものがありますが、Nature系の一般誌であるNature CommunicationsやScientific Reportsよりもこれらの専門誌の方が上位なので、これらの姉妹紙のトップジャーナルに蹴られた際に専門誌への投稿を勧められたとしても、それより「下位」の一般誌に掲載される可能性は十分にあります。

ネイチャーの姉妹紙の中のトップジャーナルやセルプレスの専門誌のトップジャーナルは、それぞれの研究領域における最高峰に位置するものであり、インパクトファクターの大小だけでは雑誌の評価や受理される難しさは測れません。業界ごとに、このジャーナルはこうだよねという見方が存在しています。

  1. Nature Medicine: Impact factor (2020) = 53.44
  2. Nature Genetics: Impact factor (2020) = 38.333
  3. Nature Cell Biology: Impact factor (2020) = 28.824
  4. Molecular Cell: Impact factor (2020) = 17.970
  5. Nature Immunology: Impact factor (2020) = 25.606
  6. Immunity: Impact factor (2020) = 31.745
  7. Nature Neuroscience: Impact factor (2020) = 24.884
  8. Neuron: Impact factor (2020) = 17.173

 

PLOS BiologyかeLifeかNature CommunicationsかCell ReportsかCurrent BiologyかPNASか(インパクトファクター10前後の総合生命科学雑誌)

生命科学分野における総合誌で、インパクトファクターが10前後のものが多数あります。

PLOS BiologyはPLOSのフラッグシップジャーナル。eLifeは独自の編集・査読方針を打ち出した生命科学専門誌で、どちらもインパクトファクター的には同じところに位置します。理念が素晴らしくてもインパクトファクターが低いと、高い雑誌に客を奪われる傾向が強いみたい。PNASは総合科学雑誌なので、他分野の研究者からも認められやすいため、雑誌の見られ方としては、インパクトファクターの影響を受けにくい。

  1. Nature Communications: Impact factor (2020)=14.914
  2. PNAS: Impact factor (2020)=12.291
  3. Current Biology: Impact factor (2020)=10.834
  4. Cell Reports: Impact factor (2020)=9.423
  5. PLOS Biology: Impact factor (2020)=8.029
  6. eLife: Impact factor (2020)=8.14

全然関係ないけど、PNASのことを「ピーナス」と発音する日本人研究者がいまだにいるけど、それはジャーナルの名前ではなくて、男性の外部生殖器であるところのpenisにしか聞こえないので、やめたほうが良いといつも思う。ピーエヌエイエスでいいんじゃないかな。

 

Communications BiologyかPLOS姉妹紙かFrontiers専門誌か(インパクトファクター5前後の専門誌)

  1. Communications Biology: Impact factor (2020)= 5.489
  2. Journal of Biological Chemistry: Impact factor (2020)= 5.157

 

Scientific ReportsかiScienceかPLOS ONEか(オープンアクセスメガジャーナルの総合誌)

サイエンティフィックリポーツはネイチャー系ジャーナルの一番下に位置付けられています。上で戦うのに疲れたら、サイレポにトランスファーするというのは一つの選択です。

  1. Scientific Reports: Impact factor (2020)= 4.379
  2. iScience: Impact factor (2020)= 5.08
  3. PLOS ONE: Impact factor (2020)= 3.240

 

インパクトファクターで選ぶ

研究は中身が大事と言いつつもインパクトファクターを重視する研究者がほとんどですので、上記のようにインパクトファクターを意識して投稿先を選ぶことは基本的な態度だと思います。

 

トランスファーか他社の同程度の雑誌に出し直すか

最近は投稿したファイル一式をトランスファーする制度があるので、同じ出版社で雑誌のレベルを落として投稿する場合には、出し直す手間がありません。レフリーーのコメントも次の雑誌に送られるので、採否の決定がスピードアップします。

この便利なトランスファー制度のおかげで、論文の投稿先は最初のサブミッションよりも、リジェクトされたあとの方が悩みます。つまり、同じ出版社の下位ジャーナルにトランスファーするか、それとも別の出版社の同じインパクトファクターの雑誌に出し直すかで悩むわけです。自分の論文の価値を信じるなら、雑誌の格を落としたくないのですが、さっさと通る雑誌に通して楽になって次に進みたい気持ちもよぎります。

 

専門誌か総合誌かで選ぶ

論文業績を誰に対してアピールする必要があるのか?生物系の人間が、物理化学系の人たちにも業績を認めてもらう必要がある状況が想定されるのであれば、生物、物理、化学と広いスコープを持つジャーナルを選ぶという戦略があります。

 

アクセプトまでが最短最速の雑誌を選ぶ

公募されていた教員の職の最有力候補に選ばれたが、規程の論文数に足りていないため、いついつまでに論文数を増やす必要がありという状況になることがあり得ます。また、有期の職を得た場合、何年間で何報という規定を満たさないと職が更新してもらえない場合がありえます。

関連記事 ⇒ 10年間で論文20報届かず富山大教授解雇

そんなときは、雑誌の評判に構っている場合ではないので、要件を満たすジャーナルであればどの雑誌でも良いでしょう。そんなニーズを満たすために作られた言われているのがMDPIのジャーナル群です。

関連記事 ⇒ MDPIはハゲタカジャーナルなのか?気になるMDPIの評判まとめ

PLOS ONEのIF、採択率、査読期間、評判

PLOS ONEとは

PLOS ONEは、PLOS(Public Library of Science)が2006年に創刊したオンラインジャーナルです。地球上のどこの誰でもネットにアクセスできさえすれば無料で科学論文を読むことができるという点が画期的でした。大学にいるときに文献検索していると、ほとんどの論文が無料で読めるのが当たり前だと錯覚しますが、たまに自宅からアクセスすると読みたい論文が40ドルなど支払い画面に誘導されて、所属大学が出版社と契約して高いお金を払っていただけであって、実は科学論文というものはほとんどの場合が無料ではなかったことに気付かされます。

また、PLOS ONEはデータが確かなものであれば、研究の意義は(あまり?)問わないという点も画期的でした。研究の意義を決めるのは、その論文が出版された後、その論文を読んだ読者にゆだねればよいという発想です。

PLOS ONEの守備範囲はもともと生物学や医学でしたが、後に工学や人文社会科学なども含むようになったようです。そのためか、基礎科学の研究者から見ると、非科学的と思える突飛な論文が出版されて物議を醸したりします。

関連記事 ⇒ 人間の手の精巧さは創造主なる神の賜物 PLOS ONE

こんな論文が掲載されてしまったということは、査読や編集がちゃんとしていたのかという疑念を生じさせますが、PLOS ONEをハゲタカジャーナルと見なす研究者はとりあえずいないはず。

PLOS ONEのインパクトファクター

PLOS ONEは2006年の創刊で、最初インパクトファクターが2009年4.351、そして2010年は4.411と好調な滑り出しだったと思います。しかし、2011年は4.092と翳りが見え始め、2012年には3.730と4を切ってしまいました。PLOS ONEに続いて同じコンセプトのオープンアクセスジャーナルが多数創刊されたせいか、その後インパクトファクターは下がり気味で、2020年のインパクトファクターは3.240になっています。

  1. The Rise and Fall of PLOS ONE’s Impact Factor (2012 = 3.730) By PHIL DAVISJUN 20, 2013  The scholarly kitchen
  2. PLOS One (Wikipedia)

PLOS ONEの採択率

PLOS ONEの採択率は、当初70%程度と非常に高かったような記憶がありますが、今みてみたら45%前後でした(2019年)。

  1. PLOS ONE Journal Information 

 

PLOS ONEの査読期間

投稿してから、エディターキックを食らうかそれとも査読にまわるかの決定までの日数は2週間程度。査読後の可否の決定までが45日前後、最終的にアクセプトかリジェクトかの決定までが3か月程度というのが、PLOS ONEが公表しているタイムスケジュール実績になっています。

  1. PLOS ONE Journal Information 

まあ普通それくらいかかるでしょうとは思いますが、MDPIなどのように査読の質を犠牲にしても速さ命で突き進むジャーナルを見慣れてしまうと、遅いと感じる人も多いのではないでしょうか。研究者のほとんどは、限られた年数の間に論文のアクセプトまでこぎつけないと次がないという崖っぷちの生活をしているので、アクセプトまでのスピード感は、論文投稿者が望む最大のサービスだと言えます。

  1. https://scirev.org/journal/plos-one/ 

 

PLOS ONEの評判

PLOS ONEは、創刊当初は採択率7割で出せば通る救済雑誌のイメージを自分は持っていたのですが、その後、採択率はもう少し厳しくなったようで、最近は4~5割の間みたいです。PLOS ONEを良い雑誌と見なすか、良い雑誌とは見ないかは、その人が普段どのレベルのジャーナルに出しているかにもよるので、何とも言えないところです。

ツイッターでは辛口の声も聞かれますが、リアルでどうかというと、自分はPLOS ONEを持ち上げる人に出会ったことはありませんが、かといって、PLOS ONEのことをことさらけなす人にも出会ったことがありません。

ネットのレビューサイトに、多数の経験談が掲載されているのでURLだけ紹介しておきます(英語読むのがめんどくさいので)。査読がどれくらい厳しいのか、などの情報が得られると思います。

  1. https://scirev.org/reviews/plos-one/ 

個人的なことをいうと、もともとPLOS (Public Library of Science)の理念は素晴らしいと思っていたので、そのPLOSが明確なコンセプトのもとにつくったPLOS ONEにも良い印象があります。高い採択率のオープンアクセスジャーナルでサイエンティフィックな意義にはこだわらないという以上、玉石混交になるのは想定内なのではないでしょうか。

PLOS ONEは創刊当初の勢いを失っているように思います。競合他社が同様の戦略を採用しており、Nature系のScientific ReportsやCell Press社のiScienceなどに勢いを感じます。

 

参考

  1. PLOS ONEのこれまで,いま,この先 佐藤 翔 情報管理/57 巻 (2014) 9 号 p. 607-617 DOI https://doi.org/10.1241/johokanri.57.607

まだMDPIで悩んでいるの?

自分の論文をMDPIジャーナルに出すべきか?
MDPIジャーナルから投稿の誘いが来たのに乗るべきか?
MDPIジャーナルから査読依頼が届いたが、受けるべきか?
MDPIから特集(Special Issue)のエディターをやってくれと誘いのメールが来たがやるべきか?
MDPIの悪い噂を聞いたけど、気にしたほうがいいのか?
MDPIジャーナルにも高名な研究者が論文を出しているので、問題ないんじゃないのか?

関連記事 ⇒ MDPIはハゲタカジャーナルか?

MDPIが世の研究者たちを惑わせています。

ジャーナルの評価は研究者個人の主観によるところが大きく、その主観の集合体が客観的な判断になります。判断は分野により異なることもあるでしょう。

私の考えはこうです。自分がこれからジョブアプリケーションを送ろうとしている大学の選考委員たちがMDPIを認めていないのなら、自分の将来を閉ざすような行為は避けた方が良い。自分が所属している研究者コミュニティがみなMDPIを認めているのなら、交わればよい。既にパーマネントな職についていて、昇進のために論文の数だけが問われるなら、‥ 好きにすればよい。

東大や京大もMDPIに何百報も論文を出しているのが現実なので、10年後には誰もMDPIがかつてハゲタカ認定されていたことなど覚えていないかもしれません。

関連記事 ⇒ 東大京大での一番人気はInt J Mol Sci

前に、MDPIに出すくらいなら自分はFRONTIERに出すと書いたのですが、実はFRONTIERもかつてBeall氏からハゲタカ認定されていたことを、今日知りました。

  1. Beall-listed Frontiers empire strikes back

そうは言っても自分はFRONTIERに悪い印象を抱いたことが全くないので、MDPIと同じに考えることは、自分にはできません。

さて、ここからは私見になります。自分ならこう考えます。

自分が何年も苦労してまとめ上げた研究成果をMDPIジャーナルに出しますか?

⇒自分が大事に育てた娘や息子を、どこの誰かわからない相手と結婚させますか?

初めて聞く名前のジャーナルを投稿先に選びますか?

⇒知らない人に誘われて車に乗りますか?

MDPIからの査読のお誘いに乗りますか?

⇒ランダムに声をかけてナンパしている相手に、ホイホイとついていきますか?

MDPIからのエディターのお誘いに乗りますか?

⇒自分が長年培ってきた倫理観が全く通用しない人間と、お近づきになりたいですか?

論文数が足りなくて職を追われそう、あるいは、論文数が足りないせいで職のオファーが流れそう。さあ、MDPIに出しますか?

⇒No choice!

MDPIのビジネスのやり方を暴く

ネット上に見過ごせない記事がありました。

  1. Guest Editing a Special Issue with MDPI: Evidences of Questionable Actions by the Publisher By Stef Brezgov – June 6, 2019

上の告発記事では、特集のためのゲストエディターの誘いに乗った人が、垣間見たMDPIのビジネスのやり方です。この人はゲストエディターを引き受けたのですが何もやらないうちにMDPIが勝手に500人以上もの研究者に特集への寄稿を促すメールを出し、論文を投稿させ、査読も済ませていたというものです。

they said they would do all the work on my behalf

the EiC is just a figurative name, who accepted the position because the publisher does all the “work” — in fact, a Chinese employee from MDPI with no scientific expertise does all the work

なんのためのゲストエディターでしょう!?

研究者の連絡先はキーワードで拾って集めたということですが、これはもうスパム的な行動と言ってよいでしょう。

It was a special issue and I was invited to contribute by the invited editor of the issue. We sent our manuscript and received an immediate rejection based on poor publication history of the first author! (Is MDPI still a predatory publisher? Researchgate.net)

東大も京大もMDPI社のInt J Mol Sciが好き

MDPI社が発行している学術誌の評価に関しては、なにかと論争が多い(controversial)ところです。

関連記事 ⇒ MDPIはハゲタカジャーナルか?

Go To キャンペーン論文

  1. “Go To Travel” Campaign and Travel-Associated Coronavirus Disease 2019 Cases: A Descriptive Analysis, July–August 2020 by Asami Anzai and Hiroshi Nishiura (Journal of Clinical Medicine, MDPI)
  2. 西浦教授からのリプライに対するコメント (中田大悟 | 独立行政法人経済産業研究所 上席研究員 1/29(金) 17:15 YAHOO!JAPAN)
  3. 西浦教授が「Go To トラベル研究」への批判に答える (1/29(金) 8:00配信 m3.com)

 

Go Toキャンペーン論文がMDPIジャーナルに掲載されたものであったことで、ネット上が騒がしくなったようです。「 MDPIはハゲタカジャーナルか?」に書きましたが、MDPIジャーナルはハゲタカジャーナルだと断定的に言うことはできません。査読が非常にゆるい雑誌が多いことは間違いありません(全てかどうかはわかりません)。査読がゆるいと言っても決して査読者がいい加減に査読しているわけではありません(自分も査読経験あり)。採否を決めるのはジャーナルのエディターなので、査読者が真面目に論文を読み込んで、どれほど厳しい要求をしたところで、エディターがビジネス優先で、「いいよ、いいよ、これで。」と言えば、どんな論文でも掲載されてしまうのです。

MDPIジャーナルは査読者に一週間以内に査読コメントを返すように要求してきたりします。

We have received the following manuscript to be considered for publication in
International Journal of Molecular Sciences
(https://www.mdpi.com/journal/ijms/) and kindly invite you to provide a
review to evaluate its suitability for publication:

(中略)

If you accept this invitation we would appreciate receiving your comments
within 1 week. Please let us know if you will need more time.

