Category Archives: 論文データ捏造

東京女子医大が細胞シート論文を撤回

小保方晴子氏が筆頭著者の2011年ネイチャー・プロトコルズ(Nature Protocols)論文に関しては、以前から研究不正の疑惑が複数のインターネットサイトで指摘されていました。ネイチャー・プロトコルズが2016年2月25日に公表したところによれば、4人の共著者のうち小保方晴子氏を除く3人の申し出により、この論文は撤回されました。。

Retraction: Reproducible subcutaneous transplantation of cell sheets into recipient mice Published online 25 February 2016 (http://www.nature.com/nprot/journal/v11/n3/full/nprot0316-616a.html)

今回取り下げられたこの論文は小保方晴子氏が大学院時代に行った細胞シート工学関連の仕事です。早稲田大学と東京女子医大は医工融合研究教育拠点TWInsを2008年に設立しており、小保方氏の研究はここで実施されました。

Haruko Obokata,    Masayuki Yamato,    Satoshi Tsuneda    & Teruo Okano. Reproducible subcutaneous transplantation of cell sheets into recipient mice. Nature Protocols 6, 1053–1059 doi:10.1038/nprot.2011.356 Published online

論文著者4名のうち、筆頭著者の小保方晴子氏が実験の計画、実験の実施、データ解析、論文執筆を、大和雅之氏が実験の計画、データ解析、論文執筆を担当し、常田聡氏および責任著者の岡野光夫氏は研究プロジェクトの監督を行いました。

Contributions H.O. designed and conducted the experiments, analyzed the data and wrote the paper. M.Y. designed experiments, analyzed data and wrote the paper. S.T. and T.O. supervised the project.

大和雅之、常田聡、岡野光夫の3氏は、疑惑が指摘されていた論文の図に対応する生データが見つからず、論文の結果に対する確信が失われたため論文を取り下げたいと説明しています。ネイチャー・プロトコルズ誌は、論文撤回に関して小保方晴子氏の見解を求めようとしましたが連絡が取れませんでした。論文取り下げは、2016年1月13日付け。

retracted 13 January 2016
Masayuki Yamato, Satoshi Tsuneda and Teruo Okano would like to retract this protocol after concerns were raised by the community about some of the figures. Specifically, concerns were raised that the fourth graph in Figure 5a and the first graph in Figure 5b look very similar, and some of the error bars look unevenly positioned. Masayuki Yamato, Satoshi Tsuneda and Teruo Okano have been unable to locate some of the raw data to verify these figures and are no longer confident in the paper’s results. Given that these results are key to demonstrating the reliability and reproducibility of the protocol, these authors wish to retract the protocol, and they sincerely apologize for the adverse consequences that may have resulted from its publication. Haruko Obokata could not be reached by the journal for comment on the retraction. (http://www.nature.com/nprot/journal/v11/n3/full/nprot0316-616a.html)

この論文のデータの疑わしさや相反利益問題は、以前よりインターネット上の複数のサイトで指摘されていました。

小保方論文についてはNatureに出たSTAP細胞論文とTissue Eng. Aの論文について不正疑惑が出てますが、その陰に隠れてNat. Protocol.に2011年に出した論文でも怪しい点が指摘されているんです。それが、この図。Fig.5aのNumber of B cellsとFig.5bのNumber of neutrophilsの値がクリソツすぎる。違う細胞種を異なる条件で実験してるのに、この一致ぶりは奇跡。(もう一つの小保方論文のストーリー  anond.hatelabo.jp 2014-02-23)

伏線もあった。2011年、『ネイチャープロトコル』誌にセルシード社の細胞シートに関する論文が載った。執筆者には小保方氏、岡野氏、大和氏が名を連ね ている。岡野氏は細胞シートの利害関係者であるにもかかわらず、論文の「COMPETING FINANCIAL INTERESTS」(金銭的利害関係の有無)の欄には「The authors declare no competing financial interests.」(筆者らは競合する経済的利益はないと宣言する)と記していた。(小保方研究に関与する企業の株価が急上昇――STAP細胞騒動に株価操作疑惑 週刊金曜日 2014年4月30日

参考

  1. もう一つの小保方論文のストーリー (anond.hatelabo.jp 2014-02-23)
  2. 小保方研究に関与する企業の株価が急上昇――STAP細胞騒動に株価操作疑惑 (週刊金曜日 2014年4月30日)
  3. 東京女子医科大学 大和雅之教授は、(株)セルシード社の株主であり共同研究先 (小保方晴子のSTAP細胞論文の疑惑 stapcells.blogspot.jp 2014年2月13日):”利益相反事項の隠蔽疑惑:小保方晴子氏の2011年のNature Protocol誌の論文は、(株)セルシード社の製品の細胞シートの性能に関するものでした。そして、論文の共著者である東京女子医大の岡野光夫教授や大和雅之教授は(株)セルシードの関係者であり、特に、岡野光夫教授は、有価証券報告書ではこの時点で同社株の大量保有者かつ役員でした。このように、金銭的利益相反問題が存在するにも関わらず、このNature Protocol誌の論文には、”金銭的利益相反は無い(The authors declare no competing financial interests.)”と宣言していました。これらの虚偽記載もまた、彼らの信用を大きく損なう結果となりました。”
  4. 東証JQG 7776 (株)セルシード チャート(10年) ヤフーファイナンス
  5. 東京女子医科大学・早稲田大学連携 先端生命医科学研究教育施設 TWIns:”東京女子医大と早稲田大学による医工融合研究教育拠点である「東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設」を2008年4月にオープンしました。東京女子医大のT、早稲田のW、そしてInstitutionを組み合わせて、通称「TWIns(ツインズ)」と命名しました。”
  6. 東京女子医科大学先端生命医科学研究所 メンバー: 大和雅之 所長・教授 Masayuki YAMATO Director of TWIns, Professor 岡野 光夫 特任教授     Teruo OKANO Professor
  7. 小保方晴子(ウィキペディア)
  8. 株式会社セルシード (CellSeed) 基盤技術 論文紹介
  9. 株式会社セルシード 日本発・世界初の「細胞シート再生医療」の世界普及を目指す (東京女子医大先端生命科学研究所細胞シートティッシュエンジニアリングセンター)セルシードは、2001年に設立された東京女子医科大学発の再生医療企業です。日本発・世界初の再生医療プラットフォーム技術である「細胞シート工学」を 基盤技術とし、細胞シート工学を用いて組織や臓器を再生することによって様々な難治性疾患・損傷を治療する「細胞シート再生医療」の事業化・世界普及を目 指しております。
  10. 東京女子医大先端生命科学研究所細胞シートティッシュエンジニアリングセンター ご挨拶:”我々はこうした細胞シートの積層化で組織や臓器を少量の細胞から造り、まったく新たな“細胞シート治療学”の確立とその医療テクノロジーの普遍化を達成することで再生医療の世界拠点の形成を目指す。 特任教授 岡野光夫”
  11. 企業事例 IPO編 株式会社セルシード (あなたのビジネスを、公的機関がバックアップ! J-NEt21 中小企業ビジネス支援サイト 企業事例 こうして活用しよう中小企業向けファンド):”2001年5月に創業した際には、東京女子医科大学岡野教授など創業メンバーを中心にして資本金を集めた。そして、創業から入念な準備を経て、約1年後の2002年6月に、初めてVC投資を受け入れ、本格的な研究に取り組みはじめた。”
  12. 小保方氏のSTAP以前の論文撤回 ネイチャー姉妹誌 (日本経済新聞 2016/2/27):”英科学誌ネイチャーの姉妹誌「ネイチャープロトコルズ」は27日までに、小保方晴子氏がSTAP細胞論文より前に発表していた別の論文を撤回したと発表した。”
  13. 小保方氏らの論文撤回 英科学誌「元データ確認できず」(朝日新聞DIGITAL 2016年2月27日):”STAP細胞論文の筆頭著者で、早稲田大の大学院生だった小保方晴子・理化学研究所元研究員らが執筆した論文が撤回されたと、英科学誌ネイチャーの関連誌電子版で25日発表された。”
  14. 小保方氏ら4人論文 英科学誌が撤回 共著者3人申し出(毎日新聞2016年2月27日):”英科学誌「ネイチャー・プロトコルズ」は、元理化学研究所研究員の小保方晴子氏(32)らが2011年に報告した論文を、1月13日付で撤回したと発表した。”
  15. 小保方氏らネイチャー論文、共著者申し出で撤回(読売新聞 YOMIURI ONLINE 2016年02月27日12時37分):”元理化学研究所研究員の小保方晴子氏(32)らの2011年の論文が撤回されたと、英科学誌ネイチャーが25日、発表した。論文中の二つのグラフが酷似しているとの指摘があり、小保方氏以外の共著者3人が撤回を申し出た。同誌は小保方氏にも接触を試みたが、連絡がつかなかったという。論文は、再生医療に用いる「細胞シート」の性質を、マウスで評価するための手順をまとめた内容。STAP論文を発表する2年半前の11年6月、「ネイチャー・プロトコルズ」誌に掲載された。”
  16. 読売新聞の見出しは変だ: 「小保方氏らネイチャー論文、共著者申し出で撤回」 「ネイチャー」(本紙)と「ネイチャー・プロトコル」(同じ出版社だが、いわゆる姉妹雑誌)の違いを分かっていないようだ。 From: rjgeller at: 2016/02/28 06:50:56 JST
  17. ライフサイエンスと利益相反 (平成25年度「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」(研修・教育プログラムの作成)5.ライフサイエンスと利益相反 東京女子医科大学リサーチ・アドミニストレーター河原直人)
  18. 利益相反かあるかどうかを判断するための”6つのP” (Editage Insigts 投稿者 ヴィレンドラ・ナイク 2015年01月13日):”金銭的利益の原因となる利益相反は、著者が一番多く直面し、開示しなければならないものです。資金提供源、研究から金銭的利益を得る会社の株の所有、研究の恩恵を受ける会社からもらう顧問料や給料などが挙げられます”

学長権限強化が学問の自由を脅かす危険性

岡山大学不正告発教授解雇事件で曝け出された、学長権限強化が学問の自由を脅かす危険性

岡山大学で研究不正を告発した教授が学長から解雇処分を受けた事件は、告発した教授らが処分の不当性を訴えて裁判で係争中ですが、世間に大きな衝撃を与えています。大竹まことゴールデンラジオ(文化放送)でもこのトピックが取り上げられました。このラジオ番組では事件の概要が説明され、さらにこの事件の背景が考察されています。

AM1134文化放送 大竹まことゴールデンラジオ!〜大竹紳士交友録。深澤真紀さんが語る大学の自治。2014年から「国立大学の学長の権限強化」。馳文科大臣が「学長選挙に反対」とコメント。教員人事は大学の管理が基本。

AM1134文化放送 大竹まことゴールデンラジオ!〜15時台、大竹紳士交友録はオープニングで発表したテーマを変更します。「岡山大学で何が起きているか。そして大学の自治」というテーマでお届けします。

【大竹まこと×深澤真紀×倉田真由美】 岡山大学の不正研究と2人の教授解雇! 政府が大学人事関与

早稲田大学が小保方氏のD論に関する記者会見

早稲田大学は小保方晴子氏の博士号取り消しに際して1年間の”執行猶予”を与えていましたが、猶予期間内に博士号取得に十分な内容の博士論文が提出されなかったとして、小保方晴子氏の博士号取り消しを確定し、その説明のための記者会見 を2015年11月2日に開きました。早稲田大学のウェブサイトでも、その概要を公表しています(「本学先進理工学研究科における博士学位論文の取扱いについて」)。

大学は、本学学位規則23条に則って、2014年10月6日付で、小保方晴子氏に授与された学位を取り消すが、学位を授与した先進理工学研究科にお ける指導・審査過程には重大な不備・欠陥があったと認められるため、一定の猶予期間を設けて再度の博士論文指導、研究倫理の再教育を行い、博士論文を訂正 させ、これが適切に履行された場合は学位を維持できることとした。

この決定に従い、先進理工学研究科では2014年11月に指導教員を選出し、論文提出・審査のスケジュールなどと共に本人への通知を行い、再度の論文指導体制を整えていたが、小保方氏の事情により、6月になるまで指導を始めることができなかった。

指導教員らは、小保方氏の来校が困難であることを考慮して、直接本人のもとを複数回訪れることに加え、メールや電話によって、草稿の内容確認や訂正 指示等の指導を行った。また、倫理教育についてもe-ラーニングでの受講環境を提供し、本人は9月までに所定の講座を修了した。

し かしながら、指導教員らの指示に従って何度か改訂稿が提出されたものの、それらの改訂稿は、なされるべき訂正作業が終了しておらず、審査に付すべ き完成度に達していないことから、先進理工学研究科では10月29日の運営委員会で協議を行い、論文審査に付すことができないことを確認した。また、小保 方氏より猶予期間の延長を求められていたが、これには応じないことをあわせて決定した。

これを受けて、大学は、10月30日の研究科長会の議を経て、「博士学位論文として相応しいもの」が提出されないまま、猶予期間が満了し、学位の取消しが確定したことを確認した。
本学先進理工学研究科における博士学位論文の取扱いについて

記者会見の模様。

【小保方氏の博士論文について】早稲田大学 記者会見 2015年11月2日

登壇者
鎌田薫 (早稲田大学 総長)
橋本周司(早稲田大学 副総長)
佐藤正志(早稲田大学 理事)
古谷修一(早稲田大学 教務部長)

1:50- (鎌田薫早稲田大学 総長)
15:30- (質疑応答)

21:20-26:40 (WILL編集 しが)2点。水準に達していないというが具体的に何が問題だったのか?もう1点、7月の時点では学位審査会での訂正要求にしたがって訂正すればそれでOKという発表だった。ところが10月だと追加事項が増えて行って、今回の発表では水準に達していなかったという。どんどんどんどん要求水準が高くなって学位取り消しの流れをつくろうとしているようにしか見えないが?
25:03- (回答)(科学的根拠の記述が不十分な具体的例)B6系統のGFP陽性細胞を用いてキメラマウスを作出したという記載があるが、用いた細胞の由来や実験結果の科学的根拠を説明しうる記述が不足している。ハードルをあげたというよりは、論文として当然記載されているはずだということの要請であります。
48:00-49:04 (毎日新聞 須田)もう一点、博士論文のもとになっているティッシューエンジニアリングパートAや小保方さんが筆頭著者になっているネイチャープロトコールなどについても疑義が指摘されている。小保方さんが早稲田大学に在学中に発表した論文なので早稲田大学が調査する義務があると思うが調査はされていないのか、その理由は。
2:19:00-2:28:04 日本経済新聞 古田。(博士論文の根拠になったTissue Engineering誌の論文の疑義に関して調査をしない)早稲田大学というのはいったい科学の研究機関なのでしょうか?
2:32:15-2:38:15 Tissue Engineeringの論文で科学の部分は担保されたと考えているのか?2点目、ハーバード大学に調査を依頼するなどの連絡をとったのか?

