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画像類似論文の告発 東大、阪大などが確認へ

読売新聞の報道によれば、先日匿名でネット上で列挙されていた「類似」画像データを含む論文84本、研究者47人に関して、文科省宛に文書でも告発がなされました(ちなみに文科省へ告発したのは匿名A氏とは別の方のようです)。問題が指摘された論文は1996~2007年のものですが、この期間に限定する理由は全くないわけで、後からあれも、これもと出てこないように最新の論文まで全て調査してもらいたいものです。

PubPeer (pubpeer.com)という、発表された論文の内容に基づいて世界中の研究者がサイエンティフィックな議論を行うウェブサイトがあります。このウェブサイトで、日本人の苗字や名前、日本人研究者が取り組んでいる有名な遺伝子名などをキーワードにして検索すると、「類似画像データ」を指摘するコメントが付いた論文が山ほどヒットしてしまい、非常に残念な状態になっています。類似画像の指摘に対して著者からの説明が返ってきていない論文に関しては、データをどの程度信頼してよいのかどうかがわからないため、サイエンティフィックな議論のしようがありません。

参考

  1. 東大・阪大の論文に「使い回し」…文科省に告発(読売新聞YOMIURI ONLINE 2015年01月13日)
  2. PubPeer (pubpeer.com)
  3. 11jigen (TWITTER)
  4. 私の指摘が告発に当たるかどうかについては、読み手の解釈に委ねた方が各方面にとって 好都合ではないかと思い、今後指摘される方にとっても良いのではないかと思い、単なる類似性の指摘であるという立場を私自身は取ることに最終的にしまし た。実際に、similarと書いているだけなのです。また、うっかりミスで済みそうと私が思うものも指摘していますから、私は告発のスタンスは取れませ ん。告発のスタンスを取るのであれば、もう少し論文は絞ったでしょう。ただ、不正指摘として世に受けとめられたのは事実のようであり、方策を検討していま す。なお、文科省に文書で告発したのは私ではありません(私は関係ないと言いたいわけではありません)。…”(http://www.peeep.us/aae06dcf)

サルも鏡に映った自分の姿を自分と認識

魚などの下等な動物は鏡に映った自分を他の個体だと思い込んで、鏡の中の自分に対して攻撃したりします。ヒトやチンパンジー(大型類人猿)は鏡に映った自分を自分自身と認識できることが知られており、イルカ、ゾウなどでもそのような「鏡像認知」能力を示す報告がありましたが、サルの仲間に関してはそのような能力はないと考えられていました。

今回、中国の研究グループがマカクザルも鏡に映った自分を自分だと認識している可能性があるという論文をカレントバイオロジー誌に発表しました。

Monkeys May Be Able To Recognize Themselves In A Mirror With Training

Animals which have passed the mirror test are common chimpanzees, bonobos, orangutans, dolphins, elephants, humans and possibly pigeons. (ScienceDaily 2015-01-12)

しかしながら、1970年にチンパンジーが鏡に映った自分を自分と認識していることを報告したゴードン・ギャラップ(Gordon Gallup)博士は、サルがそのように振舞うように訓練された結果に過ぎないとして、この研究結果の結論は誤っていると批判しています。

参考

    1. Liangtang Chang,Qin Fang, Shikun Zhang, Mu-ming Poo, Neng Gong. Mirror-Induced Self-Directed Behaviors in Rhesus Monkeys after Visual-Somatosensory Training. Current BIology.DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2014.11.016 Published Online: January 08, 2015
    2. Monkeys seem to recognize their reflections (Natue News 09 January 2015): “… “Simply because you’re acting as if you recognize yourself in a mirror doesn’t necessarily mean you’ve achieved self-recognition,” says Gordon Gallup, an evolutionary psychologist at the State University of New York in Albany, who in 1970 was the first to demonstrate mirror self-recognition in captive chimpanzees. …”
    3. 鏡像認知(脳科学辞典)
    4. James R. Anderson,Gordon G. Gallup Jr. Which Primates Recognize Themselves in Mirrors? Plos Biology. Published: March 01, 2011 DOI: 10.1371/journal.pbio.100102: “we conclude that there is no compelling evidence for mirror self-recognition in any non-ape primate species”
    5. Koji Toda,Shigeru Watanabe. Discrimination of moving video images of self by pigeons (Columba livia). Animal Cognition.October 2008, Volume 11, Issue 4, pp 699-705
    6. Joshua M. Plotnik, Frans B. M. de Waal, and Diana Reiss. Self-recognition in an Asian elephant. PNAS September 13, 2006;103(45):17053–17057, doi: 10.1073/pnas.0608062103
    7. Diana Reiss and Lori Marino. Mirror self-recognition in the bottlenose dolphin: A case of cognitive convergence. PNAS 98(10):5937–5942, doi: 10.1073/pnas.101086398 Accepted February 20, 2001.
    8. Gordon G. Gallup, Jr. Chimpanzees:self-recognition. Science Jan.2,1970;167(3914):86-87.(http://radicalanthropologygroup.org/sites/default/files/pdf/class_text_023.pdf):”After prolonged exposure to their reflected images in mirrors, chimpanzees marked with red dye showed evidence of being able to recognize their own reflections. Monkeys did not appear to have this capacity.”
    9. 鏡に映った自身の像で解発されるイトヨの闘争行動(動画)
    10. Animals vs Mirrors Compilation

非常勤講師が大学構内で全裸になっていた理由と事の顛末

大学の非常勤講師がキャンパス内で全裸になっているところを見つかるという事件がありました。事の顛末を大学が公表したところ、思わぬ反響を呼んでいます。大学の説明責任とは何なのかを考えさせられる対応でした。

本学非常勤講師による不適切な行動について(報告)
2015/01/10

各 位

 1月8日付、本学ホームページに「本学非常勤講師による不適切な行動について」として報告いたしましたが、その後判明した事実およびその背景等について説明させていただきます。

 まず、今回の出来事に関する事実関係を記述いたします。
 1月8日、午後3時ごろ、本学巣鴨キャンパスの建物間の通路で、男性が全裸になっているとの情報が、学生より事務局に入りました。
 職員が駆けつけると、その男性は本学非常勤講師(男性・55歳)であったので、保護し事情を聴取いたしました。
 それによると、当該講師は本学女子学生(21歳)と学内で出会い、話をしているうちに口論となり、「私に信じてほしいならば、ここで裸になってくれ」と要求されたということです。
 当該講師は独身で半年ほど前よりこの学生と親も同意の上で生活をともにしていました。
 この学生は日頃より情緒不安定な面があり、当該講師の言葉によると、感情が高まると突発的にどんな行動を取るか分からず、彼女の言う通りにしないと収まらないということを経験的に知っており、その言葉に従ってしまったということです。その際、衣服は学生が持ち去ってしまったので、当該講師はしばらくそのままの状態でおり、他の学生の目にするところとなりました。
 当該講師は彼女の不安感を払拭させるために取った行動であるものの、極めて軽率な行為であることを深く反省し、本学に対して辞意を表明いたしました。
 どのような事情であれ、当該講師の行為は公序良俗に反するものであり、本学の規定にも違反します。本学は厳正なる対処をすべく判断して、理事長が辞表を受理いたしました。
 その後、学生が落ち着いてからこの間の事情を聴取し調査をいたしましが、事実関係についてはこの通りであることを確認いたしました。

 当該講師は、本学学生に向けて、次のようなメッセージを残しております。

 (この文章は公開を前提として書かれたものではありませんが、本人の了解のもとに掲載いたします。

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このたび、皆さんに多大な迷惑、ご心配をおかけしたことを深くお詫びいたします。
今回、私事ではありますが、自分の大事な人を守るために行ったことが、結果としてこのような事態に至ったこと、重ねてお詫びいたします。
 皆さんには、自分の信頼すること、信じることを貫き通して欲しいと思います。そのとき少しの冷静さも忘れないようにしてください。

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 以上の事実確認を踏まえ、本学は真摯な反省にもとづき学生指導に邁進することを誓います。また、この間にWeb上に混乱した情報が流れ、多くの皆さまにご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
 本学では今回の事案に関して、関係部署等で慎重な検討を行うことを指示し、当該講師の行為の動機に関しては同情すべき点があることを確認しました。しか しその動機のいかんにかかわらず、行為の結果に責任を取るということで当該講師と同意いたしましたので、辞表を受理いたしました。
 このような行為は、学内の諸規定に抵触するかを問う以前に、社会人としての良識が問われます。そのことも踏まえ、学生、教職員に本学の建学の精神にもとづく行動をあらためて要請いたします。
 なお今回の事案に関係した学生への指導に鑑み、当該学生の詳細な情報を秘匿し、保護することをご理解ください。
      平成27年1月10日
            大正大学 学長  勝崎裕彦
(http://www.tais.ac.jp/other/news/latest_news/blog/2015/01/10-182032.html リンク切れ)

インターネット上の反応の一部

  1. 考えさせられた。きちんと説明したのは良かったと思う
  2. すごく細かいな。最後、なぜか若干、いい話になってる
  3. 大学からの説明が詳しすぎる。そして講師が可哀想過ぎる。From: u4k
  4. とかく何でも覆い隠したがる現代において、よくぞここまで…!
  5. 大学の不祥事報告がこれだけ人間味にあふれたことがあっただろうか
  6. これウチの大学の話なんやけど、この文章読んだら大正大学で良かったなと思えた。
  7. 杓子定規な「常識」による処分が多いなか、「個別の事情」に配慮した大学側の姿勢は素晴らしい。
  8. 大正大学の経緯報告がすごく誠実で適切な対応だなと感じさせるリリースでちょっと今感動している From: hrn_ehmd
  9. この対応は良いね。きちんと正直に時系列に書いてある。 本人の文章も悪くない。信念があっても、そう、冷静さは必要。
  10. 全裸になった講師の人に同情してしまうなこれ。事情はともかく行為の責任を取った/取らせた本人も大学もまともなだけに。
  11. ドラマもすごいがこの文章めちゃくちゃかっこいいな。教育の場として譲れないラインを示しながら同時に懐の深さをも感じさせる。。
  12. 包み隠さず事件の顛末を報告してるし、学長の懐の深さがにじみ出てて良い内容。そして元講師のコメントの最後の一文が全て。
  13. 最近読んだネット上の文章の中でこれほどパブリックでありながら、人の情を感じさせる文章には今まで出会ったことがなかった。
  14. 事件の真相とか背景なんて本人同士しかわからないことがほとんどだと思いますが、大正大学学長の説明と言葉は、はぐらかしや誤魔化しがなくストレート
  15. この脱衣事件に関しての大正大学のコメントは皆が知りたいような事が包み隠さず書いてあって良い報告文だなぁ…変に堅い文章とかをひねり回したりしてないし
  16. 大正大学の事件の学校側の説明を読んで、なんかチョット切なくなっちゃった。。。でもなんか、ここまでキッチリ経過も背景も説明してあって、事件からきちんと何かを学べるように書いてあるのを読んで、いい大学のような気がしてきた。。。

参考

  1. 大正大学の男性非常勤講師、女子学生の要求で全裸に 大学が経緯を説明 ねとらぼ 2015年01月10日 21時50分

大学の先生と女子学生の恋愛

55歳と21歳という年齢差も凄いですが、大学の先生に女子大学生が恋愛感情を覚えることはよくあることなのでしょうか。

  1. 大学教授と生徒の恋愛は一般的なものなのですか? YAHOO!JAPAN知恵袋 2015/9/15 3:00
  2. 大学教員と女子学生は恋愛をするか?2018年7月14日大学教授になるには
  3. 教員が女子学生と交際する話 2016-01-31 はてな匿名ダイアリー anond:20160131185333
  4. 大学の非常勤講師に片想い中 2009年11月2日 02:01 発言小町
  5. 大学の先生と学生の恋愛について。2010/07/09 00:38 教えて!goo

酷似する画像を含む生命科学論文が インターネット上で大量に指摘される

追記 20170205 2015年にネットで公開されていた、画像データの類似性を解説したPDFファイル r3hso.pdf (https://t.co/zfttZKmgZr)。
追記 関連記事
⇒ 東京大学が類似画像論文に関する予備調査結果を発表: ”不正行為が存在する疑いはない”論文12報のリスト
⇒ 大阪大学、類似画像データ論文の調査を打ち切り 本調査を行わないことを決定

——–

日本分子生物学会2013年年会組織委員会がシンポジウム「生命科学を考えるガチ議論」のための準備としてウェブ上に設置した議論用のサイトで、「日本の科学を考える」(http://scienceinjapan.org/)というものがあります。このウェブサイト上で、年末年始の数日間の間に、異なる実験結果に同一画像データが使いまわされている可能性のある「画像酷似論文」が大量に指摘されました。NATUREを筆頭に、NATUREの姉妹紙など一流の雑誌を含めて、全部で84報に上ります。「捏造問題にもっと怒りを」の記事のコメント欄を利用して書き込まれました。

画像酷似論文の指摘を行った匿名A氏は、このウェブサイト「日本の科学を考える」を選んだ心情を吐露しています。

申し訳ありませんが、やはり、投下させてください。
このサイトを使わせてください。
このガチ議論スタッフは、科学の世界の王になるべき人達です。
情報や権限を持つべき人です。
わたしは2ちゃんねるではなく、ガチ議論スタッフに科学の未来を委ねたいと思います。
すなわち、科学の世界に生きる私自身を、2ちゃんねるではなくガチ議論スタッフに委ねたいということです。

わたしは、捏造に本当に苦しんだ人間です。
前任者の捏造が何を現場で生むか、知っています。
現場を本当に救うのはどんな人か、知っています。
そのような人でなければこのサイトは作れないことを、知っています。

膿みは、今出すべきです。
STAPと分生研が終わって一段落なんて雰囲気は許しません。

それに、東大の事例を考えるに、コピペがあっても半分近くは不正ではない。
さらにその半分くらいは実行犯がわからない。
コピペの指摘はそこまで重いものではないということです。

ストックは82報になりました。コレスポ53人。
旧帝を全部揃えることも出来ました。
最近疎かだった同じ著者について掘り下げることをまた始めます。100はすぐ超えて、悪質なグループだけに投下を絞ることも出来るでしょう。

匿名A氏は、ここで指摘された論文の著者らが直ちに実験ノートを公開すれば画像が酷似していることに関する疑問も氷解するであろうと期待しています。

以下、80報ほどの類似画像を含む論文を記載しました。(中略)トータルで100報にはなりました。(中略)全 部当然生データが直ぐに公開され、石井先生のようにうっかりミスと納得できますように。私は石井先生のすぐ公開されたノートを見て、石井先生はしっかりし た先生だと思いました。私の中の石井先生の評価は非常に上がりました。他にもそう思った人は少なくないはずです。私が論文を紹介した他の先生についても評 価が上がることを心から強く願っています。この気持ちは嘘ではありません。

匿名A氏の説明によれば、特定の個人を告発する意図で調べたわけではなく、手当たり次第に調べてみたらこのような結果になってしまったようです。あまりの多さに途中で疲れて作業を切り上げてしまったそうなので、もしも網羅的に調査したら84報どころではなくなるかもしれません。特定の大学を告発する意図もなかったようですが、結果的に、画像酷似論文の多さに関しては大阪大学医学部が際立っていたそうです。

(中略)