(査読依頼メールの例。太字強調は当サイト)

 

MDPIジャーナルでは追加実験無しのマイナーリビジョンでアクセプトされるのであれば、投稿してから1か月もしないでアクセプトされることもありうるでしょう。一刻も早く出版する目的でMDPIジャーナルを選ぶ人はいると思います。

 

一般的なジャーナル名の特徴として、一流誌ほど「短い」という傾向がありますが、MDPIのネーミングは絶妙で、短く1単語で、複数形のsを付けて新たな雑誌名を創出しているパターンが多く、「一流っぽさ」を見事に演出しています(あくまで、個人的な印象)。短くない雑誌名の場合も、他の中堅どころの雑誌名に酷似していて(まあ、仕方ないのですが)、紛らわしいことこの上ないです(まあ、仕方がないのですが)。

 

生命科学系の研究者が一番利用する文献データベースはPubMedですが、PubMedにも多数のMDPIジャーナルが収載されています。以下、その一覧。

  1. Animals
  2. Antibiotics
  3. Antibodies
  4. Antioxidants
  5. Audiology Research
  6. Behavioral Sciences
  7. Bioengineering
  8. Biology
  9. Biomedicines
  10. Biomimetics
  11. Biomolecules
  12. Biosensors
  13. Brain Sciences
  14. Cancers
  15. Cells
  16. Children
  17. Clinics and Practice
  18. Clocks & Sleep
  19. Current Oncology
  20. Dentistry Journal
  21. Dermatopathology
  22. Diagnostics
  23. Diseases
  24. Entropy
  25. Foods
  26. Gels
  27. Genes
  28. Geriatrics
  29. Healthcare
  30. Infectious Disease Reports
  31. Insects
  32. International Journal of Environmental Research and Public Health
  33. International Journal of Molecular Sciences
  34. International Journal of Neonatal Screening
  35. Journal of Cardiovascular Development and Disease
  36. Journal of Clinical Medicine
  37. Journal of Developmental Biology
  38. Journal of Functional Biomaterials
  39. Journal of Functional Morphology and Kinesiology
  40. Journal of Fungi
  41. Journal of Intelligence
  42. Journal of Personalized Medicine
  43. Journal of Xenobiotics
  44. Life
  45. Marine Drugs
  46. Materials
  47. Medical Sciences
  48. Medicina
  49. Medicines
  50. Membranes
  51. Metabolites
  52. Methods and Protocols
  53. Micromachines
  54. Microorganisms
  55. Molecules
  56. Nanomaterials
  57. Neurology International
  58. Non-Coding RNA
  59. Nutrients
  60. Pathogens
  61. Pediatric Reports
  62. Pharmaceuticals
  63. Pharmaceutics
  64. Pharmacy
  65. Plants
  66. Polymers
  67. Proteomes
  68. Sensors
  69. Sports
  70. Toxics
  71. Toxins
  72. Tropical Medicine and Infectious Disease
  73. Vaccines
  74. Veterinary Sciences
  75. Viruses
  76. Vision

PuBMedにデータがあるので、例えば東大が何報これまでにMDPIジャーナルに論文を出したのかを調べることができます。検索してみると、826件ヒットしました。内訳をみると、51個のジャーナルに出しています。それぞれのジャーナルについてみると、

Int J Mol Sci 144
Sensors (Basel) 92
Int J Environ Res Public Health 77
Molecules 49
Nutrients 48
Micromachines (Basel) 44
Materials (Basel) 31
Genes (Basel) 30
Viruses 25
Cancers (Basel) 24
J Clin Med 22
Nanomaterials (Basel) 18
Polymers (Basel) 18
Entropy (Basel) 17
Biomolecules 14
Cells 14
Toxins (Basel) 13
Plants (Basel) 11
Healthcare (Basel) 11
Microorganisms 10
Mar Drugs 10
Brain Sci 9
Diagnostics (Basel) 8
Biomedicines 8
Biology (Basel) 7
Metabolites 6
Pathogens 6
Antioxidants (Basel) 6
Foods 6
Vaccines (Basel) 6
Membranes (Basel) 5
Insects 5
Pharmaceutics 5
Proteomes 3
Behav Sci (Basel) 3
J Funct Biomater 3
Noncoding RNA 2
Methods Protoc 2
Vet Sci 2
Toxics 1
Animals (Basel) 1
Sports (Basel) 1
Bioengineering (Basel) 1
Antibiotics (Basel) 1
Med Sci (Basel) 1
Gels 1
Diseases 1
J Fungi (Basel) 1
J Dev Biol 1
Biosensors (Basel) 1
Pharmaceuticals (Basel) 1

という結果でした。
MDPIジャーナルの一番人気は、Int J Mol Sci (International Journal of Molecular Sciences)ということがわかりました。

京都大学もみてみると、MDPIジャーナル論文は38の雑誌に、372報。内訳は、

Int J Mol Sci 52
Int J Environ Res Public Health 37
Molecules 31
Sensors (Basel) 25
Polymers (Basel) 24
Materials (Basel) 23
Nutrients 23
Cancers (Basel) 17
J Clin Med 13
Entropy (Basel) 12
Nanomaterials (Basel) 12
Insects 12
Mar Drugs 11
Plants (Basel) 7
Metabolites 6
Viruses 6
Genes (Basel) 6
Biomolecules 6
Cells 5
Microorganisms 5
Pharmaceutics 5
Biomedicines 3
Biology (Basel) 3
Diagnostics (Basel) 3
Animals (Basel) 3
Micromachines (Basel) 3
Membranes (Basel) 3
Sports (Basel) 2
Vet Sci 2
Brain Sci 2
Pathogens 2
Toxins (Basel) 2
Diseases 1
Toxics 1
Healthcare (Basel) 1
Foods 1
Antibodies (Basel) 1
Pharmaceuticals (Basel) 1
で、東大と同じくInternational Journal of Molecular Sciencesに一番論文が投稿されていました。

 

東大も京大もMDPIに論文を多数投稿しているようですが、これからPI職を獲って研究の世界で生き残るつもりの若者は、自分の論文投稿先を決める前にMDPIはハゲタカジャーナルか?をお読みください。

 

参考

  1. https://www.mdpi.com/about/journals/pubmed

MDPIはハゲタカジャーナル?その評判

MDPIはハゲタカジャーナルか?MDPIのインパクトファクター(JCR2018)(2019年6月発表)

MDPI社の学術誌に自分の論文を投稿しても良いものかどうか、で悩んでいる人がかなり多いみたいなので、MDPIに関する評判を纏めておきます。

オープンアクセスジャーナルの発行元の一つに、MDPI (Multidisciplinary Digital Publishing Institute)という会社があります。以前はBeall氏にハゲタカジャーナルという認定を受けていたのですが、強行な抗議行動を行ったため、結局Beall’s Listからは外されました。Beall氏の最近の論文を読む限り、彼はBeall’s ListからMDPIを外しはしましたが、MDPIに対する考え方は全く変えていないようです。MDPIがいかに執拗な嫌がらせ行動を仕掛けてきたかを報告しています。

Still others tried different strategies. Some tried annoying university officials with numerous emails and letters, often sent as PDF attachments, with fancy letterhead, informing the university how I was hurting its reputation. They kept sending the emails to the university chancellor and others, hoping to implement the heckler’s veto. They tried to be as annoying as possible to the university so that the officials would get so tired of the emails that they would silence me just to make them stop. The publisher MDPI used this strategy. (What I learned from predatory publishers. Jeffrey Beall. Biochemia Medica 2017;27(2):273–8 PDF)

 

scholarlyoa.comというウェブサイトにも、MDPIに関して警告を発する記事があります。Stef Brezgovさんいわく、研究者は、

  • MDPI社のどの雑誌にも論文を投稿しない Not submit papers to any of the MDPI journals
  • MDPIのエディターへのお誘いには乗らない、エディトリアルボードには加わらない、多数ある「特集号」企画のゲストエディターも引き受けない Not accept invitations to serve as journal editors or editorial board members, including as guest editors for the publisher’s many “special” issues
  • MDPIのエディトリアルボードに加わっているなら降りる、エディターからも降りる Resign from any MDPI editorial boards they are currently serving on, and resign as editors

ことを勧めています。この記事では、MDPIのそもそもの狙いは、中国の研究者が国際誌に論文発表する必要がある、そのニーズにこたえるために作られたものではないかという意見を紹介しています。スイスに本部があるといってもそこで働く人はほんの数名(about a half dozen)で、中国支部には100人以上もの人間が働いている事実からも、中国人相手のビジネスであることは明らかだろうと解説しています。中国人は、国際誌に英文論文を出すことが昇進のために必要なので、そのニーズに見事にこたえるビジネスモデルだというわけです。

昇進に国際誌に掲載された論文業績が必要というのは、中国に限らず日本もそうです。それが、MDPIビジネスが大躍進しているカラクリでしょう。このウェブ記事の著者は、「サイエンスなんてどうでもいい、インパクトファクターがあるジャーナルに論文を出せればいいんだ」という研究者にはうってつけだと述べています。

 

MDPIのジャーナルのインパクトファクター

インパクトファクターが4以上あるMDPIのジャーナルを列挙してみます。

  1. Cancers 6.162
  2. Journal of Clinical Medicine 5.688
  3. Cells 5.656
  4. Pharmaceutics 4.773
  5. Vaccines 4.760
  6. Biomolecules 4.694
  7. Antioxidants 4.520
  8. International Journal of Molecular Sciences (IJMS) 4.183
  9. Nutrients 4.171
  10. Microorganisms 4.167
  11. Remote Sensing 4.118
  12. Nanomaterials 4.034

参考

 

MDPIのビジネスモデル

MDPIもジャーナルによってはそこそこ高いインパクトファクターがあるため、もはやハゲタカジャーナルという括りに入れられないでしょう。しかしジャーナルサイトを見ると、非常に多くのレビューアーティクルを掲載しており、MDPIの論文を引用してインパクトファクターを上げるための戦略だとしたら、無批判にインパクトファクターの数字を見て感心している場合ではないかもしれません。下の投稿ではそのような懸念が示されています。

However, it appears they may boost their impact factor by publishing loads of reviews, and possibly by promoting citation of their previously published papers in the reviews they publish. I have no direct evidence of the latter, except that I published in Viruses, and most citations for that review have been from other papers published in Viruses. (MDPI journals redditit.om)

MDPIは大量のレビューアーティクルを掲載していますが、それは、MDPIジャーナル論文を引用することによりインパクトファクターを引き上げる目的ではないかと懸念されているということのようです。

MDPIのビジネスモデルで、もうひとつ重要な戦略が特集号の乱発です。私も特集号のエディターをやりませんか?というお誘いメールをMDPIからよく受け取ります。自分の専門から外れた内容であることが多いので、煩わしさを感じますし苛立ちを覚えます。テキトーに勧誘メールを送り付けているのでしょう。

誰がMDPIを認めているのか

東大や京大の研究者もMDPI社のジャーナルに多数の論文を出しているという現実があります。

関連記事 ⇒ PubMed収載MDPIジャーナル一覧:東大京大での一番人気はInt J Mol Sci

MDPIのサイトによれば、MDPIと割引契約を結んでいる研究機関や大学は、理研!、東大!をはじめとして、2研究所、11国立大学、3公立大学、11私立大学、4高等専門学校、合計31機関、それに加えて6学会ありましたので(2021年11月21日閲覧)、以下に紹介します。

 

MDPI社と契約している研究機関

  1. 理化学研究所(理研) Riken
  2. 極地研究所 National Institute of Polar Research

理研といえば、RIKENで通るくらいに世界に名を馳せている日本最高の研究所なわけですが、その理研がMDPIを認めているという事実をどう受け止めればよいのか。理研でジョブを獲ろうと思えば、ネイチャー、サイエンス、セルなどの超一流誌に論文業績が無い限りお呼びじゃない、そんな日本の最高峰というイメージだったのですが、その理研がMDPIと契約しているというのを知って、脱力。Harvard Universityとか、 Massachusetts Institute of Technology (MIT)とか、Max Planck Society (Max-Planck-Gesellschaft)もMDPIと契約しているから、いいじゃんとでもいうのでしょうか。

 

MDPI社と契約している国立大学

  1. 東京大学 University of Tokyo
  2. 名古屋大学 Nagoya University
  3. 北海道大学 Hokkaido University
  4. 九州大学 Kyushu University
  5. 熊本大学 Kumamoto University
  6. 岡山大学 Okayama University
  7. 電気通信大学 The University of Electro-Communications
  8. 長崎大学 Nagasaki University
  9. 弘前大学 Hirosaki University
  10. 九州工業大学 Kyushu Institute of Technology
  11. 浜松医科大学 Hamamatsu University School of Medicine

”研究及びこれを通じた高度な人材の育成に重点を置き、世界で激しい学術の競争を続けてきている大学(Research University)”による国立私立の設置形態を超えたコンソーシアム「学術研究懇談会」(通称、RU11)を構成する11大学(北海道大学、東北大学、東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学、筑波大学、東京工業大学)のうち、東京大学、名古屋大学、北海道大学、九州大学の4大学の名前がMDPI社と契約しているリストの中に見受けられます。

自他共に日本一の研究大学と認める東京大学をはじめとして、これらの大学はMDPIを認めていると理解して良いのでしょうか。MDPIジャーナルに論文を出していながら、”世界で激しい学術の競争を続けている”と言えるのかな‥

激しい学術競争の場が、MDPIジャーナルということ?まさかね。

激しい学術競争に敗れて辿り着いた場所が、MDPIジャーナルだったというわけ?ないわな。

 

まあ、エラーバーを手作業でずらしてネイチャーに出すくらいなら、ちゃんとした実験結果をMDPIジャーナルに出すほうが、研究者として誠実だと思います(比較にならんけど)。

 

MDPI社と契約している公立大学

  1. 東京都立大学 Tokyo Metropolitan University
  2. 奈良県立医科大学 Nara Medical University
  3. 徳島文理大学 Tokushima Bunri University

 

MDPI社と契約している私立大学

  1. 近畿大学 Kindai University
  2. 立命館大学 Ritsumeikan University
  3. 関西学院大学 Kwansei Gakuin University
  4. 東邦大学 Toho University
  5. 昭和薬科大学 Showa Pharmaceutical University
  6. 明治薬科大学 Meiji Pharmaceutical University
  7. 東京歯科大学 Tokyo Dental College
  8. 神奈川歯科大学 Kanagawa Dental University
  9. 吉備国際大学 Kibi International University
  10. 九州保健福祉大学 Kyushu University of Health and Welfare
  11. 龍谷大学 Ryukoku University

MDPI社と契約している学会

  1. 日本マイコトキシン学会 Japanese Society of Mycotoxicology (JSMYCO)
  2. リモートセンシング学会 The Remote Sensing Society of Japan (RSSJ)
  3. 日本写真測量学会 Japan Society of Photogrammetry and Remote Sensing
  4. 日本マススクリーニング学会 Japanese Society for Neonatal Screening
  5. 日本臨床工学技士会 Japan Association for Clinical Engineers (JACE)
  6. 陸水物理学会 Japanese Society of Physical Hydrology (JSPH)

 

MDPIと契約している高等専門学校

  1. 鈴鹿工業高等専門学校 Suzuka College
  2. 大分工業高等専門学校 Oita College
  3. 小山工業高等専門学校 Oyama College
  4. 都城工業専門高等学校 Miyakonojo College

 

東北大学

東北大学の研究者の間では、MDPIは、よく投稿しているランキング15位に入っています。

東北大学所属研究者の論文公表 掲載数の多い出版社 上位15社(2016年)
1 Elsevier
2 Springer Nature
3 Wiley
4 Inst of Phys (IOP)
5 Amer Chem Soc (ACS)
6 Royal Soc Chem (RSC)
7 Taylor & Francis
8 Amer Inst Phys (AIP)
9 IEEE
10 Pub Lib of Science (PLOS)
11 Oxford Univ Press (OUP)
12 BioMed Central (BMC)
13 Lippincott W&W (LWW)
14 日本金属学会
15 MDPI

