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科研費の申請書を生成AIを4種(Perplexity、ChatGPT、Claude、GEMINI)で書き比べ

生成AI花盛りの今日この頃ですが、科研費の申請書作成においても生成AIを活用した人が多かったのではないでしょうか。科研費の研究計画調書を生成AIに丸投げしたときに、どれくらいまともな申請書を作ってくれるのか試してみたいと思います。

依頼内容:トリプルネガティブ乳がんの新しい表面分子マーカー標的の探索という研究テーマで、科研費の申請書を書いてください。

生成AIといえばChatGPTしか知りませんでしたが、知人が、「ChatGPTよりも、PerplexityとかClaudeのほうがいいよ」というので、まずはPerplexity無料版から試してみます。

以下、Perplexityが数秒で返してくれた回答がわりとあっさりしていたので、内容をもう少し具体的にして分量を増やすようにお願いしたほか、学術的な問いもしっかり書くようにお願いしてみました。自分は分量などの指示をしただけで、実験方法や計画に関しては、最初のテーマ(上記)の指示以外は、何の指示もしていません。引用文献も適宜いれてくれるように指示しました。

Perplexity(無料版)で書いた科研費研究計画書


研究課題名: トリプルネガティブ乳がん新規表面マーカー探索

概要
本研究は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の新規表面分子マーカーを同定し、診断・治療標的としての有用性を検証することを目的とする。最新のプロテオミクス技術と機械学習を組み合わせ、TNBC特異的な表面タンパク質を網羅的に探索する。同定されたマーカー候補の機能解析と臨床検体での検証を行い、TNBCの早期診断や個別化治療に貢献する新規標的分子の発見を目指す。本研究では、(1)プロテオミクス解析によるTNBC特異的表面タンパク質の同定、(2)機械学習を用いた候補分子の絞り込み、(3)候補分子の機能解析、(4)臨床検体での検証、(5)診断・治療標的としての有用性評価を行う。これにより、TNBCの分子病態の理解を深め、新たな診断マーカーや治療標的の開発につながる知見を得ることが期待される。

(1)本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」

トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、HER2のいずれも発現していない乳がんサブタイプであり、他の乳がんサブタイプと比較して予後不良であることが知られている(Schmid et al., 2024, Breast Cancer Res Treat 12(3):345)。TNBCに対する治療法は限られており、新たな診断・治療標的の同定が急務となっている。近年、がん細胞表面に発現する分子が、診断マーカーや治療標的として注目されている。特に、抗体薬物複合体(ADC)の開発により、がん細胞特異的な表面タンパク質を標的とした精密な治療法が可能になりつつある(Ohto et al., 2023, Nat Biotechnol 41(8):1023)。しかし、TNBCにおいては特異的な表面マーカーの同定が遅れており、その探索が重要な課題となっている。本研究の着想に至った経緯として、最新のプロテオミクス技術と機械学習の発展が挙げられる。これらの技術を組み合わせることで、網羅的かつ効率的なタンパク質解析が可能になった(Inoue et al., 2023, Cancer Res 83(15):2789)。さらに、クライオ電子顕微鏡技術の進歩により、タンパク質複合体の詳細な立体構造解析が可能になり、抗体と標的分子の相互作用を原子レベルで理解できるようになった。これらの背景を踏まえ、本研究では以下の学術的「問い」を設定する:

  1. TNBCに特異的な新規表面分子マーカーは存在するか?
  2. 同定された新規マーカーは、TNBCの診断・治療標的として有用か?
  3. 新規マーカーとそれに対する抗体の相互作用メカニズムは、どのような構造的特徴を持つか?

これらの問いに答えることで、TNBCの分子病態の理解を深め、新たな診断法や治療法の開発につながる重要な知見が得られると考えられる。

(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性

本研究の目的は、TNBCの新規表面分子マーカーを同定し、その診断・治療標的としての有用性を検証することである。

本研究の学術的独自性と創造性は、最新のプロテオミクス技術と機械学習を組み合わせた網羅的探索アプローチを用いてTNBC特異的な表面タンパク質を同定し、その機能解析を行うとともに、臨床検体を用いた新規マーカーの検証と臨床応用可能性の評価を一貫して行う点にあり、これにより従来のアプローチでは見出せなかった新たな診断・治療標的の発見が期待される。

(3)関連分野の研究動向と本研究の位置づけ

トリプルネガティブ乳がん(TNBC)研究の分野では、近年、新規バイオマーカーの同定と治療標的の探索が精力的に進められている。TNBCは他の乳がんサブタイプと比較して予後不良であり、効果的な治療法が限られているため、新たな診断・治療標的の同定が急務となっている(Schmid et al., 2024, Breast Cancer Res Treat 12(3):345)。最近の研究では、TNBCにおけるIL-34の高発現が予後不良と相関することが報告され、新たな治療標的として注目されている(Kiyono et al., 2020, Breast Cancer 27(4):518)。また、プロテオミクス技術と機械学習を組み合わせたアプローチにより、TNBC特異的な表面タンパク質の網羅的探索が進められている(Inoue et al., 2023, Cancer Res 83(15):2789)。さらに、抗体薬物複合体(ADC)を用いた新規治療法の開発も活発に行われており、TNBCに対する治療効果が期待されている(Ohto et al., 2023, Nat Biotechnol 41(8):1023)。本研究は、最新のプロテオミクス技術と機械学習を組み合わせた網羅的探索アプローチを用いて、TNBC特異的な新規表面分子マーカーの同定を目指す。さらに、同定されたマーカーの機能解析と臨床検体での検証を通じて、TNBCの早期診断や個別化治療に貢献する新規標的分子の発見を目指す。このアプローチは、既存の研究手法を統合し、さらに発展させたものであり、TNBCの分子病態の理解を深め、新たな診断マーカーや治療標的の開発につながる重要な知見をもたらすことが期待される。

(4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか

  1. プロテオミクス解析と機械学習による候補分子の同定:
    最新の質量分析技術(LC-MS/MS)を用いて、複数のTNBC細胞株と非TNBC細胞株の細胞表面タンパク質を網羅的に解析する。得られたデータに対して、機械学習アルゴリズム(ランダムフォレストやサポートベクターマシンなど)を適用し、TNBC特異的な発現パターンを示す分子を効率的に同定する。さらに、公共データベース(TCGA、GEOなど)の遺伝子発現データを統合解析し、同定された候補分子の妥当性を検証する。最終的に、3-5個の有望な新規表面マーカー候補を選定する。
  2. 候補分子の機能解析:
    同定された候補分子に対して、CRISPR-Cas9システムを用いたノックアウト細胞株とレンチウイルスベクターを用いた過剰発現細胞株を樹立する。これらの細胞株を用いて、細胞増殖アッセイ(MTTアッセイ、BrdUアッセイ)、浸潤アッセイ(マトリゲル浸潤アッセイ)、遊走アッセイ(ウーンドヒーリングアッセイ)を行い、各候補分子のTNBCの悪性度への寄与を評価する。さらに、RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析を行い、各候補分子の下流シグナル経路を同定する。
  3. 臨床検体での検証:
    TNBC患者サンプル(少なくとも100例)と非TNBC乳癌患者サンプル(対照群として100例)を用いて、免疫組織化学染色法により同定された候補分子の発現を解析する。発現レベルと臨床病理学的因子(腫瘍サイズ、リンパ節転移、病期など)との相関を評価する。また、カプランマイヤー解析とCox比例ハザードモデルを用いて、各候補分子の発現レベルと患者の無再発生存期間および全生存期間との相関を解析する。
  4. 診断・治療標的としての有用性検証:
    同定された候補分子に対するモノクローナル抗体を作製し、抗体医薬としての可能性を評価する。また、ファージディスプレイ法を用いて、候補分子に特異的に結合するペプチドを同定し、低分子化合物のリード化合物として活用する。これらの抗体や低分子化合物を用いて、in vitroでの細胞増殖抑制効果やアポトーシス誘導能を評価する。さらに、TNBC細胞株を用いたマウス異種移植モデルを作製し、in vivoでの抗腫瘍効果を検証する。
  5. 個別化医療の基盤構築:
    同定された新規マーカーを用いて、TNBCの分子サブタイプ分類システムを構築する。機械学習アルゴリズム(クラスタリング解析など)を用いて、マーカー発現パターンに基づくTNBCの新たな分類法を提案する。さらに、各サブタイプと既存の治療法(化学療法、免疫チェックポイント阻害剤など)の感受性との相関を解析し、治療選択のための予測モデルを構築する。最後に、液体生検(血中循環腫瘍細胞や血中遊離DNA)を用いた非侵襲的な診断・モニタリング法の開発に着手し、個別化医療実現への基盤を確立する。

(5)本研究の目的を達成するための準備状況

まず、TNBC細胞株および非TNBC細胞株のコレクションを確立し、研究に必要な細胞材料を整えた。次に、表面タンパク質解析のためのプロテオミクスプラットフォームの最適化を行い、高精度な網羅的解析が可能な状態にある。また、機械学習アルゴリズムの開発と予備的なデータ解析を実施し、TNBC特異的な表面タンパク質の効率的な同定に向けた準備が整っている。臨床検体の収集と使用に関しては、倫理委員会の承認を取得済みであり、患者サンプルを用いた検証実験を速やかに開始できる体制が整っている。さらに、候補分子の機能解析のための分子生物学的手法を確立しており、同定された新規マーカーの機能的重要性を迅速に評価できる準備が整っている。これらの準備状況により、本研究を効率的かつ効果的に進めることが可能となっている。

(6)本研究がどのような国際性を有するか

本研究で同定される新規マーカーは、TNBCの診断・治療に新たな展開をもたらし、国際的な乳がん研究の方向性に影響を与える可能性を持つ。同定されたマーカーの検証や機能解析において、海外の研究機関との共同研究を積極的に推進し、国際的な協力体制を構築する。また、日本人TNBC患者の特性を考慮したマーカー探索を行うことで、人種間での差異を明らかにし、個別化医療の発展に貢献する。研究成果は国際学会や高インパクトファクターの学術誌で発表し、世界的な認知度を高めるとともに、同定された新規マーカーや関連技術について国際特許の出願を目指す。これらの取り組みを通じて、本研究は世界の研究をけん引し、国際協同を通じて世界の研究の発展に貢献するとともに、我が国独自の研究としての高い価値を創出することが期待される。

引用文献

  1. Schmid, P., et al. (2024). “Recent advances in triple-negative breast cancer treatment.” Breast Cancer Research and Treatment, 12(3), 345.
    DOI: Not provided
  2. Ohto, U., et al. (2023). “Novel antibody-drug conjugates for targeted cancer therapy.” Nature Biotechnology, 41(8), 1023.
    DOI: Not provided
  3. Inoue, K., et al. (2023). “Integrative proteomics and machine learning approach for identification of novel surface markers in triple-negative breast cancer.” Cancer Research, 83(15), 2789.
    DOI: Not provided
  4. Kiyono, M., et al. (2020). “High expression of interleukin-34 is associated with poor prognosis in triple-negative breast cancer patients.” Breast Cancer, 27(4), 518.
    DOI: Not provided

いかがでしょうか?ほんの15分くらいで、自分の専門外のトピックでこれだけの研究計画調書が書けてしまいました。分量的にはこれで3ページちょっとなので、適当な図も入れてほしかったのですが、Perplexityは図を描く能力は無いみたいです。

さて、ChatGPTのほうはどうでしょうか。自分はChatGPTはサブスクを購入しているのですが、ChatGPT 4o 以外に、ChatGPT o1-preview という目新しいものが登場してiいたのを見つけ、それに書いてもらいました。以下が、ChatGPTが作った申請書です。以下は、ChatGPTが書いてくれた科研費の申請書です。

ChatGPTで書いた科研費研究計画書


表題: トリプルネガティブ乳がん新規表面分子マーカーの探索

概要

本研究は、予後不良で治療法が限られるトリプルネガティブ乳がん(TNBC)に焦点を当て、新たな表面分子マーカーを探索することを目的とする。最新のプロテオミクス技術を活用し、TNBC細胞の表面タンパク質を網羅的に解析することで、TNBCに特異的な分子を同定する。さらに、同定した分子の機能解析を行い、細胞増殖や転移への関与を明らかにする。臨床検体を用いた検証により、これらの分子が診断や治療標的として有用であるかを評価する。最終的に、TNBC患者の予後改善に寄与する新規治療法の開発基盤を築くことを目指す。

本文

(1) 本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」:

トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびHER2が陰性である乳がんの一種であり、全乳がんの15–20%を占める(Foulkes et al., 2010, N Engl J Med 363(20):1938)。TNBCは高い増殖能と転移性を特徴とし、他のサブタイプと比較して予後が悪い。さらに、ホルモン療法やHER2標的療法が適用できないため、化学療法が主な治療手段となっている。しかし、化学療法に対する抵抗性や副作用の問題から、新たな治療戦略の開発が喫緊の課題である。

近年、がん細胞の表面分子を標的とした治療法が注目を集めている。特に、抗体療法やCAR-T細胞療法は、特異的な表面抗原を持つがん細胞を選択的に攻撃することが可能である(Shimizu et al., 2018, Nat Rev Clin Oncol 15(12):731)。しかし、TNBCにおいては、広く適用可能な表面分子マーカーが限られているため、この分野での進展が妨げられている。

本研究の着想は、プロテオミクス技術の進歩により、細胞表面のタンパク質群を網羅的に解析できるようになったことに基づく。これにより、従来の遺伝子発現解析では見つからなかった新規の表面分子を同定できる可能性がある。本研究の核心をなす学術的「問い」は、「TNBCに特異的な新規表面分子マーカーを同定し、それが診断および治療の新たな標的となり得るか」である。

(3) 関連分野の研究動向と本研究の位置づけ:

現在、TNBCの分子特性を解明するために、遺伝子発現プロファイリングが盛んに行われており、複数の分子サブタイプが提唱されている(Lehmann et al., 2011, J Clin Invest 121(7):2750)。これにより、各サブタイプに適した治療法の開発が期待されている。しかし、遺伝子レベルでの解析は必ずしもタンパク質の発現や機能を反映しないため、タンパク質レベルでの解析が重要となっている。

一方、表面プロテオミクスによりがん細胞の表面タンパク質を網羅的に解析する研究が進んでいるが、TNBCに特化した研究は限定的である。特に、TNBCの細胞表面に存在するタンパク質を網羅的に解析し、機能的な役割を解明する研究はほとんど行われていない。

本研究は、最新のプロテオミクス技術を用いてTNBCの表面タンパク質を網羅的に解析し、新規の分子マーカーを同定する点で独創的である。また、同定した分子の機能解析や臨床検体での検証を行うことで、実際の診断・治療への応用可能性を示すことができる。本研究は、タンパク質レベルでの新たな知見を提供し、TNBC研究の新たな方向性を示すものである。

(4) 本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか:

  • 表面プロテオームの解析: TNBC細胞株(複数種)と非TNBC細胞株を用いて、細胞表面のタンパク質をビオチン化試薬で標識し、アフィニティ精製と質量分析を組み合わせて同定する。これにより、TNBC特異的に発現する表面タンパク質のリストを作成する。
  • 候補分子の選定と機能解析: 同定したタンパク質の中から、発現レベルや既存のデータベース情報を基に、有望な候補分子を数種類選定する。これらの分子について、RNA干渉(siRNA)やCRISPR-Cas9システムを用いて発現を抑制し、細胞増殖、アポトーシス、遊走能などの細胞機能への影響を評価する。
  • シグナル伝達経路の解明: 候補分子が関与するシグナル伝達経路を、ウエスタンブロットや免疫沈降法を用いて解析する。これにより、分子機構を明らかにし、治療標的としての有用性を検証する。
  • 臨床検体での評価: 患者由来のTNBC組織および正常乳腺組織を用いて、免疫組織化学染色やRT-PCRにより候補分子の発現パターンを検討する。さらに、臨床病理学的データと照合し、予後との関連性を解析する。
  • 動物モデルでの検証: ヌードマウスを用いた腫瘍形成実験や転移モデルを作成し、候補分子の発現抑制が腫瘍の増殖や転移に与える影響を評価する。

(5) 本研究の目的を達成するための準備状況:

本研究を遂行するための技術的および人的な準備は整っている。質量分析装置(LC-MS/MS)やデータ解析用のソフトウェアは既に導入済みであり、プロテオミクス解析のための実験手技についても十分な経験がある。さらに、TNBC細胞株および非TNBC細胞株は研究室内で培養可能であり、倫理委員会の承認を得て患者由来の臨床検体も入手可能である。研究チームは、分子生物学、プロテオミクス、病理学の専門家から構成されており、各分野での豊富な研究経験を持つメンバーが揃っている。これらの準備により、研究開始後すぐに実験に着手できる体制が整っている。

(6) 本研究がどのような国際性を有するか:

本研究は、世界的に解決が求められているTNBCの治療戦略に新たな知見を提供するものである。得られた成果は国際的な学術雑誌に投稿し、主要な国際学会での発表を予定している。また、同分野で活躍する海外の研究者との共同研究を推進し、情報交換や技術交流を行う計画である。日本独自の高い技術力と独創的な研究手法を活かし、世界のTNBC研究を牽引する役割を果たすことを目指している。これにより、国際的な研究コミュニティにおける日本のプレゼンスを高め、TNBC患者の予後改善に貢献することが期待される。

引用文献リスト:

  1. Foulkes WD, Smith IE, Reis-Filho JS.
    タイトル: Triple-Negative Breast Cancer
    雑誌名: New England Journal of Medicine
    巻(号): 363(20):1938-1948, 2010
    DOI: 10.1056/NEJMra1001389
  2. Lehmann BD, Bauer JA, Chen X, Sanders ME, Chakravarthy AB, Shyr Y, Pietenpol JA.
    タイトル: Identification of human triple-negative breast cancer subtypes and preclinical models for selection of targeted therapies
    雑誌名: Journal of Clinical Investigation
    巻(号): 121(7):2750-2767, 2011
    DOI: 10.1172/JCI45014
  3. Shimizu K, et al.
    タイトル: 申し訳ありませんが、”Shimizu et al., 2018, Nat Rev Clin Oncol 15(12):731″ に該当する論文を特定できませんでした。正確な文献情報をご提供いただけますと幸いです。

以上は、ChatGPTが書いてくれた科研費の申請書でした。文献を引用してくれるのはいいのですが、その文献そもそも存在するの?ということも起こるので要注意です

さて、Claudeも試してみましょう。以下は、Claudeが書いてくれた科研費の申請書になります。

Claude(無料版)で書いた科研費研究計画書


トリプルネガティブ乳がん新規表面分子標的の探索

研究概要

本研究は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の新規表面分子マーカーを同定し、治療標的としての有用性を評価することを目的とする。TNBCは予後不良であり、効果的な治療法の開発が急務となっている。本研究では、最新のプロテオミクス技術と機械学習を組み合わせた革新的アプローチにより、TNBCに特異的な表面タンパク質を網羅的に探索する。同定された候補分子について、in vitroおよびin vivo実験によりその機能と治療標的としての可能性を詳細に検証する。さらに、同定された分子の発現パターンと臨床病理学的特徴との関連を解析し、バイオマーカーとしての可能性も評価する。本研究により得られる知見は、TNBCの分子病態の理解を深めるとともに、新規診断法や治療法の開発につながることが期待される。最終的に、本研究はTNBC患者の予後改善に貢献し、乳がん治療の新たな展開をもたらす可能性を秘めている。

1. 本研究の学術的背景、着想に至った経緯、および学術的「問い」

乳がんは女性の悪性腫瘍の中で最も頻度が高く、その中でもトリプルネガティブ乳がん(TNBC)は特に予後不良であることが知られている(Foulkes et al., 2010, N Engl J Med 363(20):1938-1948)。TNBCは、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、およびHER2受容体が陰性であり、これらを標的とした従来の治療法が効果を示さない(Bianchini et al., 2016, Nat Rev Clin Oncol 13(11):674-690)。そのため、TNBCに対する新規治療法の開発は喫緊の課題となっている。

近年、がん細胞表面に発現する分子を標的とした治療法が注目を集めている。例えば、HER2陽性乳がんに対するトラスツズマブや、PD-L1を標的とした免疫チェックポイント阻害剤などが臨床で成功を収めている(Emens, 2018, Cancer 124(10):2086-2103)。しかし、TNBCに特異的な表面分子マーカーは依然として限られており、有効な標的治療法の開発が遅れている状況にある。

最近の研究により、TNBCの不均一性が明らかになってきた(Lehmann et al., 2011, J Clin Invest 121(7):2750-2767)。この不均一性は、TNBCの治療抵抗性の一因となっていると考えられる。したがって、TNBCのサブタイプに共通する、あるいは特異的な表面分子マーカーを同定することが、新規治療法開発の鍵となる可能性がある。

プロテオミクス技術の進歩により、細胞表面タンパク質を網羅的に解析することが可能になってきた(Bausch-Fluck et al., 2018, Proteomics 18(21-22):e1800200)。さらに、機械学習技術の発展により、大規模なデータセットから有意義な情報を抽出する能力が飛躍的に向上している(Zou et al., 2019, Nat Rev Genet 20(6):311-322)。

これらの背景を踏まえ、本研究では以下の学術的「問い」を設定する:

  1. TNBCに特異的な新規表面分子マーカーは存在するか?
  2. 同定された表面分子マーカーは、TNBCの病態にどのように関与しているか?
  3. これらの表面分子マーカーは、TNBCの新規治療標的となり得るか?

2. 本研究の目的および学術的独自性と創造性

本研究の主な目的は、TNBCに特異的な新規表面分子マーカーを同定し、その機能解析を通じて治療標的としての可能性を評価することである。この目的を達成するため、最新のプロテオミクス技術と機械学習を統合した新規アプローチを採用する。この方法により、従来の手法では見落とされていた微妙な発現パターンの違いを検出し、新規マーカーの同定につなげることが可能となる。さらに、本研究ではTNBCの不均一性を考慮した解析を行う。これにより、TNBCのサブタイプ間の違いを考慮に入れたよりきめ細かな治療標的の同定を目指す。同定された候補分子については、in vitroおよびin vivo実験を通じて多角的に機能を解析する。この包括的なアプローチにより、候補分子の生物学的意義と治療標的としての可能性を総合的に評価することが可能となる。このように、本研究は最新技術の統合、TNBCの不均一性への注目、多角的な機能解析という独自の視点と方法論を組み合わせることで、TNBCの新規治療法開発に向けた革新的な知見をもたらすことが期待される。

3. 関連分野の研究動向と本研究の位置づけ

TNBC研究の分野では、新規バイオマーカーや治療標的の探索が精力的に行われている。近年、アンドロゲン受容体(AR)やPoly(ADP-ribose) polymerase (PARP)などが注目を集めており、これらを標的とした治療法の開発が進められている。また、免疫チェックポイント阻害剤の登場により、TNBCに対する免疫療法の可能性が開かれつつある。しかし、これらの治療法の有効性は限定的であり、より効果的な治療法の開発が求められている。

既存の研究が特定の分子や経路に焦点を当てているのに対し、本研究ではプロテオミクスと機械学習を用いた網羅的なアプローチを採用する。これにより、これまで見落とされていた新規標的を発見する可能性を高める。さらに、表面タンパク質の発現パターン、臨床病理学的特徴、機能解析のデータを統合的に解析することで、より包括的な理解を目指す。また、同定された分子について、治療標的としての可能性を直接評価することで、基礎研究から臨床応用への橋渡しを目指す。このように、本研究は網羅的、統合的、そして臨床応用を見据えたアプローチを採用することで、TNBC研究の新たな展開をもたらすことが期待される。

4. 本研究で明らかにしようとする内容

本研究では、以下の点を明らかにすることを目指す:

  1. TNBCに特異的な新規表面分子マーカーの同定: プロテオミクス解析と機械学習を用いて、TNBCに特異的に発現する表面タンパク質を網羅的に同定する。具体的には、TNBC患者の腫瘍サンプルと正常乳腺組織から膜タンパク質を抽出し、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)を用いて網羅的に解析する。得られたデータに対して、機械学習アルゴリズム(例:ランダムフォレスト、サポートベクターマシン)を適用し、TNBCに特異的な表面タンパク質を同定する。この手法は、Pozniak et al. (2016, Nature Methods 13(5):441-449) の方法を参考にしつつ、TNBCの特性に合わせて最適化を行う。
  2. 同定された分子の臨床的意義: 同定された分子の発現パターンと患者の予後や治療反応性との関連を解析し、バイオマーカーとしての可能性を評価する。具体的には、免疫組織化学染色法を用いて、大規模な患者コホート(n > 200)における候補分子の発現を解析する。発現レベルと臨床病理学的因子(腫瘍サイズ、グレード、リンパ節転移の有無など)および予後との関連を統計学的に解析する。この解析手法は、Curtis et al. (2012, Nature 486(7403):346-352) の方法を参考にする。
  3. 候補分子の機能解析: 選択された候補分子について、in vitroおよびin vivo実験系を用いてその機能を解明する。in vitro実験では、候補分子の過剰発現株およびノックアウト株を作製し、細胞増殖(MTTアッセイ)、浸潤(Boyden chamberアッセイ)、薬剤耐性(各種抗がん剤に対するIC50の測定)などの表現型を解析する。in vivo実験では、候補分子を操作した細胞株を用いて異種移植モデルを作製し、腫瘍増殖速度や転移能を評価する。これらの実験手法は、Lehmann et al. (2011, J Clin Invest 121(7):2750-2767) の研究を参考にしつつ、本研究の目的に合わせて最適化する。
  4. 治療標的としての可能性: 候補分子を標的とした阻害実験や中和抗体を用いた実験を行い、治療標的としての可能性を評価する。具体的には、候補分子に対する小分子阻害剤や中和抗体を設計・作製し、in vitroおよびin vivo実験系でその効果を検証する。特に、既存の化学療法剤との併用効果や、免疫チェックポイント阻害剤との相乗効果について詳細に解析する。この評価方法は、Schmid et al. (2018, N Engl J Med 379(22):2108-2121) の臨床試験デザインを参考にしつつ、前臨床段階での評価に適合させる。
  5. 分子メカニズムの解明: 候補分子がTNBCの病態にどのように関与しているのか、そのシグナル伝達経路や下流の分子メカニズムを明らかにする。具体的には、RNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析、リン酸化プロテオーム解析、タンパク質間相互作用解析(免疫沈降-質量分析法)などを組み合わせて、候補分子の下流シグナルを包括的に解析する。これらの解析手法は、Mertins et al. (2016, Nature 534(7605):55-62) の統合オミクス解析アプローチを参考に、本研究の目的に合わせて最適化する。

5. 本研究の目的を達成するための準備状況

本研究を遂行するための準備は十分に整っている。当研究室では、これまでに100例以上のTNBC患者の腫瘍サンプルと臨床情報を収集しており、さらに複数の医療機関との共同研究体制を構築していることから、追加サンプルの収集も可能である。プロテオミクス解析に関しては、最新の質量分析装置(Q Exactive HF-X)を導入済みであり、高感度かつ網羅的な解析が可能な体制を整えている。データ解析のための計算機環境も整備されており、経験豊富なバイオインフォマティシャンとの協力体制も確立している。細胞実験に関しては、TNBC細胞株(MDA-MB-231, BT-549など)および正常乳腺上皮細胞株を保有しており、in vitro実験のための準備が整っている。動物実験についても、マウス異種移植モデルの作製および解析の経験があり、必要な設備・体制が整っている。さらに、同定された分子に対する抗体作製のため、抗体作製会社との協力体制を構築している。これらの準備状況により、本研究計画を迅速かつ効率的に遂行することが可能である。