・ 阪大医学部で、他の組織とは別次元のことが起きているのは確かなように感じました。各コレスポにつき最低3報を目標に探していたのですが、類似の著者陣でもコレスポが異なるケースが多く、しかも類似画像が瞬時に見つかる確率が高く、次々とノルマが増えていき、悲しくなりました。類似画像の世界では、3位ではなく、すでに1位ではないかと思います。3位ではダメと言う総長は、少し自らを過小評価しているかもしれません。(中略)

・ 調査の過程ですが、まず東大から探そうと思い、TokyoをキーワードにPubmed検索で探しました。探すのは何となく1998年から2004年くらい にしました。キーワードの関係上、東大以外の東京の研究機関も見つかりました。MedicalやMedicineで検索結果を絞ると見つかる確率が飛躍的 に上がることに途中で気づき、途中で絞りました。見つかった著者の他の論文も探しました。研究費返還の事務手続きを事務の方々がしなくて済むように、経理 書類の保存義務が過ぎているであろう2008年くらいまでの論文だけを探しました。次にOsakaをキーワードにして探しました。見つかる頻度が高すぎ て、バランスが悪くなると思い、ひとまず他の地域を探すことにしました。旧帝国大学で、それまでに見つかる論文数が多かったJBC誌とBBRC誌を 1998年から2004年まで探すことにしました。キーワードの関係上、旧帝国大学と同じ所在地の研究機関も見つかりました。見つかった著者の他の論文も 調べました。最後に大阪に戻り、再び探したのですが、見つかる頻度の高さに馬鹿らしくなり、やめました。大阪を終えたら次にOncogene誌あたりを全 部探してみようと思ってましたが、大阪の調査で精神的に疲れたので結局探していません。上記以外に、途中で気分転換にアディポネクチン等をキーワードにし て探したこともあったかもしれません。また、最終的に投下しなかった13報の論文がそのチームに気づくきっかけになった場合もあります。

「類似画像=捏造」とは限らないことに関して、匿名A氏は注意を促しています。

私は自分が指摘した類似画像を捏造だとは思っていません。
そもそも、私には捏造だと判定し処分する権利はありません。

理研の石井先生の疑惑を最初に見たときは、捏造だと私は内心思っていました。しかし、すぐに公開された実験ノートを見て、こんな複雑なうっかりミスもあるんだなと納得しました。(以下略)

匿名A氏が列挙した論文は以下の通りです。括弧内の但し書きは匿名A氏自身が後から追加したコメントの内容。

#1 Nature. 1998 Jan 1;391(6662):96-9. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1a. Lane 1 is similar to Lane 5. Lane 6 is similar to Lane 10.

#2 J Biol Chem. 2000 Mar 17;275(11):8091-6. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3A. Lane 3 is similar to Lane 8, 9, and 10. Fig 3B. Lane 1 is similar to Lane 2.

#3 Arch Biochem Biophys. 2001 Apr 1;388(1):91-9. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. Lanes 2-3 are similar to lanes 9-10. Fig 4B. Lanes 2-3 are similar to lanes 9-10.

#4 Diabetes. 2002 Oct;51(10):2915-21. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5. 18S of B is similar to that of C (horizontal flip).

#5 Nat Med. 2002 Jul;8(7):731-7. Epub 2002 Jun 17. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1b. +/- is partially similar to -/-. Fig 2. 18S of a is similar to that of b. Fig 5a. 28s of TNF-alpha(-) and Adiponectin(+) is similar to that of TNF-alpha(+) and Adiponectin(+).

#6 J Biol Chem. 2003 Jun 13;278(24):21344-51. Epub 2003 Apr 1. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5. Lane 2 is partially similar to lane3.

#7 Mol Cell Biol. 1996 Jun;16(6):3074-84. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 7C. Lane a is similar to Lane b.

#8 J Biol Chem. 2001 Nov 2;276(44):41245-54. Epub 2001 Aug 31. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4G. PIPs are similar to those of Fig. 5d in another paper (J Clin Invest. 2001 Oct;108(7):1001-13. #9 in this list.) The dates of revision and publication of this paper are earlier than the other paper. (#8は、どちらかといえば、The date of submission of this paper is later than that of #9. と書くべきでした。)

#9 J Clin Invest. 2001 Oct;108(7):1001-13. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 6b. The CD36 band in the lane HF is similar to the UCP2 band in the lane HF+BADGE (horizontal flip). The CD36 band in the lane HF+BADGE is similar to the UCP2 band in the lane HF+HX531 (horizontal flip).

#10 Nat Genet. 2002 Feb;30(2):221-6. Epub 2002 Jan 30. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 6. 28S in a (WAT) is similar to that of in d (BAT). 

#11 Biochem Biophys Res Commun. 2004 Oct 8;323(1):242-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. The control lanes are similar to the salicylate lanes. Fig 3B. p-Akt in Lane 3 is similar to that in Lane 7. p-Akt in Lane 5 is similar to that in Lane 6. Akt in Lane 4 is similar to that in Lane 6. Fig 4. Lane 5 is similar to Lane 7 (horizontal flip).

#12 J Biol Chem. 2001 Jul 20;276(29):27519-26. Epub 2001 May 24. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 6. E is similar to f. Fig 9. D is similar to e and f (enlarge).

#13 Exp Cell Res. 2002 Jan 1;272(1):23-31. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig7. Bone marrow cells of LZP is similar to those of CRP.

#14 Oncogene. 2002 Jan 24;21(5):844-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1b. These figures (HUVEC and ST2 cells) are similar to those of the COS7 cells in another paper (Fig. 6 in J Biol Chem. 2001 Jul 20;276(29):27519-26. #12 in this list.)

#15 Biochem Biophys Res Commun. 2002 Apr 26;293(1):332-7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1. The mice of 2 weeks are similar to those of 3 weeks (vertically enlarge).

#16 J Virol. 1999 Nov;73(11):9237-46. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5B. Some bands seem to be pasted in the figures. For example, lane 3 in the left SeV/mSF figure.

#17 J Virol. 2000 Jun;74(12):5619-28. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. In the upper figure, 4C(-) 20 is simiar to 4C(-) 26. Fig 2B. GAPDHs of Wt 14, Wt 38, 4C(-) 14, and 4C(-) 20 are similar.

#18 J Virol. 2001 Apr;75(8):3802-10. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4C. Y1+ is similar to Y2+.

#19 J Virol. 2002 Jul;76(14):7114-24. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4B. Y2.5+ is similar to Y3+.

#20 J Virol. 2004 Jul;78(14):7443-54. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5. STAT2 of None is similar to that of Cm5.

#21 J Virol. 2007 Apr;81(7):3264-71. Epub 2007 Jan 10. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4. In the most upper figure, Sev Wt 0 is similar to Sev Wt 6 in both 2fTGH STAT1(+/+) cells and U3A STAT1(-/-) cells.

#22 Biochem Biophys Res Commun. 2002 Aug 9;296(1):194-200. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3A. Lane 1 is similar to Lane2 for GluSyn.

#23 Biochem Biophys Res Commun. 2001 Nov 30;289(2):531-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1 and Fig 2. 18S rRNA of Lane 2 (monocytes) in Fig 1 is similar to that of Lane 2 (alpha-GalCer-imDCs) in Fig 2.

#24 Circ Res. 2004 Jun 11;94(11):1492-9. Epub 2004 Apr 29. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2 and Fig 3. E1A in the lanes 1-2 of Fig 2A is similar to that in the lanes 2-3 of Fig 3C.

#25 J Biol Chem. 2002 Apr 5;277(14):12351-8. Epub 2002 Jan 22. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1B. D is similar to g. Fig 3B. The right part of Myc-MST1 WT is similar to that of Flag-MST1 444P.

#26 J Biol Chem. 1999 Apr 23;274(17):11995-2000. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4. EDTA is similar to Fuc.

#27 J Biol Chem. 2000 Jun 9;275(23):17233-6. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2B. Input of 0-45 is similar to that of 90-180. Fig 4. ECT2-N1(-) 45 is simialr to ECT2-N1(+) 45.

#28 J Biol Chem. 2002 Dec 27;277(52):50966-72. Epub 2002 Oct 21. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2B and Fig 4C. The actin in Fig 2B is similar to that of Fig 4C (horizontally flip.) Fig 4C and Fig 5D. The six COX bands in Fig 5D is similar to six bands of actin in Fig 4C.

#29 J Biol Chem. 2001 Mar 23;276(12):9460-7. Epub 2000 Dec 19. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1B. In the lower figure, RET-2B is similar to RET-2B/LAR.

#30 J Biol Chem. 1999 Dec 31;274(53):38251-9. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. 37 degrees Celsius is partially similar to 30 degrees Celsius.

#31 Nucleic Acids Res. 2000 Mar 15;28(6):1355-64. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 7A. 18S rRNA of placenta is similar to that of mammary gland in another paper (Fig 2A in Mol Biol Cell. 1999 May;10(5):1637-52.)

#32 DNA Repair (Amst). 2007 Jun 1;6(6):760-9. Epub 2007 Feb 5. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5A. GAPDH of W in 5 weeks is similar to that of SP in 16 weeks.

#33 J Biol Chem. 2000 Aug 18;275(33):25146-54. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 6D. pMAPK of S10A is similar to that of WT-DMSO (horizontally flip). You can pay attention to the noise of the rim.

#34 J Biol Chem. 2002 Apr 26;277(17):14355-8. Epub 2002 Mar 11.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1B. Tubulin in cytoplasm is similar to that in whole cell.

#35 EMBO J. 2002 Dec 2;21(23):6312-20. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2C. p47phox is similar to p67phox.

#36 J Biol Chem. 2003 Jul 4;278(27):25234-46. Epub 2003 Apr 25. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3A. The two lower left cells are similar between wt and P156Q.

#37 J Biol Chem. 2003 Jun 20;278(25):22908-17. Epub 2003 Apr 7.  http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2. MRP11-116/MRP2 is similar to MRP11-1480/MRP2.

#38 J Virol. 1999 Oct;73(10):7981-7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1A. Lane 1 is similar to Lane 3 and 6. Lane 2 is similar to Lane 8. Lane 4 is similar to Lane 7.

#39 J Biol Chem. 2002 Jan 18;277(3):2132-7. Epub 2001 Oct 22. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2b. The FLAG band of GST-WT is similar to the GST band of WT-WT. Fig 3A. The left upper figure is similar to the left lower figure (horizontally flip).

#40 J Biol Chem. 2004 Jun 11;279(24):25474-82. Epub 2004 Mar 22. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5A. Lanes 8-9 are similar to lanes 12-13.

#41 Diabetes. 2003 Nov;52(11):2657-65. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3B. APS bands in GFP lanes seem to be pasted in. IR beta bands in GFP lanes are similar to those in APS(YF) lanes.

#42 J Biol Chem. 1999 Nov 5;274(45):32309-17. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4A. Lane 1 is similar to Lane 15 (horizontally flip). Lanes 12-13 are similar to Lane 16-17 (horizontally flip).

#43 J Biol Chem. 2000 Sep 1;275(35):26856-63. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 9C. Mock-transfected cell (-) is somewhat similar to Mutant probe (-). Mock-transfected cell oligo TRE is somewhat similar to Mutant probe Ang II.

#44 J Biol Chem. 2000 Feb 11;275(6):4369-73. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3. GAPDHs of Time 4, 5, and 6 are similar in PAO+. Fig 4. iNOS mRNA of Lane +-+- is similar to that of Lane +–+.

#45 Hepatology. 2000 Nov;32(5):1037-44. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3. 3h None is similar to 5h Hypo.

#46 J Hepatol. 2004 Apr;40(4):616-23. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4A. Phospho-Akt of 2h(-) is similar to that of 2h(+).

#47 Am J Physiol Endocrinol Metab. 2005 May;288(5):E876-82. Epub 2004 Dec 21. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4A. 28S and 18S in lanes 1-6 are similar to those in another paper (Fig 1A in Biochem Biophys Res Commun. 2004 May 14;317(4):1075-9.)
Fig 5A. In the adiponectin bands, Lanes 1-4 are similar to lanes 12-15. Lanes 6-7 are similar to lanes 9-10.

#48 Biochem Biophys Res Commun. 2001 Apr 27;283(1):255-9. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2. V/Vsp in lanes 1-3 is similar to V/Vsp in lanes 7-9, STAT1 in lanes 10-12, and STAT1 in lanes 13-15. IRF9 in lanes 10-12 are similar to that in lanes 13-15.

#49 J Virol. 2002 Dec;76(24):12683-90. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 8. In the Blot:FLAG, FL is similar to FLMT in the two middle lanes (vertically enlarge).

#50 J Biol Chem. 2003 Oct 24;278(43):41654-60. Epub 2003 Aug 13. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4. HSF-1s of OSC19-MP(mock) C and IFN in Fig 4A, from total cell lysate, are similar to those of OSC19 cytosol C and IFN in Fig 4C. HSF-1s of OSC19-MP(STAT-1) C and IFN in Fig 4A, from total cell lysate, are similar to those of OSC19-MP cytosol C and IFN in Fig 4C. (#50の説明の最後はFig. 4CではなくてFig 4Dでした。)

#51 J Med Virol. 2006 Apr;78(4):417-24. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2. GAPDH of RSV 5 is similar to that of inactivated SARS 1. GAPDH of FluAV 1 is similar to that of inactivated SARS 2. Fig 5. GAPDH of RSV 5 is similar to that of inactivated SARS 1. GAPDH of FluAV 1 is similar to that of inactivated SARS 2.

#52 Cancer Lett. 1999 Jul 19;142(1):23-30. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2B. hTERT of lane D is similar to that of lane F2.

#53 Leukemia. 2000 Jul;14(7):1260-5. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1b and 3b. hTERT of Fig 1b is similar to that of Fig 3b (horizontally flip).

#54 Biochem Biophys Res Commun. 2004 Apr 2;316(2):528-32. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1. 15 N is partially similar to 30 N.

#55 Cancer Lett. 2008 Mar 18;261(2):226-34. Epub 2007 Dec 21. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1. K562/hTERT 1 is similar to K562/hTERT 10.

#56 Cancer Res. 2006 Oct 15;66(20):9913-20. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4C. ADAM28 of Day3 is similar to that of Day 31 (vertically enlarge). Fig 5C. Lane 1 is similar to Lane 4.

#57 Biochem Biophys Res Commun. 2005 Mar 25;328(4):1232-43. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2. Two exon 3 figures are similar.

#58 Biochem Biophys Res Commun. 2000 Aug 11;274(3):603-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5. Two right lower bands in Fig 5A are similar to two left lower bands in Fig 5B.

#59 Biochem Biophys Res Commun. 2001 May 11;283(3):707-14. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3C. In the lower figure, the left four bands are similar to the middle four bands and the right four bands.

#60 Nat Cell Biol. 1999 Dec;1(8):479-85. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4a. Western(PS) of A246E is partially similar to that of delta E9.

#61 J Biol Chem. 2001 Jan 19;276(3):2108-14. Epub 2000 Oct 12. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1. Lanes N and H in Fig 1C are similar to Fig 1D.

#62 J Biol Chem. 2001 Nov 16;276(46):43446-54. Epub 2001 Sep 10. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1a and Fig 2a. Ten actin bands of Fig 1a are similar to those of Fig 2a.

