熊本大と大阪市立大が光山研10論文を不正認定

2015年12月27日追記:

熊本大は25日、平成10~24年に発表した論文9本に画像の流用などの不正が見つかった研究グループを主宰する同大大学院生命科学研究部の光山勝慶教授(58)を、停職1カ月の懲戒処分にした。研究不正で教授停職1カ月 熊本大、論文の画像流用 産経WEST 2015年12月25日)

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光山勝慶研究室から出た9報の論文(熊本大学において執筆された論文2報、大阪市立学において執筆された論文 7報)に関して不正の申し立てがなされていたのを受け、熊本大学と大阪市立大学が合同で調査を行った結果、これらのうち8本の論文において光山教授らによるデータ捏造・改竄などがあったとして研究不正と認定しました。光山教授が責任著者にはなっていない1報に関しては、光山教授らの関与は認められないが捏造の疑義があることを認めています。

さらに、光山教授の他の論文272報(熊本大学において執筆された論文 126 報、大阪市立学において執筆された論文146報)も念のため調べた結果、1報の不正を認定しました。これらをあわせて、10報での研究不正が認定されたとする報告を2015年3月20日、熊本大学のウェブサイト上で公表しました。

この論文不正の疑義申し立ては一昨年、平成25年5月23日付けの文書により行われていました。その申し立てに基づいて調査が行われた結果、2年近くかかりましたがようやく今回の発表となったものです。

この報告書では、筆頭著者7名と光山教授が直接不正に関与したと断定しています。不正行為の判定においては、故意性の評価が分かれ目になりますが、

”生データが存在しない、又は生データが存在するにも関わらず、他の画像を流用したことについて合理的な説明が無いなど、過失であると主張するには十分な反証がなされなかった。”

という判断が下されました。7名の筆頭著者と教授本人が直接不正に関与したということですから、研究室ぐるみの組織的な捏造体制ができていたのでしょうか。

光山教授は、”再実験を行い研究の正当性を立証した”そうですが、仮に再現実験が成功したところで、研究不正の事実が消えるわけではありません。不正行為があったかどうかという議論と、実験結果が正しかったかどうかという議論とを、まぜこぜにすべきではありません。

熊本大学・大阪市立大学がデータ捏造・改竄などの研究不正を認定した光山勝慶教授の論文リスト

  1. Yamamoto E, Kataoka K, Dong YF, Koibuchi N, Toyama K, Sueta D, Katayama T, Yasuda O, Ogawa H, Kim-Mitsuyama S. Calcium channel blockers, more than diuretics, enhance vascular protective effects of angiotensin receptor blockers in salt-loaded hypertensive rats. PLoS One. 2012;7(6):e39162. doi: 10.1371/journal.pone.0039162. Epub 2012 Jun 14.
  2. Koka et al., Advanced Glycation End Products Activate a Chymase-Dependent Angiotensin II–Generating Pathway in Diabetic Complications. Circulation.2006; 113:1353-1360 (注:この論文に関しては、光山教授は責任著者ではなく不正への関与は認められないという判断)
  3. Wake et al., Beneficial Effect of Candesartan on Rat Diastolic Heart Failure.Journal of Pharmacological Sciences. Journal of Pharmacological Sciences Vol. 98 (2005) No.4 P372-379
  4. Yoshida et al., Excess Aldosterone under Normal Salt Diet Induces Cardiac Hypertrophy and Infiltration via Oxidative Stress. Hypertension Research (2005) 28, 447–455
  5. Izumiya et al., Apoptosis Signal-Regulating Kinase 1 Plays a Pivotal Role in Angiotensin II–Induced Cardiac Hypertrophy and Remodeling. Circulation Research. 2003; 93: 874-883
  6. Kawano et al., Differential Contribution of Three Mitogen-Activated Protein Kinases to PDGF-BB-Induced Mesangial Cell Proliferation and Gene Expression. Journal of the American Society of Nephrology  March 1, 2003 vol. 14 no. 3 584-592
  7. Izumi et al., Important Role of Angiotensin II–Mediated c-Jun NH2-Terminal Kinase Activation in Cardiac Hypertrophy in Hypertensive Rats. Hypertension. 2000; 36: 511-516
  8. Yano et al., Differential Activation of Cardiac c-Jun Amino-Terminal Kinase and Extracellular Signal-Regulated Kinase in Angiotensin II–Mediated Hypertension. Circulation Research. 1998; 83: 752-760
  9. Izumi et al., Cardiac Mitogen-Activated Protein Kinase Activities Are Chronically Increased in Stroke-Prone Hypertensive Rats. Hypertension. 1998; 31: 50-56
  10. Yamamoto et al., Novel Mechanism and Role of Angiotensin II–Induced Vascular Endothelial Injury in Hypertensive Diastolic Heart Failure. Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology. 2007; 27: 2569-2575 (注:申し立ての対象外だが追加調査により判明)

参考

  1. 研究活動上の不正行為について(熊本大学 平成27年3月20日 熊本大学長 谷口 功):”平成25年5月28日付文書により、本学に対して、現在、大学院生命科学研究部(基礎系)生体機能薬理学に所属し、元大阪市立大学大学院医学研究科分子病 態薬理学所属の光山勝慶教授の研究室で執筆された9論文について、研究上の不正の疑いがあるとの申立書が提出されました。このため、本学をとりまとめ機関とし、申し立てられた論文9報について大阪市立大学と合同で調査を行ったところ、8報の論文において不正行為が行われたと認定されました。加えて、光山教授の研究グループが投稿した論文272報について確認したところ、1報の論文に新たな疑義が生じ、調査の結果、研究活動上の不正行為があったと認められました。”
  2. 【お詫び】元 本学教員(現熊本大学教授)の研究活動上の不正行為について 大阪市立大学理事・副学長(研究担当)宮野道雄 (大阪市立大学 平成27年3月20日)
  3. 熊大教授が9論文で不正と大学が発表(日本テレNEWS24 3/20 熊本県民テレビ):”光山教授は、「再実験を行い研究の正当性を立証し、調査委員会にも説明しているが、一方的に不正と判断されたのは到底承服できない」と主張している。光山教授は、「中立性を欠いた結論」として大学に異議申し立てを行う方針だ。”
  4. 光山勝慶グループ 論文疑惑まとめ (http://kim-mitsuyama-shokei.blogspot.jp/ 2013年5月18日):”熊本大学、大阪市立大学、文部科学省に調査を依頼しました。”

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