学位論文の修正が不十分であったと早稲田大学が判断した理由として、博士論文のもととなった米国雑誌 「Tissue Engineering Part A」に掲載された論文(Obokata et al., 2011)の内容との不一致が挙げられています。そうであれば、Tissue Engineering Part A論文における研究不正の有無を早稲田大学が調査しないのも不可解な話で、記者会見でも記者らがその点を追及しています(上の動画48:00-、2:19:00-、および2:32:15-)。

小保方氏の学位論文について具体的には、「論文中にコピー&ペーストした箇所があったこと、企業Webサイトからの写真の盗用があったこと、参考文 献情報が適切に掲載されていないこと、科学的根拠・論理性に乏しかったこと、以上の4点に問題があった」とし、再指導によって改訂稿ではコピー&ペースト や写真の盗用が行われている箇所の修正・差し替えが行われたというが、やはり「科学的根拠、および論理性が不十分」であったという。

その詳細について同大学は「現在提出されている博士論文自体は途中稿なので、コメントは差し控える」としたが、博士論文のもととなった米国雑誌 「Tissue Engineering Part A」に掲載された論文の内容との不一致があったこと、実験手順などの記述が不足していることなどがあったとした。
小保方氏学位論文取消しについて「科学的根拠、論理性に問題」 – 早稲田大 マイナビニュース 周藤瞳美 2015/11/03

早稲田大学の今回の決定に対して、小保方晴子氏は不満の意を表明しています。

2015年11月2日

小保方晴子

私は、学位論文について、実質的な審査対象論文と異なった初期構想時の論文を誤って提出したことに対し、論文訂正と再度の論文指導を受 ける機会を与えて頂きました。このため、大学設置の調査委員会によって指摘された問題点をすべて修正して論文を再提出したところ、このたび、前回の授与時 判断と異なった結論を出されました。

昨年、総長からは、指導過程および学位授与の審査過程に重大な不備・欠陥があったとの理由から、猶予期間を設けて論文訂正と再度の論文 指導を受ける機会を与えるとし、これが適切に履行された場合には取り消さず学位を維持する、とのご決定を戴きました。私はこれに従い履行したにも関わらず の今回の決定には失望しています。

このような経緯の下での今回の判断は、総長のご決定の趣旨及びその背景にある大学調査委員会報告書のご意見に大きく外れるものであり、学位規則の取消要件にも合致しないものであると思います。

前回の学位授与は、私の在学中に研究活動を指導し研究の進捗状況等の報告をさせて頂いていた教官の先生方らによって、正式な審査過程を 経たうえで授与されたものです。しかし、今回の同じ研究科における再度の審査過程では、今回の修正論文は博士に値しないとされることは、前回の授与時判断 と大きくかい離する結論であり、指導過程、審査過程の正当性・公平性について大きな疑問があります。

今回は、修正論文提出前から、担当教官によって、「今回は合格する可能性はとても低い」と伝えられ、不合格の理由においても、審査教官 から「博士として認めることのできないのは一連の業界の反応を見ても自明なのではないか」とのコメントがあり、学術的な理由とはかけ離れ、社会風潮を重視 した結論を出されたことは明らかです。また、今回の修正作業は、入院中、加療中での修正作業となり、思考力・集中力などが低下しており博士論文に能力を発 揮できる健康状態ではないとの診断書を大学に提出しておりましたが、ほぼ6年前の米国に保存されている研究資料を提出することなどを求められ、しかも厳し い時間制限等が課されるなど、心身への状況配慮などは一切なされず、むしろそれが不合格の理由にも採用されました。

修正論文提出後、「審査教官とのやり取りは始まったばかり」との説明を受けましたが、一回のやり取りだけで不合格の判定をされ、それに 対する私の意見も聞く耳を全く持って頂けない状況でした。これでは、当初から不合格を前提とした手続きであり、とても不公正なものであったと思います。こ の点については、大学にも改善をお願いしましたが、残念ながら聞き入れて頂けませんでした。

博士論文の骨子となる内容はSTAP研究の足掛かりとなった研究成果であり、理研で行われた検証実験においても一定の再現性が認められているものです。

博士論文執筆当時、この研究が広く役立つ研究に成長していく事を夢見て日々を過ごしていました。私の研究者の道は不本意にも門が閉じら れてしまいましたが、いつか議論が研究の場に戻る日を期待し、今回の再提出した博士論文や関連するデータは年度内をめどに随時公開して参る所存です。

以上
小保方さん「早稲田大学の決定はとても不公正」博士号「取り消し」にコメント(全文)弁護士ドットコム 2015年11月02日

 

参考

  1. 小保方氏の博士論文に関する早稲田大学記者会見 島田さんによる文字おこし TOGETTER
  2. <STAP細胞問題>小保方氏の博士論文取り消し でも早稲田大学の責任は? (THE PAGE 粥川準二 2015.11.03):”… 以上を理解する限り、研究機関としての早稲田大学は、研究や論文のどの部分に責任を持っているのかが曖昧なままです。”
  3. 早大:小保方氏の博士号取り消しへ 再提出論文で判断 (毎日新聞 2015年10月30日):”小保方氏は博士論文に盗用や不適切な記述があると認定され、大学の指示で再提出したが、学内の審査委員会が検討した結果、博士号取り消しが妥当と判断したとみられる。”
  4. 早大 小保方さんの博士号取り消しへ 猶予期間の延長認めず (スポニチアネックス2015年10月31日):”早稲田大は30日までに、STAP細胞を発見したと主張した理化学研究所の元研究者、小保方晴子氏の博士号を取り消す方針を固めた。…関係者によると、小保方氏側は猶予期間の延長を求めたが、認められなかったという。”
  5. 「小保方晴子氏の博士学位論文に対する調査報告書」に対する早稲田大学大学院先進理工学研究科 教員有志の所見 2014年7月24日:”1. Tissue Engineering 誌論文におけるデータの改竄疑惑への言及が存在しない点 科学研究論文において,データの信頼性を損なう改竄・捏造が致命傷であることは,改めて言うまで もありません。しかし,博士論文のもととなっているTissue Engineering 誌の論文には,明白と言ってよい画像の改竄(報告書における「実験結果欺罔行為」)が認められています。具体的には,Tissue Engineering 誌論文の図2、図3、図4 に電気泳動写真が掲載されていますが,まったく異なる遺伝子群の発現パターンに関して,同じゲルの写真を上下反転したり,一部切り抜いて流用したりすると いった改竄・捏造が既にネット上でも指摘されています。このうち,図3 は,博士論文においても図16 として採録されています。Tissue Engineering 誌の図3 は,ネット上での指摘を受け,責任著者のVacanti 教授によって,改竄が指摘された4 つの遺伝子群のデータを削除する形で修正(correction)されています。その理由は,「類似した見かけのデータを,複数の著者が編集したために起 きた過失」とされています。しかしながら,同様の図の改竄は,多くの場合Correction で済むものではなく,様々な科学論文誌においてRetraction(論文撤回)の対象となってきました。実際の写真を検討すると,「過失」というレベル ではないことは明らかで,学位取り消しの条件である「不正の方法」に相当するのではないかとの疑義があります。にもかかわらず,調査報告書では,「そもそ も博士学位論文の条件として査読付き欧文論文が前提となっており,このTissue Engineering 誌論文には修正がなされていること」を理由にデータの意図的な改竄(調査報告書に言う実験結果欺罔行為)には該当しないと結論付けています。しかしなが ら,Tissue Engineering 誌において,Vacanti 教授は強い影響力を持つと推測されるFounding Editor であり,軽微な「過失による修正」にとどめている編集方針には疑義があります。したがって,この論点については改めて独自の調査がなされてしかるべきと考 えます。”
  6. 調査報告書 早稲田大学大学院先進理工研究科における博士位論文関す調査委員会 平成 26 年 7月 17 日 (PDF 82ページ)
  7. ”アイデア&データの盗用、実験しなくても論文になる、事実の捏造、研究妨害、広報やネットと連携させた情報操作は、早稲田バイオサイエンスの『文化』と思っています。気の毒なことに彼女はその中で育ったのだと思います。実験のための基礎研究教育も極めて不十分です。特にTWInsには、そういった研究者が多く、『科学者の行動規範を纏めたシンガポール宣言』が出された、もとのもとのもとをたどれば、早稲田大学理工、化学科と生命医科に行き着きます。…”(尾崎 美和子  2014年3月10日
  8. 小保方晴子氏、早稲田大学博士号取り消しに1年間の猶予期間 (2014年10月13日投稿記事)
  9. 早稲田大学 先進理工学研究科有志教員が「小保方氏博士論文の調査報告書に対する所見」を公開(2014年7月24日投稿記事)
  10. 早稲田大学が、小保方晴子氏の博士論文に関する調査書を公開(2014年7月19日投稿記事)
  11. ハーバード大学バカンティ教授らがデータ捏造疑惑論文(Obokata et al., 2011)を「訂正」(2014年3月19日投稿記事)

STAP細胞の存在を否定するNATURE2論文

小保方氏らによる2報のSTAP細胞NATURE論文は既に取り下げられていますが、STAP細胞は存在しなかったと結論付ける2つの報告がNATURE誌に掲載されました。一つは日本の理化学研究所によるもの。他方はハーバード大学を中心とした研究グループによるものです。

STAP cells are derived from ES cells. Daijiro Konno,Takeya Kasukawa,Kosuke Hashimoto,Takehiko Itoh,Taeko Suetsugu,Ikuo Miura,Shigeharu Wakana,Piero Carninci & Fumio Matsuzaki. Nature 525,E4–E5(24 September 2015) doi:10.1038/nature15366. Received 23 January 2015,Accepted 20 July 2015,Published online 24 September 2015

Failure to replicate the STAP cell phenomenon. Alejandro De Los Angeles, Francesco Ferrari, Yuko Fujiwara, Ronald Mathieu, Soohyun Lee, Semin Lee, Ho-Chou Tu, Samantha Ross, Stephanie Chou, Minh Nguyen, Zhaoting Wu, Thorold W. Theunissen, Benjamin E. Powell, Sumeth Imsoonthornruksa, Jiekai Chen, Marti Borkent, Vladislav Krupalnik, Ernesto Lujan, Marius Wernig,  Jacob H. Hanna, Konrad Hochedlinger, Duanqing Pei, Rudolf Jaenisch, Hongkui Deng, Stuart H. Orkin, Peter J. Park  & George Q. Daley. Nature 525, E6–E9 (24 September 2015) doi:10.1038/nature15513. Received 10 November 2014, Accepted 22 July 2015, Published online 24 September 2015

参考

  1. <STAP細胞>133回の再現実験ですべて作れず(毎日新聞 9月24日(木)2時0分配信):”STAP細胞論文の研究不正問題で、米ハーバード大のグループなどが計133回の再現実験ですべてSTAP細胞を作れなかったとの報告を、24日付の英科学誌ネイチャーに発表した。理化学研究所も「STAP細胞はES細胞(胚性幹細胞)由来だった」との試料解析結果を報告した。”

STAP細胞論文研究不正の後始末にかかった費用

STAP細胞論文で研究不正行為が確定した小保方晴子氏(31)に対して理化学研究所が論文掲載料60万297円の返還を請求していましたが、7月初めに小保方氏の代理人が返還に応じる意志を伝え、2015年7月6日に入金が確認されたそうです。

英科学誌ネイチャーの論文掲載料合計60万297円の内訳は神戸新聞によれば、

アーティクル:32万3948円
レター論文:27万6349円

ちなみにSTAP細胞論文問題で理化学研究所が論文不正の調査や検証にかけた一連の経費の総額は8360万円に上るそうです。その内訳は今年3月の毎日新聞の記事によれば、

二つの調査委員会          940万円
保存試料の分析          1410万円
検証実験(実験室整備費など含む) 1560万円
検証実験の立会人旅費        180万円
自己点検検証委員会          80万円
改革委員会             400万円
メンタルケア            200万円
広報経費(記者会見会場費など)   770万円
法律事項など専門家への相談    2820万円

また、理研が小保方氏に支給した研究費は約2年間で約4600万円とのこと(読売新聞)。

結局、「約1億3千万円+本人の給与」という金額が、「STAP細胞」というアイデアに費やされたことになります。

研究費4600万円を使って研究不正行為を働いても、論文掲載料60万円しか返さなくて良いという、現在の日本の研究不正処理が果たして妥当なものなのかは、議論が望まれます。

② 日米ともに、捏造、改ざん、盗用を研究不正と定義しており、表面的には同じように
見えるが、米国は研究計画の申請から研究成果の発表までを対象としているのに対して、
文部科学省の研究不正ガイドラインは研究成果の発表のみを対象としている。そのため、
特に改ざんの定義は異なったものになっている。
③ 日本では、米国の研究不正規律ではみられない再実験を、研究不正の調査方法として
位置づけているが、論理的にも現実的にもその有効性には疑問がある。

⑤ 日本では、研究者の倫理観や行動規範の立場から研究記録の保存を求める傾向がある。
米国では、研究記録の不存在は、研究不正の定義に基づき改ざんであり、かつ故意性の
証拠とされる。この違いは、研究不正を研究発表の段階に限定するか否かの違いに由来
する。…我々は研究不正を適切に扱っているのだろうか

 

参考

  1. STAP論文:不正問題 調査に8360万円 理研、突出した代償に (毎日新聞 2015年03月21日):”STAP細胞論文問題で、理化学研究所が論文不正の調査や検証にかけた一連の経費が総額8360万円に上ったことが分かった。”
  2. 小保方氏が論文掲載料の返還請求に応じる 理研口座に60万円 (スポニチ Sponichi Annex2015年7月7日):”小保方氏の研究費について理研は、実際に実験は行われ、不正に使われたとは言えないとしており、請求の対象は論文掲載料に限定した。STAP問題では検証実験や調査費用などに4千万円近くかかったが、規定などを理由に理研が負担した。”
  3. STAP細胞問題 小保方氏が論文掲載料60万円返還 (神戸新聞2015/7/7):”理化学研究所は7日、STAP細胞論文で研究不正行為が確定した小保方晴子氏(31)が、論文掲載料約60万円の返還請求に応じ、理研が指定した口座に全額入金したと発表した。”
  4. 小保方氏、STAP論文掲載費60万円を返還 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2015年07月07日):”STAP細胞の論文不正問題で、理化学研究所は7日、4件の不正があったと認定した小保方晴子・元研究員から、論文掲載費約60万円の返還を受けたと発表した。”
  5. 小保方晴子ユニットリーダーの研究費は5ヵ年契約で1億円
  6. 【追悼】笹井芳樹(1962- 2014)
  7. 我々は研究不正を適切に扱っているのだろうか(下) ―研究不正規律の反省的検証― (国立国会図書館デジタルコレクション PDFリンク)

小保方晴子氏の「STAP細胞」にES細胞が混入していた件で、何者かがES細胞を若山研から盗んだとする告発状を兵庫県警が受理 捜査へ

あのSTAP現象とは一体何だったのでしょうか?科学的には、STAP細胞の正体はES細胞だったという結論に落ち着きました。

しかし、STAP細胞事件は全く終わっていません。ES細胞を若山研究室から持ち出して小保方晴子氏の冷凍庫に保管し、小保方氏が培養する「STAP幹細胞」のシャーレに混入させた人間は一体誰か?という一番肝心な疑問が残っています。

研究室の出入りは厳重には管理されておらず誰でも出入り可能だったとはいえ、実験内容や実験スケジュールを熟知している人間でないかぎり培養中の細胞への混入を行うことなどはまず不可能でしょう。

日本のサイエンスの信頼回復のためには犯人の特定が必要だとして、容疑者不詳の窃盗容疑の告発状が兵庫県警に提出され、受理されました。

複数の報道内容を合わせると、今回の告発状を提出していたのは元・理化学研究所研究員の石川智久氏で、告発に至った動機を以下のように語っています。なお、今回2015年5月14日付けで受理された告発状の内容は「容疑者不詳の窃盗」ですが、2015年1月の段階では、当時の報道によれば、小保方晴子氏を告発の対象にした文面になっていました。

以下の動画はおそらく2015年1月の頃の内容です。


2:33 (なぜ告発を?)