#63 J Biol Chem. 2002 Apr 12;277(15):12931-6. Epub 2002 Jan 25. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3b. PY20 of Src is similar to Lysate of Src.

#64 Circulation. 2002 Jun 18;105(24):2893-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2. ERK of Fig 2C is similar to that of Fig 2D (horizontally flip, change brightness and contrast).

#65 J Biol Chem. 2002 Mar 8;277(10):8076-82. Epub 2002 Jan 4. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3. Cyclin D1 and actin of 694F are somewhat different with those of delta p85.

#66 J Biol Chem. 2005 Feb 11;280(6):4929-39. Epub 2004 Nov 24. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. Bcl-2 and actin of ED(-) are similar to those of ED(+).

#67 J Biol Chem. 2005 Apr 1;280(13):13163-70. Epub 2005 Jan 25. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5E. The left four lanes of CHO-B are similar to the right four lanes of CHO-B.

#68 J Biol Chem. 2001 Mar 30;276(13):9688-98. Epub 2000 Dec 14. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2C. Lane +— is similar to Lane +-+-. Fig 5B. Lane 1 is similar to Lane 3.

#69 J Biol Chem. 2001 Dec 14;276(50):47642-9. Epub 2001 Oct 10. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1B. Lane 2 is similar to Lane 4 (horizontally flip). Fig 5A. ERKs of lanes 1-4 are similar to those of lanes 5-8 (horizontally flip). Fig 7A. The upper two bands of pSG5 are similar to those of ER beta (horizontally flip).

#70 J Biol Chem. 2001 Feb 2;276(5):3459-67. Epub 2000 Oct 23. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 7B. pSG5 is similar to ER beta (horizontally flip).

#71 J Biol Chem. 2002 Sep 6;277(36):33490-500. Epub 2002 Jun 26. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1B. ERKs of lanes 1-3 are similar to those of lanes 4-6. Fig 3A. Lanes 1-2 of Caov-3 are similar to lanes 3-4 of Caov-3 (horizontally flip). Fig 4A. Lanes 1-2 of BAD are similar to lanes 3-4 of BAD. Fig 6B. Phospho-Raf of Lane 2 is similar to that of Lane 5.

#72 Endocrinology. 2004 Jan;145(1):49-58. Epub 2003 Sep 18. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 3B. Akt of lanes 1-2 is similar to that of lanes 3-4.

#73 Clin Cancer Res. 2004 Nov 15;10(22):7645-54. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1D. Akt of lanes 1-2 is similar to that of lanes 3-4.

#74 Endocrinology. 2004 Mar;145(3):1302-13. Epub 2003 Nov 26. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 8B. Lane 1 of A2780 is similar to Lane 3 of Caov-3.

#75 J Biol Chem. 2004 May 28;279(22):23477-85. Epub 2004 Mar 16. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. Lanes 2-4 of actin are similar to lanes 6-8 of actin (horizontally flip).

#76 J Biol Chem. 2000 Nov 10;275(45):35051-62.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 7C. Lanes i, j and k of abDbf4p are somewhat similar.

#77 Proc Natl Acad Sci U S A. 2000 Dec 5;97(25):13824-9. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 4A. The most upper figure of insulin is similar to that of IGF-1.

#78 J Biol Chem. 1999 Mar 26;274(13):8531-8. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5C. In the Ad5IkB lane, Bcl-2 is similar to Bcl-x (horizontally flip and vertically enlarge). In the Ad5LacZ+TNF lane, Bcl-2 is partially similar to Bcl-x (vertically enlarge).

#79 FASEB J. 2001 May;15(7):1218-20. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 1A. Akt of Cont is similar to that of VEGF.

#80 Nat Med. 2001 Mar;7(3):317-23. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2a. Actin of Astrocytes is similar to that of another paper (Fig 5C in J Biol Chem. 2001 Feb 2;276(5):3046-53. Epub 2000 Oct 20.)

#81 J Biol Chem. 2003 Jan 17;278(3):2058-65. Epub 2002 Nov 7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2. wt is similar to delta alpha 1.

#82 J Biol Chem. 2001 Sep 7;276(36):34259-69. Epub 2001 Jul 2. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 7. SRE-352 is similar to SRE-344 (vertically enlarge).

#83 J Biol Chem. 2005 Mar 18;280(11):10468-77. Epub 2005 Jan 7. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 5B. IB:anti-V5 of STAM1 is similar to that of STAM1-mUIM.

#84 Cancer Res. 2007 Jun 1;67(11):5162-71. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pu… Fig 2A. The well of WT is similar to that of control.

匿名A氏が言うように全てが匿名A氏の見間違いであって欲しいものです。オープンアクセスの雑誌でない場合、一般の人が画像の類似具合を直接原著に当たって確認することができませんが、上記84報に関する画像の類似性を解説したPDFファイルがインターネット上にあったのでリンクを紹介しておきます。

AlmostIdentical (画像データの類似性を解説したPDFファイル https://infotomb.com/r3hso.pdf

(1月16日 追記):このPDFを作成された方と匿名A氏とは別人だそうです。

.. また、PDFを作ったのは私ではありません。あのPDFから抜けている論文や指摘は多々あり、あのPDFだけ見て状況判断すると、足をすくわれることも起こるかもしれません。 ..

http://www.peeep.us/aae06dcf

ちなみに、平成26年8月26日付けの文部科学大臣決定「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(下村博文 文部科学大臣)では、不正行為への対応に改定がありました。

第3節 研究活動における特定不正行為への対応
3 特定不正行為の告発の受付等
3-4 告発の受付によらないものの取扱い
③ 特定不正行為の疑いがインターネット上に掲載されている(特定不正行為
を行ったとする研究者・グループ、特定不正行為の態様等、事案の内容が明
示され、かつ不正とする科学的な合理性のある理由が示されている場合に限
る。)ことを、当該特定不正行為を指摘された者が所属する研究機関が確認
した場合、当該研究機関に告発があった場合に準じた取扱いをすることがで
きる。

今回のようなインターネットを利用した匿名による告発にも対応できるようにガイドラインが改善されています。

上で紹介した画像データ類似性解説PDFファイルの中身を見る限り、「類似」というよりも「同一」にしか見えないものが多いようです。単純な間違いでは説明できないものもあり、どうすればこのような「ミス」が起こりえるのかを考えるのは第三者には困難です。当事者である論文著者らの説明を聞くしかありません。研究不正の疑義が生じているわけですから、今後、該当する大学、研究機関が適切な対応を取ることが期待されます。

 

参考

  1. 捏造問題にもっと怒りを(日本の科学を考える):匿名A氏の全コメントが掲載されているウェブページ。
  2. 大阪大学等多数の研究機関の論文の不適切さについて(世界変動展望):記事のコメント欄に画像の類似性をまとめたPDFおよびパワーポイントのファイルへのリンクがありましたので、それを記事内で「画像データの類似性を解説したPDFファイル https://infotomb.com/r3hso.pdf」として紹介させていただきました。
  3. 平成27年年頭挨拶 平成27年1月5日 大阪大学総長 平野俊夫:”‥研究における不正行為の防止に対する体制も本年中に整える予定にしています。実施に際しましては、皆様のご協力をお願いします。教職員の皆様には、大学人としての見識を疑われることのないよう厳しく自らを律するとの固い決意をしていただきますように重ねてお願いします。大学としても、不祥事に対しては厳正に対応していく所存です。‥”
  4. 研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン 平成26年8月26日 文部科学大臣決定 (PDFファイル)
  5. 「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」に関する意見募集の結果について 平成26年8月26日 文部科学省科学技術・学術政策局人材政策課 (PDFファイル):”‥匿名の告発については、従前のガイドラインにおいても、顕名に準じた取扱いができることとしており、本ガイドラインにおいても、その方針を踏襲しています。他方、インターネットの発達により、不正行為の疑いに関する指摘が、必ずしも書面等を通じた告発による形式ではない場合も多く想定されるところ、本ガイドラインにおいては、インターネットでの指摘も告発があった場合に準じて取り扱うことができることとしました。‥”
  6. 新しい研究不正ガイドラインの論点 ―ガイドラインの課題とガイドライン後の課題― 調査と情報―ISSUE BRIEF― NUMBER 835(2014.11. 6.) (PDFファイル) 国立国会図書館 調査及び立法考査局文教科学技術調査室:”米国では研究の実施中に「データに変更を加えたり、データを省いたり」することは定義上、改ざんに相当する。「データを省く」には研究記録が存在しないことや研究記録の紛失等により適切に研究記録を提示できない場合も含まれる。一方、日本の新旧ガイドラインでは、研究途中の研究記録の改ざんは研究不正には該当せず、研究成果が掲載された論文に現れたデータや結果の改ざんのみが研究不正(特定不正行為)と判断される。米国の場合には、この研究不正の定義、改ざんの定義から、研究記録の不存在により、研究結果の真正性を示せないこと自体が改ざんであると判断されることになる。したがって、研究活動にとって研究記録は大変重要なものとなる。日本の新旧ガイドラインでは、研究途中の段階で改ざんが発覚したとしても、それを論文として発表しなければ、研究不正を問われることはない。しかし、後述するように新旧ガイドラインでも研究記録の不存在は研究不正と「みなされる」又は「認定される」根拠となる。”
  7. 『3位じゃダメなんです。』  (大阪大学 ニュース&トピックス 2015年1月16日):”12月28日(日)、29日(月)の日本経済新聞(全国版)朝刊に、大阪大学の広告を掲載しまし た。”  “『3位じゃダメなんです。』阪大なら実現できる。世界トップ10の研究型総合大学を。ダメなんです。阪大は、日本で3番目の大学じゃダメなんです。海外 学術誌の掲載論文数や研究費の獲得など、国内3位の実績は数あれど、阪大が目指すべきものはそこじゃない。世界の大学、研究機関、企業が、真っ先にイメー ジする日本の大学、基礎研究や応用研究で、世界にインパクトを与える研究型総合大学になるのです。”

 

研究不正関連のその他の記事

がん幹細胞ニッチ内のがん抑制遺伝子Fbxw7

がん抑制遺伝子Fbxw7の「がん幹細胞ニッチ」における働きを九大の研究グループが発見 細胞外環境を標的とする新しい治療戦略の可能性も

がんの細胞外環境(”がん幹細胞ニッチ”)を標的とする新しい治療戦略の可能性を示す研究成果を、九州大学の研究グループがThe Journal of Clinical Investigation誌に発表しました。

九州大学プレスリリースによると、この研究成果のポイントは、

  1. がんニッチの形成に関わる重要たんぱく質「Fbxw7」が「CCL2」を抑制する作用をもつことを発見
  2. Fbxw7が低下するとCCL2が上昇し、がん転移が増加する。
  3. 上昇したCCL2を阻害するプロパゲルマニウム(既に肝炎治療薬として臨床的に使用されている既存薬)によって、がん転移を強力に抑制することに成功。

とのことです。

論文の要旨

The gene encoding F-box protein FBXW7 is frequently mutated in many human cancers. Although most previous studies have focused on the tumor-suppressive capacity of FBXW7 in tumor cells themselves, we determined that FBXW7 in the host microenvironment also suppresses cancer metastasis. Deletion of Fbxw7 in murine BM-derived stromal cells induced accumulation of NOTCH and consequent transcriptional activation of Ccl2. FBXW7-deficient mice exhibited increased serum levels of the chemokine CCL2, which resulted in the recruitment of both monocytic myeloid-derived suppressor cells and macrophages, thereby promoting metastatic tumor growth. Administration of a CCL2 receptor antagonist blocked the enhancement of metastasis in FBXW7-deficient mice. Furthermore, in human breast cancer patients, FBXW7 expression in peripheral blood was associated with serum CCL2 concentration and disease prognosis. Together, these results suggest that FBXW7 antagonizes cancer development in not only a cell-autonomous manner, but also a non-cell-autonomous manner, and that modulation of the FBXW7/NOTCH/CCL2 axis may provide a potential approach to suppression of cancer metastasis. (http://www.jci.org/articles/view/78782

参考

  1. F-box protein FBXW7 inhibits cancer metastasis in a non-cell-autonomous manner.  J Clin Invest. doi:10.1172/JCI78782. Published January 2, 2015
  2. がんの転移を強力に抑制する既存薬を発見 (九州大学 プレスリリース 平成26年12月17日)
  3. 九大 がん転移抑える薬 (NHK NEWSWEB 2015年1月3日):”中山主幹教授は「既存の薬の成分ならば新薬に比べて格段に早く実用化できる可能性があり、今回の発見のメリットは大きい。今後、臨床を重ねて早くがんの患者に届けたい」と話しています。”
  4. 既存薬で転移抑制 九大教授ら、マウス実験で確認(毎日新聞 1月3日):”がんを転移しやすくするたんぱく質を世界で初めて突き止めたとの研究成果を、中山敬一・九州大教授(分子医科学)らのチームが2日の米科学誌ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーションに発表した。既存の肝炎治療薬に、このたんぱく質の働きを妨げて転移を抑える効果があることもマウスの実験で確かめた。研究チームは「ヒトへの有効性は今後の治験(臨床試験)を待つ必要があるが、副作用が少ない薬なので期待が持てる」と話す。”
  5. がん転移を抑える薬剤 九大、マウス実験で確認(日本経済新聞 2015/1/3):”この薬剤はB型慢性肝炎の治療薬として処方されているプロパゲルマニウム。ニッチを狙い転移を抑える初めての薬となり得るが、現段階ではがん患者への効果は未確認。チームは「国の承認が出るまで使用しないで」と警告している。”
  6. がん転移、たんぱく質関与=薬で抑制、マウスで確認-九州大(時事ドットコム):”がんの周りにあり、増殖や転移を促す細胞の集まり「がんニッチ」に関わるたんぱく質を発見したと、中山敬一九州大教授らの研究グループが発表した。論文は3日、米医学誌に掲載される。”
  7. B型肝炎治療薬、がん転移抑制の可能性 九州大チーム(朝日新聞APITAL):”B型肝炎治療用の飲み薬に、がんの転移を抑える可能性があるとするマウスでの研究結果を、九州大の研究チームがまとめた。ヒトでの臨床試験(治験)で有効性や安全性を確かめ、5年程度で公的医療保険の適用を目指すという。”

大学入学センター試験は廃止、大学入学試験制度を抜本的に改革

文部科学省の中央教育審議会は、平成26年12月22日に「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜 の一体的改革について」という答申を取りまとめました。、現行の大学入試センター試験を廃止して、新たな試験制度を導入するなど非常に大きな転換を図ろう とするものです。

教育改革を行う場合、そもそもどのような人材を育てたいのかを明確にする必要があります。

高等学校教育、大学教育を通じて育むべき「生きる力」を、それを構成する「豊かな人間性」「健康・体力」「確かな学力」それぞれについて捉え直すと、以下のように考えることができる。

① 豊かな人間性
高等学校教育を通じて、国家及び社会の責任ある形成者として必要な教養と行動規範
を身に付けること。大学においては、それを更に発展・向上させるとともに、国、地域
社会、国際社会等においてそれぞれの立場で主体的に活動する力を鍛錬すること。

② 健康・体力
高等学校教育を通じて、社会で自立して活動するために必要な健康・体力を養うととも
に、自己管理等の方法を身に付けること。大学においては、それを更に発展・向上させ
るとともに、社会的役割を果たすために必要な肉体的、精神的能力を鍛錬すること。

③ 確かな学力
学力の三要素を、社会で自立して活動していくために必要な力という観点から捉え直
し、高等学校教育を通じて(ⅰ)これからの時代に社会で生きていくために必要な、「主体
性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度(主体性・多様性・協働性)」を養うこと、(ⅱ)
その基盤となる「知識・技能を活用して、自ら課題を発見しその解決に向けて探究し、成
果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」を育むこと、(ⅲ)さらに
その基礎となる「知識・技能」を習得させること。大学においては、それを更に発展・向上させるとともに、これらを総合した学力を鍛錬すること。

本答申における「学力」とは、上記の三要素から構成される「確かな学力」のことを指す。なお、特に「多様性」については、生徒、学生に、多様性を受容し尊重する力を
育んでいく必要があるが、そのためには、高等学校や大学の側において、多様な生徒、学生が多様な環境の中でともに学ぶことのできる場を用意する必要がある。
(中略)
また、グローバル化の進展の中で、言語や文化が異なる人々と主体的に協働していくためには、国際共通語である英語の能力を、真に使える形で身に付けることが必要であり、単に受け身で「読むこと」「聞くこと」ができるというだけではなく、積極的に英語の技能を活用し、主体的に考えを表現することができるよう、「書くこと」「話すこと」も含めた四技能を総合的に育成・評価することが重要である。また、英語のみならず、我が国の伝統文化に関する深い理解、異文化への理解や躊躇交流する態度などが求められることにも留意が必要である。(答申6-7ページ)

ここで示された人間像はまさに科学者になるために必要なものです。現行の高校教育、大学入試、大学教育をくぐってきた研究者は、非常に恵まれない環境で育ってきたということでしょうか?