 

京都大学

京都大学は、MDPI(Multidisciplinary Digital Publishing Institute)社の”Institutional Open Access Program(IOAP)” に2018年5月15日から参加していましたが、IOAP参加は2020年10月31日で終了したとのこと。

MDPI社オープンアクセスジャーナルの論文投稿料割引について

京都大学は、2018年5月15日より、査読付きオープンアクセスジャーナル誌を刊行する MDPI(Multidisciplinary Digital Publishing Institute)社の”Institutional Open Access Program(IOAP)” へ参加いたしました。 これに伴い、MDPI社発行のオープンアクセスジャーナルに京都大学の構成員が論文を投稿する場合、論文投稿料(APC)が10%割引されます。

京都大学 2018-05-21

 

MDPI社オープンアクセスジャーナルの論文投稿料割引について→【2020年10月31日終了】https://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/bulletin/1378506

この方針変更を反映してか、MDPI社の人気雑誌International Journal of Molecular Sciencesへの投稿量を見てみると、京都大学では2021年に論文数が減少しています。ちなみに東大は増加傾向。両大学のMDPIに対する姿勢の違いが鮮明。

投稿量の10%割引がなくなったくらいで投稿を控えるとも思えないので、これは京大の研究者がMDPIの雑誌を避け始めているあらわれか。

 

九州大学

オープンアクセス論文掲載料(APC)割引情報 論文をジャーナルに投稿する際に、掲載論文をオープンアクセスにするためには、多くの場合、オープンアクセス論文掲載料(Article Processing Charge : APC)と呼ばれる費用が発生します。本学で機関購読契約をしていることにより、下記ジャーナルでは本学の構成員(教職員・学生)がオープンアクセス論文掲載料の割引を受けることができます(2019年10月現在)。

Multidisciplinary Digital Publishing Institute (MDPI) すべてのジャーナル 本学ではInstitutional Open Access Program(IOAP)に参加しているため、本学構成員がCorresponding Authorの場合、10%の割引が適用されます。(九州大学付属図書館

 

名古屋大学

APC割引情報 (2018年9月現在) 名古屋大学の構成員はAPCの割引制度を利用することができます。

Multidisciplinary Digital Publishing Institute(MDPI) (Journal list) APCが10%割引されます。(価格表) MDPIの論文投稿システムにて,「Institutional membership」の画面で「Nagoya University」を選択してください。(名古屋大学

 

これからジョブを獲ろうとする若者への警告

上記のように日本のメジャーな研究大学がMDPIジャーナルの割引制度を利用しており、事実上、このジャーナルを認めているように思います(すくなくとも図書館の人は)。MDPIがハゲタカか否かという議論はさておいて、教授がハゲタカジャーナルに論文を出しているからといって、若者がそれを真似してその手のジャーナルに論文を出していいわけではありません。その点を指摘したブログ記事があったので紹介しておきます。

国立大の博士後期課程の友人から聞きましたが、そこでの採用においてはハゲタカ出版社に投稿したことを業績としていることが判明した時点で不採用だそうです。… もう既にテニュアな地位を得た人は国際誌の実績などどうでもいいのかもしれませんが(本当は全く良くない)、これから競争社会に突入していく若手研究者にとっては、国際誌の投稿が生命線になるんだということを認識する必要があります。(上司がハゲタカ出版社に投稿… 2017-04-11 10:00:51 水道研究者の生態)*太字強調は当サイト

大学図書館がMDPIの割引サービスを宣伝しているからといって、その大学の教員採用のコミッティーメンバーの教授たちがMDPIを認めているということにはなりませんので注意が必要です。

ネットの匿名掲示板でも、自分の考えと同様の書き込みがありました。これらの投稿を見ると、MDPIジャーナルをハゲタカ視している大学教員が存在していることが伺えます。

687Nanashi_et_al.2021/04/01(木) 04:32:29.12 うちはハゲタカに出してるっていう理由で当落ラインにいた応募者を落としたことあるよ オープンアクセスっていうだけで毛嫌いする爺さんもいる

688Nanashi_et_al.2021/04/01(木) 05:52:18.71 うちはMDPI出してたら問答無用で落とす

(引用元:【エンドレス】新・教員公募星取り表62【ポスドク地獄】 5ちゃんねる ttps://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/rikei/1612706788/)

 

MDPI社のジャーナルの評価は月日が経つうちに変わっていくかもしれません。しかし、現時点で認められているのかどうかをシビアに見ておかないと、研究者としてのキャリアアップに影響する恐れがあります。特に、自他共に認める日本有数の研究大学、世界に伍すると自負する研究大学においては、学生を指導する立場の教員にも、大きな責任があると思います。知らなかったでは済まされません。

うちの学部で以前に博士課程の学生の学位論文審査でMDPIの雑誌に掲載された論文が含まれていたことに対して、数人のファカルティメンバーから疑義が唱えられたとの話もあり (引用元:http://flypusher48.blogspot.com/2021/06/ijms.html) 

 

ハゲタカジャーナルを支持する研究者の特徴

上で紹介したBeall氏の論文では、興味深い分析がなされています。いわく、ハゲタカジャーナルに論文を掲載した研究者は、そのハゲタカジャーナルの最大の擁護者になるとのこと。

I was also always surprised at the extent to which researchers who had published in one or more of a predatory publisher’s journals became the publisher’s biggest defender. It’s as if they felt a sense of loyalty to the publisher. (What I learned from predatory publishers. Jeffrey Beall. Biochemia Medica 2017;27(2):273–8 PDF)

ハゲタカ出版社のジャーナルに論文を発表したことのある研究者が、その出版社の度を
越えた擁護者になってしまうことにも常に驚かされました。… 厳密な査読を実施するジャーナルによって論文をリジェクトされ続けた研究者は、論文を受理して出版してくれた出版社を愛してしまうのです。(引用元:ハゲタカ出版社から学んだこと ジェフリー・ビール kulib.kyoto-u.ac.jp)

査読の厳しい他の雑誌でさんざん却下されてきた研究者であれば、自分の論文を受理してくれるハゲタカジャーナルを好きになるのは当然だろうという分析です。

 

ハゲタカジャーナルが果たす役割

MDPI誌がハゲタカジャーナルかどうかの議論はさておき、ハゲタカジャーナルが科学コミュニティで果たしている役割をジェフリー・ビールさんが端的に述べています。

ハゲタカ出版の出現以来、何万人もの研究者が、修士号と博士号を取得し、学位、その他の資格と認証を授与され、雇用と昇進を受け取り、職に就いたものと思われます。金さえ払えば載せてくれるジャーナルの軽薄なアクセプト体制がなければ、到底達成することができなかったはずの 成功を手にしているのです。

(引用元:ハゲタカ出版社から学んだこと ジェフリー・ビール kulib.kyoto-u.ac.jp)

MDPIジャーナルの使われ方を見ていると、ハゲタカかどうかは別にしても、上の記述と同じような役割を果たしているのは明らかでしょう。

 

MDPIに対する個人的な印象

私の個人的な体験で言えば、一度関わってしまうとMDPIは分野違いの雑誌・論文でもお構いなくやたらめったら査読依頼をしてくるので、スパム的な活動すなわちハゲタカジャーナルっぽさを感じていた(る)微妙な会社です。私の個人的な印象を裏付けるようなことがネット上でいくらでも見つかるので、紹介しておきます。

MDPIの査読はかなり緩いようです。下のフォーラムの投稿によれば、自分の学生たちの論文が、サブミッションからアクセプトまでが2週間もかからなかったそう。しかも、それらの論文は他のジャーナルではレビューにすら回してもらえないような内容で、博士課程の中途半端でぽしゃった仕事で、やむにやまれずMDPIジャーナルに出したものだったとのこと。

15 days from submission to first decision is super fast, and in my experience not atypical for MDPI journals. Several of my fellow students have published in their journals as a last resort to publish broken, half finished projects at the end of their PhDs. Work which was rejected without review from other journals was accepted by MDPI journals with no revisions less than two weeks from submission. (reddit.com)

こんな雑誌に出した論文が、業績としてカウントしてもらえて、職が得られたり昇進させてもらえたりするというのであれば、他のジャーナルから蹴られてばかりの研究者にとっては甘美な誘惑になるでしょう。

ジェフリー・ビールの懸念は、「MDPIの大問屋雑誌は何百もの安易に査読された、科学を伝えることよりむしろ昇進や終身雇用(テニュア)を獲得する目的のために主に書かれ、出版されている論文を含んでいる」ことであった[30]。ビールは、MDPIが原稿を募るために電子メールスパムを使用したとも主張した[31]。(MDPI ウィキペディア)

 

上で紹介したStef Brezgovさんの記事でも、MDPI社の学術誌に掲載されている論文は、サイエンスのためというよりも、昇進人事に必要な論文数稼ぎのためだろうと指摘しています。

I think MDPI’s warehouse journals contain hundreds of lightly-reviewed articles that are mainly written and published for promotion and tenure purposes rather than to communicate science.

厳格に論文を精査しようとしたエディターが、MDPIに辞めさせられたという記事もあります(下記リンク)。個々の研究者は、このような事実関係を知ったうえで、MDPIのジャーナルに自分の論文を出していいのかどうかを判断する必要があるでしょう。

 

MDPIはハゲタカジャーナルなのか?

ハゲタカジャーナルの定義がそもそも明確ではないため、非常に難しい問題です。一般的にハゲタカジャーナルの特徴として論文掲載料がバカ高いことが挙げられますがネイチャー系のオープンアクセスジャーナルもバカ高いのに、誰もハゲタカジャーナルとは呼びません。

また、ハゲタカジャーナルと判断する指標として粗悪な論文が多いということもありますが、ネイチャーやその姉妹紙でも編集長が疑惑論文を撤回しないために、粗悪な論文が放置されています。粗悪なと言う意味は、「実験で得られたオリジナルデータ≠論文の図表で示されたデータ」という意味です。そうなると、もうどっちがハゲタカ?と頭を抱えててしまいます。

関連記事 ⇒東大が会見、医学系5教授は不正なしとする

MDPIの資料(Annual Report 2018)を見ると、出版している雑誌の数が203、Web of Science Core Collectionに収録されている雑誌の数が127、SCIE掲載の雑誌数が54、Scopus掲載の雑誌数が111ということなので、少なくともMDPIが発行する雑誌の半分程度は世の中で認められている、すなわちハゲタカジャーナルとはみなせないということになります。残りの半分弱は、評価が定まらない状態と言うべきでしょう。PubMedデータベースにも多数のMDPI雑誌が収録されています。

関連記事 ⇒ MDPIジャーナルのうちPubMed収録されている雑誌のリスト

  • 質問: MDPIの評価について 質問の内容 – MDPIから投稿の依頼がメールで再三にわたり来ておりますが、 MDPIの一般的な評価はどのようなものでしょうか。 お忙しいところ誠にお手数とは存じますが、何卒よろしくお願い申し上げます。 (過去の質問 2018年11月22日 エディテージインサイツ
  • 当初はハゲタカジャーナルと名指しされリストに掲載されていたものの、現在はOA学術出版社協会に加盟し、リスト上でも雑誌によって「良いもの悪いものもある」という注釈が加えられている。(粗悪オープンアクセス(OA)ジャーナルについて
  • 中国系OA出版社”MDPI”、金目当ての疑い 2014年02月20日

Nature系の雑誌とMDPIの雑誌の間を分ける線すら客観的に引けない以上、Web of Scienceに収録されたMDPIジャーナルをハゲタカ認定することはできません。ハゲタカとハゲタカでないものを分けるのは、その専門分野の研究者の多くがどう考えるか?という主観的な判断だけかもしれません。

Frontiersも以前Beall氏にハゲタカ認定された過去がありますが、Fronteirsは激しく抗議して、Beall氏の勤務先であるコロラド大学デンバー校に圧力をかけたため、Beall氏は失職の危機に陥りBeall’s listからFronteirsを外し、さらにはBeall’s listそのものもこの世から消えるという事態にまでなりました。私の個人的印象ではなぜFrontiersがハゲタカ視されたのかがピンとこなくて、この件に関してはBeall氏の判断が正しかったか疑問だと感じます。Beall氏のリストの影響力は非常に大きなものがあり、実際に科学者コミュニティに警鐘を鳴らした点で貢献度は多大だと思いますが、ハゲタカかどうかの最終判断は、Beall氏の個人的判断ではなく、研究者の主観の集体によって決まるのではないかと思う事例でした。

関連記事 ⇒ FRONTIERSはハゲタカジャーナルか?

 

SNSでみるMDPIの評判

MDPIがハゲタカジャーナルかどうかのアンケート調査結果

MDPIの日本のネットの評判

14 Nanashi_et_al.2018/10/23(火) 20:05:45.17>>15>>59>>67 MDPIのジャーナルって評判どう?

15 Nanashi_et_al.2018/10/23(火) 21:18:55.34 >>14 絶対やめとけ 将来に響くよ

486 Nanashi_et_al.2019/07/30(火) 09:47:06.49 >>484 MDPIもAPCが十数万円したりする 投稿して10日くらいしか経っていないのに受理されたって喜んでるのを見ると不安になるよ

722 Nanashi_et_al.2019/11/26(火) 16:37:08.49 MDPIはビミョーだよなあ 投稿は当然したことないし、今は査読も避けてる。 いままで5件ぐらい査読したけどくそ論文ばかりでrejectしかしていない。

889 Nanashi_et_al.2020/03/16(月) 09:32:06.79>>891 MDPI にだすような奴は軽蔑してるわ。 あそこはクソ雑誌。

890 Nanashi_et_al.2020/03/16(月) 09:50:19.21 サイレポと同じだろ

891 Nanashi_et_al.2020/03/16(月) 19:42:13.48 >>889 普通にリジェクトくらったよ。 もう引退するわ。

(引用元:ttp://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/rikei/1539509705)

693Nanashi_et_al.2021/04/01(木) 12:33:38.32>>709 科研落ちたからもうMDPIでもタカワシでも何でも出してやるよ

694Nanashi_et_al.2021/04/01(木) 15:50:29.49 京大が信じたMDPIを信じろ

696Nanashi_et_al.2021/04/01(木) 17:46:02.03 またMDPI系列のジャーナルから査読来やがった。月1頻度で何様のつもりなんだろ。 真面目に読む気すら起こらんクソ論文ばかりでマジで腹立たしいから一切無視する。

(引用元:【エンドレス】新・教員公募星取り表62【ポスドク地獄】 5ちゃんねる ttps://rio2016.5ch.net/test/read.cgi/rikei/1612706788/)

自分の研究分野でMDPIが認められているのなら、出せば良いと思いますし、評判が良くないのなら論文をMDPIに出しても研究者として評価されにくくなる恐れがあります。

下のツイートをした人は、MDPIに投稿するのも、査読を請け負うのも、エディトリアルボードに名を連ねるのも今後は絶対にしないと言っています。エディトリアルボードから外してくれという要求を全然聞き入れてもらえなかったそうです。

I’m gonna ask whether publishing in MDPI journals is good or more specifically how is publishing in ‘International Journal of Molecular Sciences’ ? (October 23, 2017 Researchgate.net)

Is the journal ‘Universe’ predatory? (reddit.com)

 