まじめに研究している研究者は今回のことは許しがたいと思っていると思うので。

かといって、研究者が犯人探しができるかというとできないし、それと、学術界が、これまで調査委員会がいろいろ調べた結果、いいところまでいったけど最終的に犯人の特定はできなかったということで。で犯人を特定するためには警察の介入が必要であろうということが考えられるので。やはり白黒明確にするしかないだろうと。じゃあ、誰がやるの?と。私しかないでしょう。

それはどういうことかというと、大学教授といえども被雇用者です。国家公務員、準国家公務員ですよね。そうすると、学長に対して、私が告発してもいいでしょうかと言ったら大学のほうから絶対にストップが来るでしょう。あるいは理化学研究所の中の研究員がいくらやろうと思ったって理化学研究所ははそれを承諾しないでしょう。そうなってくると誰がやるのか?一般市民がやっていいの?と。一般市民は知識がないのでそれはできない。私はたまたま去年の3月31日まで理化学研究所の研究をしてましたから内部の状態もよく知ってますし。

日本の社会から、正義が今失われていることを危惧していまして。やはり今回の件に関しては社会正義というものを守らなくちゃいけない。それと同時に日本の学術的な、研究の信用をもう一度復活させなくてはいけない。もしここで犯人を特定しなかったならば、ここ20年ぐらいは日本の学術界はは国際的な信用を失うことになるだろうと。…ベル研究所のヘンドリック・シェーンの場合にはきちんと裁判にも持っていったというのもあります。今回もきちんとそれをやらないといけないだろう。

この動画も2015年1月の時点での内容です。

小保方晴子氏への理研OBの刑事告発に対し、小保方氏の代理人・三木弁護士が反論!

参考

  1. STAP問題 告発状を警察が受理 (毎日放送 MBS NEWS):”告発状は今年1月に理研の元研究員の石川智久氏が提出していました。”
  2. STAP不正、窃盗容疑の告発受理…容疑者不詳 (読売新聞 YOMIURI ONLINE 2015年05月15日):”告発状などでは、理研の旧「発生・再生科学総合研究センター」(神戸市中央区)で2013年3月までの間に、小保方晴子・元研究員(31)が当時所属していた研究室から、何者かがES細胞入りのチューブ80本を盗んだとしている。”
  3. <STAP問題>ES細胞の窃盗容疑で告発受理 兵庫県警 (ヤフーニュース/毎日新聞 5月15日):”STAP細胞論文問題で、論文の共著者である若山照彦・山梨大教授(当時、理化学研究所チームリーダー)の研究室からES細胞(胚性幹細胞)が盗まれたとして、理研OBの男性が容疑者不詳で窃盗容疑の告発状を提出し、兵庫県警が受理したことが15日、明らかになった。…県警によると、受理は14日付。横浜市の理研研究所で上級研究員だった男性(60)が今年1月に告発状を提出していた。”
  4. ES細胞持ち出し混入の疑い 告発状受理 (NHKWEB 2015年5月15日):”STAP細胞の問題では、理化学研究所が、実際には別の万能細胞のES細胞だったと結論づけていますが、これを受けて研究者から警察に提出されていた告発状が受理されていたことが分かりました。”
  5. ES細胞を盗んだ?「刑事告発」された小保方さん――警察はどう動くのか(ヤフーニュース/弁護士ドットコム 2月2日):”STAP論文の筆頭著者である小保方晴子・元理化学研究所研究員が、既存の万能細胞であるES細胞を盗んで「STAP細胞」と偽った疑いがあるとして、刑事告発された。元理研上級研究員の石川智久氏(60)が1月下旬、兵庫県警に告発状を提出したのだ。…今回の告発状の提出を受けて、小保方氏の代理人をつとめる三木秀夫弁護士は「小保方氏がES細胞を窃盗したという事実はなく、その動機もない。告発状の内容は事実に反している」とコメントしている。”
  6. 窃盗で小保方氏を告発した石川博士「名誉毀損?受けて立つ」(東スポWeb 2015年01月28日):”…STAP細胞論文の不正問題に関連して、理化学研究所の元研究者で理学博士の石川智久氏(60)が26日、同論文の主著者で元理研研究員の小保方晴子氏(31)が研究室から胚性幹細胞(ES細胞)を盗んだとして、窃盗容疑での告発状を兵庫県警に提出した。県警は受理するか否かを慎重に検討する。…石川氏は言う。「小保方氏は当時、ハーバード大学のバカンティ教授の博士研究員として主な籍を置き、理研へは客員として出向している立場だった。A社から出向している人物がB社の物を盗んだとなれば、B社の知的財産を盗んだということになります。小保方氏もこれと同じ」…現段階で石川氏の告発状は兵庫県警に受理されていない。「(受理されるまで)これから半年、1年かかるか分からない。告発状を警察が用意したフォーマットに書き直したり、分かりにくい部分について警察から説明の要請があると思うので、真摯に応えていく。私のこの告発の究極のゴールは立件まで持っていくこと。先々は詐欺罪、横領罪まで進むべき。国民の税金が無駄に使われた実験なので、厳しく追及していかなくてはならない」”
  7. 窃盗容疑で小保方晴子氏を刑事告発へ(東スポWeb 2015年01月24日):”告発状に添付される証拠は、小保方研究室にあった「2つの箱」に入っていた「チューブ」の写真。1つ目の箱のチューブにはES細胞が入っていた。2つ目の箱のチューブには「STAP幹細胞」と書かれているものがあったという。だが、その中身はES細胞など別の細胞が入っていたという。”
  8. 小保方氏保管の「STAP細胞」はES細胞 理研外部調査委員会報告書と記者会見の模様【FULL動画】

加藤研の博士号取得者3人の学位を取り消し

東京大学は2015年(平成27年)3月27日に記者会見を行い、研究不正を認定した学位取得者6人のうち、不正行為が学位研究の結論に重大な影響を及ぼす3人に関して学位を取り消すと発表しました。

参考

  1. 「東京大学分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における論文不正に関する学位請求論文の調査報告」(平成27年3月27日 東京大学):学位授与取消しの措置の概要(PDFリンク)
  2. 東大、3人の博士号取り消し 論文の捏造や改ざん認定(朝日新聞DIGITAL 2015年3月27日):” 取り消されたのは、加藤元教授の研究室で2005~07年に博士号を取得した元大学院生の金美善、藤木亮次の両氏と、企業研究者の古谷崇氏。…博士論文に不正が認定された元大学院生らはほかに3人いたが、不正の程度や分量、論旨への影響などを踏まえ、取り消し基準に該当しないと判断した。。”
  3. 東大不正論文:3人の博士号を取り消し(毎日新聞 2015年03月27日):”東大によると、大学から博士号を取り消されたのは、当時大学院生だった藤木亮次元助教ら3人で、「捏造や改ざんをしたと認定された図が博士論文の結論に重要な影響を与える」と判断し、取り消しを決めた。…残り3人は「不正の程度が軽く、論文の結論に影響しない」などとして取り消さないという。”
  4. 3人の博士号取り消し=東大の論文不正で(アメーバニュース/時事通信  2015年03月27日):”東大は、3人は自ら改ざんを行っており、論文で画像が果たした役割も大きかったと認定し、学位を取り消した。他の3人については不正の程度が軽いなどと判断した。”

熊本大と大阪市立大が光山研10論文を不正認定

2015年12月27日追記:

熊本大は25日、平成10~24年に発表した論文9本に画像の流用などの不正が見つかった研究グループを主宰する同大大学院生命科学研究部の光山勝慶教授(58)を、停職1カ月の懲戒処分にした。研究不正で教授停職1カ月 熊本大、論文の画像流用 産経WEST 2015年12月25日)

* * *
光山勝慶研究室から出た9報の論文(熊本大学において執筆された論文2報、大阪市立学において執筆された論文 7報)に関して不正の申し立てがなされていたのを受け、熊本大学と大阪市立大学が合同で調査を行った結果、これらのうち8本の論文において光山教授らによるデータ捏造・改竄などがあったとして研究不正と認定しました。光山教授が責任著者にはなっていない1報に関しては、光山教授らの関与は認められないが捏造の疑義があることを認めています。

さらに、光山教授の他の論文272報(熊本大学において執筆された論文 126 報、大阪市立学において執筆された論文146報)も念のため調べた結果、1報の不正を認定しました。これらをあわせて、10報での研究不正が認定されたとする報告を2015年3月20日、熊本大学のウェブサイト上で公表しました。

この論文不正の疑義申し立ては一昨年、平成25年5月23日付けの文書により行われていました。その申し立てに基づいて調査が行われた結果、2年近くかかりましたがようやく今回の発表となったものです。

この報告書では、筆頭著者7名と光山教授が直接不正に関与したと断定しています。不正行為の判定においては、故意性の評価が分かれ目になりますが、

”生データが存在しない、又は生データが存在するにも関わらず、他の画像を流用したことについて合理的な説明が無いなど、過失であると主張するには十分な反証がなされなかった。”

という判断が下されました。7名の筆頭著者と教授本人が直接不正に関与したということですから、研究室ぐるみの組織的な捏造体制ができていたのでしょうか。

光山教授は、”再実験を行い研究の正当性を立証した”そうですが、仮に再現実験が成功したところで、研究不正の事実が消えるわけではありません。不正行為があったかどうかという議論と、実験結果が正しかったかどうかという議論とを、まぜこぜにすべきではありません。

熊本大学・大阪市立大学がデータ捏造・改竄などの研究不正を認定した光山勝慶教授の論文リスト

  1. Yamamoto E, Kataoka K, Dong YF, Koibuchi N, Toyama K, Sueta D, Katayama T, Yasuda O, Ogawa H, Kim-Mitsuyama S. Calcium channel blockers, more than diuretics, enhance vascular protective effects of angiotensin receptor blockers in salt-loaded hypertensive rats. PLoS One. 2012;7(6):e39162. doi: 10.1371/journal.pone.0039162. Epub 2012 Jun 14.
  2. Koka et al., Advanced Glycation End Products Activate a Chymase-Dependent Angiotensin II–Generating Pathway in Diabetic Complications. Circulation.2006; 113:1353-1360 (注:この論文に関しては、光山教授は責任著者ではなく不正への関与は認められないという判断)
  3. Wake et al., Beneficial Effect of Candesartan on Rat Diastolic Heart Failure.Journal of Pharmacological Sciences. Journal of Pharmacological Sciences Vol. 98 (2005) No.4 P372-379
  4. Yoshida et al., Excess Aldosterone under Normal Salt Diet Induces Cardiac Hypertrophy and Infiltration via Oxidative Stress. Hypertension Research (2005) 28, 447–455
  5. Izumiya et al., Apoptosis Signal-Regulating Kinase 1 Plays a Pivotal Role in Angiotensin II–Induced Cardiac Hypertrophy and Remodeling. Circulation Research. 2003; 93: 874-883
  6. Kawano et al., Differential Contribution of Three Mitogen-Activated Protein Kinases to PDGF-BB-Induced Mesangial Cell Proliferation and Gene Expression. Journal of the American Society of Nephrology  March 1, 2003 vol. 14 no. 3 584-592
  7. Izumi et al., Important Role of Angiotensin II–Mediated c-Jun NH2-Terminal Kinase Activation in Cardiac Hypertrophy in Hypertensive Rats. Hypertension. 2000; 36: 511-516
  8. Yano et al., Differential Activation of Cardiac c-Jun Amino-Terminal Kinase and Extracellular Signal-Regulated Kinase in Angiotensin II–Mediated Hypertension. Circulation Research. 1998; 83: 752-760
  9. Izumi et al., Cardiac Mitogen-Activated Protein Kinase Activities Are Chronically Increased in Stroke-Prone Hypertensive Rats. Hypertension. 1998; 31: 50-56
  10. Yamamoto et al., Novel Mechanism and Role of Angiotensin II–Induced Vascular Endothelial Injury in Hypertensive Diastolic Heart Failure. Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology. 2007; 27: 2569-2575 (注:申し立ての対象外だが追加調査により判明)

参考

  1. 研究活動上の不正行為について(熊本大学 平成27年3月20日 熊本大学長 谷口 功):”平成25年5月28日付文書により、本学に対して、現在、大学院生命科学研究部(基礎系)生体機能薬理学に所属し、元大阪市立大学大学院医学研究科分子病 態薬理学所属の光山勝慶教授の研究室で執筆された9論文について、研究上の不正の疑いがあるとの申立書が提出されました。このため、本学をとりまとめ機関とし、申し立てられた論文9報について大阪市立大学と合同で調査を行ったところ、8報の論文において不正行為が行われたと認定されました。加えて、光山教授の研究グループが投稿した論文272報について確認したところ、1報の論文に新たな疑義が生じ、調査の結果、研究活動上の不正行為があったと認められました。”
  2. 【お詫び】元 本学教員(現熊本大学教授)の研究活動上の不正行為について 大阪市立大学理事・副学長(研究担当)宮野道雄 (大阪市立大学 平成27年3月20日)
  3. 熊大教授が9論文で不正と大学が発表(日本テレNEWS24 3/20 熊本県民テレビ):”光山教授は、「再実験を行い研究の正当性を立証し、調査委員会にも説明しているが、一方的に不正と判断されたのは到底承服できない」と主張している。光山教授は、「中立性を欠いた結論」として大学に異議申し立てを行う方針だ。”
  4. 光山勝慶グループ 論文疑惑まとめ (http://kim-mitsuyama-shokei.blogspot.jp/ 2013年5月18日):”熊本大学、大阪市立大学、文部科学省に調査を依頼しました。”

画像類似論文の告発 東大、阪大などが確認へ

読売新聞の報道によれば、先日匿名でネット上で列挙されていた「類似」画像データを含む論文84本、研究者47人に関して、文科省宛に文書でも告発がなされました(ちなみに文科省へ告発したのは匿名A氏とは別の方のようです)。問題が指摘された論文は1996~2007年のものですが、この期間に限定する理由は全くないわけで、後からあれも、これもと出てこないように最新の論文まで全て調査してもらいたいものです。

PubPeer (pubpeer.com)という、発表された論文の内容に基づいて世界中の研究者がサイエンティフィックな議論を行うウェブサイトがあります。このウェブサイトで、日本人の苗字や名前、日本人研究者が取り組んでいる有名な遺伝子名などをキーワードにして検索すると、「類似画像データ」を指摘するコメントが付いた論文が山ほどヒットしてしまい、非常に残念な状態になっています。類似画像の指摘に対して著者からの説明が返ってきていない論文に関しては、データをどの程度信頼してよいのかどうかがわからないため、サイエンティフィックな議論のしようがありません。

参考

  1. 東大・阪大の論文に「使い回し」…文科省に告発(読売新聞YOMIURI ONLINE 2015年01月13日)
  2. PubPeer (pubpeer.com)
  3. 11jigen (TWITTER)
  4. 私の指摘が告発に当たるかどうかについては、読み手の解釈に委ねた方が各方面にとって 好都合ではないかと思い、今後指摘される方にとっても良いのではないかと思い、単なる類似性の指摘であるという立場を私自身は取ることに最終的にしまし た。実際に、similarと書いているだけなのです。また、うっかりミスで済みそうと私が思うものも指摘していますから、私は告発のスタンスは取れませ ん。告発のスタンスを取るのであれば、もう少し論文は絞ったでしょう。ただ、不正指摘として世に受けとめられたのは事実のようであり、方策を検討していま す。なお、文科省に文書で告発したのは私ではありません(私は関係ないと言いたいわけではありません)。…”(http://www.peeep.us/aae06dcf)