6. 本研究の国際性

本研究は高い国際性を有している。TNBCは世界中で問題となっているがんタイプであり、本研究で同定される新規標的分子は、国際的な乳がん研究コミュニティに大きなインパクトを与える可能性がある。研究の進捗に応じて、AACR(American Association for Cancer Research)やESMO(European Society for Medical Oncology)などの国際学会で積極的に成果を発表し、世界の研究者とのディスカッションを通じて研究の質を高める予定である。また、本研究で得られた知見を基に、海外の研究機関との共同研究を積極的に推進する。特に、同定された分子の機能解析や治療標的としての評価において、各国の専門家との協力を進める計画である。本研究は、日本の強みであるプロテオミクス技術と機械学習を組み合わせた独自のアプローチを採用しており、日本発の革新的な研究として国際的に高い評価を得ることが期待される。研究成果は Nature、Science、Cancer Cell などの国際的に評価の高い学術誌に投稿し、世界中の研究者に向けて発信する。最終的に、本研究の成果はTNBCの診断・治療法の開発につながる可能性があり、世界中の患者の予後改善に寄与することが期待される。これらの取り組みを通じて、本研究は日本の乳がん研究の国際的プレゼンスを高め、世界の研究の発展に貢献することを目指す。

引用文献リスト

  1. Foulkes, W. D., Smith, I. E., & Reis-Filho, J. S. (2010). Triple-negative breast cancer. New England Journal of Medicine, 363(20), 1938-1948. DOI: 10.1056/NEJMra1001389
  2. Bianchini, G., Balko, J. M., Mayer, I. A., Sanders, M. E., & Gianni, L. (2016). Triple-negative breast cancer: challenges and opportunities of a heterogeneous disease. Nature Reviews Clinical Oncology, 13(11), 674-690. DOI: 10.1038/nrclinonc.2016.66
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  4. Lehmann, B. D., Bauer, J. A., Chen, X., Sanders, M. E., Chakravarthy, A. B., Shyr, Y., & Pietenpol, J. A. (2011). Identification of human triple-negative breast cancer subtypes and preclinical models for selection of targeted therapies. The Journal of Clinical Investigation, 121(7), 2750-2767. DOI: 10.1172/JCI45014
  5. Bausch-Fluck, D., Goldmann, U., Müller, S., van Oostrum, M., Müller, M., Schubert, O. T., & Wollscheid, B. (2018). The in silico human surfaceome. Proceedings of the National Academy of Sciences, 115(46), E10988-E10997. DOI: 10.1073/pnas.1808790115
  6. Zou, J., Huss, M., Abid, A., Mohammadi, P., Torkamani, A., & Telenti, A. (2019). A primer on deep learning in genomics. Nature Genetics, 51(1), 12-18. DOI: 10.1038/s41588-018-0295-5
  7. Traina, T. A., Miller, K., Yardley, D. A., Eakle, J., Schwartzberg, L. S., O’Shaughnessy, J., Gradishar, W., Schmid, P., Winer, E., Kelly, C., Nanda, R., Gucalp, A., Awada, A., Garcia-Estevez, L., Trudeau, M. E., Steinberg, J., Uppal, H., Tudor, I. C., Peterson, A., & Cortes, J. (2018). Enzalutamide for the treatment of androgen receptor-expressing triple-negative breast cancer. Journal of Clinical Oncology, 36(9), 884-890. DOI: 10.1200/JCO.2016.71.3495
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  9. Schmid, P., Adams, S., Rugo, H. S., Schneeweiss, A., Barrios, C. H., Iwata, H., Diéras, V., Hegg, R., Im, S. A., Shaw Wright, G., Henschel, V., Molinero, L., Chui, S. Y., Funke, R., Husain, A., Winer, E. P., Loi, S., & Emens, L. A. (2018). Atezolizumab and nab-paclitaxel in advanced triple-negative breast cancer. New England Journal of Medicine, 379(22), 2108-2121. DOI: 10.1056/NEJMoa1809615
  10. Pozniak, Y., Balint-Lahat, N., Rudolph, J. D., Lindskog, C., Katzir, R., Avivi, C., Pontén, F., Ruppin, E., Barshack, I., & Geiger, T. (2016). System-wide clinical proteomics of breast cancer reveals global remodeling of tissue homeostasis. Cell Systems, 2(3), 172-184. DOI: 10.1016/j.cels.2016.02.001
  11. Curtis, C., Shah, S. P., Chin, S. F., Turashvili, G., Rueda, O. M., Dunning, M. J., Speed, D., Lynch, A. G., Samarajiwa, S., Yuan, Y., Gräf, S., Ha, G., Haffari, G., Bashashati, A., Russell, R., McKinney, S., METABRIC Group, Langerød, A., Green, A., … Aparicio, S. (2012). The genomic and transcriptomic architecture of 2,000 breast tumours reveals novel subgroups. Nature, 486(7403), 346-352. DOI: 10.1038/nature10983
  12. Mertins, P., Mani, D. R., Ruggles, K. V., Gillette, M. A., Clauser, K. R., Wang, P., Wang, X., Qiao, J. W., Cao, S., Petralia, F., Kawaler, E., Mundt, F., Krug, K., Tu, Z., Lei, J. T., Gatza, M. L., Wilkerson, M., Perou, C. M., Yellapantula, V.,

以上はClaudeが作ってくれたものです。明らかに不要な文などを削除するなど、微修正はしましたが、吐き出された文章そのままです。

GEMINI (GOOGLE)で書いた科研費研究計画書

GEMINIに頼んだら、アウトラインを箇条書きにしてくれるのですがなかなか申請書っぽい文章にしてくれません。代筆させられるのをいやがっているかのようです。「上記はあくまで一例です。ご自身の研究内容に合わせて、より詳細な情報を加えてください。」とやたらと念を押してきます。それでもごり押しして、書いてもらいました。


表題案

  • トリプルネガティブ乳がんの新規表面マーカー探索と標的療法開発
  • TNBCの新規表面分子マーカー探索による治療戦略開発
  • AI駆動型新規マーカー探索によるTNBC克服
  • TNBC克服に向けた新規分子マーカー探索と標的療法

概要

トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、既存の治療法が限られ、予後不良な悪性腫瘍である。本研究は、この難治性のTNBCに対して、全く新しい治療戦略を確立することを目的とする。具体的には、最新のAI技術とオミクス解析を融合し、TNBC細胞表面に特異的に発現する新規分子マーカーを網羅的に探索する。同定したマーカーを標的とすることで、従来の治療法では効果が得られなかったTNBC患者に対して、効果的な治療が可能となることが期待される。本研究を通じて、TNBCの分子メカニズムを深堀りし、新規治療薬の開発へと繋げ、最終的にはTNBC患者の生存率向上に貢献する。本研究は、AIと生命科学の融合による革新的ながん研究であり、国際的な学術界において注目を集める。

(1)本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」

トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、乳がんの中でも特に悪性度が高く、治療が困難なタイプとして知られている。乳がんは、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2と呼ばれる3つの受容体によって、その性質が大きく異なる。TNBCは、この3つの受容体すべてが陰性であるため、ホルモン療法やHER2を標的とした治療が効きにくく、治療選択肢が限られている。

TNBCは、乳がん全体の約15~20%を占め、その予後不良性から、新たな治療標的の探索が急務である。これまでの研究により、TNBCは遺伝子変異やエピジェネティックな変化が非常に多様であり、その分子機序は複雑であることが明らかになっている。Lehmannらの研究(2011)は、TNBCがBL1とBL2という2つの主要なサブタイプに分類されることを示し、TNBCの分子多様性の深さを浮き彫りにした。さらに、Liuらの研究(2016)は、TNBCが腫瘍微小環境との複雑な相互作用を通じて進展することを示唆し、TNBCの治療標的探索の難しさを際立たせている。

このようなTNBCの多様性に対応するためには、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、HER2が陰性であるTNBCに対して効果的な従来のホルモン療法や分子標的療法とは異なり、新規の表面分子マーカーを探索し、それらを標的とする新たな治療法の開発が不可欠である。従来の研究では、既知の癌遺伝子や腫瘍抑制遺伝子に焦点を当てられてきたが、TNBCの多様性から考えると、これらの既知の遺伝子だけでは、全てのTNBC患者をカバーできない可能性がある。そこで本研究では、AI技術を活用した網羅的なオミクス解析により、従来の解析手法では見つけることができなかった、TNBCに特異的な分子シグネチャーを同定し、「TNBCの多様な分子背景において、共通して発現が変動し、かつ治療標的となりうる新規表面分子マーカーは存在するか?」という学術的な問いに対する答えを見つけることを目指す。AI技術の進歩により、膨大なオミクスデータを解析し、TNBCの分子メカニズムのより深い理解を目指し、最終的には、TNBC患者の予後改善に貢献したい。

(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性

本研究の目的は、以下の3点です。

  1. 新規表面分子マーカーの同定: AI技術を用いた深層学習により、TNBC細胞表面に特異的に発現する新規分子マーカーを予測する。
  2. マーカーの機能検証: 同定されたマーカーの機能をin vitroおよびin vivoで検証し、その腫瘍形成における役割を明らかにする。
  3. 標的療法開発への応用: 同定されたマーカーを標的とする新規治療法の開発に向けた基礎研究を行う。

本研究は、TNBCの分子メカニズムの解明を深め、新規治療標的の同定を可能にし、最終的にTNBC患者の予後改善に繋がることを目指す。

学術的独自性と創造性

本研究は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の新規治療標的探索において、AI技術とオミクス解析を融合するという、極めて革新的なアプローチを採用する。従来のTNBC研究は、特定の遺伝子や経路に焦点を当てた探索が主流であったが、本研究では、AIの力を借りて、膨大なオミクスデータを網羅的に解析し、未知の分子マーカーを探索する。

具体的には、深層学習などのAI技術を活用し、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームなど、多層のオミクスデータを統合的に解析することで、TNBCに特異的な分子シグネチャーを効率的に抽出する。これにより、従来の手法では見つけられなかった、より精度の高いマーカーの同定が期待できる。

本研究の学術的な独自性は、単に既存の手法を組み合わせるのではなく、AIという新たなツールを導入することで、TNBC研究の新たな地平を開拓しようとする点にある。また、多層オミクスデータを統合的に解析するという点も、本研究の大きな特徴である。これらの独創的なアプローチにより、TNBCの分子メカニズムの解明を深め、最終的には、TNBC患者の生存率向上につながる新たな治療法の開発に貢献することが期待される。

さらに、本研究で得られた成果は、TNBCだけでなく、他の種類の癌の研究にも応用できる可能性があり、広範なインパクトを与えることが期待される。AI技術と生命科学の融合という学際的なアプローチを通じて、従来の枠組みを超えた新たな知見を創出し、がん研究に革新をもたらす可能性を秘めている。

(3)関連分野の研究動向と本研究の位置づけ

近年、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の分子標的療法開発に向けた研究が活発化しており、特にオミクス解析技術の進歩により、TNBCの分子多様性が明らかになってきた。従来の研究では、特定の遺伝子変異や経路に焦点を当てた探索が主流であったが、TNBCの多様性に対応するため、より網羅的な解析手法が求められてきた。本研究は、こうした研究動向を踏まえ、AI技術と多層オミクス解析を融合することで、TNBCの新規表面分子マーカーを探索するという、極めて革新的なアプローチを採用する。AI技術の進歩により、膨大なオミクスデータを解析し、複雑な生物学的ネットワークから、TNBCに特異的な分子シグネチャーを抽出することが可能になった。本研究の独自性は、AI駆動型マーカー探索、多層オミクスデータの統合解析、新規治療標的の開拓という3点に集約される。AI技術を活用することで、従来の手法では見つけられなかった、より精度の高いマーカーの同定が期待できるだけでなく、多層オミクスデータを統合的に解析することで、より包括的な分子プロファイルを構築し、TNBCの分子メカニズムの解明を深めることができる。最終的には、これらの成果を基に、TNBCに対する新しい治療法の開発に繋げ、患者生存率の向上に貢献することを目指す。本研究は、オミクス解析とAI技術を融合することで、TNBC研究の分野において、より網羅的で精度の高い分子標的探索を可能にするという点で、学術的な貢献が期待される。

(4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか

本研究では、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の新規治療標的の探索を目的とし、以下のステップで研究を進める。

まず、トリプルネガティブ乳がん患者から手術で切除された腫瘍組織および対応する正常組織を収集し、RNA、タンパク質、代謝産物を抽出し、それぞれRNA-seq、質量分析、メタボローム解析を行う。これら高スループットなオミクス解析により、膨大な量の分子データを生成する。

次に、得られたトランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームデータを統合し、多変量解析を行うことで、TNBC特異的な分子シグネチャーを同定する。このシグネチャーから、TNBCと正常組織を識別できる特徴的な遺伝子、タンパク質、代謝産物を抽出する。

抽出された特徴量を用いて、深層学習などの機械学習モデルを構築し、TNBCと正常組織を分類するモデルを構築する。構築したモデルを用いて、TNBC細胞表面に特異的に発現している可能性のある新規分子マーカーを予測する。

予測されたマーカーの検証として、免疫組織化学染色やウェスタンブロッティングを用いて、腫瘍組織および正常組織におけるマーカーのタンパク質発現を評価する。さらに、ノックダウンや過剰発現実験を行い、マーカーの細胞増殖、浸潤、転移など、腫瘍形成における役割を評価する。

最終的には、予測されたマーカーを標的とする抗体医薬やペプチド医薬を設計し、in vitroでの評価を行う。また、独立した臨床検体を用いて、同定されたマーカーの臨床的有用性を検証し、バイオマーカーとしての活用可能性も検討する。

これらの実験を通じて、TNBCの新規表面分子マーカーを同定し、その機能を解明することで、最終的にはTNBCに対する新しい治療法の開発に繋げ、患者生存率の向上に貢献することを目指す。

(5)本研究の目的を達成するための準備状況

本研究は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の新規治療標的の探索を目的とする。この目的を達成するため、以下の準備を進めた。

まず、複数の医療機関と連携し、トリプルネガティブ乳がん患者の貴重な腫瘍組織および対応する正常組織の収集体制を確立した。これらの臨床サンプルは、本研究の基盤となる重要なデータである。次に、RNA-seq、質量分析、メタボローム解析といった大規模なオミクス解析を行うための設備とノウハウを有する研究機関との連携も進めている。これらの解析手法により、膨大な量の分子データを生成し、TNBCの複雑な分子メカニズムを解明するための基盤を築く。

さらに、深層学習をはじめとする最先端のAI技術を用いた解析パイプラインの構築を完了した。このパイプラインにより、膨大なオミクスデータを効率的に解析し、TNBCに特異的な分子シグネチャーを抽出することが可能になる。また、オミクス解析、AI、腫瘍学などの各分野の専門家と連携することで、より高度な解析と議論を行う体制を整えている。

これらの準備により、本研究は計画通りに進展し、トリプルネガティブ乳がんの新規治療標的発見に貢献できると確信する。具体的には、臨床サンプルの確保、高性能な解析機器の利用、最先端の解析ソフトウェアの導入、そして各分野の専門家との連携という4つの柱が、本研究の成功を支える基盤となっている。

(6)本研究がどのような国際性を有するか

本研究は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)という国際的な課題である疾患を対象とし、その成果は世界中の患者に貢献する可能性を秘める。

具体的には、世界各地の研究機関と連携し、多様な遺伝的背景を持つ患者サンプルを収集・解析することで、より普遍的な知見を得る。また、国際的な学会で研究成果を発表し、世界の研究者との議論を通じて、研究の質を高める。さらに、RNA-seq、質量分析、メタボローム解析など、国際的に標準化された解析手法を採用することで、研究成果の再現性と信頼性を高め、世界の研究コミュニティとの連携を強化する。

研究で得られた膨大なデータを、国際的なデータベースに登録することで、世界の研究者が自由にアクセスし、共同研究を促進する。これにより、TNBC研究の加速化に貢献し、世界的な医療の発展に寄与する。また、NatureやCellといった国際的な学術誌への論文投稿を目指し、研究成果を世界に発信する。これにより、本研究のインパクトを最大化し、世界のTNBC研究をリードする。

最終的に、本研究で同定された新規バイオマーカーや治療標的は、将来的に国際的な臨床試験に展開され、世界中のTNBC患者に新たな治療選択肢を提供する可能性がある。

このように、本研究は、国際的な共同研究、標準プロトコルの採用、データベースへの貢献、学術誌への発表、そして国際的な医療への貢献という多角的な側面から、高い国際性を有する。


GEMINIは、なんだか素直に言うことを聞いてくれなくて使いにくかったです。研究倫理の倫理観がかなり強めなのかもしれません。

生成AIで科研費申請書を作ってみた感想

生成AIがここまでやってくれるのだとしたら、自分の申請書作成のブラッシュアップに活かさない手はないでしょう。2025年の科研費の採否は、どの生成AIを使った人が勝つのでしょうか。

生成AIの弱点としては、大量の文書を読み込んでそれに基づいて出力していることから明らかなように、本当にオリジナリティの高いアイデアは提供してくれないはずです。そのため、生成AIを使ってかかれた科研費申請書は、どれも似たような物になる可能性が高いと思います。実際上の4つは、シンプルな依頼にも関わらず、研究の戦略はほとんど同じようなものになりました。もしみんなが生成AIを使って書いていたのだとしたら、今年、科研費を審査する人は、どれもそつなく書かれているけど尖ったところがないなという印象を持つのではないでしょうか。

そうはいっても、人間が考える場合でも世の中の潮流の影響を受けて新しい研究を着想するわけですから、人間が書いたからといってどれくらいオリジナリティがあるのかわかりません。生成AIのほうに分がないとも言えないでしょう。

日本語の文章の読みやすさに関しては、生成AIが圧倒的に有利だと思います。人間が書いた文章のように、文の始まりと文の終わりで呼応関係がうっかりズレたといった、しょうもないミスはまずしません。

文章の流れが十分論理的かというと、PerplexityもChatGPTもClaudeも情報を羅列気味であり、必ずしも論理的な流れがハッキリはしていません。人間が書いたほうが接続語などを効果的に使ってもっと論理的な流れがはっきりした文章が作れるだろうと思います。

なんの知識もない人間が一切労力もかけずに、この程度の申請書を書けてしまうのですから、今年度に応募者みんなが生成AIを使っていたならば、これらの文章がこれからの科研費応募書類の最低レベルということになるでしょう。

一個試しただけだと、たまたまということもあるので、別の研究テーマでも試してみました。こちらもご覧ください。

  1. 生成AIで科研費の申請書を書くことは可能か?生成AI利用の落とし穴 「全身エリテマトーデスに対する新規治療戦略に関して研究助成申請書作成のためのたたき台をつくってくれない?」

 

【豆知識】大学からJSPSへの送信後の原稿の差し替えは可能か?

【Q2207】 研究機関の担当者が研究計画調書の応募情報を電子申請システムで承認し日本学術振興会に送信した後に、研究者から研究計画調書の一部に誤りがあったとの連絡がありました。差し替えを行いたいのですが、どうすればよいでしょうか。

【A】 日本学術振興会が定めた研究計画調書等の提出(送信)期限(以下「学振受付期限」という。)より前であれば、日本学術振興会への提出(送信)後に研究機関担当者※により研究計画調書等(応募書類)を引き戻し、必要に応じた訂正、再提出を行うことができます。ただし、学振受付期限後に、研究計画調書等の引き戻し、再提出を行うことはできませんので、提出いただく前に十分確認をお願いします。なお、引き戻しを行った場合、一度提出した研究計画調書等であっても、最終的に電子申請システム上の応募状況が「学振受付中」となるまで日本学術振興会に提出されたことにはなりませんので、十分に留意してください。また、アクセスが集中して期限までに再提出が完了できない場合があるため、学振受付期限当日は引き戻しを行わないようにしてください。
※個人管理の研究種目の場合は、提出した研究者本人による引き戻しが可能です。https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_faq/kakenhi_faq.pdf

科研費の締め切り日時

公募期間

令和6(2024)年7月16日(火)~9月18日(水)午後4時30分(厳守)

令和7(2025)年度基盤研究(A・B・C)、挑戦的研究、若手研究の公募について 科学研究費助成事業(科研費) Grants-in-Aid for Scientific Research 公募情報 日本学術振興会

サイコロを1万回振ってみることの科学的・教育的な意義について

トレンドに「大数の法則」が入っていて、何かと思ってみたら、サイコロを1万回振ることの意義についての議論が活発に行われていました。

夏休にサイコロを1万回振った中学生

実際にやってみることの大切さについて

実験することの意義について

 

サイコロをふることと研究者の素養

サイコロの6個の目のうち最も出やすいのはどれか

夏休の自由研究 サイコロ振り実験のバリエーション

  1. 2019年度 サイエンス研究会 研究論文 国立大学法人 奈良国立大学機構 奈良女子大学附属中等教育学校 Nara Women’s University Secondary School サイコロの出る目の確率について、一般的な「くぼみのあるサイコロ」と「くぼみのないサイコロ」を使って確かめることにした。どちらのサイコロも振る回数が少ないときは確率にばらつきがあったが、回数が多くなるにつれて、それぞれの目の出る確率が一定の値に近づいていった。また「くぼみのないサイコロ」の方が各目の出る確率の差がとても小さくなることがわかった。 https://nwuss.nara-wu.ac.jp/media/sites/11/ssh19_04.pdf 

サイコロをふる小学生

サイコロをふる大学生

PC上でサイコロを振る人

サイコロを振った科学研究者

1万回は十分に多いのかについて

サイコロを1万回振ることのリアル

【自由研究】サイコロ一万回ふって統計とってみる【輪廻ヒロ】 輪廻ヒロ / Rinne Hiro チャンネル登録者数 118人

先駆者たち

サイコロを振らない人

2025年度科研費申請書新様式(6)どのような国際性を有するか をどのように書けばいいのか?について 

国際性が様式に追加

2025年度科研費から、申請書の様式に、(6)本研究がどのような国際性(将来的に世界の研究をけん引する、協同を通じて世界の研究の発展に貢献する、我が国独自の研究としての高い価値を創出する等)を有するか について具体的かつ明確に記述すること という指示が付け足されました。

ここをどう書けばよいのか戸惑い、悩んでいる人がたくさんいます。変更されてから初めての応募なので、どうのように書いた申請書が採択されたのかという情報がなく、正解がわからないのです。

国際性が評定要素に追加

単に、様式に(6)国際性が加わっただけというものではなく、それに対応して審査委員の評定要素に国際性が加わっていることに注意を要します。つまり、このセクションの記述に対して点数が付けられるのですから、おろそかにはできないのです。

国際性がない科学研究?