私なりの結論

  1. MDPI誌はド大量のジャーナルを刊行しており、そのうちの少なくとも一部はWeb of ScienceやPubMedに収載されていて、インパクトファクターがそれなりにあるジャーナルもあるため、内心どう思っていようとも、もはや、ハゲタカジャーナル呼ばわりを公の発言としてすることは不可能。
  2. 自分の周囲の研究者の論文業績をよくよく見てみたら、MDPIジャーナルにレビュー論文や原著論文を書いている人が結構いて、もはや、「MDPIってハゲタカなんじゃないんですか?」などといったナイーブな発言はできないことが判明。
  3. 大量のジャーナルを発行し、査読依頼メールをほとんど無差別に送り付け、安易にエディトリアルボードに勧誘し、安易に特集を組むためのエディターの依頼を送り付けるビジネスモデルってどうなの?と思う(自分の経験です)。科学の進展に真摯に貢献したいという気持ちは全く感じられず、ビジネスをいかにうまくやるかという部分だけが目につく。(完全に個人的な印象です)
  4. 過去にBeall氏のハゲタカジャーナルリストに載っていたこと、ネットの評判からわかるように今でもハゲタカジャーナル視する研究者は少なからず存在するため、投稿先として選ぶには、注意を要する。
  5. 査読がかなり緩くて、大学生のへっぽこ卒研レベルの、他の雑誌では絶対出せないデータでも論文として出せそう(これは自分の査読経験や、ネットの評判に基づく考え)。
  6. これから研究者としてPIの職を獲ろうとしている若者には、個人的には、絶対に勧めない。
  7. すでにパーマネントの職(助教、講師、准教授、教授)についていて、その大学内部において職の維持や昇進のためにとにかく論文の数が必要というのであれば、大いに助けになる雑誌。これは、Beall氏が指摘している通り。しかし、この状態は科学の発展にとって、あるいは研究業界の在り方として、決して望ましいものではない。
  8. 東大や京大で科研費基盤研究(A)を採択されているような研究者が論文投稿してよい雑誌だとは、個人的には、到底思わない。
  9. 個人的な好みとしては、MDPIジャーナルに出すくらいならBMC系の雑誌、Froniter系の雑誌、Scientific Reports, PLoS ONE、あるいは他の中堅専門誌のオープンアクセス姉妹紙などを選ぶ。ちなみにFroniterもハゲタカ認定された過去があったそうで、時間が来ると悪い評判も風化するのかも 関連記事 ⇒ FRONTIERSはハゲタカジャーナルか?
  10. 世の中にはネイチャーに出したから凄いと反応するような人が多い(というかほとんどみんながそう)。出す雑誌でその人が評価される。ネイチャーの対極に位置する雑誌に関しても、同様の見られ方をする恐れがある。
  11. 研究者の善意(非常に短期間で論文を読み込んで査読コメントを返すなど)の上に成り立っている論文出版ビジネスなのに、査読コメントを無視して受理の決定をするのであれば、研究者の善意を踏みにじっている/搾取している。そういう意味ではまさにハゲタカジャーナルという指摘が当たっていると感じる。そんなわけで、MDPIから来た査読依頼は、自分は基本的に断ることにしました。
  12. MDPIに論文を出してハッピーに生きている研究者もいるので、人は人、自分は自分だと思う。
  13. MDPIが仮に当初ハゲタカジャーナルだったとしても、ビジネスが上手くて、「餌」(ニーズを満たしてくれるサービス)をばらまいてみんなを取り込んでおり、MDPIに投稿している人がいい加減な人かというと、決してそんなことはなくて、自分の身の回りを見渡すかぎりごく普通の真面目な研究者ばかり。つまり、じょじょに受け入れる人が増えていけば、やがてかつてハゲタカ呼ばわりされていたことはみんなの記憶から消えていくのではないかと思われる。戦争を知らない子供たちが大人になっていくように。
  14. 研究者には2つのタイプがいる。MDPIに論文を出す人と、MDPIに出さない人と。研究者としての自分の居場所を見つけることができた人(=パーマネントポジションを得た人)は、MDPIに出そうが出すまいが、どっちでもいい話。居場所これから見つけようと奮闘している人は、とりあえずMDPIは避けて通ったほうが無難。

 

研究者は置かれた立場がそれぞれ異なるので、MDPIに出すのも正解だし、MDPIに出さないのも正解というところに落ち着きそうです。

 

良いジャーナルに論文を出すための英文論文執筆の教科書

Adrian Wallwork 『ネイティブが教える 日本人研究者のための論文の書き方・アクセプト術』世界中で使われているノンネイティブのバイブルが待望の邦訳。これほど網羅的で深い示唆を与えてくれる指南書はほかにない。ネイティブの思考・語感で、ワンランク上の論文に! そのまま使える論文英語表現を580例も掲載!(講談社サイエンティフィック 書籍紹介 より)

ハゲタカ誌投稿 不名誉な大学ランキング

【悲報】東大、阪大などの研究者も (≧▽≦ )

査読システムが機能していない(事実上存在しない)ので、お金を払えば誰でも論文が出せるジャーナルがあります。英語論文を出したい著者の心理に付け込んでお金を巻き上げるイメージなので、研究者を食い物にするハゲタカジャーナル(捕食ジャーナル)と呼ばれています。英語はpredatory journalsなので、「捕食ジャーナル」のほうが英語に忠実な訳語ですが、言葉のインパクトの強さのせいか「ハゲタカジャーナル」という呼称が優勢です。

どの学術誌がハゲタカジャーナルとみなされているかについては、ジェフリー・ビール(Jefferey Beall)さんがいかがわしい雑誌社・雑誌リストをつくって公表したBeall’s listが有名です。しかしながら、Beallさんは訴訟問題を避けるために公開するのをやめたようで、今では誰かがそれを転載したものがネット上に存在するだけです。グーグルで検索すれば極めて容易にリストのコピーにたどりつけるので、ここでも面倒をさけるためにリンクは張らないことにします。

 

Beall’s Listとは

ビオール氏は、「ハゲタカ(悪徳)オープンアクセス出版」に対抗する活動で有名です。これは同氏が2010年に考え出した造語です。同年、彼は最初の悪徳学術誌リストを出版しました。そこに含まれていたのは20誌未満でしたが、その後このリストは増え続け、今では包括的な「ビオールのハゲタカ出版社リスト」(Beall’s List of Predatory Publishers)として知られています。(「『ハゲタカ出版社』は、あらゆる手を使ってまともな出版社のふりをします」Editage Insights 2015年7月24日 )

オープンアクセス(OA)の進展とともに,論文処理費用をだまし取るハゲタカ出版社の出現が問題となっている。本稿はハゲタカ出版社のブラックリストを作成しているジェフリー・ビールの活動を中心に,この問題をめぐる状況と議論を整理して紹介する。ビールのリストは高く評価される一方,名前をあげられた出版社から10億ドルの損害賠償を請求されたり,根拠不十分と批判されたりしている。(ハゲタカオープンアクセス出版社への警戒 栗山 正光 情報管理 2015 年 58 巻 2 号 p. 92-99

 

よい子は関わってはいけないハゲタカジャーナル

こういう悪徳な雑誌社は、「論文をうちに出しませんか?」というメールをしょっちゅう送りつけてきます。完全に分野違いであっても「エディトリアルボードに加わりませんか」というお誘いもスパム的に送りつけてきます。シツコイなあと思ってBeall’s listをチェックすると、大抵の場合そこに名前があるので、無視したほうが無難です。関わってしまうと、研究者としての自分の信用を失うことになります。

先月、ある出版社から学術論文誌のEditorial Board Memberをやってくれないか、というメールをもらいました。研究者にとって学術誌の編集をやることは大変名誉なことで普通は喜んでやることですが、何か引っかかりました。… (大学教員・研究員の心を鷲掴みにするうまいビジネス 2017-06-17 23:09 留職先の独り言@ケンタッキー&ルイジアナ

 

Beall’s listに載っているかどうかは知りませんが、自分が過去に受け取ったフザケたメールの例を紹介します。宛先のメールアドレスは数十人!もいて、名前の最初の文字がアルファベットが一致する人たちでしたので、どう考えても機械的に集めたメールアドレスに一斉送信したスパムメールとしか考えられません。面倒はいやなので、出版社の名前と個人名は伏字(XXXXXX)にします。

Dear Colleague,

XXXXXXXXXXXXX  is a publisher of open access journals, aims at making access to knowledge on Worldwide without any boundaries

**I WOULD LIKE TO INVITE TO BE AN EDITORIAL BOARD MEMBER TO OUR JOURNALS.  If you agree to serve as Editorial board member. Kindly send us your CV, recent photograph (To display at our website), And also write an article for journal, based on your research.

A to Z journals page: https://XXXXXXXXXXXXX

You are invited to submit your best work in the following categories:

  • Full length research articles
  • Review articles
  • Short communications
  • Letters
  • Case reports, Image articles

Everlasting Scientific Community with you.

Please do not hesitate to contact us or mail for further assistance

Best regards

XXXX XXXX

XXXXXXXXXXXXX

Email: XXXXXXXXXXXXX@gmail.com

Please do not hesitate to contact us or mail for further assistance

ランダムに研究者を勧誘しておく一方で、受け皿としてあらゆる分野をカバーするだけの多数の雑誌を発行しておけば、なるほどみなが適材適所に自動的に収まってくれて、物事がうまくいきそうです。ビジネスモデルとしてはよく考えたものだと思います。しかし、こんなスパムメールを研究者に送り付ける雑誌社がまともに論文査読をしているとは自分は思いません。

 

さて、いわゆるはげたかジャーナルにおいては、事実上査読がないわけですから、はげたかジャーナルに論文を出して「査読つき論文業績」と称するのは、ある意味研究不正と大差がなく、研究者としては終わっている (≧▽≦ ) と思います。

 

ハゲタカジャーナル論文掲載大学ランキング

毎日新聞の報道によれば、Predatory Journalsに最も多く投稿している大学の上位は、以下の通りです。

  1. 九州大学 147報 
  2. 東京大学 132報
  3. 大阪大学 107報
  4. 新潟大学 102報 
  5. 名古屋大学 99報
  6. 日本大学 87報
  7. 東北大学 82報
  8. 北海道大学 74報
  9. 広島大学 73報
  10. 京都大学 66報
  11. 神戸大学 63報
  12. 筑波大学 60報
  13. 慶應義塾大学 56報
  14. 千葉大学 55報
  15. 金沢大学 54報
  16. 熊本大学 48報
  17. 順天堂大学 46報
  18. 東京工業大学 44報
  19. 岡山大学 43報
  20. 岐阜大学 40報
  21. 島根大学 40報
  22. 同志社大学 40報
  23. 近畿大学 40報

*2003~2018年5月末に「粗悪」学術誌327誌に掲載された日本が関与する5076報の解析

(参考:粗悪学術誌 ハゲタカジャーナル」に名大と新潟大が対策 毎日新聞 2018年10月10日 07時00分 最終更新 10月10日 10時25分)

毎日新聞が「<粗悪学術誌>論文投稿、日本5000本超 業績水増しか」と報じました。「ハゲタカジャーナル」と呼ばれる質が十分に保証されていないインターネット専用学術雑誌とみられる中国の出版社に日本関係の論文が5076本も投稿されていたそうです。このうち筆頭著者が大学・研究機関に所属する論文は3972本。(「学術論文の闇」ハゲタカジャーナル 科学の健全な発展を妨げる腐敗の温床を一掃せよ 2018/9/4(火) 6:28 YAHOO!JAPANニュース 木村正人 | 在英国際ジャーナリスト )

インターネット専用の学術誌の中で、質が十分に保証されていない粗悪な「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、こうした学術誌を多数発行する海外の出版社を調べたところ、日本から5000本超の論文が投稿されていた。九州大と東京大、大阪大、新潟大からは各100本以上を確認した(粗悪学術誌 日本から5000本 東大や阪大 論文投稿、業績水増しか 会員限定有料記事 毎日新聞 2018年9月3日 東京朝刊)

 

ハゲタカジャーナルの実態

東大や阪大の研究者もはげたかジャーナルのお客さんになっているというのはちょっと驚きです。はげたかジャーナルでも、読んでもらえるのなら良いのではないかというツイートを見かけましたが、はげたかジャーナルはそんなものではありません。

International Journal of Advanced Computer Technology(IJACT)というコンピュータ科学分野のオープンアクセス(OA)雑誌が、“Get me off Your Fucking Mailing List”と題し、本文にも同じ内容が繰り返されているだけの論文を受理したことが、米コロラド大学デンバー校図書館のJeffrey Beall氏のブログで報じられています。(「そのメーリングリストから私を外せ」と繰り返し書かれているだけの論文が受理される Current Awareness Portal 2014年11月25日

もちろん、ハゲタカジャーナルのリストに掲載されている雑誌が全てこのレベルではなく、査読が全く行われていないかどうかを第三者が検証するのは困難なため、まともな雑誌との境界は曖昧です。実際、出版社側が抗議した結果、リストから外された出版社もあるようです。しかし、研究費に恵まれており、研究大学を名乗る東大、阪大、九大などの研究者がこのような雑誌に論文を投稿するのは、恥 (。-_-。)でしかないでしょう。

 

ハゲタカジャーナルがなぜ問題か

ヤフー記事のコメントを見ると、論文数を稼ぐためには仕方がないとか、中にはいい論文もあるはずとか、実情にそぐわないコメントが多数並んでいます。研究者は自分が苦労して書き上げた論文を学術誌に投稿するとき、当然その学術誌にはどんな論文が掲載されているかを気にします。いい論文が多数掲載されている雑誌がいい雑誌とみなされるからです。質の悪い論文しか掲載されていない雑誌にわざわざ自分の論文を投稿したいと思う研究者はいません。

実質的に査読がないわけですから、どんないい加減な論文でも通ります。つまり、まともに研究していない研究者が評価される一方で、苦労して時間をかけてまともなジャーナルに論文を出す研究者のほうが、単純な論文数による業績評価では負けてしまい淘汰されてしまうという事態になりかねません。論文を投稿してからアクセプトに漕ぎ付けるまでには、リバイスで様々なコントロール実験を要求されたりして、その過程で1年間かかることも決して珍しいことではありません。それだけの苦労に苦労を重ねて論文をようやく通している研究者が多い中で、無審査で投稿後直ちに受理される論文が業績として認められて同じ一報として論文業績にカウントされたら、不公平極まりません。研究費をとるのも職をとるのも熾烈な競争なのに、これを許したら日本の科学研究が成り立たなくなります。だからハゲタカジャーナルを許してはいけないのです。

 

ハゲタカジャーナルに投稿する研究者、大学の存在に関する文部科学省の見解

柴山文部科学大臣会見(平成30年12月25日):文部科学省(ハゲタカジャーナルに関する毎日新聞記者の質問は動画19:25~)

  • 粗悪学術誌「深刻な事態」 柴山文科相が注意喚起求める (毎日新聞2018年12月25日 17時50分)ずさんな論文審査で掲載料を得るインターネット専用の粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、柴山昌彦文部科学相は25日の閣議後記者会見で「大変深刻な事態になっている」との見方を示し、研究者が論文の投稿先を慎重に検討するよう大学に研究者教育や注意喚起を求めた。

 

ハゲタカジャーナル投稿防止に関する大学の取り組み

九州大学

安易な論文投稿先ジャーナルの選択は、ご自身の研究成果に疑念を生じさせ、引いては九大の研究力に悪影響を及ぼす恐れがありますことから、研究成果の公開方法について慎重に検討する必要があります。 対処方法として、エルゼビア社のScopus論文データベース(研究者プロファイリングツールPure、研究力分析ツールScival)を利用されることをお勧めします。これらは一定の評価基準の下、審査(査読)を受けた論文のみ登録されており、世界大学ランキング等に様々な形で活用されていることから、一定の保証を得ていると思われます。投稿先のジャーナル選択のみならず、共同研究の相手方の選考などにもご活用下さい。 今後、このような不名誉な形で本学が報道されることがないよう、一致協力して、努めて参りたいと思います。ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。(【研究論文の投稿に当たって】2018/09/05 九州大学

 