酷似する画像を含む生命科学論文が インターネット上で大量に指摘される

追記 20170205 2015年にネットで公開されていた、画像データの類似性を解説したPDFファイル r3hso.pdf (https://t.co/zfttZKmgZr)。
追記 関連記事
⇒ 東京大学が類似画像論文に関する予備調査結果を発表: ”不正行為が存在する疑いはない”論文12報のリスト
⇒ 大阪大学、類似画像データ論文の調査を打ち切り 本調査を行わないことを決定

——–

日本分子生物学会2013年年会組織委員会がシンポジウム「生命科学を考えるガチ議論」のための準備としてウェブ上に設置した議論用のサイトで、「日本の科学を考える」(http://scienceinjapan.org/)というものがあります。このウェブサイト上で、年末年始の数日間の間に、異なる実験結果に同一画像データが使いまわされている可能性のある「画像酷似論文」が大量に指摘されました。NATUREを筆頭に、NATUREの姉妹紙など一流の雑誌を含めて、全部で84報に上ります。「捏造問題にもっと怒りを」の記事のコメント欄を利用して書き込まれました。

画像酷似論文の指摘を行った匿名A氏は、このウェブサイト「日本の科学を考える」を選んだ心情を吐露しています。

申し訳ありませんが、やはり、投下させてください。
このサイトを使わせてください。
このガチ議論スタッフは、科学の世界の王になるべき人達です。
情報や権限を持つべき人です。
わたしは2ちゃんねるではなく、ガチ議論スタッフに科学の未来を委ねたいと思います。
すなわち、科学の世界に生きる私自身を、2ちゃんねるではなくガチ議論スタッフに委ねたいということです。

わたしは、捏造に本当に苦しんだ人間です。
前任者の捏造が何を現場で生むか、知っています。
現場を本当に救うのはどんな人か、知っています。
そのような人でなければこのサイトは作れないことを、知っています。

膿みは、今出すべきです。
STAPと分生研が終わって一段落なんて雰囲気は許しません。

それに、東大の事例を考えるに、コピペがあっても半分近くは不正ではない。
さらにその半分くらいは実行犯がわからない。
コピペの指摘はそこまで重いものではないということです。

ストックは82報になりました。コレスポ53人。
旧帝を全部揃えることも出来ました。
最近疎かだった同じ著者について掘り下げることをまた始めます。100はすぐ超えて、悪質なグループだけに投下を絞ることも出来るでしょう。

匿名A氏は、ここで指摘された論文の著者らが直ちに実験ノートを公開すれば画像が酷似していることに関する疑問も氷解するであろうと期待しています。

以下、80報ほどの類似画像を含む論文を記載しました。(中略)トータルで100報にはなりました。(中略)全 部当然生データが直ぐに公開され、石井先生のようにうっかりミスと納得できますように。私は石井先生のすぐ公開されたノートを見て、石井先生はしっかりし た先生だと思いました。私の中の石井先生の評価は非常に上がりました。他にもそう思った人は少なくないはずです。私が論文を紹介した他の先生についても評 価が上がることを心から強く願っています。この気持ちは嘘ではありません。

匿名A氏の説明によれば、特定の個人を告発する意図で調べたわけではなく、手当たり次第に調べてみたらこのような結果になってしまったようです。あまりの多さに途中で疲れて作業を切り上げてしまったそうなので、もしも網羅的に調査したら84報どころではなくなるかもしれません。特定の大学を告発する意図もなかったようですが、結果的に、画像酷似論文の多さに関しては大阪大学医学部が際立っていたそうです。

(中略)

・ 阪大医学部で、他の組織とは別次元のことが起きているのは確かなように感じました。各コレスポにつき最低3報を目標に探していたのですが、類似の著者陣でもコレスポが異なるケースが多く、しかも類似画像が瞬時に見つかる確率が高く、次々とノルマが増えていき、悲しくなりました。類似画像の世界では、3位ではなく、すでに1位ではないかと思います。3位ではダメと言う総長は、少し自らを過小評価しているかもしれません。(中略)

・ 調査の過程ですが、まず東大から探そうと思い、TokyoをキーワードにPubmed検索で探しました。探すのは何となく1998年から2004年くらい にしました。キーワードの関係上、東大以外の東京の研究機関も見つかりました。MedicalやMedicineで検索結果を絞ると見つかる確率が飛躍的 に上がることに途中で気づき、途中で絞りました。見つかった著者の他の論文も探しました。研究費返還の事務手続きを事務の方々がしなくて済むように、経理 書類の保存義務が過ぎているであろう2008年くらいまでの論文だけを探しました。次にOsakaをキーワードにして探しました。見つかる頻度が高すぎ て、バランスが悪くなると思い、ひとまず他の地域を探すことにしました。旧帝国大学で、それまでに見つかる論文数が多かったJBC誌とBBRC誌を 1998年から2004年まで探すことにしました。キーワードの関係上、旧帝国大学と同じ所在地の研究機関も見つかりました。見つかった著者の他の論文も 調べました。最後に大阪に戻り、再び探したのですが、見つかる頻度の高さに馬鹿らしくなり、やめました。大阪を終えたら次にOncogene誌あたりを全 部探してみようと思ってましたが、大阪の調査で精神的に疲れたので結局探していません。上記以外に、途中で気分転換にアディポネクチン等をキーワードにし て探したこともあったかもしれません。また、最終的に投下しなかった13報の論文がそのチームに気づくきっかけになった場合もあります。

「類似画像=捏造」とは限らないことに関して、匿名A氏は注意を促しています。

私は自分が指摘した類似画像を捏造だとは思っていません。
そもそも、私には捏造だと判定し処分する権利はありません。

理研の石井先生の疑惑を最初に見たときは、捏造だと私は内心思っていました。しかし、すぐに公開された実験ノートを見て、こんな複雑なうっかりミスもあるんだなと納得しました。(以下略)

匿名A氏が列挙した論文は以下の通りです。括弧内の但し書きは匿名A氏自身が後から追加したコメントの内容。

#1 Nature. 1998 Jan 1;391(6662):96-9. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1a. Lane 1 is similar to Lane 5. Lane 6 is similar to Lane 10.

#2 J Biol Chem. 2000 Mar 17;275(11):8091-6. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3A. Lane 3 is similar to Lane 8, 9, and 10. Fig 3B. Lane 1 is similar to Lane 2.

#3 Arch Biochem Biophys. 2001 Apr 1;388(1):91-9. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. Lanes 2-3 are similar to lanes 9-10. Fig 4B. Lanes 2-3 are similar to lanes 9-10.

#4 Diabetes. 2002 Oct;51(10):2915-21. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5. 18S of B is similar to that of C (horizontal flip).

#5 Nat Med. 2002 Jul;8(7):731-7. Epub 2002 Jun 17. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1b. +/- is partially similar to -/-. Fig 2. 18S of a is similar to that of b. Fig 5a. 28s of TNF-alpha(-) and Adiponectin(+) is similar to that of TNF-alpha(+) and Adiponectin(+).

#6 J Biol Chem. 2003 Jun 13;278(24):21344-51. Epub 2003 Apr 1. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5. Lane 2 is partially similar to lane3.

#7 Mol Cell Biol. 1996 Jun;16(6):3074-84. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 7C. Lane a is similar to Lane b.

#8 J Biol Chem. 2001 Nov 2;276(44):41245-54. Epub 2001 Aug 31. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4G. PIPs are similar to those of Fig. 5d in another paper (J Clin Invest. 2001 Oct;108(7):1001-13. #9 in this list.) The dates of revision and publication of this paper are earlier than the other paper. (#8は、どちらかといえば、The date of submission of this paper is later than that of #9. と書くべきでした。)

#9 J Clin Invest. 2001 Oct;108(7):1001-13. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 6b. The CD36 band in the lane HF is similar to the UCP2 band in the lane HF+BADGE (horizontal flip). The CD36 band in the lane HF+BADGE is similar to the UCP2 band in the lane HF+HX531 (horizontal flip).

#10 Nat Genet. 2002 Feb;30(2):221-6. Epub 2002 Jan 30. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 6. 28S in a (WAT) is similar to that of in d (BAT). 

#11 Biochem Biophys Res Commun. 2004 Oct 8;323(1):242-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. The control lanes are similar to the salicylate lanes. Fig 3B. p-Akt in Lane 3 is similar to that in Lane 7. p-Akt in Lane 5 is similar to that in Lane 6. Akt in Lane 4 is similar to that in Lane 6. Fig 4. Lane 5 is similar to Lane 7 (horizontal flip).

#12 J Biol Chem. 2001 Jul 20;276(29):27519-26. Epub 2001 May 24. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 6. E is similar to f. Fig 9. D is similar to e and f (enlarge).

#13 Exp Cell Res. 2002 Jan 1;272(1):23-31. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig7. Bone marrow cells of LZP is similar to those of CRP.

#14 Oncogene. 2002 Jan 24;21(5):844-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1b. These figures (HUVEC and ST2 cells) are similar to those of the COS7 cells in another paper (Fig. 6 in J Biol Chem. 2001 Jul 20;276(29):27519-26. #12 in this list.)

#15 Biochem Biophys Res Commun. 2002 Apr 26;293(1):332-7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1. The mice of 2 weeks are similar to those of 3 weeks (vertically enlarge).

#16 J Virol. 1999 Nov;73(11):9237-46. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5B. Some bands seem to be pasted in the figures. For example, lane 3 in the left SeV/mSF figure.

#17 J Virol. 2000 Jun;74(12):5619-28. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. In the upper figure, 4C(-) 20 is simiar to 4C(-) 26. Fig 2B. GAPDHs of Wt 14, Wt 38, 4C(-) 14, and 4C(-) 20 are similar.

#18 J Virol. 2001 Apr;75(8):3802-10. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4C. Y1+ is similar to Y2+.

#19 J Virol. 2002 Jul;76(14):7114-24. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4B. Y2.5+ is similar to Y3+.

#20 J Virol. 2004 Jul;78(14):7443-54. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5. STAT2 of None is similar to that of Cm5.

#21 J Virol. 2007 Apr;81(7):3264-71. Epub 2007 Jan 10. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4. In the most upper figure, Sev Wt 0 is similar to Sev Wt 6 in both 2fTGH STAT1(+/+) cells and U3A STAT1(-/-) cells.

#22 Biochem Biophys Res Commun. 2002 Aug 9;296(1):194-200. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3A. Lane 1 is similar to Lane2 for GluSyn.

#23 Biochem Biophys Res Commun. 2001 Nov 30;289(2):531-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1 and Fig 2. 18S rRNA of Lane 2 (monocytes) in Fig 1 is similar to that of Lane 2 (alpha-GalCer-imDCs) in Fig 2.

#24 Circ Res. 2004 Jun 11;94(11):1492-9. Epub 2004 Apr 29. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2 and Fig 3. E1A in the lanes 1-2 of Fig 2A is similar to that in the lanes 2-3 of Fig 3C.

#25 J Biol Chem. 2002 Apr 5;277(14):12351-8. Epub 2002 Jan 22. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1B. D is similar to g. Fig 3B. The right part of Myc-MST1 WT is similar to that of Flag-MST1 444P.

#26 J Biol Chem. 1999 Apr 23;274(17):11995-2000. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4. EDTA is similar to Fuc.

#27 J Biol Chem. 2000 Jun 9;275(23):17233-6. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2B. Input of 0-45 is similar to that of 90-180. Fig 4. ECT2-N1(-) 45 is simialr to ECT2-N1(+) 45.

#28 J Biol Chem. 2002 Dec 27;277(52):50966-72. Epub 2002 Oct 21. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2B and Fig 4C. The actin in Fig 2B is similar to that of Fig 4C (horizontally flip.) Fig 4C and Fig 5D. The six COX bands in Fig 5D is similar to six bands of actin in Fig 4C.

#29 J Biol Chem. 2001 Mar 23;276(12):9460-7. Epub 2000 Dec 19. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1B. In the lower figure, RET-2B is similar to RET-2B/LAR.

#30 J Biol Chem. 1999 Dec 31;274(53):38251-9. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. 37 degrees Celsius is partially similar to 30 degrees Celsius.

#31 Nucleic Acids Res. 2000 Mar 15;28(6):1355-64. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 7A. 18S rRNA of placenta is similar to that of mammary gland in another paper (Fig 2A in Mol Biol Cell. 1999 May;10(5):1637-52.)

#32 DNA Repair (Amst). 2007 Jun 1;6(6):760-9. Epub 2007 Feb 5. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5A. GAPDH of W in 5 weeks is similar to that of SP in 16 weeks.

#33 J Biol Chem. 2000 Aug 18;275(33):25146-54. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 6D. pMAPK of S10A is similar to that of WT-DMSO (horizontally flip). You can pay attention to the noise of the rim.

#34 J Biol Chem. 2002 Apr 26;277(17):14355-8. Epub 2002 Mar 11.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1B. Tubulin in cytoplasm is similar to that in whole cell.

#35 EMBO J. 2002 Dec 2;21(23):6312-20. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2C. p47phox is similar to p67phox.

#36 J Biol Chem. 2003 Jul 4;278(27):25234-46. Epub 2003 Apr 25. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3A. The two lower left cells are similar between wt and P156Q.

#37 J Biol Chem. 2003 Jun 20;278(25):22908-17. Epub 2003 Apr 7.  http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2. MRP11-116/MRP2 is similar to MRP11-1480/MRP2.

#38 J Virol. 1999 Oct;73(10):7981-7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1A. Lane 1 is similar to Lane 3 and 6. Lane 2 is similar to Lane 8. Lane 4 is similar to Lane 7.

#39 J Biol Chem. 2002 Jan 18;277(3):2132-7. Epub 2001 Oct 22. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2b. The FLAG band of GST-WT is similar to the GST band of WT-WT. Fig 3A. The left upper figure is similar to the left lower figure (horizontally flip).

#40 J Biol Chem. 2004 Jun 11;279(24):25474-82. Epub 2004 Mar 22. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5A. Lanes 8-9 are similar to lanes 12-13.

#41 Diabetes. 2003 Nov;52(11):2657-65. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3B. APS bands in GFP lanes seem to be pasted in. IR beta bands in GFP lanes are similar to those in APS(YF) lanes.

#42 J Biol Chem. 1999 Nov 5;274(45):32309-17. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4A. Lane 1 is similar to Lane 15 (horizontally flip). Lanes 12-13 are similar to Lane 16-17 (horizontally flip).

#43 J Biol Chem. 2000 Sep 1;275(35):26856-63. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 9C. Mock-transfected cell (-) is somewhat similar to Mutant probe (-). Mock-transfected cell oligo TRE is somewhat similar to Mutant probe Ang II.

#44 J Biol Chem. 2000 Feb 11;275(6):4369-73. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3. GAPDHs of Time 4, 5, and 6 are similar in PAO+. Fig 4. iNOS mRNA of Lane +-+- is similar to that of Lane +–+.

#45 Hepatology. 2000 Nov;32(5):1037-44. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3. 3h None is similar to 5h Hypo.

#46 J Hepatol. 2004 Apr;40(4):616-23. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4A. Phospho-Akt of 2h(-) is similar to that of 2h(+).

#47 Am J Physiol Endocrinol Metab. 2005 May;288(5):E876-82. Epub 2004 Dec 21. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4A. 28S and 18S in lanes 1-6 are similar to those in another paper (Fig 1A in Biochem Biophys Res Commun. 2004 May 14;317(4):1075-9.)
Fig 5A. In the adiponectin bands, Lanes 1-4 are similar to lanes 12-15. Lanes 6-7 are similar to lanes 9-10.