現行の高校教育、大学教育、大学入試制度の何が問題なのでしょうか?一口に高校、大学、と言っても生徒や学生の学力には非常に大きな幅があるため、答申では「選抜性が高い大学」と「選抜性が中程度の大学」といった表現を用いて、個々のケースを分析しています。

学校の教育方針が選抜性の高い大学への入学者数を競うことに偏っている場合には、高等学校教育が、受験のための教育や学校内に閉じられた同質性の高い教育に終始することになり、多様な個性の伸長や幅広い視野の獲得といった、多様性の観点からは不十分なものとなりがちである。こうした教育では、大学入試に必要な知識・技能やそれらを与えられた課題に当てはめて活用する力は向上させられたとしても、自ら課題を発見し解決するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力や、主体性を持って、多様な人々と協働しながら学んだ経験を生徒に持たせることはほとんどできない。そうした生徒がそのまま選抜性の高い大学に入学した場合、一定の知的な能力を持っていたとしても、主体性を持って他者を説得し、多様な人々と協働して新しいことをゼロから立ち上げることのできる、社会の現場を先導するイノベーションの力を、大学において身に付けることは難しい。(答申4ページ)

ペーパーテストで測れるのが人間の能力のごくごく一部であることは間違いないでしょう。

大 学入学者選抜については、前述のように、知識の記憶力などの測定しやすい一部の能力や、選抜の一時点で有している能力の評価に留まっていたり、丁寧な評価 よりも学生確保が優先されるなど、高等学校教育で培ってきた力や、これからの大学教育で学ぶために必要な力を評価するものとなっていない。そうした背景に は、年齢、性別、国籍、文化、障害の有無、地域の違い、家庭環境等の多様な背景を持つ高校生一人ひとりが、高等学校までに積み上げてきた多様な経験や能力 を度外視し、18歳頃における一度限りの一斉受験という画一化された条件において、知識の再生を一点刻みで問う問題を用いた試験の点数による客観性の確保 を過度に重視し、そうした点数のみに依拠した選抜を行うことが「公平」であるという、従来型の「公平性」の観念が社会に根付いていることがあると考えられ る。(5ページ)

しかし大学入試に要求される公平性を考えたときに、ペーパーテストほど公平なものはありません。人間が人間を選ぶ面接試験でどれだけ公平性が確保できるのでしょうか?実は、人生における最初で最後の、全ての人にとって最も公平な機会が大学入学試験(ペーパーテスト)だったという見方もできます。

ペーパーテストは知識の記憶力を測定しているとか、受験テクニックがないとだめとかまことしやかに言われますが、それはテストそのものよりもむしろ勉強のやり方に問題があります。同じ問題を解くにしても、暗記や(ありもしない)「受験テクニック」に頼るより、その場で問題に向き合って、自分の頭で考えて解くような学習を普段から心がけたほうが楽ですし、そうしている生徒のほうが結果的に良い成績を収めるものです。

センター試験が廃止され、代わりに”「思考力・判断力・表現力」を中心に評価する”(答申10ページ)新テストとして、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)が導入される予定です。大学入学者選抜では、この新テスト導入だけでなく、さらに多様な資料を選抜時の判断材料として利用することを大学に要求しています。

具体的な評価方法としては、下記②に示す「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の成績に加え、小論文、面接、集団討論、プレゼンテーション、調査書、活動報告書、大学入学希望理由書や学修計画書、資格・検定試験などの成績、各種大会等での活動や顕彰の記録、その他受検者のこれまでの努力を証明す る資料などを活用することが考えられる。「確かな学力」として求められる力を的確に把握するためには、こうした多元的な評価尺度が必要である。各大学はその教育方針に照らし、どのような評価方法を組み合わせて選抜を行うかを、応募条件として求める「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の成績の具体的提 示等を含め、アドミッション・ポリシーにおいて明確に示すことが求められる。その際、英語については、高等学校教育において育成された「聞くこと」「話す こと」「読むこと」「書くこと」四技能を、大学における英語教育に引き継いで確実に伸ばしていくことができるよう、アドミッション・ポリシーにおいても四技能を総合的に評価することを示すこととし、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」における英語の扱いも踏まえつつ、四技能を測定する資格・検定試験 の更なる活用を促進すべきである。(12ページ)

大学入試で面接、集団討論、プレゼンテーションの配点が高いと、おとなしい性格の人や人前で緊張しやすい人は不利になるかもしれません。

新しい大学入学希望者学力評価テスト(仮称)がどのようなものになるのか、その青写真が答申では示されています(下では一部を紹介)

「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の在り方
◆ 「知識・技能」を単独で評価 するのではなく、「知識・技能を活用して、自ら課題を発見し、その解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」 (「思考力・判断力・表現力」)を中心に評価
◆ 「教科型」に加えて、現行の教科・科目の枠を越えた「思考力・判断力・表現力」を評価するため、「合教科・科目型」「総合型」の問題を組み合わせて出題す る。… 将来は「合教科・科目型」「総合型」のみとし、教科・科目に必要な「知識・技能」と「思考力・判断力・ 表現力」を総合的に評価することを目指す。
◆ 多肢選択方式だけではなく、記述式を導入
◆ 年複数回実施
◆ 「1点刻み」の客観性にとらわれた評価から脱し、… 段階別表示による成績提供
◆ CBT方式での実施
◆ 特に英語については、四技能を総合的に評価できる問題の出題(例えば記述式問題など)や民間の資格・検定試験の活用により、「読む」「聞く」だけではなく 「書く」「話す」も含めた英語の能力をバランスよく評価
◆ 選抜性の高い大学が入学者選抜の評価の一部として十分活用できる水準の、高難度の出題を含む
◆ 社会人等を含め誰でも受検可能
◆ 入学希望者の経済的負担や受検場所、障害者の受検方法を考慮

 センター試験では、そもそも思考力や論理的な判断力などを問うために十分練られた問題が出題されてきたわけで、思考力を判断するのはセンター試験ではできないので新テストを作るといわんばかりの表現は、ミスリーディングです。解答者によく考えさせるような良問を出す大学もあれば、問題のための問題でしかな くて解くのも時間の無駄という問題を出している大学もあります。そういう中にあって、センター試験は良問が揃っているといえるでしょう。これをわざわざ廃止して別のテストを導入する必要性が明確ではありません。

大学がペーパーテスト以外の多様な尺度で受験生を選抜するにしても、それが学力の低下と引き換えになっては困ります。少なくとも、将来研究職や技術職に就く人には一定の水準の学力が要求されます。また、大学入学試験で有利になるからという理由でボランティアをやったり、何か一芸に秀でるように習い事をしたりするのは全くお勧めできないことですが、入試改革にあわせてそのような風潮が今後広まってしまうかもしれません。

多様な生徒を受け入れるためのAO入試のはずが、「AO入試突破専用のワンパターンな思考法」しか持たない学生ばかり集まってしまったら本末転倒です。「ペーパーテストでしか能力を発揮できない頭の良さ」を持った学生ばかりという議論と大差なくなります。

参考

  1. 新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)(中教審第177号)(文部科学省 中央教育審議会 平成26年12月22日)
  2. 【アンケート結果】センター試験廃止に賛成or反対? (教員STATION 2014/02/21):”在学中に複数回の試験を行うことで、生徒が部活動などに集中することができなくなり、受験勉強ばかりの学校生活になってしまう恐れはあるという意見が出ています。”
  3. 「万能細胞」小保方晴子さんは早稲田大理工卒 出身者は「私大初のノーベル賞だ」「慶応に一矢報いた」大はしゃぎ(JCASTニュース 2014/1/30):”多様な人材を入学させる機会として各大学が採用している「AO入試」だが、一芸に秀でてはいるものの授業についていく学力のない人物が「もぐりこむ」仕組みだとして批判的な見方もある。”
  4. 受験を知らない子供たち、懸念は学力低下より突破力 (東洋経済2011年01月26日):”基礎学力の低下も確かにあるが、企業の採用担当者が首をかしげるのは、コミュニケーション能力や競争心のなさ.”
  5. 大学にとって必要悪以下のAO・一芸入試学力のない学生を大学に入れることの危険性を認知せよ (JBPRESS 2014.12.05):”研究倫理崩壊事件の類はすべからく、そういう基礎能力のない人、本来研究職にいてはいけない種類の人間、独自の開発能力に欠ける人材が、何か作ったようなポーズを取るウソの上に発生していることに、注意しなければなりません。”
  6. 日本のAO入試はなぜ上手くいかないのか(人類応援ブログ 2014年11月25日):”しかし問題なのは、この「履歴書のキラキラ」がお金で買えてしまう構造を持っていることです。”
  7. AO義塾:”AO入試において、慶應合格者数 塾・予備校No.1へ!(当塾調べ、2013年11月現在)”
  8. リメディアル教育(高等学校課程の補修教育に限る)について アンケート調査回答票(内閣府)   1.北海道大学~23.東京外国語大学  24.東京学芸大学~45.愛知教育大学 46.名古屋工業大学~68.香川大学  69.愛媛大学~86.政策研究大学院大学
  9. 名古屋大学 教養教育院 e-learning サイト 名大生によるe学習コミュニティ形成
  10. 東北大学学習支援センター SLA 主に学部3年生~院生の学生がSLAとして、全学教育を受ける学部1・2年生の学習サポートを行っています。
  11. 鹿児島大学 H26年度新入生対象 補習教育のお知らせ 高等学校までの学習内容を復習し、大学の授業にスムーズに移行していただくために、補習教育を実施しています。
  12. 中堅文科系大学におけるリメディアル科目はどうあるべきか 桃山学院大学総合研究所紀要 第35巻第3号 (PDF)
  13. 約半数の大学で高校の補習授業 「達成度テスト」導入で揺れる大学の現状を専門家が解説(ベネッセ2013/12/26):”国立でも82大学中57大学で行われているのですから、既に珍しいことではなくなっています。”
  14. 「学力低下」に悩む大学たち 高校レベルの補習4割 (JCASTニュース2010/6/2):”大学が本当に問題としているのは、いわゆる『学力』がないということではありません。今の学生が受動的で、自分で考える姿勢がないということが真の問題です。”
  15. ノーベル賞根岸氏「受験地獄万歳」にネットも沈黙 (WEB R25 2010.10.14):”「私は日本の(悪名高い)受験地獄の支持者だ」→「高度な研究になればなるほど、基本が大事になるから。それをたたきこんでくれたのが、日本の教育だった」”

分生研・加藤研に関する論文不正調査報告書 を東京大学が発表

分子細胞生物学研究所・加藤茂明研究室における 論文不正に関する最終調査報告を東京大学が発表しました。この最終報告書では、史上稀にみる論文捏造の連鎖がどのように生じたのか、研究室内の人間模様にまで踏み込んだ記述があります。

6.発生要因等
(1)本件事案においては、研究室の相当数の者により、不正行為や貼り間違い等の不適切な行為が多数発生している。これほど多くの不正行為等が発生した要因・背景としては、旧加藤研究室において、加藤氏の主導の下、国際的に著名な学術雑誌への論文掲載を過度に重視し、そのためのストーリーに合った実験結果を求める姿勢に甚だしい行き過ぎが生じたことが挙げられる。そうした加藤氏の研究室運営を同研究室において中心的な役割を担っていた栁澤氏、北川氏及び武山氏が助長することにより、特定の研究グループにおいて、杜撰なデータ確認、実験データの取扱い等に関する不適切な指導、画像の「仮置き」をはじめとする特異な作業慣行、実施困難なスケジュールの設定、学生等への強圧的な指示・指導が長期にわたって常態化していた。このような特異な研究慣行が、不正行為の発生要因を形成したものであると判断する。

旧加藤研究室には当時、大きく3つの研究グループが存在し、上述の栁澤氏が率いた(後に北川氏が引き継いだ)コファクターチーム、武山氏が率いたショウジョウバエ解析チームのほか、学外から旧加藤研究室に参画した研究者が率いたノックアウトマウス作製チームがあった。これら関係教員のうち、最初に助教として採用された栁澤氏の初期の論文に不正行為が確認され、その影響を大きく受けた北川氏がその後の多くの不正論文に関与したと考えられる。したがって、今回の不正行為には、栁澤氏と北川氏が極めて大きな影響を及ぼしており、不正行為に関与した者は両氏の指導下にあった者が大半である。事実、北川氏の転出後は不正論文が激減している。また、不正行為に関わった者の多くは、大学院学生の頃から加藤氏が指導してきた者たちで、加藤氏に従順であり、過大な要求や期待に対し、それを拒否するどころか、無理をしても応えるしかないといった意識を持つような環境が存在していたといえる。

(2)ショウジョウバエ解析チームの中核的役割を担っていた武山氏は研究室の最古のメンバーであり、学生の頃から加藤氏の指導を受け、加藤氏とともに本学にて研究室設立に従事し、栁澤氏に次いで助教となった。武山氏は加藤氏の信頼に応えるべく結果を出すことに腐心し、不正行為に関わったと思われる。栁澤氏又は北川氏と関わりの無いノックアウトマウス作製チームのメンバーの中には不正行為を行った者はいない。また、研究者としてある程度自立(キャリアを積んだ)した段階で旧加藤研究室に参加したメンバーも不正行為に関わってはいない。

(3)以上から、不正行為を行ったのは、栁澤氏、北川氏に直接指導を受け、また加藤氏の大きな影響力の下にあったメンバーであることが明らかになる。これに対し、同じ研究室に所属していた他のメンバーには不正行為とは関わりのない者もいる。それゆえ、本件は研究室全体(又はチーム全体)にわたる不正行為であるとまではいえないと判断できる。最終調査報告4-5ページ