わざわざ国際性を書かせることに対して懐疑的な反応も多数見られました。科学研究の成果は、世界で一番だからこそ発表できるわけで、国際性がない研究という概念がそもそもあるのか疑わしいからです。

国際性をアピールしにくい研究

このような研究に配慮してか、指示のところには日本独自の研究の例も挙げられています。

(6)本研究がどのような国際性(将来的に世界の研究をけん引する、協同を通じて世界の研究の発展に貢献する、我が国独自の研究としての高い価値を創出する等)を有するか

国際性を評点とすることに関する感想・意見

国際性を書かせることになったウラ事情

(6)どのような国際性を有するか を書くにあたって、下記の資料は必読です。特に太字下線にした部分を読むと、今回の変更の意図が良くわかります。つまり(6)どのような国際性を有するか でアピールすべきことは、「国際共同研究加速基金」や「海外連携研究」の趣旨を反映したものであるべきだと言えるでしょう。

第 1 2 期 研究費部会 における科研費 の 改 善 ・充実及び 今後の 議論の方向性について( 中間まとめ ) 令和6年 6 月 2 4 日 科学技術・学術審議会 学術分科会研究費部会

①国際的に波及効果が高い学術研究の推進
(科研費(基盤研究)における研究の国際化等)
既に基盤研究等の枠組みでも国際競争力のある研究は数多く行われているところ、上記の環境の変化を踏まえ、「国際共同研究加速基金」として別枠で助成する仕組みではなく、審査によりそうした研究を見出し、助成する仕組みが必要である。
また、我が国の研究力の相対的・長期的な低下が懸念される中、現在の物価高や為替安等の厳しい社会情勢も踏まえ、研究者が国際競争力のある研究に十分取り組めるよう、応募額を尊重した研究費配分が望まれる。
このため、本部会及び振興会の学術システム研究センターにおける議論を踏まえ、「国際共同研究加速基金」について、その機能を勘案しつつ可能なものは段階的に「基盤研究種目群」等に統合していくこととする。その際、「基盤研究(B)」との間で実質的な差異がなくなった「海外連携研究」については、令和7年度助成から公募を停止し、速やかに「基盤研究種目群」等に統合することとする。
https://www.mext.go.jp/content/20240624-mxt_gakjokik-000036755_1.pdf

上の資料の経緯」を読めば、(6)国際性 をどう書けばよいかは明らかです。つまり、「基盤研究」に統合される「国際共同研究加速基金」と「海外連携研究」の趣旨を、基盤研究の様式の中で受け継いだのが(6)国際性 の部分なので、それらの趣旨を意識して書けばいいのです。

国際共同研究加速基金

国際先導研究 我が国の優秀な研究者が率いる研究グループが、国際的なネットワークの中で中核的な役割を担うことにより、国際的に高い学術的価値のある研究成果の創出を目指す。ポストドクターや大学院生の参画により、将来、国際的な研究コミュニティの中核を担う研究者の育成にも資する。(7年間(10年間までの延長可) 5億円以下)

国際共同研究強化 科研費に採択された研究者が半年から1年程度海外の大学や研究機関で行う国際共同研究。基課題の研究計画を格段に発展させるとともに、国際的に活躍できる、独立した研究者の養成にも資することを目指す(1,200万円以下)

海外連携研究 複数の日本側研究者と海外の研究機関に所属する研究者との国際共同研究。学術研究の発展とともに、国際共同研究の基盤の構築や更なる強化、国際的に活躍できる研究者の養成も目指す(期間3~6年間 2,000万円以下)

帰国発展研究 海外の日本人研究者の帰国後に予定される研究(期間3年以内、5,000万円以下)

(6)国際性の書き方に関するアドバイス

 

ポスドク(博士号取得者)の企業への就職支援に国が本腰

 

  1. 博士の就職支援を強化、政府が企業向けに手引作成へ…採用ゼロの企業が76・6% 8/23(金) 5:01配信 687 コメント687件 読売新聞オンライン YAHOO!JAPANニュース
  2. 博士人材の就職支援、産学官で手引き策定へ 経産省 2024年8月23日 22:18 [会員限定記事] 日本経済新聞  経済産業省は博士号をもつ専門人材の就職を支援するための手引書を2024年度末をめどにまとめる。

 

 

  1. ポストドクター等の雇用・育成に関する ガイドライン (30ページ PDF mext.go.jp)令和2年12月3日 科学技術・学術審議会 人材委員会

scienceandtechnology.jp

August 18, 2024

科研費は公的研究費なので、科研費応募を予定する研究者はコンプライアンス意識をしっかりと持つことが要請されています。そのため、研究倫理(公的研究費のコンプライアンス)教育のための講習動画を視聴する義務が課せられています。

日本の大学の研究者の給料は、その業績に比べると大したことがなくて非常にバランスが悪いことがあります。ノーベル賞級の仕事をしている大学教授と、論文をろくに書かない学大教授の給与体系が基本的には同一なわけです。しかし、獲得する研究費は2~3桁も違っています。

研究費の金額にかかわらず、研究費を正しく使うことが重要で、文科省からガイドラインが出されています。

  1. 研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)(令和3年2月1日改正) 文部科学省

研究費の不正使用が明らかになった場合には、文科省のサイトでその内容が公開される場合があるようです。

    1. 東京大学における公的研究費の不正使用について
    2. 早稲田大学における公的研究費の不正使用について
    3. 福島大学における公的研究費の不正使用について
    4. 鹿児島大学における公的研究費の不正使用について
    5. 北陸先端科学技術大学院大学における公的研究費の不正使用について
    6. 四天王寺大学における公的研究費の不正使用について
    7. 福岡教育大学における公的研究費の不正使用について
    8. 名古屋大学における公的研究費の不正使用について

研究費不正の典型的な事例は、カラ出張でしょう。出張していないにも関わらず出張旅費を請求して、研究費を自分の懐に入れるというものです。自分が学生の頃(数十年前)は、カラ出張で小銭を貯めてそのお金で学部学生の学会旅費をねん出するということが比較的広く行われていたということをうわさで聞いたことがあります。しかし現在は、公的研究費の使途の自由度が高められており、研究室の運営のためにカラ出張をする必要はほとんどなくなってきているように思います。

カラ出張でなく、研究業務目的で出張はしたが、交通費や宿泊料を「浮かせる」という不正もあります。ホテルに泊まったことにして友達の家に泊めてもらい宿泊料を請求するのは不正行為になります。ただし、通常は大学が研究者に対して「ホテルが発行する宿泊証明書」の提出を義務付けていることが多いので、この手の方法は通用しないことが多いと思います。また、大学側が研究者に対して、出張先での学会参加など用務を行った証拠(当日配布されるプログラム、学会参加証、現場の写真など)の提出を求めることも多いと思います。何であれば証拠とになるかは絶対的なものがないため、悪意をもった不正を大学事務が完全に防ぐのは難しく、研究者本人の高い倫理観が求められます。

出張用務の証拠提出に関しては、大学ごとにローカルルールがあるようです。

巧妙な不正行為を行う人間が出てくると、それを防止するために研究者には余計な義務が課せられるようになるので、どんどん研究に関するつまらない業務が増えていって肝心の研究に影響しかねないというのが、問題です。

研究費不正でありがち?なものは、PCなどを研究目的以外で購入することです。これに関しては、防止策が徹底されてきており、必ずしも高額でなくても監査においてちゃんとその物品が研究の現場に存在するかが定期的に調べられることが多いと思います。換金性が高く、汎用性が高いデジタル機器に関しては、購入や管理に関してはかなり厳しいルールが大学によって定められていてそれを遵守することが研究者に求められているということが、多いと思われます。

なぜ不正が起こるのか?倫理講習でよく紹介されているのが、「不正のトライアングル」と呼ばれるもので、①機会②動機③正当化という、不正リスクの3要素の存在が提唱されています。

①機会:研究者は巨額の研究費を自分の判断で自由に使える立場にあり、

②動機:プライベートもしくはラボの運営にあたって、お金が何かと足りないので、自由に使えるお金が必要という動機があり、

③正当化:研究者は安い給料で世界の最先端の仕事をしているので全く正当に報われていない、もっと報われるべきだという意識がある

ことから、研究不正がなくならないのかなと勝手に想像しています。まあ一番の理由は、倫理感も持っていない人間が研究業界に紛れ込んでいるからでしょう。

公的研究費を私的流用すると、むこう10年間、公的研究助成への応募ができなくなるという罰則があります。

  1. 研究費の不正使用、研究活動における不正行為の防止について https://www.mext.go.jp/content/1395971_01.pdf

これは研究者生命が絶たれるくらいの重さだと思います。私的流用は、金額の大小にかかわらないというのが要注意で、金額が小さいとこれくらいならと思う人がいるかもしれませんが、その代償は非常に大きなものになります。また、不正行為を働いた研究者の氏名は公表されてしまうので、次の職探しに影響する恐れがあります。もちろん悪質な場合は、刑事事件として処理される恐れがあります。

  1. 東大教授を詐欺容疑で逮捕
  2. 東工大生命理工(元)教授が研究費を私的流用

また、研究室主宰者には部下の不正に対する監督責任もあります。そのため、善管注意義務の違反によりペナルティが下される恐れもあります。

不正使用を行った研究者に対する応募資格の制限等について

平成24年度の「競争的資金の適正な執行に関する指針」の改正において、特に悪質な不正使用の事案に対しては厳しく対処するとともに、不正使用の内容に応じて、応募資格を制限することとした。

不正使用の程度と応募制限期間:善管注意義務違反を行った研究者 善管注意義務を有する研究者の義務違反の程度に応じ、上限2年、下限1年 https://www.mext.go.jp/content/1395971_01.pdf

研究者としては、何が研究費不正になるのかを正確に理解しておくことが重要で、研究者としては些細だと思たことでも、不正行為と認定される恐れがあります。故意か過失かでいえば、たとえ過失であっても「重大な過失」と判断されると不正に該当してしまいます。故意の場合、私的流用は論外としても、ことなる研究テーマに用いると目的外使用とみなされる恐れもあります。複数の研究テーマの線引きは難しいことが多いのですが、注意が必要です。事前に大学事務に相談しておけば不正にならずにルールにのっとって正しく使える方法が見つかる場合もあるので、まずは大学事務に相談すべきでしょう。

研究費不正の代表格は、業者とグルになって預け金をつくることです。これは、研究期間をまたぐための苦肉の策だと思いますが、いまどき、科研費は使い方がかなり柔軟になってきており、このような不正をする必要がそもそもなくなってきていることが多いと思います。

カラ謝金というのも不正使用の典型で、自分のラボの学生が働いたことにして謝金を出し、実際には学生には渡さずに教授がそのお金をプールして別の目的に使うというのが、大昔はあったと聞いたことがあります。そうやってプールしたお金をラボのために使ったとしても不正であることには変わりはありません。時代が変わると不正に対する考え方や捉え方も180度変わることがあるので、要注意です。

注意すべきは、自分の研究グループのためにという目的であっても、不正にお金を還流させると不正とみなされてしまうということです。どんな理由でも正当化されることはありません。

研究不正の典型としてもうひとつあるのが、「期ずれ」と呼ばれるものだそうです。今年度の予算がもうなくなってしまったけどどうしてもその研究機器が今年度必要だから、納品だけ今年度にしてもらい、支払いは来年度にまわしてもらう。あるいは逆に、今年度予算が余ってしまったのだが、来年度どうしても必要な研究装置があるので、支払いだけ先に今年度済ませて実際の納品は来年度にしてもらうというものです。どっちもアウトで、立派な研究費不正になります。

通常おつきあいのあるまともな業者なら、代償が大きすぎるこういった研究不正に手を貸すことはないでしょう。

参考

  1. https://www.mext.go.jp/a_menu/kansa/08122501.htm
  2. https://www.mext.go.jp/a_menu/kansa/houkoku/1343904_21.htm

科研費で何を買っていいのか、何は買えないのかは研究者が一番知りたいことですが、それに関しては制度によって明確な線引きをしているわけではないので、実際には制度を運用する大学のローカルルールが優先されることになります。

【Q41071】 どういった経費に科研費の「直接経費」として使用することができるのか、支払の可否をリスト化することはできないのでしょうか。

【A】 科研費からの経費支出に当たっては、経費を支出しようとする事柄(「物品」や「料金」等)そのものに着目して支出の可否を判断するのではなく、「当該経費の支出が科研費の研究遂行上必要かどうか」といった観点で可否を判断することになりますので、単純にリスト化することは困難です。例えば、同じパソコン代金の支払いであっても、科研費の研究遂行上必要であれば代金を科研費から支出することができますが、科研費の研究遂行上必要ない場合は目的外使用に当たるため科研費から支出することはできません。https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_faq/kakenhi_faq.pdf

公的資金の使途に関してはある程度の柔軟性が認められるようになってきています。

【Q4411】 共用設備を購入する際、当初予定していたものと同程度の設備を購入しなければならないのですか。

【A】 複数の補助事業において合算して共用設備を購入することで、当初予定していた設備よりも高額でハイスペックな設備を購入することも可能です。

特に、「目的外使用」に関しては概念的な変更がなされていると思います。

【Q4413】 科研費以外の研究者も使用する前提で科研費による共用設備の購入は可能でしょうか。また、科研費共用設備に関する研究機関のルールを定める際に、どのようなことに留意したらよいでしょうか。

【A】 共用設備は、各補助事業の遂行に支障のない範囲で他の研究のためにも使用されることが望ましいと考えられます。したがって、科研費以外の研究者も使用する前提であっても科研費による購入は可能です。また、この場合、科研費以外の経費(運営費交付金など科研費との合算使用を認めている経費)を加えて購入することも可能です。 各研究機関においては、研究機関内において共用設備が有効に活用されるよう、その使用方法や管理方法などについて適切にルールを定めてください。

【Q4414】 科研費と他の研究費制度の経費を合算して共用設備を購入することはできないのでしょうか。

【A】 科研費と他の研究費制度による共用設備の購入については、科研費以外の競争的研究費制度で合算使用が認められ科研費による研究に支障が生じない場合には合算使用が可能です。令和2(2020)年度より、合算使用が可能な対象制度が拡大されました。詳細は、以下の申し合わせを確認してください。 「複数の研究費制度による共用設備の購入について(合算使用)」(令和2年3月31日資金配分機関及び所管関係府省申し合わせ) https://www.mext.go.jp/content/20200910-mxt_sinkou02-100001873.pdf

https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_faq/kakenhi_faq.pdf

 

合算使用制限の例外が認められるのは以下の四つの場合です。
①直接経費に、使途に制限のない他の経費を加えて補助事業に使用する場合
②直接経費と使途に制限のある他の経費(科研費以外)を加えて、他の用務と合わせて1回の出張を行う場合や、他の用途と合わせて1個の消耗品等を購入する場合などに、補助事業に係る用務や、補助事業に用いる数量分を明らかにした上で使用する場合
③直接経費に他の科研費を加えて、各事業の負担額及び算出根拠を明らかにした上で、補助事業に使用する場合
④直接経費に、共用設備の購入が可能な制度の経費を加えて、各事業の負担額及び算出根拠を明らかにした上で、共用設備を購入する場合 

日本学術振興会 科研費FAQ https://kakenhi.jsps.go.jp/

 

【Q44071】 科研費で購入した実験装置は、研究期間が終了した後も、別の研究等で使用することは可能でしょうか。

【A】 可能です。科研費により購入した設備等は、購入後直ちに研究機関に寄付することとしていますので、研究期間終了後も、研究機関の定めに従い、別の研究等で使用することは差し支えありません。 また、科研費が交付されている研究者個人のみではなく、有効利用・有効活用の観点から、所属研究機関外の研究者を含め他の研究者の研究に使用することを可能にするなど、積極的に設備の共用化を図ってください。なお、令和2(2020)年度以降に購入する設備等については、研究課題の研究期間終了後(補助事業を廃止した場合も含む)5年間は、【Q4405】のとおり取り扱うこととなります。

https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_faq/kakenhi_faq.pdf

科研費の使用にあたっては、「基金」と「補助金」の区別が大事です。研究者はあまり普段意識しないかもしれませんが、事務処理上大きな問題になります。補助金は年度ごと、基金は研究機関をまたいでOKというのが基本です。

質問番号 Q4439

質問 年度をまたいでの出張を行う場合に、科研費から旅費を支出できますか。

回答 科研費(補助金分)にあっては、年度をまたぐ旅費のうち当該年度分を支出することはできますが、次年度に係る出張の経費を、前年度の補助金から支出することはできませんので注意してください。一方、科研費(基金分)にあっては、年度をまたぐ支出について制約はありませんので、旅費を年度によって分けて支出する必要はありません。 https://kakenhi.jsps.go.jp/

特に海外の学会では、懇親会でアルコールが提供されることが多いと思いますが、科研費でアルコール飲料を購入するわけにはいかないため、この可否が問題になります。懇親会費用のうちアルコール飲料代とその他を分けた明細を出せと事務にいわれたことが自分はありますが、学会主催者に問い合わせてもだいたいそういうことまでは対応してもらえません。これに関してもルールの適用に時代の変化があるかもしれませんので、最新のルールやルールの実施基準を確認することが大事です。

質問番号 Q4474

質問 学会への出席にあたって、学会参加費の中に夕食のレセプション(アルコール類も提供される)費用が含まれており、この部分だけ切り離すことはできないとのことでした。こうした場合に、学会参加費を科研費から支出することはできませんか。

回答 学会参加費の中にその費用が組み込まれ不可分となっているようなレセプションは、学会活動の一環として企画されていると考えられますので、その際にアルコールが供されるか否かを問わず、参加費を科研費から支出することは可能と考えます。なお、実際には、様々なケースがあると思われますので、社会通念上、学会活動を超えるようなケースまで支出を可能とするものではありません。https://kakenhi.jsps.go.jp/

上の回答は微妙で、実際には大学の判断・ローカルルールに従うことになるのだろうと思います。

 

科研費応募を予定する研究者に課せられた研究倫理講習動画視聴義務

研究者は、研究倫理について学ぶことが義務付けられています。特に、科研費に応募する場合には所属機関が提供する研究倫理の学習コースを修了しておくことが、どの大学でも必須とされています。

研究倫理に関しては、文科省の研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(2014年8月)というものがあります。なぜ毎年、何時間を時間をかけて動画を見させられるのという不満も出そうですが、毎回思い起こしてねという趣旨のようです。

倫理講習が大事なのはわかりますが、その一方で、エラーバーを手作業て押し込むなど、明らかな不正行為と思われるものが野放しにされていたりするので、研究倫理講習をこうやってガチガチに強制する(動画を早送りで見たりできない!)ことにどれほどに意味があるのだろうという疑念も頭をよぎります。

  1. 東大医学部の疑惑論文等を画像ソフトで確認

不正行為を働いた人間を厳罰に処すのでなければ、いくら講義を受けさせたところで不正行為をする人はするのでしょう。東大医学部の件は、研究コミュニティからの「吟味」も「批判」も全く受けませんでした。何しろ、東大が報告書など重要なものを何も公開せずに、単に不正はなかったのでそれ以上説明しないといって幕引きを図ったからです。毎年毎年これだけ研究倫理、研究倫理と言っておきながら、文科省が東大に資料を公開させないというのは自分には大きな驚きでした。いや、驚き以上で、大きなショックを受けました。

さて、研究不正は実際のところかなり狭く定義されていて、ねつ造 fabrication、改ざん falsification、盗用 plagiarismの3つが、「特定不正行為」として定義されています。不正行為がそれらだけに限定されるわけではないとされていますが、実質、罰則を伴わないのであれば、あまり意味がないようにも思われます。それら以外のグレーゾーンの行為はQuestionable Research Practice (QRP)などと言われることもあります。

QRPに属するものとして、二重投稿、オーサーシップの不適切さ、実験データの管理のまずさ、研究広報の不適切さ、研究指導の放棄などが挙げられることが多いようです。

研究不正を疑われた人の常とう手段は、「実験ノートを無くしました。実験データが入ったPCが壊れました。」というものです。実験ノートが存在しなければ、不正の事実も証明できないので、どうしようもありません。

  1. 実験ノートの書き方
  2. 「実験ノートがない=研究不正」
  3. 大きな差を生む小さな習慣:実験ノートの効果的な書き方

研究広報に関しては、かなりやばいものでも誰も不正とまでは言わないのでやっかいです。

  1. サントリー ケルセチン配糖体配合「特茶」の体脂肪低減効果のエビデンスの怪しさ
  2. “量子コンピューター”開発成功のイムパクト

ねつぞう、かいざん、とうよう、の頭文字をとって「ネカト」と呼ぼうという呼びかけもありますが、研究者の日常会話の中で「ネカト」という言葉を聞いたことは今のところありません。まだあまり普及していないようです。研究倫理講習の講師の先生は、「ネカト」という言葉を紹介したりすることがあるので、そのうち定着するでしょうか。

  1. 「白楽の研究者倫理」は、研究者の事件データベースを構築し、外国のネカト・クログレイ・性不正・アカハラとそれらの事件を解説する通称「白楽ブログ」または「ネカトブログ」です。

特定不正行為の境界はちょっと難しい部分があります。発表論文に不正があれば不正ですが、未発表データに不正があっても、文科省の今のガイドラインだと特定不正行為とは認定されません。これは国によっても判断の仕方が異なると思います。日本で特定不正行為に手を染めた人は、外国ではルールが異なる可能性があるので要注意。

未発表データにおける研究不正の取り扱いは、とりあえず「判例」というべきものが日本にもあります。

  1. 閉鎖研究における不適切な研究行為への対応について(JAXA)
  2. https://www.jaxa.jp/press/2023/01/20230111-2_j.html 理事長 山川 宏 ⇒厳重注意 副理事長 鈴木 和弘 ⇒厳重注意 理事(有人宇宙技術部門担当) 佐々木 宏 ⇒訓告
  3. JAXA理事長ら役員3人処分 古川飛行士代表の研究「不適切」問題 玉木祥子2023年1月11日 18時30分 朝日新聞デジタル記事
  4. JAXA、古川聡飛行士をデータ捏造の監督責任で戒告処分…今年のISS滞在は変更なし 2023/01/12 06:30 読売新聞 古川聡宇宙飛行士(58)が研究実施責任者を務めた宇宙医学実験でデータの書き換えや 捏造ねつぞう があった問題で、宇宙航空研究開発機構( JAXAジャクサ )が古川氏を戒告の懲戒処分にしたことが11日、わかった。古川氏の処分についてJAXAは「個別に公表する対象ではない」としているが、12日に本人が記者会見を開いて自ら説明し、謝罪する見通しだ。‥ 一方、JAXAは11日、書き換えに関わった男性研究員(53)について「研究全体の科学的価値を 毀損きそん した」として、古川氏よりも重い停職2週間の懲戒処分にしたと発表した。

この事件は、何しろ日本の宇宙飛行士が主導する研究における研究不正だったので、多くの注目を浴びましたが、処分を公表しないなどJAXAが宇宙飛行士を守ろうとする態度が印象的でした。

研究不正も、特定不正行為には該当しないが悪質なものがいろいろ出てきています。自分が驚いたのは、査読システムの裏をかいた研究不正です。

学術誌Tumor Biologyに掲載された107編の論文について、論文を支持する査読が偽造されていたことが発覚し、同社は4月にこれら全ての掲載を撤回した。

https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v14/n9/中国がフェイク査読取り締まりを強化/88452

中国は、倫理に関して研究者の質の差が大きいと思いました。ところが、同じようなことは日本でも起きていたようです。

●●教授側は論文を学術誌に投稿する際、専門分野が近い▲▲教授を査読者として推薦。査読者に選ばれた橋本教授は、本来は自ら作るべき論文の疑問点などを指摘する「査読コメント」の作成を、著者の●●教授側に依頼した。●●教授は研究室の教員らに指示してコメントを作成し、▲▲教授に送った。その結果、これとほぼ同じ内容のコメントが学術誌から届き、●●教授はこれに回答して査読を通り、論文が掲載された。本来は第三者が行うべき査読を「自作自演」したことになる。

福井大教授の査読偽装、調査委「不適切」と認定、撤回を勧告 鳥井真平 柳楽未来  毎日新聞 2022/12/18 18:00

査読がらみといえば、いわゆるハゲタカジャーナルのような査読がユルイという問題がメインかと思っていましたが、いろいろなバリエーションがあるんですね。

  1. MDPIはハゲタカジャーナル?その評判
  2. FRONTIERSもハゲタカジャーナルだと?!
  3. FRONTIERSがハゲタカ視される理由
  4. Hindawi、MDPI、Frontiersへの掲載論文は論文業績としてカウントせず

特定不正行為として捏造と改竄が分けられていますが、実際には、境目があるわけではありません。実験してグラフを描いたが有意差は出なかった。なのでエラーバーを押し下げて、バラつきが少なかったように見せかけて有意差が出たことにして論文発表しました。そんな場合には、一応何かしらの実験をしていたので「改竄」になると思いますが、ふつうは有意差が出なかったら論文発表できないことが普通なので、これは「捏造」と考えたほうがむしろ自然です。

特定不正行為の3つ目が「盗用」ですが、盗用は他人の論文のコピペだけでなく、自分の過去の論文をコピペしても盗用と判断されるので要注意です。出典を付せば盗用にならないので、うっかり出典を付すのを忘れるのは不正とみなされる恐れがあるので要注意です。

  1. 秋篠宮家長男めぐる「皇室特権」「盗用疑惑」との週刊誌報道をめぐる混戦 篠田博之月刊『創』編集長 2022/2/27(日) 7:01
  2. 悠仁さま「研究者への道」に暗雲…海外メディアが大きく報道した“作文引用”問題の波紋 2022年3月4日 06:00 女性自身
  3. 2023.11.07 03:24 2022.02.16 16:21 社会 悠仁さま、入賞作文で盗用疑惑の報道…秋篠宮家「皇室利用」問題、筑波大附属高・進学も 文=Business Journal編集部 ニュースサイトで読む: https://biz-journal.jp/journalism/post_279949.html Copyright © Business Journal All Rights Reserved.
  4. 悠仁さま作文剽窃問題その後の主催者HPに苦笑 今後は図工のスキルを武器に東大推薦合格を狙うしか… 2022年8月30日11:09 PM Etcetra Japan Blog
  5. 紀子さま“悠仁さまの教育係”の女性職員が退職…囁かれる“作文盗用騒動”での更迭説  2022/06/09 06:00  『女性自身』編集部
  6. 北九州市立文学館にも意地がある…? 悠仁さまの剽窃騒動がきかっけで作文コンクール募集チラシがイイ形に変わる 2023年3月12日8:00 PM Etcetra Japan Blog
  7. 秋篠宮悠仁 Hisahito Akishinonomiya et al.,「赤坂御用地のトンボ相」(2023).

研究不正の中には、利益相反に関するものがあります。一番有名な事例はディオバン事件でしょう。

  1. 製薬会社ノバルティス社の降圧剤ディオバン(バルサルタン)臨床研究データは捏造
  2. バルサルタン(製品名:ディオバン)臨床研究にノバルティスファーマは会社ぐるみで関与していたのか?
  3. Diovan臨床研究の滋賀医科大SMARTでも不正か

研究不正が刑事事件として扱われることはあまり多くない印象です。研究者の感覚からしたら凶悪殺人事件なみの悪質さでも、法的には裁けないことが多いからでしょう。しかし、一線を越えた行為に対しては、刑事告発が行われる可能性があります。

  1. 東工大生命理工 元教授が1900万円を不正使用
  2. 東工大生命理工(元)教授が研究費を私的流用 東京工業大学大学院生命理工学研究科の教授(既に定年退職)が研究費の不正使用により逮捕されました

不正の告発は原則、顕名で、どの研究機関にも通報窓口が設置されています。また、文科省のガイドラインでは最近は匿名であっても受け付けるようです。実際、東大医学部の不正を告発したのは、Ordinary_researchersという匿名集団でした。

  1. 東大医学系4研究室11報に疑義 予備調査へ
  2. Ordinary_researchersの告発2通め11論文

通報者の権利は守られるということが謳われていますが、実際のところ、不正疑惑を大学側が揉み消すような場合には、通報者に不利益が生じないという保証は常識的に考えるとどこにもないのではないかと思います。倫理講習のテキストを真に受けると大変なことになる危険があります。研究不正を告発することは、自分の研究者生命を犠牲にする可能性があるのです。

  1. 岡山大不正告発解雇無効仮処分を高裁が取消し

大学教授が大学内の研究不正を告発した場合ですら、学長に力で解雇されてしまうというこれ以上ないくらいの大きな不利益を被ることがあるわけですから、倫理講習テキストで説明された内容を建前を真に受けるのは大変危険だと思います。

研究不正の告発を行うのは本来、諸外国のように専門家がそれを職業として行う公的な機関に対する通報として、公的機関が強権を発動して調査・調査結果の公開をすべきでしょう。

参考

  1. Office of Research Integerity (US)
  2. 海外(特に米国)の行政機関における研究不正への対応状況等
  3. 匿名Aによる論文大量不正疑義事件(ウィキペディア)
  4. Ordinary_researchers(ウィキペディア)
  5. Pubpeer 
  6. 白楽の研究者倫理
  7. Science Integrity Digest A blog about science integrity, by Elisabeth Bik, for Harbers-Bik LLC. Support my work at Patreon.com/elisabethbik

人を対象とする研究の場合、研究内容によっては、個人情報の取り扱いに配慮が求められることがあります。現在では、個人情報を積極的に研究に活用しようという時代の流れがあるため、研究者が学ぶべき個人情報の取り扱い方も多少複雑になってきているので要注意です。

近年、情報化の進展や個人情報の有用性の高まりを背景として、官民や地域の枠を超えたデータ利活用が活発化しており、現行法制の縦割りに起因する規制の不均衡や不整合(法の所管が分かれていることに起因する解釈上の不均衡や不整合を含む3)がデータ利活用の支障となる事例が各所で顕在化しつつある。

個人情報保護制度の見直しに関する最終報告 令和2年12月 個人情報保護制度の見直しに関するタスクフォース

個人情報を活用した学術研究が活発に行われるように、個人情報保護法には学術研究に関連した「例外」が盛り込まれているそうです。

利用目的による制限(個情法第16条)及び要配慮個人情報の取得制限(個情法第17条第2項)については、研究活動の自由及び研究結果の発表の自由を直接制約し得る規律であり、例外規定を置かないと類型的に実施困難な研究活動が生じると想定されることから、「学術研究機関等が学術研究目的で個人情報を取り扱う必要がある場合」を例外とする趣旨の規定を置くことが適当である。

個人情報保護制度の見直しに関する最終報告 令和2年12月 個人情報保護制度の見直しに関するタスクフォース

  1. 個人情報保護制度の見直しに関する最終報告 令和2年12月 個人情報保護制度の見直しに関するタスクフォース(PDF)

関東大震災時の朝鮮人虐殺

関東大震災時の朝鮮人虐殺に関する小池百合子都知事の態度

9月1日に東京都墨田区の横網町公園で営まれる、関東大震災で虐殺された朝鮮人犠牲者を追悼する式典で、小池百合子都知事は今年も追悼文を送付しないことが、都への取材で分かった。小池知事が送らないのは、就任2年目の2017年から8年連続となる。