名古屋大学

査読なしで論文を掲載しているなら学術誌とは言えない。大学の信頼や研究者モラルに関わる問題で、対策をしっかり取る(名古屋大学高橋雅英副学長)(<粗悪学術誌>「ハゲタカジャーナル」に名大と新潟大が対策 2018/10/10(水) 7:00配信 鳥井真平 毎日新聞

 

新潟大学

新潟大学における粗悪学術誌に対する方針 近年,オープン・アクセス・ジャーナルの中で,掲載料を搾取することを目的とした,査読が不十分な論文を掲載する質の低い学術誌(いわゆるハゲタカジャーナル)が急増している。本学の科学者行動規範においては,本学の研究者に社会から寄せられた信頼に応える倫理的責任感を求めており,粗悪学術誌への投稿は,科学への国民からの信頼を失いかねない。また,研究者の業績や評価などに悪影響を及ぼす可能性がある。 … (新潟大学における粗悪学術誌に対する方針について 平成30年11月16日 学長裁定)

  • 粗悪学術誌 ハゲタカジャーナル」に名大と新潟大が対策(毎日新聞 2018年10月10日 07時00分)新潟大は9月、ハゲタカジャーナルへの投稿を控えるよう、年内にも学術誌への論文投稿ルールを新たに設けることを決めた。全研究者に注意喚起し、研究倫理教育セミナーでハゲタカジャーナルの存在を周知する

 

熊本大学

熊本大学はハゲタカジャーナルへの投稿に関して注意を促すウェブページを作成しています。ハゲタカジャーナルのリストBeall’s List of Predatory Journals and Publishersへのリンクも貼るなど、他大学の無難な注意喚起とは一線を画す、かなり攻めた内容。

Web出版の利便性を悪用して、掲載料によって不当に利益を得ようとする出版社が一部に存在します。そのような出版社では、編集顧問・査読委員会による査読が行われておらず、サイトの更新も遅く頻度も適切とは言えません。また、これらのジャーナルに論文が掲載された場合、逆に業績としてネガティブな評価を受ける危険もあります(ハゲタカジャーナルへの投稿リスクについて(注意喚起)熊本大学URA推進室

 

東邦大学

ハゲタカ・ジャーナル(predatory or pseudo-journals)にご注意ください 2018年9月12日 近年、オープンアクセスジャーナルの増加とともに,しかるべき水準の品質管理を行わないままにAPC(※)収入のみを狙った“学術雑誌”を刊行する悪質な出版活動が問題1)になっています。このような出版社は,研究者に直接メールで投稿を促すというケースもあるようです。論文の投稿先を検討する際のお役立ちサイトとして下記 URL のようなページが参考になります。…

 

京都大学

京都大学でもハゲタカジャーナルへの投稿に関して注意を喚起するリーフレットを作成し2019年1月17日に公開しました。

 

研究者がハゲタカジャーナルに投稿する理由

熊本大学のウェブページに、ハゲタカジャーナルに投稿する研究者の心理を分析した論文「あなたがハゲタカジャーナルに研究成果を発表する5個の(よくない)理由」が紹介されていました。

Clark, A. M. and Thompson, D. R., “Five (bad) reasons to publish your research in predatory journals.” J Adv Nurs. 2017 Nov; 73(11):2499-2501

  1. I do not care about my external reputation 論文出すことのほうが大事でしょ
  2. I do not believe in myself or my work どうせ、たいした仕事じゃないし
  3. Publication numbers count most 論文って数が一番大事だから
  4. I cannot be bothered to read え、これって普通の雑誌だよね
  5. I have given up お手軽なんだもん、いいじゃん

*日本語意訳は当サイト

無責任な出版を厳しく戒めていますので、是非本文をお読みください(全文リンク)。

 

ハゲタカジャーナルの手口と見抜く方法をJeffrey Beallさんが解説

Jeffrey Beall on Open Access Publishing: How publishers dupe authors

  1. ハゲタカ出版社を見抜くためのチェックリスト(Andrea Hayward | 2018年2月7日 Editage Insights
  2. VIDEO: Authors beware: Avoid falling prey to predatory journals and bogus conferences (Interview with Dr. Anne Woods & Shawn Kennedy. Editage)

MDPIはハゲタカか?

どの雑誌がハゲタカジャーナルでどの雑誌はそうではないのかがわかればいいのですが、時としてどっちか悩むジャーナルも存在します。みんなを悩ませているのがMDPI社の雑誌。商売上手で取り入るのが上手いので、いつの間にか認知されてしまっています。Web of ScienceやPubmedにも収載されており(一部とはいえ)、インパクトファクターもそこそこある雑誌もあるので、もはやハゲタカじゃね?などとは言えなくなっています。しかし、Beallさんのハゲタカジャーナルリストには過去には載っていたようです。MDPIの激しい抗議の結果リストから除外されたという経緯があります。

関連記事 ⇒ MDPIはハゲタカジャーナルか?MDPIのインパクトファクター

参考

  1. 粗悪学術誌の論文 4割が別論文の参考文献に 研究ゆがむ可能性 (2019/4/29(月) 19:02配信 毎日新聞 YAHOO!JAPAN)ずさんな審査で論文を載せ、掲載料を得るインターネット専用の粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、ハゲタカ誌の論文の4割が別の論文に参考文献として引用されていることが、カナダ・クイーンズ大の研究チームの調査で判明した。チームは「ハゲタカ誌に掲載された欠陥論文によって、将来の研究が汚されていく可能性がある」と警告している。
  2. 科学ジャーナリスト賞に本紙・鳥井記者 「ハゲタカジャーナル」報道 (毎日新聞2019年4月25日 16時30分) 日本科学技術ジャーナリスト会議(佐藤年緒会長)は25日、今年の科学ジャーナリスト賞に、「ハゲタカジャーナル」に関する一連の報道を手がけた毎日新聞水戸支局兼科学環境部の鳥井真平記者(38)を選んだ。
  3. Predatory publications in evidence syntheses. J Med Libr Assoc. 2019 Jan;107(1):57-61.
  4. 粗悪学術誌掲載で博士号 8大学院、業績として認定毎日新聞2018年12月16日 06時45分)インターネット専用の学術誌に論文審査がずさんな粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、佐藤翔(しょう)同志社大准教授(図書館情報学)が医学博士論文106本を抽出調査したところ、7.5%に当たる8本にハゲタカ誌への論文掲載が業績として明記されていた。
  5. 粗悪学術誌「深刻な事態」 柴山文科相が注意喚起求める毎日新聞2018年12月25日 17時50分)ずさんな論文審査で掲載料を得るインターネット専用の粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」が増えている問題で、柴山昌彦文部科学相は25日の閣議後記者会見で「大変深刻な事態になっている」との見方を示し、研究者が論文の投稿先を慎重に検討するよう大学に研究者教育や注意喚起を求めた。
  6. 粗悪学術誌「ハゲタカジャーナル」に名大と新潟大が対策 (毎日新聞 2018年10月10日 07時00分 最終更新 10月10日 10時25分) ヤフーコメント224個
  7. 「学術論文の闇」ハゲタカジャーナル 科学の健全な発展を妨げる腐敗の温床を一掃せよ (2018/9/4(火) 6:28 YAHOO!JAPANニュース 木村正人)
  8. 劣悪な学術誌「ハゲタカジャーナル」とは?  掲載料が目当て、 根拠乏しい「疑似科学」を拡散 国内の大学でも、こうした出版業者からの勧誘に載らないよう注意喚起が広まっている。(ハフポスト日本版編集部 2018年09月03日 12時57分 JST)信頼性が低い研究論文を掲載する「ハゲタカジャーナル」と呼ばれる学術サイトが、SNSで話題になっている。毎日新聞が9月3日、日本から5000本を超える論文が、ハゲタカジャーナルに投稿されている内容の記事を掲載したことがきっかけだ。
  9. ネット専用 粗悪学術誌、九大が対策 学内で投稿自粛指導(会員限定有料記事 毎日新聞 2018年9月3日 06時30分 最終更新 9月3日 06時37分) 九州大は学内の研究者や学生を対象に、インターネット専用の学術誌の中で「ハゲタカジャーナル」と呼ばれる粗悪な学術誌に論文を投稿しないよう指導を始めた。
  10. 粗悪学術誌 日本から5000本 東大や阪大 論文投稿、業績水増しか(会員限定有料記事 毎日新聞 2018年9月3日 東京朝刊)
  11. 捕食ジャーナル – 倫理学分野にすら登場(エナゴ学術英語アカデミー Last updated Aug 30, 2018 粥川準二)
  12. 「捕食ジャーナル」で誰が論文を発表しているのか?(後編)(エナゴ学術英語アカデミー Last updated Aug 30, 2018 粥川準二)
  13. Jeffrey Beall: ‘Predatory publishers threaten scientific integrity, are embarrassment to India’Written (Shyamlal Yadav | Hyderabad | Updated: July 20, 2018 7:57:26 am TheIndianEXPRESS)
  14. Inside India’s fake research paper shops: pay, publish, profit (by Shyamlal Yadav. July 19, 2018 2:38:26 pm IndiaExpress.com)
  15. Cabell’s Blacklist: A New Way to Tackle Predatory Journals. Soumitra Das and Seshadri Sekhar Chatterjee. Indian J Psychol Med. 2018 Mar-Apr; 40(2): 197–198.
  16. Cabell’s New Predatory Journal Blacklist: A Review (By RICK ANDERSON JUL 25, 2017 The Scholarly Kitchen)
  17. 「ハゲタカ出版」のリストとブログの内容が削除される (2017年1月20日 Current Awareness Portal)
  18. No More ‘Beall’s List’ (Carl Straumsheim January 18, 2017 InsideHigherEd.com)
  19. <記事紹介> なぜ研究者は「ハゲタカジャーナル」で論文を出版してしまうのか(ワイリー・サイエンスカフェ 投稿日: 2016年8月24日 作成者: admin)
  20. ねつ造医学論文を出版する捕食出版社:クロエ・コスタ(Chloe Costa)、2015年5月15日(研究倫理(ネカト) 白楽ロックビルのバイオ政治学
  21. Predatory open-access publishing (Wikipedia)

  22. 「そのメーリングリストから私を外せ」と繰り返し書かれているだけの論文が受理される(Current Awareness
    Posted 2014年11月25日)
  23. Get me off Your Fucking Mailing List
  24. 単なる“金もうけ”の疑いのあるオープンアクセス出版社のリスト(2014年版)(Current Awareness Portal 2014年1月7日)
  25. 単なる“金もうけ”の疑いのあるオープンアクセス出版社のリスト(2013年版)(Current Awareness Portal 2012年12月10日)

記事変更の記録 20190206 熊本大学の注意喚起ページが復活していたのでキャッシュでなくオリジナルページを紹介

 

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    インパクトファクター2019年6月発表

    毎年6月にクラリベイト(Clarivate)がJournal Citation Reports (JCR) を発表しています。2019年6月には前年度の集計JCR2018 が発表されます。ClarivateのJCRは契約をしている大学や研究機関しか見ることができないのですが、各雑誌社が多くの場合に自分の雑誌のインパクトファクターを直ちにウェブサイトに掲載するので、最新の数値を雑誌サイトで調べることが簡単にできます。

    以下、Nature 43.070(2018)と表記した場合、2019年6月に発表された2018年のジャーナルサイテーションインデックス(JCR)(つまり、インパクトファクター)という意味です。

    主なジャーナルの最新のインパクトファクターを見てみます。

    NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE 79.258(2017)-70.670(2018)
    JAMA-JOURNAL OF THE AMERICAN MEDICAL ASSOCIATION 47.661(2017)-51.273(2018)
    Nature 41.577(2017)-43.070(2018)
    SCIENCE 41.058(2017)-41.037(2018)
    NATURE MATERIALS 39.235(2017)-38.887(2018)
    NATURE BIOTECHNOLOGY 35.724(2017)-31.864(2018)
    NATURE MEDICINE 32.621(2017)-30.641(2018)
    CELL 31.398(2017)-36.216(2018)
    NATURE GENETICS 27.125(2017)-25.455(2018)
    NATURE METHODS 26.919(2017)-28.467(2018)
    Nature Chemistry 26.201(2017)-23.193(2018)
    Cell Stem Cell 23.290(2017)-21.464(2018)
    BMJ-British Medical Journal 23.259(2017)-27.604(2018)
    CANCER CELL 22.844(2017)-23.916(2018)
    NATURE NEUROSCIENCE 19.912(2017)-21.126(2018)
    NATURE CELL BIOLOGY 19.064(2017)-17.728(2018)
    NEURON 14.318(2017)-14.403(2018)
    MOLECULAR CELL 14.248(2017)-14.548(2018)
    NATURE STRUCTURAL & MOLECULAR BIOLOGY 13.333(2017)-12.109(2018)
    Nature Protocols 12.423(2017)-11.334(2018)
    Nature Communications 12.353(2017)-11.878(2018)
    PLOS MEDICINE 11.675(2017)-11.048(2018)
    Molecular Psychiatry 11.640 (2017)-11.973(2018)
    Science Advances 11.511(2017)-12.804(2018)
    Nature Plants 11.471(2017)-13.297(2018)
    EMBO JOURNAL 10.557(2017)-11.227(2018)
    GENOME RESEARCH 10.101(2017)-9.944(2018)
    DEVELOPMENTAL CELL 9.616(2017)-9.190(2018)
    PROCEEDINGS OF THE NATIONAL ACADEMY OF SCIENCES OF THE UNITED STATES OF AMERICA (PNAS) 9.504(2017)-9.580(2018)
    GENES & DEVELOPMENT 9.462(2017)-8.990(2018)
    Molecular Plant 9.326(2017)-10.812(2018)
    CURRENT BIOLOGY 9.251(2017)-9.193(2018)
    PLOS BIOLOGY 9.163(2017)-8.386(2018)
    PHYSICAL REVIEW LETTERS 8.839(2017)-9.227(2018)
    JOURNAL OF CELL BIOLOGY 8.784(2017)-8.891(2018)
    EMBO REPORTS 8.749(2017)-8.383(2018)
    PLANT CELL 8.228(2017)
    Cell Reports 8.032(2017)
    eLife 7.616(2017)
    NEURAL NETWORKS 7.197(2017)
    Stem Cell Reports 6.537(2017)
    Science Signaling 6.378(2017)
    CEREBRAL CORTEX 6.308(2017)
    GLIA 5.846(2017)
    BMC BIOLOGY 5.770(2017)
    FASEB JOURNAL 5.595(2017)
    Journal of Molecular Cell Biology 5.595(2017)
    PLoS Genetics 5.540(2017)
    DEVELOPMENT 5.413(2017)
    Scientific Data 5.305(2017)
    SLEEP 5.135(2017)
    Human Molecular Genetics 4.902(2017)
    Cells 4.829(2017)
    FEBS Journal 4.530(2017)
    RNA 4.490(2017)
    BIOESSAYS 4.419(2017)
    Scientific Reports 4.122(2017)
    GENETICS 4.075(2017)v
    JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY 4.010(2017)
    METHODS 3.998(2017)
    Open Biology 3.286(2017)
    CEREBELLUM 3.199(2017)
    Frontiers in Neural Circuits 3.131(2017)
    HIPPOCAMPUS 3.966(2017)
    PLoS Computational Biology 3.955(2017)
    Biochemical Journal 3.857 (2017)
    BMC GENOMICS 3.730(2017)
    CELL CALCIUM 3.718(2017)
    NEUROSCIENCE 3.382(2017)
    Zoological Letters 2.900(2017)
    PLoS One 2.766(2017)
    G3-Genes Genomes Genetics 2.742(2017)
    BMC Developmental Biology 2.427(2017)
    Neuroscience Research 2.277(2017)
    Biology Open 2.217(2017)
    Mechanisms of Development 1.900 (2017)
    JoVE 1.184(2017)

    参考

    1. 各雑誌社のウェブサイト
    2. クラリベイト プレスリリース
    3. 2018 Journal Citation Reports
    4. [2018年] 最新インパクトファクター 基礎医学・生命科学 負け犬主義。2018年06月27日02:13

     


    インパクト・ファクターとは?