この報告書に拠れば、加藤茂明(元)教授が捏造を部下に指示していたわけではなく、グループリーダー的な役割を担っていた二人が中心になって捏造を主導し、その研究グループに属する学生らがそれに従わざるを得なかった、もしくは上の期待に応えようとして捏造に励んだようです。加藤教授は部下に過大な期待・要求をしてこのような不正を生じさせるような特異な環境を作り出したこと、および不正の露呈を防ごうとしたことに関して責任を問われています。

この調査委員会の決定に関して加藤茂明・元教授は、論文の作製過程で研究員に対して強制的な態度や過度の要求をしたことも、そのような意図を持って発言したこともなく、不正行為が発生する環境を作り上げたとの認定には承服できない、と反論しています(NHKの報道など)。

 

東大 論文不正に元教授ら11人関与と発表

平成24年1月10日、本学に対し、加藤茂明東京大学分子細胞生物学研究所教授(当時)の主宰する研究室の関係者が発表した論文について、不正行為が存在する旨の申立てがあった。これを受け、本学においては、分子細胞生物学研究所における予備調査を経て、科学研究行動規範委員会において調査・審議を行い、論文の不正行為を認定した。このたび、本事案の調査が終了しその結果をまとめたので、公表する。

記者会見「東京大学分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における
論文不正に関する調査報告( 最終 )」の実施について
日 時:平成26年12月26日(金)9:30~11:00
場 所:東京大学総合図書館3階会議室
出席者:
濱田 純一 東京大学総長
相原 博昭 東京大学理事・副学長(科学研究行動規範担当)
原田  昇 東京大学副学長 科学研究行動規範委員会委員長
鈴木 真二 東京大学広報室長

配付資料一覧(すべてPDFファイル):
1)理事声明
2)分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における論文不正に関する調査報告(最終)
3)分子細胞生物学研究所研究不正再発防止取り組み検証委員会結果報告
4)研究倫理アクションプランに係る取組状況等について
5)東京大学の科学研究における行動規範
6)東京大学科学研究行動規範委員会規則
資料ウェブサイト http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_261226_j.html

参考

  1. 東京大学分子細胞生物学研究所・旧加藤研究室における論文不正に関する調査報告(最終)(東京大学平成26年12月26日)
  2. 東大 論文不正に元教授ら11人関与と発表(NHK NEWSWEB 12月26日):”東京大学で学位を取得した当時の学生ら6人についても、学位の取り消しを審議するということです。”
  3. 不正論文に関与、元特任講師の学位取り消し 徳島大 (朝日新聞 DIGITAL 2014年12月26日):”東京大学の加藤茂明元教授の研究グループによる不正論文に関わり博士論文を捏造(ねつぞう)、改ざんしたとして、徳島大学は26日、北川浩史(ひろちか)・元東大特任講師に授与した博士の学位を取り消した、と発表した。”
  4. 東大論文不正:捏造報告に加藤元教授「到底承服できない」(毎日新聞 2014年12月26日):”加藤氏はコメントで「関係各所に膨大な労力をおかけしたことを心よりおわびする。論文作成や受理の過程で、強制的な態度や過度の要求などをしたことはない。最終報告は私の弁明を十分に考慮せず、一部の証言のみに基づいている」と釈明した。”

小保方氏のSTAP細胞はES細胞 調査委員会報告

小保方氏保管の「STAP細胞」はES細胞 理研外部調査委員会報告書と記者会見の模様【FULL動画】

2014年12月26日に、桂勲・国立遺伝学研究所長を委員長とする外部有識者による調査委員会が、STAP細胞論文不正事件に関する調査結果を公表しました。

STAP細胞論文に関する調査結果について(理研ウェブサイト):調査報告書(全文PDFファイル)、調査報告書(スライドPDFファイル)

”STAP細胞”の残存サンプルは全てES細胞と遺伝子型が一致し、ES細胞だったと結論されました。また、過失で混入するとは考えにくいことから意図的なすり替えが行われた可能性が高いことを示唆しています。ただし、研究関係者全員が、自分はES細胞を混入させてはいないと否認したため行為を行った人間は特定されませんでした。

これだけ何回もES細胞が混入したことは、培養器具の不注意な操作による混入の可能性も考えられるが、研究者の常識としては、誰かが故意に混入した疑いを拭うことができない。(報告書13-14ページ)

混入があった場合、当事者は小保方氏と若山氏(STAP細胞からのテラトーマ作製では小保方氏のみ)しかいないように見える。しかし、当時のCDB若山研の状況調査から、必ずしもそうとは言い切れないことが判明した。STAP細胞の作製には酸処理から約7日間、細胞をインキュベーター内に放置するが、このインキュベーターが置かれた培養室は他の部屋(研究室、実験室,胚操作室)から隔離された状態にあり、クリーンベンチや蛍光顕微鏡を使用する人がときどき入る以外は、あまり人がいない状態にあった。また、若山氏の聞き取り調査から、当時のCDB若山研では、多くの人が夜中にこの部屋に入ることが可能だった。つまりインキュベーターやフリーザーへの接近が可能だった人は数多くいたことになる。したがって、作製中のSTAP細胞が入ったディッシュを判別できれば、多くの人に混入の機会があったことになる。(14ページ)

RNA-seq解析、ChIP-seq解析に関する疑義について。

小保方氏が様々なバックグラウンドの細胞を寄せ集めてRNA-seq解析、ChIP-seq解析を行ったことは自明であり、論文の記載や公共データベースに登録時の記載と異なる系統やGFP挿入のあるマウスの使用や、本来比較対象とならないデータを並べて論文に使用したことは不正の疑いを持たれて当然のことである。しかし、聞き取り調査などを通じて小保方氏は「条件を揃える」という研究者としての基本原理を認識していなかった可能性が極めて高く、意図的な捏造であったとまでは認定できないと思われる。一方、FI幹細胞データに関しては当初の解析結果が同氏の希望の分布をとらなかったこと、それにより同氏が追加解析を実施していること、当初解析結果と追加解析結果で使用したマウスの種類も含め結果が異なること、複数細胞種を混ぜた可能性が高いこと(故意か過失かは不明)から不正の可能性が示されるが、どのようにサンプルを用意したかを含め同氏本人の記憶しかないため、意図的な捏造との確証を持つには至らなかった。よって、捏造に当たる研究不正とは認められない。(報告書17ページ)

Article Fig.5c(細胞増殖率測定のグラフ)の疑義について

この実験は行われた記録がなく、同氏の勤務の記録と照合して、Article Fig.5cのように約3日ごとに測定が行われたとは認められない。小保方氏の説明を聞いた限りでは、同氏は細胞生物学の最も基礎となる細胞増殖率測定に必要な「細胞数の計測」という手技の原理と方法は理解し、最初はそれによって行なっていたものの、途中からはコンフルエントになった状態の細胞数を107とみなし、計測を怠ったものと判断した。特に、小保方氏は植え継ぎ時に細胞数を正確に計測せずに、Article Fig.5bを作成していたことを自認しているが、そうだとすると、この図は、細胞増殖率を測定したものとしては全く意味をなさない。同氏が細胞数の計測という最も基本的な操作をしていないこと、また希釈率についても1/5と説明したり、1/8から1/16と説明したりしていること、オリジナルデータによる確認もできないことから、小保方氏の捏造と認定せざるを得ない。小保方氏は、1人で細胞数を計測し、細胞増殖率測定のグラフを作成したことを認めているところ、小保方氏によってなされた行為はデータの信頼性を根底から壊すものであり、その危険性を認識しながらなされたものと言わざるを得ない。よって、捏造に当たる研究不正と判断した。
若山氏は、細胞増殖率測定のグラフ作成を小保方氏に提案した研究室の主宰者であり、小保方氏をシニア研究者として指導監督するとともに、共同研究者として、データの正当性、正確性について十分な注意を払うことが求められていた。若山氏は細胞数の計測や増殖曲線の作成に直接関与したものではないが、指導監督を怠り、データの正当性、正確性について検証することなく、このような捏造を生じさせたことの責任は過失とはいえ重大である。(18ページ)

Article Fig.2c(DNA メチル化解析データ)の疑義について

小保方氏は、自認するとおり、得られたデータのうちの一部だけを仮説に沿って意図的に選別して提示し、データの誤った解釈を誘導する危険性を生じさせた。小保方氏はこのような危険性について認識しながらデータを選別したうえ、手動で作図して存在しないデータを新たに作り上げたものである。よって、捏造に当たる研究不正と判断した。
このようなことが行われた背景には、共同研究者によるデータに対する過剰な期待があったことが推察された。若山氏は、上記のメチル化解析を小保方氏が行った研究室の主宰者であり、シニア研究者として小保方氏を指導監督するとともに、共同研究者として、データの正当性、正確性について十分な注意を払うことが求められていた。若山氏はデータの意図的な選別・提示に直接的に関与したとまでは認められないが、小保方氏が若山氏の過剰な期待に応えようとして改ざんを行った面も否定できない。少なくとも若山氏は、小保方氏の指導監督を怠り、データの正当性、正確性について検証することなく、このような捏造を誘発したと認められ、その責任は過失とはいえ極めて重大である。(20ページ)

胎盤が緑色に光ったことに関して

論文の図の説明には2つの矢印があって、胎盤と卵黄嚢とされているが、専門家の意見によれば2つとも卵黄嚢である可能性が高い。

STAP細胞の胎盤への寄与は、Letterの論点として重要であり、研究の価値を高めるために強引に胎盤と断定した可能性があるが、調査により得られた証拠に基づき認定する限り、研究不正とは認められない。(21ページ)

その他複数の疑義に関しては、実験データが提出されなかったために照合できず不正かどうかの判断がつきませんでした。

小保方氏にオリジナルデータの提出を求めたが、提出されなかった。小保方氏からオリジナルデータが提出されなかったため、不一致の認定を行うことはできず、研究不正とは認められない。(22-23ページ)

しかし、オリジナルデータや実験ノートの記載がないために不正と認めないというのはおかしな話です。オリジナルデータや実験ノートが提出できないならば不正とみなされてもしかたがないという姿勢にすべきでしょう。そうでないと、不正したあとデータを廃棄すればよいという逃げ道ができてしまいます。もはや、倫理感が非常に低い人間が一定の割合で必ず存在するという現実を認め、よく言われる「性善説」は捨てて、それでも研究不正が生じ得ないような枠組みを作る必要があります。

報告書では疑義の検証が他にもまだいくつもなされています。STAP細胞論文不正に関する責任の所在については、データ捏造を実際に行った小保方氏は当然のことですが、指導的立場にあったシニア科学者である若山氏と笹井氏の責任も非常に大きいと指摘しています。

規程での不正行為とは、「捏造、改ざん、盗用」のことである。本調査委員会は、小保方氏が細胞増殖曲線実験(Article Fig.5c)とDNAメチル化解析(Article Fig.2c)において、データの捏造という不正行為を行ったと認定した。このような不正行為が健全な科学の遂行と発展に大きな妨げになることは、言うまでもないことである。若山氏と丹羽氏については、不正行為は認定されなかった。しかし、STAP論文に関して、科学論文およびその基礎となった研究の問題点まで視野を広げると、ここで認定された研究不正は、まさに「氷山の一角」に過ぎない。たとえば、以下の4つの点をとってみても、非常に問題が多い論文と言える。
   第一は、本調査により、STAP細胞が多能性を持つというこの論文の主な結論が否定された問題である。その証拠となるべきSTAP幹細胞、FI幹細胞、キメラ、テラトーマは、すべてES細胞の混入に由来する、あるいはそれで説明できることが科学的な証拠で明らかになった。STAP論文は、ほほすべて否定されたと考えて良い。これだけ多くのES細胞の混入があると、過失というより誰かが故意に混入した疑いを拭えないが、残念ながら、本調査では十分な証拠をもって不正行為があったという結論を出すまでには至らなかった。これは、本調査委員会の能力と権限の限界でもあると考える。
   第二は、論文の図表の元になるオリジナルデータ、特に小保方氏担当の分が、顕微鏡に取り付けたハードディスク内の画像を除きほとんど存在せず、「責任ある研究」の基盤が崩壊している問題である。最終的に論文の図表を作成したのは小保方氏なので、この責任は大部分、小保方氏に帰せられるものである。また、STAP幹細胞、FI幹細胞、キメラマウス、テラトーマなどについて、作製後の解析を行ったのも大部分が小保方氏だが、その実験記録もほとんど存在しない。本当に行われたか証拠がない(行われなかったという証拠もない)実験も、いくつか存在する(細胞増殖率測定、Oct4-GFPを持つFI幹細胞の作製など)。
   第三は、論文の図表の取り違え、図の作成過程での不適切な操作、実験機器の操作や実験法の初歩的な間違いなど、過失が非常に多いという問題である。これも、図の作成や実験を行った小保方氏の責任と考えられる。
   第四は、このように実験記録やオリジナルデータがないことや、見ただけで疑念が湧く図表があることを、共同研究者や論文の共著者が見落とした、あるいは見逃した問題である。また、STAP幹細胞やキメラについて明らかに怪しいデータがあるのに、それを追求する実験を怠った問題もある。これらに関しては、STAP論文の研究の中心的な部分が行われた時に小保方氏が所属した研究室の長であった若山氏と、最終的にSTAP論文をまとめるのに主たる役割を果たした笹井氏の責任は特に大きいと考える。
   最後の問題について、もう少し詳しく考察したい。小保方氏が実験記録を残さず、過失が非常に多いことを見逃した理由の1つは、プログレスレポートのあり方など、研究室運営のやり方に問題があったためではないだろうか。論文の共著者は論文原稿の最終版を全部読んで内容を承認する責任があるが、共著者全員がこの責任を果たしたのだろうか。STAP幹細胞が急に効率良くできるようになった時に、若山氏は、それまでSTAP細胞塊をバラバラにしていたのを、引きちぎって注入するように変更したためと説明した。しかし、ここで再び細胞をバラバラにして注入する対照実験をしていれば、ES細胞の混入を発見できた可能性がある。また、GFPがホモであるべきマウスがヘテロだった時(2−3−3の(3)参照)も、この疑念を追求する実験を行わなかった。このような追及の甘さは、論文発表を焦ったからではないだろうか。特許や研究費獲得や著名雑誌への論文掲載は、本来、悪いものではないが、それに夢中になるあまり、研究の中身への注意がおろそかになったことはないだろうか。以上のいずれかで適切な行動をとっていたら、STAP問題はここまで大きくならなかった可能性が高い。(報告書29-30ページ)

報告書では最後に研究者コミュニティに対して、不正防止のための考え方を呈示しています。

たまたま小保方氏と共同研究する立場にはなかった大部分の研究者も、もし自分が共同研究をしていたらどうなったかを考えると、身につまされることが多いだろう。
   では、このような不祥事がふたたび起きないようにするには、どうしたら良いだろうか。上記の文科省のガイドラインには、「不正行為に対する対応は、研究者の倫理と社会的責任の問題として、その防止と併せ、まずは研究者自らの規律、および科学コミュニティ、研究機関の自律に基づく自浄作用としてなされなければならない。」と書かれている。本調査委員会の調査の基盤になった膨大な科学的検証データは、理研の研究者の熱意と努力によって収集されたものである。これを、STAP問題が生じた理研の内部から自浄作用が現れたと評価することもできる。また、理研だけでなく全ての研究者は、STAP問題を自分の研究室にも起こり得る問題と考え、今までよりいっそう思慮深い教育と研究室運営を行うべきだろう。不正防止が大きな流れになるためには、「捏造、改ざん、盗用」を重大な違反と考えるのは当然だが、それだけでなく「研究における責任ある行動」ないし「研究における公正さ」という観点から、より広い視野で研究者倫理を考え、教育を行う必要がある。そこで基礎となるのは、論文のインパクトファクターでも、獲得研究費の額でも、ノーベル賞の獲得数でもなく、自然の謎を解き明かす喜びと社会に対する貢献である。
   STAP問題は科学者コミュニティに突き刺さった1本の矢である。それを抜いた後も、傷跡を癒し健康を取り戻すために、科学者コミュニティ全体の対応と努力が求められている。(報告書31ページ)