小池百合子知事、朝鮮人虐殺の追悼文を8年連続で送らず 式典主催側は抗議のかまえ 2024年8月17日 06時00分 東京新聞

  1. 小池百合子知事を東大教職員83人が批判「学説への信頼を壊している」 「朝鮮人虐殺」はっきり認めるよう要請 2024年8月5日 20時44分 東京新聞
  2. 関東大震災朝鮮人虐殺めぐり 都知事に追悼求める要請続く 毎日新聞 2024/8/9 14:14(最終更新 8/9 14:14)
  3. 関東大震災での朝鮮人虐殺犠牲者に「追悼文を」 横浜市は市民の要請に応じず 石橋学・『神奈川新聞』記者|2024年8月16日2:29PM 週刊金曜日オンライン
  4. 関東大震災朝鮮人虐殺と関連して/追悼事業実行委が今年初の協議 2024年07月02日 15:30 朝鮮新報
  5. 【第160回】 関東大震災100年の年に読む、朝鮮人虐殺の記録 斎藤 美奈子 江馬修『羊の怒る時』(原著の初版は1925年) 辻野弥生『福田村事件』  関原正裕『関東大震災 朝鮮人虐殺の真相』
  6. 特集 関東大震災100年 この特集をフォロー特集一覧 朝鮮人虐殺の記録「見当たらない」 政府答弁に安倍氏の影 金志尚 政治 速報 毎日新聞 2023/9/25 06:00(最終更新 9/25 06:00)8月30日の記者会見で「朝鮮人虐殺を政府としてどう受け止め、何を反省点とするのか」を問われ、松野氏は答えた。「政府として調査した限り、政府内において事実関係を把握することのできる記録が見当たらないところであります」
  7. 関東大震災朝鮮人虐殺の否定・隠蔽について─小池都知事の追悼辞送付取りやめと関連して 近年,関東大震災時の軍隊・警察・民間人による朝鮮人虐殺を否定・隠蔽しようとする動きが,権力の側から起こっている.2017年には東京都墨田区の横網町公園で行われてきた朝鮮人犠牲者の追悼式に寄せられていた追悼辞を,小池百合子都知事が取りやめると表明した.本稿は,都知事による追悼辞取りやめの経緯と論理,これに象徴される朝鮮人虐殺否定・隠蔽の動きとその問題点を明らかにするものである.田中正敬 1923 年の関東大震災時に,日本の軍隊,警察,民間人によって多くの朝鮮人や中国人,日本人が虐殺された事件は,今日,教科書にも載せられている歴史的事実である.しかしながら,その実態について,とりわけ朝鮮人犠牲の実態については不明な点が多く残されたままになっている.
  8. 第4回:言わねばならないことを言わない、という罪「関東大震災時の朝鮮人虐殺」をめぐって…(鈴木耕) By 鈴木耕 2017年9月20日
  9. 「関東大震災時朝鮮人虐殺」山田昭次氏の講演会 2013年05月02日 11:34 朝鮮新報

 

関東大震災時の朝鮮人虐殺に関して

  1. 関東大震災、朝鮮人6000人虐殺は『100%嘘』? NHK朝ドラ「虎に翼」をきっかけに拡散【ファクトチェック】 8/15(木) 7:50配信 日本ファクトチェックセンター
  2. 101年間否定した日本政府…謝罪を受けられていない関東大虐殺=韓国 8/14(水) 7:57配信 161 コメント161件 中央日報日本語版 ドキュメンタリー映画『1923関東大虐殺』(監督キム・テヨン、チェ・ギュソク)
  3. 色あせた光復節、映画館で過ごしては?…『1923関東大虐殺』『朝鮮人女工のうた』 8/14(水) 9:19配信 87 コメント87件 ハンギョレ新聞

 

関東大震災時の朝鮮人虐殺に関連する科研費研究

研究課題名 研究課題/領域番号 研究期間 (年度) 研究代表者 審査区分 研究種目 研究開始時の研究の概要 研究概要 研究成果の概要 研究実績の概要

    1. 在日コリアン第一世代の歴史学者らの日韓関係史研究とその影響 23KJ1848 2023-04-25 – 2026-03-31 HAN KWANGHOON 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC1) 小区分08010:社会学関連 特別研究員奨励費 1923年9月1日の関東大震災後に起きた朝鮮人虐殺は、日本社会と韓国社会においてどのように記憶・想起・継承されてきたのかを問う。第一に、メディアは朝鮮人虐殺についてどのようにほうじてきたのかを明らかにし、記憶の変遷を明らかにする。第二に、虐殺の記憶をめぐる歴史研究と市民運動のあり方を解明する。
      本研究は、アルヴァックスからノラを経て、アスマン夫妻にいたる記憶研究の系譜にある。関東大震災をめぐる記憶は、アルマン夫妻が言うところの「コミュニケーション的記憶」から「文化的記憶」への過渡期にあたる研究となる。過渡期の記憶を研究することで、記憶の社会学分野に理論的、方法論的に貢献できる。
    2. パブリック・ヒストリーとしての歴史教育論の構築:関東大震災のメタヒストリー学習 22K02596 2022-04-01 – 2025-03-31 日高 智彦 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (60803921) 小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連 基盤研究(C) 学校において歴史を学び、語るという行為は、国民国家とその暴力を正当化することもあれば、このような正当化の批判的な克服に寄与することもある。後者の可能性を広げることが、より公正で民主的な社会の発展のために求められている。本研究は、上記の課題に対して、関東大震災における朝鮮人虐殺に関する高校「歴史総合」の授業・教材の開発に取り組むことで、学界ではなく社会において評価が分かれる歴史を市民が記念する歴史教育論を確立し、歴史を学び、語るという行為(歴史実践)を市民性教育に位置づけようとするものである。 関東大震災における朝鮮人虐殺の歴史教育を事例として、学界ではなく社会において評価が分かれる歴史を市民が記念する歴史教育論を確立するために、研究1年目は、教材開発のための文献資料の収集と読解を通じた基礎研究と、今年度より高校現場で始まった「歴史総合」の授業研究を進めた。前者については、関東大震災に関する基礎研究を進めるだけでなく、その歴史教育史にアプローチするため、過去に出版された教科書だけでなく、現場の授業で活用された資料集も調査対象とし、関東大震災における朝鮮人虐殺が歴史教育においてどのように扱われてきたのか、現場での実践例があらわれてくる1970年代以降の傾向について明らかにすることができた。後者については、新科目の教科書や、学会等における新科目に関する実践報告や、歴史教育メディアにおける発信のみならず、実際に学校を訪問して授業を参観したり、教員にインタビューも行うことで、「歴史総合」の枠組みにおける関東大震災の実践や、学習内容・方法としてのメタヒストリーの課題について情報を収集することができた。これらの成果をふまえ、現時点での関東大震災における朝鮮人虐殺に関する高校「歴史総合」の授業を開発し、勤務校で担当する教職科目の教材として実践した。この成果と課題を、2022年7月に、高大連携歴史教育研究会第8回大会で発表した。これにその後の調査の成果も反映させた論文をすでに投稿しており、まもなく公刊される予定である。
    3. 1920年代における在日朝鮮人への暴力とその記憶の継承 20K00963 2020-04-01 – 2024-03-31 藤野 裕子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70386746) 小区分03020:日本史関連 基盤研究(C) 本研究は、1920年代を対象に、日本社会における朝鮮人に対する暴力行使の実態を解明し、地域社会におけるその記憶の継承のされ方を明らかにすることを目的とする。1920年代には、日本内地で関東大震災時の朝鮮人虐殺が起きたほか、震災時以外にも、工事現場などで日本人労働者による朝鮮人労働者の襲撃・殺害事件が起きていた。本研究は各地の朝鮮人に対する暴力の実態を広域に調査することで、1920年代における日本の植民地統治の特徴を国家と民衆の両面から再考し、同時に、地域社会のなかで朝鮮人への暴力の記憶がいかに継承されたか(されなかったか)を明らかにする。 当該年度においては、新型コロナウイルス感染症の状況が改善したことから、研究計画のとおりに調査を行うことができた。第一に、2022年9月8日~11日に研究代表者・分担者が合同で岩手県図書館および宮城県気仙沼市図書館への資料調査を行った。岩手県図書館においては、岩手日報・岩手毎日新聞などの関係記事を収集するとともに、在日朝鮮人関係文献について網羅的な調査を行った。気仙沼市図書館においては、大気新聞などの郷土新聞の調査を行った。また、宮城県において、1932年に起きた朝鮮人労働者の殺傷事件である矢作事件について、聞き取り調査を実施した。第二に、2023年3月11日~14日にかけて、研究代表者・分担者が合同で山形県公文書センター・図書館、宮城県図書館・公文書館および細倉鉱山資料館での資料調査を実施した。山形県公文書センターと県立図書館では、戦前の公文書を閲覧するとともに、山形新聞などの関係記事を収集した。宮城県図書館・公文書館では、県内の鉱山関係文献や新聞記事の収集、および昭和戦前期の公文書を閲覧し、関係史料を収集した。また、1932年の矢作事件について、事件の発生現場において実地調査を行った。第三に、2022年6月11日、12月27日の2回にわたり、研究代表者・分担者で研究会を開催し、研究経過に関する報告を行った。第四に、上記の調査と並行して、関東大震災の朝鮮人虐殺に関して文献収集・調査を行い、ジェンダー分析を含めた史料分析を進めた。
    4. 大正・昭和文学における外地人表象の研究:朝鮮人表象を中心に 19K23072 2019-08-30 – 2021-03-31 堀井 一摩 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (70847467) 0102:文学、言語学およびその関連分野 研究活動スタート支援 本研究は、韓国併合から関東大震災に至るまでの朝鮮人表象を分析し、関東大震災時における朝鮮人虐殺の背景を探ると同時に、同時期の文学との関連性を考究する。1910年の日韓併合時には、日本の新たな同胞として迎えられた朝鮮人はいかなる経緯で「不逞鮮人」という恐怖と憎悪の記号へと転換したのかという問題を、内地・外地の新聞報道を主な資料として解明する。同時に、朝鮮人を描いた同時代の文学は「不逞鮮人」言説をどのように相対化し、朝鮮人虐殺に対していかなる批判点を構築しえているのかを明らかにする。この作業を通じて、現代的問題でもある旧植民地に対するレイシズムの構造を解明し、これに対する抵抗の理論を探究する。 本研究は、三・一独立運動から関東大震災にいたるまでのメディアおよび文学における朝鮮人表象を調査し、関東大震災時における朝鮮人虐殺の心理的背景となった日本人の被害妄想のメカニズムを明らかにした。また、朝鮮人虐殺を描いた文学作品を包括的に検討し、労働問題の不在という問題点を指摘した。さらに、金子文子のテクストを中心に、従来見過ごされがちであった植民地的抑圧に対する抵抗と、日本人と朝鮮人の連帯の可能性を考察した。
    5. 「1965年体制」成立期日韓ポストコロニアル文学における植民地主義批判の比較研究 19K13153 2019-04-01 – 2024-03-31 原 佑介 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (40778940) 小区分02050:文学一般関連 若手研究 本研究は、引揚者文学、在日朝鮮人文学および解放後韓国文学における植民地主義批判の諸相を、「ポスト帝国日本‐文学」という新たな枠組みのなかで統合的に考察する。1920-30年代生まれの日本とコリアの作家を対象とするが、彼らはおもに1960-70年代に植民地問題をテーマにしたテキストを集中的・同時多発的に著したという共通点をもつ。
      帝国日本と植民地朝鮮のあいだで揺れ動きながら成長し、戦後東アジア国民国家体制のなかで各自ポストコロニアル作家になっていった旧「皇国少年少女」たちは、その境界をどう乗り越えようとし、何者としてどう出会い(直し)えたのか。それぞれのテキストの比較分析をつうじて考察する。 在日朝鮮人文学における脱植民地主義の営みの歴史的意義を、おもに「不逞鮮人」言説批判の観点から検討した。日本語論文「日本文学にあらわれた「不逞鮮人」と朝鮮人女性:中西伊之助「不逞鮮人」と田宮虎彦「朝鮮ダリヤ」を手がかりに」(『コリアン・スタディーズ』10号)および「植民者二世と被植民者二世のポストコロニアルの再会:李恢成「証人のいない光景」を手がかりに」(『フェンスレス』6号)を刊行した。また、2019年刊の単著『禁じられた郷愁:小林勝の戦後文学と朝鮮』(新幹社)の韓国語版を刊行した。
      また、関東大震災時朝鮮人虐殺事件の100周年にあたる2023年を念頭に置き、日本近代文学における植民地主義批判について考察し、研究発表「人が「国民」になる時:江馬修の関東大震災文学が描いた朝鮮人虐殺と日本人の国民意識」(2022年度日本比較文学会関西大会シンポジウム)をおこなった。さらに、2022年に世を去った主要なポストコロニアル日本文学者の一人である森崎和江の朝鮮認識を批判的に検討し、「大邱は誰の呼び声:森崎和江のポストコロニアル文学を批判的に継承するために」(シンポジウム「地域・民族・性の交差を/から見つめる森崎和江」、立命館大学)をおこなった。さらに、村松武司と小林勝のポストコロニアル文学の試みを比較検討し、尚虚学会定期学術大会(韓国)にて韓国語発表「断層と架橋:朝鮮戦争とポストコロニアル日本文学の誕生」をおこなった。
    6. 帝国のアンザイエティ-1923年関東大震災後の人々と情報の移動に注目して 14J07348 2014-04-25 – 2016-03-31 盧 珠ウン 東京大学, 情報学環・学際情報学府, 特別研究員(DC2) 特別研究員奨励費 本研究員の研究「帝国のアンザイエティ―1923年関東大震災時の人々と情報の移動に注目して」は、1923年関東大震災時における人々と情報の移動、特に東アジアにおける情報の移動を明らかにする研究である。そのため、本年度は日本・朝鮮・中国の間での情報の越境的移動に注目した資料調査・収集に取り組んできた。まず、主な研究調査として韓国国史編纂委員会図書館に行って関東大震災関係資料を収集した。関東大震災に関連する韓国の資料としては、朝鮮総督府の資料が韓国に残っているため、韓国の図書館にある関係資料を集める研究調査を実施した。さらに、中国の上海市档案館と上海図書館に行って関東大震災関係資料を調査した。また、研究内容としては震災時の情報の移動に焦点を当て、関東大震災時における日本政府と朝鮮総督府の「情報処理」というテーマに注目して研究を進めた。そのため、資料分析と論文執筆に集中しながら、資料調査に基づいた研究成果を学会やコロキウムで発表した。特に、本研究は朝鮮人虐殺をめぐる情報の移動という観点から政府の事後処理に注目し、これまでの資料調査に基づいた資料分析をもって、関東大震災時に日本政府と朝鮮総督府がどのように情報を処理したかを分析しようとした。すなわち、関東大震災時の「情報処理」プロセスを、日本本国の中央政府のみならず、植民地朝鮮の朝鮮総督府においての「情報処理」のプロセスを明らかにする研究を進めた。
    7. 未発の「第二次関東大震災・朝鮮人虐殺」の予見をめぐる調査研究 17530388 2005 – 2006 新原 道信 中央大学, 文学部, 教授 (10228132) 基盤研究(C) 本研究は、「第二次関東大震災・朝鮮人虐殺」というメタファーによって表現されるような、一見まだなにも起こっていないように見える日常の些事の中から、””未発の事件””の徴候を察知し予見的に認識する社会的マイノリティへの識者調査をおこなうことを調査研究の主眼として、研究代表者(と調査の歩みをともにしてきた若手研究者)が、5年から10年かけて信頼関係を培ってきた識者(フィールドで人望を集めるキーパーソンであり地域社会における危機の予見的認識の主体)に協力をお願いし、既に承諾を得ている方たちを中心に、地域社会内部の社会・文化的コンフリクトの生成・変容と抑圧移譲、「治安強化」と「外国人/障害者/青少年問題」の「発見」、家族内の暴力と抑圧移譲などについての調査研究をおこなった。これまで蓄積してきた調査研究における知見を分析・整理するためにインテンシブな研究会を定期的におこない、研究会での討論に基づき、参与観察、識者調査、資料収集を実施した。参与観察と識者調査、研究会での議論の進展と深化にともなって、地域社会における「危機」の顕在化の折に自らが異物・異端として排除されることへの予見的認識をもつ人々(“”地識人(the streetwise/the wise on the street)””)にとって、対位的に存在している人々(抑圧移譲の主体)の存在が浮かび上がった。この抑圧移譲の主体となる人々を、intellectual massesという概念によって析出し、危機の予見的認識の主体である””地識人(the streetwise/the wise on the street)””と対位させつつ調査研究をさらに深化させるという見通しを立て成果をとりまとめた。成果のとりまとめにあたっては、「ペリペティア」(ルカーチ)と「対位」(サイード)の方法をとることを選択し、これまでの調査研究の蓄積の中から、いくつかの特定の「事件」が顕わになるまでのプロセスをとりあげ、その中で、””intellectual massesと””地識人(the streetwise)””とを対位させて叙述することを試みた。
    8. 災害と犯罪(阪神大震災後の犯罪被害の実態と人々の不安感) 10420011 1998 – 2000 斉藤 豊治 甲南大学, 法学部, 教授 (00068131) 基盤研究(B) 日本では、大震災後には無警察状態となり、社会が解体して犯罪が急増するという認識が広がっているが、そのような認識は妥当ではない。一般に自然災害は被災者の間や社会全体で連帯意識を生成、強化させ、犯罪を減少させる効果を持つ。例外的に災害後に犯罪が増加するケースでは、社会解体の状況が先行して存在し、災害が引き金となっている。1923年の関東大震災では朝鮮人に対する殺害が広がったが、それに先行して朝鮮半島の植民地経営による窮乏化と日本本土への人口流出、1929年の三・一独立運動に対する軍事的制圧などが行われ、民族的偏見が強まっていた。戒厳令布告の責任者たちは、三・一独立運動弾圧の当事者であった。

安倍 晋三 元首相 銃撃事件と山上 徹也 被告 隠される真実「統一教会と自民党の癒着」

山上徹也被告はなぜ安倍晋三元総理大臣を銃撃したのか?その一番の理由を伝えたテレビ番組がTVerでも視聴できるようになっていましたが、直ちに配信が中止されました。

その後、TVerで再配信されたこの動画では、一番重要な場面が削除されたことがツイッター(X)で指摘されていました。

日本の報道が、為政者に都合の悪いことを報じられないようになっていることがよくわかる「事件」だと思います。

安倍前首相が統一教会にビデオメッセージを送り挨拶をしていた動画の部分が、速攻で削除されて、「検閲バージョン」が再配信されていたという驚愕の事実。

動画内の安倍元首相:「ご出席の皆様、日本国前内閣総理大臣の安倍晋三です。朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた、韓鶴子総裁をはじめ皆様に敬意を表します

ナレーション:「これを見た山上被告は、ターゲットを安倍元総理に変えたという

山上被告の供述:「宗教団体の代表らが設立したNGOの集会に寄せられた、安倍元総理のメッセージを見たころ、殺害を決意しました」

https://www.mag2.com/p/news/613993/3

山上容疑者が安倍首相銃撃を決意することになった直接的な原因が、なぜかこの報道番組からは「こっそり」削除されたということです。

この報道番組にとって一番重要な部分を削除して再配信したというのですから、これはただ事ではありません。

  1. 「ヒロミ炎上」と「TVer検閲」のウラ。安倍元首相銃撃事件で「ザ!世界仰天ニュース」が白日に晒した旧統一教会と日本のタブー 国内 2024.08.16 by 東山ドレミ MAG2NEWS
  2. 「最初から無かったかのように」『仰天ニュース』波紋呼んだ安倍元首相銃撃事件特集のTVer再配信版で「削除された内容」にSNS騒然 8/16(金) 16:05配信 YAHOO!JAPANニュース 269 コメント269件 女性自身

参考

  1. 山上容疑者を凶行に駆り立てた一族の「壮絶歴史」 「何日も食べてない」兄妹の窮状を知り自殺未遂 野中 大樹 井艸 恵美 : 東洋経済 記者 2022/09/09 6:00

アマゾンで買ったリクシルの浄水カートリッジを使った水で淹れたコーヒーの不味さについて

浄水カートリッジを台所の水道にとりつけて、カルキ抜きなどした水を料理やコーヒー、お茶などに使っています。最初に浄水器を購入したときは付属のカートリッジを使っていたわけですが、交換する時期になったときに、リクシルの正規品は高価なので安いもの(3つで5000円くらい)をアマゾンで探して買って使っていました。

ところが最近、リクシルの浄水器のカートリッジのまがい品がアマゾンなどの大手通販サイトで詐欺的に売られていることを知りました。こうした詐欺行為に対処するため、リクシルは通販サイトでの販売をすべて取りやめて自社の通販ショップのみでの販売に切り替えたのだそうです。

株式会社LIXIL(以下LIXIL)は、2023年4月1日より、当社が販売するすべての浄水カートリッジをLIXILオンラインショップでの直販に移行することをお知らせします。近年、一部のフリーマーケットサイト、オークションサイトの他、大手有名ショッピングサイトなど、複数のウェブサイトにて、正規品を騙る当社浄水カートリッジの非正規品・模倣品が販売されているケースが多数報告されています。https://newsroom.lixil.com/ja/20230201_01

そんな事情を知って、「本物の」リクシルの浄水カートリッジを買って(一つ5000円くらい、一ヶ月分)使ってみたところ、淹れたコーヒーの味が断然おいしくなってびっくりしました。うちでこれまで使っていた交換用の浄水カートリッジはどうやら偽物を掴まされていたようです。

下の番組の動画でも説明されていますが、偽物は本物そっくりにつくられているため、外見で区別するのはほぼ不可能だそうです。商品パッケージの箱にもリクシルというロゴがあり、というか、リクシルの箱と印刷されている内容が100%同じなので、本物か偽物かは商品の箱の印刷内容からはわかりません。アマゾンでもリクシル純正品として売られています。

【ニセ浄水カートリッジ】大手ショッピングサイトで流通…見えてきた“販売丸投げ”の構図と中国の存在『QUESTION!みんなのギモン』 日テレNEWS チャンネル登録者数 240万人

成功は、小さな努力の積み重ね

平凡なこと、些細なこと、それを積み重ね積み重ねて、そのうえに自分の知恵と経験を加えていく、それではじめて、成功をすることができる。うん、成功は小さい努力の積み重ねやね。(松下幸之助)
https://toyokeizai.net/articles/-/58607

どのような分野であっても、すばらしい成果を見出すまでには、改良・改善への取り組み、基礎的な実験やデータの収集、足を使った受注活動などの地味な努力の繰り返しがあるのです。(稲盛和夫)https://www.kyocera.co.jp/inamori/about/thinker/philosophy/words12.html

下の数式のように、前日比で今日1%向上するということを1年間365日続けると、最初よりも38倍も能力がアップすることになります。

1.01^365=37.78 (日曜数学者 柚子)
https://note.com/yuzu_mathlove/n/n07a7a972cf2e

小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道(イチロー)
vitup.jp

カシューナッツに纏わるエトセトラ

スーパー「ベルク」にベトナム産カシューナッツ(薄皮付き、ロースト 180g 350円くらい)があってたまに買うのですが、初めて店で見たときはお試し価格だったのか300円くらいで売られていて買って食べたらそこそこ風味もあり、まずくはなかったので、その後値上げされても何回かリピートしてました。

  • https://www.instagram.com/p/CpL152SSv8Z/

しかし、その後何回か買って食べているのですが、初めて買ったときの値段に対する美味しさが失われてしまって、まったくカシューナッツの風味が感じられなくなってしまったのが謎でした。試しに目をつぶって食べてみたら、いったい何のナッツか全くわからないくらいに何の味もしませんでした。最初見つけて買って食べたときのあの感動(値段に対する味という意味)は何だったんでしょうか。ここ何回か買った分は全然カシューナッツの味(風味)が全くしないということに関して再現性があります。うすく塩味がついているのですが、それも均一でなくて、ほとんど塩味は薄くて感じられないくらいなのに、ときどき塩の塊ですか?というくらい塩辛いものに遭遇したりします。

取引開始時に良いグレードのものを出しておいて、取引拡大に伴ってグレード落としたのか?と勘繰ってしまうと同時に、そもそもカシューナッツにグレードってあるのかないう疑問が湧きました。

ChatGPTに訊いてみました。大きい(重い)ほどいいみたいで、1ポンド(約454g)あたりの個数がグレード名になっているようです。scorchedというのはローストしすぎて少し焦げたということ。ベルクのベトナム産カシューナッツは薄皮付きなのでカシューナッツ本体の色がわかりにくいのですが、最初のはもっと白かったような気がします。記憶が定かではありませんが。それに対して、今みてみると今の製品は焦げた茶色のものばかりです。whiteのグレードだったのがscorchedに変わったのでしょうか?写真でも撮っておけばよかったのですが。自分の記憶はあてになりませんので。

Vietnamese cashew nuts are graded based on several criteria, including size, color, quality, and the presence of defects. The grading system helps categorize cashews for different markets and uses. Here’s an overview of how Vietnamese cashew nuts are typically graded:

1. Size

  • Whole Cashews: Cashews are primarily graded by size, which is indicated by the number of kernels per pound. Common sizes include:
    • W180 (Jumbo): 180 nuts per pound
    • W210 (Large): 210 nuts per pound
    • W240 (Standard Large): 240 nuts per pound
    • W320 (Medium): 320 nuts per pound
    • W450 (Small): 450 nuts per pound

2. Color and Quality

  • White (W): Whole white kernels are the most popular and are graded by their color uniformity and appearance.
  • Scorched (S): Cashews that are slightly over-roasted during processing but still acceptable in quality.
  • Dessert (SSP): Broken pieces of cashews, used primarily for cooking and as ingredients.

3. Defects

  • Whole vs. Broken: The percentage of whole kernels versus broken pieces affects grading.
  • Speckled or Blemished: Cashews with spots or blemishes might be graded lower.
  • Scorched and Lightly Blemished: These may be classified separately due to their less-than-perfect appearance.

4. Other Grades

  • Splits (S): Kernels split naturally or during processing.
  • Butts (B): Cashew halves with the large end intact.
  • Pieces (P): Broken pieces of various sizes, often used in processed foods.

5. Packaging and Labeling

  • Cashews are also graded based on packaging standards, moisture content, and overall presentation, which affect their shelf life and suitability for export.

International Standards

Vietnam adheres to international standards, such as those set by the Cashew Export Promotion Council of India (CEPCI) and other global trade organizations, ensuring that the grading system is consistent with global expectations.

Conclusion

Vietnam is one of the largest producers of cashew nuts globally, and the grading system is essential for meeting the diverse needs of international markets. The grading not only helps in pricing but also in ensuring that buyers receive the quality they expect for their specific applications.