#48 Biochem Biophys Res Commun. 2001 Apr 27;283(1):255-9. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2. V/Vsp in lanes 1-3 is similar to V/Vsp in lanes 7-9, STAT1 in lanes 10-12, and STAT1 in lanes 13-15. IRF9 in lanes 10-12 are similar to that in lanes 13-15.

#49 J Virol. 2002 Dec;76(24):12683-90. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 8. In the Blot:FLAG, FL is similar to FLMT in the two middle lanes (vertically enlarge).

#50 J Biol Chem. 2003 Oct 24;278(43):41654-60. Epub 2003 Aug 13. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4. HSF-1s of OSC19-MP(mock) C and IFN in Fig 4A, from total cell lysate, are similar to those of OSC19 cytosol C and IFN in Fig 4C. HSF-1s of OSC19-MP(STAT-1) C and IFN in Fig 4A, from total cell lysate, are similar to those of OSC19-MP cytosol C and IFN in Fig 4C. (#50の説明の最後はFig. 4CではなくてFig 4Dでした。)

#51 J Med Virol. 2006 Apr;78(4):417-24. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2. GAPDH of RSV 5 is similar to that of inactivated SARS 1. GAPDH of FluAV 1 is similar to that of inactivated SARS 2. Fig 5. GAPDH of RSV 5 is similar to that of inactivated SARS 1. GAPDH of FluAV 1 is similar to that of inactivated SARS 2.

#52 Cancer Lett. 1999 Jul 19;142(1):23-30. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2B. hTERT of lane D is similar to that of lane F2.

#53 Leukemia. 2000 Jul;14(7):1260-5. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1b and 3b. hTERT of Fig 1b is similar to that of Fig 3b (horizontally flip).

#54 Biochem Biophys Res Commun. 2004 Apr 2;316(2):528-32. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1. 15 N is partially similar to 30 N.

#55 Cancer Lett. 2008 Mar 18;261(2):226-34. Epub 2007 Dec 21. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1. K562/hTERT 1 is similar to K562/hTERT 10.

#56 Cancer Res. 2006 Oct 15;66(20):9913-20. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4C. ADAM28 of Day3 is similar to that of Day 31 (vertically enlarge). Fig 5C. Lane 1 is similar to Lane 4.

#57 Biochem Biophys Res Commun. 2005 Mar 25;328(4):1232-43. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2. Two exon 3 figures are similar.

#58 Biochem Biophys Res Commun. 2000 Aug 11;274(3):603-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5. Two right lower bands in Fig 5A are similar to two left lower bands in Fig 5B.

#59 Biochem Biophys Res Commun. 2001 May 11;283(3):707-14. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3C. In the lower figure, the left four bands are similar to the middle four bands and the right four bands.

#60 Nat Cell Biol. 1999 Dec;1(8):479-85. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4a. Western(PS) of A246E is partially similar to that of delta E9.

#61 J Biol Chem. 2001 Jan 19;276(3):2108-14. Epub 2000 Oct 12. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1. Lanes N and H in Fig 1C are similar to Fig 1D.

#62 J Biol Chem. 2001 Nov 16;276(46):43446-54. Epub 2001 Sep 10. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1a and Fig 2a. Ten actin bands of Fig 1a are similar to those of Fig 2a.

#63 J Biol Chem. 2002 Apr 12;277(15):12931-6. Epub 2002 Jan 25. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3b. PY20 of Src is similar to Lysate of Src.

#64 Circulation. 2002 Jun 18;105(24):2893-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2. ERK of Fig 2C is similar to that of Fig 2D (horizontally flip, change brightness and contrast).

#65 J Biol Chem. 2002 Mar 8;277(10):8076-82. Epub 2002 Jan 4. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3. Cyclin D1 and actin of 694F are somewhat different with those of delta p85.

#66 J Biol Chem. 2005 Feb 11;280(6):4929-39. Epub 2004 Nov 24. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. Bcl-2 and actin of ED(-) are similar to those of ED(+).

#67 J Biol Chem. 2005 Apr 1;280(13):13163-70. Epub 2005 Jan 25. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5E. The left four lanes of CHO-B are similar to the right four lanes of CHO-B.

#68 J Biol Chem. 2001 Mar 30;276(13):9688-98. Epub 2000 Dec 14. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2C. Lane +— is similar to Lane +-+-. Fig 5B. Lane 1 is similar to Lane 3.

#69 J Biol Chem. 2001 Dec 14;276(50):47642-9. Epub 2001 Oct 10. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1B. Lane 2 is similar to Lane 4 (horizontally flip). Fig 5A. ERKs of lanes 1-4 are similar to those of lanes 5-8 (horizontally flip). Fig 7A. The upper two bands of pSG5 are similar to those of ER beta (horizontally flip).

#70 J Biol Chem. 2001 Feb 2;276(5):3459-67. Epub 2000 Oct 23. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 7B. pSG5 is similar to ER beta (horizontally flip).

#71 J Biol Chem. 2002 Sep 6;277(36):33490-500. Epub 2002 Jun 26. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1B. ERKs of lanes 1-3 are similar to those of lanes 4-6. Fig 3A. Lanes 1-2 of Caov-3 are similar to lanes 3-4 of Caov-3 (horizontally flip). Fig 4A. Lanes 1-2 of BAD are similar to lanes 3-4 of BAD. Fig 6B. Phospho-Raf of Lane 2 is similar to that of Lane 5.

#72 Endocrinology. 2004 Jan;145(1):49-58. Epub 2003 Sep 18. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3B. Akt of lanes 1-2 is similar to that of lanes 3-4.

#73 Clin Cancer Res. 2004 Nov 15;10(22):7645-54. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1D. Akt of lanes 1-2 is similar to that of lanes 3-4.

#74 Endocrinology. 2004 Mar;145(3):1302-13. Epub 2003 Nov 26. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 8B. Lane 1 of A2780 is similar to Lane 3 of Caov-3.

#75 J Biol Chem. 2004 May 28;279(22):23477-85. Epub 2004 Mar 16. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. Lanes 2-4 of actin are similar to lanes 6-8 of actin (horizontally flip).

#76 J Biol Chem. 2000 Nov 10;275(45):35051-62.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 7C. Lanes i, j and k of abDbf4p are somewhat similar.

#77 Proc Natl Acad Sci U S A. 2000 Dec 5;97(25):13824-9. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4A. The most upper figure of insulin is similar to that of IGF-1.

#78 J Biol Chem. 1999 Mar 26;274(13):8531-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5C. In the Ad5IkB lane, Bcl-2 is similar to Bcl-x (horizontally flip and vertically enlarge). In the Ad5LacZ+TNF lane, Bcl-2 is partially similar to Bcl-x (vertically enlarge).

#79 FASEB J. 2001 May;15(7):1218-20. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1A. Akt of Cont is similar to that of VEGF.

#80 Nat Med. 2001 Mar;7(3):317-23. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2a. Actin of Astrocytes is similar to that of another paper (Fig 5C in J Biol Chem. 2001 Feb 2;276(5):3046-53. Epub 2000 Oct 20.)

#81 J Biol Chem. 2003 Jan 17;278(3):2058-65. Epub 2002 Nov 7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2. wt is similar to delta alpha 1.

#82 J Biol Chem. 2001 Sep 7;276(36):34259-69. Epub 2001 Jul 2. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 7. SRE-352 is similar to SRE-344 (vertically enlarge).

#83 J Biol Chem. 2005 Mar 18;280(11):10468-77. Epub 2005 Jan 7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5B. IB:anti-V5 of STAM1 is similar to that of STAM1-mUIM.

#84 Cancer Res. 2007 Jun 1;67(11):5162-71. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. The well of WT is similar to that of control.

匿名A氏が言うように全てが匿名A氏の見間違いであって欲しいものです。オープンアクセスの雑誌でない場合、一般の人が画像の類似具合を直接原著に当たって確認することができませんが、上記84報に関する画像の類似性を解説したPDFファイルがインターネット上にあったのでリンクを紹介しておきます。

AlmostIdentical (画像データの類似性を解説したPDFファイル https://infotomb.com/r3hso.pdf

(1月16日 追記):このPDFを作成された方と匿名A氏とは別人だそうです。

.. また、PDFを作ったのは私ではありません。あのPDFから抜けている論文や指摘は多々あり、あのPDFだけ見て状況判断すると、足をすくわれることも起こるかもしれません。 ..

http://www.peeep.us/aae06dcf

ちなみに、平成26年8月26日付けの文部科学大臣決定「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(下村博文 文部科学大臣)では、不正行為への対応に改定がありました。

第3節 研究活動における特定不正行為への対応
3 特定不正行為の告発の受付等
3-4 告発の受付によらないものの取扱い
③ 特定不正行為の疑いがインターネット上に掲載されている(特定不正行為
を行ったとする研究者・グループ、特定不正行為の態様等、事案の内容が明
示され、かつ不正とする科学的な合理性のある理由が示されている場合に限
る。)ことを、当該特定不正行為を指摘された者が所属する研究機関が確認
した場合、当該研究機関に告発があった場合に準じた取扱いをすることがで
きる。

今回のようなインターネットを利用した匿名による告発にも対応できるようにガイドラインが改善されています。

上で紹介した画像データ類似性解説PDFファイルの中身を見る限り、「類似」というよりも「同一」にしか見えないものが多いようです。単純な間違いでは説明できないものもあり、どうすればこのような「ミス」が起こりえるのかを考えるのは第三者には困難です。当事者である論文著者らの説明を聞くしかありません。研究不正の疑義が生じているわけですから、今後、該当する大学、研究機関が適切な対応を取ることが期待されます。

 

参考

  1. 捏造問題にもっと怒りを(日本の科学を考える):匿名A氏の全コメントが掲載されているウェブページ。
  2. 大阪大学等多数の研究機関の論文の不適切さについて(世界変動展望):記事のコメント欄に画像の類似性をまとめたPDFおよびパワーポイントのファイルへのリンクがありましたので、それを記事内で「画像データの類似性を解説したPDFファイル https://infotomb.com/r3hso.pdf」として紹介させていただきました。
  3. 平成27年年頭挨拶 平成27年1月5日 大阪大学総長 平野俊夫:”‥研究における不正行為の防止に対する体制も本年中に整える予定にしています。実施に際しましては、皆様のご協力をお願いします。教職員の皆様には、大学人としての見識を疑われることのないよう厳しく自らを律するとの固い決意をしていただきますように重ねてお願いします。大学としても、不祥事に対しては厳正に対応していく所存です。‥”
  4. 研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン 平成26年8月26日 文部科学大臣決定 (PDFファイル)
  5. 「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」に関する意見募集の結果について 平成26年8月26日 文部科学省科学技術・学術政策局人材政策課 (PDFファイル):”‥匿名の告発については、従前のガイドラインにおいても、顕名に準じた取扱いができることとしており、本ガイドラインにおいても、その方針を踏襲しています。他方、インターネットの発達により、不正行為の疑いに関する指摘が、必ずしも書面等を通じた告発による形式ではない場合も多く想定されるところ、本ガイドラインにおいては、インターネットでの指摘も告発があった場合に準じて取り扱うことができることとしました。‥”
  6. 新しい研究不正ガイドラインの論点 ―ガイドラインの課題とガイドライン後の課題― 調査と情報―ISSUE BRIEF― NUMBER 835(2014.11. 6.) (PDFファイル) 国立国会図書館 調査及び立法考査局文教科学技術調査室:”米国では研究の実施中に「データに変更を加えたり、データを省いたり」することは定義上、改ざんに相当する。「データを省く」には研究記録が存在しないことや研究記録の紛失等により適切に研究記録を提示できない場合も含まれる。一方、日本の新旧ガイドラインでは、研究途中の研究記録の改ざんは研究不正には該当せず、研究成果が掲載された論文に現れたデータや結果の改ざんのみが研究不正(特定不正行為)と判断される。米国の場合には、この研究不正の定義、改ざんの定義から、研究記録の不存在により、研究結果の真正性を示せないこと自体が改ざんであると判断されることになる。したがって、研究活動にとって研究記録は大変重要なものとなる。日本の新旧ガイドラインでは、研究途中の段階で改ざんが発覚したとしても、それを論文として発表しなければ、研究不正を問われることはない。しかし、後述するように新旧ガイドラインでも研究記録の不存在は研究不正と「みなされる」又は「認定される」根拠となる。”
  7. 『3位じゃダメなんです。』  (大阪大学 ニュース&トピックス 2015年1月16日):”12月28日(日)、29日(月)の日本経済新聞(全国版)朝刊に、大阪大学の広告を掲載しまし た。”  “『3位じゃダメなんです。』阪大なら実現できる。世界トップ10の研究型総合大学を。ダメなんです。阪大は、日本で3番目の大学じゃダメなんです。海外 学術誌の掲載論文数や研究費の獲得など、国内3位の実績は数あれど、阪大が目指すべきものはそこじゃない。世界の大学、研究機関、企業が、真っ先にイメー ジする日本の大学、基礎研究や応用研究で、世界にインパクトを与える研究型総合大学になるのです。”

 

研究不正関連のその他の記事

分生研・加藤研に関する論文不正調査報告書 を東京大学が発表

分子細胞生物学研究所・加藤茂明研究室における 論文不正に関する最終調査報告を東京大学が発表しました。この最終報告書では、史上稀にみる論文捏造の連鎖がどのように生じたのか、研究室内の人間模様にまで踏み込んだ記述があります。

6.発生要因等
(1)本件事案においては、研究室の相当数の者により、不正行為や貼り間違い等の不適切な行為が多数発生している。これほど多くの不正行為等が発生した要因・背景としては、旧加藤研究室において、加藤氏の主導の下、国際的に著名な学術雑誌への論文掲載を過度に重視し、そのためのストーリーに合った実験結果を求める姿勢に甚だしい行き過ぎが生じたことが挙げられる。そうした加藤氏の研究室運営を同研究室において中心的な役割を担っていた栁澤氏、北川氏及び武山氏が助長することにより、特定の研究グループにおいて、杜撰なデータ確認、実験データの取扱い等に関する不適切な指導、画像の「仮置き」をはじめとする特異な作業慣行、実施困難なスケジュールの設定、学生等への強圧的な指示・指導が長期にわたって常態化していた。このような特異な研究慣行が、不正行為の発生要因を形成したものであると判断する。

旧加藤研究室には当時、大きく3つの研究グループが存在し、上述の栁澤氏が率いた(後に北川氏が引き継いだ)コファクターチーム、武山氏が率いたショウジョウバエ解析チームのほか、学外から旧加藤研究室に参画した研究者が率いたノックアウトマウス作製チームがあった。これら関係教員のうち、最初に助教として採用された栁澤氏の初期の論文に不正行為が確認され、その影響を大きく受けた北川氏がその後の多くの不正論文に関与したと考えられる。したがって、今回の不正行為には、栁澤氏と北川氏が極めて大きな影響を及ぼしており、不正行為に関与した者は両氏の指導下にあった者が大半である。事実、北川氏の転出後は不正論文が激減している。また、不正行為に関わった者の多くは、大学院学生の頃から加藤氏が指導してきた者たちで、加藤氏に従順であり、過大な要求や期待に対し、それを拒否するどころか、無理をしても応えるしかないといった意識を持つような環境が存在していたといえる。

(2)ショウジョウバエ解析チームの中核的役割を担っていた武山氏は研究室の最古のメンバーであり、学生の頃から加藤氏の指導を受け、加藤氏とともに本学にて研究室設立に従事し、栁澤氏に次いで助教となった。武山氏は加藤氏の信頼に応えるべく結果を出すことに腐心し、不正行為に関わったと思われる。栁澤氏又は北川氏と関わりの無いノックアウトマウス作製チームのメンバーの中には不正行為を行った者はいない。また、研究者としてある程度自立(キャリアを積んだ)した段階で旧加藤研究室に参加したメンバーも不正行為に関わってはいない。