「STAP細胞論文に関する調査結果」についての記者会見 (ニコニコ生放送

会見スケジュール
①「STAP細胞論文に関する調査結果について」 10時00分~11時30分予定
【調査委員会 出席者】
桂勲 調査委員長(情報・システム研究機構 理事、国立遺伝学研究所 所長)
五十嵐和彦 委員(東北大学大学院 教授)
伊藤武彦 委員(東京工業大学大学院 教授)
大森一志 委員(大森法律事務所 弁護士)
久保田健夫 委員(山梨大学大学院 教授)
五木田彬 委員(五木田・三浦法律事務所 弁護士)
米川博通 委員(東京都医学総合研究所 シニア研究員)

(全録)STAP細胞問題 理化学研究所の調査委員会が会見(1/2)

(全録)STAP細胞問題 理化学研究所の調査委員会が会見(2/2)

②「STAP細胞論文に関する調査結果を受けて」 11時45分~12時30分予定
【理化学研究所 出席者】
川合眞紀 理事
有信 睦弘 理事
加賀屋悟 広報室長

【STAP細胞】19 結論は出た、調査は終了 理研記者会見【2014/12/26】

参考

  1. STAP細胞論文に関する調査結果について(独立行政法人理化学研究所 2014年12月26日)
  2. 小保方氏冷凍保管の「STAP」はES細胞濃厚(読売新聞YOMIURI ONLINE 2014年12月26日):小保方晴子氏が冷凍保管していた細胞の遺伝子解析などを行った結果、STAP細胞を変化させたものとされたこの細胞が、ES細胞から作られていたことが、ほぼ確実になった。
  3. 調査結果、26日公表=STAP細胞問題-理研 (時事ドットコム)
  4. 実験ノートがない=研究不正」

STAP細胞検証結果に関して記者会見 理化学研究所研究不正再発防止改革推進本部検証実験チーム【FULL動画】

2014年12月19日、理化学研究所研究不正再発防止改革推進本部検証実験チームが小保方晴子氏が行ってきたSTAP細胞再現実験の結果を報告する記者会見を開きました。

理化学研究所 STAP現象の検証結果に関する記者会見 2014/12/19 【動画 2:14:22 】

理化学研究所 STAP現象の検証結果に関する記者会見[1] 「小保方さんの”コツ”は、明らかにならなかった」 理研、7カ月に及ぶSTAP細胞の検証結果を発表【全文】(ログミー)

「検証実験は、(小保方晴子研究 員を監視するための)モニターや立会人を置いて行われた。そういう検証実験を行ったことは、責任者としてものすごく責任を感じている。研究者を犯罪人扱い しての検証は、科学の検証としてあってはならないこと。この場でおわびをさせていただく」(相沢慎一チームリーダー)(http://mainichi.jp/select/news/20141219k0000e040225000c.html)

小保方晴子氏のコメント

どのような状況下であっても必ず十分な結果をと思い必死に過ごした3 か月でした。予想をはるかに超えた制約の中での作業となり、細かな条件を検討できなかった事などが悔やまれますが、与えられた環境の中では魂の限界まで取り組み、今はただ疲れ切り、このような結果に留まってしまったことに大変困惑しております。私の未熟さゆえに論文発表・撤回に際し、理化学研究所を始め多くの皆様にご迷惑をおかけしてしまったことの責任を痛感しておりお詫びの言葉もありません。検証終了を以て退職願を提出させていただきました。最後になりますが本検証実験にあたり検証チームの皆様はじめ、ご支援・応援してくださった方々に心より御礼申し上げます。2014 年12 月19 日 小保方 晴子 (http://www3.riken.jp/stap/j/u0document3.pdf

小保方晴子氏の退職願の承認に際しての理化学研究所理事長 野依良治氏のコメント

STAP 論文が公表されてからこの10 ヶ月間余り、小保方晴子氏にはさまざま
な心労が重なってきたことと思います。このたび退職願が提出されましたが、
これ以上心の負担が増すことを懸念し、本人の意志を尊重することとしました。
前途ある若者なので、前向きに新しい人生を歩まれることを期待しています。(http://www3.riken.jp/stap/j/l5document8.pdf)

実験データの詳細を含む報告書が理研ウェブサイトで公開されています。(1)小保方研究員による検証結果、(2)丹羽副チームリーダーによる検証結果の内容からなる31ページのPDF文書:「STAP現象の検証結果について

データを捏造して論文を出すということは、極めて悪質な犯罪的行為です。今後は、このような研究不正がどのようにして生じたのかという真相究明が絶対に必要です。それなくしては、理研への信頼が回復することはないでしょう。

「作製できた」とされた細胞は何だったのか。その裏付けとして論文に掲載されたデータや図表は何を示しているのか。どういう経緯で論文が発表されるに至ったのか。その過程で、それぞれの共著者がどういう役割を果たしたのか。こうした不正や混乱を二度と起こさないためにも、徹底して全容を解明し、説明責任を果たしてほしい。毎日新聞 社説 2014年12月20日

理化学研究所は検証実験を打ち切るが、存在しない細胞の論文がどのように作成されたのか、という問題の核心は、まだ、闇の中である。… STAP細胞と呼んでいたものは何だったのか。なぜ、存在しないSTAP細胞の論文がもっともらしく出来上がったのか。 … 不正が起きた経緯は、まだまだ闇の中である。その経緯を明らかにしなければ、社会の納得は得られないだろう。 …  科学には、独創的な発想と自由に研究できる環境が欠かせない。そうした研究環境を守るには、学術研究に対する国民の信頼感、期待感が欠かせない。東京新聞 社説 2014年12月20日

小保方氏らの方法ではSTAP細胞ができないことが、ほぼ裏づけられたといえる。だが、なぜ不正が起きたのか、核心はなおはっきりしない。日本の科学が失った信頼を取り戻すため、理研は徹底的に真相を究明すべきだ。 … この実験をもって幕引きにするのであれば、世界の科学界から失笑を買いかねない。 … 組織のあり方の検証と関係者の責任の究明、再発防止策の確立に力を傾けなければならない。日本経済新聞 社説 2014年12月20日

参考

  1. STAP現象の検証結果について 独立行政法人理化学研究所 2014年12月19日
  2. 理化学研究所 STAP現象の検証結果に関する記者会見[1] 「小保方さんの”コツ”は、明らかにならなかった」 理研、7カ月に及ぶSTAP細胞の検証結果を発表【全文】(ログミー 2014.12.19)
  3. 普通の企業なら懲戒解雇の可能性強い 小保方氏の退職届受理は「非常識」なのか (JCASTニュース 2014/12/19)

小保方晴子氏のSTAP細胞再現実験結果報告記者会見を理研が開催(12月19日(金)午前10時30分 ニコニコ動画生中継)

小保方晴子氏が記者会見で発した「STAP細胞はあります」という言葉が『ネット流行語大賞2014』金賞に選ばれるなど、国民的な関心事になったSTAP細胞論文捏造事件ですが、「理化学研究所 STAP現象の検証結果に関する記者会見」が12月19日(金)午前10時30分頃から行われる予定です。出席者は、

  1. 相澤 慎一 チームリーダー(理化学研究所 研究不正再発防止改革推進本部検証実験チーム)
  2. 丹羽 仁史 副チームリーダー
  3. 清成 寛  研究員
  4. 坪井 裕  理事
  5. 加賀屋 悟 広報室長

会見の模様はニコニコ動画により生中継されます(ニコニコ動画「STAP現象の検証結果に関する記者会見」)。

小保方氏も作製できず STAP細胞の再現実験(14/12/19)

参考

  1. STAP細胞証明できず 小保方さん、それでも「あると考える」(スポニチSponichi Annex 2014年12月19日 05:30):”小保方氏の48回の実験で、万能性を持つ可能性を示す緑に光る細胞が得られることもあったが、数は論文に比べて非常に少なかった。万能性があれば、別のマウスの受精卵に注入すると細胞が混ざり合いキメラマウスができる。検証チームは1615個の受精卵に注入したが、一回も成功しなかった。増殖能力がある「STAP幹細胞」も作れなかった。”
  2. 『ネット流行語大賞2014』発表! 金賞は「STAP細胞はありまぁす」(ガジェット通信 2014.12.01):”今年のノミネートは58コ。2500票を超える投票の結果、上位30位に入ったのはどのワード? ”
  3. 今年の世相を表す漢字 (日本漢字能力検定協会):”全国から届いた167,613 票の応募集計結果 1位 「税」 8,679票(5.18%) 2位 「熱」 6,007票(3.58%) 3位 「嘘」  5,979票(3.57%)”(PDFリンク
  4. ネットユーザーが選ぶ2014年のワースト謝罪会見(宣伝会議 2014年12月05日):”2014年に発生した企業や個人の不祥事や謝罪会見に関し、全国の男女500人(20~80代)を対象に「印象に残った出来事」「ニュース・情報伝播の流れ」についてアンケート調査を実施しました。ランキング1位 理化学研究所 小保方晴子氏不正論文問題(67.4%)・科学研究の世界がこんなにもお粗末なシステムで動いているとは思わなかった(68歳・男性・東京都)”

赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏による2014年ノーベル物理学賞受賞講演【動画】

青色LEDの開発により2014年ノーベル物理学賞を分け合った日本人3人による受賞講演が行われました。

Lectures: 2014 Nobel Prize in Physics

赤崎勇・名城大終身教授(85)の紹介 13分24秒ー
赤崎勇氏の講演 14分00秒ー
天野浩・名古屋大教授(54) の紹介 43分18秒ー
天野浩氏の講演 43分43秒ー
中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授(60) の紹介 1時間9分10秒ー
中村修二氏の講演 1時間9分40秒ー

参考

  1. The Nobel Prize in Physics 2014 (nobelprize.org)

国際学会で英語の原稿を読んではいけない理由

アメリカで行われた学会で、日本人の講演者がいきなり下を向いて原稿を棒読みし始めたとき、それまで和やかだった学会会場が寒々とした異様な雰囲気に変化したのは今でも忘れられません。

海外での学会発表は、英語で話すことに慣れていない人にとってはとても怖いものです。ですから、英語で原稿を作ってそれを本番で読んでしまいたい気持ちになるのはよくわかります。しかし、講演の時間中ずっと下を向いて原稿を読み続けることは全くお勧めしません。

国際学会の発表で原稿の棒読みをしてはいけない理由

学会発表というのは相手と自分とのコミュニケーションだからです。発表の間中ずっと下を向いて原稿を読む行為は、目の前の人間を完全に無視しているようなもので、無視された人間は非常に白けた気分になります。まだ、英語がつたなくても必死でコミュニケーションを取ろうとしている人のほうが断然、好感がもたれます。

原稿読む派 VS  読まない派

言うことが出てこなくて沈黙してしまうくらいなら、原稿を読みなさいと学生に指導する先生もいるようです。しかしその考えに賛成できません。緊張して膝が震えて、レザーポインターを持つ手も震えて、声も上ずって、頭が真っ白になるという人がいたとしても、それは、言葉が自然に口をついて出てくるくらいに練習をし、準備することで対処すべきなのです。学生をそこまで指導するのが教授の責任です。アメリカ大統領も原稿を読むじゃないかという人がいるかもしれませんが、原稿を読みながら聴衆に語りかけるスピーチが行えるのは相当な上級者です。

アガリ症の対策

自分はあがり症だから絶対無理と思う人もいるかもしれません。人前に出て緊張してしまう最大の理由は、自分が他人からどう見られるかを気にしているからです。

あがる原因は至極単純なことです。「人にかっこよく思われたい!」――それだけです。自分はあがるけれども、そんなことはまったく思っていない、と言うあなた、それは嘘です。 … 要するに「人にどう思われるか」という自意識が強すぎるのです。… 自意識が芽生えていない幼児には、あがるという症状はありません。… 不思議なのは、そういう人はふだんの生活ではまったくそんなふうに見えないことです。どちらかといえば、目立たない、積極的に前に出ない、おとなしいタイプの人が多いようです。… 人前で喋る時にあがる人のためのちょっとしたテクニックをお教えしましょう。 それは壇上に上がった時、あるいはマイクを握った時に、慌てて喋り出さないことです。第一声を発する前に聴衆の顔をゆっくり見て、にっこりと笑ってみてください。それだけで聴衆の空気が変わります。 実は意外に皆気が付いていないのですが、大勢の前で誰かが喋る時は、聴衆もわずかに緊張しているのです。演者の緊張は聴衆の緊張を増すものがあります。そしてそれはまた演者にも跳ね返ってきます。 でも演者の笑顔はその緊張を解きます。そうすると演者も落ち着くことが出来ます。(メダリストに一歩でも近づくために 「人前であがらない秘訣」を百田尚樹氏が伝授 2016年8月16日 デイリー新潮)

自分のことを考えるのではなくて、聞いてくれている人のことを考えましょう。自分のプレゼンをどうすれば、相手にとってもっと分かりやすくなるのか?常に聞いてくれている相手に感謝の気持ちを持って、相手のことを考えるのです。相手が自分のことをどう思うかじゃなくて、自分が相手のことをどれだけ思ってあげられるかです。アガリ症を克服していい英語のプレゼンを行うためには、このような意識の転換が非常に大事です。自分の目の前に座っている人たちは、貴重な時間を割いて、自分の発表に耳を傾けてくれているんだと感謝の気持ちを持ちだけで、だいぶアガリは抑えられます。

国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えようではありませんか。(ジョン・F・ケネディ大統領就任演説 jfklibrary.org

 

練習の重要性

普段一対一で人と話すのと変わらない自然な態度で講演できる人もいますが、いきなりその境地を目指す必要はありません。平常心で人前で話すのは普通は無理です。いい意味で緊張してテンションを一段上げた状態で熱意を持って話すのがいいのではないかと思います。とにかく準備が大事です。学会直前まで実験が忙しくてスライドが全部そろわないので発表の練習が直前になってしまった、という言い訳はなしです。発表の申し込みをしてから学会当日まで通常なら数ヶ月はあるわけですから、学会に行くと決まった瞬間から気持ちを切り替えて準備をし始め、今手元にある材料でとりあえずプレゼンを組み立ててみて練習をしてみるといいでしょう。原稿で書いた英文と少し違うことを言ってしまった場合、そのままアドリブで続ける練習もしたほうがいいでしょう。最終的には、このスライドではこれとこれについて述べる、と伝えたいポイントだけ頭に入れておくとよいです。

本番の時には、いやでも緊張するでしょうから練習の時のように話すのは無理だと思ったほうが良いです。逆に、練習のときに本番さながらにやることが大事です。広い会場で大勢に向かって話すときは、地声よりも少し高いトーンで話すのが普通なので、練習のときに仮に狭い部屋であっても広い会場で話しているというイメージを持って声を少し張って発声しましょう。もし広い教室が利用できるのなら、ラボの中の小さな部屋ではなく大教室で練習するというのもお勧めです。

Practice makes perfect. (ihcway.com)

 

原稿を読まないことのススメ

それでも原稿を読みたいとお考えですか?今回原稿を読んでしまったら、じゃあ、次回は原稿なしでできるのでしょうか?また怖くなって読んでしまうだけではないですか?仮に今回失敗したとしても、場数を踏む効果というものがあります。2回目は必ず1回目よりもうまくいくものです。いつから原稿なしでやりますか?