W – 180, is the ‘ King of Cashew ‘ – They are larger in size and very expensive.
W – 210, are popularly known as ‘ Jumbo ‘ nuts.
W – 240, it is an attractive grade which is reasonably priced.
W – 320, are the most popular among cashew kernels and highest in terms of availability, worldwide.
http://cashewindia.org/cashew-kernels

下の記事を見ると、ベトナムでは大粒のカシューナッツは生産されていなくてW240のサイズが、ベトナム産のベストのカシューナッツだそう。

In the cashew nut classification system, the high-quality nuts are usually big, whole-grain, and white nuts. Varieties Of Cashew Tree Grown in Vietnam only produce small and medium raw cashew nut (RCN) sizes. W240 cashew is the best cashew nut of Vietnamese origin, the kernels have Medium Size , beautiful, pale ivory, whole-grain cashew that has between 220 and 240 nuts/pound (395 – 465 beans/kg) and is known internationally as Vietnamese Premium Large Cashew Nuts. W240 cashews are the best cashew nut of Vietnamese origin. https://www.linkedin.com/pulse/which-best-quality-vietnamese-origin-cashew-nuts-hanh-tran/

ベルクのベトナム産のカシューナッツは発売開始直後と比べて今は味が落ちたと思うのですが、多分大きさが小さくなったわけではないので、グレードの問題ではないのかもしれません。そもそも大きさと味が直接関係しているわけではないでしょうし。

The taste of cashew nuts is influenced by a variety of factors that contribute to their flavor profile and overall quality. Here are the main determinants:

1. Genetic Variety

  • Cultivar: Different cultivars of cashew trees can produce nuts with distinct flavors. The genetic makeup of the tree affects the nut’s taste, texture, and size.

2. Growing Conditions

  • Climate and Soil: The climate and soil in which cashews are grown can significantly impact their taste. Cashews grown in nutrient-rich soils and under optimal climate conditions tend to have a better flavor.
  • Rainfall and Sunlight: Adequate rainfall and sunlight are crucial for the development of flavorful nuts.

3. Harvesting and Processing

  • Ripeness at Harvest: Cashews harvested at the right time, when they are fully ripe, tend to have a richer flavor.
  • Processing Techniques: The methods used to process cashews, such as drying, roasting, and salting, can enhance or diminish their natural flavor.
    • Roasting: Roasting can bring out the nutty flavors and enhance the aroma of cashews. The degree of roasting can affect the taste, with light roasting preserving more natural flavors and heavy roasting adding a deeper, toasted note.
    • Salting: Salted cashews can have a more robust flavor due to the contrast between salt and natural sweetness.

4. Freshness

  • Storage: Cashews that are stored properly retain their flavor better than those exposed to air, moisture, or heat, which can cause them to go rancid.
  • Shelf Life: Fresh cashews taste better as they maintain their natural oils and nutrients, which contribute to flavor.

5. Oil Content

  • Cashews with a higher oil content often have a creamier texture and richer flavor. The natural oils contribute to the nut’s characteristic taste.

6. Moisture Content

  • The right moisture level is important for maintaining flavor. Too much moisture can lead to spoilage, while too little can make the nuts dry and less flavorful.

7. Presence of Defects

  • Quality Grading: Higher-grade cashews with fewer defects, such as discoloration or blemishes, tend to have a better taste. Defective nuts might have off-flavors or reduced quality.

8. Cultural Practices

  • Farming Techniques: Organic or sustainable farming practices can impact the taste by ensuring the nuts are grown in healthier environments without harmful chemicals.

Conclusion

The taste of cashew nuts is a result of a complex interplay of genetic, environmental, and processing factors. By optimizing these factors, producers can ensure that cashews maintain their desirable flavor and quality. When selecting cashews, considering freshness, processing, and quality grades can help in choosing the best-tasting nuts.

参考

  1. Vietnam Cashews – Grade Specifications https://tinmai.vn/wp-content/uploads/2020/05/Vietnam_Cashew_Grade_Specifications.pdf

カシューナッツのグレード

  • Different Grades Of Cashew Kernels, Cashew Types List In Vietnam (Kimmy Farm)  このウェブサイトは、グレードの解説が写真付きで徹底していてわかりやすい。
  • SW320 Cashew Vietnam Scorched Whole Cashew Nuts https://kimmyfarm.com/en/product/sw320-cashew-vietnam
  • Standards for classifying cashew nuts for export https://vietlinhagrimex.vn/standards-for-classifying-cashew-nuts-for-export/
  • https://cashew-machine.org/cashew-grades/
  • Cashew Nuts SK2 – Vietnamese cashew nuts https://vihaba.global/product/cashew-nuts-sk2-vietnamese-cashew-nuts/

そういえばベルクのベトナム産カシューナッツは薄皮付きなのでわかりにくいのですが、薄皮がとれたものをみると色は焦げ色のものも結構混じっていますので、そもそも単一のグレード(ホワイトなど)だけからなる商品ではないのかもしれません。味に関していえば、焦げ色でなく、目をつぶって白いものを食べたとしてもやはりカシューらしい味は感じません。

The quality of cashew nuts also depends quite a lot on the processing process. To get the finished cashew nut, cashew nuts will have to go through many different stages of processing and screening. Each facility has a different processing process, so the quality of each facility’s cashews will also be different. https://vihaba.global/product/cashew-nuts-sk2-vietnamese-cashew-nuts/

カシューアップル

今までカシューナッツがどんな木のどんな実の何の部分か気にしたこともなく食べていたのですが、カシューの木になっているカシューアップルの種子の部分をとってきたものだそうです。

Gui1_cashewfruit2.jpg (450×302)(ウィキペディアより)

上の写真で、実の下の部分にくっついているのがカシューナッツ。外側にくっついているまさにカシューナッツの形をした部分の内部に収まっているのが種子で、ふだん食べているカシューナッツ。実の部分はcashew apple(カシューアップル)と呼ばれるのだそう。こんな形でなっているとは全く知りませんでした。

じゃあ、カシューアップルの部分はどうなっちゃうのという疑問が湧きます。果実部分はタンニンを多く含みあまり食用には適さないので、消費者市場に出ることはなく、今まで目にしたことがなかったということみたいです。

The cashew fruit, also known as the cashew apple, is a unique part of the cashew tree that is often overlooked compared to the cashew nut. Here’s what typically happens to the cashew fruit:

Structure of the Cashew Fruit

  1. Cashew Apple:
    • The cashew apple is the swollen, fleshy part of the cashew fruit. It is pear-shaped and can be red, yellow, or orange in color. It is rich in vitamin C and other nutrients.
  2. Cashew Nut:
    • The actual cashew nut is encased in a hard shell that grows at the bottom of the cashew apple. The nut is the seed of the fruit.

Uses of the Cashew Apple

  1. Consumption:
    • In countries where cashews are grown, such as Brazil, India, and parts of Africa, the cashew apple is often consumed locally. It can be eaten fresh or used to make juices, jams, and chutneys.
    • The cashew apple has a sweet and tangy flavor, but it can be somewhat astringent due to its tannin content.
  2. Juice Production:
    • Cashew apple juice is popular in regions where the fruit is grown. It can be consumed as a fresh juice or fermented to produce alcoholic beverages such as cashew wine or spirits like feni, which is popular in Goa, India.
  3. Animal Feed:
    • In some cases, cashew apples that are not used for human consumption may be used as animal feed due to their nutritional content.
  4. Composting:
    • Cashew apples are sometimes composted, returning nutrients to the soil to support the growth of more cashew trees.

Challenges with Cashew Apples

  1. Perishability:
    • Cashew apples are highly perishable and have a short shelf life, making them difficult to transport and market outside the regions where they are grown.
  2. Tannin Content:
    • The high tannin content in cashew apples can make them astringent, which may be off-putting to some consumers. This limits their popularity compared to other fruits.
  3. Limited Market:
    • The market for cashew apples is not as developed as for the nuts, which means they are often underutilized.

Conclusion

While the cashew nut is the primary focus of commercial production, the cashew apple is a valuable byproduct that is used locally for food and beverages in regions where cashews are grown. The potential for expanding the use of cashew apples exists, particularly through processing into value-added products. However, challenges such as perishability and market demand need to be addressed to maximize their utilization.

カシューナッツに関するニュース

Vietnam’s cashew brand is affected by an increase in imported low-quality cashew kernels Saigon Liberation newspaper Saigon Liberation newspaper 19/04/2023

カシューナッツに関する論文

The cashew tree or Anacardium occidentale, a tropical tree native from Brazil, was introduced to Asia and Africa by European explorers in the sixteenth century. The world production of cashew nuts reached 4.89 million tons in 2016, with Vietnam being the largest producer of nuts. …  It was possible to identify 2376 patent applications and 586 scientific publications on cashew nuts and cashew apple together. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6952502/

  • Classification of Vietnamese Cashew Nut (Anacardium occidentale L.) Products Using Statistical Algorithms Based on ICP/MS Data: A Study of Food Categorization J Anal Methods Chem. 2023; 2023: 1465773. Published online 2023 Oct 26. doi: 10.1155/2023/1465773 PMCID: PMC10622188
  • Cashew nut and cashew apple: a scientific and technological monitoring worldwide review Nathalia Nogueira Oliveira 1, Cheila Gonçalves Mothé 1, Michelle Gonçalves Mothé 1, Leandra Guimarães de Oliveira 2 J Food Sci Technol . 2020 Jan;57(1):12-21. doi: 10.1007/s13197-019-04051-7. Epub 2019 Aug 27. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6952502/
  • Cashew nuts (Anacardium occidentale L.) decrease visceral fat, yet augment glucose in dyslipidemic rats PLoS One. 2019; 14(12): e0225736. Published online 2019 Dec 12. doi: 10.1371/journal.pone.0225736
  • Nutritional composition of raw fresh cashew (Anacardium occidentale L.) kernels from different origin Food Sci Nutr. 2016 Mar; 4(2): 329–338. Published online 2015 Oct 6. doi: 10.1002/fsn3.294 PMCID: PMC4779481

ベルクのカシューナッツの味の劣化(?)に話を戻すと、

  1. 取引開始時だけ頑張って高品質のカシューナッツを提供していた
  2. 取引拡大に伴って、生産・納入がおいつかず、どこかの工程がおろそかになった
  3. 気候その他の影響で、品質にばらつきが出ている
  4. ベルクの店内で、他社製品のほうが売れていて回転がよく、このベトナム産カシューナッツは売れ行きが悪くて長期間おきっぱなしになって味が落ちている
  5. 自分の記憶違いでも、もともとこんな味だった。

といった可能性が考えられるかなと思いました。いずれにしてもこれならもうベルクのベトナム産カシューナッツにこだわる理由がないので、他の商品を探してみようかと思います。

今まで食べた中で、ナッツといえばフルーティヤが自分の中でのベストなのですが、ベルクの商品の1.3倍の価格です。こうして比べてみると、味の良さを考えれば最初からフルーティヤ一択で良かったのかと思い直しました。フルーティヤは通販なので、税別3000円未満で送料630円(本州)、税別3000円以上なら110円(本州)が別途かかります。

  1. カシューナッツロースト(フルーティヤ) 200g ウェブ価格555円 (税込600円)

目に優しいデジタルペーパー(電子ペーパー)製品比較 今から買うならコレ!

自分は普段、ソニーの電子ペーパーDPT-RP1でPDFの書類を読んでいますが、文書が表示された状態で電子ペーパーを机の上に置いておくと、知らない人が見たとき「紙かと思った。」という驚きの声を上げます。それくらいパッと見が紙のようです。実際、ペンでの書き味も紙に似せられています(つるつるでなくざらっとした感じがある)。長いことお世話になってきたソニーの電子ペーパーDPT-RP1ですが、最近、電源ボタン部分が怪しくなってきました。枠の部品が少し浮いてるせいで、電源ボタンが陥没気味で押しにくくなってしまったのです。そろそろ買い替えどきかなと思います。

白黒の電子ペーパー

カラーの電子ペーパーがあれば即買いですが、残念ながら市場にあるのは白黒がほとんどです。

ソニーの電子ペーパー

ソニーストアではも販売終了していますが、アマゾンではまだ売られています。

  • ソニー DPT-RP1 A4サイズ 重量:349g 実売価格:99,800円(アマゾン

ソニーが電子ペーパーから撤退するのは非常に残念なことです。今後カラー化すればさらにマーケットは拡大するだろうに。PCのモニタは目を痛めるので電子ペーパーがいい。論文を読むのでA4がいい。書籍や資料なども多量に読みたいし、手書きメモも取りたい。そんな研究者にとっては素晴らしいツールだと思うのですが。研究者は、本当に仕事に役立つなら研究費で電子ペーパーを買うので、一般消費者には買いにくい高額な価格設定であっても売れると思います。

Adventures with SONY Digital Paper Constructive criticism  I maintain this list because the SONY DPS has quite literally changed the way I work for the better, and I have become fully committed to helping SONY produce the best possible second version of this device.
https://www.phys.hawaii.edu/~kcroker/sonydps/#wishlist

電子ペーパーSONY DPT-RP1は数学者にとって便利な道具ですが, …
How to Use SONY DPT-RP1 on Linux(SONY DPT-RP1をLinuxで使う方法)

Here we introduces a python command tool dpt-rp1-py to operate DPT-RP1 on Linux.
Everything About DPT-RP1 When Using LINUX

もう先がない製品を買うのもいやなので、別のメーカーの電子ペーパーを探してみようと思いました。現行品があるのは、富士通のQUADERNOくらいしかなさそうです。写真で見る限り、見た目はソニーとほぼ同じ。

富士通 QUADERNO クアデルノ

クアデルノは楽譜を見るのにも使えるみたいです。bluetoothのフットペダルで譜めくり可能。これは、便利層。ソニーの電子ペーパーを長いこと使ってきましたが、譜面を見るのに使おうという発想がなぜか浮かびませんでした。

  • 楽譜に書き込み 楽器演奏のポイントを楽譜に書き込み A4サイズの大画面なので楽譜の大きさにも最適です。楽譜の細部までクッキリと見えます。練習中に気になったポイントや指揮者の指示などを手書きで書き込むこともできます。

論文を読むならA4サイズが必須なのですが、ソニーも富士通も白黒というのがネックです。ところで、電子ペーパーもカラー化の波が来ています。

上の記事を書いたときはまだ発売前でした。その後発売されたようですが法人向けに販売のみであり、2024年8月現在、まだ個人消費者向けの市場に出てないみたいです。

カラーの電子ペーパー

Linfiny

個人消費者のニーズがあるのに、法人向けのみの販売に限定されているのは、残念。商品を開発した株式会社アイオイ・システムは、物流の会社でそもそも個人消費者向けの商品をつくっている会社ではないからというなのでしょう。

電子ペーパーの書籍リーター

Onyx社

自分もOnyxという会社名もBOOXという製品名もあまり馴染みがありません。

残念ながらOnyxって聞いたことがない人が多いんじゃないでしょうか。残念、というのはここ数年、Onyxはメジャーなブランドが恥ずかしくなるくらいすごい機能・性能の電子書籍、電子メモデバイスを作り続けてるんです。

Kindleも他のアプリも入れられる電子書籍リーダー「Onyx Boox Leaf 2」 2022.12.06 20:00 26,845 author Andrew Liszewski – Gizmodo US[原文]( 福田ミホ )

Onyx社のBOOXの製品も気になります。電子ペーパーというより書籍リーダーという触れ込みで、その分、重量も他社製品より重め。ソニーの349gの電子ペーパーは知らない人にも持ってもらうと「軽い!」という反応が多いです。キンドルスクライブは433gですが、正直、「重い」と思います。10.2インチという小ささなのに433gもあると、電車で手で支えて持つとき「重くて面倒」という気持ちになります。重いと思うかどうかは「サイズに対して」という部分も入ってくるので、13.3インチ(A4サイズ)だと、こんどは「大きくて重い」という印象になりそう。現物を触ったことがないのでなんとも言えませんが。何と比べるかにもよるので、1kgを超えるノートPCと比べれば「軽い」と思うでしょう。

  • BOOX Tab X GPU搭載13.3インチ電子書籍リーダー Androidタブレット OS:Android 11 メモリ:6GB 価格¥148,000 A4サイズ13.3インチ 重量:560g (アマゾン)(sktnetshop.com

自分は普段アマゾンのキンドル書籍を買って読んでいるので、キンドルが読めない電子書籍リーダーはまったく自分には不向きです。BOOXでキンドルが読めるならBOOXが「次に欲しいものリスト」のトップにきそう。メモリ6GBというのはちょっと少なくて不安があります。外部メモリも使えなさそうなので、ヘビーユーザーだと容量が不足しそう。

 

アマゾンキンドルスクライブ

アマゾンキンドルはキンドル書籍が読めて、電子ペーパーとしても使えます。しかし一番大きい画面でも10.2インチのサイズしかないのが、電子ペーパーでA4サイズの資料を読みたいには不満なところ。A4サイズのPDFをもちろん10.2インチのモニター上に表示はできますが、やはり文字が小さくなるので、若い人はともかく年齢が高い人(老眼が始まっている人)にはつらいでしょう。

キンドル書籍は図や写真が載っている場合はカラーのものが多いですが、キンドルスクライブは白黒の電子ペーパーE-inkを利用した製品なので、白黒でしか表示されません。これも残念なところ。

  1. Kindle Scribe キンドル スクライブ (64GB) 10.2インチディスプレイ 手書き入力機能搭載 プレミアムペン付き 販売価格例:59980円(アマゾン

 

自分が欲しい電子ペーパー・電子書籍のスペック

A4サイズの電子ペーパーと10.2インチサイズのアマゾンキンドルスクライブの両方を持ち歩くのは面倒なので、個人的には、

  1. A4サイズ(13.3インチ)の画面で、
  2. 色鮮やかなカラーの、
  3. メモリは本体数百GB以上で、外部メモリも大容量のマイクロSD(500GBや1TB)が使える、
  4. 軽くて上部で持ち運びしやすい重量が400g以下で、
  5. リアルな紙とペンの書き心地の、
  6. PDFのやりとりをいちいちUSBケーブルをつながなくていい、
  7. できればPDFだけでなく他の電子書籍のフォーマットや、マイクロソフト・オフィスのワードファイルまで読める、
  8. 電池が長持ちする(2週間以上はもつ)、
  9. ペンのほうは充電不要な、
  10. ページめくりがなめらかで、1000ページ超の書籍でも読みたいところがすぐに探せる(前回読んだところ、付箋をはったところ、しおりを挟んだところ、書き込みしたところ、ハイライトしたところ、線を引いたところ、検索した結果など)、
  11. アマゾンキンドルスクライブもしくはキンドル書籍が読める電子書籍リーダー

が出てきてほしいです。

 

電子ペーパーのPCモニター

電子ペーパーは「紙」の代用だけでなく、PCモニタの代用としても使う製品も市場にあるようです。

  • BOOX Mira,13.3インチ EInk 電子ペーパーディスプレイ(アマゾン在庫なし)
  • 13.3inch E Inkモニター 1134,489円(アマゾン

科研費研究計画調書(申請書)の書き方:様式の項目ごとの実際的なポイント

科研費申請書の書き方には、厳然とした守るべき「作法」が存在すると同時に、審査委員を納得させることができるのならどう書いてもOKという「自由さ」とがあります。科研費になかなか採択されずにいる研究者は、とりあえず作法を守るために「型」にはまった書き方をマスターするのがいいと思います。

2025年度科研費の様式は、基盤研究(C)は(6)国際性が追加され、(3)にあった「着想に至った経緯」が(1)に移動するなど、少なからぬ変更がありました。そのため、何をどう書けばいいのか戸惑っている人も多いようです。

 

注意:以下は、自分(本ウェブサイト管理人)個人の考えであり、自分の過去の科研費採択経験(生物系の基礎研究、少額の研究種目)、同僚や先輩、その他の人たちの採択調書から学んだこと、さまざまな書籍の内容、ウェブ上の情報、大学で開催された科研費セミナーで聞いた内容、科研費の審査をしたことがあるという先生から聞いた話などを自分なりに総合的にまとめた結果です。書籍やセミナーの内容が自分の考えとは多少ズレると思ったこともありますので、ここにまとめたことが絶対正しいわけでも、全ての科研費応募者に当てはまるわけでもありません。書き方のヒントになれば幸いです。研究内容や書きかた次第で、それぞれのセクションの分量の割合は大きく変わってきます。全体としての整合性、一貫性があることが大事です。

 

1 研究目的、研究方法など

科研費研究計画調書の様式はちょっとずつ変更されてきました。今年度(2025年度科研費)は、また少し変更がありました。基盤研究(C)の場合、「1 研究目的、研究方法など」を4ページにわたって書くことになりますが、書くべき内容が指示されており、

本文には、
(1)本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」、
(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性、
(3)関連分野の研究動向と本研究の位置づけ、
(4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか、
(5)本研究の目的を達成するための準備状況、
(6)本研究がどのような国際性(将来的に世界の研究をけん引する、協同を通じて世界の研究の発展に貢献する、我が国独自の研究としての高い価値を創出する等)を有するか
について具体的かつ明確に記述すること。

との指示が様式の上部にあります。新たに(6)国際性についての記述を求めているのが目を引きます。また、いままで(3)の中にあった「本研究の着想に至った経緯」が、(1)の中に移行しているのも要注意です。

(1)本研究の学術的背景や本研究の着想に至った経緯、研究課題の核心をなす学術的「問い」

さてこのセクションには何を書けばいいのでしょうか?「学術的背景」として何を書くかを考える際の手がかりがあります。それが、もう少し具体的な指示として、様式の真ん中の「留意事項①」に書いてある、

学術の潮流や新たな展開などどのような「学術的背景」の下でどのような「学術的『問い』」を設定したか、

という文言。これを解釈するに、学術的な問いが生まれた妥当性を書けばよいでしょう。審査の観点として、

学術的な意義や独自性、創造性など学術的重要性を評価する

と留意事項①に明確に説明されています。つまり、学術的問いの重要性の説明が求められているわけです。問うに値する面白い問いなのかどうか?ということです。そもそも学術的問いとは何なのか?研究目的とどう違うのかという点に関して、自分の研究テーマに沿って自分の考えをまとめておく必要があります。

申請書を具体的にどう書けばいいのかというと、通常の論文のイントロダクションの書き方が参考になります。まず「何」についての研究なのかを述べて、それに関して何がすでに「わかっていること」なのか、そして何がまだ「わかっていないこと」(=学術的な問い)なのか、なぜそのわかっていないことを知ることが重要なのかを書きます。そして、その「わかっていることとわかっていないことの間のギャップ」を「どうやって」自分が埋めるのか(=研究目的)、そのようなアプローチをどのように発想したのか(=着想に至った経緯)を書きます。

論文を書くときのノウハウで申請書の文章を書こうとしたときに、ここで少しやっかいな問題があることに気づきます。学術的な問いというのはその研究領域における大きめのクエスチョンであったほうがよいわけですが、自分のアプローチまで書いてしまうとそれはもうすこし具体的な「研究目的」になってしまい、研究目的を書くセクションはその次の「(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性」になるという点です。話を具体的に絞り込んでからまた広げなおすと話が戻ってしまったことになり、流れが悪くなります。文章の流れとしては一方向に流れていてほしいわけです。前年度までは、「本研究の着想に至った経緯」は(3)のセクションにあったので、まだ書きやすかったように思いますが、「着想」、特に、研究アプローチ(方法論)に関する着想を(1)の中で書くとなると「研究目的」まで(1)で言及したほうが自然な流れが作りやすいかもしれません。

科研費は人文科学から理学、医学、工学など全く異なる研究領域を対象にするため、研究のスタイルは非常に多様です。しかし科研費の様式はすべての研究領域に対応して1つしか用意されていないので、応募者が自分の研究領域に合わせて、あるい程度柔軟に対応することは許容されると思います。ただし審査の観点は公開されているのでそれを外した書き方は不利になります。何をどう書いているのか意図が明確であれば自由に書いてよいのだと思いますが、例えば、

研究テーマのトピックの提示→わかっていること、わかってきたこと、最近の進展やブレークスルー→それでもまだわかっていないこと→それをわかる必要性、喫緊性→学術的問い→問いに答えるための自分なりのアプローチ(研究目的)の着想(=着想に至った経緯)

という順に書いていくのが一法でしょう。「本研究の着想に至った経緯」が(3)から(1)に移動したというのは実はかなり大きな変更点であり、「何の着想」なのかまで変わってしまった可能性があります。「研究目的を設定するに至った着想」なのか、「学術的な問いを設定するに至った着想」なのか、というあいまいさ、多義性があります。「本研究の着想に至った経緯」を書けという指示を、学術的な問いを設定するに至った経緯と解するのであれば、

研究テーマのトピックの提示→わかっていること、わかってきたこと、最近の進展やブレークスルー→それでもまだわかっていないこと→それをわかる必要性、喫緊性(=着想に至った経緯)→学術的問い

となります。学術的な問いと研究目的との関係をどうするかで書き方が変わってくるでしょう。抽象度ー具体性 という観点で、問い>>目的 とするか、問い>目的 とするか、 問い~目的 とするかは、研究内容によるでしょう。問い=仮説とするか、目的=仮説(の検証)とするかも、研究領域や研究内容によって自由度があるのではないかと思います。

研究者によって各セクションにどれくらい詳しくどれくらいの量を書くかは、異なるでしょう。異なっていてよいのだと思います。ただし大事なことは、書く意図を明確にすることです。応募者がどういう意図で申請書を構成したのかにまぎれがなければ、スタイルが多少違っても審査委員によっては読みやすいものになるはずです。

重要なことは、このセクションを書く目的は何かを意識することです。すべての文章にはその文章を書く目的があります。背景の文章を書く目的は、応募者が学術的問い(もしくは研究目的)を設定した理由を審査委員に納得させることです。

ここで大事なのは「客観性」であり、客観的であることとはすなわち、すべての主張に根拠(文献もしくは予備実験の実際のデータ)を示すことです。引用文献が多くなりすぎると文章が読みにくくなるということもあるので、適度なバランス感覚が要求されます。文献は他人の文献と自分の文献を適度に織り交ぜて書くのが理想です。自分の文献だけだと独りよがりな印象を与えますし、他人の文献だけだと業績が無い人かと思われます。何をどう書くかに関しては、昔の申請書の様式の指示も手掛かりになります。

① 研究の学術的背景(本研究に関連する国内・国外の研究動向及び位置づけ、応募者のこれまでの研究成果を踏まえ着想に至った経緯、これまでの研究成果を発展させる場合にはその内容等) (平成29年度科研費の基盤研究(C)の様式より 太字・下線強調は当サイト)

これを読むと明らかなのですが、科研費の基盤研究というものは、基本的には、応募者がこれまで行ってきた研究の積み重ねの上に、さらに発展的なテーマを設定することが当然のこととされています。現在の様式の指示からはこれらの文言が抜け落ちていますが、この考え方は基本的には生きています。だとすると、新規テーマで応募したい場合どうなるんだ?という声が聞こえてきそうですが、新規テーマだと採択されにくい恐れはあるが、絶対ダメというわけではもちろんないので、様式の自由度が上がるように改善されたのだと思います。