    ジャーナル・インパクト・ファクター(Journal Impact Factor)は、学術雑誌の影響力を測る指標で、対象年における引用回数を、対象年に先立つ 2 年間にそのジャーナルが掲載したソース項目の総数で割ることによって計算されますインパクトファクターについて  Clarivate Analytics)。

    The Impact Factor of journal J in the calendar year X is the number of citations received by J in X to any item published in J in (X-1) or (X-2), divided by the number of source items published in J in (X-1) or (X-2). (Measuring  a journal’s impact. ELSEVIER)

    日本語で説明されたほうがわかりやすいですね。

    2010年のIFは次のように計算されます。

    IFX =2008年と2009年にジャーナルX誌が掲載した論文の2010年の総引用回数
    2008年と2009年にジャーナルX誌が掲載した全ての引用可能な論文数

    お気付きだと思いますが、2010年のIFは2011年以降に利用できるようになります。(nue.riec.tohoku.ac.jp

     

    インパクトファクターが高いジャーナルに論文が通るかどうかで、研究者は一喜一憂しますが、インパクトファクターの動向が気がかりなのは、雑誌社にとっても同じです。ちなみに、研究分野や雑誌のスコープにより数字の出方がかなり異なるため、分野や性格の違う雑誌同士でインパクトファクターを比較して優劣を論じるのは無意味です。

    しかし、現実的にはインパクトファクターは研究者の業績の目安として使われることが多く、ファカルティポジションへの応募書類の中の業績一覧にインパクトファファクターを併記させる大学があるなど、人物評価の基準として用いられることがあるようです。

    インパクトファクターの調べ方

    毎年クラリベイトという会社が学術誌のインパクトファクターを計算して、公表しているようです。多くの雑誌社は自分の雑誌のインパクトファクターをウェブサイト上で紹介しています。インターネットを検索すると、インパクトファクターの一覧表がヒットします。

     

    2016年のインパクトファクターが、公表されました。その中から一部を紹介します(参照サイト: researchgate.net/post/New_Impact_factors_2017_for_Journals_are_released_nowbioxbio.com/ifCell Press Journal Metrics、個々のジャーナルサイトなど)

    2017年の6月に発表されるインパクトファクターは、「2016年のインパクトファクター」です。ややこしいですが、当サイトでは、Nature 40.137(2016)-41.577(2017)のように表示することにします。

    雑誌研究分野別インファクトファクター一覧

    科学総合誌

    1. Nature (ネイチャー)40.137(2016) (推移:31.434 – 34.48 – 36.101 – 36.28 – 42.351 – 41.456 – 38.138 – 40.137(2016) bioxbio.com)
    2. Science (サイエンス)37.205(2016) (推移:28.103 – 29.747 – 31.364 – 31.201 – 31.027 – 31.477  –  33.611 – 34.661 –  37.205(2016)   bioxbio.com)
    3. Nature Communications (ネイチャーコミュニケーションズ)12.124(2016) (推移:7.396 – 10.015 – 10.742 – 11.470 – 11.329 – 12.124(2016) bioxbio.com)
    4. PNAS (Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America) (ピーエヌエイエス)9.661(2016) (推移:bioxbio.com
    5. Scientific Reports (サイエンティフィックリポーツ)4.259(2016) (推移:2.927 – 5.078 – 5.578 – 5.228 – 4.259(2016) bioxbio.com

     

    生物学総合誌

    1. Cell 30.41(2016)(セル) (推移:32.242 – 28.71 – 30.41(2016) bioxbio.com)
    2. PLOS Biology (プロスバイオロジー)9.797(2016) (推移:9.343 – 8.668 – 9.797(2016) bioxbio.com)
    3. Current Biology (カレントバイオロジー) 8.851(2016) (推移:9.571 – 8.983 – 8.851(2016) bioxbio.com)
    4. Cell Reports (セルリポーツ)8.282(2016) ( 推移:7.87 – 8.358 – 8.282(2016) bioxbio.com)
    5. elife (イーライフ)7.725(2016) (推移:9.322 – 8.282 – 7.725(2016) bioxbio.com)
    6. BMC Biology 6.779(2016) (推移:7.984 – 6.967 – 6.779(2016) bioxbio.com)
    7. Proceedings of the Royal Society B-Biological Sciences  4.940(2016)
    8. PLOS ONE (プロスワン)2.806(2016) (推移:3.234 – 3.057 – 2.806(2016) bioxbio.com)
    9. Biology Open (バイオロジーオープン)2.095(2016) 

     



     

    発生生物学

    1. Genes & Development 9.413(2016) (推移 13.623 – 12.075 – 12.889 – 11.659 – 12.444 – 12.639 – 10.798 – 10.042 – 9.413(2016) bioxbio.com)
    2. Developmental Cell 9.174(2016) (推移 12.882 – 13.363 – 13.946 – 14.03 – 12.861 – 10.366 – 9.708 – 9.338 – 9.174(2016) bioxbio.com)
    3. Development 5.843(2016) (推移 6.812 – 7.194 – 6.898 – 6.596 – 6.208 – 6.273 – 6.462 – 6.059 – 5.843(2016) bioxbio.com)
    4. Developmental Biology 2.944(2016) (推移 4.416 – 4.379 – 4.094 – 4.069 – 3.868 – 3.637 – 3.547 – 3.155 – 2.944(2016) bioxbio.com)
    5. Differentiation 2.567(2016)
    6. Development Growth & Differentiation 2.145(2016)
    7. Developmental Dynamics 2.004(2016)
    8. International Journal of Developmental Biology 1.981(2016)
    9. Mechanisms of Development 1.333(2016) (推移 2.534 – 2.827 – 2.958 – 2.833 – 2.383 – 2.238 – 2.440 – 2.041 – 1.333(2016) bioxbio.com)

     

    ゲノム科学・遺伝学

    1. Nature Genetics 27.959(2016)
    2. Genome Research  11.922(2016)
    3. Genome Biology  11.908(2016)
    4. PLoS Genetics 6.100(2016)
    5. Genetics 4.556(2016)
    6. BMC Genomics 3.729(2016)
    7. Genomics 2.801(2016)

     

    神経科学

    1. Nature Neuroscience 17.839(2016)
    2. Neuron 14.024(2016)
    3. Frontiers in Neuroendocrinology 9.425(2016)
    4. Journal of Neuroscience    5.988(2016) (推移 7.452 – 7.178 – 7.271 – 7.115 – 6.908 – 6.747 – 6.344 – 5.924 – 5.988(2016) bioxbio.com)
    5. Frontiers in Molecular Neuroscience 5.076(2016)
    6. Frontiers in Cellular Neuroscience 4.555(2016)
    7. Frontiers in Aging Neuroscience 4.504(2016)
    8. Frontiers in Neuroinformatics 3.870(2016)
    9. Frontiers in Neuroscience 3.566(2016)
    10. Frontiers in Neurology 3.552(2016)
    11. Frontiers in Neuroanatomy 3.267(2016)
    12. Frontiers in Neural Circuits 3.005(2016)
    13. European Journal of Neuroscience  2.941(2016)
    14. Journal of Neuroscience Methods 2.554(2016)
    15. Journal of Neuroscience Research 2.481(2016)
    16. BMC Neuroscience 2.312(2016)
    17. Neuroscience Letters 2.180(2016)
    18. Neuroscience Research 2.060(2016)

     

    細胞生物学、分子生物学、その他の生物学専門誌

    1. Nature Biotechnology 41.667
    2. Nature Methods 25.062
    3. Nature Cell Biology 20.060
    4. Molecular Cell  14.714
    5. Nucleic Acids Research (NAR)  10.162(2016) (推移 6.878 – 7.479 – 7.836 – 8.026 – 8.278 – 8.808 – 9.112 – 9.202 – 10.162(2016) bioxbio.com)
    6. EMBO J 9.792(2016)
    7. Molecular Plant  8.827(2016)
    8. Plant Cell 8.688(2016)
    9. Journal of Cell Biology (JCB)  7.955(2016)
    10. Cell Reports 8.282(2016)
    11. Frontiers in Ecology and the Environment 8.039(2016)
    12. Biochimica et Biophysica Acta (BBA)- General subjects  4.702(2016)
    13. Frontiers in Pharmacology 4.400(2016)
    14. Journal of Biological Chemistry (JBC) 4.125(2016)
    15. Biochemical and Biophysical Research Communications (BBRC)  2.466(2016)
    16. Genes to Cells 1.993(2016)
    17. Cell Structure and Function 1.900(2016)

    化学

    1. Nature Chemistry 25.870(2016)
    2. Journal of the American Chemical Society (JACS) 13.858(2016)
    3. Angewandte Chemie-International Edition  11.994(2016)
    4. Bulletin of the Chemical Society of Japan 2.297(2016)
    5. Chemistry Letters 1.801(2016)

     

    物理 物理化学 材料科学 工学

    1. Nature Materials 39.737(2016)
    2. Nature Nanotechnology 38.986(2016)
    3. Nature Photonics 37.852(2016)
    4. Physical Review Letters 8.462(2016)
    5. Soft Robotics 8.649 (2016)

     

      

     

     

     

     

     

     

     

     

    医学系雑誌のインパクトファクター

    医学雑誌のインパクトファクターは、記事を分けました。

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    医学系総合誌

    1. New England Journal of Medicine (NEJM)  72.406(2016)
    2. LANCET 47.831(2016)-53.254(2017) –59.102(2018)
    3. JAMA (Journal of the American Medical Association) 44.405(2016)
    4. Nature Medicine 29.886(2016)

     

    医学系専門誌

    1. LANCET Oncology   33.900(2016)
    2. Cancer Cell 27.407(2016)
    3. Journal of Clinical Oncology 24.008(2016)
    4. LANCET Neurology 26.284(2016)
    5. Immunity 22.845(2016)
    6. Nature Immunology 21.506(2016)
    7. JACC (Journal of the American College of Cardiology) 19.896(2016)
    8. Molecular Psychiatry 13.204(2016)
    9. Journal of Clinical Investigation 12.784(2016)
    10. Liver Cancer 7.854(2016)
    11. Frontiers in Immunology 6.429(2016)
    12. Epilepsia 5.295(2016)

     

    参考

    1. New Impact factors (2017) for Journals are released now (https://www.researchgate.net/post/New_Impact_factors_2017_for_Journals_are_released_now)
    2. NATURE RESEARCH JOURNAL METRICS ネイチャーおよびネイチャー姉妹紙のインパクトファクター一覧など
    3. Cell Press Journal Metrics JCR(2016) セル・プレスジャーナルのインパクトファクター一覧
    4. Frontiers journals indexed in the 2016 Journal Citation Reports (Table 1) フロンティアジャーナルのインパクトファクター一覧
    5. ELSEVIER Journal Metrics: Find the latest metrics for Elsevier’s journals per subject area ELSEVER社が出版する学術雑誌のインパクトファクター総覧(分野別)
    6. Journal IF (bioxbio.com) ジャーナル・インパクトファクター検索サイト
    7. Journal Citation Reports (JCR) で最新版(2016年)のインパクトファクターが公表されました (鹿児島大学附属図書館 情報サービス課情報調査支援係 2017.6.15):” 2017年6月14日付(米国時間)で最新版Journal Citation Reports (JCR) がリリースされ、インパクトファクターをはじめとする、ジャーナルの各種指標の最新データ(2016年)が公表されました。世界81か国から236分野、11,459誌が収録されています。”
    8. World’s most influential journals for 2017 unveiled in the Journal Citation Reports from Clarivate Analytics (Clarivate Analytics News releases):”PHILADELPHIA, June 14, 2017 /PRNewswire/ — Clarivate Analytics today released the 2017 Journal Citation Reports (JCR), an annual update of the world’s most influential and comprehensive resource for information on highly cited, peer-reviewed publications and the source of Journal Impact Factor (JIF) scores. “
    9. World’s most influential journals for 2017 unveiled in the Journal Citation Reports (tass.com June 14,2017 16:00 UTC+3) :”Clarivate Analytics today released the 2017 Journal Citation Reports (JCR), an annual update of the world’s most influential and comprehensive resource for information on highly cited, peer-reviewed publications and the source of Journal Impact Factor (JIF) scores.”
    10. Scientific Reports 2017年発表インパクトファクター 4.259 (http://www.natureasia.com/ja-jp/srep/):”2016 Journal Citation Reports (Thomson Reuters, 2017) Scientific Reports は、一次研究論文を扱う、オープンアクセスの電子ジャーナルです。本誌は、自然科学(生物学、化学、物理学、地球科学)のあらゆる領域を対象としています。
    11. ACMG’s Genetics in Medicine Journal Receives Record High Impact Factor of 8.229 for 2016: GIM Now in Top 2.5% of All Indexed Journals (PR Newswire/American College of Medical Genetics and Genomics 15 Jun, 2017, 11:33 ET):”The American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG) announced that the Thomson Reuters Impact Factor Journal Citation Reports has just increased the impact factor of the ACMG’s peer-reviewed medical genetics and genomics journal, Genetics in Medicine (GIM) to 8.229 for 2016, up from 7.710 in 2015. GIM is currently ranked 10 of 166 titles in the Genetics & Heredity category and is the top-ranked of genetic journal that has a primarily clinical focus.”
    12. Clinical Chemistry Impact Factor Rises to 8, the Highest in the History of the Journal (Newswise/American Association for Clinical Chemistry (AACC) 15-Jun-2017 1:00 PM EDT):”AACC, a global scientific and medical professional organization dedicated to better health through laboratory medicine, is pleased to announce that the impact factor of its journal, Clinical Chemistry, has risen to 8.008 in the 2016 Thomson Reuters Journal Citation Reports. This impact factor places Clinical Chemistry in the top 2.6% of 12,062 ranked academic journals and speaks to the significant influence of the science it publishes on laboratory medicine and patient care.”
    13. Celebrating a high performing new journal in quantum information (EurekAlert!/University of New South Wales Public Release: 15-Jun-2017):”UNSW Sydney is proud of the early publication performance, influence and reach of its Nature Partner Journal npj Quantum Information, from advancing discovery to affecting public discourse. At a time of the year when the Journal Citation ReportsTM are published, UNSW sees npj Quantum Information’s inaugural Impact Factor in the context of a variety of journal-based metrics that provide a richer view of the journal’s performance. For 2016, the range of performance metrics, which are made available on the journal website, include:2-year Impact Factor: 9.111   Immediacy Index: 1.560   Eigenfactor® score: 0.00060   Article Influence Score: 4.617″
    14. 日本発化学ジャーナルの行く末は? (日本最大の化学ポータルサイト Chem-Station 2015/11/20)

     

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    リジェクトへの怒り・落胆【論文を出す力】

    研究者には論文を書く能力が必要ですが、それだけでなく、論文を世に出す(=アクセプトに漕ぎ着ける)力も必要です。両者は重なる部分もありますが、質的に全く異なります。論文を書くうえで重要なのは知性ですが、論文を出すときに重要なのはリジェクトされたときの落胆、怒り、失望、疑念などの感情をコントロールする力、揺るぎない信念、状況を見極める客観性や判断力です。

    リジェクトに対する心構えが出来ているだけで、受けるダメージ及び回復力が変わってくると思いますので、これから論文を出す人の参考になりそうな記事を紹介しようと思い立ちました。また、結果だけを見ると、みんな順調に論文を通しているように思えるかもしれませんが、実際には、他人には想像がつかないような苦労の末になんとかアクセプトまで漕ぎ着けたという場合がほとんどです。そんな論文出版の苦労を分かち合える記事を、以下に紹介します。