いつやるか?今でしょ! (林 修

小惑星探査機「はやぶさ2」搭載ロケットの打ち上げに成功

2014年11月3日午後1時22分4秒、小惑星探査機「はやぶさ2」が搭載されたH2Aロケット26号機が鹿児島県種子島宇宙センターから打ち上げられました。

「はやぶさ2」、3日午後1時22分に発射 打ち上げ成功(14/12/03)  (FNN)

参考

  1. はやぶさ2、打ち上げ成功 生命の起源に迫る(ヤフーニュース・産経新聞 12月3日)
  2. 小惑星探査機「はやぶさ2」(http://www.jaxa.jp/projects/sat/hayabusa2/index_j.html)
  3. はやぶさ2特設サイト

ニコニコ動画の(株)ドワンゴが人工知能の研究に乗り出す

ニコニコ動画などを運営する株式会社ドワンゴが、人工知能学会理事の山川宏氏を所長に迎えて、ドワンゴ人工知能研究所を発足させました。山川所長の挨拶文の一部を紹介すると、

… 人と同じかそれ以上に知的な機械、つまり超人的人工知能(AI)を創造し利用できれば、科学技術の進展を大幅に加速することで、環境破壊の臨界点が訪れる以前に何らかの解決を見出すことも可能になるでしょう。

… 機械自身が現実世界から知識表現を獲得できないという長年の問題がありました。… しかし 近年、脳の神経回路を模したニューラルネットワークモデルを深い階層まで積み上げることで、人の脳(大脳新皮質)のように抽象的な概念を学習できるディー プラーニング技術が成功を収めました。

… ドワンゴは、人工知能における本当の技術革新は正にこれから訪れると考え、新たに人工知能研究所を設立します。そして次世代への贈り物 となりうる、日本発での超人的AIの実現を目指します。その実現に向けた最速の道筋として、脳の神経科学的知見を参考にしながら、機械学習の組み合わせと しての脳全体の計算機能の再現を目指す、「全脳アーキテクチャ」という研究アプローチを軸として研究を進めていきます。このために当研究所では主にディー プラーニング技術を拡張・発展による多様な知識を獲得や、記憶の座である海馬体の計算モデル構築を通じた創造性や不変性等の実現を目指す研究、さらに高次 の知能に関わる脳器官に対応する機械学習装置を統合するための認知アーキテクチャ研究を進めます。 … (http://info.dwango.co.jp/pi/ns/2014/1128/index3.html)

とのことであり、人間の能力を超えた人工知能の実現を目指す非常に野心的な試みです。一企業内の研究に留めずに産学官連携の環境も作りたいとも述べており、日本の人工知能研究をパワーアップさせる効果があるかもしれません。

近年、メジャーなインターネット関連企業はビッグデータをビジネスに生かすために人工知能の研究に本腰を入れて取り組んでおり、ドワンゴのこの事業も、世界の潮流に沿ったものといえます。

例えば、グーグルでは、「グーグルブレイン」と呼ばれるディープラーニング(深層学習)研究プロジェクトに取り組んでいます。グーグルブレインは、2011年にスタンフォード大学のアンドリュー・ング(Andrew Ng) 教授によって始められたプロジェクトで、2012年にはコンピューター上のニューラルネットワークに膨大な量の画像を見せて学習させたところ、これが猫だよと人間がコンピュータに教えたわけでもないのに、「猫」を認識する「神経細胞」が自然に生じたとして、話題になりました。グーグルはさらに、2013年にディープラーニングのパイオニアであるジェフリー・ヒントン(Geoffrey Hinton)博士を招き入れたほか、人工知能研究の企業を買収するなど非常に積極的に人工知能の研究を推し進めています。(WIKIPEDIA参照)。

アンドリュー・ング教授によるディープ・ラーニングについての講義動画。
Andrew Ng: Deep Learning, Self-Taught Learning and Unsupervised Feature Learning

また、フェイスブックはフェイスブック人工知能研究所にディープ・ラーニングの第一人者であるニューヨーク大学教授のヤン・ルカン博士を所長として迎えて、人工知能の研究を行っています。

ヤン・ルカン博士のディープ・ラーニングに関するセミナー動画(本題に入っていくのは16分12秒あたりから)。
Data Science @ ESIEE Paris – Yann LeCun

その他、マイクロソフト社は「プロジェクト・アダム」というディープ・ラーニングのアルゴリズムに基づいた人口知能システムを開発しています。
Introducing Project Adam: a new deep-learning system

検索エンジン「百度(バイドゥ)」を運営する中国のBaiduも、Silicon Valley AI Lab、Beijing Deep Learning Lab (旧名Institute of Deep Learning)そしてBeijing Big Data Labという3つの人工知能研究所を擁しており、グーグル・ブレインを主導したAndrew Ng博士を2014年5月にリーダーとして迎えています。

バイドゥがシリコンバレー(カリフォルニア州サニーベール)に開設した人工知能研究所の紹介動画。
Baidu Research – An Inside Look into Baidu’s Silicon Valley A.I. Lab

参考

  1. ドワンゴが人工知能の開発に着手 – 社内に研究所を発足(マイナビニュース2014/11/28):”ドワンゴは11月28日、社内研究機関として、人工知能に関わる研究を行う「ドワンゴ人工知能研究所」を発足し、人工知能学会理事および副編集委員長である山川宏氏を所長として迎えると発表した。”
  2. 「ドワンゴ人工知能研究所」発足のお知らせ(株式会社ドワンゴ 2014年11月28日):”ドワンゴ人工知能研究所は、人類の課題である、教育、エネルギー、環境、水資源、食糧、貧困、セキュリティ等に対して大きな貢献をなしうる高度な人工知能を日本発で早期実現することを目的とし、発足いたしました。”
  3. 編集:人工知能学会誌 連載解説「Deep Learning(深層学習)」:”2012年は,機械学習分野にとって,まさしくdeep learningの年であったといえよう.Langfordの機械学習関連のブログなどで,2012年の顕著な成果として取り上げられるのは当然として,一般紙である New York Times にまで記事が掲載された.新しい機械学習手法がこれほど話題になったことは,サポート・ベクトル・マシンやノンパラメトリック・ベイズなど最近のどの手法でもなかったことである.”
  4.  ディープラーニング (ITPRO By日経コンピュータ 2014/09/19):”グーグルは2012年、「ディープラーニングを採用することで、人工知能が人間に頼らずに『YouTube』の画像の中から猫を発見した」と発表して世界を大きく驚かせた。グーグルがディープラーニングを使って開発した人工知能「GoogLeNet」は、2014年8月に開催された画像認識技術のコンテスト「Imagenet Large Scale Visual Recognition Challenge 2014(ILSVRC2014)」で首位となっている。”
  5. 脳に挑む人工知能 (ITPRO By日経コンピュータ 2014/10/01):”人工知能技術の新潮流「ディープラーニング」が、物体認識を筆頭に音声認識、自然言語解析、医薬品候補の探索などで、他の技術を圧倒する性能を示している”
  6. ニューラルネットの逆襲(岡野原 大輔 research.preferred.jp 2012-11-01):”脳が単純なニューロンの組み合わせによって高度な認識・知識活動を実現しているのと同様に、ニューラルネットも複雑な現象を学習できるのではないのかと期待されていました。しかし、一度盛り上がった機運は70年頃には一度下火となり、人工知能や機械学習の中心はもっと現実的な手法(線形識別器、カーネル法など)に置き換わっていました。そうした中でもトロント大のHintonらなどを中心にニューラルネットの研究は地道に進んでいました。その中でも2000年代後半にいくつかのブレークスルーがおき、状況は大きく代わりました。”
  7. グーグル「世界を覆う人工知能ネットワーク」構想(2014.1.29):”米WIREDのダニエラ・エルナンデスは、非常勤でグーグルで働くことになった深層学習のパイオニア、ジェフリー・ヒントンを紹介する記事の中で、深層学習がAIへのそのほかのアプローチと大きく違うのは、人間の関与の必要性からマシンを自由にして、マシンに対して、環境を人間のように理解する能力を与えることを目指している点だと述べている。”
  8. Google Brain (Wikipedia) “Google Brain is an unofficial name for a deep learning research project at Google.”
  9. Building High-level Features Using Large Scale Unsupervised Learning (論文PDFリンク)Quoc V. Le quocle@cs.stanford.edu,Marc’Aurelio Ranzato ranzato@google.com, Rajat Monga rajatmonga@google.com, Matthieu Devin mdevin@google.com, Kai Chen kaichen@google.com, Greg S. Corrado gcorrado@google.com, Jeff Dean jeff@google.com, Andrew Y. Ng ang@cs.stanford.edu
  10.  Using large-scale brain simulations for machine learning and A.I. (Google Official Blog June 26, 2012): ” … So we developed a distributed computing infrastructure for training large-scale neural networks. Then, we took an artificial neural network and spread the computation across 16,000 of our CPU cores (in our data centers), and trained models with more than 1 billion connections. We then ran experiments that asked, informally: If we think of our neural network as simulating a very small-scale “newborn brain,” and show it YouTube video for a week, what will it learn? Our hypothesis was that it would learn to recognize common objects in those videos. Indeed, to our amusement, one of our artificial neurons learned to respond strongly to pictures of… cats. Remember that this network had never been told what a cat was, nor was it given even a single image labeled as a cat. Instead, it “discovered” what a cat looked like by itself from only unlabeled YouTube stills. That’s what we mean by self-taught learning. …”
  11. Deep Learning Japan (東京大学 工学部 松尾研究室):”Deep Learning は機械学習アルゴリズムの1つで, 人間の脳を模した構造をもつニューラルネットワークを多層に重ねた構造をもちます. Deep Learning の大きな特徴は, 多段に重ねることによって抽象的なデータの表現を獲得することができる点で, 真の人工知能への第一歩であると考えられます.”
  12. Facebook’s Quest to Build an Artificial Brain Depends on This Guy (WIRED 08.14.14):”It’s good to be Yann LeCun. Mark Zuckerberg recently handpicked the longtime NYU professor to run Facebook’s new artificial intelligence lab. The IEEE Computational Intelligence Society just gave him its prestigious Neural Network Pioneer Award, in honor of his work on deep learning, a form of artificial intelligence meant to more closely mimic the human brain. And, perhaps most of all, deep learning has suddenly spread across the commercial tech world, from Google to Microsoft to Baidu to Twitter, just a few years after most AI researchers openly scoffed at it. All of these tech companies are now exploring a particular type of deep learning called convolutional neural networks, aiming to build web services that can do things like automatically understand natural language and recognize images. “
  13. 京都大学ー稲盛財団合同京都賞シンポジウム2014.7.12-13 ヤン ルカン Yann LeCun :”2013年の後半にフェイスブックの人工知能研究所長に任命されたが,今もニューヨーク大学での教授職 (常勤ではない)を継続している。… 1980年代の半ばより彼は深層学習手法,特に畳み込みニューラルネットワークモデルについて研究を行った。その成果は,フェイスブック,グーグル,マイクロソフト,百度,IBM,NEC,AT&T 等の企業が開発した画像・ビデオ理解,書類認識,人間・計算機相互作用,音声認識分野の多くの製品やサービスの基礎技術となっている。”
  14. フェイスブックが人工知能研究所、ニューヨーク大学と提携 (afpbb.com 2013年12月10日):”米SNSフェイスブック(Facebook)は9日、ニューヨーク大学(New York University、NYU)との提携の下、人工知能を研究するための新たな施設を開設すると発表した。フェイスブックの大量のデータの活用を目指している。フェイスブックは、NYUのデータ科学センター(Center for Data Science)のヤン・ルカン(Yann LeCun)教授が同プロジェクトの指揮を執ると発表。”
  15. Microsoft Challenges Google’s Artificial Brain With ‘Project Adam’ (WIRED 07.14.14):”Drawing on the work of a clever cadre of academic researchers, the biggest names in tech—including Google, Facebook, Microsoft, and Apple—are embracing a more powerful form of AI known as “deep learning,” using it to improve everything from speech recognition and language translation to computer vision, the ability to identify images without human help.”
  16. Baidu Opens Silicon Valley Lab, Appoints Andrew Ng as Head of Baidu Research (百度 プレスリリース May 16, 2014): “Baidu, Inc., the leading Chinese language Internet search provider, today announced the appointment of pioneering Artificial Intelligence (AI) researcher Andrew Ng as Chief Scientist of Baidu. Mr. Ng will lead Baidu Research, with labs in Beijing and Silicon Valley.”