文献の引用の仕方として、(Daresore et al., 2000)と書くか、(Daresore et al.,, 2000, Journa Name)とするか、(Daresore et al.,, 2000, J Nam 1(2):345)などどこまで細かくするかは好みもあるでしょう。(Daresore et al., 2000; Hokano et al., 2001)など論文の区切りに使う記号は表記の中でユニークなものにするなどの細かな配慮も大事です。番号で引用してあとからリストを添えたり、自分の業績の場合には(業績1)などと書くのもありでしょう。ただ、リストの番号で引用した場合にいちいちそれを他のページに見に行って確認する読み手もあまりいないのではないかと思いますので、読む動作・視線の動きを妨げないのが一番だと自分は思います。その考え方にのっとれば、引用文献の位置は句読点の直前がベストです(Daresore et al., 2024)。

背景に書くべきことは、そのトピックに関する一般的な説明ではなく、あくまで設定する問いの妥当性を納得させるための材料に絞ります。背景の書き始めから「問い」までが読んでいて一直線で無駄がないという印象を与えることが大事で、話題がそれたり、戻ったりするのは、学術的意義の重要性を理解されにくくするので要注意です。論文を書くときにIntroductionを書く理由は、hypothesisを導くためですが、それと同様に考えればいいと思います。

「背景」と「関連する研究動向」との書き分けという問題にもなりますが、背景には関連はしていても問いを導き出すことに直接関連しないことは言及する必要はありません。そういったことは関連する研究動向のセクションに書けばよいでしょう。研究動向には、他の研究者がどんなアプローチで自分と同じゴールを目指しているのか、そんな中で自分のアプローチはどんな点で優位なのかを書けばいいのです。こう考えれば、背景と動向の書き分けに悩むことはなくなるはず。

背景もしくは研究目的のセクションには、仮説を示した模式図を置くのが良いでしょう。良いでしょうというよりも、置くべきと言いたいところです。「仮説を示した模式図」というのは、相当頭の中が整理されていないと描けませので、模式図を描きなおしているうちに頭の中が整理されてきますし、模式図が完成するとあとは模式図を説明する形で本文をスムーズに書き進むことができます。

  1. 仮説を書かない科研費申請書なんて…

さて、新たに場所が移動してきた「着想に至った経緯」はどう書けばいいの?という問題があります。なぜこれが(3)から(1)に移動されてきたのかを考える必要があるでしょう。自分が思うに、背景から問いを導く過程がすなわち着想なので、着想に至った経緯は本来、背景→問いの思考そのものであって、不可分です。別物として書く必要はないのではないかと思います。しかしそうはいってももともと(3)にあったものなので、以前の不採択調書の「着想に至った経緯」の部分をコピペして、(1)の背景と問いの間に入れ込んでいる人も多いことでしょう。実際、「背景」として客観的な内容を書き、次に「着想」として自分の業績やアイデアを中心に書き、両者から導きだされる「問い」を書くというスタイルも、おさまりがよいのでお勧めできます。とくに、このセクションの文章量が多くなるとどこに何が書いてあるのか読み手にもわかりにくくなりますし、読む労力も増えてストレスです。「背景」「着想」「問い」と3つのセクションに分ければ、読み手に優しい申請書になるでしょう。

【このセクションでよくある失敗例】、

  • トピックに関する教科書的説明(無駄な情報)をしている
  • 文章に、学術的問いへ向かう方向性がない。
  • 文章の流れとは無関係な”関連する”話題が、流れの途中に挿入されている。←ありがち
  • 自分の業績を引用していない(なければ仕方ないですが)
  • 自分の業績しか引用していない(問いの客観性が担保されない)
  • 学術的な問いが書いていない。書いてあったとしても、どの部分がそうなのかが読み手にわからない。

(2)本研究の目的および学術的独自性と創造性

このセクションをどう書くかも、自由度が高く人それぞれですが、どこに何をどう書いたのかという応募者の意図が明確に読み取れることが大事です。また、(1)のセクションから話がつながっていることも必要です。

研究目的

「目的」というのは日常語としては、将来の夢や願望、目標という意味もありますが、研究助成への応募書類における「研究目的」は、研究期間内で研究計画において「実際にやること・明らかにすること」を意味します。つまりやらないこと(将来的な願望)を含めてはいけません。時間があればやるとか、研究がうまくいけばもう少し先までやるなどと、あいまいなことを書いてもいけません。

研究目的は、学術的問いに答えるものになっているべきで、きちんとした対応関係がそこにないと不自然です。問いに答えるための実験系や方法論まで含めて具体性を増したものにします。

研究目的の中身は、学術的な問いに答えるためのアプローチを含みます。問いにどんなアプローチで取り組んで答えを出すのか、そのアプローチにはどんな独自性や創造性があるのかを書くことになります。

【研究目的を書くにあたってのよくある失敗事例は】

  1. 研究目的がそもそも書いていない
  2. 研究目的が学術的な問いに答えるものとして書かれていない
  3. 学術的な問いと研究目的の「抽象度ー具体度」の関係が逆になっている
  4. 研究目的(やること)に願望(できれば~したい)を書いている
  5. 「研究目的、研究の意義」を一文にまとめて書いているため目的が伝わりにくい。(例. ~することは、~の意義が大きい)

独自性

独自性 originalityは、他人にはないその人だけのものという意味です。科研費が不採択になる人の多くが、「~(研究目的)の研究は報告がないので独自性が高い。」と書いてしまいますが、この書き方は賢明ではありません。科研費は相対評価ですので他人の申請書と比べられて採否が判断されます。「~(研究目的)の研究は報告がないので独自性が高い。」という文は、他の申請書でもそのまま使える文言です。つまり審査委員に対して審査に有用な情報をなんら与えていません。情報量ゼロの文です。なぜ今まで論文報告がなかったのか?重要な課題だとみな思っていたのに適切なアプローチが見つからなかったから?技術的に不可能だったから?重要なのにその重要性が見落とされていたから?なにかしら理由があるはずで、その理由を書く必要があります。

独自性のアピール方法として、他人にはできないということをアピールすることも可能です。自分にしかない技術を使って初めて実現可能になるアプローチだからといった具合です。また、誰よりも早く自分がその重要性に気づいてこの分野を開拓してきたからと、過去の論文業績と絡めて独自性をアピールすることも可能でしょう。

【独自性を書くにあたってのよくある失敗事例】

  1. ~(研究目的)に関する論文報告はなく、本研究は独自性が高い と書いてしまう。論文報告がないことだけ言っても、なぜそれが独自性になるのか読み手には全くわかりません。

創造性

創造性に何を書けばいいのかは、多くの応募者が頭を悩ませるところです。通常の日本語の意味だと、創造性はcreativityのことであり、creativeといえばゼロから何かを作り出すという意味になります。しかし科研費の申請書においては「創造性」として書くべきことは、多少日常語とはズレているように自分は感じています。

  1. 科研費研究計画調書 創造性 何を書くべき?日本語の解釈

審査のポイントとして、

A.研究計画の内容に関する評定要素
(1)研究課題の学術的重要性
・学術的に見て、推進すべき重要な研究課題であるか。
・研究課題の核心をなす学術的「問い」は明確であり、学術的独自性や創造性が認められるか。
・研究計画の着想に至る経緯や、関連する国内外の研究動向と研究の位置づけは明確であるか。
・本研究課題の遂行によって、より広い学術、科学技術あるいは社会などへの波及効果が期待できるか。
https://www.jsps.go.jp/file/storage/kaken_01_03_shinsahyoutei_2024-1/r6hyoutei03_ja_bc.pdf

ということが言われていますので、「本研究課題の遂行によって、より広い学術、科学技術あるいは社会などへの波及効果が期待できる」ことを申請書のどこかでアピールする必要があることがわかります。しかし明示的なセクションはないため、書くとすれば、「創造性」を書く場所に書くことになろうかと思います。そこで、創造性の欄に、新たな価値を生み出すことができるという内容の説明をする人が多いようです。科研費の書き方を指南した書籍もそのような説明に終始しています。

【創造性に関する失敗事例】

  1. 創造性についての言及がない

(3)関連分野の研究動向と本研究の位置づけ

細かい話ですが、2025年度科研費から、様式の指示は、「関連する国内外の研究動向」が、「関連分野の研究動向」に変更されています。これは(6)国際性 の項目を新たに作ったことに伴う措置だと文科省の資料では説明されています。ただ(6)でアピールすることはすこし内容がずれるので、従来通り書けばよいでしょう。「背景」と「研究動向」をどう書き分ければいいのかというのも悩みのタネです。ほとんど同じことを繰り返してしまうのは印象を下げます。

実際のところ、「背景」と「研究動向」で書く内容がある程度重複するのはむしろ自然なことだと思います。内容は重複してもアピールしたいことが異なるので、文は当然異なったものになります。

何を書くべきかで考える必要があるのは、「関連分野の研究動向」という指示において、何に関連する研究の動向かという点です。「何に」というのは普通に考えれば、「学術的な問い」や「研究目的」に関連する研究動向ということになるはずです。「学術的な問い」と「研究目的」のどちらに寄せて書くかというのは、「学術的な問い」と「研究目的」をどう設定したかにもよるので、ケースバイケースでしょう。「研究目的」を非常に狭くとらえてそれに関する研究動向を書いてしまうと、研究の意義が理解されない恐れが強まります。なので、「学術的な問い」に関する研究動向を書いて、国内外の他の研究者がその問いにさまざまな方法でアプローチしているなかで、応募者はどのような独自性・優位性のあるアプローチをしているのかが明確になるように書けばいいと思います。

【研究動向と位置付けを書くにあたってのよくある失敗事例】

  1. 研究動向=論文であるべきなのに、論文の引用が全くない
  2. 他人の研究紹介は書いているが、本研究の位置づけに関する言及がない
  3. そもそも「何」に関係する研究動向なのかがあやふや。書くべきは、「学術的問いや研究目的」に関係する研究動向であるにもかかわらず、そうなっていなくてズレたトピックに関する研究動向を書いている。

(4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか

このセクションは長ったらしいタイトルでわかりにくいかもしれませんが、以前の「計画・方法」という欄に対応した部分です。まだ科研費の様式に「研究業績」というページがあってそこは単に論文業績を羅列するだけだった当時(平成29年度の例)の様式がどうだったかというと、基盤研究(C)の場合は最初の2ページが「研究目的」で、

研究目的
本欄には、研究の全体構想及びその中での本研究の具体的な目的について、冒頭にその概要を簡潔にまとめて記述した上で、適宜文献を引用しつつ記述し、特に次の点については、焦点を絞り、具体的かつ明確に記述してください(記述に当たっては、「科学研究費助成事業における審査及び評価に関する規程」(公募要領81頁参照)を参考にしてください。)。
① 研究の学術的背景(本研究に関連する国内・国外の研究動向及び位置づけ、応募者のこれまでの研究成果を踏まえ着想に至った経緯、これまでの研究成果を発展させる場合にはその内容等)
② 研究期間内に何をどこまで明らかにしようとするのか
③ 当該分野における本研究の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義

つぎの2ページが「研究計画・方法」で、

研究計画・方法
本欄には、研究目的を達成するための具体的な研究計画・方法について、冒頭にその概要を簡潔にまとめて記述した上で、平成29年度の計画と平成30年度以降の計画に分けて、適宜文献を引用しつつ、焦点を絞り、具体的かつ明確に記述してください。ここでは、研究が当初計画どおりに進まない時の対応など、多方面からの検討状況について述べるとともに、研究計画を遂行するための研究体制について、研究分担者とともに行う研究計画である場合は、研究代表者、研究分担者の具体的な役割(図表を用いる等)、学術的観点からの研究組織の必要性・妥当性及び研究目的との関連性についても述べてください。
また、研究体制の全体像を明らかにするため、連携研究者及び研究協力者(海外共同研究者、科研費への応募資格を有しない企業の研究者、その他技術者や知財専門家等の研究支援を行う者、大学院生等(氏名、員数を記入することも可))の役割についても記述してください。
なお、研究期間の途中で異動や退職等により研究環境が大きく変わる場合は、研究実施場所の確保や研究実施方法等についても記述してください。

となっていました。「研究目的」(2ページ)と「研究計画・方法」(2ページ)が「研究目的、研究方法など」(4ページ)の一つに合わせられたわけです。この経緯を見れば、「(4)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」が、「研究計画・方法」に対応することは明らかでしょう。

古い様式も今見返してみると申請書を書く上で示唆に富むことに気づきます。

指示がなくなった=書かなくてよくなったと考えるより、自由度を増やすために指示を減らしたと理解したほうがいいでしょう。つまり指示がなくなったことであっても、意識しておいたほうが良いのです。

さて、計画・方法は以前はまるまる2ページ書くようになっていたのですが、今は他との分量のバランスからそこまで多くの紙面を割かなくてもいいようになったと思います。採択された人の研究計画調書を見せてもらったことがありあすが、多くの場合1ページ程度(他の部分に何をどう書いたかとの兼ね合いにより、半ページ~2ページ弱の幅がある)で書いているようです。

抽象>具体 ということで言えば、

学術的問い>研究目的>研究計画・方法 という図式になります。

当たり前のことですが、「研究計画・方法」で書く内容は、「研究目的」と完全に対応している必要があります。研究目的を達成するうえで過不足がある計画を書いてしまうとまず採択されないでしょう。計画に書く課題が少なくてさみしいので余計な課題を付け足して整合性を失い不採択になるというのは典型的な失敗パターンです。

【研究計画・方法のセクションにありがちな失敗例】

  1. ~を解析する ~を比較する ~を分析する など一言でまとめていて、具体的にどうやって解析するのか、どうやって比較するのか(統計学的手法)、どうやって分析するのかが書かれていない。
  2. 研究目的との対応が不明
  3. 計画された課題が実施されても研究目的が達成されない(不足)
  4. 研究目的を達成するうえでやる必要がない課題を計画している(過分)
  5. ひと続きの文章で1ページ以上書かれていて、読む気がしない 課題ごとに項目をつくって、「読ませる」というより「見ればわかる」ようにしましょう。どこまで細かく読むかを読み手に任せるようなレイアウトに。
  6. 研究分担者の役割が書いていない

(5)本研究の目的を達成するための準備状況

このセクション「準備状況」とあとにでてくる「研究環境」とをどう書き分けるかで悩む人も多いようです。環境は必要な研究機器などであり、準備状況はそれらの研究機器がすでに稼働して予備データが出始めているといったことなんだろうと思います。予備実験データをここに書くのもありでしょう。ただし、予備実験データは研究計画欄のほうに書くというのも効果的です。

実際のところ、予備実験データは背景のところから出してもよくて、好みによると思います。できるだけ早くインパクトを示して読み手(審査委員)の興味をひきたければ、早い段階で出すことです。4ページめの最後など、そもそも審査委員はまともに読んでいないかもしれません(特に最初の部分が稚拙にしか書けていない申請書の場合)。

【準備状況で良くある失敗事例】

  1. 研究環境を書いている
  2. 素晴らしい予備実験データを、審査委員の頭の中で採否が決まった今ごろになって載せている(きちんと書かれた申請書ならここまで読んでもらえるでしょうが、最初のほうのページが稚拙だと準備状況まできちんと読んでもらえる保証はない)

(6)本研究がどのような国際性を有するか

このセクションは2025年度科研費からあらたに加わったもので、何を書けば正解なのかは誰も確かには知らないことだと思います(まだ採択された申請書というものが存在していないので)。そのため、日本学術振興会は親切にも様式の指示の中で具体例を挙げて示してくれています。

  • 将来的に世界の研究をけん引する
  • 協同を通じて世界の研究の発展に貢献する
  • 我が国独自の研究としての高い価値を創出する

などを書けばいいのだそうです。「将来的に世界の研究をけん引する」というのは、得られる研究成果を見た他の研究者がこぞって参入してくるので、その結果として、新しい学問の潮流がつくりだせて、自分がその最先端にいて世界の研究を牽引することになるのだと思います。

「協同を通じて世界の研究の発展に貢献する」というのは、得られる研究成果を見た他の研究者がこぞって共同研究を是非やりませんか?と声をかけてくるので、その結果として、協同して研究領域を発展させることになるのでしょう。

「我が国独自の研究としての高い価値を創出する」ということでもOKというのはなかなか興味深いと思いました。つまり、なんでもええんかい!と思ったのですが、これは日本人の起源とか、日本文学の研究、日本の戦後政治など、日本固有の問題に取り組む研究者を想定してのことなのかなと想像しています。

もっと詳しく知りたい人は、文科省のサイトに公開されている国際性の記述が導入された経緯の説明した資料お読みください。この「経緯」を読めば、(6)国際性をどう書けばよいかが自ずと明らかに浮かび上がってきます。つまり、「基盤研究」に統合される「国際共同研究加速基金」と「海外連携研究」の趣旨を、基盤研究の様式の中で受け継いだのが(6)国際性 の部分というわけです。このことを認識しているかどうかで、ピントの合った内容が書けるかどうかの勝敗が決まります。

第 1 2 期 研究費部会 における科研費 の 改 善 ・充実及び 今後の 議論の方向性について( 中間まとめ ) 令和6年 6 月 2 4 日 科学技術・学術審議会 学術分科会研究費部会

①国際的に波及効果が高い学術研究の推進
(科研費(基盤研究)における研究の国際化等)
コロナ禍後の国際研究交流の回復傾向や、「基盤研究種目群」における基金化の拡大状況等により、今後は、「国際共同研究加速基金」以外の研究種目においても、更なる研究活動の国際化が期待される。
既に基盤研究等の枠組みでも国際競争力のある研究は数多く行われているところ、上記の環境の変化を踏まえ、「国際共同研究加速基金」として別枠で助成する仕組みではなく、審査によりそうした研究を見出し、助成する仕組みが必要である。
また、我が国の研究力の相対的・長期的な低下が懸念される中、現在の物価高や為替安等の厳しい社会情勢も踏まえ、研究者が国際競争力のある研究に十分取り組めるよう、応募額を尊重した研究費配分が望まれる。
このため、本部会及び振興会の学術システム研究センターにおける議論を踏まえ、「国際共同研究加速基金」について、その機能を勘案しつつ可能なものは段階的に「基盤研究種目群」等に統合していくこととする。その際、「基盤研究(B)」との間で実質的な差異がなくなった「海外連携研究」については、令和7年度助成から公募を停止し、速やかに「基盤研究種目群」等に統合することとする。
また、令和7年度助成に係る公募から、「基盤研究(A)・(B)・(C)」において「研究課題の国際性」を新たに評定要素に加え、高く評価された研究課題については、研究費配分額の充実により国際競争力のある研究に挑戦できる環境を実現することとする。更に、若手研究者の参画を要件としていた「海外連携研究」の「基盤研究種目群」等への統合後においても、国際共同研究の助成を通じた若手研究者の育成に資するよう、「基盤研究(B)・(C)」において、研究課題の国際性」の評定要素で高く評価された研究課題であって若手研究者を研究代表者とするものを優先的に採択する枠組み(「国際・若手支援強化枠」)を設けることで、高い国際競争力を有する研究の量的拡大をも目指すこととする。https://www.mext.go.jp/content/20240624-mxt_gakjokik-000036755_1.pdf

上の資料を読んでいてちょっと驚いたのですが、国際性のアピールのセクションは実ははかなり大事みたいです。若手研究者で高い点数がついたものは優先的に採択すると言っています。若手、若手、と若手優遇政策が目につきますが、ついにここまで来たかの感があります。老兵去るのみですね。

しかし、国際性がない科学ってあるのか?と思いますので、今回の様式の変更は、改悪のような気がしています。自分と同じことを考えている人もきっと多いはず。

  1. 2025年度科研費申請書新様式(6)どのような国際性を有するか をどのように書けばいいのか?について

以上、各セクションの書き方をざっと見てきましたが、大事なことは指示を守るということです。つまり、このセクションにはこれを書けという指示がある以上、その指示を守る必要があります。学術的な問いが書いていない、もしくは、どの部分が問いか不明瞭というのは論外です。指示=評価ポイントなので、指示を守らない=得点が得られない=不採択にする格好の理由を審査委員に与える、ということです。また、一貫性があることも大事です。研究課題名と学術的問いと研究目的と研究計画・方法との間に一貫性がなくて、論点がブレていては採択はおぼつきません。

概要

さて4ページを書いたあとで、その内容を概要としてまとめて冒頭部分に書きます。概要から書き始める人がいるようですが、そうすると本文の要約になっていない代物ができあがってしまっていることに気づけない恐れがあります。本文に書いていない情報がなぜか概要に書いてあるというのは、典型的な失敗例です。

概要で第一印象が決まります。人間が初対面の人を判断するときにおそらくぱっと見の数秒でその人がどんな人かの判断を下すと思います。概要は「ぱっと見の数秒」で、ここで悪い印象を持たれると挽回するのは難しいでしょう。特に、日本語が変だったり、何が言いたいのかわからなかったり、論理的な流れが無かったりすると、審査委員の人は本文を真面目に読む気が失せるんじゃないでしょうか。

【概要でよくある失敗事例】

  1. 概要に本文よりも詳しい情報が書かれている(本文の要約になっていない)
  2. 概要を本文の一部として書いている
  3. 概要の1文1文につながりがない。
  4. 問題提起をせずに問題解決(=研究目的)を述べている
  5. 文章の流れに論理性がない
  6. 誤字脱字、日本語の文法的な間違いが存在する

 

2 応募者の研究遂行能力及び研究環境

さて、応募者の研究遂行能力及び研究環境を2ページにわたって書くわけですが、「及び」とあるからといって能力と「環境を1ページずつ書くものではありません。審査委員が特に知りたいのは能力のほうなので、能力に関して1.5ページ以上使って書いたほうがよいでしょう。まずは様式の指示を良く読みましょう。

応募者(研究代表者、研究分担者)の研究計画の実行可能性を示すため、(1)これまでの研究活動(主要な研究業績を含む)、(2)研究環境(研究遂行に必要な研究施設・設備・研究資料等を含む)について2頁以内で記述すること。
「(1)これまでの研究活動」の記述には、研究計画に関連した国際的な取組(国際共同研究の実施歴や海外機関での研究歴等)がある場合には必要に応じてその内容を含めること。また、研究活動を中断していた期間がある場合にはその説明などを含めてもよい。

研究分担者についても書く必要があります。特に異分野の研究者と組んで研究体制を構築しているのであれば、研究分担者の業績は重要です。同じラボの人を分担者に置いている場合には、研究代表者の業績のほうが重視されると思います。でなければ分担者が自分で代表者として応募しろよということになるからです。

昔はここは論文のリストを見せるだけだったのですが今は真っ白な2ページが与えられているだけで、何をどう書いても構いません。採択された人がどう書いているのかを見せてもらったことがありますが、典型的な書き方は、文章でこれまでの研究内容を説明し(自分の業績を引用しながら)、そのあとで業績リストを示すというパターンです。やはり業績リストはその人の業績が一目瞭然ですので、審査委員にとって審査しやすいはずです。文章しかないと、この人はファーストで書いた論文はいくつあるんだ?どんなジャーナルに出してるんだ?といちいち細かく読み解く必要があり、そんな面倒なことはやってられません。かといって業績リストだけだと、たとえ論文数が多くてもそれらが今回のこの研究提案とどう関連してるんだ?という疑問が解消できません。やはり文章+業績リストがベストでしょう。

業績が無いからといって余白が半ページもあったりすると、ああ本当に業績がないんだ、そして、応募の熱意もないんだと思われます。業績が少ないのなら少ない業績を丁寧に文章や図で説明したり、原著論文だけでなく学会発表その他なんでも書くようにして、絶対に余白を作らないようにしましょう。原著論文の積み上げがしっかりある人は、学会発表などを書く必要はないでしょう。

余白があるのに、学会発表も書いていないと、学会発表すらしていない人と思われます。余白があるのに、共著論文が書いていないと、共著論文すらない人と思われます。つまり、あることを書いていない=その業績がない と判断されるので、あることは書けるだけ書いて余白をなくすようにしておかないと、損な見られ方をします。

過去の科研費採択歴を書くべきかどうかで悩む人もいるかと思います。十分な実績のある研究者であれば、いちいち過去の科研費採択歴を書く必要は全くありません。そうでない場合は、「科研費採択→論文化」のサイクルがきちんと達成できている人なら、それをアピールするのは効果的です。前回の科研費の結果の論文化が間に合っていないのなら、科研費採択歴を書くと論文のアウトプットがないことを馬鹿正直に申告してマイナスの印象を与えるだけなので、書かないほうが無難でしょう。

【よくある失敗事例】

  1. 余白が大きすぎる
  2. 書けるネタがあるのに(学会発表など)書かずに余白を残している
  3. 研究計画と業績との関連性を説明していない

 

経費(ウェブ入力)

経費をどれくらい具体的に細かく書くかは人それぞれです。国内 学会発表 と書いても採択される人はされますし、第XX会日本〇〇学会年会(福岡)参加 など具体的に書けばベターだと思います。海外も同様です。学会の開催地がどの国のどの都市あkで航空運賃もかなり変わってきますので、おおざっぱに何十万円と書くだけだといい加減な印象を与えかねません。

経費の必要性を作文する部分も丁寧に書きましょう。大型の機器がすでに研究室や大学に備わっている場合には、これこれはすでに設置されていて、消耗品のみ必要なので経費に計上したといった記述をするのも良いことだと思います。研究計画の内容が具体的にリアルに想像できる書き方が好ましいでしょう。当たり前のことですが、研究計画の欄で必要になりそうな経費が計上されていなかったり、計画欄で全く言及のなかったものが経費として計上されているのは不自然ですので、全体として矛盾がないか再度確認しましょう。

科研費申請書の各セクションの書き方は、別に文科省や日本学術振興会が細かく教えてくれるわけではありません。様式の指示や留意事項を「読み解く」ことは応募者の責任です。実際には審査委員が審査するので、審査委員がどう思ってどう評価するかが全てです。しかし審査委員の考え方も多様ですので、どんな人が読んでも評価される書き方をしておく必要があります。

 

審査区分選び

各セクションの書き方のヒントになりそうなことをつらつらと書いてきましたが、実は申請書を書くまえに「審査区分」を選んでおく必要があります。というのも、専門家向けに書いて申請書を完成させてしまうと、もうより分野融合的な審査区分に変更できなくなるからです。自分のこれまで経験からすると、専門分野の審査区分の中にも採択されやすいユルイところと激戦区なところとがあります。そういう競争の激しい激戦区となっている専門分野の審査区分と比較すると、分野融合的な審査区分あるいはより一般的な学問領域の審査区分のほうが、容易に採択されやすい傾向があるような気がします(肌感覚)。そういう審査区分は、応募者のバックグラウンドもバラバラで審査委員のバックグラウンドもバラバラですので、かなり一般読者向けの言葉遣いで申請書を書く必要があるわけです。オーラルのプレゼンを準備するときにまず聴衆がどんな人たちなのかを知ることが大事といわれるのと全く同じで、申請書の準備をするときには審査委員がどんな人たちなのかを知ることが大事です。多くの人が軽視して不採択をくらっていることですが、読み手が定まらないうちに書き始めてはならないのです。

  1. 科研費に採択される人と不採択になる人の違い

【よくある失敗事例】

  1. 自分の所属分野(プライド)にこだわって審査区分を選んでおり、テーマとのマッチングで選んでいない
  2. もっと容易に採択される可能性がある審査区分があることに気づいていない(KAKENデータベースを研究内容のキーワードで検索すれば、複数見つかることがあります)

書く順番

多くの人は概要から書き始めたり、様式の順番通りに背景から書いているのではないでしょうか。様式の6ページの空白を最初から埋めていく書き方が、一番お勧めできない方法です。申請書で重要なのは一貫性や整合性なので、まず最初に書くべきは、申請書全体の骨子、アウトラインだと思います。

  1. 本研究で知りたいこと、すなわち学術的な問いを1文、1~2行で書きだす。
  2. 学術的な問いに答えるための本研究のアプローチ、すなわち研究目的を1~2文、2~3行で書く。
  3. 研究目的を達成するのに必要な小実験課題の項目名を3つ程度書きだす(研究計画の骨子)

以上が、申請書の背骨に相当する部分です。それができたら、手足か肋骨かわかりませんが、周辺部分に関係するところの骨格を書きだします。

  1. 背景から問いに至る論理的な粗筋をいくつかの文で簡単に書きだす。
  2. 学術的な問いに関連する研究動向を示すような、複数の論文を列挙し、それらのアプローチの限界点を書きだす。それらに対して、自分のアプローチの利点を書きだす。
  3. 自分のアプローチの独自性、創造性をそれぞれ1行ずつで書きだす。
  4. 研究がうまくいった場合の発展性や意義を1行で書きだす。
  5. 仮説を示す模式図を作る。図の中で、既知のこと未知のこと(本研究で知りたいこと)、検証したい部分に対応する小実験課題を決める。

このように本文を肉付けする前に、骨格となる部分を簡潔な文で書いてみることをお勧めします。ここまでしてから本文を書けば、申請書全体の骨格がブレる心配がなくなります。

 

大事なこと

科研費申請書の様式は、すべての学問分野に共通です。人文科学からコンピュータサイエンス、臨床研究、素粒子論、遺伝学、なんでもです。学問分野によっていろいろしきたりや作法が違うので、本来は一つの様式で事足りるとは思えないのですが、個別に様式をつくるわけにもいかないので一つで済ませているわけです。ですから、様式の指示の解釈は複数通りありえます。同じ研究領域でも、何をどのセクションにどれくらいの分量で書くかは、研究者の常識と良識に任されている部分があります。ですから、明確な意図をもって、ここにこれを書いたということが審査委員に伝われば、様式の解釈の正しさに必要以上にこだわる必要はないのではないかと思います。実際、何冊も出版されている科研費の教科書を読み比べても、どのセクションに何を書くべきかは必ずしも一致していません。科研費セミナーを聞いていても、セミナー講師が自分が解釈したことを話しているだけで、それに万人が賛成しているわけでもありません。JSPSや文科省の科研費担当部署に訊いても、何も教えてくれません。つまり、様式の指示は、「研究者の常識」に基づいて解釈して書けばよいのだと思います。

 

その他の注意事項

科研費の様式の指示や留意事項は、審査の評点と対応しています。日本学術振興会のウェブサイトには、審査における評定基準等 や 審査の手引 が公開されていますので、これらを読んでおけば、様式の指示を守ることの重要性がより一層感じられるはずです。

第三者に読んでもらうことの重要性(必須!)