(3)以上から、不正行為を行ったのは、栁澤氏、北川氏に直接指導を受け、また加藤氏の大きな影響力の下にあったメンバーであることが明らかになる。これに対し、同じ研究室に所属していた他のメンバーには不正行為とは関わりのない者もいる。それゆえ、本件は研究室全体(又はチーム全体)にわたる不正行為であるとまではいえないと判断できる。最終調査報告4-5ページ

この報告書に拠れば、加藤茂明(元)教授が捏造を部下に指示していたわけではなく、グループリーダー的な役割を担っていた二人が中心になって捏造を主導し、その研究グループに属する学生らがそれに従わざるを得なかった、もしくは上の期待に応えようとして捏造に励んだようです。加藤教授は部下に過大な期待・要求をしてこのような不正を生じさせるような特異な環境を作り出したこと、および不正の露呈を防ごうとしたことに関して責任を問われています。

この調査委員会の決定に関して加藤茂明・元教授は、論文の作製過程で研究員に対して強制的な態度や過度の要求をしたことも、そのような意図を持って発言したこともなく、不正行為が発生する環境を作り上げたとの認定には承服できない、と反論しています(NHKの報道など)。

 

東大 論文不正に元教授ら11人関与と発表

平成24年1月10日、本学に対し、加藤茂明東京大学分子細胞生物学研究所教授(当時)の主宰する研究室の関係者が発表した論文について、不正行為が存在する旨の申立てがあった。これを受け、本学においては、分子細胞生物学研究所における予備調査を経て、科学研究行動規範委員会において調査・審議を行い、論文の不正行為を認定した。このたび、本事案の調査が終了しその結果をまとめたので、公表する。

記者会見「東京大学分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における
論文不正に関する調査報告( 最終 )」の実施について
日 時:平成26年12月26日(金)9:30~11:00
場 所:東京大学総合図書館3階会議室
出席者:
濱田 純一 東京大学総長
相原 博昭 東京大学理事・副学長(科学研究行動規範担当)
原田  昇 東京大学副学長 科学研究行動規範委員会委員長
鈴木 真二 東京大学広報室長

配付資料一覧(すべてPDFファイル):
1)理事声明
2)分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における論文不正に関する調査報告(最終)
3)分子細胞生物学研究所研究不正再発防止取り組み検証委員会結果報告
4)研究倫理アクションプランに係る取組状況等について
5)東京大学の科学研究における行動規範
6)東京大学科学研究行動規範委員会規則
資料ウェブサイト http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_261226_j.html

参考

  1. 東京大学分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における論文不正に関する調査報告(最終)(東京大学平成26年12月26日)
  2. 東大 論文不正に元教授ら11人関与と発表(NHK NEWSWEB 12月26日):”東京大学で学位を取得した当時の学生ら6人についても、学位の取り消しを審議するということです。”
  3. 不正論文に関与、元特任講師の学位取り消し 徳島大 (朝日新聞 DIGITAL 2014年12月26日):”東京大学の加藤茂明元教授の研究グループによる不正論文に関わり博士論文を捏造(ねつぞう)、改ざんしたとして、徳島大学は26日、北川浩史(ひろちか)・元東大特任講師に授与した博士の学位を取り消した、と発表した。”
  4. 東大論文不正:捏造報告に加藤元教授「到底承服できない」(毎日新聞 2014年12月26日):”加藤氏はコメントで「関係各所に膨大な労力をおかけしたことを心よりおわびする。論文作成や受理の過程で、強制的な態度や過度の要求などをしたことはない。最終報告は私の弁明を十分に考慮せず、一部の証言のみに基づいている」と釈明した。”

小保方氏のSTAP細胞はES細胞 調査委員会報告

小保方氏保管の「STAP細胞」はES細胞 理研外部調査委員会報告書と記者会見の模様【FULL動画】

2014年12月26日に、桂勲・国立遺伝学研究所長を委員長とする外部有識者による調査委員会が、STAP細胞論文不正事件に関する調査結果を公表しました。

STAP細胞論文に関する調査結果について(理研ウェブサイト):調査報告書(全文PDFファイル)、調査報告書(スライドPDFファイル)

”STAP細胞”の残存サンプルは全てES細胞と遺伝子型が一致し、ES細胞だったと結論されました。また、過失で混入するとは考えにくいことから意図的なすり替えが行われた可能性が高いことを示唆しています。ただし、研究関係者全員が、自分はES細胞を混入させてはいないと否認したため行為を行った人間は特定されませんでした。

これだけ何回もES細胞が混入したことは、培養器具の不注意な操作による混入の可能性も考えられるが、研究者の常識としては、誰かが故意に混入した疑いを拭うことができない。(報告書13-14ページ)

混入があった場合、当事者は小保方氏と若山氏(STAP細胞からのテラトーマ作製では小保方氏のみ)しかいないように見える。しかし、当時のCDB若山研の状況調査から、必ずしもそうとは言い切れないことが判明した。STAP細胞の作製には酸処理から約7日間、細胞をインキュベーター内に放置するが、このインキュベーターが置かれた培養室は他の部屋(研究室、実験室,胚操作室)から隔離された状態にあり、クリーンベンチや蛍光顕微鏡を使用する人がときどき入る以外は、あまり人がいない状態にあった。また、若山氏の聞き取り調査から、当時のCDB若山研では、多くの人が夜中にこの部屋に入ることが可能だった。つまりインキュベーターやフリーザーへの接近が可能だった人は数多くいたことになる。したがって、作製中のSTAP細胞が入ったディッシュを判別できれば、多くの人に混入の機会があったことになる。(14ページ)

RNA-seq解析、ChIP-seq解析に関する疑義について。

小保方氏が様々なバックグラウンドの細胞を寄せ集めてRNA-seq解析、ChIP-seq解析を行ったことは自明であり、論文の記載や公共データベースに登録時の記載と異なる系統やGFP挿入のあるマウスの使用や、本来比較対象とならないデータを並べて論文に使用したことは不正の疑いを持たれて当然のことである。しかし、聞き取り調査などを通じて小保方氏は「条件を揃える」という研究者としての基本原理を認識していなかった可能性が極めて高く、意図的な捏造であったとまでは認定できないと思われる。一方、FI幹細胞データに関しては当初の解析結果が同氏の希望の分布をとらなかったこと、それにより同氏が追加解析を実施していること、当初解析結果と追加解析結果で使用したマウスの種類も含め結果が異なること、複数細胞種を混ぜた可能性が高いこと(故意か過失かは不明)から不正の可能性が示されるが、どのようにサンプルを用意したかを含め同氏本人の記憶しかないため、意図的な捏造との確証を持つには至らなかった。よって、捏造に当たる研究不正とは認められない。(報告書17ページ)

Article Fig.5c(細胞増殖率測定のグラフ)の疑義について

この実験は行われた記録がなく、同氏の勤務の記録と照合して、Article Fig.5cのように約3日ごとに測定が行われたとは認められない。小保方氏の説明を聞いた限りでは、同氏は細胞生物学の最も基礎となる細胞増殖率測定に必要な「細胞数の計測」という手技の原理と方法は理解し、最初はそれによって行なっていたものの、途中からはコンフルエントになった状態の細胞数を107とみなし、計測を怠ったものと判断した。特に、小保方氏は植え継ぎ時に細胞数を正確に計測せずに、Article Fig.5bを作成していたことを自認しているが、そうだとすると、この図は、細胞増殖率を測定したものとしては全く意味をなさない。同氏が細胞数の計測という最も基本的な操作をしていないこと、また希釈率についても1/5と説明したり、1/8から1/16と説明したりしていること、オリジナルデータによる確認もできないことから、小保方氏の捏造と認定せざるを得ない。小保方氏は、1人で細胞数を計測し、細胞増殖率測定のグラフを作成したことを認めているところ、小保方氏によってなされた行為はデータの信頼性を根底から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたものと言わざるを得ない。よって、捏造に当たる研究不正と判断した。
若山氏は、細胞増殖率測定のグラフ作成を小保方氏に提案した研究室の主宰者であり、小保方氏をシニア研究者として指導監督するとともに、共同研究者として、データの正当性、正確性について十分な注意を払うことが求められていた。若山氏は細胞数の計測や増殖曲線の作成に直接関与したものではないが、指導監督を怠り、データの正当性、正確性について検証することなく、このような捏造を生じさせたことの責任は過失とはいえ重大である。(18ページ)

Article Fig.2c(DNA メチル化解析データ)の疑義について

小保方氏は、自認するとおり、得られたデータのうちの一部だけを仮説に沿って意図的に選別して提示し、データの誤った解釈を誘導する危険性を生じさせた。小保方氏はこのような危険性について認識しながらデータを選別したうえ、手動で作図して存在しないデータを新たに作り上げたものである。よって、捏造に当たる研究不正と判断した。
このようなことが行われた背景には、共同研究者によるデータに対する過剰な期待があったことが推察された。若山氏は、上記のメチル化解析を小保方氏が行った研究室の主宰者であり、シニア研究者として小保方氏を指導監督するとともに、共同研究者として、データの正当性、正確性について十分な注意を払うことが求められていた。若山氏はデータの意図的な選別・提示に直接的に関与したとまでは認められないが、小保方氏が若山氏の過剰な期待に応えようとして改ざんを行った面も否定できない。少なくとも若山氏は、小保方氏の指導監督を怠り、データの正当性、正確性について検証することなく、このような捏造を誘発したと認められ、その責任は過失とはいえ極めて重大である。(20ページ)

胎盤が緑色に光ったことに関して

論文の図の説明には2つの矢印があって、胎盤と卵黄嚢とされているが、専門家の意見によれば2つとも卵黄嚢である可能性が高い。

STAP細胞の胎盤への寄与は、Letterの論点として重要であり、研究の価値を高めるために強引に胎盤と断定した可能性があるが、調査により得られた証拠に基づき認定する限り、研究不正とは認められない。(21ページ)

その他複数の疑義に関しては、実験データが提出されなかったために照合できず不正かどうかの判断がつきませんでした。

小保方氏にオリジナルデータの提出を求めたが、提出されなかった。小保方氏からオリジナルデータが提出されなかったため、不一致の認定を行うことはできず、研究不正とは認められない。(22-23ページ)

しかし、オリジナルデータや実験ノートの記載がないために不正と認めないというのはおかしな話です。オリジナルデータや実験ノートが提出できないならば不正とみなされてもしかたがないという姿勢にすべきでしょう。そうでないと、不正したあとデータを廃棄すればよいという逃げ道ができてしまいます。もはや、倫理感が非常に低い人間が一定の割合で必ず存在するという現実を認め、よく言われる「性善説」は捨てて、それでも研究不正が生じ得ないような枠組みを作る必要があります。

報告書では疑義の検証が他にもまだいくつもなされています。STAP細胞論文不正に関する責任の所在については、データ捏造を実際に行った小保方氏は当然のことですが、指導的立場にあったシニア科学者である若山氏と笹井氏の責任も非常に大きいと指摘しています。

規程での不正行為とは、「捏造、改ざん、盗用」のことである。本調査委員会は、小保方氏が細胞増殖曲線実験(Article Fig.5c)とDNAメチル化解析(Article Fig.2c)において、データの捏造という不正行為を行ったと認定した。このような不正行為が健全な科学の遂行と発展に大きな妨げになることは、言うまでもないことである。若山氏と丹羽氏については、不正行為は認定されなかった。しかし、STAP論文に関して、科学論文およびその基礎となった研究の問題点まで視野を広げると、ここで認定された研究不正は、まさに「氷山の一角」に過ぎない。たとえば、以下の4つの点をとってみても、非常に問題が多い論文と言える。
   第一は、本調査により、STAP細胞が多能性を持つというこの論文の主な結論が否定された問題である。その証拠となるべきSTAP幹細胞、FI幹細胞、キメラ、テラトーマは、すべてES細胞の混入に由来する、あるいはそれで説明できることが科学的な証拠で明らかになった。STAP論文は、ほほすべて否定されたと考えて良い。これだけ多くのES細胞の混入があると、過失というより誰かが故意に混入した疑いを拭えないが、残念ながら、本調査では十分な証拠をもって不正行為があったという結論を出すまでには至らなかった。これは、本調査委員会の能力と権限の限界でもあると考える。
   第二は、論文の図表の元になるオリジナルデータ、特に小保方氏担当の分が、顕微鏡に取り付けたハードディスク内の画像を除きほとんど存在せず、「責任ある研究」の基盤が崩壊している問題である。最終的に論文の図表を作成したのは小保方氏なので、この責任は大部分、小保方氏に帰せられるものである。また、STAP幹細胞、FI幹細胞、キメラマウス、テラトーマなどについて、作製後の解析を行ったのも大部分が小保方氏だが、その実験記録もほとんど存在しない。本当に行われたか証拠がない(行われなかったという証拠もない)実験も、いくつか存在する(細胞増殖率測定、Oct4-GFPを持つFI幹細胞の作製など)。
   第三は、論文の図表の取り違え、図の作成過程での不適切な操作、実験機器の操作や実験法の初歩的な間違いなど、過失が非常に多いという問題である。これも、図の作成や実験を行った小保方氏の責任と考えられる。
   第四は、このように実験記録やオリジナルデータがないことや、見ただけで疑念が湧く図表があることを、共同研究者や論文の共著者が見落とした、あるいは見逃した問題である。また、STAP幹細胞やキメラについて明らかに怪しいデータがあるのに、それを追求する実験を怠った問題もある。これらに関しては、STAP論文の研究の中心的な部分が行われた時に小保方氏が所属した研究室の長であった若山氏と、最終的にSTAP論文をまとめるのに主たる役割を果たした笹井氏の責任は特に大きいと考える。
   最後の問題について、もう少し詳しく考察したい。小保方氏が実験記録を残さず、過失が非常に多いことを見逃した理由の1つは、プログレスレポートのあり方など、研究室運営のやり方に問題があったためではないだろうか。論文の共著者は論文原稿の最終版を全部読んで内容を承認する責任があるが、共著者全員がこの責任を果たしたのだろうか。STAP幹細胞が急に効率良くできるようになった時に、若山氏は、それまでSTAP細胞塊をバラバラにしていたのを、引きちぎって注入するように変更したためと説明した。しかし、ここで再び細胞をバラバラにして注入する対照実験をしていれば、ES細胞の混入を発見できた可能性がある。また、GFPがホモであるべきマウスがヘテロだった時(2−3−3の(3)参照)も、この疑念を追求する実験を行わなかった。このような追及の甘さは、論文発表を焦ったからではないだろうか。特許や研究費獲得や著名雑誌への論文掲載は、本来、悪いものではないが、それに夢中になるあまり、研究の中身への注意がおろそかになったことはないだろうか。以上のいずれかで適切な行動をとっていたら、STAP問題はここまで大きくならなかった可能性が高い。(報告書29-30ページ)