    折れない心

    何年もかけてやってきたプロジェクトの成果が、辛辣なコメントともにリジェクトとなった場合は、自分の研究者としての能力を否定された気分になり、相当なダメージを受けるが、折れないタフな心をもってアクセプトになるまで戦い続けるしかない。 …

    散々追加実験を頑張った上での再投稿にも関わらず、やはりリジェクトとなった場合は時間的にも精神的にも相当ダメージは大きく、また半年〜1年前にもどって別のジャーナルにいちから投稿し直しとなる、、、 (有名ジャーナルに論文が掲載される意義 IMAYOSHI LAB 2013年11月22日)

    最近、友人の一人の論文が、Natureにacceptされたのですが、それが実にすさまじい闘いだったのです。彼が最初の論文を書き上げたのが、3年ほど前。まず、Natureに送りました。Editorial kickにはならず、レビューに回りましたが(トップジャーナルでは、レビューに回るだけでも凄いのです)、rejectされました。レビューアーからのコメントがあったため、追加実験を行って全てのコメントに答えた上で再投稿した。しかし、結果はやはりreject。そこで、彼はScienceに投稿しました。Scienceでもレビューに回りましたがreject。これだけでも凄すぎるのに、これからが彼の凄いところでした。Scienceで得たコメントで指摘された点を改善し、なんと再びNatureへ投稿。再びレビューに回るも、reject。再実験を重ねた上、レビューアーのコメントに答えて、Editorへ抗議。その後、結局、acceptされたのです。(Never give up! Alltid Leende April 22nd, 2013

    まず青い方からこの表をみる。サイエンスの689というのは、最初の投稿先がサイエンスでそのままサイエンスに採用された論文が689報あるということである。サイエンスに蹴られてnatureに採用されたのが82報あるということ。しかしcell誌にはサイエンスリジェクト論文は一つも載らなかった(natureリジェクト論文も載っていない)。(サイエンスに蹴られた論文がネイチャーに載る・・・ がんの分子腫瘍学・遺伝学 2012年10月22日)

     

    批判を受け止める力

    Coping with publication rejection is a key skill for any academic. It can require emotional fortitude, an ability to profit from criticism, and, sometimes, negotiating skills. Many papers in the scientific literature were initially rejected, often sparking vigorous scientific discussions before their eventual publication, whether in the same journal or a different one. (Riding Out Rejection By Kate Yandell The Scientist March 1, 2015)

     

    リジェクトされた時にやるべきこと

    一度リジェクトされただけであきらめてしまうのは、マラソンを走りながら、ゴールのわずか数センチ手前であきらめてしまうようなものだ。もし著者が掲載に強い意志を持っているならば、次に取るべきステップは、リジェクトのレターにあるコメントすべてを正確に理解することである。 (原稿がリジェクトされた時の対処法 根拠と経験に基づく見解 Karen L. Woolley, PhD; and J. Patrick Barron, BA. CHEST 2009; 135:573-577. Ronbun.jp 大鵬薬品工業株式会社)

    論文を書き上げることとそれをアクセプトさせることには、恋愛と結婚ほどの違いがある。論文を書き続ける限りリジェクトとのつきあいは切れないと 思った方がよい。私の場合、二本目の論文がリジェクトされて、それはそのままお蔵入りとなった。思えばその時、それから合計 33 回もリジェクトされるようになるとはちょっと想像していなかった。最初のリジェクトの時には、自分の人格が否定されたようでずいぶん落ち込んだ。もちろん 今でも、リジェクトされたときのショックは大きい(とくに、一週間に二度リジェクトの手紙をもらったときなど)。しかしものは考えようで、リジェクトされたとは思わないようにしている。つまり、どこかの大先生に論文を読んでもらったのだと思うことである。たいていの場合、その論文のどこがいけないのか指摘 が付いてくる。それらを参考にして論文を改訂し、別の雑誌に投稿すればいいだけの話だ。(これから論文を書く若者のために 改訂第二版 1999.1.21. ver. 2.1 酒井 聡樹 )

     

    リジェクトという名の授業料

    論文に限らず、拒絶されるのは自分を見直す良い機会だと思います。

    研究者、とくにチームのリーダーは、人から学ぶ機会が少なくなるものである。レビューアーのコメントの中には、書いた本人が気づかなかったような議論がなされていることがある。そして、論理の展開に落とし穴があることが指摘されている。そのような議論をクリアするために、追加実験を行い、実験結果を見直すと、新しい発見が生まれてきたことを経験している。また、確実な論拠を得て、論理の展開がしっかりしたものとなり、論文の価値が高まっていくのを実感することがある。レビューアーの中には、ここまで結果を出せば論文になるよと、到達目標を提示してくるケースがある。このような到達目標の多くは、研究者にとり、難度の高いものである場合が多い。「それができれば苦労しない」というわけである。しかし、ここで一念奮起をしてみると、目標を絞っているものなので、意外と短期間にブレークスルーしてしまうことがある。そうなるとレビューアーさまさまである。このような「良い」レビューアーは、まさに教師である。リジェクトという高い授業料を払う価値があるものでもある。査読に関する理想と現実

     

    15回リジェクトされた論文

    Lynn Margulis (1938-2011)

    Her ground breaking endosymbiotic theory paper, which suggested that eukaryotic organelles have evolved from the symbiosis between multiple prokaryotic organisms, has been rejected by no less than 15 journals, until it was finally accepted by the Journal of Theoretical Biology. Prof. Margulis kept submitting her revolutionary paper again and again because she knew she’s right and believed in her hypothesis. (“I am sorry to inform you” or how to deal with paper rejection. labguru.com December 03, 2012 By Chen Guttman)

     

    リジェクト:苦難の始まり

    最初の投稿から、すでに8ヶ月が経っていた。その後、別の雑誌に投稿し直してレビューされている最中に、ほんの少しだけ僕たちの仕事に似た論文が別の雑誌に出た。僕はその論文にはすぐに気がついたが、内容は一見似ていたが完全に違っていたので、全く影響はないだろうと思っていた。しかし、それは甘かった。(苦労の論文 2005年12月01日 ハエが星見た maplefly.exblog.jp)

     

    アクセプトまでの苦難の道のり

    それはもうここでは語り尽くせないほどの苫難の道のりでした。先ほどのCCS と油田の 研究は最初Natureに投稿しましたが,案の定, 3 日後にEditor reject されました。 … このEditor rejectを教訓にcover letterを徹底的に改定した後,次に投稿したのが Scienceでした。… 3 名のReviewer に回った結果のrejectでした。… わずか1 週間程度で必死に論文の改定と原稿よりも分厚いrebuttal 文書を作成してEditorに送り付けた結果, 再審査が 認められました。… Editor からの 返答は追加3名計5 名!のReviewerによる審査の結果, ポジティブが2 名,ネガティブが2 名, 超ネガティブが1名でのrejectでした。Reviewerが5人というところも驚きでしたが,超ネガティブなReviewerのコメントにはさらに驚かされ,A4 紙5枚に渡るコメントを頂き,最後に「まだまだ言いたいことは沢山あるが, もう疲れた」と書き添えられていました。… 半年間にも及んだScieneとの戦いもここで幕切れとなりました。 その後,仕方がないので次はPNASに出すかという気持ちが完全に間違いでした。原稿に「Scienceでいい所まで行ったんだぞ」といううぬぼれが出ていたのだと思います。あっさりとEditor rejectされました。… それからは気を入れなおしてNature Geoscienceを経由してNature Communicationsに投稿し,最終的に掲載が決定したのはNatureに投稿してから1 年半が経過していました。実のところ Natureにreject された時にNature Communicationsへの投稿を推薦されたのですが, この時に投稿してもアクセプトされなかったと思います。Scienceとの戦いで論文のクオリティ ーが上がったことは間違いなく,そう思うとあの時の戦いは無駄ではなかったと思っています。(CiNii地圏微生物学のおはなし〜論文投稿の厳しさと優しさ〜 Japanese Society of Microbial Ecology 微生態和文誌30巻1号)

     

    2年にわたるNatureとの戦い

    そこで、満を持して再投稿。今回はいけるんとちゃうか、という強い期待。そして……。平成26年1月16日、ドキドキしながらNatureからのメールを開けたところ、ああ3回目のreject。机の上に倒れ臥した。しばらく起き上がれなかった。… ほぼ倒れそうになりながらも、追加実験を行い、再投稿してみたが、「Yasu、もうリバイスももう4回目だし、Natureとしてもこれ以上この論文を扱うことはできない」とEditorから最終通告。再度、翻意を促すメールを送ってみたが、残念ながらゲームセット。2014年3月14日、2年にわたるNatureとの闘いが終わった。正直言って、Reviewerに恵まれなかったのが痛かった。… 3回目のリバイスの時に、laser ablation実験データについて、異なる記載をしていたらReviewer 3は追加実験を求めなかったのではないか。そもそも、最初の投稿時に、もっとデータを付けてから投稿するべきではなかったのか。色々な思いが胸をよぎる。YASUの呟き No. 10 激闘の果てに

     

    論文投稿の苦しみ

    論文投稿の苦しみ   2003年の冬頃だったと思いますが、ずっと研究してきた成果として、Natureに投稿しました。… 私の論文は、投稿から1週間以内にリジェクトされました。… 私の論文は、2-3週間かけて文面を書き換えて、Scienceに投稿しました。残念ながら、こちらも1週間でリジェクトされました。次は、順番通りCellです。Cellはフルペーパーなので、Figureの数量を増やしたり、章立てを見なおしたりといった大改訂が必要となり、投稿準備に数週間を要しました。この時点で既に季節は春を迎えていました。Cellへの投稿は、査読され、ネガティブコメントは多かったもののリバイズの機会まで辿り着きました。… この結果が来たのは既に初夏になっていました。そこから何としても論文を通したいと、追加実験を行うものの、狙ったデータが思い通りに出ません。… 苦し紛れに論点を変え、結論をやや弱くして再提出しました。残念ながらCellへの再提出もリジェクトとなりました。Cellに投稿した日から半年、Natureに出してからは1年の時がかかっています。当時の私は、研究の本質は何も進歩しないにも関わらず、1年経っても論文が通らないという日々に葛藤していました。「もうブランドジャーナルでなくて良いから論文として終わりにしたい」気を抜くとそんな弱音が出てしまう状態でした。しかし、私の上司が選んだ次の投稿先は、Natureの姉妹誌、Nature Cell Biol.(NCB)でした。… NCBの査読結果はCellと同様に、ネガティブなリバイズ。数ヶ月の追加実験をして、再提出したもののリジェクトでした。(medister Dr’sブログ 学術論文事業を始めたきっかけ ~オープン・アクセス学術誌立ち上げ記 ゼネラルヘルスケア 竹澤慎一郎 )

     

    努力と結果

    博士課程1年のとき、それまでの研究をまとめて『Cell』に投稿した。結果はエディターによるリジェクト。学位の取得を優先して論文のランクを下げたいと思ったが、武藤教授は実験を追加してもう1回『Cell』に出そうと言う。1年間努力し、コメントに応えるデータを出して再度投稿したが、またリジェクトされた。リジェクトを繰り返す中、上田泰己氏や木村暁氏のような優秀な人たちの活躍を論文などで知り、「自分なんかがこの世界で生きていくのはとても無理だ」という思いがあった。転機となったのは、2回目のリジェクトの後のことだ。次にどうするかについて、武藤教授は迷われていた。そこで青木さんは、いろいろな雑誌を見て、『Nature Genetics』に出しましょうと提案した。それほど下がっていないハードルに、厳しいのではないかとも言われたが、さらに実験を追加して博士課程3年の6月に投稿。すると、予想もしていなかったほどスムーズに、10月には受理されたのだ。「最初に『Cell』に蹴られた後、1年間必死に実験を行ったことが論文掲載というかたちで認められて、研究を続けてもいいんじゃないかという気持ちを少しもてるようになりました」。(制がんを目指して、真摯に研究に取り組み続ける (1)福井大学 医学部医学科 教授 青木 耕史さん jst.go.jp 科学者としての働き方。

     

    Shooting for the moon

    Nature reject → Science reject → Nature Chemical Biology reject → Nature Communications 2 vs 0でアクセプト,という経緯を辿りました.実験できるドクターが3人もこの研究に関わっていたし,内容が内容なのでNatureは当たり前,何か良からぬ事が起きてダメだったとしてもNature姉妹誌が下限レベルだと思っていました.結局その滑り止めの一つであるNature Communicationsに落ち着いたんですが,嬉しいというよりむしろ残念な結果となりました.(12 生きた細胞内の温度分布測定 詳細  内山聖一 研究内容)

    初稿にあたる論文は、Natureとその姉妹紙、Science、そしてCellとエディターにリジェクトされ続けました。まあ、これはある程度想定の範囲内です。そして、ようやくMolecular CellというSopko2006が掲載された科学誌で、レビュー(審査員による査読)に回りました。カバーレターで、Sopkoらの論文を引き合いに出して「彼等の結果を覆す」と主張したおかげかもしれません。しかし、帰ってきたコメントはよいものではなく、エディターによってリジェクトという結論が下されました。

    リジェクトしてきた審査員の1人は、どうもトロントのグループに近い人だったようで、「この仕事はSopkoらの仕事を否定するものではなく、補完的なものである」というコメントがありました。そう、私たちの戦略は見事に失敗したのです。自分の学会発表がそうであったように、私はこれまで闘いを挑むような論文を書いたことはありません。今回は御大にそそのかされて(?)、自分に出来ないことをやってしまったようです。そこで、論文の主旨を1から作り直しました。

    真面目にSopkoらの仕事も引用し、比べ、私たちとの研究の違いを書きました。すると、実際にSopkoらの仕事が私たちの仕事と補完的な仕事であることが、私にも分かってきたのです。トップジャーナルに載せようとするばかりに見るべきところが見えていなかった、初稿の論文はいろんな意味で不完全でした。私の論文執筆能力が十分でないからなのかもしれませんが、これまでたいていの場合、初稿で書いた論文がリジェクトされて、繰り直し書き直して満足のいく論文になります。すんなり通ってしまったら不完全なものが発表されてしまう、それよりはいいのかもしれません。

    さて、書き直した論文は、Genome Research誌に投稿しました。これは、ゲノム研究ではトップのジャーナルです。科学誌はしばしば、「インパクトファクター」と呼ばれる、どれだけその科学誌に掲載された論文がその先に引用されているかという指標をもとに評価されます。この指標には賛否両々論あるものの、やはりそれなりに、それぞれの科学誌に掲載される難しさ、要求するスタンダードの高さを反映しています。

    今回の論文については、私はインパクトファクター10以上の科学誌に絶対に掲載するつもりでした。泥臭い話ですが、たくさんの研究費や人材をつぎ込んでもらったし、結果もしっかりとしたものが得られている。あとは私ががんばるしかない。この論文が「よい科学誌」とよばれるものに掲載されないのだとしたら、私の責任以外のなにものでもない。そういう意味では、インパクトファクター13以上のGenome Research誌は、次の候補としては適切だと思われました。(第4章:gTOW6000を世にはなつ HM’s webpage 2013-01-22)

     

    味方を得てアクセプト

    いよいよ、Nature に投稿されて……。古寺氏: はい。2009年10月のことです。でも、すぐには載らなかったのです。インパクトのある成果だし、推敲も重ねたし、論文には自信がありました。しかし、いきなりエディターリジェクト。紋切り型のお断り文章をもらって、かなりがっかりしました。どうしていいかわかりませんでしたね。… 仕方なく、次にScience にも投稿してみたのですが、これもエディターリジェクトでした。そこで、時間をかけてもう一度論文を推敲し直しました。どうしたらインパクトのある論文に仕上げることができるのだろうかと、文字通り昼も夜も考えながら。そしてその成果を、もう一度Nature に投稿したのです。2010年5月に、Letterとして。しかし、それでもまた、エディターリジェクトでした。