かなり丁寧に科研費の書き方の説明をしたつもりですが、こういったノウハウを自分の申請書に日本語の文章として落とし込めない人が実際にはほとんどでしょう。そういう場合は、第三者に読んでもらうことを強く、強くお勧めいたします。大学内にそういう支援をしてくれる人がいない場合は、商用サービスを利用するのも手だと思います。

  1. ココナラ(科研費に特化した添削サービスを提供している個人)

研究内容を知りすぎているラボの同僚よりも、研究のことは何もわからない素人だが日本語力(論理的思考能力)だけはある配偶者やラボの秘書などのほうが的確な指摘をしてくれる可能性もあります。

  1. 科研費申請書の書き方の教科書 厳選5冊を解説【書籍レビュー】

科研費を書く際の態度や考え方に関する話を知りたい人は、以下の記事も参考に。

  1. 採択される科研費申請書の書き方22のヒント

 

国語力に自信がない方へ

科研費計画調書は日本語で書くので、日本語に自信がないというのは致命的です。とくに、接続語の使い方が怪しい人、具体的に書けない人、逆に、抽象化した記述が苦手な人、論理的に書けない人、メリハリのある日本語の文章が書けない人、そういう人たちは小学校からやり直したほうがいいです。小学校の国語から勉強しなおすのに最適な参考書がコレ。

親必読!難関中学への合格者続出! 「本当の国語力」が驚くほど伸びる本: 偏差値20アップは当たり前! 2009/7/18 福嶋 隆史(アマゾン)

いい歳した大人が小学校の国語の勉強からやりなすなんて、プライドが許さない?そんな大人の人向けに、内容は基本的に同じですが大人が読んでいて恥ずかしくないように装いを新たにしたバージョンもあります。

言葉を自在に操るための論理思考トレーニング 考えていることが正しく伝わる、シンプルで確実な方法 「ビジネスマンの国語力」が身につく本 2010/12/11 福嶋隆史 (アマゾン)

上の本は文字数は少なくて1時間弱で読めますので、科研費申請書が書けず煮詰まったときに読むと、劇的な効果があります。なぜ自分が書いた申請書が読みにくかったのかがハッキリと説明できるレベルで理解できるようになるでしょう。

キャスリン・ペイジ・ハーデン『遺伝と平等』2023/10/20 新潮社

キャスリン・ペイジ・ハーデン『遺伝と平等:人生の成り行きは変えられる』2023/10/20 新潮社 を読んでいます。この本を読むのはかなり骨が折れます。

  1. 「親ガチャ」を乗り越えろ。最先端の遺伝学の成果は、あなたの武器になる 遺伝と平等―人生の成り行きは変えられる― キャスリン・ペイジ・ハーデン/著 、青木薫/訳 (新潮社)

Kathryn Paige Hardenの著書で、原書のタイトルは、The Genetic Lottery: Why DNA Matters for Social Equlityというものです。本の帯には、「親ガチャ」を乗り越えろ! とか、個人でなんとか変えられるとエールを送るような文言がならんでいますが、内容はちょっと違うように思います。別に個人が頑張れば遺伝の影響を超えられるといった話は出てきません。本書の主張は、社会の平等は遺伝的な差異に配慮すべきというものだと思います。

邦訳に限らず書籍は、内容とタイトルが多少乖離するということが、セールスの都合なのかありがちだと思います。『遺伝と平等』はなかなか読み通すにはハードな本です。大型書店にどさっとおかれていたりして、この本を読む人がそんなに多いのかとちょっと驚きます。行動遺伝学の専門家による本なので内容はしっかりしていて引用文献もネット上にまとめられているようですので、非常に信頼できるものだと思いました。

書評

  1. 作家、平野啓一郎が「また新たな基礎的教養書が登場した」と喝破する、遺伝学のいまを知りたい人のためのわかりやすいバイブル bookbang.jp
  2. 遺伝がもたらす優劣にどう向き合うべきか? 「親ガチャ」問題を社会学者とサイエンス翻訳家が考える bookbang.jp 青木「ハーデンは、どちらの側でもないんです。人類には優劣があるという優生学的な考え方はとんでもないけれど、一方で、それを見ないことにするのもダメだと。」大澤「遺伝くじが関係していることが明らかならば、その「違い」に対しては、「公正としての正義」の観点からの補償や救済が可能

本書の引用文献

第4章

  • 140ページ サム・ハリスのポッドキャストでの対話 Sam Harris Podcast. A Conversation with Kathryn Paige Harden (Episode #212) Released: July 29, 2020 https://www.youtube.com/watch?v=EEwj5avKmtU

第7章

  • 215ページ 認知能力テストとの関連性を差し引いたGWASの結果が説明する非認知的な部分 文献23 Investigating the genetic architecture of noncognitive skills using GWAS-by-subtraction Nature Genetics volume 53, pages35–44 (2021) Published: 07 January 2021 https://www.nature.com/articles/s41588-020-00754-2

第II部

第8章

Christopher Sandy Jencks

科研費研究計画調書 創造性 何を書くべき?日本語の解釈

科研費研究計画調書には独自性と創造性を書きなさいという場所があります。創造性って何でしょうか?

AI による概要
創造性とは、独自性があり斬新で生産性が高い発想を生み出す能力、またはクリエイティビティ(creativity)とも呼ばれます。既存の知識や情報を組み合わせ、独自の視点や考え方を取り入れながら、新しい価値を生み出すことができるのが特徴です。

創造性は英語だとクリエイティビティ。上の説明にもありますが、新しい何かを作り出すことだと自分は理解していました。ところが、科研費の書き方の多くの説明では、波及効果などを書くようにアドバイスしています。

 AI による概要
科学研究費の申請書に書く「創造性」には、本研究の過程や成果による学術の深化や、他の分野への波及効果などが含まれます。具体的には、次のようなことを書くことができます。
  • 本研究が今後どのように発展し、他の研究分野に波及していくのか
  • 本研究で明らかにすることで、申請者以外の新しい研究や行動を創造しうることを期待できること

また、独自性や創造性の主張には客観的裏付けも必要です。文献や論文などを根拠として示すこともよいでしょう。

これって、「創造性」という日本語の本来の意味じゃないよなあといつも不思議に思っていました。ゼロからなにかを作り出す、存在していたものを題材にしていても斬新なアイデアで何か今までになかったものを作り出すそういう研究に関する創造性なんじゃないかと思ったのですが、科研費の教科書の説明だと、研究がうまくいったその後、何かを創造するということみたいです。なんか違うんじゃない?と思うのですが、皆さんどう書いているのでしょうか。世の中の指南書がみなこうかけと書いているとそれに引きずられてみなそう書いているのでしょうか。

科研費に採択される人と不採択になる人の違い

科研費に採択される人と不採択になる人にはどんな違いがあるのでしょうか?

科研費に採択される人は国語力がある 不採択の人には国語力がない

不採択になる理由はいくつもありますが、一番低レベルな不採択の理由は国語力がないこと。つまり、科研費の申請書は日本語で書かれるものですが、その日本語が文法、構文、読みやすさ、論理性といった点でダメダメだということです。まともな日本語の文章になっていない場合、審査委員がわざわざそれを読み解く労を取ってくれるでしょうか。もちろん、そんな親切な審査委員はいないと思います。

日本語の力は小学生の時期につくものだと思います。国語力がない大人は、小学生向けの国語の参考書をつかって勉強するのが早道です。

  1. 福嶋 隆史 “ふくしま式200字メソッド”で「書く力」は驚くほど伸びる!  2013/7/19 大和出版(アマゾン)「全体」を構成する技術 文章全体の根幹=骨組みを構築する、そのためのスキル この本は、骨組みを築き上げるための言語技術を伝授する本 主な読者対象は小・中学生の子を持つ親の方々、及び学校や塾の先生方ですが、高校生やビジネスマン、あるいは一般の大人が読んでも当然、役立ちます。とくに今回は小論文も取り上げており、幅広い読者を想定した本
  2. 福嶋隆史「ビジネスマンの国語力」が身につく本 言葉を自在に操るための論理思考トレーニング 2010/12/11 大和出版(アマゾン)大人向け「国語力=論理的思考力」を伸ばす方法 『「本当の国語力」が驚くほど伸びる本』の骨組みを維持しながらも、そこに新しい肉付けを多数ほどこした結果、見事に進化し、「大人のための本」として生まれ変わりました。
  3. 福嶋 隆史 「本当の国語力」が驚くほど伸びる本: 偏差値20アップは当たり前!  2009/7/18 大和出版(アマゾン)

科研費に出す研究者はまとまった勉強時間が取れないくらい忙しい人が多いと思いますが、もしなんとか勉強時間をひねりだせる人であれば、この本がおすすめです。文例は医学系で大学の卒論の文章程度の日本語かと思いますが、科研費の文章レベルに近いと思います。みんなが陥りがちな、不明瞭な文章(一意に意味が取れない)を避ける方法などがみっちりトレーニングできます。一冊こなせば、国語力(正確な文章を書く力)に関しては一皮むけるでしょう。自分は一冊一通りやりましたが(リライティングの実戦練習)、正直、結構ハードで疲れました。しかし、書く力が弱いと感じている人は、一度は通るべき道です。

  1. 林 健一 こうすれば医学情報が伝わる!! わかりやすい文章の書き方ガイド (ライフサイエンス選書) 2014/10/8 ライフサイエンス出版 (アマゾン)

時間がない人は下の本がおすすめ。

  1. 酒井 聡樹  100ページの文章術 -わかりやすい文章の書き方のすべてがここに- 2011/3/10 本書の特徴は,100ページと短いながら,わかりやすい文章の書き方のすべてを解説している(アマゾン)

 

科研費に採択される人は抽象・具体を行き来できる 不採択の人は抽象・具体の書き分けが下手

具体例を抽象化して概念にすることは研究者が普段行っていることです。自分の実験系から得られデータ(具体例)に基づいて、どれだけ一般化できるかを考え、抽象化したものすなわちコンセプト(概念)のレベルに昇華して議論するわけです。トップジャーナルにリジェクトされる一番の理由がconceptual advanceがないということであることからしても、conceptualization概念化がいかに大事かわかります。

  1. 細谷 功 具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ 2014/11/27 dZERO(アマゾン)

 

科研費に採択される人は読み手の存在を意識している 不採択の人は読み手のことを考えない

科研費の申請書は審査委員に読んでもらうために書くものです。つまり相手、人間が向こうにいるのです。しかも、応募者の研究内容を初めて聞く人達です。よっぽどうまく説明しない限り、何をやるのか、なぜやるのか、なぜ重要なのかといったことは伝わりません。不採択になる人は、誰に読んでもらうのかという意識が欠如しています。自分が書くことだけでいっぱいいっぱいで、それが人に読まれるものであることがわかっていないのです。

 

科研費に採択される人は客観的 不採択になる人は独りよがり

科研費に採択される人はゴルゴ13のように自分を客観視できる人です。不採択になる人は独りよがりな部分が何かしらあります。そもそも研究の仮説が突飛すぎて、根拠がちゃんと書かれていなくて受け入れられない、審査委員は専門家なんだからわかるよなとばかりに難解な語句を散りばめる、略語をいきなり使う、論文の図をコピペしていて中の文字が小さすぎて読めないのに気にもしていない、論文の図中には不要な情報がたくさんあるのに知らんぷり、といった具合です。

 

科研費に採択される人は細部にまで神経が行き届く 不採択になる人は雑

採択される人の調書は例えば図を見ると非常に見やすく作られています。図の大きさ、図の中の構成要素の配置、整列のさせ方、強調の仕方、配置、記号の使い分けなどすべてに「意図」が隠されています。それに対して、不採択になる人の調書の図は、雑です。ページのレイアウトからはみ出していたり、図が不必要に大きかったり、図の周りの余白が大きすぎたり、図中の文字のフォントが馬鹿でかかったり、図のなかみが整列されていなかったり、図なのに全然視覚的に情報を伝えるものになっていなかったり。

 

科研費に採択される人の申請書には整合性がある 不採択になる申請書は矛盾がある

科研費は、何がやりたいのかが不明瞭な申請書が採択されることはありません。申請書全体を通じて、一貫した主張が大事なのです。それに対して、不採択調書は、何かしら矛盾があります。一番致命的な矛盾は、研究目的と実験課題が合致していないこと。その実験課題はその研究目的を達成するために必要なのか?その研究目的を達成するためにはもっと違う実験が必要だったり、もっと一歩先の解析までやる必要があったり。

申請書に矛盾がある人は人間的にも矛盾があるというわけでは決してありません。気づけていないだけです。そういう意味では、自分の書いたものを客観的に見直すことができる人できない人という違いに帰着できます。

 

科研費に採択される人は第三者に読んでもらう 不採択者は一人で書いて出す

なんでも一人でやろうとする人よりも、周りを巻き込んで行く人のほうが仕事ができるものです。研究者の周りには研究者しかおらず、研究者は皆忙しいので、「読んでもらえない?」とお願いすることは勇気のいることです。ついつい気が引けたり、おっくうになったり、面倒くさく感じて一人で書いて出す人が多いのではないでしょうか。しかし申請書を読むのが第三者である以上、第三者の目に自分の申請書がどう映るのか、初めてその内容に触れる人にとって理解しやすいものなのかどうかを確認する作業は非常に大事です。普段からお互いに科研費申請書を読みあうことができるような信頼関係を築いておくことが大事です。これは科研費に限らず論文を段階においても同様です。

  1. ココナラ(”科研費”で検索すると添削サービスを提供する元研究者、研究支援経験者などが数十件ヒットします)

 

科研費に採択される人は情報を取りにいく 不採択になる人は情報に興味がない

いまどき科研費応募を支援するものはいろいろあります。書籍が何冊も出版されていますし、URAが支援している大学も多いです。事務方が頑張ってしっかり読んでくれているところも多いと思います。どの大学でも科研費の書き方の説明会を開催して、外部から講師を呼んだり、審査委員経験者にしゃべってもらったり、科研費をとりなれている研究者に講師をやってもらったりしています。採択された研究計画調書を閲覧できるようにしている大学も結構あるようです。このようにいくらでも支援ツール、支援の機会があるにもかかわらず、不採択になる人はそれらに興味がなかったり、あまり活用していません。もったいない話です。もちろんネット上にも参考になるノウハウがいくらでも転がっています。

科研費に採択される人は様式の指示や留意事項を守る 不採択になる人は無視する

科研費の様式には指示や留意事項がはっきり書かれています。それは評価ポイントと完全に対応しているので、その指示を無視するということは評価されにくいものを書くということです。例えば、学術の潮流や発展を説明してから、問いをどう設定したか書けと書いているのに潮流や最近の発展に言及せずに自分のやってきたことばかり書く人がいます。他人の文献を引用していないということは、その研究領域の潮流の説明をしていないということです。

科研費に採択される人は、書くべき場所に書くべきことを書いているのに対して、不採択になる人は、書くべき場所に書くべきことを書いていなかったり、別の場所に書いていたりします。

科研費に採択される人は応募していた人 不採択になる人は応募するのをやめてしまう

応募しなければ採択されないのは当たり前です。しかし不採択が2回くらい続くと応募するのをやめてしまう人が結構います。3年くらいすれば審査委員も入れ替わるので、出し続けていれば評価してくれる顔ぶれになるかもしれません。

 

選挙の投票はなぜ鉛筆?

素朴な疑問:なぜ鉛筆?

鉛筆だと原理的に消しゴムで消して書き直せるので、投票のように書き換えられたらこまる場面で筆記用具は鉛筆しか使ってはいけないというのは不思議に思えます。

 

光学式マーク認識 (OMR)が開発される前は、電気伝導性感知方式が利用され、 マークシートの読み取りが行われていました。 電気伝導性感知方式は、鉛筆の芯の黒鉛の電気伝導性を感知して、 マークの位置を直接認識する仕組みです。 しかしながら、19世紀後半以降、 電気伝導性感知方式から光学式マーク認識 方式(OMR)に取って代わり現在では、電気伝導性感知方式は使われていないマークシート採点の仕組みとなりました。(マークシート採点の仕組み。OMR・OCR・スキャナの違いを解説 2022.08.25 by ㈱CSC 情報システム事業部)

 

投票用紙の素材は樹脂をベースにした合成紙。白くて不透明で、書き込みや印刷ができて、という紙のような特性を持っていながら、実は石油から作られるプラスチックの一種でもあるのです。‥ 紙と違い、インクが浸透しないため、水性のボールペンなどで筆記するといつまでもインクが乾かず、こすれてしまうのです。そのため、筆記には鉛筆やシャープペンシル、または油性のペンを使いましょう。(不思議な書き心地の投票用紙。同じ素材で作られたノートがあるって知ってた? 2021.12.21 KOKUYO )

投票用紙:ユポ

投票用紙は紙かと思いきや、材質は紙ではないのだそうです。

  • 選挙の投票用紙は、合成紙「ユポ」に印刷などの加工を施して製造されています。ユポとは、株式会社ユポ・コーポレーションの独自製法によって開発された、フィルム法合成紙です。
  • ユポを使った投票用紙は、折り畳んで箱に入れても自然に開くため、開票作業がスムーズにできます。
  • ユポは、天然紙よりも水に強く、万が一水に濡れてもふやけたりせず、形状が変わることもありません

選挙の投票用紙に使われている素材「ユポ」とは?メリットも解説 2024年03月13日 ユポ・コーポレーション )

使用するのは、「ポリプロピレン樹脂」で、これに無機充填剤を混ぜて熱で溶かし、紙のような厚さになるまで引き延ばす。そうすると、微細な穴が無数に開いたフィルムができる。この穴に鉛筆の黒鉛が削れて入ることできれいに黒が移る仕組みになっている。これが、投票用紙に使われる合成紙「ユポ」の正体だ。(選挙の投票用紙、実は「紙ではありません」…文具マニアも熱視線 2022/05/21 11:45 読売新聞オンライン)

ユポ開発の歴史

  • 68年、科学技術庁(現在の文部科学省)が消費増による森林資源枯渇への危機感と、石油化学の勃興を背景に「合成紙産業育成に関する勧告」 を発表
  • ユポ・コーポレーションの前身は三菱油化(現三菱ケミカル)と王子製紙(現王子ホールディングス
  • ユポ(YUPO)は三菱油化(「YU」)と王子製紙(「O」)を、「Paper」(紙)で結びつけるという意味
  • ポリプロピレンに、少量の添加剤を混ぜ、熱で溶解した上で、紙同様にシート上に薄く伸ばして製造
  • 投票用紙表面の摩擦係数を表と裏で変え、ムサシ製の選挙機器が正しく票数を計測できるよう工夫
  • 素材名は企業名と同名の「ユポ」で、共同開発した、選挙機器メーカーのムサシ(東京都港区)から「開く投票用紙」という名称で販売されている。

実は「紙」じゃなかった! 書き心地“半端ない”「投票用紙」の正体と開発秘話 誕生から35年 2022年07月10日  ITMediaビジネスONLINE )

 

  1. !投票用紙の”秘密”を探る公開:2022年6月15日(水) (津放送局 中野七海) ※2021年10月27日公開の記事を再掲 NHK 投票箱に入れるときは、半分に折るという人も多いと思います。箱に入ったあとの投票用紙は、中で自然に開いているんです。
  2. 「ユポ紙」が選挙の投票用紙やポスターに使われる理由 2023.05.26  ヒラメキ工房 選挙ポスターは屋外の掲示板に貼られていることが一般的です。普通の用紙だと雨に打たれた時点でポスターは破れてしまいますが、耐水性のあるユポであれば雨に打たれても問題ありません!
  3. 投票用紙交付機 投票用紙自動交付機 テラック BA-10 ムサシ 投票用紙を1枚ずつ正確かつ迅速に交付します。

 

投票用紙の読み取り

投票用紙に書かれた候補者の氏名の読み取りは人間が行っているのではなく、機械によって自動的に読まれるのだそうです。

「毎分660票を識別」機械が投票用紙を振り分け 様変わりの開票作業 THE PAGE(ザ・ページ) チャンネル登録者数 37.3万人 2014/12/13 投票用紙「読取分類機」は、投票用紙に書かれた候補者の名前を瞬時に読み取り、候補者ごとのラックに振り分けていく。この読み取りの処理速度が毎分660票で、天地裏表など票の向きも揃えてくれる

投票用紙読取分類機 テラックCRS-VA /株式会社ムサシ 株式会社ムサシ公式チャンネル チャンネル登録者数 111人 投票用紙に書かれた手書き文字(漢字・ひらがな・カタカナ)を毎分660票のスピードで識別し、候補者別 (政党名別) に自動分類します。

  1. 投票用紙読取分類機 テラック CRS-VAnの特長 ムサシ 手書き文字(漢字・ひらがな・カタカナ)を毎分660票のスピードで識別し、候補者別 (政党名別) に自動分類 候補者が多い選挙では、増設ユニットを連結することで分類棚の数を増やすことが可能です。(最大125段)

投票用紙の計数機などでトップシェアを誇る「株式会社ムサシ」に聞いてみました。‥ 候補者の「漢字」はもちろん、有権者の方によっては「カタカナ」や「ひらがな」、「漢字とひらがなの組み合わせ」等で書かれる方もいますので、様々な表記を事前に設定しておきます。投票用紙の「裏表」や「上下」がバラバラでも自動的にそろえることもできます。(「集計の機械が、投票用紙を書き換えている」ネットで噂される「開票 陰謀論」はあり得るのか?メーカーに聞いてみた 2018/7/20 選挙ドットコム)

陰謀論「票の書き換え疑惑」について

SNSなどでは「ムサシのシステムが一定の政治勢力の影響を受けて操作されている」とか「票が書き換えられる」とする偽情報が10年以上前から広がっています。選挙などのたびに関連する投稿が拡散、多いときには3万件近くみられます。(不正選挙? 選挙に関する“偽情報”を調べてみると… 2024年4月27日 15時58分 NHK)

蓮舫氏「2位じゃダメなんですか?」発言の真相:切り取られて作られた報道

蓮舫氏の「2位じゃダメなんですか?」発言は、1位を目指さないと何も成し遂げられないのに何をバカなことを言ってるんだ?という強い批判を呼び起こしました。

理化学研究所が開発を進める次世代スーパーコンピュータについて、事業仕分けの際に「本当に世界一になる必要があるのか、2位ではだめなのか」という意見が出たことに対し、利根川氏は皮肉を交えて反論。「世界一を目指してもなれないもの。世界一を目指す意気込みでやらないと、2位にも3位にもなれないことを理解すべきだ」

ノーベル賞受賞者らが仕分け批判で集結 「世界一目指さないと2位にもなれない」 2009年11月25日 22時45分  [岡田有花,ITmedia]

上の記事でみるとおり、研究というものが何もわかっていない素人に政治をさせるとろくなことにならないという認識が、研究者であろうとなかろうと世間一般のものだったと思います。

今回の都知事選で蓮舫氏が頑張っているなあと思ってみていたのですが、あの「2位じゃダメなんですか?」発言が常に頭の中にあったので、それがイメージダウンにつながっていました。

ところが最近の報道で、実は蓮舫氏の発言は、「1位になれなくてもいいじゃないですか」という意味の発言では全くなかったということを知りました。

  1. 蓮舫氏「2位じゃダメなのか発言」の真相…5つの観点から分析する「報道のキリトリ」と「実際の発言」との相違点 6/18(火) /2024 7:02 集英社オンライン YAHOO!JAPANニュース
  2. 【都知事選2024】蓮舫氏「2位じゃダメ」発言 15年越しの真実 蓮舫氏が「2位じゃダメなんですか」と発言した次世代スパコン事業仕分けの行政刷新会議(2009年11月13日)。全72分間の議論を徹底的に検証し、「報道が作り上げた虚像」と「現実」のギャップを明らかにします。 犬飼淳 2024.06.09

実際にあのとき審議していた委員会の動画を見ると、理研の説明に鋭い突込みを入れていたのは、研究者であって、蓮舫氏は要領を得ない回答しかしない理研側の人間に対して「1位でなく2位になってしまったとしても意味があるのではないでしょうか、それを説明してください」という趣旨の発言をして、1位じゃなきゃだめだという理研の人たちを擁護もしくは助け舟を出したともいえるような文脈で使われた言葉だったのです。。

それが、いざ報道されるときには蓮舫氏が完全に悪者され、素人が何を頓珍漢なことを言ってるんだ!という世間の怒りを巻き起こしました。「蓮舫さんて、『2位じゃダメなんですか?』の発言をした人だから、ちょっと、ねぇ。」みたいな印象がその後10年以上もみんなの記憶に残ることになりました。

ノーカット【蓮舫氏「2位じゃダメ」発言 】行政刷新会議 事業仕分け「次世代スパコン事業」2009年11月13日 犬飼淳 / Jun Inukai チャンネル登録者数 6400人

 

蓮舫氏自身による解説

「スパコン事業では参入していた3社のうち、2社が撤退してしまった。文科省は、その理由を検証しないままに、これまでどおりの枠組みで予算を付けてきた。事業の目的を文科省に聞いても、『夢のため』としか言わない。具体的な(事業目的の)言い方はいくつもあるにもかかわらず、説明はなかった

仕分け「第2弾」控え 蓮舫議員特派員協会で会見 2010.04.14 16:00 JCASTニュース

 

一次情報を確認せずに報道を鵜呑みにする恐さを今さらながら再認識しました。

  1. 八事日赤(やごとにっせき)病院の医療過誤でSMA症候群の高校生男児(16歳)が亡くなった事件に関して

科研費が採択されない人の特徴

毎年、科研費に応募しているのに全然採択されないという「科研費が採択されない人の特徴」とはどのようなものでしょうか?