報告書では最後に研究者コミュニティに対して、不正防止のための考え方を呈示しています。

たまたま小保方氏と共同研究する立場にはなかった大部分の研究者も、もし自分が共同研究をしていたらどうなったかを考えると、身につまされることが多いだろう。
   では、このような不祥事がふたたび起きないようにするには、どうしたら良いだろうか。上記の文科省のガイドラインには、「不正行為に対する対応は、研究者の倫理と社会的責任の問題として、その防止と併せ、まずは研究者自らの規律、および科学コミュニティ、研究機関の自律に基づく自浄作用としてなされなければならない。」と書かれている。本調査委員会の調査の基盤になった膨大な科学的検証データは、理研の研究者の熱意と努力によって収集されたものである。これを、STAP問題が生じた理研の内部から自浄作用が現れたと評価することもできる。また、理研だけでなく全ての研究者は、STAP問題を自分の研究室にも起こり得る問題と考え、今までよりいっそう思慮深い教育と研究室運営を行うべきだろう。不正防止が大きな流れになるためには、「捏造、改ざん、盗用」を重大な違反と考えるのは当然だが、それだけでなく「研究における責任ある行動」ないし「研究における公正さ」という観点から、より広い視野で研究者倫理を考え、教育を行う必要がある。そこで基礎となるのは、論文のインパクトファクターでも、獲得研究費の額でも、ノーベル賞の獲得数でもなく、自然の謎を解き明かす喜びと社会に対する貢献である。
   STAP問題は科学者コミュニティに突き刺さった1本の矢である。それを抜いた後も、傷跡を癒し健康を取り戻すために、科学者コミュニティ全体の対応と努力が求められている。(報告書31ページ)

「STAP細胞論文に関する調査結果」についての記者会見 (ニコニコ生放送

会見スケジュール
①「STAP細胞論文に関する調査結果について」 10時00分~11時30分予定
【調査委員会 出席者】
桂勲 調査委員長(情報・システム研究機構 理事、国立遺伝学研究所 所長)
五十嵐和彦 委員(東北大学大学院 教授)
伊藤武彦 委員(東京工業大学大学院 教授)
大森一志 委員(大森法律事務所 弁護士)
久保田健夫 委員(山梨大学大学院 教授)
五木田彬 委員(五木田・三浦法律事務所 弁護士)
米川博通 委員(東京都医学総合研究所 シニア研究員)

(全録)STAP細胞問題 理化学研究所の調査委員会が会見(1/2)

(全録)STAP細胞問題 理化学研究所の調査委員会が会見(2/2)

②「STAP細胞論文に関する調査結果を受けて」 11時45分~12時30分予定
【理化学研究所 出席者】
川合眞紀 理事
有信 睦弘 理事
加賀屋悟 広報室長

【STAP細胞】19 結論は出た、調査は終了 理研記者会見【2014/12/26】

参考

  1. STAP細胞論文に関する調査結果について(独立行政法人理化学研究所 2014年12月26日)
  2. 小保方氏冷凍保管の「STAP」はES細胞濃厚(読売新聞YOMIURI ONLINE 2014年12月26日):小保方晴子氏が冷凍保管していた細胞の遺伝子解析などを行った結果、STAP細胞を変化させたものとされたこの細胞が、ES細胞から作られていたことが、ほぼ確実になった。
  3. 調査結果、26日公表=STAP細胞問題-理研 (時事ドットコム)
  4. 実験ノートがない=研究不正」

STAP細胞検証結果に関して記者会見 理化学研究所研究不正再発防止改革推進本部検証実験チーム【FULL動画】

2014年12月19日、理化学研究所研究不正再発防止改革推進本部検証実験チームが小保方晴子氏が行ってきたSTAP細胞再現実験の結果を報告する記者会見を開きました。

理化学研究所 STAP現象の検証結果に関する記者会見 2014/12/19 【動画 2:14:22 】

理化学研究所 STAP現象の検証結果に関する記者会見[1] 「小保方さんの”コツ”は、明らかにならなかった」 理研、7カ月に及ぶSTAP細胞の検証結果を発表【全文】(ログミー)

「検証実験は、(小保方晴子研究 員を監視するための)モニターや立会人を置いて行われた。そういう検証実験を行ったことは、責任者としてものすごく責任を感じている。研究者を犯罪人扱い しての検証は、科学の検証としてあってはならないこと。この場でおわびをさせていただく」(相沢慎一チームリーダー)(http://mainichi.jp/select/news/20141219k0000e040225000c.html)

小保方晴子氏のコメント

どのような状況下であっても必ず十分な結果をと思い必死に過ごした3 か月でした。予想をはるかに超えた制約の中での作業となり、細かな条件を検討できなかった事などが悔やまれますが、与えられた環境の中では魂の限界まで取り組み、今はただ疲れ切り、このような結果に留まってしまったことに大変困惑しております。私の未熟さゆえに論文発表・撤回に際し、理化学研究所を始め多くの皆様にご迷惑をおかけしてしまったことの責任を痛感しておりお詫びの言葉もありません。検証終了を以て退職願を提出させていただきました。最後になりますが本検証実験にあたり検証チームの皆様はじめ、ご支援・応援してくださった方々に心より御礼申し上げます。2014 年12 月19 日 小保方 晴子 (http://www3.riken.jp/stap/j/u0document3.pdf

小保方晴子氏の退職願の承認に際しての理化学研究所理事長 野依良治氏のコメント

STAP 論文が公表されてからこの10 ヶ月間余り、小保方晴子氏にはさまざま
な心労が重なってきたことと思います。このたび退職願が提出されましたが、
これ以上心の負担が増すことを懸念し、本人の意志を尊重することとしました。
前途ある若者なので、前向きに新しい人生を歩まれることを期待しています。(http://www3.riken.jp/stap/j/l5document8.pdf)

実験データの詳細を含む報告書が理研ウェブサイトで公開されています。(1)小保方研究員による検証結果、(2)丹羽副チームリーダーによる検証結果の内容からなる31ページのPDF文書:「STAP現象の検証結果について

データを捏造して論文を出すということは、極めて悪質な犯罪的行為です。今後は、このような研究不正がどのようにして生じたのかという真相究明が絶対に必要です。それなくしては、理研への信頼が回復することはないでしょう。

「作製できた」とされた細胞は何だったのか。その裏付けとして論文に掲載されたデータや図表は何を示しているのか。どういう経緯で論文が発表されるに至ったのか。その過程で、それぞれの共著者がどういう役割を果たしたのか。こうした不正や混乱を二度と起こさないためにも、徹底して全容を解明し、説明責任を果たしてほしい。毎日新聞 社説 2014年12月20日

理化学研究所は検証実験を打ち切るが、存在しない細胞の論文がどのように作成されたのか、という問題の核心は、まだ、闇の中である。… STAP細胞と呼んでいたものは何だったのか。なぜ、存在しないSTAP細胞の論文がもっともらしく出来上がったのか。 … 不正が起きた経緯は、まだまだ闇の中である。その経緯を明らかにしなければ、社会の納得は得られないだろう。 …  科学には、独創的な発想と自由に研究できる環境が欠かせない。そうした研究環境を守るには、学術研究に対する国民の信頼感、期待感が欠かせない。東京新聞 社説 2014年12月20日

小保方氏らの方法ではSTAP細胞ができないことが、ほぼ裏づけられたといえる。だが、なぜ不正が起きたのか、核心はなおはっきりしない。日本の科学が失った信頼を取り戻すため、理研は徹底的に真相を究明すべきだ。 … この実験をもって幕引きにするのであれば、世界の科学界から失笑を買いかねない。 … 組織のあり方の検証と関係者の責任の究明、再発防止策の確立に力を傾けなければならない。日本経済新聞 社説 2014年12月20日

参考

  1. STAP現象の検証結果について 独立行政法人理化学研究所 2014年12月19日
  2. 理化学研究所 STAP現象の検証結果に関する記者会見[1] 「小保方さんの”コツ”は、明らかにならなかった」 理研、7カ月に及ぶSTAP細胞の検証結果を発表【全文】(ログミー 2014.12.19)
  3. 普通の企業なら懲戒解雇の可能性強い 小保方氏の退職届受理は「非常識」なのか (JCASTニュース 2014/12/19)

小保方晴子氏のSTAP細胞再現実験結果報告記者会見を理研が開催(12月19日(金)午前10時30分 ニコニコ動画生中継)

小保方晴子氏が記者会見で発した「STAP細胞はあります」という言葉が『ネット流行語大賞2014』金賞に選ばれるなど、国民的な関心事になったSTAP細胞論文捏造事件ですが、「理化学研究所 STAP現象の検証結果に関する記者会見」が12月19日(金)午前10時30分頃から行われる予定です。出席者は、

  1. 相澤 慎一 チームリーダー(理化学研究所 研究不正再発防止改革推進本部検証実験チーム)
  2. 丹羽 仁史 副チームリーダー
  3. 清成 寛  研究員
  4. 坪井 裕  理事
  5. 加賀屋 悟 広報室長

会見の模様はニコニコ動画により生中継されます(ニコニコ動画「STAP現象の検証結果に関する記者会見」)。

小保方氏も作製できず STAP細胞の再現実験(14/12/19)

参考

  1. STAP細胞証明できず 小保方さん、それでも「あると考える」(スポニチSponichi Annex 2014年12月19日 05:30):”小保方氏の48回の実験で、万能性を持つ可能性を示す緑に光る細胞が得られることもあったが、数は論文に比べて非常に少なかった。万能性があれば、別のマウスの受精卵に注入すると細胞が混ざり合いキメラマウスができる。検証チームは1615個の受精卵に注入したが、一回も成功しなかった。増殖能力がある「STAP幹細胞」も作れなかった。”
  2. 『ネット流行語大賞2014』発表! 金賞は「STAP細胞はありまぁす」(ガジェット通信 2014.12.01):”今年のノミネートは58コ。2500票を超える投票の結果、上位30位に入ったのはどのワード? ”
  3. 今年の世相を表す漢字 (日本漢字能力検定協会):”全国から届いた167,613 票の応募集計結果 1位 「税」 8,679票(5.18%) 2位 「熱」 6,007票(3.58%) 3位 「嘘」  5,979票(3.57%)”(PDFリンク
  4. ネットユーザーが選ぶ2014年のワースト謝罪会見(宣伝会議 2014年12月05日):”2014年に発生した企業や個人の不祥事や謝罪会見に関し、全国の男女500人(20~80代)を対象に「印象に残った出来事」「ニュース・情報伝播の流れ」についてアンケート調査を実施しました。ランキング1位 理化学研究所 小保方晴子氏不正論文問題(67.4%)・科学研究の世界がこんなにもお粗末なシステムで動いているとは思わなかった(68歳・男性・東京都)”

小保方氏の早大博士号取り消しに1年間の猶予

新しい記事⇒【小保方氏の博士論文について】早稲田大学 記者会見 2015年11月2日 [3時間3分2秒フル動画]

早稲田大学の鎌田薫総長は、小保方晴子氏の博士論文不正問題に関して1年間の猶予期間を設け、論文の訂正と再度の論文指導ならびに研究倫理教育を受ける機会を小保方氏に与え、再提出された学位論文が早稲田大学の博士学位論文としてふさわしいと判断されれば早稲田大学の学位を維持させると発表しました。期間内に訂正が完了しない場合には学位を取り消すとのことです。

早稲田大学博士号授与の根拠となった英文誌発表論文の取り下げという不測の事態でも起きない限り、博士号が維持される公算が大きいと言えます。小保方晴子氏も早稲田大学博士号維持へ向けて、論文の修正に努力する意向を表明しています。

<会見速報>小保方さんの博士号「学位を取り消す」早稲田大学が猶予付きの決定 14.10.07

(全録)小保方氏論文 早稲田大学が会見

理研の小保方 晴子氏が、早稲田大学の大学院時代に博士号を取得した論文に不適切な引用があった問題­で7日、大学が会見し、報告を行った。

(全録)小保方氏論文 早稲田大学が会見 質疑応答(1/2)

参考

  1. 小保方さんの博士号「学位を取り消す」早稲田大学が「猶予付き」の決定・配布資料(全文)(弁護士ドットコム2014年10月07日):”理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの研究ユニットリーダー小保方晴子さんの「博士論文」の不正疑惑について審査していた早稲田大学は10月7日、小保方さんの博士号について「学位を取り消す」と結論付けた。ただし、一定期間の猶予を設け、博士論文として適切なものに訂正された場合には、学位を維持するとした。”
  2. 小保方晴子さんの博士号、取り消し 早大「ただし1年間の猶予を設ける」- 記者会見全文 (ログミー logmi.jp 2014.10.07)
  3. <早稲田大>小保方氏の博士号取り消しも 指導教官ら処分(毎日新聞 10月7日):”早稲田大の鎌田薫総長は7日、記者会見しSTAP細胞論文(今年7月に撤回)の筆頭筆者である小保方晴子・理化学研究所研究ユニットリーダーが同大に提出した博士論文について、論文の訂正など大学側が提案した条件を満たさない場合は学位(博士号)を取り消す方針を決めた。小保方氏にも6日、伝えたという。”
  4. 小保方氏 博士号維持へ論文再提出の意向示す(東京スポーツ 2014年10月07日):”「著作権の問題であるとか、もろもろの不備を指導を受けて直していく。実験をやり直せということではないので。やった実験を適正に論文にキチッと落とし込む作業をして再度出します」(三木弁護士)と論文の修正について語っていた。”
  5. 小保方さん博士号剥奪危機 早大、異例の“執行猶予付き判決”のワケ (ZAKZAK BY 夕刊フジ 2014.10.08):”東京大の上(かみ)昌広特任教授(医療ガバナンス論)は、「導入部分のコピー・アンド・ペーストは一見すれば分かることで、指導教員は論文に全く目を通していない可能性さえある。常識では考えられない。教授陣の処分は退職が相当だろう。誰が責任をもって博士論文を読み、どの程度読んでいたのか、肝心の真相究明が全くなされていない」と厳しい。”
  6. 小保方さんは「シュレーディンガーの猫」状態?早大理工卒弁護士が「猶予処分」を分析(弁護士ドットコム 2014年10月09日):”博士学位を取り消すという結論に、『猶予』が付くのはイレギュラーです。普通ではありません。”
  7. 早大の小保方氏への処分は「意図的な時間稼ぎ」か?(日刊SPA! 2014.10.11):”難産の末のトリッキーな解決方法は、形式的に筋を通している点で、世論を意識したものです。しかも、学位維持という第三者委員会の結論を覆してはいるので、峻厳なものには見える。”
  8. 早稲田、小保方氏への処分は妥当? 甘い?(東洋経済オンライン 10月9日):”鎌田総長は「日本のサイエンスの信頼を失墜させたとまでは考えていない」と強い口調で語った。これに対し、国内外の研究者から「早稲田出身のポスドクは危険。あえて採用する気になれない」「日本のPh.D.は採用しない」とまで言われていることに対する危機感が弱いのではないか、と見る向きも少なくない。”
  9. 小保方氏の博士論文「猶予付き」取り消し 早稲田大の甘い判断(マイナビニュース 2014/10/08):”ある記者に「コピペは研究者として問題ないのですね?」と尋ねられた鎌田総長の回答は「場合による」というものでした。… 論文審査に加わっているはずなのに、その論文を読んでいないと発言したハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授へのヒヤリングは、いまだに行われていないことが明らかになりました。”
  10. 早稲田大学博士論文不正問題 (ウィキペディア)
  11. 山本内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成26年9月2日:(問)科学新聞の中村です。STAPとかあっちの方面に関連して、大臣、今までいろんな会合で日本の博士の質が世界から信用されないんじゃないか といろんな場面でおっしゃっているかと思うんですけれども、日本の博士の質を維持するために科学技術政策担当大臣として、次の大臣にもこういうことをやっ てほしいというのはあるでしょうか。(答)最後の会見ですから、あまり思い切ったことを言ったらまずいと、慎重にということですが、一つ気になっていることは、早稲田大学の論文 の問題なんです。これは実は南カリフォルニアにIT政策担当大臣、科学技術政策担当大臣、知的財産戦略担当大臣として出張した際に、Caltech、カリ フォルニア工科大学でいろいろな方からお話を聞いたんですが、あまり細かなことは言いませんが、直感的に言ってこの早稲田の論文の問題をきちんと対応しな いといけないのではないかと。
    これは早稲田大学の自治の問題なので、大臣として口を出すつもりはありませんが、ここのところをきちんと説明しないと、早稲田があれだけ実績を 上げている、優秀な研究者を輩出している大学にもかかわらず、そのプレステージが地に落ちてしまうということを私は大変心配しているので、この論文につい て早稲田大学がこれからどのように扱うのかということについては注視をしたいと思いますし、優秀な研究者、研究者の質を上げるということでいうと、中村さ んが御存じのとおり、今いろいろな方法があるので、日本の研究者のレベルを疑われるようなことを行ってはならないと思いますので、これは私が言えることで はないんですが、よほど気をつけて行っていただいた方がいいのではないかと思います。
    そうではないと、例えばCaltech、世界大学ランキングで3年連続ハーバードを抑えて1位になっているわけですよね。このCaltechに 例えば早稲田のPh.D.を持った人が応募した時に思わしくない結果になるということがあり得るのではないかと思って、もう一回言いますが、心配していま す。