コピペ論文で早稲田大学准教授が懲戒解雇

早稲田大学商学学術院の准教授(50)が2001年と2003年に学内機関誌「早稲田商学」に発表した企業戦略に関する2つの英語論文が、この准教授がアメリカの大学院在学中の1995~98年に入手した他人の未公開の論文からの盗用であったことがわかり、2014年11月21日付けで懲戒解雇されました。学内の調査委員会によると7~8割が盗用だったということです。

参考

  1. 早稲田大准教授が論文盗用で懲戒解雇 「盗用と受け止められても仕方ない」(産経ニュース 2014.11.21):”早稲田大学は21日、商学学術院の蛭田啓准教授(50)が執筆した論文2本に盗用があったとして同日付で懲戒解雇した。”
  2. 論文盗用か 早稲田大学の准教授が懲戒解雇(テレ朝ニュース 2014年11月21日):”早稲田大学は、商学学術院の男性准教授(50)が2001年と2003年に発表した企業戦略に関する2つの論文について盗用したと結論付け、21日付で懲戒解雇しました。”
  3. 早大准教授、論文盗用で懲戒解雇…不服申し立て(YOMIURI ONLINE 2014年11月21日):”早稲田大学は21日、海外の研究者の論文原稿を盗用したとして、商学部の蛭田啓准教授(50)を懲戒解雇処分にしたと発表した。”

結婚△、出産×の群馬大医教授がパワハラ解雇

群馬大学によるパワー・ハラスメントの定義:

”業務上の支配従属関係を不当に利用して,不利益な取扱い,人格的な誹謗・中傷,嫌がらせ,暴力,業務遂行の妨害等の相手の意欲及び就労関係を 著しく阻害することをいいます。”
http://www.gunma-u.ac.jp/html_campus/campuslife_16.html

NHKなどの報道によると、

「月曜日に仕事をするためには土日に働かなければならない」

と言って部下の教職員に休日出勤を強要したり、

「結婚は三角、出産はバツだ」

などと女性職員に対して発言するなど、ハラスメント行為を繰り返していた群馬大学医学部の40代の男性教授が2014年11月20日付けで懲戒解雇されました。また、部下に対して、

「ポストを空けるため(他大学などに)応募しろ」

などと言って心理的な圧力をかけ、それにより3人が精神的な病気で休み、2人が退職したそうです。大学側は2013年4月に調査委員会を設置し、2012年1月から2013年8月の間における、この教授の研究室の助教や講師の男女5人に対する言動をハラスメントとして認定しました。

 

参考

  1. 教授がパワハラ「結婚は三角 出産はバツ」(NHK NEWSWEB 2014年11月20日):”前橋市にある群馬大学医学系研究科の40代の男性教授が、部下の教職員に対して、適正な範囲を越えた休日出勤を強要したほか「結婚は三角、出産はバツだ」と女性職員を蔑視する発言などを繰り返し、パワーハラスメントを行っていたとして、大学はこの教授を懲戒解雇の処分にしました。”
  2. 群馬大、パワハラで教授を懲戒解雇 退職や休日出勤強要(朝日新聞DIGITAL 2014年11月20日):”教授は大学に発言を認めたが、一部は「指導の範囲」と話しているという。”

いざというときに命を救ってくれるはずのエアバッグに逆に命を奪われる危険性

エアバッグの異常が原因と思われる事故で死亡者が5人、負傷者は100人以上にも上るというアメリカでは、エアバッグ製造メーカーのタカタや事故車の大半を占めるホンダに対する憤りが大きくなっています。2014年11月20日に米議会の公聴会が開かれ、タカタ社やホンダの幹部が厳しく追求されました。

今現在も異常なエアバッグが装着された車を運転している多数のドライバーが危険にさらされた状態にあり、タカタとホンダは批判の矢面に立たされています。

2013年にフロリダで、2002年式ホンダシビック運転中に事故に遭った女性Stephanie Erdman氏は、エアバッグが開いたときに破裂した金属部品が飛んで顔面に突き刺さり、死ななかったのが不思議なくらいという大怪我しました。彼女は証人として今回の公聴会で証言をしています。
CBS News – Defective Airbags

下の動画は、命を守るべきエアバッグが殺人兵器になっていると憤る米上院議員Bill Nelson氏。また、2001年式のホンダシビックを運転中に交通事故に遭いエアバッグの異常な破裂により右眼を失ったフロリダ州のCorey Burdick氏はタカタ社とホンダ社に対して訴訟を起こしています。

Sen. Nelson calls for recall of reportedly dangerous airbags

参考

  1. エアバッグ:タカタ、不信払拭できず…米公聴会(毎日新聞 2014年11月21日):”委員の関心は、リコールが始まった2008年11月の数年前から、タカタが欠陥を把握していながら、隠蔽(いんぺい)したのではないかとの疑惑に集中。清水本部長は05年5月に最初の事故の報告を受けたことを明らかにしたが、「当時、欠陥を示す証拠はなかった」と疑惑を否定した。”
  2. タカタのエアバッグ問題で米公聴会 リコールまでなぜ3年 (日本経済新聞 2014/11/21):”自動車部品メーカー、タカタの幹部がエアバッグの品質問題を巡って初めて公の場で発言した米上院公聴会。”
  3. Takata airbag victims looked like they had been shot or stabbed (By Chris Isidore CNNMoney November 20, 2014):”When police got to the scene of a minor car accident in Alhambra, California in September 2013, they thought the driver, Hai Ming Xu, had been shot in the face.”
  4. Handout photo from law office of 2001 Honda Civic which Corey Burdick was driving (Chicago Tribune):”A 2001 Honda Civic which Corey Burdick, 26, was driving in Eustis, Florida, on May 29, 2014, when he was involved in an accident with another vehicle. ”
  5. Senators Are Looking At A Gruesome Image Of A Takata Airbag Injury (By Matthew DeBord Business Insider Nov. 20, 2014):”Appearing as a witness, Stephanie Erdman testified about her 2013 accident in a 2002 Honda Civic in Florida.”
  6. タカタ製エアバッグ問題で米当局が全米におけるリコールを指示~タカタが欠陥を知りながら隠していた疑いも

エイジックがTechCrunch Tokyoで受賞

電子回路を作るのに半田付けもブレッドボードも不要。家庭用インクジェットプリンターで電子回路を印刷したり、電子回路をマジックで書いたり消したりしてつくることができるなど画期的な製品を世に送り出しているベンチャー企業AgIC(エイジック)が、TechCrunch主催のイベントTechCrunch Tokyo 2014(2014年11月19日開催)のプレゼンコンテスト「スタートアップバトル」で見事最優秀賞に選ばれました。

電気の専門家でなくても電子回路を活用して新しいものを作り出すことができる、そんな画期的な製品群をAgIC(エイジック)が出しています。アイデア次第でいくらでも可能性が広がり、教育、おもちゃ、趣味、デザインなどの分野で大きなインパクトがありそうです。

下の動画は、電子回路を描いて“消せる”ペン「Erasable Circuit Marker」。

こちらの動画は、電気を通すインクの入ったインクカートリッジを使って、家庭用のインクジェットプリンターで電子回路が印刷できてしまうというもの。
AgIC lets you print circuits with an inkjet

 

参考

    1. 電子回路をコピー用紙に印刷「AgIC」が最優秀賞:TechCrunch Tokyo 2014 スタートアップバトル(ASCII.JP 2014年11月20日):”AOLオンライン・ジャパンが運営するテクノロジーメディア「TechCrunch」が19日、都内でスタートアップ企業と関係者を集めたイベント「TechCrunch Tokyo 2014」を開催”
    2. 東大発ハードウェアベンチャーのAgICが電子回路を描いて消せるペンをKickstarterに出品(週アスPLUS 2014年11月18日):”銀ナノ粒子を含む特殊なインクを使うことで、家庭用の普通のプリンターで電子回路を印刷できようにする『AgIC Print』を開発したハードウェアベンチャー“AgIC”が2014年11月18日、電子回路を描いて“消せる”ペンを同梱したキット『Erasable Circuit Marker』を米国のクラウドファンディングサイト“Kickstarter”に出品し、事前予約を開始した。
    3. AgIC株式会社ウェブサイト:”AgIC は Ag Inkjet Circuit の略であり、家庭用のプリンターを電子回路基板の製造機に変えます。”
    4. Kawahara et al., Instant inkjet circuits: lab-based inkjet printing to support rapid prototyping of UbiComp devices. UbiComp’13, September 8–12, 2013, Zurich, Switzerland

タカタがエアバッグ欠陥隠蔽の疑い

タカタ製エアバッグ問題で米当局が全米におけるリコールを指示~タカタが欠陥を知りながら隠していた疑いも

車の衝突事故でエアバッグが開くときに金属製部品が飛び散り、それが体に当たって死亡するという事故が米フロリダ州で報告されていました。事故を起こした車のエアバッグは日本のタカタ社が製造したもので、当初はフロリダ州など高温多湿な州のみでリコールが行われていましたが、高温多湿という条件には当てはまらない地域でもタカタ社製エアバッグを装備した車による同様の事故が確認されたことから、米当局は全米規模のリコールを指示しました。タカタ社がこの米当局の指示に従わない場合には、最高41億円($35 million)の罰金を科せられる可能性があります。

リコールの対象となる可能性のある車は、トヨタ、ホンダ、マツダ、BMW,日産、三菱、スバル、クライスラー、フォード、ゼネラルモーターズ(GM)の各社の特定の年式の車です(アメリカ国家道路交通安全局ウェブサイトのリコール対象車リスト)。

また、米ニューヨークタイムズは元従業員の話として、2004年にタカタ社はアメリカのヘッドクォーター(ミシガン州オーバーンヒルズ)で秘密裡(通常の勤務時間外)にエアバッグのテストを行い欠陥を認識したにもかかわらず上層部の指示でテスト結果を廃棄するなどの証拠隠滅を行い、これまで欠陥を隠していたと報道しています。

また杜撰な品質管理を暴露するビデオを入手したとしてニューヨークタイムズが、報道しています。
Takata’s Malfunctioning Airbags (BY Carrie Halperin ニューヨークタイムズビデオ Nov. 6, 2014)

参考

  1. タカタが証拠隠滅か…元従業員証言 エアバッグリコール問題、米で過熱(NewSphere 2014年11月11日):”エド・マーキー、リチャード・ブルメンソール米上院議員は7日、司法省に対し刑事捜査を開始するよう要請、また国家道路交通安全局(NHTSA)に問題のエアバッグを搭載している車両のリコールを呼び掛けるよう促した。”
  2. Takata Saw and Hid Risk in Airbags in 2004, Former Workers Say (By HIROKO TABUCHI New York Times NOV. 6, 2014): “But instead of alerting federal safety regulators to the possible danger, Takata executives discounted the results and ordered the lab technicians to delete the testing data from their computers and dispose of the airbag inflaters in the trash, they said.”
  3. タカタ製エアバッグ、リコール全米規模に 米当局指示 (日本経済新聞 2014/11/19):”タカタは「米当局の指示内容や対象となる台数など詳細を確認中」としている。タカタ問題では、ホンダやトヨタなど日本の自動車メーカーを中心に、中国を含む世界各国で1000万台超のリコールを迫られている。”
  4. 米フロリダ州でタカタとホンダに訴訟、欠陥エアバッグ死亡事故で(ロイター 2014年 11月 18日):”米フロリダ州でタカタ製エアバッグを搭載したホンダ車に乗っていた女性がエアバッグの欠陥により死亡したとして、この女性の遺族が17日、タカタとホンダに対し訴訟を起こした。”
  5. 弊社エアバッグに係るリコールについて(PDFファイル)(タカタ株式会社代表取締役会長兼CEO 高田 重久 2014 年11 月13 日)”本日、弊社の米国子会社であるTK HOLDINGS INC.(アメリカミシガン州)にて製造した運転者席側エアバッグの不具合に起因するリコールの届出を、本田技研工業株式会社様が日本等で行いました。このリコールは、本年7 月にマレーシアで起きた事故の調査の結果、運転者席側エアバッグのインフレータのうち、製造時におけるガス発生剤の吸湿管理が不適切であったものがあり、エアバッグ展開時にインフレータ容器が破損するおそれがあることから、実施されるものと承知しております。”
  6. The U.S. government is asking for a nationwide recall of vehicles equipped with exploding airbags made by Takata (By Katie Lobosco CNN Money November 18, 2014):”It would be an expansion of a current recall which covers eight million vehicles made by 10 different automakers.” (動画 Airbag company accused of cover-up)
  7. NHTSA Demands New, Additional Details on Air Bags from Takata and 10 Auto Manufacturers as Part of Ongoing Investigation (NHTSA November 18, 2014):”The U.S. Department of Transportation’s National Highway Traffic Safety Administration (NHTSA) today announced it is calling for a national recall of vehicles with certain driver’s side frontal air bags made by Takata. This decision is based on the agency’s evaluation of a recent driver’s side air bag failure in a vehicle outside the current regional recall area and its relationship to five previous driver’s side air bag ruptures, all of which are covered by existing regional recalls.”
  8. Recalls Look-up by VIN (Vehicle Identification Number)
  9. タカタ製エアバッグ事故で際立った日米の報道姿勢の違い(BY 牧野 洋 現代ビジネス 2014年10月31日) ”この死亡事故で亡くなったのは、フロリダ州オーランド在住のヒエン・トラン氏。運転中に交通事故に遭い、 今月2日に病院で死亡した。同氏の首には誰かにナイフで刺されたような切り傷があった。それを根拠に、警察は殺人事件として捜査を始めていた。死亡から1 週間後、トラン氏の遺族はホンダからリコールの通知を受け取った。同氏が乗っていたホンダアコードのエアバッグに欠陥があり、回収する必要があるという内 容だった。この結果、同氏を死に追いやったのはナイフではなく、エアバッグであるということが判明した。”
  10. タカタが直面するいばら道―エアバッグリコール(By Colum Murphy And Eric Pfanner 原文(英語)ウォールストリートジャーナル2014 年 10 月 2 日)
  11. エアバッグ世界シェア20%「タカタ」品質問題で揺らぐ世界の自動車業界…GMに続く巨大リコール、自動車市場にかつてない危機感 (産経WEST2014.8.25):”自動車部品メーカーのタカタ(本社・東京)が製造したエアバッグの不具合をめぐり、世界の自動車市場が大揺れだ。”

科研費を獲得した研究者への報奨金の授与

研究者が科研費を獲得すると、その金額(「直接経費」)の30%に相当する金額が間接経費として大学に入ります。つまり、大学が抱える研究者が科研費を獲得すればするほど大学は潤うのです。多額の研究費を獲得してもそれは研究にのみ使えるお金であって、研究者個人の懐には通常お金は入ってきません。

そこで、研究者の科研費獲得へのモチベーションを高める工夫として、報奨金制度を導入する大学が出てきています。報奨金の対象となる研究費の金額や、報奨金の金額は大学ごとにまちまちですが、公的研究費の一部がささやかながら研究者個人に還元される仕組みです。

東工大報奨金授与式を実施
平成26 年2 月13 日(木)に東工大蔵前会館ロイアルブルーホールにおいて東工大報奨金の授与式が行われました。この報奨金は、大学に多大な貢献等をした職員の勤労等に報い 励ますとともに、他の職員の勤労意欲の向上及び志気高揚を図り、大学を一層発展させることを目的として制定されたもので、今回で6 回目となりました。授与式では、平成24 年10 月から平成25 年9 月の間に外部資金、寄附金等により、合計1,500 万円以上の多額な間接経費を獲得し、大学の運営等に多大な貢献をされた次の22名の方々のうち7名の出席者に対して、三島学長から直接、目録が授与される とともに、本学を一層発展させるため、今後も尽力願いたい旨の言葉がかけられました。(東工大クロニクルNo.496 2014年3月 PDFファイル

名古屋大学 平成24年度 事業報告書 (PDFファイル) ”外部研究資金獲得に関して、間接経費獲得者に対する報奨金制度を構築した。”

科研費獲得金額の増加を目指す大学が考えることはニンジン作戦だけではありません。アメとムチでいえば、ムチを振るうことで科研費申請を促す大学もあります。科研費申請を行わない研究者には大学は研究費を減額、あるいは支給しないという厳しいものです。

科研費の申請の義務化について
7 月29 日に、科研費申請の義務化にかんする団体交渉をおこないました。
教員の話となりますが、科研費の申請をおこなわないことを2 年続けると、研究費がゼロに
なるというペナルティー付きです。しかも「研究代表者」としての申請が義務付けられていま
す。私たち教職員組合は、このような、ペナルティー付きの科研費申請義務化が教員にとって
も(申請業務にたずさわる)、事務系職員にとっても労働強化になる、という理由で反対の申
し入れをおこないました。(高知大学教職員組合中央執行委員会機関紙 こぶし 第 2 号 2014 年9 月4 日 PDFファイル

中でも科学研究費補助金の獲得増に当たっては、申請・採択増の方針によって、原則1人1研究課題以上の申請が義務づけられており、研究者各位の積極的な応募が不可欠であります。

法人化後、本学の研究推進会議がこうした「方針」実現のために「1人1課題以上の申請」を「義務」化し、それを果たさなかった教員には翌年度の研究経費の10%をカットするという、いわば“ペナルティ”を課してきたことは、周知の通りです。(熊本大学教職員組合 赤煉瓦 2009.10.7 PDFファイル