一回も採択されたことがない若手と、以前は採択されていたのに最近はサッパリというベテラン研究者で原因が異なると思います。そこで「若手」と「ベテラン」それぞれについて考えてみます。

採択未経験の若手研究者が科研費を採択されない理由

「若手」で採択未経験の人が不採択の泥沼に陥る理由の一つが、「無知」です。

どういう研究テーマや研究デザインが科研費で採択されるのかを知らない。

科研費の様式の指示や留意事項を無視してはいけないことを知らない。

自分が書いた日本語が全然日本語になっていない(つまり自分には国語力がない)ことを知らない。

採択される研究計画調書がどのようなものかを知らない(見たことがない)。

自分には業績がないから科研費に採択されるなんて無理と思う謙虚な人もいるかもしれません。しかし「若手研究」は博士号をとりたてほやほやの人もたくさん応募しており、誰かが採択されています。博士とりたてだと、せいぜい博士論文一報しか原著論文がないということは普通にあります。業績がないからと諦めるのは早いのです。

不採択が続く若手研究者が不採択沼に陥るもう一つの理由、「持たざること」です。

採択されるコツを教えてくれる先輩や先生が身近に存在しない。

科研費採択のための教科書(市販されている書籍)を持っていない。

持ってない人はまず買いましょう。

  1. 科研費申請書の書き方の教科書 厳選5冊(別記事にとびます)

科研費の教科書を持っていても、読んで内容を理解してそれを自分の申請書に落とし込むことができていないというケースがあります。指導者がいないとどうしようもないですね。

東大をはじめとする旧帝大などの研究大学でアクティビティが高いラボであれば、科研費に採択されるのが当たりまえの人たちが多いので、そういう人の採択調書を見せてもらったりアドバイスを受ければなんてことないのですが、自分のラボも周りのラボもそのレベルの人がいない場合は、孤独に書いて出して落ち続けている人が多いのだろうなと思います。

周りに科研費申請書の書き方を指導してくれる人がいない人は、元大学教員、元研究支援職員などが提供している個人サービスが利用できます。

ココナラで科研費チェックを依頼する(Coconalaサイトにとびます)

個人のスキルが売買されている上記サイト「ココナラ」で、”科研費 研究計画調書 チェック”などのキーワードで検索すると、科研費申請書をチェックして添削しブラッシュアップしてくれるようなサービス提供者(個人)が見つかります。令和5年度の応募件数は約89000件です。ココナラで科研費に特化した添削サービスを提供している個人はざっと数えて30名程度のようです。科研費はシーズンがありますので、締め切り前の1~2か月は多分依頼が殺到して捌ききれないんじゃないかと思うので、早く動いたもの勝ちでしょうね。

 

以前は採択されていたベテラン研究者が最近は科研費がサッパリ採択されなくなった理由

ベテラン研究者が科研費を獲れなくなった一番大きい理由は、科研費制度の進化と競争の激化、つまり「変化」についていけていないからでしょう。

科研費の制度や申請書の様式はかなり変化しました。改善されてきたというべきでしょうか。2018年には審査区分の「細目」が「小区分」となり数が激減しました。これにより自分の「居場所」(必ず採択されていた審査区分)を失った人もいるはずです。

時代の流れに取り残されているというのも理由だと思います。つまり、科研費申請書の書き方が複数刊行され若い人ほどそういった書籍をよく読んでソツのない見栄えの良い申請書を仕上げてきます。それに対して、過去の栄光にとらわれているベテラン研究者は「科研費申請書はこう書けばいいんだ」という思い込みから脱却できなくて、いつまでも古臭いスタイルの申請書を書いているため、見栄えという点でも大きく見劣りしている可能性があります。

ベテランの年齢になって大学での雑務が増えて研究に割ける時間が減り、科研費の申請書作成に注力する時間が十分とれなくなったからということも考えられます。

人間は年を取ると頭が固くなり考え方が硬直するので、一度自分がそういう状態に陥っていないかを第三者に見てもらったほうがいいのではないでしょうか。まあ大学教員はみなプライドが高いので、いい歳してなかなか他人にアドバイスを求めたりはできないものです。それこそが不採択が続く理由なんですが。

ココナラで科研費研究計画調書をチェックしますというサービスを提供している個人の経歴を見ると元科研費審査委員・元大学教授というかなりシニアレベルの方もいらっしゃるようなので、そいう科研費採択のコツを熟知した人に今さらながらでも指導を仰ぐというのがいいのではないでしょうか。

 

以上、科研費が採択されていない研究者の特徴をまとめると、「無知、情報弱者」の場合と、時代の変化についていくための「自分のバージョンアップができていない」場合の2つがあるのではないかと思います。

ここまで科研費申請書作成のノウハウがネット上に氾濫していて、書籍もいくつも出版されているのにつたない申請書しか書けない人は、第三者に助言を求めたほうが早いです。

  1. ジーラント株式会社(代表取締役 児島 将康科研費費申請書の添削サービス(個人向け) 科研費獲得総合プラン(研究機関向け)
  2. ココナラ(科研費に特化した添削サービスを提供している個人)

 

科研費が採択されない人の特徴:一般論

若手、ベテラン問わず、もう少し一般的な話に広げてみたいと思います。科研費への応募というよりも、人間対人間のコミュニケーションというところまで広げて考えると普遍的な原理が見えてきます。

例えば、女性の気持ちがわかる男性はモテるのと同じで、審査委員の気持ちがわかる応募者は採択されやすいのではないかと思います。大学教員の公募に応募する場合に、大学側・採用側の本音が理解できているほど、それにピッタリの応募書類が書けるというのも同じでしょう。要するに、「相手が望むものを与えてあげられる人が、自分が望む結果を得られる」ということですね。

イエスの教え「己の欲する所を人に施せ」(自分がしてもらいたいように、人にもしなさい)(新約聖書 マタイ伝・七)というものがありますが、自分がしてもらいたいことと、相手がしてもらいたいと思っていることとはたいていの場合異なりますので、この教えは人生であまり役立ちません。あくまで、相手が何を望んでいるのかを理解することが大事。話がちょっとズレました。さて、と。

審査委員は専門家なんだから、これくらい専門的な内容を理解できないわけないよなみたいな態度で研究計画調書を書いたときに、それを読まされる側はどう思うのか?そもそも誰がそれを読むことになるのか、あなた(応募者)はわかってるの?という話もあります。今年の審査委員が誰かはわかりませんが、過去にその審査区分を誰が審査していたのかの情報は科研費のサイトで公開されています。もちろん審査委員になっている人は研究者としてはそれなりの人ばかりです。しかしだからといって、応募書類全部を短時間で読んで隅々まで完全に理解できるかというとそれはありえないでしょう。自分がやったこともない実験手法の細かいことが書いてあってもピンとこないはずです。研究の興味が同じだとしても、自分がやっていないアプローチを書かれたらそのアプローチのロジックが完全にわかるとも限りません。ましてや初めて聞いた研究トピックだった場合、そもそもなぜそれが面白い研究なの?というところからのスタートになります。「俺の研究の面白さがわからないなんて審査委員はレベルが低いぜ」などと内心どこかしらで思っているような傲慢な人間には、決して「採択」は近づいてこないでしょう。業績で相手をぶん殴るような申請書は、もはや相手にされません。いくら業績アピールしても、読みにくくて理解されないものが採択されることはないでしょう。何しろ、わかりやすく書くことに関しては、申請書のレベルは昔よりもかなり上がっているのですから。

結論として、不採択が続く人には、「相手の望むことを理解できず、独りよがりな申請書を書いていることに自分で気づけていない」という特徴があるといえます。無知ゆえか、傲慢ゆえか、いずれにせよそうなっているのでしょう。

まあ、科研費の申請書の個々の書き方以前の話ですね。

さて、多くの人は、採択の常連さんと不採択続きの人の間、つまり採択されたり落としたりとボーダーラインを越えたり越えなかったりという辺りに位置しているのではないでしょうか。そういう人たちは、行き当たりばったりに書いてあとは運に任せているだけで、確固たるノウハウが身についていないのだと思います。

  1. 採択される科研費申請書の書き方22のヒント(別記事)

八事日赤(やごとにっせき)病院の医療過誤でSMA症候群の高校生男児(16歳)が亡くなった事件に関して

名古屋の第二日赤病院(”八事日赤”)でSMA症候群の高校生男児(16歳)が亡くなった事件の報道と病院の説明(PDF)を読むと、あまりにも両者の乖離がひどくてとても不可解でした。報道を読むと研修医が上級医に相談せずSMA症候群を急性胃腸炎と誤診したことが問題視されていますが、病院の報告書や医師によるツイートなどを読むと、むしろ入院後の対応における重大なミスがあったように見えます。しかし病院の報告書では適切な対応が取れなかったのは患者がせん妄を起こしていたためだと説明していて、責任逃れをしているようにも感じました。

この事件に関しては多くの医療関係者がSNSで意見を述べており、「せん妄」という判断がそもそもおかしいと指摘しています。また、リスクが大きい鎮静剤の使用に際して、せん妄のため心電図モニターの装着をしなかったという判断が、医師の指示だったのか看護師の独断だったのかも病院の報告書からは読み取れませんでした。病院が遺族に対して、研修医の責任の範疇をどのように説明したのかもよくわかりません。

報道が事実を全く正しく伝えていないのは明らかですが、病院の報告書も事実や責任の所在を明らかにするようには書かれていないように思います。多くの医師や看護師がSNSでコメントしている内容が、現場での常識的な判断・行動がどのようなものであるべきなのかの参考になると思い、目に留まったものを紹介します。

研修医のミスで高校生が亡くなったとする報道

  1. 研修医の誤診などで男子高校生死亡、遺族「何度も助けられる機会あったのに見過ごされた」 2024/06/17 22:36 読売新聞オンライン
  2. 名古屋日赤、誤診で高校生死亡 1日2回受診でも治療遅れ 2024年6月17日 18:57 (2024年6月17日 21:05更新) 日経新聞
  3. 「研修医の勝手な判断・誤診がなければ…」遺族の叫び 医療ミスで16歳男子高校生が死亡 研修医が採血結果の異常を見逃す 2024年6月20日(木) 05:02 CBC NEWS
  4. 研修医が“誤診”…16歳男子高校生が死亡する医療ミス 十二指腸閉塞で腹痛等訴えるも急性胃腸炎として帰す 2024/06/17 17:29 東海テレビ
  5. 研修医が2回“誤診”高校生(16)死亡 胃腸炎のはずが…翌日“心肺停止”【スーパーJチャンネル】(2024年6月18日) ANNnewsCH チャンネル登録者数 412万人 (YOUTUBE)
  6. 研修医が2回“誤診”高校生(16)死亡 胃腸炎のはずが…翌日“心肺停止”  テレ朝news
  7. 【謝罪】研修医が2度にわたり誤診…16歳高校生死亡 遺族「決して忘れないで」 日テレNEWS チャンネル登録者数 231万人 (YOUTUBE)
  8. 研修医が“誤診”…16歳男子高校生が死亡する医療ミス 十二指腸閉塞で腹痛等訴えるも急性胃腸炎として帰す 東海テレビ NEWS ONE チャンネル登録者数 8.71万人 (YOUTUBE)

 

研修医の誤診による死亡とした報道に対する疑問

 

研修医の誤診による死亡とした報道姿勢に対する批判

研修医が上級医に相談していれば誤診が防げた可能性はありますが、誤診したことが死亡の直接的な原因では決してないということを多くの医師や医療関係者が指摘しています。

  1. 【緊急寄稿】研修医を守らねばならない 名古屋第二日赤の“誤診報道”、SMA症候群を救急外来で診断する必要はない 2024/06/20 谷口 恭
  2. 「研修医の誤診で高校生死亡」と報じるマスコミの罪…岩田健太郎「目の前の事実を正確につかむ思考法」 6/22(土) 9:17配信 193 コメント193件 YAHOO!JAPANニュース プレジデントオンライン

 

報道記者の体質

 

その他の報道

多くの報道が研修医の診断ミスが死亡原因だという伝え方をしていましたが、NHKはそのようには書いていませんでした。報道としては比較的まともなほうです。

  1. 日赤名古屋第二病院で医療過誤 適切な治療行わず高校生死亡 2024年6月17日 18時48分 NHK

遺族が病院に寄せたコメント

「今回の日曜日朝方より2度に渡り来院したにも関わらず、研修医2名によって、胃の拡張を急性胃腸炎と誤診され、上級医への相談・報告がルールにも関わらず報告をせず、後日クリニックへの受診を指示し、翌日症状の悪化によりクリニックからの紹介状にて至急の処置を指示されたにも関わらず、日赤では何度も脱水症状を訴えたにも関わらず、時間だけが過ぎてしまいました。更には前日の研修医による誤診のまま入院となり、入院後も脱水時の副作用があるセレネースを2回投与の指示を1回の投与に変更されたにも関わらず、看護師による引継ぎミスで2回投与され、脱水時の重大副作用にある注意事項があるにも関わらず、管理モニターの装着を怠り高度脱水による心停止に気が付かれませんでした。

これまでの複数回の病院側の報告では、各科の専門医は当時研修医からの報告・相談があればCTを見て胃の拡張に対し胃の減圧は確実にできていたと報告されています。

日曜の朝方、1回目、2回目と来院したにも関わらず、研修医の勝手な判断・誤診がなければ、このような結果にはなっていなかったと確信しています。

こちらは受診時、研修医なのか上級医なのか分かりません。まさか日赤という大病院がこれほどずさんな管理のもと、運営されているとはその時は思いもしませんでした。
また、報告書では救急外来に電話で相談した際には翌日の日赤の再診指示が望ましかったとありますが、同日2回受診しており、すぐに再受診を指示してほしかったです。

何度も助けられる機会はあったのに見過ごされてしまいました。こちらが病院で訴えた症状が正しくカルテに記載されていたなら。本当に後悔しかありません。
急性胃腸炎と誤診され、入院したにも関わらず、その数時間後には心停止になってしまいました。CTだけでは判断が難しい稀な病気では、今回は決してありません。初期の段階で胃の拡張に対しての減圧がされていれば、このような結果にはならなかったはずです。
その結果が病院で入院中におきた高度脱水です。

目の前で苦しんでいる人の声をもっとしっかり聞いてください。パソコンばかり見るのではなく、目の前の苦しそうな、つらそうな顔をしっかり見てください。訴えている症状をそのままカルテに記載してください。
もう息子は帰ってきません。
先生方の診断ミスでまだ16歳の男の子の人生を突然終わらせてしまったこと、夢見ていた未来を奪ってしまったこと、決して忘れないでください。

ただ、大多数の医師、研修医の方はこのような事は無く日々医療に邁進していると思います。皆さん自分の能力を決して過信せず、2度とこのような事が起きないよう切に願います」

  1. 「研修医の勝手な判断・誤診がなければ…」遺族の叫び 医療ミスで16歳男子高校生が死亡 研修医が採血結果の異常を見逃す 2024年6月20日(木) 05:02 CBC NEWS

病院の報告書

SMA症候群を適切に治療できなかったことにより死亡に至らせた事例

医療過誤公表について
今般、6月17日に記者会見でお伝えしましたとおり、当院の医療過誤についての公表をいたしました。あってはならないことが起きてしまい、お亡くなりになられた方、ご家族には心からお詫びし、ご冥福をお祈り申し上げる次第です。地域の皆さまにも不安や不信感を与えることとなってしまい、大変申し訳なく思っております。再発防止策を徹底し、医療安全管理体制をいっそう強化するとともに、患者さんに寄り添った安心できる医療を提供することで、職員一丸となって信頼の回復に努めてまいります。

令和6年6月 院長 佐藤公治 https://www.nagoya2.jrc.or.jp/patient/iryouanzen/Publication_case/

SMA 症候群を適切に治療できなかったことにより死亡に至らせた事例について

2024 年 6 月
日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院
当院において、上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)に対し適切な治療ができず、高度脱水が進行し心停止に至り死亡した医療過誤が発生しました。この度、ご遺族の同意をいただきましたので、本事例を公表させていただきます。

1.事案の概要
2023 年5月、10 代の患者さんが腹痛、嘔吐を中心とする消化器症状を主訴に救急搬送されました。2 年次研修医が診察し、CT で胃の過拡張所見を認めましたが採血結果を正常範囲内と判断し、急性胃腸炎の診断となり、帰宅としました。

その後、患者さんは嘔吐症状が持続するため救急外来に再受診し、電話相談を2回しました。いずれも 2 年次研修医が対応し、翌日に近医再診と判断しご家族へ伝えました。

翌日、近医にて緊急処置が必要と判断され、当院の一般消化器外科へ紹介受診されました。外科ではSMA 症候群の疑いと診断し、腸閉塞の治療が必要と考え、消化器内科を紹介、入院となりました。

初、脱水所見が著明で炎症反応の上昇があるが、大きな電解質異常がないことから、胃管挿入はなされず絶食と補液を治療方針とし、改善がなければ後日追加検査を行う方針としました。

入院から 3 時間後、患者さんに冷汗と脈拍触知微弱、大量嘔吐がありました。その時点で点滴と胃管挿入を準備しましたが、患者さんに過活動性せん妄(末梢静脈ルート自己抜去、医療者への危険行為、病棟内徘徊などの異常行動)が出現したため治療継続が困難と判断し、ご家族に来院を依頼しました。

ご家族来院後、点滴ルートを再確保し脱水の補正を図りました。過活動性せん妄はいったん落ち着いたものの易怒性が残っていたため、当番医は患者さんの年齢を考慮し鎮静剤を通常の半量投与しました。なおせん妄が助長される恐れから、胃管挿入は行いませんでした。

その後、患者さんが発熱し解熱剤を投与しましたが、投与後も眠れていないのを確認したため、看護師が残りの鎮静剤を投与しました。また、心電図モニターについても体動制限がせん妄の助長となると考え、装着せずに退室しました。

患者さんは同日深夜に心停止に至り、16 日後に死亡されました。

2.事故後の対応
医療事故調査制度に基づき外部専門医を委員に含めた院内医療事故調査委員会を設置し、診療プロセスの検証、関係職員からの聞き取り調査に基づいて原因究明と再発防止策について検討しました。

3.事案の検証結果
(1)CT 画像の評価が不十分で、急性胃拡張に対する減圧治療ができていなかった。
救急外来で撮影した CT における胃の過拡張像は、上級医に相談するべき画像所見でしたが相談していませんでした。翌日の専門外来受診時・入院後においても、胃管で減圧を図るべき状態でしたが、その処置が開始できていませんでした。

(2)脱水症の評価が不十分で、治療の開始に遅れが生じていた。
来院時の嘔吐・下痢症状から、脱水症の指標である採血結果に注意を払うべきでした。この時アルブミンとラクテートに異常値を示していましたが、その他の採血結果についてはほぼ正常範囲内であり、救急外来診療に関わったすべての医師は異常値に気付きませんでした。また、専門外来受診時は急性腎障害を伴う高度脱水症の所見がありましたが、補液量は十分な量でなく、当直時間帯に大量補液を開始しましたが、総じて治療に遅れが生じていました。

(3)救急外来において研修医が診療する場面での報告・相談体制に不備があった。
1 回目の受診では、脱水を示唆する採血結果を見落とし、正常範囲内と判断していました。検査値の異常を気づきやすくするシステム的な診療支援が必要でした。同日 2 回目の受診では、ご家族の不安も強かったことから研修医2年次による単独診療で帰宅の判断をせず、上級医へ相談をするべきでした。相談できなかった背景として、当院では研修医 2 年次は上級医への報告確認が義務化されておらず、上級医への報告基準が明確なルールとして規定されていませんでした。

(4)職員間において患者さんの情報を正確に共有できていなかった。
一般外来において、患者さんの重症感、緊急性の伝達が十分に行われていれば、消化器内科での診察や緊急性に応じた処置を迅速に行えた可能性がありました。病棟での鎮静剤の投与については、看護師間の情報共有不足により鎮静剤の残量分が追加投与され、当番医の意図した指示量の倍量投与となっていました。緊急時の口頭指示においては、より慎重
に医療者間でのコミュニケーションが必要でした。

(5)患者さんの容態変化時に、院内で定められた緊急体制が活用されなかった。
入院後の過活動性せん妄での不穏状態を意識障害と捉え、バイタルサイン測定や心電図モニターの装着、院内緊急コールを行い、患者さんの状態を多職種で評価し必要な治療や処置について検討するべきでした。また、体動制限でせん妄を助長することへの懸念や、快適性を過度に重視した結果、患者さんの状態把握が不十分となってしまいました。患者さん状態を客観的かつ正確に把握するためにバイタルサインを測定し対応すべきでした。

4.当院の問題として表出したこと
ご家族との対話の中で、それぞれの診療場面において患者さんの「訴え」「不安」に対し十分な対応ができていなかったとのご指摘を受けました。患者さんの病気や訴え・不安に真摯に向き合うという医療人としての基本姿勢が欠けていたことも、今回の診療において重大な過誤であったと考えております。当院は高度急性期病院として、どのような病気にも 24 時間 365 日絶え間なく応えることを使命としており、業務の繁忙や切迫感が常態化している背景があります。そのような業務環境のなかで、疾患の重症度、緊急性を優先して患者さんを診てしまう傾向があったのかもしれません。忙しさを理由に、患者さんに対しての職員の思いやりや丁寧さが欠けていたのかもしれません。今回の事例には、病院全体の体制や組織風土が根本的な問題ではないかと考えています。

5.再発防止策
今後の再発防止策として、当院では次の事項に取り組んでまいります。
(1)初期対応時の診断が後々の診療に影響を及ぼす事を認識し、病態の正確な把握を心がけること。
(2)症状改善なく救急外来を再受診した際には、上級医も必ず診察に関わること。
(3)一般外来では診療の遅れが生じがちであるため、一般外来に重症患者さんが受診した場合には速やかに救急外来に引き継ぐこと。
(4)一般病棟で治療が困難な場合(重症、複雑、精神症状による患者非協力)は、より集中的な管理を行うことができる部署に早めに転棟すること。
(5)今事例を風化させず、医療安全のための組織風土づくりを全職員で取り組む。

https://www.nagoya2.jrc.or.jp/content/uploads/2024/06/fdc0e7650fffff257ce52946c42b3c79.pdf

遺族の方に対する病院側の説明の仕方に関する疑問

遺族のコメントを読むと、病院側が研修医の責任を強調して説明したのかなと思いましたが、経過を考えたら病院の説明がどうであれ研修医の誤診が原因だと考えてしまうのも当然の感情なのではないかという指摘がありました。

夜間救急の研修医の診療・診断、責任に関して

研修医の上級医への報告義務に関して

研修医と上級医との関係性について

消化器内科医の診療、責任に関して

看護師のやるべきことについて

 

 

せん妄で治療できなかったことを理由にしていることに関して

せん妄ではなくショックによる不穏ではなかったのか

病院の報告書を読んでみて驚いたのは、患者さんが「せん妄」を起こしていたために必要な措置が取れなかったとしていることです。

 

 

ツイートをみていると、そもそも「せん妄」でなく「不穏」ではないかという指摘がありました。

不穏とは“行動が活発になり、落ち着きがない状態”のことで、せん妄などさまざまな原因により生じます。せん妄は、“身体疾患などが原因で生じる意識障害の一種”です。

そもそも不穏って何?|不穏のメカニズム、せん妄との違い 2017/06/01 看護roo!

せん妄としたのはおかしいと指摘したツイートを紹介します。

 

今回の医療過誤に関する医師の解説

  1. 【徹底解説】日赤名古屋第二病院で研修医が誤診?男子高校生が死亡 20246/21医療現場の実情医療ニュース2024年6月19日2024年6月21日
  2. 「研修医の誤診で高校生死亡」と報じるマスコミの罪…岩田健太郎「目の前の事実を正確につかむ思考法」 6/22(土) 9:17配信 193 コメント193件 YAHOO!JAPANニュース プレジデントオンライン
  3. 救急外来を振り返って~日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院のSMA症候群の件~内科医として考える 2024年6月19日2024年6月22日 女医ママ くまさん

 

八事日赤(やごとにっせき)とは

 

 

三次救急病院

 

病院の体質について

参考

  1. ルートとは 看護roo! ルート(るーと)とは体外から血管内へのアクセスのことで、一般には(点滴の)管を指す。薬剤を経管で注入する意味でも使う。ラインと同義点滴などのために血管に針を刺すことを「ルートを取る」「ルートの確保」などと言う。
  2. タキるとは 看護roo!  タキる(たきる)とは、呼吸や脈が早くなることを意味する業界用語のことである。頻脈を意味する英語「tachycardia(タキカルディア)」に由来する。
  3. バイタルサイン(=生命兆候)  バイタルサインとは 人間が生きている状態であるということを示す兆候を意味する。 1:意識    Cons (Consciousness) 2:血圧    BP  (Blood Pressure) 3:脈拍    HR   (Heart Rate) 4:呼吸数  RR   (Respiratory Rate) 5:体温    BT  (Body Temperature) 
  4. 入院患者の急変を捉えるRRSの啓蒙と医療の質を高める研究に取り組む 聖マリアンナ医科大学 横浜市西部病院 救命救急センター 医員/大学病院救命救急センター 医長 内藤 貴基 先生 access_time 2021年5月27日
  5. 名古屋・日赤病院で男子高校生「誤診死」未熟な研修医とヤブ医者から命を守る「3つの鉄則」 アサ芸プラス 新型コロナ以降、日赤に限らずどこの病院でも、ベテランの勤務医、看護師の大量離職が相次いでおり、体調が悪くなった時に名医が診察するか、研修医が診察するかがわからない「医者ガチャ」状態が続いている。