    もうダメだと思ったのですが、安藤教授が、ミオシン研究の世界的な権威の研究者に見てもらおうと、論文を送ってくださったのです。筋肉の研究で有名な方と、ミオシンVの研究で有名な方です。そうしたら、その2人とも大絶賛してくれて。そのうえ、Nature のエディターに推薦の手紙を書いてくれたのです。… とうとうエディターから、「考え直したら、確かにすごい内容です」という連絡が来て、論文をレフリーに回してくれることになりました。そこからは、とんとん拍子でした。(動くミオシンの撮影に成功! 古寺 哲幸氏 Nature著者インタビュー2010年11月4日)

     

    自身を客観的に見る

    何回かリジェクト食らってたみたいですが、ストーリーを変えて、本人も納得した形になって投稿したら、好意的なコメントが来て、追加実験をいくつか加えたら、それなりにいいジャーナルに驚くほどあっさりと受理されたようです。ストーリーがやっぱり大事ですね。データをいっぱい出したい気持ちや、本当のいきさつをさておいて、読者が読んですんなり納得できる、無理のないストーリーにまとめるのが大事です。結局Reviewerも主張が裏付けられているかどうかを判断するだけで、筋が通っていたらそれ以上の批判は難しいものです。(研究雑話(1)Wunderbarな日々 2017-03-13)

     

    私はリジェクトが好きだ

    諸君 私はリジェクトが好きだ
    諸君 私はリジェクトが好きだ
    諸君 私はリジェクトが大好きだ

    瑣末な批判が好きだ
    追試要求が好きだ
    データ追加が好きだ
    検定やり直しが好きだ
    大幅改訂が好きだ
    文献追加が好きだ
    図表削除が好きだ

    Natureで、Scienceで
    Cellで、PNASで
    EmBioで、C.B.で
    科研費で、学振で

    この地上で行われるありとあらゆるリジェクト行動が大好きだ

    文献をならべたレビューの一斉発射を無意味として査読無しでリジェクトするのが好きだ
    再投稿された論文をリジェクトさせた時など心がおどる

    (風流記 2007年10月5日 参考:「諸君 私は戦争が好きだ」)

     

    リジェクトするときに使える英語表現

    • We regret to say that ~
    • We regret to inform you that ~
    • We regret that we are unable to publish it in XXXX.
    • We regret to say that we will not be able to accept this manuscript for publication in XXXX.

     

    リジェクトの味

    参考

    1. “Inside Nature” ―Nature誌編集の舞台裏(?) (かたつむりは電子図書館の夢をみるか 2008-06-21) 去る6/19、筑波大学若手イニシアティブセミナーとして行われたNature ジャパンのエグゼクティブディレクター、中村康一氏の講演会に行ってきました。… 「どんなに質がいい論文でもNatureとして興味持てなかったら落とす」とのことで、過去にはこの段階で後にノーベル賞を受賞する論文を落としてしまったこともあるそうだけど、未だにそのスタイルは崩していない、と。… ただ、ここでも他の学術出版と違うのは、査読者はあくまでコメントを求められるだけで、最終的な掲載の可否は全部編集者が決める、とのこと。
    2. サイエンスに蹴られた論文がネイチャーに載る・・・ (がんの分子腫瘍学・遺伝学 2012年10月22日) サイエンスの689というのは、最初の投稿先がサイエンスでそのままサイエンスに採用された論文が689報あるということである。サイエンスに蹴られてnatureに採用されたのが82報あるということ。しかしcell誌にはサイエンスリジェクト論文は一つも載らなかった(natureリジェクト論文も載っていない)。
    3. Nature Geoscienceからリジェクト、その反省と分析 (黒猫の旅 2013年9月18日)
    4. 論文がRejectされた時。~戦うべきか、否か、それが問題だ~ YASUの呟き No. 15
    5. 論文が却下されました – どうしたらよいでしょうか? (Ben Mudrak, PhD American Journal Experts):”3つめのオプションが最も一般的です。査定者から受け取ったコメントを慎重に考慮して、論文を修正して、別の雑誌に論文を投稿します。”
    6. 8 Scientific Papers That Were Rejected Before Going on to Win a Nobel Prize (Science Alert FIONA MACDONALD 19 AUG 2016)
    7. 論文リジェクトの種類 (むしのみち 2010-05-08):”リジェクトは研究者にとっての試練のようなものですが*1、どんな種類があるのか、自身の研究をもとにまとめておきたいと思います*2。”
    8. regectされた時のモチベーションの高め方というものを教えてください。(論文がregectになりました 教えて!goo 質問者:cueda 2005/08/05)

     

     

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    論文投稿から採否までの査読期間早わかり

    学術誌に論文を投稿すると、最初の数日間はエディターからの連絡が来ないことを祈ります。一週間もすると、レビューにまわしてもらえたのではないかという期待が芽生えます。1ヶ月もすると、早く返事がもらえないのかとやきもきし始めます。1ヶ月も待たされたあげく、エディターに蹴られて、レビューにすら回してもらえていなかったことがわかると、かなりがっかりです。オンラインでステータスをチェックしたり、あるいはエディターからの連絡により、自分の論文がレビューにとりあえず回ったことがわかると、ほっとします。しかし、それからさらに1ヶ月、2ヶ月と待たされると、落ち着かない日々を過ごすことになります。

    さて、論文を投稿してから、エディターからの返事をもらうまで、どれくらい待てば良いのでしょうか?日数は、ジャーナルによってかなりの開きがあります。

    SciRevというウェブサイトは、研究者の体験をまとめて、ジャーナルごとの統計を出しています。例えばネイチャーの場合、エディターキックは平均11日、レビューから返ってくるのが平均1.9ヶ月、アクセプトされた論文の場合、平均3.8ヶ月かかっています(n=22)。サイエンスの場合は査読に回らなかった場合の平均が13日、査読から返ってくるのが平均1.6ヶ月、アクセプトされた場合にトータルでかかった時間は平均5.6ヶ月となっています(n=19)。eLifeは査読にまわらなかった場合のリジェクションの平均は10日、査読が戻ってくるのは1.3ヶ月、受理された原稿の場合のトータルの日数は平均1.7ヶ月と迅速です(n=17)。PLOS ONEの場合は、レビューに回らず却下された場合の平均は16日、レビューが返ってくるまでの平均は2.6ヶ月、アクセプトされた場合の総日数は3.7ヶ月となっています(n=62)。

    研究者は自分の体験をSciRevに投稿することができます。

     

    いつまで待っても音沙汰が無い場合、エディターに催促のメールを出したほうがよいでしょう。すぐに結果が返ってくることがあります。

    If, after many weeks you do not receive the reviews of your paper, you should make polite inquiries with the appropriate editor. When a journal takes a long time to process a paper, the bottleneck almost always is a tardy reviewer. Sometimes a note from the author provokes the editor to contact the overdue reviewer, who in turn could deliver the review in a day or two. (From Science to Citation By Stephen G. Lisberger)

    催促のメールを書く場合、どのような英文が適切でしょうか?文例を挙げて説明しているウェブサイトを紹介します。

    I would be grateful if you could let me know whether there has been any further progress on my submission.
    (How do I write an inquiry to the editor about my manuscript’s current status? Editage Insights Mar 22, 2016)

    Could you let me know when I can expect notice regarding the decision of the editorial board? (英語のメールで論文を寄稿した後の返信を事務局に催促する書き方:「私の論文はどうなりましたか?」と質問する場合 weblio英語の勉強コラム 英文メールフォーマット・テンプレ 2013/01/16)

    I was wondering about the status of my manuscript [title, reference number] that I submitted on [date]. Have you heard back from the referees yet? (When / how should I ask about a manuscript’s status in review? http://academia.stackexchange.com)

    参考

    1. SciRev:”Share your experience with the scientific review process and select an efficient journal for submitting your manuscripts.”
    2. Submission to first decision time (Cofactor 5th Apr 2013)
    3. Acceptance to publication time (Cofactor 13th Jun 2012)

     

    サイエンス(Science)に論文を出す方法

    ネイチャー(Nature)に論文を出す方法があるからには当然サイエンス(Science)に論文を出す方法もあります。サイエンスのエディターらが日本を含め世界各国のさまざまな大学でセミナーを行っており、そのスライドなどがインターネット上で閲覧できます。

    ネイチャーとサイエンスの名前はどちらも最も権威のある学術誌としてよく並べて挙げられますが、サイエンスへの掲載に当たっては、著者らが高名な学者かどうか、権威のある研究所に属しているかどうかなどは一切関係がないことが明言されており、自分の研究分野の第一人者との議論や共同研究を論文掲載のための戦略の一つとして勧めているネイチャーとは若干異なるスタンスであるように思われます。

    04 Pamela Hines(PUblishing in Science: Outliers, Closers, & Leaders by Pamela J. Hines, Senior Editor, SCIENCE, AAAS http://www.docin.com/p-345432859.html)

    Hines noted that Science publishes research articles that “shine with quality”, stand out from the pack (i.e. are not similar to already published reports), and can be recognized as “outliers, closers, and leaders”. As she explained, an outlier is a research paper on a fresh, unexpected topic; a closer is one that presents unequivocal evidence to resolve a scientific debate; and a leader is one that moves science forward by “defining new questions”.

    Manuscripts that are immediately rejected by Science are not of broad interest, report a minor scientific advance, draw conclusions not sufficiently supported by the evidence, are lacking in mechanistic insight, or report “permutations of known phenomena” (i.e. research repeated in a new biological model system); these latter papers are more suitable to publication by specialty journals. Hines’ suggestion for new authors is to focus on the “logic of thought flow”, as this aspect of good writing has a strong influence on the editorial decision.

    (http://www.scielosp.org/scielo.php?pid=S0021-25712010000400014&script=sci_arttext)

    参考

    1. Publishing in Science: Outliers, Closers, & Leaders by Pamela J. Hines, Senior Editor, SCIENCE, AAAS (http://www.docin.com/p-345432859.html
    2. Communications from the view at Science by Pamela J.Hines, SCIENCE, AAAS (https://arc.uchicago.edu/sites/default/files/Hines_REESE2010.pdf)
    3. A Guide to Writing the Model Article by Stella Hurtley, Senior Editor, Science (http://www.jsps.org/news/files/dr.%20Stella%20Hurtley.pdf)
    4. Valerie Matarese. Emerging concepts in high-impact publishing: insights from the First Brazilian Colloquium on High Impact Research and Publishing. Ann. Ist. Super. Sanità vol.46 n.4 Roma Oct./Dec. 2010 http://dx.doi.org/10.4415/ANN_10_04_14 (http://www.iss.it/binary/publ/cont/ANN_10_04_14.pdf

     

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    ネイチャー(Nature)に論文を出す方法

    論文が掲載された雑誌のインパクトファクターの高さと、その論文自体の価値の高さは必ずしも一致しません。そのため、雑誌のインパクトファクターにとらわれずに論文の内容そのものを評価すべきだという議論がよくなされます。しかしながら、分野外の論文の価値を評価するのは非常に難しいため、雑誌のネームバリューで論文業績が評価されるということは避けられません。

    そんなこともあって、いまどき、ネイチャー(Nature)、サイエンス(Science)、セル(Cell)(生命科学分野の場合)、あるいはそれらの姉妹紙などにファーストオーサーの論文を出していないと、アカデミックな世界でジョブマーケットに出て行くことが難しいという現実があります。テニュアトラック制度に乗っているPI(Principal Investigator)も、自分のラボからこのようなトップジャーナルに論文を出さないとテニュア獲得の可能性が下がるでしょう。

    それでは一体、Natureなどのハイプロファイルジャーナル(High-profile journals)に論文を出すための秘訣や戦略のようなものは存在するのでしょうか?

    日本のラボで仕事をする日本人ポスドクよりも、海外のラボに留学した日本人ポスドクの方が一流誌に論文が出やすいということはよく言われます。なぜそうなるのかといえば、海外のトップラボのボスは良い論文を書く方法論を身につけているからです。そのため、せっかく同じような実験データを得ていながら、かたやネイチャー、かたやインパクトファクターの低い雑誌という結果にもなります。

    Natureに論文を出すための方法論はどこでどう身につければよいのでしょうか?もちろん、良いボスがいる一流のラボで仕事をして直接学ぶのがベストの方法ですが、実は、良い論文を書くためのワークショップをNature自身が多数開催しています。また、インターネット上で、それらの内容が公開されています。

    planyourpaper(参照:ネイチャーライティングワークショップ http://www.jbr-pub.org/UploadFile/Nature%20Writing%20Workshop.pdf 30ページ)

    良い論文というのは、我々の自然に対する理解を深めるような研究報告です。つまりConceptual Advanceがなければいけません。Conceptual Advanceがどのようなもので、それが論文掲載の決定にどう関わってくるかに関しては、

    Novelty and conceptual advance
    • Anything that has not been published before is novel, but not all
    novel findings are considered interesting, or of sufficient conceptual
    advance, for a journal
    • Different journals use different criteria to gauge the level of
    conceptual advance and readers’ potential interest

    Common types of conceptual advance
    • Unexpected phenomenon
    • Never before seen
    • Mechanistic insight
    • Technical breakthrough
    • Resource value

    (参照:ネイチャーライティングワークショップ http://www.jbr-pub.org/UploadFile/Nature%20Writing%20Workshop.pdf 19ページ)

    と説明されています。

    ネイチャーに論文を出す方法について、ネイチャーのエディターが解説した動画。

    How to Publish in Nature – Leslie Sage (SETI Talks)

    ネイチャーが論文をアクセプトするかどうかは一体誰が決めているのでしょうか?それは、レビューアー(差読者)ではなくネイチャーの編集者であると明言されています。

    The judgement about which papers will interest a broad readership is made by Nature‘s editors, not its referees. One reason is because each referee sees only a tiny fraction of the papers submitted and is deeply knowledgeable about one field, whereas the editors, who see all the papers submitted, can have a broader perspective and a wider context from which to view the paper. (http://www.nature.com/nature/authors/get_published/)

    Nature, Nature Physics and Nature Communicationsなどの編集者も務めたDan Csontos博士が、ネイチャーに論文を出す秘訣を解説。

    How to get published in top-ranked journals

    Dr Dan Csontos. He is a science writer, editor and publishing consultant at Elevate Scientific, based in Lund, Sweden. Before founding Elevate he was a science editor with the international journals Nature, Nature Physics and Nature Communications, and a science editor and project manager with Macmillan Science Communications in London.

     

    ネイチャー論文の要旨の書き方

    ABSTRACTの書き方だけでなく、ネイチャーに投稿する際の要点が、https://www.natureasia.com/pdf/ja-jp/nature/authors/gta-2017.pdfにまとめられています。

     

    参考

    1. Foundation Scientific Writing and Publishing Workshop:Trainers: Dr.Myles Axton (Nature Genetics Chief Editor), Dr.Wayne Peng (Formerly an Associate Editor, Nature)(ネイチャーライティングワークショップ 284 page PDF)
    2. How to get published in Nature (and its sister journals) Ed Gerstner,Executive Editor. Nature Communications. March 2014 (PDF link)
    3. How to get published in Nature Publishing Group Journals. By Nick Campbell.Assistant Publisher and Executive Editor NPG Nature Asia-Pacific (PDFリンク
    4. Publishing your research in Nature journals,  Myles Axton, Chief Editor, Nature Genetics. Taiwan, November 2014. (37 pages PDFリンク)
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    9. 圧倒的に生産性の高い人(サイエンティスト)の研究スタイル (ニューロサイエンスとマーケティングの間 – Being between Neuroscience and Marketing 2008-10-18) :1. まずイシューありき 2. 仮説ドリブン 3. アウトプットドリブン 4. メッセージドリブン

     

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