追記(2015年11日2日):結局、早稲田大学は当初の発表どおりに学位を取り消す措置をとることになりました。

小保方晴子・博士論文取消の記者会見11/2早稲田大学

理研 遠藤氏がSTAP細胞解析データを説明

【全録速報】 理研・遠藤高帆研究員が記者会見~STAP細胞のデータ解析を説明 2014.10.01

 

【全録速報】 理研・遠藤高帆研究員が記者会見~STAP細胞のデータ解析を説明 2014.10.01

参考

  1. 「STAP論文の説明は成立しない」理研・遠藤氏がデータ解析で指摘(要点資料全文)(弁護士ドットコム2014年10月01日):”STAP細胞のデータ解析をしていた理化学研究所統合生命医科学研究センター・統合ゲノミクス研究グループの遠藤高帆氏が10月1日、記者会見を開き、分析結果を報道関係者向けに発表した。”
  2. STAP細胞論文の疑惑を指摘した遺伝子発現解析結果が、論文として日本分子生物学会誌Genes to Cellsに掲載

STAP細胞論文の疑惑を指摘した遺伝子発現解析結果が、論文として日本分子生物学会誌Genes to Cellsに掲載

Takaho A. Endo. Quality control method for RNA-seq using single nucleotide polymorphism allele frequency. Genes to Cells Published online: 21 SEP 2014. DOI: 10.1111/gtc.12178

RNA sequencing (RNA-seq) provides information not only about the level of expression of individual genes but also about genomic sequences of host cells. When we use transcriptome data with whole-genome single nucleotide polymorphism (SNP) variant information, the allele frequency can show the genetic composition of the cell population and/or chromosomal aberrations. Here, I show how SNPs in mRNAs can be used to evaluate RNA-seq experiments by focusing on RNA-seq data based on a recently retracted paper on stimulus-triggered acquisition of pluripotency (STAP) cells. The analysis indicated that different types of cells and chromosomal abnormalities might have been erroneously included in the dataset. This re-evaluation showed that observing allele frequencies could help in assessing the quality of samples during a study and with retrospective evaluation of experimental quality.
(http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/gtc.12178/abstract)

↓この論文の全文は、下記URLでオープンアクセスになっており閲覧・ダウンロードができます

http://www.researchgate.net/publication/265911643_Quality_control_method_for_RNA-seq_using_single_nucleotide_polymorphism_allele_frequency

参考

  1. kahoの日記: STAP細胞の非実在について 日記 by kaho 2014年03月05日 15時10分 :”どうしてSTAP細胞が存在しないといえるのか?私はこの論文のインサイダーではありません.従って誰がどのように間違いを犯したかどのような意図を持っていたかといったことは分かりません.しかし,彼らが公開しているデータから彼らの捏造,少なくとも完全な誤りは証明できます.彼らはそうとは知らず,自分たちの捏造を世界に公開しているのです.どのデータから?それは,次世代シーケンサーの生データからです.今 回の論文(2報)のうち片方ではChIP-seqという実験を行っています.そして(本当は論文の公開時にするべきですが)しばらくした後でこの時のデー タを誰にでも使えるように公開しました.実験の詳細は省きますが,この実験では対照実験として”input”と称した染色体配列そのものを読んでいます.これは細胞のDNAの配列がほぼランダムに断片化されて記録されているので,丁寧に見ていくとその細胞がどのような染色体構造を持っているのかが分かります.”
  2. 日経サイエンス号外 STAP細胞 元細胞の由来 論文と矛盾 2014年6月11日:”…  まとめると, 小保方氏らがmRNAの配列を調べたSTAP細胞は2つあり,一方は通常の体細胞,もう一方はマウスから作ったSTAP細胞ではなく培養されていた多能性幹細胞だった。後者はES細胞である可能性が高い。関係者によると,結果は近く論文として発表される。”
  3. 研究不正再発防止のための提言書 独立行政法人理化学研究所 平成26年6月12日 理事長 野依良治 殿 研究不正再発防止のための改革委員会 委員長 岸 輝雄:”… 日本を代表する研究機関である理研で起きた前代未聞の研究不正の解明にあたり、理研内で真相と科学的真実の解明のため勇気ある行動をとっている研究者が複数名いることは、理研にとって大きな救いである。本委員会はかかる研究者の勇気に敬意を表すると共に、このような行動により不利益な扱いをされることがないよう、理研に対し、強く求めるものである。…”
  4. 職務に関わる情報の取り扱いについて 平成 26 年 5 月 27 日 :”今般のSTAP細胞論文の問題に関する報道やインターネット上において、公表 されていない重要な情報が所定の手続きを経ることなく所外に出ているのではないかと思われる記述が見受けられます。… STAP細胞論文の問題に限らず、研究所の役職員は、法律や諸規定により秘密 保持義務が課せられているとともに、これには罰則規定があることも再認識し、
    業務に精励されるよう改めて周知いたします。… ” (参考:STAP細胞の懐疑点 PART403 166 :名無しゲノムのクローンさん:2014/06/02(月) 23:40:20.05 (http://ai.2ch.net/test/read.cgi/life/1401713853/)、NHKスペシャル – 調査報告 STAP細胞 不正の深層 (YOUTUBE http://www.youtube.com/watch?v=A8sbTuRFZlM 46分21秒)

STAP細胞論文のScience, Nature査読公開

STAP細胞論文は笹井氏が共同著者として加わる以前にはサイエンスに投稿され却下されていました。笹井氏が研究チームに加わり、論文執筆を主導してネイチャーに投稿したときもレフェリー(論文査読者)らは厳しい指摘をしていましたが、複数の改訂を経て最終的に受理されたといういきさつがあります。

STAP細胞論文を却下したサイエンス、およびネイチャーの査読者のコメントの全文がインターネット上で公開されています。通常、論文の査読はCONFIDENTIALであり、査読者のコメントがこのような形で世に出るというのは非常に異例なことです。

サイエンスへ投稿されたときの査読内容(全文へのリンク retractionwatch.comウェブサイト内)
論文タイトル:Stress altered somatic cells capable of forming an embryo
時期:2012年8月21日

Reviewer 1: ” … This is such an extraordinary claim that a very high level of proof is required to sustain it and I do not think this level has been reached. I suspect that the results are artifacts derived from the following processes: (1) the tendency of cells with GFP reporters to go green as they are dying. (2) the ease of cross contamination of cell lines kept in the same lab. …”

Reviewer 2: ” … Unfortunately, the paper presents only a superficial description of many critical aspects of the work. …”

Reviewer 3: “… If these results are repeatable, a paradigm of developmental biology would be changed. …”

特にサイエンスのレビューアー#1の人は、この論文の実験結果はアーチファクトの可能性が高く、データも矛盾に満ちたものであることを、非常に強い調子で指摘しています。

”The DNA analysis of the chimeric mice is the only piece of data that does not fit with the contamination theory. But the DNA fragments in the chimeras don’t look the same as those in the lymphocytes. This assay is not properly explained. If it is just an agarose gel then the small bands could be anything. Moreover this figure has been reconstructed. It is normal practice to insert thin white lines between lanes taken from different gels (lanes 3 and 6 are spliced in). Also I find the leading edge of the GL band suspiciously sharp in #2-#5.”

小保方晴子氏が理研でユニットリーダーになるための面接があったのが2012年12月21日で、このとき笹井芳樹氏は初めて小保方氏の研究内容を知り、竹市センター長の依頼を受けて論文の作成を支援することになりました。

笹井氏はネイチャー誌アーティクル論文の執筆指導を行い、小保方氏と共同でたたき台を2012年12 月28 日に完成、翌2013年1月にはバカンティ教授を訪ねて、さらに投稿原稿の検討を重ねました。同時に、レター論文のほうの執筆も進めました。2013年3月1日に小保方氏がユニットリーダーに着任。

2013年3月10日に、小保方氏を筆頭著者とする2報のSTAP細胞論文がネイチャーに投稿されました。

ネイチャーへ投稿された論文の査読内容(http://news.sciencemag.org/sites/default/files/NATURE%20REVIEWS.pdf
論文「Stimulus-Triggered Fate Conversion of Somatic Cells into Pluripotency」に対する査読者のコメント(2013年4月4日)

Referee #1: ” … This is a very interesting manuscript and potentially groundbraking. However, the presentation and data supporting the conclusions are somewhat speculative and, in some cases, preliminary. …”

Refree #2: ” … Most convincing, however, would be to demonstrate visually by time lapse tracking of single cells conversion of CD45 immunofluorescent cells into CD45 negative/Oct4 GFP positive cells that can also be stained with Ecadherin and/or Nanog. …”

Refree #3: “… the claim that these cells are pluripotent is not fully validated. The possibility remains that the tissues formed in vitro or in teratomas or chimeras are derived from multiple (perhaps partially ) reprogrammed cells, each with limited differetiation capacity. The authors might take advantage of the fact that some of the reprogrammed cells have T-cell receptor rearrangements to elucidate whether the differentiated cells in teratomas or mice are clonally derived. …”

NATUREに同時に投稿されたレター論文「Developmental potential for embryonic and placental lineages in reprogrammed cells with acquired pluripotency」に対する査読者のコメント(2013年4月4日)

Referee #1: ” .. it is important to realize not single experimetn in any of the two manuscript evaluates the “quality” of the cells, performs comparative genome-wide analysis or precise quantifiable assays side-by-side with ESCs/iPSCs. ..”

Referee #2: “. .. they do not decisively illuminate the identity of STAP cells. …”

Referee #3: ” … It is important to report the properties of clonally derived STAP ES like stem cells, otherwise, it is not clear whter one cell population gives rise to all the lineages in teratomas or in chimeras. …”

ネイチャーの3人の査読者らは論文の難点を指摘していますが、ネイチャー編集者の反応は非常に好意的なものでした。

“While they find your work of great potential interest, as do we, they have raised important concerns that in our view need to be addressed before we can consider publication in Nautre. Should further experimental data allow you to address these criticisms, we would be happy to look at a revised manuscript (unless something similar has been accepted at Nature or appeared elsewhere in the meantime). …””

この後、2回の改訂を経て最終的にネイチャーに受理されたようです。

Obokata et al., Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency. Nature 505, 641–647  (30 January 2014)
Obokata et al., Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency. Nature 505, 676–680  (30 January 2014)
Received 10 March 2013
Accepted 20 December 2013
Published online 29 January 2014
Retraction (July, 2014)

参考

  1. Nature reviewers not persuaded by initial STAP stem cell papers (ScienceInsider
    Breaking news and analysis from the world of science policy 11 September 2014)
  2. “Potentially groundbreaking,” “highly provocative:” Nature STAP stem cell peer reviews published (retractionwatch.com)
  3. “Magical” STAP papers were blistered by Nature’s own reviewers, but then accepted just months later (Knoepfler Lab Stem Cell Blog September 11, 2014)
  4. CDB 自己点検の検証について(CDB 自己点検検証委員会 平成26 年6 月10 日)

理研がようやくSTAP細胞論文の本調査へ

STAP細胞論文捏造疑惑の全容解明に関して、理化学研究所はなぜか非常に消極的な態度をとってきました。筆頭著者のデータ捏造も大きな驚きでしたが、それよりもさらに大きな驚きだったのがこの理研の不可解な対応です。

STAP「理研は科学に対して誠実か?」川合眞紀の答弁 日経サイエンス記者の質問

この期に及んで、ようやく理化学研究所も重い腰を上げるようです。

”理研は「科学研究上の不正行為の防止等に関する規程(平成24年9月13日規程第61号)」に基づき6月30日から開始した研究論文(STAP細胞)の疑義に関する予備調査の結果を受けて、本調査を実施することとし、9月3日に外部有識者のみにより構成される調査委員会を設置しました。..”

http://www.riken.jp/pr/topics/2014/20140904_1/

参考

  1. 研究論文(STAP細胞)の疑義に関する本調査の実施について(独立行政法人理化学研究所 2014年9月4日)

ヤン・ヘンドリック・シェーンの研究不正

STAP細胞論文捏造事件は世界三大研究不正のひとつにノミネートされているそうですが、ダントツの一位とされているのは、物理学におけるヤン・ヘンドリック・シェーンの論文データ捏造です。シェーンの事件の顛末に関する記事を読むと、シェーンの言動と、STAP細胞データ捏造を行った人の言動、さらに事件の発生状況があまりにも似ていることに驚かされます。

日本のSTAP細胞事件と決定的に違うのは事後処理の部分です。シェーンを雇用していたアメリカのベル研究所は調査報告があがってきた段階でシェーンを即刻解雇しました。また、シェーンの母校コンスタンツ大学(ドイツ)は、恥ずべき行為だとしてシェーンの博士号を剥奪しています。

”.. 2002年に起こったアメリカ・ベル研究所のヤン・ヘンドリック・シェーン(当時29歳)による論文捏造疑惑だ。.. 権威あるネイチャー誌やサイエンス誌で論文を発表し、数々の賞を受賞、「ノーベル賞に最も近い男」と期待されていた。しかし、それらの論文に掲載されているデータが互いに酷似するなどの不自然な点や論文の剽窃があるのではないかと、一部の研究者から指摘がされ始めた。.. 調査委員会はシェーンにデータの提供を求めたが、実験ノートは存在せず、その他の実験に関する記録もきちんと残されていなかった。..シェーンは画期的な現象を示す実験サンプルを数百、測定したと主張していたが、調査の段階ではそのすべてが「測定中に壊れた」もしくは、「輸送中に壊れた」「廃棄した」などとして提示されなかった。..シェーンは誤ったデータであることは認めたものの、「ミステイクによるもの」「実際に得られた振る舞いをよりはっきりと見せるために行った」と主張、捏造ではないと反論した。..調査委員会は論文でデータが適切に扱われていたかなど、共著者が適切な責任を果たしたのかにも着目した。著名な研究者が名前を連ねていたため、若くて実績のなかったシェーンの成果の“正しさ”を補強することになったからだ。..この事件で共著者が不正論文に対する責任を問われなかったことに対し批判が起こり、科学者コミュニティに大きな課題を残した。”http://www.huffingtonpost.jp/2014/04/13/schon_n_5141415.html)

The Dark Secret of Hendrik Schoen BBC Documentary) YouTube

(33分25秒~) 2つの論文に掲載された異なる実験結果のグラフが、ノイズの揺らぎ具合までピタリと一致していることが明らかに

参考

  1. Schön scandal (Wikipedia)
  2. ヤン・ヘンドリック・シェーン(Jan Hendrik Schön)(ウィキペディア)